IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニック株式会社の特許一覧

特許7523248磁歪材料およびそれを用いた磁歪式デバイス
<>
  • 特許-磁歪材料およびそれを用いた磁歪式デバイス 図1
  • 特許-磁歪材料およびそれを用いた磁歪式デバイス 図2
  • 特許-磁歪材料およびそれを用いた磁歪式デバイス 図3
  • 特許-磁歪材料およびそれを用いた磁歪式デバイス 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】磁歪材料およびそれを用いた磁歪式デバイス
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20240719BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20240719BHJP
   H10N 35/00 20230101ALI20240719BHJP
   H10N 35/01 20230101ALI20240719BHJP
   H10N 35/85 20230101ALI20240719BHJP
【FI】
C22C38/00 303Z
C23C14/14 F
H10N35/00
H10N35/01
H10N35/85
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020076871
(22)【出願日】2020-04-23
(65)【公開番号】P2021172850
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(72)【発明者】
【氏名】中村 太一
(72)【発明者】
【氏名】秦 誠一
(72)【発明者】
【氏名】岡 智絵美
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴大
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-169673(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103556045(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104947194(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C23C 14/00-14/58
H01F 41/14-41/34
H10N 30/00-39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FeGaSmの3元系合金から成る磁歪材料であって、次式(1):
Fe(100-x-y)GaSm (1)
(式中、合金を構成するFe原子、Ga原子およびSm原子の総数を基準として、xはGa含有率(at%)、yはSm含有率(at%)であり、xおよびyは、x-y直交座標系において、不等式:y≦0.33x-0.67、y≧1.5x-24およびy≧-0.25x+7.5を満たす)
で表されるFeGaSm合金から成る磁歪材料。
【請求項2】
厚さが50nm~400nmである、多結晶構造である請求項1に記載の磁歪材料。
【請求項3】
磁性材料の多結晶構造において、各結晶粒が厚さ方向に対して(110)面、(200)面または(211)面が配向するbccFeの単相であり、磁性材料のXRDパターンのピーク比(110)/(200)および(110)/(211)が少なくとも10である請求項2に記載の磁性材料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の磁歪材料により形成される、所定の形状を有する磁歪素子。
【請求項5】
請求項4に記載の磁歪素子を有する磁歪式デバイス。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載の磁歪材料の製造方法であって、対向ターゲットスパッタ法を用いて対向する一方のターゲットがFeGa合金の2元系ターゲットであり、他方のターゲットがFeSm合金の2元系ターゲットであることを特徴とする、磁歪材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FeGa系合金から成る磁歪材料、特にFeGaSm系合金磁歪材料に関する。更に、本発明は、そのような磁歪材料を磁歪素子として用いてその磁歪効果を利用した磁歪式デバイスに関する。磁歪材料は、例えば応力センサ等に使用できる。
【背景技術】
【0002】
磁場によって弾性変形が誘起される磁歪材料が知られている。磁歪材料とは材料に磁界を加えると磁化し、同時に伸びを生じる材料である。磁歪材料を応力センサ等に利用する場合、磁歪応答性が高く、また、磁歪量が大きいほど、応力に対する変位の立ち上がりが早く、振幅を大きく取れる。
【0003】
従来の応力センサ等への利用を目指した磁歪材料としては、下記特許文献1に記載されているFeGa合金(例えば、ガルフェノール)がある。ガルフェノールは良好な磁歪効果に加え、機械的強度にも優れているため、振動発電やアクチュエーターへの応用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5187099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている磁歪材料はバルク形態である。応力センサのように小型のデバイスに用いる場合、磁歪素子として用いる磁歪材料は薄膜形態であることが望ましい。また、特許文献1に記載されている磁歪材料の磁歪量は単結晶化した場合で約300ppm程度であり、単純なスパッタ法で薄膜化すると、非晶質に近くなり磁歪量が低下する。
【0006】
発明者らが予備的に検討したところ、FeGa合金(例えば、ガルフェノール)を薄膜化した場合、得られる薄膜化磁歪材料の磁歪量は、応力センサの機能を発揮するには不十分であることが分かった。応力センサに用いる場合、薄膜化磁歪材料は、そのようなFeGa合金の薄膜化磁歪材料が発現する磁歪量の少なくとも1.5倍の磁歪量を発現する必要がある。
【0007】
本発明は、Smを更に含むFeGa系合金系磁歪材料、即ち、FeGaSm合金系磁歪材料において、向上した磁歪量を発現できる新たな磁性材料を提供することを課題とする。より詳しくは、本発明は、上述の従来の磁歪材料と比較して、向上した磁歪量を発現できる、例えば少なくとも1.5倍の磁歪量を発現できる磁歪材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの要旨によれば、FeGaSmの3元系合金から成る磁歪材料が提供され、磁歪材料は、次式(1):
Fe(100-x-y)GaSm (1)
(式中、合金を構成するFe原子、Ga原子およびSm原子の総数を基準として、xはGa含有率(at%)、yはSm含有率(at%)であり、xおよびyは、x-y直交座標系において、不等式:y≦0.33x-0.67、y≧1.5x-24およびy≧-0.25x+7.5を満たす)
で表されるFeGaSm合金から成ることを特徴とする。
【0009】
即ち、本発明の磁歪材料において、合金を構成するFe、Ga、およびSmの総原子数を基準として、Gaの含有率(at%または原子%)がx%であり、また、Smの含有率(at%または原子%)がy%であり、Feの含有率(at%または原子%)は、(100-x-y)%となる。従って、x-y直交座標系において、点(x,y)は、3本の直線:y=0.33x-0.67、y=1.5x-24およびy=-0.25x+7.5を満足する線上またはこれらの直線によって囲まれる領域内に存在する。このような組成を有する磁歪材料は、従来の磁歪材料と比較して、向上した磁歪量を発現できる。
【0010】
尚、本発明の磁歪材料は、本発明の磁歪材料を得るに際して用いる原料に不可避的に含まれる他の元素を含んでもよい。具体的には、本発明の磁歪材料は、微量元素として例えば酸素を0.005at%未満の量で含んでいてもよい。
【0011】
本発明の別の要旨によれば、上述の磁歪材料から形成される、所定の形態を有する磁歪素子が提供される。この磁歪素子は、応力センサのような磁歪式デバイスにて用いられ、磁歪効果または逆磁歪効果によって意図するデバイスの機能を発現できるように適切に選択された形態(例えば形状、寸法等)を有する。
【0012】
本発明の更に別の要旨によれば、上述の本発明の磁歪材料を磁歪素子として有する磁歪式デバイスが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、既知の磁歪材料との比較において、磁歪量が向上し、例えば少なくとも1.5倍の磁歪量を発現できる磁歪材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、基板上に本発明の磁歪材料を堆積した様子を斜視図にて模式的に示す。
図2図2は、本発明の磁歪材料を製造する対向ターゲットスパッタ装置の概略図を示す。
図3図3は、実施例および比較例の磁歪材料の組成および相対磁歪量を示す表1である。
図4図4は、実施例および比較例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態における磁歪材料およびその製造方法、磁歪素子ならびに磁歪式デバイスについて説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本実施形態における磁歪材料は、次式(1):
Fe(100-x-y)GaSm (1)
(式中、合金を構成するFe原子、Ga原子およびSm原子の総数を基準として、xはGa含有率(at%)、yはSm含有率(at%)であり、x-y直交座標系において、点(x,y)は、3本の直線:y=0.33x-0.67、y=1.5x-24およびy=-0.25x+7.5を満足する線上またはこれらの直線によって囲まれる領域内に存在する。)
で表されるFeGaSm合金から実質的に成る。
【0017】
本開示において、「含有率」は、FeGaSm合金を構成する各元素の原子数の総和に対する各元素の原子数の割合(%)を意味し、at%(原子パーセント)の単位を用いて表される。このような「含有率」は、FeGaEr合金を電子線マイクロアナライザ(EPMA)で分析することにより、各元素の含有率として測定できる。
【0018】
尚、Gaは、Feに固溶することによって優れた磁歪特性を示すことが知られている。磁歪材料におけるGa含有率が20at%よりも大きくなると、結晶構造がbcc相よりもD03型規則格子が支配的になるために磁歪特性が低下し、また、14at%よりも低濃度になると、Ga添加による磁歪特性効果が十分に得難くなる。従って、Ga含有率は、14at%以上、20at%以下であるのが好ましい。Smは、FeおよびGaよりも原子半径が大きく、その添加により誘起される局所的な歪み、およびSmのもつ4f電子の四重極モーメントに起因する一軸磁気異方性による影響により磁歪特性を発現できる。
【0019】
このような磁歪材料は、好ましい態様では薄膜形態を有する。1つの実施形態では、本発明の磁歪材料は、例えば50nm~400nm、好ましくは100nm~350nm、より好ましくは150nm~300nmの厚さを有する。このような磁歪材料は、薄膜を形成するいずれの適当な方法を用いて製造してもよく、例えばCVD、好ましい形態では、スパッタ法、特に好ましい態様では、対向ターゲット式スパッタ法によって形成する。従って、所定の基板上に磁歪材料を形成する。
【0020】
図1に、このように形成した磁歪材料を模式的に示す。図示した態様では、磁歪材料101が基板102の上に形成されている。このように得られた磁歪材料を、所定の形態に加工して磁歪素子を得ることができる。図示した磁歪材料は薄膜形態であり、基板と磁歪材料は一体である。通常、図示したような基板を加工することによって、所定の形態を有する磁歪素子を得る。これを組み込んで所定のデバイス、例えば応力センサを得ることができる。
【0021】
基板102は、いずれの適当な材料からできていてもよく、いずれの適当な形態であってもよい。例えば6mmx20mmx150μmのSiからなる基板を使用でき、例えば対向ターゲットスパッタ法によって、6mmx20mmx(50~400)nmの本発明のFeGaSm3元系合金の磁歪材料を形成できる。
【0022】
尚、薄膜形態の磁歪材料が一体に付着した基板の形態は、いずれの適当な形態であってもよく、基板を平面視した場合(即ち、図1において磁歪材料101の上方から眺めた場合)の形状は、例えば円形、楕円形、正方形、長方形およびこれらの種々の組み合わせの形状であってよい
【0023】
尚、本開示において、「磁歪量」は、磁歪材料における磁歪効果による寸法変化の割合であり、具体的には、例えば光てこ法によって測定できる。この方法では、基板の自由端にレーザ光を照射し、その位置変化を変位センサで測定する。後述の実施例および比較例において、この方法に基づく光てこ式磁歪測定装置(ネオアーク株式会社製、NH-1000MS-TIS)を用いて磁歪量を測定した。
【0024】
本発明の薄膜形態の磁性材料は、好ましくは多結晶構造を有し、各結晶粒が厚さ方向に対して(110)面、(200)面または(211)面を有するbccFeの単相である。特に好ましい形態では、大部分の結晶が磁歪材料の厚さ方向に(110)面が配向している。その結果、本発明の磁歪材料は大きい磁歪量を発現できると考えられる。
【0025】
本発明によれば、上述のような磁歪材料を含む磁歪式デバイスも提供される。本開示において「磁歪式デバイス」とは、本発明の磁歪材料と一体になった、所定形状を有する基板を、磁歪素子として含むものを意味する。このデバイスの1つの態様では、本発明の磁歪式デバイスは、そのような磁歪材料を、デバイスの構成要素である磁歪素子として含み、磁歪効果に基づいて応力を検知できる構造となっている。例えば、磁歪式応力センサを本発明の磁歪式デバイスとして挙げることができる。これらのデバイスにおいて、本発明の磁歪材料が各々のデバイスに適した所定の形状の基板と共に含まれる。
【0026】
本発明の磁歪材料の製造は、上述の式(1)を満たす、所定の組成を有するFeGaSm合金の磁歪材料を基板上に形成できる方法であれば、任意の適切な合金製造方法を用いることができる。特に好ましいのはスパッタ法であり、とりわけ対向ターゲットスパッタ法を例示でき、基板上にFeGaSm合金を堆積できる。
【0027】
図2に、基板102上に磁歪材料101を堆積させるための対向ターゲット式スパッタ装置の概略図を示す。図示した装置では、ターゲットA202およびターゲットB203を、これらが相互に対向するようにターゲットボックス201に配置する。ターゲットボックス201内にArガスを伴う高密度プラズマ環境を発生させ、基板ホルダー204に取り付けた基板102のターゲットボックス201側の表面に磁歪材料101を堆積させる。
【0028】
尚、例えばターゲットAとしてFeGaの2元系ターゲットを、ターゲットBとしてFeSmの2元系のターゲットを用いるのが好ましく、基板102上に磁歪材料101を堆積させる。堆積させる磁歪材料の組成および厚さは、ターゲットに印加する電圧および電流を適宜選択することによってコントロールする。このように対向するターゲットを使用すると、結晶異方性を有する多結晶の磁歪材料を形成できる。特に好ましい態様では、ターゲットから基板に向かう粒子が30°~60°、好ましくは40°~50°、例えば45°となるようにスパッタをコントロールするのが望ましい。
【0029】
従って、本発明は、上述の本発明の磁歪材料の製造方法であって、対向ターゲットスパッタ法を用いて対向する一方のターゲットがFeGaの2元系ターゲットであり、他方のターゲットがFeSmの2元系ターゲットであることを特徴とする、磁歪材料の製造方法も提供する。
【0030】
尚、図示した態様では、基板ホルダ204に対する基板102の設置に際しては、基板主面の短尺が図2中のx方向と平行になるように、基板主面の長尺が図2中のz方向と平行となるように、基板の厚み方向が図2中のy方向と平行となるように取り付けて、形成される磁歪材料の組成がx軸方向に沿って磁歪材料の組成のバラつきを抑制するのが好ましい。
【0031】
上述のように形成した磁歪材料101の結晶構造をXRD(X線回折装置)によって分析して結晶配向性を推定できる。本発明の磁歪材料の場合、XRDパターンのピーク比(110)/(200)および(110)/(211)は十分に大きく、ピーク比は、具体的には少なくとも10、好ましくは少なくとも20、例えば25であり、磁歪材料の厚さ方向に対する高い配向性を有する。
【0032】
更に、本発明の磁歪材料では、そのような配向性の向上に伴って増加した磁歪量を発現する。多結晶構造の磁歪材料における配向性向上とは、複数の結晶粒が同一方位に揃っているということを意味する。本発明の磁歪材料では、Sm添加により配向性が向上し、磁歪量の増大効果がもたらされると考えられる。この効果は、単一結晶粒を有する単結晶のほうが顕著に表れると予想でき、単結晶構造の磁歪材料であってもSm添加により顕著な磁歪量増大が予測できる。
【実施例
【0033】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1~実施例13)
上述のように、FeGaの2元系ターゲットおよびFeSmの2元系ターゲットを配置した対向ターゲットスパッタ装置を使用して、6mmx20mmx150μmのSiからなる基板102上に、FeGaSm系合金を堆積させて薄膜形態の磁歪材料101(6mmx20mmx(250±50)nm)を得た。磁歪材料のその他の製造条件は以下に示す通りである。
【0035】
ターゲットとして、Fe100-xGax(xはGaの原子%(at%)であり、x=20または30)合金およびFe90Sm10合金(Feが90at%、Smが10at%)を用いた。ベース圧力は5Pa-4以下で、Arガスを流量15sccmで供給することによってガス圧0.5Paとした。出力電力を50~300Wの範囲で適宜選択し、また、スパッタ時のガス圧を適宜選択してGaおよびSm組成を調整して種々の磁歪材料を得た。
【0036】
<実施例1>
上述のようにして得た磁歪材料の組成は、Fe75.6at%・Ga19.1at%・Sm5.3at%であった。尚、この組成は、基板102の重心近傍の磁歪材料の部分において、電子線マイクロアナライザ(EPMA)により3点の点分析を行い、3点の各種含有率の平均値として算出した。
【0037】
得られた磁歪材料の磁歪量として、基板102及び磁歪材料101の主面長手方向に対して磁場を印加した際の寸法変化量を上述の光てこ法により測定した。磁歪材料の組成および磁歪量の結果を図3の表1に示す。尚、上述の組成は、便宜的に"Fe75.6Ga19.1Sm5.3at%"と表記し、磁歪量は後述の比較例1の磁歪材料との相対比として表記している。
【0038】
<実施例2~実施例13>
出力電力を50~300Wの範囲で適宜選択し、また、スパッタ時のガス圧を適宜選択して、実施例1と同様にして、種々の磁歪材料を堆積させ、その組成および磁歪量を測定した。これらの結果を、表1に示す。
【0039】
(比較例1および2)
FeGaの2元系ターゲットを配置した通常のスパッタ装置(即ち、ターゲットと基板とが対向するタイプ)を用いた以外は実施例1と実質的に同様にして、磁歪材料を得た。実施例1と同様に、得られた磁歪材料の組成および磁歪量を同様に測定した。これらの結果を、表1に示す。
【0040】
(比較例3および4)
FeGaの2元系ターゲットを対向するように配置した対向ターゲットスパッタ装置を用いた以外は比較例1と同様にして磁歪材料を得た。得られた磁歪材料の組成および磁歪量を同様に測定した。これらの結果を、表1に示す。
【0041】
(比較例5および6)
実施例1と同様に、FeGaの2元系ターゲットおよびFeSmの2元系ターゲットを配置した対向ターゲットスパッタ装置を使用して磁歪材料を得た(但し、得られた磁歪材料の組成は、実施例1と比較して大きく異なり、本発明の範囲外である)。実施例1と同様に、得られた磁歪材料の組成および磁歪量を同様に測定した。これらの結果を、表1に示す。
【0042】
図3の表1において、比較例1の磁歪量に対する磁歪量の比を「比較例1の磁歪量に対する磁歪量の比」として相対評価で示す。この相対評価が1.5に満たない場合の評価を×とし、1.5以上である場合(即ち、向上した磁歪量を発現する場合)の評価を〇としている。
【0043】
また、得られた磁歪材料のGa含有率とSm含有率との関係における評価を図4のグラフに示す。図示したグラフから分かるように、評価が〇である点(x,y)は、3本の直線:y=0.33x-0.67、y=1.5x-24およびy=-0.25x+7.5によって囲まれた領域内部またはその線上に位置する。
【0044】
尚、比較例5については、GaおよびSmの含有量が少なく、十分な磁歪量向上効果が得られなかったと考えられる。また、比較例6については、GaとSmの合計含有率が30at%に近くなり、不規則bcc相から規則相(D03、L12)へと結晶構造が変化することによる影響が大きく、十分な磁歪量向上効果が得られなかったと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の磁歪材料は、堆積物の磁歪量を向上させることで、応力センサの実用的な小型化を実現する磁歪材料の提供が可能となり、それ故、応力センサの実用的な小型化に寄与することで様々な用途展開に積極的に適用することができる。特に、対向ターゲット式スパッタを用いて堆積させた薄膜板形状の磁歪材料においてFeGaSmの3元系合金の組成を所定範囲とすることによって、多結晶の薄膜形態の堆積物を、向上した磁歪量を発現できる磁歪材料として得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
101…磁歪材用
102…基板
201…ターゲットボックス
202,203…ターゲット
204…基板ホルダ
図1
図2
図3
図4