(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】垂直共振器型発光素子
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20240719BHJP
H01S 5/343 20060101ALI20240719BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H01S5/183
H01S5/343 610
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2020102539
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉本 大
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-129385(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0104315(US,A1)
【文献】特開2019-135748(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0123257(KR,A)
【文献】特開2000-058909(JP,A)
【文献】特開2020-064994(JP,A)
【文献】特許第3940438(JP,B1)
【文献】国際公開第2017/038448(WO,A1)
【文献】特開2004-179365(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0127442(US,A1)
【文献】特表2012-531733(JP,A)
【文献】特開2012-124321(JP,A)
【文献】特開2004-079896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 33/00 - 33/64
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウム系半導体の基板と、
前記基板上に形成された窒化物半導体よりなる第1の多層膜反射鏡と、
前記第1の多層膜反射鏡上に形成された第1の導電型を有する窒化物半導体よりなる第1の半導体層、前記第1の半導体層上に形成された窒化物半導体よりなる活性層、及び前記活性層上に形成されかつ前記第1の導電型とは反対の第2の導電型を有する窒化物半導体よりなる第2の半導体層を含む半導体構造層と、
前記第2の半導体層の上面に形成され、前記第2の半導体層の1の領域において
前記第2の半導体層に電気的に接触しており且つ、前記1の領域以外の前記1の領域を囲繞する他の領域において前記第2の半導体層と絶縁されている透光性電極層と、
前記他の領域の上方の前記透光性電極層の上面に形成されている金属導電体層と、
前記透光性電極層上に前記1の領域を覆うように形成され、前記第1の多層膜反射鏡との間で共振器を構成する第2の多層膜反射鏡と、
前記第2の半導体層上の前記1の領域を囲繞する他の領域において前記第2の半導体層と前記透光性電極層との間に配置され、前記第2の半導体層と前記透光性電極層とを絶縁する透光性絶縁体層と、を有し、
前記半導体構造層の上面の、前記他の領域には段差が形成されており、
前記金属導電体層は、前記段差上において前記透光性電極層を覆うように形成されており、
前記透光性絶縁体層上面から前記1の領域における前記第2の半導体層上面に亘って平坦性を有していることを特徴とする垂直共振器型発光素子。
【請求項2】
前記段差は、前記第2の多層膜反射鏡の外側に形成され、前記半導体構造層の中心軸に対して傾斜を有することを特徴とする請求項1に記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項3】
前記段差は、前記半導体構造層の上面の前記1の領域を囲繞する領域に当該上面から前記活性層を貫通する1又は複数の凹部を含む1の凹構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項4】
前記金属導電体層は、前記1又は複数の凹部の内面を覆うように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項5】
前記段差は、前記半導体構造層の上面に対する角度が45°以下の傾斜面を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項6】
前記他の領域における前記第1の多層膜反射鏡と前記第2の多層膜反射鏡との間で形成される共振器内における等価的な屈折率は、前記1の領域における前記第1の多層膜反射鏡と前記第2の多層膜反射鏡の間で形成される共振器内における等価的な屈折率よりも低いことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項7】
前記第1の半導体層は上面にメサ形状の構造を有し、前記メサ形状の構造上に前記活性層及び前記第2の半導体層が積層され、
前記垂直共振器型発光素子は、前記メサ形状の構造の周囲に存在する前記第1の半導体層の上面に前記第1の半導体層と電気的に接触している電極層を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項8】
前記基板は前記第1の導電型を備え、
前記垂直共振器型発光素子は、前記基板の前記半導体構造層とは反対側の面であって、かつ、前記基板の上面に垂直な方向から見て前記1の領域に対応する領域を除く箇所に配置されている電極層を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項9】
窒化ガリウム系半導体の基板と、
前記基板上に形成された窒化物半導体よりなる第1の多層膜反射鏡と、
前記第1の多層膜反射鏡上に形成された第1の導電型を有する窒化物半導体よりなる第1の半導体層、前記第1の半導体層上に形成された窒化物半導体よりなる活性層、及び前記活性層上に形成されかつ前記第1の導電型とは反対の第2の導電型を有する窒化物半導体よりなる第2の半導体層を含む半導体構造層と、
前記第2の半導体層の上面に形成され、前記第2の半導体層の1の領域において前記第2の半導体層に電気的に接触しており且つ、前記1の領域以外の前記1の領域を囲繞する他の領域において前記第2の半導体層と絶縁されている透光性電極層と、
前記他の領域の上方の前記透光性電極層の上面に形成されている金属導電体層と、
前記透光性電極層上に前記1の領域を覆うように形成され、前記第1の多層膜反射鏡との間で共振器を構成する第2の多層膜反射鏡と、
前記第2の半導体層上の前記他の領域において前記第2の半導体層と前記透光性電極層との間に配置されている透光性絶縁体層と、を有し、
前記透光性絶縁
体層は、前記第2の多層膜反射鏡の外側に段差を有する内縁を有し、
前記第2の半導体層は、前記他の領域において、前記第2の半導体層の表面を部分的に除去して形成されかつ当該除去した後の前記第2の半導体層の表面に前記第2の半導体層に前記第2の導電型を付加している不純物が不活性化された不活性化領域を備え、
前記金属導電体層は、前記透光性絶縁
体層の内縁を前記透光性電極層を介して覆うように形成されていることを特徴とする垂直共振器型発光素子。
【請求項10】
前記透光性絶縁
体層の内縁は、前記半導体構造層の上面に対する角度が45°以下の傾斜面を有することを特徴とする請求項9に記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項11】
前記1の領域の外側の領域における前記第1の多層膜反射鏡と前記第2の多層膜反射鏡との間で形成される共振器内における等価的な屈折率は、前記1の領域における前記第1の多層膜反射鏡と前記第2の多層膜反射鏡の間で形成される共振器内における等価的な屈折率よりも低いことを特徴とする請求項9又は10に記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項12】
前記第1の半導体層は上面にメサ形状の構造を有し、前記メサ形状の構造上に前記活性層及び前記第2の半導体層が積層され、
前記垂直共振器型発光素子は、前記メサ形状の構造の周囲に存在する前記第1の半導体層の上面に前記第1の半導体層と電気的に接触している電極層を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項13】
前記基板は前記第1の導電型を備え、
前記垂直共振器型発光素子は、前記基板の前記半導体構造層とは反対側の面であって、かつ、前記基板の上面に垂直な方向から見て前記1の領域に対応する領域を除く箇所に配置されている電極層を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の垂直共振器型発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:vertical cavity surface emitting laser)などの垂直共振器型発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体レーザの1つとして、電圧の印加によって光を放出する半導体層と、当該半導体層を挟んで互いに対向する多層膜反射鏡と、を有する垂直共振器型の半導体面発光レーザ(以下、単に面発光レーザとも称する)が知られている。例えば、特許文献1には、窒化物半導体を用いた面発光レーザが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、面発光レーザなどの垂直共振器型発光素子には、半導体層上面に発光領域を画定する絶縁膜が形成され、当該絶縁膜上に半導体層と電気的に接触するITO等の透光性の電極膜が形成されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、半導体層の発光領域に対応する領域に開口が形成され、当該発光領域を囲むように形成された絶縁膜上にITOの透光性電極膜が形成されている垂直共振器型発光素子が開示されている。特許文献1の垂直共振器型発光素子においては、透光性電極膜は、絶縁膜の開口端部において段差が生じるように形成されている。
【0006】
しかし、上記のように透光性電極膜に段差が生じていると、長期通電中に透光性電極の当該段差部分においてクラック等の異常が発生し、駆動電圧の上昇やショート/オープンの不具合が発生する場合がある。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、長期通電中において駆動電圧の上昇を抑制し、長寿命な垂直共振器型発光素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による垂直共振器型発光素子は、窒化ガリウム系半導体の基板と、前記基板上に形成された窒化物半導体よりなる第1の多層膜反射鏡と、前記第1の多層膜反射鏡上に形成された第1の導電型を有する窒化物半導体よりなる第1の半導体層、前記第1の半導体層上に形成された窒化物半導体よりなる活性層、及び前記活性層上に形成されかつ前記第1の導電型とは反対の第2の導電型を有する窒化物半導体よりなる第2の半導体層を含む半導体構造層と、前記第2の半導体層の上面に形成され、前記第2の半導体層の1の領域においてに電気的に接触しており且つ、前記第1の領域以外の前記第1の領域を囲繞する他の領域において前記第2の半導体層と絶縁されている透光性電極層と、前記他の領域の上方の前記透光性電極層の上面に形成されている金属導電体層と、前記透光性電極層上に前記1の領域を覆うように形成され、前記第1の多層膜反射鏡との間で共振器を構成する第2の多層膜反射鏡と、を有し、前記半導体構造層の上面の、前記他の領域には段差が形成されており、前記金属導電体層は、前記段差上において前記透光性電極層を覆うように形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明による垂直共振器型発光素子は、窒化ガリウム系半導体の基板と、前記基板上に形成された窒化物半導体よりなる第1の多層膜反射鏡と、前記第1の多層膜反射鏡上に形成された第1の導電型を有する窒化物半導体よりなる第1の半導体層、前記第1の半導体層上に形成された窒化物半導体よりなる活性層、及び前記活性層上に形成されかつ前記第1の導電型とは反対の第2の導電型を有する窒化物半導体よりなる第2の半導体層を含む半導体構造層と、前記第2の半導体層の上面に形成され、前記第2の半導体層の1の領域を囲繞する領域に形成されている透光性絶縁体層と、前記第2の半導体層の上面及び前記透光性絶縁層の上面に亘って形成され、前記1の領域において前記第2の半導体層に接触している透光性電極層と、前記他の領域の上方の前記透光性電極層の上面に形成されている金属導電体層と、前記透光性電極層上に前記1の領域を覆うように形成され、前記第1の多層膜反射鏡との間で共振器を構成する第2の多層膜反射鏡と、を有し、前記金属導電体層は、透光性絶縁層の縁を前記透光性電極層を介して覆うように形成されていることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】実施例1の変形例1の面発光レーザの断面図である。
【
図5】実施例1の変形例2の面発光レーザの断面図である。
【
図10】実施例1の変形例3の面発光レーザの断面図である。
【
図11】実施例1の変形例4の面発光レーザの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。以下の説明においては、半導体面発光レーザ素子を例に説明する(半導体レーザ)が、本発明は、面発光レーザのみならず、垂直共振器型発光ダイオードなど、種々の垂直共振器型発光素子に適用することができる。
【実施例1】
【0012】
図1は、実施例1に係る垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser、以下、単に面発光レーザとも称する)10の斜視図である。
【0013】
基板11は、窒化ガリウム系半導体基板、例えばGaN基板である。基板11は、例えば、上面形状が矩形の基板である。基板11の上には、基板11の上に成長させられた半導体層からなる第1の多層膜反射鏡13が形成されている。
【0014】
第1の多層膜反射鏡13は、AlInNの組成を有する低屈折率半導体膜と、GaN組成を有し低屈折率半導体膜よりも屈折率が高い高屈折率半導体膜とが交互に積層された半導体多層膜反射鏡である。言い換えれば、第1の多層膜反射鏡13は、半導体材料からなる分布フラッグ反射器(DBR:Distributed Bragg Reflector)である。例えば、基板11の上面には、GaN組成を有するバッファ層が設けられ、当該バッファ層上に上記高屈折率半導体膜と低屈折半導体膜とを交互に成膜されることで第1の多層膜反射鏡13が形成される。
【0015】
尚、基板11の上面、すなわちGaN組成を有するバッファ層が設けられている面はC面又はC面から0.5°以内にオフした面であることが好ましい。後述する半導体構造層15の結晶性などが良好となるためである。
【0016】
半導体構造層15は、第1の多層膜反射鏡13上に形成された複数の半導体層からなる積層構造体である。半導体構造層15は、第1の多層膜反射鏡13上に形成された第1の導電型であるn型半導体層(第1の半導体層)17と、n型半導体層17上に形成された発光層(又は活性層)19と、活性層19上に形成された第2の導電型であるp型半導体層(第2の半導体層)21と、を有する。
【0017】
n型半導体層17は、第1の多層膜反射鏡13上に形成された半導体層である。n型半導体層17は、GaN組成を有し、n型不純物としてSiがドーピングされている半導体層である。n型半導体層17は、角柱状の下部17Aとその上に配された円柱状の上部17Bとを有する。具体的には、例えば、n型半導体層17は、角柱状の下部17Aの上面から突出した円柱状の上部17Bを有している。言い換えれば、n型半導体層17は、上部17Bを含むメサ形状の構造を有する。
【0018】
活性層19は、n型半導体層17の上部17B上に形成されており、InGaN組成を有する井戸層及びGaN組成を有する障壁層を含む量子井戸構造を有する層である。面発光レーザ10においては、活性層19において光が発生する。
【0019】
p型半導体層21は、活性層19上に形成されたGaN組成を有する半導体層である。p型半導体層21には、p型の不純物としてMgがドーピングされている。すなわち、半導体構造層15においては、n型半導体層17は上面にメサ形状の構造が形成されており、当該メサ形状の構造上に活性層19及びp型半導体層21が積層されている。
【0020】
電極層としてのn電極23は、n型半導体層17の下部17Aの上面に設けられ、n型半導体層17と電気的に接続されている金属電極である。n電極23は、n型半導体層17の上部17Bを囲むように環状に形成されている。言い換えれば、n型半導体層17のメサ形状の構造の周囲に存在する上面にn型半導体層17と電気的に接触しているn電極23が形成されている。なお、n電極は23、n型半導体層17の上面に層状に形成されている、いわゆる電極層であってもよい。
【0021】
透光性絶縁体層としての絶縁層25は、p型半導体層21上に形成されている絶縁体からなる層である。絶縁層25は、例えばSiO2等のp型半導体層21を形成する材料よりも低い屈折率を有する物質によって形成されている。絶縁層25は、p型半導体層21上において環状に形成されており、中央部分にp型半導体層21を露出する開口部(図示せず)を有している。
【0022】
金属導電体層としてのp電極27は、絶縁層25上に形成された金属電極である。p電極27は、絶縁層25の上記開口部から露出したp型半導体層21の上面に、ITO又はIZOなどの金属酸化膜からなる透光電極層31(
図3に後述)を介して電気的に接続されている。
【0023】
第2の多層膜反射鏡29は、SiO2からなる低屈折率誘電体膜と、Nb2O5からなり低屈折率誘電体膜よりも屈折率が高い高屈折率誘電体膜とが交互に積層された誘電体多層膜反射鏡である。言い換えれば、第2の多層膜反射鏡29は、誘電体材料からなる分布フラッグ反射器(DBR:Distributed Bragg Reflector)である。
【0024】
図2は、面発光レーザ10の上面図である。上述したように、面発光レーザ10は、矩形の上面形状を有する基板11上に形成されたn型半導体層17、上面形状が円形の活性層19及びp型半導体層21を含む半導体構造層15を有している(
図1参照)。p型半導体層21上には、絶縁層25及びp電極27が形成されている。p電極27上には、第2の多層膜反射鏡29が形成されている。
【0025】
絶縁層25は、上述した絶縁層25のp型半導体層21を露出する円形の開口部である開口部25Hを有している。
図2に示すように、開口部25Hは、面発光レーザ10の上方からみて絶縁層25の中央部に形成されており、面発光レーザ10の上方からみて第2の多層膜反射鏡29に覆われている。言い換えれば、開口部25Hは、p型半導体層21の上面において第2の多層膜反射鏡29に覆われている。さらに言い換えれば、開口部25Hは、絶縁層25の第2の多層膜反射鏡29の下面と対向する領域に形成されている。
【0026】
p電極27は、面発光レーザ10の上方からみて絶縁層25の中央部に形成されており、開口部25Hを囲む開口部27Hを有している。すなわち、開口部27Hは、開口部25Hよりも大きい開口である。例えば、開口部27Hの形状は、開口部25Hの形状と同心円の円形形状である。
【0027】
図2に示すように、p型半導体層21の上面、すなわち半導体構造層15の上面には、円環状の段差15Sが形成されている。段差15Sは、開口部25H及び開口部27Hの外側の領域に形成されている。すなわち、段差15Sは、半導体構造層15の面内方向に対して垂直な方向から見て環状に設けられている段差である。
【0028】
本実施例においては、段差15Sは、p型半導体層21の上面において第2の多層膜反射鏡29の外側に形成されている。
【0029】
図3は、面発光レーザ10の
図2の3-3線に沿った断面図である。上述のように、面発光レーザ10は、GaN基板である基板11を有し、基板11上に第1の多層膜反射鏡13が形成されている。尚、基板11の下面には、Nb
2O
5とSiO
2を積層させたARコートが施されていてもよい。
【0030】
第1の多層膜反射鏡13上には、半導体構造層15が形成されている。半導体構造層15は、n型半導体層17、活性層19及びp型半導体層21がこの順に形成されてなる積層体である。
【0031】
半導体構造層15に形成されている段差15Sは、p型半導体層21の上面の中央部において突出している突出部21Pを囲むように形成されている。
【0032】
絶縁層25は、p型半導体層21の上面を覆うように形成されている。絶縁層25は、上述のようにp型半導体層21よりも低い屈折率を有している材料からなっている。絶縁層25は、突出部21Pを露出する開口部25Hを有している。例えば、
図2に示すように開口部25Hは円形である。例えば、開口部25Hと突出部21Pとは同様の形状を有しており、開口部25Hの内側面と突出部21Pの外側面は接している。また、段差15Sの内側の領域において、絶縁層25の上面と突出部21Pの上面とが同一の高さとなるように形成されている。すなわち、段差15Sの内側の領域において絶縁層25の上面及び突出部21Pの上面は平坦性を有する。なお、ここでいう同一の高さとは、完全に同一の高さではなく、活性層19からの放出光、すなわち第1の多層膜反射鏡13および第2の多層膜反射鏡29の間に生成される定在波(レーザ光)にとって不感となる範囲の凹凸や段差を含んでいてもよい。
【0033】
透光電極層31は、絶縁層25及び絶縁層25の開口部25Hから露出している突出部21Pを覆うように形成された透光性を有する導電体からなる層である。すなわち、透光電極層31は、p型半導体層21の上面の開口部25Hによって露出している領域において、p型半導体層21と電気的に接触している。透光電極層31は、例えば、ITO又はIZO等の活性層19からの出射光に対して透光性を有する金属酸化物によって形成されている。また、透光電極層31は、下面側の絶縁層25の上面及び突出部21Pの上面の形状を転写するように形成されている。すなわち、透光電極層31は、段差15Sに該当する箇所に段差を有している。
【0034】
p電極27は、上述したように金属電極であり、透光電極層31を覆うように形成されている。すなわち、p電極27は、透光電極層31と電気的に接触している。従って、p電極27は、p型半導体層21の上面の開口部25Hによって露出している領域において、透光電極層31を介してp型半導体層21と電気的に接触又は接続している。p電極27は、中央部において、透光電極層31を露出する開口部27Hを有する。開口部27Hは、開口部25Hよりも幅(または径)が大きい開口である。また、
図3に示すように、p電極27は、段差15Sを覆うように形成される。
【0035】
面発光レーザ10において、第1の多層膜反射鏡13は、第2の多層膜反射鏡29よりもわずかに低い反射率を有する。従って、第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29との間で共振した光は、その一部が第1の多層膜反射鏡13及び基板11を透過し、外部に取り出される。
【0036】
ここで、面発光レーザ10の動作について説明する。面発光レーザ10において、n電極23及びp電極27との間に電圧が印加されると、図中太線二点鎖線に示す様に、半導体構造層15内に電流が流れ、活性層19から光が放出される。活性層19から放出された光は、第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29との間において反射を繰り返し、共振状態に至る(レーザ発振する)。
【0037】
面発光レーザ10においては、p型半導体層21には、開口部25Hによって露出している部分のみから電流が注入される。また、p型半導体層21は非常に薄いため、p型半導体層21内では面内方向、すなわち半導体構造層15の面内に沿った方向には電流は拡散しない。従って、面発光レーザ10においては、活性層19のうち、開口部25Hの直下の領域にのみ電流が供給されて、当該領域からのみ光が放出される。すなわち、面発光レーザ10において、開口部25Hが活性層19における電流の供給範囲を制限する電流狭窄構造となっている。
【0038】
上述のように、本実施例においては、第1の多層膜反射鏡13は、第2の多層膜反射鏡29よりもわずかに低い反射率を有する。従って、第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29との間で共振した光は、その一部が第1の多層膜反射鏡13及び基板11を透過し、外部に取り出される。このようにして、面発光レーザ10は、基板11の下面から、基板11の下面及び半導体構造層15の各層の面内方向に対して垂直な方向に光を出射する。
【0039】
尚、半導体構造層15のp型半導体層21の突出部21P及び絶縁層25の開口部25Hは、活性層19における発光領域の中心である発光中心を画定し、共振器OCの中心軸(発光中心軸)AXを画定する。共振器OCの中心軸AXは、p型半導体層21の突出部21Pの中心を通り、半導体構造層15の面内方向に対して垂直な方向に沿って延びる。
【0040】
尚、活性層19の発光領域とは、例えば、活性層19内における所定の強度以上の光が放出される所定の幅を有する領域であり、その中心が発光中心である。また、例えば、活性層19の発光領域とは、活性層19内において所定の密度以上の電流が注入される領域であり、その中心が発光中心である。また、当該発光中心を通る基板11の上面又は半導体構造層15の各層の面内方向に対して垂直な直線が中心軸AXである。発光中心軸AXは、第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29とによって構成される共振器OCの共振器長方向に沿って延びる直線である。また、中心軸AXは、面発光レーザ10から出射されるレーザ光の光軸に対応する。
【0041】
ここで、面発光レーザ10における第1の多層膜反射鏡13、半導体構造層15及び第2の多層膜反射鏡29各層の例示的な構成について説明する。本実施例においては、第1の多層膜反射鏡13は、基板11の上面に形成された1umのGaN下地層、及び42ペアのn-GaN層(45nm)及びAlInN層(50nm)からなる。
【0042】
n型半導体層17は、1580nmの層厚のSiがドープされたn-GaN層である。活性層19は、4nmのInGaN層及び5nmのGaN層が4ペア積層された多重量子井戸構造の活性層からなり、活性層19から発せられる発光のスペクトルのピークは約440nmとなるように調整されている。活性層19上には、MgドープされたAlGaNの電子障壁層が形成され、その上に50nmのp-GaN層からなるp型半導体層21が形成されている。第2の多層膜反射鏡29は、45nmのNb2O5及び76nmのSiO2を10.5ペア積層したものである。この場合の共振波長は、440nmであった。
【0043】
また、p型半導体層21は、突出部21Pにおいて50nmの層厚を有し、当該突出部21Pの外周端から段差15Sまでの領域において30nmの層厚を有する。また、SiO2からなる絶縁層25は20nmの層厚を有する、すなわち、絶縁層25の突出部21Pの側面と接している内周端から段差15Sまでの領域において、絶縁層25の上面は、p型半導体層21の突出部21Pの上面と同一の高さ位置に配置されるように構成されている。
【0044】
また、半導体構造層15上に形成される透光電極層31は、20nmのITOからなる層であり、透光電極層31及びp電極27の上に40nmのNb2O5のスペーサ層を挟んで第2の多層膜反射鏡29が形成されている。p電極27は、Ti(100nm)、Pt(100nm)、Au(500nm)をこの順で積層したものである。
【0045】
尚、段差15Sの部分におけるp型半導体層21、絶縁層25、透光電極層31及びp電極27は、面発光レーザ10の中心軸AXに対して傾斜を有するような段差であることが好ましい。また、当該傾斜の傾斜角度は、中心軸AXに対して45°以上であることが好ましい。言い換えれば、当該傾斜角度は、半導体構造層15の上面に対して45°以下であることが好ましい。当該段差に傾斜を設けることにより、長期通電中における透光電極層31の耐クラック性等の長期信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0046】
また、基板11の裏面は、研磨面となっており、当該研磨面にNb2O5及びSiO2の二層のARコートが形成されている。
【0047】
尚、上記した本実施例の面発光レーザ10の構成は一例に過ぎない。
【0048】
以下、面発光レーザ10内部の光学的な特性について説明する。上述のように、面発光レーザ10において、絶縁層25は、p型半導体層21よりも低い屈折率を有する。また、第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29との間における他の層の層厚は、面内のいずれの箇所においても同じ層内であれば同一である。
【0049】
従って、面発光レーザ10の第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29との間で形成される共振器OC内における等価的な屈折率(第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29との間の光学的距離であり、共振波長に対応する)は、p型半導体層21と絶縁層25との屈折率の差によって、上面形状が開口部25Hによって画定される円柱状の1の領域としての中央領域CAとその周りの筒状の他の領域としての周辺領域PAとで異なる。
【0050】
具体的には、第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29との間において、周辺領域PAの等価屈折率は中央領域CAの等価屈折率よりも低い、すなわち、中央領域CAにおける等価的な共振波長は、周辺領域PAにおける等価的な共振波長よりも長い。尚、上述のように、活性層19において光が放出されるのは、凸部21Pの直下の領域である。すなわち、活性層19において光が放出される発光領域は、活性層19のうち中央領域CAと重なる部分である。
【0051】
このように、面発光レーザ10においては、活性層19の発光領域を含む中央領域CAと、中央領域CAを囲みかつ中央領域CAよりも屈折率が低い周辺領域PAとが形成されている。これによって、中央領域CA内の定在波が周辺領域PAに発散(放射)することによる光損失が抑制される。すなわち、中央領域CAに多くの光が留まり、またその状態でレーザ光が外部に取り出される。従って、多くの光が共振器OCの発光中心軸AXの周辺の中央領域CAに集中し、高出力かつ高密度なレーザ光を生成及び出射することができる。
【0052】
上述のように、実施例1の面発光レーザ10においては、透光電極層31に段差が生じるように形成されている。言い換えれば、段差15Sによって透光電極層31に段差が形成されている。その後、p電極27が、当該段差を覆うように形成されている。
【0053】
上述のように、実施例1の面発光レーザ10は、窒化ガリウム系半導体の基板11と、基板11上に形成された窒化物半導体よりなる第1の多層膜反射鏡13と、第1の多層膜反射鏡13上に形成された第1の導電型を有する窒化物半導体よりなるn型半導体層17、n型半導体層17上に形成された窒化物半導体よりなる活性層19、及び活性層19上に形成されかつn型導電型とは反対のp型導電型を有する窒化物半導体よりなるp型半導体層21を含む半導体構造層15と、p型半導体層21の上面に形成され、p型半導体層21の中央領域CAにおいてに電気的に接触しており且つ、中央領域CA以外の領域を囲む周辺領域PAにおいてp型半導体層21と絶縁されている透光電極層31と、周辺領域PAの上方の透光電極層31の上面に形成されているp電極27と、透光電極層31上に中央領域CAを覆うように形成され、第1の多層膜反射鏡13との間で共振器OCを構成する第2の多層膜反射鏡29と、を有し、半導体構造層15の上面の、周辺領域PAには段差15Sが形成されており、p電極27は、段差15S上において透光電極層31を覆うように形成されている。
【0054】
また、段差15Sは、半導体構造層15の上面に対する角度が45°以下の傾斜面を有する。また、n型半導体層17は上面にメサ形状の構造を有し、メサ形状の構造上に活性層19及びp型半導体層が積層され、面発光レーザ10は、メサ形状の構造の周囲に存在するn型半導体層17の上面にn型半導体層17と電気的に接触しているn電極23を有する。
【0055】
図4は、本実施例1の変形例1の面発光レーザ10Aの断面図を示す。
【0056】
図3においては、段差15Sを形成するために、p型半導体層21を突出部21Pを囲む環状の領域(上面から見て周辺領域PAに相当)をエッチングし、当該領域と段差15Sより外側であってp型半導体層21上面に絶縁層25を形成する形態としている。しかし、その代わりに、
図4に示すように、p型半導体層21を突出部21P以外の全面をエッチングし、当該領域に絶縁層25を形成し、当該絶縁層25に段差25Sを形成するようにしてもよい。
【0057】
また、
図5に示すように、絶縁層25は、段差(図中段差25AS)を形成するための第1の絶縁層25Aと、p型半導体層21を突出部21Pを囲む環状の領域及び当該第1の段差25Aの上面にさらに絶縁層25を追加的に積層してもよい。尚、段差25ASを形成するための絶縁層25Aは、絶縁層25とは他の材料からなる絶縁層としてもよい。
【0058】
尚、透光性電極に段差を生じさせないように形成された場合、半導体層の電流経路の静電容量が大きくなり、変調速度が低下する可能性がある。また、静電容量が大きくなると、駆動中の半導体層の発熱量が大きくなり、当該半導体層が溶融してショート等の不具合が発生する場合がある。
【0059】
すなわち、この段差を形成してp電極27と半導体層21の表面との間の距離を大きくすることによって、面発光レーザ10の駆動時にp電極27と半導体層21の表面との間の静電容量を小さくすることができ、変調速度の低下を防止することが可能となる。また、この静電容量の低下により、駆動中の発熱量を低減することが可能となり、半導体構造層15の溶融等の不具合の発生も防止することが可能となる。
【0060】
また、段差15S上の透光電極層31は、金属層であるp電極27で覆われている。これにより、長期通電中の透光電極層31の当該段差部分においてクラック等の異常の発生を防止することが可能となる。また、仮に長期通電中に透光電極層31の段差部分にクラックが発生したとしても、p電極27が段差を覆うように形成されている故、p電極27とp型半導体層21との導通は保たれる。よって、透光電極層31の段差部分にクラックが発生したでもオープン等の異常の発生を防止することが可能となる。
【0061】
従って、本実施例1によれば、長期通電中の駆動電圧の上昇やショート/オープンの不具合が発生することを防止することができ、長寿命な垂直共振器型の面発光レーザ10を提供することが可能となる。
【実施例2】
【0062】
以下、本発明の実施例2である面発光レーザ20について説明する。
【0063】
図6は、実施例2の面発光レーザ20の上面図を示す。また、
図7は、面発光レーザ20の
図6の5-5線に沿った断面図である。
【0064】
面発光レーザ20は、実施例1の面発光レーザ10と基本的に同様の構成であり、同様の外観を有する。しかし、面発光レーザ20は、半導体構造層15の中央領域CAの外側に段差が設けられておらず、中央領域CAの外側に形成された絶縁層25によって段差が形成されている点において、面発光レーザ10とは異なる。また、p型半導体層21の突出部21Pの外側において、p型不純物が不活性化された不活性化領域層21Aが設けられている点において、面発光レーザ10とは異なる。
【0065】
不活性化領域層21Aは、例えば、p型半導体層21の突出部21Pの領域を残してドライエッチングを行うことで、形成することができる。p型半導体層21などの不純物を含む半導体は、ドライエッチングを行うことによって、その表面が粗面化される。これによって、エッチングされた部分におけるp型の不純物が不活性化され、不活性化領域層21Aが形成される。また、不活性化領域層21Aにおいては、ドライエッチングによって、p型半導体層21が部分的に除去される。言い換えれば、不活性化領域層21Aは、不活性化領域層21Aのp型半導体層21を露出する円形の開口部である開口部21Hを有している。尚、不活性化領域層21Aにおいてドライエッチングによって、部分的に除去されるエッチング量は、例えば、4nmである。
【0066】
また、p型半導体層21上面上の中央領域CAの外側において、透光性絶縁体層としての絶縁層25が形成されている。また、絶縁層25は、絶縁層25の内縁部に段差25Sが形成されている。透光電極層31及びp電極27は、段差25Sに該当する部分に段差が生じるように形成されている。すなわち、p電極27は、段差25Sによって生ずる透光電極層31の段差部分を覆うように形成されている。さらに言い換えれば、p電極27は、透光性絶縁層25の内縁、すなわち段差25Sの部分を透光電極層31を介して覆うように形成されている。
【0067】
上述した実施例1と同様に、段差25Sを形成してp電極23と半導体層21の表面との間の距離を大きくすることで、面発光レーザ20の駆動時にp電極27と半導体層21との間の静電容量を小さくすることができ、変調速度の低下を防止することが可能となる。また、この静電容量の低下により、駆動中の発熱量を低減することが可能となり、半導体構造層15の溶融等の不具合の発生も防止することが可能となる。
【0068】
また、段差25Sの部分における透光電極層31及びp電極27は、面発光レーザ20の中心軸AXに対して傾斜を有するような段差であることが好ましい。また、段差25Sの部分における絶縁層25の傾斜角度は、中心軸AXに対して45°以上であることが好ましい。言い換えれば、当該傾斜角度は、半導体構造層15の上面に対して45°以下であることが好ましい。当該段差に傾斜を設けることにより、当該絶縁層25の段差25S上に成膜される透光性電極層の長期通電中における耐クラック性等の長期信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0069】
上述のように、実施例2の面発光レーザ20は、窒化ガリウム系半導体の基板11と、基板11上に形成された窒化物半導体よりなる第1の多層膜反射鏡13と、第1の多層膜反射鏡13上に形成されたn型の導電型を有する窒化物半導体よりなるn型半導体層17、n型半導体層17上に形成された窒化物半導体よりなる活性層19、及び活性層19上に形成されかつn型の導電型とは反対のp型の導電型を有する窒化物半導体よりなるp型半導体層21を含む半導体構造層15と、p型半導体層21の上面に形成され、p型半導体層21の中央領域CAを囲繞する領域に形成されている絶縁層25と、p型半導体層21の上面及び不活性化領域層21Aの上面に亘って形成され、中央領域CAにおいてp型半導体層21に接触している透光電極層31と、周辺領域PAの上方の透光電極層31の上面に形成されているp電極27と、透光電極層31上に中央領域CAを覆うように形成され、第1の多層膜反射鏡13との間で共振器OCを構成する第2の多層膜反射鏡29と、を有し、p電極27は、絶縁層25の内縁を透光電極層31を介して覆うように形成されている。
【0070】
また、不活性化領域層21Aは、p型半導体層21よりも高い電気抵抗を有する高抵抗領域として機能する。一方、エッチングが行われていない領域、すなわち不活性化領域層21Aが設けられていない領域であるp型半導体層21の突出部21Pは、低抵抗領域として機能する。
【0071】
p型半導体層21は、活性層19に注入される電流経路を狭窄する電流狭窄層として機能する。p型半導体層21の突出部21Pは、活性層19に電流が注入される電流注入領域として機能する。一方、p型半導体層21の不活性化領域層21Aは、活性層19への電流の注入が抑制される非電流注入領域として機能する。
【0072】
すなわち、面発光レーザ20においては、p型半導体層21には、開口部21Hによって露出している部分のみから電流が注入される。また、p型半導体層21は非常に薄いため、p型半導体層21内では面内方向、すなわち半導体構造層15の面内に沿った方向には電流はほとんど拡散しない。従って、面発光レーザ20においては、活性層19のうち、開口部21Hの直下の領域にのみ電流が供給されて、当該領域からのみ光が放出される。すなわち、面発光レーザ20において、開口部21Hが活性層19における電流の供給範囲を制限する電流狭窄構造となっている。
【0073】
従って、面発光レーザ20において、n電極23及びp電極27との間に電圧が印加されると、図中太線二点鎖線に示す様に、半導体構造層15内に電流が流れ、活性層19から光が放出される。活性層19から放出された光は、第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29との間において反射を繰り返し、共振状態に至る(レーザ発振する)。
【0074】
また、上述のように、p型半導体層21の中央領域CA(低抵抗領域)における層厚は、p型半導体層21の周辺領域PA(高抵抗領域)における層厚よりも大きい。
【0075】
従って、面発光レーザ20の第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29との間で形成される共振器OC内における等価的な屈折率(第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29との間の光学的距離であり、共振波長に対応する)は、p型半導体層21と絶縁層25との屈折率の差によって、上面形状が開口部21Hによって画定される円柱状の中央領域CAとその周りの筒状の周辺領域PAとで異なる。
【0076】
具体的には、第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29との間において、周辺領域PAの等価屈折率は中央領域CAの等価屈折率よりも低い、すなわち、中央領域CAにおける等価的な共振波長は、周辺領域PAにおける等価的な共振波長よりも長い。尚、上述のように、活性層19において光が放出されるのは、開口部21Hの直下の領域である。すなわち、活性層19において光が放出される発光領域は、活性層19のうち中央領域CAと重なる部分である。
【0077】
尚、本実施例2においては、電流狭窄構造を形成する高抵抗領域層がドライエッチングによってp型半導体層21が不活性化された不活性化領域層21Aである場合について説明した。しかし、高抵抗領域層の構成はこれに限定されない。例えば、高抵抗領域層として、p型半導体層21にイオン注入を行い高抵抗化処理が施されたGaN層の表面層であってもよい。また、例えば、高抵抗領域層は、SiO2等の絶縁層であってもよい。
【0078】
上述のように、実施例2によれば、段差25S上の透光電極層31は、金属層であるp電極27で覆われている。これにより、長期通電中の透光電極層31の当該段差部分においてクラック等の異常の発生を防止することが可能となる。また、仮に長期通電中に透光電極層31の段差部分にクラックが発生したとしても、p電極27が段差を覆うように形成されている故、p電極27とp型半導体層21との導通は保たれる。よって、透光電極層31の段差部分にクラックが発生したでもオープン等の異常の発生を防止することが可能となる。
【0079】
従って、本実施例2によれば、長期通電中の駆動電圧の上昇やショート/オープンの不具合が発生することを防止することができ、長寿命な垂直共振器型の面発光レーザ20を提供することが可能となる。
【実施例3】
【0080】
以下、本発明の実施例3である面発光レーザ30について説明する。
【0081】
図8は、実施例3の面発光レーザ30の斜視図を示す。また、
図9は、面発光レーザ20を、上記実施例1に示したのと同様の断面で切断した断面図を示す。
【0082】
面発光レーザ30は、実施例1の面発光レーザ10と基本的に同様の構成であるが、半導体構造層15の中央領域CAの外側に円環状の溝15Gが形成されている点において、面発光レーザ10とは異なる。
【0083】
図9に示すように、p型半導体層21の上面、すなわち半導体構造層15の上面には、円環状の溝15Gが形成されている。溝15Gは、開口部25H及び開口部27Hの外側の領域に形成されている。すなわち、溝15Gは、半導体構造層15の面内方向に対して垂直な方向から見て環状に設けられている溝である。
【0084】
本実施例においては、溝15Gは、p型半導体層21の上面において第2の多層膜反射鏡29の外側に形成されている。すなわち、p型半導体層21の上面において、溝15Gが第2の多層膜反射鏡29が形成されている周辺領域PAから露出している。
【0085】
半導体構造層15に形成されている溝15Gは、p型半導体層21の上面の中央部において突出している突出部21Pを囲むように形成されており、p型半導体層21の上面から活性層19を貫通してn型半導体層17に至っている。
【0086】
このように、実施例3の面発光レーザ30においては、溝15Gが活性層19を貫通するように形成されている。言い換えれば、溝15Gによって活性層19に隙間が形成されている。
【0087】
絶縁層25は、p型半導体層21の上面及び溝15Gの内面を覆うように形成されている。絶縁層25は、上述のようにp型半導体層21よりも低い屈折率を有している材料からなっている。絶縁層25は、突出部21Pを露出せしめる開口部25Hを有している。例えば、
図8に示すように開口部25Hは円形である。例えば、開口部25Hと突出部21Pとは同様の形状を有しており、開口部25Hの内側面と突出部21Pの外側面は接している。
【0088】
上述のように、実施例3の面発光レーザ30においては、溝15Gが活性層19を貫通するように形成されている。言い換えれば、溝15Gによって活性層19に隙間が形成されている。この溝15Gは、半導体構造層15が形成された後に形成される。その後、絶縁層25が、透光電極層31、p電極27及び第2の多層膜反射鏡29が形成される前に形成される。
【0089】
従って、半導体構造層15が形成された後に、活性層19に至る溝15Gが形成されることで、活性層19の面内に沿った方向において空間又は隙間が形成される。この隙間によって、活性層19の形成時に活性層19の層内方向又は半導体構造層15の層面方向において発生した歪みが緩和される。
【0090】
具体的に言えば、活性層19はその形成時に量子井戸構造を形成するInGaNとGaNの格子定数の差によって結晶構造が歪んで圧電分極が生じて、ピエゾ電界が生ずる。このピエゾ電界の発生により、活性層19に注入される電子と正孔との再結合確率が低下し、これが内部量子効率が低くなる一因となる。
【0091】
面発光レーザ30においては、半導体構造層15に活性層19に至る溝15Gが形成される。この溝による間隙により、活性層19の成長時において活性層19の層内方向に生じた歪みが緩和され、活性層19における内部量子効率が向上すると考えられる。
【0092】
ここで、面発光レーザ30の動作について説明する。面発光レーザ30において、n電極23及びp電極27との間に電圧が印加されると、図中太線二点鎖線に示す様に、半導体構造層15内に電流が流れ、活性層19から光が放出される。活性層19から放出された光は、第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29との間において反射を繰り返し、共振状態に至る(レーザ発振する)。
【0093】
面発光レーザ30においては、p型半導体層21には、開口部25Hによって露出している部分のみから電流が注入される。また、p型半導体層21は非常に薄いため、p型半導体層21内では面内方向、すなわち半導体構造層15の面内に沿った方向には電流はほとんど拡散しない。従って、面発光レーザ30においては、活性層19のうち、開口部25Hの直下の領域にのみ電流が供給されて、当該領域からのみ光が放出される。すなわち、面発光レーザ30において、開口部25Hが活性層19における電流の供給範囲を制限する電流狭窄構造となっている。
【0094】
上述のように、本実施例においては、第1の多層膜反射鏡13は、第2の多層膜反射鏡29よりもわずかに低い反射率を有する。従って、第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29との間で共振した光は、その一部が第1の多層膜反射鏡13及び基板11を透過し、外部に取り出される。このようにして、面発光レーザ30は、基板11の下面から、基板11の下面及び半導体構造層15の各層の面内方向に対して垂直な方向に光を出射する。
【0095】
尚、半導体構造層15のp型半導体層21の突出部21P及び絶縁層25の開口部25Hは、活性層19における発光領域の中心である発光中心を画定し、共振器OCの中心軸(発光中心軸)AXを画定する。共振器OCの中心軸AXは、p型半導体層21の突出部21Pの中心を通り、半導体構造層15の面内方向に対して垂直な方向に沿って延びる。
【0096】
尚、活性層19の発光領域とは、例えば、活性層19内における所定の強度以上の光が放出される所定の幅を有する領域であり、その中心が発光中心である。また、例えば、活性層19の発光領域とは、活性層19内において所定の密度以上の電流が注入される領域であり、その中心が発光中心である。また、当該発光中心を通る基板11の上面又は半導体構造層15の各層の面内方向に対して垂直な直線が中心軸AXである。発光中心軸AXは、第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29とによって構成される共振器OCの共振器長方向に沿って延びる直線である。また、中心軸AXは、面発光レーザ30から出射されるレーザ光の光軸に対応する。
【0097】
ここで、面発光レーザ30における第1の多層膜反射鏡13、半導体構造層15及び第2の多層膜反射鏡29各層の例示的な構成及び溝15Gの例示的な寸法について説明する。本実施例においては、第1の多層膜反射鏡13は、基板11の上面に形成された1umのGaN下地層、及び42ペアのn-GaN層及びAlInN層からなる。
【0098】
n型半導体層17は、1580nmの層厚のn-GaN層である。活性層19は、4nmのInGaN層及び5nmのGaN層が4ペア積層された多重量子井戸構造の活性層からなる。活性層19上には、MgドープされたAlGaNの電子障壁層が形成され、その上に50nmのp-GaN層からなるp型半導体層21が形成されている。第2の多層膜反射鏡29は、Nb2O5及びSiO2を10.5ペア積層したものである。この場合の共振波長は、440nmであった。
【0099】
半導体構造層15に形成される溝15Gは、8umの外径を有し、深さが120nm、幅2umである。尚、半導体構造層15上に形成される透光電極層31は、20nmのITOからなる層であり、透光電極層31及びp電極27の上に40nmのNb2O5のスペーサ層を挟んで第2の多層膜反射鏡29が形成されている。
【0100】
また、基板11の裏面は、研磨面となっており、当該研磨面にNb2O5及びSiO2の二層のARコートが形成されている。
【0101】
また、p型半導体層21は、突出部21Pにおいて50nmの層厚を有し、それ以外の領域において30nmの層厚を有することとしてもよい。すなわち、p型半導体層21は、突出部21Pとそれ以外の部分で層厚が異なっていてもよい。また、絶縁層25の上面は、p型半導体層21の突出部21Pの上面と同一の高さ位置に配置されるように構成されている。
【0102】
尚、
図9においては、溝15Gはp型半導体層21の上面に対して垂直方向に溝15Gが形成されているように表記している。しかし、溝15G及び溝15Gの部分におけるp型半導体層21、絶縁層25、透光電極層31並びにp電極27は、面発光レーザ30の中心軸AXに対して傾斜した側面を有する段差であることが好ましい。また、当該側面の傾斜角度は、中心軸AXに対して45°以上であることが好ましい。言い換えれば、当該側面の傾斜角度は、半導体構造層15の上面に対して45°以下であることが好ましい。当該段差に傾斜を設けることにより、長期通電中における透光電極層31の対クラック性等の長期信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0103】
尚、上記した本実施例の面発光レーザ30の構成は一例に過ぎない。
【0104】
以下、面発光レーザ30内部の光学的な特性について説明する。上述のように、面発光レーザ30において、絶縁層25は、p型半導体層21よりも低い屈折率を有する。また、第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29との間における他の層の層厚は、面内のいずれの箇所においても同じ層内であれば同一である。
【0105】
従って、面発光レーザ30の第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29との間で形成される共振器OC内における等価的な屈折率(第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29との間の光学的距離であり、共振波長に対応する)は、p型半導体層21と絶縁層25との屈折率の差によって、上面形状が開口部25Hによって画定される円柱状の中央領域CAとその周りの筒状の周辺領域PAとで異なる。
【0106】
具体的には、第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡29との間において、周辺領域PAの等価屈折率は中央領域CAの等価屈折率よりも低い、すなわち、中央領域CAにおける等価的な共振波長は、周辺領域PA等価的な共振波長よりも小さい。尚、上述のように、活性層19において光が放出されるのは、開口部25Hの直下の領域である。すなわち、活性層19において光が放出される発光領域は、活性層19のうち中央領域CAと重なる部分である。
【0107】
尚、本実施例3においては、上面視において溝15Gが中央領域CAの外側に環状に形成されている場合について説明した。しかし、溝15Gは、完全な環状ではなく断続的に形成された凹部を含む溝構造でもよい。すなわち、溝15Gは、複数の凹部を含む凹構造であっても良い。言い換えれば、溝15Gは、断続的に形成された環状構造であってもよい。例えば、溝15Gは、p型半導体層21の上面の開口部25Hによって露出している領域を囲む、断続的に形成された環状構造であってもよい。
【0108】
尚、溝15Gを複数個の凹部によって形成する場合、活性層19における歪みを均等に緩和するために、上述した発光中心軸AXから見て2方向以上に形成されているのが望ましい。すなわち、溝15Gを複数の凹部によって形成する場合、面発光レーザ30の上面視において、発光中心軸AXを含む発光領域から見て2方向以上に凹部を形成し、発光領域を凹部によって挟む構造にするのが好ましい。活性層19における歪みを均等に緩和するために、溝15Gを形成する凹部は、発光中心軸AXに対して回転対称に配置するのがさらに好ましい。言い換えれば、溝15Gを形成する凹部は、半導体構造層15の面内方向に対して垂直な方向から見て回転対称に設けられているのが好ましい。
【0109】
すなわち、実施例3の面発光レーザ30の段差は、半導体構造層15の中央領域CAを囲む領域に上面から活性層19を貫通する1又は複数の溝15Gを含む1の凹構造である。また、p電極27は、1又は複数の溝15Gの内面を覆うように形成されている。
【0110】
尚、上述のように、溝15Gを複数の凹部で形成する等、溝15Gの形状を変化させることで、上述の実施例の面発光レーザから出射される光の偏光の制御を行うことも可能である。
【0111】
実施例3によれば、溝15G上の透光電極層31は、金属層であるp電極27で覆われている。これにより、長期通電中の透光電極層31の当該段差部分においてクラック等の異常の発生を防止することが可能となる。また、仮に長期通電中に透光電極層31の段差部分にクラックが発生したとしても、p電極27が段差を覆うように形成されている故、p電極27とp型半導体層21との導通は保たれる。よって、透光電極層31の段差部分にクラックが発生したでもオープン等の異常の発生を防止することが可能となる。
【0112】
従って、本実施例3によれば、長期通電中の駆動電圧の上昇やショート/オープンの不具合が発生することを防止することができ、長寿命な垂直共振器型の面発光レーザ30を提供することが可能となる。
【0113】
加えて、上述のように、本実施例の面発光レーザ30では、半導体構造層15にp型半導体層21の上面から活性層19に至る溝15Gが形成されている。この溝15Gによって、活性層19において、活性層19の層内方向に生じた歪みが緩和され、活性層19における内部量子効率が改善し、発光効率を向上が実現可能となる。
【0114】
尚、実施例1、2及び3のいずれの実施例においても、段差15S、25S又は溝15Gが中心軸AXから第2の多層膜反射鏡29の外側に設けられ、面発光レーザの上面視において段差15S、25S又は溝15Gが露出している場合について説明した。しかし、段差15S、25S又は溝15Gは、第2の多層膜反射鏡29に覆われるように設けられていてもよい。
【0115】
第2の多層膜反射鏡29が段差15S、25S又は溝15Gを覆うように形成されるような構成においても、それぞれの実施例と同様の効果を得ることが可能となる。また、実施例3のように溝15Gを有する構造である場合、第2の多層膜反射鏡29は、溝15Gによって形成される空間を埋めるように形成される。
【0116】
また、実施例1、2及び3のいずれの実施例においても、基板11の上面にn電極23が形成されている面発光レーザについて説明した。しかし、n電極23は基板11の裏面に形成されていてもよい。この場合、導電性のn-GaN等の材料からなる基板11を用いて、基板11の裏面に金属からなるn電極を形成すればよい。
【0117】
この際、基板11の裏面には、裏面突出部が形成されている。裏面突出部は、基板11の法線方向から見て、突出部21Pに対応する領域に形成されている。この裏面突出部は、裏面が研磨された後に、裏面突出部の周囲がドライエッチングによって除去されたために残った凸部である。よって、裏面突出部の頂面は研磨面となっており、基板11の裏面の裏面突出部の周囲の領域は、研磨面がドライエッチングされた表面になっている。n電極は、裏面突出部の周囲の領域、すなわち裏面突出部を除く領域に形成されている。基板11の裏面突出部は、その頂面が出射する光が外部に放出される開口となり、n電極によって出射光を遮らないためである。すなわち、裏面突出部は、n電極の開口から突出した構造となっている。
【0118】
すなわち、基板11はn型の導電型を備え、面発光レーザ10、20及び30は、基板11の半導体構造層15とは反対側の面であって、かつ、基板11の上面に垂直な方向から見て中央領域CAに対応する領域を除く箇所にn電極を有する。
【0119】
また、実施例1、2及び3のいずれの実施例においても、絶縁層25又は不活性化領域層21Aによる電流狭窄構造を有する面発光レーザについて説明した。しかし、電流狭窄構造の構成はこれらに限定されない。
【0120】
例えば、面発光レーザは、p型半導体層21上の中央領域CAにp型半導体層21よりも高い不純物濃度を有するハイドープp型半導体層と、当該ハイドープp型半導体層上に形成され、n型半導体層17よりも高い不純物濃度を有するハイドープn型半導体層と、が形成されたトンネル接合層による電流狭窄構造を有するように構成されてもよい。
【0121】
言い換えれば、中央領域CAの外側の領域において、透光電極層31の下方の層に設けられており、段差によって透光電極層31が当該段差の部分に段差が形成され当該透光電極層31の段差部分を覆うようにp電極27が形成されていればよい。
【0122】
また、実施例1、2及び3のいずれの実施例においても、透光電極層31上において中央領域CA及び周辺領域PAに亘って設けられ、中心軸AX上に凸部を有する第1の透光絶縁層と、周辺領域PA内の第1の透光絶縁層上に設けられ、第1の透光絶縁層よりも小さな屈折率を有する第2の透光絶縁層と、を含む光ガイド層を有していてもよい。
【0123】
これにより、共振器OC内の定在波が中央領域CAから外側に発散(放射)する光損失が抑制される。すなわち、中央領域CAに多くの光が留まり、またその状態でレーザ光が外部に取り出される。従って、多くの光が中心軸AXの近傍に集中し、安定して単峰性又は多峰性の強度分布を有するレーザ光を生成及び出射することができる。
【0124】
また、実施例1、2及び3のいずれの実施例においても、p電極27が透光電極層31の段差を覆い且つ一体的に形成されている場合について説明した。しかし、p電極27は、透光電極層31の段差部分を覆って透光電極層31の長寿命化を図る第1のp電極と、半導体構造層15の外縁部に形成され且つ実装基板と電気的に接続される第2のp電極を有していてもよい。言い換えれば、p電極27は、透光電極層31を保護する部分と実装基板に接続される部分とで分離していてもよい。
【0125】
また、実施例1、2及び3のいずれの実施例においても、p電極27が透光電極層31の段差を覆うように形成する場合について説明した。しかし、透光電極層31の段差を覆う保護膜は、p電極27に限定されない。
【0126】
図10は、実施例1の変形例3の面発光レーザ10Bの断面図を示す。
【0127】
例えば、
図10に示すように、透光電極層31の段差部分のみに透光電極層31と同一材料の第2の透光電極層31Aを追加的に積層してもよい。言い換えれば、透光電極層31の段差部分の膜厚を、例えば、透光電極層31の膜厚の2倍にしてもよい。これにより、長期通電中の透光電極層31の段差部分へのクラックの発生を生じにくくすることが可能となる。尚、本変形例においては、第2の透光電極層31Aを段差15Sに相当する部分のみに追加的に積層する場合について説明したが、第2の透光電極層31Aを積層する範囲はこれに限定されない。例えば、第2の透光電極層31Aは、発光領域である中央領域CAを除く範囲に形成されていてもよい。言い換えれば、少なくとも段差15Sに相当する部分を覆うように形成されていればよい。当該変形例3は、実施例2及び3においても適用可能である。
【0128】
また、
図11は、実施例1の変形例4の面発光レーザ10Cの断面図を示す。
【0129】
変形例2と同様に、透光電極層31の段差部分のみに誘電体膜33を形成してもよい。誘電体膜33は、例えば、SiO2、SiNx又はAl2O3等の材料からなる誘電体膜である。尚、当該誘電膜33は、スペーサ層(図示せず)に用いられる高屈折率誘電体膜(本実施例においてはNb2O5)よりも透光電極層31に対して反応性の低い誘電体膜であることが好ましい。上記の通り、透光電極層31の段差部分を誘電体層で保護することにより、長期通電中の透光電極層31の段差部分へのクラックの発生を生じにくくすることが可能となる。尚、本変形例においては、誘電体膜33を段差15Sに相当する部分のみに追加的に積層する場合について説明したが、誘電体膜33を積層する範囲はこれに限定されない。例えば、誘電体膜33は、発光領域である中央領域CAを除く範囲に形成されていてもよい。言い換えれば、少なくとも段差15Sに相当する部分を覆うように形成されていればよい。ただし、この場合、誘電体膜33は、p電極27と透光電極層31との電気的な接触を阻害しないように形成することが好ましい。すなわち、少なくとも1の部分でp電極27と透光電極層31とが電気的に接触するように構成されることが好ましい。
当該変形例4は、実施例2及び3においても適用可能である。
【0130】
また、上述した実施例及び変形例における種々の数値、寸法、材料等は、例示に過ぎず、用途及び製造される面発光レーザに応じて、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0131】
10、20、30 面発光レーザ
11 基板
13 第1の多層膜反射鏡
15 半導体構造層
17 n型半導体層
19 活性層
21 p型半導体層
23 n電極
25 絶縁層
27 p電極
29 第2の多層膜反射鏡
31 透光電極層
33 誘電体層