(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】液圧駆動システム
(51)【国際特許分類】
F15B 11/024 20060101AFI20240719BHJP
F15B 11/042 20060101ALI20240719BHJP
F15B 11/044 20060101ALI20240719BHJP
F15B 11/028 20060101ALI20240719BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F15B11/024 C
F15B11/042
F15B11/044
F15B11/028 G
E02F9/22 K
(21)【出願番号】P 2020106204
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】能勢 知道
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 勇人
(72)【発明者】
【氏名】村岡 英泰
(72)【発明者】
【氏名】木下 敦之
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-145592(JP,A)
【文献】特開平11-303814(JP,A)
【文献】特開2004-092247(JP,A)
【文献】特開2010-286074(JP,A)
【文献】特開2019-199881(JP,A)
【文献】特開平06-081375(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0301495(US,A1)
【文献】国際公開第2015/178316(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/024
F15B 11/042
F15B 11/044
F15B 11/028
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧アクチュエータに作動液を供給する液圧ポンプと、
前記液圧ポンプから前記液圧アクチュエータに流れる作動液の流量を制御するメータイン制御弁と、
前記液圧アクチュエータからタンクに排出される作動液の流量を制御するメータアウト制御弁と、
前記液圧アクチュエータから排出される作動液を前記液圧アクチュエータに供給する再生弁と、を備え、
前記メータアウト制御弁は、前記再生弁及び前記メータイン制御弁の各々と並列して前記液圧アクチュエータに接続されている、液圧駆動システム。
【請求項2】
操作具の操作量に応じた操作信号を出力する操作装置と
前記再生弁及び前記メータアウト制御弁の開口を制御して、前記操作装置からの操作信号に応じた流量の作動液を前記液圧アクチュエータから排出させる制御装置を更に備える、請求項1に記載の液圧駆動システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記再生弁の開度に基づいて再生流量を推定し、前記操作装置からの操作信号に応じて前記液圧アクチュエータから排出させる排出流量と推定される再生流量との差分であるメータアウト流量を前記タンクに流すように前記メータアウト制御弁の開口を制御する、請求項2に記載の液圧駆動システム。
【請求項4】
前記液圧アクチュエータから排出される作動液の圧力である排出圧を検出する第1圧力セン
サを更に備え
前記制御装置は、前記再生弁の下流圧と、前記液圧アクチュエータの排出圧とに基づいて再生流量を推定し、
前記再生弁の下流圧は、前記第1圧力センサで検出される排出圧と、前記再生弁の開度とに基づいて推定される、請求項2又は3に記載の液圧駆動システム。
【請求項5】
前記液圧アクチュエータに供給される作動液の圧力である供給圧を検出する第2圧力センサ
を更に備え、
前記制御装置は、前記第1圧力センサで検出される排出圧と、前記第2圧力センサで検出される供給圧と、前記再生弁の開度とに基づいて前記再生弁の下流圧を推定する、請求項4に記載の液圧駆動システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記液圧アクチュエータからの排出流量に対する再生流量の比率である再生比率を前記液圧アクチュエータの負荷状態に応じて設定し、前記再生比率に応じて前記再生弁の開口を制御する、請求項2乃至4の何れか1つに記載の液圧駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧アクチュエータから排出される作動液を再生可能な液圧駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液圧駆動システムでは、省エネルギー効果を得るために液圧アクチュエータから排出される作動液を再生している。このような液圧駆動システムとして、例えば特許文献1の液圧駆動装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の液圧駆動システムでは、メータアウトラインに排出される作動液が再生ラインを介して液圧シリンダに再生される。それ故、メータアウトラインに排出される作動液がそのまま液圧シリンダに再生されるので、液圧シリンダに取付けられるアタッチメントの姿勢及び荷重等によって再生流量が変化する。そうすると、レバー操作に対するシリンダの応答性に関してアタッチメントの姿勢及び荷重が影響することになる。また、再生時において作動液をタンクに排出する際、作動液が制御弁及び再生解除弁を通ってタンクに導かれる。それ故、再生時における作動液の圧力損失が大きい。
【0005】
そこで本発明は、再生流量の変動が与える液圧アクチュエータの応答性に対する影響を抑制できる液圧駆動システムを提供することを目的としている。
【0006】
また、本発明は、再生時における作動液に生じる圧力損失を低減できる液圧駆動システムを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液圧駆動システムは、液圧アクチュエータに作動液を供給する液圧ポンプと、前記液圧ポンプから前記液圧アクチュエータに流れる作動液の流量を制御するメータイン制御弁と、前記液圧アクチュエータからタンクに排出される作動液の流量を制御するメータアウト制御弁と、前記液圧アクチュエータから排出される作動液を前記液圧アクチュエータに供給する再生弁と、を備え、前記メータアウト制御弁は、前記再生弁と並列して前記液圧アクチュエータに接続されているものである。
【0008】
本発明に従えば、メータイン制御弁と、メータアウト制御弁と、再生弁との各々において、各々を流れる作動液の流量を独立して夫々制御することができる。それ故、再生流量の変動に合わせてメータアウト流量を調整することができる。これにより、再生流量の変動が与える液圧アクチュエータの応答性に対する影響を抑制することができる。
【0009】
また、本発明に従えば、タンクに排出される作動液が再生弁を通ることなく液圧アクチュエータからタンクに排出される。それ故、タンクに排出される作動液の圧力損失を低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、再生流量の変動が液圧アクチュエータの応答性に与える影響を抑制することができる。
【0011】
また、本発明によれば、再生時における作動液に生じる圧力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る液圧駆動システムを示す液圧回路図である。
【
図2】
図1の液圧駆動システムに備わる制御装置において再生弁の開口制御に関するブロック図である。
【
図3】
図1の液圧駆動システムに備わる制御装置においてメータアウト制御弁の開口制御に関するブロック図である。
【
図4】本発明の別の実施形態に係る液圧駆動システムを示す液圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態の液圧駆動システム1について前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する液圧駆動システム1は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0014】
建設機械、産業機械、及び産業車両等の油圧駆動機械は、液圧アクチュエータ及び液圧駆動システム1を備えている。そして、油圧駆動機械は、液圧アクチュエータを作動させることによって各種構成を動かすことができる。これにより、油圧駆動機械は、各種作業を行うことができる。液圧アクチュエータは、例えば
図1に示すような液圧シリンダ2である。液圧シリンダ2は、伸縮することによって各種構成を動かすことができる。更に詳細に説明すると、液圧シリンダ2は、シリンダチューブ2aにロッド2bが進退可能に挿入されている。また、シリンダチューブ2aには、ロッド側ポート2c及びヘッド側ポート2dが形成されている。そして、各ポート2c,2dに対して作動液を給排することによってシリンダチューブ2aに対してロッド2bが進退する、即ち液圧シリンダ2が伸縮する。
【0015】
液圧駆動システム1は、液圧シリンダ2に対して作動液を給排する。即ち、液圧駆動システム1は、液圧シリンダ2の各ポート2c,2dに接続されている。そして、液圧シリンダ2のロッド側ポート2cに作動液を供給し且つヘッド側ポート2dから作動液を排出させることによって液圧シリンダ2が縮退する。また、液圧駆動システム1は、液圧シリンダ2のヘッド側ポート2dに作動液を供給し且つロッド側ポート2cから作動液を排出させることによって液圧シリンダ2を伸長させる。更に詳細に説明すると、液圧駆動システム1は、例えば液圧ポンプ11と、メータイン制御弁12と、メータアウト制御弁13と、再生弁14と、3つの圧力センサ15~17と、操作装置18と、制御装置19と、備えている。
【0016】
液圧ポンプ11は、回転駆動されることによって作動液を吐出することができる。即ち、液圧ポンプ11は、駆動源に接続されている。駆動源は、エンジンE又は電気モータである。なお、駆動源は、本実施形態においてエンジンEである。液圧ポンプ11は、エンジンEによって回転駆動されることによって作動液を吐出する。なお、液圧ポンプ11は、本実施形態において斜板ポンプ又は斜軸ポンプである。
【0017】
メータイン制御弁12は、液圧ポンプ11と液圧シリンダ2との間に介在する。即ち、メータイン制御弁12は、液圧ポンプ11及び液圧シリンダ2の各ポート2c,2dに接続されている。本実施形態において、メータイン制御弁12は、ロッド側通路21aを介してロッド側ポート2cに接続され、またヘッド側通路21bを介してヘッド側ポート2dに接続されている。また、メータイン制御弁12は、入力されるメータイン指令に応じて、液圧ポンプ11から液圧シリンダ2に供給される作動液の方向及び流量を制御することができる。即ち、メータイン制御弁12は、作動液を液圧ポンプ11から液圧シリンダ2のポート2c,2dの何れか一方に供給し、且つ供給される作動液の流量であるメータイン流量を制御することができる。具体的に説明すると、メータイン制御弁12は、本実施形態において電子制御式のスプール弁である。即ち、メータイン制御弁12は、スプール12a及び2つの電磁比例制御弁31L,31Rを有している。スプール12aは、移動することによって作動液の流れる方向を切換え、またメータイン制御弁12の開度を制御することができる。
【0018】
2つの電磁比例制御弁31L,31Rは、互いに抗する方向のパイロット圧をスプール12aに与えることができる。そして、2つの電磁比例制御弁31L,31Rは、入力されるメータイン指令に応じたパイロット圧を出力し、2つのパイロット圧の差圧に応じた位置へとスプール12aを移動させる。即ち、2つの電磁比例制御弁31L,31Rは、入力されるメータイン指令に応じた位置にスプール12aを移動させる。これにより、入力されるメータイン指令に応じた方向且つメータイン流量の作動液が液圧シリンダ2に供給される。
【0019】
メータアウト制御弁13は、液圧ポンプ11とタンク10との間に介在する。即ち、メータアウト制御弁13は、液圧シリンダ2の各ポート2c,2d及びタンク10に接続されている。本実施形態において、メータアウト制御弁13は、メータイン制御弁12に並列するようにロッド側通路21a及びヘッド側通路21bの各々に接続されている。また、メータアウト制御弁13は、入力されるメータアウト指令に応じて、液圧シリンダ2からタンク10に排出される作動液の方向及び流量(メータアウト流量)を制御することができる。即ち、メータアウト制御弁13は、排出される作動液の方向を液圧シリンダ2のポート2c,2dからタンク10の何れか一方に切替え、且つメータアウト流量を制御することができる。なお、メータアウト制御弁13は、メータアウト制御弁13を流れる流量を、メータイン制御弁12を介して液圧シリンダ2に供給される流量から独立して制御することができる。具体的に説明すると、メータアウト制御弁13は、本実施形態において電子制御式のスプール弁である。即ち、メータアウト制御弁13は、スプール13a及び2つの電磁比例制御弁32L,32Rを有している。スプール13aは、移動することによって作動液の流れる方向を切換え、またメータアウト制御弁13の開度を制御することができる。
【0020】
2つの電磁比例制御弁32L,32Rは、互いに抗する方向のパイロット圧をスプール13aに与えることができる。そして、2つの電磁比例制御弁32L,32Rは、入力されるメータアウト指令に応じたパイロット圧を出力し、2つのパイロット圧の差圧に応じた位置へとスプール13aを移動させる。即ち、2つの電磁比例制御弁32L,32Rは、入力されるメータアウト指令に応じた位置にスプール13aを移動させる。これにより、入力されるメータアウト指令に応じた方向且つ流量の作動液が液圧シリンダ2から排出される。
【0021】
再生弁14は、メータアウト制御弁13に並列して液圧シリンダ2に接続されている。そして、再生弁14は、液圧シリンダ2から排出される作動液を液圧シリンダ2に再生する。本実施形態において、再生弁14は、ロッド側通路21aとヘッド側通路21bとを繋ぐ再生通路23に介在している。更に詳細に説明すると、再生弁14は、そこに入力される再生弁指令に応じて再生通路23を開閉することができる。再生通路23には、逆止弁20が介在している。本実施形態において、逆止弁20は、再生通路23において再生弁14よりヘッド側通路21b寄りに介在している。そして、逆止弁20は、再生通路23においてロッド側ポート2cからヘッド側ポート2dに向かう順方向の流れを許容し、且つ逆方向の流れを阻止する。それ故、液圧駆動システム1は、ロッド側ポート2cからヘッド側ポート2dへの作動液の再生を行うことができる。また、再生弁14は、入力される再生弁指令に応じて開度を調整することができる。これにより、再生弁14は、入力される再生弁指令に応じた再生流量の作動液を液圧シリンダ2に再生することができる。なお、再生弁14は、再生弁14を流れる流量を、メータイン制御弁12及びメータアウト制御弁13の各々を流れる流量から独立して制御することができる。本実施形態において再生弁14は、電磁比例制御弁である。
【0022】
第1及び第2圧力センサ15,16は、ロッド側ポート2c及びヘッド側ポート2dの各々に対して給排される液圧を検出する。更に詳細に説明すると、第1圧力センサ15は、ロッド側通路21aに接続されている。即ち、第1圧力センサ15は、ロッド側ポート2cに対して給排される作動液の液圧(ロッド圧Pcr)を検出する。他方、第2圧力センサ16は、ヘッド側通路21bに接続されている。即ち、第2圧力センサ16は、ヘッド側ポート2dに対して給排される作動液の液圧(ヘッド圧Pch)を検出する。また、第3圧力センサ17は、液圧ポンプ11から吐出される作動液の液圧(吐出圧)を検出する。そして、3つの圧力センサ15~17は、検出された液圧を制御装置19に出力する。
【0023】
操作装置18は、液圧シリンダ2を作動させるべく操作指令を制御装置19に出力する。操作装置18は、例えば操作弁又は電気ジョイスティック等である。更に詳細に説明すると、操作装置18は、操作具の一例である操作レバー18aを有している。操作レバー18aは、操作者によって操作可能に構成されている。そして、操作装置18は、操作レバー18aの操作量に応じた操作指令を制御装置19に出力する。本実施形態において、操作レバー18aは、揺動可能に構成されている。そして、操作装置18は、操作レバー18aの揺動量に応じた操作指令を制御装置19に出力する。
【0024】
制御装置19は、再生弁14、3つの圧力センサ15~17、4つの電磁比例制御弁31L,31R,32L,32R、及び操作装置18に接続されている。そして、制御装置19は、再生弁14及びメータアウト制御弁13の開口を制御する。これにより、制御装置19は、操作装置18からの操作信号に応じた排出流量の作動液を液圧シリンダ2から排出させる。更に詳細に説明すると、制御装置19は、液圧シリンダ2の負荷状態に応じて再生弁14の開口を制御することによって、再生流量の作動液をロッド側ポート2cから再生弁14を介してヘッド側ポート2dに再生させる。また、制御装置19は、メータアウト制御弁13の開度を制御することによって、排出流量から再生流量を減算したメータアウト流量の作動液をメータアウト制御弁13からタンク10に排出させる。より詳細に説明すると、制御装置19は、再生弁14の開度を制御すべく、
図2に示すように目標排出流量演算部41と、再生比率演算部42と、配管圧力推定部43と、再生弁開口演算部44とを有している。また、制御装置19は、再生流量に応じてメータアウト流量を調整すべく、
図3に示すように目標排出流量演算部41と、再生流量推定部45と、メータイン制御弁開口演算部(M/O制御弁開口演算部)46とを有している。
【0025】
目標排出流量演算部41は、操作装置18からの操作指令に応じて液圧シリンダ2から排出させる目標排出流量を演算する。本実施形態において、目標排出流量演算部41は、操作指令と目標排出流量との対応を示すマップに基づいて目標排出流量を演算する。なお、目標排出流量は、関係式に基づいて演算されてもよい。
【0026】
再生比率演算部42は、液圧シリンダ2の負荷状態に基づいて再生比率を演算する。再生比率は、液圧シリンダ2から排出される目標排出流量に対する再生流量の比率である。即ち、再生比率は、液圧シリンダ2から排出される目標排出流量に対して再生させるべき流量の比率である。また、負荷状態は、液圧シリンダ2の負荷(駆動力又は制動力)である。そして、負荷状態は、ロッド側ポート2cの液圧(第1圧力センサ15で検出されるロッド圧Pcr)及びヘッド側ポート2dの液圧(第2圧力センサ16で検出されるヘッド圧Pch)のうち少なくとも一方で算定される。なお、ヘッド側ポート2dの液圧に代えて吐出圧(第3圧力センサ17で検出される吐出圧)が用いられてもよい。そして、再生比率は、第1圧力センサ15で検出されるロッド圧Pcr及び第2圧力センサ16で検出されるヘッド圧Pchに応じて設定されている。本実施形態において、再生比率は、ヘッド圧Pchが高い場合に低く設定され、またヘッド圧Pchが低い場合に高く設定されている。なお、再生比率は、ロッド圧Pcr及びヘッド圧Pchの差分に基づいて算出される液圧シリンダ2の負荷に応じて設定されてもよい。そして、液圧シリンダ2の負荷は、ロッド2bが負荷によって押されて伸長する場合において負の値となる。そして、本実施形態においては、ロッド2bを伸長させるべく負荷の絶対値が大きくなると再生比率が小さくなるように設定されている。但し、再生比率と液圧シリンダ2の負荷状態との関係は、前述するような関係に限定されない。再生比率演算部42は、第1及び第2圧力センサ15,16で液圧が検出されると、検出結果に基づいて再生比率を演算する。
【0027】
配管圧力推定部43は、再生弁14の下流圧を推定する。即ち、配管圧力推定部43は、再生通路23において再生弁14と逆止弁20との間の配管部分23aを流れる作動液の圧力(配管圧力Ph)を推定する。更に詳細に説明すると、配管圧力推定部43は、第1圧力センサ15で検出されるロッド圧Pcr(排出圧)、第2圧力センサ16で検出されるヘッド圧Pch(供給圧)と目標再生開度とに基づいて推定する。目標再生開度は、後で詳述する再生弁開口演算部44で演算される再生弁14の目標再生開度である。即ち、配管圧力推定部43は、ロッド圧Pcr、ヘッド圧Pch、目標再生開度、及び逆止弁20の開度(所定値)に基づいて配管圧力Phを推定する。なお、配管圧力Phを推定するに当たってヘッド圧Pchは、必ずしも参照する必要はない。ヘッド圧Pchにも基づくことによって、配管圧力Phを更に精度よく推定することができる。
【0028】
再生弁開口演算部44は、目標排出流量、再生比率、ヘッド圧Pch、及びロッド圧Pcrに基づいて再生弁指令を演算する。更に詳細に説明すると、再生弁開口演算部44は、目標排出流量演算部41で演算される目標流量に、再生比率演算部42で演算される再生比率を乗算する。これにより、再生弁14における目標再生流量が演算される。そして、再生弁開口演算部44は、演算された目標再生流量及び配管圧力Phと、第1圧力センサ15で検出されるロッド圧Pcrとに基づいて目標再生開度を演算する。目標再生開度は、前述する目標再生流量をヘッド側ポート2dに流すべく再生弁14において開く開度である。再生弁開口演算部44は、目標再生開度を演算すると、目標再生開度に応じた再生弁指令を再生弁14に出力する。これにより、ロッド側ポート2cがヘッド側ポート2dより高圧の場合において、再生弁14を介してロッド側ポート2cからヘッド側ポート2dに目標再生流量の作動液が再生される。
【0029】
再生流量推定部45は、再生弁14の開度に基づいて再生流量を推定する。更に詳細に説明すると、再生流量推定部45は、再生弁14の前後差圧と、目標再生開度に基づいて再生流量が推定される。再生弁14の前後差圧は、本実施形態においてロッド圧Pcrから配管圧力Phを減算して演算される。ロッド圧Pcrは、第1圧力センサ15で検出される。また、配管圧力Phは、配管圧力推定部43で推定される。そして、目標再生開度は、再生弁開口演算部44で演算される。
【0030】
M/O制御弁開口演算部46は、目標メータアウト流量を演算する。更に詳細に説明すると、M/O制御弁開口演算部46は、目標排出流量から再生流量を減算して目標メータアウト流量を演算する。ここで、目標排出流量は、目標排出流量演算部41で演算される。また、再生流量は、再生流量推定部45で演算される。そして、M/O制御弁開口演算部46は、演算された目標メータアウト流量と、第1圧力センサ15で検出されるロッド圧Pcrと、所定のタンク圧とに基づいて、目標メータアウト開度を演算する。目標メータアウト開度は、目標メータアウト流量をタンク10に排出すべくメータアウト制御弁13において開くべき開度である。なお、目標メータアウト開度は、タンク圧に代えてメータアウト制御弁13の下流圧に基づいて演算されてもよい。メータアウト制御弁13の下流圧は、図示しない圧力センサで検出され又は圧力推定式によって推定される。M/O制御弁開口演算部46は、目標メータアウト開度を演算すると、目標メータアウト開度に応じたメータアウト制御弁指令(M/O制御弁指令)を電磁比例制御弁32L,32Rに出力する。例えば、制御装置19は、ロッド側ポート2cから作動液を排出させる場合、電磁比例制御弁32LにM/O指令を出力する。これにより、メータアウト制御弁13を介して目標メータアウト流量の作動液がタンク10に排出される。即ち、再生弁14とメータアウト制御弁13とによって目標排出流量の作動液を液圧シリンダ2から排出させることができる。
【0031】
また、制御装置19は、操作装置18からの操作指令に応じてメータイン制御弁12の開度を制御する。更に詳細に説明すると、制御装置19は、操作装置18からの操作指令に基づいて作動液を供給する方向と目標供給流量を演算する。更に、制御装置19は、演算された目標供給流量から前述する目標再生流量を減算して目標メータイン流量を演算する。目標メータイン流量は、メータイン制御弁12を介して液圧シリンダ2に供給すべき流量である。また、制御装置19は、目標メータイン流量と、メータイン制御弁12の前後差圧とに基づいてメータイン制御弁12の開度を演算する。メータイン制御弁12の前後差圧は、第1及び第2圧力センサ15,16の何れかと第3圧力センサ17とで検出された液圧に基づいて制御装置19によって演算される。そして、制御装置19は、演算された開度に応じたメータイン制御弁指令(M/I制御弁指令)を電磁比例制御弁31L,31Rに出力する。例えば、制御装置19は、ヘッド側ポート2dに作動液を供給する場合、電磁比例制御弁31LにM/I指令を出力する。これにより、メータイン制御弁12から液圧シリンダ2に目標メータイン流量の作動液が供給される。そして、液圧シリンダ2に目標供給流量の作動液が供給される。
【0032】
このように構成されている液圧駆動システム1では、ロッド2bが伸長し且つ伸長方向に負荷を受ける場合において、ロッド側ポート2cからヘッド側ポート2dに作動液を再生させることができる。そして、制御装置19は、再生時においてメータイン制御弁12、再生弁14、及びメータアウト制御弁13の各々の開口を以下のように制御する。即ち、操作レバー18aが操作されると、操作装置18が操作レバー18aの操作量に応じた操作指令を制御装置19に出力する。そうすると、制御装置19は、再生弁14に再生弁指令を出力する。即ち、制御装置19は、操作指令が出力されると、目標排出流量演算部41、及び再生比率演算部42において目標排出流量、及び再生比率を夫々演算し、且つ配管圧力推定部43において配管圧力Phを推定する。また、制御装置19は、再生弁開口演算部44において、目標排出流量、再生比率、及び配管圧力Phに基づいて目標再生開度を演算する。そして、制御装置19は、再生弁開口演算部44において目標再生開度に応じた再生弁指令を再生弁14に出力する。これにより、液圧シリンダ2の負荷状態に応じた再生流量の作動液がロッド側ポート2cからヘッド側ポート2dに再生される。
【0033】
また、制御装置19は、メータアウト制御弁13の開口を制御すべく、再生流量推定部45において再生流量を推定する。また、制御装置19は、M/O制御弁開口演算部46において目標排出流量と再生流量とに基づいて目標メータアウト開度を演算する。そして、制御装置19は、M/O制御弁開口演算部46において目標メータアウト開度に応じたM/O制御弁指令を電磁比例制御弁32Lに出力する。これにより、メータアウト制御弁13を介して液圧シリンダ2のロッド側ポート2cからタンク10に目標メータアウト流量の作動液を排出することができる。即ち、目標メータアウト流量と目標再生流量と合わせて、目標排出流量の作動液をロッド側ポート2cから排出させることができる。
【0034】
更に、制御装置19は、メータイン制御弁12の開口を制御すべく、操作指令及び再生流量に応じたM/I指令を電磁比例制御弁31Lに出力する。これにより、メータイン制御弁12の開口が操作指令及び再生流量に応じて制御される。即ち、目標メータイン流量の作動液がメータイン制御弁12を介して液圧ポンプ11から液圧シリンダ2のヘッド側ポート2dに供給される。これにより、目標メータイン流量と目標再生流量と合わせて目標供給流量の作動液をヘッド側ポート2dに供給することができる。
【0035】
このように構成される液圧駆動システム1では、ロッド側ポート2cからヘッド側ポート2dに再生を行いつつ、操作指令に応じた目標排出流量の作動液をロッド側ポート2cから高い精度で排出することができる。それ故、操作装置18の操作レバー18aの操作量に応じた速度にて液圧シリンダ2を作動させることができる。これにより、液圧シリンダ2の操作性を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態の液圧駆動システム1は、メータイン制御弁12と、メータアウト制御弁13と、再生弁14との各々において流れる作動液の流量を独立して夫々制御することができる。それ故、再生流量の変動に合わせてメータアウト流量を調整することができる。これにより、液圧シリンダ2からの排出流量の変動を抑えることができ、再生流量の変動が与える液圧アクチュエータの応答性に対する影響を抑制することができる。
【0037】
また、液圧駆動システム1では、メータアウト制御弁13が再生弁14に対して並列して液圧アクチュエータに接続されている。それ故、タンク10に排出される作動液は、再生弁14を通ることなく液圧シリンダ2からタンク10に排出される。それ故、タンク10に排出される作動液の圧力損失を低減することができる。これにより、駆動源(エンジンE)の燃費を向上させることができる。
【0038】
更に、液圧駆動システム1は、再生流量とメータアウト流量を連動するように再生弁14とメータアウト制御弁13の開口を制御することによって、液圧シリンダ2からの排出流量を操作信号に応じた流量に保つことができる。これにより、再生流量が最適な流量に調整されることによって液圧シリンダ2の応答性を維持しつつ、安定した操作性を実現することができる。
【0039】
また、液圧駆動システム1では、制御装置19が目標排出流量から目標再生流量を減算するようにしてメータアウト流量を演算している。それ故、再生流量の変動に合わせてメータアウト流量が増減されるので、再生流量が不足したり、メータアウト流量が不足したりすることを抑制することができる。これにより、液圧ポンプ11の吐出圧の上昇やキャビテーションが発生することを抑制できる。
【0040】
更に、液圧駆動システム1では、再生弁14とメータアウト制御弁13とを並列させることによって配管圧力Phを精度よく推定することができる。これにより、再生流量の推定精度を向上させると共に、制御を安定させることができる。また、配管圧力Phを推定すべく検出した供給圧にも基づくことによって配管圧力Phを更に精度よく推定することができる。これにより、再生流量の推定精度を更に向上させると共に、制御を更に安定させることができる。
【0041】
また、液圧駆動システム1では、再生比率を用いることによって液圧アクチュエータの負荷に応じて再生流量を変換させることができる。これにより、液圧ポンプ11の吐出圧が上昇したりキャビテーションが発生したりすることを抑制できる。
【0042】
<その他の実施形態について>
本実施形態の液圧駆動システム1では、駆動する液圧アクチュエータとして液圧シリンダ2を例にして説明したが、液圧アクチュエータは液圧モータであってもよい。また、液圧シリンダ2の種類も片ロッドの複動式のシリンダに限定されず、両ロッドのシリンダ及び単動式のシリンダであってもよい。また、メータイン制御弁12、メータアウト制御弁13、再生弁14は、前述するような構成に限定されない。即ちメータイン制御弁12、メータアウト制御弁13、再生弁14は、各々の開口の制御可能なものであればよい。
【0043】
また、液圧駆動システム1において、メータイン制御弁12及びメータアウト制御弁13のスプール12a,13aは電動モータ等によって駆動されてもよい。更に、液圧駆動システム1において、液圧ポンプ11に接続される液圧アクチュエータの数は2つ以上であってもよい。この場合、操作装置18は、液圧アクチュエータ毎に対応させた複数の操作レバー18aを備える。そして、複数の操作レバー18aのうち少なくとも2つの操作レバー18aが操作されると、制御装置19は、操作される操作レバー18aの数と各々の操作量に応じて目標排出流量、及び目標供給流量を補正する。
【0044】
更に、本実施形態の液圧駆動システム1では、再生比率が液圧シリンダ2の負荷状態に応じて変動するが、一定値であってもよい。また、再生比率は、液圧シリンダ2の負荷状態に応じて再生のオン及びオフを切り替えるようにしてもよい。また、本実施形態の液圧駆動システム1において、制御装置19は、必ずしも前述のようにメータイン制御弁12、メータアウト制御弁13、及び再生弁14の各々の開口を制御する必要はない。
【0045】
また、別の実施形態の液圧駆動システム1Aは、
図4に示すように構成されてもよい。即ち、液圧駆動システム1Aは、ヘッド側制御弁12Aとロッド側制御弁13Aとを備えている。ヘッド側制御弁12Aは、ヘッド側ポート2dを液圧ポンプ11及びタンク10の何れかに接続する。そして、ヘッド側制御弁12Aは、ヘッド側ポート2dへのメータイン流量及びメータアウト流量を制御する。同様に、ロッド側制御弁13Aは、ロッド側ポート2cを液圧ポンプ11及びタンク10の何れかに接続する。そして、ロッド側制御弁13Aは、ロッド側ポート2cへのメータイン流量及びメータアウト流量を制御する。それ故、液圧駆動システム1Aでは、例えばロッド2bを伸長させる際にヘッド側制御弁12Aがメータイン制御弁として機能し、またロッド側制御弁13Aがメータアウト制御弁として機能する。その他、液圧駆動システム1Aは、本実施形態の液圧駆動システム1と同様の構成を有している。
【0046】
このように構成されている液圧駆動システム1Aもまた、ヘッド側制御弁12Aと、ロッド側制御弁13Aと、再生弁14との各々において流れる作動液の流量を独立して夫々制御することができる。それ故、再生流量の変動に合わせてメータアウト流量を調整することができる。これにより、液圧シリンダ2からの排出流量の変動を抑えることができ、再生流量の変動が与える液圧アクチュエータの応答性に対する影響を抑制することができる。その他、液圧駆動システム1Aは、本実施形態の液圧駆動システム1と同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0047】
1 液圧駆動システム
10 タンク
11 液圧ポンプ
12 メータイン制御弁
12A ロッド側制御弁
13 メータアウト制御弁
13A ヘッド側制御弁
14 再生弁
15 第1圧力センサ
16 第2圧力センサ
18 操作装置
18a 操作レバー(操作具)
19 制御装置