(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/14 20060101AFI20240719BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H02K15/14 A
H02K15/02 A
(21)【出願番号】P 2020109019
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河口 隆之
(72)【発明者】
【氏名】上野 清香
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-208872(JP,A)
【文献】特開2007-202248(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031050(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/026491(WO,A1)
【文献】特開2014-017955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/14
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸と、前記駆動軸を回転可能に支持するベアリングと、開口が形成される保持部材と、前記駆動軸、前記ベアリング及び前記保持部材を収納するケーシングと、を備える回転電機の製造方法であって、
前記保持部材の開口内に、前記保持部材に対して固定されない状態で前記ベアリングを配置するベアリング配置ステップと、
前記保持部材の外周面に前記ケーシングの内周面を接触させて、前記ケーシングに前記保持部材を固定しつつ、前記保持部材の前記開口の内周面に前記ベアリングの外周面を接触させて、前記保持部材に前記ベアリングを固定する固定ステップと、
を含
み、
前記固定ステップにおいて、前記ケーシングの内径を縮めて前記保持部材の外周面に前記ケーシングの内周面を接触させることで、前記保持部材に径方向内側への荷重を作用させて、前記開口の内周面を径方向内側に突出させて前記ベアリングの外周面に接触させる、
回転電機の製造方法。
【請求項2】
前記固定ステップにおいて、焼き嵌めにより、前記保持部材の外周面に前記ケーシングの内周面を固定させつつ、前記保持部材に前記ベアリングを固定させる、請求項
1に記載の回転電機の製造方法。
【請求項3】
前記固定ステップにおいて、前記ケーシングの外周から前記保持部材に荷重を作用させることで、前記保持部材の外周面に前記ケーシングの内周面を固定させつつ、前記保持部材に前記ベアリングを固定させる、請求項2に記載の回転電機の製造方法。
【請求項4】
前記保持部材には、厚みが薄い薄肉部が設けられており、
前記固定ステップにおいて、前記薄肉部における前記開口の内周面の径方向内側への突出量を、前記薄肉部以外における前記開口の内周面の径方向内側への突出量よりも、大きくする、請求項
1から請求項
3のいずれか1項に記載の回転電機の製造方法。
【請求項5】
駆動軸と、前記駆動軸を回転可能に支持するベアリングと、開口が形成される保持部材と、前記駆動軸、前記ベアリング及び前記保持部材を収納するケーシングと、を備える回転電機の製造方法であって、
前記保持部材の開口内に、前記保持部材に対して固定されない状態で前記ベアリングを配置するベアリング配置ステップと、
前記保持部材の外周面に前記ケーシングの内周面を接触させて、前記ケーシングに前記保持部材を固定しつつ、前記保持部材の前記開口の内周面に前記ベアリングの外周面を接触させて、前記保持部材に前記ベアリングを固定する固定ステップと、
を含み、
前記固定ステップにおいて、前記保持部材に対して、前記駆動軸の軸方向に沿った方向への荷重を作用させることで、前記保持部材の外周面を径方向外側に突出させて前記保持部材の外周面に前記ケーシングの内周面を接触させつつ、前記保持部材の前記開口の内周面を径方向内側に突出させて前記ベアリングの外周面に接触させる、
回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばパワーステアリングシステム用の回転電機(モータ)として、特許文献1に記載の回転電機が知られている。特許文献1に示すように、回転電機は、ロータと、ステータと、ロータを回転可能に支持するベアリングを保持する保持部材と、ケーシングとを備える。特許文献1においては、ベアリングを保持部材に対して固定した後、保持部材をケーシングに圧入することで、ベアリングを、保持部材及びケーシングに対して固定する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の製造方法だと、ベアリングを保持部材に固定する工程と、ベアリングが固定された保持部材をケーシングに固定する工程との、2段階の固定工程が必要となる。そのため、固定工程を簡略化することが求められている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、固定工程を簡略化可能な回転電機の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る回転電機の製造方法は、駆動軸と、前記駆動軸を回転可能に支持するベアリングと、開口が形成される保持部材と、前記駆動軸、前記ベアリング及び前記保持部材を収納するケーシングと、を備える回転電機の製造方法であって、前記保持部材の開口内に、前記保持部材に対して固定されない状態で前記ベアリングを配置するベアリング配置ステップと、前記保持部材の外周面に前記ケーシングの内周面を接触させて、前記ケーシングに前記保持部材を固定しつつ、前記保持部材の前記開口の内周面に前記ベアリングの外周面を接触させて、前記保持部材に前記ベアリングを固定する固定ステップと、を含む。
【0007】
前記固定ステップにおいて、ケーシング10の内径を縮めて前記保持部材の外周面に前記ケーシングの内周面を接触させることで、前記保持部材に径方向内側への荷重を作用させて、前記開口の内周面を径方向内側に突出させて前記ベアリングの外周面に接触させることが好ましい。
【0008】
前記固定ステップにおいて、焼き嵌めにより、前記保持部材の外周面に前記ケーシングの内周面を固定させつつ、前記保持部材に前記ベアリングを固定させることが好ましい。
【0009】
前記固定ステップにおいて、前記ケーシングの外周から前記保持部材に荷重を作用させることで、前記保持部材の外周面に前記ケーシングの内周面を固定させつつ、前記保持部材に前記ベアリングを固定させることが好ましい。
【0010】
前記保持部材には、厚みが薄い薄肉部が設けられており、前記固定ステップにおいて、前記薄肉部における前記開口の内周面の径方向内側への突出量を、前記薄肉部以外における前記開口の内周面の径方向内側への突出量よりも、大きくすることが好ましい。
【0011】
前記固定ステップにおいて、前記保持部材に対して、前記駆動軸の軸方向に沿った方向への荷重を作用させることで、前記保持部材の外周面を径方向外側に突出させて前記保持部材の外周面に前記ケーシングの内周面を接触させつつ、前記保持部材の前記開口の内周面を径方向内側に突出させて前記ベアリングの外周面に接触させることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、固定工程を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る回転電機の断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る保持部材の模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る保持部材の模式図である。
【
図4】
図4は、保持部材とケーシングとベアリングとの寸法関係を説明する図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る回転電機の製造方法を説明する図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る回転電機の製造方法を説明する図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る回転電機の製造方法を説明する図である。
【
図8】
図8は、保持部材から取り出したベアリングの模式図である。
【
図9】
図9は、固定ステップの別の例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、固定ステップの別の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0015】
(回転電機の全体構成)
図1は、本実施形態に係る回転電機の断面図である。本実施形態に係る回転電機100は、モータ、さらに言えばブラシレスモータである。回転電機100は、例えば車両の電動ステアリング装置に用いられ、車両のステアリングシャフトに操舵補助力を付与する。ただし、回転電機100の用途はそれに限られない。
【0016】
図1に示すように、回転電機100は、ケーシング10と、ステータ20と、ロータ30と、バスバーユニット40と、保持部材50と、基板60と、カバー部材70と、ベアリングB1、B2とを備える。以下、ロータ30、より詳しくは後述の駆動軸32の軸方向に沿った方向を、Z方向とする。そして、Z方向に沿った方向のうちの一方の方向を、Z1方向とし、Z方向に沿った方向のうちの他方の方向を、すなわちZ1方向の反対の方向を、Z2方向とする。
【0017】
図1に示すように、ケーシング10は、ステータ20、ロータ30、バスバーユニット40、保持部材50、及び基板60を内部に収納する筐体である。ケーシング10は、Z1方向側が開口する中空の部材であり、本実施形態ではZ方向から見て円形となる円筒状の部材である。ケーシング10は、底部12と側部14とを含む。底部12は、ケーシング10のZ2方向側の底面を構成する。底部12には、後述の駆動軸32が挿通される開口12Aが形成されている。また、底部12のZ1方向側の表面には、軸受けであるベアリングB1が設けられている。ベアリングB1は、Z方向から見て開口12Aを囲うように設けられ、底部12に対して固定されている。側部14は、ケーシング10の側面を構成する。側部14は、底部12の外縁を囲うように設けられ、底部12の外縁からZ1方向に延在する。ケーシング10は、底部12と側部14とで囲われる空間SPに、ステータ20、ロータ30、バスバーユニット40、保持部材50、及び基板60を収納する。ケーシング10は、Z1方向側の端部が開口しているため、空間SPが、Z1方向側で外部と連通している。ケーシング10のZ1方向側の開口は、Z方向において、保持部材50が設けられる部分の、ステータ20が設けられている部分とは反対側(Z1方向側)に形成されているといえる。
【0018】
側部14は、側部14A1及び側部14A2を含む。側部14A1は、側部14のZ2方向側の部分であり、底部12の外縁からZ1方向側に突出する。側部14A2は、側部14A1のZ1方向側に設けられる部分であり、側部14A1のZ1方向側の端部からさらにZ1方向側に突出している。側部14A1の内周面を内周面10A1とし、側部14A2の内周面を内周面10A2とすると、側部14A2(内周面10A2)の内径は、側部14A1(内周面10A1)の内径よりも大きくなっている。内周面10A2と内周面10A1とは、段差である座面10Bで接続されている。以下、内周面10A1と内周面10A2とを区別しない場合は、内周面10Aと記載する。内周面10Aは、ケーシング10の内周面であるともいえ、側部14の内周面であるともいえる。ただし、ケーシング10は、内周面10A1、10A2のように、Z方向で内径が異なる構造に限られず、例えばZ方向において内径が一定であってもよい。
【0019】
ケーシング10は、アルミニウム合金の部材で構成される。より詳しくは、ケーシング10は、JISで規格されるADC12の部材で構成される。本実施形態においては、ケーシング10は、回転電機100に組付けられる前にT5処理などの熱処理を施されることで、永久生長済みの状態となっている。永久生長済みの状態とは、すでに永久生長している状態を指す。さらに言えば、永久生長済みの状態とは、最大まで永久生長して、これ以上永久生長しない状態(すなわち永久生長が飽和している状態)を指すことが、より好ましい。ただし、ケーシング10は、熱処理されておらず、回転電機100の使用前において、言い換えればケーシング10内に固定される前(回転電機100に組付けられる前)において、永久生長前の状態となっていてもよい。永久生長前の状態とは、永久生長済みとなっておらず、加熱により永久生長可能な状態であることを指す。さらに言えば、永久生長前の状態とは、全く永久生長していない状態を指すことが好ましい。また、ここでの回転電機100の使用前とは、回転電機100が、回転電機100が搭載される車両などの対象物に搭載される前の状態(回転電機100が対象物に搭載されていない状態)であることを指す。さらに言えば、永久生長前の部材が永久生長済みとなる環境を、永久生長環境とすると、回転電機100の使用とは、その部材が組み付けられた回転電機100を、永久生長環境下に配置することを指す。すなわち、回転電機100の使用前とは、その部材が組み付けられた回転電機100を、これまで永久生長環境下に配置していない状態を指す。永久生長環境は、部材を、所定温度に所定時間配置することを指し、ここでの所定温度は、例えば、105℃以上であり、所定時間は、例えば、5時間以上である。なお、ケーシング10は、ADC12で構成されることに限られず、材料は任意であってよい。
【0020】
ステータ20は、回転電機100の固定子である。ステータ20は、ケーシング10内、すなわちケーシング10の空間SP内に設けられる。ステータ20は、ステータコア22と、ステータコイル24とを含む。ステータコア22は、ステータ20のコアであり、Z方向から見た中央位置に、Z方向に貫通する貫通孔22Aが形成されている。ステータコア22は、磁性体で構成されており、さらに言えば、鉄系の部材で構成される。鉄系の部材とは、鉄を主成分とする部材である。より詳しくは、本実施形態に係るステータコア22は、電磁鋼板で構成されている。ステータコア22は、電磁鋼板製の部材がZ方向に積層されて構成されている。ただし、ステータコア22は、電磁鋼板で構成されることに限られず、部材がZ方向に積層されて構成されることにも限られない。
【0021】
ステータコイル24は、ステータ20のコイルである。ステータコイル24は、U相、V相、及びW相の電磁コイルを含む。ステータコイル24は、ステータコア22に巻回されている。
【0022】
ステータ20は、外周面20Aがケーシング10の内周面10Aに接触することで、ケーシング10に対して固定されている。より詳しくは、ステータ20の外周面20Aは、ケーシング10のZ2方向側の内周面10A1に接触している。すなわち、ステータ20は、ケーシング10に締り嵌め(圧入)されることにより、ケーシング10と嵌め合っている。ステータ20の外周面20Aとケーシング10の内周面10Aとが、嵌め合っている部分であるといえる。なお、外周面20Aは、ステータコア22の外周面であるともいえる。
【0023】
ロータ30は、回転電機100の回転子である。ロータ30は、ケーシング10の空間SP内に設けられる。ロータ30は、駆動軸32と、ロータコア34とを備える。ロータコア34は、ロータ30のコアである。ロータコア34は、周方向に並ぶ複数の磁極を備える。ロータコア34は、Z方向から見た中央位置に、Z方向に貫通する貫通孔が形成されている。駆動軸32は、シャフトであり、ロータコア34の貫通孔に挿入されて、ロータコア34に対して固定されている。すなわち、駆動軸32は、ロータコア34に締り嵌め(圧入)されている。ロータ30は、ロータコア34の外周面が、ステータコア22の貫通孔22A内に設けられる。ロータ30は、駆動軸32の軸方向がZ方向に沿うように、貫通孔22A内に設けられる。また、ロータ30は、ステータ20に対して回転可能に、貫通孔22A内に設けられる。このように、ロータ30が貫通孔22Aに挿入されるため、ステータ20がロータ30の外周に設けられているともいえる。ロータ30は、ステータ20との電磁作用により、駆動軸32のZ方向に沿った中心軸を回転軸として、回転する。
【0024】
また、駆動軸32のZ2方向側の端部には、ギア部36が取り付けられている。ギア部36は、ステアリングシャフトに連絡する相手側のギヤ(図示略)に噛み合い、駆動軸32の回転をステアリングシャフトに伝達する。また、駆動軸32のZ1方向側の端部には、検出体38が取り付けられている。検出体38は、ロータ30の回転数を検出するための部材であり、例えばマグネットや磁気センサである。
【0025】
バスバーユニット40は、ケーシング10の空間SP内において、ステータコイル24のZ1方向側に設けられる。バスバーユニット40は、複数のバスバーとバスバーホルダとを備える板状(ここでは円板状)の部材である。バスバーは、導電性の部材であり、ステータコイル24のU相、V相、W相のそれぞれに接続されている。バスバーホルダは、絶縁性の部材であり、バスバーを覆う。
【0026】
保持部材50は、ケーシング10の空間SP内において、バスバーユニット40のZ1方向側に設けられる。保持部材50は、ベアリングB2を保持する、保持部材50の詳細説明は後述する。
【0027】
基板60は、ケーシング10の空間SP内において、保持部材50のZ1方向側に設けられる。基板60は、回転電機100のECU(Electronic Control Unit)の回路が設けられる回路基板である。基板60は、基板60とバスバーユニット40との間に設けられる接続部62を介して、バスバーユニット40のバスバーに電気的に接続されている。
【0028】
カバー部材70は、ケーシング10のZ1方向側の端部に設けられる。カバー部材70は、カバー72と端子部74とを含む。カバー72は、ケーシング10の空間SPのZ1方向側の開口を閉塞するカバーである。カバー72は、ケーシング10のZ1方向側の端部の開口を覆うように、ケーシング10に取付けられる。カバー72は、ケーシング10と同じ部材で構成されていることが好ましい。端子部74は、カバー72に取付けられている。端子部74は、基板60の回路に電気的に接続される配線(図示略)と、配線に接続される端子とを含む。
【0029】
(保持部材)
以下、保持部材50についてより詳細に説明する。
図2及び
図3は、本実施形態に係る保持部材の模式図である。
図2は、保持部材50の斜視図であり、
図3は、保持部材の上面図である。保持部材50は、ベアリングB2を保持する板状(ここでは円板状)の部材である。
図3に示すように、保持部材50は、表面50aから反対側の表面50bまで貫通する開口50H1が形成されている。開口50H1は、ベアリングB2が挿入されて駆動軸32が挿通される開口である。開口50H1は、Z方向から見て保持部材50の中央箇所に形成されている。表面50aの開口50H1の周囲には、表面50aからZ2方向側に突出する壁部52が設けられている。壁部52は、表面50aにおいて、開口50H1の周りを周方向の全区間にわたって設けられて、開口50H1を囲う。ここでの周方向とは、Z方向に沿った保持部材50の中心軸を軸方向とした場合の周方向である。また、開口50H1内には、座面54が形成されている。座面54は、開口50H1の内周面よりも径方向内側に突出する部分である。座面54は、開口50H1において、表面50b側に形成されている。ここでの径方向とは、Z方向に沿った保持部材50の中心軸を軸方向とした場合の径方向である。
【0030】
保持部材50には、表面50aから反対側の表面50bまで貫通する開口50H2、50H3が形成されている。開口50H2は、開口50H1に対して径方向外側の位置に形成されている。開口50H2は、開口50H1より径が小さい。開口50H2は、バスバーユニット40のバスバーが挿通される開口であり、ステータコイル24のU相、V相、W相に対応するように3つ形成されている。開口50H3は、開口50H1に対して径方向外側の位置に形成されている。開口50H3は、開口50H2より径が小さい。
【0031】
保持部材50には、厚み(Z方向における長さ)が他の部分より大きくなる厚肉部56が形成されている。厚肉部56は、開口50H1や壁部52よりも径方向外側に形成されている。厚肉部56は、壁部52よりも径方向外側の領域の他の部分よりも、厚みが厚く、Z1方向側に突出している。ただし、厚肉部56よりも壁部52の方が、Z1方向側に突出していてよい。厚肉部56は、互いに間隔を開けながら、周方向に複数並んで形成されている。また、周方向に隣り合う厚肉部56同士の間の部分が、厚肉部56よりも厚みが小さい薄肉部57であるといえる。
図3の例では、薄肉部57も、互いに間隔を開けながら周方向に複数並んで形成されているといえる。
図3の例では、厚肉部56は、周方向に並んで3つ形成されているため、薄肉部57も、周方向に並んで3つ形成されているといえる。なお、開口50H2、50H3は、厚肉部56ではなく薄肉部57の領域内に形成されている。
【0032】
保持部材50は、以上説明した形状であることに限られず、任意の形状であってもよく、例えば開口50H2、50H3が形成されていなかったり、厚肉部56や薄肉部57が形成されておらず一様の厚みであったりしてもよい。
【0033】
保持部材50は、アルミニウム合金の部材で構成される。より詳しくは、保持部材50は、ADC12の部材で構成される。保持部材50は、回転電機100の使用前においては、言い換えればケーシング10内に固定される前(回転電機100に組付けられる前)においては、熱処理が施されずに、永久生長前の状態となっている。保持部材50は、ケーシング10内に固定される前においては、永久生長環境に置かれたことがないともいえる。なお、保持部材50は、ADC12で構成されることに限られず、任意の部材であってよい。
【0034】
次に、保持部材50とケーシング10との取り付け状態について説明する。
図1に示すように、保持部材50は、Z2方向側の表面50aが、側部14の内周面10A1と内周面10A2との間に形成される座面10Bに接触している。保持部材50は、外周面50cがケーシング10の内周面10A2に対して接触して、ケーシング10に対して固定されている。すなわち、保持部材50は、ケーシング10に締り嵌めされている。保持部材50は、表面50aが座面10Bに接触した状態で、ケーシング10に対して固定されている。
【0035】
図4は、保持部材とケーシングとベアリングとの寸法関係を説明する図である。
図4に示すように、ケーシング10の内径を、内径D1とし、保持部材50の外径を、外径D2とする。内径D1は、ケーシング10の側部14A2における内径、すなわち内周面10A2における内径である。ここで、保持部材50をケーシング10から取り外した際の、外径D2と内径D1との差分を、寸法差D12とする。すなわち、寸法差D12は、保持部材50がケーシング10に挿入されて固定された後に、保持部材50をケーシング10から取り外した際の、保持部材50の外径D2からケーシング10の内径D1を差し引いた値ともいえる。寸法差D12は、ケーシング10と保持部材50との締め代に相当するともいえる。この場合、回転電機100は、回転電機100の使用前において、すなわち保持部材50の永久生長前において、保持部材50をケーシング10から取り外した際の内径D1に対する、寸法差D12の比率が、0.02%以上0.22%以下となっていることが好ましい。この比率が0.02%以上となることで、保持部材50とケーシング10との締め付け荷重を適切に保ち、0.22%以下となることで、圧入力が高すぎることによるケーシング10や保持部材50の破損を抑制できる。
【0036】
また、保持部材50は、永久生長前の状態であるため、加熱により永久生長する。ここで、回転電機100の使用前における、永久生長前の状態の保持部材50の、常温における外径D2を、基準外径とする。ここでの常温は、例えば25℃である。また、回転電機100の使用前における、永久生長前の状態の保持部材50を200℃で5時間加熱した後、常温に戻した場合の保持部材50の外径D2を、永久生長外径とする。この場合、基準外径に対する永久生長外径の比率は、100.1%以上100.14%以下であることが好ましい。
【0037】
次に、保持部材50とベアリングB2との取り付け状態について説明する。
図1に示すように、保持部材50は、開口50H1内に、軸受けであるベアリングB2が設けられている。
図1に示すように、ベアリングB2は、Z1方向側の表面が、保持部材50の座面54に接触している。ベアリングB2は、外周面が保持部材50の開口50H1の内周面に接触することで、保持部材50に対して固定されている。すなわち、ベアリングB2は、保持部材50に締り嵌めされている。ベアリングB2は、保持部材50に対して固定されているため、保持部材50を介して、ケーシング10に対して固定されているともいえる。なお、
図1の例では、ベアリングB2は、Z1方向側の表面が座面54に接触して、Z2方向側を向いているが、それに限られない。例えば、保持部材50が、表面50aがZ2方向側を向くように(すなわち
図1とは逆方向に)ケーシング10に取り付けられており、ベアリングB2が、Z2方向側の表面が座面54に接触するように保持部材50に取り付けられることで、Z1方向側を向いてもよい。
【0038】
図4に示すように、保持部材50の開口50H1の内径を、内径D3とし、ベアリングB2の外径を、外径D4とする。ここで、ベアリングB2を保持部材50から取り外した際の、外径D4と内径D3との差分を、寸法差D34とする。すなわち、寸法差D34は、保持部材50の開口50H1にケーシング10に挿入されて固定された後に、ベアリングB2を保持部材50から取り外した際の、ベアリングB2の外径D4から保持部材50の内径D3を差し引いた値ともいえる。寸法差D34は、保持部材50とベアリングB2との締め代に相当するともいえる。
【0039】
(回転電機の製造方法)
次に、回転電機100の製造方法(組み立て方法)について説明する。
図5から
図7は、本実施形態に係る回転電機の製造方法を説明する図である。
図5に示すように、本製造方法においては、ベアリング配置ステップを実行する(ステップS10)。ベアリング配置ステップにおいては、保持部材50の開口50H1内に、保持部材50に対して固定されない状態で、ベアリングB2を配置する。ベアリング配置ステップにおいては、開口50H1の内径D3が、ベアリングB2の外径D4よりも大きい保持部材50を用いることが好ましい。開口50H1の内径D3がベアリングB2の外径D4より大きいので、ベアリングB2は、保持部材50の開口50H1内に配置されても、保持部材50に締り嵌めされることなく、保持部材50に固定されない。
【0040】
より具体的には、ベアリング配置ステップにおいては、駆動軸32の外周面に、ベアリングB1、ロータコア34、及びベアリングB2を取り付ける。すなわち、ベアリングB1の開口と、ロータコア34の開口と、ベアリングB2の開口とに、駆動軸32を挿入する。そして、駆動軸32に取り付けられたベアリングB2を、保持部材50の開口50H1内に、保持部材50に対して固定されない状態で配置する。ただし、ベアリング配置ステップは、ベアリングB2を、保持部材50の開口50H1内に、保持部材50に対して固定されない状態で配置する工程であればよく、駆動軸32に取り付けられたベアリングB2を保持部材50の開口50H1内に配置することに限られない。例えば、駆動軸32に取り付けられる前のベアリングB2を保持部材50の開口50H1内に配置してから、ベアリングB2に駆動軸32を挿入してもよい。
【0041】
なお、本実施形態における固定された状態とは、挿入部材に所定の荷重値となる閾値荷重(抜け荷重)を加えても、挿入部材が被挿入部材から抜けない状態を指す。一方、本実施形態における固定されない状態とは、閾値荷重を加えることで、挿入部材が被挿入部材から抜ける状態を指す。
図5の例では、開口50H1の内径D3をベアリングB2の外径D4より大きくすることで、挿入部材であるベアリングB2が被挿入部材である保持部材50に対して固定されない状態としていたが、それに限られない。すなわち、ベアリングB2保持部材50に対して固定されない状態(すなわち閾値荷重で抜ける状態)であれば、外径D4が内径D3以上の寸法であってもよい。
【0042】
次に、
図6に示すように、保持部材配置ステップを実行する(ステップS12)。保持部材配置ステップにおいては、ケーシング10内に、ケーシング10に対して固定されない状態で、保持部材50を配置する。本実施形態では、焼き嵌めによってケーシング10と保持部材50とを固定するため、保持部材配置ステップにおいては、ケーシング10を加熱してケーシング10の内径を膨張させた状態で、ケーシング10内に保持部材50を挿入して、保持部材50の表面50aをケーシング10の座面10Bに接触させる。保持部材配置ステップにおいては、ケーシング10の内径が膨張しているので、保持部材50を、ケーシング10に対して固定されない状態で、ケーシング10内に配置することができる。
【0043】
より具体的には、保持部材配置ステップにおいては、ケーシング10内に、ステータ20及びバスバーユニット40を配置した状態で、ケーシング10内に、保持部材50を配置する。さらに言えば、保持部材配置ステップは、ベアリング配置ステップの後に実行されるので、ベアリングB2が配置された保持部材50を、ケーシング10内に配置する。これにより、ケーシング10内に、ベアリングB1、駆動軸32、ロータコア34、ベアリングB2、及び保持部材50が配置される。なお、保持部材配置ステップとベアリング配置ステップとの実行順は任意であり、例えば保持部材配置ステップの後にベアリング配置ステップを実行してもよい。この場合、ケーシング10内に、ベアリングB2が配置されていない保持部材50を配置した後に、保持部材50の開口50H1内に、ベアリングB2を固定されない状態で配置してよい。
【0044】
次に、
図7に示すように、固定ステップを実行する(ステップS14)。固定ステップにおいては、保持部材50の外周面50cにケーシング10の内周面10A2を接触させて、保持部材50をケーシング10内でケーシング10に対して固定しつつ、保持部材50の開口50H1の内周面にベアリングB2の外周面を接触させて、保持部材50にベアリングB2を固定する。本実施形態においては、ケーシング10に保持部材50を焼き嵌めすることで、固定ステップを実行する。具体的には、固定されない状態で保持部材50が設置されたケーシング10を冷却することで、ケーシング10の内径が元に戻り(縮み)、ケーシング10の内周面10A2が保持部材50の外周面50cに接触して、保持部材50がケーシング10に固定された状態、すなわち締り嵌めされた状態となる。さらに、保持部材50は、外周面50cにおいて、収縮したケーシング10の内周面10A2からの径方向内側への荷重が作用する。保持部材50は、この径方向内側の荷重を受けることで、開口50H1の内周面が、径方向内側に突出する。これにより、開口50H1の内径D3が、ベアリング配置ステップでの状態から縮んで、保持部材50の開口50H1の内周面にベアリングB2の外周面が接触して、ベアリングB2が保持部材50に固定された状態、すなわち締り嵌めされた状態となる。
【0045】
固定ステップにおいて保持部材50及びベアリングB2を固定したら、基板60、及びカバー部材70をケーシング10に組み付けることで、回転電機100の製造が完了する。回転電機100は、使用されることにより、永久生長環境下におかれるため、保持部材50が永久生長して、使用前よりもケーシング10に対してより強く固定されることになる。
【0046】
このように、本製造方法において、固定ステップにおいて、一度の工程(処理)だけで、ここではケーシング10と保持部材50とを焼き嵌めする工程だけで、ケーシング10への保持部材50の固定と、保持部材50へのベアリングB2の固定との、両方を行うことができる。すなわち、本製造方法によると、ケーシング10への保持部材50の固定のための処理と、保持部材50へのベアリングB2の固定のための工程(処理)とをそれぞれ実施することなく、一度の工程で両方を固定することが可能となるため、固定工程を簡略化することができる。
【0047】
さらに、本実施形態に係る保持部材50は、厚肉部56と薄肉部57とが形成されている。保持部材50は、厚肉部56の箇所よりも、薄肉部57の箇所において、径方向内側への突出量が大きくなるので、薄肉部57の箇所でベアリングB2をより強く固定する。言い換えれば、保持部材50に変形しやすい薄肉部57を設けることで、ベアリングB2を強く固定する箇所を予め設定しておくことが可能となるため、ベアリングB2を適切に固定できる。特に、開口50H2などの開口がある場合には、力が開口50H2の部分などに逃げてしまい、開口50H1を適切に変形させられなくおそれもあるが、薄肉部57を設けることで、薄肉部57に適切に力を伝達させて、開口50H1を適切に変形させることが可能となる。さらに、薄肉部57は、周方向に複数形成されているため、周方向に複数の箇所でベアリングB2を強く固定して、ベアリングB2を安定的に固定できる。
【0048】
図8は、保持部材から取り出したベアリングの模式図である。上記のように、本実施形態においては、薄肉部57においてベアリングB2をより強く固定する。そのため、固定されたベアリングB2を保持部材50から取り出した際には、ベアリングB2は、
図8に示すように、薄肉部57に押された部分に、他の部分よりも強い圧痕B2aが残っている。
【0049】
なお、以上の説明では、焼き嵌めにより固定ステップを実行していたが、固定ステップは焼き嵌めに限られない。例えば、固定ステップは、ケーシング10への保持部材50の圧入や、ケーシング10の加締めなどによって実行してもよい。
【0050】
圧入する場合には、ケーシング10を加熱することなく、ケーシング10の内径より保持部材50の外径が大きい状態で、ケーシング10内に保持部材50を圧入する。圧入により、ケーシング10の内周面10A2が保持部材50の外周面50cに接触して、保持部材50がケーシング10に固定された状態となる。さらに、保持部材50には、圧入により、径方向内側への荷重が作用して、開口50H1の内径D3が縮んで、保持部材50の開口50H1の内周面にベアリングB2の外周面が接触して、ベアリングB2が保持部材50に固定された状態となる。なお、圧入の場合には、ケーシング10内に固定されない状態で保持部材50を配置する保持部材配置ステップが省略されて、固定ステップにおいて、ケーシング10内に保持部材50を固定しながら配置しつつ、保持部材50とベアリングB2とを固定する。
【0051】
加締める場合には、ケーシング10を加熱しないが、ケーシング10の内径を予め大きく設定しておく。そして、保持部材配置ステップで、ケーシング10内に固定されない状態で保持部材50を配置したら、ケーシング10に対し、保持部材50が設置されている箇所の外周面から、径方向内側に荷重を作用させる。これにより、ケーシング10が塑性変形して内径が縮み、ケーシング10の内周面10A2が保持部材50の外周面50cに接触して、保持部材50がケーシング10に固定された状態となる。さらに、ケーシング10から押されることにより、保持部材50には、径方向内側への荷重が作用して、開口50H1の内径D3が縮んで、保持部材50の開口50H1の内周面にベアリングB2の外周面が接触して、ベアリングB2が保持部材50に固定された状態となる。なお、加締めにおいては、ケーシング10の外周の周方向の全区間にわたって径方向内側の荷重を付与してもよいし、全区間ではなく、周方向に間隔をおいて径方向内側の荷重を付与してもよい。
【0052】
(固定ステップの他の例)
図9は、固定ステップの別の例を示す模式図である。以上説明した固定ステップにおいては、ケーシング10の内径を縮めることで、ケーシング10と保持部材50とを固定しつつ、保持部材50とベアリングB2とを固定していたが、それに限られない。例えば
図9に示すように、保持部材50に荷重を作用させることで、保持部材50の外周面50cを径方向外側に広げつつ、開口50H1の内周面を径方向内側に突出させて、ケーシング10と保持部材50とを固定しつつ、保持部材50とベアリングB2とを固定してもよい。具体的には、この場合、径方向における保持部材50のZ1方向側の表面の開口50H1と外周面50cとの間の位置に、Z2方向(軸方向)の荷重を加える。より詳しくは、保持部材50の表面50bには、表面50bの開口50H1の周囲には、表面50bからZ1方向側に突出する壁部59が設けられている(
図1、
図9を参照)。壁部59は、表面50bにおいて、開口50H1の周りを周方向の全区間にわたって設けられて、開口50H1を囲う。そして、
図9の例では、保持部材50の表面50bの、径方向において壁部59と外周面50cとの間の位置P1に、Z2方向(軸方向)の荷重を加える。位置P1は、外周面50cの近傍に位置していることが好ましく、例えば、位置P1から外周面50cまでの径方向における距離は、位置P1から壁部59の外周面までの距離よりも、短いことが好ましい。ただし、荷重を加える位置は位置Aに限られず、壁部59の表面である位置P2に、Z2方向(軸方向)の荷重を加えてもよい。保持部材50は、ケーシング10の座面10Bに保持されているため、Z方向の圧縮荷重が作用して、厚みが小さくなりつつ、外周面50cが径方向外側に広がって、開口50H1の内周面が径方向側に突出する。これにより、ケーシング10の内周面10A2が保持部材50の外周面50cに接触して、保持部材50がケーシング10に固定された状態となり、保持部材50の開口50H1の内周面にベアリングB2の外周面が接触して、ベアリングB2が保持部材50に固定された状態となる。この場合においても、保持部材50に荷重を付与する、すなわち保持部材50を加締める、という1回の工程(処理)だけで、ケーシング10への保持部材50の固定と、保持部材50へのベアリングB2の固定との、両方を行うことができるため、固定工程を簡略化できる。
【0053】
図10は、固定ステップの別の例を示す模式図である。
図10は、保持部材50が
図9とは反対方向にケーシング10に挿入される例を示している。すなわち、
図10の例では、保持部材50は、表面50a側からケーシング10内に挿入されるため、表面50aがZ2方向側の表面となり、表面50bがZ1方向の表面となっている。この場合においては、Z2方向側への荷重は、保持部材50の表面50aの、径方向において壁部52と外周面50cとの間の位置P1aに加えられてよい。位置P1aは、外周面50cの近傍に位置していることが好ましく、例えば、位置P1から外周面50cまでの径方向における距離は、位置P1aから壁部52の外周面までの距離よりも、短いことが好ましい。また、Z2方向側への荷重は、壁部52の表面である位置P2aに加えられてもよい。このように荷重が加えられることで、
図9の場合と同様に、保持部材50の外周面50cが径方向外側に広がりつつ、開口50H1の内周面を径方向内側に突出して、ケーシング10と保持部材50とが固定され、保持部材50とベアリングB2とが固定される。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る回転電機100の製造方法は、駆動軸32と、駆動軸32を回転可能に支持するベアリングB2と、開口50H1が形成される保持部材50と、駆動軸32、ベアリングB2及び保持部材50を収納するケーシング10と、を備える回転電機100の製造方法である。本製造方法は、ベアリング配置ステップと、固定ステップとを含む。ベアリング配置ステップにおいては、保持部材50の開口50H1内に、保持部材50に対して固定されない状態でベアリングB2を配置する。固定ステップにおいては、保持部材50の外周面50cにケーシング10の内周面10A2を接触させて、保持部材50をケーシング10に対して固定しつつ、保持部材50の開口50H1の内周面にベアリングB2の外周面を接触させて、保持部材50にベアリングB2を固定する。本製造方法によると、固定ステップという一度の工程だけで、ケーシング10への保持部材50の固定と、保持部材50へのベアリングB2の固定との、両方を行うことができるため、固定工程を簡略化することができる。
【0055】
また、固定ステップにおいては、ケーシング10の内径を縮めて保持部材50の外周面50cにケーシング10の内周面10A2を接触させることで、保持部材50に径方向内側への荷重を作用させて、開口50H1の内周面を径方向内側に突出させて、ベアリングB2の外周面に接触させる。本製造方法によると、ケーシング10の内径を縮めることで保持部材50とベアリングB2との両方を固定するため、固定工程を簡略化しつつ、保持部材50とベアリングB2とを適切に固定できる。
【0056】
また、保持部材50には、厚みが薄い薄肉部57が設けられており、固定ステップにおいては、薄肉部57における開口50H1の内周面の径方向内側への突出量を、薄肉部57以外における開口50H1の内周面の径方向内側への突出量よりも、大きくする。本製造方法によると、変形しやすい薄肉部57を設けることで、ベアリングB2を強く固定する箇所を予め設定しておくことが可能となるため、ベアリングB2を適切に固定できる。
【0057】
また、固定ステップにおいて、焼き嵌めにより、保持部材50の外周面50cにケーシング10の内周面10A2を固定させつつ、保持部材50にベアリングB2を固定させる。焼き嵌めにより固定ステップを実行することで、固定工程を簡略化しつつ、保持部材50とベアリングB2とを適切に固定できる。
【0058】
また、固定ステップにおいて、ケーシング10の外周から保持部材50に荷重を作用させることで、保持部材50の外周面50cにケーシング10の内周面10A2を固定させつつ、保持部材50にベアリングB2を固定させる。ケーシング10の外周に荷重を加えて固定ステップを実行することで、固定工程を簡略化しつつ、保持部材50とベアリングB2とを適切に固定できる。
【0059】
また、固定ステップにおいては、保持部材50に対して、駆動軸32の軸方向に沿った方向(Z2方向)への荷重を作用させることで、保持部材50の外周面50cを径方向外側に突出させて、保持部材50の外周面50cにケーシング10の内周面10A2を接触させつつ、保持部材50の開口50H1の内周面を径方向内側に突出させて、ベアリングB2の外周面に接触させる。本製造方法によると、保持部材50に軸方向の荷重を付与するという1回の工程で、保持部材50とベアリングB2との両方を固定するため、固定工程を簡略化することができる。
【0060】
また、本製造方法は、永久生長前の状態のアルミニウム合金の部材である保持部材50を用いて、回転電機100を製造する。本製造方法によると、製造後に回転電機100が使用されてから、保持部材50が永久生長するため、永久生長を利用して、保持部材50をケーシング10により強く固定することができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態及び実施例を説明したが、これら実施形態等の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0062】
10 ケーシング
10A2 内周面
20 ステータ
30 ロータ
32 駆動軸
50 保持部材
50c 外周面
50H1 開口
B2 ベアリング
100 回転電機