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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20240719BHJP
   F24F 13/15 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B60H1/34 611A
F24F13/15 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020114774
(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公開番号】P2022012731
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】上原 信真
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-146617(JP,A)
【文献】特開平09-220927(JP,A)
【文献】実開平02-147749(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
F24F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風を所定の通気方向に案内する通気路と、
この通気路に可動的に支持される風向調整素子と、を備え、
前記風向調整素子は、
前記通気路に対し前記通気方向と交差する一の方向に移動可能な第一の可動支持体と、
少なくとも一部が前記通気路に位置し、前記通気方向と前記一の方向とに対して交差する他の方向に移動可能に前記第一の可動支持体に支持される第二の可動支持体と、を有し、
前記第一の可動支持体と前記第二の可動支持体との少なくともいずれかは、前記通気路から吹き出される風の方向を設定する風向調整羽根を備え
前記風向調整羽根は、前記第一の可動支持体に対し前記他の方向に回動可能に支持される第一の回動軸と、この第一の回動軸よりも前記通気方向の下流側の位置で前記第二の可動支持体に対し前記他の方向に回動可能に支持される第二の回動軸と、を有する
ことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
風向調整素子は、少なくとも通気方向に沿って形成され通気路の出口部分に位置する凸部を第二の可動支持体に有する
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置
【請求項3】
第一の可動支持体は、風向調整羽根である上流側風向調整羽根をさらに備え、
前記上流側風向調整羽根は、通気路に対し一の方向に回動可能に支持される第一の上流側回動軸と、この第一の上流側回動軸よりも前記通気方向の下流側の位置で前記第一の可動支持体に対し前記一の方向に回動可能に支持される第二の上流側回動軸と、を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気路に可動的に支持される風向調整素子を備える風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、吹き出す風向を調整する風向調整装置がある。風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えばインストルメントパネルやセンタコンソール部などの車両の各部に設置されて、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
一般的な風向調整装置は、回動可能な複数のフィンが通風路にて通気方向と交差する方向に回動可能に支持されている。フィンには、上流側フィンと下流側フィンとが通気路の上流側と下流側とに設定され、上流側フィンと下流側フィンとは、回動方向が互いに交差するように配置されている。そして、上流側フィン及び下流側フィンを回動させることによって風向を調整する。
【0004】
この構成の場合、各フィンは回動方向に動くに過ぎないため、上流側フィンと下流側フィンとをそれぞれ独立に操作をすることで風向を二次元的に操作するようになっている。つまり、この構成では、風向の調整のために上流側フィンを動作させる操作と下流側フィンを動作させる操作との二つの操作、つまり2アクションが必要になる。そのため、風向の微調整が煩雑である。また、複数の下流側フィンを連動操作するためのノブを下流側フィンのいずれかに配置した場合、下流側フィンを回動させたときに、隣接する下流側フィンあるいは通気路を構成するケースの縁部にノブが近接することにより、指掛け代が少なくなり、ノブがつまみにくくなる。そのため、ノブの操作性を低下させないようにノブを長く形成するなど、構造的な対策が別途必要になる。
【0005】
そこで、通風路の出口部分に複数のセル配列により境界付けられた格子を取り付け、この格子の中央部にノブをボールによって支持し、このノブの軸の先端にて通気路内に角筒状の干渉部材を接続して、ノブの操作により干渉部材を回動させることにより風向を調整する構成が知られている。この構成の場合には、ノブを操作するワンアクションのみで風向を調整可能となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表平7-504632号公報 (第3-4頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の構成の場合、ノブを操作したときにノブの角度が風向に応じて変化するため、ノブを一定角度で操作者側に向ける意匠が成立しない。また、干渉部材には、四つの側面にそれぞれ傾斜をつけているため、中立位置のときにこれら側面の傾斜によって抵抗が生じやすいとともに、通気路内の風向調整作用が限定的で、明確な指向性を持たせるためのさらなる構成が必要になる。さらに、ノブの軸の長さが干渉部材側に所定以上でないと、干渉部材の回動範囲が広く取れず、他方、干渉部材を大きくすると調整角度範囲が狭くなるなど、構造的に性能面の制約が生じやすく、また、ノブを操作したときに、傾斜したノブが格子に近接することでつまみにくくなるなど、操作性の低下の改善も求められる。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、操作性を向上した風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の風向調整装置は、風を所定の通気方向に案内する通気路と、この通気路に可動的に支持される風向調整素子と、を備え、前記風向調整素子は、前記通気路に対し前記通気方向と交差する一の方向に移動可能な第一の可動支持体と、少なくとも一部が前記通気路に位置し、前記通気方向と前記一の方向とに対して交差する他の方向に移動可能に前記第一の可動支持体に支持される第二の可動支持体と、を有し、前記第一の可動支持体と前記第二の可動支持体との少なくともいずれかは、前記通気路から吹き出される風の方向を設定する風向調整羽根を備え、前記風向調整羽根は、前記第一の可動支持体に対し前記他の方向に回動可能に支持される第一の回動軸と、この第一の回動軸よりも前記通気方向の下流側の位置で前記第二の可動支持体に対し前記他の方向に回動可能に支持される第二の回動軸と、を有するものである。
【0010】
請求項2記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、風向調整素子は、少なくとも通気方向に沿って形成され通気路の出口部分に位置する凸部を第二の可動支持体に有するものである。
【0011】
求項記載の風向調整装置は、請求項1または2記載の風向調整装置において、第一の可動支持体は、風向調整羽根である上流側風向調整羽根をさらに備え、前記上流側風向調整羽根は、通気路に対し一の方向に回動可能に支持される第一の上流側回動軸と、この第一の上流側回動軸よりも前記通気方向の下流側の位置で前記第一の可動支持体に対し前記一の方向に回動可能に支持される第二の上流側回動軸と、を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の風向調整装置によれば、一の方向のベクトル成分と他の方向のベクトル成分とを含む斜め方向であっても、第二の可動支持体をワンアクションで平行移動させ、第二の可動支持体の他の方向への操作に連動して風向調整羽根が他の方向に回動し、風向を調整できるので、操作性が良好である。
【0013】
請求項2記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加えて、使用者が凸部を摘んで第二の可動支持体を容易に操作できるとともに、第二の可動支持体は一の方向及び他の方向に平行移動するのみであるから、第二の可動支持体を移動させても凸部は通気路の通気方向との角度が一定の角度で変わらず、角度が変わることに起因する凸部への指掛け代の減少などが生じないので、操作性に優れる。
【0014】
求項記載の風向調整装置によれば、請求項1または2記載の風向調整装置の効果に加えて、第二の可動支持体の一の方向への操作に連動して上流側風向調整羽根が一の方向に回動し、風向を調整可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態の風向調整装置を示す縦断面図であり、(a)は他の方向における中立配風位置を示し、(b)は風向調整素子を他の方向の一方に振った配風位置を示す。
図2】同上風向調整装置を示す横断面図であり、(a)は一の方向における中立配風位置を示し、(b)は風向調整素子を一方向の一方に振った配風位置を示す。
図3】同上風向調整装置を示す正面図であり、(a)は風向調整素子を一の方向及び他の方向の一方に振った配風位置を示し、(b)は風向調整素子を一の方向及び他の方向の他方に振った配風位置を示す。
図4】同上風向調整装置の分解斜視図である。
図5】同上風向調整装置の斜視図である。
図6】本発明の第2の実施の形態の風向調整装置を示す縦断面図である。
図7】同上風向調整装置の第一の可動支持体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図5において、10は風向調整装置である。風向調整装置10は、エアアウトレット、ベンチレータなどとも呼ばれ、空調装置などからの風の吹き出し方向を調整するものである。以下、説明をより明確にするために、風向調整装置10は、風が吹き出す側を前側、正面側または手前側とし、その反対側、つまり風を受け入れる側を後側、背後側または奥側として、前側から見て左右方向である両側方向または幅方向、及び、上下方向を規定する。本実施の形態において、風向調整装置10は、自動車などの車両用の空調装置に適用される。風向調整装置10は、任意の位置に配置されていてよいが、図面においては、矢印FR側を前側、矢印RR側を後側、矢印L側を左側、矢印R側を右側、矢印U側を上側、矢印D側を下側とするように配置されているものとする。これらの方向は、あくまで一例として図示されるものであって、風向調整装置10の設置位置や設置向きによって適宜変更されるものとする。
【0018】
風向調整装置10は、構造部材としてのダクト部であるケース14を有する。ケース14は、風を案内する通気路15が内部に区画されている。ケース14は、前後方向に筒状に形成されている。本実施の形態において、ケース14は、角筒状に形成されている。ケース14の中心軸に平行な方向が通気路15の通気方向である。つまり、本実施の形態において、通気路15の通気方向は、前後方向であり、後方から前方に向かって通気される。すなわち、通気路15において、後側は通気方向の上流側、前側は通気方向の下流側である。
【0019】
また、風向調整装置10は、風向調整素子17を有する。風向調整素子17は、ケース14(通気路15)に対し可動的に支持される。風向調整素子17は、通気路15の出口部分に配置される。
【0020】
図4に示すように、風向調整素子17は、第一の可動支持体20を備える。本実施の形態において、第一の可動支持体20は、ケース14内の通気路15に全体が配置される。第一の可動支持体20は、通風路15の出口部分である前端部に近接して配置されている。
【0021】
図示される例では、第一の可動支持体20は、第一の支持体本体部22と、第一の支持体としての風向調整羽根である上流側風向調整羽根23と、を有する。第一の支持体本体部22は、サブケースとも呼ばれる。第一の支持体本体部22は、風が内部を通過する筒状に形成されている。本実施の形態において、第一の支持体本体部22は、角筒状に形成されている。第一の支持体本体部22は、ケース14よりも上下及び左右方向に小さい角筒状である。第一の支持体本体部22は、その軸方向がケース14の軸方向と平行または略平行に配置される。
【0022】
上流側風向調整羽根23は、上流側フィン、あるいは後フィンなどとも呼ばれる。上流側風向調整羽根23は、板状(フィン状)に形成され、通気路15を通過する風を案内する方向を設定する風案内板である。上流側風向調整羽根23は、一主面及び他主面が、それぞれ風を案内する案内面となっている。上流側風向調整羽根23は、ケース14(通気路15)に回動可能に支持される第一の支持軸部である第一の上流側回動軸25と、第一の支持体本体部22に回動可能に支持される第一の接続軸部である第二の上流側回動軸26と、を備えている。
【0023】
第一の上流側回動軸25は、上流側風向調整羽根23の回動中心となる基軸部である。第一の上流側回動軸25は、上流側風向調整羽根23の厚み方向と交差する方向に突設されている。第一の上流側回動軸25は、ケース14に形成された軸受け穴などの第一の上流側軸受け部28に回動可能に支持される。
【0024】
第二の上流側回動軸26は、第一の上流側回動軸25と平行または略平行に形成されている。つまり、第二の上流側回動軸26は、上流側風向調整羽根23の厚み方向と交差する方向に突設されている。また、第二の上流側回動軸26は、第一の上流側回動軸25に対して離れて配置されている。第二の上流側回動軸26は、第一の支持体本体部22に形成された軸受け穴などの第二の上流側軸受け部29に回動可能に支持される。
【0025】
本実施の形態において、上流側風向調整羽根23は、通気路15の通気方向と交差または直交する一の方向である左右方向に回動可能に支持される。すなわち、上流側風向調整羽根23は、上下方向に沿って配置され、第一の上流側回動軸25及び第二の上流側回動軸26が上下方向に突出され、ケース14の上下に形成された第一の上流側軸受け部28及び第一の支持体本体部22の上下に形成された第二の上流側軸受け部29にそれぞれ回動可能に支持されている。つまり、本実施の形態において、上流側風向調整羽根23は、板厚を左右方向に向けた縦フィンとなっており、回動に応じて風の方向を左右方向に調整可能となっている。そのため、第一の可動支持体20は、通気路15に対し一の方向である左右方向に移動可能となっている。
【0026】
上流側風向調整羽根23は、複数でも単数でもよい。本実施の形態において、上流側風向調整羽根23は、複数配置されている。図2(a)及び図2(b)に示す例では、ケース14の側部に近接する左右両側に位置する上流側風向調整羽根23が、それらの間に位置する上流側風向調整羽根23よりも通気方向の上流側である後側に延びて形成されている。
【0027】
第一の可動支持体20には、第二の可動支持体30が回動可能に支持される。第二の可動支持体30は、少なくとも一部が第一の可動支持体20よりも下流側である前側に配置されている。本実施の形態において、第二の可動支持体30は、ケース14内の通気路15に下流側が配置され、上流側が通気路15から空気の吹き出し側である前側に突出している。
【0028】
図4に示すように、第二の可動支持体30は、第二の支持体本体部32と、第二の支持体としての風向調整羽根33と、を備える。第二の支持体本体部32は、フィニッシャとも呼ばれる。第二の支持体本体部32は、風が内部を通過する筒状に形成されている。本実施の形態において、第二の支持体本体部32は、角筒状に形成されている。第二の支持体本体部32は、ケース14及び第一の支持体本体部22よりも上下及び左右方向に小さい角筒状である。第二の支持体本体部32は、その軸方向がケース14及び第一の支持本体部22の各軸方向と平行または略平行に配置される。図2(a)及び図2(b)に示す例では、第二の支持体本体部32は、後側がケース14の内部に位置し、前側がケース14から外部に突出して位置する。つまり、第二の支持体本体部32は、少なくとも一部がケース14の内部の通気路15に位置する。また、本実施の形態において、図3(a)及び図3(b)に示すように、第二の支持体本体部32は、正面から見た外形がケース14よりも小さく形成されている。したがって、第二の支持体本体部32とケース14の内面との間には、第二の支持体本体部32が上下左右方向に移動し得るスペースが形成されている。
【0029】
図4に示す風向調整羽根33は、下流側フィン、あるいは前フィンなどとも呼ばれる。風向調整羽根33は、板状(フィン状)に形成され、通気路15を通過する風を案内する方向を設定する風案内板である。風向調整羽根33は、一主面及び他主面が、それぞれ風を案内する案内面となっている。風向調整羽根33は、第一の可動支持体20(第一の支持体本体部22)に回動可能に支持される第二の支持軸部である第一の回動軸35と、第二の支持体本体部32に回動可能に支持される第二の接続軸部である第二の回動軸36と、を備えている。
【0030】
第一の回動軸35は、風向調整羽根33の回動中心となる基軸部である。第一の回動軸35は、風向調整羽根33の厚み方向と交差する方向に突設されている。第一の回動軸35は、第一の支持体本体部22に形成された軸受け穴などの第一の軸受け部38に回動可能に支持される。第一の軸受け部38は、第二の上流側軸受け部29よりも通気方向の下流側、本実施の形態では前側に配置されている。
【0031】
第二の回動軸36は、第一の回動軸35と平行または略平行に形成されている。つまり、第二の回動軸36は、風向調整羽根33の厚み方向と交差する方向に突設されている。また、第二の回動軸36は、第一の回動軸35に対して離れて配置されている。第二の回動軸36は、第二の支持体本体部32に形成された軸受け穴などの第二の軸受け部39に回動可能に支持される。
【0032】
本実施の形態において、風向調整羽根33は、通気路15の通気方向及び一の方向である左右方向と交差または直交する他の方向である上下方向に回動可能に支持される。すなわち、風向調整羽根33は、左右方向に沿って配置され、第一の回動軸35及び第二の回動軸36が左右方向に突出され、第一の支持体本体部22の左右に形成された第一の軸受け部38及び第二の支持体本体部32の左右に形成された第二の軸受け部39にそれぞれ回動可能に支持されている。つまり、本実施の形態において、風向調整羽根33は、板厚を上下方向に向けた横フィンとなっており、回動に応じて風の方向を上下方向に調整可能となっている。そのため、第二の可動支持体30は、他の方向である上下方向に移動可能に第一の可動支持体20に支持される。
【0033】
風向調整羽根33は、複数でも単数でもよい。本実施の形態において、風向調整羽根33は、複数配置されている。
【0034】
さらに、本実施の形態において、第二の可動支持体30には、凸部41が形成されている。凸部41は、風向調整素子17を使用者が操作するためのノブ(摘み)である。凸部41は、第二の可動支持体30の下流側に配置されている。本実施の形態において、凸部41は、円柱状に形成されている。また、凸部41は、第二の可動支持体30に形成された支持部42に一体的に形成されている。図示される例では、支持部42は、十字状(格子状)に形成されている。支持部42が交差する位置に凸部41が配置されている。凸部41は、第二の可動支持体30の中央部に配置されている。また、図2(a)及び図2(b)に示すように、凸部41は、通気路15の通気方向に沿って、この通気路15の外方に延出されている。
【0035】
そして、風向調整装置10を組み立てる際には、まず、上流側風向調整羽根23の第二の上流側回動軸26を第一の支持体本体部22の第二の上流側軸受け部29に回動可能に支持して第一の可動支持体20を構成するとともに、風向調整羽根33の第一の回動軸35を第一の支持体本体部22の第一の軸受け部38に回動可能に支持し、かつ、風向調整羽根33の第二の回動軸を第二の支持体本体部32の第二の軸受け部39に回動可能に支持して風向調整素子17を構成する。次いで、この風向調整素子17を、第一の上流側回動軸25をケース14の第一の上流側軸受け部28に回動可能に支持するようにケース14に組み込むことで、風向調整装置10を完成する。
【0036】
図1(a)に他の方向における中立(ニュートラル)配風位置を示し、図1(b)に風向調整素子17を他の方向の一方に振った上振り配風位置を示す。風向調整素子17を他の方向の他方に振った下振り配風位置については、上振り配風位置と上下逆になるのみであるから、図示を省略する。使用者が凸部41を摘み、第二の支持体本体部32に対して上下方向に力を加えると、第二の支持体本体部32から力を受けた風向調整羽根33が第一の回動軸35を中心として上下方向に回動して傾斜して風向を上下に調整するとともに、風向調整羽根33の第二の回動軸36により第二の支持体本体部32が風向調整羽根33に追従する傾斜を抑制して、第二の支持体本体部32が通気路15の通気方向に対して軸方向が平行を維持したまま第一の可動支持体20及びケース14に対して上下方向に移動する。
【0037】
一方、図2(a)に一の方向における中立(ニュートラル)配風位置を示し、図2(b)に風向調整素子17を一の方向の一方に振った左振り配風位置を示す。風向調整素子17を一の方向の他方に振った右振り配風位置については、左振り配風位置と左右逆になるのみであるから、図示を省略する。使用者が凸部41を摘み、風向調整素子17を左右方向に力を加えると、第二の可動支持体30と風向調整羽根33を介して連結された第一の可動支持体20の第一の支持体本体部22が、第二の可動支持体30から左右方向の力を受け、上流側風向調整羽根23が第一の上流側回動軸25を中心として左右方向に回動して傾斜して風向を左右に調整するとともに、上流側風向調整羽根23の第二の上流側回動軸26により第一の支持体本体部22が上流側風向調整羽根23に追従する傾斜を抑制して、第一の支持体本体部22が通気路15の通気方向に対して軸方向が平行を維持したまま第二の可動支持体30と一体的にケース14(通気路15)に対して左右方向に移動する。
【0038】
そのため、第二の可動支持体30は、第一の可動支持体20の通気路15(ケース14)に対する一の方向の回動のベクトル成分と、第二の可動支持体30の第一の可動支持体20に対する他の方向の回動のベクトルの成分とがベクトル合成されて、図3(a)及び図3(b)に示すように、ケース14(通気路15)の出口部分において、ワンアクションで自在に平行移動し、風向がこれら合成された方向に調整される。
【0039】
このように、第1の実施の形態によれば、通気路15に可動的に支持される風向調整素子17を、通気路15に対し通気方向と交差する一の方向に移動可能な第一の可動支持体20と、通気方向と一の方向とに対して交差する他の方向に移動可能に第一の可動支持体20に支持される第二の可動支持体30とにより構成することで、一の方向のベクトル成分と他の方向のベクトル成分とを含む斜め方向であっても、第二の可動支持体30をワンアクションで平行移動させ、第一の可動支持体20と第二の可動支持体30との少なくともいずれかに設けた風向調整羽根33により風向を調整できる。したがって、風向の操作性が良好であるとともに、風向の微調整が容易で、かつ、直感的操作性の面でも優れる。
【0040】
第一の可動支持体20の第一の支持体本体部22及び第二の可動支持体30の第二の支持体本体部32は、それぞれ移動させた状態でも通気方向に対して平行または略平行を保つため、移動位置に拘らず通気抵抗が生じにくく、指向性を妨げにくい。
【0041】
また、少なくとも通気方向に沿って形成され通気路15の出口部分に位置する凸部41を第二の可動支持体30に設けることで、使用者が凸部41を摘んで第二の可動支持体30を容易に操作できるとともに、第二の可動支持体30は一の方向及び他の方向、すなわち上下左右方向に平行移動するのみであるから、第二の可動支持体30を移動させても凸部41は通気路15の通気方向である前後方向との角度が一定の角度で変わらず、角度が変わることに起因する凸部41への指掛け代の減少などが生じないので、操作性に優れる。
【0042】
また、凸部41を設ける位置に制限がないため、操作しやすい位置や見栄えがよい位置などに凸部41をレイアウトできるとともに、第二の可動支持体30を移動させたときに通気方向に対する凸部41の角度が変化しないので、凸部41のデザイン自由度にも優れる。
【0043】
風向調整羽根33の第一の回動軸35を第一の可動支持体20に対し他の方向に回動可能に支持し、この第一の回動軸35よりも通気方向の下流側の位置で、第二の回動軸36を第二の可動支持体30に対し他の方向に回動可能に支持することで、第二の可動支持体30の他の方向である上下方向への操作に連動して風向調整羽根33が他の方向である上下方向に回動し、風向を調整可能になる。
【0044】
風向調整羽根である上流側風向調整羽根23の第一の上流側回動軸25を通気路15に対し一の方向に回動可能に支持し、この第一の上流側回動軸25よりも通気方向の下流側の位置で、第二の上流側回動軸26を第一の可動支持体20に対し一の方向に回動可能に支持することで、第二の可動支持体30の一の方向である左右方向への操作に連動して上流側風向調整羽根23が一の方向である左右方向に回動し、風向を調整可能になる。
【0045】
次に、第2の実施の形態について、図6及び図7を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
本実施の形態の風向調整装置10は、第一の可動支持体20及び第二の可動支持体30が、図6に示すように、それぞれ第一の支持体45と第二の支持体46とを有する。
【0047】
本実施の形態において、第一の支持体45は、長尺状のフレーム体である。第一の支持体45は、一端部にケース14(通気路15)に回動可能に支持される第一の支持軸部50を備え、他端部に第一の支持体本体部22に回動可能に接続される第一の接続軸部51を備えている。例えば、第一の支持軸部50は、第一の上流側軸受け部28に回動可能に支持される。また、第一の接続軸部51は、第一の支持体本体部22の両側面に形成された開口の縁部などの第二の上流側軸受け部29に回動可能に嵌着される。本実施の形態において、第二の上流側軸受け部29は、図7に示すように、第一の支持体本体部22の両側面に他の方向である上下方向に離れて複数形成されている。
【0048】
図6に戻って、本実施の形態において、第二の支持体46は、長尺状のフレーム体である。第二の支持体46は、一端部に第一の支持体本体部22に回動可能に接続される第二の支持軸部53を備え、他端部に第二の支持体本体部32に回動可能に接続される第二の接続軸部54を備えている。第二の支持軸部53は、第一の支持体本体部22の上面及び下面に形成された開口の縁部などの第一の軸受け部38に回動可能に嵌着される。本実施の形態において、図7に示すように、第一の軸受け部38は、第一の支持体本体部22の上面及び下面に、一の方向である左右方向に離れて複数形成されている。また、図6に示すように、第二の接続軸部54は、第二の支持体本体部32に形成された第二の軸受け部39に回動可能に嵌着される。例えば、第二の軸受け部39は、第二の支持体本体部32の内部において、他の方向である上下方向に離れて複数形成されている。
【0049】
また、上流側風向調整羽根23は、第一の支持体本体部22に一体的に固定されている。同様に、風向調整羽根33は、第二の支持体本体部32に一体的に固定されている。例えば、本実施の形態において、上流側風向調整羽根23は、左右方向に長手状に延びる横フィンであり、風向調整羽根33は、上下方向に長手状に延びる縦フィンである。
【0050】
そして、通気路15に可動的に支持される風向調整素子17を、通気路15に対し通気方向と交差する一の方向に移動可能な第一の可動支持体20と、少なくとも一部が通気路15に位置し、通気方向と一の方向とに対して交差する他の方向に移動可能に第一の可動支持体20に支持される第二の可動支持体30とにより構成するなど、第1の実施の形態と同様の構成を有することで、風向の操作性が良好であるとともに、風向の微調整が容易で、かつ、直感的操作性の面でも優れるなど、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0051】
また、第一の可動支持体20に対して第二の可動支持体30を、第二の支持体46により移動可能に支持することで、第一の軸受け部38と第二の軸受け部39との位置を調整することにより、例えば第二の可動支持体30の第二の支持体本体部32を、第一の支持体本体部22よりも大きく形成することも可能になるなど、デザインの自由度をより向上できる。
【0052】
なお、各実施の形態において、上流側風向調整羽根23は、必須の構成ではない。
【0053】
また、風向調整羽根は、第一の可動支持体20側のみ、あるいは、第二の可動支持体30側のみに配置されていてもよい。
【0054】
さらに、凸部41は、必須の構成ではなく、第二の可動支持体30は、第二の支持体本体部32を直接操作することにより移動させてもよい。
【0055】
そして、上流側風向調整羽根23の回動方向を上下方向、風向調整羽根33の回動方向を左右方向などとしても、各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
10 風向調整装置
15 通気路
17 風向調整素子
20 第一の可動支持体
23 風向調整羽根である上流側風向調整羽根
25 第一の上流側回動軸
26 第二の上流側回動軸
30 第二の可動支持体
33 風向調整羽根
35 第一の回動軸
36 第二の回動軸
41 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7