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特許7523264共重合体ラテックスの製造方法、タイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法、及び空気入りタイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】共重合体ラテックスの製造方法、タイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法、及び空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 236/04 20060101AFI20240719BHJP
   C08F 2/22 20060101ALI20240719BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20240719BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C08F236/04
C08F2/22
C08F2/38
B60C1/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020116055
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022013975
(43)【公開日】2022-01-19
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】399034220
【氏名又は名称】日本エイアンドエル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上池 亮太
(72)【発明者】
【氏名】三崎 皇雄
(72)【発明者】
【氏名】吉安 勇人
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-086833(JP,A)
【文献】国際公開第2015/075971(WO,A1)
【文献】特開2007-154125(JP,A)
【文献】特開昭52-150456(JP,A)
【文献】特開2017-088769(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105111373(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102558578(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102558437(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 236/04
C08F 2/22
C08F 2/38
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤトレッド用ゴム組成物に用いられる共重合体ラテックスの製造方法であって、脂肪族共役ジエン系単量体、及びイタコン酸エステル単量体を含有する単量体成分を乳化重合するにあたり、連鎖移動剤を重合反応の開始までに添加する工程、及び連鎖移動剤を重合途中かつ反応系のポリマー転化率が30~70%の間に0.01~0.3質量部(共重合体ラテックスを構成する単量体成分100質量部に対して)添加する工程を有し、ポリマー転化率85%以上で重合反応を終了させる、共重合体ラテックスの製造方法。
【請求項2】
共重合体ラテックスのムーニー粘度ML1+4(100℃)が105以下である、請求項1に記載の共重合体ラテックスの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の共重合体ラテックスの製造方法で製造された共重合体を用いてタイヤトレッド用ゴム組成物を製造する工程を含む、タイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法で製造されたタイヤトレッドを用いて空気入りタイヤを製造する工程を含む、空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体ラテックスの製造方法、タイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法、及び空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤトレッドには、主に低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能等の性能を高レベルで付与することが要求され、これらの性能の改善方法について種々の検討がなされている。
【0003】
特許文献1では、繰り返し単位として、特定の量比のオレフィン性不飽和ニトリル単量体単位と、芳香族ビニル単量体単位と、共役ジエン単量体単位とを備える共役ジエン系ゴムを含むゴム成分、シリカ等の無機充填剤、及び少なくとも1個の重合性不飽和基と、アミノ基等の特定の官能基とを有する化合物を含有するゴム組成物とすることで、加工性に優れ、転がり抵抗等が小さく、十分な耐摩耗性等を有する加硫ゴムとすることができることが開示されている。
【0004】
特許文献2では、低燃費性、耐摩耗性、及びウェットグリップ性能をバランス良く改善するために共役ジエン系単量体とイタコン酸ジエステルとを共重合して合成される共重合体を使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-60437号公報
【文献】国際公開第2015/075971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで近年、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能等の性能のさらなる向上が求められている。そこで、本発明は、良好な生産性、充填剤分散性、加工性を得ながら、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能をバランス良く改善できるタイヤトレッド用ゴム組成物を提供することができる、共重合体ラテックスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物に用いられる共重合体ラテックスの製造方法であって、脂肪族共役ジエン系単量体、及びイタコン酸エステル単量体を含有する単量体成分を乳化重合するにあたり、連鎖移動剤を重合途中に添加する工程を有し、ポリマー転化率85%以上で重合反応を終了させる、共重合体ラテックスの製造方法を提供する。
【0008】
本発明の共重合体ラテックスの製造方法において、共重合体ラテックスのムーニー粘度ML1+4(100℃) が105以下であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の共重合体ラテックスの製造方法で製造された共重合体を用いてタイヤトレッド用ゴム組成物を製造する工程を含む、タイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法を提供する。
【0010】
さらに、本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法で製造されたタイヤトレッドを用いて空気入りタイヤを製造する工程を含む、空気入りタイヤの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、良好な生産性、充填剤分散性、加工性を得ながら、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能をバランス良く改善できるタイヤトレッド用ゴム組成物を提供することができる、共重合体ラテックスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態に係る共重合体ラテックスの製造方法は、タイヤトレッド用ゴム組成物に用いられる共重合体ラテックスの製造方法であって、脂肪族共役ジエン系単量体、及びイタコン酸エステル単量体を含有する単量体成分を乳化重合するにあたり、連鎖移動剤を重合途中に添加する工程を有し、ポリマー転化率85%以上で重合反応を終了させる。
【0013】
まず、共重合体ラテックスを構成する単量体成分について説明する。
【0014】
脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、並びに、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などの単量体が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、工業的に容易に製造され、入手の容易性、及びコストの観点から、1,3-ブタジエンを用いることが好ましい。
【0015】
イタコン酸エステル単量体としては、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル等が挙げられ、具体的には、イタコン酸1-メチル、イタコン酸4-メチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸1-エチル、イタコン酸4-エチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸1-プロピル、イタコン酸4-プロピル、イタコン酸ジプロピル、イタコン酸1-ブチル、イタコン酸4-ブチル、イタコン酸ジブチル等が挙げられる。これらの単量体は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、良好な充填剤分散性、加工性を得ながら、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能のバランスを改善できる点から、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチルが望ましい
【0016】
さらに、上記単量体の他に、スチレン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等、通常の乳化重合において使用される単量体を使用することができる。
【0017】
脂肪族共役ジエン系単量体の含有量は、共重合体ラテックスを構成する単量体成分全量に対し、20~95質量%であることが好ましく、40~90質量%であることがより好ましい。含有量を上記範囲とすることにより、充填剤分散性、加工性、及び低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能のバランスを改善させることができる。
【0018】
イタコン酸エステル単量体の含有量は、共重合体ラテックスを構成する単量体成分全量に対し、5~80質量%であることが好ましく、10~60質量%であることがより好ましい。含有量を上記範囲とすることにより、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能のバランスを改善させることができる。
【0019】
さらに、脂肪族共役ジエン系単量体、イタコン酸エステル単量体と共重合可能な他の単量体の含有量は、共重合体ラテックスを構成する単量体成分全量に対し、0~60質量%であることが好ましく、0~20質量%であることがより好ましい。
【0020】
次に、本実施形態に係る乳化重合について説明する。
【0021】
本実施形態においては、連鎖移動剤を重合途中に添加する工程を有する。重合途中とは、重合反応の開始直後から終了直前までの間を指す。重合反応の開始とは、重合開始剤を反応系に添加して重合を開始した時点を指す。また本実施形態において重合反応の終了とは、重合停止剤を使用する場合は重合停止剤を使用した時点を指し、重合停止剤を使用せず未反応単量体を離脱させる操作を行う場合は、未反応単量体を離脱させる操作を開始した時点を指し、重合停止剤を使用せず未反応単量体を離脱させる操作を行わない場合は、反応器を開けて内容物を取り出す操作を開始した時点を指す。連鎖移動剤を重合途中に添加する工程を有することで、良好な充填剤分散性、加工性を得ながら、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能のバランスを改善させることができる。
【0022】
連鎖移動剤を添加するタイミングとしては、反応系のポリマー転化率が10~90%の間が好ましく、30~80%の間がより好ましく、50~70%の間がさらに好ましい。これにより、共重合体ラテックスのゲル化を調整することが容易となり、充填剤分散性、加工性、及び低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能のバランスの改善が容易となる。なお、ポリマー転化率は後述の方法により測定することができる。
【0023】
連鎖移動剤としては、例えば、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、ターシャリードデシルメルカプタン、n-ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;α-ベンジルオキシスチレン、α-ベンジルオキシアクリロニトリル、α-ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル;トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノレン、α-メチルスチレンダイマーなどの連鎖移動剤が挙げられる。なかでも、ターシャリードデシルメルカプタンが好ましい。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
連鎖移動剤の含有量は、共重合体ラテックスを構成する単量体成分100質量部に対して、0.01~0.50質量部が好ましい。0.01質量部以上であると、充填剤分散性、加工性、及び低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能のバランスを改善させることができ、0.50質量部以下であると、機械的強度、及び低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能のバランスを改善させることができる。より好ましくは0.10~0.40質量部であり、さらに好ましくは0.17~0.30質量部である。
【0025】
また、重合途中に添加する連鎖移動剤の含有量は、共重合体ラテックスを構成する単量体成分100質量部に対して、0.01~0.30質量部が好ましい。0.01質量部以上であると、充填剤分散性、加工性、及び低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能のバランスを改善させることができ、0.30質量部以下であると、機械的強度、及び低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能のバランスを改善させることができる。より好ましくは0.02~0.20質量部であり、さらに好ましくは0.03~0.15質量部である。
【0026】
乳化重合の反応系には、乳化剤(界面活性剤)、重合開始剤、更に必要に応じて、還元剤などを配合することができる。
【0027】
乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、デヒドロアビエチン酸塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、及びアルキルエーテル型等のノニオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。乳化剤の含有量は、他の添加剤などの組み合わせを考慮して適宜調整することができる。乳化剤は、重合安定性の点から、重合開始時及び重合途中に添加することが好ましい。
【0028】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸リチウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、パラメンタンヒドロペルオキシド、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t-ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、及び1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性重合開始剤が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、パラメンタンヒドロペルオキシド、クメンハイドロパーオキサイド、又はt-ブチルハイドロパーオキサイドを用いることが好ましい。重合開始剤の配合量は、単量体組成、重合反応系のpH、他の添加剤などの組み合わせを考慮して適宜調整される。
【0029】
還元剤としては、例えば、硫酸第一鉄、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩;L-アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸類およびその塩;デキストロース、サッカロースなどの還元糖類;ジメチルアニリン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、ホルムアルデヒドスルホン酸塩が好ましい。還元剤の含有量は、他の添加剤などの組み合わせを考慮して適宜調整することができる。
【0030】
また、共重合体の分子量、及び架橋構造を制御する目的で、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素;ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4-メチルシクロヘキセン、1-メチルシクロヘキセン等の不飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素化合物を配合することができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
さらに、必要に応じて、電解質、酸素補足剤、キレート剤、分散剤、消泡剤、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、難燃剤、紫外線吸収剤等の添加剤を配合してもよい。これらの添加剤は、種類、及び使用量ともに適宜適量使用することができる。
【0032】
安全性に配慮した槽内圧力および生産性の観点から、上記反応温度を0~100℃の範囲に設定することが好ましく、0~85℃の範囲に設定することがより好ましい。
【0033】
単量体成分を添加する方法としては、例えば、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法、パワーフィード方法を採用することができる。反応系内の単量体をある一定濃度以下に抑制して安全性を向上する観点から、連続添加方法を採用してもよい。更に、連続添加を複数回行ってもよい。
【0034】
本実施形態においては、ポリマー転化率85%以上で重合反応を終了させる。ポリマー転化率85%以上で重合反応を終了させることで、未反応物廃棄や回収にかかるコスト低減による生産性が改善できる。また、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能のバランスを改善することができる。好ましくは87%以上、より好ましくは89%以上である。
【0035】
ポリマー転化率は、反応槽内より採取した反応液を秤量し、150℃で1時間乾燥後、再度秤量して固形分量Cを測定して、次式より算出することができる。
ポリマー転化率(%)=[固形分量C(g)-反応液に含まれる単量体以外の固形分量(g)]/反応系に添加した単量体成分量(g)×100
なお、ポリマー転化率は、予め求められたデータに基づき設定することができる。例えば、実施する乳化重合と同様の反応系を用意し、この反応系のポリマー転化率の推移に基づき予め求めておくことができる。
【0036】
共重合体ラテックスは、分散安定性の観点から、pHが8~13に調整されていることが好ましく、8.5~12に調整されていることがより好ましい。
【0037】
また、共重合体ラテックスは、加熱減圧蒸留などの方法により、未反応単量体、及び他の低沸点化合物が除去されていることが好ましい。
【0038】
共重合体ラテックスのムーニー粘度ML1+4(100℃) は、105以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。また、40以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、60以上であることがさらに好ましい。共重合体ラテックスのムーニー粘度ML1+4(100℃) が105以下であると充填剤分散性、加工性を改善させることができ、40以上であると本発明の効果を充分に発揮させることができる。なお、ムーニー粘度ML1+4(100℃)はJISK6383に従い、100℃でムーニー粘度を測定することにより得られる値である。
【0039】
共重合体ラテックスには、必要に応じて、防腐剤、老化防止剤、界面活性剤などの機能性添加剤を配合してもよい。これらの添加剤は、種類、及び使用量ともに適宜適量使用することができる。
【0040】
本実施形態に係るタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法は、本実施形態に係る共重合体ラテックスの製造方法で製造された共重合体を用いてタイヤトレッド用ゴム組成物を製造する工程を含む。
【0041】
共重合体は、例えば、共重合体ラテックスに塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム等の塩、及びアルコール、場合によっては更に塩酸、硝酸、硫酸等を添加し、クラムとして凝固させることができる。このクラムを洗浄し、脱水した後、ドライヤ等で乾燥することにより得ることができる。
【0042】
共重合体の含有量は、タイヤトレッド用ゴム組成物に含有されるゴム成分100質量%中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、100質量%であってもよい。1質量%未満であると、前記共重合体の含有量が少なすぎて、本発明の効果が得られないおそれがある。
【0043】
共重合体と共に使用する他のゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴムが挙げられる。これらのゴム成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい
【0044】
タイヤトレッド用組成物には、充填剤、及び必要に応じてその他の配合物を含有することができる。充填剤としては、カーボンブラック、及び/又はシリカが挙げられる。
【0045】
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、好ましくは50ml/100g以上、より好ましくは100ml/100g以上である。また、該DBPは、好ましくは200ml/100g以下、150ml/100g以下である。50ml/100g未満であると、充分な補強性が得られず、耐摩耗性が低下するおそれがあり、200ml/100gを超えると、カーボンブラックの分散性が低下し、低燃費性が悪化するおそれがある。なお、カーボンブラックのDBPは、JISK6217-4:2001に準拠して測定できる。
【0046】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。1質量部未満であると、耐摩耗性が悪化するおそれがあり、50質量部を超えると、低燃費性が悪化するおそれがある。
【0047】
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸) などが挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0048】
シリカのN2SAは、好ましくは100m2/g以上、より好ましくは150m2/g以上である。また、該N2SAは好ましくは300m2/g以下、より好ましくは200m2/g以下である。シリカのN2SAが100m2/g未満であると補強効果が小さく、耐摩耗性が充分に改善できない傾向があり、300m2/gを超えると、シリカの分散性が悪化する傾向がある。なお、シリカのN2SAは、ASTMD3037-81に準拠して測定できる。
【0049】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。1質量部未満であると、低燃費性、及び耐摩耗性が十分でない傾向があり、150質量部を超えると、シリカの分散性が悪化する傾向がある。
【0050】
シリカとともにシランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系等が挙げられる。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。
【0051】
シランカップリング剤を含有する場合、その含有量は、シリカ100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましい。また、該含有量は、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。1質量部未満であると、分散性の改善等の効果が十分に得られない傾向があり、20質量部を超えると、充分なカップリング効果が得られず、補強性が低下する傾向がある。
【0052】
その他の配合物としては、従来ゴム工業で使用される配合物、例えば、他の補強用充填剤、老化防止剤、オイル、ワックス、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等が挙げられる。
【0053】
タイヤトレッド用ゴム組成物は、タイヤのトレッド(キャップトレッド、ベーストレッド)、サイドウォールなどに使用することができ、特にトレッド(なかでも特にキャップトレッド)に好適である。
【0054】
本実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法は、本実施形態に係るタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法で製造されたタイヤトレッドを用いて空気入りタイヤを製造する工程を含む。
【0055】
空気入りタイヤは、タイヤトレッド用ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、タイヤトレッド用ゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどのタイヤ用部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0056】
空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤに好適であり、それぞれのウィンタータイヤ、スタッドレスタイヤとして使用可能である。
【実施例
【0057】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、特段の断りが無い限り、%や部は質量を基準とする。
【0058】
(共重合体ラテックスの製造)
<製造例1>
耐圧性の重合反応容器に、水157.66質量部、1,3-ブタジエン83質量部、イタコン酸ジブチル17質量部、連鎖移動剤としてターシャリードデシルメルカプタン(以下、TDM)0.1質量部、不均化ロジン酸ナトリウム0.84質量部、芒硝0.03質量部、第3リン酸ナトリウム0.5質量部、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩0.5質量部、ハイドロサルファイトナトリウム0.004質量部、硫酸第一鉄0.05質量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.4質量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.01質量部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.15質量部を添加し、10℃で重合を開始した。
【0059】
不均化ロジン酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、及び水を反応器内に追加添加することで重合安定性を調整しながら乳化重合を行った。ポリマー添加率が60%になった時点でTDM0.08質量部を反応器内に添加し、ポリマー転化率が85%を十分に超えた時点でN,N-ジエチルヒドロキシルアミンを添加して重合を終了させ、反応生成物を得た。未反応単量体、及び他の低沸点化合物を除去するために反応生成物の加熱減圧蒸留を行い、共重合体ラテックスAを得た。
【0060】
<製造例2~6>
TDMの添加量、重合終了時のポリマー転化率を表1に示す通りに変更した以外は、製造例1と同様の方法で共重合体ラテックスB~Fをそれぞれ得た。
【0061】
(ポリマー転化率の測定)
共重合体ラテックスのポリマー転化率は、反応器内より採取した反応液を秤量し、150℃で1時間乾燥後、再度秤量して固形分量を測定して、次式より算出した。
ポリマー転化率(%)=[(固形分量(g)-反応液に含まれる単量体以外の固形分量(g))/反応系に添加した単量体成分量(g)]×100
なお、ポリマー転化率が高いほど未反応物廃棄や回収にかかるコストが低減でき生産性が改善できることから、ポリマー転化率は生産性の指標となる
【0062】
(ムーニー粘度ML1+4(100℃)の測定)
JISK6383に従い、共重合体ラテックス約40gを用いて100℃にて測定した。
【0063】
【表1】
【0064】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
ゴム成分:
NR:RSS#3
SBR:JSR(株)製のNS116 (スチレン含量:20質量%)
BR:ハイシスBR(シス含量:97質量%、Mw:40マン)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(N2SA:111m2/g、DBP:115ml/100g)
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
プロセスオイル:ジャパンエナジー社製のプロセスX-140(アロマオイル)
樹脂:α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体(軟化点:85℃、Tg:107℃)
亜鉛華:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’-ジフェニルグアニジン)
【0065】
<実施例及び比較例>
表2~4に示す配合内容に従い、硫黄および加硫促進剤を除く各種薬品を、バンバリーミキサーにて、150℃で5分間混練りした。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
さらに、得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0066】
得られた未加硫ゴム組成物及び加硫ゴム組成物を使用して、下記の評価を行った。評価結果を表2~4に示す。
【0067】
(加工性)
JIS K6300に準じて、130℃における未加硫ゴム組成物のムーニー粘度ML(1+4)を測定し、シート作製時の焼け性及び平坦性をシート加工性として目視観察した。これらの加工性を総合的に評価し、基準比較例を100として指数表示した。指数が100より小さいと、成形時のゴムの厚みが不安定となり、成形加工性に劣ることを示す。
【0068】
(シリカ分散)
得られた加硫ゴム組成物について、アルファテクノロジーズ社製のRPA2000型試験機を用いて100℃、1Hzの条件下にて、歪0.5、1、2、4、8、16、32、64%のG*を測定し、G*の最大値とG*の最小値の差よりシリカのペイン効果を求め、基準比較例の逆数の結果を100として指数化してシリカの分散指標とした。
指数が大きいほど、シリカが分散しており、シリカの分散性に優れることを示す。
【0069】
(低燃費性)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度30℃、初期歪み10%、動歪み2%の条件下で各加硫ゴム組成物のtanδを測定し、基準比較例の逆数の結果を100として指数化して低燃費性の指標とした。
指数が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れることを示す。
【0070】
(ウェットグリップ性能)
各加硫ゴム組成物から調製した試験片について、レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機(ARES)を使用して、ねじりモードで、粘弾性パラメータを測定した。0℃において周波数10Hz、ひずみ1%でtanδを測定し、基準比較例の結果を100として指数化してウェットグリップ性能の指標とした。
指数が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0071】
(耐摩耗性)
ランボーン型摩耗試験機を用いて、室温、負荷荷重1.0kgf、スリップ率30%の条件で上記加硫ゴム組成物の摩耗量を測定し、下記計算式により基準比較例の結果を100として指数表示した。数値が大きいほど耐摩耗性に優れることを示す。
(耐摩耗性指数)=(比較例1の摩耗量)/(各配合の摩耗量)×100
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】