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特許7523275合板材、その製造方法、および合板材の反り変化を軽減する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】合板材、その製造方法、および合板材の反り変化を軽減する方法
(51)【国際特許分類】
   B27K 3/34 20060101AFI20240719BHJP
   B27M 1/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B27K3/34 Z
B27M1/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020129649
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026268
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】内藤 吉訓
(72)【発明者】
【氏名】大藤 功
(72)【発明者】
【氏名】本田 清二
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-110768(JP,A)
【文献】特開平08-090515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27K 3/34
B27M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3枚以上の木単板が積層された合板材であって、
前記合板材の少なくとも一方の面に1つ以上の凹部が設けられ、
前記凹部に樹脂材料として活性エネルギー線硬化型塗料(但し、発泡剤を含むものを除く)が充填されてなる、合板材(但し、前記凹部が木単板由来の欠点部である合板材を除く)。
【請求項2】
3枚以上の木単板が積層された合板材であって、
前記合板材の少なくとも一方の面に1つ以上の凹部が設けられ、
前記凹部に樹脂材料が充填されてなる、合板材であって、
前記凹部の深さをd、1枚の木単板の厚みの平均値をd2、合板材の厚みをdとした場合、d≧d>dを満たす、合板材。
【請求項3】
前記樹脂材料が、重合型塗料である、請求項2に記載の合板材。
【請求項4】
前記重合型塗料が、活性エネルギー線硬化型塗料である、請求項3に記載の合板材。
【請求項5】
前記木単板の少なくとも1枚が、針葉樹である、請求項1~4のいずれか一項に記載の合板材。
【請求項6】
コンクリート型枠用である、請求項1~5のいずれか一項に記載の合板材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の合板材の製造方法であって、
3枚以上の木単板が積層された合板材の少なくとも一方の面に少なくとも1つ以上の凹部を設ける工程と、前記凹部に樹脂材料を充填する工程と、を含む、製造方法。
【請求項8】
3枚以上の木単板が積層された合板材の反り変化を軽減する方法であって、
前記合板材の少なくとも一方の面に1つ以上の凹部を、該凹部の深さをd、1枚の木単板の厚みの平均値をd2、3枚以上の木単板が積層された合板材の厚みをdとした場合、d≧d≧2dを満たすように設け、前記凹部に樹脂材料を充填して、各木単板の少なくとも2層間を接合して一体化させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合板材に関する。また、本発明は、合板材の製造方法に関する。さらに、本発明は、合板材の反り変化を軽減する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
合板材とは、丸太を薄く丸剥ぎした木単板を1枚ごと繊維方向が直交するように、3枚以上の奇数枚数積み重ねて貼り合わせた材料であり、建築材や家具などの木工製品用途として幅広く利用されている。近年、森林資源の制約や保護の観点より合板材の原料である木材は、南洋材広葉樹ラワン材から国産材針葉樹へと徐々に切り替わっている。特に、日本農林規格(JAS規格)に規定されるコンクリート型枠用合板においては、合板材の原料である木材が国産材針葉樹に切り替わることで、南洋材広葉樹ラワン材を材料とした合板材よりも水分による影響を受けて反り易くなり、大きな基材変形を生じることからコンクリート型枠用合板の耐久性(打設回数)低下につながることが課題となっている。
【0003】
従来から、合板材の寸法安定化として、基材表面全体の広範囲を合成樹脂やその他薬剤を含浸させた処理法や、撥水剤を塗付させた方法が提案されている。例えば、特許文献1には、積層材の表面に適当な間隔で多数の突起を設けたスチールロールなどで繊維を切断するように押圧加工し、接着剤や処理薬剤を均一に材料内部に含浸させる処理方法が提案されている。また、特許文献2では、木質繊維板の両面に化粧シートおよびクッション材を積層した木質床材において、木質繊維板に多数の溝(深さ1/2程度)を設けて、木質繊維板内にポリウレタン系合成樹脂液を浸透させて硬化させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-109109号公報
【文献】特開2001-269907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および2に記載の方法はいずれも、多孔質な木質繊維の内部に接着剤等の薬剤を含浸させるものであり、多量な薬剤を必要とし、製造工程が煩雑であった。そのため、より簡便な方法により、水分の影響による基材変形(反り)の少ない合板材を得られる方法が切望されている。したがって、本発明の目的は、水分の影響による反り変化が少なく、耐湿性等の耐久性に優れる合板材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、3枚以上の木単板が積層された合板材の少なくとも一方の面に凹部を設け、凹部に樹脂材料を充填させ、各木単板の少なくとも2層間を接合して一体化させることで、水分の影響による合板材の反り変化を軽減できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] 3枚以上の木単板が積層された合板材であって、
前記合板材の少なくとも一方の面に1つ以上の凹部が設けられ、
前記凹部に樹脂材料が充填されてなる、合板材。
[2] 前記凹部の深さをd、1枚の木単板の厚みの平均値をd2、合板材の厚みを
とした場合、d≧d>dを満たす、[1]に記載の合板材。
[3] 前記樹脂材料が、重合型塗料である、[1]または[2]に記載の合板材。
[4] 前記重合型塗料が、活性エネルギー線硬化型塗料である、[3]に記載の合板材。
[5] 前記木単板の少なくとも1枚が、針葉樹である、[1]~[4]のいずれかに記載の合板材。
[6] コンクリート型枠用である、[1]~[5]のいずれかに記載の合板材。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の合板材の製造方法であって、
3枚以上の木単板が積層された合板材の少なくとも一方の面に1つ以上の凹部を
設ける工程と、前記凹部に樹脂材料を充填する工程と、を含む、製造方法。
[8]3枚以上の木単板が積層された合板材の反り変化を軽減する方法であって、
前記合板材の少なくとも一方の面に1つ以上の凹部を設け、前記凹部に樹脂材料を
充填して、各木単板の少なくとも2層間を接合して一体化させる、方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、木単板として針葉樹を用いたとしても、水分の影響による反り変化が少なく、耐湿性等の耐久性に優れる合板材を提供することができる。また、本発明によれば、このような合板材の製造方法を提供することもできる。さらに、本発明によれば、合板材の反りを軽減する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の合板材の平面図(表面側)および底面図(裏面側)である。
図2】実施形態の合板材の断面図である。
図3】実施形態の合板材の平面図(表面側)および底面図(裏面側)である。
図4】実施形態の合板材の平面図(表面側)および底面図(裏面側)である。
図5】実施形態の合板材の平面図(表面側)および底面図(裏面側)である。
図6】実施形態の合板材の平面図(表面側)および底面図(裏面側)である。
図7】実施形態の合板材の平面図(表面側)および底面図(裏面側)である。
図8】実施形態の合板材の平面図(表面側)および底面図(裏面側)である。
図9】実施形態の合板材の平面図(表面側)および底面図(裏面側)である。
図10】実施形態の合板材の平面図(表面側)および底面図(裏面側)である。
図11】実施形態の合板材の平面図(表面側)および底面図(裏面側)である。
図12】実施形態の合板材の平面図(表面側)および底面図(裏面側)である。
図13】実施形態の合板材の平面図(表面側)および底面図(裏面側)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<合板材>
本発明の合板材は、繊維方向が直交するように3枚以上の木単板を奇数枚積み重ねて貼り合わせた材料であって、合板材の少なくとも一方の面に1つ以上の凹部が設けられ、凹部に樹脂材料が充填されてなるものである。本発明の合板材においては、凹部に充填された樹脂材料が、各木単板の少なくとも2層間を接合して一体化させることで、水分の影響による反り変化が少なく、耐湿性等の耐久性を向上させることができる、
【0011】
(木単板)
合板材に用いる木単板としては、特に限定されず従来公知の木材を用いることができる。通常、南洋材広葉樹ラワン材に比べて国産材針葉樹及びその他ラワン材代替材料の方が水分の影響による反り変化が大きいが、本発明では、木単板の少なくとも1枚に国産材針葉樹及びその他代替材料を用いても、水分の影響による反り変化を軽減することで、合板材の耐久性を向上させることができる。国産材針葉樹としては、例えば、カラマツ、エゾマツ、トドマツ、ツガ、モミ、クロマツ、アカマツ、杉、ヒノキ等を挙げることができる。また、その他のラワン材代替材料としては、例えばファルカタ等が挙げられる。合板材は、木単板が繊維方向に直交するように積み重ねて貼り合わされていればよく、積層枚数は特に限定されないが、製造適性の点から積層枚数は奇数であることが好ましく、例えば、3枚、5枚、7枚、または9枚である。各木単板の木材の種類は、全て同一の種類であってもよいし、異なる種類の木材が積層されていてもよい。
【0012】
(凹部)
凹部は、合板材の表面側および裏面側のいずれか一方の面に設けられていればよく、両方の面に設けられていてもよい。合板材に設けられる凹部は、樹脂材料を充填できるものであればよく、そのサイズ、形状等は特に限定されず、合板材のサイズに応じて、適宜、調節することができる。凹部は、例えば、穴、貫通孔、溝等であってもよい。樹脂材料の充填し易さの点からは、凹部は、貫通していない穴の形状が好ましく、円柱、円錐、台形等の様々な形状にすることができる。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、凹部の深さをd、1枚の木単板の厚みの平均値をd2、3枚以上の木単板が積層された合板材の厚みをd3とした場合、d3≧d>dを満たすことが好ましい。各木単板の少なくとも2層間を接合して一体化させるためには、d≧2dを満たすことがより好ましい。また、樹脂材料の充填し易さの点からは、凹部は合板材を貫通せず、合板材の厚みをdとした場合、d>dであることが好ましい。また、3枚以上の木単板が積層された合板材の積層(プライ)数をnとした場合、凹部の木単板の貫通枚数xは、n≧x>2を満たすことが好ましく、n>x>2を満たすことがより好ましい。
【0014】
合板材に設ける凹部(穴)の好ましいパターン(数、位置)について、図面を参照しながら説明する。本発明の一実施形態として、均一の厚さの木単板が5枚積層された合板材(150mm(縦)×50mm(幅)×12mm(厚み))の平面図(表面側)および底面図(裏面側)を図1に示し、断面図を図2に示す。図1では、合板材の表面側には縦方向に3分割した位置上に、幅方向に等間隔で3箇所および2列の計6個の穴が設けられ、裏面側には縦方向に2分割した位置上に、幅方向に等間隔で3箇所の穴が設けられている。また、図2では、合板材の表面側と裏面側から木単板5枚目の中央部付近にまで到達する深さの穴が設けられている。
【0015】
また、他の実施形態として、凹部(穴)のパターン(数、位置)を変更した例を図3に示す。図3では、合板材の表面側には幅方向に2分割した位置上に、縦方向に等間隔で4箇所の穴が設けられ、裏面側には幅方向に4分割して幅方向の各端部から各1/4の位置上に、縦方向に等間隔で4箇所、2列の計8個の穴が設けられている。各穴の位置及び数は、合板材のサイズに応じて、適宜、調節することができる。さらに、図4図13には、様々な凹部(穴)の好ましいパターン(数、位置)を表す合板材の平面図(表面側)および底面図(裏面側)を示す。なお、図面中の数値は、寸法(cm)を示し、2つ穴の間の数値および穴と端部の間の数値は穴の中心部からの寸法を示すが、本発明の実施形態はこの寸法に限定されるものではない。
【0016】
(樹脂材料)
合板材に設ける凹部に充填する樹脂材料としては、特に限定されず、充填後に硬化可能な樹脂材料であればよい。樹脂材料としては、製造適性の点から、重合型塗料を用いることが好ましい。重合型塗料については、下記で詳述する。
【0017】
合板材に充填した樹脂材料の硬度は、合板材の各層間の接合性の強度の観点から、合板材よりも大きいことが好ましい。例えば、合板材に充填した樹脂材料の硬度は、JIS K 6253に準拠し、デュロメーター・ゴム硬度計で測定した場合、合板材の硬度に対して、120%以上であることが好ましく、125%以上であることがより好ましく、130%以上であることがさらに好ましく、また、200%以下であってもよい。なお、硬度は、合板材の複数の箇所で測定を行い、それらの平均値が上記数値範囲内であればよい。
【0018】
(用途)
本発明の合板材は、日本農林(JAS)規格による合板全般に適用可能である。例えば、定義により用途別に分けられており普通合板、コンクリート型枠用合板、構造用合板、天然木化粧合板、および特殊加工合板等が挙げられる。特に、本発明の合板材は、水分による影響を受けて基材変形(反り)を生じることから、耐久性(打設回数)の低下につながることが課題とされるコンクリート型枠用合板として好適に使用することができる。
【0019】
<合板材の製造方法>
本発明の合板材の製造方法は、3枚以上の木単板が積層された合板材の少なくとも一方の面に1つ以上の凹部を設ける工程と、凹部に樹脂材料を充填する工程とを含むものである。合板材に凹部を設ける方法は特に限定されず、従来公知の方法により、ルーター、ドリル等を用いて行うことができる。また、凹部に樹脂材料を充填する方法は特に限定されず、従来公知の方法により、樹脂材料を充填することができる。
【0020】
<合板材の反り変化を軽減する方法>
本発明の合板材の反り変化を軽減する方法は、3枚以上の木単板が積層された合板材の少なくとも一方の面に1つ以上の凹部を設け、前記凹部に樹脂材料を充填して、各木単板の少なくとも2層間を接合して一体化させる方法である。凹部に樹脂材料を充填した後に、樹脂材料を硬化することで、各木単板の少なくとも2層間が強固に接合されることで、水分の影響を受けて生じる木材の反りを軽減することができる。
【0021】
樹脂材料の硬化方法は特に限定されず、従来公知の方法により硬化させることができる。例えば、合板材の凹部を設けた面に重合型塗料を充填後に紫外線を照射して、重合型塗料を硬化させる。紫外線で硬化させる方法としては、200~500nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、UV-LED等を用いて、紫外線を照射する方法等が挙げられる。紫外線の照射量は、重合型塗料の組成や凹部のサイズ(特に深さ)に応じて適宜、設定することができる。
【0022】
(重合型塗料)
合板材の製造においては樹脂材料として重合型塗料を用いることができる。重合型塗料は、重合可能な樹脂材料を含むものであれば特に限定されない。重合型塗料としては、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型、湿気硬化型、および酸化重合型のいずれでも用いることができるが、合板材への熱や水分による影響を及ぼさないように、活性エネルギー線硬化型であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型塗料は、例えば、活性エネルギー線硬化型樹脂、(メタ)アクリレート系モノマー、光重合開始剤、顔料、およびその他の成分等を含むものである。以下、活性エネルギー線硬化型塗料の各成分について、詳述する。
【0023】
(活性エネルギー線硬化型樹脂)
活性エネルギー線硬化型樹脂は、少なくとも1つ以上の不飽和二重結合を有するオリゴマーおよびポリマーから選択される少なくとも1種である。活性エネルギー線硬化型樹脂は、エネルギー照射された時に不飽和二重結合が重合することで、硬化塗膜(硬化物)を形成する。前記不飽和二重結合を有する官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、スチリル基等を挙げることができ、活性エネルギー線照射時の反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。また、「活性エネルギー線」とは、紫外線の他、可視光線、赤外線、電子線、X線、γ線、プロトン線、中性子線等を含むものを意味する。
【0024】
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ポリエーテル(メタ)アクリレート樹脂、アクリル(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられるが、これに限定されるものではない。このような活性エネルギー線硬化型樹脂は、従来公知の方法により製造することができ、これらの中でも、合板材の各層間の接合性の強度の観点から、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。
【0025】
((メタ)アクリレート系モノマー)
(メタ)アクリレート系モノマーは、少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであり、重合型塗料の粘度を調整する反応性希釈剤としての役割を有し、重合型塗料に対して活性エネルギー線照射した際、活性エネルギー線硬化型樹脂とともに硬化する樹脂材料である。
【0026】
(メタ)アクリレート系モノマーとしては、たとえば、4-アクリロイルモルホリン、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、このような(メタ)アクリレート系モノマーは、たとえばε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレート等のラクトン変性体であってもよい。このような(メタ)アクリレート系モノマーは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
活性エネルギー線硬化型樹脂と(メタ)アクリレート系モノマーの配合比は、通常は100:0~10:90、好ましくは80:20~20:80、より好ましくは70:30~30:70にあることが望ましい。
【0028】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、特に限定されず、従来公知の活性エネルギー線硬化用の光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系重合開始剤、フォスフィンオキサイド系重合開始剤、ベンゾイルホルメート系重合開始剤、チオキサントン系重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤、ヒドロキシベンゾイル系重合開始剤、ベンゾフェノン系重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤等が挙げられる。
【0029】
アセトフェノン系重合開始剤としては、アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル-2-モルホリノプロパン-1-オン、および2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等が挙げられる。
フォスフィンオキサイド系重合開始剤としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドおよび2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
ベンゾイルホルメート系重合開始剤としては、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
チオキサントン系重合開始剤としては、イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
オキシムエステル系重合開始剤としては、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]およびエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
ヒドロキシベンゾイル系重合開始剤としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびベンゾインアルキルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、および4,4′-ジアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロ-ブタノン-1および2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等が挙げられる。
【0030】
光重合開始剤の含有量は、硬化性の観点から、重合型塗料の固形分量に対して、好ましくは0.1質量%以上15.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上10.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上7.0質量%以下である。
【0031】
(顔料)
顔料としては、着色顔料および体質顔料が挙げられる。着色顔料としては、無機着色含量と有機着色顔料とに分けられ、無機着色顔料としては、例えば、黄鉛、バリウム黄等のクロム酸塩、紺青等のフェロシアン化物、カドミウム黄、硫化亜鉛、アンチモン白、カドミウムレッド等の硫化物、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、硫酸ストロンチウム等の硫酸塩、亜鉛華、チタン白、ベンガラ、鉄黒、酸化クロム等の酸化物、群青等のケイ酸塩、グラファイト等の炭素等が挙げられる。有機着色顔料としては、例えば、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY等のニトロソ系顔料、ナフトールS、リソールファストイエロー2G等のニトロ系顔料、パーマネントレッド4R、ブリリアントファストスカーレット、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー等の不溶性アゾ系顔料、リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD等の難溶性アゾ系顔料、ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、ピグメントスカーレット3B、ボルドー10B等の可溶性アゾ系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー等のフタロシアニン系顔料、ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の塩基性染料系顔料、ピーコックブルーレーキ、エオシンレーキ、キノリンイエローレーキ等の酸性染料系顔料等、イソインドリン系顔料、アントラキノン系顔料、キナクドリン系顔料、レーキ顔料等が挙げられる。
【0032】
体質顔料は、特に限定されず、従来公知の無機体質顔料および有機体質顔料を用いることができる。例えば、カリ長石、ソーダ長石、炭酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ及び硫酸バリウム等の無機体質顔料、およびアクリルビーズ等の有機体質顔料が挙げられる。
【0033】
(その他の成分)
重合型塗料には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記成分以外のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、塗膜調整剤、帯電防止剤、重合禁止剤、非反応性希釈剤、つや消し剤、消泡剤、分散剤、沈降防止剤、レベリング剤、撥水撥油剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、密着性向上剤、光増感剤、抗菌剤、防カビ剤、抗ウイルス剤、シランカップリング剤、擦傷防止剤、可塑剤等を必要に応じて配合することができる。
【0034】
(重合型塗料の調製方法)
重合型塗料は、上記の各成分を、従来公知の混合機、分散機、撹拌機等の装置を用いて、混合・撹拌することにより得られる。このような装置としては、たとえば混合・分散ミル、ホモディスパー、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等が挙げられる。
【0035】
本発明においては、重合型塗料を塗布に適した粘度に調整する等、必要に応じて溶剤で希釈することができる。溶剤としては、重合型塗料中の樹脂分を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼン)、エステル又はエーテルエステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルおよびメトキシブチルアセテート)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールのモノメチルエーテルおよびジエチレングリコールのモノエチルエーテル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトンおよびシクロヘキサノン)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-又はi-プロパノール、n-、i-、sec-又はt-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコールおよびベンジルアルコール)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)などが挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【実施例
【0036】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
<重合型塗料の調製>
表1に記載の配合に従って、各成分を混合することにより、重合型塗料を得た。
【表1】
※1:ビスフェノール系エポキシアクリレート
※2:トリプロピレングリコールジアクリレート
※3:エトキシレートトリメチロールプロパントリアクリレート
※4:カリ長石
※5:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
※6:ベントナイト
【0038】
<合板材の製造1>
[実施例1]
国産材カラマツ(針葉樹)の木単板が5枚積層された市販針葉樹合板材を準備した。該合板材のサイズは、150mm(縦)×50mm(幅)×12mm(厚み)であった。該合板材に図1に示すパターンで、表面側から6箇所、裏面側から3箇所の位置に計9個の穴をルーターで掘った。設けた穴のサイズは、10mm(直径)×10mm(深さ)であった。
【0039】
続いて、上記で調製した重合型塗料を合板材の穴が一杯になるまで充填し、GSランプ(高さ23cm)を用いて、25m/分×5パス、175mJ/80mW相当の紫外線照射を行って、塗料を硬化させて、合板材1を得た。
【0040】
また、合板材と合板材に充填した重合性塗料硬化物の硬度を、JIS K 6253に準拠し、定圧加重器にASKER「高分子計器株式会社」のデュロメーター・ゴム硬度計(TYPE E)を取り付け、デュロメーター硬さの測定を実施した。測定は5箇所で行い、平均値を表2に示した。
【表2】
【0041】
[実施例2]
設けた穴のサイズを5mm(直径)×10mm(深さ)に変更した以外は、実施例1と同様にして、合板材2を得た。
【0042】
[比較例1]
実施例1で用いた合板材に穴を設けていないものを合板材3とした。
【0043】
(浸漬剥離試験)
上記で得られた合板材1~3について、浸漬剥離試験を行った。浸漬剥離試験では、各合板材を沸騰水に4時間浸漬した後、乾燥機で60℃、20時間乾燥させ、さらに沸騰水に4時間浸漬した後、乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。乾燥後の各合板材を下記の条件で反り量を測定した。表3には、各合板材の反り量を示し、かつ、対照となる合板材3の反り量に対する合板材1および2の反り量の比率を示した。また、下記の評価基準で評価し、その結果を表3に示した。
(反り量の測定条件)
1.(有)中央精密機社製No.6010299の土台(長さ25cm)に対し、長さ35cmの定規を前面および後面に貼り付け、合板材の反り量を正確に測定できるよう準備した。
2.上記の土台に(株)ミツトヨ社製のデジマチックインゲージTYPE IDF-112を装着した。
3.予め合板材の中心箇所を位置決めしておき、浸漬剥離試験前後の表面及び裏面の凹凸を測定して、反り量(平均値)を算出した。
(評価基準)
◎:反り量の対比率が50%以下であった。
○:反り量の対比率が50%超75%以下であった。
△:反り量の対比率が75%超90%以下であった。
×:反り量の対比率が90%超100%以下であった。
【0044】
【表3】
【0045】
<合板材の製造2>
[実施例3]
国産材スギ(針葉樹)の木単板が5枚積層された市販針葉樹合板材を準備した。該合板材のサイズは、600mm(縦)×300mm(幅)×12mm(厚み)であった。該合板材に図3に示すパターンで、表面側から4箇所、裏面側から8箇所の位置に計12個の穴をルーターで掘った。設けた穴のサイズは、10mm(直径)×10mm(深さ)であった。
【0046】
続いて、上記で調製した重合型塗料を合板材の穴が一杯になるまで充填し、GSランプ(高さ23cm)を用いて、25m/分×5パス、175mJ/80mW相当の紫外線照射を行って、塗料を硬化させて、合板材4を得た。
【0047】
[比較例2]
実施例3で用いた合板材に穴を設けていないものを合板材5とした。
【0048】
(耐湿試験)
上記で得られた合板材4~5について、耐湿試験を行った。耐湿試験では、各合板材を50℃95%RHの条件で48時間静置した。その後、各合板材を上記の条件で反り量を測定した。表4には、各合板材の反り量を示し、かつ、対照となる合板材5の反り量に対する合板材4の反り量の比率を示した。また、上記の評価基準で評価し、その結果を表4に示した。
【0049】
【表4】
図1
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