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特許7523284情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
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  • 特許-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20240719BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G01C21/28
G01C21/26 P
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020142535
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038179
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000191076
【氏名又は名称】日鉄ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117857
【弁理士】
【氏名又は名称】南林 薫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博喜
(72)【発明者】
【氏名】柿森 隆生
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/137315(WO,A1)
【文献】特開2020-42366(JP,A)
【文献】国際公開第2020/008878(WO,A1)
【文献】特開2020-56757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G05D 1/00 - 1/87
G08G 1/00 - 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実空間内の互いに異なる複数の位置それぞれを基準点として、複数の当該基準点それぞれの絶対的な位置に関する第1の情報を取得する第1の取得手段と、
所定の筐体の相対的な位置の変化に応じた第2の情報を時系列に沿って逐次取得する第2の取得手段と、
複数の前記基準点それぞれについて取得された前記第1の情報と、当該基準点に前記筐体が位置するタイミングで取得された前記第2の情報と、に基づき、他の前記第2の情報が示す前記筐体の相対的な位置の変化が検知されたタイミングにおける、当該筐体の実空間における絶対的な位置を推定する推定手段と、
を備え
前記推定手段は、前記第2の情報が示す前記筐体の相対的な位置の変化が検知されたタイミングにおける、当該筐体の実空間における絶対的な位置を、当該第2の情報と、当該タイミングにより近いタイミングで取得された複数の前記第1の情報と、に基づき推定する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記推定手段は、
少なくとも3つの前記基準点について取得された前記第1の情報と、当該基準点に前記筐体が位置するタイミングで取得された前記第2の情報と、に基づき、当該基準点の実空間における絶対的な位置と、当該基準点の相対的な位置と、の関係に応じた変換行列を算出し、
前記第2の情報に基づき推定される前記筐体の相対的な位置を、前記変換行列に基づき、当該筐体の実空間における絶対的な位置に変換する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記推定手段は、
少なくとも2つの前記基準点について取得された前記第1の情報と、当該基準点に前記筐体が位置するタイミングで取得された前記第2の情報と、に基づき、当該基準点の絶対的な位置を示す絶対座標系と、前記基準点の相対的な位置を示す相対座標系と、の間のずれに応じた変換式を算出し、
前記第2の情報に基づき推定される前記筐体の相対的な位置を、前記変換式に基づき、当該筐体の実空間における絶対的な位置に変換する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第2の情報は、
前記筐体に支持された撮像部による実空間の撮像結果に応じた画像中の被写体の認識結果と、
前記筐体に支持された検知部による当該筐体の位置の相対的な変化の検知結果と、
のうち少なくともいずれかに応じた情報である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1の情報は、所定の読取手段により前記基準点に付されたマーカを利用して取得される、請求項1~4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記マーカは、少なくとも一部に前記第1の情報を示すコードを含み、
前記コードが読み取られることで、前記第1の情報が取得される、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第1の情報は、実空間内の前記マーカの認識結果に基づき取得される、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第1の情報は、前記マーカと前記筐体とのうちの少なくともいずれかに設けられた支持部材により、当該筐体と前記基準点とが所定の位置関係となるように支持された状態で取得される、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記推定手段は、
前記第2の情報が示す前記筐体の相対的な位置の変化が検知されたタイミングにおける、当該筐体の実空間における絶対的な位置を、
当該第2の情報と、
一連の前記基準点それぞれに対して設定された当該基準点の位置の推定結果の信頼度に基づき、当該一連の前記基準点から複数の前記基準点が選択され、当該複数の前記基準点それぞれについて取得された前記第1の情報と、
に基づき推定する、
請求項1~のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記信頼度は、前記基準点の絶対的な位置に関する情報の取得方法に応じて設定される、請求項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
実空間内の互いに異なる複数の位置それぞれを基準点として、複数の当該基準点それぞれの絶対的な位置に関する第1の情報を取得する第1の取得ステップと、
所定の筐体の相対的な位置の変化に応じた第2の情報を時系列に沿って逐次取得する第2の取得ステップと、
複数の前記基準点それぞれについて取得された前記第1の情報と、当該基準点に前記筐体が位置するタイミングで取得された前記第2の情報と、に基づき、他の前記第2の情報が示す前記筐体の相対的な位置の変化が検知されたタイミングにおける、当該筐体の実空間における絶対的な位置を推定する推定ステップと、
を含み、
前記推定ステップは、前記第2の情報が示す前記筐体の相対的な位置の変化が検知されたタイミングにおける、当該筐体の実空間における絶対的な位置を、当該第2の情報と、当該タイミングにより近いタイミングで取得された複数の前記第1の情報と、に基づき推定する、
情報処理方法。
【請求項12】
コンピュータに、
実空間内の互いに異なる複数の位置それぞれを基準点として、複数の当該基準点それぞれの絶対的な位置に関する第1の情報を取得する第1の取得ステップと、
所定の筐体の相対的な位置の変化に応じた第2の情報を時系列に沿って逐次取得する第2の取得ステップと、
複数の前記基準点それぞれについて取得された前記第1の情報と、当該基準点に前記筐体が位置するタイミングで取得された前記第2の情報と、に基づき、他の前記第2の情報が示す前記筐体の相対的な位置の変化が検知されたタイミングにおける、当該筐体の実空間における絶対的な位置を推定する推定ステップと、
を実行させ
前記推定ステップは、前記第2の情報が示す前記筐体の相対的な位置の変化が検知されたタイミングにおける、当該筐体の実空間における絶対的な位置を、当該第2の情報と、当該タイミングにより近いタイミングで取得された複数の前記第1の情報と、に基づき推定する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、GPS(Global Positioning System)に代表されるGNSS(Global Navigation Satellite System)と称される技術を利用することで、移動体の位置の測位を可能とする仕組みが実用化されている。GPSによる測位では、衛星から送信される無線信号を端末装置で受信し、無線信号が送信されたタイミングと、当該無線信号が受信されたタイミングとの間の時間差を利用して衛星と端末装置との間の距離を算出することで、当該端末装置の位置の推定が行われる。例えば、特許文献1には、GPSを利用した移動体の位置の推定に係る技術の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014‐25890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、GNSSのように衛星から送信される無線信号を利用して移動体の測位が行われる状況下では、屋内や地下施設等のように屋根や壁面等の遮蔽物で覆われた環境では、当該無線信号が当該遮蔽物に遮蔽されることで、精度の高い測位が困難となる場合がある。
【0005】
本発明は上記の問題を鑑み、衛星からの無線信号を定常的に受信可能である状態を維持することが困難な状況下においても、より好適な態様で測位を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る情報処理装置は、実空間内の互いに異なる複数の位置それぞれを基準点として、複数の当該基準点それぞれの絶対的な位置に関する第1の情報を取得する第1の取得手段と、所定の筐体の相対的な位置の変化に応じた第2の情報を時系列に沿って逐次取得する第2の取得手段と、複数の前記基準点それぞれについて取得された前記第1の情報と、当該基準点に前記筐体が位置するタイミングで取得された前記第2の情報と、に基づき、他の前記第2の情報が示す前記筐体の相対的な位置の変化が検知されたタイミングにおける、当該筐体の実空間における絶対的な位置を推定する推定手段と、を備え、前記推定手段は、前記第2の情報が示す前記筐体の相対的な位置の変化が検知されたタイミングにおける、当該筐体の実空間における絶対的な位置を、当該第2の情報と、当該タイミングにより近いタイミングで取得された複数の前記第1の情報と、に基づき推定する
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衛星からの無線信号を定常的に受信可能である状態を維持することが困難な状況下においても、より好適な態様での測位が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、測位に係る技術について概要を説明するための図である。
図2図2は、端末装置のハードウェア構成の一例を示した図である
図3図3は、ローカル座標系に関する説明図である。
図4図4は、筐体の絶対的な位置の推定方法に関する説明図である。
図5図5は、筐体の絶対的な位置の推定方法に関する説明図である。
図6図6は、筐体の絶対的な位置の推定方法に関する説明図である。
図7図7は、端末装置の機能構成の一例を示したブロック図である。
図8図8は、端末装置の処理の一例を示したフローチャートである。
図9図9は、本実施形態に係る技術の適用例に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0010】
<概要>
まず、図1を参照して、本実施形態に係る情報処理装置による測位に係る技術について概要を説明する。本実施形態に係る端末装置100は、所謂スマートフォンやタブレット端末等のようにユーザが携行可能に構成されている。このような前提のもとで、端末装置100は、筐体に支持された各種センサや撮像部等を利用して、当該筐体の位置(換言すると、端末装置100自身の位置)の相対的な変化を検知する。
【0011】
具体的な一例として、端末装置100は、筐体に支持された撮像部による撮像結果に応じて逐次取得される画像それぞれから、被写体として撮像された物体や背景の特徴点を抽出することで、当該被写体を認識する。そして、端末装置100は、画像中に撮像された被写体の認識結果に基づき当該被写体(すなわち、物体や背景)をトラッキングしてもよい。これにより、端末装置100は、認識した被写体(換言すると、抽出した特徴点に対応する被写体)を基準として筐体の相対的な位置や姿勢の変化を算出することが可能となる。
また、他の一例として、端末装置100は、筐体に支持された加速度センサや角速度センサ等の検知結果に基づき当該筐体の相対的な位置や姿勢の変化を算出してもよい。このような技術の一例として、歩行者自律航法(PDR:Pedestrian Dead Reckoning)と称される技術が挙げられる。
もちろん上記はあくまで一例であり、端末装置100が、筐体の相対的な位置や姿勢の変化を導出することが可能であれば、その方法や当該方法を実現するための構成は特に限定されない。例えば、端末装置100は、筐体に支持された測距センサを利用して、実空間内の物体と当該筐体との間の距離を時系列に沿って逐次算出してもよい。これにより、端末装置100は、距離の算出結果を利用することで、当該距離の算出対象である物体を基準とした筐体の相対的な位置や姿勢の変化を算出することが可能となる。
【0012】
以上のようにして、端末装置100は、時系列に沿って少なくとも筐体の相対的な位置の変化を逐次算出する。そして、端末装置100は、筐体の相対的な位置の変化(換言すると、移動経路)を時系列に沿って追跡することで、端末装置100が内部的に管理するローカル座標系における筐体の位置を推定する。
【0013】
一方で、端末装置100が内部的に管理するローカル座標系は、必ずしも実空間における絶対的な座標系(以下、「絶対座標系」とも称する)と軸が一致するとは限らない。また、例えローカル座標系と絶対座標系とが一致していたとしても、ローカル座標系における情報のみでは、端末装置100がこの座標系間の一致を認識することは困難である。
そこで、端末装置100は、実空間内の互いに異なる複数の位置それぞれにおいて筐体の絶対的な位置の推定を行い、当該推定の結果を利用して、他の位置について、ローカル座標系における筐体の位置(相対的な位置)の推定結果を、絶対座標系における位置(絶対的な位置)に変換する。なお、以降の説明では、筐体の絶対的な位置の推定が行われる上記位置を、便宜上「基準点」とも称する。また、図1において、100-1~100-3のそれぞれは、互いに異なる複数の基準点それぞれに位置する端末装置100を模式的に示している。
【0014】
具体的には、端末装置100は、複数の基準点それぞれにおける、当該基準点の相対的な位置と、当該基準点の絶対的な位置と、の間の関係に応じて、ローカル座標系における位置を、絶対座標系における位置に変換する変換式を算出する。そして、端末装置100は、当該変換式を利用して、筐体の相対的な位置の変化の検知結果に応じて推定されるローカル座標系における当該筐体の位置(相対的な位置)を、絶対座標系における位置(絶対的な位置)に変換する。このような制御が適用されることで、屋根や壁面等の遮蔽物で覆われた環境(例えば、屋内や地下施設等)のように、測位に係る衛星からの無線信号を定常的に受信可能である状態を維持することが困難な状況下においても、筐体の絶対的な位置を推定することが可能となる。
そこで、以降では、本実施形態に係る端末装置100の技術的特徴について、特に、所定の筐体(例えば、端末装置100の筐体)の絶対的な位置の推定に係る処理に着目してより詳細に説明する。
【0015】
<ハードウェア構成>
図2を参照して、本実施形態に係る端末装置100のハードウェア構成の一例について説明する。図2に示すように、本実施形態に係る端末装置100は、CPU(Central Processing Unit)210と、ROM(Read Only Memory)220と、RAM(Random Access Memory)230とを含む。また、端末装置100は、補助記憶装置240と、出力装置250と、入力装置260と、ネットワークI/F270と、センサ280とを含む。CPU210と、ROM220と、RAM230と、補助記憶装置240と、出力装置250と、入力装置260と、ネットワークI/F270と、センサ280は、バス290を介して相互に接続されている。
【0016】
CPU210は、端末装置100の各種動作を制御する中央演算装置である。例えば、CPU210は、端末装置100全体の動作を制御してもよい。ROM220は、CPU210で実行可能な制御プログラムやブートプログラムなどを記憶する。RAM230は、CPU210の主記憶メモリであり、ワークエリア又は各種プログラムを展開するための一時記憶領域として用いられる。
【0017】
補助記憶装置240は、各種データや各種プログラムを記憶する。補助記憶装置240は、HDD(Hard Disk Drive)や、SSD(Solid State Drive)に代表される不揮発性メモリ等のような、各種データを一時的または持続的に記憶可能な記憶デバイスにより実現される。
【0018】
出力装置250は、各種情報を出力する装置であり、ユーザに対する各種情報の提示に利用される。本実施形態では、出力装置250は、ディスプレイ等の表示デバイスにより実現される。出力装置250は、各種表示情報を表示させることで、ユーザに対して情報を提示する。ただし、他の例として、出力装置250は、音声や電子音等の音を出力する音響出力デバイスにより実現されてもよい。この場合には、出力装置250は、音声や電信等の音を出力することで、ユーザに対して情報を提示する。また、出力装置250として適用されるデバイスは、ユーザに対して情報を提示するために利用する媒体に応じて適宜変更されてもよい。なお、出力装置250が、各種情報の提示に利用される「出力部」の一例に相当する。
【0019】
入力装置260は、ユーザからの各種指示の受け付けに利用される。本実施形態では、入力装置260は、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力デバイスを含む。ただし、他の例として、入力装置260は、マイクロフォン等の集音デバイスを含み、ユーザが発話した音声を集音してもよい。この場合には、集音された音声に対して音響解析や自然言語処理等の各種解析処理が施されることで、この音声が示す内容がユーザからの指示として認識される。また、入力装置260として適用されるデバイスは、ユーザからの指示を認識する方法に応じて適宜変更されてもよい。また、入力装置260として複数種類のデバイスが適用されてもよい。
【0020】
ネットワークI/F270は、外部の装置とのネットワークを介した通信に利用される。なお、ネットワークI/F270として適用されるデバイスは、通信経路の種別や適用される通信方式に応じて適宜変更されてもよい。
【0021】
センサ280は、端末装置100の各種状態を検知する。本実施形態に係る端末装置100は、センサ280として、例えば加速度センサや角速度センサ等のように、当該端末装置100自体(換言すると、端末装置100の筐体)の位置や姿勢の変化を検知可能なセンサを備える。センサ280は、各種状態の検知結果に応じた情報をCPU210に出力する。
【0022】
CPU210は、ROM220又は補助記憶装置240に記憶されたプログラムをRAM230に展開し、このプログラムを実行することで、図7に示す端末装置100の機能構成や、図8に示すフローチャートで示された処理が実現される。
【0023】
<技術思想>
図3図6を参照して、本実施形態に係る端末装置100が、図1を参照して概要を説明した所定の筐体の絶対的な位置の推定を実現するための技術思想について一例を以下に説明する。
【0024】
(座標系)
まず、図3を参照して、端末装置100が内部的に管理するローカル座標系について一例を説明する。なお、以降では、便宜上、端末装置100として所謂スマートフォンやタブレット端末等のように携行可能に構成された端末装置が適用され、端末装置100は、自身の筐体の絶対位置を推定するものとする。
【0025】
図3の左図に示すように、端末装置100は、長尺方向と短尺方向とを有する略方形状の面を有する平板状の筐体を備えており、所望のタイミング(例えば、起動時等)における当該筐体を基準とした各方向に基づきローカル座標系を規定する。具体的には、図3に示す例では、端末装置100は、上記面の短尺方向を「X方向」、当該面の長尺方向を「Y方向」、当該面に垂直な方向を「Z方向」として、ローカル座標系を規定している。
また、Z方向のうち一方の面には、各種情報を表示するための画面が設けられている。そこで、Z方向のうち、画面が設けられている面(「表面」とも称する)側の方向を「+Z方向」とし、当該面とは逆側の面(「裏面」とも称する)の方向を「-Z方向」とも称する。また、上記画面の長尺方向(Y方向)が実空間内の鉛直方向と略一致し、かつ当該画面の天地方向と当該鉛直方向の天地方向とが略一致した状態において、鉛直方向の上方側に対応する方向を「+Y方向」とし、下方側に対応する方向を「-Y方向」とする。また、この状態において、画面と正対した場合に左方向に対応する方向を「-X方向」とし、右方向に対応する方向を「+X方向」とする。すなわち、図3の左図に示す座標系は、端末装置100の筐体の位置を示す座標系であるとも言える。
【0026】
また、図3の右図は、端末装置100が内部的に管理するローカル座標系における回転方向について規定している。具体的には、Y方向を軸として回転する方向を「ロール(roll)方向」とも称し、+Y方向側から見て反時計回りの方向を「正」の方向とし、時計回りの方向を「負」の方向とする。また、X方向を軸として回転する方向を「ピッチ(pitch)方向」とも称し、+X方向側から見て反時計回りの方向を「正」の方向とし、時計回りの方向を「負」の方向とする。また、Z方向を軸として回転する方向を「ヨー(yaw)方向」とも称し、+Z方向側から見て反時計回りの方向を「正」の方向とし、時計回りの方向を「負」の方向とする。すなわち、図3の右図に示す回転座標系は、端末装置100の筐体の姿勢(換言すると、筐体の向き)を示す座標系であるとも言える。
なお、以降の説明では、単に「ローカル座標系」と記載した場合には、特に説明が無い限りは、端末装置100が内部的に管理するローカル座標系を示すものとする。また、以降の説明では、ローカル座標系における位置(すなわち、相対的な位置)を示す座標を「ローカル座標」とも称し、これに対して絶対座標系における位置(すなわち、絶対的な位置)を示す座標を「絶対座標」とも称する。
【0027】
(筐体の相対的な位置の推定)
以下に、移動する端末装置100の筐体の相対的な位置の推定方法の一例について説明する。
前述したように、端末装置100は、筐体に支持された撮像部による撮像結果に応じて逐次取得される画像それぞれから、被写体として撮像された物体や背景の特徴点を抽出し、当該特徴点の抽出結果に基づき当該被写体をトラッキングしてもよい。
また、他の一例として、端末装置100は、筐体に支持された加速度センサや角速度センサ等の検知結果に基づき当該筐体の相対的な位置や姿勢の変化を算出してもよい。
もちろん上記はあくまで一例であり、端末装置100が、筐体の相対的な位置や姿勢の変化を導出することが可能であれば、その方法や当該方法を実現するための構成は特に限定されない。
【0028】
以上のようにして、端末装置100は、時系列に沿って少なくとも筐体の相対的な位置の変化を逐次算出する。これにより、端末装置100は、筐体の相対的な位置の変化(換言すると、移動経路)を時系列に沿って追跡することで、端末装置100が内部的に管理するローカル座標系における当該筐体の位置を推定することが可能となる。
【0029】
(基準点に位置する筐体の絶対的な位置の推定)
以下に、基準点に位置する端末装置100の筐体の絶対的な位置の推定方法について一例を説明する。
例えば、端末装置100は、基準点に付されたマーカを利用して、当該基準点の絶対的な位置に関する情報を取得し、当該情報を利用して自身の筐体の絶対的な位置を推定してもよい。
【0030】
具体的な一例として、端末装置100は、基準点に関する情報(例えば、基準点の絶対的な位置に関する情報)が記録されたマーカから当該情報を読み出すことで、当該情報に基づき、当該マーカが付された基準点の絶対的な位置を推定してもよい。
より具体的な一例として、端末装置100は、所定のコード(例えば、バーコードやQRコード(登録商標)等)として記録された基準点に関する情報を、読み取り装置(例えば、撮像装置等)により読み取ることで、当該情報を取得してもよい。この場合には、上記コード自体が上記マーカとして基準点に付されていてもよいし、上記マーカの一部として上記コードが付されていてもよい。
また、他の一例として、所定の記録媒体にデータとして記録された基準点に関する情報が、マーカを介して端末装置100に読み出されてもよい。この場合には、例えば、マーカと、当該マーカに近接する端末装置100の筐体と、の間で所謂非接触通信を確立することで、当該非接触通信を介して上記データ(すなわち、基準点に関する情報)が当該端末装置100に読み出されてもよい。なお、この場合には、例えば、マーカは、非接触通信を確立するための通信装置を含んでもよい。
もちろん、上記はあくまで一例であり、端末装置100がマーカに記録された情報を読み出すことが可能であれば、当該情報を読み出す方法や、当該情報の読み出しを実現するための構成は特に限定されない。
そして、端末装置100がマーカから情報を読み出す際に、基準点と端末装置100の筐体との間の距離が、当該筐体の絶対的な位置の推定に際し誤差として許容できる距離であれば、端末装置100と基準点190とは絶対的な位置が略一致しているとみなすことが可能である。そのため、端末装置100は、マーカから読み出した情報に基づく基準点の絶対的な位置を、当該情報を読み出すタイミングにおける、自身の筐体の絶対的な位置として推定することが可能となる。
【0031】
また、他の一例として、端末装置100は、物体認識技術等を利用してマーカ(換言すると、実空間に存在する物体)を認識することで、当該認識の結果に基づき、当該マーカが付された基準点を基点として、自身の筐体の絶対的な位置を推定してもよい。
具体的な一例として、端末装置100は、自身の筐体に支持された撮像装置(例えば、デジタルカメラ等)による撮像結果に応じた画像に対して画像解析を施すことで、当該画像に被写体として撮像されたマーカを認識してもよい。
もちろん、上記はあくまで一例であり、端末装置100がマーカを認識することが可能であれば、当該認識の方法や、当該認識を可能とするための構成は特に限定されない。
このような前提のもとで、例えば、マーカの形状やサイズが既知であれば、端末装置100は、画像中に撮像されたマーカの形状やサイズに応じて、当該マーカに対する自身の筐体の相対的な位置や、当該マーカと当該筐体との間の距離を推定することが可能となる。そのうえで、例えば、マーカの絶対的な位置が既知であれば、端末装置100は、マーカと自身の筐体との間の相対的な位置関係に応じて、当該筐体の絶対的な位置を推定することが可能となる。
【0032】
また、基準点と端末装置100の筐体とが所定の位置関係となるように、当該基準点及び当該筐体のうち少なくともいずれかに対して支持部材(例えば、固定具等)が設けられていてもよい。このような構成に基づき、例えば、基準点の絶対的な位置が既知であれば、端末装置100は、当該基準点と自身の筐体との相対的な位置関係が一時的に固定されることで、当該基準点と当該筐体との間の相対的な位置関係に応じて、当該筐体の絶対的な位置を推定することが可能となる。
【0033】
もちろん、上記はあくまで一例であり、端末装置100が基準点に位置する場合において、当該端末装置100が自身の筐体の絶対的な位置を推定することが可能であれば、その方法は特に限定されない。
具体的な一例として、端末装置100は、基準点において衛星から送信される測位に係る無線信号を受信可能である場合には、GNSS等の技術に基づき、当該基準点における自身の筐体の絶対的な位置の推定を行ってもよい。なお、この場合には、衛星から送信される測位に係る無線信号を受信可能な実空間内の位置が、基準点として設定されることとなる。
また、他の一例として、基準点に位置する端末装置100を、複数の撮像装置により互いに異なる方向から撮像することで、当該撮像の結果に応じた画像に基づき、当該端末装置100の絶対的な位置の推定が行われてもよい。なお、この場合には、複数の撮像装置により撮像される実空間内の位置が、基準点として設定されることとなる。
【0034】
なお、本開示では、絶対的な位置に関する情報として緯度及び経度の情報を用いるが、必ずしも本実施形態に係る測位に係る技術の適用範囲を限定するものではない。具体的な一例として、建物や部屋の所定の位置や、所定の方向を基準とした座標系により、所定の対象(例えば、端末装置100の筐体等)の絶対的な位置を示すことも可能である。
【0035】
(相対的な位置から絶対的な位置への変換)
次いで、図4及び図5を参照して、端末装置100が、複数の基準点それぞれの絶対的な位置の推定結果を利用して、他の位置についても、ローカル座標系における筐体の位置(相対的な位置)を、絶対座標系における位置(絶対的な位置)に変換する方法について以下に説明する。なお、当該変換の方法については、「2点の基準点を利用する場合」と、「3点の基準点を利用する場合」と、に分けてそれぞれ説明を行うものとする。
また、図4及び図5を参照して説明する例では、ローカル座標系におけるX軸、Z軸、及びY軸を、絶対座標系における緯度、経度、及び鉛直方向とそれぞれ対応付けたうえで、ローカル座標系における位置から、絶対座標系における位置への変換が行われるものとする。また、鉛直方向については、例えば、加速度センサ等を利用して重力加速度を検知することで移動方向及び移動量を把握することが可能である。そのため、図4及び図5に示す例では、便宜上、絶対座標系の水平面上(換言すると、ローカル座標系のXZ平面上)における平面座標系に着目してローカル座標系における位置を絶対座標系における位置に変換する場合について、変換方法の説明を行うものとする。
【0036】
(2点の基準点を利用する場合)
まず、図4を参照して、2点の基準点それぞれのローカル座標系における位置及び絶対座標系における位置を利用して、所定の筐体のローカル座標系における位置を絶対座標系における位置に変換する方法の一例について説明する。
【0037】
まず、図4(a)として示すように、端末装置100は、所望のタイミング(例えば、起動時等)における自身の筐体の位置及び姿勢に基づき、ローカル座標系(すなわち、X方向、Y方向、及びZ方向)を規定する。
次いで、図4(b)として示すように、端末装置100は、1点目の基準点Pa1に移動した場合に、当該基準点Pa1の絶対座標系における位置(絶対的な位置)に関する情報と、当該基準点Pa1のローカル座標系における位置(相対的な位置)に関する情報と、を取得する。なお、基準点Pa1の絶対座標系の水平面上における位置の座標を(rLat1,rLng1)で表し、当該基準点Pa1のローカル座標系のXZ平面上における位置の座標を(rx1,rz1)で表すものとする。
次いで、図4(c)として示すように、端末装置100は、2点目の基準点Pa2に移動した場合に、当該基準点Pa2の絶対座標系における位置(絶対的な位置)に関する情報と、当該基準点Pa2のローカル座標系における位置(相対的な位置)に関する情報と、を取得する。なお、基準点Pa2の絶対座標系の水平面上における位置の座標を(rLat2,rLng2)で表し、当該基準点Pa1のローカル座標系のXZ平面上における位置の座標を(rx2,rz2)で表すものとする。
以上のような条件のもとで、端末装置100がローカル座標系における位置を絶対座標系における位置に変換するための変換式の導出方法と、当該変換式の利用方法とについて以下に説明する。
【0038】
まず、図4(c)に示すように、基準点Pa1及びPa2間を結ぶ直線L1を規定する。そのうえで、絶対座標系の水平面上(換言すると、ローカル座標系のXZ平面上)において、直線L1と緯度方向との間の角度をrBearingとする。また、ローカル座標系のXZ平面上(換言すると、絶対座標系の水平面上)において、直線L1とX方向との間の角度をrAngleとする。
また、端末装置100の移動に係る経路上の各位置のうち、ローカル座標系における端末装置100の位置の測定(推定)が行われるタイミングをiとした場合に、タイミングiにおける当該端末装置100の筐体の位置を便宜上「測定点」とも称する。そのうえで、タイミングiにおける測定点に位置する端末装置100の筐体のローカル座標を(xi,yi,zi)で表すものとする。
また、基準点の絶対座標の周囲における1mあたりの緯度及び経度の変化量をそれぞれdLat及びdLngで表すものとする。
【0039】
以上を踏まえ、Y方向と鉛直方向とが略一致することを前提とした、水平面上における絶対座標系とローカル座標系との間のずれを角度θで表した場合には、角度θは、以下に(式1)として示す関係式で表される。また、タイミングiにおける測定点に位置する端末装置100の筐体の絶対座標を(Lati,Lngi,Alti)で表した場合に、Lati、Lngi、及びAltiは、以下に(式2)~(式4)として示す関係式でそれぞれ表される。
【0040】
【数1】
【0041】
以上のようにして、上記(式2)~(式4)として示す、測定点のローカル座標(xi,yi,zi)を変数として、当該ローカル座標を絶対座標に変換する変換式が導かれる。
すなわち、端末装置100の絶対座標の推定時には、各測定点について測定(推定)されるローカル座標(xi,yi,zi)を、上記(式2)~(式4)として示す変換式に入力することで、当該測定点における端末装置100の筐体の絶対座標(Lati,Lngi,Alti)に変換することが可能となる。
【0042】
なお、基準点については、2個所のみに限らず、3個所以上設定されていてもよい。このような場合には、絶対座標の導出の対象となる測定点と、設定された各基準点と、の間の関係に応じて、上記(式2)~(式4)として示す変換式の算出に利用する基準点が決定されてもよい。具体的な一例として、設定された一連の基準点のうち、対象となる測定点に位置するタイミング(換言すると、相対的な位置の変化が検知されたタイミング)により近いタイミングで設定された2個所の基準点が、上記(式2)~(式4)として示す変換式の算出に利用されてもよい。
【0043】
(3点の基準点を利用する場合)
次いで、図5を参照して、3点の基準点それぞれのローカル座標系における位置及び絶対座標系における位置を利用して、所定の筐体のローカル座標系における位置を絶対座標系における位置に変換する方法の一例について説明する。
【0044】
まず、図5(a)として示すように、端末装置100は、所望のタイミング(例えば、起動時等)における自身の筐体の位置及び姿勢に基づき、ローカル座標系(すなわち、X方向、Y方向、及びZ方向)を規定する。
次いで、図5(b)として示すように、端末装置100は、3点の基準点Pa3~Pa5それぞれに移動した場合に、各基準点の絶対座標系における位置(絶対的な位置)に関する情報と、当該基準点のローカル座標系における位置(相対的な位置)に関する情報と、を順次取得する。
なお、基準点Pa3の絶対座標系における位置の座標を(rLat1,rAlt1,rLng1)で表し、当該基準点Pa3のローカル座標系における位置の座標を(rx1,ry1,rz1)で表すものとする。また、基準点Pa4の絶対座標系における位置の座標を(rLat2,rAlt2,rLng2)で表し、当該基準点Pa4のローカル座標系における位置の座標を(rx2,ry2,rz2)で表すものとする。また、基準点Pa5の絶対座標系における位置の座標を(rLat3,rAlt3,rLng3)で表し、当該基準点Pa5のローカル座標系における位置の座標を(rx3,ry3,rz3)で表すものとする。
以上のような条件のもとで、端末装置100がローカル座標系における位置を絶対座標系における位置に変換するための変換行列の導出方法と、当該変換行列の利用方法とについて以下に説明する。
【0045】
具体的には、端末装置100は、3点の基準点Pa3~Pa5それぞれにおける相対的な位置と絶対的な位置との間の対応関係に基づき、ローカル座標系における位置を絶対座標系における位置に変換するための変換行列を算出する。この座標変換は、所謂アフィン変換(平行移動と線形変換(拡大縮小、せん断、回転))となる。
【0046】
ここで、3点を利用する意義についてアフィン変換に即して以下に概要を説明する。
1点の基準点について相対的な位置と絶対的な位置との間の対応関係がわかることで、平行移動による座標変換が可能となる。所謂モーショントラッキングと称される技術では、位置推定の開始地点の位置を把握することが一般的であるが、本実施形態では、必ずしも開始地点における筐体の位置情報を利用する必要はない。このような特性から、本実施形態では、時系列を考慮して基準点を更新していくこととなる。
2点の基準点について相対的な位置と絶対的な位置との間の対応関係がわかることで、上記平行移動に加え回転を含む座標変換が可能となる。モーショントラッキングでは、位置推定の開始地点の向きを把握することが一般的であるが、本実施形態では、必ずしも開始地点における筐体の向きを利用する必要はない。このような特性から、本実施形態では、少なくとも2点の、基準点を利用することで、上記平行移動に加え回転を含む座標変換を可能とする。
3点の基準点について相対的な位置と絶対的な位置との間の対応関係がわかることで、上記平行移動及び回転に加え拡大縮小、せん断を含む座標変換が可能となる。具体的には、端末装置100が内部的に管理するローカル座標系の軸方向を絶対座標系の軸方向と対応付けることが可能となり、相対的な位置の情報に含まれる誤差をより低減させることも可能となる。
【0047】
上記を踏まえ、ローカル座標系における位置を絶対座標系における位置に変換するための変換行列Xは、3点の基準点Pa3~Pa5それぞれにおける相対的な位置と絶対的な位置との間の対応関係に基づき、以下に(式5)として示す関係式で表される。
【0048】
【数2】
【0049】
次いで、上記変換行列Xを利用して、各測定点における端末装置100の筐体のローカル座標系における位置(相対的な位置)を、絶対座標系における位置(絶対的な位置)に変換する方法について説明する。なお、タイミングiにおける測定点に位置する端末装置100の筐体のローカル座標を(xi,yi,zi)で表し、当該筐体の絶対座標を(Lati,Lngi,Alti)で表すものとする。この場合に、Lati、Lngi、及びAltiは、以下に(式6)として示す関係式に基づき導出される。
【0050】
【数3】
【0051】
すなわち、端末装置100の絶対座標の推定時には、各測定点について測定(推定)されるローカル座標(xi,yi,zi)を、上記(式6)として示す変換式に入力することで、当該測定点における端末装置100の筐体の絶対座標(Lati,Lngi,Alti)に変換することが可能となる。
【0052】
なお、基準点については、3個所のみに限らず、4個所以上設定されていてもよい。このような場合には、絶対座標の導出の対象となる測定点と、設定された各基準点と、の間の関係に応じて、上記(式5)として示す変換行列Xの算出に利用する基準点が決定されてもよい。具体的な一例として、設定された一連の基準点のうち、対象となる測定点に位置するタイミング(換言すると、相対的な位置の変化が検知されたタイミング)により近いタイミングで設定された3個所の基準点が、上記(式5)として示す変換行列Xの算出に利用されてもよい。
【0053】
また、上記(式5)を、以下に(式7)として示す関係式に汎化することで、任意の3箇所以上の基準点を利用して変換行列Xを算出することも可能である。なお、以下に示す(式7)において、mは3以上の整数である。
【0054】
【数4】
【0055】
上記(式7)に基づき4点以上の基準点を利用して変換行列Xを算出することで、例えば、当該4点以上の基準点が誤差を含むような状況下においても、最小二乗法を用いて誤差が最小となるような逆行列を求めることも可能となる。
【0056】
また、上記(式7)に基づきm箇所(m≧3)の基準点を利用して変換行列Xを算出する状況下において、n箇所(n>m)以上設定された基準点の中から、変換行列Xの算出に利用する任意のm箇所の基準点を選択することも可能である。
また、n箇所の基準点の中からm箇所の基準点を選択する方法については適宜変更されてもよい。例えば、n箇所の基準点(換言すると、設定された一連の基準点)それぞれに対して所定の条件に基づき信頼度(例えば、位置の推定結果の信頼度)を設定し、当該信頼度に応じて、当該n箇所の基準点の中から、変換行列Xの算出に利用するm箇所の基準点が選択されてもよい。より具体的な一例として、GPSを利用した測位結果に基づき設定された基準点については、非接触通信を介してマーカから取得した情報に基づき設定された基準点よりも信頼度がより低く設定されてもよい。また、上述した対象となる測定点に位置するタイミングと各基準点が設定されたタイミングに基づき変換行列Xの算出に利用する基準点を決定する方法と、上記信頼度に基づき変換行列Xの算出に利用する基準点を決定する方法との組み合わせが利用されてもよい。
また、AR等で利用される位置や姿勢の推定に係る手法として、相対的な位置や姿勢の変化を逐次算出して累積することで、位置や姿勢を相対値として推定する手法が挙げられる。このような手法では、位置や姿勢の推定時にエラーが発生した場合に、累積された情報がリセットされることがある。このような状況において、例えば、累積された情報のリセットが行われた場合に、当該リセットが行われたタイミング以前に設定された基準点については、他の基準点よりも信頼度がより低く設定されてもよく、変換行列Xの算出の利用対象から除外されてもよい。
【0057】
(補足)
なお、上述した例では、端末装置100の筐体の絶対的な位置を3次元的に推定する場合について説明した。一方で、端末装置100の筐体の絶対的な位置を、鉛直方向の位置を考慮せずに2次元的に推定することも可能である。この場合には、(式2)~(式4)、(式6)として示した関係式(変換式)において、鉛直方向の成分であるrAlt、ry、及びyi等に対して0を代入したうえで演算を行えばよい。
【0058】
<機能構成>
図7を参照して、本実施形態に係る端末装置100の機能構成の一例について、特に所定の筐体の絶対的な位置の推定に係る処理に着目して説明する。なお、図7に示す例では、図4図6を参照して説明したように、端末装置100は、複数の基準点それぞれのローカル座標系における位置と絶対座標系における位置との間の関係に基づき、自身の筐体の絶対的な位置の推定を行うものとする。
端末装置100は、第1の取得部101と、第2の取得部102と、推定部103とを含む。また、端末装置100は、記憶部150を含んでもよい。
【0059】
第1の取得部101は、端末装置100が基準点に位置する場合に、当該基準点に関する情報(例えば、基準点の絶対的な位置に関する情報)を取得し、当該情報を推定部103に出力する。例えば、第1の取得部101は、基準点に付されたマーカから、当該基準点に関する情報を読み出してもよい。なお、基準点に関する情報の一例や当該情報の取得方法については、「基準点に位置する筐体の絶対的な位置の推定」として前述したため、詳細な説明は省略する。また、第1の取得部101が取得する上記情報が、「第1の情報」の一例に相当する。
【0060】
第2の取得部102は、端末装置100の筐体の相対的な位置の変化に応じた情報を取得し、当該情報を推定部103に出力する。なお、端末装置100の筐体の相対的な位置の変化に応じた情報の一例や当該情報の取得方法については、「筐体の相対的な位置の推定」として前述したため、詳細な説明は省略する。また、第2の取得部102が取得する上記情報が、「第2の情報」の一例に相当する。
【0061】
推定部103は、第2の取得部102から少なくとも端末装置100の筐体の相対的な位置の変化に応じた情報を逐次取得する。推定部103は、第2の取得部102から逐次出力される情報に基づき、端末装置100の筐体の相対的な位置の変化を時系列に沿って監視することで、ローカル座標系における当該筐体の位置を推定する。
また、推定部103は、第2の取得部102による上記情報の取得タイミングごと(換言すると、測定点ごと)の、ローカル座標系における上記筐体の位置の推定結果に応じた情報を、所定の記憶領域(例えば、記憶部150)に記憶させることで管理してもよい。
【0062】
推定部103は、第1の取得部101から、端末装置100が基準点に位置する場合における、当該基準点に関する情報(例えば、基準点の絶対的な位置に関する情報)を取得する。推定部103は、取得した基準点に関する情報に基づき、当該基準点の絶対座標系における位置(絶対的な位置)を推定する。
また、推定部103は、端末装置100が基準点に位置するタイミングでの、ローカル座標系における上記筐体の位置(相対的な位置)の推定結果に基づき、当該基準点のローカル座標系における位置(相対的な位置)を推定する。
そして、推定部103は、基準点の絶対座標系における位置(絶対的な位置)の推定結果と、当該基準点のローカル座標系における位置(相対的な位置)の推定結果と、を関連付けて所定の記憶領域(例えば、記憶部150)に記録する。
【0063】
また、推定部103は、複数の基準点について、絶対座標系における位置(絶対的な位置)と、ローカル座標系における位置(相対的な位置)と、の推定結果が得られた場合に、当該推定結果を利用して、ローカル座標系における位置を絶対座標系における位置に変換する変換式を算出する。そして、推定部103は、算出した上記変換式を利用して、第2の取得部102が取得した情報に基づく各測定点における端末装置100の筐体の相対的な位置(ローカル座標系における位置)を、絶対的な位置(絶対座標系における位置)に変換する。なお、上記変換式の算出方法や、当該変換式を利用した座標変換の方法については、図4及び図5を参照して前述したため、詳細な説明は省略する。
また、推定部103は、各測定点について導出した端末装置100の筐体の絶対的な位置に関する情報を、所定の記憶領域(例えば、記憶部150)に記憶させることで管理してもよい。
【0064】
記憶部150は、端末装置100内の各部が処理を実行するためのデータやプログラムを記憶する記憶領域である。また、記憶部150は、端末装置100内の各部が生成した情報やデータを記憶してもよい。
なお、記憶部150は、例えば、端末装置100に内蔵された記憶装置により実現されてもよい。また、他の一例として、記憶部150は、端末装置100とは異なる外部の記憶装置により実現されてもよい。具体的には、記憶部150は、端末装置100に対して外付けされた記憶装置により実現されてもよいし、端末装置100とネットワークを介して接続された記憶装置により実現されてもよい。
【0065】
なお、図7に示す構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る技術的特徴を実現するための装置の構成を限定するものではない。例えば、端末装置100の少なくとも一部の機能が、複数の装置が協働することで実現されてもよい。
具体的な一例として、端末装置100の一部の機能が、端末装置100とは異なる他の装置により実現されてもよい。より具体的な一例として、第1の取得部101及び第2の取得部102と、推定部103とが互いに異なる装置に設けられていてもよい。なお、この場合には、少なくとも第1の取得部101及び第2の取得部102が、筐体の位置の推定対象となる装置側に設けられているとよい。また、推定部103が設けられる装置が、本実施形態における「情報処理装置」の一例に相当する。
また、他の一例として、端末装置100の少なくとも一部の機能の実現に係る処理の負荷が複数の装置に分散されてもよい。より具体的な一例として、推定部103の処理の負荷が複数の装置に分散されてもよい。
【0066】
また、基準点の絶対的な位置や相対的な位置の推定方法や、測定点における所定の筐体の相対的な位置の変化の検知方法に応じて、端末装置100の一連の機能のうち少なくとも一部の機能が変更されてもよい。
具体的な一例として、GNSS等の技術に基づき、基準点の絶対的な位置の推定が行われる場合には、第1の取得部101として、衛星から送信される無線信号を受信するための装置が適用されてもよい。なお、この場合には、衛星からの無線信号を受信可能であれば、いずれの位置も基準点となり得る。そのため、必ずしも基準点が固定的に設定されていなくてもよい。
また、所定の筐体の相対的な位置の変化の検知方法に応じて、第2の取得部102として適用される装置が適宜変更されてもよい。
【0067】
<処理>
図8を参照して、本実施形態に係る端末装置100の処理の一例について、特に所定の筐体の絶対的な位置の推定に係る処理に着目して説明する。なお、図8に示す例では、図4図6を参照して説明したように、端末装置100は、複数の基準点それぞれのローカル座標系における位置と絶対座標系における位置との間の関係に基づき、自身の筐体の絶対的な位置の推定を行うものとする。
【0068】
S101において、端末装置100は、自身の筐体の相対的な位置の変化を検知し、当該検知の結果を時系列に沿って監視することで、ローカル座標系における当該筐体の位置を推定する。これにより、上記検知のタイミングごと(換言すると、測定点ごと)に、ローカル座標系における端末装置100の筐体の位置の推定が可能となる。
【0069】
S102において、端末装置100は、基準点に付されたマーカからの情報の取得等により、当該基準点に関する情報(例えば、基準点の絶対的な位置に関する情報)を取得したか否かを判定する。
端末装置100は、S102において基準点に関する情報を取得したと判定した場合には、処理をS103に進める。S103において、端末装置100は、取得した基準点に関する情報に基づき、当該基準点の絶対座標系における位置(絶対的な位置)を推定する。また、端末装置100は、基準点に位置するタイミングでの、ローカル座標系における上記筐体の位置(相対的な位置)の推定結果に基づき、当該基準点のローカル座標系における位置(相対的な位置)を推定する。そして、端末装置100は、基準点の絶対座標系における位置(絶対的な位置)の推定結果と、当該基準点のローカル座標系における位置(相対的な位置)の推定結果と、を関連付けて所定の記憶領域に記録する。
一方で、端末装置100は、S102において基準点に関する情報を取得していないと判定した場合には、処理をS104に進める。
【0070】
S104において、端末装置100は、複数の基準点について情報(絶対的な位置の推定結果及び相対的な位置の推定結果)を取得済か否かを判定する。
端末装置100は、S104において複数の基準点について情報を取得済と判定した場合には、処理をS105に進める。S105において、端末装置100は、複数の基準点それぞれの絶対的な位置の推定結果と相対的な位置の推定結果との間の対応関係に基づき、ローカル座標系における位置を絶対座標系における位置に変換する変換式を算出する。なお、変換式の算出方法については、図4及び図5を参照して前述したため、詳細な説明は省略する。
一方で、端末装置100は、S104において複数の基準点について情報を取得していないと判定した場合には、処理をS106に進める。
【0071】
S106において、端末装置100は、ローカル座標系における位置を絶対座標系における位置に変換する変換式を算出済か否かを判定する。なお、S105の処理が実行されている場合には、上記変換式が算出済となる。
端末装置100は、S106において上記変換式を算出済と判定した場合には、処理をS107に進める。S107において、端末装置100は、算出した上記変換式を利用して、S101において推定したローカル座標系における自身の筐体の位置(相対的な位置)を、絶対座標系における位置(絶対的な位置)に変換する。これにより、端末装置100の筐体の絶対的な位置が推定される。
一方で、端末装置100は、S106において上記変換式を算出していないと判定した場合には、図8に示す一連の処理を終了する。
【0072】
端末装置100は、図8に示す一連の処理を、所望の契機で実行する。具体的な一例として、端末装置100は、図8に示す一連の処理を、所定のタイミングごとに定期的に実行してもよい。また、他の一例として、端末装置100は、図8に示す一連の処理を、所定のトリガに基づき実行してもよい。
【0073】
<適用例>
図9を参照して、本実施形態に係る技術の適用例について説明する。図9に示す例では、ユーザが保持するスマートフォンを本実施形態に係る端末装置100としたうえで、当該スマートフォンの測位を行う場合について説明する。なお、本適用例では、端末装置100の筐体の絶対位置の推定に2点の基準点の情報が利用されるものとする。
【0074】
図9に示す開始点P0は、端末装置100(スマートフォン)の測位を開始したタイミングにおける、当該端末装置100の位置を模式的に示している。具体的な一例として、ユーザが端末装置100にインストールされた当該端末装置100の測位を実現するためのアプリケーションが起動すると、端末装置100は、当該アプリケーションの起動のタイミングにおける自身の筐体の位置を開始点P0として設定する。
【0075】
次いで、ユーザが端末装置100を保持した状態で移動を開始し、移動中に経路上において基準点Pa21、Pa22、及びPa23それぞれが、この順序で設定されたものとする(すなわち、基準点の絶対的な位置に関する情報の読み出しが行われたものとする)。
また、Pb21~Pb25のそれぞれは測定点を示している。具体的には、ユーザが端末装置100を保持した状態で開始点P0から基準点Pa21に移動する間の経路上において、端末装置100の相対的な位置の推定が少なくとも1回行われ、当該推定が行われたタイミングに対応付けて測定点Pb21が設定されている。同様にして、基準点Pa21と基準点Pa22との間の経路上に測定点Pb22及びPb23が設定されている。また、基準点Pa22と基準点Pa23との間の経路上に測定点Pb24が設定されている。また、基準点Pa23以降の経路上に測定点Pb25が設定されている。
【0076】
以上のような前提のもとで、端末装置100は、各測定点における自身の筐体の絶対的な位置を推定する場合に、当該推定をリアルタイムで行うか、当該推定を事後的に行うかに応じて、当該推定への情報の適用対象とする基準点を決定する。
【0077】
具体的には、端末装置100は、各測定点における自身の筐体の絶対的な位置をリアルタイムで推定する場合には、当該推定に対する情報の利用対象とする基準点を、当該推定の対象とする測定点が設定されたタイミングよりも過去に設定された基準点に制限する。
この場合には、例えば、端末装置100は、測定点Pb24における自身の筐体の絶対的な位置を推定する場合には、当該測定点Pb24が設定されたタイミングよりも過去に設定された基準点Pa21及びPa22のみを、当該推定に対する情報の利用対象の候補とする。そのうえで、端末装置100は、候補として設定された基準点のうち、測定点Pb24が設定されたタイミングにより近いタイミングで設定された基準点に関する情報を、当該測定点Pb24における自身の筐体の絶対的な位置の推定に利用する。すなわち、この場合には、基準点Pa21及びPa22それぞれに関する情報が、端末装置100の筐体の絶対的な位置の推定に利用されることとなる。
【0078】
これに対して、端末装置100は、各測定点における自身の筐体の絶対的な位置を事後的に推定する場合には、当該推定に対する情報の利用対象とする基準点の制限を行わず、設定された一連の基準点を候補とする。
この場合には、例えば、端末装置100は、測定点Pb24における自身の筐体の絶対的な位置を推定する場合においても、設定された基準点Pa21、Pa22、及びPa23を、当該推定に対する情報の利用対象の候補とする。そのうえで、端末装置100は、候補として設定された基準点のうち、測定点Pb24が設定されたタイミングにより近いタイミングで設定された基準点に関する情報を、当該測定点Pb24における自身の筐体の絶対的な位置の推定に利用する。すなわち、この場合には、基準点Pa22及びPa23それぞれに関する情報が、端末装置100の筐体の絶対的な位置の推定に利用されることとなる。
【0079】
なお、端末装置100の筐体の絶対的な位置の推定が行われるタイミングで、当該推定に情報が利用される数分の基準点の設定が行われていないような状況も想定され得る。例えば、図9に示す例において、測定点Pb22が設定されたタイミングでは、基準点Pa21の1点のみが設定されている。このような状況下で、端末装置100の筐体の絶対位置の推定に2点の基準点の情報が利用される場合には、当該推定に情報が利用される2点分の基準点の設定が行われていないこととなる。このような場合には、端末装置100は、測位不可として、当該推定に係る処理を終了してもよい。
【0080】
<むすび>
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理装置(例えば、端末装置100)は、第1の取得手段と、第2に取得手段と、推定手段と、を備える。第1の取得手段は、実空間内の互いに異なる複数の位置それぞれを基準点として、複数の当該基準点それぞれの絶対的な位置に関する第1の情報を取得する。第2の取得手段は、所定の筐体の相対的な位置の変化に応じた第2の情報を時系列に沿って逐次取得する。推定手段は、複数の基準点それぞれについて取得された第1の情報と、当該基準点に筐体が位置するタイミングで取得された第2の情報と、に基づき、第2の情報が示す筐体の相対的な位置の変化が検知されたタイミングにおける、当該筐体の実空間における絶対的な位置を推定する。
以上のような構成により、本実施形態に係る情報処理装置に依れば、屋根や壁面等の遮蔽物で覆われた環境(例えば、屋内や地下施設等)のように、測位に係る衛星からの無線信号を定常的に受信可能である状態を維持することが困難な状況下においても、筐体の絶対的な位置を推定することが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
100 端末装置
101 第1の取得部
102 第2の取得部
103 推定部
150 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9