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特許7523294気体供給ノズル及びそれを備えた乾燥ユニット並びにインクジェット印刷装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】気体供給ノズル及びそれを備えた乾燥ユニット並びにインクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240719BHJP
   F26B 21/00 20060101ALI20240719BHJP
   F26B 13/10 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B41J2/01 125
F26B21/00 B
F26B13/10 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020157327
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051063
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】松田 健
(72)【発明者】
【氏名】植村 亮太
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-007714(JP,A)
【文献】特開2013-203544(JP,A)
【文献】国際公開第2019/211155(WO,A1)
【文献】特開平02-025334(JP,A)
【文献】登録実用新案第3136010(JP,U)
【文献】特表2007-532857(JP,A)
【文献】特開昭62-223589(JP,A)
【文献】特開2020-085364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
F26B 21/00
F26B 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長軸に沿った幅方向に所定の長さの開口幅を有し、前記幅方向に直交する長さ方向に、前記開口幅の長さよりも短い開口長さを有する噴射口を形成され、インクを用いて印刷された印刷媒体に対して前記噴射口から乾燥用の気体を供給する気体供給ノズルにおいて、
前記噴射口の形状をその幅方向全体にわたって一定に保持する保持部材を備えており、
前記噴射口は、気体が供給される供給口の反対側に形成され、
前記供給口側から前記噴射口に向かって延出され、前記噴射口のうち前記幅方向に沿った第1の辺を有し、前記第1の辺を挟んで前記供給口の反対側へ突出して形成された第1の鍔を有する第1のノズルカバーと、
前記噴射口を挟んで前記長さ方向にて前記第1のノズルカバーと対向して配置され、前記供給口側から前記噴射口に向かって延出され、前記第1の辺と前記開口長さだけ離間した第2の辺を有し、前記第2の辺を挟んで前記供給口の反対側へ突出して形成された第2の鍔を有する第2のノズルカバーと、
を備え、
前記第1のノズルカバーは、前記第1の辺から前記第1の鍔に連なる内面が、前記幅方向側からみて円弧を描くように形成され、
前記第2のノズルカバーは、前記第2の辺から前記第2の鍔に連なる内面が、前記幅方向側からみて円弧を描くように形成され、
前記保持部材は、前記第1の鍔の先端部から前記第1のノズルカバーの外面、及び前記第2の鍔の先端部から前記第2のノズルカバーの外面にわたって取り付けられていることを特徴とする気体供給ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の気体供給ノズルにおいて、
前記保持部材は、複数個の保持部材片で構成され、
前記複数個の保持部材片は、前記幅方向にて離間して取り付けられていることを特徴とする気体供給ノズル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の気体供給ノズルにおいて、
前記幅方向の両端部に配置された側板をさらに備え、
前記側板は、前記噴射口に対応する中央部と、前記中央部から前記長さ方向に形成された肩部と、
を備え、
前記肩部は、前記第1のノズルカバー及び前記第2のノズルカバーの厚みに相当する切り欠き部を形成され、
前記第1のノズルカバー及び前記第2のノズルカバーは、前記側板の厚さに対応する係合片を前記側板側に向かって突出して形成され、
前記第1のノズルカバー及び前記第2のノズルカバーは、それぞれの前記係合片を前記切り欠き部に係合させて取り付けられていることを特徴とする気体供給ノズル。
【請求項4】
長軸に沿った幅方向に所定の長さの開口幅を有し、前記幅方向に直交する長さ方向に、前記開口幅の長さよりも短い開口長さを有する噴射口を形成され、インクを用いて印刷された印刷媒体に対して前記噴射口から乾燥用の気体を供給する気体供給ノズルを備えた乾燥ユニットにおいて、
前記噴射口の形状をその幅方向全体にわたって一定に保持する保持部材を備えており、
前記噴射口は、気体が供給される供給口の反対側に形成され、
前記供給口側から前記噴射口に向かって延出され、前記噴射口のうち前記幅方向に沿った第1の辺を有し、前記第1の辺を挟んで前記供給口の反対側へ突出して形成された第1の鍔を有する第1のノズルカバーと、
前記噴射口を挟んで前記長さ方向にて前記第1のノズルカバーと対向して配置され、前記供給口側から前記噴射口に向かって延出され、前記第1の辺と前記開口長さだけ離間した第2の辺を有し、前記第2の辺を挟んで前記供給口の反対側へ突出して形成された第2の鍔を有する第2のノズルカバーと、
を備え、
前記第1のノズルカバーは、前記第1の辺から前記第1の鍔に連なる内面が、前記幅方向側からみて円弧を描くように形成され、
前記第2のノズルカバーは、前記第2の辺から前記第2の鍔に連なる内面が、前記幅方向側からみて円弧を描くように形成され、
前記保持部材は、前記第1の鍔の先端部から前記第1のノズルカバーの外面、及び前記第2の鍔の先端部から前記第2のノズルカバーの外面にわたって取り付けられている
ことを特徴とする乾燥ユニット。
【請求項5】
印刷媒体にインク滴を吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置において、
前記印刷媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部で搬送されている前記印刷媒体にインク滴を吐出して画像を形成する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドの下流に配置され、前記印刷ヘッドで印刷された前記印刷媒体に乾燥用気体を供給して乾燥を行う乾燥ユニットと、
を備え、
前記乾燥ユニットは、
前記搬送方向と直交する幅方向に所定の長さの開口幅を有し、前記幅方向に直交する長さ方向に、前記開口幅の長さよりも短い開口長さを有する噴射口を形成された気体供給ノズルを備え、
前記気体供給ノズルは、前記噴射口の形状をその幅方向全体にわたって一定に保持する保持部材を備えており、
前記噴射口は、気体が供給される供給口の反対側に形成され、
前記供給口側から前記噴射口に向かって延出され、前記噴射口のうち前記幅方向に沿った第1の辺を有し、前記第1の辺を挟んで前記供給口の反対側へ突出して形成された第1の鍔を有する第1のノズルカバーと、
前記噴射口を挟んで前記長さ方向にて前記第1のノズルカバーと対向して配置され、前記供給口側から前記噴射口に向かって延出され、前記第1の辺と前記開口長さだけ離間した第2の辺を有し、前記第2の辺を挟んで前記供給口の反対側へ突出して形成された第2の鍔を有する第2のノズルカバーと、
を備え、
前記第1のノズルカバーは、前記第1の辺から前記第1の鍔に連なる内面が、前記幅方向側からみて円弧を描くように形成され、
前記第2のノズルカバーは、前記第2の辺から前記第2の鍔に連なる内面が、前記幅方向側からみて円弧を描くように形成され、
前記保持部材は、前記第1の鍔の先端部から前記第1のノズルカバーの外面、及び前記第2の鍔の先端部から前記第2のノズルカバーの外面にわたって取り付けられている
ことを特徴とするインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体に対して乾燥用の気体を供給する気体供給ノズル及びそれを備えた乾燥ユニット並びにインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、インクジェット印刷装置における気体供給ノズルがある。インクジェット印刷装置は、印刷媒体を搬送させつつ、印刷媒体から離間して配置された印刷ヘッドによりインク滴を吐出して印刷媒体に画像を形成する。そのため、インクジェット印刷装置では、印刷ヘッドの下流側において、画像が形成された連続紙に対して気体供給ノズルから気体を供給して乾燥を行う構成を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、気体の噴射口となる気体の吹き付け口付近が1枚の板状部材で構成された送風ダクトから、印刷媒体に対して所定の方向から温風を吹き付けて乾燥させる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-166666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、1枚の板状部材で構成されており、乾燥処理の時間を短縮するために、ある一定以上の風速で気体を供給すると、ノズルの開口部の形状が変形し、気体の供給方向が意図した方向へ定まりにくいという問題がある。そのため、意図しない方向から気体の供給を受けた未乾燥状態のインクが、印刷媒体上を流れてしまうインク流れを生じる不具合があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、インクを用いて印刷した印刷媒体に対して乾燥用の気体を供給するノズルにおいて、印刷媒体に対してノズルの噴出口から一定の向きで気体を噴出することができる気体供給ノズル及びそれを備えた乾燥ユニット並びにインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、長軸に沿った幅方向に所定の長さの開口幅を有し、前記幅方向に直交する長さ方向に、前記開口幅の長さよりも短い開口長さを有する噴射口を形成され、インクを用いて印刷された印刷媒体に対して前記噴射口から乾燥用の気体を供給する気体供給ノズルにおいて、前記噴射口の形状をその幅方向全体にわたって一定に保持する保持部材を備えており、前記噴射口は、気体が供給される供給口の反対側に形成され、前記供給口側から前記噴射口に向かって延出され、前記噴射口のうち前記幅方向に沿った第1の辺を有し、前記第1の辺を挟んで前記供給口の反対側へ突出して形成された第1の鍔を有する第1のノズルカバーと、前記噴射口を挟んで前記長さ方向にて前記第1のノズルカバーと対向して配置され、前記供給口側から前記噴射口に向かって延出され、前記第1の辺と前記開口長さだけ離間した第2の辺を有し、前記第2の辺を挟んで前記供給口の反対側へ突出して形成された第2の鍔を有する第2のノズルカバーと、を備え、前記第1のノズルカバーは、前記第1の辺から前記第1の鍔に連なる内面が、前記幅方向側からみて円弧を描くように形成され、前記第2のノズルカバーは、前記第2の辺から前記第2の鍔に連なる内面が、前記幅方向側からみて円弧を描くように形成され、前記保持部材は、前記第1の鍔の先端部から前記第1のノズルカバーの外面、及び前記第2の鍔の先端部から前記第2のノズルカバーの外面にわたって取り付けられていることを特徴とするものである。
【0007】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、たとえ板状の部材に噴射口が形成されている場合であっても、保持部材が、噴射口の形状をその幅方向全体にわたって一定に保持する。したがって、保持部材により噴射口が変形することを防止できる。そのため、噴出口から印刷媒体に対して噴出される気体の噴出方向を噴出口の幅方向全体にわたって一定に保持することができ、未乾燥状態のインクが印刷媒体上を流れてしまうことを防止できる。
【0008】
また、本発明において、前記噴射口は、気体が供給される供給口の反対側に形成され、前記供給口側から前記噴射口に向かって延出され、前記噴射口のうち前記幅方向に沿った第1の辺を有する第1のノズルカバーと、前記噴射口を挟んで前記長さ方向にて前記第1のノズルカバーと対向して配置され、前記供給口側から前記噴射口に向かって延出され、前記第1の辺と前記開口長さだけ離間した第2の辺を有する第2のノズルカバーと、を備え、前記保持部材は、前記第1のノズルカバーと前記第2のノズルカバーの前記供給口に対向した位置であって、前記噴射口の周囲に取り付けられていることが好ましい(請求項2)。
【0009】
第1のノズルカバーと第2のノズルカバーの供給口に対向した内側の位置であって、噴射口の周囲に保持部材が取り付けられている。したがって、噴射口の形状を保持部材でその幅方向にわたって一定に保持できる。また、第1のノズルカバーと第2のノズルカバーの内側に保持部材が取り付けられることで、第1のノズルカバーと第2のノズルカバーの外側を凹凸が少ない構成にできる。その結果、気体の供給により第1のノズルカバーと第2のノズルカバーの外側に付着したものを容易に除去できる。そのため、メンテナンス性を良好に保つことができる。
【0010】
また、本発明において、前記保持部材は、一対の板状部材で構成されていることが好ましい(請求項3)。
【0011】
一対の板状部材における長さ方向の間隔を任意に設定できる。したがって、噴射口からの気体の供給状態を調整しやすくできる。
【0012】
また、本発明において、前記一対の板状部材は、前記長さ方向において前記開口長さより長い間隔を隔てて配置されていることが好ましい(請求項4)。
【0013】
一対の板状部材における長さ方向の間隔が開口長さより長い。したがって、供給口から供給されて、噴射口に至る気体の流路が段階的に狭くなる。これにより、急激に流路が狭くなることで生じる気流の渦に伴う風切り音を、風速を低減させることなく抑制できる。
【0014】
また、本発明において、前記噴射口は、気体が供給される供給口の反対側に形成され、前記供給口側から前記噴射口に向かって延出され、前記噴射口のうち前記幅方向に沿った第1の辺を有し、前記第1の辺を挟んで前記供給口の反対側へ突出して形成された第1の鍔を有する第1のノズルカバーと、前記噴射口を挟んで前記長さ方向にて前記第1のノズルカバーと対向して配置され、前記供給口側から前記噴射口に向かって延出され、前記第1の辺と前記開口長さだけ離間した第2の辺を有し、前記第2の辺を挟んで前記供給口の反対側へ突出して形成された第2の鍔を有する第2のノズルカバーと、を備え、前記第1のノズルカバーは、前記第1の辺から前記第1の鍔に連なる内面が、前記幅方向側からみて円弧を描くように形成され、前記第2のノズルカバーは、前記第2の辺から前記第2の鍔に連なる内面が、前記幅方向側からみて円弧を描くように形成され、前記保持部材は、前記第1の鍔の先端部から前記第1のノズルカバーの外面、及び前記第2の鍔の先端部から前記第2のノズルカバーの外面にわたって取り付けられていることが好ましい(請求項5)。
【0015】
保持部材は、第1の鍔の先端部から第1のノズルカバーの外面、及び第2の鍔の先端部から第2のノズルカバーの外面にわたって取り付けられている。したがって、保持部材は、噴射口となる第1の鍔及び第2の鍔の間隔を、開口長さとして幅方向にわたって一定に保持できる。また、第1の辺から第1の鍔に連なる内面が、幅方向側からみて円弧を描くように形成され、第2のノズルカバーは、第2の辺から第2の鍔に連なる内面が、幅方向側からみて円弧を描くように形成されている。したがって、幅方向側から見ると、供給口から供給されて、噴射口に至る気体の流路が滑らかに狭くなる。これにより、急激に流路が狭くなることで生じる気流の渦に伴う風切り音を、風速を低減させることなく抑制できる。また、第1の鍔と第2の鍔により噴射口に至る流路が長くなっている。そのため、噴射口から供給される気体の拡がりを抑制できる。したがって、狙った位置に向けて気体を供給しやすくなる。
【0016】
また、本発明において、前記保持部材は、複数個の保持部材片で構成され、前記複数個の保持部材片は、前記幅方向にて離間して取り付けられていることが好ましい(請求項6)。
【0017】
保持部材片が幅方向に離間して配置されている。したがって、気体供給ノズルの軽量化を図ることができる。
【0018】
また、本発明において、前記幅方向の両端部に配置された側板をさらに備え、前記側板は、前記噴射口に対応する中央部と、前記中央部から前記長さ方向に形成された肩部と、を備え、前記肩部は、前記第1のノズルカバー及び前記第2のノズルカバーの厚みに相当する切り欠き部を形成され、前記第1のノズルカバー及び前記第2のノズルカバーは、前記側板の厚さに対応する係合片を前記側板側に向かって突出して形成され、前記第1のノズルカバー及び前記第2のノズルカバーは、それぞれの前記係合片を前記切り欠き部に係合させて取り付けられていることが好ましい(請求項7)。
【0019】
第1のノズルカバー及び第2のノズルカバーは、それぞれの係合片を切り欠き部に係合させて取り付けられている。したがって、第1のノズルカバー及び第2のノズルカバーが長さ方向へずれることを防止できる。その結果、特に、噴射口の開口長さが両端側でずれることを防止できる。
【0020】
また、請求項8に記載の発明は、長軸に沿った幅方向に所定の長さの開口幅を有し、前記幅方向に直交する長さ方向に、前記開口幅の長さよりも短い開口長さを有する噴射口を形成され、インクを用いて印刷された印刷媒体に対して前記噴射口から乾燥用の気体を供給する気体供給ノズルを備えた乾燥ユニットにおいて、前記噴射口の形状をその幅方向全体にわたって一定に保持する保持部材を備えており、前記噴射口は、気体が供給される供給口の反対側に形成され、前記供給口側から前記噴射口に向かって延出され、前記噴射口のうち前記幅方向に沿った第1の辺を有し、前記第1の辺を挟んで前記供給口の反対側へ突出して形成された第1の鍔を有する第1のノズルカバーと、前記噴射口を挟んで前記長さ方向にて前記第1のノズルカバーと対向して配置され、前記供給口側から前記噴射口に向かって延出され、前記第1の辺と前記開口長さだけ離間した第2の辺を有し、前記第2の辺を挟んで前記供給口の反対側へ突出して形成された第2の鍔を有する第2のノズルカバーと、を備え、前記第1のノズルカバーは、前記第1の辺から前記第1の鍔に連なる内面が、前記幅方向側からみて円弧を描くように形成され、前記第2のノズルカバーは、前記第2の辺から前記第2の鍔に連なる内面が、前記幅方向側からみて円弧を描くように形成され、前記保持部材は、前記第1の鍔の先端部から前記第1のノズルカバーの外面、及び前記第2の鍔の先端部から前記第2のノズルカバーの外面にわたって取り付けられていることを特徴とするものである。
【0021】
[作用・効果]請求項8に記載の発明によれば、たとえ気体供給ノズルが板状の部材で形成されている場合であっても、保持部材が、噴射口の形状をその幅方向全体にわたって一定に保持する。したがって、保持部材により噴射口が変形することを防止できる。そのため、噴出口から印刷媒体に対して噴出される気体の噴出方向を噴出口の幅方向全体にわたって一定に保持することができ、乾燥状態のインクが印刷媒体上を流れてしまうことを防止できる。
【0022】
また、請求項9に記載の発明は、印刷媒体にインク滴を吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置において、前記印刷媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送部で搬送されている前記印刷媒体にインク滴を吐出して画像を形成する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドの下流に配置され、前記印刷ヘッドで印刷された前記印刷媒体に乾燥用気体を供給して乾燥を行う乾燥ユニットと、を備え、前記乾燥ユニットは、前記搬送方向と直交する幅方向に所定の長さの開口幅を有し、前記幅方向に直交する長さ方向に、前記開口幅の長さよりも短い開口長さを有する噴射口を形成された気体供給ノズルを備え、前記気体供給ノズルは、前記噴射口の形状をその幅方向全体にわたって一定に保持する保持部材を備えており、前記噴射口は、気体が供給される供給口の反対側に形成され、前記供給口側から前記噴射口に向かって延出され、前記噴射口のうち前記幅方向に沿った第1の辺を有し、前記第1の辺を挟んで前記供給口の反対側へ突出して形成された第1の鍔を有する第1のノズルカバーと、前記噴射口を挟んで前記長さ方向にて前記第1のノズルカバーと対向して配置され、前記供給口側から前記噴射口に向かって延出され、前記第1の辺と前記開口長さだけ離間した第2の辺を有し、前記第2の辺を挟んで前記供給口の反対側へ突出して形成された第2の鍔を有する第2のノズルカバーと、を備え、前記第1のノズルカバーは、前記第1の辺から前記第1の鍔に連なる内面が、前記幅方向側からみて円弧を描くように形成され、前記第2のノズルカバーは、前記第2の辺から前記第2の鍔に連なる内面が、前記幅方向側からみて円弧を描くように形成され、前記保持部材は、前記第1の鍔の先端部から前記第1のノズルカバーの外面、及び前記第2の鍔の先端部から前記第2のノズルカバーの外面にわたって取り付けられていることを特徴とするものである。
【0023】
[作用・効果]請求項9に記載の発明によれば、たとえ気体供給ノズルが板状の部材で形成されている場合であっても、保持部材が、噴射口の形状をその幅方向全体にわたって一定に保持する。したがって、保持部材により噴射口が変形することを防止できる。そのため、印刷ヘッドにより画像が印刷され、搬送部により乾燥ユニットに搬送されてきた印刷媒体に対して気体供給ノズルの噴出口の幅方向全体から一定の方向に向かう気体を噴出することができる。その結果、未乾燥状態のインクが印刷媒体上を流れてしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0024】
たとえ板状の部材に噴射口が形成されている場合であっても、保持部材が、噴射口の形状をその幅方向全体にわたって一定に保持する。したがって、保持部材により噴射口が変形することを防止できる。そのため、噴出口から印刷媒体に対して噴出される気体の噴出方向を噴出口の幅方向全体にわたって一定に保持することができ、未乾燥状態のインクが印刷媒体上を流れてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1に係る気体供給ノズルの斜視図である。
図2】実施例1に係る噴射室の縦断面図である。
図3】実施例2に係る気体供給ノズルの斜視図である。
図4】実施例2に係る噴射室の縦断面図である。
図5】変形例を示す噴射室の斜視図である。
図6】インクジェット印刷装置の概略構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る気体供給ノズル及びそれを備えた乾燥ユニット並びにインクジェット印刷装置について以下に説明する。
【0027】
<気体供給ノズル>
【実施例1】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の一実施例について説明する。
図1は、実施例1に係る気体供給ノズルの斜視図である。図2は、実施例1に係る気体供給ノズルの縦断面図である。
【0029】
まず、気体供給ノズル1における三方向を、長軸に沿った幅方向Xと、幅方向Xに直交する長さ方向Yと、これらに直交する高さ方向Zと定義する。気体供給ノズル1は、幅方向Xに長軸を有する。気体供給ノズル1は、供給室3と、噴射室5とを備えている、
【0030】
供給室3は、図示しない供給配管から乾燥用の気体を供給される。供給室3は、供給室本体7と、取付片9とを備えている。供給室本体7は、外観が四角柱状を呈し、内部に空間を備えている。供給室本体7は、図1において、高さ方向Zの下部から気体を供給される。供給室本体7は、図1において、下部から供給された乾燥用の気体を、高さ方向Zの上部から噴射室5に供給する。供給室本体7のうち、長さ方向Yの両側面には、取付片9が取り付けられている。取付片9は、縦断面がLの字状を呈する。気体供給ノズル1は、取付片9により、例えば、乾燥用の気体を供給する供給部(不図示)に取り付けられる。供給室本体7は、下部から上部に流通する乾燥用の気体を整流する整流部材(不図示)を内部に備えている。
【0031】
供給室の高さ方向Zにおける上部には、噴射室5が取り付けられている。噴射室5は、一つのノズルカバー11と、一対の側板13とを備えている。ノズルカバー11は、例えば、一枚の板状部材で構成されている。具体的には、ノズルカバー11は、例えば、ステンレス鋼板で構成されている。このノズルカバー11は、例えば、厚さが1~1.5mmである。ノズルカバー11は、底面部15と、側面部17と、傾斜面19と、ノズル面21とを備えている。底面部15は、供給室本体7の上面に位置し、供給口23を形成されている。側面部17は、底面部15から高さ方向Zに立設されている。ノズル面21は、噴射口25を形成されている。傾斜面19は、ノズル面21と側面部17とを連結している。噴射室5は、供給室3から供給された乾燥用の気体が、供給口23を通して供給される。噴射室5に供給された乾燥用の気体は、噴射口25から高さ方向Zに向けて噴射される。噴射口25は、供給口23の反対側に形成されている。換言すると、ノズルカバー11は、供給口23側から噴射口25に向かって延出されている。ノズルカバー11は、幅方向Xに沿った噴射口25を構成する一辺が長さ方向Yに対向して形成されている。
【0032】
なお、ノズルカバー11が本発明における「第1のノズルカバー」及び「第2のノズルカバー」に相当する。また、噴射口25の幅方向Xに沿った辺が本発明における「第1の辺」及び「第2の辺」に相当する。
【0033】
噴射口25は、幅方向Xに所定の長さの開口幅LXを有する。噴射口25は、長さ方向Yに所定の開口長さLYを有する。開口長さLYは、開口幅LXより短く形成されている。噴射室5は、保持部材27を備えている。具体的には、噴射口25の周囲であって、供給口23に対向するノズルカバー11の内面に保持部材27を備えている。保持部材27は、例えば、ステンレス鋼板で構成されている。開口幅LX及び開口長さLYの具体的な寸法は、例えば、開口幅LXが890mmであり、開口長さLYが1mmである。
【0034】
保持部材27は、噴射口25における幅方向Xに沿って配置されている。詳細には、保持部材27は、例えば、一対の板状部材29で構成されている。一対の板状部材29は、長さ方向Yにおける間隔が設置幅SY1で配置されている。この設置幅SY1は、開口長さLYより広くなっていることが好ましい。各々の板状部材29は、例えば、厚さが開口長さLY以上であることが好ましい。具体的には、板状部材29の厚さは1~4.2mmであることが好ましい。板状部材29は、その厚みが厚いほど強度が増すことができる。しかしながら、板状部材29の厚さが厚すぎると、噴射室5における乾燥用の気体の流れに悪影響を与える恐れがある。そこで、開口長さLY以上またはノズルカバー11の厚さ以上であって、噴射室5における乾燥用の気体の流れに悪影響を与えない程度にするのが好ましい。板状部材29は、例えば、溶接によりノズルカバー11に取り付けられている。
【0035】
上述したように構成されている気体供給ノズル1は、保持部材27により噴射口25が変形することを防止できる。したがって、保持部材27が、噴射口25の形状をその幅方向X全体にわたって一定に保持する。そのため、インクを用いて印刷された印刷媒体に対して噴出される気体の噴出方向を噴出口の幅方向全体にわたって一定に保持することができ、未乾燥状態のインクが印刷媒体上を流れてしまうことを防止できる。
【0036】
また、ノズルカバー11の内面に保持部材27を備えていることにより、ノズルカバー11の外側、すなわち、気体供給ノズル1の外周面における噴射口25の周りを凹凸が少ない構成にできる。その結果、気体の供給によりノズルカバー11の外側、すなわち、気体供給ノズル1の外面に付着したものを容易に除去できる。そのため、メンテナンス性を良好に保つことができる。
【0037】
さらに、一対の板状部材29における長さ方向Yの間隔を任意に設定できる。したがって、噴射口25からの気体の供給状態を調整しやすくできる。一対の板状部材29は、設置幅SY1が開口長さLYより広くされている。したがって、供給口23から供給されて、噴射口25に至る気体の流路が段階的に狭くなる。これにより、急激に流路が狭くなることで生じる気流の渦に伴う風切り音を、風速を低減させることなく抑制できる。
【0038】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0039】
(1)上述した実施例1では、ノズルカバー11が一つの部材で一体的に構成されている。しかしながら、ノズルカバー11を噴射口25で幅方向Xに沿って分離した二つの部材で構成するようにしてもよい。
【0040】
(2)上述した実施例1では、一対の板状部材29をノズルカバー11の内部に設けた。しかしながら、保持部材27が、噴射口25の形状をその幅方向X全体にわたって一定に保持できれば、ノズルカバー11の外側に設けるようにしてもよい。
【実施例2】
【0041】
次に、図面を参照して本発明の実施例2について説明する。なお、上述した実施例1と同様の構成については、同符号を付すことにより詳細な説明を省略する。図3は、実施例2に係る気体供給ノズルの斜視図である。図4は、実施例2に係る噴射室の縦断面図である。
【0042】
実施例2に係る気体供給ノズル1Aは、保持部材の構成が上述した実施例1と異なる。気体供給ノズル1Aは、ノズルカバー11Aを備えている。ノズルカバー11Aは、底面部15と、側面部17と、傾斜面19と、鍔31とを備えている。傾斜面19同士が長さ方向Yで対向する位置には、曲げ部33が形成されている。曲げ部33には、傾斜面19において高さ方向Zに突出した鍔31が形成されている。換言すると、鍔31は、曲げ部31を挟んで供給口23の反対側へ突出して形成されている。鍔31同士は、長さ方向Yにおいて開口長さLYだけ間隔を隔てて形成されている。
【0043】
曲げ部33は、傾斜面19の内面が幅方向Xから見て円弧を描くように形成されている。そのため、幅方向Xから見ると、供給口23から高さ方向Zに向かうにつれて、噴射口25に至る乾燥用の気体の流路の断面積が徐々に狭くなる。
【0044】
ノズルカバー11Aは、その傾斜面19に保持部材35が取り付けられている。詳細には、保持部材35は、複数個の保持部材片37で構成されている。各保持部材片37は、幅方向Xにおいてそれぞれ離間して配置されている。保持部材片37は、鍔31の高さ方向Zにおける先端部から、傾斜面19の長さ方向Yにおける外面の端部付近にわたって取り付けられている。各保持部材片37は、例えば、ステンレス鋼板で構成されている。各保持部材片37は、例えば、溶接によってノズルカバー11Aに取り付けられている。
【0045】
上述したように構成されている気体供給ノズル1Aは、保持部材35が、噴射口25の形状をその幅方向X全体にわたって一定に保持する。したがって、保持部材35により噴射口25が変形することを防止できる。そのため、印刷媒体に対して噴出される気体の噴出方向を噴出口25の幅方向X全体にわたって一定に保持することができ、未乾燥状態のインクが印刷媒体上を流れてしまうことを防止できる。
【0046】
また、曲げ部33から鍔31に連なる内面が、幅方向X側からみて円弧を描くように形成されている。したがって、幅方向X側から見ると、供給口23から供給されて、噴射口25に至る気体の流路が滑らかに狭くなる。これにより、急激に流路が狭くなることで生じる気流の渦に伴う風切り音を、風速を低減させることなく抑制できる。また、鍔31により噴射口25に至る流路が長くなっている。そのため、噴射口25から供給される気体の拡がりを抑制できる。したがって、狙った位置に向けて気体を供給しやすくなる。
【0047】
なお、上述した実施例2では、複数個の保持部材片37を幅方向Xにおいて離間して配置している。したがって、一体ものを配置した場合に比較して、気体供給ノズル1Aの軽量化を図ることができる。
【0048】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0049】
(1)上述した実施例2では、複数個の保持部材片37を幅方向Xにおいて離間して配置した。しかしながら、本発明は、このような形態に限定されない。例えば、重量的に問題がない場合には、離間させることなく複数個の保持部材片37を一塊とした一体的な保持部材35で構成してもよい。
【0050】
(2)上述した実施例2において、実施例1のようにノズルカバー11の内部に保持部材27も併せて配置してもよい。
【0051】
<変形例>
【0052】
図5を参照して、変形例について説明する。図5は、変形例を示す噴射室の斜視図である。なお、上述した実施例1,2と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明については省略する。
【0053】
この気体供給ノズル1Bは、ノズルカバー11Bと、側板13Bとが上記実施例1,2と相違する。側板13Bは、噴射口25に対応する中央部41と、中央部41から長さ方向Yに形成された二つの肩部43と、ノズルカバー11Bの側面部17に対応する側部45を備えている。肩部43は、ノズルカバー11Bの厚みに相当する切り欠き部47を形成されている。ノズルカバー11Bは、側板13Bの厚さに対応する係合片49を、切り欠き部47に対応する位置において、側板13B側に向かって突出して形成されている。
【0054】
側部45は、上記同様の切り欠き部51が形成されている。ノズルカバー11Bは、側板13Bの厚さに対応する係合片53を、切り欠き部51に対応する位置において側板13B側に向かって突出して形成されている。ノズルカバー11Bは、それぞれの係合片49,53を切り欠き部47,51に係合させて取り付けられている。
【0055】
このように構成することにより、ノズルカバー11Bが長さ方向Yへずれることを防止できる。その結果、特に、噴射口25の開口長さLYが両端側でずれることを防止できる。この変形例は、上述した実施例2と併用すると効果的である。
【0056】
<インクジェット印刷装置>
【0057】
図6を参照して、上述した気体供給ノズル1(1A、1B)を備えた乾燥ユニットと、この乾燥ユニットを備えたインクジェット印刷装置について説明する。なお、図6は、インクジェット印刷装置の概略構成を示す正面図である。
【0058】
実施例に係るインクジェット印刷装置61は、給紙部63と、塗布部65と、印刷部67と、メイン乾燥部69と、排紙部71と、制御部73とを備えている。
【0059】
なお、図1の左右方向を搬送方向Y1とする。また、搬送方向Y1の左方向を下流側、右方向を上流側とする。図1の紙面奥手前方向を幅方向Xとする。図1の上下方向を高さ方向Zとする。上記の給紙部63と、塗布部65と、印刷部67と、メイン乾燥部69と、排紙部71とは、搬送方向Y1において下流側に向かってその順に配置されている。
【0060】
給紙部63は、印刷対象である軟包装用フィルムWFを塗布部65に対して供給する。給紙部63は、ロール状にされた軟包装用フィルムWFを水平軸周りに回転可能に保持している。給紙部63は、塗布部65に対して印刷面を上方に向けた姿勢で軟包装用フィルムWFを巻き出す。軟包装用フィルムWFの素材は、例えば、疎水性の基材であり、水性インクの吸収性が小さい。軟包装用フィルムWFは、例えば、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリイミド樹脂等のプラスチックフィルムが挙げられる。
【0061】
なお、上述した軟包装用フィルムWFが本発明における「印刷媒体」に相当する。
【0062】
塗布部65は、軟包装用フィルムWFに対してプライマー層を形成するためのプライマーを塗布する。プライマー層は、前処理層、インク浸透層またはインク受容層とも呼ばれる。プライマーは、塗布液であり、下塗り液や下地調整液などとも呼ばれる。具体的には、塗布部65は、パン75と、グラビアローラ77と、搬送部79とを備えている。パン75は、プライマーを貯留する。グラビアローラ77は、パン75に貯留しているプライマーに下部が部分的に浸漬されており、回転することにより、その上部が軟包装用フィルムWFの印刷面にプライマーを供給する。搬送部79は、軟包装用フィルムWFを給紙部63から巻き出すとともに、軟包装用フィルムWFをグラビアローラ77へ搬送する。グラビアローラ77によりプライマーが供給される領域では、軟包装用フィルムWFが搬送される方向と、グラビアローラ77の周面との回転方向とが逆になっている。いわゆるリバースキス方式でプライマーが軟包装用フィルムWFに対して塗布される。搬送部79は、プライマーが塗布された軟包装用フィルムWFの印刷面を上方に向けた姿勢で、塗布部65から印刷部67へと軟包装用フィルムWFを搬送する。
【0063】
印刷部67は、カラー印刷部81と、プレ乾燥部83と、白印刷部85と、上方乾燥部87と、搬送部89とを備えている。カラー印刷部81は、プライマー層が塗布された軟包装用フィルムWFの印刷面に対し、例えば、多色の水性インクを吐出してカラー画像を印刷する。プレ乾燥部83は、カラー印刷が行われた軟包装用フィルムWFの印刷面を前処理的に乾燥させる。白印刷部85は、軟包装用フィルムWFのカラー印刷が行われた印刷面に対して白インクを吐出して白画像を印刷する。上方乾燥部87は、白画像が印刷された軟包装用フィルムWFの印刷面の乾燥を行う。搬送部89は、上述したカラー印刷部81から上方乾燥部87へと軟包装用フィルムWFを搬送する。
【0064】
プレ乾燥部83は、複数本の気体供給ノズル1(1A、1B)を備えている。気体供給ノズル1(1A、1B)は、乾燥した気体を軟包装用フィルムWFの印刷面に供給する。気体は、所定の温度に調節されている。プレ乾燥部83は、気体供給ノズル1(1A、1B)から供給される気体の温度、風量、供給時間を調節することができる。プレ乾燥部83において調節可能な気体の温度範囲は、例えば、40~80℃である。これは、軟包装用フィルムWFが印刷面に画像印刷を行った際に、印刷品質を維持可能な温度範囲に設定されることが好ましい。したがって、高温でも印刷品質が維持できる場合には、40~90℃の範囲で気体の温度を調節してもよい。また、プレ乾燥部83において調節可能な気体の風量は、風速で表すと、例えば、15~30m/sである。
【0065】
なお、上述したカラー印刷部81が本発明における「印刷ヘッド」に相当し、上述したプレ乾燥部83が本発明における「乾燥ユニット」に相当する。
【0066】
メイン乾燥部69は、印刷部67で印刷された軟包装用フィルムWFの印刷面及びその反対面の両面を乾燥処理する。具体的には、メイン乾燥部69は、第1の乾燥部91と、第2の乾燥部93と、第3の乾燥部95と、第1の搬送部97と、第2の搬送部99と、第3の搬送部101とを備えている。第1の乾燥部91は、第1の搬送部97によって搬送方向Y1の下流側へ搬送される軟包装用フィルムWFの印刷面を乾燥させる。第2の乾燥部93は、第2の搬送部99によって搬送方向Y1の上流側へ搬送される軟包装用フィルムWFの両面を乾燥させる。第3の乾燥部95は、第3の搬送部101によって搬送方向Y1の下流側へ搬送される軟包装用フィルムWFの両面を乾燥させる。第1の乾燥部91と、第2の乾燥部93と、第3の乾燥部95とは、所定温度に加熱された気体を軟包装用フィルムWFに対して吐出する。これにより、軟包装用フィルムWFの印刷面に印刷された画像が乾燥される。メイン乾燥部69は、例えば、80~90℃の気体を、27~30m/sの風速で吐出する。
【0067】
排紙部71は、メイン乾燥部69によって乾燥処理された軟包装用フィルムWFを水平軸周りに巻き取る。
【0068】
制御部73は、塗布部65と、印刷部67と、メイン乾燥部69とを統括的に制御する。制御部73は、CPU、メモリ、通信ユニットなどで構成されている。制御部73は、図示しないホストコンピュータと接続されている。軟包装用フィルムWFに印刷される画像は、印刷データとしてホストコンピュータから制御部73に与えられる。
【0069】
プレ乾燥部83は、上述した実施例1,2の気体供給ノズル1(1A、1B)を複数本備えている。たとえ気体供給ノズル1,1Aが板状の部材で形成されている場合であっても、保持部材27(35)が、噴射口25の形状をその幅方向X全体にわたって一定に保持する。したがって、保持部材27(35)により噴射口25が変形することを防止できる。そのため、印刷媒体に対して噴出される気体の噴出方向を噴出口25の幅方向X全体にわたって一定に保持することができ、未乾燥状態のインクが印刷媒体上を流れてしまうことを防止できる。
【0070】
また、上述したインクジェット印刷装置61は、カラー印刷部81により画像が印刷され、搬送部89によりプレ乾燥部83に搬送されてきた軟包装用フィルムWFの幅方向Xにおける乾燥度合いを均一にできる。したがって、インクジェット印刷装置61で印刷される軟包装用フィルムWFの印刷品質を向上できる。
【0071】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0072】
(1)上述した実施例では、軟包装用フィルムWFにプライマー層を形成して印刷を行う場合を例にとって説明した。しかしながら、本発明は、プライマー層を形成しない場合も適用可能である。
【0073】
(2)上述した実施例では、上述した実施例では、印刷媒体を軟包装用フィルムWFとしたが、本発明は枚葉式の軟包装用フィルムや、印刷用紙などのその他の種類の印刷媒体にも適用できる。
【0074】
(3)上述した実施例では、カラー印刷部81が多色の水性インクを吐出するとして説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、カラー印刷部81が吐出する水性インクは、単色のインクであってもよい。また、インクは、水性に限定されるものでもない。
【0075】
(4)上述した実施例では、印刷部67において、カラーインクを吐出した後、その印刷面を下方に向けた姿勢で乾燥するようにプレ乾燥部83が構成されている。しかしながら、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、カラーインクを吐出した印刷面を上に向けた姿勢のままプレ乾燥部83による乾燥を行うようにしてもよい。
【0076】
(5)上述した実施例では、プレ乾燥部83が複数本の気体供給ノズル1を備えている。しかしながら、本発明は、そのような構成を必須とはしない。つまり、プレ乾燥部83は、1本の気体供給ノズル1だけを備えている構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明は、インクを乾燥させるための気体供給ノズル及びそれを備えた乾燥ユニット並びにインクジェット印刷装置に適している。
【符号の説明】
【0078】
1,1A,1B … 気体供給ノズル
X … 幅方向
Y … 長さ方向
Z … 高さ方向
3 … 供給室
5 … 噴射室
7 … 供給室本体
9 … 取付片
11,11A,11B … ノズルカバー
13 … 側板
17 … 側面部
19 … 傾斜面
21 … ノズル面
23 … 供給口
25 … 噴射口
LX … 開口幅
LY … 開口長さ
27 … 保持部材
29 … 一対の板状部材
31 … 鍔
33 … 曲げ部
35 … 保持部材
37 … 保持部材片
61 … インクジェット印刷装置
83 … プレ乾燥部
89 … 搬送部
図1
図2
図3
図4
図5
図6