(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】熱マネジメントシステム
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20240719BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B60H1/22 651B
B60H1/22 671
B60H1/22 651A
F25B1/00 399Y
(21)【出願番号】P 2020158973
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原口 智規
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-140093(JP,A)
【文献】特開2014-000948(JP,A)
【文献】特開2019-055704(JP,A)
【文献】特開2020-004484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が循環する冷媒回路と、
第1ポンプによって圧送された熱媒体が、前記冷媒の放熱により高温になって循環する高温側熱媒体回路と、第2ポンプによって圧送された熱媒体が、前記冷媒の吸熱により低温になって循環する低温側熱媒体回路を有する熱マネジメントシステムにおいて、
熱管理対象の温調を行う温調用熱交換部と、
前記温調用熱交換部の上流側に接続され、前記高温側熱媒体回路の高温熱媒体と前記低温側熱媒体回路の低温熱媒体を熱管理対象の目標温度に応じた比率で混合する熱媒体混合部と、
前記温調用熱交換部の下流側に接続され、前記温調用熱交換部を経由した熱媒体を前記高温側熱媒体回路と前記低温側熱媒体回路に戻す分岐部と、
を備え
、
前記分岐部で分流された熱媒体の一方は、前記第1ポンプの上流側で第1接続部から前記高温側熱媒体回路に戻り、
前記分岐部で分流された熱媒体の他方は、前記第2ポンプの上流側で第2接続部から前記低温側熱媒体回路に戻り、
前記分岐部と前記第1接続部との間の流路及び前記分岐部と前記第2接続部との間の流路にそれぞれ逆止弁を設けた、
ことを特徴とする熱マネジメントシステム。
【請求項2】
前記熱媒体混合部は、複数の熱管理対象毎に設けられていることを特徴とする請求項1記載の熱マネジメントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両用に適した熱マネジメントシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動車両で採用される熱マネジメントシステムは、バッテリー,走行用電動モータ,インバータなどを冷却するために、熱媒体(水)回路を備えている。この熱媒体回路は、熱交換部を介してバッテリーなどの熱管理対象から熱を受けた熱媒体が、空気熱交換部(ラジエータ)を通過する間に、熱を車両外部に放出する(下記特許文献1参照)。
【0003】
また、運転中に高温になるバッテリーなどを更に冷却するために、空調用冷媒回路と熱媒体回路の熱交換を行うことがなされており、冷媒回路の吸熱によって、バッテリーなどを冷却する熱媒体の温度を下げることがなされている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-105942号公報
【文献】特開2018-43741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動車両における車両部品の熱管理は、冷却だけでなく適切な温度範囲に温調することが必要になる場合がある。バッテリーの温調は、最適温度が25℃程度であり、外気温が低い場合には、熱媒体を電気ヒーターで温めてバッテリー用の熱交換部に流すことが行われている。このため、エネルギーの利用効率が悪く、消費電力が大きくなってしまう問題があった。
【0006】
これに対しては、暖房用のヒートポンプを利用して、熱媒体を温めることが検討されている。しかしながら、バッテリーの最適温度(25℃程度)に対して暖房に必要な吹き出し温度は40~60℃程度と温度域が異なるため、単純に暖房に使用するヒートポンプでバッテリー温調用の熱媒体を温めてしまうと、バッテリー温度が高くなりすぎてしまう問題が生じる。また、バッテリー以外の熱管理対象の温調においても、状況に応じて様々な温度範囲での温調が望まれているが、ヒートポンプによる熱媒体の加温のみでは、温度域を適切に設定できない問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に対処することを課題としている。すなわち、エネルギーの利用効率が高く、消費電力を低減することができ、所望の温度域で熱管理対象の温調を行うことができるようにすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
冷媒が循環する冷媒回路と、第1ポンプによって圧送された熱媒体が、前記冷媒の放熱により高温になって循環する高温側熱媒体回路と、第2ポンプによって圧送された熱媒体が、前記冷媒の吸熱により低温になって循環する低温側熱媒体回路を有する熱マネジメントシステムにおいて、熱管理対象の温調を行う温調用熱交換部と、前記温調用熱交換部の上流側に接続され、前記高温側熱媒体回路の高温熱媒体と前記低温側熱媒体回路の低温熱媒体を熱管理対象の目標温度に応じた比率で混合する熱媒体混合部と、前記温調用熱交換部の下流側に接続され、前記温調用熱交換部を経由した熱媒体を前記高温側熱媒体回路と前記低温側熱媒体回路に戻す分岐部と、を備え、前記分岐部で分流された熱媒体の一方は、前記第1ポンプの上流側で第1接続部から前記高温側熱媒体回路に戻り、前記分岐部で分流された熱媒体の他方は、前記第2ポンプの上流側で第2接続部から前記低温側熱媒体回路に戻り、前記分岐部と前記第1接続部との間の流路及び前記分岐部と前記第2接続部との間の流路にそれぞれ逆止弁を設けた、ことを特徴とする熱マネジメントシステム。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を備えた熱マネジメントシステムは、エネルギーの利用効率が高く、消費電力を低減することができ、所望の温度域で熱管理対象の温調を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態にかかる熱マネジメントシステムの基本構成を示した説明図。
【
図2】本発明の実施形態にかかる熱マネジメントシステムの具体的な構成例を示した説明図。
【
図3】熱マネジメントシステムの動作モードの一例を説明する説明図。
【
図4】熱マネジメントシステムの動作モードの一例を説明する説明図。
【
図5】熱マネジメントシステムの動作モードの一例を説明する説明図。
【
図6】熱マネジメントシステムの動作モードの一例を説明する説明図。
【
図7】熱マネジメントシステムの動作モードの一例を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施形態にかかる熱マネジメントシステム1は、冷媒回路10、高温側熱媒体回路20、低温側熱媒体回路30を備えている。冷媒回路10は、冷媒が循環する回路であって、圧縮機11と凝縮器12と膨張弁13と蒸発器14が、順次冷媒配管で接続された閉回路を示しているが、冷媒回路10は、これに限らず、例えば、圧縮機11の上流にアキュムレータを備えるような回路であってもよい。
【0013】
高温側熱媒体回路20は、冷媒回路10における凝縮器12と一体になって、熱媒体-冷媒の熱交換を行う高温側熱交換部21を備えており、第1ポンプ22によって圧送された熱媒体が、高温側熱交換部21を通過する間に冷媒回路10における凝縮器12での冷媒の放熱で高温になって循環する。
【0014】
低温側熱媒体回路30は、冷媒回路10における蒸発器14と一体になって、熱媒体-冷媒の熱交換を行う低温側熱交換部31を備えており、第2ポンプ32によって圧送された熱媒体が、低温側熱交換部31を通過する間に冷媒回路10における蒸発器14での冷媒の吸熱で低温になって循環する。
【0015】
高温側熱媒体回路20と低温側熱媒体回路30の熱媒体としては、何も添加剤が入っていない水或いは不凍性剤や防腐剤等の添加剤が混合された水、更には油等の液熱媒体などを採用することができる。
【0016】
そして、熱マネジメントシステム1は、例えば、電動車両におけるバッテリー等の熱管理対象Mの温調を行う温調用熱交換部40を備えており、温調用熱交換部40の上流側には、熱媒体混合部50が接続され、温調用熱交換部40の下流側には、分岐部Dが接続されている。
【0017】
熱媒体混合部50は、高温側熱媒体回路20の高温熱媒体と低温側熱媒体回路30の低温熱媒体を熱管理対象Mの目標温度に応じた比率で混合するものであり、図示省略した制御部によって混合比率が制御される流量制御弁によって構成される。
【0018】
分岐部Dは、温調用熱交換部40を経由した熱媒体を高温側熱媒体回路20と低温側熱媒体回路30に戻す分岐流路である。分岐部Dは、第1ポンプ22の上流側で第1接続部C1にて高温側熱媒体回路20に接続されており、第2ポンプ32の上流側で第2接続部C2にて低温側熱媒体回路30に接続されている。
【0019】
このような熱マネジメントシステム1によると、ヒートポンプの放熱と吸熱を利用して、熱管理対象Mの温調を行うことができるので、電気ヒーターを別途設ける場合と比較して、エネルギーの利用効率が高く、消費電力を低減することができる。また、高温側熱媒体回路20の高温熱媒体と低温側熱媒体回路30の低温熱媒体を所望の比率で混合させて温調用熱交換部40に供給するので、熱管理対象Mの目標温度に応じた温調を任意の温度域で行うことができる。
【0020】
温調用熱交換部40を経由した熱媒体は、分岐部Dで分流され、第1接続部C1から高温側熱媒体回路20に戻り、第2接続部C2から低温側熱媒体回路30に戻る。その際の分流比率は、特に分配用の弁装置などを設けなくても、熱媒体混合部50で設定された混合比率に応じて成り行きで戻されることになる。これにより、簡素な熱媒体の回路構成でありながら、所望の温度域の温調を少ない電力消費で行うことが可能になる。
【0021】
図2によって、熱マネジメントシステム1の具体的な構成例を説明する。ここでは、電動車両の様々な車両部品や空調装置が熱管理の対象になっている。熱管理対象の車両部品としては、バッテリーM1とインバータM2とモータM3を図示しており、空調装置としては、車室内空間の空調を行う主空調ユニットM4とシートなどに設けられ、乗員に対しての空調を行う個別空調ユニットM5,M6を図示している。これらの熱管理対象には、それぞれ温調用熱交換部41,42,43,44,45,46,47が各々の熱管理対象と熱交換可能に取り付けられている。
【0022】
図2に示した熱マネジメントシステム1は、前述したように、冷媒回路10と高温側熱媒体回路20と低温側熱媒体回路30を備えている。そして、温調用熱交換部41,44,45,46,47には、その上流側に熱媒体混合部51,52,53,55,54がそれぞれ接続されており、高温側熱媒体回路20の高温熱媒体と低温側熱媒体回路30の低温熱媒体が、熱媒体混合部51,52,53,55,54にて目標温度に応じた混合比率で混合され、その混合で温度調整された熱媒体が、各温調用熱交換部41,44,45,46,47に供給されている。また、目標温度を設定しない温調用熱交換部42,43は、空気熱交換部(ラジエータ)61と第3ポンプ62を備える空冷熱媒体回路60に接続されている。熱マネジメントシステム1の構成例としては、追加的に電気ヒーター2を配備しても良い。
【0023】
高温側熱媒体回路20と低温側熱媒体回路30と空冷熱媒体回路60は、弁装置V1~V12を介してそれぞれ所定の流路に接続されている。ここで、弁装置V1,V2は、三方弁であり、3方向の流路が選択的に切り替え可能になっており、弁装置V3,V4,V5,V6,V7,V8は、二方弁であり、流路の開閉が可能になっている。また、弁装置V9,V10,V11は、逆止弁であり、流路の逆流を止めている。
【0024】
そして、目標温度を設定して温調を行う温調用熱交換部41,46,47の下流側の流路には、分岐部Dが設けられ、分岐部Dは、第1接続部C1にて高温側熱媒体回路20における第1ポンプ22の上流側に接続されており、第2接続部C2にて低温側熱媒体回路30における第2ポンプ32の上流側に接続されている。
【0025】
このような熱マネジメントシステム1の動作モード例を以下に説明する。
図3~
図7は、熱マネジメントシステム1の各動作モードでの回路状態を示している。ここでは、二重線で示した流路には高温熱媒体が流れ、太線で示した流路には低温熱媒体が流れ、普通実線で示した流路には高温熱媒体と低温熱媒体の混合熱媒体又は空気熱交換された熱媒体などが流れる。破線で示した流路は、弁装置V1,V2の流路選択或いは弁装置V3~V8の開閉を適宜選択的に行うことで、不使用状態になっている。
【0026】
図3に示した回路状態は、空調装置による冷房とバッテリーM1の冷却を行う動作モードである。
【0027】
この例では、高温側熱交換部21を経由した高温熱媒体は、熱媒体混合部51~55の片側入り口に送られると共に、弁装置V3の上流側で分岐して、空気熱交換部61に送られている。この際、高温側熱媒体回路20は、第1ポンプ22、高温側熱交換部21、弁装置V3、空気熱交換部61、弁装置V1,V4を順次通過する循環回路になっている。
【0028】
また、低温側熱交換部31を経由した低温熱媒体は、熱媒体混合部51~55の片側入り口に送られており、低温側熱媒体回路30は、第2ポンプ32、低温側熱交換部31、熱媒体混合部52,53、温調用熱交換部44,45、弁装置V6を順次通過する循環回路になっている。
【0029】
そして、熱媒体混合部51で混合されて設定温度になった熱媒体は、弁装置V11を介して、バッテリーM1の温調用熱交換部41に送られ、バッテリーM1を目標温度に温調している。温調用熱交換部41を経由した熱媒体は、弁装置V7を経由して、分岐部Dで分流され、一方は、第1接続部C1から高温側熱媒体回路20に戻り、他方は、第2接続部C2から低温側熱媒体回路30に戻る。
【0030】
また、熱媒体混合部54で混合されて設定温度になった熱媒体は、個別空調ユニットM6の温調用熱交換部47に送られ、個別空調ユニットM6を目標温度に温調している。温調用熱交換部47を経由した熱媒体は、温調用熱交換部41を経由した熱媒体と合流し、分岐部Dで分流され、一方は、第1接続部C1から高温側熱媒体回路20に戻り、他方は、第2接続部C2から低温側熱媒体回路30に戻る。
【0031】
また、熱媒体混合部52,53で混合されてそれぞれの設定温度になった熱媒体は、主空調ユニットM4の温調用熱交換部44,45に送られる。温調用熱交換部44,45は、各々温度設定が可能なクーラコアとして機能し、冷房用の空調装置を構成している。
【0032】
図4に示した回路状態は、主空調ユニットM4の空調装置をクーラコアとヒータコアによって構成し、バッテリーM1の冷却を空冷熱媒体回路60に流れる熱媒体によって行う動作モードである。
【0033】
この例では、主空調ユニットM4の一方の温調用熱交換部44がクーラコアとして機能し、もう一方の温調用熱交換部45がヒータコアとして機能する。この際の高温側熱媒体回路20は、第1ポンプ22、高温側熱交換部21、弁装置V3、空気熱交換部61、弁装置V1,V4を順次通過する循環回路に、高温側熱交換部21から熱媒体混合部53を介してヒータコアとして機能する温調用熱交換部45を経由して第1ポンプ22に戻る回路が加わっている。
【0034】
この例においても、熱媒体混合部54で混合されて設定温度になった熱媒体は、個別空調ユニットM6の温調用熱交換部47に送られ、個別空調ユニットM6を目標温度に温調しており、温調用熱交換部47を経由した熱媒体は、分岐部Dで分流され、一方は、第1接続部C1から高温側熱媒体回路20に戻り、他方は、第2接続部C2から低温側熱媒体回路30に戻る。
【0035】
この例では、バッテリーM1の温調用熱交換部41は、インバータM2の温調用熱交換部42とモータM3の温調用熱交換部43と並列して、空冷熱媒体回路60に接続されている。
【0036】
図5に示した回路状態は、除湿暖房を行う動作モードである。
【0037】
この例では、
図4に示した例と同様に、主空調ユニットM4の一方の温調用熱交換部44がクーラコアとして機能し、もう一方の温調用熱交換部45がヒータコアとして機能している。高温側熱媒体回路20は、第1ポンプ22、高温側熱交換部21、熱媒体混合部53、ヒータコアとして機能する温調用熱交換部45を経由して第1ポンプ22に戻る回路になり、低温側熱媒体回路30は、第2ポンプ32、低温側熱交換部31、熱媒体混合部52、クーラコアとして機能する温調用熱交換部44を経由して第2ポンプ32に戻る回路になっている。
【0038】
この例では、個別空調ユニットM6の温調用熱交換部47に、低温熱媒体が混合されない高温熱媒体が、熱媒体混合部54を介して送られており、温調用熱交換部47を経由した熱媒体は、分岐部Dで分流され、一方は、第1接続部C1から高温側熱媒体回路20に戻り、他方は、第2接続部C2から低温側熱媒体回路30に戻っている。
【0039】
バッテリーM1の温調用熱交換部41は、
図4に示した例と同様、インバータM2の温調用熱交換部42とモータM3の温調用熱交換部43と並列して、空冷熱媒体回路60に接続されている。
【0040】
図6に示した回路状態は、暖房とバッテリーの暖機を行う動作モードである。
【0041】
この例では、主空調ユニットM4の温調用熱交換部44,45が両方ともヒータコアとして機能している。高温側熱媒体回路20は、第1ポンプ22から、高温側熱交換部21、熱媒体混合部52,53、ヒータコアとして機能する温調用熱交換部44,45、弁装置V6を経由して第1ポンプ22に戻る回路になっている。
【0042】
これに対して、低温側熱媒体回路30は、第2ポンプ32から、低温側熱交換部31、弁装置V5、空気熱交換部61、弁装置V1、第3ポンプ62、温調用熱交換部42,43、弁装置V2を経由して第2ポンプ32に戻る回路になっている。ここでは、低温側熱媒体回路30を流れる熱媒体は、温調熱交換部42,43を通過することで、インバータM2やモータM3の排熱で加温されることになる。
【0043】
バッテリーM1の温調用熱交換部41には、熱媒体混合部51から高温に温度調整された熱媒体が供給され、個別空調ユニットM6の温調用熱交換部47には、低温熱媒体が混合されていない高温熱媒体が、熱媒体混合部54を介して送られる。
【0044】
図7に示した回路状態は、参考例であり、高熱側熱媒体回路20に電気ヒーター2を加えた、暖房とバッテリー暖機の動作モードである。この例は、冷媒回路10の作動を止めて、電気ヒーター2の加温のみで高温側熱媒体回路20を構成しており、高温の熱媒体を、温調用熱交換部41,47,45に送っている。
【0045】
以上説明したように、本発明の実施形態によると、ヒートポンプの放熱と吸熱を効果的に利用した熱マネジメントシステムを構築することができ、ネルギーの利用効率が高く、消費電力を低減することができ、所望の温度域で熱管理対象の温調を行うことができる。
【0046】
また、主空調ユニットM4などの熱交換器を流れる熱媒体の温度を高温水と低温水を混合することで調整することができ、エアミックダンパーを用いることなく適温にすることができるので、主空調ユニットM4などの部品点数を削減することができ、更にはユニットのコンパクト化を実現することができる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1:熱マネジメントシステム,2:電気ヒーター,
10:冷媒回路,
11:圧縮機,12:凝縮器,13:膨張弁,14:蒸発器,
20:高温側熱媒体回路,21:高温側熱交換部,22:第1ポンプ,
30:低温側熱媒体回路,31:低温側熱交換部,32:第2ポンプ,
40~47:温調用熱交換部,50~55:熱媒体混合部,
V1~V12:弁装置,
60:空冷熱媒体回路,61:空気熱交換部,62:第3ポンプ,
D:分岐部,C1:第1接続部,C2:第2接続部,
M:熱管理対象,M1:バッテリー,M2:インバータ,M3:モータ,
M4:主空調ユニット,M5,M6:個別空調ユニット