(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240719BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20240719BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240719BHJP
H01M 50/54 20210101ALI20240719BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20240719BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20240719BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M4/40
H01M10/0562
H01M50/54
H01M50/586
H01M50/591 101
(21)【出願番号】P 2020179844
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 修久
(72)【発明者】
【氏名】小高 敏和
(72)【発明者】
【氏名】青谷 幸一郎
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-156903(JP,A)
【文献】特開2015-187944(JP,A)
【文献】特開2012-124171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/0562
H01M 4/40
H01M 50/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とが固体電解質層を介して積層された単セルを複数積層して構成される積層電極セルと、
各単セルの電極から導出されるタブと、
複数の前記タブを前記電極の極性ごとに束ねる集合部と、
前記積層電極セルを収容する外装ケースと、
を備え、
前記負極の負極層がリチウム金属またはリチウム含有合金で形成される全固体電池において、
各タブの前記電極から前記集合部までの電気抵抗の最大値と最小値との差である電気抵抗差が閾値以下であることを特徴とする、全固体電池。
【請求項2】
請求項1に記載の全固体電池において、
各タブが同一素材で形成され、かつ長さを揃えることにより前記電気抵抗差が前記閾値以下に収められている、全固体電池。
【請求項3】
請求項2に記載の全固体電池において、
前記集合部が、前記積層電極セルの積層方向中央部と対向する場所に位置する全固体電池。
【請求項4】
請求項3に記載の全固体電池において、
各タブの長さが、全固体電池の最大膨張時における積層方向両端の前記電極から前記集合部までの長さより長い、全固体電池。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載の全固体電池において、
各タブの長さが、全固体電池の最大収縮時でも、正極のタブと負極のタブとが接触せず、かつ積層方向両端のタブと前記外装ケースとが接触しない長さである、全固体電池。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか一項に記載の全固体電池において、
各タブが絶縁素材で覆われている、全固体電池。
【請求項7】
請求項2に記載の全固体電池において、
前記集合部が、全固体電池の膨張時には各タブのたわみ量が増大する方向に、収縮時には各タブのたわみ量が減少する方向に、それぞれ移動する、全固体電池。
【請求項8】
請求項1に記載の全固体電池において、
各タブが同一素材で形成され、かつ断面積を調整することにより前記電気抵抗差が前記閾値以下に収められている、全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両においてモータ駆動用に用いられる二次電池として、複数の電極が積層され、各電極から突出したタブが溶接により一つにまとめられた電極組立体と、集約されたタブと各極性を有する端子とを接続する端子構造と、を備えるものが知られている。
【0003】
ところで、二次電池においては、充電時の膨張に加え、電極の劣化等を原因として、電極組立体が膨張して積層方向の寸法が増大する場合がある。そして電極組立体が膨張すると、タブに引っ張り方向の力が作用し、タブの破れやタブリードの破断が生じるおそれがある。
【0004】
特許文献1には、上記のタブの破れの問題を解消する構造が開示されている。具体的には、電極組立体の想定し得る最大膨張量を予め規定し、タブの長さの最小値が、電極組立体の膨張量が最大膨張量になった場合でもタブが突っ張らない長さになっている。また、溶接部を積層方向の中央からずれた位置に設けることで、電極組立体におけるタブが突出する端面と端子との空間の寸法を低減させ、二次電池の大型化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された構成では、各電極から溶接部までのタブの長さが異なる。タブの長さが異なれば、タブにおける発熱量にも差が生じるので、電極の面内における温度分布が電極ごとにばらつく。その結果、電池反応も電極ごとにばらつくこととなり、電極組立体を構成する単セルごとの膨張量が不均一となる。そして、膨張量が不均一になれば、特定のタブに引っ張り方向の力が集中し、タブの破れやタブリードの破断が生じるおそれがある。
【0007】
そこで本発明では、単セルごとの膨張量の不均一化を抑制し得る二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、正極と負極とが固体電解質層を介して積層された単セルを複数積層して構成される積層電極セルと、各単セルの電極から導出されるタブと、複数のタブを電極の極性ごとに束ねる集合部と、積層電極セルを収容する外装ケースと、を備え、負極の負極層がリチウム金属またはリチウム含有合金で形成される全固体電池が提供される。この全固体電池において、各タブの電極から集合部までの電気抵抗の最大値と最小値との差である電気抵抗差が閾値以下である。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、単セルごとの膨張量の不均一化を抑制し得る二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、全固体電池の外観を表す斜視図である。
【
図3】
図3は、積層電極セルの膨張状態と収縮状態を示す図である。
【
図5】
図5は、集合部の位置を説明するための図である。
【
図6】
図6は、最外層のタブの長さを説明するための図である。
【
図7】
図7は、集電体の面内温度分布を説明するための図である。
【
図8】
図8は、充電時間と面内温度分布差との関係を示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態にかかる集電構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態にかかる全固体電池の外観を表す斜視図である。
図2は、
図1に示すII-II線に沿う断面図である。なお、
図2では、正極端子8及び正極集電体と正極端子8とを接続する正極タブについては省略している。
【0013】
本実施形態にかかる全固体電池は、正極集電体の表面にリチウムイオンを吸蔵放出可能な正極層が配置されてなる正極と、負極集電体の表面にリチウム金属またはリチウム含有合金からなる負極層が配置されてなる負極と、正極層と負極層との間に介在し固体電解質を含有する固体電解質層と、を有する全固体リチウムイオン二次電池である。
【0014】
図1に示す通り、全固体電池1は、後述する積層電極セル11と、積層電極セル11を収容する外装ケース7と、を備え、外装ケース7の一側面には電力を取り出すための正極端子8及び負極端子9とが設けられている。なお、積層電極セル11は図示しない拘束装置によって積層方向の拘束圧力が印加されている。また、正極端子8と負極端子9とを異なる側面に設けても構わない。
【0015】
図2に示す通り、積層電極セル11は、負極集電体6と負極層5からなる負極と、固体電解質層4と、正極集電体2と正極層3からなる正極と、を積層した単セル10を複数積層した構成を有している。なお、
図2では、積層方向両端の負極集電体6は片面にのみ負極層が形成されているが、両面に形成されていてもよい。
【0016】
負極集電体6は、負極端子9側の側面の一部が突出した負極タブ12になっており、各負極タブ12は負極集合部13にて溶接等により一つにまとめられ、負極端子9に接続される。なお、上記の負極タブ12に代えて、負極集電体6の負極端子9側の側面と集合部13とをリード線で接続する構成であっても構わない。また、負極集合部13が負極端子9であっても構わない。
【0017】
正極側についても上述した負極側と同様であり、正極集電体2の正極端子8側の一部が正極タブ(図示せず)になっており、これらが正極集合部(図示せず)にて一つにまとめられ、正極端子8に接続される。タブに代えてリード線を使用し得る点についても同様である。以下の説明では負極集電体6から負極タブ12を介して負極集合部(以下、単に「集合部」ともいう)13までの負極側の構造(以下、「集電構造」ともいう)について説明するが、正極側の集電構造についても同様である。
【0018】
ところで、リチウムイオン電池は、充電時の膨張に加え、電極の劣化等を原因として、電極組立体が膨張して積層方向の寸法が増大する場合がある。そして、充放電に応じてリチウム金属が析出または溶解する全固体電池1では、液系リチウムイオン電池に比べて負極層5の体積変化が大きい。このため、全固体電池1は充電状態(State Of Charge:SOC)によって積層電極セル11の積層方向の寸法が大きく変化する。
【0019】
例えば
図3に示す通り、SOCが100%の状態での積層方向寸法をL1とすると、SOCが0%、つまりリチウム金属が全て溶解した状態では、積層方向寸法はL1よりもお幅に小さいL2まで減少する。したがって、負極タブ12は、少なくとも積層方向寸法が最大になった場合でも集合部13に届く長さである必要がある。また、充放電にともなう積層方向寸法の変化が繰り返されると、負極タブ12に繰返し応力が発生して負極タブ12が破れるおそれがある。したがって、積層方向寸法の変化を吸収し得る程度に負極タブ12の長さに余裕を持たせる必要もある。
【0020】
しかし、負極タブ12の長さが上記の条件を満たしたとしても、負極集電体6ごとに異なる長さであると、次の問題が生じる。
【0021】
負極タブ12の発熱量は式(1)で表される。
発熱量=(電流)2×電気抵抗・・・(1)
そして、式(1)の電気抵抗は式(2)で表される。
電気抵抗=比抵抗×タブ長さ/タブ断面積・・・(2)
つまり、負極タブ12の長さが異なると、発熱量も異なる。そして、負極タブ12での発熱量が異なると、負極集電体6の面内における温度分布が負極集電体6ごとに異なる。換言すると、負極集電体6の面内の温度分布にばらつきが生じる。負極集電体6ごとに面内の温度分布にばらつきがあると、負極集電体6ごとにリチウム金属の析出、溶解の反応の進み方が異なるので、各単セルの膨張の度合いが不均一になる。このような不均一な膨張は、負極タブ12の破れ等を招く要因となる。特に、電気化学的な安定性の観点から負極タブ12にSUS部材を使用する場合には、SUS部材の比抵抗が大きいため、不均一な膨張の問題が顕著となる。
【0022】
そこで本実施形態では、集電構造を以下に説明するように構成する。
【0023】
負極集電体6がn個あり、それぞれの負極タブ12の電極から集合部13まで、つまり負極集電体6の集合部13側の端部から集合部13までの電気抵抗をΩ1、Ω2・・・Ωn-1、Ωnとする。このとき、電気抵抗の最大値と最小値との差(以下、「電気抵抗差」ともいう)を閾値以下にする。こうすることで、式(1)によれば負極タブ12ごとの発熱量のばらつきが抑制されるので、不均一な膨張を抑制できる。
【0024】
不均一な膨張を抑制するという観点からは、電気抵抗差はゼロであることが望ましい。しかし、製造誤差等を考慮すると、使用するすべての負極タブ12の電気抵抗を同一にすることは現実的ではない。そこで、本実施形態では膨張の不均一の度合いが無視し得る程度となる電気抵抗差の最大値を閾値とし、電気抵抗差が閾値以下となるようにする。つまり、「電気抵抗差が閾値以下」ということは、電気抵抗差がゼロと同視し得るということである。
【0025】
電気抵抗差を閾値以下にする具体的な構成について、
図4~
図6を参照して説明する。
【0026】
まず、
図4に示す通り、各負極タブ12の長さをL3に揃える。なお、ここでは各負極タブ12が同一素材、同一断面積であることを前提とする。
【0027】
そして、
図5に示す通り、集合部13を積層電極セル11の積層方向の中央部(積層方向の両端部からの距離がL4の位置)と対向する位置に設け、各負極タブ12を集合部13で例えば溶接等により束ねる。負極タブ12の長さを揃えれば、集合部13の位置によらず電気抵抗差を閾値以下に抑えることができる。しかし、負極タブ12での発熱量が負極集電体6の面内の温度分布に影響を与えることを考慮すると、発熱量はより小さい方が望ましく、そのためには負極タブ12の長さは短い方が望ましい。そこで本実施形態では、負極タブ12の長さをより短くするために、集合部13を上記位置に設ける。
【0028】
負極タブ12の長さL3は、
図6に示す通り、最大膨張時における負極タブ12の始点(つまり負極集電体6の端部)から集合部13までの直線距離(
図6中の破線)より長くする。これにより、最大膨張時でも負極タブ12はたわむこととなり、引っ張り方向の力により負極タブ12が破れることを防止できる。なお、ここでいう最大膨張時の直線距離とは、基本的にはSOCが100%のときの直線距離を意味するが、経時変化等に起因する膨張がある場合には、当該膨張分を含めた状態での直線距離を意味する。
【0029】
次に、本実施形態の効果について
図7、
図8を参照して説明する。
図7は、負極タブ12の長さが揃っていない場合の、負極タブ12の長さと負極集電体6の面内の温度分布との関係を示す図である。なお、負極タブ12はSUS部材である。
図8は、充電時間と負極集電体6の面内の温度分布の差との関係を示す図である。
【0030】
図7の長さLtab1は積層電極セル11の最外層の負極集電体6Aの負極タブ12の始点から集合部13までの直線距離であり、長さLtab2は積層電極セル11の中央部の負極集電体6Bの負極タブ12の始点から集合部13までの直線距離である。つまり、Ltab1は全固体電池1で最も長い負極タブ12の長さであり、Ltab2は全固体電池1で最も短い負極タブ12の長さである。このような距離差があると、負極タブ12での発熱量にも差が生じるので、最外層の負極集電体6Aと中央部の負極集電体6Bとでは、面内の温度分布にも差が生じる。
【0031】
負極集電体6の面内では、負極タブ12の始点が最も高温で、当該始点から離れるほど温度が低くなり、負極タブ12の始点とは反対側の端部が最も低温になる、という温度分布が生じる。そして、負極タブ12の発熱量が大きいほど負極タブ12の始点の温度が高くなる。つまり、
図7に示す通り、最外層の負極集電体6Aの方が、中央部の負極集電体6Bよりも、負極タブ12の始点の温度が高く、面内の温度差が大きくなる。
【0032】
上記のように面内の温度分布に差がある構成で充電を行うと、
図8に実線で示す通り、充電時間が長くなるほど面内温度分布差が大きくなる。ここでいう面内温度分布差とは、最外層の負極集電体6Aの面内の温度分布(つまり最高温度と最低温度との差)と、中央部の負極集電体6Bの面内の温度分布(つまり最高温度と最低温度との差)との差である。
【0033】
これに対し、本実施形態ではLtab1とLtab2とを揃えるので、2つの負極集電体6A、6Bの温度分布はほぼ同じになる。その結果、
図8に破線で示す通り、充電時間が長くなっても面内温度分布差はほぼ一定に保たれ、その面内温度差は負極タブ12を銅で形成した場合(
図8中の一点鎖線)と同等である。すなわち、本実施形態によれば、各負極集電体6の面内温度分布差を小さくして、不均一な膨張を抑制することができる。
【0034】
ところで、負極タブ12の長さは、
図6で説明した通り少なくとも全固体電池1の最大膨張時でも最外層の負極タブ12にたわみが生じる長さである必要があるが、単に長ければよいわけではない。
図2のように最大収縮時(つまりSOCが0%のとき)には各負極タブ12のたわみが最大となるが、このとき負極タブ12が外装ケース7と接触したり、正極のタブと接触したりすると短絡が生じてしまう。そこで、最大収縮時でも、短絡が生じる可能性が最も高い最外層の負極タブ12が外装ケース7または正極のタブと接触しない上限の長さを負極タブ12の長さの上限値とする。なお、正極端子8と負極端子9とが積層電極セル11に対して異なる方向に配置される場合には、正極のタブとの接触は考慮する必要がない。
【0035】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下に説明する変形例は、いずれも本発明の範囲に属する。
【0036】
[変形例1]
上記実施形態では、負極タブ12の長さの上限値を設けることで短絡を防止しているが、本変形例では、これに代えて又はこれとともに、少なくとも最外層の負極タブ12を例えば樹脂等の絶縁性の部材でコーティングする。これによれば、短絡が生じる可能性がより低くなる。
【0037】
[変形例2]
上記実施形態では、集合部13が積層方向の中央に固定されている場合について説明したが、本変形例では、集合部13を
図1に示したx方向、y方向、z方向に移動可能な可動式とする。
【0038】
上記の通り負極タブ12の長さは、最大膨張時に最外層の負極タブ12にたわみが生じること、最大収縮時に最外層の負極タブ12が外装ケース7等と接触しないこと、という条件を両立する必要がある。しかし、積層電極セル11のエネルギ密度を向上させるために積層電極セル11の総積層厚みが大きくなると、必然的に負極タブ12の長さは増大する。このため、集合部13が固定されている場合には、特に最大収縮時に最外層の負極タブ12が外装ケース7等と接触しないという条件を満たすために、外装ケース7を大型化せざるを得ない場合も生じ得る。これとは反対に、外装ケース7の大きさが制限される場合には、最大収縮時に最外層の負極タブ12が外装ケース7等と接触しないという条件を満たす長さにすると、最大膨張時に最外層の負極タブ12にたわみが生じるという条件を満たすことができなくなるおそれがある。
【0039】
これに対し、集合部13が可動式であれば、最大膨張時には最外層の負極集電体6から集合部13までの距離が短くなり、最大収縮時には最外層の負極集電体6から集合部13までの距離が長くなるよう集合部13が移動することで、外装ケース7の寸法に影響されることなく上記2つの条件を両立することが容易になる。
【0040】
以上のように本実施形態によれば、正極と負極とが固体電解質層を介して積層された単セル10を複数積層して構成される積層電極セル11と、各単セル10の電極6から導出されるタブ12と、複数のタブ12を電極6の極性ごとに束ねる集合部13と、積層電極セル11を収容する外装ケース7と、を備え、負極の負極層5がリチウム金属またはリチウム含有合金で形成される全固体電池1が提供される。そして、各タブ12の電極6から集合部13までの電気抵抗の最大値と最小値との差である電気抵抗差が閾値以下である。これにより、各電極に生じる面内温度分布の差が大きくなることを抑制できる。つまり、単セル10ごとの膨張量の不均一化を抑制することができる。その結果、負極タブ12の破れを防止できる。正極タブ(図示せず)についても同様である。
【0041】
本実施形態では、各タブ12が同一素材で形成され、かつ長さを揃えることにより電気抵抗差が閾値以下に収められている。これにより、電極ごとに異なるタブ12を用いる必要がなくなるので、コストの増大を抑制できる。
【0042】
本実施形態では、集合部13が、積層電極セル11の積層方向中央部と対向する場所に位置する。これにより、タブ12の長さをより短くして、積層電極セル11のエネルギ密度を向上させることができる。
【0043】
本実施形態では、各タブ12の長さが、全固体電池1の最大膨張時における最外層(積層方向両端)の電極から集合部13までの長さより長い。これにより、最大膨張時においてもタブ12はたわむこととなるので、タブ12の破れを防止できる。
【0044】
本実施形態では、各タブ12の長さが、全固体電池1の最大収縮時でも正極のタブ(図示せず)と負極のタブ12とが接触せず、かつ最外層(積層方向両端)のタブ12と外装ケース7とが接触しない長さである。これにより、短絡を防止できる。
【0045】
本実施形態では、各タブ12が絶縁素材で覆われていてもよい。これにより、より確実に短絡を防止できる。
【0046】
本実施形態では、集合部13が、全固体電池1の膨張時には各タブのたわみ量が増大する方向に、収縮時には各タブのたわみ量が減少する方向に、それぞれ移動する可動式である。これにより、外装ケース7の寸法に制約を設けることなく短絡を防止することができる。
【0047】
[第2実施形態]
第2実施形態について
図9を参照して説明する。
【0048】
第1実施形態では、負極タブ12の長さを揃えることで電気抵抗差を閾値以下に収めているが、本実施形態ではこれとは異なる方法で電気抵抗差を閾値以下に収める。
【0049】
本実施形態では、各負極集電体6と集合部13とをSUS部材等で形成されたリード線14を用いて接続する。各リード線14の長さは、積層方向の中央から離れるほど長く、かつ全固体電池1の最大膨張時に各リード線14にたわみが生じる長さとする。そして、各リード線14は、積層方向の中央から離れるほど断面積が小さくなっている。
【0050】
具体的な断面積は、式(2)に基づいて設定する。なお、式(2)のタブ長さをリード線長さに、タブ断面積をリード線断面積に、それぞれ置き換える。すなわち、電気抵抗はリード線長さに比例し、リード線断面積に反比例するので、リード線14が短い積層方向中央側ほど断面積を大きくし、リード線14が長い最外層側ほど断面積を小さくする。そして、各リード線14の断面積を、電気抵抗差が閾値以下に収まるように設定する。
【0051】
以上のように本実施形態では、各タブ12が同一素材で形成され、かつ断面積を調整することにより電気抵抗差が閾値以下に収められている。これにより、第1実施形態と同様に、各電極が不均一に膨張することを抑制して、負極タブ12の破れを防止できる。正極タブ(図示せず)についても同様である。
【0052】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1 全固体電池
2 正極集電体
3 正極層
4 固体電解質層
5 負極層
6 負極集電体
7 外装ケース
8 正極端子
9 負極端子
10 単セル
11 積層電極セル
12 タブ
13 集合部
14 リード線