(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ファンコンベクタ
(51)【国際特許分類】
F24D 19/00 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
F24D19/00 D
(21)【出願番号】P 2020184569
(22)【出願日】2020-11-04
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】河村 初彦
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-005310(JP,U)
【文献】特開平11-051410(JP,A)
【文献】特開昭51-076835(JP,A)
【文献】特開昭58-200944(JP,A)
【文献】米国特許第07789129(US,B1)
【文献】実開昭51-052560(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
循環する熱媒により室内からケーシング内に吸い込まれる室内空気を加熱する熱交換器と、
室内からケーシング内に室内空気を吸い込んで室内に温風を吹き出させるファンと、を備えるファンコンベクタであって、
ケーシングの前側面の一部に、ケーシング内から室内に温風を吹き出す吹き出し部が設けられ、
ケーシン
グは、
前側面側と
後側面側とで、室内空気をケーシング内に吸い込む吸い込み部と室内空気のケーシング内への吸い込みを遮断する遮断部の配置が切替えられるように設けられているファンコンベクタ。
【請求項2】
ケーシング本体及びケーシング本体に着脱可能に装着される外側板を有するケーシングと、
ケーシング本体内に、循環する熱媒により室内からケーシング内に吸い込まれる室内空気を加熱する熱交換器と、室内からケーシング内に室内空気を吸い込んで室内に温風を吹き出させるファンとが収容されたファンコンベクタであって、
ケーシングの前側面の一部に、ケーシング内から室内に温風を吹き出す吹き出し部が設けられ、
ケーシングの前後左右の4つの側面のうち少なくとも2つの側面は、ケーシング本体への外側板の装着方向を入れ替えることにより、一方側面側と他方側面側とで、室内空気をケーシング内に吸い込む吸い込み部と室内空気のケーシング内への吸い込みを遮断する遮断部の配置が切替えられるように設けられているファンコンベクタ。
【請求項3】
ケーシングと、
循環する熱媒により室内からケーシング内に吸い込まれる室内空気を加熱する熱交換器と、
室内からケーシング内に室内空気を吸い込んで室内に温風を吹き出させるファンと、を備えるファンコンベクタであって、
ケーシングの前側面の一部に、ケーシング内から室内に温風を吹き出す吹き出し部が設
けられ、
ケーシングの前後左右の4つの側面のうち少なくとも2つの側面は、一方側面側と他方側面側とで、室内空気をケーシング内に吸い込む吸い込み部と室内空気のケーシング内への吸い込みを遮断する遮断部の配置が切替えられるように設けられており、
一方側面側及び他方側面側のいずれに吸い込み部が配置される場合でも、吸い込み部が設けられている側面側からケーシング内に室内空気が吸い込まれる一方側面側バイパス通路及び他方側面側バイパス通路と、一方側面側バイパス通路及び他方側面側バイパス通路の下流側で両バイパス通路が合流する合流部とを有するバイパス通路が設けられ、
バイパス通路に流入する室内空気が熱交換器を経由することなくファンに向かって流通するように構成され、
合流部に、温度センサが配設されているファンコンベクタ。
【請求項4】
請求項2または3に記載のファンコンベクタにおいて、
吸い込み部と遮断部の配置は、ケーシングの前側面側と後側面側とで切替えられるファンコンベクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンコンベクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーシング内に、温水が循環する熱交換器と、室内空気を循環するファンとが収容されたファンコンベクタが知られている。一般に、ファンコンベクタは、ファンを作動させることによって、ケーシングの後側面に設けられた吸い込み口からケーシング内に室内空気を吸い込み、熱交換器により室内空気を加熱して、ケーシングの前側面に設けられた吹き出し口から温風を吹き出するように構成されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなケーシングの後側面に吸い込み口を有するファンコンベクタは、吸い込み口が閉塞されないよう、ファンコンベクタを室内の壁面から一定距離、離して設置する必要がある。しかしながら、ファンコンベクタの設置環境によっては、ファンコンベクタの後側面が室内の壁面に据え付けられて利用される場合がある。このような設置環境では、ファンを作動させても後側面の吸い込み口から十分に室内空気がケーシング内に吸い込まれないから、安定した暖房性能が得られ難いという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、設置環境に制限されない汎用性の高いファンコンベクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、
ケーシングと、
循環する熱媒により室内からケーシング内に吸い込まれる室内空気を加熱する熱交換器と、
室内からケーシング内に室内空気を吸い込んで室内に温風を吹き出させるファンと、を備えるファンコンベクタであって、
ケーシングの前側面の一部に、ケーシング内から室内に温風を吹き出す吹き出し部が設けられ、
ケーシングは、前側面側と後側面側とで、室内空気をケーシング内に吸い込む吸い込み部と室内空気のケーシング内への吸い込みを遮断する遮断部の配置が切替えられるように設けられているファンコンベクタが提供される。
【0007】
上記ファンコンベクタによれば、ケーシングは、前側面側と後側面側とで、室内空気をケーシング内に吸い込む吸い込み部と、室内空気のケーシング内への吸い込みを遮断する遮断部の配置が切替え可能に設けられているから、ファンコンベクタの設置環境に応じて吸い込み部の配置を変更することができる。また、上記ファンコンベクタによれば、遮断部が設けられている側面側からケーシング内に室内空気は吸い込まれず、吸い込み部が設けられている側面側のみからケーシング内に室内空気が吸い込まれるから、ファンの作動によって形成される空気通路に沿って吸い込み部から吸い込まれる室内空気をケーシング内に円滑に流通させることができる。これにより、ファンコンベクタの設置環境に関わらず、所定の暖房性能を発揮させることができ、ケーシングの後側面が室内の壁面に据え付けられる設置環境でも、ケーシングの後側面が室内の壁面から一定距離、離れる設置環境でも、所定の暖房性能を発揮させることができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様によれば、
ケーシング本体及びケーシング本体に着脱可能に装着される外側板を有するケーシングと、
ケーシング本体内に、循環する熱媒により室内からケーシング内に吸い込まれる室内空気を加熱する熱交換器と、室内からケーシング内に室内空気を吸い込んで室内に温風を吹き出させるファンとを収容するファンコンベクタであって、
ケーシングの前側面の一部に、ケーシング内から室内に温風を吹き出す吹き出し部が設けられ、
ケーシングの前後左右の4つの側面のうち少なくとも2つの側面は、ケーシング本体への外側板の装着方向を入れ替えることにより、一方側面側と他方側面側とで、室内空気をケーシング内に吸い込む吸い込み部と室内空気のケーシング内への吸い込みを遮断する遮断部の配置が切替えられるように設けられているファンコンベクタが提供される。
【0009】
上記ファンコンベクタによれば、簡易な構成により吸い込み部と遮断部の配置を切替えることができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様によれば、
ケーシングと、
循環する熱媒により室内からケーシング内に吸い込まれる室内空気を加熱する熱交換器と、
室内からケーシング内に室内空気を吸い込んで室内に温風を吹き出させるファンと、を備えるファンコンベクタであって、
ケーシングの前側面の一部に、ケーシング内から室内に温風を吹き出す吹き出し部が設けられ、
ケーシングの前後左右の4つの側面のうち少なくとも2つの側面は、一方側面側と他方側面側とで、室内空気をケーシング内に吸い込む吸い込み部と室内空気のケーシング内への吸い込みを遮断する遮断部の配置が切替えられるように設けられており、
一方側面側及び他方側面側のいずれに吸い込み部が配置される場合でも、吸い込み部が設けられている側面側からケーシング内に室内空気が吸い込まれる一方側面側バイパス通路及び他方側面側バイパス通路と、一方側面側バイパス通路及び他方側面側バイパス通路の下流側で両バイパス通路が合流する合流部とを有するバイパス通路が設けられ、
バイパス通路に流入する室内空気が熱交換器を経由することなくファンに向かって流通するように構成され、
合流部に、温度センサが配設されているファンコンベクタが提供される。
【0011】
室内空気の温度に応じて所定の動作を実行させるファンコンベクタには、熱交換器で加熱される前の室内空気の温度を検知する温度センサが設けられる。そのため、吸い込み部と遮断部の配置が切替え可能に配置されるファンコンベクタでは吸い込み部の位置が変わるから、一方側面側及び他方側面側にそれぞれ温度センサを設ける必要がある。
【0012】
しかしながら、上記ファンコンベクタによれば、吸い込み部が一方側面側及び他方側面側のいずれに配置される場合でも、吸い込み部が設けられている側面側から室内空気が一方側面側バイパス通路または他方側面側バイパス通路に流入する。そして、バイパス通路は、一方側面側バイパス通路及び他方側面側バイパス通路の下流側で両バイパス通路が合流する合流部を有しており、合流部に流入する室内空気は熱交換器を経由することなくファンに向かって流通するから、合流部に配置される単一の温度センサよって、吸い込み部が一方側面側及び他方側面側のいずれに配置される場合でも、ケーシング内に吸い込まれる室内空気の温度を検知することができる。
【0013】
好ましくは、上記第2または第3の態様のファンコンベクタにおいて、
吸い込み部と遮断部の配置は、ケーシングの前側面側と後側面側とで切替えられる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、設置環境に制限されない汎用性の高いファンコンベクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るファンコンベクタの一例を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係るファンコンベクタの一例を示す概略部分分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係るファンコンベクタの一例を示す概略縦断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係るファンコンベクタの一例を示す概略部分分解斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係るファンコンベクタの一例を示す概略縦断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態に係るファンコンベクタによる室内空気の流れを示す概略側面図であり、(a)は、ファンコンベクタが室内の壁面に据え付けて設置されているときの状態を、(b)は、ファンコンベクタが室内の壁面から離れて設置されているときの状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施の形態に係るファンコンベクタについて、添付図面を参照しながら具体的に説明する。まず、ファンコンベクタが室内の壁面に据え付けて設置されるときの構成を基本形態として説明する。
【0018】
図1に示すように、ファンコンベクタ1は、略矩形箱状のケーシング2を有する。ケーシング2内の上方には、熱交換器100が収容されており、ケーシング2内の下方には、ファン200が収容されている(
図3参照)。熱交換器100は、図示しない熱源機から供給される温水が循環し、熱交換器100を通過する室内空気との間で熱交換を行って、室内空気を加熱する。ファン200は、図示しないモータで駆動される遠心ファンで構成される。ファン200を作動させると、吸い込み部7から室内空気がケーシング2内に吸い込まれ、ケーシング2の前面側に形成されている吹き出し部4から温風が室内に吹き出される。なお、本明細書では、吹き出し部4が設けられている正面側を前面側とし、ケーシング2を前面側から見たときの奥行方向を前後方向、幅方向を左右方向、高さ方向を上下方向という。
【0019】
図2に示すように、ケーシング2は、ケーシング本体3と、ケーシング本体3に着脱可能に装着される外側板6とを有する。ケーシング本体3は、下側面パネル31と、下側面パネル31の左右両端からそれぞれ上方に延びる左側面パネル32及び右側面パネル33と、下側面パネル31の前端から上方に延びる前側面パネル34と、下側面パネル31の後端から上方に延びる後側面パネル35と、左右側面パネル32,33及び前後側面パネル34,35の上端を連結する上側面パネル36とを有する。上側面パネル36には、操作部Mが設けられている。
【0020】
図2及び
図3に示すように、前側面パネル34の下部には、ケーシング本体3内のファン200が臨む通気孔から構成される吹き出し部4が設けられている。前側面パネル34の吹き出し部4の上方には、略矩形状の前開口部40が開口し、前開口部40にはケーシング本体3内の熱交換器100の前面が臨んでいる。前開口部40は、吹き出し部4が設けられている前側面パネル34の下部よりもケーシング本体3の前後方向内方側に所定深さ凹んだ前凹部37に開設されており、前開口部40にはフィルタ41が配設されている。また、後述する
図4に示すように、後側面パネル35は、吹き出し部4が設けられていない以外は、前側面パネル34と前後略対称に形成されている。このため、後側面パネル35の前開口部40に対応する位置には、前開口部40と略同一の大きさ及び形状を有する後開口部42が開口しており、後開口部42にはケーシング本体3内の熱交換器100の後面が臨んでいる。また、前凹部37に対応する位置には、後側面パネル35の下部からケーシング本体3の前後方向内方側に所定深さ凹んだ後凹部38が形成されており、後開口部42は、後凹部38に開設されている。後開口部42にはフィルタ43が配設されている。
【0021】
前側面パネル34は、前開口部40の左右及び上方周縁に前枠部34aを有する。同様に、後側面パネル35は、後開口部42の左右及び上方周縁に後枠部35aを有する。前枠部34aの下方には、後述する前バイパス通路用の前バイパス孔34bが開口している。同様に、前バイパス孔34bに対応する後枠部35aの下方には、後述する後バイパス通路用の後バイパス孔35bが開口している(
図4参照)。
【0022】
図示しないが、ケーシング本体3内の熱交換器100は、複数のフィンと、フィンを貫通し、熱源機から供給される温水が循環する伝熱管とを有する。熱交換器100は、図示しない固定部材によりケーシング2内の上方の前後中央部で立設固定されている。
【0023】
外側板6は、上側面パネル36を上方から覆い、操作部Mが上方に露出する開口67を有する上外側板パネル60と、上外側板パネル60の前端から下方に延びる第1外側板パネル61と、上外側板パネル60の後端から下方に延びる第2外側板パネル62と、第1外側板パネル61の下端から後方に向かって所定長さ延びる下外側板パネル63とを有し、左右両側方及び下方に開放している。上外側板パネル60は前後中央部で分割され、図示しないが、上外側板パネル60の下面には第1外側板パネル61と第2外側板パネル62とが前後方向に所定角度、広がるようにヒンジ部が設けられている。
【0024】
第1及び第2外側板パネル61,62は略同一の大きさ及び形状を有する。また、第1及び第2外側板パネル61,62はそれぞれ、既述したケーシング本体3の前後側面パネル34,35の前後方向内方側に凹んだ前後凹部37,38に収容される大きさに設定されている。従って、第1外側板パネル61が前方側に位置する状態でケーシング本体3に外側板6が装着されると、前側面パネル34の下部領域と第1外側板パネル61とによってケーシング2の前側面が形成され、後側面パネル35の下部領域と第2外側板パネル62とによってケーシング2の後側面が形成される。
【0025】
図2に示すように、第1外側板パネル61には、略矩形状の外開口部65が開口している。外開口部65には、フィルタ66が配設されている。外開口部65は、第1外側板パネル61が前方側に位置する状態でケーシング本体3に外側板6が装着されたとき、前開口部40と対向し、前開口部40の周縁の前枠部34aに開設された前バイパス孔34bが前方から覆われるように、前開口部40よりも左右方向で若干大きく形成されている。
【0026】
第2外側板パネル62は、開口のない平板状の遮蔽板から構成されている。第2外側板パネル62は、第1外側板パネル61が前方側に位置する状態でケーシング本体3に外側板6が装着されたとき、後開口部42と対向し、後開口部42の周囲の後枠部35aに開設された後バイパス孔35bが後方から覆われるように、後開口部42よりも左右方向で若干大きく形成されている。また、図示しないが、第1及び第2外側板パネル61,62の内面周縁にはそれぞれ、第1外側板パネル61が前方側に位置する状態でケーシング本体3に外側板6が装着されると、前後バイパス孔34b,35bよりも外側方で前後開口部40,42の周縁の前後枠部34a,35aに当接するシール部材が配設されている。従って、
図1~
図3に示す状態では、第1外側板パネル61の外開口部65と前側面パネル34の前開口部40とによって、ケーシング2の前側面側に室内空気をケーシング2内に吸い込む吸い込み部7が形成される。また、第2外側板パネル62によって、ケーシング2の後側面側に室内空気のケーシング2内への吸い込みを遮断する遮断部8が形成される。また、前側面側及び後側面側が、一方側面側及び他方側面側に対応する。
【0027】
下外側板パネル63は、左右方向において前開口部40の開口幅と略同一の幅を有する。また、
図3に示すように、下外側板パネル63は、第1外側板パネル61が前方側に位置する状態でケーシング本体3に外側板6が装着されたとき、前後方向において、前開口部40の下端からケーシング本体3内に挿通される先端部が熱交換器100の下端に下方から当接する長さを有する。これにより、第1外側板パネル61が前方側に位置する状態でケーシング本体3に外側板6が装着されると、ケーシング本体3内の熱交換器100の前方の空間は、下外側板パネル63によってファン200が収容されているケーシング2内の下方の空間と遮断される。そのため、ケーシング2の前側面側からケーシング2内に吸い込まれる室内空気は、下外側板パネル63によって熱交換器100を経由することなく下方のファン200に向かって短絡して流通するのが防止される。従って、本実施の形態では、外側板6の下外側板パネル63が短絡防止部として機能する。
【0028】
ケーシング本体3内には、ファン200の周囲を囲むスクロール状のファンケーシングが設けられている。ファンケーシングは、吹き出し部4よりも上方の前側面パネル34の内面から熱交換器100の下端よりも下方であって、ファン200よりも上方の前後方向中央まで後方に向かって延びる上ファンケーシング71と、吹き出し部4よりも下方の前側面パネル34の内面からファン200の下方を囲うように後方に向かって延びる下ファンケーシング72とを有する。このため、熱交換器100と上ファンケーシング71との間には、所定高さの隙間が形成される。この隙間には、後述するバイパス通路の合流部の下端が臨んでいる。下ファンケーシング72の上端は、熱交換器100の下端近傍に対向する後側面パネル35の下部領域の内面に接合されている。
【0029】
図3は、前後バイパス孔34b,35bを含む概略縦断面図である。ケーシング2内の下方における右側方には、前バイパス孔34bまたは後バイパス孔35bからケーシング2内に吸い込まれる室内空気が熱交換器100を経由せずにファン200に向かって流通するように、略T字状の配管からなるバイパス通路80が形成されている。具体的には、バイパス通路80は、前端が前バイパス孔34bの周縁の前側面パネル34の内面に接合され、前後方向中央まで後方に向かって略水平に延びる前バイパス通路81と、後端が後バイパス孔35bの周縁の後側面パネル35の内面に接合され、前後方向中央まで前方に向かって略水平に延びる後バイパス通路82と、前バイパス通路81の後端と後バイパス通路82の前端とがケーシング2内の前後方向中央で接続されて、下方に延びる合流部83とを有する。従って、前バイパス通路81が一方側面側バイパス通路に対応し、後バイパス通路82が他方側面側バイパス通路に対応する。
【0030】
合流部83の下端には、既述した熱交換器100と上ファンケーシング71との間の空間に連通する流通孔84が開口している。合流部83には、温度センサである熱電対Sが挿通されている。熱電対Sで検知される温度は、図示しない制御装置に出力される。
【0031】
図6(a)は、ファンコンベクタ1の後側面が室内の壁面に据え付けて設置されているときの室内空気の流れを示す概略側面図である。第1外側板パネル61が前方側に位置する状態でケーシング本体3に外側板6が装着されている場合、第1外側板パネル61の外開口部65及びケーシング本体3の前開口部40から構成される吸い込み部7を介して室内空気がケーシング2の前側面側からケーシング2内に吸い込まれる。そして、吸い込み部7が配置されるケーシング2内の熱交換器100の前方の空間は、既述した下外側板パネル63によってファン200が収容されているケーシング2内の下方の空間と遮断されているから、吸い込み部7から吸い込まれた室内空気は、ファン200の作動によって形成される空気通路に沿って、前方から後方へ熱交換器100を通過し、ケーシング2内の熱交換器100の後方から下方のファン200に向かって流れ、ケーシング2の前側面の下部に設けられた吹き出し部4から室内に温風が吹き出される。
【0032】
また、第1外側板パネル61の外開口部65を介して吸い込まれる室内空気の一部は、前バイパス孔34bからケーシング2内に設けられた前バイパス通路81に流入する。合流部83に設けられた流通孔84は、ファン200よりも上流側に位置する熱交換器100の下端と上ファンケーシング71との間の隙間に臨んでいるから、前バイパス通路81に吸い込まれた室内空気は、合流部83を介して、上記隙間に吹き出され、熱交換器100を経由することなく、ファン200に向かって流通する。また、合流部83の流通孔84は上記隙間に臨んでいるから、熱交換器100を経由した加熱された空気が隙間を通って流通孔84に流入し難い。これにより、合流部83に設けられた熱電対Sによって、室内空気の温度を検知することができる。
【0033】
次に、
図4を参照して、ファンコンベクタ1が室内の壁面から離れて設置されるときの構成を説明する。既述したように、ケーシング本体3の前後側面パネル34,35は、吹き出し部4以外の構成について前後略対称に設けられている。また、外側板6の第1及び第2外側板パネル61,62は略同一の大きさ及び形状を有している。そのため、外開口部65を有する第1外側板パネル61が後方側に位置する状態でケーシング本体3に外側板6を装着させると、第1外側板パネル61がケーシング本体3の後側面パネル35の後凹部38に、第2外側板パネル62がケーシング本体3の前側面パネル34の前凹部37に嵌め込まれる。従って、この装着形態では、前側面パネル34の下部領域と第2外側板パネル62とによってケーシング2の前側面が形成され、後側面パネル35の下部領域と第1外側板パネル61とによってケーシング2の後側面が形成される。
【0034】
また、
図4に示す状態では、第1外側板パネル61の外開口部65と後側面パネル35の後開口部42とによって、ケーシング2の後側面側に室内空気をケーシング2内に吸い込む吸い込み部7が形成される。また、第2外側板パネル62によって、ケーシング2の前側面側に室内空気のケーシング2内への吸い込みを遮断する遮断部8が形成される。すなわち、この装着形態における吸い込み部7と遮断部8の配置は、第1外側板パネル61が前方側に位置する状態でケーシング本体3に外側板6が装着されたときのそれと反対となる。
【0035】
下外側板パネル63は、左右方向において後開口部42の開口幅と略同一の幅を有する。また、
図5は、前後バイパス孔34b,35bを含む概略縦断面図であり、
図5に示すように、下外側板パネル63は、第1外側板パネル61が後方側に位置する状態でケーシング本体3に外側板6が装着されたとき、後開口部41の下端からケーシング本体3内に挿通される先端部が熱交換器100の下端に下方から当接するように、第1外側板パネル61の下端から前方に延びている。これにより、第1外側板パネル61が後方側に位置する状態でケーシング本体3に外側板6が装着されると、ケーシング本体3内の熱交換器100の後方の空間は、下外側板パネル63によってファン200が収容されているケーシング2内の下方の空間と遮断される。そのため、ケーシング2の後側面側からケーシング2内に吸い込まれる室内空気は、下外側板パネル63によって熱交換器100を経由することなく下方のファン200に向かって短絡して流通するのが防止される。従って、上記と同様に、外側板6の下外側板パネル63が短絡防止部として機能する。
【0036】
図6(b)は、ファンコンベクタ1が室内の壁面から離れて設置されているときの室内空気の流れを示す概略側面図である。第1外側板パネル61が後方側に位置する状態でケーシング本体3に外側板6が装着されている場合、第1外側板パネル61の外開口部65及びケーシング本体3の後開口部42から構成される吸い込み部7を介して室内空気がケーシング2の後側面側からケーシング2内に吸い込まれる。そして、吸い込み部7が配置されるケーシング2内の熱交換器100の後方の空間は、既述した下外側板パネル63によってファン200が収容されているケーシング2内の下方の空間と遮断されているから、吸い込み部7から吸い込まれた室内空気は、ファン200の作動によって形成される空気通路に沿って、後方から前方へ熱交換器100を通過し、ケーシング2内の熱交換器100の前方から下方のファン200に向かって流れ、ケーシング2の前側面の下部に設けられた吹き出し部4から室内に温風が吹き出される。
【0037】
また、第1外側板パネル61の外開口部65を介して吸い込まれる室内空気の一部は、後バイパス孔35bからケーシング2内に設けられた後バイパス通路82に流入する。合流部83に設けられた流通孔84は、ファン200よりも上流側に位置する熱交換器100の下端と上ファンケーシング71との間の隙間に臨んでいるから、後バイパス通路82に吸い込まれた室内空気は、合流部83を介して、上記隙間に吹き出され、熱交換器100を経由することなく、ファン200に向かって流通する。また、合流部83の流通孔84は上記隙間に臨んでいるから、熱交換器100を経由した加熱された空気が隙間を通って流通孔84に流入し難い。これにより、上記と同様に、合流部83に設けられた熱電対Sによって、室内空気の温度を検知することができる。
【0038】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、ケーシング2の前側面の下部に温風を吹き出す吹き出し部4が設けられているが、室内空気をケーシング2内に吸い込む吸い込み部7と、室内空気のケーシング2内への吸い込みを遮断する遮断部8とがケーシング2の前側面側と後側面側とで切替え可能に設けられているから、ファンコンベクタ1の設置環境に応じて吸い込み部7の配置を変更することができる。また、前側面側に吸い込み部7が配置される場合、後側面側には遮断部8が配置され、後側面側に吸い込み部7が配置される場合、前側面側に遮断部8が配置されるから、遮断部8が設けられている側面側からケーシング2内に室内空気は吸い込まれず、吸い込み部7が設けられている側面側のみからケーシング2内に室内空気が吸い込まれる。このため、ファン200の作動によって形成される空気通路に沿って吸い込み部7から吸い込まれる室内空気をケーシング2内に円滑に流通させることができる。これにより、ファンコンベクタ1の設置環境に関わらず、所定の暖房性能を発揮させることができる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、ケーシング本体3への外側板6の装着方向を入れ替えることにより、吸い込み部7及び遮断部8が前側面側及び後側面側にそれぞれ配置されるから、簡易な構成により吸い込み部7と遮断部8の配置を切替えることができる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、吸い込み部7と遮断部8の配置が前側面側と後側面側とで切替えられても、下外側板パネル63によって、ケーシング2内に吸い込まれる室内空気は、バイパス通路80を流通する以外は、熱交換器100を流通するから、暖房性能の低下を防止することができる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、吸い込み部7がケーシング2の前側面側及び後側面側のいずれに配置される場合でも、吸い込み部7が設けられている側面側から室内空気が前バイパス通路81または後バイパス通路82に流入する。そして、バイパス通路80は、前後バイパス通路81,82の下流側でこれらが合流する合流部83を有しており、合流部83に流入する室内空気は熱交換器100を経由することなくファン200に向かって流通するから、合流部83に単一の熱電対Sを配置することによって、吸い込み部7が前側面側及び後側面側のいずれに配置される場合でも、ケーシング2内に吸い込まれる室内空気の温度を検知することができる。これにより、ケーシング2内に吸い込まれる室内空気の流路方向に関わらず、適切にファンコンベクタ1を運転させることができる。
【0042】
以上のように、本実施の形態によれば、設置環境に制限されない汎用性の高いファンコンベクタ1を提供することができる。
【0043】
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、吸い込み部及び遮断部は前後側面側に配置される。しかしながら、本発明において、吸い込み部及び遮断部は、左右側面側に配置されていてもよい。また、吸い込み部は、複数の側面側に配置されてもよい。
【0044】
(2)上記実施の形態では、第1外側板パネル、第2外側板パネル、及び上外側板パネルが一体化された外側板がケーシング本体に装着されている。しかしながら、本発明において、外側板は、複数に分割されてもよい。また、外側板の装着方向の誤セットが生じないように、ケーシング本体の一部に検知センサを、第1または第2外側板パネルの一部に被検知素子を設け、検知センサで被検知素子を検知することにより外側板の誤セットを防止してもよい。
【0045】
(3)上記実施の形態では、ケーシングの前側面の下部に吹き出し部を設け、ケーシング内の上方に熱交換器が、ケーシング内の下方にファンが収容されている。しかしながら、本発明は、吹き出し部をケーシングの前側面の上部に設け、ケーシング内の上方にファンを収容し、ケーシング内の下方に熱交換器を収容してもよい。この場合、吸い込み部は、ケーシングの前側面側または後側面側の下方に配置される。
【0046】
(4)上記実施の形態では、熱媒として温水が利用されている。しかしながら、本発明は、他の熱媒、例えば、不凍液や油を使用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 ファンコンベクタ
2 ケーシング
3 ケーシング本体
4 吹き出し部
6 外側板
7 吸い込み部
80 バイパス通路