(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】電動車両制御方法及び電動車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/00 20060101AFI20240719BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20240719BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20240719BHJP
B60L 53/10 20190101ALI20240719BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20240719BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240719BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20240719BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20240719BHJP
B60W 20/12 20160101ALI20240719BHJP
【FI】
B60W30/00
B60L50/61
B60L58/10
B60L53/10
G01C21/36
B60W10/08 900
B60W10/26 900
B60W20/13 ZHV
B60W20/12
(21)【出願番号】P 2020191887
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中根 裕介
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-143245(JP,A)
【文献】特開2014-32042(JP,A)
【文献】特開2011-160514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/00
B60W 30/00
G01C 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行駆動源であるモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、を備える電動車両で実行され、前記電動車両の走行による消費エネルギーを推定し、推定された前記消費エネルギーに基づいて前記バッテリの放電または充電に関する制御を実行する電動車両制御方法であって、
予め設定される目的地に到着するまでの走行経路に関するルート情報を取得し、
前記ルート情報を用いて、前記目的地に到着するまでに消費されるエネルギーである第1消費エネルギーを推定し、
前記目的地が、到着後に、経路に関する情報がない経路不明区間の走行によってさらにエネルギーの消費が要求される特定目的地であるときに、
前記経路不明区間の走行履歴を取得し、
前記経路不明区間の走行履歴を用いて、前記特定目的地に到着後、前記電動車両が駐車されるまでに消費されるエネルギーである第2消費エネルギーを推定し、
前記第1消費エネルギーと前記第2消費エネルギーとを用いて、前記電動車両の前記消費エネルギーを推定
し、
前記第1消費エネルギーと前記第2消費エネルギーとを用いて、前記特定目的地に到着する時点において前記バッテリが前記第2消費エネルギーに相当する電力を保有するように、前記特定目的地に到着するまでの前記バッテリの放電または充電のスケジュールを設定する、
電動車両制御方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の電動車両制御方法であって、
前記電動車両が前記バッテリの充電に用いる発電装置を備えるときに、前記スケジュールにしたがって前記発電装置を駆動させる、
電動車両制御方法。
【請求項3】
請求項
1に記載の電動車両制御方法であって、
前記バッテリが外部電源によって充電可能であるときに、前記スケジュールにしたがって、前記外部電源によって前記バッテリを充電すべきことを前記電動車両の乗員に報知する、
電動車両制御方法。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の電動車両制御方法であって、
前記経路不明区間の走行履歴を用いて、前記経路不明区間の走行時間を推定し、
前記第2消費エネルギーは、前記走行時間に基づいて推定される、
電動車両制御方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の電動車両制御方法であって、
前記経路不明区間の混雑度を取得し、
前記走行時間は、前記混雑度に応じて修正される、
電動車両制御方法。
【請求項6】
請求項
4または5に記載の電動車両制御方法であって、
前記経路不明区間の走行履歴を用いて、前記経路不明区間における走行傾向を分析し、
前記走行時間は、前記走行傾向に応じて修正される、
電動車両制御方法。
【請求項7】
請求項
4~6のいずれか1項に記載の電動車両制御方法であって、
同一の前記経路不明区間に、前記特定目的地となり得る入口が複数あるときに、
前記経路不明区間の走行履歴は、前記入口ごとに分類され、
前記走行時間は、前記入口に応じて推定される、
電動車両制御方法。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の電動車両制御方法であって、
前記経路不明区間の走行履歴は、前記電動車両が走行または駐車した高度に関する情報である高度情報を含み、
前記第2消費エネルギーは、前記高度情報に基づいて推定される、
電動車両制御方法。
【請求項9】
請求項
8に記載の電動車両制御方法であって、
前記高度情報のうち最大の高度を前記経路不明区間にある施設の高さと推定し、
前記第2消費エネルギーは、前記経路不明区間にある施設の高さに相当する位置エネルギーを含めて推定される、
電動車両制御方法。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の電動車両制御方法であって、
前記目的地が前記特定目的地であるか否かを、前記経路不明区間の走行履歴が示す走行パターンに基づいて判定し、
前記目的地が前記特定目的地であると判定されたときに、前記第2消費エネルギーを推定する、
電動車両制御方法。
【請求項11】
走行駆動源であるモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、を備える電動車両の走行を制御し、前記電動車両の走行による消費エネルギーを推定し、推定された前記消費エネルギーに基づいて前記バッテリの放電または充電に関する制御を実行する電動車両制御装置であって、
予め設定される目的地に到着するまでの走行経路に関するルート情報を取得し、
前記ルート情報を用いて、前記目的地に到着するまでに消費されるエネルギーである第1消費エネルギーを推定し、
前記目的地が、到着後に、経路に関する情報がない経路不明区間の走行によってさらにエネルギーの消費が要求される特定目的地であるときに、
前記経路不明区間の走行履歴を取得し、
前記経路不明区間の走行履歴を用いて、前記特定目的地に到着後、前記電動車両が駐車されるまでに消費されるエネルギーである第2消費エネルギーを推定し、
前記第1消費エネルギーと前記第2消費エネルギーとを用いて、前記電動車両の前記消費エネルギーを推定
し、
前記第1消費エネルギーと前記第2消費エネルギーとを用いて、前記特定目的地に到着する時点において前記バッテリが前記第2消費エネルギーに相当する電力を保有するように、前記特定目的地に到着するまでの前記バッテリの放電または充電のスケジュールを設定する、
電動車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行によって消費するエネルギーを推定する電動車両制御方法及び電動車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行履歴に基づいて消費エネルギーを推定し、推定された消費エネルギーに基づく発電計画を実施する電動車両が知られている。例えば、特許文献1の車両制御システムでは、消費エネルギーが最も高い走行履歴、または、出願頻度が最も高い走行履歴に基づいて、車両が将来消費するエネルギーの消費量を推定し、これに基づいて発電用のエンジンが駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の消費エネルギーの推定は、目的地までの走行経路に関する情報(いわゆるルート情報)に基づいて行われる。一方、目的地の性質によっては、到着後も、ルート情報がない区間の走行によって、電動車両のエネルギーがさらに消費されることがある。このため、目的地の性質によっては、電動車両が駐車されるまでの消費エネルギーを正確に推定できない。
【0005】
例えば、大型の立体駐車場を有するショッピングモール等の商業施設が目的地であるときには、商業施設までのルート情報は取得可能であるが、商業施設内の立体駐車場に関してはルート情報がない。また、広大な敷地を有する会社や工場等の施設では職員は電動車両によって移動することがある。しかし、これらは私有地であるため、通常は、施設等の内部に関するルート情報は提供されない。この他、公共の施設等であっても、新規な施設等ではルート情報が完備されていないことがある。このように、目的地が、その到着後に、ルート情報がない区間の走行によってさらにエネルギーの消費を要求する性質の目的地であるときには、電動車両が駐車されるまでの消費エネルギーは正確に推定されない。
【0006】
本発明は、消費エネルギーをより正確に推定し、バッテリの放電または充電に関する制御を実行できる電動車両制御方法及び電動車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、走行駆動源であるモータと、モータに電力を供給するバッテリと、を備える電動車両で実行され、電動車両の走行による消費エネルギーを推定し、推定した消費エネルギーに基づいてバッテリの放電または充電に関する制御を実行する電動車両制御方法である。この電動車両制御方法では、予め設定される目的地に到着するまでの走行経路に関するルート情報を取得し、そのルート情報を用いて、目的地に到着するまでに消費されるエネルギーである第1消費エネルギーが推定される。そして、目的地が、到着後に、経路に関する情報がない経路不明区間の走行によってさらにエネルギーの消費が要求される特定目的地であるときには、経路不明区間の走行履歴が取得され、経路不明区間の走行履歴を用いて、特定目的地に到着後、電動車両が駐車されるまでに消費されるエネルギーである第2消費エネルギーが推定される。その後、第1消費エネルギーと第2消費エネルギーとを用いて、電動車両の消費エネルギーが推定される。さらに、第1消費エネルギーと第2消費エネルギーとを用いて、特定目的地に到着する時点においてバッテリが第2消費エネルギーに相当する電力を保有するように、特定目的地に到着するまでのバッテリの放電または充電のスケジュールを設定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、消費エネルギーをより正確に推定し、バッテリの放電または充電に関する制御を実行できる電動車両制御方法及び電動車両制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、電動車両の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、目的地及び経路不明区間を示す説明図である。
【
図3】
図3は、消費エネルギーの推定及び放充電スケジュールの設定のためのコントローラの構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第2消費エネルギー推定部の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、電動車両の作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、電動車両100の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の電動車両100は、いわゆるシリーズ方式のハイブリッド車両(HEV:Hybrid Electric Vehicle)である。電動車両100は、駆動モータ10、駆動輪11、バッテリ12、発電モータ13、エンジン14、及び、コントローラ15を備える。
【0012】
駆動モータ10は、電動車両100の走行駆動源として機能する電動モータである。すなわち、駆動モータ10は、駆動輪11にトルク(駆動力)を発生させることにより、電動車両100を走行させる。駆動モータ10の駆動は、コントローラ15によって制御される。
【0013】
駆動輪11は、駆動モータ10が発生するトルクを受けて回転する車輪である。電動車両100は、1または複数の駆動輪11を有することができる。本実施形態においては、電動車両100は、2輪または4輪の駆動輪11を有する自動車である。
【0014】
バッテリ12は、駆動モータ10を動作させるための電力を保有する。バッテリ12の電力は、いわゆる回生電力によって充電することができる。また、発電モータ13が発生させる電力の供給を受けることによってバッテリ12を充電することもできる。
【0015】
発電モータ13は、バッテリ12を充電するための電力を発生さるための電動モータである。発電モータ13は、エンジン14によって駆動される。すなわち、発電モータ13及びエンジン14は、バッテリ12に電力を供給するための発電装置を構成する。また、発電モータ13は、バッテリ12のSOC(State Of Charge)や消費または回収される電力等に応じて適宜に駆動され、発電する。なお、発電モータ13は、回生電力またはバッテリ12の保有する電力を用いて駆動されることがある。この場合、発電モータ13の動作はコントローラ15によって制御される。
【0016】
エンジン14は、ガソリン等の燃料を燃焼することによって、発電モータ13を駆動するためのトルク(駆動力)を発生させる内燃機関である。エンジン14の駆動または停止、及び、エンジン14の動作はコントローラ15によって制御される。例えば、バッテリ12を充電する必要があるときに、充電する電力の必要量等に応じてエンジン14が駆動される。その結果、発電モータ13はバッテリ12に供給すべき電力を発電することができる。
【0017】
コントローラ15は、上記各部及びその他の制御対象物(例えば補機等)を統括的に制御することにより、電動車両100の走行等の動作を制御する制御装置である。コントローラ15は、例えば、中央演算装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)等から構成される。また、コントローラ15は、上記各部及びその他の制御対象物の制御を予め定められた所定の制御周期で定期的に実行するようにプログラムされている。
【0018】
本実施形態では、コントローラ15は、電動車両100が目的地に到着して停車されるまでの間に消費するエネルギーを推定し、推定した消費エネルギーに基づいて、バッテリ12の放電または充電に関する制御を実行する。具体的には、コントローラ15は、推定した消費エネルギーに基づいて、バッテリ12の放充電スケジュールを設定(計画)する。そして、コントローラ15は、設定した放充電スケジュールにしたがって、バッテリ12の電力を消費させ、または、バッテリ12を充電させる。バッテリ12の放充電スケジュールとは、予定する走行経路における電動車両100の進行に沿って、バッテリ12の電力の消費、並びに、バッテリ12の充電のタイミング及び充電量等、を経時的に定めるスケジュールをいう。したがって、電動車両100がHEVである本実施形態においては、バッテリ12の放充電スケジュールは、エンジン14及び発電モータ13の駆動タイミング及び駆動量(すなわち発電量)を定める。すなわち、電動車両100がバッテリ12の充電に用いるエンジン14を備えるときに、上記の放充電スケジュールにしたがってエンジン14を駆動させる。コントローラ15による消費エネルギーの推定及び放充電スケジュールの設定については、詳細を後述する。
【0019】
なお、本実施形態では、消費エネルギーとは、バッテリ12の保有する電力の消費に係るエネルギー(消費電力)と、エンジン14の駆動による燃料の消費に係るエネルギー(消費燃料)と、を含む。また、バッテリ12の保有する電力の消費に係るエネルギーには、回生電力が回収されるときには回収される電気エネルギーを含む。例えば、エネルギーの消費を正とすれば、回収される回生電力は、負の消費エネルギーである。
【0020】
コントローラ15は、電動車両100の各種構成と通信することにより、上記制御に必要な情報(以下、車両情報という)を必要に応じて取得することができる。例えば、電動車両100は、上記各部のようなコントローラ15が制御する構成の他、運転者の操作によって変化する構成の操作状態を取得し、これに基づいて駆動モータ10の動作を制御する。運転者の操作によって変化する構成とは、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、及び、ステアリングハンドル等(いずれも図示しない)である。また、コントローラ15は、駆動モータ10に流れる電流を計測する計測器、及び、GPS(Global Positioning System)等(いずれも図示しない)、コントローラ15からの積極的な制御を要しない電動車両100の構成からも必要に応じて車両情報を取得することができる。
【0021】
上記の他、電動車両100は、ナビゲーションシステム16と走行履歴データベース19を備える。
【0022】
ナビゲーションシステム16は、電動車両100の運転者または同乗者(以下、乗員という)に対して、目的地までの経路等を案内するシステムである。ナビゲーションシステム16は、乗員が目的地等を設定するための操作部(図示しない)と、設定された目的地や電動車両100の現在地及びこれらの周辺の地図や、目的地までの走行経路及び混雑度18等を表示する表示部(図示しない)等を有する。このため、ナビゲーションシステム16は、地図情報(図示しない)、ルート情報17、及び、混雑度18等の情報を保有または取得する。ナビゲーションシステム16における目的地(以下、単に目的地という)は、乗員によって設定される。また、目的地は、ナビゲーションシステム16またはコントローラ15等が電動車両100の走行パターン等に基づいて推定し、自動設定することもある。
【0023】
ルート情報17は、経路に関する情報であって、特に、目的地までの走行を予定する経路(以下、走行経路という)、及び、その走行経路の状態を表す情報である。走行経路の状態とは、例えば、走行経路の起伏、及び/または、走行経路における速度等の制限等、走行経路の実質的に不変な状態をいう。走行経路の状態を表す情報には、電動車両100がその走行経路を走行する際に必要な消費エネルギーを変動させる要因及びその変動の程度、を表す情報が含まれる。
【0024】
また、ルート情報17は、地図情報に関連付けられた情報である。このため、私有地や車両が進入可能な立体的建造物等、走行経路を特定し得る程度に詳細な地図情報がない区間(領域)については、ルート情報17はない。例えば私有地等に関して、道路や建造物の階層構成等は一般には公開されない。また、ショッピングモール等の商業施設の敷地については、道路や立体駐車場の階層構成が公開されているとしても、地図情報として整備されていないことがある。したがって、これらの私有地等に関しては、私有地等は地図上においてその存在自体は示されるとしても、私有地等における走行経路は特定し得ないので、ルート情報17はない。また、道路や施設等が新設されたにもかかわらず地図情報が未更新であるとき等、時間の経過によって地図情報が不正確となったときには、その新設された道路や施設内の経路に関するルート情報17はない。以下、ルート情報17がない区間を経路不明区間36(
図2参照)という。
【0025】
混雑度18は、道路や施設等が混雑している程度を表す情報である。混雑度18は、走行経路の部分もくしは部分、走行経路の終点である目的地、電動車両100の現在地、または、これらの周辺にある道路や施設等についてそれぞれ提供される。本実施形態では、混雑度18は、ナビゲーションシステム16が、電動車両100の外部にある情報提供システム等から、通信によって取得する。このため、本実施形態の電動車両100では、混雑度18は既知の情報である。
【0026】
但し、ナビゲーションシステム16を介さずに、コントローラ15が直接に混雑度18を取得する構成としてもよい。また、外部から取得する情報に依らず、コントローラ15が混雑度18を推定する構成としてもよい。この場合、コントローラ15は、例えば図示しないセンサ等によって検出する電動車両100の周辺の人や車両、及び、これらの存在密度や移動速度等に基づいて、混雑度18を推定することができる。
【0027】
上記のルート情報17及び混雑度18は、ナビゲーションシステム16によって使用される他、コントローラ15によって取得され、消費エネルギーの推定に使用される。
【0028】
走行履歴データベース19は、電動車両100の走行履歴20を記憶する。走行履歴20は、電動車両100が走行した走行経路、走行経路の高度、走行速度、またはその他走行に関する情報の履歴である。本実施形態では、走行履歴20には、電動車両100の走行経路の位置情報(地図上の平面的な位置情報)の他に、少なくとも、電動車両100が走行または駐車(もしくは停車)した高度に関する情報(以下、高度情報という)が含まれる。但し、走行履歴20には、これらの情報に加えて、例えば、その経路を走行するのに要した時間である走行時間や、その経路の長さである走行距離が含まれる場合がある。また、走行履歴20は、ナビゲーションシステム16の地図情報とは切り離されており、ルート情報17がない経路不明区間36における走行履歴を含む。以下、経路不明区間36の走行履歴20を、経路不明区間走行履歴21という。本実施形態では、経路不明区間走行履歴21には、少なくとも経路不明区間36における走行経路、及び、その高度情報が含まれる。
【0029】
上記の走行履歴20、特に経路不明区間走行履歴21は、コントローラ15によって取得され、消費エネルギーの推定に使用される。本実施形態では、消費エネルギー(特に後述する第2消費エネルギー)は、経路不明区間36における走行経路や高度情報に基づいて推定される。
【0030】
図2は、目的地及び経路不明区間36を示す説明図である。
図2に示すように、本実施形態では、乗員の主観的目的地は、例えばショッピングモール30である。ショッピングモール30は、いわゆる複合的商業施設であり、その敷地は広い。そして、ショッピングモール30は、例えば、食品や衣料品その他の商品等を販売するための第1棟31、及び、映画館やアミューズメント施設等、サービスを提供するための第2棟32を有する。また、ショッピングモール30は、これら各棟への来客用駐車場として、例えば、立体的な階層構造を有する駐車場である立体駐車場33を有する。
【0031】
電動車両100でショッピングモール30に向かうときに、ナビゲーションシステム16に設定される主観的目的地はショッピングモール30である。しかし、ナビゲーションシステム16の地図情報には、ショッピングモール30の所在は登録されているが、立体駐車場33の階層構造等についての情報は未登録である。したがって、ナビゲーションシステム16が経路等を案内し得るのは立体駐車場33の入口(以下、駐車場入口という)34までである。このため、電動車両100が駐車場入口34に到達すると、例えば「目的地に到着しました」または「目的地周辺に到着しました」等のアナウンスとともに、ナビゲーションシステム16による経路案内等は終了する。したがって、乗員によるナビゲーションシステム16への設定方法に関わらず、システム上の目的地は駐車場入口34である。
【0032】
本実施形態において、単に目的地というときには、ショッピングモール30の全体等、領域を表す乗員の主観的かつ範囲を表す目的地ではなく、駐車場入口34のように、経路案内等を終了するシステム上の目的地を表すものとする。換言すれば、破線矢印で示すように、走行経路上においてルート情報17を取得可能な走行区間(以下、経路明白区間35という)の終点が、システム上の目的地、すなわち本実施形態でいう目的地である。
【0033】
一方、電動車両100は、目的地である駐車場入口34に到着した後も、立体駐車場33を走行する必要がある。これは、乗員が、来訪の目的とする棟、その棟への入口の位置、その棟までの歩行距離、及び、混雑度18等を考慮し、空いている駐車スペースを探して電動車両100を駐車(継続的に停車)するためである。そして、立体駐車場33にはルート情報17がないので、二点鎖線矢印で示すように、駐車場入口34から駐車位置37までの走行区間は経路不明区間36である。換言すれば、目的地に到着後、電動車両100が駐車されるまでの走行区間は、経路不明区間36である。電動車両100が走行する以上、こうした経路不明区間36においても、電動車両100ではエネルギーが消費される。そして、ショッピングモール30にある立体駐車場33における経路不明区間36のように、経路不明区間36が比較的長大になるときには、消費エネルギーの推定において経路不明区間36における消費エネルギーは無視し得ない誤差を生じる。
【0034】
以下では、駐車場入口34のように、到着後に、ルート情報17がない経路不明区間36の走行によってさらにエネルギーの消費が要求される性質を有する特別な目的地を、「特定目的地」という。
【0035】
なお、本実施形態における目的地(システム上の目的地)には、最終的な目的地だけでなく、経由地等の目的地に準じる地点(以下、準目的地という)も含むことができる。経由地は、最終的な目的地に至る走行経路の途中で走行経路を外れ、再び走行経路に復帰するまでの走行区間が属する領域である。例えば、乗員が、食事等のためにサービスエリアを経由して、最終的な目的地を目指すときには、経由するサービスエリアは準目的地である。そして、このサービスエリア内のルート情報17がないときには、その入口が経路明白区間35の一時的な終点となる。このため、経由するサービスエリアの入口はシステム上の目的地(準目的地)となり得る。したがって、ナビゲーションシステム16に対して、最終的な目的地の他に、ルート情報17を有しない経由地が設定されているときには、その経由地(特にその入口)は、本実施形態では目的地として扱われる。
【0036】
[消費エネルギーの推定及び放充電スケジュールの設定]
図3は、消費エネルギーの推定及び放充電スケジュールの設定のためのコントローラ15の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、コントローラ15は、情報取得部41、第1消費エネルギー推定部42、目的地種別判定部43、第2消費エネルギー推定部44、及び、放充電スケジュール設定部45を備える。
【0037】
情報取得部41は、ナビゲーションシステム16や走行履歴データベース19等から、消費エネルギーの推定、及び、バッテリ12の放充電スケジュールの設定に必要な情報を取得する。本実施形態では、消費エネルギーの推定及びバッテリ12の放充電スケジュールの設定に必要な情報は、ルート情報17、混雑度18、及び、経路不明区間走行履歴21である。取得されたこれらの情報は、必要に応じて、第1消費エネルギー推定部42、目的地種別判定部43、及び、第2消費エネルギー推定部44に提供される。
【0038】
より具体的には、情報取得部41は、ナビゲーションシステム16から、予め設定される目的地に到着するまでの走行経路に関するルート情報17を取得する。また、情報取得部41は、ナビゲーションシステム16から走行経路が含む経路明白区間35、経路不明区間36や目的地にある施設(例えば立体駐車場33)等について、それぞれの混雑度18を取得する。また、情報取得部41は、走行履歴データベース19から走行履歴20を取得する。本実施形態では、情報取得部41は、少なくとも、設定された走行経路に関連する経路不明区間36に関する経路不明区間走行履歴21を取得する。設定された走行経路に関連する経路不明区間36とは、目的地に到着した後、電動車両100が進入可能な経路不明区間36をいう。
【0039】
上記のルート情報17等は任意のタイミングで取得または再取得され得る。消費エネルギーの推定や放充電スケジュールの設定を再度行うべきときに、情報取得部41はルート情報17等を取得または再取得する。ルート情報17等は、例えば、目的地が設定または変更されたとき、走行経路が設定もしくは変更されたとき、または、バッテリ12のSOC等が予定から大きくずれたとき等に取得または再取得される。本実施形態においては、情報取得部41がルート情報17等を取得するタイミングは、コントローラ15が消費エネルギーを推定し、放充電スケジュールを設定または再設定するタイミングとほぼ等しい。なお、経路不明区間走行履歴21は、設定された目的地が特定目的地であるときに取得される。
【0040】
第1消費エネルギー推定部42は、ルート情報17を用いて、第1消費エネルギーを推定する。第1消費エネルギーは、目的地に到着するまでに消費されるエネルギーである。例えば、電動車両100がショッピングモール30に向かう場合、ルート情報17が取得されたときの位置(現在地)から電動車両100が駐車場入口34に到着するまでに消費されるエネルギーが第1消費エネルギーである。第1消費エネルギーは、例えば、ルート情報17が含む走行経路の長さ(目的地までの実質的な距離)や、速度制限や走行経路の混雑度18を考慮した推定走行時間(目的地までの実質的な走行時間)等に基づいて算出される。
【0041】
目的地種別判定部43は、設定された目的地が特定目的地であるか否かを判定する。この判定は、その目的地への到着後に関する過去の走行パターンに基づいて行われる。すなわち、目的地種別判定部43は、目的地が特定目的地であるか否かを、その目的地に継続する走行履歴20(特に経路不明区間36に関する経路不明区間走行履歴21)が示す走行パターンに基づいて判定する。例えば、乗員が電動車両100で訪れたことがあるショッピングモール30(
図2参照)に関しては、目的地である駐車場入口34から継続した立体駐車場33における走行履歴20が、経路不明区間走行履歴21として蓄積されている。このため、ショッピングモール30の駐車場入口34が目的地であるときには、その到着後に立体駐車場33における経路不明区間36の走行によってさらにエネルギーの消費が要求されると判別できる。したがって、ショッピングモール30の駐車場入口34は、特定目的地であると判定される。
【0042】
なお、走行履歴20(経路不明区間走行履歴21)が示す走行パターンとは、走行履歴20(経路不明区間走行履歴21)そのものの他、走行履歴20(経路不明区間走行履歴21)を解析当された結果を含む。走行パターンには、例えば、単位時間当たりの90度ターンの回数、キーオフの有無、車速が所定値より小さい徐行運転(低速走行)がされているか、ソナー等で歩行者等が検出されているか等の情報が含まれる。また、目的地種別判定部43による判定は、過去の走行パターンを機械学習等によって学習したプログラムによって実現することができる。この場合、目的地種別判定部43はいわゆるAI(Artificial Intelligence)であり、設定された目的地の入力を受け、その目的地が特定目的地か否かの判定結果を出力する。
【0043】
第2消費エネルギー推定部44は、目的地が特定目的地であるときに、情報取得部41によって経路不明区間走行履歴21を取得する。また、第2消費エネルギー推定部44は、目的地が特定目的地であるときに、取得した経路不明区間走行履歴21を用いて、第2消費エネルギーを推定する。第2消費エネルギーは、その特定目的地に到着後、電動車両100が駐車されるまでに消費されるエネルギーである。第2消費エネルギー推定部44は、経路不明区間走行履歴21を用いて、経路不明区間36の走行時間を推定する。また、第2消費エネルギー推定部44は、経路不明区間走行履歴21を用いて、経路不明区間36を走行するときの単位時間当たりの消費エネルギーを推定する。そして、第2消費エネルギーは、経路不明区間36の走行時間と、経路不明区間36における単位時間当たりの消費エネルギーと、に基づいて推定される。第2消費エネルギーの具体的な推定方法については詳細を後述する。
【0044】
放充電スケジュール設定部45は、第1消費エネルギーを用いて、または、第1消費エネルギー及び第2消費エネルギーを用いて、バッテリ12の放充電スケジュールを設定する。具体的には、目的地が特定目的地でないときには、放充電スケジュール設定部45は、第1消費エネルギーを用いて、電費及び/または燃費が良くなるように最適化した放充電スケジュールを設定する。一方、目的地が特定目的地であるときには、電動車両100の消費エネルギーは、第1消費エネルギーと第2消費エネルギーとを用いて推定される。より具体的には、第1消費エネルギーと第2消費エネルギーの和が、電動車両100の全体としての消費エネルギーである。このため、目的地が特定目的地であるときには、放充電スケジュール設定部45は、第1消費エネルギーと第2消費エネルギーとを用いて、特定目的地に到着するまでの放充電スケジュールを設定する。特に、放充電主家ジュール設定部45は、目的地が特定目的地であるときには、特定目的地に到着する時点においてバッテリ12が第2消費エネルギーに相当する電力を保有するように、放充電スケジュールを設定する。また、放充電スケジュールは、エンジン14を始動する際の暖機運転や、電動車両100の空調等(いわゆるHVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning))に係るエネルギーの消費を考慮したものである。
【0045】
[第2消費エネルギーの推定方法]
図4は、第2消費エネルギー推定部44の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、第2消費エネルギー推定部44は、基礎情報取得部50、走行時間推定部56、及び、単位消費エネルギー算出部57を備える。
【0046】
基礎情報取得部50は、走行時間推定部56と単位消費エネルギー算出部57が演算に使用する情報を取得し、または演算により求める。基礎情報取得部50は、例えば、走行履歴分類部51、混雑度取得部52、広さ推定部53、高度推定部54、及び、走行傾向分析部55を備える。
【0047】
走行履歴分類部51は、ルート情報17及び/または走行履歴20から、特定目的地の位置と、経路明白区間35を介さずに、特定目的地から直接に進入(合流)し得る経路不明区間36への入口の位置情報と、その経路不明区間走行履歴21と、を取得する。経路不明区間36への入口は、特定目的地となり得る地点である。そして、走行履歴分類部51は、実質的に同一の経路不明区間36に入口が複数あるときに、その経路不明区間36に関する経路不明区間走行履歴21をそれらの入口ごとに分類する。これにより、走行履歴分類部51は、現在の目的地(特定目的地)から経路不明区間36に進入したときの経路不明区間走行履歴21を抽出する。
【0048】
例えば、立体駐車場33(
図2参照)への入口が第1入口(図示しない)と第2入口(図示しない)の2つあるとする。このとき、走行履歴分類部51は、立体駐車場33に関する経路不明区間走行履歴21を、第1入口から立体駐車場33に進入したときの経路不明区間走行履歴と、第2入口から立体駐車場33に進入したときの経路不明区間走行履歴と、に分類する。そして、現在の目的地(特定目的地)である駐車場入口34が第1入口であるときには、立体駐車場33の経路不明区間36に関する経路不明区間走行履歴21の全体から、この第1入口から進入したときの経路不明区間走行履歴が特定される。
【0049】
なお、経路不明区間走行履歴21が経路不明区間36への入口ごとに分類された状態で蓄積されているときには、走行履歴分類部51は、現在の特定目的地に応じて、第2消費エネルギーの推定に使用する経路不明区間走行履歴21を選択する。
【0050】
上記のように、このように、入口に応じて経路不明区間走行履歴21を分類され、現在の特定目的地から進入したときの経路不明区間走行履歴が特定されたときには、第2消費エネルギーの推定は、特定された経路不明区間走行履歴を用いて行われる。
【0051】
混雑度取得部52は、情報取得部41によってナビゲーションシステム16から、経路不明区間36の混雑度18を取得する。例えば、駐車場入口34が現在の目的地(特定目的地)であるときには、立体駐車場33に関する混雑度18を取得する。経路不明区間36の混雑度18は、経路不明区間36における走行時間の推定に用いられる。
【0052】
広さ推定部53は、経路不明区間走行履歴21等に基づいて、特定目的地から進入する経路不明区間36の広さを推定する。例えば、特定目的地である駐車場入口34から立体駐車場33の経路不明区間36に進入するときには(
図2参照)、立体駐車場33の広さ(延べ面積等)を推定する。経路不明区間36の広さは、例えば、その経路不明区間36における走行距離の履歴に基づいて推定される。この場合、対応する経路不明区間走行履歴21に基づいて、その経路不明区間36における走行距離の平均値または最大値等が算出され、算出された走行距離の平均値等が経路不明区間36の広さを表すパラメータ(以下、推定広さという)として使用される。推定広さは、経路不明区間36における走行時間の推定に用いられる。
【0053】
高度推定部54は、経路不明区間走行履歴21等に基づいて、特定目的地から進入する経路不明区間36の高度を推定する。特に、高度推定部54は、経路不明区間走行履歴21の高度情報のうち最大の高度を、その経路不明区間36にある施設の高さと推定する。例えば、特定目的地である駐車場入口34から立体駐車場33の経路不明区間36に進入するときには(
図2参照)、経路不明区間走行履歴21が含む高度情報を用いて、立体駐車場33の高度(フロアごとの高度等)が推定される。また、特に、立体駐車場33における経路不明区間走行履歴21が含む高度情報のうち最大の高度は、経路不明区間36にある施設、すなわち立体駐車場33の高度と推定される。高度推定部54によって推定された経路不明区間36の高度(以下、推定高度という)は、経路不明区間36における走行時間の推定、及び、経路不明区間36における単位時間当たりの消費エネルギーの算出に用いられる。本実施形態では、経路不明区間走行履歴21に基づいて経路不明区間36にある施設の高さ(立体駐車場33の高さ)が、走行時間の推定や単位時間当たりの消費エネルギーの算出において推定高度として使用される。
【0054】
走行傾向分析部55は、経路不明区間走行履歴21等に基づいて、経路不明区間36における走行の傾向(以下、走行傾向という)を分析する。走行傾向は、経路不明区間36の走行における電動車両100の乗員の個人的な傾向である。乗員の個人的な傾向とは、乗員の性格等によって表れる経路不明区間36における走行パターンの偏りをいう。例えば、経路不明区間走行履歴21には、立体駐車場33等において空いている駐車スペースを優先的に使用する傾向が表れる場合がある。これは、電動車両100の乗員が、駐車するまでに要する時間を短縮することを優先する走行傾向を有している結果である。逆に、経路不明区間走行履歴21には、目的とする施設(例えば第1棟31)の近傍の駐車スペースが空くのを待つ傾向が表れる場合がある。これは、電動車両100の乗員が、立体駐車場33等が混んでいたとしても、降車後の再乗車時までの歩行時間を短縮することを優先する走行傾向を有している結果である。立体駐車場33内のどのフロアに駐車するかについても同様の走行傾向が表れる場合がある。すなわち、乗員には、電動車両100の走行時間と歩行時間のどちらを優先するか等といった走行傾向がある。分析結果である走行傾向は、経路不明区間36における走行時間の推定に用いられる。
【0055】
走行時間推定部56は、経路不明区間36の推定広さ、混雑度18、推定高度、及び/または、走行傾向に基づいて、経路不明区間36における走行時間を推定する。第2消費エネルギーは、この推定された経路不明区間36の走行時間(以下、推定走行時間という)を用いて算出される。
【0056】
推定走行時間は、経路不明区間36の推定広さ及び推定高度に相関がある。このため、推定走行時間は、経路不明区間36の推定広さ及び/または推定高度を用いて算出することができる。例えば、経路不明区間36の推定広さが大きいほど、推定走行時間は長くなる。また、経路不明区間36の推定高度が大きいほど、推定走行時間は長くなる。
【0057】
そして、経路不明区間36が混雑しているときほど、経路不明区間36の走行時間は長くなる。このため、混雑度18が高いほど推定走行時間が長くなるように、推定走行時間は混雑度18によって修正される。
【0058】
また、乗員に特定の走行傾向があるときには、その走行傾向に合わせて推定走行時間は修正される。例えば、乗員が歩行時間の短縮を優先する走行傾向を有しているときには、推定走行時間はより長くなるように修正される。一方、乗員が乗車時間の短縮を優先する走行傾向を有しているときには、推定走行時間はより短くなるように修正される。
【0059】
なお、経路不明区間走行履歴21が経路不明区間36への入口ごとに分類されているときには、上記各部が入口ごとに分類された経路不明区間走行履歴21を用いる。このため、経路不明区間36の推定広さ、混雑度18、推定高度、及び/または、走行傾向は、その経路不明区間36に進入する入口に応じて推定等される。その結果、経路不明区間走行履歴21が経路不明区間36への入口ごとに分類されているときには、推定走行時間は、経路不明区間36に進入する入口に応じて、すなわち特定目的地の位置に応じて推定される。
【0060】
単位消費エネルギー算出部57は、経路不明区間走行履歴21に基づいて、電動車両100が経路不明区間36を走行するときに、単位時間あたりに消費するエネルギー(以下、単位消費エネルギーという)を算出する。単位消費エネルギーは、概ね電動車両100の車速によって定まる。このため、単位消費エネルギー算出部57は、例えば、経路不明区間走行履歴21に基づいて、経路不明区間36における車速の平均値または最大値等を算出し、こうして算出した車速の平均値等に応じて単位消費エネルギーを算出することができる。但し、経路不明区間36の多くは立体駐車場33やその他私有地内であって公道ではないので、経路不明区間36では電動車両100は概ね徐行運転される。このため、上記のような演算を経ずに、経路不明区間36における車速及び単位消費エネルギーをほぼ一定とみなすこともできる。本実施形態では、経路不明区間36における車速は一律に所定の徐行速度であるとみなし、この所定の徐行速度に対応する単位消費エネルギーを基準とする。
【0061】
また、単位消費エネルギー算出部57は、推定高度に基づいて、経路不明区間36を走行するときに電動車両100が獲得または損失する位置エネルギーを推定する。そして、単位消費エネルギーは、この推定された位置エネルギーの増減に基づいて修正される。例えば、立体駐車場33では電動車両100の高度が変化するので、電動車両100は駐車されるまでに位置エネルギー分のエネルギーを獲得または損失する。このため、電動車両100が駐車までに位置エネルギー分のエネルギーを消費することが見込まれるときには、単位消費エネルギーはその分高くなるように修正される。一方、地下駐車場等において電動車両100が駐車までに位置エネルギー分のエネルギーを獲得することが見込まれるときには、単位消費エネルギーはその分低くなるように修正される。
【0062】
第2消費エネルギー推定部44は、上記の推定走行時間と単位消費エネルギーに基づいて、第2消費エネルギーを演算する。例えば、第2消費エネルギーは、推定走行時間と単位消費エネルギーの積により算出される。
【0063】
以下、上記のように構成される電動車両100の作用を説明する。
図5は、電動車両100の作用を示すフローチャートである。
図5に示すように、ステップS101では、例えば乗員による目的地の設定または変更に応じて、ルート情報17が取得される。このため、ステップS102では、その目的地に到着するまでに消費するエネルギー(第1消費エネルギー)が推定される。一方、ステップS103では、設定された目的地が特定目的地であるか否かに関して、設定された目的地の特徴が判定される。すなわち、設定された目的地に到着後、経路不明区間36の走行によってさらにエネルギーの消費が要求されるか否かが判定される。この判定の結果、ステップS104において目的地が特定目的地であるときには、ステップS105において、その特定目的地に関連する経路不明区間36について経路不明区間走行履歴21が取得される。経路不明区間36への入口が複数あるときには、こうして経路不明区間走行履歴21が取得される際に入口に応じて分類される。
【0064】
続くステップS106では経路不明区間36の混雑度が取得される。また、ステップS107では経路不明区間36の広さが推定され、ステップS108では経路不明区間36の高度が推定される。そして、ステップS109では、その経路不明区間36の走行に関して、乗員の走行傾向が分析される。
【0065】
その後、ステップS110では、経路不明区間36の推定広さ、混雑度18、推定高度、及び、走行傾向に基づいて、経路不明区間36における走行時間が推定される。また、ステップS111では、経路不明区間36の走行に関して、単位消費エネルギーが算出される。これにより、ステップS112では、経路不明区間36の推定走行時間と単位消費エネルギーに基づいて、経路不明区間36で消費されるエネルギーである第2消費エネルギーが推定される。
【0066】
上記のように、第1消費エネルギーと第2消費エネルギーが推定されると、ステップS113において、放充電スケジュールが設定される。すなわち、第1消費エネルギーと第2消費エネルギーとを用いて、特定目的地に到着する時点においてバッテリ12が第2消費エネルギーに相当する電力を保有するように、特定目的地に到着するまでの放充電スケジュールが設定される。
【0067】
その後、ステップS114では、この第2消費エネルギーが考慮された放充電スケジュールにしたがった制御が実行される。すなわち、特定目的地に到着する時点で第2消費エネルギーに相当する電力が残るようにしつつ、燃費及び/または電費が最適化されるように、走行経路上の適切なタイミングでエンジン14が駆動され、バッテリ12が充電される。
【0068】
なお、ステップS104において、設定された目的地が特定目的地でないときには、ステップS105からステップS111における第2消費エネルギーを推定するための演算とステップS112における第2消費エネルギーの推定は省略される。このため、ステップS113では、第1消費エネルギーに基づいて放充電スケジュールが設定される。このため、ステップS114においてこの放充電スケジュールにしたがった制御が実行されると、目的地までの走行に関して、燃費及び/または電費が最適化される。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る電動車両制御方法は、走行駆動源である駆動モータ10と、駆動モータ10に電力を供給するバッテリ12と、を備える電動車両100で実行される。この電動車両制御方法では、電動車両100の走行による消費エネルギーが推定され、推定された消費エネルギーに基づいてバッテリ12の放電または充電に関する制御が実行される。また、この電動車両制御方法では、予め設定される目的地に到着するまでの走行経路に関するルート情報17が取得され、ルート情報17を用いて、目的地に到着するまでに消費されるエネルギーである第1消費エネルギーが推定される。その上で、目的地が、到着後に、経路に関する情報がない経路不明区間36の走行によってさらにエネルギーの消費が要求される特定目的地であるときには、経路不明区間36の走行履歴20(経路不明区間走行履歴21)が取得される。そして、この経路不明区間走行履歴21を用いて、特定目的地に到着後、電動車両100が駐車されるまでに消費されるエネルギーである第2消費エネルギーが推定される。
【0070】
これにより、目的地に到着後、立体駐車場33等のルート情報17がない経路不明区間36の走行によって更なるエネルギーの消費が要求されるときでも、この追加的なエネルギー消費が考慮され、消費エネルギーが正確に推定される。すなわち、本実施形態に係る電動車両制御方法によれば、消費エネルギーの推定精度が向上する。その結果、従来の電動車両よりも、電動車両100は電費及び/または燃費が向上する。
【0071】
また、本実施形態に係る電動車両正義方法では、上記のように第1消費エネルギーと第2消費エネルギーとを用いて、特定目的地に到着する時点においてバッテリ12が第2消費エネルギーに相当する電力を保有するように、特定目的地に到着するまでのバッテリ12の放電または充電のスケジュールが設定される。
【0072】
このように、第1消費エネルギーに加えて第2消費エネルギーを用いた高精度な消費エネルギーの推定結果を、充電スケジュールの設定に利用するので、第2消費エネルギーを考慮しないときよりも、精度が高いバッテリ放充電スケジュールを設定できる。そして、このバッテリ放充電スケジュールは、特に、特定目的地に到着する時点においてバッテリ12が第2消費エネルギーに相当する電力を保有するように設定される。これにより、特定目的地(例えば駐車場入口34)から進入する経路不明区間36(例えば立体駐車場33の経路不明区間36)では、電動車両100は充電のためにエンジン14を駆動することなく、バッテリ12の電力だけで走行できる。経路不明区間36では前述のように徐行運転されることが多いので、公道を走行する場合と比較して相対的に音振性能が高いことが要求される。これは、徐行運転によって車速が抑えられる分、相対的にエンジン14の駆動等による音振が目立つようになるからである。上記のようにバッテリ12の電力だけで確実に経路不明区間36を走行できるようにすることで、経路不明区間36において電動車両100に期待される音振性能の要求(“EVness”)が確実に満たされる。
【0073】
本実施形態に係る電動車両制御方法では、電動車両100がバッテリ12の充電に用いるエンジン14を備えるときに、設定された放充電スケジュールにしたがってエンジン14が駆動される。すなわち、電動車両100がHEVであるときには、放充電スケジュールにしたがってエンジン14の駆動が制御される。これにより、第2消費エネルギーを用いて放充電スケジュールが設定されると、自動的にバッテリ12の放充電が最適化される。その結果、燃費及び/または電費が向上する。
【0074】
本実施形態に係る電動車両制御方法では、経路不明区間36の走行履歴(経路不明区間走行履歴21)を用いて、経路不明区間36の走行時間が推定され、第2消費エネルギーは、この走行時間に基づいて推定される。このように、経路不明区間走行履歴21を用いて推定走行時間を算出することにより、第2消費エネルギーが特に正確に推定される。
【0075】
本実施形態に係る電動車両制御方法では、経路不明区間36の混雑度18が取得され、経路不明区間36の走行時間(推定走行時間)は、混雑度18に応じて修正される。これにより、経路不明区間36の走行時間がより正確に推定される。その結果、第2消費エネルギーの正確性が向上する。
【0076】
本実施形態に係る電動車両制御方法では、経路不明区間36の走行履歴を用いて、経路不明区間36における走行傾向が分析され、走行時間は、走行傾向に応じて修正される。これにより、経路不明区間36の走行時間がより正確に推定される。その結果、第2消費エネルギーの正確性が向上する。
【0077】
本実施形態に係る電動車両制御方法では、同一の経路不明区間36に、特定目的地となり得る入口が複数あるときに、経路不明区間36の走行履歴20(経路不明区間走行履歴21)は入口ごとに分類され、走行時間は入口に応じて推定される。このように、経路不明区間36への入口が複数あるときに、経路不明区間36に進入する入口に応じて、経路不明区間36における走行時間を推定することにより、推定走行時間の正確性が向上する。その結果、第2消費エネルギーの正確性が向上する。
【0078】
本実施形態に係る電動車両制御方法では、経路不明区間36の走行履歴20(経路不明区間走行履歴21)は、電動車両100が走行または駐車した高度に関する情報である高度情報を含み、第2消費エネルギーはその高度情報に基づいて推定される。このように、経路不明区間36の高度情報を考慮すると、第1に、立体駐車場33や地下駐車場等の立体的な経路不明区間36についても正確に第2消費エネルギーが推定される。特に、経路不明区間36の走行によって電動車両100が位置エネルギー相当のエネルギーを獲得または損失するときにも、正確に第2消費エネルギーが推定される。
【0079】
さらに、本実施形態に係る電動車両制御方法では、高度情報のうち最大の高度を経路不明区間36にある施設の高さと推定し、第2消費エネルギーは、経路不明区間36にある施設の高さに相当する位置エネルギーを含めて推定される。このように、経路不明区間走行履歴21に含まれる最大高度を用いると、将来において実際に電動車両100を駐車する高度が未確定な状態であっても、確実に、電力だけで経路不明区間36を走行し得る電力をバッテリ12に残すことができる。
【0080】
本実施形態に係る電動車両制御方法では、目的地が特定目的地であるか否かが、経路不明区間36の走行履歴20(経路不明区間走行履歴21)が示す走行パターンに基づいて判定される。そして、目的地が特定目的地であると判定されたときに、第2消費エネルギーが推定される。このように、目的地が特定目的地であるか否かを、過去の走行パターンに基づいて判定すると、特に判定の正確性が向上する。その結果、消費エネルギーの推定が特に正確になる。
【0081】
なお、上記実施形態に係る電動車両100はシリーズ方式のハイブリッド車両であるが、パラレル方式等、他の方式のHEVや、バッテリ12を充電するためのエンジン14等を有しない電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)等においても本発明を好適に実施することができる。
【0082】
例えば、電動車両100がBEVであるときには、上記実施形態において消費エネルギーに基づいて設定する放充電スケジュールは、バッテリ12を充電することを乗員に提案するスケジュールである。このスケジュールの提案は、例えば、ナビゲーションシステム16の表示画面や電動車両100の計器盤等における表示、または、音もしくは音声によって放置される。すなわち、バッテリ12が外部電源によって充電可能であるときには、第2消費エネルギーを考慮した放充電スケジュールにしたがって、外部電源によってバッテリ12を充電すべきことが、電動車両100の乗員に報知される。このように、バッテリ12が外部電源によって充電可能であるときに、バッテリ12を充電すべきことを乗員に報知すれば、上記実施形態と同様に、特定目的地に到着する時点においてバッテリ12に第2消費エネルギーに相当する電力を保有させることができる。
【0083】
なお、バッテリ12を充電すべきことの案内は、走行経路上または走行経路の近傍にある充電ステーションの案内や、必要な充電量の案内を含む。また、電動車両100は、コントローラ15によって充電ステーションと通信し、その充電の時点で必要な充電量を自動的に設定することができる。例えば、立体駐車場33において、乗員が買い物等をしている間にバッテリ12を充電するときには、立体駐車場33から出るときに回生電力として獲得する位置エネルギー分のエネルギーを考慮して、満充電未満の適切な充電量を設定することができる。これにより、消費エネルギーの無駄が削減される。
【0084】
この他、電動車両100がHEVとBEVの特徴を兼ね備えたPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)であるときにも、本発明は好適である。また、上記実施形態に係る電動車両100は自動車であるが、本発明は二輪車その他の車両にも好適である。
【0085】
また、上記実施形態では、電動車両100で立体駐車場33を有するショッピングモール30を訪れる例を挙げたが、これに限らない。例えば、広大な敷地を有する会社や工場、及び、その他の私有地等、ルート情報17がない経路不明区間36を有する施設等に訪れるときにも、本発明は好適である。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。例えば、発電モータ13及びエンジン14によって構成する発電装置は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)等、電力を生成する他の発電装置またはシステムに置き換えることができる。また、電動車両100は、ナビゲーションシステム16以外のシステム等(例えば電動車両100外のシステム)から、通信により、ルート情報17等を取得することができる。また、コントローラ15は、ナビゲーションシステム16の一部または全部の機能を取り込んでもよい。
【符号の説明】
【0087】
10 :駆動モータ
12 :バッテリ
13 :発電モータ
14 :エンジン
15 :コントローラ
16 :ナビゲーションシステム
17 :ルート情報
18 :混雑度
19 :走行履歴データベース
20 :走行履歴
21 :経路不明区間走行履歴
30 :ショッピングモール
33 :立体駐車場
34 :駐車場入口
35 :経路明白区間
36 :経路不明区間
37 :駐車位置
41 :情報取得部
42 :第1エネルギー推定部
43 :目的地種別判定部
44 :第2消費エネルギー推定部
45 :放充電スケジュール設定部
51 :走行履歴分類部
52 :混雑度取得部
53 :広さ推定部
54 :高度推定部
55 :走行傾向分析部
56 :走行時間推定部
57 :単位消費エネルギー算出部