(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/022 20210101AFI20240719BHJP
G02B 7/00 20210101ALI20240719BHJP
H01L 23/08 20060101ALI20240719BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20240719BHJP
H01L 23/10 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H01S5/022
G02B7/00 K
H01L23/08 B
H01L23/02 F
H01L23/10 B
(21)【出願番号】P 2020194193
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島袋 力
(72)【発明者】
【氏名】大熊 弘明
【審査官】皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-183414(JP,A)
【文献】特開2005-252071(JP,A)
【文献】特開2004-037865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/022
G02B 7/00
H01L 23/08
H01L 23/02
H01L 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、
前記底部の上面に配された発光素子と、
前記底部の上面に配され、前記発光素子を露出する開口を有する枠形状を有し、上面と前記上面から上方に突出しかつ前記上面の外縁に沿って延在している突出部とからなる段差構造を有する壁部と、
板状のガラス基材を含み、前記壁部の上面及び前記突出部の内側面に接着部材を介して接着され、前記ガラス基材に前記発光素子から出射された光を配光可能な配光構造が設けられた配光部材と、を有し、
前記接着部材は、前記配光部材の下面と前記壁部の上面との間に充填されている第1の接着部材及び前記配光部材の側面と前記突出部の内側面との間に充填されかつ前記第1の接着部材よりも高い弾性率を有する材料からなる第2の接着部材と、を含
み、
前記第2の接着部材は、前記配光部材の側面から上面に至っていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第1の接着部材は、前記配光部材の下面と前記壁部の上面との間から前記配光部材の側面と前記突出部の内側面との間の領域の一部に亘って充填されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記突出部の前記壁部の上面からの高さは、前記配光部材の厚みよりも大きくなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第2の接着部材の上面は、前記配光部材の上面から前記突出部の内側面に向かって上がる傾斜面であることを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記配光構造は、前記ガラス基材の下面の前記発光素子に対向する領域に形成されていることを特徴とする請求項1
乃至4のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項6】
前記配光構造は、前記ガラス基材の下面の凹凸構造であることを特徴とする請求項
5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記配光構造は、前記ガラス基材の下面に形成され且つ表面が凹凸構造を有する樹脂からなる光学機能層であることを特徴とする請求項
5に記載の発光装置。
【請求項8】
前記光学機能層は、前記ガラス基材の下面全体に亘って形成されており、前記第1の接着部材は、前記配光部材の側面と前記突出部の内側面との間において前記光学機能層と前記ガラス基材の界面に至るまで充填されていることを特徴とする請求項
7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第1の接着部材は、光硬化型樹脂であることを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項10】
前記第2の接着部材は、熱硬化型樹脂であることを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1つに記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を含む発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を出射する発光素子を光源として用いて、当該レーザ光を配光部材に通すことで配光パターンを制御する発光装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、段差部を有する胴体と、ガラス系列材質を含む透明ウインドウと、を含む発光装置が開示されており、当該透明ウインドウは、胴体の段差部において接着剤を介して接着されていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1のような装置において、透明ウインドウとしてガラス板を用いてその下面に樹脂からなる回折光学素子(Diffractive Optical Element:DOE)を形成した配光部材を用いる場合、当該配光部材を胴体に接合した後にリフロー工程等を経ることによって装置が高温に曝されると、当該配光部材においてガラス板からDOEが剥離することが問題の1つとしてあげられる。
【0006】
また、例えば、上記装置において、ガラス板自体に回折格子パターンを形成した配光部材を用いる場合、リフロー工程等による温度影響を受けることによって、当該配光部材にクラック等の損傷が生じる可能性がある。
【0007】
上記のような問題が生じた場合、例えば、発光装置から所望の配光パターンの光を得ることができない可能性がある。
【0008】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、配光部材の装置からの脱落を防止しつつ、配光部材に損傷が発生することを防止することが可能な発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による発光装置は、底部と、前記底部の上面に配された発光素子と、前記底部の上面に配され、前記発光素子の周囲を離間して覆う開口を有する枠形状を有し、上面と前記上面から上方に突出しかつ前記上面の外縁に沿って延在している突出部とからなる段差構造を有する壁部と、板状のガラス基材を含み、前記壁部の上面及び前記突出部の内側面に接着部材を介して接着され、前記ガラス基材に前記発光素子から出射された光を配光可能な配光構造が設けられた配光部材と、を有し、前記接着部材は、前記配光部材の下面と前記壁部の上面との間に充填されている第1の接着部材及び前記配光部材の側面と前記突出部の内側面との間に充填されかつ前記第1の接着部材よりも高い弾性率を有する材料からなる第2の接着部材と、を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照して具体的に説明する。なお、図面において同一の構成要素については同一の符号を付け、重複する構成要素の説明は省略する。
【実施例1】
【0012】
図1~
図2を参照しつつ、実施例1に係る発光装置10の構成について説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る発光装置10の上面図である。
図2は、
図1の発光装置10の2-2線に沿った断面図である。
【0013】
[発光装置]
実施例1の発光装置10は、凹部を有する支持体11と、当該凹部の底面に載置された発光素子15と、配光を制御する配光部材17と、発光素子15を収めた支持体11と配光部材17とを接着する接着部材19と、を含んで構成される。
【0014】
[支持体]
支持体11は、上面形状が矩形の絶縁性を有する部材である。支持体11は、矩形の平板状の底部21と、当該底部21の上面21Sの外縁に沿って設けられた開口11Oを有する壁部22を有している。
【0015】
本実施例において、支持体11は、絶縁性及び気密性を有する窒化アルミ(AIN)から構成されている。なお、支持体11には、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)や窒化ケイ素(Si3N4)等の絶縁性及び気密性を有するセラミックスを用いてもよい。
【0016】
壁部22の下壁部23(以下、下壁部23と称する)は、底部21の上面21Sの外縁に沿って枠状に延在している絶縁部材である。下壁部23は、下壁部23の内側面によって形成されかつ底部21の上面21Sの中央の領域を露出する開口11OAを有する。開口11OAは、開口11Oの下部をなしている。
【0017】
壁部22の中壁部25(以下、中壁部25と称する)は、下壁部23の上面23Sの外縁に沿って枠状に延在している絶縁部材である。中壁部25は、中壁部25の内側面によって形成されかつ下壁部23の開口11OA及び下壁部23の上面23Sのうちの内縁側の領域を露出する開口11OBを有する。すなわち、中壁部25は、下壁部23の開口11OA上において開口11OAよりも大きい開口11OBを有している。開口11OBは、開口11Oの中間部をなしている。
【0018】
壁部22の上壁部27(以下、上壁部27または突出部27と称する)は、中壁部25の上面25Sの外縁に沿って枠状に延在している絶縁部材である。言い換えれば、上壁部27は、中壁部25の上面25Sから上方に突出して筒状に形成されている突出部27である。
【0019】
上壁部27は、上壁部27の内側面によって形成されかつ中壁部25の開口11OB及び中壁部25の上面25Sのうちの内縁側の領域を露出する開口11OCを有する。すなわち、上壁部27は、中壁部25の開口11OB上において開口11OBよりも大きい開口11OCを有している。開口11OCは、開口11Oの上部をなしている。
【0020】
詳細は後述するが、開口11OAと開口11OBは、発光素子15を収容し、且つ配光部材17の光学機能層39を機能させるための内空間となる。
【0021】
上壁部27の開口11OC側の内側面と発光装置10を画定する外側面との間隔である上壁部27の厚み(または突出部27の厚み)は、配光部材17の基材38の上下方向の厚みより厚くなっている。これは、配光部材17が上方に押し上げられる力によって上壁部27が破損することを防ぐためである。また、必要以上に上壁部厚みを厚くすると発光装置10が大きくなるため、上壁部厚みは、基材38の厚みの2倍以下が好ましい。
【0022】
カソード電極28及びアノード電極29は、支持体11の底部21の下面において互いに離間して形成されている平板状の金属電極である。カソード電極28及びアノード電極29は、タングステン(W)又はW合金からなり、その表面にはニッケル(Ni)/金(Au)の金属表面処理が施されている(表記「a/b」は、a金属層、b金属層の順にて積層されていることを表す)。
【0023】
カソード配線32は、底部21の上面21Sに矩形状に形成されている金属配線である。カソード配線32は、下壁部23によって覆われている上面21Sの領域から、下壁部23から露出されている上面21Sの中央の領域を越えるように形成されている。すなわち、カソード配線32は、底部21の上面21Sの中央の領域の部分が下壁部23から露出されており、それ以外の部分が下壁部23によって覆われている。カソード配線32は、底部21を上下方向に貫通するW合金からなる導通ビア21Vを介してカソード電極28に電気的に接続されている。
【0024】
アノード配線33は、下壁部23の上面23Sにおいて、当該上面23Sの枠形状に沿って延在している金属配線である。アノード配線33は、上面23Sの内縁側の領域の部分が中壁部25から露出されており、それ以外の部分が中壁部25によって覆われている。アノード配線33は、底部21及び下壁部23を上下方向に貫通するW合金からなる導通ビア23Vを介して、アノード電極29に電気的に接続されている。
【0025】
カソード配線32及びアノード配線33は、W合金からなる。また、カソード配線32のうちの下壁部23から露出されている底部21の上面21Sの中央の領域の部分と、アノード配線33のうちの中壁部25から露出されている下壁部23の上面23Sの内縁側の領域の部分とには、構成材料であるW合金上にNi/Auの金属表面処理が施されている。
【0026】
底部21上に配された壁部22を構成する下壁部23、中壁部25及び上壁部27は、各々の内側面によって形成される開口が、上方に向かってこの順で広がるような段差構造の断面を形成している。この段差構造は、例えば、配線が形成されたセラミックグリーンシート(底部21に相当)上に、壁部22(下壁部23、中壁部25、上壁部27に相当)となる各々開口の大きさの異なる枠状の複数のセラミックグリーンシートを積層して焼成することによって形成され得る。
【0027】
[発光素子]
発光素子15は、底部21の上面21Sの略中央に配されており、上面に光の出射領域を有する上面形状が矩形の発光素子である。本実施例において、発光素子15は、赤外領域の波長範囲(例えば940nm)のレーザ光を上面に垂直に出射可能な垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)素子である。発光素子15は、上面に複数のレーザ光の出射領域が格子状に配列されたアレイ型VCSEL素子である。発光素子15は、支持基板とn型半導体層、発光層、p型半導体層からなる光電変換層とを含んで構成される(いずれも図示せず)。
【0028】
発光素子15は、底部21の上面21Sの中央の領域に配されているカソード配線32に電気的に接合されている。具体的には、発光素子15の下面に設けられているカソード電極パッド(図示せず)とカソード配線32とが、金錫合金(Au-20wt%Sn)からなる接合部材35を介して電気的に接合されている(表記「a-b」は、a、bからなる合金を表す)。
【0029】
また、発光素子15は、下壁部23の上面23Sにおいて中壁部25から露出されているアノード配線33に電気的に接合されている。具体的には、発光素子15の上面に設けられているアノード電極パッド(図示せず)と上面23Sの内縁側の領域におけるアノード配線33とが、Auからなるボンディングワイヤ36を介して電気的に接合されている。ボンディングワイヤ36は、例えば、発光素子15の上面の対向する二辺に沿うように設けられた2つのアノード電極パッドの各々からアノード配線33へ複数本配されている。
【0030】
上述したように、カソード配線32は、カソード電極28に電気的に接続されており、アノード配線33は、アノード電極29に電気的に接続されている。また、カソード配線32は、発光素子15のカソード電極パッド(図示せず)と接続されており、アノード配線33は、ボンディングワイヤ36を介して発光素子15のアノード電極パッド(図示せず)と接続されている。これらの配線は、絶縁体である支持体11によって電気的に絶縁されている。従って、発光素子15は、底部21の下面に設けられたカソード電極28及びアノード電極29に通電されることで、当該発光素子15の上面に垂直に上方に向かうレーザ光を出射する。
【0031】
なお、上述したカソード電極28、アノード電極29、カソード配線32、アノード配線33、導通ビア21V、23V及びボンディングワイヤ36は、W、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、銀(Ag)等のセラミック成形時に使用できる高導電性金属、Ni、チタン(Ti)、アルミ(Al)等の結着性の高い金属、Au、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の酸化されない貴金属から、目的に応じて適宜選択できる。
【0032】
[配光部材]
配光部材17は、開口11O内において支持体11によって保持されている上面形状が矩形の透光性部材である。配光部材17は、発光素子15から出射された光の配光パターンを制御可能な配光構造を含んで構成される。
【0033】
配光部材17は、発光素子15の上方において、側面が上壁部27の内側面と離間するように中壁部25の上面25Sに載置されている配光を制御する光学部材である。配光部材17は、透光性の板状部材からなる基材38と、当該基材38の下面に形成されかつ微細な凹凸構造を有する透光性の光学機能層39とを備えている。
【0034】
基材38は、上下方向において互いに平行な2面を有する透光性部材である。基材38の上面38Sは、発光素子15から配光部材17の光学機能層39へ入射した光の出射面である。すなわち、基材38の上面38Sは、配光部材17の上面であり、発光装置10における光取り出し面である。本実施例において、基材38は、レーザ光の透光率が高い光学ガラスから構成されている。基材38は、光学機能層39を精度良く形成するための土台(基準面)であり、また光学機能層39を透過、回折した光を透光する光学部材なので板厚が200μm~500μmと薄い。本実施例においては、基材38の厚みが300μmである配光部材17を用いた。
【0035】
本実施例においては、配光部材17の基材38を発光装置10の封止窓材として用いている(封止窓材と兼用している)。配光部材17は、例えば、十分な強度を有する封止窓材に貼り付けて用いられるが、その場合、発光素子15から出射した光が、配光部材17、封止窓材、及び配光部材17を封止窓材に貼り付けるための接着剤の各々を通るため、発光装置の光出力が低下してしまう。対して、本実施例では、配光部材17の基材38を封止窓材として用いることで、発光装置10の光出力を向上させている。
【0036】
光学機能層39は、基材38の下面に亘って設けられ、発光素子15から入射された光を光学回折により所定の配光にして拡散出射を可能とする回折光学素子(DOE)である。すなわち、光学機能層39の下面は、発光素子15から出射された光の入射面である。なお、光学機能層39は、当該光学機能層39の下面と発光素子15の上面との間が空隙(内空間)となっていることで機能する。
【0037】
光学機能層39は、水平方向の幅が数十~百マイクロメートル、垂直方向の高さが百マイクロメートル程度かつ高さ偏差が数十ナノメートルの多数の微細な突起によって構成されており、当該多数の微細な突起が基材38の下面に所定のパターンで配列されて形成された微細凹凸構造体である。
【0038】
この高さと配列の異なる微細な突起の各々によって発光素子15から光学機能層39へ入射された光が光学的に回折されて所望の配光パターンに変換される。すなわち、光学機能層39を有する配光部材17は、発光素子15から出射された線状のレーザ光を所定の配光パターンに変換する配光変換器である。なお、当該配光パターンは、光学機能層39の微細な突起の配列パターンを調整することによって任意に設定できる。
【0039】
本実施例において、配光部材17は、発光素子15であるアレイ型VCSELから出射された複数の線状レーザ光を所定の角度(上下角、水平角)に広がる矩形状の面状光に変換し、当該面状光の強度分布が略均一になるように配光部材17の上面(光取り出し面)38Sから当該面状光を出射させる。
【0040】
本実施例において、光学機能層39は、紫外線硬化型のエポキシ樹脂によって構成されている。光学機能層39の凹凸構造は、例えば、基材38に未硬化のエポキシ樹脂を塗布し、微細な凹凸構造を有する金型を未硬化のエポキシ樹脂に押し当てることで当該凹凸構造を転写(インプリント)し、紫外線を照射して硬化させた後に金型を外すことによって形成することができる。
【0041】
なお、光学機能層39は、基材38の下面の一部に形成されていてもよい。例えば、光学機能層39は、発光素子15から出射されたレーザ光が基材38に入射され得る範囲のみに形成されていてもよい。言い換えれば、光学機能層39は、中壁部25の上面25Sと接触し得る部分である基材38の下面端部等には形成されていなくてもよい。
【0042】
また、基材38及び光学機能層39は、例えば、レーザ光の透過率が高い光学ガラス、石英ガラス等の無機ガラス、またシリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネイト等の樹脂材料を組み合わせて形成されていてもよく、同一の材料を用いて一体成型されていてもよい。
【0043】
[接着部材]
接着部材19は、支持体11の壁部22と配光部材17との間の枠状の領域に充填され、当該壁部22と配光部材17とを接着している樹脂材からなる接着部材である。言い換えれば、接着部材19は、配光部材17を囲むように延在している。接着部材19が壁部22の内側面と配光部材17との間に充填されており、配光部材17と壁部22の内側面、すなわち開口11Oの内側面とが離隔している。
【0044】
ここで、
図2を参照して、接着部材19について詳述する。接着部材19は、配光部材17の底面と壁部22の中壁部25の上面25Sとの間、及び配光部材17の側面と上壁部27の内側面との間に充填されることで壁部22と配光部材17とを接着している。接着部材19は、互いに異なる材料からなる第1の接着部材41と第2の接着部材42とによって構成される。
【0045】
第1の接着部材41は、配光部材17の下面と中壁部25の上面25Sとの間から配光部材17の側面と上壁部27の内側面との間の領域の一部に亘って充填されることで配光部材17と壁部22とを接着している。すなわち、第1の接着部材41は、配光部材17と中壁部25の上面25S及び上壁部27の内側面との間においてL字状の断面を形成するように配されている。
【0046】
本実施例において、第1の接着部材41は、配光部材17の側面と上壁部27の内側面との間の領域の高さ方向において、基材38と光学機能層39との界面の位置を越える高さまで充填されている。言い換えれば、配光部材17の光学機能層39の側面が第1の接着部材41に接している。すなわち、光学機能層39が側面において第1の接着部材41に当接している。
【0047】
第1の接着部材41は、紫外光や可視光等が照射されることによって硬化する光硬化型樹脂である。本実施例において、第1の接着部材41は、紫外線硬化型のアクリル樹脂を中壁部25の上面25S及び上壁部27の内側面に塗布して、配光部材17を載置した後に、例えば、20℃~30℃の常温下において紫外線によって硬化させたものである。
【0048】
第2の接着部材42は、配光部材17の側面と上壁部27の内側面との間の領域において、第1の接着部材41が充填されている高さから基材38の上面38Sの高さに至るまで枠状に充填されることで配光部材17の基材38と壁部22とを接着している。本実施例において、第2の接着部材42は、加熱されることによって硬化する熱硬化型のエポキシ樹脂を配光部材17の側面と上壁部27の内側面との間に充填した後に、例えば硬化温度150℃程度で熱硬化させたものである。
【0049】
本実施例において、第1の接着部材41は、第2の接着部材42よりも低い弾性率を有する樹脂である。言い換えれば、第1の接着部材41は、第2の接着部材42よりも柔軟な樹脂である。第1の接着部材41は、第2の接着部材42より柔軟な樹脂であることにより、第2の接着部材42よりも応力緩和性(応力を受容しつつ抗する性質)を有している。
【0050】
また、第2の接着部材42は、第1の接着部材41よりも高い弾性率を有する樹脂である。言い換えれば、第2の接着部材42は、第1の接着部材41よりも硬い樹脂である。第2の接着部材42は、第1の接着部材41よりも硬い樹脂であることにより、第1の接着部材41よりも高い固着性を有している。
【0051】
[充填ガス]
本実施例の発光装置10では、支持体11の壁部22と配光部材17とが接着部材19を介して接着されることで、当該壁部22と配光部材17とによって囲まれた内空間(開口11OA及び開口11OB)において発光素子15と配光部材17の光学機能層39と充填ガスとが気密封止されている。充填ガスは、当該内空間に収められている発光素子15と光学機能層39とを、発光装置10の外部において発生し得る腐食性ガスや水分を含む雰囲気ガスから保護する。
【0052】
充填ガスは、常温~発光装置10の動作温度(20℃~60℃)において常圧(大気圧)程度になるように上記した内空間に封入されている。これは、例えば、当該内空間が真空であるかまたは真空に近い減圧下にある場合、配光部材17を内側に湾曲させる力によって接着部材19が損傷し、外気が内空間に侵入することで発光素子15及び光学機能層39を劣化させる恐れがあるからである。
【0053】
[接着部材の作用]
上記した発光装置10は、当該発光装置10を作製した後に、他の電子部品を実装可能な回路基板においてはんだ等で接合され得る。発光装置10は、例えば、接着部材19の硬化温度より高い温度に曝すリフロー工程(例えば、ピーク温度260℃、40秒以下で保持する工程)を経て回路基板に実装される。
【0054】
このリフロー工程における温度上昇によって、開口11OA及び11OBからなる内空間に封入されている充填ガスが膨張して内圧が上昇することで、配光部材17を上方に押し上げる力が働く。この時、配光部材17が接着部材19によって壁部22に接着されていることで、当該力が働いた際に配光部材17が上方に湾曲するように変形する。
【0055】
本実施例の発光装置10においては、ガラス材からなる基材38の側面下部と樹脂からなる光学機能層39とが、接着部材19のうち第2の接着部材42よりも弾性率の低い柔軟な樹脂である第1の接着部材41に当接している。すなわち、接着部材19のうち第2の接着部材42よりも弾性率の低い変形しやすい樹脂である第1の接着部材41が光学機能層39に接している。
【0056】
これにより、リフロー工程における温度上昇によって上記した内空間の充填ガスが膨張して内圧が上昇し、配光部材17に変形が生じた際に、その変形に第1の接着部材41が追従して変形することで当該配光部材17の変形を許容する。第1の接着部材41が当該配光部材17の変形を許容することで、光学機能層39において生ずる剥離応力を緩和することが可能になる。
【0057】
具体的には、第1の接着部材41であるアクリル樹脂の弾性率を800MPa(引張弾性率)とすることで、配光部材17から受ける力を第1の接着部材41が変形することで受容することができる。このように作用させるには、弾性率2000MPa以下の柔らかい樹脂が望ましい。また、柔らかすぎると応力に対して抗することができないので、第1の接着部材41の弾性率は500MPa以上であることが好ましい。
【0058】
本実施例の発光装置10においては、接着部材19のうち第1の接着部材41よりも弾性率(特に引張弾性率)の高い第2の接着部材42が、配光部材17の側面と上壁部27の内側面との間の領域において第1の接着部材41が充填されている高さから基材38の上面38Sの高さに至るまで充填されていることにより、配光部材17を壁部22に強固に固着している。
【0059】
これにより、リフロー工程における温度上昇によって充填ガスが膨張して内圧が上昇した際に、第2の接着部材42が、その膨張に応じた配光部材17を押し上げる力を抑制し、第1の接着部材41だけでは不足する固着力を補うことで、気密破壊や配光部材17が壁部22から脱落することを防ぐことができる。
【0060】
具体的には、第2の接着部材42であるエポキシ樹脂の弾性率を13000MPa(曲げ弾性率)とすることで、配光部材17を壁部22から脱落しない強度で固着することができる。このように脱落しない強度で固着するには、弾性率10000MPa以上の硬い樹脂が望ましい。
【0061】
なお、配光部材17を上方に押し上げる力が働く場合であれば、本発明の構造は効果を奏する。例えば、発光装置10が地表より高い高度で使用される場合などにおいては、発光装置10の内圧より周囲圧力が低くなるため、配光部材17が上方に押し上げられる力が働く状況となる。
【0062】
以上から、本実施例の発光装置10によれば、接着部材19が2つの異なる弾性率を有する材料からなることにより、発光装置10の回路基板への実装時におけるはんだリフロー工程を経た際においても配光部材17の損傷や脱落を防ぐことが可能となる。これにより、発光装置20から所望の配光パターンの光を得ることができる。
【0063】
[製造方法]
次に、実施例1の発光装置10の製造方法について説明する。
【0064】
まず、支持体11の底部21に設けられたカソード配線32上において、接合部材35として揮発性のフラックスにAu-20wt%Snの微粒子が含まれたゾルダーペーストを塗布する。続いて、ゾルダーペースト上に発光素子15の外周からゾルダーペーストがはみ出さない程度に押し当てて仮載置する。その後、ドライエア(又は窒素4:酸素1の混合ガス)雰囲気下、300℃に加熱してゾルダーペーストのフラックスを揮発させつつAu-20wt%Snの微粒子を溶融及び固化させて発光素子15をカソード配線32上に機械的に固定すると共に電気的に接続する(工程1)。
【0065】
次に、支持体11に接合した発光素子15の上面の電極パッドと支持体11のアノード配線33を、Auからなるボンディングワイヤ36で繋ぎ電気的に接続する(工程2)。
【0066】
次に、発光素子15が固定された支持体11をドライエア雰囲気下、20℃~30℃の常温、常圧(大気圧)にて、中壁部25の上面25Sに第1の接着部材41となる未硬化のアクリル樹脂を塗布する。その後、上面25S上の第1の接着部材41対して配光部材17を押し当てて配光部材17の側面と上壁部27の内側面との間の領域に第1の接着部材41が到達した状態で波長365nm~400nmの紫外線を照射して第1の接着部材41を硬化させる。この操作にて、引張弾性率800MPaのアクリル樹脂からなる第1の接着部材41を形成することによって、当該配光部材17を壁部22に接着させることができる。同時に、発光素子15を収める内空間に常温、常圧のドライエアからなる充填ガスを封入することができる(工程3A)。
【0067】
続いて、紫外線照射によって硬化した第1の接着部材41上に第2の接着部材42となる未硬化のエポキシ樹脂を枠状に充填し、60℃で仮硬化しその後150℃で本硬化させることにより、配光部材17の側面と上壁部27の内側面とを、曲げ弾性率13000MPaのエポキシ樹脂からなる第2の接着部材42によって接着させることができる(工程3B)。
【0068】
本工程において、第2の接着部材42として熱硬化型樹脂を用いることで、第2の接着部材42が、例えば、配光部材17の基材38の側面及び上壁部27の内側面における微細な表面凹凸へ浸透しつつ強固な接合をするため高い固着力が得られる。また、硬化を60℃の低温と150℃の高温の2段階硬化とすることで、配光部材17から及ぶ応力による接着不良を防止できる。
【0069】
以上の操作により、発光素子15を含む開口11OA及び11OBからなる内空間が充填ガスで満たされて封止されている発光装置10を得ることができる。このように製造された発光装置10の内空間が、配光部材17及び接着部材19を介して気密封止されることで、発光素子15が水分で劣化することを防いでいる。
【0070】
また、当該気密封止によって光学機能層39における微細な突起間に水分が浸潤することを防ぐことができる。これにより、発光素子15から出射された光の配光パターンが乱れることを防止できる。また、本方法で製作した発光装置10は、回路基板にはんだリフロー工程を用いた実装においても、配光部材17が損傷や脱落を起こすことがない。
【0071】
第1の接着部材41の材料としては、第2の接着部材42の材料であるエポキシ樹脂よりも弾性率の低い材料であればよく、例えば、シリコーン樹脂としてもよい。また、第2の接着部材42には、例えば、発光素子15から出射される紫外光を吸収可能なカーボンブラックを含んでいてもよい。第2の接着部材42がカーボンブラックを含むことにより、配光部材17の端部から漏れ出ようとする光の漏洩を防ぐことができる。
【0072】
[比較例]
次に比較例1~3について説明する。
【0073】
比較例1は、実施例1の接着部材19を第1の接着部材41だけとした以外は全て実施例1と同じである。具体的には、弾性率の低い光硬化性のアクリル樹脂である第1の接着部材41が、配光部材17の底面と壁部22の中壁部25の上面25Sとの間、及び配光部材17の側面と上壁部27の内側面との間に充填されることで壁部22と配光部材17とを接着している。
【0074】
比較例2は、実施例1の接着部材19を第2の接着部材42だけとした以外は全て実施例1と同じである。具体的には、弾性率の高い熱硬化性のエポキシ樹脂である第2の接着部材42が、配光部材17の底面と壁部22の中壁部25の上面25Sとの間、及び配光部材17の側面と上壁部27の内側面との間に充填されることで壁部22と配光部材17とを接着している。
【0075】
比較例3は、実施例1の接着部材19の第1の接着部材41と第2の接着部材42の配置を逆にした以外は全て実施例1と同じである。具体的には、弾性率の高い熱硬化性のエポキシ樹脂である第2の接着部材42が、配光部材17の底面と壁部22の中壁部25の上面25Sとの間、及び配光部材17の側面と上壁部27の内側面の途中までL字状に充填されている。さらに、弾性率の低い光硬化性のアクリル樹脂である第1の接着部材41が、第2の接着部材42の上方の配光部材17の側面と上壁部27の内側面との間に充填されることで壁部22と配光部材17とを接着している。
【0076】
上記した比較例1~3の発光装置においては、当該発光装置及び抵抗、コンデンサ、ICチップなどを実装する回路基板に、例えば、錫銀銅(Sn-Ag-Cu)はんだを用いたリフロー工程(例えば、ピーク温度260℃、40秒以下で保持する工程)で実装した場合に、発光装置に封入された常温下で大気圧の充填ガスが膨張することで不具合を発生することがある。例えば、比較例1においては、接着部材の弾性率が低いために接着部材の破断などによる気密破壊及び配光部材の脱落を起こすことがある。また、比較例2と3においては、光学機能層39の剥離による配光不良、基材38の割れによる気密破壊を起こすことがある。
【0077】
一方、本実施例の発光装置10においては、当該発光装置10の内空間に収めた発光素子15と光学機能層39を保護する充填ガスを封入した構造において、発光装置10を回路基板に実装するリフロー工程を経た場合であっても、配光部材17の損傷または脱落を起こすことがない高い信頼性の発光装置を提供することができる。
【実施例2】
【0078】
図3~
図4を参照しつつ、実施例2に係る発光装置20の構成について説明する。
図3は、実施例2に係る発光装置20の上面図である。
図4は、
図3の発光装置20の4-4線に沿った断面図である。
【0079】
[発光装置]
発光装置20は、実施例1に係る発光装置10と配光部材17の構成及び配光部材17と壁部22との接着態様が異なっており、それ以外の点で発光装置10と同様の構成を有する。
【0080】
[発光装置の構成]
本実施例において、光学機能層44は、基材38の下面に形成されている上面形状が矩形のDOEである。光学機能層44は、例えば、発光素子15から出射されたレーザ光が入射され得る範囲(例えば、発光素子15の直上とその周囲の範囲)のみに形成されており、基材38の端部には至らない態様で形成されている。すなわち、配光部材17は、基材38と基材38よりも小さい面積を有する光学機能層44とから構成されている。
【0081】
光学機能層44は、基材38の下面において開口11OAに露出されている底部21の中央の領域の大きさと略同一の大きさで形成されている。光学機能層44は、配光部材17の製造時において、発光素子15からの光の出射範囲に応じてその形成範囲を適宜変更可能である。本実施例において、光学機能層44の形成面を除く基材38の下面は、当該光学機能層44から露出しており、この露出している基材38の下面の一部及び側面が、接着部材19を介して壁部22に接着されている。
【0082】
具体的には、第1の接着部材41が、基材38の下面と中壁部25の上面25Sとの間から基材38の側面と上壁部27の内側面との間の領域の一部に亘って充填され、第1の接着部材41よりも弾性率の高い第2の接着部材42が、基材38の側面と上壁部27の内側面との間の領域において、第1の接着部材41が充填されている高さから基材38の上面38Sの高さに至るまで充填されることで、配光部材17の基材38と壁部22とを接着している。
【0083】
すなわち、本実施例における発光装置20は、ガラス材からなる基材38のみが、互いに異なる材料からなる第1の接着部材41及び第2の接着部材42を介して、壁部22に接着されている構成となっている。
【0084】
上述したように、本実施例において、第1の接着部材41は、第2の接着部材42よりも低い弾性率を有しているアクリル樹脂である。第2の接着部材42は、第1の接着部材41よりも高い弾性率を有しているエポキシ樹脂である。第2の接着部材42は、第1の接着部材41よりも高い弾性率を有していることにより、すなわち第1の接着部材41よりも強固であることにより、第1の接着部材41よりも高い固着性を有している。
【0085】
[接着部材の作用]
上記した発光装置20は、発光装置10と同様に、当該発光装置20を作製した後に回路基板においてはんだ等で接合され得る。発光装置20は、例えば、接着部材19の硬化温度より高い温度に曝すリフロー工程(例えば、ピーク温度260℃、40秒以下で保持する工程)を経て回路基板に実装される。
【0086】
このリフロー工程における温度上昇によって、開口11OA及び11OBからなる内空間に封入されている充填ガスが膨張して内圧が上昇し、基材38を上方に押し上げる力が働くことで基材38が上方に湾曲するように変形する。
【0087】
本実施例の発光装置20においては、ガラス材からなる基材38がその底面及び側面において第1の接着部材41に接している。すなわち、接着部材19のうち第2の接着部材42よりも弾性率の低い変形しやすい樹脂である第1の接着部材41が基材38に接している。
【0088】
これにより、リフロー工程における温度上昇によって上記した内空間に封入されている充填ガスが膨張して内圧が上昇し、基材38に変形が生じた際に、その変形に応じて第1の接着部材41が追従して変形することで、基材38の第1の接着部材41と当接した部分において生ずる応力が緩和される。従って、基材38に生じるクラックの発生が防止される。
【0089】
また、本実施例の発光装置20においては、第1の接着部材41よりも弾性率の高い第2の接着部材42が、基材38の側面と上壁部27の内側面との間の領域において第1の接着部材41が充填されている高さから基材38の上面38Sの高さに至るまで充填されていることにより、基材38を壁部22に強固に固着している。
【0090】
これにより、リフロー工程における温度上昇によって充填ガスが膨張した際に、その膨張に応じた配光部材17を押し上げる力を抑制し、第1の接着部材41だけでは不足する固着力を補い気密破壊や、配光部材17が壁部22から脱落することを防ぐことができる。
【0091】
従って、本実施例の発光装置20によれば、接着部材19が2つの異なる弾性率を有する材料からなることにより、発光装置20の回路基板への実装におけるリフロー工程を経ても、配光部材17の損傷や脱落を防ぐことが可能となる。これにより、発光装置20から所望の配光パターンの光を得ることができる。
【0092】
なお、配光部材17における光学機能層44は、基材38において発光素子15から出射されたレーザ光が入射され得る範囲に形成されている構成であればよく、本実施例に記載した構成に限定されない。例えば、光学機能層44は、基材38の下面の任意の領域において基材38の下面に埋め込まれている態様としてもよい。
【0093】
また、配光部材17は、基材38そのものに光学機能層が形成されている構成であってもよい。例えば、基材38の下面の任意の領域に対して電子線描画装置を用いて電子ビームを照射することで、発光装置10の光学機能層44に相当する凹凸構造が形成されている態様としてもよい。
【0094】
[変形例1]
図5は、変形例1に係る発光装置30の断面図である。
図5は、
図1における発光装置10の2-2線に沿った断面に相当する断面図である。発光装置30は、実施例1に係る発光装置10と接着部材19の接着態様が異なっており、それ以外の点で発光装置10と同様の構成を有する。
【0095】
第2の接着部材46は、配光部材17の側面と上壁部27の内側面との間の領域において、第1の接着部材41が充填されている高さから基材38の上面38Sの高さを越えて上面38Sの一部を覆うように枠状に配されている。
【0096】
具体的には、第2の接着部材46は、基材38の上面38Sを越えて当該上面38Sの外縁上まで充填されている。すなわち、第2の接着部材46は、配光部材17の上面38Sの外縁を覆うように配されている。第2の接着部材46は、例えば、上面38Sから上壁部27の内側面に向かって緩やかにスロープ状に上がるように形成されている。第2の接着部材46がこの接着態様を示すことにより、配光部材17及び上壁部27の内側面に対する第2の接着部材46の接触面積を大きくすることが可能となる。
【0097】
上述したように、第2の接着部材46は、弾性率が高くかつ付着強度の高い接着部材が使用される。従って、本変形例において、第2の接着部材46が配光部材17の上面38Sの外縁を覆うように配されることによって、配光部材17をより強固に固着することが可能となる。
【0098】
従って、本変形例によれば、配光部材17と壁部22との間において、第2の接着部材46よりも弾性率の低い第1の接着部材41が配光部材17の変形を許容することで、当該変形によって配光部材17に生ずる応力を緩和する。そして、第1の接着部材よりも弾性率の高い第2の接着部材46によって発光素子15の封止及び配光部材17の脱落の防止が可能になる。これにより、配光部材17の損傷や脱落を防ぐことが可能となり、発光装置30から所望の配光パターンの光を得ることができる。
【0099】
[変形例2]
図6は、変形例2に係る発光装置40の断面図である。
図6は、
図1における発光装置10の2-2線に沿った断面に相当する断面図である。発光装置40は、実施例1に係る発光装置10と配光部材17の構成が異なっており、それ以外の点で発光装置10と同様の構成を有する。
【0100】
配光部材17は、基材38と、基材38の下面の一部に形成されている光学機能層48及び平行部49とから構成されている。
【0101】
光学機能層48は、発光素子15から出射されたレーザ光が入射され得る範囲(例えば、発光素子15の直上とその周囲の範囲)にのみ形成されており、基材38の端部には至らない態様で形成されている。光学機能層48は、例えば、基材38の下面において開口11OAに露出されている底部21の上面21Sの中央の領域の大きさと略同等の大きさで形成されている。
【0102】
平行部49は、基材38の下面において光学機能層48の外縁から基材38の下面端部までにおいて枠状に形成されている透光性部材である。平行部49は、光学機能層48と同じ厚みを有し、かつ凹凸構造が形成されていない表面を有する透光性部材である。
【0103】
本変形例において、平行部49は、光学機能層48と同じ紫外線硬化性を有するエポキシ樹脂から構成され、光学機能層48の製造過程において一体成型として形成される。
【0104】
具体的には、当該構成は、例えば、基材38の下面に亘って未硬化のエポキシ樹脂を塗布し、微細な凹凸構造を有する金型を未硬化のエポキシ樹脂の光学機能層48の形成範囲のみに押し当て、当該凹凸構造を転写し、紫外線を照射して硬化させた後に金型を外すことによって形成することができる。
【0105】
すなわち、平行部49は、基材38の下面に塗布した未硬化のエポキシ樹脂のうち、金型による凹凸構造の転写を行わない部分に対して紫外線を照射して硬化させることによって形成することができる。光学機能層48は、配光部材17の製造時において、発光素子15からの光の出射範囲に応じて光学機能層39の形成する範囲を適宜変更できる。
【0106】
本変形例によれば、配光部材17と壁部22との間において、第2の接着部材42よりも弾性率の低い第1の接着部材41が配光部材17の変形を許容することで、当該変形によって配光部材17に生ずる応力を緩和する。そして、第1の接着部材よりも弾性率の高い第2の接着部材42によって発光素子15の封止及び配光部材17の脱落の防止が可能になる。これにより、配光部材17の損傷や脱落を防ぐことが可能となり、発光装置40から所望の配光パターンの光を得ることができる。
【0107】
[変形例3]
図7は、変形例3に係る発光装置50の断面図である。
図7は、
図1における発光装置10の2-2線に沿った断面に相当する断面図である。発光装置50は、発光装置10と壁部22の構成が異なっており、それ以外の点で発光装置10と同様の構成を有する。
【0108】
壁部22の上壁部51(以下、上壁部51と称する)は、中壁部25の上面25Sの外縁に沿って枠状に延在している絶縁部材である。言い換えれば、上壁部51は、中壁部25の上面25Sから上方に突出して筒状に形成されている突出部である。
【0109】
上壁部51は、第1の部分51Aと第1の部分51A上に配されている第2の部分51Bとから構成されている。すなわち、壁部22は、底部21の上面21Sにおいて、下壁部23、中壁部25、及び上壁部51(第1の部分51A、第2の部分51B)から構成される4層構造を有している。
【0110】
第1の部分51Aは、中壁部25の上面25Sの外縁に沿って枠状に延在している部分である。第1の部分51Aは、実施例1の上壁部27と同様に、中壁部25の開口11OB及び上面25Sの内縁側の領域を露出するように配されている。第1の部分51Aは、第1の部分51Aの内側面によって形成されかつ開口11OBよりも大きい開口11ODを有する。
【0111】
第2の部分51Bは、第1の部分51Aの上面51ASの外縁に沿って枠状に延在している部分である。第2の部分51Bは、第2の部分51Bの内側面によって形成されかつ第1の部分51Aの開口11ODよりも小さい開口11OEを有する。
【0112】
第2の部分51Bは、第1の部分51Aの上面51ASの全面を覆っている。第2の部分51Bは、第1の部分51Aの内側面よりも内側に突出している返し部51BPを有する。
【0113】
第1の部分51Aと第2の部分51Bとの界面は、基材38と光学機能層39の界面よりも高く、基材38の上面より低く形成されている。すなわち、返し部51BPの下端は、基材38の側面の厚みの範囲内に形成されている。
【0114】
配光部材17は、開口11OD及び開口11OE内において接着部材19を介して壁部22によって保持されている。配光部材17の側面と第2の部分51Bの内側面との間の領域は、配光部材17の側面と第1の部分51Aの内側面との間の領域よりも狭く形成されている。
【0115】
第1の接着部材41は、配光部材17の下面と中壁部25の上面25Sとの間から配光部材17の側面と第1の部分51Aの内側面との間の領域に亘って充填されることで配光部材17と壁部22とを接着している。第1の接着部材41は、例えば、返し部51BPの下端から配光部材17の側面に向かって緩やかに下るように配されている。
【0116】
第2の接着部材42は、配光部材17の側面と上壁部51の内側面との間の領域において、第1の接着部材41が充填されている高さから基材38の上面38Sの高さに至るまで枠状に充填されることで配光部材17と壁部22とを接着している。
【0117】
本変形例によれば、壁部22において配光部材17を精度高く接着させることが可能となる。具体的には、上述したように、配光部材17は、当該配光部材17を中壁部25の上面25Sに塗布した未硬化の第1の接着部材41の上から押し当てた際に、第1の接着部材41の高さを返し部51BPによって規制しつつ、紫外線を照射して第1の接着部材41が硬化することで壁部22に接着される。
【0118】
また別の観点において、例えば、未硬化の第1の接着部材41が、配光部材17を設置する前に、当該未硬化の第1の接着部材41の表面張力によって中壁部25の上面25Sから上壁部27の内側面を伝って上方に広がってしまうことがある。この際に、第1の接着部材41の過度な這い上がりを防止し、配光部材17の側面における第1の接着部材41の高さ上限を規制することで、第2の接着部材42の配光部材17の側面と上壁部51の内側面との接着面積が小さくなることを防止できる。
【0119】
本変形例によれば、上記のような未硬化の第1の接着部材41が上方に広がった場合に、返し部51BPが第1の部分51Aの内側面よりも内側に突出していることにより、当該返し部51BPが未硬化の第1の接着部材41の上方への延びを抑えることが可能となる。すなわち、未硬化の第1の接着部材41を返し部51BPの下端よりも下方に留めた状態で配光部材17を接着させることができる。
【0120】
従って、本変形例によれば、発光装置50の製造時において、配光部材17をより精度高く壁部22に接着させることが可能となり、接着不良等を起因とした配光部材17の浮きや脱落を防ぐことが可能となり、発光装置50から所望の配光パターンの光を得ることができる。
【0121】
なお、上記実施例及び変形例において、支持体11及び配光部材17の平面形状は矩形である場合について説明したが、これに限られない。支持体11及び配光部材17は、例えば、円形等の曲線を含む形状を有していてもよい。
【0122】
本発明に係る発光装置における各部分の寸法、形状又は構成は、上述した実施例に限られるものではなく、用途等に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0123】
10、20、30、40、50 発光装置
11 支持体
15 発光素子
17 配光部材
19 接着部材
21 底部
22 壁部
23 下壁部
25 中壁部
27、51 上壁部
28 カソード電極
29 アノード電極
32 カソード配線
33 アノード配線
35 接合部材
36 ボンディングワイヤ
38 基材
39、44、48 光学機能層
41 第1の接着部材
42、46 第2の接着部材
49 平行部