(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】学習済モデル生成装置、学習済モデル生成プログラム、炉内温度予測装置、炉内温度予測プログラム、学習済モデル、および焼却システム
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
F23G5/50 M
F23G5/50 Q
(21)【出願番号】P 2020205270
(22)【出願日】2020-12-10
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 圭
(72)【発明者】
【氏名】眞野 文宏
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-074240(JP,A)
【文献】特開2019-158256(JP,A)
【文献】特開平01-014513(JP,A)
【文献】特開2020-119407(JP,A)
【文献】特開2000-283444(JP,A)
【文献】特開2000-320823(JP,A)
【文献】特開2004-178492(JP,A)
【文献】米国特許第06055915(US,A)
【文献】特開2019-32123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測するために用いられる学習済モデルを生成する学習済モデル生成装置であって、
学習用入力データを生成する学習用入力データ生成部と、
前記学習用入力データを用いて機械学習させることにより、所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測するための学習済モデルを生成する学習部とを備え、
前記学習用入力データは、投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含
み、
前記ごみは、給じんコンベヤ上を移動して前記燃焼炉に供給され、
前記給じんコンベヤ上を移動する前記ごみが撮影され、
前記投入前ごみ情報は、前記ごみの撮影画像から求められた輝度分布である学習済モデル生成装置。
【請求項2】
ごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測するために用いられる学習済モデルを生成する学習済モデル生成装置であって、
学習用入力データを生成する学習用入力データ生成部と、
前記学習用入力データを用いて機械学習させることにより、所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測するための学習済モデルを生成する学習部とを備え、
前記学習用入力データは、投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含み、
前記炉内温度は、前記燃焼炉に設けられる砂層の砂層温度である学習済モデル生成装置。
【請求項3】
前記投入前ごみ情報は、前記ごみに含まれる水分量および前記ごみの種類の少なくともいずれかの情報を含む請求項1
又は2に記載の学習済モデル生成装置。
【請求項4】
前記砂層温度は、複数回計測された前記砂層の温度の平均値である請求項
2に記載の学習済モデル生成装置。
【請求項5】
前記学習用入力データは、前記燃焼炉に供給される押し込み空気量および前記燃焼炉に供給されるろ液噴霧量の少なくともいずれかを含む請求項1から
4のいずれか一項に記載の学習済モデル生成装置。
【請求項6】
ごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測する炉内温度予測装置であって、
請求項1から5のいずれか一項に記載の学習済モデル生成装置と、
前記学習済モデルに、所定の時刻において取得された予測用入力データを入力して、前記時刻から前記所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測する予測部とを備え、
前記予測用入力データは、前記時刻において取得された投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含む炉内温度予測装置。
【請求項7】
ごみを燃焼させる燃焼炉と、
請求項
6に記載の炉内温度予測装置と、
前記燃焼炉から排出される排ガスの熱を利用して蒸気を発生させるボイラと、
前記ボイラが発生させた蒸気によりタービンを回して発電を行う蒸気タービン発電機とを備える焼却システム。
【請求項8】
ごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測するために用いられる学習済モデルであって、
投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含む学習用入力データを用いて機械学習させることにより生成され、
前記ごみは、給じんコンベヤ上を移動して前記燃焼炉に供給され、
前記給じんコンベヤ上を移動する前記ごみが撮影され、
前記投入前ごみ情報は、前記ごみの撮影画像から求められた輝度分布であり、
所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測するようにコンピュータを機能させるための学習済モデル。
【請求項9】
ごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測するために用いられる学習済モデルであって、
投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含む学習用入力データを用いて機械学習させることにより生成され、
前記炉内温度は、前記燃焼炉に設けられる砂層の砂層温度であり、
所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測するようにコンピュータを機能させるための学習済モデル。
【請求項10】
前記砂層温度は、複数回計測された前記砂層の温度の平均値である請求項9に記載の学習済モデル。
【請求項11】
ごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測するために用いられる学習済モデルを生成する学習済モデル生成プログラムであって、
学習用入力データを生成する機能と、
前記学習用入力データを用いて機械学習させることにより、所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測するための学習済モデルを生成する機能とをコンピュータに実行させ、
前記学習用入力データは、投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含
み、
前記ごみは、給じんコンベヤ上を移動して前記燃焼炉に供給され、
前記給じんコンベヤ上を移動する前記ごみが撮影され、
前記投入前ごみ情報は、前記ごみの撮影画像から求められた輝度分布である学習済モデル生成プログラム。
【請求項12】
ごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測するために用いられる学習済モデルを生成する学習済モデル生成プログラムであって、
学習用入力データを生成する機能と、
前記学習用入力データを用いて機械学習させることにより、所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測するための学習済モデルを生成する機能とをコンピュータに実行させ、
前記学習用入力データは、投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含み、
前記炉内温度は、前記燃焼炉に設けられる砂層の砂層温度である学習済モデル生成プログラム。
【請求項13】
ごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測する炉内温度予測プログラムであって、
学習用入力データを生成する機能と、
前記学習用入力データを用いて機械学習させることにより、所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測するための学習済モデルを生成する機能と、
前記学習済モデルに、所定の時刻において取得された予測用入力データを入力して、前記時刻から前記所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測する機能とをコンピュータに実行させ、
前記学習用入力データは、投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含み、
前記予測用入力データは、前記時刻において取得された投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含
み、
前記ごみは、給じんコンベヤ上を移動して前記燃焼炉に供給され、
前記給じんコンベヤ上を移動する前記ごみが撮影され、
前記投入前ごみ情報は、前記ごみの撮影画像から求められた輝度分布である炉内温度予測プログラム。
【請求項14】
ごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測する炉内温度予測プログラムであって、
学習用入力データを生成する機能と、
前記学習用入力データを用いて機械学習させることにより、所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測するための学習済モデルを生成する機能と、
前記学習済モデルに、所定の時刻において取得された予測用入力データを入力して、前記時刻から前記所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測する機能とをコンピュータに実行させ、
前記学習用入力データは、投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含み、
前記予測用入力データは、前記時刻において取得された投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含み、
前記炉内温度は、前記燃焼炉に設けられる砂層の砂層温度である炉内温度予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却システムおよび、焼却システムに用いられる、学習済モデル生成装置、学習済モデル生成プログラム、炉内温度予測装置、炉内温度予測プログラム、学習済モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
ごみを焼却処理する焼却システムは、排出されるガス(排ガス)の熱を利用して発電を行うことができる。このような焼却システムは、ボイラと蒸気タービン発電機とを備える。ボイラは、排ガスの熱を利用して蒸気を発生させ、蒸気タービン発電機は、ボイラが発生させた蒸気によりタービンを回して発電を行う。
【0003】
焼却システムでは、効率的な処理を行うために、種々の情報を取得し、処理を制御する。例えば、特許文献1には、蒸気量の変化傾向を予測する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蒸気量は燃焼後に変化するデータなので、蒸気量の変化を基に燃焼を制御しても、後追いの制御であるフィードバック制御となり、制御精度を確保することに限界がある。そのため、燃焼の結果として出力されるデータではなく、燃焼自体に直接影響を及ぼすデータの変化を予測して、燃焼を制御することが求められている。
【0006】
本発明は、精度良く焼却システムを制御するために、効率的な焼却システムの制御に用いられるデータを精度良く予測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る学習済モデル生成装置は、ごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測するために用いられる学習済モデルを生成する学習済モデル生成装置であって、学習用入力データを生成する学習用入力データ生成部と、前記学習用入力データを用いて機械学習させることにより、所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測するための学習済モデルを生成する学習部とを備え、前記学習用入力データは、投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含み、前記ごみは、給じんコンベヤ上を移動して前記燃焼炉に供給され、前記給じんコンベヤ上を移動する前記ごみが撮影され、前記投入前ごみ情報は、前記ごみの撮影画像から求められた輝度分布である。
【0008】
また、本発明の一実施形態に係る学習済モデルは、ごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測するために用いられる学習済モデルであって、投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含む学習用入力データを用いて機械学習させることにより生成され、前記ごみは、給じんコンベヤ上を移動して前記燃焼炉に供給され、前記給じんコンベヤ上を移動する前記ごみが撮影され、前記投入前ごみ情報は、前記ごみの撮影画像から求められた輝度分布であり、所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測するようにコンピュータを機能させる。
【0009】
また、本発明の一実施形態に係る学習済モデル生成プログラムは、ごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測するために用いられる学習済モデルを生成する学習済モデル生成プログラムであって、学習用入力データを生成する機能と、前記学習用入力データを用いて機械学習させることにより、所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測するための学習済モデルを生成する機能とをコンピュータに実行させ、前記学習用入力データは、投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含み、前記ごみは、給じんコンベヤ上を移動して前記燃焼炉に供給され、前記給じんコンベヤ上を移動する前記ごみが撮影され、前記投入前ごみ情報は、前記ごみの撮影画像から求められた輝度分布である。
【0010】
燃焼炉における燃焼効率や燃焼状況等は、投入されるごみの状態や、燃焼炉の炉内温度に大きく依存する。そのため、上記のように、燃焼炉に投入される前のごみの情報や、ごみが投入された際の炉内温度を用いて生成された学習済モデルは、将来の炉内温度の変化量を精度良く予測することができる。
【0011】
さらに、前記投入前ごみ情報は、前記ごみに含まれる水分量および前記ごみの種類の少なくともいずれかの情報を含んでも良い。
【0012】
投入されるごみの状態として、ごみに含まれる水分量や種類は、燃焼炉におけるごみの燃焼に大きく影響する。そのため、上記構成によると、より精度良く将来の炉内温度の変化量を予測するための学習済モデルを生成することができる。
【0014】
ごみの情報は、ごみを撮影した撮影画像の輝度分布から類推することができる。そのため、投入前ごみ情報として燃焼炉に投入される前のごみを撮影した撮影画像の輝度分布を用いることにより、将来の炉内温度の変化量を精度良く予測するための学習済モデルを、より容易に生成することができる。
【0015】
本発明の一実施形態に係る学習済モデル生成装置は、ごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測するために用いられる学習済モデルを生成する学習済モデル生成装置であって、学習用入力データを生成する学習用入力データ生成部と、前記学習用入力データを用いて機械学習させることにより、所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測するための学習済モデルを生成する学習部とを備え、前記学習用入力データは、投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含み、前記炉内温度は、前記燃焼炉に設けられる砂層の砂層温度である。
また、本発明の一実施形態に係るごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測するために用いられる学習済モデルは、投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含む学習用入力データを用いて機械学習させることにより生成され、前記炉内温度は、前記燃焼炉に設けられる砂層の砂層温度であり、所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測するようにコンピュータを機能させる。
また、本発明の一実施形態に係る学習済モデル生成プログラムは、ごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測するために用いられる学習済モデルを生成する学習済モデル生成プログラムであって、学習用入力データを生成する機能と、前記学習用入力データを用いて機械学習させることにより、所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測するための学習済モデルを生成する機能とをコンピュータに実行させ、前記学習用入力データは、投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含み、前記炉内温度は、前記燃焼炉に設けられる砂層の砂層温度である。
【0016】
燃焼炉において、砂層はごみが載置され、ごみを直接加熱する部分になる。そのため、砂層温度は、特に、燃焼炉における燃焼効率や燃焼状況等に及ぼす影響が大きい。このような砂層温度を用いて学習済モデルを生成することにより、より精度良く将来の炉内温度の変化量を予測するための学習済モデルを生成することができる。
【0017】
また、前記砂層温度は、複数回計測された前記砂層の温度の平均値であっても良い。
【0018】
このような構成により、ごみの燃焼中にばらつく、砂層温度の傾向が平均化され、将来の炉内温度の変化量をより精度良く予測するための学習済モデルを生成することができる。
【0019】
また、前記学習用入力データは、前記燃焼炉に供給される押し込み空気量および前記燃焼炉に供給されるろ液噴霧量の少なくともいずれかを含んでも良い。
【0020】
燃焼炉に供給される押し込み空気量や、ろ液噴霧量も、燃焼炉における燃焼効率や燃焼状況等に影響を及ぼす。そのため、上記構成によると、将来の炉内温度の変化量をより精度良く予測するための学習済モデルを生成することができる。
【0021】
また、本発明の一実施形態に係る炉内温度予測装置は、ごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測する炉内温度予測装置であって、前記学習済モデル生成装置と、前記学習済モデルに、所定の時刻において取得された予測用入力データを入力して、前記時刻から前記所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測する予測部とを備え、前記予測用入力データは、前記時刻において取得された投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含む。
【0022】
また、本発明の一実施形態に係る炉内温度予測プログラムは、ごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測する炉内温度予測プログラムであって、学習用入力データを生成する機能と、前記学習用入力データを用いて機械学習させることにより、所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測するための学習済モデルを生成する機能と、前記学習済モデルに、所定の時刻において取得された予測用入力データを入力して、前記時刻から前記所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測する機能とをコンピュータに実行させ、前記学習用入力データは、投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含み、前記予測用入力データは、前記時刻において取得された投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含み、前記ごみは、給じんコンベヤ上を移動して前記燃焼炉に供給され、前記給じんコンベヤ上を移動する前記ごみが撮影され、前記投入前ごみ情報は、前記ごみの撮影画像から求められた輝度分布である。
また、本発明の一実施形態に係る炉内温度予測プログラムは、ごみを焼却する焼却システムにおける燃焼炉の炉内温度の変化量を予測する炉内温度予測プログラムであって、学習用入力データを生成する機能と、前記学習用入力データを用いて機械学習させることにより、所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測するための学習済モデルを生成する機能と、前記学習済モデルに、所定の時刻において取得された予測用入力データを入力して、前記時刻から前記所定時間後の前記炉内温度の変化量を予測する機能とをコンピュータに実行させ、前記学習用入力データは、投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含み、前記予測用入力データは、前記時刻において取得された投入前ごみ情報と炉内温度の少なくともいずれかを含み、前記炉内温度は、前記燃焼炉に設けられる砂層の砂層温度である。
【0023】
炉内温度を予測した場合、予測周期が短かったり、炉内温度の変化が小さかったりすると、炉内温度の変化傾向を正確に予測することが困難であるため、予測精度が低下する場合がある。炉内温度ではなく、炉内温度の変化量を予測し、そのための学習済モデルを生成する構成とすることにより、直接的に炉内温度の変化傾向を予測するため、炉内温度の変化が小さくとも、正確に炉内温度の変化量を予測することができる。
【0024】
また、本発明の一実施形態に係る焼却システムは、ごみを燃焼させる燃焼炉と、前記炉内温度予測装置と、前記燃焼炉から排出される排ガスの熱を利用して蒸気を発生させるボイラと、前記ボイラが発生させた蒸気によりタービンを回して発電を行う蒸気タービン発電機とを備える。
【0025】
このような構成により、将来の炉内温度の変化量を精度良く予測し、燃焼効率や燃焼状況を適切に制御し、効率良く発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】焼却システムにおける炉内温度予測システムの機能構成を例示する図である。
【
図3】学習済モデルを生成する構成を例示する図である。
【
図4】合成画像を生成する方法の概略を例示する図である。
【
図5】学習用入力データの取得タイミングを説明する図である。
【
図6】学習用入力データの構成を例示する図である。
【
図7】炉内温度を予測する構成を例示する図である。
【
図8】学習済モデルを生成するフローを例示する図である。
【
図9】砂層温度の変化量を予測するフローを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔焼却システム〕
図1に示すように、焼却システム1は、燃焼炉2と、ボイラ3と、蒸気タービン発電機4と、ホッパ5と、給じんコンベヤ6と、煙突7とを備える。
【0028】
燃焼炉2は、砂層10と、空気を押し込む送風装置11とを備える。砂層10は燃焼炉2の下部領域に設けられ、約450℃~約600℃に加熱されて、砂層10上に投入された廃棄物等のごみDを焼却する。送風装置11は、砂層10よりも下側に設けられ、下側から砂層10に空気を供給する。
【0029】
ボイラ3は、燃焼炉2よりも上側に、燃焼炉2と連結されて設けられ、燃焼炉2が排出する排ガスの熱を利用して蒸気を発生させる。ボイラ3の上部領域にはろ液噴霧装置12が設けられる。ろ液噴霧装置12は、ボイラ3を介して燃焼炉2内に水等のろ液を噴霧する。
【0030】
蒸気タービン発電機4は、ボイラ3が発生させた蒸気が供給され、蒸気によってタービンを回して発電を行う。
【0031】
ホッパ5は、ピット13に貯留されたごみDがクレーン14により供給され、ごみDを一時的に貯留する。ホッパ5は、貯留されたごみDを所定量ずつ給じんコンベヤ6に送り出す。なお、ごみDから染み出し、ピット13の底にたまった水がろ液として供給されても良い。
【0032】
給じんコンベヤ6は、ホッパ5から受け取ったごみDを所定の速度で燃焼炉2まで運び、ごみDを燃焼炉2に投入する。煙突7は、ボイラ3から排出され、有害物質等が除かれた排ガスを外部に排出する。
【0033】
また、本実施形態の焼却システム1は、撮像装置17、熱電対18、空気流量計19、ろ液流量計20を備える。撮像装置17は、給じんコンベヤ6上を流れる所定の領域(撮影位置)のごみDを撮影する。撮像装置17は、例えば赤外線カメラである。熱電対18は砂層10の温度を計測する。熱電対18は砂層10の温度を計測できれば良く、砂層10に複数本設けられ、それらの計測値の平均値を砂層10の温度とすることが好ましい。例えば、3本の熱電対18が、燃焼炉2の横側方から燃焼炉2の側壁を貫通する態様で、先端部分が砂層10に差し込まれるように等間隔で設けられる。空気流量計19は、砂層10に供給される押し込み空気量を計測する。ろ液流量計20は、噴霧されるろ液噴霧量を計測する。
【0034】
燃焼炉2は、砂層10の温度と、送風装置11から供給される押し込み空気量と、ろ液噴霧装置12から噴霧されるろ液噴霧量を調整することにより、ごみDの燃焼を制御する。
【0035】
〔炉内温度予測システム〕
本実施形態では、上記のような焼却システム1において、現在の時刻から所定の時間が経過した時刻における燃焼炉2の炉内温度の変化量が予測される。焼却システム1は、予測された炉内温度の変化量に基づいてごみDの燃焼を制御する。
【0036】
まず、焼却システム1における炉内温度の変化量を予測する炉内温度予測システムの構成について、
図1を参照しながら
図2を用いて説明する。
【0037】
図2に示すように、炉内温度予測システムは、予測装置24(「炉内温度予測装置」に相当)と、データ取得部25と、データ出力部26とを備える。ここで、炉内温度予測システムは、焼却システム1に内蔵されても良いが、少なくとも予測装置24は焼却システム1とデータ通信可能な状態で、焼却システム1とは別に設けられても良い。
【0038】
予測装置24は、学習装置27(「学習済モデル生成装置」に相当)を内蔵し、データ取得部25が取得したデータに基づいて、学習装置27にて学習済モデル28を生成すると共に、学習済モデル28を用いて所定時間後の炉内温度の変化量56(
図7参照)を予測結果29として予測し、データ出力部26に出力する。
【0039】
予測装置24は、制御部31、通信部32、学習装置27、予測用入力データ生成部33、予測部34、記憶部35等を備える。
【0040】
制御部31は、マイコン等のプロセッサを備え、予測装置24の動作を制御する。通信部32は、制御部31の制御に応じて予測装置24の外部と通信を行うことが可能であり、データ取得部25が取得したデータを受信し、記憶部35に格納する。
【0041】
学習装置27は、学習用入力データ生成部38と、学習部39とを備える。学習部39は、AI(Artificial Intelligence)40を備える。学習装置27は制御部31の制御に応じて学習済モデルを生成するが、制御機能を有するプロセッサを自身が備え、このプロセッサの制御に応じて学習済モデルを生成しても良い。
【0042】
学習用入力データ生成部38は、データ取得部25が取得したデータを、通信部32を介して取得し、後述のように、学習済モデルを生成するための学習用入力データ41を生成し、記憶部35に格納する。学習部39は、記憶部35に格納された学習用入力データ41をAI40に入力して、AI40に深層学習等の機械学習を行わせることにより、所定時間後の炉内温度の変化量を予測するための学習済モデル28を生成する。学習部39は、生成された学習済モデル28を記憶部35に格納する。
【0043】
予測用入力データ生成部33は、制御部31の制御に応じて、データ取得部25が取得したデータを、通信部32を介して取得し、後述のように、予測用入力データ42を生成する。予測用入力データ生成部33は、生成した予測用入力データ42を記憶部35に格納する。予測部34は制御部31の制御に応じて、記憶部35から学習済モデル28を読み出し、記憶部35に格納された予測用入力データ42を学習済モデル28に入力することにより、所定時間後の炉内温度の変化量を予測する。予測部34は、予測した炉内温度の変化量56(
図7参照)を、予測結果29として記憶部35に格納し、さらにデータ出力部26に出力する。
【0044】
〔学習装置〕
次に、学習装置27について、
図1を参照しながら
図2~
図6を用いて説明する。
【0045】
学習装置27は、上述のように、学習用入力データ41を生成すると共に、学習用入力データ41をAI40に入力してAI40に機械学習させ、学習済モデル28を生成する。
【0046】
学習用入力データ生成部38は、燃焼炉2に投入される前のごみDの情報である投入前ごみ情報49および燃焼炉2の炉内温度46の少なくともいずれかを含む学習用入力データ41を生成する。
【0047】
投入前ごみ情報49は燃焼炉2に投入される前のごみDの水分量や種類、量等の種々の情報であり、撮像装置17がごみDを撮影した投入前ごみ画像50であっても良い。投入前ごみ画像50は、燃焼炉2に投入される前のごみDを撮影した撮影画像45そのものであっても良いが、撮影画像45から変換された輝度分布であっても良い。
【0048】
撮像装置17は、上述のように、給じんコンベヤ6上を流れるごみDを順に撮影する。撮影された撮影画像45は、通信部32によって取得され、記憶部35に格納される。
【0049】
撮像装置17は、給じんコンベヤ6より上側に固定されて配置され、給じんコンベヤ6の所定の領域(撮影位置)上のごみDを撮影するように配置される。撮像装置17は、給じんコンベヤ6上をごみDが移動するのに伴い、直前に撮影されたごみDの領域と重複する領域を含みながら、直前に撮影されたごみDの領域より給じんコンベヤ6の上流側のごみDの領域が含まれるように、連続してごみDを撮影する。例えば、撮像装置17は、1秒間隔で、5分間、連続してごみDの撮影を行い、300枚の撮影画像45を撮影する。なお、撮影間隔および撮影枚数は、給じんコンベヤ6の移動速度や燃焼炉2でのごみDの燃焼速度等を考慮して、任意に設定することができる。また、撮影画像45は、後述のように複数枚の画像が合成されても良く、5分間に投入されるごみDの全てを撮影できるのであれば、1枚の画像として撮影されても良い。また、撮影画像45は静止画に限らず、動画で撮影されても良い。
【0050】
学習用入力データ生成部38は、300枚の撮影画像45を1枚の合成画像45Sに合成する。具体的には、
図4に示すように、まず、給じんコンベヤ6上の所定の幅となる撮影領域W1上のごみDが撮影される。ここで、「幅」は給じんコンベヤ6の進行方向における長さに相当する。次に、1秒後に撮像装置17の撮影領域に入るごみDが撮影される。1秒後の撮影領域は、撮影領域W1から上流側にごみDの移動量だけ移動する撮影領域W2となる。
【0051】
撮影領域W2は、撮影領域W1と重なる撮影領域WR1(
図4において、WR1で示した幅の給じんコンベヤ6上の領域)と、さらに、ごみDが移動することにより新たに撮影された領域に相当する差分撮影領域Wd1とからなる。さらに、1秒後の撮影領域W3は、撮影領域W2と重なる撮影領域WR2(
図4において、WR2で示した幅の給じんコンベヤ6上の領域)と、新たに撮影された領域に相当する差分撮影領域Wd2とからなる。そして、5分後の撮影領域W300には、新たに撮影された領域に相当する差分撮影領域Wd299が含まれる。そして、学習用入力データ生成部38は、これら300枚の撮影画像45を合成して合成画像45Sを生成する。
図4において2点鎖線で示される合成画像45Sは、最初に撮影された撮影領域W1の画像に、新たに撮影された299枚の差分撮影領域Wd1から差分撮影領域Wd299の画像が結合されることにより生成される。
図4において、各撮影工程における撮影領域W1,W2,W3,W300は、それぞれ
図4の破線で囲まれた領域である。
【0052】
なお、300枚目の撮影画像45が撮影された直後、例えば1秒後から、1枚目の撮影画像45で撮影されたごみDから順に、燃焼炉2に投入されていき、300秒後に300枚目の撮影画像45で撮影されたごみDが燃焼炉2に投入される。換言すれば、給じんコンベヤ6上における撮影位置にあるごみDが搬送され、燃焼炉2に投入されるまでに300秒かかる。投入されたごみDは、ほぼ瞬時に燃焼する。なお、給じんコンベヤ6上のごみDが搬送され、燃焼炉2に投入されるまでに要する時間は焼却システム1ごとに異なる。そのため、学習用入力データ41の1つのセットを生成するために行う撮影画像45の撮影に際し、何秒間ごとに撮像するか(撮影間隔)、データセットは何秒間分を1組にするか(撮影枚数)等の条件は、焼却システム1ごとに適宜調整されて良い。すなわち、上述のように、撮影間隔および撮影枚数は、給じんコンベヤ6の移動速度や燃焼炉2でのごみDの燃焼速度、求められる燃焼制御の精度等を考慮して、任意に設定することができる。
【0053】
その後、学習用入力データ生成部38は、合成画像45Sを輝度に変換し、輝度分布を生成する。まず、学習用入力データ生成部38は、合成画像45Sを構成する各画素を、256段階の輝度に振り分ける。次に、学習用入力データ生成部38は、合成画像45Sにおいて、256段階の各輝度に当てはまる画素の数を計測し、256段階の各輝度と各輝度に振り分けられた画素数との関係からなる輝度分布を生成する。このような輝度分布が、投入前ごみ画像50となる。
【0054】
炉内温度46は、燃焼炉2内の任意の温度が計測されれば良いが、熱電対18により砂層10の温度が計測されても良い。通信部32は、計測された砂層10の温度等の炉内温度46を取得し、記憶部35に格納する。砂層10に設けられる熱電対18は1本でも良いが、砂層10に等間隔に設けられた3本の熱電対18から構成されても良い。3本の熱電対18が用いられる場合、3本の熱電対18で計測された温度の平均値が砂層10の温度とされる。
【0055】
学習用入力データ41である炉内温度46は、所定の時刻において計測された燃焼炉2内の温度、例えば、熱電対18により計測された砂層10の温度でも良いが、所定の時間の間に複数回計測された、燃焼炉2内の温度の平均値または砂層10の温度の平均値であっても良い。例えば、投入前ごみ画像50を生成するために撮影画像45が撮影されたのと同じ時刻に砂層10の温度が計測され、その平均値である砂層温度54が学習用入力データ41である炉内温度46とされても良い。あるいは、投入前ごみ画像50を生成するための撮影画像45で撮影されたごみDが、燃焼炉2に投入されていく時刻に砂層10の温度が計測され、その平均値である砂層温度54が学習用入力データ41である炉内温度46とされても良い。つまり、学習用入力データ41として投入前ごみ画像50および炉内温度46(砂層温度54)が用いられる場合、炉内温度46(砂層温度54)は、投入前ごみ画像50の撮像時間から、給じんコンベヤ6上における撮像位置にあるごみDが搬送され、燃焼炉2に投入されるまでに要する時間分だけ後の時刻に計測された炉内温度46(砂層温度54)の計測値とすることができる。
【0056】
図5は、学習用入力データ41として、炉内温度46の一例である砂層10の温度および撮影画像45が取得される様子を時系列的に示した図である。砂層10の温度および撮影画像45は、1秒おきに5分間取得されるため、学習用入力データ41として使用される砂層10の温度および撮影画像45は、それぞれ300のデータが取得される。なお、上述のように、給じんコンベヤ6上のごみDが搬送され、燃焼炉2に投入されるまでに要する時間等は焼却システム1ごとに異なる。そのため、撮影画像45の撮影は、1秒間隔に5分間の撮影を行うことに限定されず、任意の時間間隔で任意の時間行うことができる。
【0057】
具体的には、時刻t0から時刻t299の各時刻において、撮影画像45が撮影される。図において、撮影された撮影画像45は、順に、画像P0から画像P299と表示される。また、時刻t0から時刻t299の各時刻において撮影されたごみDが燃焼炉2に順次投入される時刻t300から時刻t599の各時刻において、砂層10の温度が計測される。図において、計測された砂層10の温度は、順に、砂層温度C300から砂層温度C599と表示される。
【0058】
そして、時刻t0から時刻t299の各時刻において撮影された撮影画像45、および、時刻t300から時刻t599の各時刻において計測された砂層10の温度から、1組の学習用入力データ41が生成される。この場合では、撮影画像45および砂層10の温度ともに300秒間分のデータごとに1組の学習用入力データ41が生成される。
【0059】
学習用入力データ41として投入前ごみ情報49および炉内温度46が用いられる場合、投入前ごみ情報49は投入前ごみ画像50として、撮影された撮影画像45または撮影された撮影画像45から求められた輝度分布が用いられる。また、炉内温度46は砂層温度54として、計測された砂層10の温度またはこれらの平均値が用いられる。
【0060】
投入前ごみ情報49は、これから燃焼炉2で焼却されるごみDの水分量や種類、量等の種々の情報が含まれ、投入前ごみ画像50からごみDの水分量や種類、量等の種々の情報を抽出することができる。燃焼されるごみDの水分量や種類、量等は、燃焼効率や燃焼状況に影響を与える。そのため、燃焼されるごみDの水分量や種類、量等によって、ボイラ3の温度やボイラ3で発生する蒸気の量が変化し、発電量や発電効率にも影響が及び、さらに、排ガスに含まれるCoやNox等の有害物質の濃度が変化する。
【0061】
また、砂層温度54等の炉内温度46も同様に、燃焼効率や燃焼状況に影響を与え、これに付随して、ボイラ3の温度やボイラ3で発生する蒸気の量に影響を与える。その結果、砂層温度54等の炉内温度46は、発電量や発電効率に影響を及ぼし、さらに、排ガスに含まれるCoやNox等の有害物質の濃度に影響を及ぼす。
【0062】
そのため、投入前ごみ情報49および炉内温度46の少なくともいずれかを学習用入力データ41として学習済モデル28を生成することにより、燃焼炉2での燃焼や発電、あるいは排ガスの有害物質含有量に影響を及ぼす砂層温度の変化量57(
図7参照)を精度良く予測することができる。
【0063】
さらに、各組の学習用入力データ41は、投入前ごみ情報49および炉内温度46の少なくとも一つの他に、押し込み空気量47およびろ液噴霧量48の少なくともいずれかが加えられても良い。
【0064】
図6は、複数組の学習用入力データ41を例示する図である。
図6において、横1列が1組の学習用入力データ41であり、機械学習の際には、異なる時刻に取得された複数組の学習用入力データ41がAI40に入力される。
【0065】
図6に例示する各組の学習用入力データ41は、投入前ごみ情報49または投入前ごみ画像50である輝度分布と、炉内温度46である砂層温度54と、押し込み空気量47と、ろ液噴霧量48とに加え、砂層温度の変化量55が含まれる。
【0066】
投入前ごみ情報49である輝度分布としては、各時刻において撮影された撮影画像45の合成画像45Sが輝度変換され、256段階に分けられた輝度毎に、256段階の各輝度に割り振られた画素数が入力される。炉内温度46である砂層温度54としては、各時刻において計測された砂層10の温度の平均値が用いられる。
【0067】
押し込み空気量47は、ごみDの燃焼を制御するために、燃焼炉2の砂層10に供給される空気の量であり、所定の時刻に空気流量計19で計測された空気の量、または、所定の時間帯に空気流量計19で複数回計測された空気の量の平均値である。ろ液噴霧量48は、ごみDの燃焼を制御するために、燃焼炉2に供給されるろ液の量であり、所定の時刻にろ液流量計20で計測されたろ液の量、または、所定の時間帯にろ液流量計20で複数回計測されたろ液の量の平均値である。所定の時刻は、学習用入力データ41が生成された時刻(現在時刻)、例えば、撮影画像45が撮影された時刻のいずれか、または、砂層温度54が計測された時刻のいずれかである。所定の時間帯は、学習用入力データ41が生成された時刻(現在時刻)、例えば、計測される押し込み空気量47およびろ液噴霧量48と同じセットの学習用入力データ41に用いられる全ての撮影画像45が撮影されるのに要した時間帯(例えば、
図5に示す時刻t0から時刻t299)、または、計測される押し込み空気量47およびろ液噴霧量48と同じセットの学習用入力データ41に用いられる全ての砂層温度54が計測されるのに要した時間帯(例えば、
図5に示す時刻t300から時刻t599)である。
【0068】
押し込み空気量47およびろ液噴霧量48は、燃焼炉2でのごみDの燃焼を安定的に適切な状態に保ち、ボイラ3の温度やボイラ3で発生する蒸気の量を安定的に適切な状態に保って効率的な発電を維持すると共に、排ガスに含まれるCoやNox等の有害物質の濃度を低減させるために制御される。そのため、押し込み空気量47およびろ液噴霧量48の少なくともいずれかを学習用入力データ41に加え、この学習用入力データ41を用いて学習済モデル28を生成することにより、燃焼炉2での燃焼や発電、あるいは排ガスの有害物質含有量に影響を及ぼす砂層温度54の変化量を精度良く予測することができる。
【0069】
さらに、学習用入力データ41として、砂層温度の変化量55が含まれても良い。砂層温度の変化量55は、生成時刻が連続する2組の学習用入力データ41において求められた砂層温度54の差分である。ある組の学習用入力データ41における砂層温度の変化量55は、ある組の直後に生成された組の学習用入力データ41における砂層温度54からある組の学習用入力データ41における砂層温度54を減じて求められる。燃焼炉2での燃焼の効率や状況は、砂層10の温度変化の影響を強く受ける。そのため、学習用入力データ41に砂層温度の変化量55が含まれることにより、生成された学習済モデル28の予測精度が向上する。
【0070】
このように生成された学習済モデル28は、予測用入力データ42が入力されることにより、炉内温度の変化量56(
図7参照)を予測する構成である。学習済モデル28のモデル構成は、各種のニューラルネットワークや決定木等とすることができる。
【0071】
〔予測装置〕
次に、予測装置24について、
図1,
図2を参照しながら
図7を用いて説明する。
【0072】
予測装置24は、上述のように、制御部31の制御に応じて、学習済モデル28を生成し、学習済モデル28を用いて、所定時間後の炉内温度の変化量56を予測する。
【0073】
具体的には、予測部34は、制御部31の制御に応じて、記憶部35に記憶された学習済モデル28に、記憶部35に記憶された予測用入力データ42を取得して入力することにより、予測結果29として炉内温度の変化量56を予測する。
【0074】
予測用入力データ42は、投入前ごみ情報60および炉内温度61の少なくともいずれかを含む。投入前ごみ情報60は、燃焼炉2に投入される前のごみDの水分量や種類、量等の情報であり、所定の時刻に取得される。また、投入前ごみ情報60は、投入前ごみ画像62であっても良い。投入前ごみ画像62は、所定の時刻において、燃焼炉2に投入される前のごみDを撮像装置17で撮影した撮影画像45、または撮影画像45から求めた輝度分布であっても良い。輝度分布は、撮影画像45を256段階の輝度に変換し、撮影画像45の各画素を256段階の輝度に振り分け、各輝度に振り分けられた画素数を計測した情報である。
【0075】
炉内温度61は、所定の時刻において計測された燃焼炉2の温度であり、例えば、砂層10の温度である砂層温度63である。予測用入力データ42として、投入前ごみ画像62および砂層温度63が共に用いられる場合、所定の時刻は、撮影画像45が撮影された時刻、あるいは、撮影画像45として撮影されたごみDが燃焼炉2に投入される時刻である。砂層10の温度は、熱電対18で計測することができ、複数本の熱電対18で計測される場合は、全ての計測値の平均値とする。
【0076】
炉内温度の変化量56は、予測用入力データ42を取得した所定の時刻における炉内温度61と、所定の時刻から所定の時間後の炉内温度との差分である。つまり、炉内温度の変化量56は、所定の時刻における炉内温度61が、所定時間後にどれだけ変化するかを予測した変化量である。また、炉内温度の変化量56は、砂層温度の変化量57であっても良い。砂層温度の変化量57は、所定の時刻における砂層10の温度が、所定時間後にどれだけ変化するかを予測した変化量である。
【0077】
なお、予測される所定の時刻からの時間は、任意に設定することができる。ここで、この時間(周期)が短すぎると、炉内温度の変化量56が小さすぎて、正確な予測が困難となる。そのため、この時間は、3分以上とすることが好ましく、例えば、3分以上7分以内であり、より好ましくは5分である。
【0078】
炉内温度、特に砂層温度は、燃焼炉2でのごみDの燃焼の効率や状況に大きな影響を及ぼす。そのため、所定時間後の炉内温度または砂層温度を予測し、予測した炉内温度または砂層温度に応じて、押し込み空気量47、ろ液噴霧量48および砂層温度等の少なくともいずれかを調整することにより、燃焼炉2の制御を効率的かつ精度良く行うことができる。その結果、ボイラ3の温度やボイラ3で発生する蒸気の量を効率的かつ精度良く制御し、発電量や発電効率を向上させ、さらに、排ガスに含まれるCoやNox等の有害物質の濃度を低減させることができる。
【0079】
特に、炉内温度の変化量56または砂層温度の変化量57を予測することにより、炉内温度または砂層10の温度の変化傾向を予測することとなり、変化傾向を用いてより効率的に燃焼炉2の制御を行うことができる。
【0080】
予測された炉内温度の変化量56または砂層温度の変化量57は、焼却システム1または別途設けられる表示部65に表示させることができる。作業者は、表示された炉内温度の変化量56または砂層温度の変化量57に基づいて、燃焼炉2でのごみDの燃焼や、ボイラ3、あるいは蒸気タービン発電機4を制御する。
【0081】
また、表示部65と共に、あるいは表示部65を設けずに、焼却炉制御部66が設けられても良い。焼却炉制御部66は、予測された炉内温度の変化量56または砂層温度の変化量57を受け取り、炉内温度の変化量56または砂層温度の変化量57に基づいて、燃焼炉2、ボイラ3、蒸気タービン発電機4等を自動的に制御する。これにより、より容易に、燃焼炉2の制御や発電の制御を効率的かつ精度良く行うことができる。
【0082】
〔処理フロー〕
次に、学習済モデル28を生成し、炉内温度の変化量56を予測する方法、またはプログラムの処理フローについて、
図1~
図4,
図7を参照しながら
図8,
図9を用いて説明する。なお、これらの処理は、上記炉内温度予測システムの各機能ブロックが行っても良いが、任意の機能ブロックにより行われても良い。また、プログラムは、記憶部35または別の記憶装置に格納され、予測装置24または別個に設けられたプロセッサにより実行される。
【0083】
まず、学習済モデル28を生成する際には、
図8に示すように、ごみDが撮影される。ごみDが撮影された撮影画像45は、給じんコンベヤ6上を移動するごみDが、所定の時間間隔で所定の時間に撮影された複数枚の画像である(ステップ#1)。
【0084】
次に、撮影画像45が合成される。撮影画像45の合成は、撮影画像45が撮影される度に、直前に撮影された撮影画像45との差分が、それまでに合成された画像に付加されていくことが繰り返されて合成画像45Sが生成される(ステップ#2)。
【0085】
次に、合成画像45Sが輝度変換される。輝度変換において、合成画像45Sの各画素が輝度に変換された後、256段階の輝度に振り分けられる(ステップ#3)。
【0086】
そして、256段階の輝度に対して振り分けられた、合成画像45Sの画素数が計測され、256段階の輝度に対応する合成画像45Sの画素数の関係を示す輝度分布が生成される。この輝度分布が投入前ごみ画像50とされる(ステップ#4)。
【0087】
次に、砂層10の温度が計測される。具体的には、投入前ごみ画像50の生成に用いられた撮影画像45のそれぞれに撮影されたごみDが、燃焼炉2に投入される時刻における砂層10の温度が計測される。砂層10の温度は、砂層10において、3か所の温度が計測され、3つの温度の平均値が砂層10の温度とされる。このような砂層10の温度は、複数枚の撮影画像45に撮影されたそれぞれのごみDが燃焼炉2に投入されるそれぞれの時刻に計測・算出される。また、それぞれの時刻は、各撮影画像45で撮影されたそれぞれのごみDの全量の燃焼炉2への投入が終了した時刻である。結果的に、所定の時間間隔で所定の時間、砂層10の温度が計測・算出される(ステップ#5)。
【0088】
次に、所定の時間間隔で所定の時間に計測された砂層10の温度の平均値が算出される。この値が砂層温度54とされる(ステップ#6)。
【0089】
その後、学習用入力データ41が生成される。学習用入力データ41は、上記投入前ごみ画像50と砂層温度54とで構成される。なお、学習用入力データ41は、投入前ごみ画像50および砂層温度54の一方のみで構成されても良い。さらに、学習用入力データ41は、投入前ごみ画像50および砂層温度54の少なくともいずれかに加え、上述の押し込み空気量47、ろ液噴霧量48、および砂層温度の変化量55のうちの少なくともいずれかが含まれても良い。また、投入前ごみ画像50に代えて上述の投入前ごみ情報49が用いられても良く、砂層温度54に代えて上述の炉内温度46が用いられても良い(ステップ#7)。
【0090】
最後に、学習用入力データ41がAI40に入力されて、学習済モデル28が生成される(ステップ#8)。
【0091】
次に、砂層温度の変化量57を予測する際には、
図9に示すように、燃焼炉2に投入される直前のごみDが給じんコンベヤ6上で撮影される(ステップ#11)。
【0092】
次に、撮影された撮影画像45が輝度変換される。輝度変換において、撮影画像45の各画素が輝度に変換された後、256段階の輝度に振り分けられる(ステップ#12)。
【0093】
そして、256段階の輝度に対して振り分けられた、撮影画像45の画素数が計測され、256段階の輝度に対応する撮影画像45の画素数の関係を示す輝度分布が生成される。この輝度分布が投入前ごみ画像62とされる(ステップ#13)。
【0094】
次に、砂層10の温度が計測される。具体的には、投入前ごみ画像62の生成に用いられた撮影画像45に撮影されたごみDが、燃焼炉2に投入される時刻における砂層10の温度が計測される。砂層10の温度は、砂層10において、3か所の温度が計測され、3つの温度の平均値が砂層温度63とされる(ステップ#14)。
【0095】
その後、予測用入力データ42が生成される。予測用入力データ42は、上記投入前ごみ画像62と砂層温度63とで構成される。なお、予測用入力データ42は、投入前ごみ画像62および砂層温度63の一方のみで構成されても良い。また、投入前ごみ画像62に代えて上述の投入前ごみ情報60が用いられても良く、砂層温度63に代えて上述の炉内温度61が用いられても良い(ステップ#15)。
【0096】
次に、生成された予測用入力データ42が学習済モデル28に入力される(ステップ#16)。これにより、予測結果29として、予測用入力データ42が取得されてから、所定時間後の砂層温度の変化量57が出力される。なお、予測用入力データ42が取得された時刻は、砂層温度63が計測された時刻、または、投入前ごみ画像62が撮影された時刻である。予測される予測結果29は炉内温度の変化量56であっても良い(ステップ#17)。
【0097】
〔検証結果〕
次に、
図1,
図7を参照しながら、
図10を用いて、砂層温度の変化量57の予測精度を検証する。
【0098】
図10において、実線は、実際に焼却システム1においてごみDを燃焼させた際の、砂層温度の変化量の時間変化を示す。また、破線は、本実施形態において予測された砂層温度の変化量57の時間変化を示す。
【0099】
図10から、本実施形態によって砂層温度の変化量57を予測すると、精度良く砂層温度の変化量57が予測されることが分かる。
【0100】
〔別実施形態〕
(1)予測装置24の機能の一部または全部は、ハードウェアに限らず、ソフトウェアで構成されても良い。ソフトウェアに係るプログラムは、記憶部35等に記憶され、制御部31等が内蔵するプロセッサにより実行される。
【0101】
(2)予測装置24の機能ブロックは上記構成に限らず、2以上の機能ブロックの一部または全部が統合されても良く、いずれかの機能ブロックがさらに細分化されても良い。また、一部の機能ブロックが予測装置24から独立して構成されても良い。例えば、学習装置27は、予測装置24から独立して設けられても良い。
【0102】
(3)学習用入力データ41および予測用入力データ42として、焼却システム1における他のプロセスデータが含まれても良い。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、ごみを焼却する様々な形態の焼却システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 焼却システム
2 燃焼炉
3 ボイラ
4 蒸気タービン発電機
6 給じんコンベヤ
24 予測装置(炉内温度予測装置)
27 学習装置(学習済モデル生成装置)
28 学習済モデル
34 予測部
38 学習用入力データ生成部
39 学習部
41 学習用入力データ
42 予測用入力データ
45 撮影画像
46 炉内温度
47 押し込み空気量
48 ろ液噴霧量
49 投入前ごみ情報
54 砂層温度
56 炉内温度の変化量
60 投入前ごみ情報
61 炉内温度
D ごみ