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  • 特許-超音波トランスデューサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
H04R17/00 330G
H04R17/00 330J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020205812
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092858
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】滝 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】丸山 俊樹
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-204387(JP,A)
【文献】特開2004-048241(JP,A)
【文献】特開2004-245603(JP,A)
【文献】特開2004-264221(JP,A)
【文献】特表2013-509121(JP,A)
【文献】特開2013-143587(JP,A)
【文献】特開2004-198283(JP,A)
【文献】国際公開第03/064979(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3219041(JP,U)
【文献】登録実用新案第3030404(JP,U)
【文献】実開平04-053389(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/667
G01S 7/521
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動体を備える超音波トランスデューサであって、
前記圧電振動体が収容される筒状のケースと、
前記ケースのケース端部の開口に埋設されて、該開口を塞ぐ音響整合層と
を備え、
前記ケースが、前記圧電振動体が収容される収容空間を画成する第1の側壁と、該第1の側壁から連続して設けられるとともに前記ケース端部を構成する第2の側壁とを有し、
前記第2の側壁の熱膨張係数が前記音響整合層の熱膨張係数より小さく、
前記ケースが、前記第1の側壁と前記第2の側壁とがつながる位置において、前記ケース端部を塞ぐ隔壁をさらに有し、
前記隔壁が前記音響整合層と前記圧電振動体とで挟まれており、
前記収容空間側において前記隔壁が前記第1の側壁につながる箇所に設けられ、前記隔壁から前記第1の側壁に向かって厚さが漸増する第1の逃げ部を備える、超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記第2の側壁の厚さが前記隔壁の厚さより厚い、請求項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記第2の側壁の厚さが前記第1の側壁の厚さ以下である、請求項またはに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記音響整合層側において前記隔壁が前記第の側壁につながる箇所に設けられ、前記隔壁から前記第の側壁に向かって厚さが漸増する第2の逃げ部を備える、請求項のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記音響整合層が、断面形状が矩形状を呈する本体部と、該本体部と隣り合うとともに断面形状が先端側に向かって漸次幅が狭まる台形状を呈する先端部とを有し、
前記第2の側壁には、前記音響整合層のうちの前記本体部のみが埋設されている、請求項1~のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記ケースの外周を部分的に覆うスリーブをさらに備え、該スリーブは、前記第1の側壁および前記第2の側壁のうちの前記1の側壁のみを覆う、請求項1~のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
前記第2の側壁の端部の前記音響整合層側に面取り部を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項8】
圧電振動体を備える超音波トランスデューサであって、
前記圧電振動体が収容される筒状のケースと、
前記ケースのケース端部の開口に埋設されて、該開口を塞ぐ音響整合層と
を備え、
前記ケースが、前記圧電振動体が収容される収容空間を画成する第1の側壁と、該第1の側壁から連続して設けられるとともに前記ケース端部を構成する第2の側壁とを有し、
前記第2の側壁の熱膨張係数が前記音響整合層の熱膨張係数より小さく、
前記ケースが、前記第1の側壁と前記第2の側壁とがつながる位置において、前記ケース端部を塞ぐ隔壁をさらに有し、
前記隔壁が前記音響整合層と前記圧電振動体とで挟まれており、
前記第2の側壁の厚さが前記第1の側壁の厚さ以下であり、
前記収容空間側において前記隔壁が前記第1の側壁につながる箇所に設けられ、前記隔壁から前記第1の側壁に向かって厚さが所定の曲率で漸増する第1の逃げ部と、
前記音響整合層側において前記隔壁が前記第2の側壁につながる箇所に設けられ、前記隔壁から前記第2の側壁に向かって厚さが所定の曲率で漸増する第2の逃げ部と
を備え、
前記第1の逃げ部の曲率半径が、前記第2の逃げ部の曲率半径より大きい、超音波トランスデューサ。
【請求項9】
前記第2の側壁の厚さが前記隔壁の厚さより厚い、請求項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項10】
前記音響整合層が、断面形状が矩形状を呈する本体部と、該本体部と隣り合うとともに断面形状が先端側に向かって漸次幅が狭まる台形状を呈する先端部とを有し、
前記第2の側壁には、前記音響整合層のうちの前記本体部のみが埋設されている、請求項8または9に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項11】
前記ケースの外周を部分的に覆うスリーブをさらに備え、該スリーブは、前記第1の側壁および前記第2の側壁のうちの前記1の側壁のみを覆う、請求項10のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項12】
前記第2の側壁の端部の前記音響整合層側に面取り部を有する、請求項11のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を用いて気体や液体を計測するための超音波トランスデューサが知られている。このような超音波トランスデューサは音響整合層が備えており、たとえば下記特許文献1には、圧電振動体の超音波が出力される側のケース端部に音響整合層が設けられた超音波トランスデューサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-48241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した音響整合層は、比較的大きな熱膨張係数を有することが多く、温度上昇に起因して膨張が生じやすい。音響整合層は、膨張して密度が低下すると、音響インピーダンスが変化し、その結果、超音波トランスデューサの特性が変化してしまう。
【0005】
本発明は、特性の安定化が図られた超音波トランスデューサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る超音波トランスデューサは、超音波を出力する圧電振動体を備える超音波トランスデューサであって、圧電振動体が収容される筒状のケースと、ケースのケース端部の開口に埋設されて、該開口を塞ぐ音響整合層とを備え、ケースが、圧電振動体が収容される収容空間を画成する第1の側壁と、該第1の側壁から連続して設けられるとともにケース端部を構成する第2の側壁とを有し、第2の側壁の熱膨張係数が音響整合層の熱膨張係数より小さい。
【0007】
上記超音波トランスデューサにおいては、圧電振動体の超音波が出力される側のケース端部を構成する第2の側壁の熱膨張係数が、ケース端部の開口に埋設された音響整合層の熱膨張係数より小さいため、温度上昇に起因する音響整合層の膨張が第2の側壁により抑制されている。そのため、膨張に伴う音響整合層の音響インピーダンスの変化が抑制され、それにより、超音波トランスデューサの特性が変化する事態が抑制される。
【0008】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、ケースが、第1の側壁と第2の側壁とがつながる位置において、ケース端部を塞ぐ隔壁をさらに有し、隔壁が音響整合層と圧電振動体とで挟まれている。音響整合層と圧電振動体とが直接接する場合、音響整合層が膨張すると圧電振動体に応力が加わり、圧電振動体の振動特性が変化してしまう。音響整合層と圧電振動体との間にケースの隔壁が介在する場合、音響整合層が膨張しても圧電振動体に応力が加わらないため、圧電振動体の振動特性が変化する事態が効果的に回避されている。
【0009】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、第2の側壁の厚さが隔壁の厚さより厚い。
【0010】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、第2の側壁の厚さが第1の側壁の厚さ以下である。
【0011】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、収容空間側において隔壁が第1の側壁につながる箇所に設けられ、隔壁から第1の側壁に向かって厚さが漸増する第1の逃げ部を備える。
【0012】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、音響整合層側において隔壁が第1の側壁につながる箇所に設けられ、隔壁から第1の側壁に向かって厚さが漸増する第2の逃げ部を備える。
【0013】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、収容空間側において隔壁が第1の側壁につながる箇所に設けられ、隔壁から第1の側壁に向かって厚さが所定の曲率で漸増する第1の逃げ部と、音響整合層側において隔壁が第2の側壁につながる箇所に設けられ、隔壁から第2の側壁に向かって厚さが所定の曲率で漸増する第2の逃げ部とを備え、第1の逃げ部の曲率半径が、第2の逃げ部の曲率半径より大きい。
【0014】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、音響整合層が、断面形状が矩形状を呈する本体部と、該本体部と隣り合うとともに断面形状が先端側に向かって漸次幅が狭まる台形状を呈する先端部とを有し、第2の側壁には、音響整合層のうちの本体部のみが埋設されている。
【0015】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、ケースの外周を部分的に覆うスリーブをさらに備え、該スリーブは、第1の側壁および第2の側壁のうちの1の側壁のみを覆う。
【0016】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、第2の側壁の端部の音響整合層側に面取り部を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、特性の安定化が図られた超音波トランスデューサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る超音波トランスデューサを示す概略断面図である。
図2図1に示したケースの要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
図1を参照して、実施形態に係る超音波トランスデューサ1の構成を説明する。
【0021】
超音波トランスデューサ1は、外部から入力された電気信号に応じて発振し、超音波信号を出力することができる。また、超音波トランスデューサ1は、外部から超音波信号を受信すると、その信号を電気信号として外部に送信することができる。超音波トランスデューサ1は、気体や液体を計測するために用いることができ、たとえばガススマートメータに採用され得る。
【0022】
超音波トランスデューサ1は、超音波を送受信できる構成を有し、具体的には、収容空間Sを画成するハウジング10と、ハウジング10の収容空間S内に収容された圧電振動子20(圧電振動体)と、圧電振動子20の超音波が出力される側のハウジング10の端部に設けられた音響整合層30とを備えた構成を有する。
【0023】
ハウジング10は、一方向に延びる円筒状外形を有するケース12を備えている。ケース12は、圧電振動子20の超音波が出力される側の端部12aと、それとは反対側の端部12bとを有する。ハウジング10は、ケース12の端部12bの外周を覆うように設けられた円筒状のスリーブ16をさらに備えている。本実施形態では、ハウジング10の収容空間Sはケース12とスリーブ16とにより画成されている。
【0024】
ケース12は、円筒状の側壁13と、側壁13の開口を塞ぐ隔壁14とを含んで構成されている。ケース12は、たとえば金属(一例として、アルミニウム)で構成されており、その熱膨張係数はおよそ23.6×10-6/Kである。
【0025】
側壁13は、図2に示すように、第1の側壁41と第2の側壁42とを含んで構成されている。
【0026】
第1の側壁41は、収容空間Sの一部を画成している。本実施形態において、第1の側壁41は側壁13の延在方向(図2の紙面上下方向)における全域にわたって均一の厚さT1を有する。
【0027】
第2の側壁42は、第1の側壁41から連続して設けられており、側壁13の延在方向において第1の側壁41と隣り合っている。第2の側壁42は、第1の側壁41に関し、圧電振動子20の超音波が出力される側(すなわち、ケース12の端部12a側)に位置しており、ケース12の端部12a(ケース端部)を構成している。本実施形態において、第2の側壁42は側壁13の延在方向における全域にわたって均一の厚さT2を有する。本実施形態では、第2の側壁42の厚さT2は、第1の側壁41の厚さT1より薄くなるように設計されている(T2<T1)。第2の側壁42の厚さT2は第1の側壁41の厚さT1以下であってもよく、すなわち、第2の側壁42の厚さT2と第1の側壁41の厚さT1とが同じであってもよい。
【0028】
第2の側壁42の端部には、全周にわたって、内側(すなわち、後述する音響整合層30側)に面取り部42aが設けられている。本実施形態において、第2の側壁42の面取り部42aはC面取りされている。
【0029】
隔壁14は、第1の側壁41と第2の側壁42とがつながる位置に設けられており、側壁13の延在方向に対して直交する方向に延在している。隔壁14は、円板状を有し、側壁13の開口を完全に塞いでいる。より具体的には、隔壁14は、ケース12の端部12a近傍において、ケース12の側壁13の開口を完全に塞いでいる。本実施形態において、隔壁14は全域にわたって均一の厚さT3を有する。本実施形態では、隔壁14の厚さT3は、第2の側壁42の厚さT2より薄くなるように設計されている(T3<T2)。
【0030】
隔壁14の上面14a側において隔壁14が第1の側壁41につながる箇所には、第1の逃げ部51が設けられている。第1の逃げ部51は、隔壁14と第1の側壁41との間の隅部であり、所定の曲率半径R1で湾曲している。そのため、第1の逃げ部51では、隔壁14から第1の側壁41に向かって厚さが漸増している。第1の逃げ部51により、隔壁14と第1の側壁41との間の隅部が直角である場合に比べて、隔壁14が振動したときの節の位置Pが側壁13から遠ざかる側にシフトする。第1の逃げ部51の曲率半径R1が大きいほど、隔壁14が振動したときの節の位置Pが側壁13から遠ざかる。
【0031】
隔壁14の下面14b側において隔壁14が第2の側壁42につながる箇所には、第2の逃げ部52が設けられている。第2の逃げ部52は、隔壁14と第2の側壁42との間の隅部であり、所定の曲率半径R2で湾曲している。そのため、第2の逃げ部52では、隔壁14から第2の側壁42に向かって厚さが漸増している。本実施形態では、第1の逃げ部51の曲率半径R1が、第2の逃げ部52の曲率半径R2より大きくなるように設計されている。
【0032】
音響整合層30は、ケース12の端部12aの開口に、開口を塞ぐように埋設されている。本実施形態では、音響整合層30は、隔壁14の下面14b側(すなわち、圧電振動子20の超音波が出力される側)において、一部が第2の側壁42によって画成された領域を埋めており、かつ、残部が端部12aの開口から突出している。
【0033】
音響整合層30は、本体部31と先端部32とを有する。本体部31は、第2の側壁42によって画成された領域を埋める部分である。第2の側壁42は、音響整合層30の本体部31の全長にわたって本体部31の側面を覆ってもよく、本体部31の一部の側面を覆ってもよい。第2の側壁42は、たとえば本体部31の50~75%の側面を覆ってもよい。本実施形態では、本体部31は円柱形状を有し、図1に示すように本体部31の断面形状は矩形状を呈する。先端部32は、本体部31から連続して設けられており本体部31の先端側(すなわち、圧電振動子20の超音波が出力される側)に位置している。本実施形態では、先端部32はC面取り部30aを有する円錐台形状を有し、図1に示すように先端部32の断面形状は先端側に向かって漸次幅が狭まる台形状を呈する。
【0034】
音響整合層30は、たとえばエポキシ樹脂とガラスビーズとを含む複合材料で構成されており、その熱膨張係数はおよそ39×10-6/Kである。音響整合層30は、エポキシ系樹脂等の接着材を用いて、ケース12と接着することができる。
【0035】
圧電振動子20は、隔壁14の上面14a上に配置されている。圧電振動子20は、たとえば板状の外形(本実施形態では円板状の外形)を有する。圧電振動子20は、図示しない一対の端子電極を有し、各端子は信号線5から延びる一対の配線(またはリード)21、22を介して信号線5と電気的に接続されている。圧電振動子20は、一層の圧電材料層を含む単層構造であってもよく、複数の圧電材料層と内部電極層とが交互に積層された多層構造であってもよい。圧電材料層は、たとえばPZT等の圧電セラミックス材料で構成することができる。圧電振動子20は、隔壁14の上面14aに直接接合されていてもよく、エポキシ系樹脂等の接着材を介して隔壁14の上面14aに接着されていてもよい。
【0036】
圧電振動子20は、信号線5から入力された信号に応じて振動する。圧電振動子20が振動した際、板厚方向に超音波周期の機械的振動が生じるともに、板厚方向および板厚方向に直交する方向に超音波振動が生じる。
【0037】
スリーブ16は、ケース12の端部12bに設けられており、図1に示すように、端部12bの外周を覆うとともに端部12bから上方に延びている。スリーブ16は、たとえばニトリルゴム(NBR)で構成することができる。スリーブ16は、ケース12の側壁13のうちの第1の側壁41の外周のみを覆っており、第2の側壁42までは達していない。ケース12とスリーブ16とにより画成された収容空間Sは、図示しない防振材で充たされている。防振材としては、たとえばウレタンを採用することができる。
【0038】
上述したとおり、超音波トランスデューサ1では、ケース12の端部12aを構成する第2の側壁42の熱膨張係数が、端部12aの開口に埋設された音響整合層40の熱膨張係数より小さくなっている。そのため、温度上昇に起因して音響整合層30が熱膨張した際、相対的に熱膨張が小さい第2の側壁42により、音響整合層30の熱膨張が抑制される。その結果、熱膨張に伴う音響整合層30の音響インピーダンスの変化が抑制され、それにより、超音波トランスデューサ1の特性の変化を抑制することができる。
【0039】
また、超音波トランスデューサ1では、隔壁14が音響整合層30と圧電振動子20とで挟まれた構成を有する。音響整合層30と圧電振動子20とが直接接する場合には、音響整合層30が熱膨張すると圧電振動子20に応力が加わり、圧電振動子20の振動特性が変化してしまう。超音波トランスデューサ1では、隔壁14が音響整合層30と圧電振動子20との間に介在しているため、音響整合層30が膨張しても圧電振動子20に応力が加わらず、圧電振動子20の振動特性の変化が効果的に回避されている。
【0040】
さらに、超音波トランスデューサ1では、第1の逃げ部51により、隔壁14と第1の側壁41との間の隅部が直角である場合に比べて、隔壁14が振動したときの節の位置Pが側壁13から遠ざかる側にシフトしている。それにより、隔壁14の振動が、側壁13(特に、第2の側壁42)に伝播しにくくなっており、残響の発生が低減される。
【0041】
また、超音波トランスデューサ1では、ケース12の第1の側壁41を覆うスリーブ16を備えており、スリーブ16により残響が減少される。
【0042】
さらに、超音波トランスデューサ1では、第2の側壁42が面取り部42aを有するため、ケース12とは別に準備した音響整合層30をケース12の端部12aに取りつける際、取り付け時の相対位置ズレを面取り部42aが許容し、取り付けの容易化が図られている。
【符号の説明】
【0043】
1…超音波トランスデューサ、10…ハウジング、12…ケース、13…側壁、14…隔壁、20…圧電振動子、30…音響整合層、31…本体部、32…先端部、41…第1の側壁、42…第2の側壁、51…第1の逃げ部、52…第2の逃げ部。

図1
図2