(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B62D 61/12 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
B62D61/12
(21)【出願番号】P 2020206226
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】平岡 実
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳一
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112048(JP,A)
【文献】特開2018-69880(JP,A)
【文献】特開2014-46759(JP,A)
【文献】特開2020-1443(JP,A)
【文献】特表平9-501630(JP,A)
【文献】特開2012-140029(JP,A)
【文献】特開2000-159002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 61/00,63/02,
B60S 9/04,
B62B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
前記車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の駆動輪と、
複数の前記駆動輪を各別に昇降自在に前記車両本体に支持する複数の屈折リンク機構と、
複数の前記屈折リンク機構の姿勢を各別に変更操作可能な複数の姿勢変更操作機構と、
牽引用の長尺体が接続される牽引部と、
前記牽引部の対地高さを変更するように前記姿勢変更操作機構の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記車両本体に対する前記牽引部の昇降を可能にする昇降機構が備えられている作業車。
【請求項2】
前記姿勢変更操作機構は、前記長尺体により牽引される牽引対象物が凹地に入り込んだ際に、前記屈折リンク機構を伸長させて前記車両本体を接地面から上昇させる請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記牽引部が、前記長尺体の巻き取り及び繰り出しを行うことが可能なウィンチ装置を備えている請求項1
又は2に記載の作業車。
【請求項4】
車両本体と、
前記車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の駆動輪と、
複数の前記駆動輪を各別に昇降自在に前記車両本体に支持する複数の屈折リンク機構と、
複数の前記屈折リンク機構の姿勢を各別に変更操作可能な複数の姿勢変更操作機構と、
牽引用の長尺体が接続される牽引部と、
前記牽引部の対地高さを変更するように前記姿勢変更操作機構の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記牽引部が、前記長尺体の巻き取り及び繰り出しを行うことが可能なウィンチ装置を備え、
前記長尺体の張力を検出可能な張力センサを備え、
前記制御装置は、前記張力センサの検出情報に基づいて、前記長尺体の張力が一定に維持されるように、前記駆動輪の駆動力と前記ウィンチ装置の駆動力とのいずれか一方又は双方を制御する作業車。
【請求項5】
車両本体と、
前記車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の駆動輪と、
複数の前記駆動輪を各別に昇降自在に前記車両本体に支持する複数の屈折リンク機構と、
複数の前記屈折リンク機構の姿勢を各別に変更操作可能な複数の姿勢変更操作機構と、
牽引用の長尺体が接続される牽引部と、
前記牽引部の対地高さを変更するように前記姿勢変更操作機構の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記牽引部が、前記長尺体の巻き取り及び繰り出しを行うことが可能なウィンチ装置を備え、
前記車両本体が旋回走行を行っているか否かを判断する旋回判断部を備え、
前記制御装置は、前記旋回判断部により前記車両本体が旋回走行を行っていると判断された場合に、前記長尺体を巻き取るように前記ウィンチ装置を制御する作業車。
【請求項6】
車両本体と、
前記車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の駆動輪と、
複数の前記駆動輪を各別に昇降自在に前記車両本体に支持する複数の屈折リンク機構と、
複数の前記屈折リンク機構の姿勢を各別に変更操作可能な複数の姿勢変更操作機構と、
牽引用の長尺体が接続される牽引部と、
前記車両本体に対する前記牽引部の昇降を可能にする昇降機構と、
前記牽引部の対地高さを変更するように前記昇降機構の動作を制御する制御装置と、を備える作業車。
【請求項7】
前記車両本体及び前記制御装置に対して遠隔操作を可能にする遠隔操作機構を備える請求項1から
6のいずれか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸の多い路面を走行するのに適した作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の作業車は、昇降可能な支持構造によって複数の駆動輪を個別に車両本体に対して昇降させることにより、不整地等のように凹凸の多い作業地を走行する場合であっても、車両本体が適正な姿勢を維持する状態で走行することができる構成を備える(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の作業車が、凹凸の多い作業地において荷車等を牽引すると、牽引される荷車等が凹凸に引っ掛かる等の問題が発生することがあり、容易に牽引作業を行うことができなかった。
【0005】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、凹凸の多い作業地においても、荷車等の牽引対象物を容易に牽引することができる作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業車は、車両本体と、前記車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の駆動輪と、複数の前記駆動輪を各別に昇降自在に前記車両本体に支持する複数の屈折リンク機構と、複数の前記屈折リンク機構の姿勢を各別に変更操作可能な複数の姿勢変更操作機構と、牽引用の長尺体が接続される牽引部と、前記牽引部の対地高さを変更するように前記姿勢変更操作機構の動作を制御する制御装置と、を備え、前記車両本体に対する前記牽引部の昇降を可能にする昇降機構が備えられている。
【0007】
この発明によれば、作業車が長尺体に接続された牽引対象物を牽引しているとき、牽引部の高さを変更することにより、牽引対象物を引っ張る方向を変えることができる。例えば、作業地にある凹凸を乗り越える際、凹凸の傾斜に沿った方向等、凹凸を乗り越えるために適切な方向に牽引対象物を牽引することができる。その結果、牽引対象物がスムーズに凹凸を乗り越えることができ、凹凸の多い作業地においても、牽引対象物を容易に牽引することが可能となる。
また、この発明によれば、姿勢変更操作機構のみで牽引部の対地高さを高くするよりも、さらに牽引部の対地高さを高くすることができる。その結果、昇降機構を備えていない場合と比べ、より急勾配な傾斜を有する凹凸であっても、凹凸を乗り越えるために適切な方向に牽引対象物を牽引することが可能となる。
また、本発明においては、前記姿勢変更操作機構は、前記長尺体により牽引される牽引対象物が凹地に入り込んだ際に、前記屈折リンク機構を伸長させて前記車両本体を接地面から上昇させると好適である。
【0008】
本発明においては、前記牽引部が、前記長尺体の巻き取り及び繰り出しを行うことが可能なウィンチ装置を備えていると好適である。
【0009】
この構成によれば、作業車が走行することなく、ウィンチ装置を利用して牽引対象物を牽引することや、ウィンチ装置で長尺体を巻き取ることにより、作業車は駆動輪の駆動力とウィンチ装置の駆動力を利用して傾斜等を登ることが可能となる。
【0010】
また、本発明の作業車は、車両本体と、前記車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の駆動輪と、複数の前記駆動輪を各別に昇降自在に前記車両本体に支持する複数の屈折リンク機構と、複数の前記屈折リンク機構の姿勢を各別に変更操作可能な複数の姿勢変更操作機構と、牽引用の長尺体が接続される牽引部と、前記牽引部の対地高さを変更するように前記姿勢変更操作機構の動作を制御する制御装置と、を備え、前記牽引部が、前記長尺体の巻き取り及び繰り出しを行うことが可能なウィンチ装置を備え、前記長尺体の張力を検出可能な張力センサを備え、前記制御装置は、前記張力センサの検出情報に基づいて、前記長尺体の張力が一定に維持されるように、前記駆動輪の駆動力と前記ウィンチ装置の駆動力とのいずれか一方又は双方を制御する。
【0011】
この発明によれば、長尺体に高い負荷がかかることを防ぐことができ、長尺体が破断してしまうことを防ぐことが可能となる。
【0012】
また、本発明の作業車は、車両本体と、前記車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の駆動輪と、複数の前記駆動輪を各別に昇降自在に前記車両本体に支持する複数の屈折リンク機構と、複数の前記屈折リンク機構の姿勢を各別に変更操作可能な複数の姿勢変更操作機構と、牽引用の長尺体が接続される牽引部と、前記牽引部の対地高さを変更するように前記姿勢変更操作機構の動作を制御する制御装置と、を備え、前記牽引部が、前記長尺体の巻き取り及び繰り出しを行うことが可能なウィンチ装置を備え、前記車両本体が旋回走行を行っているか否かを判断する旋回判断部を備え、前記制御装置は、前記旋回判断部により前記車両本体が旋回走行を行っていると判断された場合に、前記長尺体を巻き取るように前記ウィンチ装置を制御する。
【0013】
この発明によれば、作業車が旋回走行するときに長尺体を巻き取るので、牽引対象物と作業車との距離が近くなり、牽引対象物の旋回走行経路と作業車の旋回走行経路とが近接する。ワイヤが長く引き出された状態のまま障害物の近くを迂回するように旋回すると、長尺体や牽引対象物が障害物に衝突してしまうことがある。そこで、当該構成により牽引対象物の旋回走行経路と作業車の旋回走行経路とが近接することで、このような問題の発生を防ぐことが可能となる。
【0014】
【0015】
【0016】
本発明の作業車は、車両本体と、前記車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の駆動輪と、複数の前記駆動輪を各別に昇降自在に前記車両本体に支持する複数の屈折リンク機構と、複数の前記屈折リンク機構の姿勢を各別に変更操作可能な複数の姿勢変更操作機構と、牽引用の長尺体が接続される牽引部と、前記車両本体に対する前記牽引部の昇降を可能にする昇降機構と、記牽引部の対地高さを変更するように前記昇降機構の動作を制御する制御装置と、を備える。
【0017】
この構成によれば、作業車が長尺体に接続された牽引対象物を牽引しているとき、牽引部の高さを変更することにより、牽引対象物を引っ張る方向を変えることができる。その結果、牽引対象物がスムーズに凹凸を乗り越えることができ、凹凸の多い作業地においても、牽引対象物を容易に牽引することが可能となる。
【0018】
本発明においては、前記車両本体及び前記制御装置に対して遠隔操作を可能にする遠隔操作機構を備えると好適である。
【0019】
この構成によれば、搭乗することなく作業車を操作することができ、安全に作業車の操作を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図5】旋回機構による左旋回状態を示す平面図である。
【
図6】旋回機構による右旋回状態を示す平面図である。
【
図8】作業車が走行することによる牽引作業を示す図である。
【
図9】ウィンチ装置のワイヤを巻き取ることによる牽引作業を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る作業車の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1及び
図2に本発明に係る作業車が示されている。この実施形態で、車体の前後方向を定義するときは、車体進行方向に沿って定義し、車体の左右方向を定義するときは、機体進行方向視で見た状態で左右を定義する。すなわち、
図1に符号(A)で示す方向が車体前後方向であり、
図2に符号(B)で示す方向が車体左右方向である。
【0023】
〔全体構成について〕
作業車には、車両全体を支持する平面視で略矩形状の車両本体1と、複数(具体的には4個)の駆動輪2と、複数の駆動輪2のそれぞれに対応して設けられた複数の補助輪3と、複数の駆動輪2を個別に位置変更可能に車両本体1に支持する車体支持部としての屈折リンク機構4と、屈折リンク機構4を変更操作可能な油圧駆動式の姿勢変更操作機構5と、複数の駆動輪2を個別に駆動する複数の油圧モータ6とが備えられている。屈折リンク機構4、駆動輪2及び補助輪3のそれぞれが、車両本体1の前後両側にそれぞれ左右一対ずつ備えられている。
【0024】
車両本体1には、全体を支持する矩形枠状の車体フレーム7と、姿勢変更操作機構5に向けて作動油を送り出す油圧供給源8と、油圧供給源8から姿勢変更操作機構5に供給される作動油を制御する弁機構9とが備えられている。油圧供給源8は、詳述はしないが、エンジンと、エンジンによって駆動される油圧ポンプとを備えて、それらが一体的に連結されている。油圧供給源8は、車体フレーム7の下側に連結された支持台10により載置支持され、車両本体1の下腹部に位置する状態で備えられている。油圧供給源8は、エンジンにて駆動される油圧ポンプにより、弁機構9を介して姿勢変更操作機構5に作動油を送り出し供給する。なお、油圧ポンプの駆動手段はエンジンに限らず、例えば電動モータであってもよい。
【0025】
弁機構9は、車体フレーム7の上側に載置支持される状態で備えられ、姿勢変更操作機構5に対する作動油の給排あるいは流量の調節等を行う複数の油圧制御弁11を備えている。弁機構9の上方は収納ケース12によって覆われている。収納ケース12の上側には、弁機構9の作動を制御する制御装置13が備えられている。制御装置13は、例えば、マイクロコンピュータ等を備えており、制御プログラムに従って種々の制御を実行可能である。
【0026】
車体フレーム7の上側には、荷車等を牽引可能な牽引部41が設けられている。本実施形態では、牽引部41は、車両本体1の前後側部分のいずれか一方に備えられている。牽引部41には、牽引用のワイヤ40(本発明の「長尺体」に相当する)の巻き取り及び繰り出しを行うことが可能なウィンチ装置42が備えられている。
【0027】
〔支持構造について〕
次に、駆動輪2を車両本体1に支持するための支持構造について説明する。
複数(具体的には4つ)の駆動輪2は、屈折リンク機構4を介して車両本体1に対して個別に昇降可能に支持されている。屈折リンク機構4は、旋回機構16を介して縦軸芯Y周りで回動可能に車体フレーム7に支持されている。
【0028】
旋回機構16には、車体フレーム7に連結されるとともに、屈折リンク機構4を揺動可能に支持する車体側支持部17(
図3及び
図4参照)と、屈折リンク機構4を旋回操作させる旋回用油圧シリンダ(以下、旋回シリンダと称する)18とが備えられている。
【0029】
図3及び
図4に示すように、車体側支持部17は、車体フレーム7(
図2参照)における横側箇所に備えられた角筒状の前後向きフレーム体19(
図2参照)に対して、横側外方から挟み込む状態で嵌め合い係合するとともに、取外し可能にボルト連結される連結部材20と、連結部材20の車体前後方向外方側箇所に位置する外方側枢支ブラケット21と、連結部材20の車体前後方向の内方側箇所に位置する内方側枢支ブラケット22と、外方側枢支ブラケット21に支持される縦向きの回動支軸23とを備え、回動支軸23の縦軸芯Y周りで回動可能に屈折リンク機構4を支持している。
【0030】
屈折リンク機構4には、上下方向の位置が固定された状態で且つ縦軸芯Y周りで回動可能に車体側支持部17に支持される基端部24と、一端部が基端部24の下部に横軸芯X1周りで回動可能に支持された第一リンク25と、一端部が第一リンク25の他端部に横軸芯X2周りで回動可能に支持され且つ他端部に駆動輪2が支持された第二リンク26とが備えられている。
【0031】
基端部24は、平面視で矩形枠状に設けられ、車体横幅方向内方側に偏倚した箇所において、回動支軸23を介して縦軸芯Y周りで回動可能に、車体側支持部17の外方側枢支ブラケット21に支持されている。旋回シリンダ18は、一端部が、内方側枢支ブラケット22に回動可能に連結され、他端部が、基端部24における回動支軸23に対して横方向に位置ずれした箇所に回動可能に連結されている。
【0032】
基端部24の左右両側部に亘って第一リンク25の一端側に備えられた支持軸27が回動可能に架設支持され、第一リンク25は基端部24の下部に対して支持軸27の軸芯周りで回動可能に連結されている。
【0033】
図4に示すように、第一リンク25は、基端側アーム部25bと他端側アーム部25aとを有している。第一リンク25の一端側箇所には、斜め上外方に向けて延びる基端側アーム部25bが一体的に形成されている。第一リンク25の他端側箇所には、斜め上外方に向けて延びる他端側アーム部25aが一体的に形成されている。
【0034】
図3に示すように、第二リンク26は、左右一対の帯板状の板体26a,26bを備えて平面視で二股状に形成されている。第二リンク26の第一リンク25に対する連結箇所は一対の板体26a,26bが間隔をあけている。一対の板体26a,26bで挟まれた領域に、第一リンク25と連結するための連結支軸28が回動可能に支持されている。第二リンク26の第一リンク25に対する連結箇所とは反対側の揺動側端部には駆動輪2が支持されている。
図4に示すように、第二リンク26の揺動側端部は車両本体1から離れる方向に略L字状に延びるL字状延設部26Aが形成され、L字状延設部26Aの延設側端部に駆動輪2が支持されている。
【0035】
図2に示すように、駆動輪2は、屈折リンク機構4に対して左右方向の車体外方側に位置する状態で支持されている。具体的には、第二リンク26の揺動側端部において、左右方向の車体外方側に位置する状態で支持されている。油圧モータ6は、第二リンク26の揺動側端部において、左右方向の車体内方側(駆動輪2とは反対側)に位置する状態で支持されている。
【0036】
複数の屈折リンク機構4のそれぞれに対応して、屈折リンク機構4の姿勢を個別に変更可能な姿勢変更操作機構5が備えられている。
図3及び
図4に示すように、姿勢変更操作機構5には、車両本体1に対する第一リンク25の揺動姿勢を変更可能な第一油圧シリンダ29と、第一リンク25に対する第二リンク26の揺動姿勢を変更可能な第二油圧シリンダ30とが備えられている。第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30は、それぞれ、第一リンク25の近傍に集約して配置されている。
【0037】
第一リンク25、第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30が、平面視において、第二リンク26の一対の板体26a,26bの間に位置する状態で配備されている。第一油圧シリンダ29は、第一リンク25に対して車体前後方向内方側に位置して、第一リンク25の長手方向に沿うように設けられている。第一油圧シリンダ29の一端部が円弧状の第一連動部材31を介して基端部24の下部に連動連結されている。第一油圧シリンダ29の一端部は、別の第二連動部材32を介して第一リンク25の基端側箇所に連動連結されている。第一連動部材31及び第二連動部材32は、両側端部がそれぞれ、相対回動可能に枢支連結されている。第一油圧シリンダ29の他端部は、第一リンク25に一体的に形成された他端側アーム部25aに連動連結されている。
【0038】
第二油圧シリンダ30は、第一油圧シリンダ29とは反対側、すなわち、第一リンク25に対して車体前後方向外方側に位置して、第一リンク25の長手方向に略沿うように設けられている。第二油圧シリンダ30の一端部が第一リンク25の基端側に一体的に形成された基端側アーム部25bに連動連結されている。第二油圧シリンダ30の他端部は、第三連動部材34を介して第二リンク26の基端側箇所に一体的に形成されたアーム部35に連動連結されている。第二油圧シリンダ30の他端部は、別の第四連動部材36を介して第一リンク25の揺動端側箇所にも連動連結されている。第三連動部材34及び第四連動部材36は、両側端部がそれぞれ、相対回動可能に枢支連結されている。
【0039】
第二油圧シリンダ30の作動を停止した状態で第一油圧シリンダ29を伸縮操作すると、第一リンク25、第二リンク26及び駆動輪2のそれぞれが、相対的な姿勢を一定に維持したまま一体的に、基端部24に対する枢支連結箇所の横軸芯X1周りで揺動する。第一油圧シリンダ29の作動を停止した状態で第二油圧シリンダ30を伸縮操作すると、第一リンク25の姿勢が一定に維持されたまま、第二リンク26及び駆動輪2が、一体的に、第一リンク25と第二リンク26との連結箇所の横軸芯X2周りで揺動する。
【0040】
複数の屈折リンク機構4それぞれの中間屈折部に自由回転可能に補助輪3が支持されている。補助輪3は駆動輪2と略同じ外径の車輪にて構成されている。第一リンク25と第二リンク26とを枢支連結する連結支軸28が、第二リンク26よりも車体横幅方向外方側に突出するように延長形成されている。連結支軸28の延長突出箇所に補助輪3が回動可能に支持されている。
【0041】
図5及び
図6に示すように、屈折リンク機構4、駆動輪2、補助輪3、及び、姿勢変更操作機構5のそれぞれが、一体的に、回動支軸23の縦軸芯Y周りで回動可能に外方側枢支ブラケット21に支持されている。そして、旋回シリンダ18を伸縮させることにより、それらが一体的に回動操作される。駆動輪2が前後方向に向く直進状態から左旋回方向及び右旋回方向にそれぞれ、約45度ずつ旋回操作させることができる。
【0042】
油圧供給源8から弁機構9を介して複数の屈折リンク機構4それぞれの第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30に作動油が供給される。弁機構9では油圧制御弁11により作動油の給排が行われて、第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30を伸縮操作させることができる。油圧制御弁11は制御装置13によって制御される。
【0043】
また、油圧モータ6に対応する油圧制御弁11により作動油の流量調整が行われることで、油圧モータ6すなわち駆動輪2の回転速度を変更することができる。油圧制御弁11は、制御装置13に入力される制御情報あるいは予め設定記憶されている制御情報等に基づいて制御装置13によって制御される。
【0044】
図1及び
図7に示すように、4つの第一油圧シリンダ29及び4つの第二油圧シリンダ30のそれぞれについて、伸縮操作量を検出可能なストロークセンサS1が備えられている。各油圧シリンダ29,30の伸縮操作量は、操作対象である第一リンク25及び第二リンク26の揺動位置に対応する検出値であり、各ストロークセンサS1の検出結果は制御装置13に入力される。ストロークセンサS1の検出結果に基づいて、車両本体1の姿勢が目標の姿勢となるよう、それぞれの第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30への作動油の供給が制御される。また、4つの旋回シリンダ18のそれぞれについて、伸縮操作量を検出可能なストロークセンサS2が備えられている。各ストロークセンサS2の検出結果は制御装置13に入力される。
【0045】
また、駆動輪2には、油圧モータ6により駆動される駆動輪2の回転速度を検出する回転センサS3が備えられている。回転センサS3にて検出された駆動輪2の回転速度に基づいて、駆動輪2の回転速度が目標の値となるように、油圧モータ6への作動油の供給が制御される。
【0046】
なお、図示はしないが、複数の駆動輪2には、駆動輪2に個別に制動力を作用させる制動機構14が備えられている。駆動輪2を制動することによって、作業車が走行停止しているときに、外力により作業車が意図に反して移動してしまうことを防ぐことができる。
【0047】
この作業車は、
図1に示すように、4個の駆動輪2が全て接地し且つ4個の補助輪3が全て地面から浮上する4輪走行状態が通常の走行形態である。なお、詳述はしないが、走行形態としては、この形態以外に、屈折リンク機構4を姿勢変更することにより、種々の走行形態を採ることができる。制御装置13は、手動操作にて入力される制御情報あるいは予め設定されて記憶されている制御情報等に基づいて、そのときの作業状況に応じて、車両本体1の姿勢を適切な状態にするように制御を実行する。
【0048】
図示はしないが、作業車が走行するときには、全ての駆動輪2と全ての補助輪3とをそれぞれ、接地させた状態で回転駆動することで、全ての駆動輪2及び全ての補助輪3による駆動力によって旋回走行を円滑に行うことができる。
【0049】
作業車が凹凸の多い不整地を走行するときは、4個の第一油圧シリンダ29については、各油圧シリンダ29に備えられているストロークセンサS1にて検出される伸縮操作量が目標とする姿勢に対応する検出値になるように、各油圧シリンダ29を操作させるように油圧制御弁11を切り換える位置制御を実行する。
【0050】
また、例えば、4つの屈折リンク機構4を姿勢変更させて、車両本体1を上昇及び下降させることで、被牽引対象物の大きさに合わせてウィンチ装置42の高さを調節することができる。
【0051】
〔ウィンチ装置について〕
図1及び
図2に示すように、ウィンチ装置42は、ワイヤ40を巻き付けるウィンチドラム42aと、ウィンチドラム42aに連動連結された電動モータ42bと、電動モータ42b及びワイヤ40にかかる負荷張力を検出する負荷張力センサS4(本発明の「張力センサ」に相当する)と、ワイヤ40の巻き取り及び繰り出しの際に、ワイヤ40を案内するワイヤ案内機構42cと、を備えている。
【0052】
ウィンチドラム42aは、その回転軸が車体横幅方向に沿うように、左右一対の支持部材43を介して車両本体1に支持されている。電動モータ42bは、車両本体1に装備されたバッテリー(図示せず)からの電力により駆動する。ウィンチ装置42は、電動モータ42bが正回転及び逆回転することにより、ワイヤ40の巻き取り及び繰り出しができるように構成されている。電動モータ42bは、制御装置13によって制御される。なお、本実施形態においては、ウィンチ装置42は、バッテリからの動力の供給が停止すると、ワイヤ40が巻き取り及び繰り出しされないように保持固定されるようになっている。
【0053】
詳述はしないが、ワイヤ案内機構42cは、電動モータ42bに連動連結されている。ワイヤ案内機構42cは、電動モータ42bの駆動力により、ウィンチドラム42aの幅方向両端部間をウィンチドラム42aの軸芯方向に沿う方向に往復移動するように構成されている。これにより、ワイヤ40の巻き取り作業時には、ウィンチドラム42aの幅方向において、ワイヤ40がウィンチドラム42aに均等に巻き付けることができる。また、ワイヤ40の繰り出し作業時には、ウィンチドラム42aに巻き付けられたワイヤ40を無理なく繰り出すことができる。
【0054】
負荷張力センサS4は、電動モータ42bに係る負荷やワイヤ40に係る張力、及び、それらの変動を検出する。本実施形態では、負荷張力センサS4がワイヤ40の張力の変動を検出すると、制御装置13は、負荷張力センサS4からの検出情報に基づいて、ワイヤ40の張力が一定に維持されるように駆動輪2の駆動力及びウィンチ装置42の駆動力を制御する。なお、ワイヤ40の張力が規定値以上になれば、駆動輪2及びウィンチ装置42を緊急停止するように構成してもよい。この構成によれば、荷車Tが凹凸に引っ掛かったとき、長尺体の張力が一定に保つように、駆動輪2やウィンチ装置42の駆動力を下げる制御が行われる。その結果、強引な牽引作業が行われることなくなるため、作業車は台車を安定して牽引することができる。さらに、台車を牽引しながら急傾斜を走行しているときでも、長尺体の張力が一定に保たれるため、長尺体に高い負荷がかかることを防ぐことができ、長尺体が破断してしまうことを防ぐことが可能となる。
【0055】
また、作業車が走行することによる牽引作業を行う場合に、作業車が走行途中で旋回するときは、ワイヤ40を巻き取る構成としてもよい。このとき、
図7に示すように、制御装置13は、車両本体1が旋回走行を行っているか否かを判断する旋回判断部13aを有する。旋回判断部13aは、ストロークセンサS2及び回転センサS3により、駆動輪2が左旋回方向又は右旋回方向に旋回操作され、かつ、駆動輪2が走行状態であると検出されたとき、車両本体1が旋回走行を行っていると判断する。車両本体1が旋回走行を行っていると判断した場合、制御装置13は、ウィンチ装置42に対して、ワイヤ40の巻き取り作業を実行するよう制御する。
【0056】
例えば、樹木等の障害物を迂回するために作業車が旋回する場合、作業車は荷車Tに先行して旋回することとなる。ワイヤ40が長く引き出された状態のまま、作業車が障害物の近くを迂回するように旋回すると、作業車の旋回走行に伴い荷車Tやワイヤ40が障害物に衝突してしまうことがある。そこで、走行途中で旋回走行するときにワイヤ40を巻き取ることで、旋回走行時は荷車Tと作業車との距離が近くなる。その結果、荷車Tの旋回走行経路と作業車の旋回走行経路とが近接し、荷車Tやワイヤ40が障害物に衝突してしまうことを回避することができる。
【0057】
〔牽引作業について〕
次に、作業車が走行することによる牽引作業の流れの一例を説明する。ここでは、
図8に示すような傾斜を有する作業地での牽引作業を例に説明をするが、傾斜を有しない作業地での牽引作業であってもよい。また、ここでは、荷車Tを牽引する作業を例に説明をするが、人を牽引し、当該人の登坂動作を補助する作業であってもよい。
(1)開始地点P1において、ウィンチ装置42を動作させ、一定の長さになるまでワイヤ40を引き出す。その後、ウィンチ装置42は、バッテリからの動力の供給が停止され、ワイヤ40が保持固定される。
(2)ワイヤ40の端部を荷車Tに接続する。
(3)作業車の走行を開始することにより、荷車Tの牽引が開始される。
(4)荷車Tが目的地P2に到着すると、作業車の走行を終了する。
(5)ワイヤ40を荷車Tから接続解除し、牽引作業を終了する。
【0058】
次に、ウィンチ装置42のワイヤ40を巻き取ることによる牽引作業の流れの一例を説明する。ここでは、
図9に示すような傾斜を有する作業地での牽引作業を例に説明をするが、傾斜を有しない作業地での牽引作業であってもよい。また、ここでは、荷車Tを牽引する作業を例に説明をするが、人を牽引し、当該人の登坂動作を補助する作業であってもよい。
(1)開始地点P1から作業車を走行させ、荷車Tの牽引する目的地P2まで作業車を移動させる。
(2)作業車が目的地P2に到着すれば、走行を停止し、制動機構14により駆動輪2を制動させる。
(3)ウィンチ装置42を動作させ、ウィンチ装置42から荷車Tまでの長さ分のワイヤ40を引き出す。
(4)ワイヤ40の端部を荷車Tに接続する。
(5)ウィンチ装置42の巻き取り動作を開始することにより、荷車Tの牽引が開始される。そして、荷車Tが目的地P2に到着すると、ウィンチ装置42の動作を停止する。
(6)ワイヤ40を荷車Tから接続解除し、牽引作業を終了する。
【0059】
上述の牽引作業において、ウィンチ装置42による巻き取り動作を開始する際、制動機構14により駆動輪2を制動させるだけでなく、車体前後方向一方側の2組又は車体前後方向両側のそれぞれ2組について、左右両側の駆動輪2が、互いに近づくように又は互いに離れるように旋回作動させることで、牽引作業中に作業車が移動してしまうことをより好適に防止することができる。つまり、左右両側の駆動輪2が非平行状態となることにより、駆動輪2による走行が阻害され、作業車の動きを制限することができる。このとき、さらに補助輪3を接地させることにより、地面との摩擦が増し、より好適に作業車の移動を制限することができる。
【0060】
ここで、
図8に示すように、荷車Tが作業地の凹凸地P3に入り込んだ際には、4つの屈折リンク機構4を大きく伸長させて車両本体1を接地面から大きく上昇させる。これにより、ウィンチ装置42の対地高さが高くなり、凹凸地P3の傾斜に沿った方向に荷車Tを引っ張ることができる。その結果、作業車は、凹凸地P3の凹凸の引っ掛かりに伴う抵抗力に抗して牽引する必要がなくなり、ウィンチ装置42の高さが変更されない場合と比べ、大きな駆動力を用いて荷車Tを牽引する必要がなくなる。また、円滑に荷車Tを移動させることができるため、荷車Tの転倒を防ぐことができる。なお、この対処方法は、ウィンチ装置42のワイヤ40巻き取ることによる牽引作業だけでなく、作業車が走行することによる牽引作業においても、適用することができる。
また、例えば、山の斜面等の傾斜地で牽引作業により荷車T等を引き上げる場合などに、制御装置13は、車両本体1の重心位置が牽引力に対する安定性がより高い位置になるように各屈折リンク機構4の伸長状態を制御してもよい。例えば、制御装置13は、車両本体1の重心位置が斜面上側になるように各屈折リンク機構4の伸長状態を制御してもよい。
【0061】
なお、牽引作業としては、荷物等を牽引する他に、例えば、作業車が急傾斜を有する作業地を登坂走行するときに、ウィンチ装置42を用いて作業車自身を牽引してもよい。これにより、作業車は急傾斜を登坂走行することが可能となる。ここでは、当該作業の流れの一例を説明する。
(1)ウィンチ装置42を動作させ、急傾斜上の目的地付近にあるワイヤ40の接続先に接続するのに必要な長さになるまでワイヤ40を引き出す。
(2)ワイヤ40の端部を目的地付近にある杭等に接続しておく。このとき、接続方法としては、ワイヤ40を杭等に括りつけたり、フック等を杭等に引っ掛けたりすればよく、接続方法は特に限定しない。
(3)作業車の走行を開始すると同時に、ウィンチ装置42でワイヤ40の巻き取り動作を行う。
(4)ワイヤ40を杭等から接続解除し、ウィンチ装置42の巻き取り動作による登坂走行を終了する。
【0062】
ここで、登坂走行途中に段差がある場合、又は、作業車が作業地の凹凸に入り込んだ場合には、例えば、3組の駆動輪2と補助輪3とが全て接地して、車両本体1を地面に安定的に接地支持している状態で、残り1組の駆動輪2と補助輪3を支持する屈折リンク機構4を大きく伸長させて、駆動輪2を段差等の上部面に乗せた後、各組の屈折リンク機構4を伸縮させながら、1組ずつ駆動輪2を段差の上部面に乗り移りながら移動することで、段差等を乗り越えることが可能となる。
【0063】
〔別実施形態〕
以下、上記実施形態に変更を加えた別実施形態を例示する。以下の別実施形態は、矛盾が生じない限り、複数組み合わせて上記実施形態に適用してよい。なお、本発明の範囲は、各実施形態の内容に限定されるものではない。
【0064】
(1)上記実施形態では、牽引部41にウィンチ装置42が設けられている構成を例に説明したが、ウィンチ装置42が設けられていなくてもよい。例えば、支持部材43に棒状体が設けられ、ワイヤ40を棒状体に括りつけたり、ワイヤ40の端部に取り付けられたフック等を棒状体に引っ掛けたりすることにより、ワイヤ40を牽引部41に接続する構成としてもよい。
【0065】
(2)上記実施形態では、4つの屈折リンク機構4を伸長させることで、車両本体1の対地高さを上昇させてウィンチ装置42(牽引部41)の対地高さを変更する構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、車両本体1に対して、ウィンチ装置42(牽引部41)を昇降可能にする昇降機構が備えられ、制御装置13が、昇降機構を制御することによって、ウィンチ装置42(牽引部41)の対地高さを変更する構成としてもよい。また、制御装置13が、屈折リンク機構4と昇降機構との双方を制御することによって、ウィンチ装置42(牽引部41)の対地高さを変更する構成としてもよい。
【0066】
(3)上記実施形態では、制御装置13は、手動操作にて入力される制御情報あるいは予め設定されて記憶されている制御情報等に基づいて制御される構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、作業車が遠隔操作を可能にする遠隔操作機構を備え、遠隔操作にて制御装置13に制御情報を入力可能に構成され、車両本体1の操作可能な構成としてもよい。
【0067】
(4)上記実施形態では、ウィンチ装置42に、ワイヤ案内機構42cが備えられている構成を例に説明したが、ウィンチ装置42は、ワイヤ案内機構42cを備えない構成としてもよい。
【0068】
(5)上記実施形態では、牽引部41は、車両本体1の前後側部分のいずれか一方に備えられている構成を例に説明したが、牽引部41は、車両本体1の前後側部分の双方に備えられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、凹凸の多い路面を走行するのに適した作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 :車両本体
2 :駆動輪
4 :屈折リンク機構
5 :姿勢変更操作機構
13 :制御装置
13a :旋回判断部
41 :牽引部
42 :ウィンチ装置