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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20240719BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240719BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 33/10 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240719BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/24
A61K8/73
A61K8/81
A61Q11/00
A61K8/42
A61K33/10
A61K33/00
A61P1/02
A61K9/06
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020219407
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022104291
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大輝
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/131575(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/003989(WO,A1)
【文献】特開2004-284956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/0
A61K47/00
A61K33/00
A61P1/00
A23L33/00
Mintel GNPD
CAPLUS/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)無機粉体と、
(B)水溶性高分子と、
(C)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキシアミドとを含有し、
(B)成分の含有量が0.5~1.5質量%であり、
水溶性高分子が以下の(B1)からなる群から選ばれる1種以上及び(B2)からなる群から選ばれる1種以上であり:
(B1)カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム及びカルボキシメチルセルロースナトリウム
(B2)ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー及びアクリル酸-無水マレイン酸共重合体、
(B1)成分の(B2)成分に対する含有量比(B1)/(B2)が、1.5~9である、口腔用組成物。
【請求項2】
無機粉体が無機カルシウム塩である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
前記含有量比(B1)/(B2)が、5以上である、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
(B1)成分の含有量が、0.1~1.4質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
(A)成分の含有量が、10~60質量%である請求項1~4のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
(C)成分の含有量が、0.00001~0.01質量%である請求項1~5のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
歯磨剤組成物である、請求項1~6のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯磨剤等の口腔用組成物には、歯面等の口腔内表面に付着した汚れを清掃するという基本機能を付与するために、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、研磨性シリカ等の研磨剤を配合している。研磨剤の配合量は、通常、研磨剤として配合される個々の成分の清掃力に応じて設定される。例えば、研磨性シリカは、比較的に清掃力が高いので、歯磨剤組成物への一般的な配合量は10~25質量%であるのに対し、リン酸カルシウムや炭酸カルシウムは、比較的清掃力が小さいことから、30~60質量%であることが多い。一般的な市販の歯磨剤では、何れの研磨剤を使用する場合も清掃力は一定の領域に調整されており大きな差異はない。一方、清掃力に差異がない故に、研磨剤の配合量は歯磨剤によって2~3倍の差異が生じ、歯磨きブラッシングをした時の歯面や口腔内、舌先に対する使用感への違いに繋がる。
【0003】
また、歯磨剤等の口腔用組成物には、歯ブラシに採取し易くするための保形性を維持すること等の目的で、粘結剤として水溶性高分子が配合されることがある。水溶性高分子は、口腔用組成物のレオロジー特性に関与し、歯磨剤の場合のブラッシングにおける使用感にも影響を与えている。
【0004】
特許文献1には、炭酸カルシウム、シリカ顆粒及び粘度の異なる二種のカルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する歯磨剤組成物は、高い清掃力が確保され刷掃実感にも優れ、かつ異物感等がなく使用感が良好で、成形性及び製剤外観にも優れていることが開示されている。特許文献2には、重質炭酸カルシウム、水不溶性無機顆粒及び二種の水溶性高分子物質を含有する歯磨組成物は、適正な研磨力を有し、かつ顆粒の刷掃実感と優れた歯磨分散性の相乗効果による優れた使用感を有することが開示されている。特許文献3には、所定比率の架橋型ポリアクリル酸又はその塩とカルボキシメチルセルロース塩の粘結剤の組み合わせ、及び、炭酸カルシウム等の研磨剤を配合してなる、所定量の水分を含む練歯磨組成物が、歯ブラシ上での保型性及び口腔内分散性に優れていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2012/090571号
【文献】国際公開第2006/003989号
【文献】特許第3959639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、口腔用組成物において無機粉体である研磨剤と水溶性高分子を使用した場合、これらの配合量に起因して無機粉体の口腔内での分散性が低下し、口腔粘膜および舌先で粉体由来のもったり感が感じられ、使用感が低下するといった課題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、無機粉体及び水溶性高分子を含む口腔用組成物において、保形性及び刷掃性に加え、粉体由来のもったり感が改善され良好な使用感も兼ね備えた口腔用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、以下の〔1〕~〔7〕を提供する。
〔1〕(A)無機粉体と、(B)水溶性高分子と、(C)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキシアミドとを含有し、(B)成分の含有量が0.5~1.5質量%である、口腔用組成物。
〔2〕無機粉体が無機カルシウム塩である、〔1〕に記載の口腔用組成物。
〔3〕水溶性高分子がカラギーナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸-無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる1種以上である、〔1〕又は〔2]に記載の口腔用組成物。
〔4〕水溶性高分子が(B1)カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム及びカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群から選ばれる1種以上及び(B2)ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー及びアクリル酸-無水マレイン酸共重合体からなる群から選ばれる1種以上である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
〔5〕(A)成分の含有量が、10~60質量%である〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
〔6〕(C)成分の含有量が、0.00001~0.01質量%である〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
〔7〕歯磨剤組成物である、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粉体由来のもったり感が抑制され良好な使用感も兼ね備え、良好な清掃実感、保形性を発揮し得る口腔用組成物を提供することができる。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明の口腔用組成物は、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する。なお、本明細書において、各成分の含有量は、組成物を製造する際の各成分の仕込み量を基準とするものである。
【0012】
[(A)成分]
(A)成分は、研磨剤としての無機粉体である。(A)成分を含有させることで、刷掃実感が向上し得る。
【0013】
(A)成分に含まれる無機粉体としては、例えば、無機カルシウム塩(例えば、第2リン酸カルシウム・2水和塩又は無水和物、第1リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、不溶性メタリン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、第8リン酸カルシウム等のリン酸カルシウム、炭酸カルシウム(軽質、重質)、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウム);シリカ系粉体(無水ケイ酸、ゼオライト、沈降性シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート、チタン結合性シリカ、シリカゲル等);水酸化アルミニウム、アルミナ等の無機アルミニウム塩;炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム等の無機マグネシウム塩;ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイト等のアパタイト系粉体;ベントナイト;二酸化チタン;が挙げられる。無機カルシウム塩が好ましく、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムがより好ましい。(A)成分は、無機粉体1種単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0014】
(A)成分に含まれる無機粉体の含有量は、下限は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。これにより、良好な刷掃実感を付与できる。上限は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、通常65質量%以下、好ましくは60質量%以下である。これにより、使用時のもったり感を抑制改善することができる。つまり、(A)成分に含まれる無機粉体の含有量は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、通常5~65質量%、好ましくは10~60質量%である。なお、本明細書中「もったり感」とは、粉体を含む泡が口腔粘膜および舌先に密着した不快感(いわゆる、重たさ)を意味する。口腔用組成物が無機カルシウム塩等のカルシウム系研磨剤を含有する場合、その含有量は一般に、他の研磨剤等の含有量よりも多量である場合が多く、これによりもったり感が問題となりやすいところ、本発明においては、(A)成分の含有量が多くても(例えば、30質量%以上でも)、もったり感を抑制できる。
【0015】
[(B)成分]
(B)成分は、水溶性高分子である。(B)成分を含有させることで、保形性を向上させることができる。
【0016】
(B)成分に含まれる水溶性高分子としては、例えば、セルロース系粘結剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カチオン化セルロース)、カラギーナン、キサンタンガム、グアガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム、モンモリロナイト、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸-無水マレイン酸共重合体、アルギン酸プロピレングリコール等の有機粘結剤が挙げられる。これらのうち、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸-無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマーがより好ましい。
【0017】
(B)成分は、水溶性高分子1種単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。2種以上を組み合わせる場合、(B)成分に含まれる水溶性高分子は、(B1)多糖類及び(B2)(メタ)アクリル酸単量体に由来する単位を構成に含む水溶性高分子の組み合わせが好ましい。(B1)(B2)成分としては、例えば下記が挙げられる。
(B1)カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム及びカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群より選ばれる1種以上。
(B2)ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー及びアクリル酸-無水マレイン酸共重合体からなる群より選ばれる1種以上。
【0018】
(B)成分の含有量は、下限は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、通常、0.5質量%以上、好ましくは、1質量%以上である。これにより、口腔用組成物の保形性を維持することができる。上限は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、通常、1.5質量%以下、好ましくは、1.3質量%以下である。これにより、使用時のもったり感を抑制改善することができる。つまり、(B)成分の含有量は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、通常、0.5~1.5質量%、好ましくは1~1.3質量%である。
【0019】
(B1)成分及び(B2)成分の組み合わせの場合、(B1)成分の含有量は、0.1~1.4質量%が好ましく、0.2~1.3質量%がより好ましい。(B2)成分に含まれる水溶性高分子の含有量は、0.1~1.4質量%が好ましく、0.2~1.3質量%がより好ましい(但し、(B)成分の量は0.5~1.5質量%である)。また、(B1)/(B2)(含有量比)は、0.5~10が好ましく、1~9.5がより好ましく、1.5~9が更に好ましい。これにより、口腔用組成物の保形性が維持されると共に、使用時のもったり感を抑制改善することができる。
【0020】
[(C)成分]
(C)成分は、N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキシアミドである。
【0021】
(C)成分を含有させることで、使用時のもったり感を抑制改善することができる。
【0022】
(C)成分の含有量は、下限は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、通常0.00001質量%以上、好ましくは0.00005質量%以上である。これにより、使用時のもったり感を抑制改善することができる。上限は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、通常0.01質量%以下、好ましくは0.005質量%以下である。これにより、口腔内で刺激感が強く発現することなく、使用感の低下を抑制することができる。つまり、(C)成分の含有量は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、通常0.00001~0.01質量%、好ましくは0.00005~0.005質量%である。
【0023】
[任意成分]
本実施形態の口腔用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、既に説明した(A)~(C)成分以外に、任意成分を含有してもよい。
【0024】
任意成分としては、例えば、(A)成分以外の研磨剤、(C)成分以外の香料、粘稠剤、界面活性剤、保湿剤、更には必要に応じて甘味剤、溶媒、油性成分、着色剤、防腐剤、保存安定化剤、pH調整剤、有効成分が挙げられる。以下、具体的に説明する。
【0025】
-(A)成分以外の研磨剤-
(A)成分以外の研磨剤としては、例えば、ポリメチルメタアクリレート、合成樹脂系研磨剤等の有機研磨剤が挙げられる。
【0026】
(A)成分以外の研磨剤の含有量は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、(A)成分に含まれる無機粉体と(A)成分以外の研磨剤との総量が10~60質量%となるように調整することが好ましい。
【0027】
-(C)成分以外の香料-
(C)成分以外の香料としては、例えば、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料及びこれらの天然香料を加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料;メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3-1-メントキシプロパン-1,2-ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド、ピネン、オクチルアセデヒド、シトラール、プレゴン、カルビートアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料;ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料が挙げられる。また、(C)成分以外の冷感剤、例えば、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、メンチルラクテート、メンチルモノサクシネート、イソプレゴール、メントングリセロールケタール、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、5-メチル-2-プロパン-2-イル-N-(2-ピリジン-2-イルエチル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド、3-(p-メンタン-3カルボキサミド)酢酸エチル、2-イソプロピル-N、2,3-トリメチルブチルアミドも例示される。その他、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を用いてもよい。
【0028】
(C)成分以外の香料の含有量は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、0.000001~1質量%が好ましい。また、これらの香料を使用した賦香用香料の場合は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、0.1~2.0質量%が好ましい。
【0029】
粘稠剤としては、例えば、グリセリン、ソルビット、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクトール等の多価アルコールが挙げられる。
【0030】
粘稠剤の含有量は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、通常1~45質量%、好ましくは2~40質量%である。
【0031】
-界面活性剤-
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
【0032】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、アシルアミノ酸塩、アシルタウリン塩、α-オレフィンスルホン酸塩、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸塩、ラウリルスルホ酢酸塩が挙げられる。アシル基を有する場合、アシル基は直鎖及び分岐鎖のいずれでもよく、飽和及び不飽和のいずれでもよく、その炭素原子数は通常10~20である。塩は、薬理学的に許容される塩から選択され得る。薬理学的に許容される塩としては、塩基付加塩及びアミノ酸塩が挙げられる。具体的には例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基塩;トリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩等の有機塩基塩;アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩が挙げられる。中でも、無機塩基塩が好ましく、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)又はアンモニウム塩がより好ましく、ナトリウム塩が更に好ましい。
【0033】
アルキル硫酸塩としては、例えば、ラウリル硫酸塩、ミリストイル硫酸塩が挙げられる。アシルアミノ酸塩としては、例えば、ラウロイルサルコシン塩、ミリストイルサルコシン塩等のアシルサルコシン塩;ラウロイルグルタミン酸塩、ミリストイルグルタミン酸塩、パルミトイルグルタミン酸塩等のアシルグルタミン酸塩;、N-ラウロイル-N-メチルグリシン塩、ココイルグリシン塩等のアシルグリシン塩;N-ラウロイル-β-アラニン塩、N-ミリスチル-β-アラニン塩、N-ココイル-β-アラニン塩、N-ラウロイル-N-メチル-β-アラニン塩、N-ミリストイル-N-メチル-β-アラニン塩、N-メチル-N-アシルアラニン塩等のアシルアラニン塩;ラウロイルアスパラギン酸塩等のアシルアスパラギン酸塩が挙げられる。アシルタウリン塩としては、例えば、ラウロイルメチルタウリン塩、N-メチル-N-アシルタウリン塩、N-ココイルメチルタウリン塩が挙げられる。α-オレフィンスルホン酸塩としては、テトラデセンスルホン酸塩等の炭素原子数12~14のα-オレフィンスルホン酸塩が挙げられる。アニオン性界面活性剤の他の例としては、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウムが挙げられる。
【0034】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート)、アルキロールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル(例、マルトース脂肪酸エステル)、糖アルコール脂肪酸エステル(例、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル)、脂肪酸ジエタノールアミド(例、ラウリル酸モノ又はジエタノールアミド)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステルが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル鎖の炭素原子数は、通常、14~18であり、エチレンオキサイド平均付加モル数は、通常、15~30モルである。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド平均付加モル数は、通常20~100モル、好ましくは60~100モルである。ソルビタン脂肪酸エステルの脂肪酸の炭素原子数は、通常12~18である。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの脂肪酸の炭素原子数は、通常16~18であり、エチレンオキサイド平均付加モル数は、通常10~40モルである。アルキロールアミドのアルキル鎖の炭素原子数は、通常12~14である。
【0035】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(例えば、コカミドプロピルベタイン)等のベタイン型両性界面活性剤;N-脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩(例えば、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン)、ヤシ油脂肪酸イミダゾリニウムベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン型両性界面活性剤;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタインが挙げられる。
【0036】
界面活性剤の含有量は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、好ましくは、0.1~4質量%である。
【0037】
-甘味剤-
甘味剤としては、例えば、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ペリラルチン、ソーマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル等が挙げられる。甘味剤としては、上記例示の甘味剤を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
-溶媒-
溶媒としては、例えば、水(精製水)が挙げられる。溶剤の配合量は、組成物全量に対し、通常1~90質量%、好ましくは15~80質量%、より好ましくは20~60質量%である。
【0039】
-油性成分-
油性成分としては、例えば、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;高級アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の炭素原子数8~22のアルコール);高級脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の炭素原子数8~22の脂肪酸)、オリーブ油、ひまし油、やし油等の植物油;ミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステルが挙げられる。
【0040】
-着色剤-
着色剤としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号、雲母チタン、酸化チタンが挙げられる。
【0041】
-防腐剤-
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル(例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル)、安息香酸ナトリウムが挙げられる。
【0042】
-pH調整剤-
pH調整剤としては、例えば、フタル酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、及び乳酸等の有機酸又はそれらの塩、リン酸(オルトリン酸)等の無機酸又はそれらの塩(例えば、カリウム塩、ナトリウム塩及びアンモニウム塩)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物が挙げられる。無機酸塩としては、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムが挙げられる。
【0043】
pH調整剤の含有量は、通常、添加後の口腔用組成物のpHが6~10、好ましくは7~9となる量とすることができる。
【0044】
本明細書において、pH値は、通常、測定開始から25℃、3分後の値をいう。pH値は、例えば、東亜電波工業社製のpHメーター(型番Hm-30S)を用いて測定することができる。
【0045】
-有効成分-
有効成分としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、イソプロピルメチルフェノール、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、トリクロサン、チモール、ヒノキチオール、塩化リゾチーム等の殺菌又は抗菌剤;デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リテックエンザイム等の酵素;フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ等のフッ化物;ε-アミノカプロン酸、アラントイン、トラネキサム酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、グリチルリチン酸塩(例えば、グリチルリチン2カリウム塩)、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体(例えば、グリチルレチン酸ステアリル)、アズレン、ジヒドロコレステロール等の抗炎症剤;亜鉛塩、銅塩、スズ塩等の金属塩;縮合リン酸塩、エタンヒドロキシジホスフォネート等の歯石予防剤;ビタミンE(例えば、酢酸トコフェロール)等の血流促進剤;硝酸カリウム、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム等の知覚過敏抑制剤;ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド等のコーティング剤;ビタミンC(例えば、アスコルビン酸またはその塩)、塩化リゾチーム、塩化ナトリウム等の収斂剤;銅クロロフィル、グルコン酸銅等の水溶性銅化合物;歯石予防剤、アラニン、グリシン、プロリン等のアミノ酸類、タイム、オウゴン、チョウジ、ハマメリス等の植物エキス;カロペプタイド、ポリビニルピロリドンを挙げることができる。薬用成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記薬用成分の含有量は、常法に従って有効量を適宜設定できる。
【0046】
-他の任意成分-
上記以外の任意成分の例としては、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ウレタン、シリコン、天然ゴムが挙げられる。これら他の任意成分の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜設定できる。
【0047】
[口腔用組成物の剤形及び用途]
本発明の口腔用組成物は、常法に従う任意好適な方法により、任意好適な剤形とすることができる。剤形としては、例えば、液体(溶液、乳液、懸濁液、シロップ等)、半固体(ジェル、クリーム、ペースト等)、固体(錠剤、粒子状剤、カプセル剤、フィルム剤、混練物、溶融固体、ロウ状固体、弾性固体、ソフトカプセル剤等)が挙げられる。口腔用組成物の剤形は、好ましくは、液体、半固体である。
【0048】
本発明の口腔用組成物は、口腔用途において広く利用することができる。固体である剤形での用途としては、例えば、トローチ、グミ、ガム、粉状又は錠剤の歯磨剤が挙げられる。半固体である剤形での用途としては、例えば、練歯磨剤、ジェル状歯磨剤が挙げられる。液体である剤形での用途としては、例えば、洗口剤、液体歯磨剤、口中清涼剤(スプレー等)が挙げられる。本発明の口腔用組成物は、良好な保湿実感を実現し、粉きしみ感が抑制され、さらには保形性、曳糸性等の物性を良好にできるので、歯磨剤(練歯磨剤、ジェル状歯磨剤)又は塗布剤(口腔用保湿ジェル、口腔用保湿クリーム)とすることが好ましい。
【0049】
〔組成物の製造方法〕
口腔用組成物の製造方法は特に限定されず、剤形に応じて、それぞれの通常の方法で調製され得る。例えば練歯磨剤として利用する場合、溶媒に溶解する成分を調製した後、それ以外の不溶性成分を混合し、必要に応じて脱泡(例えば、減圧等)を行う方法が挙げられる。得られる練歯磨は、容器に収容して製品とすることができる。容器は、形状、材質は特に制限されず、通常の口腔用組成物に使用される容器を使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどのプラスチック製のラミネートチューブ等の容器等が挙げられる。
【実施例
【0050】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。本発明は下記実施例に制限されない。なお、下記表中の数値は特に断らない限り質量%を表す。
【0051】
実施例1~25及び比較例1~9
[実施例及び比較例において使用された成分]
-(A)成分-
炭酸カルシウム((株)カルファイン製、重質炭酸カルシウム)
無水ケイ酸(Evonik製、商品名:カープレックス(登録商標)#67Q)
-(B)成分-
ポリアクリル酸ナトリウム(東亜合成(株)製、商品名:レオジック(登録商標)250H)
カルボキシビニルポリマー(ルーブリゾール製、商品名:カーボポール(登録商標)980)
カラギーナン(CPケルコジャパン(株)製)
カルボキシメチルセルロースナトリウム(ダイセルファインケム製、商品名:CMC1260)
-(C)成分-
N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキシアミド:(高砂香料工業(株)社製、商品名:Coolact(登録商標)370)
-比較例において(C)成分の代わりに使用された香料成分-
N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド:(シムライズジャパン社製、商品名:WS-3)
【0052】
上記成分を常法により含有させて、下記表に示す組成を有する練歯磨組成物を調製し、ラミネートチューブに収容した。
【0053】
[評価方法]
試験者10人により、練歯磨組成物に含まれる無機粉体由来のもったり感、刷掃性及び保形性について、それぞれ下記に示す判定基準による10名の平均点を求め、評価した。なお、本実施例においては、いずれの評価項目についても、平均点3.0以上を合格点とした。
【0054】
<もったり感>
練歯磨組成物を1gを歯ブラシ(クリニカアドバンテージハブラシ、4列コンパクトふつうタイプ、ライオン(株)製)に載せ、通常の方法でブラッシングしたときに、口腔内で感じる無機粉体由来のもったり感に関して評価を行った。
判定基準
5点:口腔内でもったり感を全く感じない
4点:口腔内でもったり感をほとんど感じない
3点:口腔内でもったり感をわずかに感じるが、気にならないレベルである
2点:口腔内でもったり感を感じる
1点:口腔内でもったり感を強く感じる
評価基準
☆:平均点4.5点以上
◎:平均点4.0点以上4.5点未満
○:平均点3.0点以上4.0点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0055】
<刷掃性>
練歯磨組成物を1gを同歯ブラシに載せ、通常の方法でブラッシングしたときに、口腔内で感じる刷掃性に関して評価を行った。
判定基準
4点:刷掃性を非常に感じる
3点:刷掃性を感じる
2点:刷掃性をあまり感じない
1点:刷掃性を感じない
評価基準
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0056】
<保形性>
同歯ブラシ上に、練歯磨組成物(長さ10mm)を押し出し、3分後の練歯磨組成物の形状を目視にて観察し、保形性に関して評価を行った。
判定基準
4点:形状に変化がなく、歯ブラシから垂れない
3点:やや形状に変化があるが、歯ブラシから垂れない
2点:やや形状に変化があり、若干歯ブラシから垂れる
1点:形状に変化があり、歯ブラシから垂れる
評価基準
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
(A)成分を含有しない比較例1では、刷掃実感が低く、(B)成分を含有しない比較例2では、保形性が低かった。さらに、(B)成分の量が1.5質量%を超える比較例3~7及び(C)成分を含まない比較例8~9では、もったり感が解消されておらず、比較例9においては(C)成分の代わりにN-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミドを含んでいるにもかかわらず、もったり感の解消に至らなかった。これに対し、(A)~(C)成分を含み、かつ(B)成分の含有量が0.5~1.5質量%である実施例はいずれも、もったり感、刷掃性及び保形性の全ての評価において、平均点が3.0以上の満足な結果を得ることができた。これらの結果は、本発明に係る口腔用組成物が、保形性及び刷掃性に加え、良好な使用感も兼ね備えていることを示している。