(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】開閉装置
(51)【国際特許分類】
F16C 11/04 20060101AFI20240719BHJP
A47K 13/12 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F16C11/04 C
F16C11/04 F
A47K13/12
(21)【出願番号】P 2020530698
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2020005039
(87)【国際公開番号】W WO2020179367
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2019041821
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【氏名又は名称】塩島 利之
(72)【発明者】
【氏名】柏熊 一彰
(72)【発明者】
【氏名】清水 秀
(72)【発明者】
【氏名】岩田 直也
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-002196(JP,U)
【文献】特開平06-327586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/04
A47K 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースにスライド可能に設けられるスライダと、
前記スライダを付勢するばねと、
可動体と共に開き位置と閉じ位置との間を回転する回転軸と、
前記回転軸が前記開き位置から閉じ方向に所定位置まで回転する間、前記ばねによる開き方向のトルクが前記回転軸に働かないように、前記回転軸が回転しても前記スライダをスライドさせず、
前記回転軸が前記所定位置から閉じ方向に前記閉じ位置まで回転する間、前記ばねによる前記開き方向のトルクが前記回転軸に働くように、前記回転軸が回転すると前記スライダをスライドさせる伝達機構と、
を備え
、
前記伝達機構は、前記回転軸が嵌められるアームと、前記アームと前記スライダに連結されるリンクと、を備え、
前記回転軸と前記アームとの間には、待機位置にある前記アームに対して前記回転軸が前記開き位置から前記所定位置まで回転できるように隙間が設けられる開閉装置。
【請求項2】
ケースと、
前記ケースにスライド可能に設けられるスライダと、
前記スライダを付勢するばねと、
可動体と共に開き位置と閉じ位置との間を回転する回転軸と、
前記回転軸が前記開き位置から閉じ方向に所定位置まで回転する間、前記ばねによる開き方向のトルクが前記回転軸に働かないように、前記回転軸が回転しても前記スライダをスライドさせず、
前記回転軸が前記所定位置から閉じ方向に前記閉じ位置まで回転する間、前記ばねによる前記開き方向のトルクが前記回転軸に働くように、前記回転軸が回転すると前記スライダをスライドさせる伝達機構と、
を備え
、
前記伝達機構は、前記回転軸と共に回転するアームと、前記アームと前記スライダに連結されるリンクと、を備え、
前記アームと前記リンクとの間、又は前記リンクと前記スライダとの間の少なくとも一つには、待機位置にある前記スライダに対して前記回転軸が前記開き位置から前記所定位置まで回転できるように隙間が設けられる開閉装置。
【請求項3】
ケースと、
前記ケースにスライド可能に設けられるスライダと、
前記スライダを付勢するばねと、
可動体と共に開き位置と閉じ位置との間を回転する回転軸と、
前記回転軸が前記開き位置から閉じ方向に所定位置まで回転する間、前記ばねによる開き方向のトルクが前記回転軸に働かないように、前記回転軸が回転しても前記スライダをスライドさせず、
前記回転軸が前記所定位置から閉じ方向に前記閉じ位置まで回転する間、前記ばねによる前記開き方向のトルクが前記回転軸に働くように、前記回転軸が回転すると前記スライダをスライドさせる伝達機構と、
を備え
、
前記伝達機構は、前記回転軸が嵌められるカムを備え、
前記回転軸と前記カムとの間には、待機位置にある前記カムに対して前記回転軸が前記開き位置から前記所定位置まで回転できるように隙間が設けられる開閉装置。
【請求項4】
前記回転軸が前記開き位置から前記所定位置まで回転する間、前記スライダがストッパによって待機位置に保持されることを特徴とする請求項1
ないし3のいずれか一項に記載の開閉装置。
【請求項5】
前記ケースには、前記スライダを制動するリニアダンパが設けられることを特徴とする請求項1ないし
4のいずれか一項に記載の開閉装置。
【請求項6】
前記可動体は、便蓋及び/又は便座であることを特徴とする請求項1ないし
5のいずれか一項に記載の開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、便蓋、便座、上開き扉等の可動体を開閉するための開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器には、便蓋と便座が開閉可能に取り付けられる。キャビネットには、上開き扉が開閉可能に取り付けられる。便蓋、便座、上開き扉等の可動体は、開き位置と閉じ位置との間を水平軸の回りに回転する。可動体の閉じ位置は、その自重モーメントによって保持される。
【0003】
可動体が重い場合、閉じ位置にある可動体を開くのが容易ではない。この問題を解決するために、特許文献1には、便蓋又は便座の開閉を容易にする開閉装置が開示されている。特許文献1の開閉装置は、ケース、回転軸、スライダ、ばねを備える。便器には、ケースが取り付けられる。ケースには、便蓋又は便座と共に回転する回転軸が設けられる。回転軸には、カムが連結される。カムは、回転軸が回転すると、ケースに設けられるスライダをスライドさせるように構成される。さらにケースには、スライダをカムに押圧するばねが設けられる。
【0004】
特許文献1の開閉装置によれば、伝達機構としてのカムによって、ばねの弾性力が回転軸に働くトルクに変換される。カムは、閉じ位置にある便蓋又は便座に、ばねによる開き方向のトルク(すなわちアシスト力)が働くように構成される。このため、閉じ位置にある便蓋又は便座を軽い力で開くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の開閉装置おいては、便蓋又は便座等の可動体が閉じ位置にあるときだけでなく、開き位置にあるときにも、ばねによる開き方向のトルクが働くという課題がある。このため、開き位置にある可動体を軽い力で閉じることができない。
【0007】
そこで本発明は、閉じ位置にある可動体を軽い力で開くことができ、開き位置にある可動体を軽い力で閉じることができる開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、ケースと、前記ケースにスライド可能に設けられるスライダと、前記スライダを付勢するばねと、可動体と共に開き位置と閉じ位置との間を回転する回転軸と、前記回転軸が前記開き位置から閉じ方向に所定位置まで回転する間、前記ばねによる開き方向のトルクが前記回転軸に働かないように、前記回転軸が回転しても前記スライダをスライドさせず、前記回転軸が前記所定位置から閉じ方向に前記閉じ位置まで回転する間、前記ばねによる前記開き方向のトルクが前記回転軸に働くように、前記回転軸が回転すると前記スライダをスライドさせる伝達機構と、を備え、前記伝達機構は、前記回転軸が嵌められるアームと、前記アームと前記スライダに連結されるリンクと、を備え、前記回転軸と前記アームとの間には、待機位置にある前記アームに対して前記回転軸が前記開き位置から前記所定位置まで回転できるように隙間が設けられる開閉装置である。
本発明の他の態様は、ケースと、前記ケースにスライド可能に設けられるスライダと、
前記スライダを付勢するばねと、可動体と共に開き位置と閉じ位置との間を回転する回転軸と、前記回転軸が前記開き位置から閉じ方向に所定位置まで回転する間、前記ばねによる開き方向のトルクが前記回転軸に働かないように、前記回転軸が回転しても前記スライダをスライドさせず、前記回転軸が前記所定位置から閉じ方向に前記閉じ位置まで回転する間、前記ばねによる前記開き方向のトルクが前記回転軸に働くように、前記回転軸が回転すると前記スライダをスライドさせる伝達機構と、を備え、前記伝達機構は、前記回転軸と共に回転するアームと、前記アームと前記スライダに連結されるリンクと、を備え、前記アームと前記リンクとの間、又は前記リンクと前記スライダとの間の少なくとも一つには、待機位置にある前記スライダに対して前記回転軸が前記開き位置から前記所定位置まで回転できるように隙間が設けられる開閉装置である。
本発明のさらに他の態様は、ケースと、前記ケースにスライド可能に設けられるスライダと、前記スライダを付勢するばねと、可動体と共に開き位置と閉じ位置との間を回転する回転軸と、前記回転軸が前記開き位置から閉じ方向に所定位置まで回転する間、前記ばねによる開き方向のトルクが前記回転軸に働かないように、前記回転軸が回転しても前記スライダをスライドさせず、前記回転軸が前記所定位置から閉じ方向に前記閉じ位置まで回転する間、前記ばねによる前記開き方向のトルクが前記回転軸に働くように、前記回転軸が回転すると前記スライダをスライドさせる伝達機構と、を備え、前記伝達機構は、前記回転軸が嵌められるカムを備え、前記回転軸と前記カムとの間には、待機位置にある前記カムに対して前記回転軸が前記開き位置から前記所定位置まで回転できるように隙間が設けられる開閉装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、閉じ位置にある可動体を軽い力で開くことができ、開き位置にある可動体を軽い力で閉じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態の開閉装置を使用する洋式便器の外観斜視図である。
【
図2】
図2(a)は開閉装置の部分で切断した洋式便器の縦断面図であり、
図2(b)は
図2(a)のb部拡大図である。
【
図4】
図4(a)は本実施形態の開閉装置の縦断面図であり、
図4(b)は
図4(a)のb部拡大図である。
【
図5】洋式便器の側面図である(
図5(a)は便蓋の開き位置、
図5(b)は便蓋の所定位置、
図5(c)は便蓋の閉じ位置を示す)。
【
図6】本実施形態の開閉装置の縦断面図である(
図6(a)は回転軸の開き位置、
図6(b)は回転軸の所定位置、
図6(c)は回転軸の閉じ位置を示す)。
【
図7】本発明の第2実施形態の開閉装置の縦断面図である(
図7(a)は回転軸の開き位置、
図7(b)は回転軸の所定位置、
図7(c)は回転軸の閉じ位置を示す)。
【
図8】本発明の第3実施形態の開閉装置の縦断面図である(
図8(a)は回転軸の開き位置、
図8(b)は回転軸の所定位置、
図8(c)は回転軸の閉じ位置を示す)。
【
図9】本発明の第4実施形態の開閉装置の縦断面図である(
図9(a)は回転軸の開き位置、
図9(b)は回転軸の所定位置、
図9(c)は回転軸の閉じ位置を示す)。
【
図10】本発明の第5実施形態の開閉装置の縦断面図である(
図10(a)は回転軸の開き位置、
図10(b)は回転軸の所定位置、
図10(c)は回転軸の閉じ位置を示す)。
【
図11】本発明の第6実施形態の開閉装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態の開閉装置を詳細に説明する。ただし、本発明の開閉装置は種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
(第1実施形態)
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態の開閉装置1a,1bを使用する洋式便器2を示す。なお、以下では、本実施形態の開閉装置1a,1bを洋式便器2に使用する例を説明するが、本実施形態の開閉装置1a,1bの用途は、洋式便器2に限られることはない。本実施形態の開閉装置1a,1bは、上開き扉を有するキャビネット、機械装置等にも使用することができる。
【0013】
図1に示すように、便器3の後部の上面には、左右1つずつの開閉装置1a,1bが設けられる。開閉装置1aと開閉装置1bとは、左右対称である。4は可動体としての便蓋、5は便座である。開閉装置1a,1bは、便器3に対して便蓋4と便座5を開閉可能にする。
【0014】
図2(a)は、開閉装置1a,1bの部分で切断した洋式便器2の縦断面図を示し、
図2(b)は、
図2(a)のb部拡大図を示す。便器3の取付け穴3a,3bには、ソケット6a,6bが取り付けられる(
図3参照)。開閉装置1a,1bは、ソケット6a,6bに着脱可能に取り付けられる。各ソケット6a,6bは、フランジ8aを有するソケット本体8と、ソケット本体8に螺合するナット9と、を備える(
図3参照)。ソケット本体8のフランジ8aとナット9との間でパッキン11,12を介して便器3の上面部3cを挟むことで、ソケット6a,6bが便器3に取り付けられる。開閉装置1a,1bのケース本体21(
図3参照)は、ソケット6a,6bに挿入される。ケース本体21は、ソケット本体8のフック8bにスナップ固定される。なお、開閉装置1a,1bを便器3に取り付ける替わりに、図示しない自動水洗装置に取り付けてもよい。
【0015】
図2(b)に示すように、開閉装置1a,1bには、水平方向を向く回転軸14が回転可能に設けられる。回転軸14は、ケース20(ケース本体21とカバー22)に設けた軸受28に回転可能に支持される。軸受28の内面には、突起28aが形成される(
図3参照)。回転軸14には、この突起28aが嵌まる円周溝14aが形成される(
図3参照)。これにより、回転軸14の軸方向の抜けを防止する。
【0016】
回転軸14の一端部には、一対の平坦面を有する断面小判状の変形軸部14bが形成される(
図3参照)。便蓋4の取付け部4aには、変形軸部14bに合致する変形穴4a1が形成される。このため、便蓋4の開閉と共に回転軸14が回転する。回転軸14は、便座5の取付け部5aに設けた円形の取付け穴5a1に挿入される。回転軸14は、便座5を開閉する際の支軸となるが、便座5と共には回転しない。なお、この実施形態では、回転軸14が便蓋4と共に回転するようにしているが、回転軸14が便座5と共に回転するようにしてもよいし、便蓋4及び便座5と共に回転するようにしてもよい。
【0017】
図3は、開閉装置1aの分解斜視図を示す。開閉装置1aは、ケース20、回転軸14、伝達機構17、スライダ18、ばね19、リニアダンパ23を備える。伝達機構17は、アーム15、リンク16を備える。開閉装置1bは、開閉装置1aと左右対称であるので、その説明を省略する。
【0018】
ケース20は、ケース本体21と、カバー22と、を備える。ケース本体21は、略筒状の胴部21aと、略箱状の頭部21bと、を備える。カバー22は、ケース本体21の頭部21bを覆う。カバー22は、ピン25等の固定手段によってケース本体21の頭部21bに固定される。頭部21bとカバー22との間には、回転軸14、軸受28、アーム15、リンク16を収容するスペースが形成される。カバー22の下部には、ソケット本体8のフランジ8aを隠すフランジ22aが一体に形成される。
【0019】
回転軸14には、アーム15が嵌められる。アーム15は、一対の軸受28の間に配置される。回転軸14の一対の円周溝14aの間には、円弧溝14cが形成される。アーム15の穴15aの内面には、円弧溝14cに嵌る突起15bが形成される。
図4(b)の縦断面図に示すように、円弧溝14cの中心角αは、突起15bの中心角βよりも大きい。円弧溝14cの一端の壁24aと突起15bとの間には、隙間gが形成される。隙間gの中心角はγである。回転軸14は、アーム15に対して隙間gの分だけ回転軸14を中心に回転可能である。
【0020】
図3に示すように、アーム15は、穴15aを有する略筒状の本体部15-1と、本体部15-1から半径方向に突出し、本体部15-1と一体の一対の側板部15-2と、を備える。アーム15の側板部15-2には、当接部15cが一体に形成される。
図4(a)の縦断面図に示すように、アーム15は、ばね19によって開き方向に付勢される。アーム15の当接部15cがストッパとしてのカバー22に当接することで、アーム15とスライダ18の待機位置が保持される。
【0021】
図3に示すように、アーム15には、軸26を介してリンク16の一端部が回転可能に連結される。リンク16の一端部は、アーム15の側板部15-2間に挿入される。リンク16の他端部は、軸27を介してスライダ18に回転可能に連結される。リンク16の他端部は、スライダ18の側板部18-2間に挿入される。
【0022】
スライダ18は、ケース本体21の胴部21aにスライド可能に挿入される。スライダ18は、胴部21aの円環状の内面によって案内される。スライダ18は、底部18-1と、底部18-1と一体に形成される一対の側板部18-2と、を備える。
【0023】
ばね19は、ケース本体21の胴部21aに収容される。
図4(a)に示すように、ばね19は、ケース本体21の胴部21aの内面の段部21a1とスライダ18との間に配置される。ばね19は、スライダ18を上方向に付勢する。アーム15が
図4(a)に示す待機位置にあるとき、ばね19は圧縮されていて、アーム15とスライダ18の待機位置は、ばね19の弾性力によって保持される。
【0024】
図3に示すように、リニアダンパ23は、ばね19の内側に配置される。リニアダンパ23は、シリンダ23aと、ロッド23bと、を備える公知のものである。シリンダ23aには、流体が充填される。ロッド23bの一端には、図示しないピストンが設けられる。ピストンがシリンダ23a内を移動することで、制動力が発生する。シリンダ23aの内部には、図示しない復帰ばねが設けられる。復帰ばねは、ロッド23bを突出位置に復帰させる。
図4(a)に示すように、リニアダンパ23は、スライダ18とケース本体21の底部21cとの間に介在する。スライダ18が下方向へスライドすると、リニアダンパ23が圧縮されて、制動力が発生する。なお、
図4(a)に示すスライダ18の待機位置において、スライダ18とリニアダンパ23との間に隙間を設けてもよい。
【0025】
以下に、本実施形態の開閉装置1a,1bの効果を説明する。
図5は洋式便器2の側面図を示す。
図6は開閉装置1aの縦断面図を示す。これらの図において、(a)は開き位置、(b)は所定位置、(c)は閉じ位置を示す。
【0026】
図5(a)に示すように、便蓋4の開き位置において、便蓋4の開き角θ1は90°よりも大きい。便蓋4の開き位置は、その自重によって保持される。
図6(a)に示すように、便蓋4が開き位置にあるとき、回転軸14も開き位置にある。回転軸14の開き位置は、回転軸14の円弧溝14cの他端の壁24bがアーム15の突起15bに当接することで、保持される(
図4(b)参照)。
【0027】
図5(b)に示すように、便蓋4の所定位置において、便蓋4の開き角θ2は90°よりも小さく0°よりも大きい。便蓋4が
図5(a)に示す開き位置から
図5(b)に示す所定位置まで回転する間、便蓋4は垂直面を通過する。
図6(b)に示すように、便蓋4が所定位置にあるとき、回転軸14も所定位置にある。回転軸14が
図6(a)に示す開き位置から閉じ方向に
図6(b)に示す所定位置まで回転する間、アーム15とスライダ18は待機位置に保持されている。
図6(a)に示す開き位置にある回転軸14とアーム15との間には隙間gが存在するので、回転軸14は、
図6(a)に示す開き位置から
図6(b)に示す所定位置まで隙間gの分だけ自由に回転する。すなわち、
図6(a)に示す開き位置から閉じ方向に
図6(b)に示す所定位置まで回転軸14が回転する間、回転軸14には、ばね19による開き方向のトルク(すなわちアシスト力)が働かず、伝達機構17(すなわちアーム15とリンク16)がスライダ18をスライドさせることもない。このため、開き位置にある便蓋4を軽い力で閉じることができる。
【0028】
図6(b)に示すように、回転軸14が所定位置まで回転すると、回転軸14の円弧溝14cの一端の壁24a(
図4(b)参照)がアーム15の突起15bに当接し、回転軸14と共にアーム15が閉じ方向に回転するようになる。回転軸14と共にアーム15が閉じ方向に回転すると、リンク16を介してスライダ18が下方向にスライドする。スライダ18は、ばね19によって付勢されているので、ばね19の弾性力によって、回転軸14には開き方向のトルクが働く。すなわち、回転軸14が
図6(b)に示す所定位置から閉じ方向に
図6(c)に示す閉じ位置まで回転する間、回転軸14にはばね19による開き方向のトルクが働く。しかし、このトルクは、便蓋4の自重モーメントよりも小さい。このため、便蓋4は、その自重モーメントによって閉じ位置まで回転する。便蓋4が閉じるときの衝撃は、リニアダンパ23によって緩和される。
【0029】
回転軸14に働く開き方向のトルクは、回転軸14が所定位置から閉じ位置まで回転するにしたがって徐々に大きくなる。回転軸14が
図6(b)に示す所定位置から
図6(c)に示す閉じ位置まで回転するにしたがって、スライダ18の下方向への移動量が徐々に大きくなるからである。
図6(c)に示す閉じ位置において、回転軸14に働く開き方向のトルクが最大になる。このため、閉じ位置にある便蓋4を軽い力で開くことができる。
(第2実施形態)
【0030】
図7は、本発明の第2実施形態の開閉装置31aの縦断面図を示す。
図7(a)は回転軸14の開き位置、
図7(b)は回転軸14の所定位置、
図7(c)は回転軸14の閉じ位置を示す。ケース本体21、カバー22、回転軸14、アーム15、リンク16、スライダ18、ばね19、リニアダンパ23の基本構成は、第1実施形態の開閉装置1aと略同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0031】
第1実施形態の開閉装置1aでは、アーム15の当接部15cをカバー22に当接させることで、アーム15とスライダ18の待機位置を保持している。これに対して、第2実施形態の開閉装置31aでは、スライダ18に設けたフランジ18aをケース本体21のストッパ21a2に当接させることで、アーム15とスライダ18の待機位置を保持している。ケース本体21の胴部21aの円環状の内面には、内方に突出する円環状のストッパ21a2が一体に形成される。スライダ18の外面には、フランジ18aが一体に形成される。スライダ18は、ばね19によって上方向に付勢されており、スライダ18のフランジ18aがケース本体21のストッパ21a2に当接することにより、スライダ18が上端の待機位置に保持される。スライダ18には、リンク16を介してアーム15が連結されるので、アーム15も待機位置に保持される。
【0032】
第2実施形態の開閉装置31aにおいても、回転軸14が
図7(a)に示す開き位置から閉じ方向に
図7(b)に示す所定位置まで回転する間、回転軸14には、ばね19による開き方向のトルクが働かない。このため、開き位置にある便蓋4を軽い力で閉じることができる。回転軸14が
図7(b)に示す所定位置から閉じ方向に
図7(c)に示す閉じ位置まで回転する間、回転軸14には、ばね19による開き方向のトルクが働く。このため、閉じ位置にある便蓋4を軽い力で開くことができる。
(第3実施形態)
【0033】
図8は、本発明の第3実施形態の開閉装置32aの縦断面図を示す。
図8(a)は回転軸14の開き位置、
図8(b)は回転軸14の所定位置、
図8(c)は回転軸14の閉じ位置を示す。ケース本体21、カバー22、回転軸14、アーム15、リンク16、スライダ18、ばね19、リニアダンパ23の基本構成は、第1実施形態の開閉装置1aと略同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0034】
第1実施形態の開閉装置1aでは、回転軸14とアーム15との間に隙間gを設けているのに対し、第3実施形態の開閉装置32aでは、アーム15とリンク16との間に隙間gを設けている。回転軸14とアーム15とは回り止めされていて、アーム15は回転軸14と共に回転する。リンク16の上端部には、長穴16aが形成される。この長穴16aにアーム15の軸26が嵌められる。スライダ18の待機位置は、スライダ18がケース本体21の図示しないストッパに当接することにより、又はばね19とリニアダンパ23のストロークを使い切ることにより決定される。
【0035】
第3実施形態の開閉装置32aにおいても、回転軸14が
図8(a)に示す開き位置から閉じ方向に
図8(b)に示す所定位置まで回転する間、回転軸14には、ばね19による開き方向のトルクが働かない。このため、開き位置にある便蓋4を軽い力で閉じることができる。回転軸14が
図8(b)に示す所定位置から閉じ方向に
図8(c)に示す閉じ位置まで回転する間、回転軸14には、ばね19による開き方向のトルクが働く。このため、閉じ位置にある便蓋4を軽い力で開くことができる。
(第4実施形態)
【0036】
図9は、本発明の第4実施形態の開閉装置33aの縦断面図を示す。
図9(a)は回転軸14の開き位置、
図9(b)は回転軸14の所定位置、
図9(c)は回転軸14の閉じ位置を示す。ケース本体21、カバー22、回転軸14、アーム15、リンク16、スライダ18、ばね19、リニアダンパ23の基本構成は、第1実施形態の開閉装置1aと略同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0037】
第1実施形態の開閉装置1aでは、回転軸14とアーム15との間に隙間gを設けているのに対し、第4実施形態の開閉装置33aでは、リンク16とスライダ18との間に隙間gを設けている。回転軸14とアーム15とは回り止めされていて、アーム15は回転軸14と共に回転する。リンク16の下端部には、長穴16bが形成される。長穴16bには、スライダ18の軸27が嵌められる。スライダ18の待機位置は、スライダ18がケース本体21の図示しないストッパに当接することにより、又はばね19とリニアダンパ23のストロークを使い切ることにより決定される。
【0038】
第4実施形態の開閉装置33aにおいても、回転軸14が
図9(a)に示す開き位置から閉じ方向に
図9(b)に示す所定位置まで回転する間、回転軸14には、ばね19による開き方向のトルクが働かない。このため、開き位置にある便蓋4を軽い力で閉じることができる。回転軸14が
図9(b)に示す所定位置から閉じ方向に
図9(c)に示す閉じ位置まで回転する間、回転軸14には、ばね19による開き方向のトルクが働く。このため、閉じ位置にある便蓋4を軽い力で開くことができる。
(第5実施形態)
【0039】
図10は、本発明の第5実施形態の開閉装置34aの縦断面図を示す。
図10(a)は回転軸14の開き位置、
図10(b)は回転軸14の所定位置、
図10(c)は回転軸14の閉じ位置を示す。ケース本体21、カバー22、回転軸14、アーム15、リンク16、スライダ18、ばね19、リニアダンパ23の基本構成は、第4実施形態の開閉装置33aと略同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0040】
第5実施形態の開閉装置34aは、第4実施形態の開閉装置33aと同様に、リンク16とスライダ18との間に隙間gを設けている。第4実施形態の開閉装置33aでは、リンク16に長穴16bを設けているのに対し、第5実施形態の開閉装置34aでは、スライダ18に長穴18bを設けている。第5実施形態の開閉装置34aでも、第4実施形態の開閉装置33aと同様な効果を奏する。
(第6実施形態)
【0041】
図11は、本発明の第6実施形態の開閉装置35aの縦断面図(便蓋4の閉じ位置)を示す。ケース本体21、カバー22、回転軸14、ばね19、リニアダンパ23の基本構成は、第1実施形態の開閉装置1aと略同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0042】
第1実施形態の開閉装置1aでは、回転軸14の回転をスライダ18のスライドへ変換する伝達機構17をアーム15とリンク16から構成している。第6実施形態の開閉装置35aでは、伝達機構をカム36から構成している。
【0043】
回転軸14には、カム36が嵌められる。カム36の穴36aの内面には、回転軸14の円弧溝14cに嵌る突起36bが形成される。円弧溝14cと突起36bとの関係は、
図4(b)に示す円弧溝14cと突起15bとの関係と同一である。すなわち、回転軸14は、待機位置にあるカム36に対して隙間gの分だけ回転軸14を中心に回転可能である。
【0044】
スライダ18には、ローラ37が回転可能に設けられる。カム36は、スライダ18のローラ37に当接する。ばね19は、スライダ18のローラ37をカム36に押圧する。
【0045】
回転軸14とカム36との間に隙間gがあるので、回転軸14が開き位置から閉じ方向に所定位置まで回転する間、回転軸14には、ばね19による開き方向のトルク(すなわちアシスト力)が働かず、カム36がスライダ18をスライドさせることもない。このため、開き位置にある便蓋4を軽い力で閉じることができる。
【0046】
回転軸14が所定位置から閉じ方向に閉じ位置まで回転する間、回転軸14と共にカム36が閉じ方向に回転し、カム36によってスライダ18が下方向にスライドする。スライダ18は、ばね19によって付勢されているので、ばね19の弾性力によって、回転軸14には開き方向のトルクが働く。このため、閉じ位置にある便蓋4を軽い力で開くことができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な実施形態に変更できる。
【0048】
例えば、上記実施形態では、洋式便器の使用者が便蓋を開閉しているが、駆動装置が便蓋を開閉するようにしてもよい。例えば駆動装置は、モータと、モータに設けられる原動ギヤと、回転軸に設けられる従動ギヤと、を備え、モータを回転させて便蓋を開閉する。便蓋を軽い力で開閉できるので、モータの出力を小さくすることができる。
【0049】
上記実施形態では、回転軸を中実にし、軸受で回転軸を回転可能に支持しているが、回転軸を中空の筒状にし、回転軸を通るピンで回転軸を回転可能に支持してもよい。
【0050】
上記実施形態では、アームと回転軸が別体であるが、上記第3ないし第5実施形態のようにアームと回転軸が共回りする場合、アームと回転軸を一体にしてもよい。また、上記第3ないし第5実施形態では、回転軸に可動体が連結されているが、アームに可動体を連結してもよい。
【0051】
本明細書は、2019年3月7日出願の特願2019-041821に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
【符号の説明】
【0052】
1a,1b,31a,32a,33a,34a,35a…開閉装置
3…便器
4…便蓋(可動体)
5…便座
14…回転軸
15…アーム(伝達機構)
16…リンク(伝達機構)
17…伝達機構
18…スライダ
19…ばね
20…ケース
21…ケース本体(ケース)
22…カバー(ケース)
23…リニアダンパ
36…カム(伝達機構)
g…隙間