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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】肥満細胞症の治療のための併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4375 20060101AFI20240719BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 31/4523 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61K31/4375
A61P43/00 121
A61K31/519
A61K31/4184
A61K31/4523
A61K31/4439
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P35/02
A61P35/00
A61P17/00
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020541712
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 US2019016161
(87)【国際公開番号】W WO2019152719
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】62/624,453
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519425235
【氏名又は名称】デシフェラ・ファーマシューティカルズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】フリン,ダニエル・エル
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ブライアン・ディー
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,アヌ
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0320759(US,A1)
【文献】国際公開第2015/051252(WO,A1)
【文献】MATHIAS SCHNEEWEISS; ET AL,HAEMATOLOGICA,イタリア,2018年05月,VOL:103, NR:5,,PAGE(S):799 - 809,http://dx.doi.org/10.3324/haematol.2017.179895
【文献】SCHNEEWEISS MATHIAS A; ET AL,BLOOD,米国,AMERICAN SOCIETY OF HEMATOLOGY,2016年12月02日,VOL:128, NR:22,,PAGE(S):1965(1-6),https://doi.org/10.1182/blood.V128.22.1965.1965
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満細胞症の治療に使用するための医薬であって、
有効量のc-KIT阻害剤と、
有効量の1または複数のMAPKAP経路阻害剤を組合せてなり、
c-KIT阻害剤は、以下の式で表わされる化合物A:
【化1】
またはその薬学的に許容可能な塩であり、
MAPKAP経路阻害剤は、トラメチニブ、セルメチニブ、コビメチニブビニメチニブ、およびウリキセルチニブらなる群から選択される、医薬。
【請求項2】
前記肥満細胞症は、c-KIT突然変異を伴う、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記c-KIT突然変異は、活性化突然変異である、請求項2に記載の医薬。
【請求項4】
前記肥満細胞症は一次突然変異を伴う肥満細胞を含み、前記一次突然変異はc-KIT D816突然変異である、請求項1に記載の医薬。
【請求項5】
前記一次突然変異はD816Vである、請求項4に記載の医薬。
【請求項6】
前記肥満細胞症は、c-KIT二次突然変異を伴う肥満細胞を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
前記c-KIT二次突然変異は、Y269C、Y503_F504insAY、V560DまたはK642Eの突然変異のうちの1つである、請求項6に記載の医薬。
【請求項8】
治療が、前記肥満細胞症はc-KIT一次突然変異を伴うかどうかを判断することをさらに含む、請求項4から7のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項9】
治療が、前記肥満細胞症はc-KIT二次突然変異を伴うかどうかを判断することをさらに含む、請求項4から7のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項10】
前記肥満細胞症がc-KIT一次突然変異を伴うかどうかを判断することまたはc-KIT二次突然変異を伴うかどうかを判断することは、腫瘍試料から抽出されたDNAにおける突然変異を特定することを含む、請求項8または9に記載の医薬。
【請求項11】
前記肥満細胞症がc-KIT一次突然変異を伴うかどうかを判断することまたはc-KIT二次突然変異を伴うかどうかを判断することは、血中腫瘍DNAにおける、血中末梢血白血球における、または血中もしくは骨髄における突然変異を特定することを含む、請求項8または9に記載の医薬。
【請求項12】
前記肥満細胞症は、全身性肥満細胞症である、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項13】
前記全身性肥満細胞症は、無痛性全身性肥満細胞症、くすぶり型の全身性肥満細胞症、関連するクローン性血液非肥満細胞系統疾患を伴う全身性肥満細胞症、侵襲的全身性肥満細胞症、肥満細胞白血病、肥満細胞肉腫、皮膚肥満細胞症、および皮膚病変を含まないアナフィラキシー再発または血管崩壊を伴う全身性肥満細胞症からなる群から選択される、請求項12に記載の医薬。
【請求項14】
前記皮膚肥満細胞症は、斑点状丘疹皮膚肥満細胞症、肥満細胞腫、またはびまん性皮膚肥満細胞症からなる群から選択される、請求項13に記載の医薬。
【請求項15】
前記MAPKAP経路阻害剤は、トラメチニブ、セルメチニブ、コビメチニブ、およびビニメチニブからなる群から選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項16】
前記MAPKAP経路阻害剤は、ビニメチニブである、請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項17】
前記MAPKAP経路阻害剤は、トラメチニブである、請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項18】
前記MAPKAP経路阻害剤は、ウリキセルチニブ(ulixertinib)である、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項19】
前記c-KIT阻害剤および前記MAPKAP経路阻害剤は、実質的に同時にまたは連続的に投与される、請求項1から18のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項20】
別の癌標的治療薬、癌標的生物剤、免疫チェックポイント阻害剤、または化学療法剤をさらに含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項21】
全身性肥満細胞症の治療に使用するための医薬であって、
有効量の以下の式で表わされる化合物A:
【化2】
またはその薬学的に許容可能な塩と、有効量の1または複数のMAPKAP経路阻害剤を組合せてなり、
MAPKAP経路阻害剤は、トラメチニブ、セルメチニブ、コビメチニブビニメチニブ、およびウリキセルチニブらなる群から選択される、医薬。
【請求項22】
前記全身性肥満細胞症は、c-KIT突然変異を伴う、請求項21に記載の医薬。
【請求項23】
突然変異は、c-KIT D816突然変異である、請求項22に記載の医薬。
【請求項24】
突然変異はD816Vである、請求項22または23に記載の医薬。
【請求項25】
前記肥満細胞症は、Y269C、Y503_F504insAY、V560D、またはK642Eの突然変異のうちの1つであるさらなるc-KIT突然変異を伴う、請求項22から24のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項26】
前記MAPKAP経路阻害剤は、トラメチニブ、セルメチニブ、コビメチニブ、およびビニメチニブからなる群から選択される、請求項21から25のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項27】
前記MAPKAP経路阻害剤は、ウリキセルチニブ(ulixertinib)ある、請求項21から25のいずれか一項に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年1月31日に出願された米国特許出願第62/624,453号に対する優先権を主張するものであり、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
c-KIT(KIT、CD117、および幹細胞因子受容体としても知られる)は、III型受容体として作用する145kDaの膜貫通型チロシンキナーゼタンパク質である。染色体4q11-21に位置するc-KIT癌原遺伝子は、c-KIT受容体をコードし、そのリガンドは幹細胞因子(SCF、造血幹細胞因子、kitリガンド、肥満細胞増殖因子)である。受容体はチロシンプロテインキナーゼ活性を有し、リガンドSCFの結合は、c-KITの自己リン酸化、およびホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)などの基質とのその会合を導く。タンパク質チロシンキナーゼによるチロシンリン酸化は、細胞シグナル伝達において特に重要であり、増殖、生存、分化、アポトーシス、付着、侵襲および遊走などの主要な細胞内プロセスのためのシグナルを媒介することができる。
【0003】
受容体チロシンキナーゼc-KIT遺伝子は、肥満細胞の増殖、生存、分化およびホメオスタシスにとって重要である。c-KIT遺伝子の活性化突然変異または過剰発現は、c-KIT受容体の能力を高め、細胞内経路を開始させて、結果として異常肥満細胞増殖をもたらす。
【0004】
肥満細胞症は、皮膚、骨髄、および内臓(例えば、肝臓、脾臓、胃腸管およびリンパ節)における肥満細胞(MC)の異常蓄積によって特徴付けられる希少な障害である。成人期に始まる症例は慢性である傾向があり、皮膚に加えて骨髄が関与しているが、一方、小児期では、症状は内臓の関与なしで皮膚症状を特徴とすることが多く、また思春期の間に解決できることが多い。ほとんどの成人患者では、肥満細胞症は持続性である傾向があり、また患者の少数でより高度なカテゴリーに進行する場合がある。肥満細胞症は、患者の病徴および全体的な症状に応じて特定の種類に分類できる。肥満細胞症の種類には、皮膚肥満細胞症(例えば、斑点状丘疹性皮膚肥満細胞症、肥満細胞腫、およびびまん性皮膚肥満細胞症)および全身性肥満細胞症(例えば、無痛性全身性肥満細胞症(ISM)、くすぶり型の全身性肥満細胞症(SSM)、関連するクローン性血液非肥満細胞系列疾患を伴う全身性肥満細胞症(SM-AHN)、侵襲的全身性肥満細胞症(ASM)、肥満細胞性白血病(MCL)及び肥満細胞肉腫)が含まれる。稀な症例では、侵襲的な新生物肥満細胞の増殖が結果として末端器官障害をもたらし、患者は寿命が著しく短縮し、細胞減少療法を必要とする。c-KITの発癌性突然変異によって生じた新生物肥満細胞の病的な蓄積は、全身性肥満細胞症の原因であることが発見された。主要な活性化KIT突然変異は、残基816(KIT D816V)でのアスパラギン酸からバリンへの置換である。その肥満細胞が活性化D816V c-KIT突然変異を含有する頻度が高いものである全身性肥満細胞症を患う患者は、侵襲的疾患に対して不活性である場合があり、また当該患者は、肥満細胞メディエーター放出関連の症状を経験する場合がある。再発性アナフィラキシー、または皮膚病変の存在がない血管虚脱を伴う不活性の全身性肥満細胞症は、特定のサブタイプの不活性全身性肥満細胞症であり、このクローンMC活性化障害は、すべての肥満細胞活性化症候群のうち有意な割合を表す。V560G KIT突然変異は、全身性肥満細胞症を患う患者では極めて稀であり、その生物学的および予後の影響は不明である。現在、大部分のチロシンキナーゼ阻害剤は、進行した疾患状態において控えめな効能を示すのみであり、そして有意な副作用を伴う。さらに、KIT D816V突然変異を含む一部の侵襲的KIT突然変異は、イマチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、およびレゴラフェニブなどの古典的ATP競合KIT阻害剤に対し耐性がある。c-KIT D816Vの阻害剤、ミドスタウリンは、2017年にSMの治療のために最近承認された。
【0005】
c-KIT D816V突然変異は、全身性肥満細胞症(SM)のドライバーとして報告されたc-KIT一次突然変異であるが、特定のc-KIT阻害剤に対する耐性を与えるc-KIT二次突然変異(「耐性c-KIT二次突然変異」)もまた肥満細胞症患者において報告されており、例えばc-KIT遺伝子における、Y269C、Y503_F504insAY、V560D、もしくはK642Eの点突然変異、インフレーム欠損もしくは挿入、またはミスセンス突然変異を含む。
【0006】
c-KIT遺伝子の活性化突然変異または過剰発現は、新生物肥満細胞増殖につながる。c-KITの複雑な機能、および薬剤耐性の全身性肥満細胞症の治療におけるc-KIT阻害剤の潜在的な有用性を考慮すると、有益な治療特性を有する阻害剤および治療的処置が要望されている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、肥満細胞症細胞のアポトーシスを誘発するために、例えば1-[4-ブロモ-5-[1-エチル-7-(メチルアミノ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-イル]-2-フルオロフェニル]-3-フェニル尿素(化合物A)であるc-KIT阻害剤、ならびに、例えばトラメチニブであるMEK阻害剤、またはウリキセルチニブ等であるERK阻害剤、またはLY3009120等であるRAF阻害剤である、MAPKAP経路阻害剤の使用に一部関する。
【0008】
本開示において提供される方法は、それを必要とする患者における肥満細胞症を治療する方法であって、患者に対して、例えば、1-[4-ブロモ-5-[1-エチル-7-(メチルアミノ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-イル]-2-フルオロフェニル]-3-フェニル尿素(本明細書に記載の化合物A)である有効量のc-KIT阻害剤、および有効量のマイトジェン活性化プロテインキナーゼの阻害剤(MEK阻害剤)、および/または有効量の細胞外シグナル調節キナーゼ阻害剤(ERK阻害剤)、を投与することを含む。
【0009】
例えば、それを必要とする患者における全身性肥満細胞症を治療する方法であって、患者に対して、有効量の1-[4-ブロモ-5-[1-エチル-7-(メチルアミノ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-イル]-2-フルオロフェニル]-3-フェニル尿素またはその薬学的に許容可能な塩、および有効量のマイトジェン活性化プロテインキナーゼの阻害剤(MEK阻害剤)またはERK阻害剤を投与することを含む。
【0010】
また、この開示において、それを必要とする患者における肥満細胞症を治療する方法であって、患者に対して、有効量のc-KIT阻害剤、および有効量のRAF阻害剤を投与することを含む方法を意図する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1-1】図1Aは、HMC1.1 V560G(左パネル)およびHMC1.2 V560G/D816V(右パネル)の細胞株におけるビヒクル対照と比較した、化合物Aと共に図示した薬剤での処置後の細胞増殖のグラフ表示を示す。
【0012】
図1-2】図1Bは、HMC1.1 V560G(左パネル)およびHMC1.2 V560G/D816V(右パネル)の細胞株におけるビヒクル対照と比較した、化合物Bと共に図示した薬剤での処置後の細胞増殖のグラフ表示を示す。
【0013】
図2-1】図2Aは、HMC1.2 V560G/D816V細胞株における、化合物Aおよびトラメチニブによる図示した様々な処置後のカスパーゼ活性のグラフ表示を示す。
【0014】
図2-2】図2Bは、HMC1.2 V560G/D816V細胞株における化合物Aおよびトラメチニブによる様々な処置に関する併用指数法(combination index method)に基づく相乗作用のマトリクス図を提供する。
【0015】
図2-3】図2Cは、MEK阻害剤トラメチニブと化合物Aとの併用に関する併用指数プロットを提供する。
【0016】
図3-1】図3Aは、HMC1.2 V560G/D816V細胞株における、化合物Bおよびトラメチニブによる図示した様々な処置後のカスパーゼ活性のグラフ表示を示す。
【0017】
図3-2】図3Bは、HMC1.2 V560G/D816V細胞株における化合物Bおよびトラメチニブによる様々な処置のための併用指数法に基づく相乗作用のマトリクス図を提供する。
【0018】
図3-3】図3Cは、MEK阻害剤トラメチニブと化合物Bとの併用に関する併用指数プロットを提供する。
【0019】
図4-1】図4Aは、HMC1.2 V560G/D816V細胞株における、化合物Aおよびビニメチニブによる図示した様々な処置後のカスパーゼ活性のグラフ表示を示す。
【0020】
図4-2】図4Bは、HMC1.2 V560G/D816V細胞株における化合物Aおよびビニメチニブによる様々な処置に関する併用指数法に基づく相乗作用のマトリクス図を提供する。
【0021】
図4-3】図4Cは、MEK阻害剤ビニメチニブと化合物Aとの併用に関する併用指数プロットを提供する。
【0022】
図5-1】図5Aは、HMC1.2 V560G/D816V細胞株における、化合物Bおよびビニメチニブによる図示した様々な処置後のカスパーゼ活性のグラフ表示を示す。
【0023】
図5-2】図5Bは、HMC1.2 V560G/D816V細胞株における化合物Bおよびビニメチニブによる様々な処置に関する併用指数法に基づく相乗作用のマトリクス図を提供する。
【0024】
図5-3】図5Cは、MEK阻害剤ビニメチニブと化合物Bとの併用に関する併用指数プロットを提供する。
【0025】
図6-1】図6Aは、HMC1.2 V560G/D816V細胞株における、化合物Aおよびコビメチニブによる図示した様々な処置後のカスパーゼ活性のグラフ表示を示す。
【0026】
図6-2】図6Bは、HMC1.2 V560G/D816V細胞株における化合物Aおよびコビメチニブによる様々な処置のための併用指数法に基づく相乗作用のマトリクス図を提供する。
【0027】
図6-3】図6Cは、MEK阻害剤コビメチニブと化合物Aとの併用に関する併用指数プロットを提供する。
【0028】
図7-1】図7Aは、HMC1.2 V560G/D816V細胞株における、化合物Bおよびコビメチニブによる図示した様々な処置後のカスパーゼ活性のグラフ表示を示す。
【0029】
図7-2】図7Bは、HMC1.2 V560G/D816V細胞株における化合物Bおよびコビメチニブによる様々な処置に関する併用指数法に基づく相乗作用のマトリクス図を提供する。
【0030】
図7-3】図7Cは、MEK阻害剤コビメチニブと化合物Bとの併用に関する併用指数プロットを提供する。
【0031】
図8-1】図8Aは、HMC1.2 V560G/D816V細胞株における、化合物AおよびERK阻害剤ウリキセルチニブ(ulixertinib)による図示した様々な処置後のカスパーゼ活性のグラフ表示を示す。
【0032】
図8-2】図8Bは、HMC1.2 V560G/D816V細胞株における化合物AおよびERK阻害剤ウリキセルチニブによる様々な処置に関する併用指数法に基づく相乗作用のマトリクス図を提供する。
【0033】
図8-3】図8Cは、ERK阻害剤ウリキセルチニブと化合物Aとの併用に関する併用指数プロットを提供する。
【0034】
図9図9Aは、HMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物A、単剤トラメチニブ、およびMEK阻害剤トラメチニブと化合物Aとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害を示す。
【0035】
図9Bは、HMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物A、単剤トラメチニブ、およびMEK阻害剤トラメチニブと化合物Aとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害のグラフ表示を示す。矢印は、コロニー増殖がないことを示す。
【0036】
図10図10Aは、HMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物B、単剤トラメチニブ、およびMEK阻害剤トラメチニブと化合物Bとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害を示す。
【0037】
図10Bは、HMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物B、単剤トラメチニブ、およびMEK阻害剤トラメチニブと化合物Bとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害のグラフ表示を示す。矢印は、コロニー増殖がないことを示す。
【0038】
図11図11Aは、HMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物A、単剤ビニメチニブ、およびMEK阻害剤ビニメチニブと化合物Aとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害を示す。
【0039】
図11Bは、HMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物A、単剤ビニメチニブ、およびMEK阻害剤ビニメチニブと化合物Aとの併用、による治療からのコロニー増殖の阻害のグラフ表示を示す。矢印は、コロニー増殖がないことを示す。
【0040】
図12図12Aは、HMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物B、単剤ビニメチニブ、およびMEK阻害剤ビニメチニブと化合物Bとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害を示す。
【0041】
図12Bは、HMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物B、単剤ビニメチニブ、およびMEK阻害剤ビニメチニブと化合物Bとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害のグラフ表示を示す。矢印は、コロニー増殖がないことを示す。
【0042】
図13図13Aは、HMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物A、単剤コビメチニブ、およびMEK阻害剤コビニメチニブと化合物Aとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害を示す。
【0043】
図13Bは、HMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物A、単剤コビメチニブ、およびMEK阻害剤コビメチニブと化合物Aとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害のグラフ表示を示す。
【0044】
図14図14Aは、HMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物B、単剤コビメチニブ、およびMEK阻害剤コビメチニブと化合物Bとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害を示す。
【0045】
図14Bは、HMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物B、単剤コビメチニブ、およびMEK阻害剤コビメチニブと化合物Bとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害のグラフ表示を示す。
【0046】
図15図15Aは、空のベクター(EV、左パネル)、またはN-ras G12D(右パネル)を形質移入したHMC1.2 V560G/D816V細胞中における24時間での化合物Aおよびトラメチニブによる様々な処置後のカスパーゼ活性のグラフ表示を示す。
【0047】
図15Bは、空のベクター(左パネル)、またはN-ras G12D(右パネル)を形質移入したHMC1.2 V560G/D816V細胞中における48時間での化合物Aおよびトラメチニブによる様々な処置後のカスパーゼ活性のグラフ表示を示す。
【0048】
図16図16Aは、空のベクター(EV、左パネル)、またはN-ras G12D(右パネル)を形質移入したHMC1.2 V560G/D816V細胞中における24時間での化合物Aおよびコビメチニブによる様々な治療後のカスパーゼ活性のグラフ表示を示す。
【0049】
図16Bは、空のベクター(左パネル)、またはN-ras G12D(右パネル)を形質移入したHMC1.2 V560G/D816V細胞中における48時間での化合物Aおよびコビメチニブによる様々な処置後のカスパーゼ活性のグラフ表示を示す。
【0050】
図17-1】図17Aは、空のベクター(EV)を形質移入したHMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物A、単剤トラメチニブ、およびMEK阻害剤トラメチニブと化合物Aとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害を示す。
【0051】
図17Bは、空のベクター(EV)を形質移入したHMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物A、単剤トラメチニブ、およびMEK阻害剤トラメチニブと化合物Aとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害のグラフ表示を示す。矢印は、コロニー増殖がないことを示す。
【0052】
図17-2】図17Cは、N-ras G12Dを形質移入したHMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物A、単剤トラメチニブ、およびMEK阻害剤トラメチニブと化合物Aとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害を示す。
【0053】
図17Dは、N-ras G12Dを形質移入したHMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物A、単剤トラメチニブ、およびMEK阻害剤トラメチニブと化合物1との併用、による処置からのコロニー増殖の阻害のグラフ表示を示す。矢印は、コロニー増殖がないことを示す。
【0054】
図18-1】図18Aは、空のベクター(EV)を形質移入したHMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物A、単剤コビメチニブ、およびMEK阻害剤コビメチニブと化合物Aとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害を示す。
【0055】
図18Bは、空のベクター(EV)を形質移入したHMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物A、単剤コビメチニブ、およびMEK阻害剤コビメチニブと化合物Aとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害を示す。矢印は、コロニー増殖がないことを示す。
【0056】
図18-2】図18Cは、N-ras G12Dを形質移入したHMC1.2 V560G/D816V細胞における、単剤化合物A、単剤コビメチニブ、およびMEK阻害剤コビメチニブと化合物Aとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害を示す。
【0057】
図18Dは、N-ras G12Dを形質移入したHMC1.2V560G/D816V細胞における、単剤化合物A、単剤コビメチニブ、およびMEK阻害剤コビメチニブと化合物Aとの併用、による処置からのコロニー増殖の阻害のグラフ表示を示す。矢印は、コロニー増殖がないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
添付の実施例に示されるように、例えば1-[4-ブロモ-5-[1-エチル-7-(メチルアミノ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-イル]-2-フルオロフェニル]-3-フェニル尿素(化合物A)であるc-KIT阻害剤と、例えばMEK阻害剤トラメチニブ、またはERK阻害剤ウリキセルチニブ、またはRAF阻害剤LY3009120である、MAPKAP経路阻害剤との併用が、予期せずに、相乗作用を発揮して肥満細胞症細胞のアポトーシスを誘発することが見られる。加えて、本明細書に開示される併用療法は、単に細胞増殖抑制性であることと対立するものとして、細胞致死性である。
【0059】
いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、多くのc-KIT阻害剤は、c-KITの特定の突然変異体の形態のみを阻害し、SMの原因であるc-KIT D816V突然変異を効果的に阻害しないと考えられる。本開示は、c-KIT阻害剤をMAPKAP経路阻害剤と組み合わせて使用して、c-KITおよびMEKの両方を阻害することにより、c-KIT媒介性肥満細胞症を治療する方法を提供する。特定の実施形態では、c-KIT阻害剤は、本明細書では、化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩、化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩、ミドスタウリンもしくはその薬学的に許容可能な塩、BLU-285もしくはその薬学的に許容可能な塩、PLX9486もしくはその薬学的に許容可能な塩、またはクレノラニブ(crenolanib)もしくはその薬学的に許容可能な塩として開示する。驚くべきことに、例えば化合物A及び化合物B(およびその薬学的に許容可能な塩)であるc-KIT阻害剤は、MEK、ERK、またはRAFの阻害剤と相乗作用を発揮し、肥満細胞症細胞の増殖を阻害し、且つ、肥満細胞症細胞のアポトーシスを誘発する。
【0060】
〔0060〕したがって、特定の実施形態では、本開示は、例えばc-KIT突然変異を含む肥満細胞である肥満細胞をc-KIT阻害剤およびMAPKAP経路阻害剤と接触することによって、細胞致死性の肥満細胞死滅を誘発すること、肥満細胞のアポトーシスを誘発すること、肥満細胞の成長もしくは増殖を阻害すること、肥満細胞メディエーター放出を阻害すること、組織もしくは器官における蓄積する肥満細胞の量を減少すること、例えば肥満細胞性白血病もしくは肥満細胞肉腫等の肥満細胞症関連腫瘍の体積を減少すること、および/または、肥満細胞の再増殖を阻害すること、を誘発する方法を提供する。様々な実施形態では、肥満細胞は、インビトロ、インビボまたはエクソビボで接触させる。特定の実施形態では、c-KIT阻害剤は、化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩、化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩、ミドスタウリンもしくはその薬学的に許容可能な塩、BLU-285もしくはその薬学的に許容可能な塩、PLX9486もしくはその薬学的に許容可能な塩、またはクレノラニブ(crenolanib)またはその薬学的に許容可能な塩として本明細書に開示され、本明細書においてMEK阻害剤は、トラメチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、またはビニメチニブとして開示され、ERK阻害剤はウリキセルチニブ、SCH772984、LY3214996、ラボキセルチニブ(ravoxertinib)およびVX-11eを含むがこれに限定されるものではなく、またRAF阻害剤は、LY3009120、ベムラフェニブ、またはダブラフェニブを含むがこれに限定されるものではない。
【0061】
特定の実施形態では、本開示は、肥満細胞症、肥満細胞性白血病、または急性骨髄性白血病を有する対象を治療する方法であって、対象に対して、(i)例えば1-[4-ブロモ-5-[1-エチル-7-(メチルアミノ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-イル]-2-フルオロフェニル]-3-フェニル尿素もしくはその薬学的に許容可能な塩、または1-(5-(7-アミノ-1-エチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-イル)-4-ブロモ-2-フルオロフェニル)-3-フェニル尿素もしくはその薬学的に許容可能な塩であるKIT阻害剤と、(ii)例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブであるMAPKAP経路阻害剤とを、有効量で投与することを含む上記方法を含む。本明細書に開示される方法のいずれかの特定の実施形態では、肥満細胞症は、肥満細胞中のc-KIT遺伝子のD816V突然変異から生じた全身性肥満細胞症である。
定義
【0062】
本明細書において使用される場合、「化合物Aおよび化合物B」とは、1-[4-ブロモ-5-[1-エチル-7-(メチルアミノ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-イル]-2-フルオロフェニル]-3-フェニル尿素、および1-(5-(7-アミノ-1-エチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-イル)-4-ブロモ-2-フルオロフェニル)-3-フェニル尿素をそれぞれ指す。化合物Aおよび化合物Bの薬学的に許容可能な塩、互変異性体、水和物、および溶媒和物もまた、本開示において意図される。化合物Aおよび化合物Bの構造を以下に示す:
【化1】


1-[4-ブロモ-5-[1-エチル-7-(メチルアミノ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-イル]-2-フルオロフェニル]-3-フェニル尿素(化合物A)
【化2】

1-(5-(7-アミノ-1-エチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-イル)-4-ブロモ-2-フルオロフェニル)-3-フェニル尿素(化合物B)
【0063】
化合物Aおよび化合物Bの製造方法は、参照によりその内容が本明細書に組み込まれる米国特許第8461179B1号公報に開示されている。
【0064】
例示的な方法および材料を、本明細書に記載している。明細書および添付の特許請求の範囲において、文脈から別段に明示されない限り、単数形は複数形も含む。別段に規定しない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって普遍的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0065】
〔0065〕本開示全体を通して、様々な特許、特許出願、および公開公報が参照される。これら特許、特許出願および公開公報の開示はその全体が、本開示の日付において当業者に公知である当技術の状況をさらに詳細に記述するために、参照により本開示に組み込まれる。それら特許、特許出願および公開公報と本開示との間に何らかの不一致がある場合には、本開示が優先されることとなる。
簡便のため、本明細書、実施例および特許請求の範囲に採用される特定の語を、ここにまとめる。別段に規定しない限り、本開示で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術の当業者によって普遍的に理解される意味と同じ意味を有する。本開示において提示される群または語に対して提示される最初の定義は、別段に示さない限り、本開示全体を通じて当該群または語に対して個々に、または別の群の一部として適用される。
【0066】
「薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤」としては、ヒトまたは家畜における使用に許容可能であるとして、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)に承認された任意のアジュバント、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、色素/着色剤、調味料(flavor enhancer)、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶媒または乳化剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
「薬学的に許容可能な塩」としては、酸付加塩が挙げられる。
【0068】
「薬学的に許容可能な酸付加塩」とは、遊離塩基の生物学的な有効性および特性を保持するそうした塩を指し、それらは生物的に望ましくないものでもなく、またはそれ以外の望ましくないものでもなく、そして例えば、限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、および例えば限定されないが、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ショウノウ酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸などの有機酸で形成される。
【0069】
「医薬組成物」とは、本明細書に記載の化合物(例えば化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩)と、生物学的に活性な化合物の、例えばヒトである哺乳動物への送達に関して、当技術において概して許容可能である媒体との製剤を指す。そのような媒体としては、それらのためのすべての薬学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤が挙げられる。
【0070】
〔0001〕「MAPKAP経路阻害剤」は、MAPキナーゼシグナル伝達経路の阻害剤である。この経路の阻害剤には、RAS阻害剤、RAF阻害剤(例えば、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、LY3009120)、MEK阻害剤(例えば、トラメチニブ、ビニメチニブ、コビメチニブ)、およびERK阻害剤(例えば、ウリキセルチニブ)が含まれる。
【0071】
〔00070〕例えばMAPKAP経路阻害剤と組み合わせたc-KIT阻害剤である、本開示の併用療法での「治療を必要とする」対象または患者には、例えば肥満細胞症、肥満細胞白血病、または急性骨髄性白血病である、有益な治療結果を達成するために本明細書に開示される併用で治療することが可能である疾患および/または症状を有する対象が含まれる。肥満細胞症の治療における有益な転帰は、IWG-MRT-ECNM基準(Gotlib et al、Blood 2013;121:2393-401)により定義されるような完全寛解、部分奏効、臨床的改善、または安定病態を含み得る。特定の実施形態においては、治療を必要とする対象は、皮膚肥満細胞症(例えば、斑点状丘疹性皮膚肥満細胞症、肥満細胞腫、およびびまん性皮膚肥満細胞症)または全身性肥満細胞症(例えば、無痛性全身性肥満細胞症、くすぶり型の全身性肥満細胞症、関連するクローン性血液非肥満細胞系列疾患を伴う全身性肥満細胞、侵襲的全身性肥満細胞症、肥満細胞性白血病および肥満細胞肉腫)に悩まされている。特定の実施形態では、対象は哺乳動物であり、例えば、ヒトまたは他の哺乳動物である。
【0072】
本明細書に開示される化合物または他の治療薬と関連して使用する場合、「有効量」の語は、疾患または障害を治療または予防するために有用である、例えば化合物AまたはMAPKAP経路阻害剤である、単独または併用での、ある量の治療薬を指す。併用療法で使用する治療薬の有効量は、もう一方の薬剤が存在しない状態での治療薬の一方または両方の量が、疾患または障害を治療または予防するのに有効でなくても、併用療法で使用するときに疾患または障害の治療または予防に有用であるような各治療薬の量である。特定の実施形態では、有効量は、細胞致死性の肥満細胞死滅を誘発すること、肥満細胞のアポトーシスを誘発すること、組織または器官内の蓄積した肥満細胞の量を減少させること、肥満細胞症症状を減少させること、肥満細胞メディエーター放出を阻害すること、肥満細胞の増殖を阻害すること、および/または、肥満細胞の後退を誘発することを結果的に生じる量であり、肥満細胞は、活性化c-KIT D816V突然変異を含むc-KITキナーゼにおいて活性化突然変異を包含するものである。「有効量」は、投与の形態、疾患または障害の特定の位置、ならびに対象の年齢、体重および全体的な健康に応じて変更可能である。投与する化合物の量は、疾患または症状の程度、重篤度および種類、所望される治療の量、ならびに医薬製剤の放出特性に依存するであろう。また、対象の健康状態、大きさ、重量、年齢、性別および薬剤に対する耐性にも依存するであろう。典型的には、化合物は、望ましい治療効果を実現するのに充分な期間、投与する。
【0073】
「治療」、「治療する」および「治療すること」の語は、例えば肥満細胞症または急性骨髄性白血病(AML)を患う患者である、治療しようとする患者における介入の全範囲を含むことを意味する。治療することは、障害を治癒、改善、または少なくとも部分的に緩和させることであってもよい。特定の実施形態では、治療は、治療しようとする対象において、細胞致死性の肥満細胞死滅を誘発すること、肥満細胞のアポトーシスを誘発すること、組織または器官内の蓄積した肥満細胞の量を減少させること、肥満細胞症症状を減少させること、肥満細胞メディエーター放出を阻害すること、肥満細胞の増殖を阻害すること、および/または、肥満細胞の後退を誘発することを意図して実行する。特定の実施形態では、本明細書に開示される併用療法による治療は、たとえ肥満細胞症が実際に除去されなくとも、肥満細胞症症状のうちの1または複数を緩和する、遅延させる、または逆行させる、および/または肥満細胞症の後退を誘発する。いくつかの実施形態では、治療には、例えば肥満細胞症またはAMLである疾患または障害を、完全に除去することが含まれる。他の実施形態においては、治療は、IWG-MRT-ECNM基準(Gotlib et al、Blood 2013;121:2393-401)により定義されるような、完全寛解、部分奏効、臨床的改善、または安定病態を結果として生じる。
【0074】
本明細書において使用される場合、「肥満細胞」には、肥満細胞(マスト細胞とも呼ばれる)およびCD34+肥満細胞前駆細胞を含む。
【0075】
本明細書で使用される場合、「新生物」は、通常よりもより急速な細胞増殖によって増殖する異常組織を指す。新生物は、構造機構の部分的または完全な欠如、および正常組織との機能的協調を見せ、通常は良性(良性腫瘍)または悪性(癌)のいずれかでありうる組織の別個の腫瘤を形成する。
【0076】
〔00075〕本明細書で使用される場合、「腫瘍」とは腫瘤を指す。これは、良性(概して無害)または悪性(癌性)の増殖を指す場合もある語である。悪性の増殖は、実質臓器または骨髄が起源であり得る。後者は多くの場合、液性腫瘍と呼ばれる。「腫瘍」は、肥満細胞白血病および肥満細胞肉腫を包含し、本明細書ではまとめて「肥満細胞症腫瘍」と称する。
【0077】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法に従う肥満細胞症を治療することの治療効果は、当技術で公知の標準的な応答判定基準を使用して測定され得る。例えば、侵襲的全身性肥満細胞症、肥満細胞性白血病、および骨髄性新生物と関連する全身性肥満細胞症に対する治療の効果を定量化するために用いる「完全寛解(CR)、部分寛解(PR)、臨床的改善(CI)、または安定病態(SD)に関する応答判定基準」は、IWG-MRT-ECNM(Gotlib et al,Blood 2013;121:2393-401)により定義されるそれら基準のいずれかであり得る。例えば、完全寛解(CR)は、4つの基準全てが必要であり、かつ、奏効期間が12週以上である必要があり、BMまたは他の生検された皮膚以外の臓器において凝集するコンパクトな新生物肥満細胞の存在がない。トリプターゼの血清濃度が<20ng/mL†であり、正常白血球数(normal differential)を伴うANCとして規定される末梢血球数の寛解が≧1×10/Lであり、Hbレベル≧11g/dLであり、かつ、血小板数≧100×10/Lであり、また触知できる肝脾腫大症と生検により確定診断されたまたは疑わしい全てのSM関連臓器損傷(CI所見)とについての完全寛解である;部分寛解(PR)*は、3つの基準全てが必要であり、また奏効期間が12週以上である必要があり、CRおよび進行性疾患(PD)両方の存在がなく、骨髄におけるおよび/または生検確定適格のSM関連臓器障害での皮膚以外の臓器における新生物MCが≧50%まで減少すること、トリプターゼの血清濃度が≧50%減少すること;ならびに、1または複数の生検により確定診断されたまたは疑わしいSM関連臓器損傷(CI所見)の回復、を伴うものである;臨床的改善(CI)は、奏効期間が12週以上である必要があり、満たそうとする非造血系および/または造血系の応答基準(表3参照)のうちの1以上が必要であり、CR/PRおよび割り当てまたは進行性疾患(PD)の両方の存在がないものである。安定病態(SD)は、CR、PR、CI、またはPDの基準を満たしていないものである。
【0078】
応答を判定するためのガイドラインには、(1)疾患に関連したグレード2以上の器官損傷のみが、臨床試験における主要評価項目として評価可能である、(2)CR、PR、SD、PD、および損失または応答(LOR)の応答判定は、試験の文脈におけるこれらのグレード2以上の器官損傷の所見にのみ適用されるべきである、(3)患者を治験から除外する時点における疾患状態は、最初のグレード2以上の臓器損傷の知見の更新された状態と、特に関連する、(4)薬剤関連毒性および/またはその他の臨床問題の排除(例えば、貧血や輸血依存が悪化している場合の胃腸管出血など)は、基準のグレード2以上の器官損傷が悪化している患者において指定のPDまたはLORを割り当てる前に行わなければならない、ことを含む。
【0079】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法に従ったAMLを治療することの治療効果は、当技術で公知の標準的な応答判定基準を使用して測定され得る。例えば、AMLに対する治療の効果を定量化するために使用される「AMLの治療のための応答判定基準」は、Blood.2017 Jan 26;129(4):424-447で定義されるような、最小限の残存疾患(CRMRD-)を含まない完全寛解(CR)、完全寛解(CR)、不完全な血液回復を伴うCR(CR)、形態学的無白血病状態(MLFS)、部分寛解(PR)、安定病態(SD)、または進行性疾患(PD)を含めた、以下に規定される基準のいずれかであり得、また以下のとおり要約される:最小限の残存疾患を含まない完全寛解(CRMRD-):治療前試験を行う場合であれば、RT-qPCRによる遺伝子マーカの陰性を伴うCR、またはMFCによる陰性を伴うCRである、完全寛解(CR):骨髄芽球<5%であり;血流中の芽球およびアウエル小体を伴う芽球が存在せず;髄外疾患が存在せず;髄外疾患が存在せず;絶対好中球数(ANC)≧1.0×10/L(1000/μL)であり;血小板数≧100×10/L(100000/μL)である;不完全な血液回復を伴うCR(CR):残存好中球減少(<1.0×10/L[1000/μL])または血小板減少(<100×10/L[100000/μL])を除く全てのCR基準の;形態学的無白血病状態(MLFS):骨髄芽球<5%であり;アウエル小体を伴う芽球が存在せず;髄外疾患が存在せず;血液回復は必要としない;部分寛解(PR):CRの全ての血液基準;骨髄芽球の割合の5%~25%への減少;および、少なくとも50%の治療前骨髄芽球の割合の減少。
【0080】
「併用療法」とは、2以上の治療薬、例えばc-KIT阻害剤(化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、ミドスタウリン、BLU-285、PLX9486またはクレノラニブ等)と、MAPKAP経路阻害剤(トラメチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、LY3009120を含むがこれに限定されない)とを、患者に投与することを含む治療である。2以上の治療薬は、同時に、例えば、別個の医薬組成物中でまたは同じ医薬組成物中で、送達されてもよく、または2以上の治療薬は、異なる時点で送達されてもよい。例えば、2以上の治療薬は同時にまたは重複する時間の間に送達されてもよく、および/または、1つの治療薬を、その他の治療薬の前または後に送達してもよい。化合物AなどのKIT阻害剤およびMAPKAP経路阻害剤の併用を伴う治療は、両方の薬剤での同時治療の期間が先行する、または当該期間がその後に続く、いずれかの単剤での治療を含んでいてもよい。しかしながら、一部の期間中に、有効量の2以上の治療薬が患者の体内に存在することが意図される。
治療方法
【0081】
〔00080〕一実施形態では、本開示は、例えば全身性肥満細胞症(SM)である、肥満細胞症、任意にc-KIT媒介性肥満細胞症を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に対して、有効量のc-KIT阻害剤を、例えばトラメチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120である有効量のMAPKAP経路阻害剤と組み合わせて提供することまたは投与することを含む上記方法を提供する。一実施形態では、本開示は、例えば全身性肥満細胞症(SM)である、肥満細胞症、任意にc-KIT媒介性肥満細胞症を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に対して、有効量の化合物A(またはその薬学的に許容可能な塩)または化合物B(またはその薬学的に許容可能な塩)を、例えばトラメチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120である有効量のMAPKAP経路阻害剤と組み合わせて提供することまたは投与することを含む上記方法を提供する。関連する実施形態では、本開示は、例えば肥満細胞性白血病または肥満細胞肉腫である、肥満細胞腫瘍、任意にc-KIT媒介性肥満細胞症を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に対して、有効量のc-KIT阻害剤を、例えばトラメチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120である有効量のMAPKAP経路阻害剤と組み合わせて提供することまたは投与することを含む上記方法を提供する。関連する実施形態では、本開示は、例えば肥満細胞性白血病または肥満細胞肉腫である、肥満細胞腫瘍、任意にc-KIT媒介性肥満細胞腫瘍を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に対して、有効量の化合物A(またはその薬学的に許容可能な塩)または化合物B(またはその薬学的に許容可能な塩)を、例えばトラメチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120である有効量のMAPKAP経路阻害剤と併用して提供することまたは投与することを含む上記方法を提供する。
【0082】
別の実施例においては、本開示は、それを必要とする患者における肥満細胞症を治療する方法であって、患者に対して、有効量のc-KIT阻害剤、および有効量の1または複数のMAPKAP経路阻害剤を投与することを含む方法を提供する。こうしたMAPKAP経路阻害剤は、急速に進行する線維肉腫(RAF)キナーゼ阻害剤、マイトジェン活性化プロテインキナーゼの阻害剤(MEK阻害剤)、および細胞外シグナル調節キナーゼ阻害剤(ERK阻害剤)からなる群から選択することが可能である。
【0083】
かかる開示された方法の一実施形態では、肥満細胞症はc-KIT突然変異を伴う。いくつかの実施形態においては、c-KIT突然変異は活性化突然変異である。
【0084】
別の実施形態においては、肥満細胞症は、c-KIT遺伝子のエクソン17における一次突然変異を伴う肥満細胞を含みうる。いくつかの実施形態においては、一次突然変異は、c-KIT D816突然変異である。いくつかの実施形態においては、一次突然変異は、D816V、D816Y、D816F、D816H、F522C、K5091、V560G、V559G、およびdel419のうちの1つである。いくつかの実施形態においては、一次突然変異は、D816Vである。
【0085】
肥満細胞症はまた、c-KIT二次突然変異を伴う肥満細胞を含んでもよい。いくつかの実施形態においては、c-KIT二次突然変異は、エクソン9、11、13または17のうちの1つにある。いくつかの実施形態においては、c-KIT二次突然変異は、Y269C、Y503_F504insAY、V560DまたはK642Eの突然変異のうちの1つである。
【0086】
〔00085〕本開示の方法は、肥満細胞症はc-KIT一次突然変異を伴うかどうかを判断することをさらに含み得る。例えば、この方法は、肥満細胞症はc-KIT二次突然変異を伴うかどうかを判断することをさらに含む。いくつかの実施形態においては、肥満細胞症はc-KIT一次突然変異を伴うかどうかを判断することまたはc-KIT二次突然変異を伴うかどうかを判断することは、腫瘍試料から抽出されたDNAにおける突然変異を特定することを含む。さらに別の実施形態においては、肥満細胞症はc-KIT一次突然変異を伴うかどうかを判断することまたはc-KIT二次突然変異を伴うかどうかを判断することは、血液中の腫瘍DNAにおける突然変異を特定することまたは血液中の末梢血白血球における突然変異を特定することを含む。
【0087】
肥満細胞症は、全身性肥満細胞症であり得る。いくつかの実施形態においては、全身性肥満細胞症は、不活性全身性肥満細胞症、くすぶり型の全身性肥満細胞症、関連するクローン性血液非肥満細胞系統疾患を伴う全身性肥満細胞症、侵襲的全身性肥満細胞症、肥満細胞白血病、及び肥満細胞肉腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態においては、肥満細胞症は、不活性全身性肥満細胞症であり、任意に、アナフィラキシー再発、または皮膚病変が存在しない血管崩壊を伴う全身性肥満細胞症である。いくつかの実施形態においては、肥満細胞症は、くすぶり型の全身性肥満細胞症である。
【0088】
いくつかの実施形態においては、肥満細胞症は、関連するクローン性血液非肥満細胞系統疾患を伴う全身性肥満細胞症である。いくつかの実施形態においては、肥満細胞症は、侵襲的全身性肥満細胞症である。いくつかの実施形態においては、肥満細胞症は、肥満細胞白血病または肥満細胞肉腫である。いくつかの実施形態においては、肥満細胞症は、皮膚肥満細胞症である。いくつかの実施形態においては、肥満細胞症は、斑点状丘疹皮膚肥満細胞症、肥満細胞腫、またはびまん性皮膚肥満細胞症からなる群から選択される。
【0089】
こうした開示の方法においては、c-KIT阻害剤は、1-[4-ブロモ-5-[1-エチル-7-(メチルアミノ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-イル]-2-フルオロフェニル]-3-フェニル尿素またはその薬学的に許容可能な塩、ミドスタウリンまたはその薬学的に許容可能な塩、イマチニブメシル酸塩、スニチナブリンゴ酸塩(sunitinab malate)、ミドスタウリン、レゴラフェニブ、クレノラニブ(crenolanib)、PTX9486、もしくはBLU-285(アバプリチニブ)またはその薬学的に許容可能な塩からなる群から選択することが可能である。
【0090】
さらに、MEK阻害剤は、トラメチニブ、セルメチニブ、コビメチニブ、およびビニメチニブからなる群から選択することが可能である。いくつかの実施形態においては、MEK阻害剤はビニメチニブである。いくつかの実施形態においては、MEK阻害剤はトラメチニブである。いくつかの実施形態においては、ERK阻害剤は、ウリキセルチニブ、SCH772984、およびLY3214996からなる群から選択される。いくつかの実施形態においては、c-KIT阻害剤およびMEKおよび/またはERK阻害剤は、実質的に同時に、または連続的に投与される。
【0091】
〔00090〕この方法はまた、別の癌標的治療薬、癌標的生物剤、免疫チェックポイント阻害剤、または化学療法剤を投与することを含んでもよい。
【0092】
さらに、意図した方法に従って、有効量のc-KIT阻害剤の投与、および有効量のマイトジェン活性化プロテインキナーゼの阻害剤(MEK阻害剤)、および/または有効量の細胞外シグナル調節キナーゼ阻害剤(ERK阻害剤)の2週間以上の投与により、結果として少なくとも部分寛解の患者をもたらすことが可能である。
【0093】
また、それを必要とする患者における全身性肥満細胞症を治療する方法であって、患者に対して、有効量の1-[4-ブロモ-5-[1-エチル-7-(メチルアミノ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-イル]-2-フルオロフェニル]-3-フェニル尿素、またはその薬学的に許容可能な塩と、有効量のMAPKAP経路阻害剤とを投与することを含む上記方法を提供する。こうした開示の方法においては、MAPKAP経路阻害剤は、急速に進行する線維肉腫(RAF)キナーゼ阻害剤、マイトジェン活性化プロテインキナーゼの阻害剤(MEK阻害剤)、および細胞外シグナル調節キナーゼ阻害剤(ERK阻害剤)からなる群から選択される。
【0094】
全身性肥満細胞症は、一実施形態においては、c-KIT突然変異を伴うことができる。例えば、突然変異はc-KIT D816突然変異であることが可能である。いくつかの実施形態においては、突然変異は、D816V、D816Y、D816F、D816H、F522C、K5091、V560G、V559G、およびdel419のうちの1つである。いくつかの実施形態においては、突然変異は、A553D、C433Y、D419Y、D572A、D816F、D816H、D816I、D816V、D816Y、D820G、del419、dup(501-502)、E839K、F522C、I817V、InsFF419、InsV815-I816、K509I、N822I、R815K、T417V、V560G、V559IまたはY418Yのうちの1つである。いくつかの実施形態においては、突然変異は、D816Vである。
【0095】
さらに、肥満細胞症は、Y269C、Y503_F504insAY、V560D、またはK642Eの突然変異のうちの1つであるさらなるc-KIT突然変異を伴ってもよい。
【0096】
〔00095〕こうした開示の方法においては、MEK阻害剤は、トラメチニブ、セルメチニブ、コビメチニブ、およびビニメチニブからなる群から選択することが可能である。いくつかの実施形態においては、MEK阻害剤はビニメチニブである。いくつかの実施形態においては、MEK阻害剤はトラメチニブである。ERK阻害剤は、ウリキセルチニブ、SCH772984、およびLY3214996からなる群から選択することが可能である。
【0097】
本開示は、それを必要とする患者における肥満細胞症を治療する方法であって、患者に対して、有効量のc-KIT阻害剤、および有効量のRAF阻害剤を投与することを含む上記方法をさらに提供する。
【0098】
こうした開示の方法においては、RAF阻害剤は、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、およびLY3009120を含む汎RAF阻害剤またはB-RAF阻害剤とすることが可能である。さらに、c-KIT阻害剤は、1-[4-ブロモ-5-[1-エチル-7-(メチルアミノ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-イル]-2-フルオロフェニル]-3-フェニル尿素、またはその薬学的に許容可能な塩とすることが可能である。
【0099】
本明細書に開示される方法の特定の実施形態においては、肥満細胞症または肥満細胞腫瘍を治療する方法を含み、当該方法は、細胞致死性の肥満細胞死滅を誘発すること、肥満細胞のアポトーシスを誘発すること、組織または器官内の蓄積した肥満細胞の量を減少させること、肥満細胞症症状を減少させること、肥満細胞メディエーター放出を阻害すること、肥満細胞の増殖を阻害すること、および/または、肥満細胞の後退を誘発することを含み、肥満細胞は、例えば活性化KIT D816V突然変異等のc-KITキナーゼにおける1または複数の活性化突然変異を包含する。特定の実施形態においては、この方法は、対象における、例えば肥満細胞腫瘍である肥満細胞症を根絶する方法を包含する。いくつかの実施形態においては、治療は、IWG-MRT-ECNM基準(Gotlib et al、Blood 2013;121:2393-401)により定義される完全寛解、部分奏効、臨床的改善、または安定病態を結果として生じる。
【0100】
別の関連する実施形態においては、本開示は、急性骨髄性白血病(AML)、任意にc-KIT媒介性の(AML)、を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に対して、有効量のc-KIT阻害剤を、例えばトラメチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120である有効量のMAPKAP経路阻害剤と組み合わせて投与することを含む上記方法を提供する。関連する実施形態においては、本開示は、急性骨髄性白血病(AML)、任意にc-KIT媒介性の(AML)、を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に対して、有効量の化合物A(またはその薬学的に許容可能な塩)または化合物B(またはその薬学的に許容可能な塩)を、例えばトラメチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120である有効量のMAPKAP経路阻害剤と組み合わせて投与することを含む上記方法を提供する。
【0101】
〔000100〕本明細書に記載される方法が、化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩による、または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩による治療を指す場合、化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩、または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩のうちの1つのみを必要とすることを意味する。しかしながら、これらの方法はまた、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、および化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩の両方を、MAPKAP経路阻害剤と組み合わせて、患者に対して投与することも包含することが理解されよう。本明細書に記載される方法はまた、化合物AおよびMAPKAP経路阻害剤を対象に投与することを含み、それによって化合物Aがインビボで化合物Bへと代謝され、インビボでの化合物Aおよび化合物Bの混合物が、MAPKAP経路阻害剤との併用で対象を有効に治療する。
【0102】
開示の方法および組成物の特定の実施形態は、化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩およびトラメチニブの併用;化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩およびセルメチニブの併用;化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩およびコビメチニブの併用;または、化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩およびビニメチニブの併用を使用して実施される。
【0103】
一実施形態においては、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩と、例えばトラメチニブまたはビニメチニブであるMEK阻害剤とを、c-KIT媒介性肥満細胞症を患う対象に対して投与する。別の実施形態においては、化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩と、例えばトラメチニブまたはビニメチニブであるMEK阻害剤とを、c-KIT媒介性肥満細胞症を患う対象に対して投与する。
【0104】
関連する実施形態においては、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩と、例えばトラメチニブまたはビニメチニブであるMEK阻害剤とを、肥満細胞白血病または肥満細胞肉腫を含むがこれに限定されない肥満細胞腫瘍であって、肥満細胞腫瘍の増殖または腫瘍進行が、例えばKIT D816V突然変異である活性化c-KIT一次突然変異によって生じる上記肥満細胞腫瘍を患う患者に対して、投与する。別の実施形態においては、化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩と、例えばトラメチニブまたはビニメチニブであるMEK阻害剤とを、肥満細胞白血病または肥満細胞肉腫を含むがこれに限定されない肥満細胞腫瘍であって、肥満細胞腫瘍の増殖または腫瘍進行が、例えばKIT D816V突然変異である活性化c-KIT一次突然変異によって生じる上記肥満細胞腫瘍を患う患者に対して、投与する。特定の実施形態においては、化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩と、例えばトラメチニブまたはビニメチニブであるMEK阻害剤とを、AMLを患う患者に投与し、任意に、上記AMLは、D816における突然変異またはN822における突然変異を含むがこれに限定されない突然変異を含む、例えばc-KITエクソン8活性化突然変異またはc-KITエクソン17突然変異である活性化c-KIT一次突然変異によって生じる(Journal of Clinical Oncology 2006 24:24,3904-3911)。
【0105】
開示の方法および組成物の特定の実施形態は、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩とウリキセルチニブとの併用;化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩とSCH772984,eとの併用;化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩とLY3214996との併用;化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩とラボキセルチニブとの併用;または、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩とVX-11との併用を使用して実施される。
【0106】
〔000105〕一実施形態においては、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩と、例えばウリキセルチニブであるERK阻害剤とを、c-KIT媒介性肥満細胞症を患う対象に対して投与する。別の実施形態においては、化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩と、例えばウリキセルチニブであるERK阻害剤とを、c-KIT媒介性肥満細胞症を患う対象に対して投与する。
【0107】
関連する実施形態においては、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩と、例えばウリキセルチニブであるERK阻害剤とを、肥満細胞白血病または肥満細胞肉腫を含むがこれに限定されない肥満細胞腫瘍であって、肥満細胞腫瘍の増殖または腫瘍進行が、例えばKIT D816V突然変異である一次活性化c-KIT突然変異によって生じる上記肥満細胞腫瘍を患う患者に対して、投与する。別の実施形態においては、化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩と、例えばウリキセルチニブであるERK阻害剤とを、肥満細胞白血病または肥満細胞肉腫を含むがこれに限定されない肥満細胞腫瘍であって、肥満細胞腫瘍の増殖または腫瘍進行が、例えばKIT D816V突然変異である一次活性化c-KIT突然変異によって生じる上記肥満細胞腫瘍を患う患者に対して、投与する。特定の実施形態においては、化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩、または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩と、例えばウリキセルチニブであるERK阻害剤とを、AMLを患う患者に対して投与し、任意に、上記AMLは、D816での突然変異またはN822での突然変異を含むがこれに限定されない突然変異を含む、例えばc-KITエクソン8活性化突然変異またはc-KITエクソン17突然変異である一次活性化c-KIT突然変異によって生じる(Journal of Clinical Oncology 2006 24:24,3904-3911)。
【0108】
開示の方法および組成物の特定の実施形態は、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩とLY3009120との併用;化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩とダブラフェニブとの併用;または、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩とベムラフェニブとの併用、を使用して実施される。
【0109】
一実施形態においては、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩と、例えばLY3009120、ダブラフェニブまたはベムラフェニブであるRAF阻害剤とを、c-KIT媒介性肥満細胞症を患う対象に対して投与する。別の実施形態においては、化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩と、例えばLY3009120、ダブラフェニブまたはベムラフェニブであるRAF阻害剤とを、c-KIT媒介性肥満細胞症を患う対象に対して投与する。
関連する実施形態においては、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩と、例えばLY3009120、ダブラフェニブまたはベムラフェニブであるRAF阻害剤とを、肥満細胞白血病または肥満細胞肉腫を含むがこれに限定されない肥満細胞腫瘍であって、肥満細胞腫瘍の増殖または腫瘍進行が、例えばKIT D816V突然変異である一次活性化c-KIT突然変異によって生じる上記肥満細胞腫瘍を患う患者に対して、投与する。別の実施形態においては、化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩と、例えばLY3009120、ダブラフェニブまたはベムラフェニブであるRAF阻害剤とを、肥満細胞白血病または肥満細胞肉腫を含むがこれに限定されない肥満細胞腫瘍であって、肥満細胞腫瘍の増殖または腫瘍進行が、例えばKIT D816V突然変異である一次活性化c-KIT突然変異によって生じる上記肥満細胞腫瘍を患う患者に対して、投与する。特定の実施形態においては、化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩、または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩と、例えばLY3009120、ダブラフェニブまたはベムラフェニブであるRAF阻害剤とを、AMLを患う患者に対して投与し、任意に、上記AMLは、D816での突然変異またはN822での突然変異を含むがこれに限定されない突然変異を含む、例えばc-KITエクソン8活性化突然変異またはc-KITエクソン17突然変異である一次活性化c-KIT突然変異によって生じる(Journal of Clinical Oncology 2006 24:24,3904-3911)。
【0110】
開示された方法および組成物に従って使用され得る例示的なc-KIT阻害剤としては、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩、ミドスタウリン、BLU-285、PLX9486、およびクレノラニブが挙げられるがこれらに限定されない。本開示の方法および組成物に従って使用され得る例示的なMEK阻害剤としては、トラメチニブ、セルメチニブ、コビメチニブ、およびビニメチニブが挙げられるがこれらに限定されない。本開示の方法および組成物に従って使用され得る例示的なERK阻害剤としては、ウリキセルチニブ、SCH772984、LY3214996、ラボキセルチニブ、およびVX-11eが挙げられるがこれらに限定されない。本開示の方法および組成物に従って使用され得る例示的なRAF阻害剤としては、LY3009120、ダブラフェニブ、およびベムラフェニブが挙げられるがこれらに限定されない。
【0111】
〔000110〕化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩、または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩の、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤との併用による治療は、MAPKAP経路阻害剤を投与することと重複する期間の前、当該期間の後、当該期間と同時にまたは当該期間中に、化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩を投与することを包含する。化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩、化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩、別のc-KIT阻害剤、または例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、もしくはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤のうちのいずれかについての有効量は、例えば肥満細胞白血病またはAMLである肥満細胞症または肥満細胞腫瘍を治療または予防するためである同じ目的のために、これら薬剤のいずれかをそれそのもので用いる場合と比較して、本明細書で開示する併用で用いる場合に様々であり得ることが理解される。特定の実施形態においては、化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩、または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩の有効量は、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤との併用療法として投与された場合、単剤療法として、例えば肥満細胞症または肥満細胞腫瘍を治療または防止するために投与する場合と比べて、より少ない量である。特定の実施形態においては、例えば肥満細胞症または肥満細胞腫瘍を治療または防止するために、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩との併用療法で投与した場合、または化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩との併用療法で投与した場合、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤の有効量は、より少ない量である。
【0112】
本明細書に開示される方法のいずれかは、治療しようとする肥満細胞症細胞、肥満細胞腫瘍、またはAMLが1または複数のc-KIT遺伝子突然変異を伴うかを判断することを、さらに含み得る。こうした判断は、対象から得られた、例えば骨髄試料、組織試料、末梢血試料、または血漿試料である生体試料中の遺伝子突然変異の存在を判断するための通例の方法によってなされ得る。さらに、こうした判断は、実施されたテストの結果をレビューして患者から得られた生体試料中の1または複数のc-KIT遺伝子突然変異の存在を判断することによってなされ得る。本明細書に開示される方法のいずれかの特定の実施形態においては、これら方法は、肥満細胞症、肥満細胞腫瘍またはAMLが1つまたは複数のc-KIT遺伝子突然変異を伴うものとして特定されている対象に対して実行される。c-KIT遺伝子突然変異は、本明細書に特に記載されたもののうちのいずれかを含むが、これに限定されない。本明細書に開示される方法のいずれかの特定の実施形態においては、これら方法は、肥満細胞症、肥満細胞腫瘍またはAMLが1つまたは複数のc-KIT遺伝子突然変異を伴っていないものとして特定されている対象に対しては実行されない。
【0113】
本明細書に開示される方法のいずれかの様々な態様においては、化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩のいずれかの、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブまたはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤との併用よる治療は、細胞致死性の肥満細胞死滅を誘発し、肥満細胞のアポトーシスを誘発し、組織または器官内の蓄積した肥満細胞の量を減少させ、肥満細胞症症状を減少させ、肥満細胞メディエーター放出を阻害し、肥満細胞の増殖を阻害し、および/または、肥満細胞の後退を誘発するものであり、肥満細胞は、活性化KIT D816V突然変異を含むc-KITキナーゼにおける活性化突然変異を包含する。肥満細胞のアポトーシス、肥満細胞死滅、肥満細胞増殖および成長の阻害、肥満細胞メディエーター放出の阻害、末梢血中変異型KIT対立遺伝子負荷、肥満細胞症および肥満細胞腫瘍の根絶、完全寛解、部分奏効、臨床的改善、もしくは安定病態、についての量を測定または決定する方法は、当技術において公知であり、また本明細書に記載される任意の方法を含む。
【0114】
特定の実施形態においては、例えば化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩または化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩であるc-KIT阻害剤と、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤との併用による治療は、MAPKAP経路阻害剤単独によるかまたは例えば化合物Aもしくは化合物Bであるc-KIT阻害剤単独により未治療または治療した同じタイプの肥満細胞症細胞または肥満細胞のアポトーシスの量と比較して、肥満細胞症細胞または肥満細胞のアポトーシスの量が結果的に増加する。例えば、アポトーシスは、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、または少なくとも20倍、増加し得る。特定の実施形態においては、アポトーシスの量は、KIT D816V突然変異を包含するHMC1.2肥満細胞株を含む、KIT突然変異肥満細胞または肥満細胞株のカスパーゼ活性を測定することにより決定される。
【0115】
特定の実施形態においては、例えば化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩、または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩であるc-KITアンヒビターと、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤との併用による治療は、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤のみでまたは例えばミドスタウリン、BLU-285、化合物Aもしくは化合物Bであるc-KIT阻害剤のみで未治療または治療した同じ器官における肥満細胞の蓄積の量と比較して、皮膚や例えば肝臓、脾臓、骨髄、および/または小腸である内臓における肥満細胞の蓄積の減少を結果的に生じる。例えば、器官内に蓄積された肥満細胞の量または数が、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%、減少し得る。
【0116】
〔000115〕特定の実施形態においては、例えば化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩であるc-KIT阻害剤と、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤との併用による治療は、結果として、IWG-MRT-ECNM基準(Gotlib et al、Blood 2013;121:2393-401)により定義されるような完全寛解をもたらす。
【0117】
特定の実施形態においては、例えば化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩であるc-KIT阻害剤と、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤との併用による治療は、結果として、IWG-MRT-ECNM基準(Gotlib et al、Blood 2013;121:2393-401)により定義されるような部分奏効をもたらす。
【0118】
特定の実施形態においては、例えば化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩であるc-KIT阻害剤と、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤との併用による治療は、結果として、IWG-MRT-ECNM基準(Gotlib et al、Blood 2013;121:2393-401)により定義されるような臨床的改善をもたらす。
【0119】
特定の実施形態においては、例えば化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩であるc-KIT阻害剤と、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤との併用による治療は、結果として、IWG-MRT-ECNM基準(Gotlib et al、Blood 2013;121:2393-401)により定義されるような安定病態をもたらす。
【0120】
特定の実施形態においては、例えば化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩または化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩であるc-KIT阻害剤と、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120などであるMAPKAP経路阻害剤との併用による治療は、KIT D816V一次突然変異に加えてKIT二次突然変異を含有する耐性肥満細胞症細胞のアポトーシスを誘発または増殖を阻害するものであり、KIT二次突然変異には、c-KIT遺伝子におけるY269C、Y503_F504insAY、V560DまたはK642Eの点突然変異、インフレーム欠失もしくは挿入、またはミスセンス変異(Lasho et al、Br J Haematol 173、153-156)が含まれるがこれに限定されない。
【0121】
〔000120〕特定の実施形態においては、例えば化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩、または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩であるc-KIT阻害剤と、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤との併用による治療は、本明細書に開示する遺伝子のうちのいずれかを含む、他の遺伝子における、例えば耐性突然変異である突然変異を含有する、耐性肥満細胞症細胞のアポトーシスを誘発または増殖を阻害する。特定の実施形態においては、こうした他の遺伝子の突然変異は、NRas機能突然変異の獲得(Haematologica 2011;96(03):459-463.doi:10.3324/haematol.2010.031690)またはTET2機能突然変異の喪失(Leukemia 2009;23:900-04;Blood,6 December 2012;120(24):4846-49)を含み得る。その他の後成的または転写性の調節因子突然変異の存在が、DNMT3A、ASXL1およびCBLの突然変異を含むSM中で、それぞれ患者の12%、12%、および4%で検出された(PloS 1.2012;7:e43090)。さらに、一部の肥満細胞症患者はまた、スプライセオソーム機能(machinery)において突然変異を呈する。スプライセオソームは、mRNAにおいてスプライスされた正しい線形順のエクソンを確実にする。Hanssensらは、72例の肥満細胞症患者の群において23.6%のSRSF2、5.6%のSF3B1および2.7%のU2AF1の突然変異の発生率を報告した(Haematologica 2014;99:830-35)。複雑なゲノムドライバーがあるこうした肥満細胞症は、例えばトラメチニブであるMEK阻害剤のみでまたは例えば化合物Aもしくは化合物Bであるc-KIT阻害剤のみでの治療するまたは治療しない場合と比較してc-KIT阻害剤およびMEK阻害剤の併用による本明細書で開示される治療からの恩恵を享受することができる。例えば、アポトーシスは、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、または少なくとも20倍、増加し得る。例えば、耐性肥満細胞症細胞の増殖の量または数は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%、阻害することができる。
【0122】
特定の実施形態においては、耐性肥満細胞症細胞は、例えば化合物A、化合物B、ミドスタウリン、BLU-285、PLX9486、またはクレノラニブであるc-KIT阻害剤での治療によってアポトーシス媒介性細胞死または細胞破壊活性に対して耐性があり、および/または、単剤療法として使用される場合に、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤での治療により、アポトーシス媒介性細胞死または細胞破壊活性に対して耐性がある。
【0123】
特定の実施形態においては、例えば化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩のいずれかであるc-KIT阻害剤と、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤と組み合わせた併用による治療は、結果として、例えば肥満細胞腫瘍である肥満細胞症の根絶をもたらす。特定の実施形態においては、肥満細胞症の根絶は、患者における検出可能なあらゆる肥満細胞症がもはや存在しないことを意味する。特定の実施形態においては、本明細書に開示する併用療法による肥満細胞症の治療の開始後、少なくとも12週間、少なくとも24週間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも5年間、患者において検出可能な肥満細胞症が存在しない。肥満細胞症の根絶は、IWG-MRT-ECNM基準(Gotlib et al、Blood 2013;121:2393-401)により定義されるような完全寛解の基準により判断され得る。
【0124】
本開示は、例えば化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩、または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩のいずれかであるc-KIT阻害剤と、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤との投与を伴う併用療法を記述する。本明細書に記載される併用療法は、それそのものによって、または1または複数の追加的治療薬と組み合わせて、使用することができる。例えば、化合物Aもしくはその薬学的に許容可能な塩、または化合物Bもしくはその薬学的に許容可能な塩のいずれかと、MAPKAP経路阻害剤とは、癌標的治療薬、癌標的生物剤、免疫チェックポイント阻害剤、または化学療法剤と共に投与することができる。別の実施形態では、化合物Aまたは化合物Bと、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤とは、その他の治療薬なしで投与される。治療薬は、併用療法において本明細書に記載される別の治療薬と一緒に、または当該治療薬と連続して投与することができる。
【0125】
併用療法は、2以上の治療薬を投与することであって、それら治療薬の各々は別個に処方されて投与されることによってか、または単一の製剤中の2以上の治療薬を投与することによって、実現することができる。他の組み合わせもまた、併用療法に包含される。併用療法において2以上の治療薬は同時に投与することができるが、必須ではない。例えば、第一の薬剤(または薬剤の併用)の投与は、数分、数時間、数日、または数週間だけ、第二の薬剤(または薬剤の併用)の投与に先行することができる。ゆえに2以上の薬剤は、互いに数分以内に投与されるか、または互いに1、2、3、6、9、12、15、18、または24時間以内に投与されるか、または互いに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14日以内に投与されるか、または互いに2、3、4、5、6、7、8、9週間以内もしくはそれ以上の週以内に投与することができる。一部の場合においては、さらに長い間隔も可能である。多くの場合において、併用療法で使用される2以上の薬剤は、同時に患者の身体内に存在することが望ましいが、必須ではない。
【0126】
〔000125〕併用療法は、異なる順序での構成薬剤を使用した併用で使用される1または複数の薬剤の2回以上の投与を含むこともできる。例えば薬剤Xと薬剤Yとを併用で使用する場合には、それらを任意の組合せで1回または複数回、連続的に投与することができ、例えばX-Y-X、X-X-Y、Y-X-Y、Y--Y-X、X-X-Y-Yなどの順序である。さらに、併用の2以上の薬剤の投与は、併用薬剤のうちの少なくとも1つが治療から省略される投与間隔を先行してまたはその後に続いて行ってもよい。
【0127】
例えば、肥満細胞症または肥満細胞腫瘍を治療するための、本開示に従って投与され得るさらなる治療薬は、ルキソリチニブ、トファシチニブ、またはフェドラチニブを含むがこれに限定されないSTAT5の阻害剤、イブルチニブ、PCI29732、アカラブルチニブ、またはAVL-292を含むがこれに限定されないBTKの阻害剤、イデラリシブ、ダクトリシブ、ピクチリシブ、LY294002、ブパルリシブ、ピララリシブ、デュベリシブ、PF-04691502、ボクスタリシブ(voxtalisib)、オミパリシブ、ゲダトリシブ(gedatolisib)、アピトリシブ、またはウォルトマンニンを含むがこれに限定されないPI3キナーゼの阻害剤、MK-2206、ペリフォシン、GSK690693、GSK2141795、イパタセルチブ、AZD5363、アフレセルチブ、またはAT7867を含むがこれに限定されないAKTキナーゼの阻害剤、5-アザシチジンまたは5-アザ-2’-デオキシシチジンを含むがこれに限定されないDNAメチル化阻害剤、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、MLN9708、ONX0912、インターフェロンアルファ(IFN-α)、クラドリビンを含むがこれに限定されないプロテオソーム阻害剤、および、クロロキン、ヒドロキシクロロキンまたはキナクリンを含むがこれに限定されないリソソーム作用剤、からなる群から選択される薬剤を含むがこれに限定されない。
【0128】
特定の実施形態においては、さらなる治療薬は、5-アザシチジン、5-アザ-2’-デオキシシチジン、およびクラドリビンから選択される。
【0129】
特定の実施形態においては、それを必要とする対象は、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120、および5-アザシチジンであるMAPKAP経路阻害剤のうちの1または2の併用により治療される。特定の実施形態においては、MAPKAP経路阻害剤はトラメチニブである。特定の実施形態においては、MAPKAP経路阻害剤はビニメチニブである。特定の実施形態においては、MAPKAP経路阻害剤はウリキセルチニブである。特定の実施形態においては、MAPKAP経路阻害剤はLY3009120、ダブラフェニブ、またはベムラフェニブである。
【0130】
特定の実施形態においては、それを必要とする対象は、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120、および5-アザ-2’-デオキシシチジンであるMAPKAP経路阻害剤の併用により治療される。特定の実施形態においては、MAPKAP経路阻害剤はトラメチニブである。特定の実施形態においては、MAPKAP経路阻害剤はビニメチニブである。特定の実施形態においては、MAPKAP経路阻害剤はウリキセルチニブである。特定の実施形態においては、MAPKAP経路阻害剤はLY3009120、ダブラフェニブ、またはベムラフェニブである。
【0131】
〔000130〕特定の実施形態においては、それを必要とする対象は、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120、およびクラドリビンであるMAPKAP経路阻害剤の併用により治療される。特定の実施形態においては、MAPKAP経路阻害剤はトラメチニブである。特定の実施形態においては、MAPKAP経路阻害剤はビニメチニブである。特定の実施形態においては、MAPKAP経路阻害剤はウリキセルチニブである。特定の実施形態においては、MAPKAP経路阻害剤はLY3009120、ダブラフェニブ、またはベムラフェニブである。本開示に従って投与され得る追加的な治療薬としては、三酸化ヒ素、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エナシデニブ、イダルビシン、キザルチニブ、ミトキサントロン、チオグアニン、またはビンクリスチンが挙げられるがこれに限定されない。特定の実施形態においては、AMLがある対象は、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩と、三酸化ヒ素、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エナシデニブ、イダルビシン、キザルチニブ、ミトキサントロン、チオグアニン、またはビンクリスチンとの併用により治療される。
【0132】
医薬組成物
本開示の態様は、本明細書に開示される化合物の併用、またはこうした化合物および薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤もしくは担体を含む1もしくは複数の医薬組成物、の投与を含む治療方法を対象とする。特定の実施形態においては、本明細書に開示される方法は、例えば化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩であるc-KIT阻害剤および薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤または担体を含む第一の医薬組成物と、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤および薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤または担体を含む第二の医薬組成物とを投与することに関与する。特定の実施形態においては、本明細書に開示される方法は、化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩および薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤または担体を含む第一の医薬組成物と、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤および薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤または担体を含む第二の医薬組成物とを投与することに関与する。特定の実施形態においては、本明細書に開示される方法は、例えば化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩であるciKIT阻害剤と、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤と、薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤または担体とを含む医薬組成物を投与することに関与する。特定の実施形態においては、本明細書に開示される方法は、化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩と、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤と、薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤または担体とを含む医薬組成物を投与することに関与する。
【0133】
本明細書に記載される化合物の医薬組成物の使用において、薬学的に許容可能な担体は固体または液体のいずれかであり得る。固体形態としては、粉剤、錠剤、分散性顆粒、カプセル、カシェ剤、および座薬が挙げられる。粉剤および錠剤は、約5~約95パーセントの活性成分から構成されてもよい。適切な固体担体は当技術で公知であり、例えば炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖またはラクトースがある。錠剤、粉剤、カシェ剤およびカプセル剤は、経口投与に適した固形剤型として使用可能である。薬学的に許容可能な担体の例、および様々な組成物の製造方法の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるA.Gennaro(ed.),Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,(1990),Mack Publishing Co.,Easton,Paに見ることができる。
【0134】
液体形態製剤としては、溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。例えば、非経口注射用には水または水-プロピレングリコール溶液、または経口の溶液、懸濁液およびエマルジョン用には甘味剤および乳白剤の添加がある。液体形態製剤としては、鼻腔内投与用の溶液も挙げられる。
【0135】
特に注射可能な、液体の組成物は、例えば溶解、分散などにより調製可能である。例えば、開示される化合物は、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、グリセリン、エタノールなどの薬学的に許容可能な溶媒に溶解されるか、または混合され、それによって注射可能な等張溶液または懸濁液が形成される。アルブミン、カイロミクロン粒子、または血清タンパク質などのタンパク質を使用して、開示される化合物を可溶化することができる。
【0136】
〔000135〕非経口注射投与は概して、皮下、筋肉内、または静脈内の注射および点滴に使用される。注射剤は、溶液もしくは懸濁液、または注射前に液体に溶解させることに適した固体の形態のいずれかとして従来的な形態で調製可能である。
【0137】
吸入に適したエアロゾル製剤もまた使用され得る。これら製剤は、溶液、および粉末形態の固体を含んでもよく、それらは例えば窒素である不活性圧縮ガスなどの薬学的に許容可能な担体と組み合わせる場合がある。
【0138】
また、使用に関して、経口投与または非経口投与のいずれかのための液体形態製剤に、使用直前に変えることを意図した固体形態製剤も意図される。そのような液体形態としては、溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。
【0139】
用量
いくつかの実施形態においては、治療プロトコルのために、化合物Aまたは化合物B(またはその薬学的に許容可能な塩)が、例えばトラメチニブ、ビニメチニブ、ウリキセルチニブ、またはLY3009120であるMAPKAP経路阻害剤と組み合わせて使用される場合、2つの治療薬は一緒に投与してもよく、または「二重レジメン」であって、2つの治療薬を別個に投薬および投与する二重レジメンで投与してもよい。化合物AまたはB(またはその薬学的に許容可能な塩)とMAPKAP経路阻害剤とが別個に投薬される場合、治療を必要とする対象に投与される化合物Aまたは化合物B(またはその薬学的に許容可能な塩)の典型的な用量は、典型的には約5mg/日~約5000mg/日であり、他の実施形態では約50mg/日~約1000mg/日である。他の用量は、約10mmolから最大で約250mmol/日、約20mmol~約70mmol/日、または約30mmol~約60mmol/日であってもよい。開示の化合物の有効投与量は、示される効果に関して使用される場合、症状の治療に必要とされる本開示化合物を約0.5mg~約5000mgの範囲とする。インビボまたはインビトロでの使用のための組成物は、約0.5、5、20、50、75、100、150、250、500、750、1000、1250、2500、3500、または5000mgの開示の化合物を含有することができ、または、用量の列記中のある量から別の量の範囲で開示の化合物を含有することができる。経口投与に関し、典型的な推奨される1日の投与レジメンは、単一用量で、または2~4に分割した用量で、約1mg/日~約500mg/日または1mg/日~200mg/日の範囲とすることが可能である。一実施形態においては、典型的な1日の経口用量レジメンは150mgである。
【0140】
特定の実施形態においては、MAPKAP経路阻害剤の用量は、先に開示した用量および/または食品医薬品局による使用のために承認された用量と一致する。他の実施形態においては、MAPKAP経路阻害剤の用量は、先に承認された用量未満であり、例えば承認された用量の約20%、約50%、または約80%である。特定の実施形態においては、トラメチニブの用量は、1日に、約.5mg~20mgを経口で、例えば1日に約1mg、または1日に2mgである。特定の実施形態においては、コビメチニブの用量は、1日に、約10mg~200mgで、例えば1日に約30mg、または約60mgである。特定の実施形態においては、ビニメチニブの用量は、1日に約10mg~200mgを2回、例えば1日に約25mgまたは約45mgを2回である。特定の実施形態においては、セルメチニブの用量は、1日に約10mg~200mgで、例えば1日に約30mgまたは約75mgを2回である。
【0141】
〔000140〕本明細書に記載の化合物および/またはその薬学的に許容可能な塩ならびに他の治療薬の投与の量および回数は、患者の年齢、症状および大きさ、ならびに治療される症状の重篤度などの因子を考慮し、担当医の判断に従い調整されることとなる。
【0142】
本開示の化合物(例えば、化合物Aまたは化合物B(およびその薬学的に許容可能な塩)、MAPKAP経路阻害剤、および他の治療薬)は、任意の適切な経路によって投与され得る。化合物は、カプセル剤、懸濁剤、錠剤、丸薬、糖衣錠、液剤、ゲル、シロップ、スラリーなどで、経口で(例えば食事で)投与可能である。組成物を封入する(硬質ゼラチンまたはシクロデキストラン(cyclodextran)のコーティング内になど)ための方法は、当技術で公知である(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Baker,et al.,“Controlled Release of Biological Active Agents”,John Wiley and Sons,1986)。化合物は、医薬組成物の一部として許容可能な医薬担体と併せて対象に対して投与可能である。医薬組成物の剤型は、選択される投与経路に従って変化することとなる。適切な医薬担体は、化合物と相互作用しない不活性成分を含み得る。担体は生体適合性であり、すなわち非毒性、非炎症性、非免疫原性であり、投与部位で他の望ましくない反応を発生させない。
【0143】
例示的な医薬組成物は、例えば化合物Aである本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体であって、例えばa)例えば精製水、例えば水素化された、もしくは部分的に水素化された植物油またはそれらの混合物であるトリグリセリド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、例えばEPAもしくはDHAである魚油もしくはそれらのエステル、もしくはトリグリセリドもしくはその混合物、オメガ-3脂肪酸もしくはその誘導体、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、ナトリウム、サッカリン、グルコースおよび/またはグリシンである希釈剤;b)例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウム塩もしくはカルシウム塩、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムおよび/またはポリエチレングリコールである潤滑剤、錠剤用でもある;c)例えばケイ酸マグネシウムアルミニウム、デンプン糊、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、炭酸マグネシウム、例えばグルコースまたはベータ-ラクトースなどの天然糖類、トウモロコシ甘味料、例えばアカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウムなどの天然ゴムおよび合成ゴム、ワックスおよび/またはポリビニルピロリドンである結合剤、もし所望であれば;d)例えばデンプン、アガー、メチルセルロース、ベントナイト、キサンタンガム、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、または発泡性混合物である崩壊剤;e)吸収剤、着色剤、香味剤および甘味剤;f)例えばTween80、Labrasol、HPMC、DOSS、Caproyl 909、Labrafac、Labrafil、Peceol、Transcutol、CAPMUL MCM、CAPMUL PG-12、Captex 355、Gelucire、ビタミンE TGPSまたは他の許容可能な乳化剤である、乳化剤または分散剤;および/またはg)例えばシクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、PEG400、PEG200である、化合物の吸収を強化する薬剤、等である上記担体とを含む錠剤およびゼラチンカプセルである。
【0144】
固定された用量として調製される場合、かかる配合剤は、本明細書に記載されるまたは当業者に公知の、用量範囲内で本明細書に記載の化合物を採用する。
【0145】
本明細書に記載の化合物(例えば、化合物Aおよび化合物BおよびMAPKAP経路阻害剤)は、医薬組成物で使用することが意図されているため、当業者であれば、実質的に純粋な形態で、例えば少なくとも60%純粋、少なくとも75%純粋、少なくとも85%純粋、および少なくとも98%純粋(w/w)でそれらが提供可能であることを理解するであろう。医薬製剤は、単位剤型であってもよい。そのような製剤では、例えば本明細書に記載される望ましい目的を実現する有効量などである適切な量の化合物Aまたは化合物Bを含有する適切な大きさとした単位用量に分割して調製される。
【実施例
【0146】
〔000145〕化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩のいずれかを、MAPKAP経路阻害剤と組み合わせた併用による治療が、予期せずに、相乗的に、全身性肥満細胞症の原因である突然変異体c-KITにより駆動される肥満細胞のアポトーシスを誘発することが見出された。さらに、この併用療法は、肥満細胞症細胞の増殖を阻害する。さらに、本明細書に開示される併用療法は、カスパーゼ活性化において誘発される併用治療により決定されるような単に細胞静止作用であることに対立するものとして、肥満細胞症に対する細胞毒性効果を有するように見えた。この予期せぬ発見の特定には、本明細書に記載されるアッセイを含めて、生化学アッセイおよび細胞アッセイにおいて行った。
【0147】
本開示は、以下の実施例によってさらに説明するが、それらは、本明細書に記載される具体的な手順に対する範囲または趣旨において本開示を限定するものとはみなされないものとする。実施例は、特定の実施形態を説明するために提示されるものであり、またそれにより本開示の範囲を限定する意図はないことを理解されたい。さらに本開示の趣旨、および/または添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、当業者に示唆され得る様々な他の実施形態、変形物および均等物に対して策がもたれ得ることを理解されたい。
【0148】
実施例1.化合物Aまたは化合物Bによる、突然変異体KITの肥満細胞株の処置により、肥満細胞症細胞株の細胞増殖およびKITリン酸化が阻害される
化合物Aまたは化合物Bによる処置が、突然変異体KIT HMC1.1 KIT V560GおよびHMC1.2 KIT V560G/D816Vの肥満細胞株の細胞増殖を阻害することを実証する試験を実施した。ウェル当たり10,000個の細胞を播種した96ウェルプレートでアッセイを行った。細胞を様々な濃度で、ビヒクル対照、化合物A、またはその化合物Bで処置し、72時間成長させ、次いで細胞増殖を評価した。
【0149】
図1Aは、様々な濃度の化合物Aに対して決定された細胞増殖の相対的割合を示すグラフ表示である。化合物Aでの処置により、それぞれ、2.6nMおよび97nMであるIC50値を伴うHMC1.1 V560GおよびHMC1.2 V560G/D816Vの肥満細胞株における細胞増殖を阻害した。
【0150】
図1Bは、様々な濃度の化合物Bに対して決定された細胞増殖の相対的割合を示すグラフ表示である。化合物Bでの処置により、それぞれ、2.3nMおよび61nMであるIC50値を伴うHMC1.1 V560GおよびHMC1.2 V560G/D816Vの肥満細胞株における細胞増殖を阻害した。
【0151】
実施例2.化合物Aおよびトラメチニブによる併用処置により、肥満細胞症細胞株におけるアポトーシスが誘発される
〔000150〕化合物AおよびMEK阻害剤トラメチニブによる併用処置が、HMC1.2 KIT V560G/D816Vの肥満細胞症細胞株におけるアポトーシスを誘発することを実証するために、試験を実施した。ウェル当たり10,000個の細胞を播種した96ウェルプレートでアッセイを行った。細胞を様々な濃度で、ビヒクル対照、化合物A、トラメチニブ、またはその組合せで処置し、細胞を24時間成長させた。アポトーシスは、カスパーゼ3/7活性を測定することにより評価した。
【0152】
図2Aは、様々な処置に対して決定された細胞アポトーシスの相対的割合を示すグラフ表示である。図2Bは、ChouおよびTalalay(1984)ならびにChouおよびMartinのコンピュータソフトウェア(2005)により記述される、併用指数(CI)法に基づく相乗作用のマトリクス図である。CI<1は、相乗作用を示し、CI=1は、相加作用を示し、またCI>1は、拮抗作用を示す。化合物AおよびMEK阻害剤トラメチニブによる併用処置により、予期せずに、HMC1.2 KIT V560G/D816V細胞のアポトーシスを誘発する強い相乗作用が示された。図2Cは、CIの併用指数プロットであり、HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞のアポトーシスを誘発する、化合物Aとトラメチニブとの併用に関する強い相乗作用を実証する。
【0153】
実施例3.化合物Bおよびトラメチニブによる併用処置により、肥満細胞症細胞株におけるアポトーシスが誘発される
化合物Bおよびトラメチニブによる併用処置が、HMC1.2 KIT V560G/D816Vの肥満細胞症細胞株におけるアポトーシスを誘発することを実証するために、また試験を実施した。実施例2に説明されるようにアッセイを行った。アポトーシスは、カスパーゼ3/7活性を測定することにより評価した。
【0154】
図3Aは、様々な処置に対して決定された細胞アポトーシスの相対的割合を示すグラフ表示である。図3Bは、ChouおよびTalalay(1984)ならびにChouおよびMartinのコンピュータソフトウェア(2005)により記述される、併用指数(CI)法に基づく相乗作用のマトリクス図である。CI<1は、相乗作用を示し、CI=1は、相加作用を示し、またCI>1は、拮抗作用を示す。化合物BおよびMEK阻害剤トラメチニブによる併用処置により、予期せずに、HMC1.2 KIT V560G/D816V細胞のアポトーシスを誘発するための強い相乗作用が示された。図3Cは、CIの併用指数プロットであり、HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞のアポトーシスを誘発する、化合物Bとトラメチニブとの併用に関する強い相乗作用を実証する。
【0155】
実施例4.化合物Aおよびビニメチニブによる併用処置により、肥満細胞症細胞株におけるアポトーシスが誘発される
化合物Aおよびビニメチニブによる併用処置もまた、HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞症細胞株におけるアポトーシスを誘発する。実施例2に説明されるようにアッセイを行った。アポトーシスは、カスパーゼ3/7活性を測定することにより評価した。
【0156】
〔000155〕図4Aは、様々な処置に対して決定された細胞アポトーシスの相対的割合を示すグラフ表示である。図4Bは、ChouおよびTalalay(1984)ならびにChouおよびMartinのコンピュータソフトウェア(2005)により記述される、併用指数(CI)法に基づく相乗作用のマトリクス図である。化合物AおよびMEK阻害剤ビニメチニブによる併用処置により、予期せずに、HMC1.2 KIT V560G/D816V細胞のアポトーシスを誘発する強い相乗作用が示された。図4Cは、CIの併用指数プロットであり、HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞のアポトーシスを誘発する、化合物Aとビニメチニブとの併用に関する強い相乗作用を実証する。
【0157】
実施例5.化合物Bおよびビニメチニブによる併用処置により、肥満細胞症細胞株におけるアポトーシスが誘発される
図5Aは、化合物Bおよびビニメチニブの様々な処置に対して決定された細胞アポトーシスの相対的割合を示すグラフ表示である。図5Bは、ChouおよびTalalay(1984)ならびにChouおよびMartinのコンピュータソフトウェア(2005)により記述される、併用指数(CI)法に基づく相乗作用のマトリクス図である。CI<1は、相乗作用を示し、CI=1は、相加作用を示し、またCI>1は、拮抗作用を示す。化合物BおよびMEK阻害剤ビニメチニブによる併用処置により、予期せずに、HMC1.2 KIT V560G/D816V細胞のアポトーシスを誘発する強い相乗作用が示された。図5Cは、CIの併用指数プロットであり、HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞のアポトーシスを誘発する、化合物Bとビニメチニブとの併用に関する強い相乗作用を実証する。
【0158】
実施例6.化合物Aおよびコビメチニブによる併用処置により、肥満細胞症細胞株におけるアポトーシスが誘発される
図6Aは、化合物Aおよびコビメチニブの様々な処置に対して決定された細胞アポトーシスの相対的割合を示すグラフ表示である。図6Bは、ChouおよびTalalay(1984)およびChouおよびMartinのコンピュータソフトウェア(2005)により記述される、併用指数(CI)法に基づく相乗作用のマトリクス図である。化合物AおよびMEK阻害剤コビメチニブによる併用療法により、予期せずに、HMC1.2 KIT V560G/D816V細胞のアポトーシスを誘発する強い相乗作用が示された。図6Cは、CIの併用指数プロットであり、HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞のアポトーシスを誘発する、化合物Aとコビメチニブとの併用に関する強力な相乗作用を実証する。
【0159】
実施例7.化合物Bおよびコビメチニブによる併用処置により、肥満細胞症細胞株におけるアポトーシスが誘発される
図7Aは、化合物Bおよびコビメチニブの様々な処置に対して決定された細胞アポトーシスの相対的割合を示すグラフ表示である。図7Bは、ChouおよびTalalay(1984)ならびにChouおよびMartinのコンピュータソフトウェア(2005)により記述される、併用指数(CI)法に基づく相乗作用のマトリクス図である。CI<1は、相乗作用を示し、CI=1は、相加作用を示し、またCI>1は、拮抗作用を示す。化合物BおよびMEK阻害剤コビメチニブによる併用処置により、予期せずに、HMC1.2 KIT V560G/D816V細胞のアポトーシスを誘発するための強い相乗作用が示された。図7Cは、CIの併用指数プロットであり、HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞のアポトーシスを誘発する、化合物Bとコビメチニブとの併用に関する強い相乗作用を実証する。
【0160】
実施例8.化合物Aおよびウリキセルチニブによる併用処置により、肥満細胞症細胞株におけるアポトーシスが誘発される
図8Aは、化合物AおよびERK阻害剤ウリキセルチニブの様々な処置に対して決定された細胞アポトーシスの相対的割合を示すグラフ表示である。図8Bは、ChouおよびTalalay(1984)ならびにChouおよびMartinのコンピュータソフトウェア(2005)により記述される、併用指数(CI)法に基づく相乗作用のマトリクス図である。化合物Aおよびウリキセルチニブによる併用療法により、予期せずに、HMC1.2 KIT V560G/D816V細胞のアポトーシスを誘発する強い相乗作用が示された。図8Cは、CIの併用指数プロットであり、HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞のアポトーシスを誘発する、化合物Aとウリキセルチニブとの併用に関する強い相乗作用を実証する。
【0161】
実施例9.化合物Bおよびウリキセルチニブによる併用処置により、肥満細胞症細胞株におけるアポトーシスが誘発される
〔000160〕HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞におけるアポトーシスの誘発に関して、化合物BおよびERK阻害剤ウリキセルチニブの併用処置を評価することができる。併用指数(CI)法に基づく相乗作用のマトリクス図は、ChouおよびTalalay(1984)ならびにChouおよびMartinのコンピュータソフトウェア(2005)により記述されるとおりに生成することが可能である。化合物Bおよびウリキセルチニブによる併用処置を用いて、HMC1.2 KIT V560G/D816V細胞のアポトーシスを誘発する相乗作用を示すことができる。CIの併用指数プロットを用いて、HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞のアポトーシスを誘発する、化合物Bとウリキセルチニブとの併用に関する強い相乗作用を実証することができる。
【0162】
実施例10.化合物AおよびSCH772984による併用処置により、肥満細胞症細胞株におけるアポトーシスが誘発される
HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞におけるアポトーシスの誘発に関して、化合物AおよびERK阻害剤SCH772984の併用処置を評価することができる。併用指数(CI)法に基づく相乗作用のマトリクス図は、ChouおよびTalalay(1984)ならびにChouおよびMartinのコンピュータソフトウェア(2005)により記述されるとおりに生成することが可能である。化合物AおよびSCH772984による併用処置を用いて、HMC1.2 KIT V560G/D816V細胞のアポトーシスを誘発する相乗作用を示すことができる。CIの併用指数プロットを用いて、HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞のアポトーシスを誘発する、化合物AとSCH772984との併用に関する相乗作用を実証することができる。
【0163】
実施例11.化合物BおよびSCH772984による併用処置により、肥満細胞症細胞株におけるアポトーシスが誘発される
HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞におけるアポトーシスの誘発に関して、化合物BおよびERK阻害剤SCH772984の併用処置を評価することができる。併用指数(CI)法に基づく相乗作用のマトリクス図は、ChouおよびTalalay(1984)ならびにChouおよびMartinのコンピュータソフトウェア(2005)により記述されるとおりに生成することが可能である。化合物AおよびSCH772984による併用処置を用いて、HMC1.2 KIT V560G/D816V細胞のアポトーシスを誘発する相乗作用を示すことができる。CIの併用指数プロットを用いて、HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞のアポトーシスを誘発する、化合物BとSCH772984との併用に関する相乗作用を実証することができる。
【0164】
実施例12.化合物AおよびLY3009120による併用処置により、肥満細胞症細胞株におけるアポトーシスが誘発される
HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞におけるアポトーシスの誘発に関して、化合物AおよびRAF阻害剤LY3009120の併用処置を評価することができる。併用指数(CI)法に基づく相乗作用のマトリクス図は、ChouおよびTalalay(1984)ならびにChouおよびMartinのコンピュータソフトウェア(2005)により記述されるとおりに生成することが可能である。化合物AおよびLY3009120による併用処置を用いて、HMC1.2 KIT V560G/D816V細胞のアポトーシスを誘発する相乗作用を示すことができる。CIの併用指数プロットを用いて、HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞のアポトーシスを誘発する、化合物AとLY3009120との併用に関する強い相乗作用を実証することができる。
【0165】
実施例13.化合物BおよびLY3009120による併用処置により、肥満細胞症細胞株におけるアポトーシスが誘発される
HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞におけるアポトーシスの誘発に関して、化合物BおよびRAF阻害剤LY3009120の併用処置を評価することができる。併用指数(CI)法に基づく相乗作用のマトリクス図は、ChouおよびTalalay(1984)ならびにChouおよびMartinのコンピュータソフトウェア(2005)により記述されるとおりに生成することが可能である。化合物BおよびLY3009120による併用療法を用いて、HMC1.2 KIT V560G/D816V細胞のアポトーシスを誘発する相乗作用を示すことができる。CIの併用指数プロットを用いて、HMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞のアポトーシスを誘発する、化合物BとLY3009120との併用に関する相乗作用を示すことができる。
【0166】
実施例14.化合物Aおよびトラメチニブによる併用処置が、HMC1.2 KIT D816V肥満細胞株のコロニー増殖の相乗的な減少を導く
〔000165〕化合物AおよびMEK阻害剤トラメチニブによる併用処置が、いずれかの単剤による処置と比較して、HMC1.2のコロニー増殖の減少を導くことを実証するために、試験を実施した。10,000個のHMC1.2細胞を軟寒天で増殖させ、様々な濃度の化合物A、トラメチニブ、または化合物Aおよびトラメチニブの併用で、10日間インキュベートした。薬剤処置を除去し、生細胞のコロニー増殖をさらに5日後に観察した。
図9Aは、単剤として、または様々な濃度の化合物Aを様々な濃度のトラメチニブとを組み合わせたマトリクスとして、トラメチニブ(0、10、または25nM)、化合物A(0、25、または50nM)による処置後のHMC1.2肥満細胞のコロニー増殖の代表的な写真である。化合物Aまたはトラメチニブによる単剤処置で、薬剤除去5日後にすべての濃度でコロニー増殖が生じた一方、化合物Aとトラメチニブとの併用では、薬物除去5日後にコロニー増殖はほとんど生じなかった。化合物A(25nM)のトラメチニブ(25nM)との併用で、薬剤除去5日後にコロニー増殖が完全に根絶された。化合物A(50nM)のトラメチニブ(10または25nM)との併用が、予期せずに、薬剤除去5日後に、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、生細胞HMC1.2の増殖の完全な根絶をもたらした一方、単剤化合物Aまたは単剤のトラメチニブでの処置では、根絶は観察されなかった。薬剤除去のさらに8日後(総計13日)までさらに延長したコロニー増殖では、化合物A(50nM)およびトラメチニブ(10及び25nM)の併用で、コロニー増殖の検出限界まで根絶が維持されたままであった。しかしながら、化合物A(25nM)およびトラメチニブ(25nM)の併用でのインキュベーションでは、追加で8日間行った後、約15~20のコロニーが増殖した。(図9A右パネル)。
【0167】
図9Bは、図9Aからの様々な処置後のHMC1.2肥満細胞のコロニー増殖を定量化するグラフ表示である。50nMの化合物Aと、10nMまたは25nMのいずれかのトラメチニブとの併用処置が、予期せずに、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、コロニー増殖の根絶をもたらした(図9B、矢印を参照)。25nMの化合物Aと、25nMのトラメチニブとの併用処置が、予期せずに、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、コロニー増殖の根絶をもたらし(図9B、矢印を参照)、根絶は、単剤の化合物Aまたはトラメチニブのいずれかによる処置では観察されなかった。
【0168】
実施例15.化合物Bおよびトラメチニブによる併用処置が、HMC1.2 KIT D816V肥満細胞株のコロニー増殖の相乗的な減少を導く
実施例14に記載されるHMC1.2細胞におけるコロニー増殖の減少を評価するために、化合物BおよびMEK阻害剤トラメチニブを用いてまた試験を実施した。
【0169】
図10Aは、単剤として、または様々な濃度の化合物Bを様々な濃度のトラメチニブとを組み合わせたマトリクスとして、トラメチニブ(0、10、または25nM)、化合物B(0、25、または50nM)での処置後のHMC1.2肥満細胞のコロニー増殖の代表的な写真である。化合物Bまたはトラメチニブでの単剤処置によって、薬剤除去5日後にすべての濃度でコロニー増殖が生じた一方、化合物Bとトラメチニブとの併用では、薬剤除去5日後にコロニー増殖はほとんど生じなかった。化合物B(25nM)のトラメチニブ(25nM)との併用により、薬剤除去5日後に、生細胞HMC1.2の増殖が著しく減少した。化合物B(50nM)のトラメチニブ(10または25nM)との併用が、予期せずに、薬物除去5日後に、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、生細胞HMC1.2の増殖の完全な根絶をもたらした一方、単剤化合物Bまたは単剤のトラメチニブでの治療では、根絶は観察されなかった。薬剤除去のさらに8日後(総計13日)までさらに延長したコロニー増殖では、化合物B(50nM)およびトラメチニブ(25nM)の併用で、コロニー増殖の検出限界まで根絶が維持されたままであった。
図10Bは、図10Aからの様々な処置後のHMC1.2肥満細胞のコロニー増殖を定量化するグラフ表示である。50nMの化合物Bと、10nMまたは25nMのいずれかのトラメチニブとの併用処置が、予期せずに、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、コロニー増殖の根絶をもたらした一方で、根絶は、単剤の化合物Bまたはトラメチニブのいずれかによる処置では観察されなかった(図10B、矢印を参照)。
【0170】
実施例16.化合物Aおよびビニメチニブによる併用処置が、HMC1.2 KIT D816V肥満細胞株のコロニー増殖の相乗的な減少を導く
図11Aは、単剤として、または様々な濃度の化合物Aを様々な濃度のビニメチニブとを組み合わせたマトリクスとして、ビニメチニブ(0、250、または500nM)、化合物A(0、25、または50nM)での治療後のHMC1.2肥満細胞のコロニー増殖の代表的な写真である。化合物Aまたはビニメチニブによる単剤処置によって、薬剤除去5日後にすべての濃度でコロニー増殖が生じた一方、化合物Aとビニメチニブとの併用では、薬剤除去5日後にコロニー増殖はほとんど生じなかった。化合物A(25nM)のビニメチニブ(250nM)との併用により、薬剤除去5日後に、生細胞HMC1.2の増殖が著しく減少した。化合物A(50nM)のビニメチニブ(250nMまたは500nM)との併用が、予期せずに、薬剤除去5日後に、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、生細胞HMC1.2の増殖の完全な根絶をもたらした一方、単剤化合物Aまたは単剤のビニメチニブによる処置では、根絶は観察されなかった。薬剤除去のさらに8日後(総計13日)までさらに延長したコロニー増殖では、化合物A(50nM)およびビニメチニブ(500nM)の併用で、コロニー増殖の検出限界まで根絶が維持されたままであった。しかしながら、化合物A(50nM)およびビニメチニブ(250nM)の併用で、約10~15のコロニーが増殖した。
【0171】
〔000170〕図11Bは、図11Aからの様々な処置後のHMC1.2肥満細胞のコロニー増殖を定量化するグラフ表示である。50nMの化合物Aと、250nMまたは500nMのビニメチニブとの併用処置が、予期せずに、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、コロニー増殖の根絶をもたらし、根絶は、単剤の化合物Aまたはビニメチニブのいずれかによる処置では観察されなかった(図11B、矢印を参照)。
【0172】
実施例17.化合物Bおよびビニメチニブによる併用処置が、HMC1.2 KIT D816V肥満細胞株のコロニー増殖の相乗的な減少を導く
図12Aは、単剤として、または様々な濃度の化合物Bを様々な濃度のビニメチニブと組み合わせたマトリクスとして、ビニメチニブ(0、250、または500nM)、化合物B(0、25、または50nM)による処置後のHMC1.2肥満細胞のコロニー増殖の代表的な写真である。化合物Bまたはビニメチニブによる単剤処置によって、薬剤除去5日後にすべての濃度でコロニー増殖が生じた一方、化合物Bとビニメチニブとの併用では、薬剤除去5日後にコロニー増殖はほとんど生じなかった。化合物B(25nM)のビニメチニブ(250nM)との併用により、薬剤除去5日後に、生細胞HMC1.2の増殖が著しく減少した。化合物B(25nM)のビニメチニブ(500nM)との併用により、薬剤除去5日後に、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、生細胞HMC1.2の増殖の完全な根絶をもたらした。化合物B(50nM)のビニメチニブ(250nMまたは500nM)との併用が、予期せずに、薬剤除去5日後に、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、生細胞HMC1.2の増殖の完全な根絶をもたらした一方、単剤化合物Bまたは単剤のビニメチニブでの処置では、根絶は観察されなかった。薬剤除去のさらに8日後(総計13日)までさらに延長したコロニー増殖では、化合物B(50nM)とビニメチニブ(250または500nM)および化合物B(25nM)とビニメチニブ(500nM)との併用で、コロニー増殖の検出限界まで根絶が維持されたままであった。
【0173】
図12Bは、図12Aからの様々な処置後のHMC1.2肥満細胞のコロニー増殖を定量化するグラフ表示である。25nMの化合物Bと500nMのビニメチニブとの併用処置および50nMの化合物Bと250nMまたは500nMのいずれかのビニメチニブとの併用処置が、予期せずに、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、コロニー増殖の根絶をもたらした一方、根絶は、単剤の化合物Bまたはビニメチニブのいずれかによる処置では観察されなかった(図12B、矢印を参照)。
【0174】
実施例18.化合物Aおよびコビメチニブによる併用処置が、HMC1.2 KIT D816V肥満細胞株のコロニー増殖の相乗的な減少を導く
図13Aは、単剤として、または様々な濃度の化合物Aを様々な濃度のコビメチニブとを組み合わせたマトリクスとして、コビメチニブ(0、25、または50nM)、化合物A(0、25、または50nM)での治療後のHMC1.2肥満細胞のコロニー増殖の代表的な写真である。化合物Aまたはコビメチニブを用いた単剤処置によって、薬剤除去5日後にすべての濃度でコロニー増殖が生じた一方、化合物Aとコビメチニブとの併用では、いずれか一方での単剤処置と比べて、薬剤除去5日後にコロニー増殖はほとんど生じなかった。化合物A(50nM)のコビメチニブ(25または50nM)との併用により、薬剤除去5日後に、生細胞HMC1.2の増殖が著しく減少した。
【0175】
図13Bは、図13Aからの様々な処置後のHMC1.2肥満細胞のコロニー増殖を定量化するグラフ表示である。50nMの化合物Aと25nMまたは50nMのいずれかのコビメチニブとを用いた併用処置により、単剤の化合物Aまたはコビメチニブのいずれかと比較して、コロニー増殖の著しい減少をもたらした。
【0176】
実施例19.化合物Bおよびコビメチニブを用いた併用処置が、HMC1.2 KIT D816V肥満細胞株のコロニー増殖における相乗的な減少を導く
〔000175〕図14Aは、単剤として、または様々な濃度の化合物Bを様々な濃度のコビメチニブとを組み合わせたマトリクスとして、コビメチニブ(0、25、または50nM)、化合物B(0、25、または50nM)での治療後のHMC1.2肥満細胞のコロニー増殖の代表的な写真である。化合物Bまたはコビメチニブによる単剤処置によって、薬剤除去5日後にすべての濃度でコロニー増殖が生じた一方、化合物Bとコビメチニブとの併用では、いずれか一方での単剤処置と比べて、薬剤除去5日後にコロニー増殖がほとんど生じなかった。化合物B(50nM)のコビメチニブ(25または50nM)との併用により、薬剤除去5日後に、生細胞HMC1.2の増殖が著しく減少した。
【0177】
図14Bは、図14Aからの様々な処置後のHMC1.2肥満細胞のコロニー増殖を定量化するグラフ表示である。50nMの化合物Bと25nMまたは50nMのいずれかのコビメチニブとによる併用処置により、単剤の化合物Bまたはコビメチニブのいずれかと比較して、コロニー増殖の著しい減少をもたらした。
【0178】
実施例20.化合物AおよびERK阻害剤ウリキセルチニブによる併用処置が、HMC1.2 KIT D816V肥満細胞株のコロニー増殖における相乗的な減少を導く
実施例14の方法に従ったHMC1.2 KIT D816V肥満細胞株のコロニー増殖の阻害について、化合物Aおよびウリキセルチニブの併用処置を評価することができる。
【0179】
実施例21.化合物BおよびERK阻害剤ウリキセルチニブによる併用処置が、HMC1.2 KIT D816V肥満細胞株のコロニー増殖における相乗的な減少を導く
実施例14の方法に従ったHMC1.2 KIT D816V肥満細胞株のコロニー増殖の阻害に関して、化合物Bおよびウリキセルチニブの併用処置を評価することができる。
【0180】
実施例22.化合物AおよびRAF阻害剤LY3009120による併用処置が、HMC1.2 KIT D816V肥満細胞株のコロニー増殖における相乗的な減少を導く
実施例14の方法に従ったHMC1.2 KIT D816V肥満細胞株のコロニー増殖の阻害に関して、化合物AおよびRAF阻害剤LY3009120の併用処置を評価することができる。
【0181】
実施例23.化合物BおよびLY3009120による併用処置が、HMC1.2 KIT D816V肥満細胞株のコロニー増殖における相乗的な減少を導く
〔000180〕実施例14の方法に従ったHMC1.2 KIT D816V肥満細胞株のコロニー増殖の阻害に関して、化合物BおよびRAF阻害剤LY3009120の併用処置を評価することができる。
【0182】
実施例24.化合物AおよびMEK阻害剤トラメチニブによる併用処置が、突然変異体N-ras G12Dを形質移入したHMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞症細胞株においてアポトーシスを誘発する
化合物Aおよびトラメチニブによる併用処置が、突然変異体N-ras G12Dを形質移入したHMC1.2 V560G/D816V細胞においてアポトーシスを誘発することを実証するために、試験を実施した。ウェル当たり10,000個の細胞を播種した96ウェルプレートでアッセイを行った。細胞を、様々な濃度でのビヒクル対照、化合物A、トラメチニブ、またはその組合せにより処置し、細胞を24時間および48時間成長させた。アポトーシスは、カスパーゼ3/7活性を測定することにより評価した。
【0183】
図15Aは、24時間での、様々な処置に対して決定されたカスパーゼ活性の相対的割合を示すグラフ表示である。24時間の化合物Aおよびトラメチニブによる併用処置が、空のベクター(EV)を形質移入した(左パネル)HMC1.2 V560G/D816V細胞、または突然変異体N-ras G12Dを形質移入した(右パネル)HMC1.2 V560G/D816V細胞のアポトーシスを誘発した。化合物Aのトラメチニブとの併用が、EVを形質移入したHMC1.2細胞およびN-ras G12Dを形質移入したHMC1.2細胞におけるアポトーシスの相乗的増加を導いた。
【0184】
図15Bは、48時間での、様々な治療に対して決定されたカスパーゼ活性の相対的割合を示すグラフ表示である。48時間の化合物Aおよびトラメチニブによる併用処置が、空のベクター(EV)を形質移入した(左パネル)HMC1.2 V560G/D816V細胞、または突然変異体N-ras G12Dを形質移入した(右パネル)HMC1.2 V560G/D816V細胞のアポトーシスを誘発した。化合物Aのトラメチニブとの併用が、EVを形質移入したHMC1.2細胞およびN-ras G12Dを形質移入したHMC1.2細胞におけるアポトーシスの相乗的増加を導いた。EV形質移入細胞よりも、N-ras形質移入細胞でのアポトーシスがより多かった。
【0185】
実施例25.化合物AおよびMEK阻害剤コビメチニブによる併用処置が、突然変異体N-ras G12Dを形質移入したHMC1.2 KIT V560G/D816V肥満細胞症細胞株においてアポトーシスを誘発する
図16Aは、24時間での、様々な処置に対して決定されたカスパーゼ活性の相対的割合を示すグラフ表示である。24時間の化合物Aおよびコビメチニブによる併用処置が、空のベクター(EV)を形質移入した(左パネル)HMC1.2 V560G/D816V細胞、または突然変異体N-ras G12Dを形質移入した(右パネル)HMC1.2 V560G/D816V細胞のアポトーシスを誘発した。化合物Aのコビメチニブとの併用が、EVを形質移入したHMC1.2細胞およびN-ras G12Dを形質移入したHMC1.2細胞におけるアポトーシスの相乗的増加を導いた。EV形質移入細胞よりも、N-ras形質移入細胞でのアポトーシスがより多かった。
【0186】
〔000185〕図16Bは、48時間での、様々な治療に対して決定されたカスパーゼ活性の相対的割合を示すグラフ表示である。48時間の化合物Aおよびコビメチニブを用いた併用処置が、空のベクター(EV)を形質移入した(左パネル)HMC1.2 V560G/D816V細胞、または突然変異体N-ras G12Dを形質移入した(右パネル)HMC1.2 V560G/D816V細胞のアポトーシスを誘発した。化合物Aのコビメチニブとの併用が、EVを形質移入したHMC1.2細胞およびN-ras G12Dを形質移入したHMC1.2細胞におけるアポトーシスの相乗的増加を導いた。EV形質移入細胞よりも、N-ras形質移入細胞でのアポトーシスがより多かった。
【0187】
実施例26.化合物AおよびMEK阻害剤トラメチニブを用いた併用処置が、N-ras G12Dまたは空ベクターで形質移入したHMC1.2 KIT D816V肥満細胞株のコロニー増殖の相乗的な減少を導く
化合物Aおよびトラメチニブを用いた併用処置が、いずれかの単剤による治療と比較して、空のベクター(EV)で形質移入したまたはN-ras G12Dで形質移入した、HMC1.2のコロニー増殖の減少を導くことを実証するために、試験を実施した。HMC1.2細胞を、様々な濃度の化合物A、トラメチニブ、または化合物Aとトラメチニブとの併用で、10日間インキュベートした。薬剤処置を除去し、生細胞のコロニー増殖をさらに5または13日後に観察した。
【0188】
図17Aは、単剤として、または様々な濃度の化合物Aを様々な濃度のトラメチニブとを組み合わせたマトリクスとして、トラメチニブ(0、1、10、または25nM)、化合物A(0、25、または50nM)での治療後のEVを形質移入したHMC1.2肥満細胞のコロニー増殖の代表的な写真である。化合物Aまたはトラメチニブによる単剤処置で、薬剤除去5日後にすべての濃度でコロニー増殖が生じた一方、化合物Aとトラメチニブとの併用では、薬剤除去5日後にコロニー増殖はほとんど生じなかった。化合物A(50nM)のトラメチニブ(1nM)との併用により、単剤の化合物Aまたは単剤のトラメチニブと比較して、1nMのトラメチニブとの併用で、コロニー増殖の著しい減少が生じた。化合物A(50nM)のトラメチニブ(10または25nM)との併用が、予期せずに、薬剤除去5日後に、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、生細胞HMC1.2の増殖の完全な根絶をもたらした一方、単剤化合物Aまたは単剤のトラメチニブでの処置では、根絶は観察されなかった。薬剤除去後のさらに8日間(薬剤除去後総計13日)のさらに延長したコロニー増殖では、化合物A(50nM)およびトラメチニブ(25nM)の併用で、コロニー増殖の検出限界まで根絶が維持されたままであった。
【0189】
図17Bは、図17Aからの様々な処置後のEVを形質移入したHMC1.2肥満細胞のコロニー増殖を定量化するグラフ表示である。50nMの化合物Aと、10nMまたは25nMのいずれかのトラメチニブとの併用処置が、予期せずに、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、コロニー増殖の根絶をもたらした一方、根絶は、単剤の化合物Aまたはトラメチニブのいずれかによる処置では観察されなかった(図17B、矢印を参照)。
【0190】
図17Cは、単剤として、または様々な濃度の化合物Aを様々な濃度のトラメチニブとを組み合わせたマトリクスとして、トラメチニブ(0、1、10、または25nM)、化合物A(0、25、または50nM)での治療後のN-ras G12Dを形質移入したHMC1.2細胞のコロニー増殖の代表的な写真である。化合物Aまたはトラメチニブを用いた単剤処置によって、薬剤除去5日後にすべての濃度でコロニー増殖が生じた一方、化合物Aとトラメチニブとの併用では、薬剤除去5日後にコロニー増殖はほとんど生じなかった。化合物A(25nM)のトラメチニブ(25nM)との併用では、薬剤除去5日後の生細胞HMC1.2の増殖の著しい減少がもたらされ、また化合物A(50nM)のトラメチニブ(10または25nM)との併用が、予期せずに、薬剤除去5日後に、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、N-ras G12Dを形質移入したHMC1.2細胞の増殖の完全な根絶をもたらし、一方で、根絶は、単剤の化合物Aまたはトラメチニブのいずれかによる処置では観察されなかった。薬剤除去のさらに8日後(薬剤除去後総計13日)までさらに延長したコロニー増殖では、化合物A(50nM)およびトラメチニブ(25nM)の併用で、コロニー増殖の根絶が維持されたままであった(図17C)。
【0191】
〔000190〕図17Dは、図17Cからの様々な処置のコロニー増殖を定量化するグラフ表示である。化合物Aおよびトラメチニブによる併用処置により、単剤のいずれかでの処置と比較して、コロニー増殖の優れた阻害が生じた。50nMの化合物Aと、10nMまたは25nMのいずれかのトラメチニブとの併用処置が、予期せずに、薬剤除去5日後に、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、コロニー増殖の根絶をもたらし、根絶は、単剤の化合物Aまたはトラメチニブのいずれかによる処置では観察されなかった(図17D、矢印を参照)。
【0192】
実施例27.化合物Aおよびコビメチニブを用いた併用処置が、N-ras G12Dまたは空ベクターで形質移入したHMC1.2 KIT D816V肥満細胞株のコロニー増殖における相乗的な減少を導く
化合物Aおよびコビメチニブを用いた併用処置が、いずれかの単剤による処置と比較して、空のベクター(EV)で形質移入したまたはN-ras G12Dで形質移入した、HMC1.2のコロニー増殖の減少を導くことを実証するために、試験を実施した。HMC1.2細胞を、様々な濃度の化合物A、コビメチニブ、または化合物Aとコビメチニブとの併用で、10日間インキュベートした。薬剤処置を除去し、生細胞のコロニー増殖をさらに5または10日後に観察した。
【0193】
図18Aは、単剤として、または様々な濃度の化合物Aを様々な濃度のコビメチニブとを組み合わせたマトリクスとして、コビメチニブ(25、または50nM)、化合物A(0、25、または50nM)での処置後のEVを形質移入したHMC1.2肥満細胞のコロニー増殖の代表的な写真である。化合物Aまたはコビメチニブによる単剤処置によって、薬剤除去5日後にすべての濃度でコロニー増殖が生じた一方、化合物Aとコビメチニブとの併用では、薬剤処置除去5日後にコロニー増殖がほとんど生じなかった。化合物A(25nM)のコビメチニブ(25および50nM)との併用により、薬剤処置除去5日後に、生細胞HMC1.2の増殖が著しく減少した。化合物A(50nM)のコビメチニブ(50nM)との併用が、予期せずに、薬剤処置除去5日後に、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、生細胞HMC1.2の増殖の完全な根絶をもたらした一方、単剤化合物Aまたは単剤のコビメチニブでの処置では、根絶は観察されなかった。薬剤処置除去のさらに5日後(薬剤除去後総計10日)までさらに延長したコロニー増殖では、化合物A(50nM)およびコビメチニブ(50nM)の併用で、コロニー増殖の検出限界まで根絶が維持されたままであった。
【0194】
図18Bは、図18Aからの様々な処置後のEVを形質移入したHMC1.2肥満細胞のコロニー増殖を定量化するグラフ表示である。50nMの化合物Aと、50nMのコビメチニブとの併用処置が、予期せずに、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、コロニー増殖の根絶をもたらした一方、根絶は、単剤の化合物Aまたはコビメチニブのいずれかによる処置では観察されなかった(図18B、矢印を参照)。
【0195】
図18Cは、単剤として、または様々な濃度の化合物Aを様々な濃度のコビメチニブとを組み合わせたマトリクスとして、コビメチニブ(0、25、または50nM)、化合物A(0、25、または50nM)による処置後のN-ras G12Dを形質移入したHMC1.2肥満細胞のコロニー増殖の代表的な写真である。化合物Aまたはコビメチニブを用いた単剤処置によって、薬剤処置除去5日後にすべての濃度でコロニー増殖が生じた一方、化合物Aとコビメチニブとの併用では、薬剤処置除去5日後にコロニー増殖がほとんど生じなかった。化合物A(25nM)のコビメチニブ(25および50nM)との併用により、薬剤除去5日後に、生細胞HMC1.2の増殖が著しく減少した。化合物A(50nM)のコビメチニブ(25または50nM)との併用が、予期せずに、薬剤処置除去5日後に、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、生細胞HMC1.2の増殖の完全な根絶をもたらした一方、単剤化合物Aまたは単剤のコビメチニブでの処置では、根絶は観察されなかった。薬剤処置除去後のさらに10日までさらに延長したコロニー増殖では、化合物A(50nM)およびコビメチニブ(25または50nM)の併用で、コロニー増殖の検出限界まで根絶が維持されたままであった。
【0196】
〔000195〕図18Dは、図18Cからの様々な処置後のコロニー増殖を定量化するグラフ表示である。化合物Aおよびコビメチニブによる併用処置により、単剤のいずれかでの処置と比較して、コロニー増殖の優れた阻害が生じた。50nMの化合物Aと、25nMまたは50nMのコビメチニブとの併用処置が、予期せずに、薬剤除去5日後に、5倍での実体的顕微鏡検査による視覚化で決定されるような検出限界まで、コロニー増殖の根絶をもたらした一方、根絶は、単剤の化合物Aまたはコビメチニブのいずれかによる処置では観察されなかった(図18D、矢印を参照)。
【0197】
均等物
当業者であれば、本開示に具体的に記載される特定の実施形態に対する多数の均等を、通例の実験程度のものにより、認識することができ、または確認することができるであろう。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17-1】
図17-2】
図18-1】
図18-2】