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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】アミノ酸誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/60 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
C07D211/60
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020549244
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2019037399
(87)【国際公開番号】W WO2020059891
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2018177774
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】396020464
【氏名又は名称】株式会社エーピーアイ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(72)【発明者】
【氏名】村井 真人
(72)【発明者】
【氏名】竹原 潤
(72)【発明者】
【氏名】尾門 大樹
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0275001(US,A1)
【文献】国際公開第2017/167218(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/091856(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/126820(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/200786(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/173779(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/098425(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105061425(CN,A)
【文献】Organic Letters,2011年,13,5480-5483
【文献】Tetrahedron Letters,1989年,30,31-34
【文献】Org. Process. Res. Dev.,2012年,16,409-414
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
(式中、PGはtert-ブチルオキシカルボニル基またはアセチル基を表し、LGはニトロアリールスルホニルオキシ基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~8の炭化水素基を表す。)
で表される化合物と、一般式PGNHOPG(式中、PGはスルホンアミド系保護基を表し、PGは水酸基の保護基を表す。)で表されるヒドロキシルアミン誘導体とを、塩基の存在下、溶媒中、10℃~70℃で反応させる工程を有することを特徴とする一般式(2):
【化2】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表される化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(2S,5R)-5-(保護オキシアミノ)-ピペリジン-2-カルボン酸誘導体及びその合成中間体又はそれらの塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌感染症の治療や予防のために、ペニシリン系抗生物質、セフェム系抗生物質、モノバクタム系抗生物質、カルバペネム系抗生物質等のβ-ラクタム系抗生物質が広く用いられている。しかしながら、細菌が産生するβ-ラクタマーゼ(β-ラクタム環を加水分解する酵素)によりβ-ラクタム系抗生物質の抗菌力が低下・失活し、細菌感染症に対するβ-ラクタム系抗生物質の治療・予防効果が低下することがしばしば問題となっている。
そこで、β-ラクタム系抗生物質と併用して、β-ラクタム系抗生物質に耐性を示す細菌に対しても本来の抗菌作用を発揮させるβ-ラクタマーゼ阻害剤やその製造方法が種々開発されている。
(2S,5R)-5-(保護オキシアミノ)-ピペリジン-2-カルボン酸誘導体は、ジアザビシクロオクタン誘導体等のβ-ラクタマーゼ阻害剤の合成に有用な中間体として知られている。
(2S,5R)-5-(保護オキシアミノ)-ピペリジン-2-カルボン酸誘導体の製造方法としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されている製造方法が知られている。
具体的には、特許文献1では、(2S,5S)-5-ヒドロキシピペリジン-2-カルボン酸を出発原料として、エステル化、N-トリフルオロアセチル保護を経てN-トリフルオロアセチル-5-ヒドロキシピペリジン-2-カルボン酸アルキルエステルを合成し、その後、5位水酸基に脱離基としてトリフルオロメタンスルホニル基を導入し、O-ベンジルヒドロキシルアミンと反応させることで、(2S,5R)-5-(ベンジルオキシアミノ)-ピペリジン-2-カルボン酸誘導体を製造する方法が記載されている。
また、特許文献2では、(S)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-オキソピロリジン-2-カルボン酸エチルを出発原料として、2-エチル(S)-1-tert-ブチルー5-オキソピペリジンー1,2-ジカルボキシレートを合成し、5位カルボニル基を還元して2-エチル(2S,5S)-1-tert-ブチルオキシカルボニル-5-ヒドロキシピペリジン-1,2-ジカルボキシレートを合成し、5位に脱離基を導入し、N-(ベンジルオキシ)-2-ニトロベンゼンスルホンアミドと反応させた後に、ニトロベンゼンスルホニル基とtert-ブチルオキシカルボニル基を脱保護することで、(2S,5R)-5-(ベンジルオキシアミノ)ピペリジン-2-カルボン酸エチルを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2013/180197
【文献】US9120795
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のβ-ラクタマーゼ阻害剤の合成中間体に関する先行技術には、以下のような多くの技術的課題があった。
特許文献1の製造方法は、使用する原料や生成する中間体が、非常に不安定で極低温条件を必要とするものを含んでいるため、極低温条件で使用可能な設備でなければ製造することができない。また、生成する中間体の多くが油状であるため、晶析による精製が難しく、且つ、製造現場での取り扱いが容易でない。さらに、生成する中間体のN-保護基が電子吸引性の高い保護基であるため2位の異性化が起こりやすく、品質のコントロールが難しいため目的物の品質が低下しやすい。加えて、高価な溶媒や脱離基導入剤が必要である。
したがって、極低温の設備が不要な温和な反応条件で行うことができ、製造現場での作業性がよく、目的物の品質のコントロールが容易であり、より安価な工業的製造方法が望まれている。
特許文献2の製造方法は、高価な溶媒や試薬が必要であり、中間体の収率も高くない。また、試薬として使用するアゾジカルボン酸ジエチルは、加熱や分解時の自己反応により、多量の発熱や爆発的に反応が進む可能性があり、反応暴走に至る危険性がある。さらに、副生成物であるトリフェニルホスフィンオキシドは、後処理や除去が難しいため、目的物の品質のコントロールが容易でない。
したがって、より安価であり、より安全であり、目的物の品質のコントロールが容易な工業的製造方法が望まれている。
以上のように、β-ラクタマーゼ阻害剤の合成中間体として有用な(2S,5R)-5-(保護オキシアミノ)-ピペリジン-2-カルボン酸誘導体の製造方法において、極低温の設備が不要な温和な反応条件で行うことができ、より安全であり、目的物の品質のコントロールが容易であり、製造現場での作業性がよく、より安価な工業的製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、極低温の設備が不要な温和な反応条件で行うことができ、より安全であり、目的物の品質のコントロールが容易であり、製造現場での作業性がよく、より安価な(2S,5R)-5-(保護オキシアミノ)-ピペリジン-2-カルボン酸誘導体の製造方法を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]一般式(1):
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、PGはアミノ基の保護基を表し、LGは脱離基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~8の炭化水素基を表す。)
で表される化合物と、一般式PGNHOPG(式中、PGはアミノ基の保護基を表し、PGは水酸基の保護基を表す。)で表されるヒドロキシルアミン誘導体とを、塩基の存在下、溶媒中で反応させる工程を有することを特徴とする一般式(2):
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表される化合物の製造方法。
[2]一般式(2):
【0010】
【化3】
【0011】
(式中、PG及びPGはそれぞれ独立してアミノ基の保護基を表し、PGは水酸基の保護基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~8の炭化水素基を表す。)
で表される化合物のPGを除去して一般式(3):
【0012】
【化4】
【0013】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表される化合物又はその塩を得る工程;及び
前記一般式(3)で表される化合物のPGを除去する工程;
を有することを特徴とする一般式(4):
【0014】
【化5】
【0015】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表される化合物又はその塩の製造方法。
[3]一般式(2):
【0016】
【化6】
【0017】
(式中、PG及びPGはそれぞれ独立してアミノ基の保護基を表し、PGは水酸基の保護基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~8の炭化水素基を表す。)
で表される化合物のPGを除去して一般式(5):
【0018】
【化7】
【0019】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表される化合物又はその塩を得る工程;及び
前記一般式(5)で表される化合物のPGを除去して一般式(4):
【0020】
【化8】
【0021】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表される化合物を得る工程;
を有することを特徴とする一般式(4)で表される化合物又はその塩の製造方法。
[4]一般式(6):
【0022】
【化9】
【0023】
で表される化合物とアミノ基保護化剤を反応させて一般式(7):
【0024】
【化10】
【0025】
(式中、PGはアミノ基の保護基を表す。)
で表される化合物又はその塩を得る工程;
前記一般式(7)で表される化合物とラクトン化剤とを反応させて一般式(8):
【0026】
【化11】
【0027】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表される化合物を得る工程;
前記一般式(8)で表される化合物を、エステル化剤と反応させて一般式(9):
【0028】
【化12】
【0029】
(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~8の炭化水素基を表し、PGは上記で定義した通りである。)
で表される化合物を得る工程;及び
前記一般式(9)で表される化合物を脱離基導入剤と反応させる工程;
を有することを特徴とする一般式(1):
【0030】
【化13】
【0031】
(式中、LGは脱離基を表し、その他の各記号は上記で定義した通りである。)
で表される化合物の製造方法。
[5]一般式(8):
【0032】
【化14】
【0033】
(式中、PGはアミノ基の保護基を表す。)
で表される化合物を、エステル化剤と反応させて一般式(9):
【0034】
【化15】
【0035】
(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~8の炭化水素基を表し、PGは上記で定義した通りである。)
で表される化合物を得る工程;及び
前記一般式(9)で表される化合物を脱離基導入剤と反応させる工程;
を有することを特徴とする一般式(1):
【0036】
【化16】
【0037】
(式中、LGは脱離基を表し、その他の各記号は上記で定義した通りである。)
で表される化合物の製造方法。
[6]一般式(1):
【0038】
【化17】
【0039】
(式中、PGはアミノ基の保護基を表し、LGは脱離基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~8の炭化水素基を表す。)
で表される化合物と、一般式PGNHOPG(式中、PGはアミノ基の保護基を表し、PGは水酸基の保護基を表す。)で表されるヒドロキシルアミン誘導体とを、塩基の存在下、溶媒中で反応させて一般式(2):
【0040】
【化18】
【0041】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表される化合物を得る工程;
前記一般式(2)で表される化合物のPGを除去して一般式(3):
【0042】
【化19】
【0043】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表される化合物又はその塩を得る工程;及び
前記一般式(3)で表される化合物のPGを除去する工程;
を有することを特徴とする一般式(4):
【0044】
【化20】
【0045】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表される化合物又はその塩の製造方法。
[7]一般式(1):
【0046】
【化21】
【0047】
(式中、PGはアミノ基の保護基を表し、LGは脱離基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~8の炭化水素基を表す。)
で表される化合物と、一般式PGNHOPG(式中、PGはアミノ基の保護基を表し、PGは水酸基の保護基を表す。)で表されるヒドロキシルアミン誘導体とを、塩基の存在下、溶媒中で反応させて一般式(2):
【0048】
【化22】
【0049】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表される化合物を得る工程;
前記一般式(2)で表される化合物のPGを除去して一般式(5):
【0050】
【化23】
【0051】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表される化合物又はその塩を得る工程;
前記一般式(5)で表される化合物のPGを除去して一般式(4):
【0052】
【化24】
【0053】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表される化合物又はその塩を得る工程;
を有することを特徴とする一般式(4)で表される化合物又はその塩の製造方法。
[8]PGがカルバメート系保護基又はアミド系保護基であり、そのσ 値が1.00以下であることを特徴とする、[1]、[6]又は[7]に記載の製造方法。
[9]LGがスルホニルオキシ基であることを特徴とする、[1]及び[6]~[8]のいずれか1に記載の製造方法。
[10]一般式(1)で表される化合物と一般式:PGNHOPG(式中、PGはアミノ基の保護基を表し、PGは水酸基の保護基を表し、その他の各記号は上記で定義した通りである。)で表されるヒドロキシルアミン誘導体とを、10℃~70℃の温度で反応させることを特徴とする、[1]及び[6]~[9]のいずれか1に記載の製造方法。
[11]下記式(1a)、(1b)、(2a)、(2b)、(3b)、(5a)又は(9b)で表される化合物。
【0054】
【化25】
【0055】
(式中、Bocはtert-ブトキシカルボニル基を表し、Acはアセチル基を表し、Nsはp-ニトロベンゼンスルホニルオキシ基を表し、Bnはベンジル基を表す。)
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、極低温の設備が不要な温和な反応条件で行うことができ、より安全であり、目的物の品質のコントロールが容易であり、製造現場での作業性がよく、より安価な(2S,5R)-5-(保護オキシアミノ)-ピペリジン-2-カルボン酸誘導体の製造方法を提供することができる。
具体的には、本発明の製造方法は、ピペコリン酸を基本構造とする化合物として、5位に脱離基を導入し、且つ、1位に電子吸引性の低いアミン保護基を導入した化合物を採用することにより、温和な条件で2位の異性化を抑制しながらヒドロキシルアミン化を行うことができるため、高品質の目的物を製造することができる。さらに、本発明の製造方法は、アミノ基の保護やカルボキシル基のエステル化によって、生成する中間体の極性を低減させ、当該中間体の有機溶媒への溶解性や結晶性を向上させることができる。これにより、生成する中間体の精製効率を向上させ、また、製造現場での作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明を詳細に説明する。
[明細書中の用語]
以下、本発明における一般式中の各記号及び用語について説明する。
PG及びPGはそれぞれ独立してアミノ基の保護基を表す。
アミノ基の保護基としては、アミノ基を保護するものであれば特に限定されず、公知のアミノ基の保護基を挙げることができる。好ましくは、カルバメート系保護基、アミド系保護基、スルホンアミド系保護基が挙げられる。
カルバメート系保護基としては、例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等の脂肪族系オキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基、p-メチルオキシベンジルカルボニル基、p-ニトロベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基等の芳香族系オキシカルボニル基が挙げられる。
アミド系保護基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリクロロアセチル基もしくはトリフルオロアセチル基等が挙げられる。これらの中で、電子吸引性の低いアミド系保護基としては、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等の炭化水素系アシル基が挙げられる。また、電子吸引性の高いアミド系保護基としては、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基等のハロゲン置換炭化水素系アシル基が挙げられる。
スルホンアミド系保護基としては、例えば、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、トリイソプロピルベンゼンスルホニル基等の炭化水素スルホンアミド系保護基;o-ニトロベンゼンスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基、o,p-ジニロトベンゼンスルホニル基等のニトロベンゼンスルホンアミド系保護基が挙げられる。
【0058】
PGは水酸基の保護基を表す。
水酸基の保護基としては、公知の水酸基の保護基を挙げることができる。例えば、エーテル系保護基、アセタール系保護基、シリルエーテル系保護基、アシル系保護基が挙げられる。
エーテル系保護基としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の鎖状アルキルエーテル系保護基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキルエーテル系保護基;ベンジル基、p-メチルオキシベンジル基、トリチル基等の芳香族エーテル系保護基が挙げられる。
アセタール系保護基としては、例えば、メチルオキシメチル基、メチルオキシエチル基、エチルオキシメチル基、エチルオキシエチル基等の鎖状アセタール系保護基;テトラヒドロピラニル基等の環状アセタール系保護基が挙げられる。
シリルエーテル系保護基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基等の炭化水素系シリル基が挙げられる。
アシル系保護基としては、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等の炭化水素系アシル基;トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基等のハロゲン置換炭化水素系アシル基が挙げられる。
【0059】
LGは、脱離基を表す。
脱離基としては、例えば、スルホニルオキシ基、ハロゲン原子等の公知の脱離基を挙げることができる。
スルホニルオキシ基としては、例えば、メタンスルホニルオキシ基、トリクロロメタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のアルキルスルホニルオキシ基;ベンゼンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基等のアリールスルホニルオキシ基;p-ニトロベンゼンスルホニルオキシ基、o-ニトロベンゼンスルホニルオキシ基等のニトロベンゼンスルホニルオキシ基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0060】
Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~8の炭化水素基を表す。
炭素数1~8の炭化水素基としては、好ましくは、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基、炭素数6~8の芳香族炭化水素基が挙げられる。
炭素数1~8の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数2~8のアルキニル基が挙げられ、これらは直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
炭素数6~8の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
「置換基を有していてもよい」における「置換基」としては、例えば、オキソ基、水酸基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数2~8のアルキニル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数2~8のアルケニルオキシ基、炭素数2~8のアルキニルオキシ基、炭素数1~8のアシル基、炭素数1~8のアシルオキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。これらの置換基は、置換可能な任意の位置に、置換可能な任意の数だけ置換していてもよい。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基及びそれらの異性体である。
炭素数2~8のアルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基及びそれらの異性体である。
炭素数2~8のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基及びそれらの異性体である。
炭素数1~8のアルキルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基及びそれらの異性体である。
炭素数2~8のアルケニルオキシ基としては、エテニルオキシ基、プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基、ペンテニルオキシ基、ヘキセニルオキシ基、ヘプテニルオキシ基、オクテニルオキシ基及びそれらの異性体である。
炭素数2~8のアルキニルオキシ基としては、エチニルオキシ基、プロピニルオキシ基、ブチニルオキシ基、ペンチニルオキシ基、ヘキシニルオキシ基、ヘプチニルオキシ基、オクチニルオキシ基及びそれらの異性体である。
炭素数1~8のアシル基としては、メタノイル基、エタノイル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基及びそれらの異性体である。
炭素数1~8のアシルオキシ基としては、メタノイルオキシ基、エタノイルオキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基及びそれらの異性体である。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
Rの式量としては、結合している化合物が有機溶媒に実質的に溶解する式量であればよく、下限としては、特に限定されないが、上限としては、溶媒への溶解性などの操作性の観点から、通常300以下、好ましくは250以下、より好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下、特に好ましくは100以下である。例えば、メチル基の式量は15であり、ベンジル基の式量は91である。
【0061】
Mは、金属原子を表す。
「金属原子」としては、公知の金属を挙げることができ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属が挙げられる。
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムが挙げられる。
アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられる。
遷移金属としては、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、ビスマス、アンチモン等が挙げられる。
Mは、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属であり、原料の入手性やコストの観点から、より好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムであり、特に好ましくはナトリウム、カリウムである。
【0062】
[本発明の製造ルート]
本発明の製造ルートA及びBは、以下の工程を含むものである。
製造ルートA及びB
【0063】
【化26】
【0064】
すなわち、製造ルートA及びBは、上記一般式(1)で表される化合物から一般式(4)で表される化合物を製造する方法である。
製造ルートAは、工程1、工程2及び工程3を有する製造ルートであり、製造ルートBは、工程1、工程4及び工程5を有する製造ルートである。
また、本発明の製造ルートCは、以下の工程を含むものである。
製造ルートC
【0065】
【化27】
【0066】
すなわち、製造ルートCは、上記式(6)で表される化合物から工程1の出発物質である一般式(1)で表される化合物を製造する製造ルートである。
また、本発明の製造ルートA及びBは、各々、さらに、製造ルートCを有していてもよい。
本発明の製造ルートA、B及びCは、ピペコリン酸骨格のアミノ基の保護基として電子吸引性の低い保護基を採用することにより、ピペコリン酸骨格の2位の置換基の異性化が起こりにくいため、高純度の中間体が得られるという点で優れている。
また、製造ルートA及びBに共通の工程1は、出発物質として、安定な化合物である一般式(1)で表される化合物を使用しているため、温和な条件で反応が可能である。また、一般式(1)で表される化合物が未反応物として残存した場合でも、除去が容易である。このように工程1は工業的な製造に適している工程であり、本発明の特徴的な工程である。
また、製造ルートCは、中間体として生成する化合物が、極性が低く結晶性の高い化合物が多く、抽出や再結晶等の操作を効率的に行うことができるため、工業的な製造に適している。
【0067】
[本発明の製造方法]
本明細書において、製造方法1~7は、それぞれ以下の製造方法を意味する。
製造方法1:工程1を有する製造方法
製造方法2:工程2及び3を有する製造方法
製造方法3:工程4及び5を有する製造方法
製造方法4:工程6、7、8及び9を有する製造方法
製造方法5:工程8及び9を有する製造方法
製造方法6:工程1、2及び3を有する製造方法
製造方法7:工程1、4及び5を有する製造方法
以下、本発明の製造方法について、詳細に説明する。
【0068】
<製造方法1>
【0069】
【化28】
【0070】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
製造方法1は、一般式(1)で表される化合物と一般式PGNHOPGで表されるヒドロキシルアミン誘導体とを、塩基の存在下、溶媒中で反応させて一般式(2)で表される化合物を得る工程(工程1)を有する。
【0071】
[工程1]
(原料)
一般式(1)で表される化合物は、任意の公知の方法により製造することができるが、後述する製造方法4又は製造方法5により製造することが好ましい。
一般式(1)において、脱離基LGとしては、ヒドロキシルアミン誘導体との反応が進行するものであれば特に限定されないが、スルホニルオキシ基が好ましい。
スルホニルオキシ基としては、例えば、メタンスルホニルオキシ基等のアルキルスルホニルオキシ基;トリクロロメタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のハロゲン化アルキルスルホニルオキシ基;ベンゼンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基等のアリールスルホニルオキシ基;p-ニトロベンゼンスルホニルオキシ基、o-ニトロベンゼンスルホニルオキシ基、o,p-ジニトロベンゼンスルホニルオキシ基等のニトロアリールスルホニルオキシ基が挙げられる。
これらの中でも、アリールスルホニルオキシ基、ニトロアリールスルホニルオキシ基が好ましい。さらに、脱離能が高く、温和な条件で脱離反応が進行するという観点からはニトロアリールスルホニルオキシ基がより好ましく、コストの観点からはp-ニトロベンゼンスルホニルオキシ基、o-ニトロベンゼンスルホニルオキシ基がさらに好ましく、副生成物の生成が少ないという観点からはp-ニトロベンゼンスルホニルオキシ基が特に好ましい。
脱離基LGの脱離能が低すぎると、反応が効率的に進まず高温を必要とするおそれがあり、高すぎると熱や塩基性条件化で不安定となり、副生成物である脱離体が増加して品質及び収率が低下するおそれがある。
ここで、「脱離能」とは反応性の高さを表し、これは脱離後の脱離基LGの共役酸の安定性の高さに比例する。また、当該共役酸の安定性の高さは、例えば、酸解離定数pKaの値によって推定することができ、pKaの値が大きいほど安定性が高い。
脱離基LGの脱離能の大きさ(脱離基の共役酸のpKaの大きさ)としては、下限としては、副生成物抑制の観点から、通常-13以上、好ましくは-10以上、より好ましくは-6以上であり、上限としては、反応性の観点から、通常-1.5以下であり、好ましくは-2以下、より好ましくは-2.5以下である。
例えば、メタンスルホン酸のpKaは-2.6、硫酸のpKaは-3である。ここで、トリフルオロメタンスルホン酸のpKaは-14であり、脱離基LGとしては好ましくない。
一般式(1)及び(2)において、アミノ基の保護基PGとしては、電子吸引性が低いほど異性化が抑制されるため、品質・純度の観点から、電子吸引性の低いアミノ基の保護基が好ましい。
ここで、「電子吸引性」とは、分子の特定の位置について電子密度を減弱させる効果を意味する。電子吸引性の大きさは、A survey of Hammett substituent constants and resonance and field parameters(Chem.Rev. 1991, 91, 165-195)に記載のσ (以下、置換基定数と称する場合がある。)の値に比例することが知られている。
PGの電子吸引性の大きさとしては、置換基定数の値が、上限としては、通常1.2以下であり、異性化抑制の観点から、好ましくは1.00以下、より好ましくは0.9以下、特に好ましくは0.85以下であり、下限としては、通常-0.3以上、好ましくは-0.2以上、より好ましくは-0.1以上、特に好ましくは0以上である。
例えば、置換基定数の値が1.06であるp-ニトロベンジルスルホニル基や、置換基定数の値が1.09であるトリフルオロアセチル基は、電子吸引性が高いため、PGとしては好ましくない。
電子吸引性の低いアミノ基の保護基PGとしては、カルバメート系保護基及び電子吸引性の低いアミド系保護基が好ましい。カルバメート系保護基としては、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等の脂肪族系オキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基、p-メチルオキシベンジルカルボニル基、p-ニトロベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基等の芳香族系オキシカルボニル基が挙げられ、電子吸引性の低いアミド系保護基としては、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等の炭化水素系アシル基が挙げられる。
これらの中でも、脱保護の容易性の観点から、PGとしては、tert-ブチルオキシカルボニル基及びアセチル基がより好ましい。
置換基定数の値は、tert-ブトキシカルボニル基が0.64、アセチル基が0.84である。
一般式(2)及び上記ヒドロキシルアミン誘導体において、アミノ基の保護基PGとしては、ヒドロキシルアミン誘導体の反応性の観点から、電子吸引性の高いアミノ基の保護基が好ましい。
PGの電子吸引性の大きさとしては、σ が1より大きければよい。
電子吸引性の高いアミノ基の保護基PGとしては、スルホンアミド系保護基が挙げられ、脱保護の容易性の観点から、o-ニトロベンゼンスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基及びo,p-ジニロトベンゼンスルホニル基等のニトロベンゼンスルホニル系保護基が好ましい。
一般式(2)及び上記ヒドロキシルアミン誘導体において、水酸基の保護基PGとしては、ヒドロキシルアミン誘導体の反応性を高めるという観点からエーテル系保護基が好ましく、脱保護の容易性の観点から、芳香族エーテル系保護基がより好ましく、ベンジル基及びp-メトキシベンジル基が特に好ましい。
ヒドロキシルアミン誘導体としては、反応が進行する限り特に限定されないが、反応性と原料の入手性及びコストの観点から、好ましくはN-(p-ニトロベンゼンスルホニル)-O-ベンジル-ヒドロキシルアミンである。ヒドロキシルアミン誘導体の中でアミノ基がフリーの化合物は、熱に不安定で分解しやすく、純度が下がるおそれがあるため、アミノ基が保護されているものを用いるのが好ましい。
ヒドロキシルアミン誘導体は、市販のものを用いてもよいし、任意の公知の方法により調製して用いてもよい。ヒドロキシルアミン誘導体を調製して用いる場合には、予め調製したものを反応系中に添加してもよいし、反応系内で調製し、そのまま使用してもよい。
ヒドロキシルアミン誘導体の使用量は、一般式(1)で表される化合物に対し、下限としては、生産性の観点から、通常0.1モル当量以上、好ましくは1モル当量以上、より好ましくは1.02モル当量以上であり、上限としては、操作性、品質及びコストの観点から、通常10モル当量以下、好ましくは3モル当量以下、より好ましくは2モル当量以下である。
【0072】
工程1は、塩基の存在下、溶媒中で行うことが好ましい。
塩基としては、反応が進行する限り、特に限定されないが、3級アミン類、ピリジン類、有機強塩基、金属アミド、アルキル金属化合物、金属水素化物、金属アルコキシド、炭酸塩、リン酸塩、金属水酸化物及びシアン化物等が挙げられる。工程1で用いる塩基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
3級アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
ピリジン類としては、例えば、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン等が挙げられる。
有機強塩基としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、テトラメチルグアニジン等が挙げられる。
金属アミドとしては、例えば、リチウムアミド、ナトリウムエチルアミド、カルシウムジエチルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムベンジルアミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムインドリド、ナトリウムピロライド、リチウムピロライド、カリウムピロライド、カリウムピロリジド、アルミニウムジエチルピロライド、エチルアルミニウムジピロライド、アルミニウムトリピロライド、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド等が挙げられる。
アルキル金属化合物としては、例えばn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、イソプロピルマグネシウムブロミド等が挙げられる。
金属水素化物としては、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化セシウム等が挙げられる。
金属アルコキシドとしては、例えば、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムプロポキシド、リチウムtert-ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムプロポキシド、カリウムtert-ブトキシド等が挙げられる。
炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等が挙げられる。
リン酸塩としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
シアン化物としては、例えば、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等が挙げられる。
使用する塩基の塩基性が弱すぎると、ヒドロキシルアミン誘導体が活性化されず、反応が進行しないおそれがあり、塩基性が強すぎると2位の異性化や副生成物が増加し、純度が低下するおそれがあり、さらに塩基性が強いと基質のエステル部分の加水分解が起こり、純度が低下するおそれがある。
したがって、塩基としては、好ましくはピリジン類、炭酸塩、金属水素化物及び金属アルコキシドであり、より好ましくは炭酸塩であり、さらに好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸セシウムである。
塩基の使用量は、一般式(1)で表される化合物に対し、下限としては、通常0.1モル当量以上、生産性の観点から好ましくは1モル当量以上、より好ましくは1.02モル当量以上であり、上限としては、操作性、品質及びコストの観点から、通常10モル当量以下、好ましくは3モル当量以下、より好ましくは2モル当量以下である。
【0073】
溶媒としては、反応が進行する限り、特に限定されず、有機溶媒又は水性溶媒を用いることができるが、反応性の観点から有機溶媒を用いることが好ましい。
有機溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、ケトン溶媒、ニトリル溶媒、アミド溶媒、スルホキシド溶媒、炭化水素溶媒、塩基性有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を用いることができる。
アルコール溶媒としては、一般式ROH(Rは上記で定義した通りである。)で表されるアルコールが挙げられる。好ましくは、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~8の芳香族炭化水素基を有するアルコールを用いることができ、より好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール又はこれらの異性体アルコール等を用いることができる。
エステル溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステルを用いることができる。
エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等の鎖状エーテル;シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルを用いることができる。
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトンを用いることができる。
ニトリル溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロパノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル等の脂肪族ニトリル;ベンゾニトリル等の芳香族ニトリルを用いることができる。
アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン等の非プロトン性アミドを用いることができる。
スルホキシド溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性スルホキシドを用いることができる。
炭化水素溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を用いることができる。
塩基性有機溶媒としては、例えば、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン等のピリジン系溶媒を用いることができる。
溶媒としては、反応性の観点から、好ましくはアミド類、エーテル系溶媒及び炭化水素類、より好ましくはアミド類であり、コスト及び原料の入手性の観点から、さらに好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドである。
溶媒は上記の有機溶媒を単独で用いてもよいし、2種類以上を任意の割合で混合したものを用いてよい。
溶媒の使用量は、一般式(1)表される化合物1kgに対して、下限としては、通常1L以上、操作性の観点から好ましくは2L以上、さらに好ましくは3L以上であり、上限としては、操作性、生産性及びコストの観点から、通常30L以下、好ましくは20L以下、より好ましくは10L以下である。
【0074】
(反応条件)
反応温度は、用いる塩基や溶媒により異なり得るが、下限としては、生産性の観点から、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上、特に好ましくは25℃以上であり、上限としては、品質及びコストの観点から、通常100℃以下、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下、さらに好ましくは60℃以下、特に好ましくは55℃以下である。
反応温度は、低すぎると反応の進行が遅くなり生産性が低下するおそれがあり、高すぎると脱離体や2位異性体が増加し、得られる化合物の品質が低下するおそれがある。
反応時間は、用いる塩基や溶媒により異なり得るが、生産性の観点から、通常1時間~120時間、好ましくは12時間~72時間である。
反応時の圧力は、通常、常圧である。
一般式(1)で表される化合物とヒドロキシルアミン誘導体とを、塩基存在下で反応させる場合、これらの化合物の供給順序は適宜選択することができる。また、これらの化合物は、反応系に一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。例えば、反応器内に、一般式(1)で表される化合物、ヒドロキシルアミン誘導体、及び塩基のいずれか一種以上の成分を溶媒と共に供給してこれを敷液として、反応条件下、残りの成分を供給液として供給することで反応を行うことができる。これらの供給順序は、反応液の温度とpHを制御しながら反応を進めることができるという点で、反応器内に、一般式(1)で表される化合物、ヒドロキシルアミン誘導体を溶媒と共に供給してこれを敷液として、反応条件化、塩基を加えて反応を行う供給方法が好ましい。反応系内に過剰に塩基が存在する場合は、過反応物が生成するおそれがある。塩基は、最初から反応系中に存在させてもよいし、途中で供給してもよい。また、一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。
【0075】
(後処理)
反応液はそのまま次の工程に供してもよいが、通常、中和、分液、濾過等の処理を施した後の有機層として供する。また、濃縮、晶析等の単離手段により、有機層から該生成物を単離したものを供してもよいし、該生成物を再結晶、カラムクロマトグラフィー等の精製手段により、さらに精製した後に供してもよい。
【0076】
工程1の反応は、不安定な中間体を経由せず、一般式(2)で表される化合物を安定して得ることができる。特に、下記式(2a)で表される化合物は、電子吸引性の低い保護基により2位の異性化が抑制されること、及びアミノ基の脱保護が容易であるという観点から、特に好ましい。なお、当該化合物は新規化合物である。
【0077】
【化29】
【0078】
(式中、Bocはtert-ブチルオキシカルボニル基を表し、Nsはp-ニトロベンゼンスルホニル基を表し、Bnはベンジル基を表し、Meはメチル基を表す。)
一般式(2)で表される化合物としては、水和物又は有機溶媒和物等の溶媒和物を形成していてもよく、その形態は使用する原料及び溶媒等によって異なっていてもよく、また目的とする反応を阻害しない限り特にその形態は限定されない。
本発明においては、特にことわりのない限り、「一般式(2)で表される化合物」は、一般式(2)で表される化合物とその溶媒和物の両方を意味する。
<製造方法2>
【0079】
【化30】
【0080】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
製造方法2は、
一般式(2)で表される化合物とPG脱保護剤とを反応させて一般式(3)で表される化合物又はその塩を得る工程(工程2);及び
一般式(3)で表される化合物又はその塩とPG脱保護剤とを反応させて一般式(4)で表される化合物又はその塩を得る工程(工程3)
を有することを特徴とする。
【0081】
[工程2]
工程2は、一般式(2)で表される化合物と、PG脱保護剤とを反応させて一般式(3)で表される化合物又はその塩を得る工程である。
(原料)
PG脱保護剤としては、アミノ基の保護基PGを除去できるものであればよく、特に限定されず、酸、塩基、酸化剤、還元剤、金属触媒、2級アミン、チオール化合物、フッ化物塩等の公知の脱保護剤を用いて行うことができる。
PGがニトロベンゼンスルホニル系保護基の場合には、チオール化合物を用いてアミノ基の脱保護を行うことが好ましい。
チオール化合物としては、ニトロベンゼンスルホンアミド系保護基で保護されたアミノ基を脱保護し得るものであれば特に限定されないが、アルキルチオール、アリールチオール、メルカプトカルボン酸等が挙げられる。
アルキルチオールとしては、例えば、エタンチオール、1-プロパンチオール、2-プロパンチオール、1-ブタンチオール、2-ブタンチオール、1-ペンタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ペンタデカンチオール等が挙げられる。
アリールチオールとしては、例えば、チオフェノール、メチルベンゼンチオール、ジメチルベンゼンチオール、エチルベンゼンチオール、ジエチルベンゼンチオール、ナフタレンチオールなどが挙げられる。
メルカプトカルボン酸としては、例えば、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトブタン酸、2-メルカプトイソ酪酸、3-メルカプトイソ酪酸、3-メルカプト-3-メチル酪酸、2-メルカプト吉草酸、3-メルカプトイソ吉草酸、4-メルカプト吉草酸、3-フェニル-3メルカプトプロピオン酸等が挙げられる。
チオール化合物としては、原料の入手性とコストの観点から、好ましくはメルカプトカルボン酸であり、より好ましくは、チオグリコール酸である。
PG脱保護剤の使用量は、PGが除去できる量であれば特に限定されないが、一般式(2)で表される化合物に対し、下限としては、生産性の観点から、通常0.1モル当量以上、好ましくは1モル当量以上、より好ましくは1.02モル当量以上であり、上限としては、操作性、反応生成物の純度、コストの観点から、通常20モル当量以下、好ましくは15モル当量以下、より好ましくは10モル当量以下である。
【0082】
工程2は、塩基の存在下、溶媒中で行うことが好ましい。
塩基としては、反応が進行する限り、特に限定されないが、3級アミン類、ピリジン類、有機強塩基、金属アミド、アルキル金属化合物、金属水素化物、金属アルコキシド、炭酸塩、リン酸塩、金属水酸化物及びシアン化物等が挙げられる。工程2で用いる塩基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
3級アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
ピリジン類としては、例えば、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン等が挙げられる。
有機強塩基としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、テトラメチルグアニジン等が挙げられる。
金属アミドとしては、例えば、リチウムアミド、ナトリウムエチルアミド、カルシウムジエチルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムベンジルアミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムインドリド、ナトリウムピロライド、リチウムピロライド、カリウムピロライド、カリウムピロリジド、アルミニウムジエチルピロライド、エチルアルミニウムジピロライド、アルミニウムトリピロライド、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド等が挙げられる。
アルキル金属化合物としては、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、イソプロピルマグネシウムブロミド等が挙げられる。
金属水素化物としては、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化セシウム等が挙げられる。
金属アルコキシドとしては、例えば、リチウムメチルオキシド、リチウムエチルオキシド、リチウムプロピルオキシド、リチウムtert-ブチルオキシド、ナトリウムメチルオキシド、ナトリウムエチルオキシド、ナトリウムプロピルオキシド、ナトリウムtert-ブチルオキシド、カリウムメチルオキシド、カリウムエチルオキシド、カリウムプロピルオキシド、カリウムtert-ブチルオキシド等が挙げられる。
炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等が挙げられる。
リン酸塩としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
シアン化物としては、例えば、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等が挙げられる。
これらの塩基のうち、塩基性の強度の観点から、3級アミン、ピリジン類、炭酸塩、金属水素化物、金属アルコキシド、金属水酸化物が好ましく、より好ましくは炭酸塩であり、さらに好ましくは炭酸カリウム、炭酸セシウムである。
塩基の塩基性が弱すぎると、チオール化合物が十分に活性化されず、反応の進行が遅くなるおそれがあり、塩基性が強すぎると2位のカルボン酸エステルの脱エステル化が起こり、反応生成物の純度と収率が低下するおそれがある。
塩基の使用量は、一般式(2)で表される化合物に対し、下限としては、生産性の観点から、通常0.1モル当量以上、好ましくは1モル当量以上、より好ましくは1.02モル当量以上であり、上限としては、操作性、反応生成物の純度、コストの観点から、通常20モル当量以下、好ましくは15モル当量以下、より好ましくは10モル当量以下である。
【0083】
溶媒としては、反応が進行する限り、特に限定されず、有機溶媒又は水性溶媒を用いることができるが、反応性の観点から有機溶媒を用いることが好ましい。
有機溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、ケトン溶媒、ニトリル溶媒、アミド溶媒、スルホキシド溶媒、炭化水素溶媒、塩基性有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を用いることができる。
アルコール溶媒としては、一般式ROH(Rは上記で定義した通りである。)で表されるアルコールが挙げられる。好ましくは、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~8の芳香族炭化水素基を有するアルコールであり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール又はこれらの異性体アルコールを用いることができる。
エステル溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステルを用いることができる。
エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等の鎖状エーテル;シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルを用いることができる。
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトンを用いることができる。
ニトリル溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロパノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル等の脂肪族ニトリル;ベンゾニトリル等の芳香族ニトリルを用いることができる。
アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン等の非プロトン性アミドを用いることができる。
スルホキシド溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性スルホキシドを用いることができる。
炭化水素溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を用いることができる。
塩基性有機溶媒としては、例えば、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン等のピリジン系溶媒を用いることができる。
溶媒としては、反応生成物の純度の観点から、好ましくは、一般式ROH(Rは上記で定義した通りである。)で表されるアルコールである。より好ましくは、エステル交換による不純物を抑えられることから、一般式(2)で表される化合物のRと同じ炭素数である、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~8の芳香族炭化水素基を有するアルコールであり、さらに好ましくは、コスト及び原料の入手性の観点から、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等の炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を有するアルコール及びベンジルアルコールである。
溶媒は上記の有機溶媒を単独で用いてもよいし、2種類以上を任意の割合で混合したものを用いてよい。
溶媒の使用量は、一般式(2)で表される化合物1kgに対して、下限としては、操作性の観点から、通常1L以上、好ましくは2L以上、より好ましくは3L以上であり、上限としては、操作性、生産性、コストの観点から、通常30L以下、好ましくは20L以下、より好ましくは15L以下である。
【0084】
(反応条件)
反応温度は、用いるPG脱保護剤、塩基、溶媒等により異なり得るが、下限としては、生産性の観点から、通常0℃以上、好ましくは5℃以上であり、より好ましくは10℃以上であり、上限としては、反応生成物の純度及びコストの観点から、通常60℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。
反応時間は、用いるPG脱保護剤、塩基、溶媒等により異なり得るが、生産性の観点から、通常0.5時間~48時間、好ましくは1~24時間である。
反応時の圧力は、通常、常圧である。
一般式(2)で表される化合物とPG脱保護剤とを反応させる場合、これらの化合物の供給順序は適宜選択することができる。また、これらの化合物は、反応系に一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。例えば、反応器内に、一般式(2)で表される化合物及びPG脱保護剤のいずれか一種以上を溶媒と共に仕込んでこれを敷液として、反応条件下、残りの成分を供給液として供給することで反応を行うことができる。塩基は、最初から反応系中に存在させてもよいし、途中で供給してもよく、また、一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。
【0085】
(後処理)
反応液はそのまま次の工程に供してもよいし、中和、分液、濾過等の処理を施した後で次の工程に供してもよいし、濃縮、晶析等の単離手段により反応生成物を単離した後で次の工程に供してもよい。また、該生成物を再結晶、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製手段により、さらに精製した後で次の工程に供してもよい。
一般式(3)で表される化合物の形態は、通常フリーアミン体であるが、反応が進行する限り特にその形態は限定されず、塩又は水和物若しくは有機溶媒和物等の溶媒和物を形成していてもよい。一般式(3)で表される化合物の形態は、使用する原料及び溶媒等により所望の形態を適宜選択することができる。
本発明においては、特にことわりのない限り、「一般式(3)で表される化合物」は、一般式(3)で表される化合物とその溶媒和物の両方を意味し、「一般式(3)で表される化合物の塩」は、一般式(3)で表される化合物の塩とその塩の溶媒和物の両方を意味する。
一般式(3)で表される化合物をフリーアミン体として得た場合は、所望により、常法に従って、その塩又は水和物若しくは有機溶媒和物等の溶媒和物に変換してもよく、一般式(3)で表される化合物を塩又は水和物若しくは有機溶媒和物等の溶媒和物として得た場合は、所望により、常法に従って、フリーアミン体に変換してもよい。
一般式(3)で表される化合物の塩としては、無機酸塩、有機酸塩が挙げられる。
無機酸塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。
有機酸塩としては、例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩等のカルボン酸塩;メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等のスルホン酸塩が挙げられる。
一般式(3)で表される化合物の塩としては、好ましくは無機酸塩であり、より好ましくは結晶性がよく工業的に取り扱いが容易なことから塩酸塩である。
【0086】
[工程3]
工程3は、一般式(3)で表される化合物又はその塩とPG脱保護剤とを反応させて一般式(4)で表される化合物又はその塩を得る工程である。
一般式(4)で表される化合物の塩を得る場合は、例えば、一般式(3)で表される化合物のアミノ基の保護基PGの除去と塩形成を同時に行ってもよいし、PGを除去した後に、塩を形成してもよい。
PGの除去と塩形成を同時に行う場合は、例えば、一般式(3)で表される化合物とPG脱保護剤とを反応させてPGを除去することにより、一般式(4)で表される化合物の塩が得られる。PGを除去した後に、塩を形成する場合は、例えば、一般式(3)で表される化合物とPG脱保護剤とを反応させて一般式(4)で表される化合物のフリーアミン体を得た後に、塩を形成する酸と反応させることにより一般式(4)で表される化合物の塩が得られる。
【0087】
(原料)
PG脱保護剤としては、PGが除去し得るものであれば、特に限定されず、酸、塩基、酸化剤、還元剤、金属触媒、2級アミン、チオール化合物、フッ化物塩等の公知の脱保護剤を用いることができる。
例えば、PGがtert-ブチルオキシカルボニル基又はアセチル基の場合、PG脱保護剤として、酸を用いてPGを除去することができる。
酸としては、無機酸及び有機酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を用いることができる。
無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸等を用いることができる。
有機酸としては、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、クエン酸、グルクロン酸、グルコン酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、イセチオン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸を用いることができる。
酸としては、原料の入手性とコストの観点から、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、塩酸が好ましく、より好ましくは塩酸である。
PG脱保護剤の使用量は、PGが除去できる量であれば特に限定されないが、一般式(3)で表される化合物又はその塩に対し、下限としては、生産性の観点から、通常0.1モル当量以上、好ましくは1モル当量以上、より好ましくは1.02モル当量以上であり、上限としては、操作性、反応生成物の純度、コストの観点から、通常20モル当量以下、好ましくは15モル当量以下、より好ましくは10モル当量以下である。
【0088】
工程3は、溶媒中で行うことが好ましい。
溶媒としては、反応が進行する限り、特に限定されず、有機溶媒又は水性溶媒を用いることができるが、反応性の観点から有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒としては、反応生成物の純度の観点から、好ましくは、一般式ROH(Rは上記で定義した通りである。)で表されるアルコールである。より好ましくは、エステル交換による不純物を抑えられることから、一般式(2)で表される化合物のRと同じ炭素数である、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~8の芳香族炭化水素基を有するアルコールであり、さらに好ましくは、コスト及び原料の入手性の観点から、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等の炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を有するアルコール及びベンジルアルコールである。
溶媒の使用量は、一般式(3)で表される化合物又はその塩1kgに対して、下限としては、操作性の観点から、通常1L以上、好ましくは2L以上、より好ましくは3L以上であり、上限としては、操作性、生産性及びコストの観点から、通常30L以下、好ましくは20L以下、より好ましくは15L以下である。
【0089】
(反応条件)
反応温度は、用いるPG脱保護剤、溶媒等により異なり得るが、下限としては、生産性の観点から、通常20℃以上、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上であり、上限としては、反応生成物の純度及びコストの観点から、通常80℃以下、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下である。
反応時間は、用いるPG脱保護剤、溶媒等により異なり得るが、生産性の観点から、通常0.5時間~24時間、好ましくは1時間~12時間である。
反応時の圧力は、通常、常圧である。
一般式(3)で表される化合物又はその塩とPG脱保護剤とを反応させる場合、これらの化合物の供給順序は適宜選択することができる。また、これらの化合物は、反応系に一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。例えば、反応器内に、一般式(3)で表される化合物及びPG脱保護剤のいずれか一種以上を溶媒と共に仕込んでこれを敷液として、反応条件下、残りの成分を供給液として供給することで反応を行うことができる。PG脱保護剤として酸を用いる場合は、酸を最初から反応系中に存在させてもよいし、途中で供給してもよく、また、一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。
一般式(3)で表される化合物のPG保護基がtert-ブチルオキシカルボニル基の場合、脱保護時に副生成物のガスとしてイソブテンと二酸化炭素が発生するため、これらのガスの発生量をコントロールしながら反応を行うために、反応器内に、酸と溶媒を共に供給して敷液として、反応条件下、一般式(3)で表される化合物と溶媒を供給液として供給することで反応を行うことが好ましい。
【0090】
(後処理)
反応液はそのまま次の工程に供してもよいし、中和、分液、濾過等の処理を施した後で次の工程に供してもよいし、濃縮、晶析等の単離手段により反応生成物を単離した後で次の工程に供してもよい。また、該生成物を再結晶、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製手段により、さらに精製した後で次の工程に供してもよい。
一般式(4)で表される化合物の形態は、反応が進行する限り特に限定されず、フリーアミン体であってもよく、また塩又は水和物若しくは有機溶媒和物等の溶媒和物を形成していてもよい。一般式(4)で表される化合物の形態は、使用する原料及び溶媒等により所望の形態を適宜選択することができる。
一般式(4)で表される化合物をフリーアミン体として得た場合は、所望により、常法に従って、その塩又は水和物若しくは有機溶媒和物等の溶媒和物に変換してもよく、一般式(4)で表される化合物を塩又は水和物若しくは有機溶媒和物等の溶媒和物として得た場合は、所望により、常法に従って、フリーアミン体に変換してもよい。
本発明においては、特にことわりのない限り、「一般式(4)で表される化合物」は、一般式(4)で表される化合物とその溶媒和物の両方を意味し、「一般式(4)で表される化合物の塩」は、一般式(4)で表される化合物の塩とその塩の溶媒和物の両方を意味する。
本発明においては、一般式(4)で表される化合物の形態は、塩が好ましい。
一般式(4)で表される化合物の塩としては、無機酸塩、有機酸塩が挙げられる。
無機酸塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。
有機酸塩としては、例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩等のカルボン酸塩;メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等のスルホン酸塩が挙げられる。
一般式(4)で表される化合物の塩としては、好ましくは無機酸塩であり、より好ましくは結晶性がよく工業的に取り扱いが容易なことから塩酸塩である。
【0091】
一般式(4)で表される化合物を塩に変換する場合、塩を形成する酸を用いればよい。
酸としては、塩を形成するものであれば特に限定されないが、無機酸及び有機酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を用いることができる。
無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、ポリリン酸等を用いることができる。
有機酸としては、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、クエン酸、グルクロン酸、グルコン酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、イセチオン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸を用いることができる。
酸としては、原料の入手性とコストの観点から、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸が好ましく、より好ましくは塩酸である。
酸の使用量は、一般式(4)で表される化合物に対し、下限としては、生産性の観点から、通常0.1モル当量以上、好ましくは1モル当量以上、より好ましくは1.02モル当量以上であり、上限としては、操作性、反応生成物の純度及びコストの観点から、通常20モル当量以下、好ましくは15モル当量以下、より好ましくは10モル当量以下である。
一般式(4)で表される化合物と酸とを反応させる場合、これらの化合物の供給順序は適宜選択することができる。また、これらの化合物は、反応系に一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。例えば、反応器内に、一般式(4)で表される化合物及び酸のいずれか一種以上を溶媒と共に仕込んでこれを敷液として、反応条件下、残りの成分を供給液として供給することで反応を行うことができる。
工程3においては、一般式(5)で表される化合物のアミノ基の保護基PGの除去と塩形成を同時に行うことがより好ましい。
【0092】
<製造方法3>
【0093】
【化31】
【0094】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
製造方法3は、
一般式(2)で表される化合物とPG脱保護剤とを反応させて一般式(5)で表される化合物又はその塩を得る工程(工程4);及び
一般式(5)で表される化合物又はその塩とPG脱保護剤とを反応させて一般式(4)で表される化合物又はその塩を得る工程(工程5)
を有することを特徴とする。
【0095】
[工程4]
工程4は、一般式(2)で表される化合物とPG脱保護剤とを反応させて一般式(5)で表される化合物又はその塩を得る工程である。
(原料)
PG脱保護剤としては、前記工程3と同様のPG脱保護剤を用いることができる。
PG脱保護剤の使用量は、PGが除去できる量であれば特に限定されないが、一般式(2)で表される化合物に対し、下限としては、生産性の観点から、通常0.1モル当量以上、好ましくは1モル当量以上、より好ましくは3モル当量以上であり、上限としては、操作性、生産性及びコストの観点から、通常20モル当量以下、好ましくは15モル当量以下、より好ましくは10モル当量以下である。
工程4は、溶媒中で行うことができる。
溶媒としては、反応が進行する限り、特に限定されないが、有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、反応生成物の純度の観点から、好ましくは、一般式ROH(Rは上記で定義した通りである。)で表されるアルコールである。より好ましくは、エステル交換による不純物を抑えられることから、一般式(2)で表される化合物のRと同じ炭素数である、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~8の芳香族炭化水素基を有するアルコールであり、さらに好ましくは、コスト及び原料の入手性の観点から、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等の炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を有するアルコール及びベンジルアルコールである。
溶媒は上記の有機溶媒を単独で用いてもよいし、2種類以上を任意の割合で混合したものを用いてもよい。
溶媒の使用量としては、一般式(2)で表される化合物1kgに対して、下限としては、通常1L以上、操作性の観点から好ましくは2L以上、さらに好ましくは3L以上であり、上限としては、操作性、生産性及びコストの観点から通常30L以下、好ましくは20L以下、より好ましくは15L以下である。
【0096】
(反応条件)
反応温度は、用いるPG脱保護剤、溶媒等により異なり得るが、下限としては、生産性の観点から、通常20℃以上、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上であり、上限としては、反応生成物の純度及びコストの観点から、通常80℃以下、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下である。
反応時間は、用いるPG脱保護剤、溶媒等により異なり得るが、生産性の観点から通常0.5時間~24時間、好ましくは1時間~12時間である。
反応時の圧力は、通常、常圧である。
一般式(2)で表される化合物とPG脱保護剤とを反応させる場合、これらの化合物の供給順序は適宜選択することができる。また、これらの化合物は、反応系に一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。例えば、反応器内に、一般式(2)で表される化合物及びPG脱保護剤のいずれか一種以上を溶媒と共に仕込んでこれを敷液として、反応条件下、残りの成分を供給液として供給することで反応を行うことができる。PG脱保護剤として酸を用いる場合は、酸を最初から反応系中に存在させてもよいし、途中で供給してもよい。また、一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。
一般式(2)で表される化合物のPG保護基がtert-ブチルオキシカルボニル基の場合、脱保護時に副生成物のガスとしてイソブテンと二酸化炭素が発生するため、これらのガスの発生量をコントロールしながら反応を行うために、反応器内に、酸と溶媒を共に供給して敷液として、反応条件下、一般式(2)で表される化合物と溶媒を供給液として供給することで反応を行うことが好ましい。
【0097】
(後処理)
反応液はそのまま次の工程に供してもよいし、中和、分液、濾過等の処理を施した後で次の工程に供してもよいし、濃縮、晶析等の単離手段により反応生成物を単離した後で次の工程に供してもよい。また、該生成物を再結晶、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製手段により、さらに精製した後で次の工程に供してもよい。
【0098】
なお、一般式(5)で表される化合物のうち、下記式(5a)で表される化合物は新規な化合物である。この化合物は、結晶性が高いため、クロマトグラフィー等の煩雑な精製を行うことなく、容易に反応副生成物と分離することができるので、工業的な製造に適している。
【0099】
【化32】
【0100】
(式中、Nsはp-ニトロベンゼンスルホニル基を表し、Bnはベンジル基を表し、Meはメチル基を表す。)
一般式(5)で表される化合物の形態は、通常フリーアミン体であるが、反応が進行する限り特にその形態は限定されず、塩を形成していてもよい。一般式(5)で表される化合物の形態は、使用する原料及び溶媒等により所望の形態を適宜選択することができる。
一般式(5)で表される化合物をフリーアミン体として得た場合は、所望により、常法に従って、その塩又は水和物若しくは有機溶媒和物等の溶媒和物に変換してもよく、一般式(5)で表される化合物を塩又は水和物若しくは有機溶媒和物等の溶媒和物として得た場合は、所望により、常法に従って、フリーアミン体に変換してもよい。
本発明においては、特にことわりのない限り、「一般式(5)で表される化合物」は、一般式(5)で表される化合物とその溶媒和物の両方を意味し、「一般式(5)で表される化合物の塩」は、一般式(5)で表される化合物の塩とその塩の溶媒和物の両方を意味する。
一般式(5)で表される化合物の塩としては、無機酸塩、有機酸塩が挙げられる。
無機酸塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。
有機酸塩としては、例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩等のカルボン酸塩;メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等のスルホン酸塩が挙げられる。
一般式(5)で表される化合物の塩としては、好ましくは無機酸塩であり、より好ましくは結晶性がよく工業的に取り扱いが容易なことから塩酸塩である。
【0101】
[工程5]
工程5は、一般式(5)で表される化合物又はその塩とPG脱保護剤とを反応させて一般式(4)で表される化合物又はその塩を得る工程である。
一般式(4)で表される化合物の塩を得る場合は、例えば、一般式(5)で表される化合物のアミノ基の保護基PGの除去と塩形成を同時に行ってもよいし、PGを除去した後に、塩を形成してもよい。
PGの除去と塩形成を同時に行う場合は、例えば、一般式(5)で表される化合物とPG脱保護剤とを反応させてPGを除去することにより、一般式(4)で表される化合物の塩が得られる。PGを除去した後に、塩を形成する場合は、例えば、一般式(5)で表される化合物とPG脱保護剤とを反応させて一般式(4)で表される化合物のフリーアミン体を得た後に、塩を形成する酸と反応させることにより一般式(4)で表される化合物の塩が得られる。
【0102】
(原料)
PG脱保護剤としては、前記工程2と同様のPG脱保護剤を用いることができる。
PG脱保護剤の使用量は、一般式(5)で表される化合物又はその塩に対し、下限としては、通常1モル当量以上、反応性の観点から好ましくは1.5モル当量以上、より好ましくは2モル当量以上であり、上限としては、通常20モル当量以下、コストの観点から好ましくは15モル当量以下、より好ましくは10モル当量以下である。
【0103】
工程5は、塩基の存在下、溶媒中で行うことが好ましい。
塩基としては、反応が進行する限り、特に限定されないが、3級アミン類、ピリジン類、有機強塩基、金属アミド、アルキル金属化合物、金属水素化物、金属アルコキシド、炭酸塩、リン酸塩、金属水酸化物、シアン化物等が挙げられる。工程5で用いる塩基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
3級アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
ピリジン類としては、例えば、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ルチジン等が挙げられる。
有機強塩基としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、テトラメチルグアニジン等が挙げられる。
金属アミドとしては、例えば、リチウムアミド、ナトリウムエチルアミド、カルシウムジエチルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムベンジルアミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムインドリド、ナトリウムピロライド、リチウムピロライド、カリウムピロライド、カリウムピロリジド、アルミニウムジエチルピロライド、エチルアルミニウムジピロライド、アルミニウムトリピロライド、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド等が挙げられる。
アルキル金属化合物としては、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、イソプロピルマグネシウムブロミド等が挙げられる。
金属水素化物としては、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化セシウム等が挙げられる。
金属アルコキシドとしては、例えば、リチウムメチルオキシド、リチウムエチルオキシド、リチウムプロピルオキシド、リチウムtert-ブチルオキシド、ナトリウムメチルオキシド、ナトリウムエチルオキシド、ナトリウムプロピルオキシド、ナトリウムtert-ブチルオキシド、カリウムメチルオキシド、カリウムエチルオキシド、カリウムプロピルオキシド、カリウムtert-ブチルオキシド等が挙げられる。
炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等が挙げられる。
リン酸塩としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
シアン化物としては、例えば、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等が挙げられる。
これらの塩基のうち、塩基性の強度の観点から、3級アミン、ピリジン類、炭酸塩、金属水素化物、金属水素化物、金属アルコキシド、水酸化物が好ましく、より好ましくは炭酸塩であり、さらに好ましくは炭酸カリウム、炭酸セシウムである。
塩基の塩基性が弱すぎると、チオール化合物が十分に活性化されず、反応の進行が遅くなるおそれがあり、塩基性が強すぎると2位のカルボン酸エステルの脱エステル化が起こり、反応生成物の純度と収率が低下するおそれがある。
塩基の使用量は、一般式(5)で表される化合物又はその塩に対し、下限としては、生産性の観点から、通常0.1モル当量以上、好ましくは1モル当量以上、より好ましくは1.02モル当量以上であり、上限としては、操作性、反応生成物の純度、コストの観点から、通常20モル当量以下、好ましくは15モル当量以下、より好ましくは10モル当量以下である。
【0104】
溶媒としては、反応が進行する限り、特に限定されず、有機溶媒又は水性溶媒を用いることができるが、反応性の観点から有機溶媒を用いることが好ましい。
有機溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、ケトン溶媒、ニトリル溶媒、アミド溶媒、スルホキシド溶媒、炭化水素溶媒、塩基性有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を用いることができる。
アルコール溶媒としては、一般式ROH(Rは上記で定義した通りである。)で表されるアルコールが挙げられる。好ましくは、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~8の芳香族炭化水素基を有するアルコールであり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール又はこれらの異性体アルコールを用いることができる。
エステル溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステルを用いることができる。
エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等の鎖状エーテル;シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルを用いることができる。
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトンを用いることができる。
ニトリル溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロパノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル等の脂肪族ニトリル;ベンゾニトリル等の芳香族ニトリルを用いることができる。
アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン等の非プロトン性アミドを用いることができる。
スルホキシド溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性スルホキシドを用いることができる。
炭化水素溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を用いることができる。
塩基性有機溶媒としては、例えば、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン等のピリジン系溶媒を用いることができる。
溶媒としては、反応生成物の純度の観点から、好ましくは、一般式ROH(Rは上記で定義した通りである。)で表されるアルコールである。より好ましくは、エステル交換による不純物を抑えられることから、一般式(2)で表される化合物のRと同じ炭素数である、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~8の芳香族炭化水素基を有するアルコールであり、さらに好ましくは、コスト及び原料の入手性の観点から、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等の炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を有するアルコール及びベンジルアルコールである。
溶媒は上記の有機溶媒を単独で用いてもよいし、2種類以上を任意の割合で混合したものを用いてもよい。
溶媒の使用量は、一般式(5)で表される化合物又はその塩1kgに対して、下限としては、操作性の観点から、通常1L以上、好ましくは2L以上、さらに好ましくは3L以上であり、上限としては、操作性、生産性及びコストの観点から、通常30L以下、好ましくは20L以下、さらに好ましくは15L以下である。
【0105】
(反応条件)
反応温度は、用いるPG脱保護剤、塩基、溶媒等により異なり得るが、下限としては、生産性の観点から、通常0℃以上、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、上限としては、反応生成物の純度及びコストの観点から、通常60℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは45℃以下である。
反応時間は、用いるPG脱保護剤、塩基、溶媒等により異なり得るが、生産性の観点から、通常0.5時間~48時間、好ましくは1時間~24時間である。
反応時の圧力は、通常、常圧である。
一般式(5)で表される化合物又はその塩とPG脱保護剤とを反応させる場合、これらの化合物の供給順序は適宜選択することができる。また、これらの化合物は、反応系に一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。例えば、反応器内に、一般式(5)で表される化合物及びPG脱保護剤のいずれか一種以上を溶媒と共に仕込んでこれを敷液として、反応条件下、残りの成分を供給液として供給することで反応を行うことができる。塩基は、最初から反応系中に存在させてもよいし、途中で供給してもよく、また、一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。
【0106】
(後処理)
反応液はそのまま次の工程に供してもよいし、中和、分液、濾過等の処理を施した後で次の工程に供してもよいし、濃縮、晶析等の単離手段により反応生成物を単離した後で次の工程に供してもよい。また、該生成物を再結晶、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製手段により、さらに精製した後で次の工程に供してもよい。
一般式(4)で表される化合物の形態は、反応が進行する限り特に限定されず、フリーアミン体であってもよく、また塩又は水和物若しくは有機溶媒和物等の溶媒和物を形成していてもよい。一般式(4)で表される化合物の形態は、使用する原料及び溶媒等により所望の形態を適宜選択することができる。
一般式(4)で表される化合物をフリーアミン体として得た場合は、所望により、常法に従って、その塩又は水和物若しくは有機溶媒和物等の溶媒和物に変換してもよく、一般式(4)で表される化合物を塩又は水和物若しくは有機溶媒和物等の溶媒和物として得た場合は、所望により、常法に従って、フリーアミン体に変換してもよい。
本発明においては、特にことわりのない限り、「一般式(4)で表される化合物」は、一般式(4)で表される化合物とその溶媒和物の両方を意味し、「一般式(4)で表される化合物の塩」は、一般式(4)で表される化合物の塩とその塩の溶媒和物の両方を意味する。
一般式(4)で表される化合物の形態は、上記工程3の場合と同様に塩が好ましい。
一般式(4)で表される化合物の塩としては、無機酸塩、有機酸塩が挙げられる。
無機酸塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。
有機酸塩としては、例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩等のカルボン酸塩;メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等のスルホン酸塩が挙げられる。
一般式(4)で表される化合物の塩としては、好ましくは無機酸塩であり、より好ましくは結晶性がよく工業的に取り扱いが容易なことから塩酸塩である。
【0107】
一般式(4)で表される化合物を塩に変換する場合は、上記工程3において記載した方法を用いることができる。一般式(4)で表される化合物を塩に変換する場合、塩を形成する酸を用いればよい。
酸としては、塩を形成するものであれば特に限定されないが、無機酸及び有機酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を用いることができる。
無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸等を用いることができる。
有機酸としては、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、クエン酸、グルクロン酸、グルコン酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、イセチオン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸を用いることができる。
酸としては、原料の入手性とコストの観点から、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸が好ましく、より好ましくは塩酸である。
酸の使用量は、一般式(4)で表される化合物に対し、下限としては、生産性の観点から、通常0.1モル当量以上、好ましくは1モル当量以上、より好ましくは1.02モル当量以上であり、上限としては、操作性、反応生成物の純度及びコストの観点から、通常20モル当量以下、好ましくは15モル当量以下、より好ましくは10モル当量以下である。
一般式(4)で表される化合物と酸とを反応させる場合、これらの化合物の供給順序は適宜選択することができる。また、これらの化合物は、反応系に一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。例えば、反応器内に、一般式(4)で表される化合物及び酸のいずれか一種以上を溶媒と共に仕込んでこれを敷液として、反応条件下、残りの成分を供給液として供給することで反応を行うことができる。
【0108】
(後処理)
反応液はそのまま次の工程に供してもよいし、中和、分液、濾過等の処理を施した後で次の工程に供してもよいし、濃縮、晶析等の単離手段により反応生成物を単離した後で次の工程に供してもよい。また、該生成物を再結晶、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製手段により、さらに精製した後で次の工程に供してもよい。
<製造方法4>
【0109】
【化33】
【0110】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
製造方法4は、上記の製造ルートCと同じであり、式(6)で表される化合物から一般式(1)で表される化合物を製造する製造ルートである。
製造方法4は、
式(6)で表される化合物とPG保護化剤とを反応させて一般式(7)で表される化合物を得る工程(工程6);
上記一般式(7)で表される化合物とラクトン化剤とを反応させて一般式(8)で表される化合物を得る工程(工程7);
上記一般式(8)で表される化合物とエステル化剤とを反応させて一般式(9)で表される化合物を得る工程(工程8);及び
上記一般式(9)で表される化合物と脱離基導入剤とを反応させて一般式(1)で表される化合物を得る工程(工程9)
を有することを特徴とする。
製造方法4は、中間体として生成する化合物が、極性が低く結晶性の高い化合物が多く、抽出や再結晶等の操作を効率的に行うことができるため、工業的な生産に適している。
【0111】
[工程6]
工程6は、式(6)で表される化合物とPG保護化剤とを反応させて一般式(7)で表される化合物を得る工程である。
(原料)
式(6)で表される化合物(cis-5-ヒドロキシピペコリン酸)は、公知の方法、例えば、国際公開公報第2014/098188号、国際公開公報第2014/129459号、国際公開公報2015/098774号等に記載の方法により製造することができる。
式(6)の化合物の形態としては、反応が進行する限り特に限定されないが、フリー体が好ましい。
本発明において、特にことわりのない限り、「式(6)で表される化合物」は、一般式(6)で表される化合物とその溶媒和物の両方を意味し、「一般式(6)で表される化合物の塩」は、一般式(6)で表される化合物の塩とその塩の溶媒和物の両方を意味する。
ここで、一般式(7)におけるアミノ基の保護基PGとしては、カルバメート系保護基、電子吸引性の低いアミド系保護基、電子吸引性の低いスルホンアミド系保護基が特に好ましいことから、PG保護化剤としては、それぞれに対応するPG保護化剤であるtert-ブチルオキシカルボニル化剤等のカルバメート保護化剤、アセチル化剤等のアミド保護化剤が好ましい。これらは反応が進行する限り特に限定されないが、公知のものを用いることができる。
tert-ブチルオキシカルボニル化剤としては、例えば、ジ-tert-ブチルオキシカーボネート、N-tert-ブチルカルボニルイミダゾール、tert-ブチルフェニルカーボネート、tert-ブチルカルバゼート、N-tert-ブチルオキシカルボニルイミダゾール等が挙げられ、好ましくはコスト及び原料の入手性の観点から、ジ-tert-ブチルジカーボネートである。
アセチル化剤としては、例えば、無水酢酸、アセチルクロリド、アセチルブロミド等が挙げられ、コスト及び原料の入手性の観点から、無水酢酸が好ましい。
これらの保護化剤の中でも、電子吸引性の低い保護基を導入することができることから、tert-ブチルオキシカルボニル化剤、アセチル化剤がより好ましい。
PG保護化剤の使用量は、反応が進行する限り特に限定されないが、式(6)で表される化合物に対し、下限としては、生産性の観点から、通常0.1モル当量以上、好ましくは1モル当量以上、より好ましくは1.02モル当量以上であり、上限としては、操作性、反応生成物の純度及びコストの観点から、通常10モル当量以下、好ましくは3モル当量以下、より好ましくは2モル当量以下である。
【0112】
工程6は、塩基の存在下、溶媒中で行うことが好ましい。
塩基としては、反応が進行する限り、特に限定されないが、3級アミン類、ピリジン類、有機強塩基、金属アミド、アルキル金属化合物、金属水素化物、金属アルコキシド、炭酸塩、リン酸塩、金属水酸化物及びシアン化物等が挙げられる。工程6で用いる塩基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
3級アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
ピリジン類としては、例えば、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ルチジン等が挙げられる。
有機強塩基としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、テトラメチルグアニジン等が挙げられる。
金属アミドとしては、例えば、リチウムアミド、ナトリウムエチルアミド、カルシウムジエチルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムベンジルアミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムインドリド、ナトリウムピロライド、リチウムピロライド、カリウムピロライド、カリウムピロリジド、アルミニウムジエチルピロライド、エチルアルミニウムジピロライド、アルミニウムトリピロライド、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド等が挙げられる。
アルキル金属化合物としては、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、イソプロピルマグネシウムブロミド等が挙げられる。
金属水素化物としては、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化セシウム等が挙げられる。
金属アルコキシドとしては、例えば、リチウムメチルオキシド、リチウムエチルオキシド、リチウムプロピルオキシド、リチウムtert-ブチルオキシド、ナトリウムメチルオキシド、ナトリウムエチルオキシド、ナトリウムプロピルオキシド、ナトリウムtert-ブチルオキシド、カリウムメチルオキシド、カリウムエチルオキシド、カリウムプロピルオキシド、カリウムtert-ブチルオキシド等が挙げられる。
炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等が挙げられる。
リン酸塩としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
シアン化物としては、例えば、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等が挙げられる。
これらの塩基のうち、塩基性の強度の観点から、3級アミン、ピリジン類及び炭酸塩が好ましく、より好ましくはトリエチルアミン、ピリジン、炭酸カリウムであり、さらに好ましくは反応性の観点からトリエチルアミンである。用いる塩基の塩基性度が強すぎると、過反応物が生成するおそれがある。
塩基の使用量は、式(6)で表される化合物に対し、下限としては、生産性の観点から、通常0.1モル当量以上、好ましくは1モル当量以上、より好ましくは1.02モル当量以上であり、上限としては、操作性、反応生成物の純度及びコストの観点から、通常15モル当量以下、好ましくは10モル当量以下、より好ましくは5モル当量以下である。
工程6に用いる塩基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
【0113】
溶媒としては、反応が進行する限り、特に限定されないが、水等の水性溶媒又は有機溶媒を用いることができ、操作性及びコストの観点から、水又は水と有機溶媒との混合溶媒が好ましく、より好ましくは水である。
有機溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、ケトン溶媒、ニトリル溶媒、アミド溶媒、スルホキシド溶媒、炭化水素溶媒、塩基性有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を用いることができる。
アルコール溶媒としては、一般式ROH(Rは上記で定義した通りである。)で表されるアルコールが挙げられる。好ましくは、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~8の芳香族炭化水素基を有するアルコールであり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール又はこれらの異性体アルコール等を用いることができる。
エステル溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステルを用いることができる。
エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルを用いることができる。
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトンを用いることができる。
ニトリル溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロパノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル等の脂肪族ニトリル;ベンゾニトリル等の芳香族ニトリルを用いることができる。
アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン等の非プロトン性アミドを用いることができる。
スルホキシド溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性スルホキシドを用いることができる。
炭化水素溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を用いることができる。
塩基性有機溶媒としては、例えば、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン等のピリジン系溶媒を用いることができる。
上記の有機溶媒は単独で用いてもよいし、2種類以上を任意の割合で混合したものを用いてよい。
溶媒としては、コスト及び操作性の観点から、好ましくは水である。
溶媒の使用量としては、式(6)で表される化合物1kgに対して、下限としては、操作性の観点から、通常1L以上、好ましくは2L以上、さらに好ましくは3L以上であり、上限としては、操作性、生産性及びコストの観点から、通常30L以下、好ましくは20L以下、より好ましくは10L以下である。
工程6の溶媒として、水と有機溶媒の混合溶媒を用いる場合、有機溶媒の混合割合は、水に対して、下限としては、通常0.1質量倍以上、好ましくは0.2質量倍以上、さらに好ましくは、0.3質量倍以上であり、上限としては、通常20質量倍以下、好ましくは15質量倍以下、さらに好ましくは10質量倍以下である。
反応液のpHは、反応性の観点から、通常5~14、より好ましくは7~12、さらに好ましくは8~11である。反応液のpHが低すぎると反応がうまく進行しないおそれがあり、高すぎると過反応物が増え、反応生成物の純度と収率が下がるおそれがある。ここで、反応液のpHとは、水を溶媒として用いた場合には水を含む層のpHを表し、有機溶媒を用いた場合には、反応液と同体積の水を加えた時の水層のpHを表す。
【0114】
(反応条件)
反応温度は、用いるPG保護化剤、塩基、溶媒等により異なり得るが、下限としては、生産性の観点から、通常5℃以上、好ましくは10℃以上であり、より好ましくは15℃以上であり、上限としては、反応生成物の純度及びコストの観点から、通常50℃以下、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下である。
反応時間は、用いるPG保護化剤、塩基、溶媒等により異なり得るが、生産性の観点から、通常0.1時間~24時間、好ましくは0.5時間~12時間である。
反応時の圧力は、通常、常圧である。
式(6)で表される化合物とPG保護化剤とを反応させる場合、これらの化合物の供給順序は適宜選択することができる。また、これらの化合物は、反応系に一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。例えば、反応器内に、式(6)で表される化合物又はPG保護化剤のいずれか一種以上を溶媒と共に仕込んでこれを敷液として、反応条件下、残りの成分を供給液として供給することで反応を行うことができる。塩基は、最初から反応系中に存在させてもよいし、途中で供給してもよく、一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。
【0115】
(後処理)
反応液はそのまま次の工程に供してもよいし、中和、分液、濾過等の処理を施した後で次の工程に供してもよいし、濃縮、晶析等の単離手段により反応生成物を単離した後で次の工程に供してもよい。また、該生成物を再結晶、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製手段により、さらに精製した後で次の工程に供してもよい。これらの中でも、生産性の観点から、反応液をそのまま次の工程に供するのが好ましい。
【0116】
一般式(7)で表される化合物としては、塩又は水和物若しくは有機溶媒和物等の溶媒和物を形成していてもよく、その形態は使用する原料及び溶媒等によって異なっていてもよく、また目的とする反応を阻害しない限り特にその形態は限定されない。
本発明において、特にことわりのない限り、「一般式(7)で表される化合物」は、一般式(7)で表される化合物とその溶媒和物の両方を意味し、「一般式(7)で表される化合物の塩」は、一般式(7)で表される化合物の塩とその塩の溶媒和物の両方を意味する。
なお、一般式(7)で表される化合物のうち、下記式(7a)で表される化合物は、結晶性が高いため、クロマトグラフィー等の煩雑な精製を行うことなく、容易に反応副生成物と分離することができるため、工業的な製造に適している。
【0117】
【化34】
【0118】
[工程7]
工程7は、工程6で得られた一般式(7)で表される化合物とラクトン化剤とを反応させて一般式(8)で表される化合物を得る工程である。
(原料)
ラクトン化剤としては、アシル化剤、アルコキシカルボニル化剤及びスルホニル化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることができる。
アシル化剤としては、例えば、ギ酸-酢酸無水物、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物アシル化剤;アセチルクロリド、クロロアセチルクロリド、ジクロロアセチルクロリド、トリクロロアセチルクロリド、プロピオニルクロリド、ベンゾイルクロリド、4-クロロベンゾイルクロリド、アセチルブロミド、プロピオニルブロミド、ベンゾイルブロミド等のハロゲン化アシルを用いることができる。
アルコキシカルボニル化剤としては、例えば、ジ-tert-ブチルジカルボナート等の酸無水物アルコキシカルボニル化剤;ベンジルオキシカルボニルクロリド、アリルオキシカルボニルクロリド、ベンジルオキシカルボニルブロミド、アリルオキシカルボニルブロミド等のハロゲン化アルコキシカルボニル化剤を用いることができる。
スルホニル化剤としては、例えば、メタンスルホニルクロリド、p-トルエンスルホニルクロリド、2-ニトロベンゼンスルホニルクロリド、メタンスルホニルブロミド、p-トルエンスルホニルブロミド、2-ニトロベンゼンスルホニルブロミド等のハロゲン化スルホニル化剤を用いることができる。
ラクトン化剤としては、反応性の観点から、好ましくはアシル化剤であり、より好ましくは酸無水物アシル化剤であり、さらに好ましくは無水酢酸である。
ラクトン化剤の使用量は、一般式(7)で表される化合物に対し、下限としては、生産性の観点から、通常0.1モル当量以上、好ましくは1モル当量以上、より好ましくは1.02モル当量以上であり、操作性、反応生成物の純度及びコストの観点から、上限としては、通常10モル当量以下、好ましくは3モル当量以下、より好ましくは2モル当量以下である。
【0119】
工程7は、塩基の存在下、溶媒中で行うことができる。
塩基としては、反応が進行する限り、特に限定されないが、3級アミン類、ピリジン類、有機強塩基、金属アミド、アルキル金属化合物、金属水素化物、金属アルコキシド、炭酸塩、リン酸塩、金属水酸化物、シアン化物等が挙げられる。工程7で用いる塩基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
3級アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
ピリジン類としては、例えば、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ルチジン等が挙げられる。
有機強塩基としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、テトラメチルグアニジン等が挙げられる。
金属アミドとしては、例えば、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド等が挙げられる。
アルキル金属化合物としては、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、イソプロピルマグネシウムブロミド等が挙げられる。
金属水素化物としては、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化セシウム等が挙げられる。
金属アルコキシドとしては、例えば、リチウムメチルオキシド、リチウムエチルオキシド、リチウムプロピルオキシド、リチウムtert-ブチルオキシド、ナトリウムメチルオキシド、ナトリウムエチルオキシド、ナトリウムプロピルオキシド、ナトリウムtert-ブチルオキシド、カリウムメチルオキシド、カリウムエチルオキシド、カリウムプロピルオキシド、カリウムtert-ブチルオキシド等が挙げられる。
炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等が挙げられる。
リン酸塩としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
シアン化物としては、例えば、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等が挙げられる。
これらの塩基のうち、塩基性の強度の観点から、3級アミン、ピリジン類及び炭酸塩が好ましく、より好ましくはトリエチルアミン、ピリジン、炭酸カリウムであり、さらに好ましくは反応性の観点からトリエチルアミンである。
塩基の使用量は、一般式(7)で表される化合物に対し、下限としては、生産性の観点から、通常0.1モル当量以上、好ましくは1モル当量以上、より好ましくは1.02モル当量以上であり、上限としては、操作性、反応生成物の純度及びコストの観点から、通常10モル当量以下、好ましくは3モル当量以下、より好ましくは2モル当量以下である。
溶媒としては、反応が進行する限り、特に限定されず、有機溶媒又は水性溶媒を用いることができるが、反応性の観点から有機溶媒を用いることが好ましい。
【0120】
有機溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、ケトン溶媒、ニトリル溶媒、アミド溶媒、スルホキシド溶媒、炭化水素溶媒、塩基性有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を用いることができる。
アルコール溶媒としては、一般式ROH(Rは上記で定義した通りである。)で表されるアルコールが挙げられる。好ましくは、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~8の芳香族炭化水素基を有するアルコールであり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール又はこれらの異性体アルコール等を用いることができる。
エステル溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステルを用いることができる。
エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等の鎖状エーテル;シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルを用いることができる。
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトンを用いることができる。
ニトリル溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロパノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル等の脂肪族ニトリル;ベンゾニトリル等の芳香族ニトリルを用いることができる。
アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン等の非プロトン性アミドを用いることができる。
スルホキシド溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性スルホキシドを用いることができる。
炭化水素溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒を用いることができる。
塩基性有機溶媒としては、例えば、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン等のピリジン系溶媒を用いることができる。
溶媒としては、コスト及び操作性の観点から、好ましくはエステル系溶媒であり、より好ましくは酢酸エチルである。
溶媒は上記の有機溶媒を単独で用いてもよいし、2種類以上を任意の割合で混合したものを用いてもよい。
溶媒の使用量としては、一般式(7)で表される化合物1kgに対して、下限としては、操作性の観点から、通常1L以上、好ましくは2L以上、さらに好ましくは3L以上であり、上限としては、操作性、生産性及びコストの観点から、通常30L以下、好ましくは20L以下、より好ましくは10L以下である。
【0121】
(反応時間)
反応温度は、用いるラクトン化剤、塩基、溶媒等により異なり得るが、下限としては、生産性の観点から、通常0℃以上、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、上限としては、反応生成物の純度及びコストの観点から、通常50℃以下、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下である。
反応時間は、用いるラクトン化剤、塩基、溶媒等により異なり得るが、生産性の観点から、通常0.5時間~48時間、好ましくは1時間~24時間である。
反応時の圧力は、通常、常圧である。
一般式(7)で表される化合物とラクトン化剤とを反応させる場合、これらの化合物の供給順序は適宜選択することができる。また、これらの化合物は、反応系に一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。例えば、反応器内に、一般式(7)で表される化合物又はラクトン化剤のいずれか一種以上を溶媒と共に仕込んでこれを敷液として、反応条件下、残りの成分を供給液として供給することで反応を行うことができる。塩基は、最初から反応系中に存在させてもよいし、途中で供給してもよく、また、一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。
【0122】
(後処理)
反応液はそのまま次の工程に供してもよいし、中和、分液、濾過等の処理を施した後で次の工程に供してもよいし、濃縮、晶析等の単離手段により反応生成物を単離した後で次の工程に供してもよい。また、該生成物を再結晶、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製手段により、さらに精製した後で次の工程に供してもよい。これらの中でも、生産性の観点から、反応液をそのまま次の工程に供するのが好ましい。
一般式(8)で表される化合物としては、水和物又は有機溶媒和物等の溶媒和物を形成していてもよく、その形態は使用する原料及び溶媒等によって異なっていてもよく、また目的とする反応を阻害しない限り特にその形態は限定されない。
本発明においては、特にことわりのない限り、「一般式(8)で表される化合物」は、一般式(8)で表される化合物とその溶媒和物の両方を意味する。
【0123】
なお、一般式(8)で表される化合物のうち、式(8a)及び式(8b)で表される化合物は、結晶性が高いため、クロマトグラフィー等の煩雑な精製を行うことなく、容易に反応副生成物と分離することができるので、工業的な生産に適している。式(8b)で表される化合物は新規化合物である。
【0124】
【化35】
【0125】
(式中、Bocはtert-ブチルオキシカルボニル基を表し、Acはアセチル基を表す。)
【0126】
[工程8]
工程8は、工程7で得られた一般式(8)で表される化合物とエステル化剤とを反応させて一般式(9)で表される化合物を得る工程である。
(原料)
エステル化剤としては、一般式ROM(Rは上記で定義した通りである。)で表される金属アルコキシド又は一般式ROH(Rは上記で定義した通りである。)で表されるアルコールを用いることができる。
金属アルコキシドとしては、反応が進行する限り、特に限定されないが、Rが炭素数1~3の脂肪族炭化水素基であり、且つ、Mがアルカリ金属又はアルカリ土類金属である金属アルコキシドが好ましく、例えば、リチウムメチルオキシド、リチウムエチルオキシド、ナトリウムメチルオキシド、ナトリウムエチルオキシド、カリウムメチルオキシド、カリウムエチルオキシド、マグネシウムジメチルオキシド、マグネシウムジエチルオキシド、カルシウムジメチルオキシド、カルシウムジエチルオキシド、セシウムジメチルオキシド、セシウムジエチルオキシド等を用いることができる。より好ましくは、Rが炭素数1~2の脂肪族炭化水素基であり、且つ、Mがアルカリ金属である金属アルコキシドであり、コスト及び原料の入手性の観点から、ナトリウムメチルオキシド、ナトリウムエチルオキシドである。
アルコールとしては、一般式ROHで表されるアルコールであれば、反応が進行する限り特に限定されないが、好ましくは、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~8の芳香族炭化水素基を有するアルコールであり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール又はこれらの異性体アルコール等を用いることができる。より好ましくは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等の炭素数1~3の炭化水素基を有するアルコール及びベンジルアルコールであり、特に好ましくは、メタノール、ベンジルアルコールである。
アルコール化合物を用いてエステル化を行う場合は、酸の存在下で反応を行うことが好ましい。
酸としては、反応が進行する限り特に限定されないが、無機酸又は有機酸を用いることができる。
無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸等が挙げられる。
有機酸としては、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、クエン酸、グルクロン酸、グルコン酸等のカルボン酸類;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、イセチオン酸等のスルホン酸類が挙げられる。
酸としては、反応性の観点から、好ましくは硫酸、p-トルエンスルホン酸である。
エステル化剤の使用量は、一般式(8)で表される化合物に対し、下限としては、生産性の観点から、通常0.1モル当量以上、好ましくは1モル当量以上、より好ましくは1.02モル当量以上であり、上限としては、操作性、反応生成物の純度及びコストの観点から、通常20モル当量以下、好ましくは10モル当量以下、より好ましくは5モル当量以下である。
【0127】
工程8は、溶媒中で行うことが好ましい。
溶媒としては、反応が進行する限り、特に限定されないが、一般式ROH(Rは上記で定義した通りである。)で表されるアルコールを用いることが好ましく、より好ましくは炭素数1~8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~8の芳香族炭化水素基を有するアルコールであり、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を有するアルコールである。
溶媒は上記の有機溶媒を単独で用いてもよいし、2種類以上を任意の割合で混合したものを用いてもよい。
溶媒の使用量としては、一般式(8)で表される化合物1kgに対して、下限として、操作性の観点から、通常1L以上、好ましくは2L以上、さらに好ましくは3L以上であり、上限としては、操作性、生産性及びコストの観点から、通常30L以下、好ましくは25L以下、より好ましくは20L以下である。
【0128】
(反応条件)
反応温度は、用いるエステル化剤、溶媒等により異なり得るが、下限としては、生産性の観点から、通常0℃以上、好ましくは1℃以上であり、より好ましくは2℃以上であり、上限としては、反応生成物の純度及びコストの観点から、通常30℃以下、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下である。
反応時間は、用いるエステル化剤、溶媒等により異なり得るが、生産性の観点から、通常0.1時間~24時間、好ましくは0.5時間~12時間である。
反応時の圧力は、通常、常圧であるが、加圧してもよい。
一般式(8)で表される化合物とエステル化剤とを反応させる場合、これらの化合物の供給順序は適宜選択することができる。また、これらの化合物は、反応系に一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。例えば、反応器内に、一般式(8)で表される化合物又はエステル化剤のいずれか一種以上を溶媒と共に仕込んでこれを敷液として、反応条件下、残りの成分を供給液として供給することで反応を行うことができる。
【0129】
(後処理)
反応液はそのまま次の工程に供してもよいし、中和、分液、濾過等の処理を施した後で次の工程に供してもよいし、濃縮、晶析等の単離手段により反応生成物を単離した後で次の工程に供してもよい。また、該生成物を再結晶、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製手段により、さらに精製した後で次の工程に供してもよい。これらの中でも、生産性の観点から、反応液をそのまま次の工程に供するのが好ましい。
一般式(9)で表される化合物としては、水和物又は有機溶媒和物等の溶媒和物を形成していてもよく、その形態は使用する原料及び溶媒等によって異なっていてもよく、また目的とする反応を阻害しない限り特にその形態は限定されない。
本発明において、特にことわりのない限り、「一般式(9)で表される化合物」は、一般式(9)で表される化合物とその溶媒和物の両方を意味する。
なお、一般式(9)で表される化合物のうち、式(9b)で表される化合物は、新規化合物である。この化合物は、結晶性が高いため、クロマトグラフィー等の煩雑な精製を行うことなく、容易に反応副生成物と分離することができるため、工業的な製造に適している。
【0130】
【化36】
【0131】
(式中、Acはアセチル基を表し、Meはメチル基を表す。)
【0132】
[工程9]
工程9は、工程8で得られた一般式(9)で表される化合物と脱離基導入剤とを反応させて一般式(1)で表される化合物を得る工程である。
(原料)
脱離基導入剤としては、一般式(9)で表される化合物に脱離基LGを導入できるものであれば特に限定されず、公知の脱離基導入剤を用いることができる。
ここで、一般式(1)における脱離基LGとしては、スルホニルオキシ基が特に好ましいことから、脱離基導入剤としては、これらの脱離基LGを一般式(9)で表される化合物に導入できる、スルホニルオキシ化剤が好ましい。
スルホニルオキシ化剤としては、ニトロベンゼンスルホニル化剤、トルエンスルホニル化剤、メタンスルホニル化剤、トリフルオロメタンスルホニル化剤等が挙げられる。導入した脱離基の反応性の観点から、ニトロベンゼンスルホニル化剤が好ましい。
ニトロベンゼンスルホニル化剤としては、ニトロベンゼンスルホニル基でアミノ基を保護し得るものであれば特に限定されないが、ニトロベンゼンスルホニルハライドが好ましい。
ニトロベンゼンスルホニルハライドとしては、例えば、o-ニトロベンゼンスルホニルフルオライド、p-ニトロベンゼンスルホニルフルオライド、2,4-ジニトロベンゼンスルホニルフルオライド、2,3-ジニトロベンゼンスルホニルフルオライド、2,5-ジニトロベンゼンスルホニルフルオライド、2,6-ジニトロベンゼンスルホニルフルオライド等のニトロベンゼンスルホニルフルオライド;o-ニトロベンゼンスルホニルクロリド、p-ニトロベンゼンスルホニルクロリド、2,4-ジニトロベンゼンスルホニルクロリド、2,3-ジニトロベンゼンスルホニルクロリド、2,5-ジニトロベンゼンスルホニルクロリド、2,6-ジニトロベンゼンスルホニルクロリド等のニトロベンゼンスルホニルクロリド;o-ニトロベンゼンスルホニルブロマイド、p-ニトロベンゼンスルホニルブロマイド、2,4-ジニトロベンゼンスルホニルブロマイド、2,3-ジニトロベンゼンスルホニルブロマイド、2,5-ジニトロベンゼンスルホニルブロマイド、2,6-ジニトロベンゼンスルホニルブロマイド等のニトロベンゼンスルホニルブロマイド;o-ニトロベンゼンスルホニルヨージド、p-ニトロベンゼンスルホニルヨージド、2,4-ジニトロベンゼンスルホニルヨージド、2,3-ジニトロベンゼンスルホニルヨージド、2,5-ジニトロベンゼンスルホニルヨージド、2,6-ジニトロベンゼンスルホニルヨージド等のニトロベンゼンスルホニルヨージドが挙げられる。
これらの中でも、コスト及び原料の入手性の観点から、ニトロベンゼンスルホニルクロリドが好ましく、特にp-ニトロベンゼンスルホニルクロリド、o-ニトロベンゼンスルホニルクロリドが好ましい。
トルエンスルホニル化剤としては、例えば、p-トルエンスルホニルクロリド、p-トルエンスルホン酸無水物等が挙げられ、コスト及び原料の入手性の観点から、p-トルエンスルホニルクロリドが好ましい。
メタンスルホニル化剤としては、例えば、メタンスルホニルクロリド、メタンスルホン酸無水物等が挙げられ、コスト及び原料の入手性の観点から、メタンスルホニルクロリドが好ましい。
トリフルオロメタンスルホニル化剤としては、例えば、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホン酸無水物が挙げられ、コスト及び原料の入手性の観点から、トリフルオロメタンスルホン酸無水物が好ましい。
脱離基導入剤の使用量は、一般式(9)で表される化合物に対し、下限としては、生産性の観点から、通常0.1モル当量以上、好ましくは1モル当量以上、より好ましくは1.02モル当量以上であり、上限としては、操作性、反応生成物の純度及びコストの観点から、通常20モル当量以下、好ましくは10モル当量以下、より好ましくは5モル当量以下である。
【0133】
工程9は、塩基の存在下、溶媒中で行うことが好ましい。
塩基としては、反応が進行する限り、特に限定されないが、3級アミン類、ピリジン類、有機強塩基、金属アミド、アルキル金属化合物、金属水素化物、金属アルコキシド、炭酸塩、リン酸塩、金属水酸化物、シアン化物等が挙げられる。工程9で用いる塩基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
3級アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
ピリジン類としては、例えば、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ルチジン等が挙げられる。
有機強塩基としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、テトラメチルグアニジン等が挙げられる。
金属アミドとしては、例えば、リチウムアミド、ナトリウムエチルアミド、カルシウムジエチルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムベンジルアミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムインドリド、ナトリウムピロライド、リチウムピロライド、カリウムピロライド、カリウムピロリジド、アルミニウムジエチルピロライド、エチルアルミニウムジピロライド、アルミニウムトリピロライド、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド等が挙げられる。
アルキル金属化合物としては、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、イソプロピルマグネシウムブロミド等が挙げられる。
金属水素化物としては、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化セシウム等が挙げられる。
金属アルコキシドとしては、例えば、リチウムメチルオキシド、リチウムエチルオキシド、リチウムプロピルオキシド、リチウムtert-ブチルオキシド、ナトリウムメチルオキシド、ナトリウムエチルオキシド、ナトリウムプロピルオキシド、ナトリウムtert-ブチルオキシド、カリウムメチルオキシド、カリウムエチルオキシド、カリウムプロピルオキシド、カリウムtert-ブチルオキシド等が挙げられる。
炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等が挙げられる。
リン酸塩としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
シアン化物としては、例えば、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等が挙げられる。
これらの塩基のうち、塩基性の強度の観点から、好ましくは3級アミン類及びピリジン類であり、より好ましくはトリエチルアミンである。
塩基の使用量は、一般式(9)で表される化合物に対し、下限としては、生産性の観点から、通常0.1モル当量以上、好ましくは1モル当量以上、より好ましくは1.02モル当量以上であり、上限としては、通常30モル当量以下、好ましくは20モル当量以下、より好ましくは10モル当量以下である。
【0134】
溶媒としては、反応が進行する限り、特に限定されず、有機溶媒又は水性溶媒を用いることができるが、反応性の観点から有機溶媒を用いることが好ましい。
有機溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、ケトン溶媒、ニトリル溶媒、アミド溶媒、スルホキシド溶媒、炭化水素溶媒、塩基性有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を用いることができる。
アルコール溶媒としては、一般式ROH(Rは上記で定義した通りである。)で表されるアルコールが挙げられる。好ましくは、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~8の芳香族炭化水素基を有するアルコールであり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール又はこれらの異性体アルコール等を用いることができる。
エステル溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステルを用いることができる。
エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等の鎖状エーテル;シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルを用いることができる。
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトンを用いることができる。
ニトリル溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロパノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル等の脂肪族ニトリル;ベンゾニトリル等の芳香族ニトリルを用いることができる。
アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン等の非プロトン性アミドを用いることができる。
スルホキシド溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性スルホキシドを用いることができる。
炭化水素溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を用いることができる。
塩基性有機溶媒としては、例えば、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン等を用いることができる。
溶媒としては、好ましくはエステル系溶媒であり、より好ましくは酢酸エチルである。
溶媒は上記の有機溶媒を単独で用いてもよいし、2種類以上を任意の割合で混合したものを用いてもよい。
溶媒の使用量としては、一般式(9)で表される化合物1kgに対して、下限として、操作性の観点から、通常1L以上、好ましくは2L以上、さらに好ましくは3L以上であり、上限としては、操作性、生産性及びコストの観点から、通常30L以下、好ましくは20L以下、より好ましくは15L以下である。
【0135】
(反応条件)
反応温度は、用いる脱離基導入剤、塩基、溶媒等により異なり得るが、下限としては、生産性の観点から、通常0℃以上、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、上限としては、反応生成物の純度及びコストの観点から、通常50℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下である。
反応時間は、用いる脱離基導入剤、塩基、溶媒等により異なり得るが、通常0.5時間~24時間、好ましくは1時間~12時間である。
反応時の圧力は、通常、常圧である。
一般式(9)で表される化合物と脱離基導入剤とを反応させる場合、これらの化合物の供給順序は適宜選択することができる。また、これらの化合物は、反応系に一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。例えば、反応器内に、一般式(9)で表される化合物又は脱離基導入剤のいずれか一種以上を溶媒と共に仕込んでこれを敷液として、反応条件下、残りの成分を供給液として供給することで反応を行うことができる。塩基は、最初から反応系中に存在させてもよいし、途中で供給してもよく、また、一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。
【0136】
(後処理)
反応液はそのまま次の工程に供してもよいし、中和、分液、濾過等の処理を施した後で次の工程に供してもよいし、濃縮、晶析等の単離手段により反応生成物を単離した後で次の工程に供してもよい。また、該生成物を再結晶、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製手段により、さらに精製した後で次の工程に供してもよい。これらの中でも、生産性の観点から、反応液をそのまま次の工程に供するのが好ましい。
【0137】
一般式(1)で表される化合物としては、水和物又は有機溶媒和物等の溶媒和物を形成していてもよく、その形態は使用する原料及び溶媒等によって異なっていてもよく、また目的とする反応を阻害しない限り特にその形態は限定されない。
本発明において、特にことわりのない限り、「一般式(1)で表される化合物」は、一般式(1)で表される化合物とその溶媒和物の両方を意味する。
なお、一般式(1)で表される化合物のうち、下記式(1a)で表される化合物は新規化合物である。この化合物は、結晶性が高いため、クロマトグラフィー等の煩雑な精製を行うことなく、容易に反応副生成物と分離することができるため、工業的な製造に適している。
【0138】
【化37】
【0139】
(式中、Bocはtert-ブチルオキシカルボニル基を表し、Nsはp-ニトロベンゼンスルホニル基を表し、Meはメチル基を表す。)
【0140】
<製造方法5>
【0141】
【化38】
【0142】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
製造方法5は、
一般式(8)で表される化合物とエステル化剤とを反応させて一般式(9)で表される化合物を得る工程(工程8);及び
一般式(9)で表される化合物と脱離基導入剤とを反応させて一般式(1)で表される化合物を得る工程(工程9)
を有することを特徴とする。
【0143】
製造方法5の工程8及び工程9は、上記<製造方法4>の項で説明した通りである。
製造方法5は、中間体として生成する化合物が、極性が低く結晶性の高い化合物が多く、抽出や再結晶等の操作を効率的に行うことができるため、工業的な生産に適している。
【0144】
<製造方法6>
【0145】
【化39】
【0146】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
製造方法6は、
一般式(1)で表される化合物と一般式PGNHOPGで表されるヒドロキシルアミン誘導体とを、塩基の存在下、溶媒中で反応させて一般式(2)で表される化合物を得る工程(工程1);
工程1で得られた一般式(2)で表される化合物とPG脱保護剤とを反応させて一般式(3)で表される化合物又はその塩を得る工程(工程2);及び
工程2で得られた一般式(3)で表される化合物又はその塩とPG脱保護剤とを反応させて一般式(4)で表される化合物又はその塩を得る工程(工程3)
を有することを特徴とする。
すなわち、製造方法6は本発明の製造ルートAを有するものである。
製造方法6の工程1~工程3は、上記<製造方法1>及び<製造方法2>の項で説明した通りである。
また、製造方法6は、以下の工程をさらに有していてもよい。
【0147】
【化40】
【0148】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
製造方法6の工程6~工程9は、上記<製造方法4>の項で説明した通りである。
製造方法6は、高純度の中間体が得られ、温和な条件で反応が可能であり、未反応物の除去が容易であること等から、工業的な製造に適している。
【0149】
<製造方法7>
【0150】
【化41】
【0151】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
製造方法7は、
一般式(1)で表される化合物と一般式PGNHOPGで表されるヒドロキシルアミン誘導体とを、塩基の存在下、溶媒中で反応させて一般式(2)で表される化合物を得る工程(工程1);
工程1で得られた一般式(2)で表される化合物とPG脱保護剤とを反応させて一般式(5)で表される化合物又はその塩を得る工程(工程4);及び
工程4で得られた一般式(5)で表される化合物又はその塩とPG脱保護剤とを反応させて一般式(4)で表される化合物又はその塩を得る工程(工程5)
を有することを特徴とする。
すなわち、製造方法7は本発明の製造ルートBを有するものである。
製造方法7の工程1、工程4及び工程5は、上記<製造方法1>及び<製造方法3>の項で説明した通りである。
【0152】
また、製造方法7は、以下の工程をさらに有していてもよい。
【0153】
【化42】
【0154】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
製造方法7の工程6~工程9は、上記<製造方法4>の項で説明した通りである。
製造方法7は、高純度の中間体が得られ、温和な条件で反応が可能であり、未反応物の除去が容易であること等から、工業的な製造に適している。
【実施例
【0155】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
【0156】
なお、以下の実施例において、得られた化合物の2位異性体の割合は、以下のHPLC分析条件により測定した。
(HPLC分析条件)
【0157】
【表1】
【0158】
実施例1:工程6→工程7→工程8→工程9
[工程6]
(2S,5S)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-ヒドロキシピペリジン-2-カルボン酸の製造
【0159】
【化43】
【0160】
原料である(2S,5S)-5-ヒドロキシピペリジン-2-カルボン酸(以下、化合物(6a)と称する。)は、国際公開公報WO2015/099126号に記載されている方法に準じて合成した。
セパラブルフラスコ中で、化合物(6a)100.0g(0.689mol)を水500gに溶解させた。得られた溶液に、30℃にてジ-tert-ブチルオキシカーボネート195.5g(0.897mol)とトリエチルアミン146.4g(1.448mol)を加えた。25℃にて1時間攪拌した後、再度トリエチルアミン146.4g(1.448mol)を加え、さらに25℃にて6時間攪拌した。
得られた反応液にトルエン200mLを加えて撹拌した後、有機層を除去した。得られた水層を5℃まで冷却し、35重量%塩酸を加えてpHを2.0に調整した後、酢酸エチル(500mL×2、300mL×1回)で抽出した。回収した有機層を合わせ、有機層を水100mLで洗浄した後、溶媒を留去して液量を600mLに調整した。得られた残渣にn-ヘプタン400mLを加え、別途調製した(2S,5S)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-ヒドロキシピペリジン-2-カルボン酸(以下、化合物(7a)と称する。)の種晶を接種し熟成したところ、結晶が析出した。更にn-ヘプタン1000mLを加え、-5℃にて冷却熟成後、得られた結晶を濾過して、目的物である化合物(7a)の白色粉末156.9gを得た(収率92.9%)。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ1.24-1.33(1H,m),1.43-1.47(9H,m),1.66-1.76(1H,m),1.99(1H,d,J=10.8Hz),2.28-2.30(1H,m),2.65-2.81(1H,m),3.63(1H,m),4.09-4.15(1H,m),4.688-4.84(1H,m)
【0161】
[工程7→工程8]
メチル(2S,5S)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-ヒドロキシ-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造
【0162】
【化44】
【0163】
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコ中で、上記[工程6]で得られた化合物(7a)11.0g(0.0448mol)をテトラヒドロフラン33mLに溶解させた。得られた溶液に、20℃にて、トリエチルアミン5.44g(0.0539mol)と無水酢酸5.04g(0.0494mol)を加え、20℃にて6時間反応させた。
得られた反応液にメタノール33mLを加え、5℃まで冷却した後、5mol/Lのナトリウムメトキシドメタノール溶液20.6mL(0.103mol)を加えて、5℃にて1時間反応させた。得られた反応液に、酢酸3.77g(0.063mol)と水33mLを加えた後、メタノールとテトラヒドロフランを留去した。残渣を酢酸エチル66mLで抽出した。得られた有機層を5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液22mLで洗浄した後、溶媒を留去して、無色油状のメチル(2S,5S)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-ヒドロキシ-ピペリジン-2-カルボキシレート(以下、化合物(9a)と称する。)の粗体12.6g(純量換算で10.4g)を得た(収率89.1%)。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ1.17-1.28(1H,m),1.44-1.47(9H,m),1.68-1.78(1H,m),1.96-2.00(1H,m),2.27-2.30(1H,m),2.63-2.79(1H,m),3.62-3.64(1H,m),3.74(3H,s),4.09-4.21(1H,m),4.67-4.85(1H,m)
【0164】
[工程9]
メチル(2S,5S)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-(p-ニトロベンゼンスルホニルオキシ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造
【0165】
【化45】
【0166】
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコ中で、上記[工程7→工程8]で得られた化合物(9a)の粗体12.6g(純量換算で10.4g、0.0400mol)に酢酸エチルを加えて、液量を83.2mLに調整した。得られた溶液に、15℃にてトリエチルアミン14.5g(0.144mol)とp-ニトロベンゼンスルホニルクロリド15.9g(0.0720mol)を加えて、15℃にて4時間攪拌した。
得られた反応液に、水41mLを加えて撹拌した後、水層を廃棄した。次に、水31mLと酢酸2.44gを加えて撹拌した後水層を廃棄した。更に、5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液30.9mLと水10mLで有機層を洗浄した。得られた有機層を濃縮して液量を32mLに調整後、45℃にてn-ヘプタン21mLを加えた後、別途調製したメチル(2S,5S)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-(p-ニトロベンゼンスルホニルオキシ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの種晶を接種し、更にn-ヘプタン62mLを加えて結晶を析出させた。5℃にて冷却熟成後、得られた結晶を濾過して、メチル(2S,5S)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-(p-ニトロベンゼンスルホニルオキシ)-ピペリジン-2-カルボキシレート(以下、化合物(1a)と称する。)の淡黄色粉末16.1gを得た(収率90.6%)。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ1.41-1.48(10H,m),1.69-1.75(1H,m),1.97-2.12(1H,m),2.27-2.33(1H,m),2.78-2.99(1H,m),3.73-3.74(3H,m),4.06-4.20(1H,m),4.49-4.58(1H,m),4.64-4.84(1H,m),8.12-8.14(2H,m),8.41-8.43(2H,m)
【0167】
実施例2
[工程7]
(1S,4S)-5-(tert-ブチルオキシカルボニル)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-オンの製造
【0168】
【化46】
【0169】
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコ中で、実施例1の[工程6]で得られた化合物(7a)3.00g(0.0122mol)を酢酸エチル12mLに溶解させた。得られた溶液に、20℃にて、トリエチルアミン1.48g(0.0147mol)と無水酢酸1.37g(0.0134mol)を加え、20℃にて6時間反応させた。
得られた反応液を、水9mLと5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液9mLで洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後濾過した。濾液を濃縮して目的物である(1S,4S)-5-(tert-ブチルオキシカルボニル)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-オン(以下、化合物(8a)と称する。)の白色粉末2.65gを得た(収率95.4%)。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ1.47(9H,s),1.81-1.84(1H,m),1.97-2.22(3H,m),3.44-3.47(1H,m),3.63(1H,d,J=11.6Hz),4.60-4.83(2H,m)
【0170】
実施例3:工程1→工程2→工程3
[工程1]
メチル(2S,5R)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-(N-ベンジルオキシ-p-ニトロベンゼンスルホニルアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0171】
【化47】
【0172】
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコ中で、実施例1の[工程9]で得られた化合物(1a)20g(0.0450mol)をN,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと称する。)80mLに溶解させた。得られた溶液に、N-(p-ニトロベンゼンスルホニル)-O-ベンジル-ヒドロキシルアミン14.98g(0.0486mol)と炭酸カリウム6.71g(0.0486mol)を加え、35℃にて反応転化率が99%以上になるまで30時間攪拌した。得られた反応液中の2位異性体の割合は(2S,5R):(2R,5R)=99.2:0.8(HPLC)であった。
得られた反応液に、トルエン100mLと水64.5mLを添加し、酢酸でpHを4.8に調整して分液した後、再度水層をトルエン40mLで抽出した。有機層を合わせて水80mLを添加し、水層のpHが9以上になるまで炭酸カリウムを添加した後、水層を廃棄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後濾過し、溶媒を留去して、淡黄色油状の化合物(2a)の粗体30.96g(純量換算で21.55g)を得た(収率87.0%)。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ1.32(9H,s),1.48-1.57(1H,m),1.73-1.76(2H,m),2.03-2.10(1H,m),3.19(1H,m),3.65-3.71(4H,m),3.89(1H,d,J=12.0Hz),4.48-4.51(1H,m),5.01-5.07(2H,m),7.40-7.45(5H,m),8.12-8.15(2H,m),8.42-8.46(2H,m)
【0173】
[工程2]
メチル(2S,5R)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-(ベンジルオキシアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0174】
【化48】
【0175】
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコ中で、上記[工程1]と同様の方法で得られた化合物(2a)の粗体31.9g(純量換算で21.4g、0.0390mol)をメタノール128mLに溶解させた。得られた溶液に、25℃にてチオグリコール酸14.3g(0.156mol)と炭酸カリウム43.0g(0.312mol)を加えて、25℃にて18時間攪拌した後、溶媒を留去した。
得られた残渣に、水228mL、トルエン128mL、酢酸エチル102mLを加えた。さらに、酢酸を加えてpH6になるまで中和した後、水層を廃棄した。有機層に水70mLを加え、pH9になるまで炭酸カリウムを加えたのち、水層を廃棄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後濾過し、溶媒を留去して、淡黄色油状のメチル(2S,5R)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-(ベンジルオキシアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレート(以下、化合物(3a)と称する。)の粗体20.8g(純量換算で13.2g)を得た(収率92.8%)。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ1.46-1.59(10H,m),1.67-1.70(1H,m),1.88-2.04(2H,m),3.05-3.21(2H,m),3.74(3H,s),4.18(1H,d,J=12.4Hz),4.68-4.76(2H,m),4.91(1H,br),5.46(1H,br)7.29-7.36(5H,m)
【0176】
[工程3]
メチル(2S,5R)-5-(ベンジルオキシアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレート 2塩酸塩の製造方法
【0177】
【化49】
【0178】
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコ中で、上記[工程2]で得られた化合物(3a)の粗体9.38g(純量換算で7.01g、0.0192mol)をメタノール15.2gに溶解した。得られた溶液を、温度45℃に調整した2mol/L塩酸メタノール溶液28.8mLに滴下し、45℃にて4時間攪拌した。
得られた反応液を-5℃まで冷却した後、濾過し、得られた固体を乾燥して、白色粉末のメチル(2S,5R)-5-(ベンジルオキシアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレート 2塩酸塩(以下、化合物(4aS)と称する。)6.17gを得た(収率95.2%)。
H-NMR(400MHz,DO)δ1.67-1.89(2H,m),2.12-2.15(1H,m),2.43-2.47(1H,m),3.05(1H,t,J=12.0Hz),3.50-3.56(1H,m),3.71-3.75(1H,m),3.81(3H,s),4.04-4.08(1H,m),4.90(2H,s),7.43(5H,s)
【0179】
実施例4:工程1→工程4→工程5
[工程1→工程4]
メチル(2S,5R)-5-(N-ベンジルオキシ-p-ニトロベンゼンスルホニルアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0180】
【化50】
【0181】
窒素雰囲気下、試験管中で、化合物(1a)2.16g(4.86mmol)をDMF10mLに溶解させた。得られた溶液に、N-(p-ニトロベンゼンスルホニル)-O-ベンジル-ヒドロキシルアミン1.65g(5.35mmol)と炭酸カリウム0.74g(5.35mmol)を加え、65℃にて24時間攪拌した。
得られた反応液を溶媒抽出し水洗処理後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を留去した。得られた残渣に0.5mol/Lの塩酸メタノール溶液を加え、65℃にて17時間攪拌した。
得られた反応液を濃縮して得られた残渣に、酢酸エチルと5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて分液抽出した後、水層を廃棄した。得られた有機層を濃縮して黄色油状のメチル(2S,5R)-5-(N-ベンジルオキシ-p-ニトロベンゼンスルホニルアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレート(以下、化合物(5a)と称する。)1.45gを得た(収率88.7%)。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ1.26-1.51(2H,m),1.95-2.04(2H,m),2.52(1H,dd),3.14(1H,dd,),3.51(1H,m),3.71-3.73(4H,m),5.01-5.17(2H,brs),7.26-7.41(5H,m),8.08-8.13(2H,m),8.32-8.37(2H,m)
【0182】
[工程5]
メチル(2S,5R)-5-(N-ベンジルオキシアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレート 2塩酸塩の製造方法
【0183】
【化51】
【0184】
窒素雰囲気下、試験管中で、上記[工程1→工程4]と同様の方法で得られた化合物(5a)4.2g(9.35mmol)をメタノール42mLに溶解させた。得られた溶液に、25℃にてチオグリコール酸3.4g(37.42mmol)と炭酸カリウム9.9g(74.8mmol)を加えて、25℃にて19時間攪拌した。
得られた反応液に、水と酢酸エチルを加え、分液抽出した後、水層を廃棄した。得られた有機層を5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後濾過し、溶媒を留去して、残渣1.27gを得た。得られた残渣に、0.5mol/L塩酸メタノール溶液48mlを添加し、60℃にて19時間攪拌した。得られた反応液を濃縮し、淡赤色結晶のメチル(2S,5R)-5-(N-ベンジルオキシアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレート 2塩酸塩(以下、化合物(4aS)と称する。)1.27gを得た(収率78%)。
H-NMR(400MHz,DO)δ1.67-1.89(2H,m),2.13(1H,m),2.45(1H,m),3.05(1H,t,J=12.0Hz),3.53(1H,m),3.73(1H,m),3,81(3H,s),4.06(1H,m),4.90(2H,s),7.43(5H,m)
【0185】
実施例5:工程8→工程9
[工程8]
メチル(2S,5S)-1-アセチル-5-ヒドロキシ-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0186】
【化52】
【0187】
窒素雰囲気下、試験管中で、国際公開公報WO2015/099126号に記載されている方法に準じて合成した(1S,4S)-5-アセチル-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-オン10.0g(59.17mmol)をメタノール30mLに溶解させた。得られた溶液に、室温にて、p-トルエンスルホン酸・1水和物5.6g(29.6mmol)を加えた後60℃に加温し、60℃にて1.5時間攪拌した。
得られた反応液を濃縮し、メチル(2S,5S)-1-アセチル-5-ヒドロキシ-ピペリジン-2-カルボキシレート(以下、化合物(9b)と称する。)を含む無色透明の油状残渣14.3gを得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ1.28-1.32(2H,m),1.61-1.70(1H,m),1.96-2.00(1H,m),2.20(3H,S),3.02(1H,dd),3.61-3.69(1H,m),3.73(3H,s),3.90(1H,dd),5.25(1H,d)
【0188】
[工程9]
メチル(2S,5S)-1-アセチル-5-(p-ニトロベンゼンスルホニルオキシ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0189】
【化53】
【0190】
窒素雰囲気下、試験管中で、上記[工程8]で得られた化合物(9b)を含む油状残渣11.9g(59.17mmol)を、酢酸エチル83mLに溶解させた。得られた溶液に、30℃にてトリエチルアミン30g(295.85mmol)、p-ニトロベンゼンスルホニルクロリド14.3g(65.09mmol)を加えた後加温し、40℃で16時間攪拌した。
得られた反応液を、水、10%酢酸水溶液、5重量%重曹水で順に洗浄した後、有機層を濃縮した。得られた残渣を、酢酸エチル/n-ヘプタン=2/8(容量比)の混合溶媒を用いてシリカゲルカラムで精製し、無色油状のメチル(2S,5S)-1-アセチル-5-(p-ニトロベンゼンスルホニルオキシ)-ピペリジン-2-カルボキシレート(以下、化合物(1b)と称する。)6.68gを得た(工程8からの一貫収率29.2%)。
【0191】
実施例6:工程1→工程2→工程3
[工程1]
メチル(2S,5R)-1-アセチル-5-(N-ベンジルオキシ-p-ニトロベンゼンスルホニルアミノ]-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0192】
【化54】
【0193】
窒素雰囲気下、試験管中で、実施例5の[工程9]で得られた化合物(1b)1.1g(2.85mmol)をDMF10mLに溶解させた。得られた溶液に、N-(p-ニトロベンゼンスルホニル)-O-ベンジル-ヒドロキシルアミン0.95g(3.08mmol)と炭酸カリウム0.43g(3.08mmol)を加え、65℃にて7時間攪拌した。
得られた反応液に、トルエン50mLを加えた後、有機層を、10%酢酸水溶液と5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液で順に洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後濾過し、溶媒を留去した。得られた残渣を、酢酸エチル/n-ヘプタン=1:1(容量比)の混合溶媒を用いてシリカゲルカラムで精製し、淡黄色油状のメチル(2S,5R)-1-アセチル-5-(N-ベンジルオキシ-p-ニトロベンゼンスルホニルアミノ]-ピペリジン-2-カルボキシレート(以下、化合物(2b)と称する。)の粗体1.34g(純量換算で1.02g)を得た(収率73.0%)。
(2S,5R):(2R,5R)=91.2:8.8(HPLC)
【0194】
[工程2]
メチル(2S,5R)-1-アセチル-5-(ベンジルオキシアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0195】
【化55】
【0196】
窒素雰囲気下、試験管中で、上記[工程1]で得られた化合物(2b)1.0g(2.08mmol)をメタノール20mLに溶解させた。得られた溶液に、25℃にてチオグリコール酸0.77g(8.32mmol)と炭酸カリウム2.3g(16.64mmol)を加えて、25℃にて13時間攪拌した後、溶媒を留去した。
得られた残渣に、水と酢酸エチルを加えた後、水層を廃棄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後濾過し、溶媒を留去して、淡黄色油状のメチル(2S,5R)-1-アセチル-5-(ベンジルオキシアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレート(以下、化合物(3b)と称する。)の粗体0.37g(純量換算で0.31g)を得た(収率43.8%)。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ1.63-1.66(2H,m),1.77-1.82(1H,m),1.98-2.02(1H,m),2.16(1H,S),3.21(1H,m),3.33(1H,dd),4.01(1H,dd),4.67-4.74(2H,m),5.33(1H,m),7.27-7.36(5H,m)
【0197】
[工程3]
メチル(2S,5R)-5-(ベンジルオキシアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレート 2塩酸塩の製造方法
【0198】
【化56】
【0199】
窒素雰囲気下、試験管中で、上記[工程2]で得られた化合物(3b)の粗体0.15g(純量として)(0.44mmol)に、2mol/L塩酸メタノール溶液の混合溶媒5mLを加え、70℃にて5時間攪拌した。
得られた反応物を室温まで冷却した後、濃縮した。得られた濃縮物に酢酸エチル10mLを添加したところ、化合物(4aS)0.1gが得られた(収率68.2%)。
(2S,5R):(2R,5R)=98.4:1.6(HPLC)
H-NMR(400MHz,DO)δ1.67-1.89(2H,m),2.13(1H,m),2.45(1H,m),3.05(1H,t,J=12.0Hz),3.53(1H,m),3.73(1H,m),3,81(3H,s),4.06(1H,m),4.90(2H,s),7.43(5H,m)
【0200】
実施例7
[工程1]
メチル(2S,5R)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-(N-ベンジルオキシ-p-ニトロベンゼンスルホニルアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0201】
【化57】
【0202】
実施例3の[工程1]において、反応に使用した化合物及び溶媒の使用量を1/20倍量に変更し、反応温度を25℃に変更し、撹拌時間を反応転化率が99%以上になるまで反応させるために37時間に変更したこと以外は全て実施例3と同じ条件で実施した。その結果、得られた反応液中の2位異性体の割合は(2S,5R):(2R,5R)=99.3:0.7(HPLC)であった。
【0203】
実施例8
[工程1]
メチル(2S,5R)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-(N-ベンジルオキシ-p-ニトロベンゼンスルホニルアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
実施例3の[工程1]において、反応に使用した化合物及び溶媒の使用量を1/20倍量に変更し、反応温度を45℃に変更し、撹拌時間を反応転化率が99%以上になるまで反応させるために23時間に変更したこと以外は全て実施例3と同じ条件で実施した。その結果、得られた反応液中の2位異性体の割合は(2S,5R):(2R,5R)=98.5:1.5(HPLC)であった。
【0204】
実施例9
[工程1]
メチル(2S,5R)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-(N-ベンジルオキシ-p-ニトロベンゼンスルホニルアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
実施例3の[工程1]において、反応に使用した化合物及び溶媒の使用量を1/20倍量に変更し、反応温度を55℃に変更し、撹拌時間を反応転化率が99%以上になるまで反応させるために6時間に変更したこと以外は全て実施例3と同じ条件で実施した。その結果、得られた反応液中の2位異性体の割合は(2S,5R):(2R,5R)=98.3:1.7(HPLC)であった。
【0205】
実施例10
[工程1]
メチル(2S,5R)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-(N-ベンジルオキシ-p-ニトロベンゼンスルホニルアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
実施例3の[工程1]において、反応に使用した化合物及び溶媒の使用量を1/20倍量に変更し、反応温度を65℃に変更し、撹拌時間を反応転化率が99%以上になるまで反応させるために5時間に変更したこと以外は全て実施例3と同じ条件で実施した。その結果、得られた反応液中の2位異性体の割合は(2S,5R):(2R,5R)=96.3:3.7(HPLC)であった。
【0206】
実施例11:工程9→工程1
[工程9]
メチル(2S,5S)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-トルエンスルホニルオキシ-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0207】
【化58】
【0208】
窒素雰囲気下、試験管中で、実施例1の[工程7→工程8]と同様の方法で得られた化合物(9a)1.0g(3.86mmol)をトルエン20mLに溶解した。得られた溶液に、25℃にてN,N-ジメチルアミノピリジン0.94g(7.72mmol)とトルエンスルホニルクロリド0.96g(5.02mmol)を加えた後加温し、45℃にて2時間攪拌した。次いで、45℃にてN,N-ジメチルアミノピリジン0.47g(3.86mmol)を加えて、1.5時間攪拌した。さらに、45℃にてN,N-ジメチルアミノピリジン0.3g(1.93mmol)を加えて、16時間攪拌した後、室温まで冷却した。
得られた反応液を酢酸エチルで分液抽出した後、水層を廃棄した。有機層を10重量%酢酸水溶液と5%重曹水で順に洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過した。濾液を濃縮し、析出した結晶を濾別した後、乾燥して、白色粉末のメチル(2S,5S)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-トルエンスルホニルオキシ-ピペリジン-2-カルボキシレート(以下、化合物(1a-1)と称する。)0.53gを得た(収率34.5%)。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ1.42-1.51(10H,m),1.65-1.72(1H,m),1.93-2.08(1H,m),2.25-2.28(1H,m),2.45(3H,s),2.74-2.92(1H,dd),3.72(3H,s),3.99-4.17(1H,m),4.34(1H,m),4.62-4.82(m,1H),7.34-7.36(2H,m),7.78-7.80(2H,m)
【0209】
[工程1]
メチル(2S,5R)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-(N-ベンジルオキシ-p-ニトロベンゼンスルホニルアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0210】
【化59】
【0211】
化合物(1a)の代わりに、上記[工程9]で得られた化合物(1c)を用いたこと以外は実施例3と同様にして反応を行った。反応後、得られた反応液をNMRにて分析した結果、化合物(2a)を主生成物として確認した。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ1.32(9H,s),1.53(1H,m),1.73(2H,m),2.06(1H,m),3.19(1H,m),3.67(4H,m),3.89(1H,d,J=12.0Hz),4.50(1H,m),5.04(2H,m),7.41(5H,m),8.13(2H,m),8.44(2H,m)
【0212】
実施例12
[工程1]
メチル(2S,5R)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-(N-ベンジルオキシ-ベンゼンスルホニルアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0213】
【化60】
【0214】
窒素雰囲気下、試験管中で、実施例1の[工程9]と同様の方法で得られた化合物(1a)300mg(0.68mmol)をDMF5mLに溶解させた。得られた溶液に、N-(ベンジルオキシ)-ベンゼンスルホンアミド213mg(0.81mmol)と炭酸カリウム111.9mg(0.81mmol)を加えて、65℃にて26時間攪拌した。薄層クロマトグラフィー(以下、TLCと称する。)(ヘキサン:酢酸エチル(容量比)=2:1)によって反応液を分析した結果、主生成物がメチル(2S,5R)-1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-5-(N-ベンジルオキシ-ベンゼンスルホニルアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレート(以下、化合物(2c)と称する。)であることが確認された。得られた反応液をTLで抽出洗浄後、有機層を10重量%酢酸水溶液と5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液で順に洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後濾過し、溶媒を留去して、油状の化合物(2a-1)を得た。
【0215】
実施例13
[工程1]
メチル(2S,5R)-1-アセチル-5-(N-ベンジルオキシ-p-ニトロベンゼンスルホニルアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0216】
【化61】
【0217】
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコ中で、化合物(1b)1.05g(純量換算で1.01g、2.62mmol)をDMF4mLに溶解させた。得られた溶液に、N-(p-ニトロベンゼンスルホニル)-O-ベンジル-ヒドロキシルアミン0.873g(2.83mmol)と炭酸カリウム0.391g(2.83mmol)を加え、反応温度を内温35℃にて反応転化率が99%以上になるまで3時間攪拌した。
得られた反応液に、氷冷下でトルエン9mLを添加し、30分間撹拌し、40%酢酸水溶液4mLを添加し、静置し、分液した。得られた有機層の溶媒を留去して、淡黄色油状の化合物(2b)を得た。
((2S,5R):(2R,5R)=98.8:1.2(HPLC))
【0218】
比較例1:工程8→工程9→工程1
[工程8]
メチル(2S,5S)-1-(p-ニトロベンゼンスルホニル)-5-ヒドロキシ-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0219】
【化62】
【0220】
原料である(1S,4S)-5-(p-ニトロベンゼンスルホニル)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-オン(以下、化合物(8c)と称する。)は国際公開公報WO2014/200786号に記載されている方法に準じて合成した。
窒素雰囲気下、100mLコルベン中で、化合物(8c)2g(6.4mmol)をメタノール 10mLに懸濁させた。得られた懸濁液に氷冷下で、28% ナトリウムメトキシドメタノール溶液1.26g(6.53mmol)を加え、反応2時間後に反応転化率が99%以上を確認した。
反応液に、氷冷下で酢酸0.4mLを添加し、高真空ダイヤフラムポンプにて30分濃縮した。得られた残渣に酢酸エチル14mLを加え、水6mL、飽和重曹水6mLで順次洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウム0.4gで乾燥後、濾過し、ろ液を濃縮し、化合物(9c)2.12g(収率96%)を得た。
【0221】
[工程9]
メチル(2S,5R)-1-(p-ニトロベンゼンスルホニル)-5-(p-ニトロベンゼンスルホニルオキシ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0222】
【化63】
【0223】
窒素雰囲気下、100mL コルベン中で、上記[工程8]で得られた化合物(9c)2.03g(5.9mmol)を酢酸エチル16mLに溶解させた。得られた溶液に室温でトリエチルアミン 2.12g(21.2mmol)を加えて撹拌した。氷冷下で、p-ニトロトルエンスルホニルクロリド2.35g(10.58mmol)を加え、反応4時間後に反応転化率が99%以上を確認した。
得られた反応液に、氷冷下で酢酸0.4mL、水6mLを添加し、洗浄した。得られた有機層を濃縮し、化合物(1c)2.82g(収率90%)を得た。
【0224】
[工程1]
メチル(2S,5R)-1-(p-ニトロベンゼンスルホニル)-5-(N-ベンジルオキシ-p-ニトロベンゼンスルホニルアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0225】
【化64】
【0226】
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコ中で、上記[工程9]で得られた化合物(1c)1g(1.88mmol)をDMF4mLに溶解させた。得られた溶液に、N-(p-ニトロベンゼンスルホニル)-O-ベンジル-ヒドロキシルアミン0.626g(2.03mmol)と炭酸カリウム0.281g(2.03mmol)を加え、反応温度を内温35℃にて反応転化率が99%以上になるまで102時間攪拌した。得られた反応液中の2位異性体の割合は(2S,5R):(2R,5R)=63:37(HPLC)であった
得られた反応液に、氷冷下でトルエン5mLを添加し、30分間撹拌し、40%酢酸水溶液4mLを添加し、静置し、分液した。得られた有機層の溶媒を留去して、淡黄色油状の化合物(2c)の粗体を得た。
【0227】
比較例2
[工程1]
メチル(2S,5R)-1-(p-ニトロベンゼンスルホニル)-5-(N-ベンジルオキシ-p-ニトロベンゼンスルホニルアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0228】
【化65】
【0229】
比較例1の[工程1]において、反応温度を35℃から65℃、反応時間を102時間から6時間に変更した以外は同様にして実験を行い、淡黄色油状の化合物(2c)を得た。
得られた反応液中の2位異性体の割合は(2S,5R):(2R,5R)=53:47(HPLC)であった。
【0230】
比較例3:工程9→工程1
[工程9]
メチル(2S,5S)-1-トリフルオロアセチル-5-(p-ニトロベンゼンスルホニルオキシ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0231】
【化66】
【0232】
原料であるメチル(2S,5S)-1-(トリフルオロアセチル)-5-ヒドロキシピペリジン-2-カルボキシレート(以下、化合物(9d)と称する。)は、国際公開公報WO2013/180197号に記載されている方法に準じて合成した。
窒素雰囲気下、コルベン中で、化合物(9d)14.5g(56.2mmol)を酢酸エチル115mLに溶解させた。得られた溶液に、トリエチルアミン20.5g(202mmol)を加え、氷冷下で、p-ニトロトルエンスルホニルクロリド22.7g(101mmol)を加え、反応3時間後に反応転化率が99%以上を確認した。
得られた反応液に、氷冷下で酢酸4.7ml、水43mlを添加し、洗浄後、得られた有機層を飽和重曹水43mlで2回洗浄した。水14mLで更に洗浄し、有機層を濃縮して、化合物(1d)24.6g(収率99%)を得た。
【0233】
[工程1]
メチル(2S,5R)-1-トリフルオロアセチル-5-(N-ベンジルオキシ-p-ニトロベンゼンスルホニルアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0234】
【化67】
【0235】
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコ中で、上記[工程9]で得られた化合物(1d)1.11g(純量換算で1.01g、2.29mmol)をDMF4mLに溶解させた。得られた溶液に、N-(p-ニトロベンゼンスルホニル)-O-ベンジル-ヒドロキシルアミン0.763g(2.47mmol)と炭酸カリウム0.342g(2.47mmol)を加え、反応温度を内温35℃にて反応転化率が99%以上になるまで21時間攪拌した。得られた反応液中の2位異性体の割合は(2S,5R):(2R,5R)=92:8(HPLC)であった
得られた反応液に、氷冷下でトルエン5mLを添加し、30分間撹拌し、40%酢酸水溶液4mLを添加し、静置し、分液した。得られた有機層の溶媒を留去して、淡黄色油状の化合物(2d)を得た。
【0236】
比較例4
[工程1]
メチル(2S,5R)-1-トリフルオロアセチル-5-(N-ベンジルオキシ-p-ニトロベンゼンスルホニルアミノ)-ピペリジン-2-カルボキシレートの製造方法
【0237】
【化68】
【0238】
比較例3の[工程1]において、反応温度を35℃から65℃、反応時間を21時間から2時間に変更した以外は同様にして実験を行い、淡黄色油状の化合物(2d)を得た。
得られた反応液中の2位異性体の割合は(2S,5R):(2R,5R)=80:20(HPLC)であった。
【0239】
【表2】
【0240】
実施例3、6~10及び13、並びに比較例11~14の結果を表2にまとめて示す。
表2から明らかなように、PGがNs、TFAのような電子吸引性の高い保護基の場合は、化合物(2)の2位異性体(2R,5R)の割合が高くなる傾向が見られた。また、反応温度が高い場合は、化合物(2)の2位異性体(2R,5R)の割合が高くなる傾向が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0241】
本発明の方法は、極低温の設備が不要な温和な反応条件で行うことができ、より安全であり、目的物の品質のコントロールが容易であり、製造現場での作業性がよく、より安価な(2S,5R)-5-(保護オキシアミノ)-ピペリジン-2-カルボン酸誘導体の製造方法である。
本出願は、日本で出願された特願2018-177774を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。