(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ウイルスベクター産生
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240719BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240719BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20240719BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240719BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240719BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240719BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240719BHJP
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A61P 37/04 20060101ALI20240719BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240719BHJP
C12N 7/00 20060101ALI20240719BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240719BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240719BHJP
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C12N 15/869 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61K35/76
A61K35/763
A61K39/00 Z
A61K48/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P35/00
A61P37/02
A61P37/04
A61P37/06
C12N7/00
C12N7/01
C12N15/09 Z
C12N15/863 Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
(21)【出願番号】P 2020564267
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2019062664
(87)【国際公開番号】W WO2019219836
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-05-16
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514194370
【氏名又は名称】オスペダーレ サン ラファエレ エス.アール.エル
(73)【特許権者】
【識別番号】511262290
【氏名又は名称】フォンダツィオーネ テレトン イーティーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カントーレ,アレッシオ
(72)【発明者】
【氏名】アンノーニ,アンドレーア
(72)【発明者】
【氏名】ミラーニ,ミケーラ
(72)【発明者】
【氏名】ナルディーニ,ルイージ
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】TOLEDANO et al.,PLoS ONE,2013年,Vol. 8, No. 9,e75595,DOI: 10.1371/journal.pone.0075595
【文献】MILONE et al.,Leukemia,2018年03月,Vol. 32, No. 7,p.1529-1541,DOI: 10.1038/s41375-018-0106-0
【文献】CANTORE et al.,Efficacy and safety ofliver-directed lentiviral gene therapy in hemophilia B dogs and non-humanprimates.,Molecular Therapy,2017年,Vol. 25, No. 5, Supplement 1,p. 30-31,(abstract) EMBASE [online], CAS [retrieved on 2023.05.16], Retrieved from: STN, Accession No.005263044
【文献】SOSALE et al.,Molecular Therapy Methods and Clinical Development,2016年,Vol. 3,e16080
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 1/00-7/08
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の表面上のCD47の発現を減少させるように遺伝子操作されている、エンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞。
【請求項2】
CD47をコードする遺伝子の遺伝子操作による破壊を含む、請求項1に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞。
【請求項3】
細胞の表面上のMHC-Iの発現を減少させるようにさらに遺伝子操作されている、請求項1又は2に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞。
【請求項4】
β2-ミクログロブリンをコードする遺伝子の遺伝子操作による破壊、及び/又はMHC-Iα鎖をコードする1つ以上の遺伝子の遺伝子操作による破壊を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞。
【請求項5】
細胞がHEK-293細胞又はその派生細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞。
【請求項6】
エンベロープウイルス粒子が、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ヘパドナウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、コロナウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ブニヤウイルス、ボルナウイルス、ラブドウイルス若しくはフィロウイルス粒子、又はそれらに由来するウイルス粒子である、請求項1~5のいずれか一項に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞。
【請求項7】
エンベロープウイルス粒子が、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス若しくはワクシニアウイルス粒子、又はそれらに由来するウイルス粒子である、請求項1~6のいずれか一項に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞。
【請求項8】
エンベロープウイルス粒子が、レンチウイルス粒子又はそれに由来するウイルス粒子である、請求項7に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞。
【請求項9】
エンベロープウイルス粒子を産生するための、請求項1~8のいずれか一項に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞の使用。
【請求項10】
以下:
a)請求項1~8のいずれか一項に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞を提供するステップ; 及び
b)エンベロープウイルス粒子の産生に適した条件下で細胞を培養するステップ
を含む、エンベロープウイルス粒子を産生する方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法によって得られ
たエンベロープウイルス粒子
、ここで該エンベロープウイルス粒子は、遺伝子操作の非存在下でエンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞により産生された粒子上に提示される表面に露出したCD47分子の数の10%未満の表面に露出したCD47分子を含む、前記エンベロープウイルス粒子。
【請求項12】
レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス若しくはワクシニアウイルス粒子、又はそれらに由来するウイルス粒子である、請求項11に記載のエンベロープウイルス粒子。
【請求項13】
レンチウイルス粒子又はそれに由来するウイルス粒子である、請求項12に記載のエンベロープウイルス粒子。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか一項に記載のエンベロープウイルス粒
子、並びに薬学的に許容される担体、希釈剤若しくは賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項15】
療法に使用するための、請求項11~13のいずれか一項に記載のエンベロープウイルス粒
子を含む、医薬組成物。
【請求項16】
ワクチン接種又は遺伝子療法に使用するための、請求項11~13のいずれか一項に記載のエンベロープウイルス粒
子を含む、医薬組成物。
【請求項17】
がん、細菌若しくはウイルス感染症、免疫介在性疾患又は自己免疫疾患の治療又は予防に使用するための、請求項
15又は16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
ワクチンとして使用するための、請求項11~13のいずれか一項に記載のエンベロープウイルス粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に露出した抗原を減少したレベルで提示する細胞に関する。より具体的には、本発明は、細胞の表面上のCD47の発現を減少させるための細胞の遺伝子操作に関する。特に、本発明は、エンベロープウイルス粒子の産生におけるそのような細胞の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子療法は、疾患を治療又は予防するために細胞に遺伝物質を組み込むことを含む。遺伝物質は、欠損遺伝子を、それらの遺伝子の機能的コピーで補い、不適切に機能している遺伝子を不活性化し、又は遺伝子を導入して、細胞に新しい機能を指示し得る。
【0003】
細胞への遺伝物質の送達は、核酸の導入を容易にするベクターの使用を通じて達成し得る。ウイルスは、目的ヌクレオチド(NOI)を標的細胞に送達するように操作することができ、遺伝子療法におけるベクターとして一般的に使用されている。これまで遺伝子療法に使用されているウイルスとしては、レトロウイルス、アデノウイルス(AdV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)及びワクシニアウイルスが挙げられる。
【0004】
レトロウイルス、例えばα-レトロウイルス、γ-レトロウイルス、レンチウイルス及びスプマウイルスは、標的細胞への修正遺伝物質の安定した組み込みを可能にするため、遺伝子療法に特に有用である。アデノシンデアミナーゼ重症複合免疫不全症(ADA-SCID; Aiuti, A. et al. (2009) N. Engl. J. Med. 360: 447-58)、X連鎖重症複合免疫不全症(SCID-X1; Hacein-Bey-Abina, S. et al. (2010) N. Engl. J. Med. 363: 355-64)及びウィスコット・アルドリッチ(Wiskott-Aldrich)症候群(WAS; Boztug, K. et al. (2010) N. Engl. J. Med. 363: 1918-27)についてのγ-レトロウイルス由来ベクターに基づく臨床試験では、治療効果がすでに達成されている。さらに、X連鎖副腎白質ジストロフィー(ALD; Cartier, N. et al. (2009) Science 326: 818-23)、及び異染性白質ジストロフィー(MLD; Biffi, A. et al. (2013) Science 341: 1233158)及びWAS(Aiuti, A. et al. (2013) Science 341: 1233151)の治療における送達ビヒクルとして、レンチウイルスベクターが使用されている。前臨床研究では、レンチウイルスベクターはまた、血友病のマウス及びイヌモデルにおいて血友病の肝臓指向遺伝子療法のために静脈内投与されている(Cantore, A. et al. (2012) Blood; Matsui, H. et al. (2011) Mol Ther; Cantore, A. et al. (2015) Science Translational Medicine 7: 277ra28)。
【0005】
遺伝性疾患の安定した遺伝子置換療法戦略に適用するために、免疫細胞感知から逃れることができる遺伝子療法ベクターを得るための努力がなされている。しかし、自然免疫細胞への効率的な遺伝子送達を必要とする遺伝子導入ベクターのいくつかの適用があり、例えば、腫瘍溶解性ウイルスとしてのベクターの使用(Lichty, B.D. et al. (2014) Nature Rev Cancer 14: 559-567)及びワクチン接種目的の使用(Rampling et al. (2015) NEJM)がある。
【0006】
ウイルス粒子エンベロープは、典型的には、プロデューサー細胞の膜から生じる。したがって、ウイルス粒子が発芽する細胞膜上に発現される膜タンパク質は、ウイルスエンベロープに組み込まれ得る。そのような表面に露出したタンパク質は、例えば特定の型の細胞の形質導入を改善若しくは防止することによって、又はウイルス粒子若しくはそれらが形質導入する細胞に対して有害な免疫応答を引き起こすことによって、遺伝子療法ベクターとしてのウイルス粒子の有用性に影響を与え得る。逆に、免疫系の刺激は、例えばワクチン接種目的など、特定の有用性にとって望ましい可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、当技術分野では、細胞形質導入、並びに免疫応答の刺激若しくは回避の改善された特徴を有するウイルスベクター粒子に対する著しい必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明者らは、驚くべきことに、専門食細胞及び抗原提示細胞(APC)への遺伝子導入が、LV粒子上のCD47分子の存在によって制約されることを見出した。
【0009】
LV粒子を産生するために使用される細胞中のCD47遺伝子を遺伝的に破壊することによって、本発明者らは、LVエンベロープのタンパク質組成を改変することができ、それらの表面上にヒトCD47を欠くLV粒子(CD47フリーLV)を得た。驚くべきことに、本発明者らは、表面に露出したCD47分子の不存在が、細胞に対して毒性がなく、エンベロープウイルス粒子を産生するこれらの細胞の能力に大きく影響を与えないことを示した。
【0010】
さらに、本発明者らは、CD47フリーLVが、保存された感染性、及び食作用に対する実質的に増加した感受性を示すことを実証した。CD47フリーLVは、CD47を有するLVと比較して、エクスビボ(ex vivo)及びインビボ(in vivo)の両方で専門食細胞により効率的に形質導入し、マウスへの全身投与時にサイトカイン応答の大幅により高い上昇を誘導する。CD47フリーLVは、以前に利用可能なLVと比較して、ヒト初代単球への増加した遺伝子導入効率を可能にし、エクスビボ(初代ヒトマクロファージによる)及びインビボ(マウスに全身投与した場合)の両方で食作用に対する増加した感受性を有する。
【0011】
食作用並びにウイルスベクターの取り込み及び侵入に関与する多くの経路があり、本発明者らの発見の前に、表面に露出したCD47を欠くLVが、APCへの遺伝子導入の増加した効率を示すであろうことは明らかではなかった。さらに、VSV-Gと標的細胞上のその受容体との間の相互作用が、ウイルス粒子上のCD47シグナルの存在によって負の影響を受ける可能性があることは明らかではなかった。
【0012】
操作されたCD47陰性細胞を使用して、LV及び他のエンベロープウイルスベクター粒子を産生することができ、これは、例えば、ワクチン接種、免疫調節及びがん免疫療法に適用するための専門食細胞への遺伝子導入に適している。CD47フリーLVを使用して、専門APCへ遺伝子を導入することができ、このことは、LVの適用性を、遺伝性疾患以外に、がん標的化免疫療法戦略、感染性疾患などの適応症、及びワクチン接種目的にまで広げる。実際、本発明者らは、インビボで投与された場合、CD47フリーLVが、サイトカイン及びケモカインのより大きな放出を誘導することを示しており、これは、療法の目的が免疫応答を誘導することである場合に重要である。マクロファージが、感染性疾患又は免疫介在性疾患、例えばHIV感染症、又は炎症性腸疾患、又は他の自己免疫疾患若しくは自己炎症性疾患に関与している場合に、CD47フリーLVは、マクロファージを標的化するためにも使用することができる。
【0013】
一態様では、本発明は、細胞の表面上のCD47の発現を減少させるように遺伝子操作されている、エンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞を提供する。
【0014】
一態様では、本発明は、細胞の表面上のCD47の発現を減少させるように遺伝子操作されている、エンベロープウイルス粒子パッケージング細胞を提供する。
【0015】
一実施形態では、細胞は、CD47をコードする遺伝子の遺伝子操作による破壊を含む。細胞は、CD47をコードする遺伝子の全てのコピーにおいて遺伝子操作による破壊を含んでもよい。
【0016】
細胞の表面上のCD47の発現は、細胞が、表面に露出したCD47分子を実質的に欠いているように減少してもよい。一実施形態では、細胞は、表面に露出したCD47分子を含まない。
【0017】
一実施形態では、細胞は、細胞の表面上のMHC-Iの発現を減少させるようにさらに遺伝子操作されている。一実施形態では、細胞は、β2-ミクログロブリンをコードする遺伝子の遺伝子操作による破壊を含む。一実施形態では、細胞は、MHC-Iα鎖をコードする1つ以上の遺伝子の遺伝子操作による破壊を含む。細胞は、β2-ミクログロブリンをコードする遺伝子の全てのコピーにおいて遺伝子操作による破壊を含んでもよい。細胞は、MHC-Iα鎖をコードする遺伝子の全てのコピーにおいて遺伝子操作による破壊を含んでもよい。細胞は、β2-ミクログロブリンをコードする遺伝子の遺伝子操作による破壊と、MHC-Iα鎖をコードする遺伝子の遺伝子操作による破壊の両方を含んでもよい。
【0018】
細胞の表面上のMHC-Iの発現は、細胞が、表面に露出したMHC-I分子を実質的に欠いているように減少してもよい。一実施形態では、細胞は、表面に露出したMHC-I分子を含まない。
【0019】
ウイルス粒子「プロデューサー細胞」という用語は、ウイルス粒子を産生するために必要な全ての要素の一過的トランスフェクション、安定したトランスフェクション又はベクター形質導入後の、ウイルス粒子を産生する細胞、又はウイルス粒子を産生するために必要な要素を安定して含むように操作された任意の細胞を含む。
【0020】
用語「パッケージング細胞」は、感染性組換えウイルスをパッケージングするために必要な要素のいくつか又は全てを含有する細胞を含む。パッケージング細胞は、組換えウイルスベクターゲノムを欠いていてもよい。典型的には、そのようなパッケージング細胞は、ウイルス構造タンパク質を発現することができる1つ以上のベクターを含有する。エンベロープウイルス粒子の産生に必要な要素のいくつかのみを含む細胞は、各追加の必要な要素の一過的トランスフェクション、形質導入、又は安定した組み込みのための後続ステップを通じて、ウイルス粒子プロデューサー細胞株の作製における中間試薬として有用である。これらの中間試薬は、用語「パッケージング細胞」に包含される。細胞の表面上のCD47の発現が減少している、エンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞株を作製するために後で使用されるべき親細胞もまた、本発明に包含される。
【0021】
本明細書で言及されるウイルス粒子は、複製可能ウイルス又は複製欠損ウイルス、それらに由来するウイルスベクターを包含し、目的ヌクレオチドを含んでも又は含まなくてもよい。
【0022】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞は、HEK-293細胞又はその派生細胞である。一実施形態では、エンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞は、HEK-293T又はHEK-293 T-REx細胞である。
【0023】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ヘパドナウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、コロナウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ブニヤウイルス、ボルナウイルス、ラブドウイルス若しくはフィロウイルス粒子、又はそれらに由来するウイルス粒子である。
【0024】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス若しくはワクシニアウイルス粒子、又はそれらに由来するウイルス粒子である。
【0025】
好ましい実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、レンチウイルス粒子又はそれに由来するウイルス粒子である。一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、HIV-1粒子又はそれに由来するウイルス粒子である。
【0026】
別の態様では、本発明は、本発明のエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞の集団を提供する。
【0027】
一実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%は、本発明に従って遺伝子操作されている。
【0028】
別の態様では、本発明は、本発明によるエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞株を作製するための親細胞であって、細胞の表面上のCD47の発現を減少させるように遺伝子操作されている親細胞を提供する。
【0029】
別の態様では、本発明は、エンベロープウイルス粒子を産生するための、任意の先行する請求項のエンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞の使用を提供する。
【0030】
一実施形態では、エンベロープウイルスベクター粒子は、遺伝子操作の非存在下で(しかしそれ以外は実質的に同一の条件下で)エンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞によって産生された粒子上に提示される表面に露出したCD47分子の数の約50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%未満を含む。
【0031】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、表面に露出したCD47分子を含まない。一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、表面に露出したCD47分子を実質的に欠いている。
【0032】
別の態様では、本発明は、以下:
a)本発明によりエンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞を提供するステップ; 及び
b)エンベロープウイルス粒子の産生に適した条件下で細胞を培養するステップ
を含む、エンベロープウイルス粒子を産生する方法を提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は、本発明のエンベロープウイルス粒子産生方法によって得られるエンベロープウイルス粒子を提供する。
【0034】
一実施形態では、エンベロープウイルスベクター粒子は、遺伝子操作の非存在下で(しかしそれ以外は実質的に同一の条件下で)エンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞によって産生された粒子上に提示される表面に露出したCD47分子の数の約50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%未満を含む。
【0035】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、表面に露出したCD47分子を含まない。一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、表面に露出したCD47分子を実質的に欠いている。
【0036】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ヘパドナウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、コロナウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ブニヤウイルス、ボルナウイルス、ラブドウイルス若しくはフィロウイルス粒子、又はそれらに由来するウイルス粒子である。
【0037】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス若しくはワクシニアウイルス粒子、又はそれらに由来するウイルス粒子である。
【0038】
好ましい実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、レンチウイルス粒子又はそれに由来するウイルス粒子である。一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、HIV-1粒子又はそれに由来するウイルス粒子である。
【0039】
一実施形態では、本発明のエンベロープウイルス粒子は、タンパク質導入のために使用される(Bobis-Wozowicz, S. et al. (2014) Sci Rep; Voelkel, C. et al. (2010) Proc Natl Acad Sci USA; Maetzig, T. et al. (2012) Curr Gene Ther)。
【0040】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、目的ヌクレオチド(NOI)を含む。好ましくは、エンベロープウイルス粒子は、弱毒化ウイルス、例えば複製欠損ウイルスである。
【0041】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、サイトカインをコードする導入遺伝子を含む。
【0042】
別の態様では、本発明は、本発明のエンベロープウイルス粒子の集団を提供する。
【0043】
一実施形態では、その集団中の粒子の少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%は、本発明のエンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞から生じる。一実施形態では、その集団中の粒子の100%が、本発明のエンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞から生じる。一実施形態では、その集団中の粒子は、表面に露出したCD47を実質的に含まない。
【0044】
別の態様では、本発明は、マクロファージ、食細胞、抗原提示細胞又は単球に形質導入するための、本発明のエンベロープウイルス粒子の使用を提供する。
【0045】
別の態様では、本発明は、肝臓マクロファージに形質導入するための、本発明のエンベロープウイルス粒子の使用を提供する。
【0046】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、マクロファージ、例えばクッパー細胞に形質導入するために使用される。一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、食細胞に形質導入するために使用される。一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、抗原提示細胞、例えば樹状細胞、形質細胞様樹状細胞(pDC)又は骨髄系樹状細胞(myDC)に形質導入するために使用される。一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、単球に形質導入するために使用される。
【0047】
一実施形態では、形質導入は、インビトロ(in vitro)、エクスビボ、又はインビボ形質導入である。一実施形態では、形質導入は、インビトロ形質導入である。一実施形態では、形質導入は、エクスビボ形質導入である。
【0048】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、対象に全身的に投与される。
【0049】
別の態様では、本発明は、本発明のエンベロープウイルス粒子によって形質導入された細胞を提供する。細胞は、哺乳動物細胞、例えば、霊長類細胞又はヒト細胞であってもよい。
【0050】
一実施形態では、細胞は、マクロファージ(例えば、クッパー細胞)、食細胞、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、形質細胞様樹状細胞pDC又は骨髄系樹状細胞myDC)又は単球である。一実施形態では、細胞は、肝臓マクロファージである。
【0051】
別の態様では、本発明は、本発明のエンベロープウイルス粒子若しくは形質導入細胞、並びに薬学的に許容される担体、希釈剤若しくは賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0052】
別の態様では、本発明は、療法に使用するための、本発明のエンベロープウイルス粒子を提供する。本発明のエンベロープウイルス粒子は、遺伝子療法に使用してもよい。
【0053】
別の態様では、本発明は、療法に使用するための、本発明の形質導入細胞を提供する。本発明の形質導入細胞は、遺伝子療法に使用してもよい。
【0054】
別の態様では、本発明は、がんの治療又は予防に使用するための、本発明のエンベロープウイルス粒子を提供する。別の態様では、本発明は、細菌又はウイルス感染症の治療又は予防に使用するための、本発明のエンベロープウイルス粒子を提供する。別の態様では、本発明は、免疫介在性疾患又は自己免疫疾患の治療又は予防に使用するための、本発明のエンベロープウイルス粒子を提供する。
【0055】
別の態様では、本発明は、がんの治療又は予防に使用するための、本発明の形質導入細胞を提供する。別の態様では、本発明は、細菌又はウイルス感染症の治療又は予防に使用するための、本発明の形質導入細胞を提供する。別の態様では、本発明は、免疫介在性疾患又は自己免疫疾患の治療又は予防に使用するための、本発明の形質導入細胞を提供する。
【0056】
別の態様では、本発明は、ワクチン接種又は遺伝子療法に使用するための、好ましくはがん、細菌若しくはウイルス感染症、免疫介在性疾患又は自己免疫疾患の治療又は予防に使用するための、本発明のエンベロープウイルス粒子を提供する。
【0057】
別の態様では、本発明は、ワクチン接種又は遺伝子療法に使用するための、好ましくはがん、細菌若しくはウイルス感染症、免疫介在性疾患又は自己免疫疾患の治療又は予防に使用するための、本発明の形質導入細胞を提供する。
【0058】
別の態様では、本発明は、本発明のエンベロープウイルス粒子で細胞に形質導入するステップを含む、がん、細菌若しくはウイルス感染症、免疫介在性疾患又は自己免疫疾患の治療方法を提供する。
【0059】
一実施形態では、形質導入は、インビトロ、エクスビボ又はインビボ形質導入である。一実施形態では、形質導入は、インビトロ形質導入である。一実施形態では、形質導入は、エクスビボ形質導入である。
【0060】
別の態様では、本発明は、がん、細菌若しくはウイルス感染症、免疫介在性疾患又は自己免疫疾患の治療を必要とする対象に、本発明のエンベロープウイルス粒子又は細胞を投与するステップを含む、がん、細菌若しくはウイルス感染症、免疫介在性疾患又は自己免疫疾患の治療方法を提供する。
【0061】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、対象に全身的に投与される。
【0062】
別の態様では、本発明は、ワクチンとして使用するための、本発明のエンベロープウイルス粒子を提供する。
【0063】
別の態様では、本発明は、ワクチン接種を必要とする対象に、本発明のエンベロープウイルス粒子を投与するステップを含む、ワクチン接種方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】CD47陰性プロデューサー細胞の作製及び特徴付け。(a)選別の3日後に実施された、(示されるとおり)未染色、未処置、CRISPR/Cas9処置、CD47陰性又はCD47陽性選別された293T細胞のフローサイトメトリー分析(外れ値のある等高線プロット)。(b)トランスフェクションの1週間後の、示された量のCas9及びsgRNA発現プラスミドを用いて、3つの異なるsgRNA(A、B又はC)で一過的にトランスフェクトされた293T細胞におけるCD47陰性細胞(白棒)及びインデル(indel)を有するアレル(NHEJ、黒棒)のパーセンテージ。(c~e)示されるように、CD47陽性(黒棒、n=3)又はCD47陰性(白棒、n=3)の293Tによって産生されたLVの、(c)感染力価(TU/mL); (d)物理的粒子(ng p24/mL); 及び(e)比感染性(TU/ng p24)の、SEMを伴う平均値。マン・ホイットニー(Mann-Whitney)検定による有意差はない。
【
図2】CD47フリーLVの作製、画像化及びインビトロ評価。(a~c)対照(LV、黒丸)、CD47過剰発現(CD47hi LV、黒四角)、又はCD47陰性293T細胞(CD47フリーLV、白丸)によって産生され、(示されるように)抗CD47(b)若しくは抗VSV.G(c)抗体で、又は一次抗体なしの染色対照として(ctrl、黒三角)免疫染色され、電子顕微鏡法によって分析された(サンプル1つあたりn=41~70個のビリオン)、LVバッチの代表的な顕微鏡写真(a)及び定量分析(c、d)。ダン(Dunn)の多重比較検定を用いたクラスカル・ウォリス(Kruskal-Wallis)検定。(d)MOI 10でLV(黒丸)又はCD47フリーLV(白丸)で形質導入され、形質導入の3日後に分析された、293T細胞及び初代ヒトマクロファージ(293Tについてn=6、マクロファージについてn=15)におけるVCNの個々の値、及びSEMを伴う平均値(5人の異なる健康な血液ドナーを用いた2つの独立した実験)。(e)MOI 3でLV(黒丸)又はCD47フリーLV(白丸)で形質導入され、形質導入の3日後に分析された、293T細胞及び初代ヒト樹状細胞(293Tについてn=3~4、樹状細胞についてn=8~11)におけるGFP陽性細胞のパーセンテージの個々の値、及びSEMを伴う平均値。樹状細胞は、ヒト初代単球から開始する分化プロトコールの2日目に形質導入されることに留意されたい。マン・ホイットニー検定。(f)LV(黒スポット)又はCD47フリーLV(白点)とのインキュベーション後にImageStreamによって分析された、X軸上に示されるLVスポットの数を示す初代ヒトマクロファージのパーセンテージの個々の値を伴う、平均値及びSEM(11人の異なる正常なドナーに由来するマクロファージを用いて実施された8個の独立した実験)。ウィルコクソン(Wilcoxon)マッチドペア検定。VSV.G: 水疱性口内炎ウイルスGタンパク質。
【
図3】CD47フリーLVのインビボ評価。(a~c)1.2~2×10
10TU/kgでLV(a)又はCD47フリーLV(b)(n=11~16、pDCについてn=4)を注射されたC57 BL/6血友病B(n=5~9、黒星)又はNOD(n=5~11、黒丸)マウスの、(示されるように)FACSで選別された肝細胞(Hep)、肝類洞内皮細胞(LSEC)、クッパー細胞(KC)又は形質細胞様樹状細胞(pDC)、及び脾臓全体におけるVCNの個々の値、及びSEMを伴う平均値。VCNは、LV投与の2ヶ月後に測定された。マン・ホイットニー検定。(c)では、本発明者らは、(a)(LV処置NODマウス)及び(b)(CD47フリーLV処置NODマウス)で示される同じデータセットを報告するが、同じマウス系統(NOD)においてLV及びCD47フリーLVを直接比較するためにここに一緒にプロットした。
【
図4a-d】CD47フリーLVの投与は、より高い炎症誘発性サイトカイン応答をもたらす。(a~l)(a~f)LV(黒丸)又はCD47フリーLV(白丸)の投与後の示された時点(時間)の、又はピーク(g~l、LV投与の3時間後)の、NODマウスの血清中のIL-6(a、g)、MCP-1(b、h)、MIP-1α(c、i)、MIP-1β(d、j)、CXCL1(e、k)及びG-CSF(f、l)の濃度の、SEMを伴う平均値。破線は、未処置コホートにおける平均濃度を示す。ダンの多重比較検定を用いたクラスカル・ウォリス検定。
【
図5】マウスにおける肝臓クッパー細胞(KC)によるLV、CD47hi又はCD47フリーLVの取り込みの生体内画像化。(A)示された時間(分; LV静脈内注射は2分に開始する)の、示されるようにGFP標識LV、CD47hi又はCD47フリーLVで処置されたC57BL/6又はNODマウスの肝臓の4μm間隔の8~12個のzスタックからの生体内2光子顕微鏡画像。KCは白で示される。LV陽性KCには、アスタリスクで印を付ける。(b)示されるように、LV、CD47hi又はCD47フリーLVで処置されたC57BL/6又はNODマウスにおける経時的なLV陽性KCのパーセンテージ。
【
図6】肝臓へのインターフェロンのLVベースの送達。未処置のマウス、又は示される用量のLVベースのIFNα放出プラットフォームで処置されたマウスからの全肝臓における遺伝子の一群の発現を示すTaqManによる遺伝子発現分析。未処置に対する倍率変化。
【発明を実施するための形態】
【0065】
発明の詳細な説明
用語「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」及び「~で構成される(comprised of)」は、本明細書で使用される場合、「含むこと(including)」又は「含む(includes)」; 又は「含有すること(containing)」又は「含む(contains)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の、記載されていないメンバー、要素又はステップを除外するものではない。用語「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」及び「~で構成される(comprised of)」はまた、用語「~からなる(consisting of)」を含む。
【0066】
一態様では、本発明は、細胞の表面上のCD47の発現を減少させるように遺伝子操作されている、エンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞を提供する。
【0067】
細胞の表面上のCD47の減少した発現は、遺伝子操作された細胞の表面上で発現されるCD47分子の数が、遺伝子操作を欠いているがそれ以外は実質的に同一の条件下の細胞の表面上で発現されるCD47分子の数と比較して、減少することを指す。
【0068】
細胞の表面上のCD47の発現は、表面に露出したCD47分子の数が、例えば、遺伝子操作の非存在下で提示される表面に露出したCD47分子の数の約50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%未満になるように減少してもよい。一実施形態では、細胞の表面上のCD47の発現は、表面に露出したCD47分子の数が、遺伝子操作の非存在下で提示される表面に露出したCD47分子の数の0%になるように減少する。
【0069】
細胞の表面上のCD47の発現は、好ましくは、細胞が、表面に露出したCD47分子を実質的に欠いているように減少する。
【0070】
用語「実質的に欠いている」は、本明細書で使用される場合、遺伝子操作された細胞の表面上で発現されるCD47分子の数が、遺伝子操作を欠く(しかしそれ以外は実質的に同一の条件下の)細胞の表面上で発現されるCD47分子の数と比較して、実質的に減少し、その結果、細胞によって産生されるエンベロープウイルス粒子が、マクロファージ、食細胞、抗原提示細胞及び/若しくは単球に形質導入する能力、並びに/又は全身投与時にサイトカイン応答を誘発する能力の、治療上有用な増加を示すことを意味する。
【0071】
別の態様では、本発明は、CD47をコードする遺伝子の遺伝子操作による破壊を含む、エンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞を提供する。
【0072】
一実施形態では、細胞は、細胞の表面上のMHC-Iの発現を減少させるようにさらに遺伝子操作されている。
【0073】
一実施形態では、細胞は、β2-ミクログロブリンをコードする遺伝子の遺伝子操作による破壊をさらに含む。
【0074】
一実施形態では、細胞は、MHC-Iα鎖をコードする1つ以上の遺伝子の遺伝子操作による破壊をさらに含む。
【0075】
一態様では、本発明は、本発明のエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞の集団を提供する。
【0076】
好ましくは、集団中の細胞の少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%は、表面に露出したCD47を含まない。
【0077】
好ましくは、集団中の細胞の少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%は、表面に露出したMHC-Iを含まない。
【0078】
細胞の集団において細胞表面に露出したタンパク質のタンパク質発現を定量化する方法は、当技術分野で公知である。適切な方法としては、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別(FACS)及び蛍光顕微鏡法が挙げられる。
【0079】
例えば、細胞の集団を、CD47又はMHC-Iに特異的な抗体と接触させてもよい。抗体は、その検出を可能にするために標識化されてもよい。抗体を、レポーター部分(例えば、蛍光標識)に直接コンジュゲートさせてもよい。あるいは、レポーター部分にコンジュゲートされ、第一の抗体に特異的な二次抗体を、細胞の集団と接触させてもよい。適切なレポーター部分は、当技術分野で公知であり、例えば、Alexa Fluor及びBODIPYベースの蛍光標識を含む。細胞の集団を抗体と接触させたら、フローサイトメトリーなどの個々の細胞上のタンパク質発現の定量化を可能にするのに適した技術を使用して、集団を分析してもよい。分析は、細胞を溶解せずに実施される。
【0080】
細胞表面に露出したタンパク質のタンパク質発現を定量化する方法はまた、細胞の集団を選別して、特定の特徴について富化された細胞の集団を生成する(例えば、表面に露出したCD47を含まない細胞が富化された細胞の集団を生成する)ことを可能にしてもよい。例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)は、このような富化を実施することを可能にする。
【0081】
同様の方法を、単一細胞上の細胞表面に露出したタンパク質のタンパク質発現を定量化するために適用してもよい。例えば、この方法は、微小流体アプローチを用いてもよい。
【0082】
分化抗原群47(CD47)
分化抗原群47(CD47; インテグリン関連タンパク質(IAP)としても知られる)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜貫通タンパク質である。CD47は、トロンボスポンジン-1(TSP-1)及びシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)に結合し、マクロファージへのシグナルとして機能する。
【0083】
ヒトCD47のアミノ酸配列の例は、以下のとおりである:
【化1】
【0084】
ヒトCD47のアミノ酸配列のさらなる例は、以下のとおりである:
【化2】
【0085】
ヒトCD47のアミノ酸配列のさらなる例は、以下のとおりである:
【化3】
【0086】
ヒトCD47のアミノ酸配列のさらなる例は、以下のとおりである:
【化4】
【0087】
ヒトCD47をコードするヌクレオチド配列の例は、以下のとおりである:
【化5】
【0088】
CD47の遺伝子操作
本発明のエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞は、細胞の表面上のCD47の発現を減少させるように遺伝子操作されている。
【0089】
タンパク質発現を減少させるための遺伝子操作の方法は、当技術分野で公知である。例えば、これは、標的化遺伝子ノックアウトによって達成してもよい。タンパク質発現を減少させるために、タンパク質自体又はその調節配列(例えば、そのプロモーター)をコードする遺伝子をノックアウトしてもよい。ノックアウトは、コード核酸配列のセクションの欠失によって達成してもよく、これは、発現又は安定性に必須のタンパク質のセクションを欠失させるか、又はコード配列のリーディングフレームを変更し得る。標的化遺伝子ノックアウトに適した方法としては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)及びCRISPR/CasベースのRNAガイド型ヌクレアーゼ(Gaj, T. et al. (2013) Trends Biotechnol. 31: 397-405)の使用が挙げられる。
【0090】
例えば、CRISPR/Cas9 RNAガイド型ヌクレアーゼを使用して、ゲノム中の特定の座位で二本鎖切断を触媒してもよい(その座位に結合するように設計された適切なRNAガイドが提供される場合)。Cas9及びガイドRNAは、タンパク質及びRNAをコードするベクターのトランスフェクションによって標的細胞に送達してもよい。細胞は、非相同末端結合(NHEJ)経路を使用して、それらのDNAにおける任意の二本鎖切断を修復しようとする。これは、無作為なヌクレオチドを挿入し、しばしば標的化遺伝子のリーディングフレームを破壊する、エラーを発生しやすい機構である。
【0091】
あるいは、タンパク質発現を減少させるための遺伝子操作は、標的遺伝子の発現を抑制するためのRNAi技術、又はマイクロRNA又はアンチセンスRNAを使用して達成してもよい。
【0092】
標的化遺伝子ノックアウト又は発現抑制アプローチが実施されたら、得られた細胞集団をスクリーニングして、目的の表現型、例えば、表面に露出したCD47の減少した発現を示す細胞について選択及び富化してもよい。スクリーニング及び富化に適した技術は、当技術分野で公知であり、フローサイトメトリー及び蛍光活性化細胞選別(FACS)を含む。
【0093】
細胞は、CD47をコードする遺伝子の全てのコピーにおいて遺伝子操作による破壊を含んでもよい。
【0094】
主要組織適合複合体クラスI
主要組織適合複合体クラスI(MHC-I)は、細胞膜の外葉上に提示されるヘテロ二量体膜タンパク質である(Penn, D.J. (2002) Major Histocompatibility Complex (MHC) eLS, John Wiley & Sons, http://www.els.net/ [DOI:10.1038/npg.els.0000919])。MHC-Iは、タンパク質のペプチド断片を結合して、細胞外環境に提示するように機能し、細胞外環境で、それらは、CD8+細胞傷害性T細胞によって認識される可能性がある。正常な細胞タンパク質から生成されたペプチド断片は、中枢性及び末梢性トレランス機構のために、細胞傷害性T細胞を活性化しない。しかし、外来ペプチド(例えば、ウイルスタンパク質から生じるもの)は、免疫応答の活性化を引き起こして、細胞を破壊する。
【0095】
同種異系のMHC-Iタンパク質自体は、免疫系によって認識され得る。例えば、抗体は、MHC-Iエピトープに直接結合し得る。結果として、同種異系源に由来するMHC-Iタンパク質を含む細胞及びエンベロープウイルスは、免疫系によって標的化及び中和される可能性がある。
【0096】
ヒトMHC-Iは、ヒト白血球抗原クラスI(HLA-I)とも呼ばれ、ほとんど全ての有核細胞上で発現される。HLA-Iは、HLA-I重鎖(α鎖)及びβ2ミクログロブリン(β2M)の2つのポリペプチド鎖からなる。HLA-Iα鎖及びβ2Mは、非共有結合している。
【0097】
HLA-Iα鎖は多型である。3個の古典的高度多型性α鎖(HLA-A、HLA-B及びHLA-C)、及び3個の非古典的低多型性(HLA-E、HLA-F及びHLA-G)α鎖を含む、6個のHLA-Iα鎖がこれまでに同定されている。当業者は、HLA-Iα鎖の核酸配列を容易に決定することができるであろう。例えば、HLA-Iα鎖は、染色体の主要組織適合複合体領域内のそれらの位置を使用して、ゲノム配列中で同定し得る(Penn, D.J. (2002) Major Histocompatibility Complex (MHC) eLS, John Wiley & Sons, http://www.els.net/ [DOI:10.1038/npg.els.0000919])。
【0098】
β2Mをコードする核酸配列は、当技術分野で公知である。例えば、ヒトβ2Mの核酸配列は、GenBankアクセッション番号NM_004048として寄託されている。
【0099】
当業者は、本発明が、これらの配列(例えば、HLA-Iα鎖配列及びβ2M配列)の多型などの、MHC-I配列の変異体に適用可能であると理解している。例えば、MHC-I配列の変異体は、一塩基多型(SNP)又は複数のSNPを含んでもよい。
【0100】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞は、β2-ミクログロブリンをコードする遺伝子の遺伝子操作による破壊を含む。β2-ミクログロブリンは、MHC-Iを安定化し、したがって、β2-ミクログロブリンが欠損している細胞は、細胞の表面上のMHC-Iの減少した発現を示す。細胞は、β2-ミクログロブリンをコードする遺伝子の全てのコピーにおいて遺伝子操作による破壊を含んでもよい。
【0101】
別の実施形態では、細胞は、MHC-Iα鎖をコードする遺伝子の遺伝子操作による破壊を含む。細胞は、MHC-Iα鎖をコードする遺伝子の全てのコピーにおいて遺伝子操作による破壊を含んでもよい。
【0102】
細胞は、β2-ミクログロブリンをコードする遺伝子の遺伝子操作による破壊と、MHC-Iα鎖をコードする遺伝子の遺伝子操作による破壊の両方を含んでもよい。
【0103】
ベクター
ベクターは、ある環境から別の環境への実体の導入を可能又は容易にするツールである。本発明のウイルス粒子は、ベクターであってもよい。
【0104】
本発明のウイルスベクター粒子は、エンベロープウイルス粒子である。
【0105】
エンベロープウイルス粒子は、外側の脂質二重層膜を含む。多くのエンベロープウイルス、例えば、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ヘパドナウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、コロナウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ブニヤウイルス、ボルナウイルス、ラブドウイルス及びフィロウイルスが当技術分野で公知である。
【0106】
本発明のエンベロープウイルス粒子は、例えば、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ヘパドナウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、コロナウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ブニヤウイルス、ボルナウイルス、ラブドウイルス若しくはフィロウイルス粒子、又はそれらに由来するウイルス粒子であってもよい。用語「~に由来する(derived from)」は、本明細書で使用される場合、例えば、特定の型のウイルスから導くことができる少なくとも1つの構成部分の組み込みを指し得る。
【0107】
レトロウイルス及びレンチウイルスベクター
レトロウイルスベクターは、任意の適切なレトロウイルスに由来するか、又はそれから導くことができるものであってもよい。多数の異なるレトロウイルスが同定されている。例としては、マウス白血病ウイルス(MLV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、藤波肉腫ウイルス(FuSV)、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo-MLV)、FBRマウス骨肉腫ウイルス(FBR MSV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(Mo-MSV)、エーベルソンマウス白血病ウイルス(A-MLV)、トリ骨髄細胞腫症ウイルス-29(MC29)及びトリ赤芽球症ウイルス(AEV)が挙げられる。レトロウイルスの詳細なリストは、Coffin, J.M. et al. (1997) Retroviruses, Cold Spring Harbour Laboratory Press, 758-63に見出すことができる。
【0108】
レトロウイルスは、おおまかに「単純」及び「複雑」の2つのカテゴリーに分けることができる。レトロウイルスは、7個の群にさらに分けることができる。これらの群のうち5個は、腫瘍発生の可能性があるレトロウイルスを表す。残りの2個の群は、レンチウイルス及びスプマウイルスである。これらのレトロウイルスの概説は、Coffin, J.M. et al. (1997) Retroviruses, Cold Spring Harbour Laboratory Press, 758-63に示される。
【0109】
レトロウイルス及びレンチウイルスのゲノムの基本構造は、5'長鎖末端反復(LTR)及び3'LTRなどの多くの共通の特徴を共有する。これらの間又は内部には、ゲノムのパッケージ化を可能にするパッケージングシグナル、プライマー結合部位、宿主細胞ゲノムへの組み込みを可能にする組み込み部位、並びにパッケージング成分(これらはウイルス粒子の構築に必要なポリペプチドである)をコードするgag、pol及びenv遺伝子が配置される。レンチウイルスは、組み込まれたプロウイルスのRNA転写産物の、感染した標的細胞の核から細胞質への効率的な輸送を可能にする追加の特徴、例えば、HIVにおけるrev及びRRE配列を有する。
【0110】
プロウイルスでは、これらの遺伝子の両端にLTRと呼ばれる領域が隣接している。LTRは、プロウイルスの組み込み及び転写を担っている。LTRは、エンハンサー-プロモーター配列としても機能し、ウイルス遺伝子の発現を制御することができる。
【0111】
LTR自体は、U3、R及びU5の3つの要素に分けることができる同一の配列である。U3は、RNAの3'末端に固有の配列に由来する。Rは、RNAの両端で繰り返される配列に由来する。U5は、RNAの5'末端に固有の配列に由来する。3つの要素のサイズは、異なるレトロウイルスの間で大きく異なり得る。
【0112】
欠損のあるレトロウイルスベクターゲノムでは、gag、pol及びenvは存在しないか、又は機能的でないことがあり得る。
【0113】
典型的なレトロウイルスベクターでは、複製に必須の1つ以上のタンパク質コード領域の少なくとも一部は、ウイルスから除去されてもよい。これにより、ウイルスベクターは複製欠損になる。ウイルスゲノムの部分はまた、標的宿主細胞に形質導入する、及び/又はそのゲノムを宿主ゲノムに組み込むことができる候補改変性部分を含むベクターを作製するために、ベクターゲノム中の調節制御領域及びレポーター部分に作動可能に連結された候補改変性部分をコードするライブラリーによって置き換えられてもよい。
【0114】
レンチウイルスベクターは、レトロウイルスベクターのより大きな群の一部である。レンチウイルスの詳細なリストは、Coffin, J.M. et al. (1997) Retroviruses, Cold Spring Harbour Laboratory Press, 758-63に見出すことができる。簡単に言えば、レンチウイルスは、霊長類群及び非霊長類群に分けることができる。霊長類レンチウイルスの例としては、以下に限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)の病原体); 及びサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。非霊長類レンチウイルスの例としては、プロトタイプ「遅発性ウイルス」ビスナ/マエディウイルス(VMV)、及び関連するヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、並びにより最近記載されたネコ免疫不全ウイルス(FIV)及びウシ免疫不全ウイルス(BIV)が挙げられる。
【0115】
レンチウイルスファミリーは、レンチウイルスが分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染する能力を有する点で、レトロウイルスとは異なる(Lewis, P et al. (1992) EMBO J. 11: 3053-8; Lewis, P.F. et al. (1994) J. Virol. 68: 510-6)。対照的に、MLVなどの他のレトロウイルスは、例えば筋肉、脳、肺及び肝臓組織を構成する細胞などの、非分裂細胞又はゆっくりと分裂する細胞に感染することができない。
【0116】
レンチウイルスベクターは、本明細書で使用される場合、レンチウイルスから導くことができる少なくとも1つの構成部分を含むベクターである。好ましくは、その構成部分は、ベクターが細胞に感染し、遺伝子を発現し、又は複製される生物学的機構に関与している。
【0117】
レンチウイルスベクターは、「霊長類」ベクターであってもよい。レンチウイルスベクターは、「非霊長類」ベクターであってもよい(すなわち、霊長類、特にヒトに主に感染しないウイルスに由来してもよい)。非霊長類レンチウイルスの例は、霊長類に天然に感染しないレンチウイルス科(the family of lentiviridae)の任意のメンバーであってもよい。
【0118】
レンチウイルスベースのベクターの例として、HIV-1及びHIV-2ベースのベクターが以下に記載される。
【0119】
HIV-1ベクターは、単純レトロウイルスにも見出されるシス作用要素を含有する。gagオープンリーディングフレームに及ぶ配列は、HIV-1のパッケージングにとって重要であることが示されている。したがって、HIV-1ベクターは、しばしば、翻訳開始コドンが変異しているgagの関連部分を含有する。さらに、ほとんどのHIV-1ベクターは、RREを含むenv遺伝子の一部も含有する。RevはRREに結合し、核から細胞質への完全長又は単一スプライシングされたmRNAの輸送を可能にする。Rev及び/又はRREの非存在下では、完全長HIV-1 RNAが核に蓄積する。あるいは、メイソン・ファイザー(Mason-Pfizer)サルウイルスなどの特定の単純レトロウイルスからの構成的輸送要素を使用して、Rev及びRREの要件を緩和することができる。HIV-1 LTRプロモーターからの効率的な転写は、ウイルスタンパク質Tatを必要とする。
【0120】
ほとんどのHIV-2ベースのベクターは、HIV-1ベクターと構造的に非常によく類似している。HIV-1ベースのベクターと同様に、HIV-2ベクターも、完全長又は単一スプライシングされたウイルスRNAの効率的な輸送のためにRREを必要とする。
【0121】
1つの系において、ベクター及びヘルパー構築物は2つの異なるウイルスに由来し、ヌクレオチドの相同性が低減すると、組換えの確率が減少し得る。霊長類レンチウイルスに基づくベクターに加えて、FIVに基づくベクターも、病原性HIV-1ゲノムに由来するベクターの代替として開発されている。これらのベクターの構造も、HIV-1ベースのベクターと類似している。
【0122】
好ましくは、本発明に使用されるウイルスベクターは、最小のウイルスゲノムを有する。
【0123】
「最小のウイルスゲノム」によって、そのウイルスベクターは、標的宿主細胞へ目的ヌクレオチド配列を感染、形質導入及び送達するのに必要な機能性を提供するために非必須要素を除去し、必須要素を保持するように操作されていることが理解されるべきである。この戦略のさらなる詳細は、WO1998/017815に見出すことができる。
【0124】
好ましくは、宿主細胞/パッケージング細胞内でウイルスゲノムを産生するために使用されるプラスミドベクターは、標的細胞に感染することができるが、最終的な標的細胞内で感染性ウイルス粒子を産生するための独立した複製は不可能であるウイルス粒子への、パッケージング成分の存在下でのRNAゲノムのパッケージングを可能にするのに十分なレンチウイルス遺伝情報を有する。好ましくは、ベクターは、機能的なgag-pol及び/若しくはenv遺伝子並びに/又は複製に必須の他の遺伝子を欠く。
【0125】
しかし、宿主細胞/パッケージング細胞内でウイルスゲノムを産生するために使用されるプラスミドベクターはまた、宿主細胞/パッケージング細胞中のゲノムの転写を指示するためにレンチウイルスゲノムに作動可能に連結された転写調節制御配列を含む。これらの調節配列は、転写されるウイルス配列に関連する天然配列(すなわち、5'U3領域)であってもよく、又はそれらは、別のウイルスプロモーター(例えば、CMVプロモーター)などの異種プロモーターであってもよい。
【0126】
ベクターは、ウイルスエンハンサー及びプロモーター配列が欠失した自己不活性化(SIN)ベクターであってもよい。SINベクターは、野生型ベクターと同様の効力で、作製され、インビボで非分裂細胞に形質導入することができる。SINプロウイルスにおける長鎖末端反復(LTR)の転写不活性化は、複製可能なウイルスによる動員(mobilisation)を防止するべきである。これはまた、LTRの任意のシス作用効果を排除することによって、内部プロモーターからの遺伝子の調節された発現を可能にするべきである。
【0127】
ベクターは、組み込み欠損であってもよい。組み込み欠損レンチウイルスベクター(IDLV)は、例えば、触媒的に不活性なインテグラーゼ(例えば、触媒部位にD64V変異を有するHIVインテグラーゼ; Naldini, L. et al. (1996) Science 272: 263-7; Naldini, L. et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 11382-8; Leavitt, A.D. et al. (1996) J. Virol. 70: 721-8)を有するベクターをパッケージングすることによって、又はベクターLTRからの必須のatt配列を改変又は欠失させることによって(Nightingale, S.J. et al. (2006) Mol. Ther. 13: 1121-32)、又は上記の組み合わせによって、製造することができる。
【0128】
HIV由来のベクター
本発明に使用するためのHIV由来のベクターは、HIV株に関して特に限定されない。HIV株の配列の多数の例は、HIV配列データベース(http://www.hiv.lanl.gov/content/index)に見出すことができる。
【0129】
単純ヘルペスウイルス(HSV)由来のベクター
単純ヘルペスウイルス(HSV)は、ニューロンに天然に感染する、エンベロープ化二本鎖DNAウイルスである。HSVは、外来DNAの大きなセクションを収容することができ、これにより、それはベクター系として魅力的なものとなり、ニューロンへの遺伝子送達用のベクターとして用いられている。
【0130】
治療処置におけるHSVの使用は、溶解サイクルを確立できないように、株を弱毒化することを必要とする。特に、HSVベクターをヒトにおける遺伝子療法のために使用しようとする場合、NOIは、好ましくは、必須遺伝子に挿入される。ベクターウイルスが野生型ウイルスに遭遇した場合、野生型ウイルスへの異種遺伝子の導入が組換えによって起こり得るため、これは必要である。しかし、NOIが必須遺伝子に挿入される限り、組換え導入は、レシピエントウイルスにおいて必須遺伝子も欠失させ、複製可能な野生型ウイルス集団への異種遺伝子の「逃亡」を防止するであろう。
【0131】
ワクシニアウイルス由来のベクター
ワクシニアウイルスは、約190kbの線状の二本鎖DNAゲノムを有する大きなエンベロープウイルスである。ワクシニアウイルスは、最大約25kbの外来DNAを収容することができ、これにより、それは、大きな遺伝子の送達にも有用になる。
【0132】
遺伝子療法用途に適したいくつかの弱毒化ワクシニアウイルス株、例えば、MVA及びNYVAC株が当技術分野で公知である。
【0133】
ウイルス粒子産生
一態様では、本発明は、エンベロープウイルス粒子を産生するための、本発明のエンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞の使用を提供する。
【0134】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、それぞれ、10、5、4、3、2又は1個未満の表面に露出したCD47分子を含む。
【0135】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、それぞれ、10個未満の表面に露出したCD47分子を含む。一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、それぞれ、5個未満の表面に露出したCD47分子を含む。一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、それぞれ、2個未満の表面に露出したCD47分子を含む。
【0136】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、表面に露出したCD47分子を含まない。
【0137】
一実施形態では、エンベロープウイルスベクター粒子は、遺伝子操作の非存在下で(しかしそれ以外は実質的に同一の条件下で)エンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞によって産生された粒子上に提示される表面に露出したCD47分子の数の約50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%未満を含む。別の実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、表面に露出したCD47分子を実質的に欠いている。
【0138】
一実施形態では、エンベロープウイルスベクター粒子は、遺伝子操作の非存在下で(しかしそれ以外は実質的に同一の条件下で)エンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞によって産生された粒子上に提示される表面に露出したMHC-I分子の数の約50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%未満を含む。別の実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、表面に露出したMHC-I分子を実質的に欠いている。
【0139】
ウイルス粒子上の表面に露出したタンパク質の数を定量化する方法は、当技術分野で公知である。適切な方法としては、電子顕微鏡法が挙げられる。
【0140】
例えば、ウイルス粒子のサンプルを、電子顕微鏡グリッド上に吸着させ(例えば、実施例に開示されるように)、パラホルムアルデヒドを使用してその上に固定してもよい。次いで、サンプルを最初に目的タンパク質(例えば、CD47)に特異的な一次抗体と共にインキュベートし、次いで、一次抗体に特異的な金粒子コンジュゲート二次抗体と共にインキュベートし、その後、パラホルムアルデヒドを使用したさらなる固定ステップを行ってもよい。次いで、サンプルを電子顕微鏡を使用して可視化し、金粒子をカウントして、表面に露出した目的タンパク質の数の定量化を可能にしてもよい。
【0141】
エンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞は、ウイルスゲノムを含んでもよい。
【0142】
ウイルスゲノムは、ウイルス粒子に組み込まれる核酸配列である。ウイルスゲノムは、目的ヌクレオチド(NOI)を含むように操作されてもよい。
【0143】
したがって、ウイルス粒子の産生に使用するために、エンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞は、ウイルスゲノムを含み、エンベロープウイルス粒子の産生に適した条件下で後で培養してもよい。
【0144】
「エンベロープウイルス粒子パッケージング細胞」は、例えば、ウイルス粒子構築に必要ないくつか又は全ての構造タンパク質をコードする核酸配列を含んでもよい。
【0145】
エンベロープウイルス粒子の産生に必要な要素のいくつかのみを含む細胞は、各追加の必要な要素の一過的トランスフェクション、形質導入、又は安定した組み込みのための後続のステップを通じて、ウイルス粒子プロデューサー細胞株の作製における中間試薬として有用である。これらの中間試薬は、本発明のパッケージング細胞株に包含される。細胞の表面上のCD47の発現が減少している、エンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞株を作製するために後で使用されるべき親細胞は、本発明の別の実施形態を表す。
【0146】
感染性エンベロープウイルス粒子の産生に必要な成分をコードする核酸配列は、パッケージング又はプロデューサー細胞内に一過的にトランスフェクト若しくは形質導入されるか、又は安定して維持されてもよい(例えば、細胞ゲノムに安定して組み込まれるか、又はエピソームで維持される)。あるいは、一過的トランスフェクション又は形質導入と安定した維持との組み合わせを使用して、核酸配列を細胞に導入してもよい。
【0147】
したがって、本発明の細胞を、ウイルスゲノムを含むエンベロープウイルス粒子の産生を可能にするために、ウイルスゲノムを含む核酸で、トランスフェクト若しくは形質導入してもよく、又は標的化組み込みによって当該核酸を安定して組み込むように操作してもよい。
【0148】
感染性エンベロープウイルス粒子の産生に必要な別個の成分をコードする核酸配列は、別個の発現カセットとして細胞に提供してもよい。
【0149】
一実施形態では、本発明のパッケージング細胞は、Gag、Gag/Pol、及び/若しくはEnvタンパク質、又はそれらの機能的代替物をコードする核酸配列を含む。細胞は、場合により、レトロウイルスベクター粒子構築に必要とされ得る追加のタンパク質、例えば、Revタンパク質をコードする核酸配列を含んでもよい。
【0150】
エンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞は、エンベロープウイルス粒子を産生又はパッケージングすることができる任意の適切な細胞型のものであり得る。細胞は、好ましくは哺乳動物細胞、特にヒト細胞である。例えば、エンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞は、親HEK-293細胞に由来してもよい。
【0151】
目的ヌクレオチド
本発明のウイルス粒子は、目的ヌクレオチド(NOI)を含んでもよい。
【0152】
好ましくは、目的ヌクレオチドは、治療効果を生じさせる。
【0153】
適切なNOIとしては、以下に限定されないが、酵素、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、抗体、抗酸化分子、操作された免疫グロブリン様分子、一本鎖抗体、融合タンパク質、免疫共刺激分子、免疫調節分子、アンチセンスRNA、マイクロRNA、shRNA、siRNA、リボザイム、miRNA標的配列、標的タンパク質のトランスドメイン陰性変異体、毒素、条件付き毒素(conditional toxin)、抗原、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、腫瘍抑制タンパク質、成長因子、転写因子、膜タンパク質、表面受容体、抗がん分子、血管作用性タンパク質及びペプチド、抗ウイルスタンパク質及びリボザイム、並びにそれらの誘導体(例えば、関連するレポーター群を有する誘導体)をコードする配列が挙げられる。NOIはまた、プロドラッグ活性化酵素をコードしてもよい。
【0154】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、サイトカインをコードする導入遺伝子を含む。一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、インターフェロン、好ましくはインターフェロン-αをコードする導入遺伝子を含む。本発明は、転移などのがんの治療又は予防のために、肝臓マクロファージへの1つ以上のサイトカインの送達を可能にし得る。本発明は、肝臓、例えば、肝臓マクロファージへのインターフェロン(例えば、インターフェロン-α)の送達を可能にし得る。
【0155】
NOIのさらなる例は、血友病の遺伝子療法のために使用し得る凝固第VIII因子若しくは第IX因子又はそれらの操作された誘導体、又はサラセミア/鎌状赤血球症の遺伝子療法のために使用し得るベータ-グロビン鎖である。
【0156】
ウイルスベクタータンパク質導入によって導入することができる適切なタンパク質としては、以下に限定されないが、ヌクレアーゼ、インテグラーゼ、トランスポザーゼ、酵素、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、抗体、抗酸化分子、操作された免疫グロブリン様分子、一本鎖抗体、融合タンパク質、免疫共刺激分子、免疫調節分子、標的タンパク質のトランスドメイン陰性変異体、毒素、条件付き毒素、抗原、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、腫瘍抑制タンパク質、成長因子、転写因子、膜タンパク質、表面受容体、抗がん分子、血管作用性タンパク質及びペプチド、抗ウイルスタンパク質及びリボザイム、並びにそれらの誘導体(例えば、関連するレポーター群を有する誘導体)が挙げられる。
【0157】
医薬組成物
本発明のエンベロープウイルス粒子又は形質導入細胞は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と共に、対象への投与のために製剤化してもよい。適切な担体及び希釈剤は、等張生理食塩水、例えば、リン酸緩衝生理食塩水を含み、潜在的にヒト血清アルブミンを含有する。
【0158】
細胞療法製品の取り扱いは、好ましくは、細胞療法に関するFACT-JACIE国際標準に従って実施される。
【0159】
遺伝子療法
一態様では、本発明は、療法に使用するための、例えば遺伝子療法に使用するための、エンベロープウイルス粒子及び形質導入細胞を提供する。エンベロープウイルス粒子は、エンベロープウイルスベクター粒子と呼ばれてもよい。
【0160】
「形質導入細胞」又は「エンベロープウイルスベクター粒子によって形質導入された」細胞によって、エンベロープウイルスベクター粒子によって運ばれる核酸(例えば、NOIを含む)が、細胞に導入されていることが理解されるべきである。形質導入されるべき細胞は、好ましくは標的細胞である。
【0161】
本発明のエンベロープウイルスベクター粒子は、対象に直接(例えば、全身的に)投与してもよい。ウイルスベクター粒子は、対象における特定の細胞に感染を標的化するように操作されてもよい。ウイルスベクター粒子はまた、対象における特定の細胞にNOIの発現を標的化するように操作されてもよい。これは、組織特異的プロモーター、又は特定の細胞におけるNOI発現の抑制を促進する核酸配列を使用して達成してもよい。
【0162】
また、エンベロープウイルスベクター粒子を使用して、エクスビボ遺伝子療法アプローチの一部として、対象の体から取り出された細胞に形質導入してもよい。
【0163】
形質導入細胞は、自家細胞移植処置の一部として、又は同種異系細胞移植処置の一部として投与してもよい。
【0164】
「自家細胞移植処置」によって、細胞の開始集団(これは、次いで、本発明のエンベロープウイルスベクター粒子で形質導入される)が、形質導入された細胞集団が投与される対象と同じ対象から得られることが理解されるべきである。自家移植処置は、免疫学的不適合性に関連する問題を回避し、遺伝的に適合性のあるドナーの利用可能性に関係なく対象に利用可能であるため、有利である。
【0165】
「同種異系細胞移植処置」によって、細胞の開始集団(これは、次いで、本発明のエンベロープウイルスベクター粒子で形質導入される)が、形質導入された細胞集団が投与される対象とは異なる対象から得られることが理解されるべきである。好ましくは、ドナーは、免疫学的不適合性のリスクを最小限にするために、細胞が投与される対象と遺伝的に適合性がある。
【0166】
エンベロープウイルスベクター粒子又は形質導入細胞の適切な用量は、治療的及び/又は予防的に有効であるようなものである。投与されるべき用量は、処置されるべき対象及び状態に依存してもよく、当業者によって容易に決定することができる。
【0167】
本発明のウイルスベクター粒子は、表面に露出したCD47の減少したレベルを示さないウイルス粒子よりも高い効率で、専門食細胞及び抗原提示細胞(APC)に形質導入することができる。
【0168】
本発明のウイルスベクター粒子を使用して、食細胞及びAPCなどの細胞に導入遺伝子を導入してもよい。ウイルスベクター粒子は、例えば、がん免疫療法又は直接的な抗腫瘍効果によるがんの治療のために使用してもよい。さらに、ウイルスベクター粒子を使用して、感染症、免疫介在性疾患又は自己免疫疾患を治療してもよい。これらの効果は、導入遺伝子をAPCに導入することによって達成してもよい。
【0169】
本発明のウイルスベクター粒子を使用して、免疫化(ワクチン接種)又は免疫調節目的で抗原をAPCに導入してもよい。
【0170】
本発明のウイルスベクター粒子はまた、マクロファージを標的化するために使用してもよい。一態様では、本発明は、肝臓マクロファージに形質導入するための、本発明のエンベロープウイルス粒子の使用を提供する。好ましくは、エンベロープウイルス粒子は、サイトカインをコードする導入遺伝子を含む。
【0171】
別の態様では、本発明は、がん、好ましくは肝臓がん(例えば、肝臓転移)の治療又は予防に使用するための、本発明のエンベロープウイルス粒子又は形質導入細胞を提供する。好ましくは、エンベロープウイルス粒子は、サイトカインをコードする導入遺伝子を含む。
【0172】
本発明のエンベロープウイルスベクター粒子又は形質導入細胞は、遺伝性疾患、例えば、血漿タンパク質欠損、代謝障害、リソソーム蓄積障害、ムコ多糖症、免疫不全、血液学的障害、例えば以下に限定されないが、血友病、アデノシンデアミナーゼ重症複合免疫不全、ウィスコット・アルドリッチ症候群、異染性白質ジストロフィー、グロボイド白質ジストロフィー、β-サラセミア及び慢性肉芽腫性疾患の治療において有用であり得る。
【0173】
本発明のエンベロープウイルスベクター粒子又は形質導入細胞は、WO1998/005635に列挙される障害の治療において有用であり得る。参照を容易にするために、そのリストの一部をここに提供する: がん、炎症又は炎症性疾患、皮膚科学的障害、発熱、心血管作用、出血、凝固及び急性期応答、悪液質、食欲不振、急性感染症、HIV感染症、ショック状態、移植片対宿主反応、自己免疫疾患、再灌流傷害、髄膜炎、片頭痛及びアスピリン依存性抗血栓症; 腫瘍の増殖、侵襲及び広がり、血管形成、転移、悪性腹水及び悪性胸膜滲出; 脳虚血、虚血性心疾患、骨関節炎、関節リウマチ、骨粗鬆症、喘息、多発性硬化症、神経変性、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、血管炎、クローン病及び潰瘍性大腸炎; 歯周炎、歯肉炎; 乾癬、アトピー性皮膚炎、慢性潰瘍、表皮水疱症; 角膜潰瘍形成、網膜症及び外科的創傷治癒; 鼻炎、アレルギー性結膜炎、湿疹、アナフィラキシー; 再狭窄、鬱血性心不全、子宮内膜症、アテローム性動脈硬化症又はエンドスクレローシス(endosclerosis)。
【0174】
さらに、又は代替として、本発明のエンベロープウイルスベクター粒子又は形質導入細胞は、WO1998/007859に列挙される障害の治療において有用であり得る。参照を容易にするために、そのリストの一部をここに提供する: サイトカイン及び細胞増殖/分化活性; 免疫抑制剤又は免疫刺激剤活性(例えば、免疫不全、例えば、ヒト免疫不全ウイルスによる感染症の治療; リンパ球増殖の調節; がん及び多くの自己免疫疾患の治療、及び移植拒絶の防止、又は腫瘍免疫の誘導のため); 造血の調節、例えば、骨髄性又はリンパ性疾患の治療; 骨、軟骨、腱、靭帯及び神経組織の増殖の促進、例えば、創傷の治癒、火傷、潰瘍及び歯周疾患及び神経変性の治療のため; 卵胞刺激ホルモンの阻害又は活性化(生殖力の調節); 化学走性/化学運動性活性(例えば、傷害又は感染の部位への特定の細胞型の動員のため); 止血及び血栓溶解活性(例えば、血友病及び脳卒中の治療のため); 抗炎症活性(例えば、敗血症性ショック又はクローン病の治療のため); 抗微生物剤として; 例えば代謝又は挙動の調節剤; 鎮痛剤として; 特定の欠損障害の治療; 例えば乾癬の治療において(ヒト又は獣医医療において)。
【0175】
さらに、又は代替として、本発明のエンベロープウイルスベクター粒子又は形質導入細胞は、WO1998/009985に列挙される障害の治療において有用であり得る。参照を容易にするために、そのリストの一部をここに提供する: マクロファージ阻害及び/又はT細胞阻害活性、及びしたがって、抗炎症活性; 抗免疫活性、すなわち、細胞性及び/又は液性免疫応答に対する阻害作用、例えば、炎症に関連しない応答; T細胞において上方制御されたfas受容体発現に加えて、細胞外マトリックス成分及びフィブロネクチンに接着するマクロファージ及びT細胞の能力の阻害; 望ましくない免疫応答及び炎症、例えば関節炎、例えば関節リウマチ、過敏症に関連する炎症、アレルギー反応、喘息、全身性エリテマトーデス、コラーゲン疾患及び他の自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化症に関連する炎症、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化性心疾患、再灌流傷害、心拍停止、心筋梗塞、血管炎症性障害、呼吸窮迫症候群又は他の心肺疾患、消化性潰瘍に関連する炎症、潰瘍性大腸炎及び胃腸管の他の疾患、肝線維症、肝硬変又は他の肝臓疾患、甲状腺炎又は他の腺疾患、糸球体腎炎又は他の腎臓及び泌尿器疾患、耳炎又は他の耳鼻咽喉疾患、皮膚炎又は他の皮膚疾患、歯周疾患又は他の歯の疾患、睾丸炎又は睾丸副睾丸炎、不妊症、睾丸の外傷又は他の免疫に関連する精巣の疾患、胎盤機能不全、胎盤不全症、習慣性流産、子癇、子癇前症並びに他の免疫及び/若しくは炎症に関連する婦人科疾患、後部ブドウ膜炎、中間部ブドウ膜炎、前部ブドウ膜炎、結膜炎、脈絡網膜炎、ブドウ膜網膜炎、視神経炎、眼内炎症、例えば網膜炎又は嚢胞様黄斑浮腫、交感性眼炎、強膜炎、色素性網膜炎、変性眼底疾患の免疫及び炎症性構成要素、眼の外傷の炎症性構成要素、感染により引き起こされる眼の炎症、増殖性硝子体網膜症、急性虚血性視神経障害、過度の瘢痕、例えば緑内障濾過手術後、眼のインプラントに対する免疫及び/又は炎症反応並びに他の免疫及び炎症に関連する眼の疾患、中枢神経系(CNS)又は任意の他の器官の両方において免疫及び/又は炎症の抑制が有益であり得る自己免疫疾患又は状態又は障害に関連する炎症、パーキンソン病、パーキンソン病の治療に由来する合併症及び/又は副作用、AIDSに関連する認知症複合、HIVに関連する脳障害、デビック病、シデナム舞踏病、アルツハイマー病及びCNSの他の変性疾患、状態又は障害、脳卒中の炎症性構成要素、ポリオ後症候群、精神障害の免疫及び炎症性構成要素、脊髄炎、脳炎、亜急性硬化性全脳炎、脳脊髄炎、急性神経障害、亜急性神経障害、慢性神経障害、ギラン・バレー症候群、シデナム舞踏病、重症筋無力症、偽脳腫瘍、ダウン症候群、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、CNS圧迫又はCNS外傷又はCNSの感染症の炎症性構成要素、筋萎縮症及びジストロフィーの炎症性構成要素、並びに中枢及び末梢神経系の免疫及び炎症に関連する疾患、状態又は障害、外傷後の炎症、敗血症性ショック、感染症、手術の炎症性合併症又は副作用、骨髄移植又は他の移植の合併症及び/又は副作用、例えばウイルスキャリアによる感染に起因する、遺伝子療法の炎症性及び/又は免疫合併症及び副作用、又はAIDSに関連する炎症の阻害、液性及び/又は細胞性免疫応答の抑制又は阻害のため、単球又はリンパ球の量を低減することによる単球又は白血球増殖性疾患、例えば白血病の治療又は緩和のため、角膜、骨髄、器官、レンズ、ペースメーカー、天然又は人工の皮膚組織などの、天然又は人工の細胞、組織及び器官の移植の場合における移植片拒絶の予防及び/又は治療のため。
【0176】
治療方法
本発明の文脈において、予防への言及は、より一般的に予防的処置に関連しているが、本明細書における治療への全ての言及は、治癒的、緩和的及び予防的処置を含むことが理解されるべきである。哺乳動物、特にヒトの治療が好ましい。ヒト治療及び獣医治療の両方が、本発明の範囲内である。
【0177】
ワクチン
一態様では、本発明は、ワクチンとして使用するための、本発明のエンベロープウイルス粒子を提供する。好ましくは、エンベロープウイルス粒子は、感染性ではなく、例えば、細胞に感染することができない。好ましくは、エンベロープウイルス粒子は、複製することができない。
【0178】
弱毒化ウイルスは、ウイルスの天然の毒性形態による感染に対する免疫を提供するためのワクチンとして当技術分野で一般に使用される。
【0179】
ワクチンとして使用するための弱毒化ウイルスは、上記のように本発明のプロデューサー細胞を使用して産生してもよく、好ましくは、NOIを省いてもよい。本発明のプロデューサー細胞は、ワクチンとして使用するための表面に露出したCD47分子の減少した数を示すエンベロープウイルス粒子の産生を可能にする。ワクチンとして使用するためのエンベロープウイルスベクター粒子は、表面に露出したCD47分子を実質的に欠いていてもよい。
【0180】
一実施形態では、ワクチンとして使用するためのエンベロープウイルス粒子は、それぞれ、10、5、4、3、2又は1個未満の表面に露出したCD47分子を含む。
【0181】
一実施形態では、ワクチンとして使用するためのエンベロープウイルス粒子は、それぞれ、10個未満の表面に露出したCD47分子を含む。一実施形態では、ワクチンとして使用するためのエンベロープウイルス粒子は、それぞれ、5個未満の表面に露出したCD47分子を含む。一実施形態では、ワクチンとして使用するためのエンベロープウイルス粒子は、それぞれ、2個未満の表面に露出したCD47分子を含む。
【0182】
一実施形態では、ワクチンとして使用するためのエンベロープウイルス粒子は、それぞれ、遺伝子操作の非存在下で(しかしそれ以外は実質的に同一の条件下で)エンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞によって産生された粒子上に提示される表面に露出したCD47分子の数の約50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%未満を含む。
【0183】
一実施形態では、ワクチンとして使用するためのエンベロープウイルス粒子は、表面に露出したCD47分子を含まない。
【0184】
本発明のプロデューサー細胞はまた、ワクチンとして使用するための表面に露出したMHC-I分子の減少した数を示すエンベロープウイルス粒子の産生を可能にし得る。ワクチンとして使用するためのエンベロープウイルスベクター粒子は、表面に露出したMHC-I分子を実質的に欠いていてもよい。
【0185】
表面に露出したMHC-I分子の数の減少又は欠如は、ワクチンとして使用するためのウイルスにおいて有利であるが、それはMHC-Iに結合する抗体によってそのウイルスが中和される可能性が低いためである。
【0186】
さらに、免疫応答は、ウイルス抗原に対してではなく同種異系MHC-Iに対して反応する可能性があり、したがって、同種異系MHC-I分子を実質的に欠いているウイルス粒子は、防御免疫をより効果的に誘導することにより、より有効なワクチンとなる可能性がある。
【0187】
ワクチンとして使用するためのウイルスは、それらの表面上又は感染細胞内で追加のタンパク質を発現するようにさらに操作されてもよい。このようなタンパク質は、抗体又は細胞性免疫を生成するための抗原として機能する可能性があり、これは、体の免疫防御をさらに高める可能性がある。
【0188】
一実施形態では、エンベロープウイルス粒子は、1つ以上の抗原をさらに含む。1つ以上の抗原は、例えば、ウイルス、細菌、真菌、原生動物及び/又は寄生生物に由来してもよい。
【0189】
一実施形態では、抗原は、エボラ、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、デルタ型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、G型肝炎ウイルス、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)(例えば、ポリオウイルス)、カリシウイルス科(Caliciviridae)、トガウイルス科(Togaviridae)(例えば、風疹ウイルス及びデングウイルス)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、コロナウイルス科(Coronaviridae)、レオウイルス科(Reoviridae)、ビルナウイルス科(Birnaviridae)、ラブドウイルス科(Rhabodoviridae)(例えば、狂犬病ウイルス)、フィロウイルス科(Filoviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)(例えば、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス及び呼吸器合胞体ウイルス)、オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)(例えば、A型、B型及びC型インフルエンザウイルス)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、アレナウイルス科(Arenaviridae)及びレトロウイルス科(Retroviradae)(例えば、HIV-1、HIV-2及びSIV)からなる群から選択されるウイルスに由来する。
【0190】
一実施形態では、抗原は、ジフテリア、破傷風、百日咳又は髄膜炎の原因となる細菌に由来する。
【0191】
一実施形態では、抗原は、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、破傷風菌(Clostridium tetani)、百日咳菌(Bordetella pertusis)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、例えば、髄膜炎菌血清型A、B、C、Y及びWI35(MenA、B、C、Y及びWI35)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)B型(Hib)及びヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)からなる群から選択される細菌に由来する。
【0192】
一実施形態では、抗原は、マラリア又はライム病の原因となる寄生生物に由来する。
【0193】
当業者は、開示された本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された本発明の全ての特徴を組み合わせることができることを理解する。
【0194】
本発明の好ましい特徴及び実施形態を、非限定的な実施例によってここに記載する。
【0195】
本発明の実施は、他に示されない限り、当業者の能力の範囲内である、化学、生化学、分子生物学、微生物学及び免疫学の従来の技術を用いる。このような技術は、文献に説明されている。例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, F.M. et al. (1995 and periodic supplements) Current Protocols in Molecular Biology, Ch. 9, 13 and 16, John Wiley & Sons; Roe, B., Crabtree, J. and Kahn, A. (1996) DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons; Polak, J.M. and McGee, J.O'D. (1990) In Situ Hybridization: Principles and Practice, Oxford University Press; Gait, M.J. (1984) Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; 及びLilley, D.M. and Dahlberg, J.E. (1992) Methods in Enzymology: DNA Structures Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA, Academic Pressを参照のこと。これらの一般的なテキストのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0196】
実施例1
結果
プロデューサー細胞におけるCD47の破壊は、レンチウイルス(LV)産生に影響を与えない
CD47は、その受容体であるSIRPα受容体との種特異的な相互作用を介した、食作用の公知の阻害剤である。表面上にCD47分子を欠いているレンチウイルス(LV)(CD47フリーLV)を得るために、本発明者らは、Cas9発現プラスミドを、3つの異なるgRNAと共に一過的にトランスフェクトすることによって、プロデューサー細胞においてCD47遺伝子を遺伝的に不活性化し、FACS選別して、CD47陰性のプロデューサー細胞を精製した(
図1a~b)。CD47陰性細胞は、CD47陽性の対応物と同等の感染性を有するLVを産生した(
図1c)。
【0197】
CD47フリーLVは、初代ヒト食細胞の増強した形質導入を示す
抗CD47抗体で免疫染色されたLV粒子の電子顕微鏡法によって示されるように、CD47分子は、プロデューサー細胞膜上のCD47発現に比例したレベルでLV粒子上に組み込まれる(
図2a、b)。したがって、CD47陰性細胞によって産生されたLVは、CD47フリーLVである。重要なことに、LV粒子上のCD47含有量は、エンベロープVSV.Gタンパク質組み込みに影響を与えなかった(
図2c)。CD47フリーLV及び対照LVの一致した投入量を、初代ヒトマクロファージに暴露した場合、本発明らは、ヒトマクロファージへの、後者よりも前者による有意により高い形質導入を見出したが、参照293T細胞の形質導入は変化しないままであった(
図2d)。これらのデータは、LV粒子上のCD47のレベルの変化が、ヒトマクロファージによるそれらの取り込みに影響を与えることを示す。本発明者らは、樹状細胞分化プロトコールの2日目にLV-GFPでヒト初代単球に形質導入し、分化の終わりにGFP発現を測定し、対照LVよりもCD47フリーLVによってより高い遺伝子導入効率を見出した(
図2e)。さらに、本発明者らは、pp60Src(出芽HIVエンベロープに効率的に組み込まれることが以前に示されたキメラタンパク質)の膜標的化ドメインに融合した緑色蛍光タンパク質(GFP)を保有する蛍光LVを作製した。これらの蛍光LV粒子は、ImageStream(LV侵入のハイスループット定量化を可能にするフローサイトメトリー及び画像化複合システム)を使用して、初代ヒトマクロファージにおいて侵入後に可視化することができる。このアプローチを使用して、本発明者らは、対照LVと比較して、CD47フリーLVに対する食作用の増加を確認した(
図2f)。
【0198】
CD47フリーLVは、インビボで投与した場合、肝臓及び脾臓の専門食細胞による取り込みの増加を示す
非肥満糖尿病(NOD)マウスのSIRPαは、ヒトCD47に対して高い親和性を有することが示されている。そこで、本発明者らは、NOD及びC57BL/6血友病BマウスへのLV投与の結果を比較した。本発明者らは、NODマウス対C57BL/6マウスで、選別された肝細胞において1細胞あたり4倍高いLVコピー(ベクターコピー数、VCN)、並びに肝臓マクロファージ及び脾臓においてそれぞれ30倍及び5倍低いVCNを見出した(
図3a)。興味深いことに、ウイルス核酸の公知のセンサーであり、LV粒子への暴露後にI型インターフェロン(IFN)を放出することが報告されているNOD形質細胞様樹状細胞(pDC)においても、LVコピーは>10倍低かった。肝細胞型間での生体内分布におけるこれらの系統間の差異は、主にNOD SIRP-αとLV粒子上のヒトCD47分子との間の相互作用に依存していたが、これは、本発明者らが同じ用量のCD47フリーLVを投与した場合にそれらがほぼ完全に無効化されたことから言える(
図3b)。CD47フリーLVは、NODマウスにおいてCD47を有する対応物よりも高い効率で、肝臓マクロファージ、肝臓pDC及び脾臓に形質導入した(
図3c)。
【0199】
CD47フリーLVの投与は、食細胞関連炎症性サイトカインの増加を引き起こした
CD47の表面提示はまた、静脈内LV投与後の急性サイトカイン及びケモカイン放出に影響を与えた。具体的には、インターロイキン-6(IL6)、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、マクロファージ炎症性タンパク質1(MIP-1α)、MIP-1β、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(CXCL1)及び顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は、LV投与の3時間後に、未処置NODマウスと比較してLV処置で顕著に増加した。興味深いことに、CD47フリーLVをNODマウスに投与すると、これらのマクロファージ関連及び炎症誘発性サイトカインにおける最も強い増加が引き起こされた(
図4a~l)。これらのデータは、LV粒子のCD47含有量による、専門食細胞の取り込みの観察された変化と一致している。
【0200】
生体内画像化は、CD47が、クッパー細胞(KC)によるLV食作用の速度及び程度を調節することを示す
肝臓におけるLV食作用の動態を静脈内投与時にリアルタイムで調査するために、本発明者らは、生体内2光子顕微鏡法(IV2PM)を実施した。LVを可視化するために、本発明者らは、本明細書に記載されるように、対照293T、CD47hi 293T又はCD47陰性293T細胞で産生された蛍光LVを使用した。LV取り込みは、麻酔をかけたマウスの外科的に露出させた肝臓でライブで記録した。C57BL/6マウスにGFP標識LVを投与すると、クッパー細胞(KC)(LV投与前に抗F4/80抗体注入によって可視化)による迅速かつ広範な取り込みが生じ、クッパー細胞は、投与してから5~10分以内に検査領域で全てLV陽性になった(
図5)。対照的に、NODマウスへ同じLVを投与すると、KCによる取り込みの遅延及び全体的な減少が示された。これは、CD47hi LVが投与された場合、さらに低減され、CD47hiについての記録終了時(LV後40分)でのLV陽性KCの割合は、対照LVと比較して半分にすぎなかった。重要なことに、NODマウスにおけるKCによるCD47フリーLV取り込みの動態及び量は、むしろ非常に速く、C57BL/6マウスに注射された対照LVのものと重なった。LV表面上のCD47の認識及び含有量に応じたKCによるLV取り込みの著しく異なるタイミング及び程度は、インビボで食作用からLVを保護することにおけるこの分子の主要な役割の直接的な証拠を提供する。
【0201】
肝臓へのインターフェロンのLVベースの送達
本発明者らの結果は、インターフェロンアルファ(IFNα)のLVベースの送達が、処置マウスの肝臓においてIFNシグネチャーの活性化を誘導することを示す(
図6)。留意すべきことに、外因性サイトカイン投与に依存するのではなく、上記のインビボ遺伝子療法を利用する理論的根拠は、オフターゲット組織を害さず、概ね生理学的レベルでの局所的で安定した継続的なサイトカイン発現に到達し、したがって、過剰なサイトカイン投与への暴露からの(i)有害事象; (ii)オフターゲット効果; 及び(iii)脱感作のリスクを制限する可能性に基づいている。非ヒト霊長類(NHP)における本発明者らのスケールアップ研究は、安定した頑強な肝臓LV駆動導入遺伝子発現が、重大な急性毒性なしに、肝臓及び脾臓からのほぼ全ての組み込まれたLVの回収を伴って、達成可能であることを示す(Milani et al. (2019) Sci Transl Med)。
【0202】
材料及び方法
プラスミド構築
Cas9及びsgRNA発現プラスミドは、以前に記載された(Amabile, A. et al. (2016) Cell 167: 219-232 e214)。sgRNAを作製するために使用されたCRISPRの配列は、以下のとおりである: CD47 A (CTACTGAAGTATACGTAAAGTGG); B (CTTGTTTAGAGCTCCATCAAAGG); 及びC (ATCGAGCTAAAATATCGTGTTGG)。
【0203】
ベクター産生
研究室グレードのVSV.G偽型第3世代自己不活化(SIN)LVは、293T細胞へのリン酸カルシウム一過的トランスフェクションによって、又はLV安定プロデューサー細胞株によって産生した(Milani et al., EMBO Mol Med 9(11):1558-1573)。以前記載されたように(Milani et al., EMBO Mol Med 9(11):1558-1573)、選択されたLVゲノム導入プラスミド、パッケージングプラスミドpMDLg/pRRE及びpCMV.REV、pMD2.G及びpAdvantageの混合物を含有する溶液で、293T細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの14~16時間後に培地を交換し、培地交換の30時間後に上清を収集した。あるいは、LVプロデューサー細胞がサブコンフルエント状態にあるときに、培養培地をドキシサイクリン(Sigma)1μg/mLを含有する培地と交換することによって、LV産生を誘導し、誘導の3日後に上清を収集した。LV含有上清を、0.22μmフィルター(Millipore)を通して滅菌し、必要な場合、滅菌ポリアロマーチューブ(Beckman)に移し、20,000gで120分間20℃で遠心分離した(Beckman Optima XL-100K超遠心分離機)。LVペレットを、適切な体積のPBSに溶解して、500~1000×濃度にした。
【0204】
LVタイトレーション
LVタイトレーションについて、1×105個の293T細胞に、ポリブレン(8μg/mL)の存在下で連続LV希釈物で形質導入した。LV-GFPについて、形質導入の3~7日後にフローサイトメトリーによって細胞を分析し、形質導入単位293T(TU)/mLとして表される感染力価を、式TU/mL=((%GFP+細胞/100)×100,000×(1/希釈係数))を使用して計算した。他の全てのLVについて、Maxwell 16 Cell DNA Purification Kit(Promega)を使用して、製造業者の説明書に従って、形質導入の14日後にゲノムDNA(gDNA)を抽出した。プライマー(HIV fw: 5'-T ACTGACGCTCTCGCACC-3'; HIV rv: 5'-TCTCGACGCAGGACTCG-3')及びプローブ(FAM 5'-ATCTCTCTCCTTCTAGCCTC-3')(LVのプライマー結合部位領域上に設計)を使用して、100ngの鋳型gDNAから開始する定量的PCR(qPCR)によって、VCNを決定した。ヒトテロメラーゼ遺伝子(Telo fw: 5'-GGCACACGTGGCTTTTCG-3'; Telo rv: 5'-GGTGAACCTCGTAAGTTTATGCAA-3'; Teloプローブ: VIC 5'-TCAGGACGTCGAGTGGACACGGTG-3' TAMRA)又はヒトGAPDH遺伝子(Applied Biosystems HS00483111_cm)上に設計されたプライマー/プローブセットによって、内因性DNAの量を定量化した。VCNは、式=(ng LV/ng内因性DNA)×[標準曲線に使用したサンプルのVCN]によって計算した。サザンブロット及び蛍光インサイチュ(in situ)ハイブリダイゼーション(FISH)によって以前に決定された1つのベクター成分を安定して保有するCEM細胞株を使用することによって、標準曲線を生成した。全ての反応は、Viia7リアルタイムPCRサーマルサイクラー(Applied Biosystems)で二重又は三重で実施した。各qPCR実行は、サザンブロット及びFISH分析によって以前に決定された4つのベクター成分を安定して保有するCEM細胞株を使用することによって生成された内部対照を保有した。TU/mLとして表される感染力価は、式TU/mL=(VCN×100,000×(1/希釈係数)を使用して計算した。LV物理的粒子は、HIV-1 Gag p24抗原免疫捕捉アッセイ(Perkin Elmer)によって、製造業者の説明書に従って測定した。LV特異的感染性は、感染力価と物理的粒子との間の比として計算した。
【0205】
マウス実験
NOD及び野生型C57BL/6マウスは、Charles Riverから購入した。全てのマウスは、特定の病原体のない条件で維持した。ベクター投与は、成体(7~10週齢)のマウスに尾静脈注射によって実施した。毛細管を使用してマウスの眼窩後叢から採血し、血液を0.38%クエン酸ナトリウム緩衝液pH7.4中に収集した。マウスに、トリブロモエタノール(アベルチン)で深く麻酔をかけ、予定された時間にCO2吸入により安楽死させた。全ての動物処置は、施設の動物管理使用委員会によって承認されたプロトコールに従って実施した。
【0206】
肝細胞亜集団の分画及び選別
肝臓を、後続のステップで、12.5mLの以下の溶液を用いて下大静脈を通じて灌流した(2.5mL/分): 1)PBS EDTA(0.5mM)、2)HBSS(ハンクス平衡塩溶液、Gibco)及びHEPES(10mM)、3)HBSS-HEPES 0.03%コラゲナーゼIV(Sigma)。消化された肝臓組織を採取し、70μmセルストレーナー(BD Biosciences)に通過させ、単一細胞懸濁液へと処理した。その後、この懸濁液を3回(30、25及び20 g、室温で3分間)遠心分離して、PC含有ペレットを得た。nPC含有上清を遠心分離し(650 g、7分、室温)、回収した細胞を30/60%パーコール(Percoll)(Sigma)勾配上にロードした(1800 g、室温で20分間)。nPC界面を収集し、2回洗浄した。その後、nPCを以下のモノクローナル抗体と共にインキュベートした: e-fluor 450コンジュゲート抗CD45(30-F11、e-Bioscience)、アロフィコシアニン(APC)コンジュゲート抗CD31(MEC13.3、BD Biosciences)、フィコエリトリン(PE)コンジュゲートF4/80(CI:A3-1、Biorad)、PE-Cy5コンジュゲート抗CD45R/B220(BD Biosciencesから)、PE-Cy7コンジュゲート抗CD11c(N418、e-Bioscience)、精製抗CD16/32(2.4G2、BD Biosciences)。nPC亜集団(LSEC、KC、pDC)を、FACS、MOFLO-DAKO-Beckman-Coulterによって選別した; PC懸濁液混入nPCを、APCコンジュゲート抗CD31/抗CD45カクテルによって標識された細胞を除くFACSによって除去し、こうして、選別された肝細胞(Hep)を得た。
【0207】
細胞培養及びインビトロ実験
293T及びLVプロデューサー細胞株は、10%ウシ胎児血清(FBS、Euroclone)、4mMグルタミン(Lonza)、ペニシリン及びストレプトマイシン100IU/mL(Lonza)を補充したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM、Sigma)中で維持した。初代ヒトマクロファージは、健康なドナーのバフィーコート(S.R.S.I.倫理委員会によって承認されたプロトコールに従って取得)由来の、陰性選択(Pan Monocyte Isolation Kit、Miltenyi Biotec)によって単離されたCD14陽性細胞から得て、5%ヒト血清、4mMグルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシン100IU/mLを補充したIMDM中で7日間分化させた。CD14陽性細胞の純度は、フローサイトメトリーによって決定され、>90%であった。CD14陽性単球は、hGM-CFS 100ng/mL及びhIL4 10ng/mLの存在下で7日間培養することによって樹状細胞に分化させた。全ての細胞は、5%CO2の加湿雰囲気中で37℃で維持した。全ての細胞株は、マイコプラズマ混入について日常的に試験した。ヒト初代マクロファージ及び293Tに、スピノキュレーション(spinoculation)(1,100 g、37℃にて)で1時間形質導入し、次いで、PBSで洗浄し、3日間培養した。
【0208】
遺伝子破壊及びミスマッチ選択的エンドヌクレアーゼアッセイ
遺伝子破壊は、示された量の所望のsgRNA発現プラスミド及びCas9発現プラスミドのリン酸カルシウム媒介一過的トランスフェクションによって実施した。ミスマッチ選択的エンドヌクレアーゼアッセイを使用して、Cas9標的部位での非相同末端結合(NHEJ)の結果として生じる変異の程度を測定した(Lombardo, A. et al. (2011) Nat Methods 8: 861-869)。CD47遺伝子中のsgRNA結合部位に隣接するプライマー(fw: 5'-TTCCTTTCCAGGATCAGCTCAGC-3'; rv: 5'-TTGATTCAAAGGAGTACCTATCCC-3')を使用して、PCRを実施した。PCR産物を変性させ、再アニーリングさせ、サーベイヤー(Surveyor)ヌクレアーゼアッセイ(Transgenomic)で消化した。この酵素は、二重鎖の歪みの部位でDNAを切断するため、野生型アレルと変異体アレル(ヌクレアーゼ活性の結果として生じる変異又は欠失を保有する)との間の再アニーリングの産物が特異的に消化される。反応生成物を、Spreadex EL1200 Wide Miniゲル(Elchrom Scientific)で分離し、臭化エチジウム又はGelRed(Biotium)で染色し、バンドの強度を、ImageQuant TL5ソフトウェアによって定量化した。移動度がより低い2つの切断生成物に対する未切断親断片の比は、式(1-(親画分)1/2)×100を使用して計算した。
【0209】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリー分析は、DIVAソフトウェアを備えたFACSCantoアナライザー(BD Biosciences)を使用して実施した。100,000~500,000個の間で細胞を採取し、PBS又はMACS緩衝液(PBS pH7.2 0.5%BSA、2mM EDTA)で洗浄し、抗体が染色されたらFc Receptor-Block(Miltenyi Biotec)で処理し、次いで、洗浄のために使用した緩衝液に再懸濁した。染色はMACS緩衝液中で実施し、細胞を抗体(下の表に示される割合で)と共に4℃で暗所で20分間インキュベートした。抗マウスIgGビーズを、単一染色対照(BD Biosciences)のために使用した。抗CD47パシフィックブルー(Pacific Blue)(BD Biosciences、B6H12、1:20)。
【0210】
電子顕微鏡法
数マイクロリットルの濃縮LVバッチを、グロー放電のカーボンコーティングされたホルムバール銅グリッド上に吸着させ、PBS中の8%パラホルムアルデヒドで20分間で固定した。PBS中の50mMグリシン中で数回洗浄した後、グリッドをPBS中の1%BSA中でブロッキングし、ブロッキング緩衝液中で希釈した一次抗体と共に30~90分間インキュベートした(抗VSV.G、KeraFAST、1:50、抗CD47、BD Biosciences、1:10)。PBS中の0.1%BSAで数回洗浄した後、サンプルをプロテインA-金(10nm)と共に30分間インキュベートし、1%グルタルアルデヒドで固定し、2%酢酸ウラニルで染色し、風乾した。グリッドを、Zeiss LEO 512透過型電子顕微鏡で観察した。画像を、EsivisionPro 3.2ソフトウェアによって制御される2k×2kの底部マウントスロースキャンProscanカメラによって取得した。標識密度を定量化するために、ウイルス粒子の無作為画像を、公称倍率16kで撮影し、ビリオンに結合した金粒子を、ImageJを使用して手動でカウントした。ビリオンは、予想サイズ(約120nm)及び電子密度の高いコアに基づいて規定した。
【0211】
サイトカインELISA
サイトカイン及びケモカインの濃度は、磁気ベースのマルチプレックスELISA 23被分析物質(Bio-Plex 23-Plex、グループI、Biorad)によって、製造業者の説明書に従って、マウス血清において決定した。
【0212】
VCN決定
ヒトマクロファージ実験について、QIAamp DNA Micro Kit(Qiagen)を使用して、製造業者の説明書に従って、DNAを抽出した。マウス実験について、Maxwell 16 Tissue DNA Purification Kit(Promega)を使用して、全肝臓又は全脾臓サンプルからDNAを抽出し、細胞数に応じて、DNeasy Blood & Tissue Kit(Qiagen)又はQIAamp DNA Micro Kit(Qiagen)を使用して、分画/選別した肝細胞からDNAを抽出した。VCNは、上記のようにしてヒトマクロファージにおいて決定した(「LVタイトレーション」を参照)。ヒト初代マクロファージに、安定したLVプロデューサー細胞株によって産生されたLVで形質導入し、したがって、プラスミド混入はなかった。マウスDNAにおけるVCNは、LVのプライマー結合部位領域上に設計されたプライマー/プローブセットを使用して、5~20ngの鋳型gDNAから開始するddPCRによって決定した(上記の「LVタイトレーション」を参照)。マウスsema3a遺伝子上に設計されたプライマー/プローブセット(Sema3A fw: 5'-ACCGATTCCAGATGATTGGC-3'; Sema3A rv: 5'-TCCATATTAATGCAGTGCTTGC-3'; Sema3Aプローブ: HEX 5'-AGAGGCCTGTCCTGCAGCTCATGG-3' BHQ1)によって、内因性マウスDNAの量を定量化した。PCR反応は、各プライマー(900nM)及びプローブ(250nM)を使用して、製造業者の説明書(Biorad)に従って実施し、QX200リーダーで読み取り、QuantaSoftソフトウェア(Biorad)で分析した。
【0213】
ImageStream
初代ヒトマクロファージ及び293T細胞におけるLV侵入は、ImagestreamX MarkII System(Amnis、Merck)を使用して、イメージングフローサイトメトリーによって分析した。この機器は、3つのレーザー(405nm、488nm及び642nm)、6チャンネルCCDカメラ、Multimagオプションを備えるが、被写界深度拡張オプションはない。励起レーザーの設定は、以下のとおりであった: 405nm(10mW)、488nm(200mW)。60X_0.9NAの対物レンズ、低速を用いて、各サンプルについて少なくとも5000個の事象を収集し、IDEAS 6.2ソフトウェアを使用して、画像を分析した。単一染色サンプルを、サンプルの同じレーザー設定(ただし明視野照明及び側方散乱照明なし)で取得し、補正のために使用した。
【0214】
生体内画像化
C57BL/6又はNODマウスは、記載されるようにして(Benechet, A.P. et al. (2017) Methods Mol Biol 1514: 49-61)、肝臓IV2PMについて外科的に調製した。画像化の20分前に、マウスにPEコンジュゲート抗F4/80抗体(クローンBM8、Biolegend)を静脈内注射した。GFP標識LV、CD47hi又はCD47フリーLVを、ビデオ記録の開始から2分後に静脈内注射した。画像(TriMScope II)を、Nikon Ti-U蛍光倒立顕微鏡及び25x対物レンズ(NA0.95)を用いて得た。四次元分析について、300~400μm2のxy面の8~12個のzスタック(間隔4μm)を、20秒ごとに40分間取得した。画像化の直前に、非標的化量子ドット655(Invitrogen)を静脈内注射することによって、肝類洞を可視化した。一連の画像スタックを、Imarisソフトウェア(Bitplane)を使用して、ボリュームレンダリングした四次元ビデオに変換した。
【0215】
統計分析
統計分析は、サンラファエル大学生物医科学統計センター(CUSSB)で専門統計学者のコンサルティングを受けて実施した。正規性の仮定が満たされない場合、ノンパラメトリック統計検定を実施した。マン・ホイットニー検定又はクラスカル・ウォリス検定は、それぞれ2つ以上の実験群を比較するときに実施した。経時的に繰り返される測定について、2元配置分散分析(two-way ANOVA)を実施した。対になった観測について、ウィルコクソンマッチドペア検定を実施した。
【0216】
上記の明細書に言及される全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の開示されたウイルス粒子、細胞、組成物、使用及び方法の様々な改変及び変形は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者に明らかである。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して開示されてきたが、特許請求される発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解すべきである。実際、当業者に明らかである、本発明を実施するための開示されたモードの様々な改変は、以下の特許請求の範囲内にあることが意図される。
(付記)
[付記1]
細胞の表面上のCD47の発現を減少させるように遺伝子操作されている、エンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞。
[付記2]
CD47をコードする遺伝子の遺伝子操作による破壊を含む、付記1に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞。
[付記3]
細胞の表面上のMHC-Iの発現を減少させるようにさらに遺伝子操作されている、付記1又は2に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞。
[付記4]
β2-ミクログロブリンをコードする遺伝子の遺伝子操作による破壊、及び/又はMHC-Iα鎖をコードする1つ以上の遺伝子の遺伝子操作による破壊を含む、付記1~3のいずれか一項に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞。
[付記5]
細胞がHEK-293細胞又はその派生細胞であり、好ましくはHEK-293T又はHEK-293 T-REx細胞である、付記1~4のいずれか一項に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞。
[付記6]
エンベロープウイルス粒子が、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ヘパドナウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、コロナウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ブニヤウイルス、ボルナウイルス、ラブドウイルス若しくはフィロウイルス粒子、又はそれらに由来するウイルス粒子である、付記1~5のいずれか一項に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞。
[付記7]
エンベロープウイルス粒子が、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス若しくはワクシニアウイルス粒子、又はそれらに由来するウイルス粒子であり、好ましくはエンベロープウイルス粒子が、レンチウイルス粒子又はそれに由来するウイルス粒子である、付記1~6のいずれか一項に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞。
[付記8]
付記1~7のいずれか一項に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー又はパッケージング細胞株を作製するための親細胞であって、細胞の表面上のCD47の発現を減少させるように遺伝子操作されている、親細胞。
[付記9]
エンベロープウイルス粒子を産生するための、付記1~8のいずれか一項に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞の使用。
[付記10]
以下:
a)付記1~7のいずれか一項に記載のエンベロープウイルス粒子プロデューサー細胞を提供するステップ; 及び
b)エンベロープウイルス粒子の産生に適した条件下で細胞を培養するステップ
を含む、エンベロープウイルス粒子を産生する方法。
[付記11]
付記10に記載の方法によって得られるエンベロープウイルス粒子。
[付記12]
レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス若しくはワクシニアウイルス粒子、又はそれらに由来するウイルス粒子であり、好ましくはレンチウイルス粒子又はそれに由来するウイルス粒子である、付記11に記載のエンベロープウイルス粒子。
[付記13]
マクロファージ、食細胞、抗原提示細胞又は単球に形質導入するための、付記11又は12に記載のエンベロープウイルス粒子の使用。
[付記14]
付記11又は12に記載のエンベロープウイルス粒子によって形質導入された細胞。
[付記15]
付記11若しくは12に記載のエンベロープウイルス粒子又は付記14に記載の細胞、並びに薬学的に許容される担体、希釈剤若しくは賦形剤を含む、医薬組成物。
[付記16]
療法に使用するための、好ましくはがん、細菌若しくはウイルス感染症、免疫介在性疾患又は自己免疫疾患の治療又は予防に使用するための、付記11若しくは12に記載のエンベロープウイルス粒子又は付記14に記載の細胞。
[付記17]
ワクチン接種又は遺伝子療法に使用するための、好ましくはがん、細菌若しくはウイルス感染症、免疫介在性疾患又は自己免疫疾患の治療又は予防に使用するための、付記11若しくは12に記載のエンベロープウイルス粒子又は付記14に記載の細胞。
[付記18]
付記11又は12に記載のエンベロープウイルス粒子で細胞に形質導入するステップを含む、がん、細菌若しくはウイルス感染症、免疫介在性疾患又は自己免疫疾患の治療方法であって、好ましくは、形質導入は、エクスビボ又はインビトロで実施される、方法。
[付記19]
がん、細菌若しくはウイルス感染症、免疫介在性疾患又は自己免疫疾患の治療方法であって、その治療を必要とする対象に、付記11若しくは12に記載のエンベロープウイルス粒子又は付記14に記載の細胞を投与するステップを含む、方法。
[付記20]
ワクチンとして使用するための、付記11又は12に記載のエンベロープウイルス粒子。
[付記21]
ワクチン接種を必要とする対象に、付記11又は12に記載のエンベロープウイルス粒子を投与するステップを含む、ワクチン接種方法。
【配列表】