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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】車載用アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/10 20060101AFI20240719BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20240719BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H01Q13/10
H01Q1/22 B
H01Q1/32 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020569567
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2020002371
(87)【国際公開番号】W WO2020158578
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2019012176
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100127306
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 剛
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-031938(JP,A)
【文献】実開昭52-126732(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第108666781(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0175864(US,A1)
【文献】米国特許第05629712(US,A)
【文献】特開2015-053534(JP,A)
【文献】特開2011-082902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/10
H01Q 1/22
H01Q 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面部を有するアンテナベースと、
前記底面部の上方に前記底面部に対向して配置された基板と、
前記基板を覆う中間カバーと、
前記中間カバーの外周に配置され、前記アンテナベースの側端をスロットの対向辺とすることでスロットアンテナを構成するアンテナエレメントと、
を備えた車載用アンテナ装置。
【請求項2】
前記基板は、アンテナ整合回路を有し、
前記アンテナ整合回路は、前記アンテナエレメントの給電箇所に近接配置された、
請求項1に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナエレメントは、
第1方向側に配置された第1アンテナエレメントと、
前記第1方向側とは反対側の第2方向側に配置された第2アンテナエレメントと、
を有する、
請求項1又は2に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項4】
前記底面部に対して前記基板を弾性支持する弾性支持部、
を備える、
請求項1~の何れか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項5】
前記弾性支持部は金属製であり、
前記弾性支持部を介して前記基板のグランドパターンと前記アンテナベースとが電気的に接続された、
請求項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項6】
前記アンテナエレメントの給電箇所と、前記基板と前記弾性支持部とが当接する箇所と、の間隔は、3cm以下である、
請求項又はに記載の車載用アンテナ装置。
【請求項7】
前記アンテナベースは、前記底面部から立設した縁部を有し、
前記弾性支持部は、前記縁部に接続されている、
請求項の何れか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項8】
前記アンテナエレメントは、スリットを有する、
請求項1~の何れか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項9】
前記アンテナエレメントは、テレマティクス用である、
請求項1~の何れか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項10】
底面部を有するアンテナベースと、
前記底面部の上方に前記底面部に対向して配置された基板と、
前記アンテナベースの側端をスロットの対向辺とすることでスロットアンテナを構成するアンテナエレメントと、
一方の端部が前記アンテナエレメントに接続され、他方の端部が前記基板に接続されている給電エレメントと、を備え、
前記基板が前記底面部と対向する方向に延びる前記給電エレメントの辺の長さは、前記スロットの間隔と略同じである、
車載用アンテナ装置。
【請求項11】
底面部を有するアンテナベースと、
前記底面部の上方に前記底面部に対向して配置された基板と、
前記アンテナベースの側端をスロットの対向辺とすることでスロットアンテナを構成するアンテナエレメントと、
一方の端部が前記アンテナエレメントに接続され、他方の端部が前記基板に接続されている、L字形状を有する給電エレメントと、
を備え、
前記給電エレメントは、前記一方の端部から前記基板が前記底面部と対向する方向に延伸し、前記基板に垂直な方向に折れ曲がり前記他方の端部に連なる、
車載用アンテナ装置。
【請求項12】
底面部を有するアンテナベースと、
前記底面部の上方に前記底面部に対向して配置された基板と、
前記アンテナベースの側端をスロットの対向辺とすることでスロットアンテナを構成するアンテナエレメントと、
前記底面部に対して前記基板を弾性支持する弾性支持部と、
を備えた車載用アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットアンテナとして動作するアンテナエレメントを有する車載用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スロットアンテナに対する給電方法として、基板上に配置された伝送線路を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-41994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動車通信分野ではテレマティクス(Telematics)の需要が高まっており、これに対応した車載用アンテナ装置が求められている。車載用アンテナ装置は、車両デザインの観点から低背化を図ることが望まれている。
【0005】
車載用アンテナ装置は、装着される車両ルーフを接地面として利用するため、アンテナエレメントとしてモノポールアンテナが利用されることが多い。テレマティクスに対応した車載用アンテナ装置では、水平方向の利得が高いことが望まれるが、車載用アンテナ装置の低背化を図るためにモノポールアンテナを低背化させると、水平方向の利得の劣化を招くことになる。
【0006】
そこで、車載用アンテナ装置に搭載するアンテナエレメントとしてスロットアンテナの利用が考えられる。しかし、従来のスロットアンテナの利用法に関して次のような問題がある。伝送線路を用いてスロットアンテナを給電する場合、通常、伝送線路が配置される基板はスロットが開口する金属板に対向して配置されるため、車載用アンテナ装置の低背化が妨げられる。スロットアンテナの低背化を図ることで、基板配置可能な面積が狭くなる。
【0007】
本発明の目的の一例は、スロットアンテナを有する車載用アンテナ装置において、低背化を図る新たな技術を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、底面部を有するアンテナベースと、前記底面部の上方に前記底面部に対向して配置された基板と、外周に配置され、前記アンテナベースの側端をスロットの対向辺とすることでスロットアンテナを構成するアンテナエレメントと、を備えた車載用アンテナ装置である。
【0009】
本態様によれば、スロットアンテナを構成するアンテナエレメントを有する車載用アンテナ装置において、低背化を図ることができる。アンテナベースの側端をスロットの対向辺としたスロットアンテナが構成される。このため、底面部を水平方向に沿って配置した場合には、スロットアンテナのスロットの長手方向も水平方向に沿った方向となり、スロットアンテナとして水平方向の利得を得ることができる。基板は底面部の上方にアンテナベースに対向して配置されるため、車載用アンテナ装置の低背化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車載用アンテナ装置の取り付け例。
図2】車載用アンテナ装置の外観斜視図。
図3】外装カバーを取り除いた車載用アンテナ装置の外観斜視図。
図4】車載用アンテナ装置の分解斜視図。
図5】車載用アンテナ装置の要部断面図。
図6】基板の上面視平面図。
図7】基板の下面視平面図。
図8】ばねの他の実施例を示す車載用アンテナ装置の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態の一例について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。
【0012】
[構成]
図1は、本実施形態の車載用アンテナ装置10の車両1への取り付け状態の一例を示す図である。図1に示すように、車載用アンテナ装置10は、車両1のルーフ3の窪み5に装着されて使用される。車載用アンテナ装置10は全体的に厚み(上下方向の長さ)の薄い薄型直方体形状をなしており、ルーフ3には車載用アンテナ装置10の形状に適合する窪み5が形成されている。車載用アンテナ装置10が収納された窪み5には、その開口を塞ぐように蓋7が嵌め込まれる。蓋7は、車両デザインを損ねないよう、ルーフ3と同じ塗装が施される。また、蓋7は、窪み5に嵌め込まれた状態で、上面がルーフ3と一体のフラット面となるように形成されている。蓋7にパッキン等の防水用弾性部材を設けることで、窪み5との隙間を水密封止して窪み5内への浸水を防止する構造とされる。ルーフ3に窪み5を形成せず、ルーフ3の上面に、防水ケース等に格納した車載用アンテナ装置10を装着して使用するようにしてもよい。車載用アンテナ装置10の後述する外装カバー500に防水ケースとしての機能を持たせるようにしてもよい。
【0013】
車載用アンテナ装置10の前後・左右・上下の方向は、車両1への装着時における車両1の前後・左右・上下の方向と同じとする。図1に示す例では、車載用アンテナ装置10は、薄型直方体形状の短手方向を車両1の前後方向に一致させて装着される。具体的には、厚み方向を車載用アンテナ装置10の上下方向とし、長手方向に沿った方向を左右方向とし、短手方向に沿った方向を前後方向とする。上下方向は、高さ方向ということもできる。
【0014】
[外観図]
図2図5は、車載用アンテナ装置10の構成を説明する図である。図2は、車載用アンテナ装置10の外観斜視図である。図3は、外装カバー500を取り除いた車載用アンテナ装置10の外観斜視図である。図4は、車載用アンテナ装置10の分解斜視図である。図5は、車載用アンテナ装置10の長手方向に沿った要部断面図であり、電気的な接続構成を分かり易くするために、外装カバー500および中間カバー300を省略した概略図としている。
【0015】
図3に示すように、車載用アンテナ装置10は、外装カバー500を取り除いた状態において、薄型直方体形状の左右側面である短側面それぞれに、前後方向に延びるスロット12が形成されたアンテナエレメント400を有する。アンテナエレメント400は、テレマティクス用であり、例えば、LTE(Long Term Evolution)通信に用いられる。スロット12は、両端が隣り合う長側面に跨って形成されている。スロット12は、車両1への装着時において接地面となるルーフ3の上面に沿った、水平方向に沿った形状を有していることから、垂直偏波用のスロットアンテナとして動作する。図3では、斜視図の関係から、一方(左側)の短側面に形成されているスロット12のみが分かり易く示されているが、他方(右側)の短側面においても同様にスロット12が形成されている。スロット12の長さ(長径)は、スロットアンテナとして動作させる際に使用する周波数の波長λに応じて決められる。本実施形態の車載用アンテナ装置10は、短側面に前後方向に延びるスロット12が形成されたアンテナエレメント400を有しているが、長側面に左右方向に延びるスロットが形成されたアンテナエレメントを有していてもよい。
【0016】
アンテナエレメント400には、スロット12の上縁において、上方向に延びて上端が上面に跨って形成されたスリット14が短側面に設けられている。スリット14を設けることで、車載用アンテナ装置10で使用できる周波数帯域の種類を増やすことができる。スリット14の長さ(長径)およびスロット12におけるスリット14の開口端の位置は、スリット14を設けることで種類が増えた使用できる周波数帯域における周波数の波長λに応じて決められる。アンテナエレメント400は、スリット14を有さない構造としてもよい。
【0017】
図2図3に示すように、車載用アンテナ装置10は、薄型直方体形状の前側の長側面に、装着される車両1から引き出された信号ケーブルを接続するためのコネクタ部20が露出して設けられている。本実施形態では、コネクタ部20は、車載用アンテナ装置10の前側の長側面に設けられている構成とするが、他の側面に設けるようにしてもよい。車載用アンテナ装置10から車両1へはアナログ信号が出力されてもよいし、デジタル信号が出力されてもよい。
【0018】
図4に示すように、車載用アンテナ装置10は、金属製のアンテナベース100と、アンテナベース100の上方を覆う外装カバー500との間に画成される空間に、下方から順に、基板200と、中間カバー300と、アンテナエレメント400とを収容して構成されている。
【0019】
アンテナベース100は、矩形形状の金属製の底面部102と、底面部102の外周縁に沿って立設された高さの低い金属製の縁部104とを有し、上方に向けて開口した上面視矩形の浅い平皿形状をなしている。アンテナベース100は、基板200に設けられたコネクタ部20を前方から突出させるために、前側の縁部104の中央付近が切り欠かれている。
【0020】
基板200は、アンテナベース100と基板200との間に介挿される弾性支持部によって弾性支持され、底面部102の上方に底面部102に対向して配置される。弾性支持部は、例えば金属製のばね220である。ばね220は、スロット12をスロットアンテナとして動作させる際の接地電位を確保する構造の一つであり、スロット12の近傍に設けられる。ばね220は、上端部が基板200の下面においてグランドパターン上に実装されている。つまり、ばね220は、グランドパターンと電気的に接続されている。基板200をアンテナベース100の爪部106の上面に載置してねじ止めする際に、ばね220は、下端部がアンテナベース100の底面部102の上面に押し付けられことで、アンテナベース100に対して基板200を弾性支持する。これにより、ばね220は、基板200のグランドパターンとアンテナベース100とを電気的に接続する機能も果たす。ばね220は、例えば、金属製のコイルばねや板ばねで構成することができる。
【0021】
アンテナベース100には、側面視において逆L字形状の複数の爪部106が、底面部102を切り起こして形成されていている。爪部106には、上下方向に貫通するねじ孔108が形成されている。これらの爪部106の上方に、ばね220で弾性支持された基板200が位置する。爪部106のねじ孔108、およびねじ孔108に対応して基板200に形成されたねじ孔210に、下方からねじ110を挿通してねじ止めすることで、アンテナベース100の上方に基板200が取り付けられる。基板200の下面に搭載された電子部品が底面部102に接触しないように、ばね220で弾性支持された基板200の電子部品の下端と底面部102との間に空隙が生じるようにしてねじ止めされる。アンテナベース100に対して基板200を安定的に固定するために、爪部106は、例えば、底面部102の四隅付近や周縁に近い位置に設けることが望ましい。
【0022】
アンテナベース100に基板200が配置されると、基板200の上方を覆う中間カバー300が配置され、中間カバー300の外周部にアンテナエレメント400が配置される。
【0023】
中間カバー300は、絶縁性を有する合成樹脂で形成される。中間カバー300は、上面視中央部が開口された全体として上面視矩形状の蓋状をなしている。中間カバー300は、基板200の上面に実装された電子部品に干渉せず、基板200の上方に所定の空隙を確保するように周縁下部が下方に突設している。その周縁下部の外周面がアンテナベース100の縁部104の内周面に当接して配置される。周縁下部が縁部104よりも内側にあれば、当接していなくてもよい。中間カバー300の周縁部の左右それぞれには、第1アンテナエレメント410および第2アンテナエレメント420の下方に設けられている給電エレメント430を上下方向に挿通させるための挿通孔302が形成されている。また、中間カバー300は、基板200に設けられたコネクタ部20を前方から突出させるために、前側の周縁下部の中央付近が切り欠かれている。
【0024】
アンテナエレメント400は、例えば金属板を板金加工することで成形された金属製の部材であり、中間カバー300の外周部に配置される。アンテナエレメント400は、中間カバー300に配置された状態において、対向するアンテナベース100の縁部104との間にスロット12を構成する。アンテナエレメント400は、上方から見た平面視(上方平面視)において第1方向側となる左端部に配置された第1アンテナエレメント410と、第1方向側とは反対側の第2方向側となる右端部に配置される第2アンテナエレメント420とを有する。ここで、反対側とは、ある方向に対して180度反対の方向、すなわち逆方向の側(サイド)を指す。例えば左側面の反対側は右側面である。
【0025】
第1アンテナエレメント410は、中間カバー300の左端部の前側に配置されるパーツ412と、後側に配置されるパーツ414とを有する。パーツ412,414は、ともに、中間カバー300に載置されるための上方視L字形状の上面部と、上面部の外側縁部から下方に延出する側面部とを有する。側面部には、中間カバー300の外周部に配置した状態において、中間カバー300の前側或いは後側において更に下方に突出した突出片412a,414aが形成されている。突出片412a,414aは、スロット12の長さ(長径)を規定するためのものである。パーツ412,414は、中間カバー300の外周部に配置した状態において、中間カバー300の左端部において端部同士の間隙がスリット14を構成するように形成されている。本実施形態では、車載用アンテナ装置10の左側面においては、スロット12に対するスリット14の開放端が前方寄りの位置に形成されるため、パーツ414のほうがパーツ412より前後方向の長さが長く形成されている。
【0026】
第1アンテナエレメント410を中間カバー300の外周部の左端部に配置した状態において、パーツ412,414それぞれの突出片412a,414aの下部がアンテナベース100の縁部104の上部に当接することで、スロット12が構成される。スロット12は、パーツ412,414それぞれの側面部の下辺と、これに対向するアンテナベース100の縁部104の上辺との間で、車載用アンテナ装置10における左側面および隣り合う前側および後側の側面に跨って構成される。パーツ412,414の間隙によって、スリット14が構成される。
【0027】
第2アンテナエレメント420についても、第1アンテナエレメント410と同様に構成されている。第2アンテナエレメント420のスリット14は、後方寄りの位置に形成されている。上面視において第1アンテナエレメント410を点対称に配置した構成が第2アンテナエレメント420となる。つまり、第2アンテナエレメント420は、中間カバー300の右端部の後側に配置されるパーツ422と、前側に配置されるパーツ424とを有する。パーツ422,424には、それぞれ、スロット12の長さ(長径)を規定するための突出片422a,424aが形成されている。
【0028】
アンテナエレメント400には、スロット12をスロットアンテナとして動作させるための給電構造として給電エレメント430が設けられている。第1アンテナエレメント410については、後側に配置されるパーツ414に給電エレメント430が設けられ、第2アンテナエレメントについては、前側に配置されるパーツ424に給電エレメント430が設けられている。給電エレメント430は、図5に示すように、側面視においてL字形状に形成されている。給電エレメント430の一方の端部は、その一方の端部の断面が上下方向と前後方向からなる平面と平行になるように、アンテナエレメント400の下縁に接続されている。給電エレメント430の他方の端部は、その他方の端部の断面が前後方向と左右方向からなる平面と平行になるように、基板200の上に配置された給電線路206に接続されている。アンテナエレメント400における給電エレメント430の接続位置は、スロットアンテナに対する給電位置となり、使用する周波数の波長λに応じて位置決めされる。
【0029】
外装カバー500は、電波透過性を有する合成樹脂で形成される。外装カバー500は、車載用アンテナ装置10の上部全体をカバーするための蓋である。基板200に設けられるコネクタ部20を前方から突出させるため、外装カバー500の前側面の中央部が切り欠かれている。外装カバー500の内寸は、アンテナベース100の外寸よりも僅かに大きく形成されており、アンテナベース100の上方に基板200、中間カバー300、およびアンテナエレメント400を順に配置した後、これら全体を上方から覆うように取り付けられる。
【0030】
基板200は、上面および下面に電子部品が実装された両面基板である。図6は、基板200の上面における配線構造を説明するための図であり、上方から見た基板200の一部を概略的に示した平面図である。図7は、基板200の下面における配線構造を説明するための図であり、下方から見た基板200の一部を概略的に示した平面図である。図6図7は、基板200の右側端部を示しているが、左側端部も同様の構造となっている。
【0031】
図6に示すように、基板200の上面は、平面視における中央部を電子回路配置部202とし、この電子回路配置部202の外側を囲むように、グランドパターン204およびスロットアンテナのための給電線路206が設けられている。電子回路配置部202には、給電回路や、パッチアンテナ等の他のアンテナエレメントや、信号処理回路、といった各種のアンテナ用の電子回路が配置される。
【0032】
図6に、給電エレメント430の配置を点線で示した。基板200の上面において、給電線路206は、電子回路配置部202から、給電エレメント430の下端が接触する基板200の縁付近まで延設されている。給電線路206と給電エレメント430との接続は、例えば、給電線路206に給電エレメント430の下端を挿入する差し込み口を基板200に設け、これに給電エレメント430の下端を差し込むようにして接続する構成を採用することができる。給電線路206と給電エレメント430との接続は、半田により行われていてもよい。両者を電気的に接続できればどのような構成であってもよい。
【0033】
給電線路206の途中には、アンテナ整合回路208が設けられている。アンテナ整合回路208は、給電線路206と給電エレメント430との接続箇所に近接配置される。アンテナ整合回路208は、アンテナエレメント400と、給電線路206を介して接続される後段回路との間のインピーダンス整合を行うための回路である。アンテナ整合回路208によって、車載用アンテナ装置10で使用できる周波数帯域の数を多くすることができる。
【0034】
グランドパターン204は、電子回路配置部202以外の領域であって、給電線路206やアンテナ整合回路208等の配置領域を除き、更に、非接地領域を除く領域に形成される。非接地領域は、アンテナエレメント400が位置する縁部から所定距離以内の領域であり、アンテナエレメント400とグランドパターン204とを所定距離以上離隔させるために設けられる領域である。所定距離は、車載用アンテナ装置10で使用できる周波数帯域における周波数の波長λに応じて決められる。グランドパターン204は、ノイズ対策のため、領域全体を面状のグランド電極とした、いわゆるベタパターンとして形成される。
【0035】
図7に示すように、基板200の下面も同様に、平面視における中央部を電子回路配置部212とし、この電子回路配置部212の外側を囲むように、グランドパターン214が設けられる。電子回路配置部212は、基板200の上面における電子回路配置部202と、平面視においてほぼ重なる領域に形成されている。グランドパターン214は、基板200の上面におけるグランドパターン204と平面視においてほぼ重なる領域に加えて、更に、基板200の上面における給電線路206やアンテナ整合回路208等の配置領域に相当する領域を含むように、基板200の縁付近まで延設されている。このグランドパターン214の延設領域にばね220が実装されている。ばね220の実装位置は、基板200の上面における給電エレメント430と給電線路206との接続位置に相当する位置、或いは、当該接続位置に近いことが望ましい。具体的には、基板200の上面における給電エレメント430と給電線路206との接続位置である上面位置と、基板200の下面におけるばね220の実装位置である下面位置との間隔を、3cm以下、とすることが望ましい。基板200の上面におけるグランドパターン204と、下面におけるグランドパターン214とは、任意の複数箇所に設けられたスルーホールによって、電気的に接続されており、等しく接地電位とされている。
【0036】
以上説明したように、スロット12の上縁となるアンテナエレメント400には、アンテナエレメント400に接続された給電エレメント430、および、給電エレメント430に接続された給電線路206を介して、基板200から給電される。スロット12の下縁となるアンテナベース100の縁部104には、ともに金属製であるアンテナベース100およびばね220を介して、基板200の下面のグランドパターン214が電気的に接続されていることで、接地されている。これにより、スロット12はスロットアンテナとして動作する。
【0037】
基板200は、アンテナベース100と、中間カバー300との間に配置される。上述のように、基板200は、ばね220によって弾性支持され、さらにアンテナベース100との間隔を保つように、爪部106の上方に固定される。これにより、いわば中空に浮くように固定配置されることとなり、下方のアンテナベース100との間に所定高さの空隙が確保される。したがって、基板200の下面に実装された電子部品への干渉が抑制される。基板200の上方には、中間カバー300によって所定高さの空隙が確保される。これにより、基板200の上面に実装された電子部品への干渉が抑制される。
【0038】
[作用効果]
車載用アンテナ装置10は、金属製のアンテナベース100の縁部104を対向辺としたスロット12が形成されたアンテナエレメント400を有する。このため、アンテナベース100を水平方向に沿って配置した場合には、スロット12の長手方向も水平方向に沿った方向となり、スロット12を垂直偏波用のスロットアンテナとして動作させることができる。アンテナエレメント400には、給電エレメント430を介して、基板200に設けられた給電線路206から給電がなされる。基板200はアンテナベース100と中間カバー300との間にアンテナベース100に対向して配置されるため、十分な基板面積を確保しつつ、車載用アンテナ装置10の低背化を図ることができる。
【0039】
スロットアンテナに対する給電方法として、同軸ケーブルを用いる方法が知られている。同軸ケーブルを用いてスロットアンテナを給電する場合、同軸ケーブルの芯線をスロットが形成された金属板に直接接続して給電する。このため、スロットアンテナに対するアンテナ整合回路を装荷することができず、車載用アンテナ装置で使用できる周波数帯域の数を多くすることが難しい。テレマティクスに対応した車載用アンテナ装置では、LTE(Long Term Evolution)通信やV2X(Vehicle to X)通信などの複数種類の周波数帯域での通信を行うため、車載用アンテナ装置で使用できる周波数帯域の数を多くすることが望まれている。
【0040】
本実施形態の車載用アンテナ装置10では、基板200にアンテナ整合回路208が設けられているため、車載用アンテナ装置10で使用できる周波数帯域の数を多くすることができる。このように、本実施形態によれば、スロットアンテナを構成するアンテナエレメント400を有する車載用アンテナ装置10において、車載用アンテナ装置10で使用できる周波数帯域の数を多くすることができる。
【0041】
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0042】
(A)ばね
例えば、アンテナベース100の底面部102と基板200との間にばね220を介挿するように実装する構成を、図8に示す構成としてもよい。
【0043】
図8は、ばねの他の実装例を示す図である。図5に示した要部断面図と同様に、車載用アンテナ装置10の長手方向に沿った要部断面図であり、電気的な接続構成を分かり易くするために、外装カバー500および中間カバー300を省略した概略図としている。図8に示す例では、基板200の下面であってグランドパターン214が形成された領域にばね222の一端が実装され、アンテナベース100の縁部104にばね222の他端が接続される。縁部104とばね220との接続位置は、スロット12の下縁、つまり、縁部104の上縁に近い位置が望ましい。ばね222は、例えば、ライトアングル形式で実装することができる。この場合、ばね222の一端をライトアングル形式で基板200に固定して実装しておき、アンテナ装置の組み立て時に、ばね222の他端を、アンテナベース100の縁部104に半田付けによって接続する。
【0044】
(B)装置全体形状
車載用アンテナ装置10の全体形状を薄型直方体形状としたが、上面視多角形形状としてもよいし、円柱形状や、楕円柱形状といった他の形状としてもよい。
【0045】
(C)アンテナの数
車載用アンテナ装置10は2つのスロットアンテナを有するとしたが、3つ以上有するようにしてもよい。例えば、前方側面や後方側面にもスロットアンテナを配置して構成してもよいし、1つの側面に2つ以上のスロットアンテナを構成するようにしてもよい。
【0046】
(D)給電エレメント
側面視においてL字形状に形成された給電エレメント430の一方の端部は、その一方の端部の断面が上下方向と前後方向からなる平面と平行になるように、アンテナエレメント400の下縁に接続されていた。他方の端部は、その他方の端部の断面が前後方向と左右方向からなる平面と平行になるように、基板200の上に配置された給電線路206に接続されていた。しかし、側面視においてL字形状に形成された給電エレメント430の一方の端部が、その一方の端部の断面が前後方向と左右方向からなる平面と平行になるように、アンテナエレメント400の下縁に接続されていてもよい。この場合、給電エレメント430の他方の端部は、その他方の端部の断面が上下方向と前後方向からなる平面と平行になるように、給電線路206に接続されている。また、側面視においてL字形状に形成された給電エレメント430の一方の端部が、その一方の端部の断面が前後方向と左右方向からなる平面と平行になるように、アンテナエレメント400の上面部に接続されていてもよい。この場合、給電エレメント430の他方の端部は、その他方の端部の断面が上下方向と前後方向からなる平面と平行になるように、給電線路206に接続されている。
【0047】
給電エレメント430が側面視においてL字形状に形成されていたが、給電エレメント430の長さが短くなるのであれば、どのような形状であってもよい。例えば、給電エレメント430が直線状の平板である場合、給電エレメント430が上下方向に平行に設けられ、給電エレメント430の一方の端部がアンテナエレメント400の上面部に接続され、他方の端部が給電線路206に接続されていてもよい。給電エレメント430の一方の端部とアンテナエレメント400の上面部との接続箇所は、スリット14の近傍でもよいしそうでなくてもよい。
【0048】
アンテナエレメント400に給電エレメント430が設けられていたが、給電線路206に給電エレメント430が設けられていてもよい。
【0049】
(E)アンテナベース
アンテナベース100は底面部102と縁部104を有していたが、アンテナベース100が底面部102のみを有していてもよい。この場合、アンテナエレメント400は、中間カバー300に配置された状態において、アンテナエレメント400と、対向するアンテナベース100の底面部102の側端(縁)との間にスロット12を構成する。
【0050】
本明細書の開示内容は次のように概括することができる。
【0051】
本開示の態様は、底面部を有するアンテナベースと、前記底面部の上方に前記底面部に対向して配置された基板と、外周に配置され、前記アンテナベースの側端をスロットの対向辺とすることでスロットアンテナを構成するアンテナエレメントと、を備えた車載用アンテナ装置である。
【0052】
本態様によれば、スロットアンテナを構成するアンテナエレメントを有する車載用アンテナ装置において、低背化を図ることができる。アンテナベースの側端を対向辺としたスロットアンテナが構成される。このため、底面部を水平方向に沿って配置した場合には、スロットアンテナのスロットの長手方向も水平方向に沿った方向となり、スロットアンテナとして水平方向の利得を得ることができる。基板は底面部の上方にアンテナベースに対向して配置されるため、車載用アンテナ装置の低背化を図ることができる。
【0053】
前記基板は、アンテナ整合回路を有し、前記アンテナ整合回路は、前記アンテナエレメントの給電箇所に近接配置されていてもよい。
【0054】
これにより、アンテナエレメントの給電箇所に近接してアンテナ整合回路を配置することができるため、スロットアンテナとアンテナ整合回路との間の伝送損失を小さくし、スロットアンテナのアンテナ特性を良好に保つことができる。
【0055】
前記アンテナエレメントは、第1方向側に配置された第1アンテナエレメントと、前記第1方向側とは反対側の第2方向側に配置された第2アンテナエレメントと、を有してもよい。
【0056】
これにより、車載用アンテナ装置に二つのスロットアンテナを設けることができ、二つのスロットアンテナは互いに反対側を向いているので、二つのスロットアンテナの互いの干渉を抑制することができる。
【0057】
前記基板は、給電線路と、電子回路配置部と、グランドパターンと、を有し、前記給電線路は、前記電子回路配置部と前記アンテナエレメントとを電気的に接続するとしてもよい。
【0058】
これにより、基板に給電線路と電子回路配置部とグランドパターンを配置することができる。このため、外部からのノイズの影響を受けにくくするとともに、外部へのノイズの放出を抑制する効果が得られる。
【0059】
前記底面部に対して前記基板を弾性支持する弾性支持部を備えることとしてもよい。
【0060】
これにより、弾性支持部が底面部に対して基板を弾性支持することができる。基板の上面に電子回路を実装することが多いが、基板の両面をいわば浮かした状態で支持することが可能となるため、基板の両面に電子回路を実装することができる。
【0061】
前記弾性支持部は金属製であり、前記弾性支持部を介して前記基板のグランドパターンと前記アンテナベースとが電気的に接続された構成としてもよい。
【0062】
これにより、金属製である弾性支持部を介して、基板のグランドパターンとアンテナベースとを電気的に接続することができる。
【0063】
前記アンテナエレメントの給電箇所と、前記基板と前記弾性支持部とが当接する箇所と、の間隔は、3cm以下であってもよい。
【0064】
これにより、アンテナエレメントの給電箇所と、基板と弾性支持部とが当接する箇所とが近接した位置となり、弾性支持部を介して接地する構成とした場合にスロットアンテナのアンテナ特性を良好に保つことができる。
【0065】
前記アンテナベースは、前記底面部から立設した縁部を有し、前記弾性支持部は、前記縁部に接続されていてもよい。
【0066】
これにより、底面部から立設した縁部に、弾性支持部が接続されることとなる。接地経路の距離を短くすることができるため、接地経路に係るアンテナ特性の劣化を低減させることができる。
【0067】
前記アンテナエレメントは、スリットを有してもよい。
【0068】
これにより、アンテナエレメントがスリットを有することとなる。アンテナエレメントがスリットを有さない場合に比較して使用できる周波数帯域の種類が増え、車載用アンテナ装置で使用する周波数帯域の数を多くすることが可能となる。
【0069】
前記アンテナエレメントは、テレマティクス用であってもよい。
【0070】
これにより、車載用アンテナ装置がテレマティクスに対応することができる。
【符号の説明】
【0071】
1…車両、3…ルーフ、5…窪み、7…蓋
10…車載用アンテナ装置
12…スロット、14…スリット
20…コネクタ部
100…アンテナベース
102…底面部、104…縁部
200…基板
202,212…電子回路配置部
204,214…グランドパターン
206…給電線路、208…アンテナ整合回路
220…ばね
300…中間カバー
400…アンテナエレメント
410…第1アンテナエレメント、420…第2アンテナエレメント
430…給電エレメント
500…外装カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8