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特許7523365含フッ素ビニルスルホン酸フルオリドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】含フッ素ビニルスルホン酸フルオリドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 303/02 20060101AFI20240719BHJP
   C07C 309/82 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C07C303/02
C07C309/82
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021004249
(22)【出願日】2021-01-14
(65)【公開番号】P2022108985
(43)【公開日】2022-07-27
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊達 英城
(72)【発明者】
【氏名】中村 光武
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/012913(WO,A1)
【文献】特開2008-285419(JP,A)
【文献】特開2009-102294(JP,A)
【文献】特開昭60-094919(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0269395(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 303/02
C07C 309/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(4):
【化1】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(4)の製造方法であり、
下記一般式(1):
【化2】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、
下記一般式(2):
MF (2)
(式中、Mは、Li、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表されるアルカリ金属フッ化物(2)とを、
下記一般式(3):
CN (3)
(式中、Rは、少なくとも1つのフッ素原子で置換されている脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基であり、炭素数は1~20である。)
で表される含フッ素ニトリル化合物(3)の存在下で反応させる
ことを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
前記含フッ素ニトリル化合物(3)において、置換されているフッ素原子の数が、1~5個である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記含フッ素ニトリル化合物(3)において、Rは、少なくとも1つのフッ素原子で置換されている芳香族炭化水素基である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記含フッ素ニトリル化合物(3)が、m-フルオロベンゾニトリル、2,3-ジフルオロベンゾニトリル、2,3,4-トリフルオロベンゾニトリル、2,3,6-トリフルオロベンゾニトリル、2-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、3-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2,3,4,5-テトラフルオロベンゾニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、2,4,5-トリフルオロベンゾニトリル、o-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、ペンタフルオロベンゾニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池用隔膜、燃料電池用触媒バインダーポリマー、食塩電解用隔膜等の主要成分として、下記一般式(5)で表されるフッ素系高分子電解質(5)が主に採用されている。
【化1】
(pは0~6の整数、qは1~6の整数)
一般式(5)で表されるフッ素系高分子電解質は、下記一般式(6)で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(6)とテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合体をケン化反応及び酸処理を施すことによって製造できることが知られている。
【化2】
(pは0~6の整数、qは1~6の整数)
上記一般式(6)で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(6)の製造方法として、
下記一般式(1):
【化3】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、
フッ化水素、金属フッ化物、4級アンモニウムフルオリド、及び4級ホスホニウムフルオリドからなる群より選択される1種以上であるフッ素化剤とを、
接触・混合させることにより、下記一般式(4):
【化4】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(4)を製造方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/012913号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、m=0、n=2である含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、フッ化ナトリウム、又はフッ化カリウムとを、アセトニトリル存在下で反応させることで、m=0、n=2である含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(4)を製造する方法が開示されているものの、より高い収率が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上述の課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)(以下、「化合物(1)」ともいう。)と、アルカリ金属フッ化物(2)(以下、「化合物(2)」ともいう。)とを、含フッ素ニトリル化合物(3)(以下、「化合物(3)」ともいう。)の存在下で反応させることで、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
下記一般式(4):
【化5】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(4)の製造方法であり、
下記一般式(1):
【化6】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、
下記一般式(2):
MF (2)
(式中、Mは、Li、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表されるアルカリ金属フッ化物(2)とを、
下記一般式(3):
CN (3)
(式中、Rは、少なくとも1つのフッ素原子で置換されている脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基であり、炭素数は1~20である。)
で表される含フッ素ニトリル化合物(3)の存在下で反応させる
ことを特徴とする、製造方法。
[2]
前記含フッ素ニトリル化合物(3)において、置換されているフッ素原子の数が、1~5個である、[1]に記載の製造方法。
[3]
前記含フッ素ニトリル化合物(3)において、Rは、少なくとも1つのフッ素原子で置換されている芳香族炭化水素基である、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]
前記含フッ素ニトリル化合物(3)が、m-フルオロベンゾニトリル、2,3-ジフルオロベンゾニトリル、2,3,4-トリフルオロベンゾニトリル、2,3,6-トリフルオロベンゾニトリル、2-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、3-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2,3,4,5-テトラフルオロベンゾニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、2,4,5-トリフルオロベンゾニトリル、o-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、ペンタフルオロベンゾニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(4)を収率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0009】
本実施形態の製造方法は、
下記一般式(4):
【化7】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(4)の製造方法であり、
下記一般式(1):
【化8】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、
下記一般式(2):
MF (2)
(式中、Mは、Li、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表されるアルカリ金属フッ化物(2)とを、
下記一般式(3):
CN (3)
(式中、Rは、少なくとも1つのフッ素原子で置換されている脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基であり、炭素数は1~20である。)
で表される含フッ素ニトリル化合物(3)の存在下で反応させる
ことを特徴とする。
【0010】
以下、化合物(1)、(2)、及び(3)、並びに化合物(1)から化合物(4)を製造する際の反応条件等の詳細について説明する。
【0011】
<含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)(化合物(1))>
含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)は、下記一般式(1):
【化9】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される。
含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)は、1種単独であっても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
mとしては、入手又は製造が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、0~1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
nとしては、入手又は製造が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、1~4であることが好ましく、2~4であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。
mとnの組み合わせとしては、m=0、n=2であることが、特に好ましい。
【0013】
含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法で製造することができる。例えば、国際公開第2020/012913号に記載の方法により、製造することができる。
【0014】
<アルカリ金属フッ化物(2)(化合物2)>
アルカリ金属フッ化物(2)は、下記一般式(2):
MF (2)
(式中、Mは、Li、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表される。
アルカリ金属フッ化物(2)は、1種単独であっても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
Mとしては、含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)とアルカリ金属フッ化物(2)との反応性が高まる傾向にあり、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリドの収率が高まる傾向にあることから、K、Rb、又はCsであることが好ましい。入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、K、又はCsがより好ましく、同様の観点からKがさらに好ましい。
【0016】
化合物(2)は、必要に応じて、含水量を低減させたものを用いることもできる。
化合物(2)の含水量を低減させる方法としては、一般的に利用できる方法であれば特に限定されないが、加熱する方法、真空下で加熱する方法、乾燥ガス流通下で加熱する方法等が挙げられる。
加熱する温度は、化合物(2)の含水量を低減できる温度であれば特に限定されないが、化合物(2)の分解を抑制できる傾向にあることから、600℃以下であることが好ましい。過剰な加熱を抑制し、より経済性に優れる傾向にあることから、300℃以下であることがより好ましく、同様の観点から250℃以下であることがさらに好ましく、200℃以下であることが特に好ましい。また、含水量の低減が促進する傾向にあることから、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。
乾燥ガスとしては、一般的に用いられる乾燥ガスであれば特に限定されず、乾燥空気、乾燥窒素等が挙げられる。
【0017】
<含フッ素ニトリル化合物(3)(化合物(3)>
含フッ素ニトリル化合物(3)は、下記一般式(3):
CN (3)
(式中、Rは、少なくとも1つのフッ素原子で置換されている脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基であり、炭素数は1~20である。)
で表される。
含フッ素ニトリル化合物(3)は、1種単独であっても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
含フッ素ニトリル化合物(3)のRは、少なくとも1つのフッ素原子で置換されている。一般的に利用可能な含フッ素ニトリル化合物(3)が有するフッ素原子の数であれば、置換されているフッ素原子の数(フッ素原子で置換された炭化水素基中の水素原子の数)は特に限定されないが、1~20であることが好ましい。入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、フッ素原子の数は、1~10であることがより好ましく、同様の観点から、1~5であることがさらに好ましい。含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)とアルカリ金属フッ化物(2)との反応性が高まる傾向にあり、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリドの収率が高まる傾向にあることから、フッ素原子の数は、3~5であることが好ましく、同様の観点から、5であることが特に好ましい。
【0019】
含フッ素ニトリル化合物(3)のRは、少なくとも1つのフッ素原子で置換されている脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基である。含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)とアルカリ金属フッ化物(2)との反応性が高まる傾向にあり、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリドの収率が高まる傾向にあることから、少なくとも1つのフッ素原子で置換されている芳香族炭化水素基であることがより好ましい。
含フッ素ニトリル化合物(3)のRは、フッ素原子と異なる置換基を有していてもよい。フッ素原子と異なる置換基としては、一般的に利用される置換基であれば特に限定されないが、例えば、塩素原子、臭素原子等のフッ素原子以外のハロゲン原子、ニトリル基(-CN)、エーテル基(-O-)、カーボネート基(-OCO-)、エステル基(-CO-)、カルボニル基(-CO-)、スルフィド基(-S-)、スルホキシド基(-SO-)、スルホン基(-SO-)、及びウレタン基(-NHCO-)等が挙げられる。
【0020】
含フッ素ニトリル化合物(3)のRの炭素数は、一般的に利用される炭素数であれば特に限定されないが、1~20であることが好ましい。入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、上記炭素数は、1~10であることがより好ましい。含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)とアルカリ金属フッ化物(2)との反応性が高まる傾向にあり、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリドの収率が高まる傾向にあることから、炭素数は、6~10であることがさらに好ましく、6又は7であることが特に好ましい。
【0021】
含フッ素ニトリル化合物(3)としては、例えば、p-フルオロベンゾニトリル、2,4-ジフルオロベンゾニトリル、2,5-ジフルオロベンゾニトリル、2,6-ジフルオロベンゾニトリル、2,4,6-トリフルオロベンゾニトリル、2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリル、3-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、p-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、3-フルオロ-4-メチルベンゾニトリル、5-フルオロ-2-メチルベンゾニトリル、2-フルオロ-6-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、3-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、5-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、トリフルオロアセトニトリル、ペンタフルオロプロピオニトリル、ヘプタフルオロブチロニトリル、ノナフルオロバレロニトリル、ウンデカフルオロヘキサンニトリル、トリデカフルオロヘプタンニトリル、ペンタデカフルオロオクタンニトリル、ヘプタデカフルオロノナンニトリル、ノナデカフルオロデカンニトリル、テトラフルオロイソフタロニトリル、テオタフルオロフタロニトリル、テトラフルオロテレフタロニトリル、2-フルオロ-4-メチルベンゾニトリル、4-フルオロ-3-メチルベンゾニトリル、2,3-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンゾニトリル、2,4-ジフルオロ-3-メチルベンゾニトリル、2,6-ジフルオロ-3-ニトロベンゾニトリル、2-クロロ-5-シアノベンゾニトリル、3-クロロ-4-シアノベンゾニトリル、2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、4-クロロ-2,6-ジフルオロベンゾニトリル、2,6-ジクロロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、4-ブロモ-2,6-ジフルオロベンゾニトリル、2-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2-アミノ-5-シアノベンゾニトリル、5-アミノ-2-シアノベンゾトリフルオリド、4-アミノ-2,5-ジフルオロベンゾニトリル、4-シアノ-3-ニトロベンゾニトリル、4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)アセタニリド、(2-シアノ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)ボロン酸、(3-シアノ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ボロン酸、(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)ボロン酸、(3-シアノ-2,4-ジフルオロフェニル)ボロン酸、2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-4-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2-(5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル)-6-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2-メトキシ-5-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、4-メトキシ-3-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、4-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、4-ヒドロキシ-3-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、m-フルオロベンゾニトリル、2,3-ジフルオロベンゾニトリル、2,3,4-トリフルオロベンゾニトリル、2,3,6-トリフルオロベンゾニトリル、2-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、3-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2,3,4,5-テトラフルオロベンゾニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、2,4,5-トリフルオロベンゾニトリル、o-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、ペンタフルオロベンゾニトリルが挙げられる。
【0022】
入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、m-フルオロベンゾニトリル、2,3-ジフルオロベンゾニトリル、2,3,4-トリフルオロベンゾニトリル、2,3,6-トリフルオロベンゾニトリル、2-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、3-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2,3,4,5-テトラフルオロベンゾニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、2,4,5-トリフルオロベンゾニトリル、o-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、ペンタフルオロベンゾニトリルが好ましい。含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)とアルカリ金属フッ化物(2)との反応性が高まる傾向にあり、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリドの収率が高まる傾向にあることから、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、2,4,5-トリフルオロベンゾニトリル、o-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、ペンタフルオロベンゾニトリルがより好ましく、2-フルオロベンゾニトリル、2,4,5-トリフルオロベンゾニトリル、o-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、ペンタフルオロベンゾニトリルがさらに好ましく、ペンタフルオロベンゾニトリルが特に好ましい。
【0023】
化合物(3)は、必要に応じて、含水量を低減させたものを用いることもできる。
含水量が少ない化合物(3)は、購入することもできるし、化合物(3)の含水量を減少させる方法を利用することもできる。化合物(3)の含水量を減少させる方法としては、一般的に利用できる方法であれば特に限定されないが、例えば、脱水剤を利用する方法、蒸留する方法等が挙げられる。
脱水剤としては、一般的に用いられる脱水剤であれば特に限定されないが、水素化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、五酸化二リン、活性アルミナ、シリカゲル、及びモレキュラーシーブ等が挙げられる。脱水剤を用いた場合、化合物(1)と化合物(2)との反応に影響がなければ脱水剤を含んだ化合物(3)を利用してもよいし、ろ過等により脱水剤を含まない化合物(3)を利用してもよい。
【0024】
含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、アルカリ金属フッ化物(2)とを、含フッ素ニトリル化合物(3)の存在下で反応させる際、必要に応じて、例えば、エーテル化合物、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホ化合物、飽和炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物、ハロゲン化炭化水素化合物、アルコール化合物、ケトン化合物、エステル化合物、及び水等を添加剤として用いることができる。
【0025】
前記添加物は、一般的に用いられる化合物であれば特に限定されないが、具体的に例示するならば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、2-メチルブチロニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、ベンゾニトリル、及びアジポニトリル等のニトリル化合物、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、テトラメチルウレア、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド化合物、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、スルホラン、及び3-メチルスルホラン等のスルホ化合物、n-ペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、n-ノナン、n-デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、及びシクロオクタン等の飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ナフタリン、テトラリン、及びビフェニル等の芳香族炭化水素化合物、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン、トリクロロプロパン、塩化イソプロピル、塩化ブチル、塩化ヘキシル、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロトルエン、及びクロロナフタリン等のハロゲン化炭化水素化合物、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、シクロヘキサノール、及びベンジルアルコール等のアルコール化合物、アセトン、メチルアセトン、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、及びシクロヘキサノン等のケトン化合物、及び酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、及び安息香酸ベンジル等のエステル化合物が挙げられる。
【0026】
前記添加剤は、必要に応じて、含水量を低減させたものを用いることもできる。
含水量が少ない添加剤は、購入することもできるし、添加剤の含水量を減少させる方法を利用することもできる。添加剤の含水量を減少させる方法としては、一般的に利用できる方法であれば特に限定されないが、例えば、脱水剤を利用する方法、蒸留する方法等が挙げられる。
脱水剤としては、一般的に用いられる脱水剤であれば特に限定されないが、水素化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、五酸化二リン、活性アルミナ、シリカゲル、及びモレキュラーシーブ等が挙げられる。脱水剤を用いた場合、化合物(1)と化合物(2)との反応に影響がなければ脱水剤を含んだ添加剤を利用してもよいし、ろ過等により脱水剤を含まない添加剤を利用してもよい。
【0027】
<化合物(1)の物質量(α)に対する化合物(2)の物質量(β)の比率(β/α)>
化合物(1)の物質量(α)に対する化合物(2)の物質量(β)の比率(β/α)は、化合物(4)の収量が増える傾向にあり、化合物(4)を製造する方法の経済性が優れる傾向にあることから、0.5以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。未反応の化合物(1)が残ることを抑制できる傾向にあることから、1以上であることがさらに好ましい。
【0028】
化合物(1)の物質量(α)に対する化合物(2)の物質量(β)の比率(β/α)の上限は、特に限定されないが、化合物(2)の使用量が低減され、化合物(4)を製造する方法の経済性が優れる傾向にあることから、β/αが10以下であることが好ましく、同様の観点から、β/αが7以下であることがより好ましく、β/αが5以下であることがさらに好ましい。
【0029】
<化合物(1)の質量(γ)に対する化合物(3)の質量(δ)の比率(δ/γ)>
化合物(1)の質量(γ)に対する化合物(3)の質量(δ)の比率(δ/γ)は、化合物(1)と化合物(2)との反応性が高まる傾向にあることから、0.5以上であることが好ましく、同様の観点から、δ/γが1以上であることがより好ましく、δ/γが1.5以上であることがさらに好ましい。上記比率(δ/γ)の下限は、1.8以上、2.0以上、2.2以上、2.4以上に設定してもよい。
【0030】
化合物(1)の質量(γ)に対する化合物(3)の質量(δ)の比率(δ/γ)の上限は、特に限定されないが、化合物(3)の使用量が低減され、化合物(4)を製造する方法の経済性が優れる傾向にあることから、δ/γが20以下であることが好ましく、同様の観点から、δ/γが15以下であることがより好ましく、δ/γが10以下であることがさらに好ましい。上記比率(δ/γ)の上限は、8以下、6以下、4以下に設定してもよい。
【0031】
<化合物(1)と化合物(2)との反応>
化合物(1)と化合物(2)との反応温度は、一般的に用いられる反応温度であれば特に限定されないが、化合物(1)と化合物(2)との反応性が高まる傾向にあることから、-40℃以上であることが好ましく、-20℃以上であることがより好ましい。同様の観点、及び工業的に温度調整する際の経済性に優れる傾向にあることから、0℃以上であることがさらに好ましく、10℃以上であることが特に好ましい。
【0032】
化合物(1)と化合物(2)との反応温度の上限は、特に限定されないが、化合物(3)の揮発を抑制できる傾向にあることから、150℃以下であることが好ましく、100℃以下がより好ましい。化合物(1)と化合物(2)との副反応を抑制でき、化合物(4)の収率が高まる傾向にあることから、80℃以下であることがさらに好ましく、60℃以下であることが特に好ましい。
化合物(1)と化合物(2)の反応温度は、上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0033】
化合物(1)と化合物(2)との反応時間は、一般的に用いられる範囲であれば特に限定されないが、化合物(4)の収率の安定性がより高まることから、0.5時間以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましい。過剰な反応時間としないことで、経済性により優れる製造方法となる傾向にあることから、100時間以下であることが好ましく、同様の観点から50時間以下であることがより好ましく、20時間以下であることがさらに好ましい。
【0034】
化合物(1)と化合物(2)との反応圧力は、通常用いられる範囲であれば特に限定されず、通常は大気圧下で反応が行われる。ただし、化合物(3)の種類によっては、標準状態での蒸気圧が高いため、化合物(3)を液化させ、再利用しない場合には、大気圧以上の加圧を行うことが有効な手段である。化合物(3)を液化させ、再利用する場合には、大気圧以下の減圧であってもよい。
化合物(1)と化合物(2)との反応の圧力は、上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0035】
化合物(1)と化合物(2)との反応の雰囲気は、通常用いられる雰囲気であれば特に限定されず、通常は大気雰囲気、窒素雰囲気、及びアルゴン雰囲気等が用いられる。これらの中でも、より安全に化合物(4)を製造できる傾向にあることから、窒素雰囲気及びアルゴン雰囲気が好ましい。また、より経済性に優れる製造方法となる傾向にあることから、窒素雰囲気がより好ましい。
反応雰囲気は、1種単独で用いてもよいし、複数種の反応雰囲気を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
化合物(1)、(2)、(3)を添加する順序は特に限定されないが、化合物(1)と化合物(2)との反応は発熱反応であり、特に化合物(1)、(2)、(3)の使用量が多い場合には、副反応を抑制できる傾向にあることから、化合物(1)と化合物(3)との混合物を化合物(2)に徐々に添加する方法、化合物(1)と化合物(3)との混合物へ化合物(2)を徐々に添加する方法、化合物(2)と化合物(3)との混合物を化合物(1)に徐々に添加する方法、化合物(2)と化合物(3)の混合物へ化合物(1)を徐々に添加する方法が、好ましい方法として例示される。これらの中でも、局所的な発熱反応が抑制でき、副反応を抑制できる傾向にあることから、化合物(2)と化合物(3)との混合物を化合物(1)に徐々に添加する方法、化合物(2)と化合物(3)の混合物へ化合物(1)を徐々に添加する方法がより好ましい。
【0037】
以上のように、本発明は、従来よりも燃料電池用隔膜、燃料電池用触媒バインダーポリマー、食塩電解用隔膜等の主要成分であるフッ素系高分子電解質の原料として有用である含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(4)を収率よく製造することができる。
【実施例
【0038】
以下に本実施形態を具体的に説明した実施例を例示する。本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例及び比較例において使用された分析方法は、以下のとおりである。
【0040】
<核磁気共鳴分析(NMR):19F-NMRによる分子構造解析>
実施例及び比較例で得られた生成物について、19F-NMRを用いて、下記測定条件にて分子構造解析を行った。
[測定条件]
測定装置:JNM-ECZ400S型核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製)
観測核:19
溶媒:重クロロホルム
基準物質:テトラメチルシラン(0.00ppm)
観測周波数:400MHz(H)
パルス幅:6.5μ秒
待ち時間:2秒
積算回数:16回
【0041】
実施例及び比較例で使用した原材料を以下に示す。
【0042】
[製造例1]
(含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)(化合物(1))
特開2019/156782号公報に従い、下記式(7)で表される化合物(7)を製造した。
CF=CFOCFCFSONa (7)
得られた上記式(7)の化合物を用い、国際公開第2020/012913号に従い、下記式(8)で表される化合物(8)を製造した。
(CF=CFOCFCFSOO (8)
得られた化合物(8)は、純度が96重量%であり、下記式(9)で表される化合物(9)を4重量%含んでいた。
CF=CFOCFCFSOH (9)
【0043】
(アルカリ金属フッ化物(2)(化合物(2))
・フッ化リチウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・フッ化ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・フッ化カリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・フッ化ルビジウム(Aldrich社製、純度99.8%)
・フッ化セシウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
【0044】
(含フッ素ニトリル化合物(3)(化合物(3))
・フルオロアセトニトリル(東京化成工業株式会社製。以下、「FAN」ともいう。乾燥したモレキュラーシーブ4A 1/16(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、脱水し、モレキュラーシーブ4A 1/16を除去することにより含水量を調整した。)
・ジフルオロアセトニトリル(富士フィルム和光純薬株式会社製。以下、「DFAN」ともいう。乾燥したモレキュラーシーブ4A 1/16(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、脱水し、モレキュラーシーブ4A 1/16を除去することにより含水量を調整した。)
・2-フルオロベンゾニトリル(東京化成工業株式会社製。以下、「2FBN」ともいう。乾燥したモレキュラーシーブ4A 1/16(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、脱水し、モレキュラーシーブ4A 1/16を除去することにより含水量を調整した。)
・2,4,5-トリフルオロベンゾニトリル(富士フィルム和光純薬株式会社製。以下、「TFBN」ともいう。乾燥したモレキュラーシーブ4A 1/16(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、脱水し、モレキュラーシーブ4A 1/16を除去することにより含水量を調整した。)
・o-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(富士フィルム和光純薬株式会社製。以下、「TFMBN」ともいう。乾燥したモレキュラーシーブ4A 1/16(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、脱水し、モレキュラーシーブ4A 1/16を除去することにより含水量を調整した。)
・ペンタフルオロベンゾニトリル(東京化成工業株式会社製。以下、「PFBN」ともいう。乾燥したモレキュラーシーブ4A 1/16(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、脱水し、モレキュラーシーブ4A 1/16を除去することにより含水量を調整した。)
【0045】
(その他)
・2,2,2-トリフルオロエタノール(東京化成工業株式会社製)
・1,2-ジメトキシエタン(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
【0046】
[実施例1]
試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子とフッ化カリウム(0.17g、2.89mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、真空下150℃で5時間乾燥させ、室温に戻し、窒素雰囲気とした。加熱冷却攪拌装置を40℃に設定し、試験管にフルオロアセトニトリル(1.93g)を加え、攪拌した。続いて製造例1で製造した化合物(8)(1.00g、化合物(8)が0.96g(1.78mmol)と化合物(9)が0.04g(0.14mmol)からなる)を添加した。さらに1時間攪拌した後、室温に戻した。分析のため、1,2-ジメトキシエタン(2.00g)、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.10g)を加え、攪拌した。得られた反応混合物を、ろ過し、ろ液を19F-NMRにて分析した。分析の結果、下記一般式(10)で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.36g、生成物質量:1.29mmol、生成率:72.2%)。なお、分析においては、2,2,2-トリフルオロエタノールの質量、2,2,2-トリフルオロエタノールのCF及び含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)のCFの積分値より、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の生成量等を算出した。また、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の生成率は、下記式(1)により算出した。
含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の生成率(%)=含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の物質量/化合物(8)の物質量×100 (1)
例えば、本実施例における含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の生成率(%)=1.29(mmol)/1.78(mmol)×100=72.2、である。
また、本実施例では、β/αは1.6であり、δ/γは1.9であった。
CF=CFOCFCFSOF (10)
19F-NMR:δ(ppm)42.31(1F)、-86.42(2F)、-114.36(2F)、-116.60(1F)、-123.87(1F)、-139.00(1F)
【0047】
[実施例2]
フルオロアセトニトリルをジフルオロアセトニトリル(1.99g)とした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.37g、生成物質量:1.31mmol、生成率:73.5%)。
また、本実施例では、β/αは1.6であり、δ/γは2.0であった。
【0048】
[実施例3]
フルオロアセトニトリルを2-フルオロベンゾニトリル(2.03g)とした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.41g、生成物質量:1.47mmol、生成率:82.5%)。
また、本実施例では、β/αは1.6であり、δ/γは2.0であった。
【0049】
[実施例4]
フルオロアセトニトリルを2,4,5-トリフルオロベンゾニトリル(2.45g)とした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.43g、生成物質量:1.54mmol、生成率:86.5%)。
また、本実施例では、β/αは1.6であり、δ/γは2.4であった。
【0050】
[実施例5]
フルオロアセトニトリルをo-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(2.30g)とした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.44g、生成物質量:1.55mmol、生成率:87.1%)。
また、本実施例では、β/αは1.6であり、δ/γは2.3であった。
【0051】
[実施例6]
フルオロアセトニトリルをペンタフルオロベンゾニトリル(2.80g)とした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.46g、生成物質量:1.65mmol、生成率:92.3%)。
また、本実施例では、β/αは1.6であり、δ/γは2.8であった。
【0052】
[実施例7]
フッ化カリウムをフッ化リチウム(0.08g、2.89mmol)とした以外は、実施例6と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.41g、生成物質量:1.45mmol、生成率:81.3%)。
また、本実施例では、β/αは1.6であり、δ/γは2.8であった。
【0053】
[実施例8]
フッ化カリウムをフッ化ナトリウム(0.12g、2.89mmol)とした以外は、実施例6と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.42g、生成物質量:1.49mmol、生成率:83.6%)。
また、本実施例では、β/αは1.6であり、δ/γは2.8であった。
【0054】
[実施例9]
フッ化カリウムをフッ化ルビジウム(0.30g、2.89mmol)とした以外は、実施例6と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.47g、生成物質量:1.67mmol、生成率:93.5%)。
また、本実施例では、β/αは1.6であり、δ/γは2.8であった。
【0055】
[実施例10]
フッ化カリウムをフッ化セシウム(0.44g、2.89mmol)とした以外は、実施例6と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.47g、生成物質量:1.68mmol、生成率:94.1%)。
また、本実施例では、β/αは1.6であり、δ/γは2.8であった。
【0056】
[実施例11]
フッ化カリウムの使用量を0.11g(1.93mmol)とした以外は、実施例6と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.45g、生成物質量:1.61mmol、生成率:90.1%)。
また、本実施例では、β/αは1.1であり、δ/γは2.8であった。
【0057】
[実施例12]
フッ化カリウムの使用量を0.50g(8.67mmol)とした以外は、実施例6と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.47g、生成物質量:1.66mmol、生成率:93.2%)。
また、本実施例では、β/αは4.9であり、δ/γは2.8であった。
【0058】
[実施例13]
ペンタフルオロベンゾニトリルの使用量を9.33gとし、加熱冷却攪拌装置を60℃に設定した以外は、実施例6と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.46g、生成物質量:1.64mmol、生成率:91.8%)。
また、本実施例では、β/αは1.6であり、δ/γは9.3であった。
【0059】
[実施例14]
試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子とフッ化カリウム(0.50g、8.67mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、真空下150℃で5時間乾燥させ、室温に戻し、窒素雰囲気とした。加熱冷却攪拌装置を10℃に設定し、試験管にペンタフルオロベンゾニトリル(2.80g)を加え、攪拌した。続いて製造例1で製造した化合物(8)(1.00g、化合物(8)が0.96g(1.78mmol)と化合物(9)が0.04g(0.14mmol)からなる)を添加した。さらに4時間攪拌した後、室温に戻した。分析のため、1,2-ジメトキシエタン(2.00g)、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.10g)を加え、攪拌した。得られた反応混合物を、ろ過し、ろ液を19F-NMRにて分析した。分析の結果、下記一般式(10)で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.47g、生成物質量:1.67mmol、生成率:93.7%)。
また、本実施例では、β/αは4.9であり、δ/γは2.8であった。
【0060】
[比較例1]
比較例として、国際公開第2020/012913号の実施例5を示す。該実施例においては、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の生成率は、60.2%、であった。また、β/αは1.6であり、δ/γは4.2であった。
【0061】
[比較例2]
比較例として、国際公開第2020/012913号の実施例6を示す。該実施例においては、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の生成率は、64.1%、であった。また、β/αは1.5であり、δ/γは4.2であった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の製造方法によれば、従来よりも収率よく含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(4)を製造することができるため、各種フッ素含有化合物、イオン交換樹脂、イオン交換膜、食塩電解膜、燃料電池膜、レドックスフロー電池用膜、水電解用膜等の原料の製造において好適に用いることができる。