(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】車両制御装置、および制御方法
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20240719BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20240719BHJP
B60T 8/1755 20060101ALI20240719BHJP
B60T 8/00 20060101ALI20240719BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20240719BHJP
B60W 30/045 20120101ALI20240719BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20240719BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
B60L15/20 S
B62D6/00
B60T8/1755 A
B60T8/00 Z
B60T7/12 B
B60W30/045
B62D101:00
B62D113:00
(21)【出願番号】P 2021006630
(22)【出願日】2021-01-19
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 正俊
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-073534(JP,A)
【文献】特開2019-142491(JP,A)
【文献】特開2016-199195(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0232848(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-58/40
B62D 6/00
B60T 8/1755
B60T 8/00
B60T 7/12
B60W 30/045
B62D 101/00
B62D 113/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つ以上の駆動輪をそれぞれ異なるモータによって回転させる車両を制御する車両制御装置であって、
前記モータで発生させるトルクを制御するモータ制御部
を備え、
前記モータ制御部は
、
車両旋回時にオーバーステアが発生した場合には、旋回に対して外側の前輪を回転させるモータに制動トルクを発生させ、かつ旋回に対して内側の後輪を回転させるモータにおける駆動トルクを増加させる、オーバーステア時制御を行
い、
前記車両の実ヨーレートの発生方向が反転したと判定すると、前記オーバーステア時制御を終了する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
4つ以上の駆動輪をそれぞれ異なるモータによって回転させる車両を制御する車両制御装置であって、
前記モータで発生させるトルクを制御するモータ制御部
を備え、
前記モータ制御部は
、
車両旋回時にオーバーステアが発生した場合には、旋回に対して外側の前輪を回転させるモータに制動トルクを発生させ、かつ旋回に対して内側の後輪を回転させるモータにおける駆動トルクを増加させる、オーバーステア時制御を行
い、
前記オーバーステア時制御を行っている際に、運転者によってカウンター操作が行われた場合には、前記制動トルクを減少させる、カウンター操作時制御を行う
ことを特徴とす
る車両制御装置。
【請求項3】
前記モータ制御部は、前記カウンター操作時制御では、前記駆動輪のうち操舵輪を回転させるモータによって優先的に駆動トルクを発生させる
ことを特徴とする請求項
2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
4つ以上の駆動輪をそれぞれ異なるモータによって回転させる車両を制御する車両制御装置であって、
前記モータで発生させるトルクを制御するモータ制御部
を備え、
前記モータ制御部は
、
車両旋回時にオーバーステアが発生した場合には、旋回に対して外側の前輪を回転させるモータに制動トルクを発生させ、かつ旋回に対して内側の後輪を回転させるモータにおける駆動トルクを増加させる、オーバーステア時制御を行
い、
前記オーバーステアが発生している際に、運転者によってブレーキペダルが踏まれた場合には、通常制御に復帰する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
前記モータ制御部は、車両旋回時にアンダーステアが発生した場合には、旋回に対して内側の後輪を回転させるモータに制動トルクを発生させ、かつ旋回に対して外側の前輪を回転させるモータにおける駆動トルクを増加させる、アンダーステア時制御を行う
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記モータ制御部は、前記オーバーステア時制御を終了させるか否かを、前記車両の実ヨーレートの発生方向に基づいて判定し、前記アンダーステア時制御を終了させるか否かを、前記車両の目標ヨーレートと前記車両の実ヨーレートとの偏差に基づいて判定する
ことを特徴とする請求項5に記載の車両制御装置。
【請求項7】
4つ以上の駆動輪をそれぞれ異なるモータによって回転させる車両を制御する車両制御装置であって、
前記モータで発生させるトルクを制御するモータ制御部
を備え、
前記モータ制御部は
、
車両旋回時にアンダーステアが発生した場合には、旋回に対して内側の後輪を回転させるモータに制動トルクを発生させ、かつ旋回に対して外側の前輪を回転させるモータにおける駆動トルクを増加させる、アンダーステア時制御を行
い、
前記車両の目標ヨーレートと前記車両の実ヨーレートとの偏差が所定の閾値以下になったと判定すると、前記アンダーステア時制御を終了する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項8】
4つ以上の駆動輪をそれぞれ異なるモータによって回転させる車両を制御する車両制御装置であって、
前記モータで発生させるトルクを制御するモータ制御部
を備え、
前記モータ制御部は
、
車両旋回時にアンダーステアが発生した場合には、旋回に対して内側の後輪を回転させるモータに制動トルクを発生させ、かつ旋回に対して外側の前輪を回転させるモータにおける駆動トルクを増加させる、アンダーステア時制御を行
い、
前記アンダーステアが発生している際に、運転者によってブレーキペダルが踏まれた場合には、通常制御に復帰する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項9】
4つ以上の駆動輪をそれぞれ異なるモータによって回転させる車両を制御する制御方法であって、
車両旋回時にオーバーステアが発生した場合に、旋回に対して外側の前輪を回転させるモータに制動トルクを発生させ、
かつ旋回に対して内側の後輪を回転させるモータにおける駆動トルクを増加させ
、
前記車両の実ヨーレートの発生方向が反転したと判定すると、前記制動トルクの発生を終了し、かつ前記駆動トルクの増加を終了させる
ことを特徴とする制御方法。
【請求項10】
4つ以上の駆動輪をそれぞれ異なるモータによって回転させる車両を制御する制御方法であって、
車両旋回時にオーバーステアが発生した場合に、旋回に対して外側の前輪を回転させるモータに制動トルクを発生させ、
かつ旋回に対して内側の後輪を回転させるモータにおける駆動トルクを増加させ
、
前記制動トルクを発生させ、かつ前記駆動トルクを増加させている際に、運転者によってカウンター操作が行われた場合には、前記制動トルクを減少させる
ことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
4つ以上の駆動輪をそれぞれ異なるモータによって回転させる車両を制御する制御方法であって、
車両旋回時にオーバーステアが発生した場合に、旋回に対して外側の前輪を回転させるモータに制動トルクを発生させ、
かつ旋回に対して内側の後輪を回転させるモータにおける駆動トルクを増加させ、
前記オーバーステアが発生している際に、運転者によってブレーキペダルが踏まれた場合には、通常制御に復帰する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
4つ以上の駆動輪をそれぞれ異なるモータによって回転させる車両を制御する制御方法であって、
車両旋回時にアンダーステアが発生した場合に、旋回に対して内側の後輪を回転させるモータに制動トルクを発生させ、
かつ旋回に対して外側の前輪を回転させるモータにおける駆動トルクを増加させ
、
前記車両の目標ヨーレートと前記車両の実ヨーレートとの偏差が所定の閾値以下になったと判定すると、前記制動トルクの発生を終了し、かつ前記駆動トルクの増加を終了させる
ことを特徴とする制御方法。
【請求項13】
4つ以上の駆動輪をそれぞれ異なるモータによって回転させる車両を制御する制御方法であって、
車両旋回時にアンダーステアが発生した場合に、旋回に対して内側の後輪を回転させるモータに制動トルクを発生させ、
かつ旋回に対して外側の前輪を回転させるモータにおける駆動トルクを増加させ
、
前記アンダーステアが発生している際に、運転者によってブレーキペダルが踏まれた場合には、通常制御に復帰させる
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、4つの車輪にそれぞれ制動力を発生させることが可能な車両において、旋回時に目標とする旋回半径(旋回ライン)に対し、実際の旋回半径(旋回ライン)がずれている場合に、所定の車輪において制動力を発生させることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、車両を目標とする旋回ラインに早期に復帰させる点について、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、車両が目標とする旋回ラインからずれた場合に、車両を目標とする旋回ラインに早期に復帰させる車両制御装置、および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る車両制御装置は、4つ以上の駆動輪をそれぞれ異なるモータによって回転させる車両を制御する。車両制御装置は、モータで発生させるトルクを制御するモータ制御部を備える。モータ制御部は、車両旋回時にオーバーステアが発生した場合には、旋回に対して外側の前輪を回転させるモータに制動トルクを発生させ、かつ旋回に対して内側の後輪を回転させるモータにおける駆動トルクを増加させる、オーバーステア時制御を行う。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、車両が目標とする旋回ラインからずれた場合に、車両を目標とする旋回ラインに早期に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1B】
図1Bは、オーバーステアが発生した場合の制御方法を示す図である。
【
図1C】
図1Cは、アンダーステアが発生した場合の制御方法を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る車両の一部を説明する概略図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、車両要求トルクを算出するためのマップである。
【
図5】
図5は、アンダーステアが発生している場合に発生させる制動トルクを算出するためのマップである。
【
図6】
図6は、アンダーステアが発生している場合に発生させる駆動トルクを算出するためのマップである。
【
図7A】
図7Aは、実施形態に係る横滑り抑制処理を説明するフローチャートである。
【
図7B】
図7Bは、実施形態に係る横滑り抑制処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る車両制御装置、および制御方法について詳細に説明する。なお、本実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
実施形態に係る制御方法について、
図1A~
図1Cを参照し説明する。
図1Aは、車両Cの旋回コースを示す図である。
図1Bは、オーバーステアが発生した場合の制御方法を示す図である。
図1Cは、アンダーステアが発生した場合の制御方法を示す図である。
【0011】
実施形態に係る制御方法は、制御装置10(車両制御装置)によって実行される。制御装置10は、車両Cに搭載される。車両Cは、例えば、4つの駆動輪1を有する。なお、車両Cは、4つ以上の駆動輪1を有してもよい。車両Cは、各駆動輪1をそれぞれ異なるモータ2によって回転させる。モータ2は、いわゆる、インホイールモータである。
【0012】
以下では、4つの駆動輪1を有する車両Cを一例として説明する。車両Cの左前方の駆動輪1を「左前輪1FL」、車両Cの右前方の駆動輪1を「右前輪1FR」、車両Cの左後方の駆動輪1を「左後輪1RL」、および車両Cの右後方の駆動輪1を「右後輪1RR」と称する場合がある。また、左前輪1FLを回転させるモータ2を「左前輪用モータ2FL」、右前輪1FRを回転させるモータ2を「右前輪用モータ2FR」、左後輪1RLを回転させるモータ2を「左後輪用モータ2RL」、および右後輪1RRを回転させるモータ2を「右後輪用モータ2RR」と称する場合がある。また、車両Cの前方の駆動輪1を「前輪1F」、および車両Cの後方の駆動輪1を「後輪1R」と称する場合がある。
【0013】
車両Cがハンドル角に基づいて旋回する場合には、車両Cに横滑りを生じさせずに、破線の矢印で示すように、車両Cは、ハンドル角に応じた所定の旋回コースに沿って旋回することが望ましい。車両Cに横滑りが生じると、車両Cは、オーバーステア、またはアンダーステアとなることがある。
【0014】
オーバーステアとは、二点鎖線の矢印で示すように、所定の旋回コースよりも旋回半径の内側に切れ込んだコースを車両Cが走行する状態である。オーバーステアは、例えば、後輪1Rに横滑りが発生することで生じる。
【0015】
アンダーステアとは、一点鎖線の矢印で示すように、所定の旋回コースよりも旋回半径の外側に膨らんだコースを車両Cが走行する状態である。アンダーステアは、例えば、前輪1Fに横滑りが発生することで生じる。
【0016】
実施形態に係る制御方法は、車両Cの旋回時に、横滑りが生じた場合に、モータ2のトルクを制御することで、横滑りを抑制することとした。
【0017】
制御装置10は、オーバーステアが発生した場合には、
図1Bに示すように、旋回に対して外側の前輪1Fを回転させるモータ2に制動トルクを発生させる。制動トルクとは、駆動輪1に制動力を発生させるトルクである。制動トルクは、負のトルクである。また、制御装置10は、旋回に対して内側の後輪1Rを回転させるモータ2における駆動トルクを増加させる。駆動トルクとは、駆動輪1に駆動力を発生させるトルクである。駆動トルクは、正のトルクである。
【0018】
例えば、車両Cが右旋回している場合には、制御装置10は、左前輪用モータ2FLに制動トルクを発生させ、かつ右後輪用モータ2RRにおける駆動トルクを増加させる。
【0019】
これによって、車両Cには、左回りのヨーモーメントが発生し、車両Cは、所定の旋回コースに近づきながら、旋回する。
【0020】
制御装置10は、アンダーステアが発生した場合には、
図1Cに示すように、旋回に対して内側の後輪1Rを回転させるモータ2に制動トルクを発生させる。また、制御装置10は、旋回に対して外側の前輪1Fを回転させるモータ2における駆動トルクを増加させる。
【0021】
例えば、車両Cが右旋回している場合には、制御装置10は、右後輪用モータ2RRに制動トルクを発生させ、かつ左前輪用モータ2FLにおける駆動トルクを増加させる。
【0022】
これによって、車両Cには、右回りのヨーモーメントが発生し、車両Cは、所定の旋回コースに近づきながら、旋回する。
【0023】
このように、制御装置10は、オーバーステア、またはアンダーステアが発生した場合に、駆動輪1を回転させるモータ2のトルクを制御することによって、オーバーステア、またはアンダーステアを抑制する。そのため、制御装置10は、車両Cを所定の旋回コースに早期に復帰させることができる。
【0024】
なお、4つよりも多い駆動輪1を有する車両Cは、例えば、左右方向における車両Cの片側の前後方向に並ぶように、3つ以上の駆動輪1が設けられる。また、左右方向における車両Cの片側に、左右方向に複数の駆動輪1が並ぶように設けられてもよい。また、車両Cの中央付近に車輪(駆動輪)を追加で設けてもよい。
【0025】
このような場合、例えば、制御装置10は、最も外側であり、かつ最も前側の前輪1Fのトルクと、最も内側であり、かつ最も後側の後輪1Rのトルクとの2つのみを制御する。また、例えば、制御装置10は、最も外側であり、かつ最も後側の後輪1Rと、最も内側であり、かつ最も前側の前輪1Fとの2つ以外の駆動輪1のトルクを制御する。また、例えば、制御装置10は、車両Cの中央よりも前方か後方かによって前輪か後輪かに分け、また、車両Cの中央よりも左方か右方かによって左輪か右輪に分けることで、右前・左前・右後ろ・左後ろの4つのグループに分けて、各グループに該当する駆動輪1のトルクを制御する(例えば、外側前輪を制御する場合で、外側が右輪側である場合には、右前グループに含まれる駆動輪1を外側前輪グループとして制御する)。
【0026】
次に、実施形態に係る車両Cについて
図2を参照し説明する。
図2は、実施形態に係る車両Cの一部を説明する概略図である。
【0027】
車両Cは、4つの駆動輪1と、4つのモータ2と、バッテリ3と、制御装置10とを備える。
【0028】
4つの駆動輪1は、左前輪1FL、右前輪1FR、左後輪1RL、および右後輪1RRを含む。車両Cに旋回要求がされた場合、例えば、ステアリング5が運転者によって操作された場合には、左前輪1FL、および右前輪1FRは、旋回方向に向けて転舵される。すなわち、左前輪1FL、および右前輪1FRは、操舵輪である。なお、操舵輪は、左後輪1RL、および右後輪1RRであってもよい。
【0029】
4つのモータ2は、左前輪用モータ2FL、右前輪用モータ2FR、左後輪用モータ2RL、および右後輪用モータ2RRを含む。
【0030】
各モータ2は、それぞれ異なる駆動輪1に取り付けられる。各モータ2には、バッテリ3から電力が供給される。各モータ2におけるトルクは、制御装置10から入力される制御信号に基づいて制御される。具体的には、各モータ2は、制御信号に基づいて駆動トルク、または制動トルクをそれぞれ発生させる。各モータ2によって発生されたトルクは、各駆動輪1に伝達される。
【0031】
制御装置10は、各モータ2を個別に制御するコントローラである。制御装置10は、例えば、アクセルペダルの操作量や、ブレーキペダルの操作量などに応じて制御信号を、各モータ2に出力し、各モータ2を制御する。
【0032】
例えば、アクセルペダルが操作されて、車両Cに加速要求がされた場合には、制御装置10は、車両Cを加速させる駆動トルクが各モータ2から各駆動輪1へ出力されるように、各モータ2を制御する。これにより、車両Cは、加速走行を行う。
【0033】
また、例えば、ブレーキペダルが操作されて、車両Cに減速要求がされた場合には、制御装置10は、車両Cを減速させる制動トルクが各モータ2から各駆動輪1へ出力されるように、各モータ2を制御する。これにより、車両Cは、減速走行を行う。なお、車両Cは、減速要求がされた場合に、機械式のブレーキを用いて、減速走行を行ってもよい。
【0034】
また、例えば、ステアリング5が操作されて、車両Cに旋回要求がされた場合には、制御装置10は、上記するように左前輪1FL、および右前輪1FRを転舵させる。また、制御装置10は、旋回時に、車両Cに横滑りが発生する場合には、横滑り抑制処理を実行する。横滑り抑制処理については後述する。
【0035】
次に、実施形態に係る制御装置10の構成について
図3を参照し説明する。
図3は、実施形態に係る制御装置10の構成を示すブロック図である。なお、
図3では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを機能ブロックで表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0036】
換言すれば、
図3に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0037】
制御装置10は、制御部11(モータ制御部)と、記憶部12とを備える。記憶部12は、例えば、不揮発性メモリやデータフラッシュ、ハードディスクドライブといった記憶デバイスで構成される。記憶部12には、マップ情報、各種プログラムなどが記憶される。
【0038】
制御部11は、検出部13と、算出部14と、判定部15と、設定部16とを備える。制御部11は、例えば、CPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0039】
コンピュータのCPUは、例えば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部11の検出部13、算出部14、判定部15、および設定部16として機能する。
【0040】
また、制御部11の検出部13、算出部14、判定部15、および設定部16の少なくともいずれか一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0041】
検出部13には、車両Cに設けられた各種センサから信号が入力される。各種センサは、舵角センサ30、ヨーレートセンサ31、車速センサ32、アクセル開度センサ33、ブレーキセンサ34などを含む。
【0042】
検出部13は、舵角センサ30から入力される信号に基づいて操舵輪の舵角θを検出する。舵角センサ30は、左前輪1FL、および右前輪1FRにそれぞれ設けられる。すなわち、検出部13は、左前輪1FLにおける舵角θ、および右前輪1FRにおける舵角θをそれぞれ検出する。なお、以下においては、旋回時に内側となる前輪1Fの舵角を「θ1」とし、旋回時に外側となる前輪1Fの舵角を「θ2」と称する場合がある。
【0043】
検出部13は、ヨーレートセンサ31から入力される信号に基づいて車両Cにおける現在のヨーレートYawreal(以下、「実ヨーレートYawreal」と称する。)を検出する。
【0044】
検出部13は、車速センサ32から入力される信号に基づいて車速Spdを検出する。検出部13は、アクセル開度センサ33から入力される信号に基づいてアクセルペダルの踏み込み量であるアクセル開度Accelを検出する。
【0045】
検出部13は、ブレーキセンサ34から入力される信号に基づいてブレーキペダルの踏み込み量を検出する。
【0046】
算出部14は、車両要求トルクCartrqを算出する。算出部14は、車速Spd、およびアクセル開度Accelに基づいて、
図4に示すマップから車両要求トルクCartrqを算出する。
図4は、車両要求トルクCartrqを算出するためのマップである。算出部14は、マップを用いずに、計算式などから車両要求トルクCartrqを算出してもよい。以下において、同様に、マップを用いた算出は、計算式などによる算出であってもよい。
【0047】
算出部14は、推定旋回半径Radを算出する。算出部14は、ホイールベースL、旋回時に内側となる前輪1Fの舵角θ1、および旋回時に外側となる前輪1Fの舵角θ2に基づいて、式(1)を用いて推定旋回半径Radを算出する。
【0048】
Rad=(L/sinθ1+L/tanθ2)/2・・・(1)
【0049】
算出部14は、目標ヨーレートYawtagを算出する。算出部14は、車速Spd、および推定旋回半径Radに基づいて目標ヨーレートYawtagを算出する。算出部14は、式(2)を用いて目標ヨーレートYawtagを算出する。
【0050】
Yawtag=Spd2/Rad・・・(2)
【0051】
算出部14は、ヨーレート偏差Delyawを算出する。算出部14は、目標ヨーレートYawtagと実ヨーレートYawrealとの偏差をヨーレート偏差Delyawとして算出する。
【0052】
判定部15は、ブレーキペダルが踏み込まれ、運転者によってブレーキ操作がされたか否かを判定する。具体的には、判定部15は、ブレーキペダルの踏み込み量が、予め設定された所定踏み込み量よりも大きいか否かを判定する。判定部15は、ブレーキペダルの踏み込み量が、所定踏み込み量よりも大きい場合に、運転者によってブレーキ操作がされたと判定する。所定踏み込み量は、車両Cに制動力を発生させる踏み込み量である。
【0053】
判定部15は、アンダーステアが発生したか否かを判定する。具体的には、判定部15は、ヨーレート偏差Delyawと、目標ヨーレートYawtagにアンダーステア判定係数Usgainを乗算した値とを比較する。
【0054】
判定部15は、ヨーレート偏差Delyawが、目標ヨーレートYawtagにアンダーステア判定係数Usgainを乗算した値よりも大きい場合に、新規のアンダーステアが発生したと判定する。換言すると、判定部15は、実ヨーレートYawrealが目標ヨーレートYawtagに対して十分に小さい場合に、新規のアンダーステアが発生したと判定する。アンダーステア判定係数Usgainは、予め設定された値であり、車両Cが目標ヨーレートYawtagに応じた旋回ラインに対して、新規のアンダーステアが発生したと判定可能な値である。
【0055】
判定部15は、ヨーレート偏差Delyawが、目標ヨーレートYawtagにアンダーステア判定係数Usgainを乗算した値以下である場合に、新規のアンダーステアが発生していないと判定する。判定部15は、ヨーレート偏差Delyawが、目標ヨーレートYawtagにアンダーステア判定係数Usgainを乗算した値以下である場合、アンダーステアが発生していない、もしくは、アンダーステア発生中であると判定する。
【0056】
なお、判定部15は、アンダーステア中であっても、ヨーレート偏差Delyawが、目標ヨーレートYawtagにアンダーステア判定係数Usgainを乗算した値よりも大きくなると、新規のアンダーステアが発生したと判定する。
【0057】
判定部15は、オーバーステアが発生したか否かを判定する。具体的には、判定部15は、ヨーレート偏差Delyawと、目標ヨーレートYawtagにオーバーステア判定係数Osgainを乗算した値とを比較する。
【0058】
判定部15は、ヨーレート偏差Delyawが、目標ヨーレートYawtagにオーバーステア判定係数Osgainを乗算した値よりも小さい場合に、新規のオーバーステアが発生したと判定する。換言すると、判定部15は、実ヨーレートYawrealが目標ヨーレートYawtagに対して十分に大きい場合に、新規のオーバーステアが発生したと判定する。オーバーステア判定係数Osgainは、予め設定された値であり、車両Cが目標ヨーレートYawtagに応じた旋回ラインに対して、新規のオーバーステアが発生したと判定可能な値である。
【0059】
判定部15は、ヨーレート偏差Delyawが、目標ヨーレートYawtagにオーバーステア判定係数Osgainを乗算した値以上である場合に、新規のオーバーステアが発生していないと判定する。判定部15は、ヨーレート偏差Delyawが、目標ヨーレートYawtagにオーバーステア判定係数Osgainを乗算した値以上である場合、オーバーステアが発生していない、もしくは、オーバーステア発生中であると判定する。
【0060】
なお、判定部15は、オーバーステアが発生中であっても、ヨーレート偏差Delyawが、目標ヨーレートYawtagにオーバーステア判定係数Osgainを乗算した値よりも小さくなると、新規のオーバーステアが発生したと判定する。
【0061】
判定部15は、アンダーステアが発生中であるか否かを判定する。具体的には、判定部15は、アンダーステアフラグUsfrgが「ON」であるか否かを判定する。判定部15は、アンダーステアフラグUsfrgが「ON」である場合に、アンダーステアが発生中であると判定する。
【0062】
判定部15は、オーバーステアが発生中であるか否かを判定する。具体的には、判定部15は、オーバーステアフラグOsfrgが「ON」であるか否かを判定する。判定部15は、オーバーステアフラグOsfrgが「ON」である場合に、オーバーステアが発生中であると判定する。
【0063】
判定部15は、アンダーステアが発生中である場合には、アンダーステア復帰条件を満たすか否かを判定する。具体的には、判定部15は、ヨーレート偏差Delyawが、所定の閾値以下である場合、およびブレーキ操作が行われた場合の少なくとも一方を満たす場合に、アンダーステア復帰条件を満たすと判定する。所定の閾値は、目標ヨーレートYawtagにアンダーステア収束判定係数Usfingainを乗算した値である。アンダーステア収束判定係数Usfingainは、予め設定された値であり、アンダーステアが収束していると判定可能な値である。判定部15は、アンダーステアが発生し、後述するアンダーステア時制御を実行されている場合に、アンダーステア時制御を終了させるか否かを、目標ヨーレートYawtagと実ヨーレートYawrealとの偏差に基づいて判定する。
【0064】
判定部15は、オーバーステアが発生している場合には、オーバーステア復帰条件を満たすか否かを判定する。具体的には、判定部15は、実ヨーレートYawrealの符号が反転した場合、およびブレーキ操作が行われた場合の少なくとも一方を満たす場合に、オーバーステア復帰条件を満たすと判定する。実ヨーレートYawrealの符号は、ヨーレートセンサ31のセンサ値におけるプラス、またはマイナスを示す符号である。実ヨーレートYawrealの符号が反転とは、実ヨーレートYawrealの発生方向が反転することを表す。判定部15は、例えば、ヨーレートセンサ31から出力される信号に基づいて検出された実ヨーレートYawrealと、所定時間前(例えば、前回の検出)における実ヨーレートYawrealとの乗算値が、負の値である場合に実ヨーレートYawrealの符号が反転したと判定する。判定部15は、オーバーステアが発生し、後述するオーバーステア時制御が実行されている場合に、オーバーステア時制御を終了させるか否かを、実ヨーレートYawrealの発生方向に基づいて判定する。
【0065】
判定部15は、オーバーステアが発生している場合に、運転者によってカウンター操作が実行されたか否かを判定する。カウンター操作とは、旋回方向に車両Cが旋回するように操作されたステアリング5が、反対方向に回転するように操作されることである。判定部15は、実ヨーレートYawrealの方向と、前輪1Fの舵角θの方向とが反対方向となっている場合に、カウンター操作が実行されたと判定する。
【0066】
例えば、
図1Bに示す例では、実ヨーレートYawrealが右旋回状態を示し、前輪1Fの舵角θが左方向の操舵である場合に、判定部15は、カウンター操作が実行されたと判定する。
【0067】
設定部16は、判定部15によってアンダーステアが発生したと判定された場合には、アンダーステアフラグUsfrgを「ON」にする。なお、設定部16は、アンダーステアフラグUsfrgを「ON」にする際に、オーバーステアフラグOsfrgが「ON」となっている場合には、オーバーステアフラグOsfrgを「OFF」にする。
【0068】
設定部16は、判定部15によってオーバーステアが発生したと判定された場合には、オーバーステアフラグOsfrgを「ON」にする。なお、設定部16は、オーバーステアフラグOsfrgを「ON」にする際に、アンダーステアフラグUsfrgが「ON」となっている場合には、アンダーステアフラグUsfrgを「OFF」にする。
【0069】
設定部16は、アンダーステアの発生中に、判定部15によってアンダーステア復帰条件が満たされたと判定された場合には、アンダーステアフラグUsfrgを「OFF」にする。設定部16は、オーバーステアの発生中に、判定部15によってオーバーステア復帰条件が満たされたと判定された場合には、オーバーステアフラグOsfrgを「OFF」にする。
【0070】
設定部16は、各モータ2で発生させるトルクを設定する。設定部16は、アンダーステア、またはオーバーステアが発生していない場合、具体的には、アンダーステアフラグUsfrgが「OFF」であり、かつオーバーステアフラグOsfrgが「OFF」である場合には、通常制御を行う。設定部16は、アンダーステア、およびオーバーステアが発生していない場合、各モータ2におけるトルクを通常トルクに設定する。設定部16は、車両要求トルクCartrqをモータ2の数で除算し、除算した値を各モータ2における通常トルクとして設定する。例えば、設定部16は、車両要求トルクCartrqを、4等分したトルクを、各モータ2における通常トルクとして設定する。通常トルクは、正のトルクであり、駆動トルクである。
【0071】
例えば、設定部16は、アンダーステア、またはオーバーステアが発生している場合に、運転者によってブレーキ操作がされた場合には、通常制御を行う。すなわち、設定部16は、アンダーステア、またはオーバーステアが発生している場合に、運転者によってブレーキ操作がされた場合には、通常制御に復帰させる。設定部16は、車両要求トルクを4つの駆動輪1によって発生するように通常トルクを設定する。
【0072】
設定部16は、アンダーステアが発生している場合には、アンダーステア時制御を行う。設定部16は、アンダーステアが発生している場合には、各モータ2におけるトルクをアンダーステアトルクに設定する。設定部16は、ヨーレート偏差Delyawが小さくなるように、制動トルク、および駆動トルクを設定する。
【0073】
具体的には、設定部16は、ヨーレート偏差Delyawと、車速Spdとに基づいて、
図5に示すマップから制動トルクを算出し、算出した制動トルクを、旋回に対して内側の後輪1Rを回転させるモータ2におけるアンダーステアトルクとして設定する。
図5は、アンダーステアが発生している場合に発生させる制動トルクを算出するためのマップである。
【0074】
また、設定部16は、ヨーレート偏差Delyawと、車速Spdとに基づいて、
図6に示すマップから駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクを、旋回に対して外側の前輪1Fを回転させるモータ2におけるアンダーステアトルクとして設定する。
図6は、アンダーステアが発生している場合に発生させる駆動トルクを算出するためのマップである。
【0075】
設定部16は、車速Spdに基づいて制動トルク、および駆動トルクを設定する。これにより、例えば、車速Spdが大きい場合には、所定の旋回コースにより早期に復帰するように、制動トルク、および駆動トルクが発生する。また、例えば、車速Spdが小さい場合には、搭乗者の急激な姿勢変化が起こらないように、制動トルク、および駆動トルクが発生する。すなわち、制御装置10は、車両Cの走行状態に応じた制動トルク、および駆動トルクを発生させることができる。
【0076】
なお、車両Cは、4輪よりも多い駆動輪1を備え、制動トルクが与えられる駆動輪1が複数ある場合、設定部16は、制動トルクを等分し、制動トルクが複数の駆動輪1に均等に与えられるように、各駆動輪1における制動トルクを設定する。また、駆動トルクが与えられる駆動輪1が複数ある場合、設定部16は、駆動トルクを等分し、駆動トルクが複数の駆動輪1に均等に与えられるように、各駆動輪1における駆動トルクを設定する。設定部16は、制動トルク、または駆動トルクを複数の駆動輪1に与える場合、各駆動輪1に与える制動トルク、または各駆動輪1に与える駆動トルクを、より付与効果が高い駆動輪1の割合が大きくなるように、配分してもよい。例えば、複数の左前輪1FLに駆動トルクを与える場合、設定部16は、複数の左前輪1FLのなかで、より左側でかつより前側の車輪に与える駆動トルクの割合が、他の左前輪1FLよりも大きくなるように、各左前輪1FLにおける駆動トルクを設定する。
【0077】
また、設定部16は、アンダーステアが発生した場合には、旋回に対して内側の前輪1Fを回転させるモータ2、および旋回に対して外側の後輪1Rを回転させるモータ2におけるトルクをゼロに設定する。すなわち、旋回に対して内側の前輪1Fを回転させるモータ2、および旋回に対して外側の後輪1Rを回転させるモータ2におけるアンダーステアトルクは、ゼロである。そのため、旋回に対して内側の前輪1F、および旋回に対して外側の後輪1Rは、モータ2からトルクの伝達が行われない。
【0078】
アンダーステアが発生した場合に、旋回に対して内側の前輪1Fを回転させるモータ2、および旋回に対して外側の後輪1Rを回転させるモータ2におけるトルクは、ゼロに設定される。そのため、アンダーステアが発生した場合に、車両Cの急激な車速Spd変化を抑制するために、旋回に対して外側の前輪1Fを回転させるモータ2における駆動トルクは、増加される。
【0079】
例えば、車両Cが、右旋回しており、アンダーステアが発生した場合には、設定部16は、右後輪1RRを回転させる右後輪用モータ2RRに制動トルクを発生させ、かつ左前輪1FLを回転させる左前輪用モータ2FLにおける駆動トルクを増加させる。また、設定部16は、左後輪1RLを回転させる左後輪用モータ2RL、および右前輪1FRを回転させる右前輪用モータ2FRにおけるトルクをゼロとする。
【0080】
また、車両Cが、左旋回しており、アンダーステアが発生した場合には、設定部16は、左後輪1RLを回転させる左後輪用モータ2RLに制動トルクを発生させ、かつ右前輪1FRを回転させる右前輪用モータ2FRにおける駆動トルクを増加させる。また、設定部16は、右後輪1RRを回転させる右後輪用モータ2RR、および左前輪1FLを回転させる左前輪用モータ2FLにおけるトルクをゼロにする。
【0081】
なお、設定部16は、旋回に対して内側の前輪1Fを回転させるモータ2におけるトルクをゼロとはせずに、わずかに制動トルクを発生させてもよい。また、設定部16は、旋回に対して外側の後輪1Rを回転させるモータ2におけるトルクをゼロとはせずに、わずかに駆動トルクを発生させてもよい。すなわち、設定部16は、アンダーステアが発生した場合には、旋回に対して内側の前輪1Fを回転させるモータ2におけるトルク、および旋回に対して外側の後輪1Rを回転させるモータ2におけるトルクを、通常トルクよりも減少させる。その際、設定部16は、増やす分のトルクと減らす分のトルクとが、差し引きでゼロになるように、各トルクを設定するとよい。
【0082】
設定部16は、アンダーステアトルクとして算出される駆動トルクと制動トルクとの合計トルクが、車両要求トルクCartrqよりも大きい場合には、駆動トルクを制限する。すなわち、設定部16は、駆動トルクよりも制動トルクを優先して与えるように設定する。具体的には、設定部16は、制動トルクを変更せずに、駆動トルクと制動トルクとの合計トルクが、車両要求トルクCartrqとなるように、駆動トルクを制限する。すなわち、アンダーステアが発生している場合に、旋回に対して外側の前輪1Fを回転させるモータ2における駆動トルクの上限トルクは、車両要求トルクCartrqに制動トルクを加算したトルクとなる。
【0083】
設定部16は、オーバーステアが発生し、かつカウンター操作がされていない場合には、オーバーステア時制御を行う。設定部16は、オーバーステアが発生している場合には、各モータ2におけるトルクをオーバーステアトルクに設定する。
【0084】
具体的には、設定部16は、旋回に対して外側の前輪1Fを回転させるモータ2におけるオーバーステアトルクとして、所定制動トルクを設定する。また、設定部16は、旋回に対して内側の後輪1Rを回転させるモータ2におけるオーバーステアトルクとして、所定駆動トルクを設定する。所定制動トルク、および所定駆動トルクは、それぞれ予め設定された値である。所定制動トルク、および所定駆動トルクは、実ヨーレートYawrealの符号が反転し、車両Cが所定の旋回ラインに復帰するように、設定された値である。なお、所定制動トルク、および所定駆動トルクは、ヨーレート偏差Delyawと、車速Spdとに基づいて、マップなどから算出されてもよい。
【0085】
また、設定部16は、オーバーステアが発生し、かつカウンター操作がされていない場合には、旋回に対して内側の前輪1Fを回転させるモータ2、および旋回に対して外側の後輪1Rを回転させるモータ2におけるトルクを、ゼロに設定する。すなわち、旋回に対して内側の前輪1Fを回転させるモータ2、および旋回に対して外側の後輪1Rを回転させるモータ2におけるオーバーステアトルクは、ゼロである。そのため、旋回に対して内側の前輪1F、および旋回に対して外側の後輪1Rは、モータ2からトルクの伝達は行われない。
【0086】
オーバーステアが発生し、かつカウンター操作がされていない場合に、旋回に対して内側の前輪1Fを回転させるモータ2、および旋回に対して外側の後輪1Rを回転させるモータ2におけるトルクは、ゼロに設定される。そのため、オーバーステアが発生し、かつカウンター操作がされていない場合には、車両Cの急激な車速Spd変化を抑制するために、旋回に対して内側の後輪1Rを回転させるモータ2における駆動トルク(オーバーステアトルク)は、増加される。
【0087】
例えば、車両Cが右旋回しており、オーバーステアが発生し、かつカウンター操作が行われていない場合には、設定部16は、左前輪1FLを回転させる左前輪用モータ2FLに制動トルクを発生させ、かつ右後輪1RRを回転させる右後輪用モータ2RRにおける駆動トルクを増加させる。また、設定部16は、右前輪1FRを回転させる右前輪用モータ2FR、および左後輪1RLを回転させる左後輪用モータ2RLにおけるトルクをゼロとする。
【0088】
また、車両Cが左旋回しており、オーバーステアが発生し、かつカウンター操作が行われていない場合には、設定部16は、右前輪1FRを回転させる右前輪用モータ2FRに制動トルクを発生させ、かつ左後輪1RLを回転させる左後輪用モータ2RLにおける駆動トルクを増加させる。また、設定部16は、左前輪1FLを回転させる左前輪用モータ2FL、および右後輪1RRを回転させる右後輪用モータ2RRにおけるトルクをゼロにする。
【0089】
なお、設定部16は、旋回に対して内側の前輪1Fを回転させるモータ2におけるトルクをゼロとはせずに、わずかに駆動トルクを発生させてもよい。また、設定部16は、旋回に対して外側の後輪1Rを回転させるモータ2におけるトルクをゼロとはせずに、制動トルクを発生させてもよい。すなわち、設定部16は、オーバーステアが発生し、かつカウンター操作がされていない場合には、旋回に対して内側の前輪1Fを回転させるモータ2におけるトルク、および旋回に対して外側の後輪1Rを回転させるモータ2におけるトルクを、通常トルクよりも減少させる。その際、設定部16は、増やす分のトルクと減らす分のトルクとが、差し引きでゼロになるように、各トルクを設定するとよい。
【0090】
設定部16は、所定制動トルクと所定制動トルクとの合計トルクが、車両要求トルクCartrqよりも大きい場合には、駆動トルクを制限する。すなわち、設定部16は、駆動トルクよりも制動トルクを優先して与えるように設定する。この場合、設定部16は、所定制動トルクを変更せずに、所定制動トルクと所定駆動トルクとの合計トルクが、車両要求トルクCartrqとなるように、駆動トルクを制限する。すなわち、オーバーステアが発生し、かつカウンター操作がされていない場合には、旋回に対して内側の後輪1Rを回転させるモータ2における駆動トルクの上限トルクは、車両要求トルクCartrqに所定制動トルクを加算したトルクとなる。
【0091】
設定部16は、オーバーステアが発生し、かつカウンター操作がされた場合には、カウンター操作時制御を行う。設定部16は、各モータ2におけるトルクをカウンタートルクに設定する。
【0092】
具体的には、設定部16は、車両要求トルクCartrqを、操舵輪である前輪1Fを回転させるモータ2によって発生させるように、各モータ2のトルクを設定する。例えば、設定部16は、左前輪1FLを回転させる左前輪用モータ2FL、および右前輪1FRを回転させる右前輪用モータ2FRにそれぞれ、車両要求トルクCartrqの1/2のトルクをカウンタートルクとして設定する。また、設定部16は、左後輪1RLを回転させる左前輪用モータ2FL、および右後輪1RRを回転させる右後輪用モータ2RRにおけるトルクをゼロに設定する。すなわち、設定部16は、オーバーステアが発生し、かつカウンター操作がされた場合には、旋回に対して外側の前輪1Fを回転させるモータ2における制動トルクを減少させる。また、設定部16は、オーバーステアが発生し、かつカウンター操作がされた場合には、操舵輪である前輪1Fを回転させるモータ2によって優先的に駆動トルクを発生させる。
【0093】
設定部16によって設定されたトルクが、各モータ2に発生するように、各モータ2を制御する制御信号が、各モータに出力される。これにより、各モータ2で発生するトルクが制御される。
【0094】
次に、実施形態に係る横滑り抑制処理について
図7A、および
図7Bを参照し説明する。
図7A、および
図7Bは、実施形態に係る横滑り抑制処理を説明するフローチャートである。
【0095】
制御装置10は、車両要求トルクCartrqを算出する(S100)。制御装置10は、車速Spdと、アクセル開度Accelとに基づいて車両要求トルクCartrqを算出する。
【0096】
制御装置10は、推定旋回半径Radを算出し(S101)、目標ヨーレートYawtagを算出する(S102)。制御装置10は、車速Spdと、推定旋回半径Radとに基づいて、目標ヨーレートYawtagを算出する。制御装置10は、実ヨーレートYawrealを検出する(S103)。
【0097】
制御装置10は、目標ヨーレートYawtagと、実ヨーレートYawrealとに基づいて、ヨーレート偏差Delyawを算出し(S104)、新規のアンダーステアが発生したか否かを判定する(S105)。制御装置10は、ヨーレート偏差Delyawが、目標ヨーレートYawtagにアンダーステア判定係数Usgainを乗算した値よりも大きい場合に、新規のアンダーステアが発生したと判定する。
【0098】
制御装置10は、新規のアンダーステアが発生した場合には(S105:Yes)、アンダーステアフラグUsfrgを「ON」にする(S106)。
【0099】
制御装置10は、新規のアンダーステアが発生していない場合には(S105:No)、新規のオーバーステアが発生したか否かを判定する(S107)。制御装置10は、ヨーレート偏差Delyawが、目標ヨーレートYawtagにオーバーステア判定係数Osgainを乗算した値よりも小さい場合に、新規のアンダーステアが発生したと判定する。
【0100】
制御装置10は、新規のオーバーステアが発生した場合には(S107:Yes)、オーバーステアフラグOsfrgを「ON」にする(S108)。制御装置10は、新規のオーバーステアが発生していない場合には(S107:No)、新規のアンダーステア、および新規のオーバーステアが発生していないと判定し、ステップS109へ進み、処理を進める。
【0101】
制御装置10は、アンダーステア発生中であるか否かを判定する(S109)。具体的には、制御装置10は、アンダーステアフラグUsfrgが「ON」であるか否かを判定する。制御装置10は、アンダーステアフラグUsfrgが「ON」であり、アンダーステア発生中である場合には(S109:Yes)、アンダーステア復帰条件を満たすか否かを判定する(S110)。
【0102】
制御装置10は、アンダーステア復帰条件を満たす場合には(S110:Yes)、アンダーステアフラグUsfrgを「OFF」にし(S111)、通常制御を行う(S112)。例えば、制御装置10は、車両要求トルクCartrqを4等分したトルクを通常トルクとして設定する。例えば、制御装置10は、目標ヨーレートYawtagと実ヨーレートYawrealとの偏差であるヨーレート偏差Delyawが、所定の閾値以下になると、アンダーステア時制御を終了し、通常制御を行う。制御装置10は、アンダーステアが発生している際に、運転者によってブレーキペダルが踏み込まれると、アンダーステア時制御を終了し、通常制御を行う。
【0103】
制御装置10は、アンダーステア復帰条件を満たさない場合には(S110:No)、アンダーステア時制御を行う(S113)。具体的には、制御装置10は、旋回に対して内側の後輪1Rを回転させるモータ2において制動トルクが発生し、かつ旋回に対して外側の前輪1Fを回転させるモータ2における駆動トルクが増加するようにアンダーステアトルクを設定する。また、制御装置10は、旋回に対して外側の後輪1Rを回転させるモータ2、および旋回に対して内側の前輪1Fを回転させるモータ2におけるトルクがゼロとなるようにアンダーステアトルクを設定する。
【0104】
制御装置10は、アンダーステア判定中ではない場合には(S109:No)、オーバーステア発生中であるか否かを判定する(S114)。具体的には、制御装置10は、オーバーステアフラグOsfrgが「ON」であるか否かを判定する。制御装置10は、オーバーステアフラグOsfrgが「ON」であり、オーバーステア発生中である場合には(S114:Yes)、オーバーステア復帰条件を満たすか否かを判定する(S115)。
【0105】
制御装置10は、オーバーステア復帰条件を満たす場合には(S115:Yes)、オーバーステアフラグOsfrgを「OFF」にし(S116)、通常制御を行う(S112)。例えば、制御装置10は、実ヨーレートYawrealの発生方向が反転した判定すると、オーバーステア時制御を終了し、通常制御を行う。制御装置10は、オーバーステアが発生している際に、運転者によってブレーキペダルが踏み込まれると、オーバーステア時制御を終了し、通常制御を行う。
【0106】
制御装置10は、オーバーステア復帰条件を満たさない場合には(S115:No)、カウンター操作が行われた否かを判定する(S117)。制御装置10は、カウンター操作が行われた場合には(S117:Yes)、カウンター操作時制御を行う(S118)。制御装置10は、オーバーステア時制御を行っている際に、運転者によってカウンター操作が行われた場合には、カウンター操作時制御を行う。具体的には、制御装置10は、車両要求トルクCartrqの1/2の駆動トルクが、前輪1Fでそれぞれ発生するように、カウンタートルクを設定する。
【0107】
制御装置10はカウンター操作が行われていない場合には(S117:No)、オーバーステア時制御を行う(S119)。具体的には、制御装置10は、旋回に対して外側の前輪1Fを回転させるモータ2において制動トルクが発生し、かつ旋回に対して内側の後輪1Rを回転させるモータ2における駆動トルクが増加するように、オーバーステアトルクを設定する。また、制御装置10は、旋回に対して内側の前輪1Fを回転させるモータ2、および旋回に対して外側の後輪1Rを回転させるモータ2におけるトルクがゼロとなるように、オーバーステアトルクを設定する。
【0108】
制御装置10は、オーバーステア発生中ではない場合には(S114:No)、アンダーステア、およびオーバーステアが発生していないため、通常制御を行う(S112)。
【0109】
なお、横滑り抑制処理は、上記した処理順に限られることはない。制御装置10は、例えば、車両要求トルクCartrqの算出よりも先に、推定旋回半径Radを算出してもよい。また、制御装置10は、例えば、アンダーステアの発生の判定よりも先に、オーバーステアの発生の判定を行ってよい。
【0110】
次に、実施形態に係る制御装置10の効果について説明する。
【0111】
制御装置10は、4つ以上の駆動輪1をそれぞれ異なるモータ2によって回転させる車両Cを制御する。制御装置10は、モータ2で発生させるトルクを制御する制御部11を備える。制御部11は、車両旋回時にオーバーステアが発生した場合に、旋回に対して外側の前輪1Fを回転させるモータ2に制動トルクを発生させ、かつ旋回に対して内側の後輪1Rを回転させるモータ2における駆動トルクを増加させる、オーバーステア時制御を行う。
【0112】
これにより、制御装置10は、車両Cの旋回時に、オーバーステアが発生した場合に、車両Cを所定の旋回コースに早期に復帰させることができる。また、制御装置10は、モータ2におけるトルクを調整することで、車両Cを所定の旋回コースに復帰させることができる。そのため、例えば、車両Cの旋回時に、オーバーステアが発生した場合に、各駆動輪1に設けられる機械式のブレーキの油圧を個別に調整するブレーキングシステムを用いずに、車両Cを所定の旋回コースに復帰させることができる。従って、制御装置10は、機械式のブレーキの油圧を個別に調整するブレーキングシステムを用いずに、各モータ2におけるトルクを調整することによって、車両Cを所定の旋回コースに復帰させることができる。
【0113】
制御部11は、車両Cの実ヨーレートYawrealの符号が反転したと判定すると、オーバーステア時制御を終了する。
【0114】
これにより、制御装置10は、所定の旋回コースに復帰させるための過剰なヨーモーメントが発生することを抑制することができる。そのため、制御装置10は、車両Cの挙動を安定させ、車両Cの走行性を安定させることができる。
【0115】
制御部11は、オーバーステア時制御を行っている際に、運転者によってカウンター操作が行われた場合には、制動トルクを減少させる、カウンター操作時制御を行う。
【0116】
これにより、制御装置10は、オーバーステアが発生し、かつ運転者によってカウンター操作が行われた場合に、所定の旋回コースに復帰させるための過剰なヨーモーメントが発生することを抑制することができる。そのため、制御装置10は、車両Cの挙動を安定させ、車両Cの走行性を安定させることができる。従って、制御装置10は、オーバーステアが発生し、かつ運転者によってカウンター操作が行われた場合に、安全性を向上させることができる。
【0117】
制御部11は、カウンター操作時制御では、前輪1Fを回転させるモータ2によって優先的に駆動トルクを発生させる。
【0118】
これにより、制御装置10は、カウンター操作時制御において、操舵輪である前輪1Fに駆動トルクを発生させて、運転者のカウンター操作に応じて車両Cを所定の旋回コースに復帰させることができる。
【0119】
制御部11は、オーバーステア時制御を終了させるか否かを、実ヨーレートYawrealの発生方向に基づいて判定する。
【0120】
これにより、制御装置10は、オーバーステア時制御を適切なタイミングで終了させることができ、所定の旋回コースに復帰させるための過剰なヨーモーメントが発生することを抑制することができる。
【0121】
制御部11は、アンダーステア時制御を終了させるか否かを、目標ヨーレートYawtagと実ヨーレートYawrealとの偏差に基づいて判定する。
【0122】
これにより、制御装置10は、アンダーステア時制御を適切なタイミングで終了させることができ、所定の旋回コースに復帰する際の車両Cの挙動を安定させ、車両Cの走行性を安定させることができる。
【0123】
制御装置10は、4つ以上の駆動輪1をそれぞれ異なるモータ2によって回転させる車両Cを制御する。制御装置10は、モータ2で発生させるトルクを制御する。制御部11は、車両旋回時にアンダーステアが発生した場合には、旋回に対して内側の後輪1Rを回転させるモータ2に制動トルクを発生させ、かつ旋回に対して外側の前輪1Fを回転させるモータ2における駆動トルクを増加させる、アンダーステア時制御を行う。
【0124】
これにより、制御装置10は、車両Cの旋回時に、アンダーステアが発生した場合に、車両Cを所定の旋回コースに早期に復帰させることができる。また、制御装置10は、モータ2におけるトルクを調整することで、車両Cを所定の旋回コースに復帰させることができる。制御装置10は、機械式のブレーキの油圧を個別に調整するブレーキングシステムを用いずに、各モータ2におけるトルクを調整することによって、車両Cを所定の旋回コースに復帰させることができる。
【0125】
制御部11は、車両Cの目標ヨーレートYawtagと車両Cの実ヨーレートYawrealとのヨーレート偏差Delyawが所定の閾値以下になったと判定すると、アンダーステア時制御を終了する。
【0126】
これにより、制御装置10は、所定の旋回コースに復帰する際の車両Cの挙動を安定させ、車両Cの走行性を安定させることができる。
【0127】
制御装置10は、車両旋回時にオーバーステアおよびアンダーステアの少なくとも一方が発生したことで、制動トルクを発生させる場合には、制動トルクと駆動トルクとの合計値が、車両要求トルクCartrqを超えないように、駆動トルクを調整する。
【0128】
これにより、制御装置10は、車両要求トルクCartrqに対して、過剰な駆動トルクが発生することを抑制することができる。そのため、制御装置10は、所定の旋回コースに復帰させる際に、急激な車速Spdが生じることを抑制し、搭乗者の姿勢を安定させることができる。
【0129】
制御装置10は、車両旋回時にオーバーステアおよびアンダーステアの少なくとも一方が発生している際に、運転者によってブレーキペダルが踏まれた場合には、通常制御に復帰する。
【0130】
これにより、運転者によってブレーキペダルが踏み込まれた場合に、所定の旋回コースに対して、過剰な復帰となるヨーモーメントが発生することを抑制することができる。そのため、制御装置10は、車両Cの挙動を安定させ、車両Cの走行性を安定させることができる。従って、制御装置10は、運転者によってブレーキペダルが踏み込まれた際の安全性を向上させることができる。
【0131】
なお、上記実施形態においては、横滑りが発生した後に実行される横滑り抑制制御について説明したが、車両Cが旋回する際に、横滑りの発生を予防する横滑り予防制御が実行されてもよい。すなわち、制御装置10は、横滑り予防制御を実行し、さらに横滑りが発生した場合に、横滑り抑制制御を実行してもよい。また、上記横滑り抑制制御の一部は、自動運転を行う車両Cに適用されてもよい。
【0132】
上記実施形態における車両Cは、電動ブレーキシステムを有してもよい。電動ブレーキシステムを有する車両Cでは、例えば、制動トルクを発生させる制御が、電動ブレーキシステムによって実行される。なお、上記した横滑り抑制制御は、電動ブレーキシステムを有さない車両Cであっても有効に作用する。そのため、電動ブレーキシステムを有さない車両Cに、横滑り抑制制御を実行させることによって、電動ブレーキシステムをなくすことによるコスト削減を図ることができる。
【0133】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0134】
1 駆動輪
2 モータ
3 バッテリ
5 ステアリング
10 制御装置(車両制御装置)
11 制御部(モータ制御部)
30 舵角センサ
31 ヨーレートセンサ
32 車速センサ
33 アクセル開度センサ
34 ブレーキセンサ