(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】芝生育成方法
(51)【国際特許分類】
A01G 20/35 20180101AFI20240719BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A01G20/35
A01G7/00 603
(21)【出願番号】P 2021010511
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠田 萌子
(72)【発明者】
【氏名】北島 信行
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-516308(JP,A)
【文献】特開2012-161276(JP,A)
【文献】特開2000-125611(JP,A)
【文献】実開昭61-188426(JP,U)
【文献】特開平06-090612(JP,A)
【文献】特開2018-102240(JP,A)
【文献】特開2011-142844(JP,A)
【文献】特開2018-130088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 20/00 - 20/47
A01G 7/00 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔で芝苗を植え付けた芝草を所定の刈り高さで刈り取る芝刈り工程と、
前記芝草の匍匐茎を地面に押圧する押圧工程と、
前記押圧工程において前記匍匐茎を押圧する位置及び順序を設定する設定工程と、
を含む、芝生育成方法。
【請求項2】
前記設定工程では、前記芝苗を植え付けた位置及び間隔に基づいて、前記匍匐茎を押圧する位置及び順序を設定する、
請求項
1に記載の芝生育成方法。
【請求項3】
前記設定工程では、前記匍匐茎の節間長に基づいて、前記匍匐茎を押圧する位置を設定する、
請求項
1又は
2に記載の芝生育成方法。
【請求項4】
前記芝草を撮像する撮像工程を含み、
前記設定工程では、前記撮像工程で撮像した前記芝草の前記匍匐茎の状態に基づいて、前記匍匐茎を押圧する位置及び順序を設定する、
請求項
1から
3のいずれか1項に記載の芝生育成方法。
【請求項5】
前記芝刈り工程は、前記芝草を刈り取る刈刃と、
周面から径方向外側に突出する突起部を有する1つ以上の車輪と、を有する芝刈り機によって実施さ
れ、
前記押圧工程は、前記芝刈り機の車輪によって実施される、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の芝生育成方法。
【請求項6】
所定の間隔で芝苗を植え付けた芝草を所定の刈り高さで刈り取る芝刈り工程と、
前記芝草の匍匐茎を地面に押圧する押圧工程と、
を含
み、
前記芝刈り工程は、前記芝草を刈り取る刈刃と、周面から径方向外側に突出する突起部を有する1つ以上の車輪と、を有する芝刈り機によって実施され、
前記押圧工程は、前記芝刈り機の車輪によって実施される、
芝生育成方法。
【請求項7】
前記所定の間隔は、前記芝苗と共に移植する床土の水平方向の幅の5倍以上15倍以下である、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の芝生育成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、芝生育成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芝生の形成方法として、芝草の種子を撒く播種工法、四角形状にカットされた芝生を張る張芝工法、芝草の匍匐茎を撒布し地面に押圧する撒布工法(例えば、特許文献1)、又は碁盤目状に植え付けたポット芝苗の芝草の生長によりポット芝苗同士の間の領域を埋めて一面を芝生化するポット芝苗工法(例えば、非特許文献1)等が知られている。ポット芝苗工法は、間隔を空けてポット芝苗を植え付ける上、専門業者でなくとも植え付けが容易であるため、施工直後から一面を芝生化する張芝工法に比べて、材料費及び施工費を削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】株式会社ティー・ケー・ケー、“ティフトン芝のポット苗”、平成22年9月17日、[令和2年12月7日検索]、インターネット<URL:http://www.dkk-jp.com/tifton.htm、URL:https://youtu.be/cPQxXiFzS-o>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ポット芝苗工法は、ポット芝苗の植え付けから、ポット芝苗同士の間の領域が埋まって一面の芝生化が完了するまで、約3ヶ月の期間を要する。そのため、早期に芝生化を行いたい場所には適用ができず、利用場所が限定される。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、ポット芝苗による芝生化完了までの期間を短縮することができる芝生育成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様の芝生育成方法は、所定の間隔で芝苗を植え付けた芝草を所定の刈り高さで刈り取る芝刈り工程と、前記芝草の匍匐茎を地面に押圧する押圧工程と、を含む。
【0008】
芝生育成方法の望ましい態様として、前記押圧工程において前記匍匐茎を押圧する位置及び順序を設定する設定工程を含む。
【0009】
芝生育成方法の望ましい態様として、前記設定工程では、前記芝苗を植え付けた位置及び間隔に基づいて、前記匍匐茎を押圧する位置及び順序を設定する。
【0010】
芝生育成方法の望ましい態様として、前記設定工程では、前記匍匐茎の節間長に基づいて、前記匍匐茎を押圧する位置を設定する。
【0011】
芝生育成方法の望ましい態様として、前記芝草を撮像する撮像工程を含み、前記設定工程では、前記撮像工程で撮像した前記芝草の前記匍匐茎の状態に基づいて、前記匍匐茎を押圧する位置及び順序を設定する。
【0012】
芝生育成方法の望ましい態様として、前記芝刈り工程は、前記芝草を刈り取る刈刃と、1つ以上の車輪と、を有する芝刈り機によって実施される。
【0013】
芝生育成方法の望ましい態様として、前記押圧工程は、前記芝刈り機の車輪によって実施される。
【0014】
芝生育成方法の望ましい態様として、前記車輪は、周面から径方向外側に突出する突起部を有する。
【0015】
芝生育成方法の望ましい態様として、前記所定の間隔は、前記芝苗と共に移植する床土の水平方向の幅の5倍以上15倍以下である。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、ポット芝苗による芝生化完了までの期間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、第1実施形態の芝生育成方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、第1実施形態の植え付け工程の一例を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の芝刈り工程を説明するための説明図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の押圧工程を説明するための説明図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の芝刈り工程及び押圧工程を実施する芝刈り機の構成例を示す側面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の芝生育成方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第3実施形態の芝生育成方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第3実施形態の設定工程を説明するための説明図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態の設定工程を説明するための説明図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態の芝生育成方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本開示は、以下の実施形態の記載に限定されるものではない。また、以下の実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した実施形態における構成要素は、本開示の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。以下の実施形態では、本開示の実施形態を例示する上で、必要となる構成要素を説明し、その他の構成要素を省略する。
【0019】
(第1実施形態)
第1実施形態の芝生育成方法は、間隔を有して植え付けられたポット芝苗同士の間の領域を、芝草の生長により埋めて一面を芝生化するポット芝苗工法を含む。第1実施形態において、芝草は、匍匐茎を有する品種である。第1実施形態の芝草は、地上匍匐茎及び地下匍匐茎を含む品種、又は地下匍匐茎を含む品種である。地上匍匐茎は、地上において横方向に這って伸びる匍匐茎である。地下匍匐茎は、地上付近の地下を横方向に伸びる匍匐茎である。芝草は、例えば、ティフトン419等、匍匐茎で繁殖するバミューダグラス類を含む。バミューダグラス類は、地上匍匐茎及び地下匍匐茎を含む。
【0020】
図1は、第1実施形態の芝生育成方法を示すフローチャートである。第1実施形態の芝生育成方法は、植え付け工程S11と、芝刈り工程S12と、押圧工程S13と、判定工程S14と、を含む。
【0021】
図2は、第1実施形態の植え付け工程S11の一例を模式的に示す平面図である。
図2に示すように、植え付け工程S11は、芝生化する圃場の地面Gに芝草1のポット芝苗2を植え付ける工程である。ポット芝苗2は、床土3及び芝苗4を含む。床土3は、芝草1を芝種から芝苗4に育苗する際の容器(ポット)に収容されていた土である。床土3は、ポット芝苗2が移植される圃場と同じ又は近い組成であることが好ましい。芝苗4は、容器に収容された床土3に撒いた芝種が発芽した状態の芝草1を示す。
【0022】
植え付け工程S11では、上面視において碁盤目状に、複数のポット芝苗2を所定の間隔Iで植え付ける。ポット芝苗2は、床土3の上端が地面Gと同じ高さ又は地中となるように植えることが好ましい(例えば、
図3及び
図4参照)。ポット芝苗2は、1m
2当たり少なくとも4個が植え付けられることが好ましい。すなわち、間隔Iは、50cm以下であることが好ましい。
【0023】
さらに、間隔Iは、移植する時点でのポット芝苗2の水平方向の幅に対応して設定されることが好ましい。すなわち、間隔Iが狭いと、ポット芝苗2の使用数が増加し、コスト高となる。一方で、間隔Iが広すぎると、芝生化に時間がかかりすぎる。間隔Iは、例えば、ポット芝苗2の床土3の水平方向の幅に対して、5倍以上15倍以下、好ましくは7倍以上13倍以下である。例えば床土3が5cm幅である場合、間隔Iは30cm以上70cm以下とすることで、約3ヶ月で芝生化が可能である。
【0024】
図3は、第1実施形態の芝刈り工程S12を説明するための説明図である。
図3に示すように、芝刈り工程S12は、芝草1を所定の刈り高さHで刈り取る工程である。芝草1が上方に伸びた際、光合成による生産能力は、根元付近に比べて上方に伸びた部分の方が大きい。芝草1は、過分に伸びると根元付近が老化してしまうため、過分に伸びた後に刈られた場合、老化した生産能力が低い部分が残されてしまう。したがって、芝草1は、頻繁に刈り取ることによって、生産能力の高い部分を残しつつ上方への生長を抑制し、横に拡がって伸びる匍匐茎5へ養分を行き渡らせ、横方向への生長を促進させることができる。
【0025】
なお、芝草1がティフトン419等の地上匍匐茎及び地下匍匐茎を含む品種である場合、横方向に地上で伸びる匍匐茎5は、地面Gから浮き上がる傾向にある。したがって、芝刈り工程S12において、刈り高さHは、地面Gから浮き上がった匍匐茎5を刈ってしまう高さより高く、かつ刈り取ることによって芝草1の根元付近が老化を抑制可能な高さより低いことが好ましい。刈り高さHは、例えば、20mm以上100mm以下、好ましくは、40mm以上50mm以下である。なお、芝草1が100mmより伸びてしまった場合は、刈り高さHを50mm以上100mm以下とすることが好ましい。また、芝刈り工程S12は、芝草1が上方に過分に伸びる前に、後述の押圧工程S13とともに繰り返し実施される。芝刈り工程S12は、例えば、1週間に1回以上7回以下の頻度で実施される。
【0026】
図4は、第1実施形態の押圧工程S13を説明するための説明図である。
図4に示すように、押圧工程S13は、芝草1の匍匐茎5を地面Gに押圧する工程である。押圧工程S13は、芝刈り工程S12と同時又は直後に実施される。芝草1の匍匐茎5は、節6のそれぞれから根7が発根する。芝草1は、匍匐茎5の節6の根7が地面Gに活着することによって、活着した節6の根7を介して地面Gから養分を吸収するので、活着した節6を拠点として生長が促進される。すなわち、押圧工程S13では、地面Gから浮き上がった匍匐茎5を地面Gに押圧することによって、節6の根7の地面Gへの活着を促進させる。なお、押圧工程S13では、匍匐茎5の節6が地面Gに押し込まれるように、匍匐茎5を地面Gに押圧することが好ましい。あるいは、押圧工程S13では、匍匐茎5の節6の一部が地面Gに押し込まれるように、匍匐茎5を地面Gに押圧することが好ましい。
【0027】
図1に示す判定工程S14では、芝草1による地面Gの芝生化が完了したか否かを判定する。芝生化が完了した場合(判定工程S14;Yes)、
図1に示すフローチャートの一連の工程を終了する。芝生化が完了していない場合(判定工程S14;No)、所定期間後に芝刈り工程S12に戻り、芝生化が完了するまで、芝刈り工程S12及び押圧工程S13を繰り返し実施する。所定期間は、前述の芝刈り工程S12の頻度により設定される。所定期間は、一定ではなく、植え付け工程S11からの経過時間、芝草1の生長状態、天候及び気温等の環境等によって、適宜設定される。
【0028】
図5は、第1実施形態の芝刈り工程S12及び押圧工程S13を実施する芝刈り機100の構成例を示す側面図である。以下の説明において、第1実施形態の芝刈り機100は、自律型又は遠隔操作型の小型車両を想定するが、本開示ではこれに限定されず、運転員を要する車両であってもよいし、手押し車等の人力車両であってもよい。第1実施形態の芝刈り機100は、本体部110と、一対の車輪120と、刈刃部130と、旋回部140と、一対の車輪150と、を有する。
【0029】
本体部110は、芝刈り機100の前方側に配置される。本体部110には、旋回機構111と、車輪120と、刈刃部130と、が設けられる。本体部110には、例えば、車輪120、刈刃部130、旋回部140、及び車輪150のそれぞれの回転駆動源等、芝刈り機100の動力源、動力源を制御する制御装置、芝刈り機100を遠隔操作するコントローラと通信可能な通信機、又は燃料源等が搭載される。燃料源は、例えば、バッテリー、ガソリンタンク、カセット式ガスボンベ等を含む。
【0030】
本体部110は、旋回機構111を介して後方に設けられる旋回部140と連結する。旋回機構111は、旋回部140を本体部110に対して、鉛直軸回りに旋回させる。旋回機構111は、例えば、本体部110に設けられる動力源によって駆動する。旋回機構111は、例えば、本体部110に設けられる制御装置によって制御される。
【0031】
車輪120は、芝刈り機100の前輪である。車輪120は、本体部110の左右に配置される。車輪120は、本体部110に対して水平な軸心回りに回動する。車輪120は、例えば、本体部110に設けられる動力源によって駆動する。車輪120は、例えば、本体部110に設けられる制御装置によって制御される。
【0032】
車輪120は、周面から径方向外側に突出する突起部121を有する。突起部121は、第1実施形態において、車輪120の全周に亘って均等に複数設けられる。突起部121は、例えば、車輪120の軸心に垂直な断面形状が、車輪120の径方向外側に向かって先細りであるテーパ形状であることが好ましい。
【0033】
刈刃部130は、第1実施形態において、軸心が鉛直方向に平行な円板形状である。刈刃部130は、本体部110に対して鉛直軸回りに回動するように、本体部110の下部に設けられる。刈刃部130は、例えば、本体部110に設けられる動力源によって駆動する。刈刃部130は、例えば、本体部110に設けられる制御装置によって制御される。
【0034】
刈刃部130は、周縁に刈刃を有する。刈刃は、地面Gから垂直方向の高さが、芝刈り工程S12における刈り高さHと同一である。刈刃部130が鉛直軸回りに回転することによって、刈刃が刈り高さHの位置で芝草1を刈り取る。刈刃は、金属及びナイロンの少なくともいずれかを含む材質で形成される。なお、刈刃の形状は、第1実施形態に限定されず、例えば、リール、ロータリー、チップソー、剃刀状又はコード状の少なくとも1つを含んでよい。
【0035】
旋回部140は、本体部110に対して後方側に配置される。旋回部140は、旋回機構111を介して本体部110に連結する。旋回部140は、旋回機構111によって、本体部110に対して、鉛直軸回りに旋回する。
【0036】
車輪150は、芝刈り機100の後輪である。車輪150は、旋回部140の左右に配置される。車輪150は、旋回部140に対して水平な軸心回りに回動する。車輪150は、例えば、本体部110に設けられる動力源によって駆動する。車輪150は、例えば、本体部110に設けられる制御装置によって制御される。芝刈り機100は、旋回機構111によって旋回部140が本体部110に対して鉛直軸回りに旋回することによって左右方向へ旋回する。
【0037】
車輪150は、周面から径方向外側に突出する突起部151を有する。突起部151は、第1実施形態において、車輪150の全周に亘って均等に複数設けられる。突起部151は、例えば、車輪150の軸心に垂直な断面形状が、車輪150の径方向外側に向かって先細りであるテーパ形状であることが好ましい。
【0038】
第1実施形態の芝刈り工程S12において、芝刈り機100は、芝生化する圃場の地面G上を走行しながら、刈刃部130によって芝草1を刈り高さHで刈り取る。また、第1実施形態の押圧工程S13において、芝刈り機100は、芝生化する圃場の地面G上を走行することによって、車輪120、150で、芝草1の匍匐茎5を踏んで地面Gへ押圧する。この際、車輪120、150の突起部121、151によって、匍匐茎5が地中へ押し込まれるので、節6の根7の地面Gへの活着を促進させることができる。
【0039】
以上で説明したように、第1実施形態の芝生育成方法は、所定の間隔Iで芝苗4を植え付けた芝草1を所定の刈り高さHで刈り取る芝刈り工程S12と、芝草1の匍匐茎5を地面Gに押圧する押圧工程S13と、を含む。
【0040】
第1実施形態の芝生育成方法は、芝草1を所定の刈り高さHで刈り取ることによって、縦方向の生長を抑制し、地面Gから又は光合成により得られる養分が横方向への生長に使われるように促すことができる。また、匍匐茎5を地面Gに押圧することによって、匍匐茎5の節6から発根した根7の活着を促すことができる。匍匐茎5が活着した部分の根7を介して地面Gから水分及び養分を吸収することができるので、芝草1の横に拡がる方向への生長をさらに促進させることができる。
【0041】
これにより、ポット芝苗2を植え付けてから芝生化完了までの期間を短縮することができるので、芝生化までに約3ヶ月の期間を設けることが困難な場所等にもポット芝苗2による芝生化を適用させることができる。
【0042】
また、第1実施形態の芝生育成方法において、芝刈り工程S12は、芝草1を刈り取る刈刃(刈刃部130)と、1つ以上の車輪120、150と、を有する芝刈り機100によって実施される。芝刈り機100は、車輪120、150の転動により移動するため、刈刃部130の地面Gからの高さ、すなわち刈り高さHが大きく変動しない。これにより、芝草1を一定の刈り高さHで刈り取ることができるので、地面Gから浮き上がった匍匐茎5を刈ってしまう高さより高く、かつ刈り取ることによって芝草1の根元付近が老化を抑制可能な高さより低い好適な刈り高さHで芝草1を刈り取ることができる。
【0043】
また、第1実施形態の芝生育成方法において、押圧工程S13は、芝刈り機100の車輪120、150によって実施される。これにより、芝刈り工程S12と押圧工程S13とを同時に実施できるため、芝生化のための施工工数を削減することができる。
【0044】
また、第1実施形態の芝生育成方法において、車輪120、150は、周面から径方向外側に突出する突起部121、151を有する。これにより、車輪120、150で、芝草1の匍匐茎5を踏んで地面Gへ押圧する際に、突起部121、151が匍匐茎5を地中に押し込むことができるので、節6の根7の地面Gへの活着を促進させることができる。
【0045】
なお、第1実施形態では、車輪120、150を有する芝刈り機100によって芝刈り工程S12を実施するが、本開示ではこれに限定されず、例えば、手持ち型の芝刈り機によって実施してもよい。また、第1実施形態では、芝刈り工程S12と押圧工程S13とを、同一の芝刈り機100によって実施するが、押圧工程S13を別個の治具で実施してもよい。
【0046】
また、第1実施形態の芝生育成方法において、所定の間隔Iは、芝苗と共に移植する床土3の水平方向の幅の5倍以上15倍以下である。間隔Iが狭いと、ポット芝苗2の使用数が増加してコスト高となる一方で、間隔Iが広すぎると、芝生化に時間がかかりすぎる。間隔Iを上記のようにすることによって、コストを抑制しつつ、芝生化完了までの期間を短縮することができる。
【0047】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態の芝生育成方法を示すフローチャートである。第2実施形態の芝生育成方法は、植え付け工程S21と、設定工程S22と、芝刈り工程S23と、押圧工程S24と、判定工程S25と、を含む。第2実施形態の植え付け工程S21及び芝刈り工程S23は、第1実施形態の植え付け工程S11及び芝刈り工程S12と同様であるため、説明を省略する。
【0048】
設定工程S22は、押圧工程S24において匍匐茎5(
図4等参照)を押圧する位置及び順序を設定する。より詳しくは、第3実施形態の設定工程S22では、芝苗4を植え付けた位置及び間隔I(
図2参照)に基づいて、匍匐茎5を押圧する位置及び順序を設定する。設定工程S22では、芝生化する圃場においてポット芝苗2を植え付けた位置を含む地図データを予め取得していてもよい。
【0049】
設定工程S22では、例えば、ポット芝苗2を植え付けた位置から所定距離の位置で匍匐茎5を押圧するように設定してもよい。設定工程S22では、例えば、ポット芝苗2を植え付けた位置に対して、徐々に遠ざかる順序で匍匐茎5を押圧するように設定してもよい。設定工程S22では、植え付け工程S21からの経過時間毎に異なる位置及び順序で匍匐茎5を押圧するように設定してもよい。
【0050】
第2実施形態の押圧工程S24では、設定工程S22で設定された位置及び順序で、芝草1の匍匐茎5を地面Gに押圧する。第2実施形態の芝生育成方法において、押圧工程S24を
図5に示すような芝刈り機100で実施する場合、設定工程S22では、芝刈り機100の走行経路を設定してもよい。設定工程S22では、さらに、芝刈り工程S23で芝草1を刈り取る位置及び順序を設定してもよい。
【0051】
第2実施形態の判定工程S25では、第1実施形態の判定工程S14と同様に、芝草1による地面Gの芝生化が完了したか否かを判定する。芝生化が完了した場合(判定工程S25;Yes)、
図6に示すフローチャートの一連の工程を終了する。芝生化が完了していない場合(判定工程S25;No)、所定期間後に芝刈り工程S23に戻り、芝生化が完了するまで、芝刈り工程S23及び押圧工程S24を繰り返し実施する。所定期間は、前述の芝刈り工程S23の頻度により設定される。所定期間は、一定ではなく、植え付け工程S21からの経過時間、芝草1の生長状態、天候及び気温等の環境等によって、適宜設定される。
【0052】
以上で説明したように、第2実施形態の芝生育成方法は、押圧工程S24において匍匐茎5を押圧する位置及び順序を設定する設定工程S22を含む。これにより、押圧工程S24で匍匐茎5を押圧する位置及び順序を予め設定するので、効率よく押圧工程S24を実施することができる。
【0053】
また、第2実施形態の芝生育成方法において、設定工程S22では、芝苗4を植え付けた位置及び間隔Iに基づいて、匍匐茎5を押圧する位置及び順序を設定する。これにより、芝苗4を植え付けた位置及び間隔Iに基づいて、押圧工程S24で匍匐茎5を押圧する位置及び順序を予め設定するので、効率よく押圧工程S24を実施することができる。
【0054】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態の芝生育成方法を示すフローチャートである。第3実施形態の芝生育成方法は、植え付け工程S31と、設定工程S32と、芝刈り工程S33と、押圧工程S34と、判定工程S35と、を含む。第3実施形態の植え付け工程S31、芝刈り工程S33及び判定工程S35は、第2実施形態の植え付け工程S21、芝刈り工程S23及び判定工程S25と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
図8及び
図9は、第3実施形態の設定工程S32を説明するための説明図である。なお、
図9は、匍匐茎5の隣接する節6同士の節間長のヒストグラムの一例を示すグラフである。第3実施形態の設定工程S32は、芝草1の匍匐茎5の節間長L1、L2に基づいて、押圧工程S34において匍匐茎5を押圧する位置を設定する工程である。
【0056】
図8に示すように、芝草1の匍匐茎5の節6のそれぞれから根7が発根する。設定工程S32では、例えば、芝草1の品種に基づいて、
図9に示すような匍匐茎5の節間長L1、L2のヒストグラムを予め取得する。
図9に示す一例では、匍匐茎5の節間長L1、L2のヒストグラムは、概ね正規分布である。
【0057】
設定工程S32では、例えば、ポット芝苗2を植え付けた位置と、匍匐茎5の節間長L1、L2の平均値に基づいて、匍匐茎5の節6を推定し、推定した節6の位置に基づいて、匍匐茎5を押圧する位置を設定してもよい。すなわち、例えば、設定工程S32では、推定した節6の位置の匍匐茎5を、押圧工程S34において押圧するように設定してもよい。設定工程S32では、例えば、推定した節6の位置の匍匐茎5を、ポット芝苗2を植え付けた位置から近い順序で、押圧工程S34において押圧するように設定してもよい。
【0058】
第3実施形態の押圧工程S34では、設定工程S32で設定された位置及び順序で、芝草1の匍匐茎5を地面Gに押圧する。第3実施形態の芝生育成方法において、押圧工程S34を
図5に示すような芝刈り機100で実施する場合、設定工程S32では、芝刈り機100の走行経路を設定してもよい。設定工程S32では、さらに、芝刈り工程S33で芝草1を刈り取る位置及び順序を設定してもよい。
【0059】
以上で説明したように、第3実施形態の芝生育成方法において、設定工程S32では、匍匐茎5の節間長L1、L2に基づいて、匍匐茎5を押圧する位置を設定する。これにより、匍匐茎5の節間長L1、L2に基づいて、押圧工程S24で匍匐茎5を押圧する位置及び順序を予め設定するので、効率よく押圧工程S24を実施することができる。
【0060】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態の芝生育成方法を示すフローチャートである。第4実施形態の芝育成方法は、植え付け工程S41と、撮像工程S42と、設定工程S43と、芝刈り工程S44と、押圧工程S45と、判定工程S46と、を含む。第4実施形態の植え付け工程S41及び芝刈り工程S44は、第1実施形態の植え付け工程S11及び芝刈り工程S12と同様であるため、説明を省略する。
【0061】
撮像工程S42は、芝草1を撮像する工程である。撮像工程S42で芝草1を撮像する撮像装置は、芝生化する圃場に設置された撮像装置でもよいし、
図5に示すような芝刈り機100に搭載された撮像装置でもよい。撮像工程S42では、芝草1の匍匐茎5の状態を撮像する。匍匐茎5の状態とは、例えば、匍匐茎5が浮き上がった状態、又は根7を含む節6が活着していない状態等を含む。
【0062】
第4実施形態の設定工程S43は、撮像工程S42で撮像した芝草1の匍匐茎5の状態に基づいて、押圧工程S45において匍匐茎5を押圧する位置及び順序を設定する工程である。設定工程S43では、芝生化する圃場においてポット芝苗2を植え付けた位置を含む地図データを予め取得していてもよい。設定工程S43では、撮像工程S42で撮像した画像データを地図データに紐付けて、匍匐茎5を押圧する位置及び順序を設定してもよい。
【0063】
設定工程S43では、例えば、撮像工程S42で撮像した芝草1の匍匐茎5について、所定高さ以上の浮き上がりを検知した場合、該当する匍匐茎5を押圧するように設定してもよい。設定工程S43では、例えば、撮像工程S42で撮像した芝草1の匍匐茎5について、地面Gから浮き上がっている節6を検知した場合、該当する節6又は節6の近傍を押圧するように設定してもよい。
【0064】
第4実施形態の押圧工程S45では、設定工程S43で設定された位置及び順序で、芝草1の匍匐茎5を地面Gに押圧する。第4実施形態の芝生育成方法において、押圧工程S45を
図5に示すような芝刈り機100で実施する場合、設定工程S43では、芝刈り機100の走行経路を設定してもよい。設定工程S43では、さらに、芝刈り工程S44で芝草1を刈り取る位置及び順序を設定してもよい。
【0065】
第4実施形態の判定工程S46では、第1実施形態の判定工程S14と同様に、芝草1による地面Gの芝生化が完了したか否かを判定する。芝生化が完了した場合(判定工程S46;Yes)、
図10に示すフローチャートの一連の工程を終了する。芝生化が完了していない場合(判定工程S46;No)、所定期間後に撮像工程S42に戻り、芝生化が完了するまで、撮像工程S42、設定工程S43、芝刈り工程S44及び押圧工程S45を繰り返し実施する。所定期間は、前述の芝刈り工程S44の頻度により設定されてもよいし、撮像工程S42によって撮像した芝草1の匍匐茎5の状態に基づいて設定されてもよい。所定期間は、一定ではなく、植え付け工程S41からの経過時間、芝草1の生長状態、天候及び気温等の環境等によって、適宜設定される。
【0066】
第4実施形態の芝生育成方法は、撮像装置と、コンピュータと、自律移動型の芝刈り機と、を備える自動システムによって実施されてもよい。撮像装置は、芝生化する圃場に設置され、所定の周期で撮像工程S42を実施する。コンピュータは、撮像装置が撮像した撮像データを取得し、撮像データから匍匐茎5の状態を検知して設定工程S43を実施する。芝刈り機は、コンピュータによる設定に基づいて、自動的に芝刈り工程S44及び押圧工程S45を実施する。
【0067】
以上で説明したように、第4実施形態の芝生育成方法は、芝草1を撮像する撮像工程S42を含み、設定工程S43では、撮像工程S42で撮像した芝草1の匍匐茎5の状態に基づいて、匍匐茎5を押圧する位置及び順序を設定する。これにより、撮像した芝草1の匍匐茎5の状態、すなわち実際の匍匐茎5の状態に基づいて、押圧工程S24で匍匐茎5を押圧する位置及び順序を予め設定するので、効率よくかつ押圧工程S24を実施することができるとともに、より好適に匍匐茎5を活着させることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 芝草
2 ポット芝苗
3 床土
4 芝苗
5 匍匐茎
6 節
7 根
100 芝刈り機
110 本体部
111 旋回機構
120 車輪
121 突起部
130 刈刃部
140 旋回部
150 車輪
151 突起部
G 地面
I 間隔
H 刈り高さ
L1、L2 節間長
S11、S21、S31、S41 植え付け工程
S12、S23、S33、S44 芝刈り工程
S13、S24、S34、S45 押圧工程
S14、S25、S35、S46 判定工程
S22、S32、S43 設定工程
S42 撮像工程