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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20240719BHJP
   F24F 13/10 20060101ALI20240719BHJP
   F24F 13/15 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B60H1/34 611B
F24F13/10 A
F24F13/15 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021023316
(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公開番号】P2022125624
(43)【公開日】2022-08-29
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】倉田 武則
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-225839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00- 3/06
F24F 1/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動により空調風の風向を調整するフィンと、
このフィンに対して空調風の下流側の位置に、このフィンと交差する方向に延びる被取付部と、
この被取付部に沿って移動可能に取り付けられ、移動に連動させて前記フィンを回動させる操作ノブと、を備え、
前記操作ノブは、前記被取付部に対して干渉して前記被取付部に対する前記操作ノブの操作力を調整可能な調整手段を有し、
前記調整手段は、前記被取付部に対する移動量に応じて前記被取付部への干渉を増減させることで前記操作ノブの操作力を調整する可動部を備える
ことを特徴とする風向調整装置
【請求項2】
可動部は、被取付部に対向する側に傾斜部を有し、前記被取付部が延びる方向と交差しかつ前記被取付部に沿う方向に移動可能に配置され、
前記傾斜部は、前記被取付部に対する移動方向に沿って傾斜し、この傾斜により前記可動部の移動量に応じて前記被取付部への干渉を増減させる
ことを特徴とする請求項記載の風向調整装置。
【請求項3】
被取付部は、左右方向に延び、
調整手段は、前記被取付部の下面に対して干渉する
ことを特徴とする請求項1または2記載の風向調整装置。
【請求項4】
被取付部は、フィンの回動方向と交差する方向への回動により空調風の風向を調整する他のフィンである
ことを特徴とする請求項1ないしいずれか一記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィンを回動させる操作ノブを備える風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、吹き出す風向を調整する風向調整装置がある。風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えばインストルメントパネルやセンタコンソール部などの車両の各部に設置されて、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
このような風向調整装置において、風向を調整する横フィンと縦フィンとを前後に備え、縦フィンを連動操作するための操作ノブを横フィンに沿って摺動可能に取り付けたものが知られている。操作ノブは、横フィンと摺接する弾性片を内部に備え、この弾性片によって操作ノブの操作力(操作トルク)を付与している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-154783号公報 (第4-5頁、図1-4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の構成の場合、構成部品に僅かな形状あるいは硬度などのばらつきに応じて操作ノブの操作力にもばらつきが生じるため、操作力の公差を大きく設定するなどして対応する必要があることから、製品精度をより安定させることが求められている。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、操作ノブの操作力のばらつきを抑制できる風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の風向調整装置は、回動により空調風の風向を調整するフィンと、このフィンに対して空調風の下流側の位置に、このフィンと交差する方向に延びる被取付部と、この被取付部に沿って移動可能に取り付けられ、移動に連動させて前記フィンを回動させる操作ノブと、を備え、前記操作ノブは、前記被取付部に対して干渉して前記被取付部に対する前記操作ノブの操作力を調整可能な調整手段を有し、前記調整手段は、前記被取付部に対する移動量に応じて前記被取付部への干渉を増減させることで前記操作ノブの操作力を調整する可動部を備えるものである。
【0008】
求項記載の風向調整装置は、請求項記載の風向調整装置において、可動部は、被取付部に対向する側に傾斜部を有し、前記被取付部が延びる方向と交差しかつ前記被取付部に沿う方向に移動可能に配置され、前記傾斜部は、前記被取付部に対する移動方向に沿って傾斜し、この傾斜により前記可動部の移動量に応じて前記被取付部への干渉を増減させるものである。
【0009】
請求項記載の風向調整装置は、請求項1または2記載の風向調整装置において、被取付部は、左右方向に延び、調整手段は、前記被取付部の下面に対して干渉するものである。
【0010】
請求項記載の風向調整装置は、請求項1ないしいずれか一記載の風向調整装置において、被取付部は、フィンの回動方向と交差する方向への回動により空調風の風向を調整する他のフィンであるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の風向調整装置によれば、調整手段によって操作ノブの操作力を調整することで、操作ノブの操作力のばらつきを抑制でき、可動部の移動量を変化させるだけで操作ノブの操作力を容易に調整できる
【0012】
求項記載の風向調整装置によれば、請求項記載の風向調整装置の効果に加えて、傾斜部の傾斜角度に応じて、可動部の移動量と被取付部への干渉の増減との関係を容易に設定できる。
【0013】
請求項記載の風向調整装置によれば、請求項1または2記載の風向調整装置の効果に加えて、被取付部の上面側の意匠性に影響が少なく、デザイン性が良好となる。
【0014】
請求項記載の風向調整装置によれば、請求項1ないしいずれか一記載の風向調整装置の効果に加えて、被取付部によって風向の調整の自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態の風向調整装置を示す一部の縦断面図である。
図2】同上風向調整装置の斜視図である。
図3】本発明の第2の実施の形態の風向調整装置を示す一部の縦断面図である。
図4】本発明の第3の実施の形態の風向調整装置を示す一部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図2において、10は風向調整装置である。風向調整装置10は、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、空調装置などからの風の吹き出し方向を調整するものである。以下、説明をより明確にするために、風向調整装置10は、風が吹き出す側である風下側を前側、正面側または手前側とし、その反対側、つまり風を受け入れる側である風上側を後側、背後側または奥側として、前側から見て左右方向である両側方向または幅方向、及び、上下方向を規定する。本実施の形態において、風向調整装置10は、自動車などの車両用の空調装置に適用される。風向調整装置10は、任意の位置に配置されていてよいが、図面においては、矢印FR側を前側、矢印RR側を後側、矢印L側を左側、矢印R側を右側、矢印U側を上側、矢印D側を下側とするように配置されているものとする。これらの方向は、あくまで一例として図示されるものであって、風向調整装置10の設置位置や設置向きによって適宜変更されるものとする。
【0018】
風向調整装置10は、構造部材としてのダクト部であるケース14を有する。ケース14は、前後方向に筒状に形成され、内部に通気路15を備える。図示される例では、ケース14は、角筒状に形成されている。ケース14の中心軸に平行な方向が通気路15の通気方向である。本実施の形態において、通気路15の通気方向は、前後方向であり、後方から前方に向かって通気される。すなわち、通気路15において、後側は通気方向の上流側、前側は通気方向の下流側である。
【0019】
ケース14は、通気路15の通気方向に所定長を有する。本実施の形態において、ケース14は、上下方向に扁平であり、左右方向に長手状、つまり横長に形成されている。したがって、風向調整装置10は、横型の薄型に形成されている。
【0020】
ケース14の一端部である後端部は、通気路15に空気を受け入れる受入口17であり、ケース14の他端部である前端部は、通気路15から空気を吹き出す吹出口18である。つまり、受入口17と吹出口18との間にこれらを連通する通気路15が形成されている。
【0021】
ケース14は、通気路15の上流側を構成する筒状のダクト部分と、通気路15の下流端であり意匠部分を構成する枠状のフィニッシャと、などに分割されていてもよい。この場合、ダクト部分に受入口17が形成され、フィニッシャに吹出口18が形成される。
【0022】
本実施の形態において、吹出口18は、四角形状に形成されている。図示される例では、吹出口18は、左右方向に長手状、つまり横長に形成されている。
【0023】
また、ケース14には、風向調整用のフィン(一のフィン)20が取り付けられている。フィン20は、ルーバなどとも呼ばれ、通気路15を通過して吹出口18から吹き出される空調風の向きを第一方向への回動により調整可能となっている。フィン20は、板状に形成され、少なくともいずれかの主面が、風を案内する案内面となっている。本実施の形態において、フィン20は、上下に軸を有し、これら軸がケース14に回動可能に支持されて、左右方向に回動可能となっている。すなわち、本実施の形態のフィン20は、縦フィンであり、空調風の風向を左右方向に調整する。フィン20は、ケース14において、吹出口18よりも下流側すなわち後側に位置する。
【0024】
図示される例では、フィン20は、左右に並んで複数配置されている。これらのフィン20は、リンクにより互いに連結され、同方向に連動して回動するようになっている。
【0025】
さらに、ケース14には、被取付部22が形成されている。被取付部22は、フィン20に対して空調風の下流側に位置する。本実施の形態において、被取付部22は、吹出口18に位置している。すなわち、被取付部22は、風向調整装置10の意匠部分を構成している。被取付部22は、フィン20と交差する方向に延びている。図示される例では、被取付部22は、左右方向に長手状に延びて配置されている。すなわち、被取付部22は、吹出口18の長手方向に沿って配置されている。また、本実施の形態において、被取付部22は、ケース14に一つのみ配置されている。図示される例では、被取付部22は、吹出口18の上下方向の中央部に配置されている。したがって、本実施の形態の風向調整装置10は、吹出口18側から見て一枚の被取付部22が位置する薄型でスリムな構成となっている。
【0026】
本実施の形態において、被取付部22は、ルーバなどとも呼ばれる、風向調整用の他のフィンである。被取付部22は、通気路15を通過して吹出口18から吹き出される空調風の向きを第一方向と交差する第二方向への回動により調整可能となっている。被取付部22は、板状に形成され、少なくともいずれかの主面が、風を案内する案内面となっている。本実施の形態において、被取付部22は、左右に軸を有し、これら軸がケース14に回動可能に支持されて、上下方向、すなわちフィン20の回動方向と交差する方向に回動可能となっている。すなわち、本実施の形態の被取付部22は、横フィンであり、空調風の風向を上下方向に調整する。
【0027】
したがって、フィン20と被取付部22との回動により、上下左右の任意方向に空調風を調整可能となっている。
【0028】
被取付部22には、フィン20の回動を操作するための操作ノブ25が取り付けられている。本実施の形態において、操作ノブ25は、被取付部22の回動も操作可能となっている。
【0029】
操作ノブ25は、被取付部22の幅寸法よりも小さい幅寸法を有し、被取付部22に沿って移動可能に取り付けられている。すなわち、操作ノブ25は、被取付部22の一部のみを覆うものであり、その他の被取付部22の主面は空調風の案内面として作用し得る。操作ノブ25は、被取付部22に沿って移動させることにより、この移動に連動してフィン20を回動させる。すなわち、本実施の形態において、操作ノブ25は、被取付部22の長手方向である左右方向に沿って所定範囲で移動することに連動して、フィン20を左右方向に回動させるように構成されている。
【0030】
また、本実施の形態において、操作ノブ25は、フィン20と一体的に上下方向に移動させることで、この移動に連動して被取付部22を上下方向に回動させるように構成されている。
【0031】
操作ノブ25の詳細な構成を図1に示す。本実施の形態において、操作ノブ25は、一の構造体30と、他の構造体31と、カバー体32と、を有する。そして、操作ノブ25は、一の構造体30と他の構造体31とにより被取付部22を挟んでこれら一の構造体30と他の構造体31とを互いに係止させ、一の構造体30と他の構造体31とにカバー体32を取り付けるように組み付けられる。本実施の形態において、一の構造体30と他の構造体31とは、被取付部22を上下に挟むように取り付けられている。なお、本実施の形態においては、説明を明確にするために、一の構造体30が被取付部22に対して上側から取り付けられ、他の構造体31が被取付部22に対して下側から取り付けられる構成として説明するが、これらの上下は反対でもよい。その場合には、操作ノブ25の説明に係る上下を反転することで同様に構成可能である。
【0032】
一の構造体30は、操作ノブカバーとも呼び得るものである。一の構造体30は、被取付部22の長手方向の一部の上部を前後に亘り覆う一の構造体本体部33を備える。一の構造体本体部33は、板状に形成されている。一の構造体本体部33の背面側である下面には、被取付部22の上側の主面に対して接触する一の接触部34が形成されている。一の接触部34は、一の構造体本体部33から下方に向かって突起状に突設されている。本実施の形態において、一の接触部34は、一の構造体本体部33の前端寄りの位置にある。そのため、一の接触部34は、被取付部22の前後方向の中央部よりも前端寄りの位置に接触する。
【0033】
また、一の構造体本体部33の前端部は、被取付部22の前端部に沿って下方に屈曲されている。一の構造体本体部33の前端部に連なって、延出部35がさらに前方に延びて形成されている。延出部35は、被取付部22よりも前方に突出している。延出部35は、自動車の乗員などが操作ノブ25を操作する際に摘む部分の上部を構成する。
【0034】
本実施の形態においては、延出部35の前端部に連なって、カバー体32を受ける受け部36が下方に延びて形成されている。受け部36は、前後方向に開口する開口部37を有する。開口部37は、カバー体32により閉塞される。
【0035】
他の構造体31は、操作ノブ本体部とも呼び得るものである。他の構造体31は、被取付部22の長手方向の一部の下部を前後に亘り覆う他の構造体本体部40を備える。他の構造体本体部40の背面側である上面には、被取付部22の下側の主面に対して接触する他の接触部41が形成されている。他の接触部41は、他の構造体本体部40から上方に向かって突起状に突設されている。本実施の形態において、他の接触部41は、他の構造体本体部40の前端寄りの位置にある。そのため、他の接触部41は、被取付部22の前後方向の中央部よりも前端寄りの位置に接触する。また、他の接触部41は、一の接触部34と上下に対向する位置にある。すなわち、一の接触部34と他の接触部41とにより、被取付部22の前端寄りの位置が上下から挟持されている。
【0036】
また、他の構造体本体部40の上面には、被取付部22に対する前後方向の位置を規制する規制部42が形成されている。規制部42は、他の構造体本体部40から上方に向かってリブ状に突設されている。規制部42は、被取付部22の下面に形成された溝部43に挿入嵌合されている。本実施の形態において、規制部42は、他の構造体本体部40の後端寄りの位置にある。そのため、規制部42は、被取付部22の前後方向の中央部よりも後端寄りに位置する。
【0037】
さらに、他の構造体本体部40の下部には、他の構造体本体部40に対して離れて対向する対向部45が形成されている。対向部45は、後端にて他の構造体本体部40と連なり、前端にて他の構造体本体部40から離れている。すなわち、他の構造体本体部40と対向部45との間には、空間部46が形成されている。空間部46は、上下方向及び左右方向に拡がって形成されている。本実施の形態において、空間部46は、一の構造体30の開口部37と連通して前方に開口され、開口部37を覆うカバー体32により閉塞される。
【0038】
空間部46の内部には、調整手段50が配置されている。つまり、調整手段50は、操作ノブ25に内蔵される。調整手段50は、被取付部22に対して干渉して被取付部22に対する操作ノブ25の操作力を調整可能とする。調整手段50は、被取付部22に対して移動可能な可動部51と、この可動部51を移動させるとともに可動部51を位置決めする調整部52と、を備える。
【0039】
可動部51は、被取付部22に対する移動量に応じて被取付部22への干渉を増減させることで操作ノブ25の操作力を調整する。可動部51は、被取付部22が延びる方向と交差しかつ被取付部22に沿う方向、本実施の形態では前後方向に移動可能に空間部46内に配置されている。
【0040】
また、本実施の形態において、可動部51の移動には、接触部54が連動する。接触部54は、他の構造体本体部40に形成された穴部55に挿入され、上端部が被取付部22の下面に干渉している。本実施の形態において、穴部55は、他の接触部41と規制部42との間に位置する。接触部54は、可動部51の移動量に応じて被取付部22に対して進退されることで被取付部22への干渉、すなわち被取付部22への押し付け圧または被取付部22に対する摺動抵抗が増減する。図示される例では、可動部51は、被取付部22に対向する側である上側に傾斜部51aを有し、接触部54が傾斜部51aに密着して位置する。そのため、傾斜部51aの傾斜により可動部51の移動量に応じて接触部54の上下の位置が調整されることで、接触部54の被取付部22への干渉が増減するようになっている。
【0041】
傾斜部51aの角度は、好ましくは可動部51の移動方向である前後方向に対し45°未満に設定される。
【0042】
本実施の形態において、被取付部22と干渉する接触部54の先端部である上端部には、摺動部材54aが取り付けられている。摺動部材54aは、例えばゴムなどの、接触抵抗が大きい部材により形成されている。そして、接触部54(摺動部材54a)が、被取付部22に対する操作ノブ25の移動時の摺動抵抗を生み出すことで、操作ノブ25に操作力(操作荷重)が生じる。
【0043】
また、調整部52は、作業者によって操作されることにより可動部51の位置を調整し、かつ、可動部51を位置決めする。調整部52は、被取付部22に対して相対的な位置が固定されている固定部57と、この固定部57に対して相対的に移動可能な移動部58と、を有する。固定部57は例えばナットであり、移動部58は例えば螺子である。固定部57は、位置決め部60に後部が当接し、後部への移動が規制されている。移動部58は、固定部57に螺合され、操作部58aが空間部46の前方の開口(開口部37)に臨んで位置し、この開口(開口部37)からの操作部58aの操作が可能である。また、移動部58は、後端部の押圧部58bが可動部51に当接されている。なお、本実施の形態において、移動部58は、可動部51と別体であるが、これに限らず、押圧部58bに代えて、移動部58と可動部51とが一体的に形成されていてもよい。
【0044】
そして、調整部52の移動部58によって可動部51が進退されることで、可動部51の進退に応じて接触部54が上下に移動されることにより、接触部54(摺動部材54a)の被取付部22への押圧力すなわち摺動抵抗が強弱されることで、操作ノブ25の操作力(操作荷重)の大小が設定される。
【0045】
また、他の構造体本体部40の後端部に連なって連結部62が形成されている。連結部62は、操作ノブ25と、フィン20(図2)と連結される連結体63と、を連結する部分である。連結部62は、一の構造体本体部33の後端部に密着して位置する。連結体63は、連結部62に対し、自由回動可能に連結されているとともに、少なくともいずれかのフィン20(図2)に対してフィン20(図2)の回動方向に当接するように連結されている。本実施の形態において、連結体63は、少なくともいずれかのフィン20(図2)に対して左右方向に当接し、かつ、上下方向に当接しないように連結されている。連結体63により、操作ノブ25の移動がフィン20(図2)の回動に変換される。
【0046】
また、連結部62には、一の構造体本体部33に対向する位置に、被取付部22を保持する保持部65が形成されている。本実施の形態において、保持部65は、被取付部22の後端部から延出する被保持部66を下部から支持し、一の構造体本体部33の下部と保持部65との間で被保持部66を上下に挟み込むように構成されている。
【0047】
カバー体32は、空間部46(開口部37)を開閉する部材である。カバー体32は、一の構造体30及び/または他の構造体31と接触する蓋部70を備える。蓋部70は、操作ノブ25の最前部を構成している。
【0048】
また、カバー体32は、一の構造体30及びまたは他の構造体31に対して接着や溶着などにより固定されてもよいが、本実施の形態では、固定をより容易にするために、例えば、一の構造体30及び/または他の構造体31に対して係止される係止部71が蓋部70の背後である後部に突設されている。係止部71は、先端部が爪状に形成されており、空間部46に位置して一の構造体30及び/または他の構造体31に形成された係止受け部72に係止される。なお、カバー体32は、操作ノブ25に意匠を付加する意匠部材でもよい。
【0049】
そして、風向調整装置10を組み立てる際には、ケース14にフィン20を回動可能に支持するとともに、被取付部22に操作ノブ25を取り付ける。本実施の形態では、被取付部22は、ケース14に回動可能に支持してから操作ノブ25を取り付けてもよいし、操作ノブ25を取り付けてからケース14に回動可能に支持してもよい。
【0050】
操作ノブ25は、まず、他の構造体31の空間部46内に調整手段50を予め組み込んでおき、移動部58を締め付けが緩い位置にセットしておく。次いで、被取付部22に対し、一の構造体30と他の構造体31とを、被取付部22を上下に挟み込んで互いに係止するように組み付ける。このとき、被取付部22の上側の主面に対し、一の構造体30の一の接触部34が接触し、被取付部22の下側の主面に対し、他の構造体31の他の接触部41が接触するとともに、被取付部22の被保持部66が一の構造体30と他の構造体31の保持部65との間に挟み込まれて、被取付部22が一の構造体30および他の構造体31によって断面視で三点支持されるとともに、被取付部22の溝部43に対し、他の構造体31の規制部42が挿入嵌合されて、被取付部22に対し、一の構造体30及び他の構造体31が位置決めされる。
【0051】
調整手段50は、他の構造体31の穴部55から突出する接触部54の摺動部材54aが被取付部22の下側の主面に対向する。
【0052】
この状態で、空間部46(開口部37)から前方に臨む移動部58の操作部58aを操作することで、可動部51を移動させる。本実施の形態では、操作部58aをドライバなどにより回動させることで、固定部57との螺合により移動部58が固定部57に対して相対的に後方へと徐々に移動し、移動部58の押圧部58bが当接する可動部51を後方に移動させる。このとき、可動部51の傾斜部51aと接触する接触部54が、傾斜部51aの傾斜にしたがって上方に押し上げられることで、摺動部材54aが被取付部22へと徐々に押し付けられていく。傾斜部51aの傾斜角度が可動部51の移動方向である前後方向に対し45°よりも小さい角度で傾斜しているため、移動部58の締め込み量に対し、傾斜部51aの傾斜による可動部51の上下高さの変化量が少なく、したがって傾斜部51aと接触する接触部54の摺動部材54aの移動量が少ないので、摺動部材54aの被取付部22への押圧力、すなわち被取付部22に対する操作ノブ25の操作力の微調整が可能となる。
【0053】
既定の操作力に達すると、移動部58の操作を終え、カバー体32を一の構造体30及び他の構造体31の前部に取り付ける。具体的に、カバー体32は、係止部71を空間部46(開口部37)に対して前方から押し込み、空間部46(開口部37)の上下幅に応じて変形された係止部71が係止受け部72の位置で復帰変形することで、一の構造体30及び他の構造体31に対して係止されて抜け止め固定される。この結果、調整手段50が操作ノブ25の内部に隠れて、外部から不用意に操作できない状態となる。
【0054】
この後、操作ノブ25の他の構造体31の連結部62と連結される連結体63を、少なくともいずれかのフィン20と連結することで、風向調整装置10を構成する。
【0055】
風向調整装置10は、操作ノブ25を被取付部22に沿って左右に移動させると、操作ノブ25と連結体63により連結されるフィン20が左右に連動して回動する。また、本実施の形態では、操作ノブ25を上下に移動させると、この操作ノブ25が取り付けられた被取付部22が上下に連動して回動する。これらの動作の組み合わせにより、風向調整装置10は通気路15を通過する空調風の吹出口18からの吹き出しの向きを、上下左右のいずれかの任意方向に容易に変えることが可能となる。
【0056】
このように、調整手段50によって、被取付部22に対して干渉して被取付部22に対する操作ノブ25の操作力を調整することで、例えば被取付部22、一の構造体30、あるいは他の構造体31などの各部品の寸法のばらつきなどに起因する操作ノブ25の操作力のばらつきを抑制できる。
【0057】
そして、操作ノブ25を被取付部22に組み付けた後からでも操作力を調整手段50によって調整できるため、確実に狙った操作力を発生させることが可能になる。そのため、操作力の公差を狭く設定できるので、不良品を大幅に削減できるとともに、操作フィーリングを向上できる。
【0058】
しかも、同じ風向調整装置10を用いる場合でも、部品の変更や追加などをすることなく、車種や車格に応じて操作力を設定できる。
【0059】
被取付部22に対する可動部51の移動量に応じて被取付部22への干渉を増減させることで操作ノブ25の操作力を調整するので、可動部51の移動量を変化させるだけで操作ノブ25の操作力を容易に調整できる。
【0060】
可動部51を、被取付部22が延びる方向と交差しかつ被取付部22に沿う方向に移動可能に配置し、可動部51の傾斜部51aを、被取付部22に対する移動方向に沿って傾斜させて、この傾斜部51aの傾斜により可動部51の移動量に応じて被取付部22への干渉を増減させるので、傾斜部51aの傾斜角度に応じて、可動部51の移動量と被取付部22への干渉の増減との関係を容易に設定できる。
【0061】
調整手段50は、被取付部22の下面に対して干渉するので、被取付部22の上面側の意匠性に影響が少なく、デザイン性が良好となる。特に、風向調整装置10を乗員の視点位置よりも下方に設置する場合に、見栄えが良好となる。
【0062】
被取付部22を、フィン20の回動方向と交差する方向への回動により空調風の風向を調整する他のフィンとすることで、被取付部22によって風向の調整の自由度が向上する。また、被取付部22は、操作ノブ25によって操作可能であるから、操作ノブ25の操作のみで、上下左右の任意方向に風向を調整できる。
【0063】
なお、第1の実施の形態において、調整手段50の可動部51は、接触部54を介して被取付部22と接触する構成としたが、被取付部22に対して直接接触させてもよい。例えば図3に示す第2の実施の形態のように、被操作部22から接触部75を延出し、この接触部75を穴部55に挿入してその先端部を可動部51の傾斜部51aと摺接するようにしても、同様の作用効果を奏することが可能である。この場合、接触部75の先端部である下端部には、可動部51の傾斜部51aに対して摺動可能な摺動部材75aを配置することが好ましい。このようにすることで、部品点数を減らすことができ、構成をより簡略して風向調整装置10をより安価に製造できる。
【0064】
次に、第3の実施の形態について、図4を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0065】
本実施の形態の操作ノブ25は、被取付部22に対して操作ノブ25を移動させたときに所定の位置でクリック力を発生させるクリック力発生機構77を備える。
【0066】
クリック力発生機構77は、図示される例ではボールプランジャであり、他の構造体31の他の構造体本体部40に形成された挿通穴部80に挿通されて先端部が被取付部22にて操作ノブ25の移動方向に単数または複数凹設されたクリック受け部81のいずれかに嵌合されている。
【0067】
本実施の形態において、好ましくは、クリック力発生機構77は、被取付部22に対する可動部51の移動量に応じて被取付部22への干渉を増減させることでクリック力を調整可能とする。つまり、可動部51には、傾斜部51aとは別個に、クリック力発生機構77と接触するクリック用傾斜部51bが形成され、可動部51の移動量に応じてクリック力発生機構77が被取付部22に対して進退されることで被取付部22への干渉が増減される。
【0068】
一例として、可動部51は、被取付部22に対向する側である上側にクリック用傾斜部51bを有し、クリック力発生機構77がクリック用傾斜部51bに密着して位置する。そのため、クリック用傾斜部51bの傾斜により可動部51の移動量に応じてクリック力発生機構77の上下の位置が調整されることで、クリック力発生機構77の被取付部22への干渉が増減するようになっている。
【0069】
このように、調整手段50によって、操作ノブ25の操作力とともに、クリック力発生機構77により生じさせるクリック力を所望のクリック力に容易に調整できる。すなわち、操作ノブ25を被取付部22に組み付けた後からでも、クリック力を任意に調整できるため、確実に狙ったクリック力を発生させることが可能になる。
【0070】
なお、クリック力発生機構77は、ポールプランジャに限らず、例えば板ばねなどの弾性体でもよい。
【0071】
また、第2の実施の形態と第3の実施の形態と組み合わせてもよい。
【0072】
さらに、被取付部22は、回動するものに限られず、ケース14に一体的に固定されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0074】
10 風向調整装置
20 フィン
22 他のフィンである被取付部
25 操作ノブ
50 調整手段
51 可動部
51a 傾斜部
図1
図2
図3
図4