(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】車両用操作装置
(51)【国際特許分類】
B60R 25/023 20130101AFI20240719BHJP
E05B 83/00 20140101ALI20240719BHJP
B60R 25/021 20130101ALI20240719BHJP
B62H 5/02 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B60R25/023
E05B83/00 A
E05B83/00 H
B60R25/021
B62H5/02
(21)【出願番号】P 2021044358
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000155067
【氏名又は名称】ミネベアアクセスソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】垂野 裕
(72)【発明者】
【氏名】浦 健豪
(72)【発明者】
【氏名】ジャトゥロン ロードスコー
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-100331(JP,A)
【文献】特開2008-120204(JP,A)
【文献】特開2017-047771(JP,A)
【文献】特開2008-260512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/023
E05B 83/00
B60R 25/021
B62H 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を所定の第1状態にする第1位置、及び前記車両を前記第1状態とは異なる所定の第2状態にする第2位置との間で回転可能
であるとともに、前記第1位置及び前記第2位置間での回転によって前記車両に搭載されたロータリスイッチを操作する操作部と、
前記操作部に係脱可能とされ、前記第1位置から前記第2位置への前記操作部の移動の規制及び許容を切り替える操作部ロック機構と、を備え、
前記操作部ロック機構は、
前記操作部に係合する係合位置、前記操作部から離脱する係合解除位置との間を、前記操作部の回転軸線に沿う軸方向、及び前記軸方向に交差する径方向のうち、第1方向に沿って移動可能に設けられた第1スライダと、
前記軸方向及び前記径方向のうち第2方向に沿って移動可能に設けられたプランジャを有するソレノイドと、
前記プランジャに接続され、前記係合位置から前記係合解除位置に向けた前記第1スライダの移動を規制する規制位置、及び前記係合位置から前記係合解除位置に向けた前記第1スライダの移動を許容する規制解除位置の間を移動する第2スライダと、を備えている車両用操作装置。
【請求項2】
前記第1スライダを前記係合位置に向けて付勢する第1付勢部材を備えている請求項1に記載の車両用操作装置。
【請求項3】
前記第2スライダを前記規制位置に向けて付勢する第2付勢部材を備えている請求項1又は請求項2に記載の車両用操作装置。
【請求項4】
車両を所定の第1状態にする第1位置、及び前記車両を前記第1状態とは異なる所定の第2状態にする第2位置との間で回転可能な操作部と、
前記操作部に係脱可能とされ、前記第1位置から前記第2位置への前記操作部の移動の規制及び許容を切り替える操作部ロック機構と、を備え、
前記操作部ロック機構は、
前記操作部に係合する係合位置、前記操作部から離脱する係合解除位置との間を、前記操作部の回転軸線に沿う軸方向、及び前記軸方向に交差する径方向のうち、第1方向に沿って移動可能に設けられた第1スライダと、
前記軸方向及び前記径方向のうち第2方向に沿って移動可能に設けられたプランジャを有するソレノイドと、
前記プランジャに接続され、前記係合位置から前記係合解除位置に向けた前記第1スライダの移動を規制する規制位置、及び前記係合位置から前記係合解除位置に向けた前記第1スライダの移動を許容する規制解除位置の間を移動する第2スライダと、を備え、
前記操作部は、
前記第1位置から前記第2位置への移動に伴い、前記第1スライダが摺動するとともに、前記第1スライダを前記係合解除位置に向けて移行させる摺動面と、
前記第2位置にあるとき前記第1スライダに当接して、前記第1スライダの係合位置への移動を規制する規制面と、を備えてい
る車両用操作装置。
【請求項5】
前記車両の操舵系による操舵を規制するロック位置、及び前記操舵系による操舵を許容するロック解除位置に移動可能なハンドルロック機構を備え、
前記操作部は、前記ハンドルロック機構に接続され、
前記操作部は、前記第1位置にあるとき前記ハンドルロック機構を前記ロック位置とし、前記第2位置にあるとき前記ハンドルロック機構を前記ロック解除位置とする、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の車両用操作装置。
【請求項6】
前記ハンドルロック機構は、前記第1スライダに対して前記軸方向で異なる位置で前記操作部に連係している請求項5に記載の車両用操作装置。
【請求項7】
前記車両の電源システムをオンにするオン位置、及び前記電源システムをオフにするオフ位置に移動可能な車両電源スイッチ機構を備え、
前記操作部は、前記車両電源スイッチ機構に接続され、
前記操作部は、前記第1位置にあるとき前記車両電源スイッチ機構を前記オフ位置とし、前記第2位置にあるとき前記車両電源スイッチ機構を前記オン位置とする、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の車両用操作装置。
【請求項8】
前記車両の開閉体の開操作を規制するクローズ位置、及び前記開閉体の開操作を許容するオープン位置に移動可能な開閉体操作許可機構を備え、
前記操作部は、前記開閉体操作許可機構に接続され、
前記操作部は、前記第1位置にあるとき前記開閉体操作許可機構を前記クローズ位置とし、前記第2位置にあるとき前記開閉体操作許可機構を前記オープン位置とする、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の車両用操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等に搭載されるハンドルロック装置として、ユーザが所持する携帯機と、自動二輪車に搭載された制御部(ECU:Electronic Control Unit)と、の通信によりロック解除の許可を判断する構成が知られている。ハンドルロック装置では、ノブスイッチの回転操作が規制されたロック状態と、ノブスイッチの回転操作が許容されたロック解除状態と、を切り替えるロック機構を備えている(例えば、下記特許文献1参照)。ロック機構は、ソレノイドと、ソレノイドのプランジャの動作に伴い回動する係止爪と、を備えている。
【0003】
下記特許文献1に記載のハンドルロック装置では、ロック状態において、係止爪がノブスイッチに係合されることで、ノブスイッチの回転操作が規制されている。この状態で、ノブスイッチを押込操作することで、携帯機とECUとの通信が行われる。携帯機とECUとの間でID情報等の認証が成立すると、ソレノイドのコイルに通電され、プランジャが動作する。プランジャの動作に追従して係止爪が回動し、係止爪がノブスイッチから離脱する。これにより、ノブスイッチがロック解除状態となり、ノブスイッチの回転操作が許容される。その後、ノブスイッチをオン位置まで回転させることで、自動二輪車の電源が起動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術にあっては、防盗性を向上させる点で未だ改善の余地があった。従来のハンドルロック装置では、例えばノブスイッチがロック状態にあっても、車体に大きな外力が入力された場合、プランジャが予期せず移動する可能性がある。この場合には、プランジャの移動によって係止爪がノブスイッチから外れ、ノブスイッチがロック解除状態に移行してしまう可能性がある。すなわち、携帯機とECUとの通信を行わずに、ノブスイッチがオン位置まで回転されてしまう可能性がある。
車体に入力される外力にプランジャが耐えうるように、例えばコイルへの通電量を大きくした場合には、ソレノイドを大型化する等の必要がある。
【0006】
本発明は、ソレノイドの大型化を抑制した上で、防盗性を向上させる車両用操作装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
本開示の一態様に係る車両用操作装置は、車両を所定の第1状態にする第1位置、及び前記車両を前記第1状態とは異なる所定の第2状態にする第2位置との間で回転可能な操作部と、前記操作部に係脱可能とされ、前記第1位置から前記第2位置への前記操作部の移動の規制及び許容を切り替える操作部ロック機構と、を備え、前記操作部ロック機構は、前記操作部に係合する係合位置、前記操作部から離脱する係合解除位置との間を、前記操作部の回転軸線に沿う軸方向、及び前記軸方向に交差する径方向のうち、第1方向に沿って移動可能に設けられた第1スライダと、前記軸方向及び前記径方向のうち第2方向に沿って移動可能に設けられたプランジャを有するソレノイドと、前記プランジャに接続され、前記係合位置から前記係合解除位置に向けた前記第1スライダの移動を規制する規制位置、及び前記係合位置から前記係合解除位置に向けた前記第1スライダの移動を許容する規制解除位置の間を移動する第2スライダと、を備えている。
【0008】
本態様によれば、互いに交差する2方向に移動する2つのスライダによって操作部の回転を規制するので、車両に入力される外力による影響を受け難い。すなわち、本態様の車両用操作装置では、第2スライダが規制解除位置に移動した後、第1スライダが係合解除位置に移動しなければ操作部の回転が許容されない。そのため、従来のように係止爪の回動によって操作部の回転を規制する構成に比べ、操作部が回転できる状態に予期せず移行するのを抑制できる。
このように、本態様の車両用操作装置は、第2スライダの位置によって第1スライダの移動の規制及び許容を切り替えるので、ソレノイドで発生する電磁力を大きくする必要がない。よって、ソレノイドの大型化を抑制した上で、防盗性を向上させることができる。そして、ソレノイドの大型化を抑制できるので、製造コストの増加や重量の増加、車体への取付性の低下等を抑制できる。
【0009】
本開示の一態様に係る車両用操作装置は、前記第1スライダを前記係合位置に向けて付勢する第1付勢部材を備えていることが好ましい。
本態様によれば、車両に入力される外力によって第1スライダが係合解除位置に移行し難くなる。そのため、防盗性の更なる向上を図ることができる。
【0010】
上記態様の車両用操作装置において、前記第2スライダを前記規制位置に向けて付勢する第2付勢部材を備えていることが好ましい。
本態様によれば、車両に入力される外力によって第2スライダが規制解除位置に移行し難くなる。そのため、防盗性の更なる向上を図ることができる。
【0011】
上記態様の車両用操作装置において、前記操作部は、前記第1位置から前記第2位置への移動に伴い、前記第1スライダが摺動するとともに、前記第1スライダを前記係合解除位置に向けて移行させる摺動面と、前記第2位置にあるとき前記第1スライダに当接して、前記第1スライダの係合位置への移動を規制する規制面と、を備えていることが好ましい。
本態様によれば、操作部の回転操作に伴い、第1スライダを第1方向に移動させることができるとともに、操作部の回転位置に応じて第1スライダの移動を規制又は許容できる。すなわち、2つのスライダそれぞれに対して別々の駆動機構を設ける必要がない。そのため、スライダの増加に伴う駆動電力の増加や構成の複雑化等を抑制できる。
【0012】
上記態様の車両用操作装置において、前記車両の操舵系による操舵を規制するロック位置、及び前記操舵系による操舵を許容するロック解除位置に移動可能なハンドルロック機構を備え、前記操作部は、前記ハンドルロック機構に接続され、前記操作部は、前記第1位置にあるとき前記ハンドルロック機構を前記ロック位置とし、前記第2位置にあるとき前記ハンドルロック機構を前記ロック解除位置とすることが好ましい。
本態様によれば、上述したように操作部が予期せず移行するのを抑制できるので、ハンドルロック機構がロック位置及びロック解除位置間を予期せず移行するのを抑制できる。
【0013】
上記態様の車両用操作装置において、前記ハンドルロック機構は、前記第1スライダに対して前記軸方向で異なる位置で前記操作部に連係していることが好ましい。
本態様によれば、第1スライダとハンドルロック機構とを第1方向の同じ位置で操作部に連係させる構成に比べ、第1方向から見た正面視での車両用操作装置の大型化を抑制し易い。
【0014】
上記態様の車両用操作装置において、前記車両の電源システムをオンにするオン位置、及び前記電源システムをオフにするオフ位置に移動可能な車両電源スイッチ機構を備え、前記操作部は、前記車両電源スイッチ機構に接続され、前記操作部は、前記第1位置にあるとき前記車両電源スイッチ機構を前記オフ位置とし、前記第2位置にあるとき前記車両電源スイッチ機構を前記オン位置とすることが好ましい。
本態様によれば、上述したように操作部が予期せず移行するのを抑制できるので、車両電源スイッチ機構がオン位置及びオフ位置間を予期せず移行するのを抑制できる。
【0015】
上記態様の車両用操作装置において、前記車両の開閉体の開操作を規制するクローズ位置、及び前記開閉体の開操作を許容するオープン位置に移動可能な開閉体操作許可機構を備え、前記操作部は、前記開閉体操作許可機構に接続され、前記操作部は、前記第1位置にあるとき前記開閉体操作許可機構を前記クローズ位置とし、前記第2位置にあるとき前記開閉体操作許可機構を前記オープン位置とすることが好ましい。
本態様によれば、上述したように操作部が予期せず移行するのを抑制できるので、開閉体操作許可機構がクローズ位置及びオープン位置間を予期せず移行するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
上記態様によれば、ソレノイドの大型化を抑制した上で、防盗性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】カバーを透過して示すハンドルロック装置の斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III線に対応する断面図である。
【
図4】
図3のIV-IV線に対応する部分の概略断面図である。
【
図6】ハンドルロック装置において、認証動作を説明するための説明図である。
【
図7】ハンドルロック装置において、認証動作を説明するための説明図である。
【
図8】ハンドルロック装置において、ロック解除動作を説明するための説明図である。
【
図9】ハンドルロック装置において、ロック解除動作を説明するための説明図である。
【
図10】ハンドルロック装置において、ロック解除動作を説明するための説明図である。
【
図11】ハンドルロック装置において、ロック解除動作を説明するための説明図である。
【
図12】ハンドルロック装置において、ロック解除動作を説明するための説明図である。
【
図13】ハンドルロック装置において、電源オン操作を説明するための説明図である。
【
図14】ハンドルロック装置において、電源オン操作を説明するための説明図である。
【
図15】ハンドルロック装置において、電源オン操作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置の表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
【0019】
[ハンドルロック装置1]
図1は、カバー22を透過して示すハンドルロック装置1の斜視図である。
図1に示すハンドルロック装置(車両用操作装置)1は、例えばスポーツタイプの自動二輪車に搭載される。但し、ハンドルロック装置1は、スポーツタイプ以外の種々の自動二輪車(例えば、ネイキッドタイプやスクータータイプ等)に搭載されていてもよい。ハンドルロック装置1は、自動二輪車に限らず、種々の車両に搭載することが可能である。なお、以下の説明において、前後上下左右の向きは、特に記載が無ければ自動二輪車における向きと同一とする。
【0020】
ハンドルロック装置1は、車体の前部において、ハンドル(不図示)付近に取り付けられている。ハンドルロック装置1は、後述する操作部11の回転操作や押込操作等によって、例えば以下の機能を実現する。
(1)ECUとの通信開始操作。
(2)ハンドルのロック操作及びロック解除操作。
(3)自動二輪車の電源のオン操作及びオフ操作。
(1)において、「ECUとの通信開始操作」とは、車体に搭載されたECUと、ユーザが携帯する携帯機(スマートキー)と、の間で通信を開始させるための操作である。
【0021】
図2は、ハンドルロック装置1の正面図である。
図3は、
図1のIII-III線に対応する断面図である。
図2、
図3に示すように、ハンドルロック装置1は、ケース10と、操作部11と、認証機構12(
図1参照)と、操作部ロック機構13(
図3参照)と、ハンドルロック機構14(
図3参照)と、ロータリスイッチ15と、を備えている。以下の説明では、ハンドルロック装置1をXYZの直交座標系を用いて説明する。この場合、操作部11の回転軸線O1に沿う方向をX方向(軸方向)とし、X方向に直交する方向をそれぞれY方向、Z方向(径方向)とする。
【0022】
<ケース10>
ケース10は、ケース本体21と、カバー22と、ノブカバー23(
図2参照)と、を備えている。
ケース本体21は、ブロック状に形成されている。ケース本体21は、-X側端部において、Y方向の両側に張り出す張出部21aを介してハンドル(操舵系)に固定されている。
【0023】
図3に示すように、ケース本体21には、ノブ収容孔21b、バー出没孔21c、組付孔21d及びスイッチ収容部21fが形成されている。
ノブ収容孔21bは、ケース本体21において、X方向に延びている。ノブ収容孔21bは、ケース本体21において、-X側に向けて開口している。
バー出没孔21cは、ケース本体21において、ノブ収容孔21bから-Z側に向けて延びている。
【0024】
組付孔21dは、ケース本体21において、ノブ収容孔21bから+Z側に向けて延びている。バー出没孔21c及び組付孔21dは、ノブ収容孔21bを間に挟んでZ方向で向かい合っている。
スイッチ収容部21fは、ケース本体21において、+X側に向けて開口している。ケース本体21のうち、スイッチ収容部21f及びノブ収容孔21b同士を仕切る第1区画壁21gには、連通孔21hが形成されている。連通孔21hは、スイッチ収容部21f及びノブ収容孔21b同士を連通させている。
【0025】
カバー22は、-Z側に向けて開口する箱型に形成されている。カバー22は、ケース本体21とともにハンドルロック装置1の外装面を構成する。カバー22は、ケース本体21に対して+Z側から組み付けられる。カバー22は、組付孔21dを閉塞している。
【0026】
カバー22のうち、+X側に位置する壁部22aには、配線引出口22bが形成されている。配線引出口22bは、X方向から見た正面視でU字状の溝である。すなわち、配線引出口22bは、壁部22aをX方向に貫通するとともに、壁部22aの端縁上で開口している。配線引出口22bのうち、壁部22aの端縁上での開口部は、ケース本体21(後述する第3区画壁21k)によって閉塞されている。配線引出口22bは、ケース10の内外を連通させている。本実施形態において、ハンドルロック装置1は、配線引出口22bが下方を向いた状態で車体に取り付けられている。この場合、ハンドルロック装置1は、配線引出口22bの開口方向(開口面に直交する方向のうち、ケース10の外部を向く方向)が重力方向の下方の成分を少なくとも有するように車体に固定されていればよい。すなわち、ハンドルロック装置1は、開口方向が重力方向の下方に一致した状態で配置されていてもよく、開口方向が重力方向に対して傾いた状態で配置されていてもよい。
【0027】
図2に示すように、ノブカバー23は、ケース本体21及びカバー22を-X側から覆っている。ノブカバー23において、X方向から見てノブ収容孔21bと重なり合う位置には、貫通孔23aが形成されている。ノブカバー23において、貫通孔23aの周囲に位置する部分は、表示リング部23bを構成している。表示リング部23bには、ハンドルロック装置1の状態を示す表示部25A~25Cが付される。表示部25A~25Cは、例えばハンドルロック位置25A、電源オフ位置25B及び電源オン位置25Cを示す印が回転軸線O1回りの周方向に順に付される。
【0028】
<操作部11>
図3に示すように、操作部11は、周方向に回転可能に、かつX方向に移動可能にケース本体21に設けられている。操作部11は、第1インナノブ31と、第2インナノブ32と、アウタノブ33と、を備えている。
第1インナノブ31は、X方向に延びる棒状に形成されている。第1インナノブ31は、周方向に回転可能に、かつX方向に移動可能にノブ収容孔21b内に収容されている。第1インナノブ31は、スイッチ係合部31a(
図4参照)と、スライダ係合部31bと、ロックカム31cと、ノブ連結部31dと、がX方向に連なって形成されている。
【0029】
図4は、
図3のIV-IV線に対応する部分の概略断面図である。
図4に示すように、スイッチ係合部31aは、第1インナノブ31の+X側端部である。
スライダ係合部31bは、第1インナノブ31のうちスイッチ係合部31aに対して-X側に位置する部分である。スライダ係合部31bは、正面視において、回転軸線O1を中心とする円形状に形成されている。スライダ係合部31bには、外周面上で開口するロック位置凹部35及びオフ位置凹部36が形成されている。各凹部35,36は、正面視において、回転軸線O1に交差する径方向の外側に向かうに従い周方向の幅が漸次拡大する台形状に形成されている。すなわち、ロック位置凹部35の内面において、周方向で向かい合う内側面35aは、径方向の外側に向かうに従い周方向で互いに離れる方向に延びる傾斜面に形成されている。オフ位置凹部36の内面において、周方向で向かい合う内側面36aは、径方向の外側に向かうに従い周方向で互いに離れる方向に延びる傾斜面に形成されている。各凹部35,36は、スライダ係合部31bをX方向に貫通している。
【0030】
図3、
図4に示すように、ロックカム31cは、スライダ係合部31bに対して接続軸31fを介して連なっている。ロックカム31cは、回転軸線O1に対して偏心した位置でX方向に延在している。ロックカム31cは、第1インナノブ31の回転に伴い、回転軸線O1回りに偏心回転する。本実施形態のロックカム31cは、操作部11がハンドルロック位置25Aと電源オン位置25Cとの間を回転する過程で、回転軸線O1に対して-Y側の領域を移動する。
ノブ連結部31dは、ロックカム31cに対して接続軸31gを介して連なっている。ノブ連結部31dは、回転軸線O1と同軸で延びる円柱状に形成されている。
【0031】
第2インナノブ32は、第1インナノブ31とアウタノブ33との間を連結している。第2インナノブ32には、+X側からノブ連結部31dが装着されている。
【0032】
第2インナノブ32とノブ連結部31dとの間には、トルクリミッタ(不図示)が設けられている。トルクリミッタは、第1インナノブ31と第2インナノブ32との間でトルクの伝達状態及び非伝達状態を切り替える。すなわち、トルクリミッタは、第2インナノブ32とノブ連結部31dとの間に作用する周方向のトルクが所定未満の場合、第1インナノブ31と第2インナノブ32とが伝達状態を維持し、第1インナノブ31と第2インナノブ32とを一体回転させる。一方、トルクリミッタは、第2インナノブ32とノブ連結部31dとの間に作用する周方向のトルクが所定以上の場合、第1インナノブ31と第2インナノブ32とを伝達解除状態とし、第1インナノブ31と第2インナノブ32とを相対回転させる。
【0033】
アウタノブ33は、操作部11のうちユーザにより操作される部分である。アウタノブ33は、装着キャップ33aと、摘み部33bと、を備えている。
装着キャップ33aは、ノブ収容孔21b内において、第2インナノブ32に対して-X側から装着されている。装着キャップ33aは、第2インナノブ32に対して相対回転不能に取り付けられている。
図2に示すように、摘み部33bは、装着キャップ33aから-X側に突出している。摘み部33bは、貫通孔23aを通じてケース10の外部に露出している。摘み部33bは、正面視で径方向に沿って直線状に延在している。摘み部33bにおいて、径方向の第1側端部には、操作部11の回転位置を示す指示部33cが形成されている。
【0034】
<認証機構12>
図1に示すように、認証機構12は、ケース本体21のうち、組付孔21dを区画する第2区画壁21jに設けられている。具体的に、認証機構12は、第2区画壁21jおいて、+Y側を向く壁面に沿って配置されている。すなわち、認証機構12は、回転軸線O1に対して、+Y側かつ+Z側に配置されている。認証機構12は、スイッチ41と、スイッチ連係部42と、を備えている。
【0035】
スイッチ41は、X方向に押圧操作可能な押圧部41aが-X側を向いた状態で、第2区画壁21jの壁面に取り付けられている。スイッチ41は、周方向から見て少なくとも一部がロックカム31cと重なり合い、かつロックカム31cの移動軌跡から外れた位置に配置されている。なお、「周方向から見て」重なり合うとは、X方向の任意の位置において、回転軸線O1を中心とする同一円周上に配置されていることをいう。
【0036】
スイッチ41から引き出されたスイッチ配線41bは、カバー22内において、ケース本体21の外周面に沿って+X側に配索された後、配線引出口22bを通じてケース10の外部に引き出されている。スイッチ配線41bは、ケース10の外部において、ECUに接続されている。なお、スイッチ41は、回動式のスイッチ等であってもよい。
【0037】
スイッチ連係部42は、スイッチ41に対して-X側に配置されている。スイッチ連係部42は、第2区画壁21jに形成された収容溝21m内に、X方向に移動可能に収容されている。スイッチ連係部42は、Y方向にクランク状に折れ曲がった状態で、X方向に延びている。スイッチ連係部42における+X側端部は、押圧部41aに近接又は当接している。スイッチ連係部42における-X側端部は、第1インナノブ31(ノブ連結部31d)に近接又は当接している。スイッチ連係部42は、操作部11の+X側への移動に伴い、操作部11とともに+X側に移動可能に構成されている。すなわち、操作部11は、スイッチ連係部42を介して押圧部41aを押し込む操作位置(
図6参照)、及びスイッチ連係部42による押圧部41aの押圧操作を解除する退避位置(
図5等参照)の間をX方向に移動する。スイッチ連係部42とケース10との間には、スイッチ連係部42を押圧部41aから離間させる方向(操作部11の退避位置側)に付勢する付勢部材43(不図示)が配置されている。なお、スイッチ連係部42は、操作部11と一体移動可能な構成であれば、第2インナノブ32に連係していてもよい。
【0038】
<操作部ロック機構13>
操作部ロック機構13は、回転軸線O1に対して+Z側に配置されるとともに、カバー22によって+Z側から覆われている。操作部ロック機構13は、操作部11の回転操作の規制及び許容を切り替える。
図3に示すように、操作部ロック機構13は、第1スライダ51と、ソレノイド52と、第2スライダ53と、防盗ドライバ54と、を備えている。
【0039】
第1スライダ51は、組付孔21d内において、Z方向に移動可能に設けられている。第1スライダ51は、X方向を厚さ方向とする板状に形成されている。
図3、
図4に示すように、第1スライダ51は、胴部51aと、進入部51bと、ばね支持部51cと、を備えている。
胴部51aは、第1スライダ51のうち正面視矩形状のベース部分であって、+Z側を向く端縁が平坦面に形成されている。
【0040】
進入部51bは、胴部51aから-Z側に突出している。進入部51bは、何れかの凹部35,36内に進入している状態で、凹部35,36の内側面35a,36aに係合(当接)することで、第1スライダ51に対する操作部11の回転を規制する(係合位置)。一方、進入部51bは、何れかの凹部35,36から退避した状態で、凹部35,36の内側面35a,36aとの係合が解除され、第1スライダ51に対する操作部11の回転を許容する(
図11等に示すロック解除位置)。係合解除位置において、進入部51bは、スライダ係合部31bの外周面上に当接することで、第1スライダ51の係合位置への復帰が規制されている。
【0041】
進入部51bは、正面視において、-Y側に向かうに従いZ方向の幅が漸次縮小する台形状に形成されている。すなわち、進入部51bの外面において、Y方向で向かい合う外側面57は、-Z側に向かうに従い互いに接近する方向に延びる傾斜面に形成されている。進入部51bの外側面57は、凹部35,36の内側面35a,36aと同等の傾斜角度をなしている。したがって、進入部51bの外側面57と、凹部35,36の内側面35a,36aは、第1スライダ51に対する操作部11の回転に伴い、互いに摺動可能に構成されている。但し、進入部51bの外側面57と、凹部35,36の内側面35a,36aと、は異なる傾斜角度であってもよい。
【0042】
ばね支持部51cは、胴部51aからY方向の両側に張り出している。各ばね支持部51cとケース本体21との間には、第1付勢部材55がそれぞれ介在している。第1付勢部材55は、第1スライダ51を係合位置に向けて付勢している。
【0043】
図5は、
図3の要部拡大断面図である。
図5に示すように、ソレノイド52は、フレーム52aと、コイル52bと、プランジャ52cと、を備えている。
コイル52bは、コイル軸線をX方向に沿わせた状態で配置されている。コイル52bは、フレーム52aを介してケース本体21に固定されている。本実施形態において、フレーム52aは、組付孔21dの一部を+Z側から覆うように第2区画壁21jの端縁上で固定されている。
プランジャ52cは、コイル52bの内側に挿入されている。プランジャ52cは、コイル52bとの間に作用する電磁力によって、-X側に移動可能に構成されている。
【0044】
第2スライダ53は、プランジャ52cの-X側端部に連結されている。第2スライダ53は、プランジャ52cと一体でX方向に移動可能に構成されている。第2スライダ53は、第1スライダ51の係合位置から係合解除位置への移動の規制及び許容を切り替える。具体的に、第2スライダ53は、第1スライダ51の移動軌跡に対して進退する規制部53aを備えている。第2スライダ53は、コイル52bへの無通電状態において、プランジャ52cとともに+X側に突出する(規制位置)。規制位置において、規制部53aは、第1スライダ51の移動軌跡上に位置し、胴部51aにY方向で近接又は当接している。一方、第2スライダ53は、コイル52bへの通電状態において、プランジャ52cとともに-X側に移動する(
図7に示す規制解除位置)。規制解除位置において、規制部53aは、第1スライダ51の移動軌跡に対して-X側に退避している。
【0045】
第2スライダ53は、規制部53aを間に挟んでソレノイド52とは反対側に位置する部分にばね支持部53bを備えている。ばね支持部53bとケース本体21との間には、第2付勢部材58が介在している。第2付勢部材58は、第2スライダ53を規制位置(+X側)に向けて付勢している。
【0046】
このように、操作部ロック機構13は、Z方向に移動可能な第1スライダ51と、X方向に移動可能な第2スライダ53と、の互いに交差する方向に移動可能な2つのスライダによって、操作部11の回転操作の規制及び解除を切り替えている。
【0047】
防盗ドライバ54は、ECUから受信した制御信号の周波数に応じてソレノイド52を動作させるソレノイドドライバである。防盗ドライバ54は、カバー22内において、ソレノイド52に対して+X側に配置されている。具体的に、防盗ドライバ54は、正面視においてソレノイド52に重なり合い、Y方向から見た平面視でソレノイド52に重なり合わない位置に配置されている。
【0048】
防盗ドライバ54は、ドライバハウジング54aと、回路基板54bと、を備えている。
ドライバハウジング54aは、+X側に開口する箱型に形成されている。ドライバハウジング54aは、ケース本体21のうち、スイッチ収容部21fを区画する第3区画壁21kにおいて、+Z側に位置する部分に固定されている。すなわち、防盗ドライバ54は、X方向においてソレノイド52と配線引出口22bとの間に配置されている。正面視において、ソレノイド52、防盗ドライバ54及びスイッチ41は、回転軸線O1を中心とした中心角で180°の範囲内に配置されている。
【0049】
図1に示すように、ドライバハウジング54aのうち+Y側に位置する部分には、配線ガイド54fが形成されている。配線ガイド54fは、+Y側に向けて開放されるとともに、X方向に延びる溝である。配線ガイド54f内には、スイッチ配線41bが収容されている。スイッチ配線41bは、配線ガイド54f内をX方向に案内された後、配線引出口22bに向けて配索されている。
【0050】
回路基板54bは、ドライバハウジング54a内において、Z方向を厚さ方向として配置されている。
図1に示すように、回路基板54bには、ソレノイド配線54c及びドライバ配線54dが実装されている。
ソレノイド配線54cは、ソレノイド52(コイル52b)と回路基板54bとの間を接続している。コイル52bから引き出されたソレノイド配線54cは、配線ガイド54fを通じてドライバハウジング54aに対して+X側まで回り込んだ後、回路基板54bに接続されている。
ドライバ配線54dは、回路基板54bから+X側に向けて引き出されている。ドライバ配線54dは、ケース10内において、スイッチ配線41bと結束された状態で、配線引出口22bを通じてケース10の外部に引き出されている。ドライバ配線54dは、ケース10の外部において、ECUに接続されている。
【0051】
防盗ドライバ54は、例えばECUから受信した制御信号の周波数が所定の閾値以上であると判断した場合に、ソレノイド52に向けて動作信号を出力する。動作信号は、ソレノイド52に流す電流やソレノイド52に生じさせる電圧に関する電気信号でもよく、マップで定められた制御方式を指示する信号であってもよい。また、防盗ドライバ54は、制御信号の振幅が所定の閾値以上であると判断した場合に、ソレノイド52に向けて動作信号を出力する構成であってもよい。
【0052】
<ハンドルロック機構14>
図3に示すように、ハンドルロック機構14は、操作部ロック機構13に対して-Z側に配置されている。図示の例において、ハンドルロック機構14は、ソレノイド52に対してZ方向から見て重なり合っている。なお、ハンドルロック機構14及びソレノイド52は、少なくとも一部がZ方向から見て重なり合っていればよい。
【0053】
ハンドルロック機構14は、ノブ収容孔21bからバー出没孔21cに亘って設けられている。ハンドルロック機構14は、操作部11の回転操作に基づき、ハンドルのロック及びロック解除を切り替える。ハンドルロック機構14は、カムプレート61と、ロックバー62と、付勢部材63と、を備えている。
【0054】
カムプレート61は、X方向を厚さ方向としてノブ収容孔21b内に配置されている。カムプレート61には、貫通孔61aが形成されている。貫通孔61a内には、ロックカム31cが配置されている。貫通孔61aの内周縁は、操作部11の回転に伴い、ロックカム31cが摺動可能に構成されている。カムプレート61は、操作部11の回転に伴い、貫通孔61aの内周縁を介してZ方向に押圧されることで、ノブ収容孔21b内をZ方向に移動する。
【0055】
ロックバー62は、Y方向に延びる柱状に形成されている。ロックバー62は、+Z側端部において、カムプレート61に係止されている。ロックバー62は、カムプレート61のZ方向の移動に伴い、バー出没孔21c内をZ方向に移動する。具体的に、ロックバー62は、ハンドルに係合するロック位置と、ハンドルとの係合が解除されたロック解除位置と、の間を移動する。ロック位置において、ロックバー62の-Z側端部は、バー出没孔21cを通じてケース10から突出する。ロック位置において、ロックバー62は、ハンドルによる操舵を規制する。ロック解除位置において、ロックバー62は、ロック位置に比べてケース10からの突出量が小さくなる。すなわち、ロック解除位置において、ロックバー62は、ハンドルから退避して、ハンドルによる操舵を許容する。なお、ハンドルによる操舵が規制された状態は、「車両が所定の第1状態」であることの一例である。
【0056】
付勢部材63は、ロックバー62の周囲を取り囲んでいる。付勢部材63は、カムプレート61とケース本体21との間に配置され、ハンドルロック機構14をロック位置(-Z側)に向けて付勢している。
【0057】
<ロータリスイッチ15>
図4に示すように、ロータリスイッチ15は、ケース本体21に対して+X側から連結されている。ロータリスイッチ15は、操作部11の回転操作に伴い、自動二輪車に搭載されたECUに対して電源のオン信号を出力する。具体的に、ロータリスイッチ15は、スイッチハウジング15a内にロータ(不図示)や固定接点(不図示)が収納されて構成されている。
【0058】
スイッチハウジング15aには、差込口15bが形成されている。差込口15b内には、第1インナノブ31のスイッチ係合部31aが差し込まれている。
【0059】
ロータは、周方向に回転可能にスイッチハウジング15a内に収容されている。ロータには、スイッチ係合部31aが嵌合されている。これにより、ロータは、第1インナノブ31の回転に伴い、回転可能に構成されている。ロータには、回転接点(不図示)が配設されている。回転接点は、ロータの回転に伴い回転軸線O1回りの周方向に沿って移動する。
固定接点は、スイッチハウジング15aにおいて、ロータに対向する位置で、回転接点の移動軌跡上に間隔をあけて配設されている。固定接点は、ロータの回転に伴い、回転接点に接触可能に構成されている。すなわち、ロータリスイッチ15は、第1インナノブ31の回転に伴い、回転接点と固定接点とが接触すると、ECUに対して電源のオン信号を出力する。
【0060】
[作用]
次に、上述したハンドルロック装置1の作用について説明する。以下の説明では、操作部11(指示部33c)をハンドルロック位置P1(第1位置)から電源オン位置P3(第2位置)までの動作を順次説明する。なお、操作部11は、ハンドルロック位置P1において、第1スライダ51が係合位置、及び第2スライダ53が規制位置にあることで、回転操作が規制された状態で、X方向への移動が許容されている。
【0061】
<認証動作>
図6、
図7は、認証動作を説明するための説明図であって、
図5に対応する断面図である。
図5、
図6に示すように、ハンドルロック装置1の認証を開始するには、ユーザが携帯機を所持した状態で、アウタノブ33を+X側に押し込む。すると、操作部11全体(インナノブ31,32及びアウタノブ33)がケース10に対して+X側に移動する。この際、操作部11は、第1スライダ51に対してX方向に相対移動することで、進入部51bがロック位置凹部35内をX方向に移動する。
【0062】
操作部11が+X側に移動すると、第2インナノブ32を介してスイッチ連係部42が+X側に押し込まれる。これにより、スイッチ連係部42が収容溝21m内を+X側に移動する。操作部11が操作位置まで移動することで、スイッチ連係部42を介してスイッチ41が押圧操作される。スイッチ41が押圧されると、ECUと携帯機との認証動作が開始する。具体的には、ECUのアンテナからリクエスト信号が送信される。携帯機は、リクエスト信号を受信すると、応答信号を送信する。ECUのアンテナは、携帯機から送信された応答信号を受信する。その後、ECUにおいて、アンテナが受信した携帯機の応答信号に基づいて携帯機のID認証を行う。ECUは、認証が正常に完了した場合に、操作部ロック機構13(防盗ドライバ54)に制御信号を出力する。
【0063】
図6、
図7に示すように、防盗ドライバ54は、入力された制御信号が正規の制御信号であると判断した場合、ソレノイド52に向けて動作信号を出力する。これにより、コイル52bに対して電流が流れる。コイル52bに電流が流れると、コイル52bとプランジャ52cとの間に作用する電磁力によって、プランジャ52cが-X側に移動する。プランジャ52cが-X側に移動することで、第2スライダ53が-X側に移動する。その結果、第2スライダ53が規制位置から規制解除位置に移動し、第2スライダ53による第1スライダ51の+Z側への移動が許容される。
以上により、認証動作が完了する。
【0064】
<ロック解除動作>
図8~
図12は、ロック解除動作を説明するための説明図であって、
図8は
図2に対応する正面図、
図9、
図10は
図4に対応する断面図、
図11、
図12は
図5に対応する断面図である。
図8に示すように、認証動作の完了後、操作部11を電源オフ位置P2まで移動させ、ハンドルロックを解除する。具体的には、操作部11を
図8で示す時計回りに回転させる。すると、操作部11全体が周方向に回転する。この際、
図9に示すように、操作部11の回転に伴い、ロック位置凹部35が周方向に移動することで、ロック位置凹部35の内側面35a上を第1スライダ51の進入部51bが摺動する。これにより、第1スライダ51は、操作部11の回転に伴い、第1付勢部材55の付勢力に抗して+Z側(回転軸線O1の径方向)に移動する。進入部51bがロック位置凹部35から離脱した後、さらに操作部11を回転させると、第1スライダ51がスライダ係合部31bの外周面上に乗り上げる。これにより、第1スライダ51が係合解除位置となる。
【0065】
図9、
図10に示すように、第1スライダ51が係合解除位置に移動した状態で、操作部11をさらに回転させると、進入部51bがスライダ係合部31bの外周面上を摺動しながら、操作部11が回転する。その後、第1スライダ51とオフ位置凹部36とがZ方向で向かい合う位置まで操作部11が回転すると、第1スライダ51が再び係合位置に向けて移動する。すなわち、第1スライダ51は、第2付勢部材58の付勢力によって-Z側に移動する。その結果、進入部51bがオフ位置凹部36内に進入し、操作部11が電源オフ位置(第2位置)P2で保持される。
【0066】
図11、
図12に示すように、操作部11がハンドルロック位置P1から電源オフ位置P2に移行する過程において、ロックカム31cが回転軸線O1回りに偏心回転する。すると、ロックカム31cの外周面が、カムプレート61における貫通孔61aの内周縁上を摺動する。これにより、ロックカム31cは、操作部11の回転に伴い、カムプレート61を+Z側に押圧する。これにより、ロックバー62が、カムプレート61とともに+Z側に移動する。その結果、ロックバー62がハンドルから退避し、ハンドルによる操舵が許容される(ロック解除位置)。
【0067】
<電源オフ位置P2から電源オン位置P3への移行>
図13~
図15は、電源オン操作を説明するための説明図であって、
図13は
図2に対応する正面図、
図14は
図4に対応する断面図、
図15は
図5に対応する断面図である。
次に、
図13に示すように、電源オフ位置P2から電源オン位置P3に向け、操作部11を
図13で示す時計回りに回転させる。操作部11の回転に伴い、オフ位置凹部36が周方向に移動することで、オフ位置凹部36の内側面36a上を第1スライダ51の進入部51bが摺動する。これにより、第1スライダ51は、操作部11の回転に伴い、第1付勢部材55の付勢力に抗して+Z側(回転軸線O1の径方向)に移動する。進入部51bがオフ位置凹部36から離脱した後、さらに操作部11を回転させると、第1スライダ51がスライダ係合部31bの外周面上に乗り上げる。これにより、第1スライダ51が係合解除位置となる。第1スライダ51が係合解除位置に移動した状態で、操作部11をさらに回転させると、進入部51bがスライダ係合部31bの外周面上を摺動しながら、操作部11が回転する。これにより、操作部11が電源オン位置P3となる。
【0068】
なお、操作部11が電源オン位置P3にあるとき、第1スライダ51はスライダ係合部31bの外周面に当接している。したがって、操作部11が電源オン位置P3にあるとき、第1スライダ51は係合位置に復帰しないようになっている。
【0069】
操作部11が電源オン位置P3に移行する過程において、スイッチ係合部31aを介してロータリスイッチ15のロータが回転することで、ロータリスイッチ15の固定接点と回転接点とが接触する。その結果、ロータリスイッチ15からECUに対してオン信号が送信される。これにより、自動二輪車の始動準備が完了する。この状態で、自動二輪車に配設されたスタータ等を操作することで、エンジンが点火される。なお、自動二輪車の始動準備が完了した状態は、「車両が第1状態と異なる所定の第2状態」であることの一例である。
【0070】
なお、操作部11がハンドルロック位置P1又は電源オフ位置P2にある状態において、携帯機とECUとの通信開始から所定時間経過した場合や、認証動作の完了後に携帯機がECUとの通信可能エリア外まで離れた場合等には、第2スライダ53が再度規制位置に復帰する。すなわち、防盗ドライバ54からコイル52bへの動作信号の出力が停止され、コイル52bへの通電が停止される。すると、第2スライダ53が第2付勢部材58の付勢力によって+X側に押し戻されることで、プランジャ52c及び第2スライダ53が一体となって+X側に移動する。その結果、第2スライダ53による第1スライダ51の+Z側への移動が規制される。このような場合において、上述した認証動作を再度行うことで、第2スライダ53を再度規制解除位置に移行させることができる。すなわち、上述した説明では、ハンドルロック位置P1を第1位置とし、電源オフ位置P2又は電源オン位置P3を第2位置として説明したが、電源オフ位置P2を第1位置とし、ハンドルロック位置P1又は電源オン位置P3を第2位置としてもよい。
【0071】
このように、本実施形態のハンドルロック装置1は、Z方向(第1方向)に移動して操作部11に係脱する第1スライダ51と、X方向(第2方向)に移動して第1スライダ51の移動を規制及び許容する第2スライダ53と、を備える構成とした。
この構成によれば、互いに交差する2方向に移動する2つのスライダ51,53によって操作部11の回転を規制するので、自動二輪車に入力される外力による影響を受け難い。すなわち、本実施形態のハンドルロック装置1では、第2スライダ53が規制解除位置に移動した後、第1スライダ51が係合解除位置に移動しなければ操作部11の回転が許容されない。そのため、従来のように係止爪の回動によって操作部11の回転を規制する構成に比べ、操作部11が回転できる状態に予期せず移行するのを抑制できる。
このように、本実施形態のハンドルロック装置1は、第2スライダ53の位置によって第1スライダ51の移動の規制及び許容を切り替えるので、ソレノイド52で発生する電磁力を大きくする必要がない。よって、ソレノイド52の大型化を抑制した上で、防盗性を向上させることができる。そして、ソレノイド52の大型化を抑制できるので、製造コストの増加や重量の増加、車体への取付性の低下等を抑制できる。
【0072】
本実施形態のハンドルロック装置1では、第1スライダ51が第1付勢部材55によって係合位置に向けて付勢されている。そのため、第1スライダ51が係合解除位置により移行し難くなる。
【0073】
本実施形態のハンドルロック装置1は、第2スライダ53を規制位置に向けて付勢する第2付勢部材58を備える構成とした。
この構成によれば、自動二輪車に入力される外力によって第2スライダ53が規制解除位置に移行し難くなる。そのため、防盗性の更なる向上を図ることができる。
【0074】
本実施形態の操作部11は、操作部11の回転に伴い第1スライダ51が凹部35,36の内側面(摺動面)35a,36a摺動することで、第1スライダ51を係合位置から係合解除位置まで移行させ、電源オン位置においてスライダ係合部31bの外周面(規制面)に当接することで第1スライダ51の係合位置への移動を規制する構成とした。
この構成によれば、操作部11の回転操作に伴い、第1スライダ51を移動させることができるとともに、操作部11の回転位置に応じて第1スライダ51の移動を規制又は許容できる。すなわち、2つのスライダ51,53それぞれに対して別々の駆動機構を設ける必要がない。そのため、スライダ51,53の増加に伴う駆動電力の増加や構成の複雑化等を抑制できる。
【0075】
本実施形態のハンドルロック装置1は、第1スライダ51とハンドルロック機構14(カムプレート61)とがX方向で異なる位置で操作部11に連係している構成とした。
この構成によれば、第1スライダ51とハンドルロック機構14とをX方向で同じ位置で操作部11に連係させる構成に比べ、X方向から見た正面視でのハンドルロック装置1の大型化を抑制し易い。
【0076】
本実施形態のハンドルロック装置1において、自動二輪車のハンドルによる操舵を規制するロック位置、及びハンドルによる操舵を許容するロック解除位置に移動可能なハンドルロック機構14を備えている構成とした。操作部11は、ハンドルロック位置P1においてハンドルロック機構14をロック位置とし、電源オフ位置P2又は電源オン位置P3においてハンドルロック機構14をロック解除位置とする構成とした。
この構成によれば、上述したように操作部11が予期せず移行するのを抑制できるので、ハンドルロック機構14がロック位置及びロック解除位置間を予期せず移行するのを抑制できる。
【0077】
[その他の変形例]
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
上述した実施形態では、操作部11がX方向に移動することで、認証動作を行う構成について説明したが、この構成に限られない。例えば操作部11がZ方向に移動して認証動作を行う構成であってもよい。
上述した実施形態では、第2付勢部材58を備える構成について説明したが、第2付勢部材58を備えない構成であってもよい。
【0078】
上述した実施形態では、第1スライダ51がZ方向(径方向)に移動し、第2スライダ53がX方向(軸方向)に移動する構成について説明したが、第1スライダ51がX方向に移動し、第2スライダ53がZ方向に移動する構成であってもよい。
上述した実施形態では、ハンドルロック機構14と第1スライダ51がX方向で異なる位置に配置された構成について説明したが、この構成に限られない。ハンドルロック機構14と第1スライダ51は、X方向で同じ位置(Y方向やZ方向でずれた位置)配置されていてもよい。
上述した実施形態では、操作部11の回転に伴い第1スライダ51を係合解除位置に移動させる構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、第2スライダ53の規制解除位置に向けた移動に伴い、第1スライダ51を係合解除位置に向けて移動させてもよい。
【0079】
上述した実施形態では、ケース10内に防盗ドライバ54が配置された構成について説明したが、防盗ドライバ54を備えない構成であってもよい。また、スイッチ41やソレノイド52、防盗ドライバ54、ハンドルロック機構14等のケース10内でのレイアウトは、適宜変更が可能である。
【0080】
上述した実施形態では、(2)ハンドルのロック操作及びロック解除操作、及び(3)自動二輪車の電源のオン操作及びオフ操作が可能な車両用操作装置について説明したが、この構成に限られない。車両用操作装置は、例えば、スクータータイプの鞍乗型車両においてシート(開閉体)や燃料給油口のリッド(開閉体)等を開閉操作する開閉体操作許可機構を備えていてもよい。この場合、開閉体操作許可機構は、開閉体の開操作を規制するクローズ位置、及び開閉体の開操作を許容するオープン位置に移動可能である。この場合、電源オフ位置(第1位置)P2と電源オン位置(第1位置)P3との間に、シートや給油口のリッドをオープン操作可能なシート開位置(図示せず:第2位置)を操作部に設定してもよい。具体的には、インナノブ31の電源オフ位置P2に対応する凹部35に隣接して、シート開位置に対応する凹部を形成してもよい。すなわち、操作部11は、電源オフ位置P2や電源オン位置P3にあるとき開閉体操作許可機構をクローズ位置とし、シート開位置にあるとき開閉体操作許可機構をオープン位置としてもよい。
この構成によれば、上述したように操作部11が予期せず移行するのを抑制できるので、開閉体操作許可機構がクローズ位置及びオープン位置間を予期せず移行するのを抑制できる。
【0081】
また、車両用操作装置は、車両の電源システムをオンにするオン位置、及び電源システムをオフにするオフ位置に移動可能な車両電源スイッチ機構を備えていてもよい。この場合、操作部は、第1位置にあるとき車両電源スイッチ機構をオフ位置とし、第2位置にあるとき車両電源スイッチ機構を前記オン位置としてもよい。
この構成においても、上述したように操作部11が予期せず移行するのを抑制できるので、車両電源スイッチ機構がオン位置及びオフ位置間を予期せず移行するのを抑制できる。
【0082】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1:ハンドルロック装置(車両用操作装置)
11:操作部
13:操作部ロック機構
14:ハンドルロック機構
51:第1スライダ
52:ソレノイド
52c:プランジャ
53:第2スライダ
55:第1付勢部材
58:第2付勢部材
O1:回転軸線