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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/00 20220101AFI20240719BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240719BHJP
   F24H 15/258 20220101ALI20240719BHJP
【FI】
F24D3/00 K
F24F11/64
F24H15/258
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021058306
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022155001
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄也
(72)【発明者】
【氏名】弓削 力也
(72)【発明者】
【氏名】本島 駿
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-134097(JP,A)
【文献】特開2015-010779(JP,A)
【文献】特開2011-127880(JP,A)
【文献】米国特許第05692676(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/00
F24F 11/64
F24H 15/258
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出温度に応じた空調設定温度で屋内の空調を行う空調装置と、
前記空調装置を制御する制御部と、を備えており、
前記制御部は、第1期間における前記温度センサの検出温度の平均値である短期平均値(Tg1)と、前記第1期間よりも長い第2期間における前記温度センサの検出温度の平均値である長期平均値(Tg2)と、に基づいて算出基準値(Tg)を決定し、前記算出基準値(Tg)に基づいて前記空調装置の前記空調設定温度を算出するように構成されており、
前記制御部は、
前記短期平均値(Tg1)と前記長期平均値(Tg2)との差の絶対値が所定の閾値を超える場合は、
前記短期平均値(Tg1)と前記長期平均値(Tg2)のうちの低い値に前記閾値以下の補正値を加算した値を前記算出基準値(Tg)に決定する、または、
前記短期平均値(Tg1)と前記長期平均値(Tg2)のうちの高い値から前記閾値以下の補正値を減算した値を前記算出基準値(Tg)に決定する、空調システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記短期平均値(Tg1)と前記長期平均値(Tg2)との差の絶対値が前記閾値を超えない場合は、前記短期平均値(Tg1)を前記算出基準値(Tg)に決定する、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記空調装置の能力に応じた計算式と前記算出基準値(Tg)とに基づいて前記空調装置の前記空調設定温度を算出するように構成されている、請求項1または2に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に空調システムが開示されている。特許文献1の空調システムは、屋外の温度を検出する温度センサと、屋内の空調を行う空調装置と、空調装置を制御する制御部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-134097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
屋外の温度を検出する温度センサでは、周囲の環境の影響により検出温度が短期的に高くなることや低くなることがある。例えば、日射の影響により検出温度が短期的に高くなることや、放射冷却の影響により検出温度が短期的に低くなることがある。この場合に、温度センサの検出温度に基づいて空調装置の出力を制御すると、空調装置の出力が短期的に大きくなることや小さくなることがある。その結果、例えば空調装置の熱動弁の動作が短期的に大きくなること等により、空調装置の部品(例えば熱動弁)に対する負荷が大きくなることがある。そこで、本明細書では、空調装置の部品に対する負荷を軽減することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する空調システムは、屋外の温度を検出する温度センサと、前記温度センサの検出温度に応じた空調設定温度で屋内の空調を行う空調装置と、前記空調装置を制御する制御部と、を備えている。前記制御部は、第1期間における前記温度センサの検出温度の平均値である短期平均値(Tg1)と、前記第1期間よりも長い第2期間における前記温度センサの検出温度の平均値である長期平均値(Tg2)と、に基づいて算出基準値(Tg)を決定し、前記算出基準値(Tg)に基づいて前記空調装置の空調設定温度を算出するように構成されている。前記制御部は、前記短期平均値(Tg1)と前記長期平均値(Tg2)との差の絶対値が所定の閾値を超える場合は、前記短期平均値(Tg1)と前記長期平均値(Tg2)のうちの低い値に前記閾値以下の補正値を加算した値を前記算出基準値(Tg)に決定する、または、前記短期平均値(Tg1)と前記長期平均値(Tg2)のうちの高い値から前記閾値以下の補正値を減算した値を前記算出基準値(Tg)に決定する。
【0006】
屋外の温度を検出する温度センサでは、周囲の環境の影響により検出温度が短期的に高くなることや低くなることがある。しかしながら、上記の構成によれば、温度センサの検出温度の短期平均値(Tg1)と長期平均値(Tg2)との差に応じて補正値を用いて算出基準値(Tg)を決定することにより、短期平均値(Tg1)と長期平均値(Tg2)との差が大きい時であっても短期的な温度の傾向と長期的な温度の傾向の両方を反映させた算出基準値(Tg)を決定することができる。そして、補正値を用いて決定された算出基準値(Tg)に基づいて空調装置の空調設定温度を算出することにより、温度センサの検出温度が短期的に高くなることや低くなることがあっても、空調設定温度が短期的に極端に高くなることや低くなることを抑制することができる。これにより、空調装置の部品(例えば熱動弁)に対する負荷を軽減することができる。
【0007】
前記制御部は、前記短期平均値(Tg1)と前記長期平均値(Tg2)との差の絶対値が前記閾値を超えない場合は、前記短期平均値(Tg1)を前記算出基準値(Tg)に決定してもよい。
【0008】
この構成によれば、短期平均値(Tg1)と長期平均値(Tg2)との差が小さい場合に、短期平均値(Tg1)を算出基準値(Tg)に決定することにより、屋外の現在温度に近い温度に基づいて空調設定温度を算出することができる。
【0009】
前記制御部は、前記空調装置の能力に応じた計算式と前記算出基準値(Tg)とに基づいて前記空調装置の空調設定温度を算出するように構成されていてもよい。
【0010】
この構成によれば、空調装置の能力に応じて空調設定温度を算出することができる。そのため、適切な空調設定温度で空調を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例に係る空調システム2の構成を示すブロック図である。
図2】実施例に係る熱源機100の構成を模式的に示す図である。
図3】実施例に係るTg決定処理のフローチャートである。
図4】実施例に係る暖房設定温度算出処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施例に係る空調システム2について図面を参照して説明する。図1に示すように、空調システム2は、熱源機100と、暖房放熱器90(第1暖房放熱器90a及び第2暖房放熱器90b)と、リモコン200とを備えている。空調システム2は、例えば床暖房システムや居室暖房システムである。空調システム2は、熱源機100で加熱した暖房用熱媒(例えば水)を暖房放熱器90に供給し、暖房放熱器90で暖房用熱媒の熱を放熱することにより屋内(例えば、居室、台所、脱衣室等)を暖房するシステムである。暖房放熱器90は屋内(例えば、居室、台所、脱衣室等)に設置されている。熱源機100は、例えば、電気式、ガス式、または、電気及びガス式の熱源機である。暖房放熱器90は、例えば、床暖房機、ファンコイルユニット、パネルラジエータ等である。リモコン200は、例えば、床暖房用のリモコン、居室暖房用のリモコン等である。
【0013】
(熱源機100の構成)
熱源機100の構成について説明する。以下では、電気及びガス式の熱源機100の構成を説明する。熱源機100は、暖房用の水(暖房用熱媒)を加熱して温水を生成し、生成した温水を暖房放熱器90に供給する機器である。熱源機100は、操作部102と、通信I/F104と、温度センサ105と、制御部106と、加熱部108とを備えている。
【0014】
(加熱部108の構成;図2
加熱部108の構成について説明する。図2に示すように、加熱部108は、熱交換ユニット7と、ヒートポンプ熱源4と、燃焼熱源3とを備えている。熱交換ユニット7は、熱交換器70を備えている。熱交換器70は、例えばプレート式の熱交換器であり、加熱用熱媒と暖房用熱媒との熱交換により、プレートを通過する水(暖房用熱媒)を加熱することができる。熱交換器70には、暖房往路52の上流端と、熱媒往路62の上流端が接続されている。熱交換器70で加熱された水(暖房用熱媒)が暖房往路52へ送り出される。熱交換器70で熱交換された加熱用熱媒が熱媒往路62へ送り出される。
【0015】
暖房往路52には、暖房出湯サーミスタ46が設けられている。暖房出湯サーミスタ46は、暖房往路52を流れる水の温度を検出する。暖房往路52の下流端には、第1暖房経路41の上流端と、第2暖房経路42の上流端と、凍結防止用バイパス路56の上流端が接続されている。
【0016】
第1暖房経路41は、加熱部108から第1暖房放熱器90aに温水(暖房用熱媒)を供給する経路である。第1暖房経路41は、加熱部108から第1暖房放熱器90aを経由して再び加熱部108に戻るように構成されている。温水の熱が第1暖房放熱器90aから放熱されることにより屋内が暖房される。第1暖房放熱器90aは、例えば、居室を暖房するためのパネルラジエータや床暖房機等である。
【0017】
第2暖房経路42は、加熱部108から第2暖房放熱器90bに温水(暖房用熱媒)を供給する経路である。第2暖房経路42は、加熱部108から第2暖房放熱器90bを経由して再び加熱部108に戻るように構成されている。温水の熱が第2暖房放熱器90bから放熱されることにより屋内が暖房される。第2暖房放熱器90bは、例えば、居室を暖房するためのファンコイルユニット等である。
【0018】
第1暖房経路41の下流端と、第2暖房経路42の下流端と、凍結防止用バイパス路56の下流端は、ヒートポンプ往路53の上流端に接続されている。ヒートポンプ往路53には、ヒートポンプ入水サーミスタ82が設けられている。ヒートポンプ入水サーミスタ82は、ヒートポンプ往路53を流れる水の温度を検出する。
【0019】
ヒートポンプ熱源4は、ヒートポンプ往路53の下流端から流入する水を加熱して、ヒートポンプ復路51の上流端に送り出す。ヒートポンプ熱源4は、冷媒(例えばR32といったHFC冷媒や、R744といったCO2冷媒)を循環させるための冷媒循環路18と、圧縮機20と、凝縮器22と、減圧機構24と、蒸発器26と、ファン28を備えている。圧縮機20は、気相状態の冷媒を加圧して凝縮器22へ送り出す。凝縮器22は、水(暖房用熱媒)への放熱によって冷媒を凝縮させて、液相状態の冷媒を減圧機構24へ送り出す。減圧機構24は、例えば開度を調整可能な膨張弁であって、冷媒を減圧して蒸発器26へ送り出す。蒸発器26は、ファン28によって送風される外気からの吸熱によって冷媒を蒸発させて、気相状態の冷媒を圧縮機20へ送り出す。ヒートポンプ熱源4においては、ヒートポンプ往路53から送られた水(暖房用熱媒)が凝縮器22で加熱されて、加熱後の温水が凝縮器22からヒートポンプ復路51へ送り出される。
【0020】
ヒートポンプ復路51には、第1循環ポンプ50と、ヒートポンプ出湯サーミスタ81が設けられている。第1循環ポンプ50が駆動すると、加熱部108と暖房放熱器90(90a、90b)との間で水(暖房用熱媒)が循環する。ヒートポンプ出湯サーミスタ81は、ヒートポンプ復路51を流れる水の温度を検出する。
【0021】
ヒートポンプ復路51の下流端には、三方弁55が設けられている。三方弁55には、暖房復路57の上流端と、加熱バイパス路54の上流端が接続されている。三方弁55は、ヒートポンプ復路51から暖房復路57に流れる水の流量と、ヒートポンプ復路51から加熱バイパス路54に流れる水の流量の割合を調整可能である。暖房復路57の下流端は、熱交換器70に接続されている。加熱バイパス路54の下流端は、暖房往路52に接続されている。
【0022】
燃焼熱源3は、バーナ31と、熱交換器32を備えている。バーナ31は、都市ガス等の燃料を燃焼させる。熱交換器32には、熱媒往路62の下流端と、熱媒復路61の上流端が接続されている。熱交換器32は、熱媒往路62の下流端から流入する加熱用熱媒をバーナ31の燃焼熱によって加熱して、加熱後の加熱用熱媒を熱媒復路61の上流端へ送り出す。熱媒復路61の下流端は、熱交換器70に接続されている。
【0023】
熱媒往路62には、熱動弁71と、第2循環ポンプ60が設けられている。熱動弁71は、熱媒往路62を開閉する。第2循環ポンプ60が駆動すると、熱交換器70と燃焼熱源3との間で加熱用熱媒が循環する。
【0024】
次に、熱源機100の加熱部108以外の構成について説明する。図1に示す熱源機100の操作部102は、複数のボタンやスイッチ(図示省略)を備えている。空調システム2のユーザや設置業者は、操作部102を操作することによって、様々な指示を熱源機100に入力することができる。通信I/F104は、リモコン200と有線通信または無線通信を実行するためのインターフェースである。
【0025】
温度センサ105は、例えば熱源機100のヒートポンプ熱源4の筐体に取り付けられている(図2参照)。温度センサ105は、ヒートポンプ熱源4が設置されている屋外の温度(外気温度)を検出可能である。温度センサ105の検出温度Tsの情報は、所定の時間間隔(例えば10分間隔)で制御部106に供給される。
【0026】
制御部106は、揮発性メモリ、不揮発性メモリなどによって構成される記憶部107を備えており、記憶部107に記憶されているプログラムに従って、熱源機100の各部の動作を制御する。
【0027】
また、制御部106は、温度センサ105から所定の時間間隔(例えば10分間隔)で取得する検出温度Tsの情報を記憶部107に記憶する。更に、制御部106は、温度センサ105から取得する検出温度Tsの情報に基づいて、過去の外気温度の平均値を算出する。例えば、制御部106は、直近2時間(現在時刻の2時間前から現在時刻まで)の外気温度(温度センサ105の検出温度Ts)の平均値を算出し、その値を短期平均値Tg1として記憶部107に記憶する。また、制御部106は、直近7日間(本日の7日前の現在時刻から本日の現在時刻まで)の外気温度(温度センサ105の検出温度Ts)の平均値を算出し、その値を長期平均値Tg2として記憶部107に記憶する。また、制御部106は、短期平均値Tg1と長期平均値Tg2の関係に基づいて、暖房設定温度Yを算出するための算出基準値Tgを決定する。算出基準値Tgを決定する処理、及び、暖房設定温度Yを算出する処理については後述する。
【0028】
記憶部107は、暖房関連情報110を予め記憶している。暖房関連情報110は、空調システム2の暖房設定温度Yを算出する過程で用いられる。暖房関連情報110は、複数の条件A1~D1と、複数の計算式a1~d1との情報を含んでいる。各条件A1~D1は、例えば、住宅の熱損失係数と、暖房放熱器90(第1暖房放熱器90a及び第2暖房放熱器90b)の熱伝達係数(放熱係数ともいう)とにより決定される。例えば、条件A1は、住宅の熱損失係数が1.6W/m・℃であり、暖房放熱器90の熱伝達係数が1.6W/m・℃である。また、条件B1は、例えば、住宅の熱損失係数が1.4W/m・℃であり、暖房放熱器90の熱伝達係数が1.6W/m・℃である。空調システム2では、空調システム2の設置業者が、熱源機100の操作部102を操作することにより複数の条件A1~D1から特定の条件(例えば条件A1)を選択して熱源機100に入力することができる。
【0029】
暖房関連情報110の各計算式a1~d1は、後述する算出基準値Tgに基づいて暖房放熱器90における暖房基準温度Xを算出するための式である。複数の計算式a1~d1は、それぞれ、複数の条件A1~D1に対応して予め設定されている。例えば、条件A1に対応する計算式a1は、暖房基準温度X=-0.9×Tg(算出基準値)+50である。また、条件B1に対応する計算式b1は、例えば、暖房基準温度X1=-0.75×Tg(算出基準値)+45である。条件A1~D1と計算式a1~d1は適宜変更可能である。
【0030】
(リモコン200の構成)
リモコン200は、操作部202と、表示部203と、通信I/F204と、制御部205とを備えている。操作部202は、複数のボタン(図示省略)を備えている。空調システム2のユーザは、操作部202を操作することによって、様々な指示をリモコン200に入力することができる。例えば、ユーザは、操作部202を操作することによって、空調システム2による暖房の温度レベルを入力することができる。リモコン200に入力される温度レベルの情報は、通信I/F204を介して熱源機100に送信される。
【0031】
表示部203は、様々な情報を表示するためのディスプレイである。表示部203はタッチパネル(即ち操作部)として機能してもよい。表示部203は、例えば、暖房の温度レベル(例えば、レベル「4」等)を表示する。
【0032】
通信I/F204は、熱源機100と有線通信または無線通信を実行するためのインターフェースである。制御部205は、揮発性メモリ、不揮発性メモリなどによって構成される記憶部(図示省略)を備えており、記憶部に記憶されているプログラムに従って、リモコン200の各部の動作を制御する。
【0033】
(Tg決定処理;図3
次に、熱源機100の制御部106が実行するTg決定処理について説明する。Tg決定処理は、例えば熱源機100の電源がオンになると開始される。図3に示すように、Tg決定処理のS2では、制御部106が、温度センサ105から新たな検出温度Tsの情報を取得したか否かを監視する。温度センサ105の検出温度Tsの情報は、所定の時間間隔(例えば10分間隔)で制御部106に送信されている。制御部106が新たな検出温度Tsの情報を取得した場合(YESの場合)は、処理はS4に進む。制御部106が新たな検出温度Tsの情報を取得しない場合(NOの場合)は、処理は待機する。
【0034】
続くS4では、制御部106が、温度センサ105から取得した検出温度Tsの情報に基づいて新たな短期平均値Tg1と長期平均値Tg2を算出する。
【0035】
続くS6では、制御部106は、新たな短期平均値Tg1-(マイナス)長期平均値Tg2が、所定の第1閾値(例えば5℃)よりも大きいか否かを判断する。Tg1-Tg2>第1閾値である場合(YESの場合)は、処理はS8に進む。Tg1-Tg2>第1閾値でない場合(NOの場合)は、処理はS10に進む。
【0036】
続くS8では、制御部106が、新たな長期平均値Tg2+(プラス)所定の補正値(例えば5℃)の値を算出基準値Tgとして決定する。所定の補正値は、S6の第1閾値(例えば5℃)以下の値である。
【0037】
上記のS6でNOの後のS10では、制御部106は、新たな短期平均値Tg1-(マイナス)長期平均値Tg2が、所定の第1閾値(例えば5℃)以下かつ所定の第2閾値(例えば-5℃)以上であるか否かを判断する。第2閾値≦Tg1-Tg2≦第1閾値である場合(YESの場合)は、処理はS12に進む。第2閾値≦Tg1-Tg2≦第1閾値でない場合(NOの場合(即ち、Tg1-Tg2<第2閾値の場合))は、処理はS14に進む。第2閾値は、第1閾値の負の値である。
【0038】
続くS12では、制御部106は、新たな短期平均値Tg1を算出基準値Tgとして決定する。一方、S10でNOの後のS14では、制御部106は、新たな長期平均値Tg2-(マイナス)所定の補正値(例えば5℃)の値を算出基準値Tgとして決定する。所定の補正値は、S10の第1閾値(例えば5℃)以下の値、かつ、第2閾値(例えば-5℃)の絶対値以下の値である。S8、S12、またはS14の処理が終了すると、処理はS2に戻る。
【0039】
(暖房設定温度算出処理;図4
次に、熱源機100の制御部106が実行する暖房設定温度算出処理について説明する。暖房設定温度算出処理は、例えば熱源機100の電源がオンになると開始される。また、暖房設定温度算出処理は、例えば、暖房設定温度の自動制御モードが選択されている場合に実行される。空調システム2では、ユーザがリモコン200の操作部202を操作することにより、暖房設定温度の自動制御モードを選択することができる。
【0040】
図4に示すように、暖房設定温度算出処理のS20では、制御部106は、新たな短期平均値Tg1と長期平均値Tg2が算出されたか否かを監視する。新たな短期平均値Tg1と長期平均値Tg2は、上記のTg決定処理(図3参照)のS4の処理で算出される。新たなTg1とTg2が算出された場合(YESの場合)は、処理はS22に進む。新たなTg1とTg2が算出されない場合(NOの場合)は、処理は待機する。
【0041】
続くS22では、制御部106が、暖房基準温度Xを算出する。制御部106は、記憶部107に記憶されている暖房関連情報110と、Tg決定処理(図3参照)のS8、S12、またはS14の処理で決定される算出基準値Tgとに基づいて暖房基準温度Xを算出する。
【0042】
より詳細には、制御部106は、暖房関連情報110の計算式a1~d1と、Tg決定処理で決定される算出基準値Tgとに基づいて、暖房基準温度Xを算出する。制御部106は、複数の計算式a1~d1のうち、現在選択されている条件(例えばA1)に対応する計算式(例えばa1)に基づいて、暖房基準温度Xを算出する。
【0043】
続くS24では、制御部106が、S22で算出した暖房基準温度Xに基づいて暖房設定温度Yを算出する。例えば、Y=X+5℃×(暖房の温度レベル(例えば「4」)-4)である。暖房基準温度Xを算出するための計算式は適宜変更可能である。
【0044】
制御部106は、S24の処理で算出される暖房設定温度Yの情報に基づいて、熱源機100の各部の動作を制御する。例えば、制御部106は、暖房放熱器90に供給される温水の温度が暖房設定温度Yとなるように、加熱部108の三方弁55の開度、ヒートポンプ熱源4、燃焼熱源3のバーナ31の動作を制御する(図2参照)。
【0045】
以上、実施例に係る空調システム2について説明した。以上の説明から明らかなように、空調システム2では、熱源機100の制御部106が、直近2時間における温度センサ105の検出温度Tsの平均値である短期平均値Tg1と、直近7日間における温度センサ105の検出温度Tsの平均値である長期平均値Tg2と、に基づいて算出基準値Tgを決定する(図3参照)。制御部106は、Tg1-Tg2>第1基準値(5℃)の場合は、Tg=Tg2+補正値(5℃)とする。制御部106は、Tg1-Tg2<第2基準値(-5℃)の場合は、Tg=Tg2-補正値(5℃)とする(図3参照)。制御部106は、算出基準値Tgに基づいて暖房設定温度Yを算出する(図4参照)。
【0046】
屋外の温度を検出する温度センサ105では、周囲の環境の影響により検出温度Tsが短期的に高くなることや低くなることがある。例えば、日射の影響により検出温度Tsが短期的に高くなることや、放射冷却の影響により検出温度Tsが短期的に低くなることがある。上記の構成によれば、温度センサ105の検出温度Tsの短期平均値Tg1と長期平均値Tg2との差に応じて補正値(例えば5℃)を用いて算出基準値Tgを決定することにより、短期平均値Tg1と長期平均値Tg2との差が大きい時であっても短期的な温度の傾向と長期的な温度の傾向の両方を反映させた算出基準値Tgを決定することができる。そして、補正値を用いて決定された算出基準値Tgに基づいて暖房設定温度Yを算出することにより、温度センサ105の検出温度Tsが短期的に高くなることや低くなることがあっても、暖房設定温度Yが短期的に極端に高くなることや低くなることを抑制することができる。これにより、熱源機100の部品(例えば三方弁55や熱動弁71)に対する負荷を軽減することができる。
【0047】
制御部106は、-5℃≦Tg1-Tg2≦5℃の場合(即ち、Tg1とTg2との差の絶対値が閾値(5℃)を超えない場合)は、Tg=Tg1とする(図3参照)。この構成によれば、現在の屋外の温度に近い温度に基づいて暖房設定温度Yを算出することができる。
【0048】
制御部106は、暖房放熱器90の熱伝達係数に応じた計算式a1~d1と算出基準値Tgに基づいて暖房設定温度Yを算出する。この構成によれば、適正な暖房設定温度Yで暖房を行うことができる
【0049】
(対応関係)
熱源機100と暖房放熱器90(第1暖房放熱器90aまたは第2暖房放熱器90b)の組み合わせが、「空調装置」の一例である。暖房放熱器90の熱伝達係数が「空調装置の能力」の一例である。直近2時間が「第1期間」の一例である。直近7日間が「第2期間」の一例である。暖房設定温度Yが「空調設定温度」の一例である。
【0050】
(変形例)
(1)上記の実施例では、Tg決定処理(図3参照)において、制御部106は、Tg1-Tg2>5℃の場合は、Tg=Tg2+5℃としていたが(図3のS6、S8参照)、変形例では、制御部106は、Tg1-Tg2>5℃の場合は、Tg=Tg1-5℃としてもよい。即ち、制御部106は、Tg1とTg2のうちの高い値から補正値(5℃)を減算した値をTgに決定してもよい。
【0051】
(2)上記の実施例では、Tg決定処理(図3参照)において、制御部106は、Tg1-Tg2<-5℃の場合は、Tg=Tg2-5℃としていたが(図3のS6、S10、S14参照)、変形例では、制御部106は、Tg1-Tg2<-5℃の場合は、Tg=Tg1+5℃としてもよい。即ち、制御部106は、Tg1とTg2のうちの低い値に補正値(5℃)を加算した値をTgに決定してもよい。
【0052】
実施例及び変形例(1)、(2)で説明したように、制御部106は、Tg1とTg2との差の絶対値が閾値(例えば5℃)を超える場合は、Tg1とTg2のうちの低い値に補正値(例えば5℃)を加算した値を算出基準値Tgに決定する。または、制御部106は、Tg1とTg2との差の絶対値が閾値(例えば5℃)を超える場合は、Tg1とTg2のうちの高い値から補正値(例えば5℃)を減算した値を算出基準値Tgに決定する。なお、補正値は閾値以下の値である。
【0053】
以上、各実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0054】
2:空調システム、3:燃焼熱源、4:ヒートポンプ熱源、7:熱交換ユニット、41:第1暖房経路、42:第2暖房経路、46:暖房出湯サーミスタ、50:第1循環ポンプ、51:ヒートポンプ復路、52:暖房往路、53:ヒートポンプ往路、54:加熱バイパス路、55:三方弁、57:暖房復路、60:第2循環ポンプ、70:熱交換器、71:熱動弁、81:ヒートポンプ出湯サーミスタ、82:ヒートポンプ入水サーミスタ、90:暖房放熱器、100:熱源機、105:温度センサ、106:制御部、107:記憶部、108:加熱部、200:リモコン
図1
図2
図3
図4