(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】鋼管杭用下部工材受け構造および鋼管杭用下部工材受け金具
(51)【国際特許分類】
E02D 27/12 20060101AFI20240719BHJP
E02D 27/14 20060101ALI20240719BHJP
E02D 17/08 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
E02D27/14
E02D17/08 Z
(21)【出願番号】P 2021110682
(22)【出願日】2021-07-02
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000179915
【氏名又は名称】ジェコス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】尾形 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤本 正貴
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】池田 篤則
(72)【発明者】
【氏名】里城 義武
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6649917(JP,B2)
【文献】特開2021-088903(JP,A)
【文献】特開2004-244874(JP,A)
【文献】特開平11-343727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00-27/52
E01D 1/00-24/00
E02B 3/04- 3/14
E02D 17/00-17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭の側部に下部工材の端部を接合する下部工材受け金具を備えてなる鋼管杭用下部工材受け構造であって、前記下部工材受け金具は、前記鋼管杭を把持するクランプ
と、前記クランプの側部に取り付けられ、前記下部工材の端部を接合する挟持金具を備え、前記クランプは前記鋼管杭の外周面に沿って半円形状に形成された一対の円弧体と、前記円弧体の一端側端部どうしを回転自在に連結する連結ピンと、前記円弧体の反対側端部どうしを切り離し可能に連結する連結ボルトを備え、
前記挟持金具は前記下部工材の端部が貫通する金具本体と、当該金具本体の側部に螺合され、前記下部工材の端部を挟持する締付けボルトを備えていることを特徴する鋼管杭用下部工材受け構造。
【請求項2】
請求項1記載の鋼管杭用下部工材受け構造において、前記クランプは、前記鋼管杭の管軸方向に離間して複数備えていることを特徴とする鋼管杭用下部工材受け構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の鋼管杭用下部工材受け構造において、
前記挟持金具は、前記クランプの側部に回転可能に取り付けられていることを特徴する鋼管杭用下部工材受け構造。
【請求項4】
鋼管杭の側部に下部鋼材の端部を接合する下部工材受け金具であって、前記鋼管杭を把持するクランプ
と、前記クランプの側部に取り付けられ、前記下部工材の端部が連結される挟持金具を備え、前記クランプは前記鋼管杭の外周面に沿って半円形状に形成された一対の円弧体と、前記円弧体の一端側端部どうしを回転自在に連結する連結ピンと、前記円弧体の反対側端部どうしを切り離し可能に連結する連結ボルトを備え、
前記挟持金具は前記下部工材の端部が貫通する金具本体と、当該金具本体の側部に螺合され、前記下部工材の端部を挟持する締付けボルトを備えていることを特徴する鋼管杭用下部工材受け金具。
【請求項5】
請求項4記載の下部工材受け金具において、前記挟持金具は、前記クランプの側部に回転可能に取り付けられていることを特徴する鋼管杭用下部工材受け金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭用下部工材受け構造および鋼管杭用下部工材受け金具に関し、例えば仮設構台の構台杭または支保工の切梁を支持する棚杭として配置される鋼管杭に、水平繋ぎ材や切梁、或いは水平ブレース、垂直ブレースなどの下部工材の端部を支持するのに用いられ、これらの下部工材の端部を鋼管杭に溶接やガス切断などの火気を用いないで容易に接合および撤去できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
建築・土木の分野では、主体工事に先行して掘削(根切り)工事が行われ、また、掘削に伴う周辺地盤の崩壊や沈下障害などを防止する目的で、掘削壁面に沿って山留壁が構築され、その内側に山留壁を支持する山留支保工が仮設される(
図1参照)。
【0003】
また、山留壁の内側には山留支保工と共に建設機械の作業スペースや各種資材の仮置き等のスペースを確保する目的で、一般に仮設構台が構築される(
図1参照)。
【0004】
図1において、山留壁は山留杭やシートパイル等によって構築され、山留支保工は、山留壁に沿って配置される腹起し、その内側に架設される切梁などによって構築され、特にスパンの長い切梁は棚杭(支持杭)によって支持される。
【0005】
仮設構台は、桁行方向と梁間(スパン)方向に、それぞれ間隔をおいて立設される構台杭(支持杭)の上端部間と中間部間に、大引き(桁受)と杭の座屈等を防止する水平繋ぎ材および構台の揺れ等を防止する水平ブレースと垂直ブレースをそれぞれ架設し、さらに大引きの上に根太を架設しその上に覆工板を敷設することにより構築される。
【0006】
また特に、水平繋ぎ材などの下部工材や切梁等の支保工材には主としてH形鋼が用いられ、構台杭や棚杭に受金物を介し溶接によって接合され、一方、解体撤去に際しては主にガス切断機が用いられる。
【0007】
しかし、溶接やガス切断などの火気を用いる下部工材や切梁の設置および撤去には熟練を必要とし、また、ガス切断による撤去は鋼材のスクラップを大量に発生させるため、きわめて不経済であった。また、いずれの方法も周囲に可燃物のある場所では火災等に十分注意する必要があった。
【0008】
このため、近年、切梁や水平繋ぎ材などの下部工材を構台杭や棚杭に火気を用いないで設置および撤去する方法が種々検討され、特に近年、構台杭や棚杭として回転杭などの鋼管杭が用いられるようになったことに伴い、火気を用いないで切梁、下部工材を設置および撤去する方法の開発が望まれていた。
【0009】
例えば、特許文献1には、山留杭に腹起しを設置する山留用ブラケットの発明が開示されている。当該山留用ブラケットは、上部部材、鉛直部材および斜材を備え、鉛直部材のボルト貫通孔を貫通して山留杭に設けられたネジ孔に螺合されたボルトによって山留杭に取り付けられ、腹起しは上部部材の上に架設されている。
【0010】
また、特許文献2には、隣り合う支持杭の間を橋軸横断方向または橋軸縦断方向に向けて架設した補強材によって連結して補強する仮設桟橋下部工の補強方法の発明が開示され、特に補強材の両端部は支持杭に環状のクランプによって連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2020-111981号公報
【文献】特許第6649917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1の山留用ブラケットは、山留杭に設けられたネジ孔にボルトを通して取り付けられるため、山留杭にネジ孔を形成する必要があり、また、山留杭にブラケットをボルト止めする際に、ネジ孔が山留杭の打設時の土砂で目詰まりしてボルトをスムーズに締め付けられない等のおそれがあった。
【0013】
また、特許文献2の補強材は、橋軸横断方向または橋軸縦断方向に隣り合う支持杭どうしを単に繋ぎ止めて補強する部材であり、切梁や水平繋ぎ材などの下部工材を支持杭に支持させるようには構成されておらず、使用目的がきわめて限られるものであった。
【0014】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、主として構台杭や棚杭として設置された鋼管杭への水平繋ぎ材や切梁、水平ブレース、垂直ブレース等の下部工材の設置と撤去を溶接やガス切断などの火気を用いないで、きわめて容易に行えるようにした鋼管杭用下部工材受け構造および鋼管杭用下部工材受け金具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、鋼管杭の側部に下部工材の端部を支持する下部工材受け金具を備えてなる鋼管杭用下部工材受け構造の発明であって、前記下部工材受け金具は、前記鋼管杭を把持するクランプを有し、前記クランプは前記鋼管杭の外周面に沿って半円形状に形成された一対の円弧体と、前記円弧体の一端側端部どうしを回転自在に連結する連結ピンと、前記円弧体の反対側端部どうしを切り離し可能に連結する連結ボルトを備えていることを特徴とし、特に構台杭または棚杭としての鋼管杭への水平繋ぎ材などの下部工材や切梁の設置および撤去を溶接やガス切断などの火気を用いずにきわめて容易に行うことができる。
【0016】
前記クランプを鋼管杭の管軸方向に離間して複数取り付けることにより、下部工材の端部を鋼管杭により強固に接合することができる。
【0017】
また、前記クランプの側部にブラケットを取り付け、当該ブラケットに水平繋ぎ材等の下部工材の端部をボルト締結により簡単に接合することができる。また、下部工材の端部をブラケットに連結ピースを介してボルト締結することにより、下部工材の端部を上下斜め方向に接合することができる。
【0018】
また、クランプの側部に下部工材の端部を挟み込んで接合する挟持金具を取り付けることにより、下部工材の端部を鋼管杭の側部に容易に接合することができる。また、挟持金具をクランプの側部に回転可能に取り付けことにより、下部工材の端部を水平方向または鉛直方向の任意の方向に接合することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、下部工材受け金具が構台杭または棚杭としての鋼管杭に連結ボルトを備えたクランプによって脱着可能に取り付けられているため、構台杭または棚杭としての鋼管杭への水平繋ぎ材などの下部工材や支保工の切梁の設置および撤去を溶接やガス切断などの火気を用いずにきわめて容易に行うことができる。
【0020】
また、下部工材や切梁の設置時は、クランプを構台杭に固定する連結ボルトの締め付けトルクでの管理となるため、溶接不良等の問題が無く、また、熟練した作業員に寄らなくても一定の品質を確保することができる。
【0021】
さらに、下部工材や切梁の設置および撤去時に火気を一切使わないため、周辺に可燃物があっても設置および撤去作業が可能であり、また、鋼管杭や下部工材のスクラップ化を回避することができるため、鋼管杭および下部工材や切梁の反復使用が可能になりきわめて経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】構台杭としての鋼管杭と水平繋ぎ材および垂直ブレースとからなる仮設構台の下部軸組であって、図(a)はその一部正面図、図(b),(c)は鋼管杭と水平繋ぎ材との接合部の横断面図である。
【
図3】下部工材受け金具の変形例であって、図(a)はクランプの一側部にブラケットを有する受け金具の平面図、図(b)はクランプの対称な両側部にブラケットを有する受け金具の平面図、図(c)はクランプの四側部にブラケットを有する受け金具の平面図である。
【
図4】構台杭としての鋼管杭と水平繋ぎ材とからなる仮設構台の下部軸組であって、図(a)はその一部正面図、図(b)は鋼管杭と下部工材との接合部の正面図、図(c)は横断面図である。
【
図5】構台杭としての鋼管杭と垂直ブレースとからなる仮設構台の下部軸組であって、その一部正面図である。
【
図6】構台杭としての鋼管杭と垂直ブレースとからなる仮設構台の下部軸組であって、図(a)はその一部平面図、図(b)は正面図である。
【
図7】構台杭としての鋼管杭と垂直ブレースとの接合部であって、図(a)は正面図、図(b)は側面図、図(c)は一部横断面図である。
【
図8】構台杭としての鋼管杭と垂直ブレースとの接合部であって、図(a)は一部横断面図、図(b)は側面図である。
【
図9】棚杭としての鋼管杭に切梁が受け金具によって支持された状態を図示したものであり、図(a)は正面図、図(b)は横断面図、図(c)は受け金具の平面図である。
【
図10】棚杭としての鋼管杭に切梁が受け金具と固定金具によって支持・固定された状態を図示したものであり、図(a)は正面図、図(b)は横断面図である。
【
図11】水平繋ぎ材などの下部工材の受け金具との連結部を図示したもので、図(a)は縦断面図、図(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1-
図3は、本発明の一実施形態であり、仮設構台の構台杭として所定間隔に配置された鋼管杭と当該鋼管杭間に下部工材として架設された水平繋ぎ材および垂直ブレース等からなる仮設構台を図示したものである。
【0024】
図において、対向する鋼管杭1,1間に水平繋ぎ材2と垂直ブレース3が架設され、当該水平繋ぎ材2と垂直ブレース3の両端部は、それぞれ鋼管杭1,1の側部に下部工材受け金具(以下「受け金具」)4,4によって接合されている。
【0025】
受け金具4は、鋼管杭1の側部を把持する上下一対のクランプ5,5と当該上下クランプ5,5の側部にそれぞれ取り付けられ、水平繋ぎ材2の端部に連結された上下一対のブラケット6,6とから構成されている。
【0026】
上下一対のクランプ5,5は、それぞれ鋼管杭1の外周面に沿って平面視半円形状に形成された一対の円弧体7,7と、当該円弧体7,7の一端側端部どうしを水平方向に回転自在に連結する連結ピン8と、円弧体7,7の反対側端部(自由端側端部)どうしを切り離し可能に連結する連結ボルト9とから構成されている。
【0027】
円弧体7,7の反対側端部に鋼管杭1の円周方向に対向する連結リブ10,10が形成され、当該連結リブ10,10間に連結ボルト9が脱着可能に締め付けられている。
【0028】
そして、上下一対のクランプ5,5は、それぞれ鋼管杭1の管軸方向(上下方向)に離間して取り付けられ、かつそれぞれ連結リブ10,10を互いに重ね合わせ、連結ボルト9を強く締め付けることにより鋼管杭1に脱着可能に取り付けられている。
【0029】
上下一対のブラケット6,6は、それぞれ側面視L字形に形成され、かつ上下円弧体7,7の側部に鉛直方向に対向し、かつ上下クランプ5,5の直径方向に平行に突出する状態に取り付けられている。
【0030】
また、上下一対のブラケット6,6は、それぞれ上下円弧体7,7の円周方向にほぼ90度の間隔で複数取り付けられ、例えば、上下円弧体7,7の水平三方向または水平二方向の側部に取り付けられている(
図1(b),(c)参照)。
【0031】
また、上下一対のブラケット6,6は、それぞれ円弧体7の側部に取付けボルト11によって脱着可能に取り付けられ、この場合、上下円弧体7,7の側部に複数のねじ孔(図省略)が円弧体7の周方向に等間隔に形成してあれば、上下クランプ5,5が鋼管杭1に取り付けられた後からでも、水平繋ぎ材2の架設方向に合わせてブラケット6,6の取付け位置を自由に変更することができる。
【0032】
このように形成された上下ブラケット6,6間に水平繋ぎ材2の端部が嵌合され、かつ上下ブラケット6,6と水平繋ぎ材2の端部間にそれぞれ連結ボルト12,12を締め付けることにより、上下ブラケット6,6間に水平繋ぎ材2の端部が脱着可能に接合されている。
【0033】
垂直ブレース3,3は、対向する鋼管杭1,1間にX形状に架設され、各垂直ブレース3,3の端部は、受け金具4と連結ピース13を介して対向する鋼管杭1,1の側部に接合されている(
図2(a)-(c))。例えば、上下円弧体7,7の一側部(
図2(a)参照)、対称な両側部(
図2(b)参照)、或は水平四方向の側部に、それぞれ、垂直ブレース3の端部が受け金具4と連結ピース13を介して接合されている。
【0034】
連結ピース13は、上下ブラケット6,6間に嵌め込まれ、かつ上下ブラケット6,6と連結ピース13間に連結ボルト12,12を締め付けることにより脱着可能に取り付けられている。
【0035】
また、連結ピース13と垂直ブレース3の端部間に連結ボルト14を締め付けることにより、各垂直ブレース3の両端部が連結ピース13に脱着可能に接合されている。
【0036】
ここで、垂直ブレース3の端部が、上下ブラケット6,6に連結ピース13を介し、連結ボルト12と14によって連結されているため、垂直ブレース3は連結部を軸に水方向と鉛直方向の両方向に回転することができ、これにより対向する鋼管杭1,1に傾きがある場合でも、この問題を容易に吸収することができる。
【0037】
また、水平繋ぎ材2の端部を鋼管杭1に接合する受け金具4と、垂直ブレース3の端部を鋼管杭1に接合する受け金具4に同じ受け金具を用いることができる。
【0038】
図4(a)~(c)は、本発明の他の実施形態であり、構台杭として所定間隔に配置された鋼管杭と、当該鋼管杭間に水平繋ぎ材として架設された下部工材とからなる仮設構台の一部軸組を図示したものである。
【0039】
図において、対向する鋼管杭1,1間に水平繋ぎ材2が架設され、当該水平繋ぎ材2の両端部は鋼管杭1,1の側部に下部工材受け金具(以下「受け金具」)15,15によって接合されている。
【0040】
受け金具15は、鋼管杭1の側部を把持するクランプ5と水平繋ぎ材2の端部を挟持する挟持金具16とから構成され、クランプ5は、
図1および
図2の実施形態で説明した通りに構成されている。
【0041】
挟持金具16は、クランプ5の側部に鉛直面内を回転自在に取り付けられた金具本体16aと当該金具本体16aの側部に螺合された複数の鉛直締付けボルト16bおよび水平締付けボルト16cを備えている。
【0042】
金具本体16aは一方向に貫通する断面略矩形をした短い筒状に形成されている。また、鉛直締付けボルト16bは、金具本体16aの上下両端部(
図4(a))またはその一方(
図4(b))に螺合され、水平締付けボルト16cは鋼管杭1と対向する外側に位置する側部に螺合され、いずれも金具本体16aを貫通し、締め付けられることにより水平繋ぎ材2の側部を強く挟み込んで金具本体16aに固定できるようになっている。
【0043】
このような構成において、水平繋ぎ材2の両端部を金具本体16aに貫通させ、金具本体16aの各側部に螺合された鉛直締付けボルト16bと水平締付けボルト16cを強く締め付けることにより、水平繋ぎ材2の両端部を金具本体16aに固定できるようになっている。
【0044】
また、金具本体16aが、クランプ5の側部に鉛直面内を回転自在に取り付けられていることで、対向する鋼管杭1,1に傾き等があっても、鋼管杭1,1間に水平繋ぎ材2を水平に架設し、かつ両端部を鋼管杭1,1の側部に確実に接合できるようになっている。また、鋼管杭1,1間の間隔に対して少々長い水平繋ぎ材も問題なく利用できるようになっている。
【0045】
なお、金具本体16aの断面形状は特に限定されるものではなく、金具本体16aの断面形状が円形であれば水平繋ぎ材2として円形鋼管(鋼管パイプ)を用いることもできる。
【0046】
図5~
図8は、同じく本発明の他の実施形態であり、構台杭として配置された鋼管杭と、当該鋼管杭間に垂直ブレースとして架設された下部工材とからなる仮設構台の一部軸組を図示したものである。
【0047】
図において、所定間隔に対向する鋼管杭1,1間に一対の垂直ブレース3,3がX形状に架設され、各垂直ブレース3,3の両端部は鋼管杭1,1の側部に下部工材受け金具(以下「受け金具」)17,17によって接合されている。
【0048】
受け金具17は、鋼管杭1の側部を把持するクランプ5と当該クランプ5の側部に取り付けられ、垂直ブレース3の端部を挟持する挟持金具18とから構成されている。なお、クランプ5は、
図1および
図2の実施形態で説明したように構成されている。
【0049】
挟持金具18は、クランプ5の側部に一体に取り付けられた固定板18aと当該固定板18aの側部に固定板18aに沿って鉛直面内を回転自在に取り付けられた回転板18bを備えている。
【0050】
固定板18aと回転板18bは、ほぼ同じ大きさの方形板状に形成されている。また、回転板18bに回転軸を中心に円弧状をなす一対のガイド溝18c,18cが形成され、固定板18aに前記ガイド溝18c,18cに遊嵌する一対のガイドピン18d,18dが取り付けられている。
【0051】
これにより、回転板18bは、後述する下部工材挟持部18eおよび18fと共に鉛直面内をガイド溝18c,18cの長さの範囲で自由に回転するようになっている。
【0052】
なお、ガイドピン18dは、垂直プレース3の向きが決定したら、下部工材挟持部18eと18fが回転しないように完全に締め付けてもよく、また放置してもよい。ガイドピン18dを完全に締め付けることにより垂直ブレース3の端部を剛接合とすることができ、緩めておくことでピン接合とすることができる。
【0053】
また、回転板18bの側部に回転板18bと共に回転する下部工材挟持部18eおよび18fが取り付けられ、当該下部工材挟持部18eおよび18fの側部に垂直ブレース3の端部を挟み込んで固定する複数の締付けボルト18gが螺合されている。
【0054】
下部工材挟持部18eと18fは、一方向に貫通する断面略矩形状をした短い筒状に形成されている。また、下部工材挟持部18eと18fは、回転板18bの側部に鋼管杭の直径方向に二重に重ねて取り付けられ、かつそれぞれが鉛直面内を独立して自由に回転するようになっている。
【0055】
鉛直締付けボルト18gは、下部工材挟持部18eと18fの上下両端部またはその一方にそれぞれ螺合され、下部工材挟持部18eおよび18fの側部を貫通し、締め付けられることにより垂直ブレース3の側部を強く挟持することにより垂直ブレース3の端部を下部工材固定部18eと18fにそれぞれ固定できるように螺合されている。
【0056】
このような構成において、垂直ブレース3の両端部を下部工材挟持部18eと18fにそれぞれ貫通させ、鉛直締付けボルト18gを強く締め付けることにより、垂直ブレース3の両端部は下部工材固定部18eおよび18fに固定でるようになっている。
【0057】
また、鋼管杭1,1間の設置間隔(スパン)に施工誤差が生じても、垂直ブレース3の端部を下部工材固定部18eまたは18f内でスライドさせることにより施工誤差を吸収することができ、垂直ブレース3の端部をカットする等の処理を行う必要がない。
【0058】
また、下部工材挟持部18eと18fが、クランプ5の側部に鉛直面内を回転自在に取り付けられていることで、二方向に延びる複数(2本)の垂直ブレース3の端部を鋼管杭1の側部に一緒に接合できるようになっている。また、垂直ブレース3を二重に架設して鋼管杭1,1間を補強できるようになっている。
【0059】
なお、下部工材挟持部18eおよび18fの断面形状は特に限定されるものではなく、下部工材挟持部18eおよび18fの断面形状が円形であれば垂直ブレース3として円形鋼管(鋼管パイプ)を用いることもできる。
【0060】
図9(a)~(c)は、本発明の他の実施形態であり、比較的小断面の水平繋ぎ材を対向する鋼管杭間に架設する場合などに適している。簡単に説明すると、受け金具4のクランプ5は一個(一段)てあり、当該クランプ5の円弧体7,7の外側部に一対のブラケット6,6が取り付けられ、当該ブラケット6,6に水平繋ぎ材2の端部が連結ボルト12によって脱着可能に連結されている。
【0061】
図10(a),(b)は、本発明の他の実施形態であり、山留支保工の棚杭として配置された鋼管杭1の側部に、下部工材として架設された切梁19の端部が下部工材受け金具(以下「受け金具」)20によって支持され、また、切梁19は受け金具20の上に下部工材固定金具(以下「固定金具」)21によって固定されている。
【0062】
なお、この場合の鋼管杭としては、仮設構台の構台杭として配置された鋼管杭を利用することができる。
【0063】
受け金具20は、鋼管杭1の管軸方向に離間して配置され、鋼管杭1を把持する複数のクランプ5,5と、当該クランプ5,5の一側部に取り付けられ、上下クランプ5,5を連結する連結体22と、当該連結体22に取り付けられ、切梁19が載置されるブラケット23とから構成されている。
【0064】
連結体22は、鋼管、形鋼またはプレート等から鋼管杭1の管軸方向に伸縮可能に構成され、これにより上下クランプ5,5間の間隔を自由に変更できるようになっている。
【0065】
なお、連結体22を鋼管杭1の管軸方向に伸縮可能な構成とするには、例えば、形鋼などからなる複数の長尺部材を管軸方向の相反する方向にスライド可能に抱き合わせ、かつ双方を締結ボルト等によって所定の伸縮長さで固定可能な構成にする等の方法が考えられる。
【0066】
ブラケット23は、連結体22の側部に脱着可能にボルト止めされた取付け部23aと、当該取付け部23aの上端部から鋼管杭1の直径方向に水平に延在された切梁載置部23bと、当該切梁載置部23bと取付け部23a間に斜めに配置された一または複数の斜材23cとから側面視三角形状に形成されている。
【0067】
前記取付け部23a、切梁載置部23bおよび斜材23cは、いずれも鋼管、形鋼またはプレート等から形成され、連結体22と同様の構成により長さを変更できるように構成されている。これにより大小径の異なる切梁19に容易に対応できるようになっている。
【0068】
この実施形態によれば、上下クランプ5,5が鋼管杭1の管軸方向に複数配置され、かつブラケット23が側面視直角三角形の枠状に形成されているため、金具そのものの強度が大きく大断面の切梁19も問題なく支持することができる。
【0069】
また、固定金具21は、基本的に受け金具20と上下対称な形状および構造に構成されており、天地反転することにより受け金具20としても利用できるように構成されている。
【0070】
具体的に説明すると、鋼管杭1の管軸方向に離間して配置され、鋼管杭1を把持する複数(2個)の上下クランプ5,5と、当該クランプ5,5の一側部に取り付けられ、上下クランプ5,5間を連結する連結体22と、当該連結体22に取り付けられ、ブラケット23の上に載置された切梁19をブラケット23の上に押え付けて固定するブラケット24とから構成されている。
【0071】
特に、ブラケット24は、連結体22の側部に脱着可能にボルト止めされた取付け部24aと、当該取付け部24aの下端部から鋼管杭1の直径方向に水平に延在された固定部24bと、当該固定部24bと取付け部24a間に斜めに配置された複数の斜材24cとから側面視三角形状に形成されている。
【0072】
取付け部24a、切梁固定部24bおよび傾斜部24cは、いずれも鋼管、形鋼またはプレート等から形成され、連結体22と同様の構成により長さを変更できるように構成されている。これにより大小径の異なる切梁19に容易に対応できるようになっている。この実施形態によれば、切梁19を棚杭1の側部に単に支持させるだけでなく、切梁19を強固に固定することができる。
【0073】
図11(a),(b)は、本発明の他の実施形態であり、鋼管杭の配置間隔(スパン)などの寸法上の施工誤差を、受け金具と水平繋ぎ材などの下部工材との接合部で簡単に吸収できるようにしたものである。
【0074】
説明すると、受け金具4のブラケット6に設けられた、水平繋ぎ材端部の接合孔6aが水平繋ぎ材2の材軸方向に長軸を有する長孔に形成されている。また、接合孔6aを貫通する水平繋ぎ材2の連結ボルト12の両側に調整ピース25aと25bがそれぞれ挿入されている。
【0075】
調整ピース25aと25bは、予め長さの異なるピースが複数用意され、連結ボルト12の両側の隙間の長さに応じて最適なものが挿入されるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、仮設構台や山留工などの仮設構造物における水平繋ぎ材などの下部工材や切梁を溶接やガス切断などの火気を用いずに容易に設置および撤去することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 鋼管杭
2 水平繋ぎ材
3 垂直ブレース
4 受け金具(下部工材受け金具)
5 クランプ
6 ブラケット
7 円弧体
8 連結ピン
9 連結ボルト
10 連結リブ
11 取付けボルト
12 連結ボルト
13 連結ピース
14 連結ボルト
15 受け金具(下部工材受け金具)
16 挟持金具
17 受け金具(下部工材受け金具)
18 挟持金具
19 切梁
20 受け金具(下部工材受け金具)
21 固定金具(下部工材固定金具)
22 連結体
23 ブラケット
24 ブラケット
25a 調整ピース
25b 調整ピース