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特許7523417ビームを形成して中継伝送を行う中継通信システムにおける制御装置、中継装置、端末装置、制御方法、及びプログラム
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  • 特許-ビームを形成して中継伝送を行う中継通信システムにおける制御装置、中継装置、端末装置、制御方法、及びプログラム 図1
  • 特許-ビームを形成して中継伝送を行う中継通信システムにおける制御装置、中継装置、端末装置、制御方法、及びプログラム 図2
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  • 特許-ビームを形成して中継伝送を行う中継通信システムにおける制御装置、中継装置、端末装置、制御方法、及びプログラム 図4
  • 特許-ビームを形成して中継伝送を行う中継通信システムにおける制御装置、中継装置、端末装置、制御方法、及びプログラム 図5
  • 特許-ビームを形成して中継伝送を行う中継通信システムにおける制御装置、中継装置、端末装置、制御方法、及びプログラム 図6
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  • 特許-ビームを形成して中継伝送を行う中継通信システムにおける制御装置、中継装置、端末装置、制御方法、及びプログラム 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ビームを形成して中継伝送を行う中継通信システムにおける制御装置、中継装置、端末装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/204 20060101AFI20240719BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20240719BHJP
   H04W 24/10 20090101ALI20240719BHJP
   H04B 7/145 20060101ALI20240719BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H04B7/204
H04W16/26
H04W24/10
H04B7/145
H04B7/06 956
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021161479
(22)【出願日】2021-09-30
(65)【公開番号】P2023051043
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-08-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度総務省、「基地局端末間の協調による動的ネットワーク制御に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 和輝
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-057723(JP,A)
【文献】特開2006-279719(JP,A)
【文献】特開2004-233100(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0288378(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/204
H04W 16/26
H04W 24/10
H04B 7/145
H04B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置と所定の領域に滞在する端末装置との間でユーザデータの復号を行わずに中継する中継装置を制御する制御装置であって、
前記中継装置は、前記基地局装置から到来した電波を、前記所定の領域のそれぞれ異なる部分領域へ到達させるための複数のビームであって、前記複数のビームのそれぞれに対応する前記部分領域でそれぞれ測定される場合の前記電波の受信電力の値の範囲が相互に重ならないように、それぞれの利得が設定されている前記複数のビームを形成して出力しており、
前記制御装置は、
前記端末装置から、当該端末装置における前記電波の受信電力の報告を受信する受信手段と、
前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の中継に用いるビームの方向を前記中継装置に制御させるための前記電波の受信電力に関する情報を前記中継装置へ送信する送信手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記電波の受信電力に関する情報は、前記端末装置における前記電波の受信電力を示し、
前記中継装置は、当該情報に基づいて、前記端末装置が前記複数のビームのうちのいずれに対応する前記部分領域に存在するかを推定して、当該推定の結果に基づいて、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の中継に用いるビームの方向を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記端末装置における前記電波の受信電力に基づいて、前記端末装置が前記複数のビームのうちのいずれに対応する前記部分領域に存在するかを推定する推定手段と、
前記推定の結果に基づいて、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の中継に用いるビームの方向を決定する決定手段とを有し、
前記電波の受信電力に関する情報は、前記決定に基づくビームの制御指示である、ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記中継装置は、前記所定の領域における第1の部分領域に対応する第1のビームと、当該第1の部分領域に隣接すると共に当該第1の部分領域を挟む第2の部分領域および第3の部分領域にそれぞれ対応する第2のビームおよび第3のビームを形成することができ、
前記決定手段は、前記端末装置が前記第1の部分領域に位置するように、前記第1のビーム、前記第2のビーム、及び前記第3のビームの方向を決定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記基地局装置に含まれる、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
基地局装置と所定の領域に滞在する端末装置との間の通信を、ユーザデータの復号を行わずに中継する中継装置であって、
前記基地局装置から到来した電波を、前記所定の領域のそれぞれ異なる部分領域へ到達させるための複数のビームを形成して出力する出力手段と、
前記複数のビームのそれぞれに対応する前記部分領域でそれぞれ測定される場合の前記電波の受信電力の値の範囲が相互に重ならないように、前記複数のビームのそれぞれの利得を設定する設定手段と、
前記端末装置における前記電波の受信電力に基づいて、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の中継に用いるビームの方向を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする中継装置。
【請求項7】
前記出力手段は、前記所定の領域における第1の部分領域に対応する第1のビームと、当該第1の部分領域に隣接すると共に当該第1の部分領域を挟む第2の部分領域および第3の部分領域にそれぞれ対応する第2のビームおよび第3のビームを形成することができ、
前記制御手段は、前記端末装置が前記第1の部分領域に位置するように、前記第1のビーム、前記第2のビーム、及び前記第3のビームの方向を制御する、
ことを特徴とする請求項6に記載の中継装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記基地局装置から通知された情報に基づいて前記制御を行う、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の中継装置。
【請求項9】
前記情報は、前記端末装置における前記電波の受信電力を示し、
前記中継装置は、当該情報に基づいて、前記端末装置が前記複数のビームのうちのいずれに対応する前記部分領域に存在するかを推定する推定手段をさらに有し、
前記制御手段は、当該推定の結果に基づいて、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の中継に用いるビームの方向を制御する、
ことを特徴とする請求項8に記載の中継装置。
【請求項10】
前記情報は、前記端末装置における前記電波の受信電力に基づくビームの制御指示である、ことを特徴とする請求項8に記載の中継装置。
【請求項11】
前記中継装置は、メタサーフェスを有する反射板である、ことを特徴とする請求項6から10のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項12】
前記中継装置は、無線リピータである、ことを特徴とする請求項6から10のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項13】
基地局装置との間の通信を、ユーザデータの復号を行わずに中継する中継装置を介して実行する端末装置であって、
前記中継装置は、前記基地局装置から到来した電波を、所定の領域のそれぞれ異なる部分領域へ到達させるための複数のビームであって、前記複数のビームのそれぞれに対応する前記部分領域でそれぞれ測定される場合の前記電波の受信電力の値の範囲が相互に重ならないように、それぞれの利得が設定されている前記複数のビームを形成して出力しており、
前記端末装置は、
前記電波の受信電力を測定する測定手段と、
前記測定した前記受信電力の報告であって、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の中継に用いるビームの方向を前記中継装置に制御させるための前記電波の受信電力に関する情報を前記基地局装置から前記中継装置へ通知させるための前記報告を前記基地局装置へ通知する通知手段と、
を有することを特徴とする端末装置。
【請求項14】
基地局装置と所定の領域に滞在する端末装置との間でユーザデータの復号を行わずに中継する中継装置を制御する制御装置によって実行される制御方法であって、
前記中継装置は、前記基地局装置から到来した電波を、前記所定の領域のそれぞれ異なる部分領域へ到達させるための複数のビームであって、前記複数のビームのそれぞれに対応する前記部分領域でそれぞれ測定される場合の前記電波の受信電力の値の範囲が相互に重ならないように、それぞれの利得が設定されている前記複数のビームを形成して出力しており、
前記制御方法は、
前記端末装置から、当該端末装置における前記電波の受信電力の報告を受信することと、
前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の中継に用いるビームの方向を前記中継装置に制御させるための前記電波の受信電力に関する情報を前記中継装置へ送信することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項15】
基地局装置と所定の領域に滞在する端末装置との間の通信を、ユーザデータの復号を行わずに中継する中継装置によって実行される制御方法であって、
前記中継装置は、前記基地局装置から到来した電波を、前記所定の領域のそれぞれ異なる部分領域へ到達させるための複数のビームを形成して出力するように構成され、
前記制御方法は、
前記複数のビームのそれぞれに対応する前記部分領域でそれぞれ測定される場合の前記電波の受信電力の値の範囲が相互に重ならないように、前記複数のビームのそれぞれの利得を設定することと、
前記端末装置における前記電波の受信電力に基づいて、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の中継に用いるビームの方向を制御することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項16】
基地局装置と所定の領域に滞在する端末装置との間でユーザデータの復号を行わずに中継する中継装置を制御する制御装置に備えられたコンピュータによって実行されるプログラムであって、
前記中継装置は、前記基地局装置から到来した電波を、前記所定の領域のそれぞれ異なる部分領域へ到達させるための複数のビームであって、前記複数のビームのそれぞれに対応する前記部分領域でそれぞれ測定される場合の前記電波の受信電力の値の範囲が相互に重ならないように、それぞれの利得が設定されている前記複数のビームを形成して出力しており、
前記プログラムは、前記コンピュータに、
前記端末装置から、当該端末装置における前記電波の受信電力の報告を受信させ、
前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の中継に用いるビームの方向を前記中継装置に制御させるための前記電波の受信電力に関する情報を前記中継装置へ送信させる、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項17】
基地局装置と所定の領域に滞在する端末装置との間の通信を、ユーザデータの復号を行わずに中継する中継装置であって、前記基地局装置から到来した電波を、前記所定の領域のそれぞれ異なる部分領域へ到達させるための複数のビームを形成して出力するように構成された前記中継装置に備えられたコンピュータに、
前記複数のビームのそれぞれに対応する前記部分領域でそれぞれ測定される場合の前記電波の受信電力の値の範囲が相互に重ならないように、前記複数のビームのそれぞれの利得を設定させ、
前記端末装置における前記電波の受信電力に基づいて、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の中継に用いるビームの方向を制御させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信における中継伝送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル通信では、基地局装置が送出した電波を受信可能な位置に存在する端末装置に対して無線通信サービスが提供されるため、電波を受信可能でないエリア(不感地帯)を可能な限り小さくすることが肝要である。特に高周波数帯を使用する傾向のある近年の無線通信環境では、基地局装置からの距離が十分に近い位置であってもビルなどの障害物の陰において不感地帯が発生することが想定されるため、このような不感地帯への対応が重要となる。
【0003】
このような不感地帯への対応策として反射板を用いることが検討されている。なお、反射板は、物理的な向きを変更することによって信号を反射させる方向を変更することができるが、メタサーフェス反射板(非特許文献1参照)を用いることにより、物理的な向きを変更せずに、様々な方向に電波を反射させることができる。また、同様に、ビームを形成可能な無線リピータなどによっても不感地帯への対応を行うことができる。なお、これらの反射板や無線リピータをまとめて中継装置と呼ぶことがある。ここでの中継装置は、ユーザデータの復号を行わない中継装置である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】J. He、H. Wymeersch、T. Sanguanpuak、O. Silven、及び、M. Juntti、「Adaptive Beamforming Design for mmWave RIS-Aided Joint Localization and Communication」、2020 IEEE Wireless Communications and Networking Conference Workshops (WCNCW)、2020年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基地局装置が不感地帯に滞在する端末装置と通信するためには、中継装置によって形成されるビームが端末装置の方向に適切に向けられていることが肝要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ユーザデータの復号を行わない中継装置において形成するビームを端末装置の方向に向けるための適応制御技術を提供する。
【0007】
本発明の一態様による制御装置は、基地局装置と所定の領域に滞在する端末装置との間でユーザデータの復号を行わずに中継する中継装置を制御する制御装置であって、前記中継装置は、前記基地局装置から到来した電波を、前記所定の領域のそれぞれ異なる部分領域へ到達させるための複数のビームであって、前記複数のビームのそれぞれに対応する前記部分領域でそれぞれ測定される場合の前記電波の受信電力の値の範囲が相互に重ならないように、それぞれの利得が設定されている前記複数のビームを形成して出力しており、前記制御装置は、前記端末装置から、当該端末装置における前記電波の受信電力の報告を受信する受信手段と、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の中継に用いるビームの方向を前記中継装置に制御させるための前記電波の受信電力に関する情報を前記中継装置へ送信する送信手段と、を有する。
【0008】
また、本発明の一態様による中継装置は、基地局装置と所定の領域に滞在する端末装置との間の通信を、ユーザデータの復号を行わずに中継する中継装置であって、前記基地局装置から到来した電波を、前記所定の領域のそれぞれ異なる部分領域へ到達させるための複数のビームを形成して出力する出力手段と、前記複数のビームのそれぞれに対応する前記部分領域でそれぞれ測定される場合の前記電波の受信電力の値の範囲が相互に重ならないように、前記複数のビームのそれぞれの利得を設定する設定手段と、前記端末装置における前記電波の受信電力に基づいて、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の中継に用いるビームの方向を制御する制御手段と、を有する。
【0009】
また、本発明の一態様による端末装置は、基地局装置との間の通信を、ユーザデータの復号を行わずに中継する中継装置を介して実行する端末装置であって、前記中継装置は、前記基地局装置から到来した電波を、所定の領域のそれぞれ異なる部分領域へ到達させるための複数のビームであって、前記複数のビームのそれぞれに対応する前記部分領域でそれぞれ測定される場合の前記電波の受信電力の値の範囲が相互に重ならないように、それぞれの利得が設定されている前記複数のビームを形成して出力しており、前記端末装置は、前記電波の受信電力を測定する測定手段と、前記測定した前記受信電力の報告であって、前記基地局装置と前記端末装置との間の通信の中継に用いるビームの方向を前記中継装置に制御させるための前記電波の受信電力に関する情報を前記基地局装置から前記中継装置へ通知させるための前記報告を前記基地局装置へ通知する通知手段と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザデータの復号を行わない中継装置において形成するビームを端末装置の方向に向けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】複数のビームにおける利得の設定を説明する図である。
図3】ビームの方向制御の流れの例を説明する図である。
図4】装置のハードウェア構成例を示す図である。
図5】中継装置の機能構成例を示す図である。
図6】基地局装置の機能構成例を示す図である。
図7】端末装置の機能構成例を示す図である。
図8】処理の流れの第1の例を示す図である。
図9】処理の流れの第2の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
(通信システムの構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。無線通信システムは、例えば、基地局装置101と端末装置102とを含んで構成される。基地局装置101と端末装置102は、例えば、第5世代(5G)のセルラ通信規格による無線通信を行うが、これは一例であり、ロングタームエボリューション(LTE)や将来の無線通信規格など、他の通信規格による通信を行ってもよい。なお、基地局装置101との付近には、例えば建物等の障害物104が存在しているものとする。このような状況では、基地局装置101から見て障害物104の陰となる所定の領域において基地局装置101から送出された電波の受信電力が大幅に低下し、その所定の領域に滞在する端末装置102は、基地局装置101と直接通信することができない。このため、本実施形態では、中継装置103を用いて、基地局装置101からの電波を所定の領域に到達させ、また、所定の領域に滞在する端末装置102からの電波を基地局装置101へ到達させるようにする。
【0014】
中継装置103は、ユーザデータの復号を伴わずに無線信号を中継する反射板や無線リピータでありうる。なお、反射板は、複数の反射素子で構成されたメタサーフェス反射板であり、反射素子ごとの反射位相を調整することによって、任意の方向・ビーム幅の反射パターンを形成することができるように構成される。また、無線リピータは、受信した信号を増幅して(必要に応じてさらに周波数を変換して)出力することができる。また、無線リピータは、複数のアンテナを用いて任意の方向及びビーム幅のビームを形成することができるように構成される。本実施形態では、中継装置103は、複数のビーム111~113を形成して、基地局装置101から到来した電波を出力することが可能に構成される。なお、図1では、3つのビームが形成されている例を示しているが、これより多くのビームが形成されてもよいし、2つのビームのみが形成されてもよい。
【0015】
ここで、例えば、上述の通信が困難となる所定の領域のうち、ビーム111~113のそれぞれに対応する複数の部分領域のいずれかに端末装置102が滞在している場合には、端末装置102は、中継装置103を介して、基地局装置101との間での通信を行うことができる。一方で、端末装置102は、移動可能な端末でありうる。このため、端末装置102が移動した結果、通信が困難となる所定の領域のうち、上述の複数の部分領域のいずれにも含まれない部分領域に到達することが想定され、このような場合には、端末装置102が通信を行うことができなくなりうる。このため、端末装置102の位置に応じて、適切にビームの方向を端末装置102の方向へ向けるように中継装置103が制御されることが肝要である。このため、本実施形態では、中継装置103のビームの方向の制御のために、端末装置102の位置を推定可能とする技術を提供する。
【0016】
本実施形態では、例えば、ビーム111~113に対応する部分領域のいずれに端末装置102が滞在しているかを特定可能とし、その特定結果に基づいて、中継装置103のビームの方向制御を行うようにする。具体的には、基地局装置101から送信されて中継装置103によって中継された電波が、ビーム111~113にそれぞれ対応する複数の部分領域において異なる受信電力の範囲で測定されるように、ビーム111~113のそれぞれについての利得を調整する。例えば、図2に示すように、ビーム111に対応する部分領域で測定される受信電力の第1の範囲が、ビーム112に対応する部分領域で測定される受信電力の第2の範囲及びビーム113に対応する部分領域で測定される受信電力の第3の範囲より高くなるように、ビーム111の利得が設定される。すなわち、ビーム112やビーム113に対応する部分領域で測定される電波の受信電力の第2の範囲及び第3の範囲のそれぞれの上限値が、ビーム111に関する上述の第1の範囲の下限値より低くなるように、ビーム111の利得が調整される。例えば、上述の通信が困難となる所定の領域のうちでビーム111に対応する部分領域において、基地局装置101からの電波が経由する通信経路が最長の位置で測定される受信電力の推定値が、所定の領域のうちでビーム112やビーム113に対応する部分領域において、基地局装置101からの電波が経由する通信経路が最短となる位置において測定される受信電力の推定値より高くなるように、ビーム111の利得が調整される。同様に、上述の第2の範囲が、第1の範囲及び第3の範囲と相互に重ならないようにビーム112及びビーム113の利得が調整される。
【0017】
このような調整が行われた場合、端末装置102において、基地局装置101から(中継装置103を介して)到来された電波を測定した場合の受信電力が、上述の第1の範囲~第3の範囲のいずれに含まれるかに基づいて、端末装置102がビーム111~113のいずれに対応する部分領域に滞在しているかを特定することができる。そして、例えば、図1のビーム111~113のように、3つのそれぞれ隣接する部分領域に対応するビームを形成している場合、3つの部分領域のうちの他の2つの部分領域に挟まれている部分領域に対応するビーム(図1の場合、ビーム112)を端末装置102に向けるように、ビームの向きを制御しうる。
【0018】
ここで、ビームの向きの制御について、図3を用いて説明する。この例では、中継装置103が3つのビーム301~303を形成している例を示している。ここで、第1のビーム301に対応する部分領域における電波の受信電力は第1の範囲に属し、第2のビーム302に対応する部分領域における電波の受信電力は第2の範囲に属し、第3のビーム303に対応する部分領域における電波の受信電力は第3の範囲に属し、第1の範囲~第3の範囲は相互に重ならないように、各ビームの利得が調整されているものとする。このとき、端末装置102が第2のビーム302に対応する部分領域に滞在している間、基地局装置101からの電波の受信電力は第2の範囲に含まれることとなる。その後、端末装置102が移動し、第3のビーム303に対応する部分領域に進入したものとする。そうすると、端末装置102において測定される基地局装置101からの電波の受信電力が、第2の範囲を逸脱して第3の範囲に含まれるようになる。このときに、ビームの方向を変更しないと、端末装置102が第3のビーム303を超えて移動した場合に、端末装置102が基地局装置101と通信することができなくなってしまいうる。このため、第3のビーム303の方向へ第2のビーム302の方向を変更し、それに伴い、第1のビーム301及び第3のビーム303の方向をも変更する。なお、このとき、ビームの方向のみならず、ビーム幅をも変更してもよい。このように、端末装置102の移動に伴い、ビームの方向を移動させることにより、通信に使用されているビームに対応する部分領域から脱して端末装置102が移動した場合にも、中継装置103が形成している別のビームを用いて端末装置102が通信を継続することができるようになる。
【0019】
なお、図1及び図2に示すように、中継装置103からの距離が最も遠い位置を含んだ部分領域に対応するビーム111の利得を高くし、中継装置103からの距離が近い位置のみを含む部分領域に対応するビーム113の利得を低くしうるが、これは一例である。すなわち、端末装置102の位置を、基地局装置101から送出されて中継された電波の受信電力(受信強度)によって特定可能となるように、各ビームに対応する部分領域ごとに受信電力の範囲が相互に重ならないように設定されている限りにおいて、どのような利得設定が行われてもよい。
【0020】
また、中継装置103は、端末装置102から受信電力の通知を受信する能力を有し、その通知に基づいて、上述のようなビームの調整を行ってもよいし、例えば、基地局装置101の内部に備えられた又は基地局装置101とは別個に設けられた制御装置による制御の下で、上述のようなビームの調整を行ってもよい。なお、制御装置の制御下でビームの調整を行う場合、中継装置103は、制御装置から端末装置102における電波の測定結果を示す情報を取得して、その情報に基づいて端末装置102の位置を推定してビーム制御を行いうる。また、制御装置は、端末装置102から報告された電波の受信電力に基づいて端末装置102の位置を推定し、その推定結果に基づいて、中継装置103のビームをどのように制御すべきかを決定し、その決定した結果に基づくビームの制御指示を中継装置103へ送信してもよい。なお、制御装置から中継装置103への情報の伝達は、例えば、有線通信によって行われうる。この場合、制御装置が基地局装置101の外部に存在する場合は、制御装置が基地局装置101を介さずに中継装置103へ情報を伝達してもよいし、基地局装置101を介して中継装置103へ情報を伝達してもよい。また、制御装置から、基地局装置101を介して、無線通信によって中継装置103へ情報が伝達されてもよい。
【0021】
また、中継装置103は、ビームの向きをアナログ的に変更してもよいし、複数の向きに対応する複数のビームをそれぞれ形成するための設定を事前に保持しておき、端末装置102の位置の推定結果に応じて、その複数のビームのうちのいずれを実際に形成するかを制御するようにしてもよい。この場合、制御装置からビーム制御指示が送信される場合に、そのビーム制御指示は、事前に準備されている設定のうちのいずれを使用すべきかを指定する識別子のみを含めば足りる。すなわち、このような構成により、処理を簡略化することができる。
【0022】
なお、上述の説明では、中継装置103が複数のビームを形成して端末装置102の位置を推定する手法について説明したが、これに限られない。例えば、基地局装置101や端末装置102が複数のビームを形成して上述のように各ビームで異なる利得を設定し、通信にいずれのビームを使用するかを決定するのに上述の処理を用いてもよい。例えば、基地局装置101と端末装置102が中継装置103を介さずに通信する際に、基地局装置101と端末装置102がそれぞれ使用するビームを決定する際に、上述のように利得を設定することにより、複数のビームで並行して電波を出力しうる。これによれば、複数のビームを時分割で用いて測定を行う場合と比べて、高速に測定を完了することが可能となる。
【0023】
(装置構成)
図4を用いて、基地局装置101、端末装置102、及び中継装置103のハードウェア構成例について説明する。各装置は、一例において、プロセッサ401、ROM402、RAM403、記憶装置404、及び通信回路405を含んで構成される。プロセッサ401は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM402や記憶装置404に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM402は、各装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM403は、プロセッサ401がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置404は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路405は、例えば、LTEや5Gの無線通信用の回路を含んで構成される。なお、図4では、1つの通信回路405が図示されているが、各装置は、複数の通信回路を有してもよい。例えば、基地局装置101は他のノードの通信のために、また、中継装置103は制御装置との通信のために、有線通信回路を含んでもよい。
【0024】
図5は、中継装置103の機能構成例を示す図である。中継装置103は、その機能構成として、例えば、中継処理部501、ビーム形成部502、方向制御部503、及び端末位置特定部504を含む。なお、これらは一例に過ぎず、機能の一部が省略されてもよいし、他の機能部と統合されてもよいし、1つの機能部がさらに分割されてもよい。これらの機能部は、例えば、プロセッサ401が、ROM402や記憶装置404に記憶されたプログラムを実行することにより実現されうる。ただし、これに限られず、専用のハードウェアが用意されてもよい。
【0025】
中継処理部501は、基地局装置101又は端末装置102から送信された無線信号(電波)を、ユーザデータの復号を伴わずに中継する処理を実行する。例えば、中継装置103が無線リピータである場合、中継処理部501は、受信した電波を増幅して、必要に応じて周波数変換した上で出力する。また、中継装置103が反射板である場合、中継処理部501は、到来した電波に対して実態的な処理を行わずに反射させる。なお、中継装置103は、ユーザデータの復号を伴わない非再生中継を行うものとするが、ユーザデータの復号を伴う再生中継を行っても、上述の処理を適用することが可能である。
【0026】
ビーム形成部502は、上述のように、複数のビームを形成する。なお、複数の方向にピークを有する(ただし、各方向での利得が異なる)1つのビームが形成されてもよい。例えば、中継装置103が無線リピータである場合には、例えばアンテナウェイトを調整することにより、複数のビームが形成されうる。また、中継装置103が反射板である場合には、例えばメタサーフェスを複数の領域に分割して、それぞれ別の方向へ電波を反射させるように設定が行われうる。なお、メタサーフェスを構成する複数の反射素子の数を、各ビームで得るべき利得に応じて割り当ててもよい。例えば、端末装置102における電波の受信電力が最も大きくなるべき部分領域へ電波を反射させるビームの形成のために最も多くの反射素子を割り当て、端末装置102における電波の受信電力が低くなるべき部分領域ほど、その対応するビームの形成のための反射素子の量を少なく割り当てるようにしうる。
【0027】
方向制御部503は、例えば図3を用いて説明したように、端末装置102の位置の推定結果に基づいて、ビームを形成すべき方向を設定する制御を行う。端末位置特定部504は、例えば、制御装置から取得した情報に基づいて、端末の位置を特定する。例えば、端末位置特定部504は、制御装置から、端末装置102における電波の受信電力の測定値を示す情報(又はその受信電力を特定可能な情報)を取得し、その情報に基づいて、端末装置102が、現在形成している複数のビームにそれぞれ対応する複数の部分領域のうちのいずれの範囲内に滞在しているかを特定しうる。また、端末位置特定部504は、例えば、端末装置102における電波の受信電力の測定結果を示す情報を、端末装置102からの報告を受信(又は傍受)することによって取得してもよい。なお、制御装置が端末装置102の位置を推定して、その推定に基づくビームの制御指示を中継装置103へ提供する場合には、端末位置特定部504は省略されてもよい。
【0028】
図6は、基地局装置101の機能構成例を示す図である。基地局装置101は、その機能構成として、例えば、報告受信部601、情報通知部602、及び端末位置推定部603を含む。なお、これらは一例に過ぎず、機能の一部が省略されてもよいし、他の機能部と統合されてもよいし、1つの機能部がさらに分割されてもよい。これらの機能部は、例えば、プロセッサ401が、ROM402や記憶装置404に記憶されたプログラムを実行することにより実現されうる。ただし、これに限られず、専用のハードウェアが用意されてもよい。また、図6は、本実施形態に関連する機能部のみを概略的に示したのみであり、基地局装置101は、通常のセルラ通信システムにおける基地局装置としての機能を当然に有する。
【0029】
報告受信部601は、端末装置102から(中継装置103を介して)、基地局装置101が送出した電波の受信電力の測定結果の報告を受信する。なお、基地局装置101は、通常の基地局装置として参照信号を定期的に所定の無線リソースで送信し続けており、端末装置102は、例えばその参照信号を測定した参照信号受信電力(RSRP)を基地局装置101に報告しうる。なお、ここでは基地局装置101から送出された電波の受信電力が報告されるものとしているが、これに限られず、例えば、SNR(信号対雑音比)などの、電波の受信強度を特定可能な任意の指標が用いられてもよい。情報通知部602は、中継装置103へ端末装置102における電波の受信電力に関する情報を通知する。端末位置推定部603は、端末装置102における電波の受信電力に基づいて、端末装置102が中継装置103によって形成されているビームのいずれに対応する部分領域に滞在しているかを推定する。ここで、情報通知部602によって通知される電波の受信電力に関する情報は、電波の受信電力を示す情報でありうる。また、この情報は、例えば、端末位置推定部603によって推定された端末装置102の位置に基づいて特定されたビームを向けるべき方向を指定するビーム制御指示を含んでもよい。なお、中継装置103が、端末装置102からの報告を受信して自律的にビームの制御を行うことができる場合には、基地局装置101は、図6に示すような機能を有しなくてもよい。
【0030】
図7は、端末装置102の機能構成例を示す図である。端末装置102は、その機能構成として、例えば、受信電力測定部701、及び受信電力通知部702を含む。なお、これらは一例に過ぎず、機能の一部が省略されてもよいし、他の機能部と統合されてもよいし、1つの機能部がさらに分割されてもよい。これらの機能部は、例えば、プロセッサ401が、ROM402や記憶装置404に記憶されたプログラムを実行することにより実現されうる。ただし、これに限られず、専用のハードウェアが用意されてもよい。また、図7は、本実施形態に関連する機能部のみを概略的に示したのみであり、端末装置102は、通常のセルラ通信システムにおける端末装置としての機能を当然に有する。
【0031】
受信電力測定部701は、基地局装置101から送信された電波(無線信号)の電力を測定する。例えば、受信電力測定部701は、基地局装置101から送信された参照信号を測定し、参照信号受信電力(RSRP)を取得する。受信電力通知部702は、受信電力測定部701によって測定された受信電力を示す情報を基地局装置101へ通知する。なお、受信電力測定部701は、中継装置103を介して中継された電波を測定し、受信電力通知部702は、中継装置103を介して、受信電力を示す情報を通知しうる。なお、受信電力通知部702は、受信電力を示す情報を中継装置103へ通知するように構成されてもよい。
【0032】
(処理の流れ)
続いて、無線通信システムで実行される処理の流れの例について図8を用いて概説する。本処理では、中継装置103が、基地局装置101から到来した(例えば、参照信号を含んだ)無線信号を、複数のビームを用いて中継する(S801、S802)。このとき、上述のように、複数のビームにおいてそれぞれ異なる利得を設定し、複数のビームにそれぞれ対応する複数の部分領域のいずれに端末装置102が滞在しているかを特定可能としている。端末装置102は、中継された無線信号の受信電力を測定し(S803)、中継装置103を介して、測定結果を基地局装置101へ通知する(S804)。そして、基地局装置101は、受信した測定結果の情報に含まれる受信電力の情報を中継装置103へ通知する(S805)。そして、中継装置103は、その情報に基づいて端末装置102の位置を推定し(S806)、図3のようにしてビームの方向制御を実行する(S807)。
【0033】
なお、図8では、中継装置103が端末装置102の位置を推定する場合の例について説明したが、図9のように、基地局装置101がその推定を行ってもよい。図9の場合、基地局装置101は、受信した測定結果に含まれる受信電力の情報から、端末装置102の位置を推定して(S901)、ビームが向けられるべき方向を決定する(S902)。そして、基地局装置101は、中継装置103が決定した方向にビームを設定するように指示するビーム制御指示情報を送信する(S903)。中継装置103は、そのビーム制御指示情報に従って、ビームの方向制御を実行する(S904)。
【0034】
なお、中継装置103は、端末装置102が基地局装置101と直接通信できない領域に進入してくるまでは、初期的に事前設定された方向に向けてビームを形成して基地局装置101からの電波を出力するように構成されうる。なお、このビームは、例えば、不感地帯を広く覆うように、相対的にビーム幅が広くかつ利得が低く設定されうる。そして、端末装置102がそのビームのエリアに進入したことに応じて、上述の処理が実行されるように構成されうる。
【0035】
このように、本実施形態によれば、中継装置103が形成する複数のビームのそれぞれの利得を調整することにより、端末装置102における電波の受信電力の測定値に基づいて、端末装置102の位置を推定することが可能となる。そして、中継装置103は、その推定された端末装置102の位置に応じて、基地局装置101と端末装置102との間の通信を、適切に設定したビームを用いて中継することができるようになる。
【0036】
上記構成により、適切な方向にビームが設定された反射板を構成することができる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0037】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9