(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】プリント配線板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240719BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H05K1/02 A
H05K1/02 Q
H05K3/34 502A
(21)【出願番号】P 2021162061
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 信良
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 宏義
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 寛
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-023279(JP,U)
【文献】国際公開第2016/157552(WO,A1)
【文献】特開2009-124080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00 - 1/02
H05K 3/32 - 3/34
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された所定の形状の銅箔パターンと、
前記銅箔パターンの側部に形成されたレジスト材と、
前記レジスト材上に形成されたワニス材と、
前記ワニス材上に配置された樹脂製外装の電子部品と、
を備え、
前記銅箔パターンと前記樹脂製外装の電子部品との間に空間を形成し、空気の通路としたことを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線板において、
前記レジスト材は、前記銅箔パターンの側部を覆うように形成されたことを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
請求項1に記載のプリント配線板において、
前記樹脂製外装の電子部品は、端子台またはパワーモジュールまたは電源ICであることを特徴とするプリント配線板。
【請求項4】
請求項1に記載のプリント配線板において、
前記銅箔パターンは、大電流用の銅箔パターンであることを特徴とするプリント配線板。
【請求項5】
請求項1に記載のプリント配線板において、
前記レジスト材は、前記銅箔パターンの両側部に形成し、
前記銅箔パターンの中央部に、前記空間を形成し、空気の通路としたことを特徴とするプリント配線板。
【請求項6】
請求項1に記載のプリント配線板において、
前記レジスト材と前記ワニス材との間に、シルク印刷層を有することを特徴とするプリント配線板。
【請求項7】
基板上に形成された所定の形状の銅箔パターンと、前記銅箔パターンの側部に形成されたレジスト材と、を備え、前記銅箔パターンの中央部にレジスト材を有しない部材を作成するステップと、
前記銅箔パターン上であって、前記レジスト材を有しない箇所にマスキングを配置するステップと、
前記レジスト材上にワニス材を形成するステップと、
前記マスキングを除去するステップと、
前記ワニス材上に樹脂製外装の電子部品を配置し、前記銅箔パターンと前記樹脂製外装の電子部品との間に空間を形成し、空気の通路とするステップと、
を備えるプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のプリント配線板の製造方法において、
前記レジスト材は、前記銅箔パターンの側部を覆うように形成されたことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載のプリント配線板の製造方法において、
基板上に所定の形状の銅箔パターンと前記銅箔パターンの中央部にレジスト材を有しない部材を作成するステップは、
基板上に所定の形状の銅箔パターンを形成するステップと、
前記銅箔パターンの中央部を除く側部にレジスト材を形成するステップと、
を有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載のプリント配線板の製造方法において、
前記樹脂製外装の電子部品は、端子台またはパワーモジュールまたは電源ICであることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
請求項7に記載のプリント配線板の製造方法において、
前記銅箔パターンは、大電流用の銅箔パターンであることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項12】
請求項9に記載のプリント配線板の製造方法において、更に、
前記レジスト
材上にシルク印刷層を形成するステップを有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の放熱技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年プリント配線板上に実装する部品密度は上昇し、かつ製品の小型化に伴ってプリント配線板の小型化が要求されている。このため、高密度のプリント配線板では、限られた部品実装範囲に多くの部品を実装し、配線を行わなければならない。
ここでのプリント配線板とは、銅箔パターン(導体パターン)を絶縁されたガラスエポキシ樹脂材の基板の表面または内部に形成したものであり、プリント配線板は電子部品を実装し、部品間の信号同志の接続を行う用途に使用される。また、プリント配線板上に、電子部品名や外形、回路記号などの追加情報を、シルク印刷によって追加する必要がある。
【0003】
プリント配線板においては、製品仕様によっては大電流を扱う場合があり、プリント配線板上に実装する発熱量の多い部品同士間の距離が十分確保出来ていない場合や、大電流を銅箔パターンに直接流すことにより銅箔パターンが発熱するため、プリント配線板の温度が上昇し、製品完成後の信頼性試験でNG判定となる場合がある。
そのため、プリント配線板に大電流用の銅箔パターンを形成する場合、あらかじめ発熱を回避するための対策を行う必要がある。
【0004】
特許文献1には、大電流および放熱用厚肉配線パターン部を必要な箇所のみに自由な形状で作製することを課題として、厚肉配線パターン部が樹脂層を貫通する幅広溝部に導体を埋め込んで形成され、前記樹脂層の表面に配線パターンが形成された印刷配線板を提供することが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プリント配線板の発熱を回避する対策として、プリント配線板上に実装する部品間の距離を大きくし、銅箔パターンを大電流に対して温度上昇を抑制できる十分な線幅で配線する方法がある。しかし高密度のプリント配線板では、限られた部品実装範囲内では十分な対策が行えない場合があった。
【0007】
また、銅箔パターンの厚さを大きいものに変更して、大電流を扱う方法で対策する方法があるが、銅箔パターンは厚さが大きいものほど製造コストが増大し、調達時において単価増大の要因となる。
【0008】
その他の対策として、プリント配線板の大電流用の銅箔パターン部をレジスト剥離させて、銅箔パターンを剥き出しとし、直接大気に晒すことにより排熱効果を得る対策がある。しかし、この対策は銅箔パターン部のパターンが剥き出しとなってしまうため、プリント配線板の保守点検や故障対応の際に、レジスト剥離部への接触による感電の恐れがある。
【0009】
前記特許文献1には、プリント配線板製造時の配線パターン形成方法による放熱効果が記載されている。しかし、プリント配線板の配線パターンの表層に空間を確保して放熱することは考慮されていない。
【0010】
本発明は、大電流用の銅箔パターンを形成するプリント配線板において、プリント配線板の表層に放熱用の空間を確保して良好に放熱可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための、本発明の「プリント配線板」の一例を挙げるならば、基板と、前記基板上に形成された所定の形状の銅箔パターンと、前記銅箔パターンの側部に形成されたレジスト材と、前記レジスト材上に形成されたワニス材と、前記ワニス材上に配置された樹脂製外装の電子部品と、を備え、前記銅箔パターンと前記樹脂製外装の電子部品との間に空間を形成し、空気の通路としたプリント配線板である。
また、本発明の「プリント配線板の製造方法」の一例を挙げるならば、基板上に形成された所定の形状の銅箔パターンと、前記銅箔パターンの側部に形成されたレジスト材と、を備え、前記銅箔パターンの中央部にレジスト材を有しない部材を作成するステップと、前記銅箔パターン上であって、前記レジスト材を有しない箇所にマスキングを配置するステップと、前記レジスト材上にワニス材を形成するステップと、前記マスキングを除去するステップと、前記ワニス材上に樹脂製外装の電子部品を配置し、前記銅箔パターンと前記樹脂製外装の電子部品との間に空間を形成し、空気の通路とするステップと、を備えるプリント配線板の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プリント配線板において、大電流を扱う銅箔パターンに対して、部材の追加無しで、放熱用の空間を確保して良好に放熱可能とすることができる。
【0013】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明より明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1のプリント配線板の製造方法を示す図である。
【
図2】
図1に引き続く、本発明の実施例1のプリント配線板の製造方法を示す図である。
【
図3】本発明の実施例1のプリント配線板の斜視図である。
【
図4】本発明を実施したプリント配線板に、端子台を実装したCAD図である。
【
図5】
図4のプリント配線板の、一部を拡大した平面図および側面図である。
【
図6】本発明の実施例2のプリント配線板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし主旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
また、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1のプリント配線板の製造方法を、
図1、
図2に沿って説明する。
【0017】
図1は、段差形成したプリント配線板の製造工程を示す斜視図である。
先ず、
図1(a)に示すように、ガラスエポキシ樹脂から成る基板101の全面に銅箔パターン102を形成する。
次に、
図1(b)に示すように、銅箔パターン102に所定のパターンのエッチング材110を形成する。
次に、
図1(c)に示すように、エッチング材110が形成されていない部分の銅箔パターン102を、エッチングにより除去する。
次に、
図1(d)に示すように、エッチング材110を除去する。
次に、
図1(e)に示すように、後程、端子台が配置される箇所であって、銅箔パターン102の側部にレジスト材103を塗布する。レジスト材103を塗布する場所は、予めレジスト材無しエリアをCADデータにて作成しておき、そのエリアを除くようにすればよい。図の例では、銅箔パターン102の両側部を覆うようにレジスト材103を形成し、銅箔パターン102の中央部には、レジスト材が形成されていない。なお、図では、レジスト材103が銅箔パターン102の両側部を覆うように形成しているが、銅箔パターン102の両側部を覆わないで、両側部に形成してもよい。
次に、
図1(f)に示すように、レジスト材103の上部にシルク印刷層104を施す。
【0018】
図2は、
図1に引き続く、プリント配線板に端子台を実装するまでの製造工程を示す斜視図である。
【0019】
図2(a)において、プリント配線板のシルク印刷層104上部に、ワニス材105を重ねて塗布を行うが、マスキングをしない状態でワニス材105の塗布を行うと、銅箔パターンのレジスト剥離部109に、ワニス材105が塗布されてしまう。このままの状態だと、プリント配線板製作時に形成済であったレジスト剥離部109と、シルク印刷層104による段差がワニス材105で覆われてしまい、形成済であった段差が無くなってしまう。これらの段差は、本発明で必要不可欠なものであるため、銅箔パターン102のレジスト剥離部109へのワニス材105の侵入を防止する必要がある。
【0020】
図2(b)に示すように、ワニス材105の侵入対策として、プリント配線板にマスキング106を施し、シルク印刷層104の上部にワニス材105を重ねて塗布を行う。すなわち、銅箔パターンのレジスト剥離部109に、マスキング106を施し、シルク印刷層104の上部にワニス材105を重ねて塗布を行う。マスキング106は、例えばマスキングテープを貼ればよい。
【0021】
次に、
図2(c)に示すように、マスキング106の撤去を行う。以上の手順により、レジスト剥離した銅箔パターン109から、レジスト材103と、シルク印刷層104と、ワニス材105との合計分の段差が、プリント配線板の表層に形成される。
【0022】
そして、
図2(d)に示すように、プリント配線板の表層に形成された段差上に、樹脂製外装の電子部品である端子台107の実装を行う。段差により、銅箔パターン102と端子台107との間に空間が形成される。なお、樹脂製外装の電子部品としては、端子台に限らず、パワーモジュール、電源ICなど樹脂製部品であればよい。
【0023】
実装された端子台107の直下の大電流パターンは、形成された段差により、空気の流れ108が生じ積極的な空気の流れが生じて、放熱効果が得られる。
【0024】
【0025】
プリント配線板は、ガラスエポキシ樹脂から成る基板101と、基板上に形成された所定の形状の銅箔パターン102と、銅箔パターンの側部に形成されたレジスト材103と、レジスト材上に形成されたシルク印刷層104と、シルク印刷層上に形成されたワニス材105を備えている。そして、ワニス材105の上には、両側のワニス材105を跨ぐように樹脂製外装の電子部品である端子台107が配置されている。
【0026】
銅箔パターン102の中央部には、レジスト材103とシルク印刷層104とワニス材105とを加えた段差により、端子台108との間に空間111が形成され、空気の流れ108の通路となる。プリント配線板の銅箔パターン102のレジスト剥離部は、銅箔パターン102が剥き出しとなり、大気に晒される状態であるため、空気が流れることにより良好に排熱が行われる。
【0027】
図4は、本発明を実施したプリント配線板を上面より見たCAD図であり、第三角法でいうところの平面図である。このプリント配線板は、本発明をインバータ制御用のプリント配線板に用いたものである。
【0028】
また、
図5に、
図4のプリント配線板の、一部を拡大した平面図および側面図を示す。
図5(a)は
図4のプリント配線板を、
図5(b)は
図4の右下側のA部拡大平面図を、
図5(c)は
図5(b)のプリント配線板を右側B部方向から見た側面図を示す。
【0029】
端子台201(CAD図)の下部の銅箔パターン200は、大電流を扱うことを前提としているため、幅広の銅箔パターンとなっている。
一方、大電流を扱わない回路204(CAD図)の銅箔パターンは、各々の仕様にあった線幅であり、大電流パターンの線幅とは明らかに異なるものである。
【0030】
端子台201(CAD図)は、樹脂製の外装を使用しており、その直下にシルク印刷層(CAD図)202と、シルク印刷層202の間に銅箔パターンのレジスト剥離部(CAD図)203が位置している。すなわち、2つのシルク印刷層202の間において、銅箔パターン200と端子台201との間に空間が形成され、空気の通路となる。
【0031】
図4では、端子台201の最端に、銅箔パターン200のレジスト剥離部(CAD図)203に、シルク印刷(CAD図)202を設けているが、この場所は決まった場所のみへの追加ではなく、端子台201(CAD図)の直下の配線パターンであれば、特に制限なく追加可能である。
【0032】
本実施例によれば、プリント配線板において、大電流を扱う銅箔パターンに対して、部材の追加無しで、放熱用の空間を確保して良好に放熱可能とすることができる。
【0033】
プリント配線板の銅箔パターンのレジスト剥離部は、CADデータにレジスト剥離部を追加することにより、プリント配線板製造時に加工可能である。また、ワニス材は、プリント配線板に電子部品を実装する際、耐環境絶縁保護用に使用するものであり、追加部材の調達は特に必要ない。そのため、部材の追加無しで放熱用の空間を確保することができる。
そして、この段差による空間は、高密度な部品実装による状況下であっても、樹脂製外装の電子部品直下であれば、大電流用の銅箔パターンの放熱が達成される。
【0034】
また、樹脂製外装の電子部品であれば、大小を問わず実施可能であり、電子部品直下での形成であるため、大電流パターンがレジスト無しの状態でも、直接触れることがなく、レジスト剥離部の感電を予防することができる。
【0035】
また、本実施例のプリント配線板の製造方法では、銅箔パターン上のレジスト剥離部に、ワニス材の侵入を防止するために、マスキングを施してから、シルク印刷層上にワニス材の塗布を行う。ワニス材の塗布を行った後、端子台の実装を行う。ワニス材が硬化した後に端子台を実装することにより、端子台の製品のバラつきによる、外装樹脂材の微妙な傾きや、プリント配線板に接続する端子台の金属端子の傾きによるガタツキを抑える効果がある。この効果は、樹脂製の外装の電子部品の直下にスペーサーを設置して、電子部品とプリント配線板の空間距離を確保する方法では得られないものである。
【実施例2】
【0036】
図6に、本発明の実施例2のプリント配線板の斜視図を示す。実施例1のプリント配線板は、レジスト材103の上部にシルク印刷層104を有しているが、本実施例のプリント配線板はシルク印刷層を有しないものである。
【0037】
プリント配線板は、ガラスエポキシ樹脂から成る基板101と、基板上に形成された所定の形状の銅箔パターン102と、銅箔パターンの側部に形成されたレジスト材103と、レジスト材上に形成されたワニス材105を備えている。そして、ワニス材105上には、実施例1と同様に、両側のワニス材105を跨ぐように樹脂製外装の電子部品である端子台107が配置されている。
【0038】
銅箔パターン102の中央部には、レジスト材103とワニス材105とを加えた段差により、端子台107との間に空間111が形成され、空気の流れ108の通路となる。プリント配線板の銅箔パターン102のレジスト剥離部は、銅箔パターン102が剥き出しとなり、大気に晒される状態であるため、空気が流れることにより良好に排熱が行われる。
【0039】
本実施例によれば、実施例1と比べて、シルク印刷層を有しない分だけ段差が小さくなり空間が狭くなるが、実施例1と同様に、プリント配線板において、大電流を扱う銅箔パターンに対して、部材の追加無しで、放熱用の空間を確保して良好に放熱可能とすることができる。
【符号の説明】
【0040】
101…ガラスエポキシ樹脂の基板
102…銅箔パターン
103…レジスト材
104…シルク印刷層
105…ワニス材
106…マスキング
107…端子台
108…空気の流れ
109…銅箔パターン上のレジスト剥離部
110…エッチング材
111…空間
200…銅箔パターン
201…端子台
202…シルク印刷層
203…銅箔パターン上のレジスト剥離部
204…大電流を扱わない回路