(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】軽減された風味スカルピング特性を有するラテックスコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
B65D 25/14 20060101AFI20240719BHJP
B65D 23/08 20060101ALI20240719BHJP
B65D 8/00 20060101ALI20240719BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240719BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B65D25/14 A
B65D23/08 B
B65D8/00 A
C09D5/02
C09D133/00
(21)【出願番号】P 2021206582
(22)【出願日】2021-12-21
(62)【分割の表示】P 2019501532の分割
【原出願日】2017-07-13
【審査請求日】2022-01-18
(32)【優先日】2016-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518155030
【氏名又は名称】エスダブリューアイエムシー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン,ロバート・エム
(72)【発明者】
【氏名】シュテュッテルベルグ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】リアジ,アーサー
(72)【発明者】
【氏名】スカンドラーリ,メアリー・ジョー
(72)【発明者】
【氏名】フィン,ニャン・ティー
(72)【発明者】
【氏名】コッホ,ニコラウス・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ピュオ,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】リドル,デヴィッド・エム
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/105504(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/105502(WO,A1)
【文献】特表2008-516769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/14
B65D 23/08
B65D 8/00
C09D 5/02
C09D 123/00-201/00
B05D 7/14-7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材を含む、食品又は飲料用の缶の胴部又は端部のうちの1つ以上と、
前記金属基材上に配置されたコーティング組成物と、
を含む物品であって、
前記コーティング組成物が乳化ラテックスポリマーを含んでなり、この乳化ラテックスポリマーは、10000~20000の数平均分子量(Mn)を有する乳化ポリマーの水性分散液の存在下で重合されたエチレン性不飽和モノマー成分を含む成分の反応生成物を含み、前記コーティング組成物の硬化フィルムが50℃以上120℃未満のガラス転移温度(Tg)を有し、前記コーティング組成物が、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSの各々、並びにそれらのエポキシドを実質的に含まない、上記物品。
【請求項2】
乳化ラテックスポリマーおよび有機溶媒を含む、食品又は飲料用の缶の内面スプレーコーティング用のコーティング組成物であって、
この乳化ラテックスポリマーは、10000~20000の数平均分子量(Mn)を有する乳化ポリマーの水性分散液の存在下で重合されたエチレン性不飽和モノマー成分を含む成分の反応生成物を含み、
前記コーティング組成物の硬化フィルムが50℃以上120℃未満のガラス転移温度(Tg)を有し、かつ、前記コーティング組成物が、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSの各々、並びにそれらのエポキシドを実質的に含まない、コーティング組成物。
【請求項3】
前記コーティング組成物が硬化されたコーティング組成物を含み、前記コーティング組成物の硬化フィルムが100℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項1に記載の物品または請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和モノマー成分が、モノマーの混合物であって、
前記モノマーの混合物の重量に基づいて、0.1重量%~30重量%の量で、少なくとも1つのオキシラン官能基含有α、β-エチレン性不飽和モノマーを含む、モノマーの混合物を含む、請求項1もしくは3に記載の物品または請求項2もしくは3に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記乳化ポリマーが、
(a)アニオン性塩の基、カチオン性塩の基、若しくはこれらの組み合わせを含む、ポリマー塩であるか、又は
(b)アクリルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリオレフィン、若しくはこれらの組み合わせを含むか、又は
(c)酸若しくは無水物官能性アクリルポリマー又はその塩を含むか、又は
(d)酸若しくは無水物官能性ポリマーとアミンとの塩を含む、請求項1、3、4のいずれかに記載の物品または請求項2~4のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記エチレン性不飽和モノマー成分と前記乳化ポリマーとの合計重量に基づいて、前記エチレン性不飽和モノマー成分が、前記乳化ラテックスポリマーの40~80重量%を含み、前記乳化ポリマーが、前記乳化ラテックスポリマーの20~60重量%を含み、前記乳化ポリマーが、10000~20000の数平均分子量を有し、かつ、乳化ポリマー1グラム当たり40~400ミリグラム(mg)のKOHの酸価を有する、請求項1、3~5のいずれかに記載の物品または請求項2~5のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記コーティング組成物が、ビスフェノールに由来するいずれの構造単位も実質的に含まない、請求項1、3~6のいずれかに記載の物品または請求項2~6のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記コーティング組成物が、風味スカルピングについて評価された場合に、50%未満のアルデヒド損失を示す、請求項1、3~7のいずれかに記載の物品または請求項2~7のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記コーティング組成物が、
(a)2ピース絞りしごきアルミニウム飲料用缶の内部表面上で、前記内部表面上に0.16~3.1mg/cm
2(1~20mg/in
2)のコーティング重量でスプレーされた場合に硬化型連続内面スプレーコーティングを形成し、
(b)10~40重量%の前記乳化ラテックスポリマーを含み、
(c)25℃で、フォード粘度カップ#2を用いて、20~50秒の粘度を有し、
(d)前記エチレン性不飽和モノマー成分と前記乳化ポリマーとの合計重量に基づいて、前記エチレン性不飽和モノマー成分が、前記乳化ラテックスポリマーの50~70重量%を含み、前記乳化ポリマーが、前記乳化ラテックスポリマーの30~50重量%を含み、
(e)前記乳化ポリマーが、乳化ポリマー1グラム当たり40~400ミリグラム(mg)のKOHの酸価を有し、
(f)355mlのアルミニウム飲料用缶の内部に100~130mg/缶のコーティング重量でスプレー塗布された場合に、落下損傷試験の後に3.5mA未満の金属露出値をもたらす、請求項1、3~8のいずれかに記載の物品または請求項2~8のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記食品又は飲料用の缶が、食品又は飲料製品を収容する、請求項1、3~9のいずれかに記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[0001] 本出願は、2016年7月15日に出願された、「LATEX COATING COMPOSITION HAVING REDUCED FLAVOR SCALPING PROPERTIES」と題する、米国仮出願第62/362,729号の優先権を主張し、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
[0002] 本開示は、食品及び飲料用容器、並びに他の包装用物品のためのコーティング(例えば、スプレーコーティング)を形成するために使用され得る、ラテックス乳化コーティング組成物を含むコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 多種多様なコーティング組成物が、食品及び飲料用の缶、並びに他の包装用物品の表面をコーティングするために使用されてきた。例えば、金属缶は、時に「コイルコーティング」又は「シートコーティング」作業を用いてコーティングされ、好適な基材(例えば、鋼又はアルミニウム金属)の平面コイル又はシートは、好適な組成物でコーティングされ、次いで、硬化されるか、又は固化される。次いで、コーティングされた基材を缶の端部又は本体に成形する。代替的には、液体コーティング組成物は、スプレー、浸漬、圧延等を含む様々な手段により、形成された物品に塗布されてもよく、次いで、硬化されるか、又は固化される。
【0004】
[0004] 包装用コーティングは、好ましくは、基材に対して高速で塗布することができ、固化したときに、この要求の厳しい最終用途において機能するのに必要な特性をもたらし得るものでなければならない。例えば、コーティングは、食品と接触するのに安全であり、基材に対する優れた接着性を有し、(例えば、製造工程中、又は包装物品の輸送若しくは使用中に生じる損傷に起因して)断裂することなく下層の基材の歪みに耐えるのに十分な可撓性を有し、かつ過酷な環境に曝されたときでさえも長期にわたって劣化に対する耐性を有しなければならない。後に硬化変形に付されるコーティング、例えば、缶又プリフォーム端部に塗布され、その後、硬化され、最終形状へと成形されるコーティングは、塗布されたコーティングが変形後も基板上に無傷で残存するように、良好な可撓性を特に必要とする。
【0005】
[0005] 現在の多くの包装用コーティングは、遊離型(mobile)又は結合型(bound)
ビスフェノールA(「BPA」)、ビスフェノールF(「BPF」)、ビスフェノールS(「BPS」)、それらの芳香族グリシジルエーテル化合物(例えば、BPA、BPF、若しくはBPSのジグリシジルエーテル)又はポリ塩化ビニル(「PVC」)化合物を含む。今日まで利用可能な科学的証拠を天秤にかければ、既存のコーティングから放出され得る微量のこれら化合物が、ヒトに対して健康上の危険をもたらさないことが示されているが、それにもかかわらず、これらの化合物は、ヒトの健康にとって有害である可能性があると一部の消費者には認識されている。
【0006】
[0006] また、食品及び飲料用に使用されるコーティング組成物は、耐性があり、かつ「風味スカルピング(flavor scalping)」を引き起こすべきでない。風味スカルピング
とは、包装された物品の芳香若しくは他の風味成分が包装材により吸収されることに起因するか、又は包装材に由来する望ましくない芳香若しくは他の風味成分を包装材中に収容された食品若しくは飲料が吸収することに起因する、包装物品における品質の低下を表す。
【0007】
[0007] 前述から、抽出可能量の不都合な化合物を含まない組成物、必要とされる接着性及び可撓性を有するフィルムをもたらすために課題である塗布及び硬化プロセスに付すことのできる組成物、並びに不都合な風味スカルピングを引き起こさない組成物を用いてコーティングされる包装容器(例えば、食品若しくは飲料用の缶、又はそれらの一部)が、当該技術分野において必要とされていることが、認識されるだろう。
【発明の概要】
【0008】
[0008] 包装分野における一部の研究者らは、コーティングTgの増大が、風味スカルピングに対する耐性の改善に寄与し得ることを示唆している。しかし、スプレー性、可撓性、ブリスター及び白化の不在、耐破壊性及び耐腐食性、製品成分に対する耐性、並びに炭酸化損失の回避等の、容器内面コーティングについての他の要件を満たす必要があるため、許容される風味スカルピング耐性を十分に達成するように包装フィルムのTgを増大させることは、実現されていない。ポリマーのTgが増大すると、噴霧化、基材被覆率、可撓性、及び耐ブリスター性が損なわれる傾向がある。本発明は、風味スカルピング問題に対処し、かつ2ピース金属缶の内面スプレーコーティングについて望まれる塗布及びフィルム性能特性を維持する、高Tgのポリマーを提供する。
【0009】
[0009] 一態様において、本発明は、乳化ラテックスポリマー(即ち、特定の最小分子量を有する乳化ポリマーの存在下で作製された乳化重合されたラテックスポリマー)を含む食品若しくは飲料用の缶のコーティング組成物を提供し、このコーティング組成物の硬化フィルムは、特定の最小ガラス転移温度(Tg)を有し、このコーティング組成物は、ビスフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールS、並びにそれらのエポキシドを実質的に含まない。乳化ラテックスポリマーは、エチレン性不飽和モノマー成分と、少なくとも約8,500の数平均分子量(Mn)を有する乳化ポリマーの水性分散液とを合わせ、次いで、乳化ポリマーの存在下でエチレン性不飽和モノマー成分を乳化ラテックスポリマーを形成するように重合させることにより形成されてもよく、この乳化ラテックスポリマーは、乾燥の際、又は硬化により、少なくとも約40℃のTgを有する硬化又は固化されたコーティングフィルムをもたらし得る。エチレン性不飽和モノマー成分は、増加的に、バッチ添加にて、又はこれらの組み合わせ(例えば、半バッチ添加)にて、水性乳化ポリマー分散液に添加されてもよい。簡潔にするため、このようなエチレン性不飽和モノマー成分により形成されたポリマーは、「成分ポリマー」として言及されてもよい。乳化ラテックスポリマーでは、乳化ポリマーは、硬化されたコーティングフィルムから抽出されないように、成分ポリマーに十分に結合(例えば、共有結合若しくはイオン結合)しているか、又は成分ポリマーと十分に複合体化しているか、若しくは絡み合っているように見える。理論に束縛される意図はないが、乳化ラテックスポリマーは、多段式ポリマー形態を有すると言ってもよいが、従来のコアシェル構造を有するとは考えられていない。本開示の乳化ポリマーは、従来のコアポリマーと同様に、成分ポリマーの形成前に提供又は形成されてもよい。しかし、更に従来のシェルポリマーと同様に、乳化ポリマーは、成分ポリマーの形成後に、乳化ラテックスポリマーと水性分散媒との間の親水性界面となってもよい。
【0010】
[0010] エチレン性不飽和モノマー成分は、好ましくは、モノマーの混合物である。幾つかの実施形態では、混合物中の少なくとも1つのモノマーは、好ましくは、(メタ)アクリレートモノマーであり、少なくとも1つのモノマーは、好ましくは、オキシラン官能性モノマーである。より好ましくは、混合物中の少なくとも1つのモノマーは、オキシラン官能性α、β-エチレン性不飽和モノマーである。特定の実施形態では、オキシラン官能基含有モノマーは、エチレン性不飽和モノマー成分中、モノマー混合物の重量に基づいて、少なくとも0.1重量%の量で存在する。特定の実施形態では、オキシラン官能基含有モノマーは、エチレン性不飽和モノマー成分中、モノマー混合物の重量に基づいて、3
0重量%以下の量で存在する。
【0011】
[0011] 乳化ポリマーは、酸又は無水物官能性ポリマー(即ち、酸基又は無水物基を含有するポリマー)とアミン、好ましくは、第三級アミンとの塩であってもよい。他の実施形態では、乳化ポリマーは、酸若しくは無水物基以外の基(例えば、安定な水性分散液の形成を促進するアニオン性塩の基若しくはカチオン性塩の基、及び適切な酸若しくは塩基を用いて中和される場合に、アニオン性若しくはカチオン性塩の基を生じる塩形成基)である塩形成基を有するポリマーか、又はアミン以外の中和剤を用いて形成される塩形成基を有するポリマーである。他の実施形態では、乳化ポリマーは、安定な水性分散液の形成を促進する非イオン性水分散性基(例えば、ポリオキシエチレン基)を含む。
【0012】
[0012] 本発明はまた、コーティングされた食品若しくは飲料用の缶、又はその一部を調製する方法を提供する。本方法は、乳化ラテックスポリマーを含む組成物を形成することを含み、これは、水及び任意の有機溶媒を含む担体中で、少なくとも約8,500のMnを有する乳化ポリマーの水性分散液を形成することと、エチレン性不飽和モノマー成分と水性分散液とを合わせることと、水性分散液の存在下で、エチレン性不飽和モノマー成分を重合して、少なくとも約40℃のTgを有する硬化されたコーティングフィルムを提供することができる乳化ラテックスポリマーを形成することと、金属基材を食品若しくは飲料用の缶又はその一部へと形成する前若しくは後に、乳化ラテックスポリマーを含む組成物を金属基材に塗布することとを含む。エチレン性不飽和モノマー成分及び乳化ポリマーは、上述したとおりである。特定の実施形態では、本方法は、重合後、及び金属基材に組成物を塗布する前に、水性分散液から有機溶媒(存在する場合)の少なくとも一部を除去することを含むことができる。
【0013】
[0013] 特定の実施形態では、組成物をこのような金属基材に塗布することは、平面コイル又はシートの形態の金属基材に組成物を塗布すること、乳化ラテックスポリマーを固化させること、並びにこの基材を食品若しくは飲料用の缶又はその部分へと形成すること、を含む。他の実施形態では、組成物をこのような金属基材に塗布することは、金属基材が缶又はその部分に形成された後に、金属基材に組成物を塗布することを含む。
【0014】
[0014] 特定の実施形態では、基材を缶又はその一部へと成形することは、基材を缶端部又は缶胴部へと形成することを含む。特定の実施形態では、缶は、2ピース絞り型食品用缶、3ピース食品用缶、食品用缶端部、絞りしごき型食品又は飲料用缶、飲料用缶端部等である。金属基材は、例えば、スチール又はアルミニウムであり得る。
【0015】
[0015] 特定の実施形態では、開示されたコーティング組成物は、所望のフィルム特性を提供するために、1つ以上の架橋剤、充填剤、触媒、染料、顔料、トナー、増量剤、潤滑剤、防食剤、流動制御剤、揺変剤、分散剤、酸化防止剤、接着促進剤、光安定剤、有機溶媒、界面活性剤、又はそれらの組み合わせを含む。
【0016】
[0016] 特定の実施形態では、組成物は、遊離型BPA、遊離型BPF、及び遊離型BPSを実質的に含まない。好ましい実施形態では、組成物は、これらの遊離型の化合物を本質的に含まず、更により好ましくは、これらの遊離型の化合物を本質的に完全に含まず、最も好ましくは、これらの遊離型の化合物を完全に含まない。更なる実施形態では、組成物は、結合型BPA、結合型BPF、及び結合型BPSを実質的に含まない。好ましい実施形態では、組成物は、これらの結合型化合物を本質的に含まず、更により好ましくは、これらの結合型化合物を本質的に完全に含まず、最も好ましくは、これらの結合型化合物を完全に含まない。更に、コーティング組成物は、好ましくは、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール以上のエストロゲンアゴニスト活性を有する二価フェノール又は他の多価フェノールに由来する構造単位を、実質的に含まないか、本質的に含ま
ないか、本質的に完全に含まないか、又は完全に含まない。より好ましくは、コーティング組成物は、BPS以上のエストロゲンアゴニスト活性を有する二価フェノール又は他の多価フェノールに由来するいずれの構造単位も実質的に含まないか又は完全に含まない。幾つかの実施形態では、コーティング組成物は、ビスフェノールに由来するいずれの構造単位も実質的に含まないか又は完全に含まない。幾つかの実施形態では、ラテックスポリマー又はコーティング組成物は、エポキシを含まない、例えば、ポリ芳香族ポリエポキシドを含まない。
【0017】
[0017] 特定の実施形態では、乳化ポリマーは、酸若しくは無水物官能性アクリルポリマー、酸若しくは無水物官能性アルキドポリマー、酸若しくは無水物官能性ポリエステルポリマー、酸若しくは無水物官能性ポリウレタンポリマー、酸若しくは無水物官能性ポリオレフィンポリマー、又はこれらの組み合わせを含む。好ましくは、乳化ポリマーは、酸官能性アクリルポリマーを含む。幾つかの実施形態では、乳化ポリマーは、第三級アミンを用いて、例えば、トリメチルアミン、ジメチルエタノールアミン(ジメチルアミノエタノールとしても知られている)、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルメチルエタノールアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチル3-ヒドロキシ-1-プロピルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチル2-ヒドロキシ-1-プロピルアミン、ジエチルメチルアミン、ジメチル1-ヒドロキシ-2-プロピルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルホリン、及びこれらの混合物からなる群より選択される第三級アミンを用いて中和される。好ましくは、乳化ポリマーは、水中のアミンを用いて少なくとも25%中和される。
【0018】
[0018] 特定の実施形態では、エチレン性不飽和モノマー成分は、0℃~100℃の温度で、水溶性フリーラジカル開始剤を用いて、水性分散液の存在下で、重合される。特定の実施形態では、フリーラジカル開始剤は、過酸化物開始剤を含む。特定の実施形態では、フリーラジカル開始剤は、過酸化水素及びベンゾインを含む。代替的には、特定の実施形態では、フリーラジカル開始剤は、レドックス開始剤系を含む。
【0019】
[0019] 本発明はまた、本明細書に記載の方法により調製される食品用の缶及び飲料用の缶を提供する。一実施形態では、本発明は、金属基材を含む、1つ以上の胴部又は端部と、この基材上に配置されたコーティング組成物とを含む、食品又は飲料用の缶を提供し、このコーティング組成物は、水中に分散された前述の乳化ラテックスポリマーを含む。
【0020】
定義
[0020] 特に明記しない限り、本明細書で使用される以下の用語は、以下に提示する意味を有する。
【0021】
[0021] 用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの(at least one)」、及び「1つ以上の(one or more)」は、互換的に使用される
。したがって、例えば、「1つの(a)」ポリマーを含むコーティング組成物は、このコ
ーティング組成物が「1つ以上の」ポリマーを含むことを意味する。
【0022】
[0022] 「脂肪族基」という用語は、飽和若しくは不飽和である直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する。この用語は、例えば、アルキル、アルケニル及びアルキニル基を包含するために使用される。「アルキル基」という用語は、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、t-ブチル、ヘプチル、ドデシル、オクタデシル、アミル、2-エチルヘキシル等を含む、飽和直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する。「アルケニル基」という用語は、例えば、ビニル基等の1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する不飽和の直鎖又は分岐鎖炭化水素基を意味する。「アルキニル基」という用語は、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する不飽和の、直鎖又は分岐鎖炭化水素基を意味する。「環状基」という用語は、脂環式
基又は芳香族基として分類される閉環炭化水素基を意味し、どちらの基ともヘテロ原子を含み得る。「脂環式基」という用語は、脂肪族基の特性と類似する特性を有する環状炭化水素基を意味する。
【0023】
[0023] 「Ar」という用語は、二価アリール基(即ち、アリーレン基)を指し、二価アリール基は、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、フルオレニレン、及びインデニル等の、閉鎖した芳香環又は環系、並びにヘテロアリーレン基(即ち、環内の1つ以上の原子が、炭素以外の元素(例えば、窒素、酸素、硫黄等)である閉鎖環である炭化水素基)を指す。好適なヘテロアリール基には、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、イソインドリル、トリアゾリル、ピロリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、カルバゾリル、ベンゾオキサゾリル、ピリミジニル、ベンゾイミダゾリル、キノキサリニル、ベンゾチアゾリル、ナフチリジニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、プリニル、キナゾリニル、ピラジニル、1-オキシドピリジル、ピリダジニル、トリアジニル、テトラジニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル等が含まれる。かかる基が二価の場合、それらは一般に、「ヘテロアリーレン」基(例えば、フリレン、ピリジレン等)と称される。
【0024】
[0024] 用語「ビスフェノール」は、2つのフェニレン基を有する多価ポリフェノールを指し、各フェニレン基は炭素原子6個からなる環及び環の炭素原子に結合したヒドロキシ基を含有し、2つのフェニレン基の環は何ら原子を共有しない。
【0025】
[0025] 「含む(comprises)」という用語及びその変形は、これら用語が明細書及び
特許請求の範囲に出現する箇所において、限定的な意味を有するものではない。
[0026] 用語「架橋剤」は、ポリマー間又は同一ポリマーの2つの異なる領域間に共有結合を形成することができる分子を指す。
【0026】
[0027] 用語「エポキシを含まない」とは、本明細書にてポリマーの文脈において用いられる場合、任意のエポキシ骨格セグメントを含まないポリマーを指す。このため、例えば、エポキシ樹脂を含む成分から作製されたポリマーは、エポキシを含まない、とは考えられない。同様に、ビスフェノール(例えば、BPA、BPF、BPS、4,4’ジヒドロキシビスフェノール等)とハロヒドリン(例えば、エピクロロヒドリン)との反応生成物である骨格セグメントを有するポリマーは、エポキシ樹脂を含まない、とは考えられない。
【0027】
[0028] 「乳化ラテックスポリマー」という用語は、好ましくは、分散するのに非ポリマー性界面活性剤の存在を必要とすることなく、水性媒体中に安定的に分散された、粒子状ポリマー材料を指す。
【0028】
[0029] 「乳化ポリマー」及び「ポリマー乳化剤」という用語は、少なくとも1つの疎水性部分(例えば、少なくとも1つのアルキル、シクロアルキル、又はアリール部分)及び少なくとも1つの親水性部分(例えば、少なくとも1つの水分散性基)を有するポリマーを指す。
【0029】
[0030] 「食品接触面」という用語は、食品若しくは飲料製品と接触する物品又は接触するのに適した物品(例えば、食品若しくは飲料用容器)の表面を指す。
[0031] 同じであっても異なってもよい基は、「独立して」何かであると呼ばれる。本発明において用いられる化合物の有機基に対する置換が企図される。本願全体で使用される所定の用語の詳細説明及び引用を簡略化するために、用語「基」及び「部分」は、置換され得る、又は置換されていてもよい化学種と、かように置換され得ない、又は置換され
ていなくてもよい化学種とを区別するために使用される。したがって、「基」という用語が化学置換基の説明に使用されている場合、説明される化学物質には、非置換基、及び(アルコキシ基中のように)例えば鎖中にO、N、Si又はS原子を有する基、並びにカルボニル基又は他の従来の置換が包含される。「部分」という用語が化学化合物又は置換基の説明に使用されている場合、非置換化学物質だけを含むことが意図されている。例えば、「アルキル基」という語句は、メチル、エチル、プロピル、t-ブチル及び同様物等の純粋な開鎖飽和炭化水素アルキル置換基のみでなく、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルスルホニル、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル等の当技術分野にて既知の更なる置換基を支持するアルキル置換基も含むことを意図する。故に、「アルキル基」は、エーテル、ハロアルキル、ニトロアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、スルホアルキル、及び同様の基を含む。一方、語句「アルキル部分」は、純粋な開放した鎖からなる飽和の炭化水素基である、メチル、エチル、プロピル、t-ブチル及び同様物等のアルキル置換基のみを含むように限定される。本明細書で使用するとき、「基」という用語は、特定の部分、並びにその部分を含む広範な種類の置換及び非置換構造の詳細説明の両方であることが意図される。
【0030】
[0032] 「ラテックスポリマー」という用語は、分散液又は乳化液を形成するために存在が必須である、水、及び1つ以上の二次的な分散剤又は乳化剤(例えば、上述した乳化ポリマー、界面活性剤、又はそれらの混合物)の存在下で形成されたポリマー粒子の分散液又は乳化液を指す。二次的な分散剤又は乳化剤は、通常、ポリマー形成後にポリマーから分離されるが、本明細書で開示される乳化ラテックスポリマーの実施形態においてのように、形成した乳化ラテックスポリマー粒子の一部となってもよく、又はその一部となっているように見えてもよい。
【0031】
[0033] 別途記載のない限り、「(メタ)アクリレート」化合物(「メタ」が括弧付きの場合)への言及は、アクリレート、メタアクリレート、又はその両方の化合物を含むことを意味する。
【0032】
[0034] 「遊離型」という用語は、化合物に関して使用される場合、最終用途に応じて、幾つかの規定された条件一式に関して、(典型的には、約1mg/cm2のコーティング重量で)硬化された組成物を試験媒体に曝露したときに、硬化された組成物から化合物が抽出可能であることを意味する。これらの試験条件の一例は、硬化したコーティングをHPLCグレードのアセトニトリルに25℃にて24時間曝露するというものである。
【0033】
[0035] 「マルチコートコーティング系」という用語は、少なくとも2つの層を含むコーティング系を指す。対照的に、本明細書で使用される場合、「モノコートコーティング系」は、単一の層のみを含むコーティング系を指す。
【0034】
[0036] 「上に」という用語は、表面若しくは基材上に塗布されたコーティングという文脈で使用される場合、表面若しくは基材に直接塗布されたコーティングと、間接的に塗布されたコーティングとの両方を含む。したがって、例えば、基材を覆っている下塗り層に塗布されたコーティングは、基材上に塗布されたコーティングを構成する。
【0035】
[0037] 「有機基」という用語は、脂肪族基、環式基、又は脂肪族基と環式基との組み合わせ(例えば、アルカリル基とアラルキル基)として分類される炭化水素基(酸素、窒素、硫黄、及びケイ素等、炭素及び水素以外の所望による元素を有する)を意味する。
【0036】
[0038] 本明細書で使用される場合、「フェニレン」という用語は、任意の置換基(例えば、ハロゲン原子、酸素原子、炭化水素基、ヒドロキシル基等を含む)を有することができる、6個の炭素原子のアリール環(例えば、ベンゼン基におけるような)を指す。し
たがって、例えば、次のアリール基、即ち、-C6H4-、-C6H3(CH3)-、及び-C6H(CH3)2Cl-は、各々フェニレン環である。加えて、例えば、ナフタレン基のそれぞれのアリール環はフェニレン環である。
【0037】
[0039] 「ポリマー」という用語は、ホモポリマー及びコポリマー(例えば、2つ以上の異なるモノマーのポリマー)の両方を含む。
[0040] 「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、特定の状況下で特定の利点をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかし、同一の又は他の状況下において、他の実施形態も好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを暗示するものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものでもない。
【0038】
[0041] コーティング組成物又は硬化若しくは固化されたコーティングに関して使用される場合、特定の結合型若しくは遊離型化合物を「実質的に含まない」という用語は、組成物又はコーティングが、1000百万分率(ppm)未満の記載の化合物を含むことを意味する。同様に、特定の結合型若しくは遊離型化合物を「本質的に含まない」という用語は、組成物又はコーティングが、100百万分率(ppm)未満の記載の化合物を含むことを意味する。特定の結合型若しくは遊離型化合物を「本質的に完全に含まない」という用語は、組成物又はコーティングが、5百万分率(ppm)未満の記載の化合物を含むことを意味し、特定の結合型若しくは遊離型化合物を「完全に含まない」という用語は、組成物又はコーティングが、20十億分率(ppb)未満の記載の化合物を含むことを意味する。上記語句が「遊離型」という用語を伴うことなく使用される場合は(例えば、「XYZ化合物を実質的に含まない」のように)、化合物が、固化若しくは硬化されたコーティング中で遊離可能であるか、固化若しくは硬化されたコーティングの構成成分に結合しているかに関わらず、本開示の組成物及びコーティングは、上記した化合物の量未満の量を含む。
【0039】
[0042] 「水分散性基」という用語は、かかる基を有するポリマーの水性媒体への分散又は溶解を補助する基を指す。したがって、この用語は、水可溶化基を包含する。
[0043] 「水分散性」ポリマーは、通常の貯蔵温度で少なくとも1ヶ月の保存安定性を有するポリマー粒子の水性分散液又は乳化液を得るために、二次的な分散剤又は乳化剤の使用を必要とすることなく、それ自体で水と組み合わされることが可能なポリマーを意味する。
【0040】
[0044] 端点による数値範囲の列挙には、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。
[0045] 本発明の上の「発明の概要」は、本発明のそれぞれの開示された実施形態又は全ての実施を記載することを意図したものではない。以下の記載により、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願の幾つかの箇所で、実施例の一覧として説明を提供するが、実施例は様々な組み合わせにて使用することが可能である。いずれの場合にも、記載した一覧は、代表的な群としてのみ役立つものであり、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[0046] 開示されるエチレン性不飽和モノマー成分は、様々なモノマーを使用することができる。好ましいモノマーは、水性媒体中で、フリーラジカルで開始される重合が可能である。エチレン性不飽和モノマー成分は、好ましくは、モノマーの混合物を含み、好ましくは、少なくとも1つのオキシラン官能性エチレン性不飽和モノマー(例えば、少なくとも0.1重量%、より好ましくは、少なくとも1重量%、更により好ましくは、少なくとも2重量%の、オキシラン官能性エチレン性不飽和モノマー)を含み、より好ましくは
、少なくとも1つのオキシラン官能性α、β-エチレン性不飽和モノマーを含む。少なくとも0.1重量%の上記オキシラン官能性モノマーの存在は、ラテックスの安定性に寄与し得る。オキシラン官能性モノマーはまた、分散された粒子中、硬化の間の、架橋にも寄与してもよく、それによって、ポリマー性ラッテクスを配合したコーティング組成物のより良好な特性が得られる。エチレン性不飽和モノマー成分は、モノマー混合物の重量に基づいて、好ましくは、30重量%以下の、より好ましくは、25重量%以下の、更により好ましくは、20重量%以下の、所望により、15重量%以下の、オキシラン官能性モノマーを含む。典型的には、モノマー混合物中、30重量%を超えるオキシラン官能性モノマーは、フィルム特性の低減に寄与し得る。理論によって限定されることを意図しないが、これは、過剰な架橋により引き起こされる脆化に起因するものと考えられる。幾つかの実施形態では、モノマー混合物は、1重量%超の、2重量%超の、3重量%超の、又は5重量%若しくはそれ以上の、オキシラン官能基含有モノマーを含む。
【0042】
[0047] 好適なオキシラン官能性エチレン性不飽和モノマーは、反応性炭素-炭素二重結合及びオキシラン(即ち、グリシジル)基を有するモノマーを含む。典型的には、モノマーは、α、β-不飽和酸、又はその無水物(即ち、オキシラン官能α、β-エチレン性不飽和モノマー)のグリシジルエステルである。好適なα、β-不飽和酸としては、モノカルボン酸及びジカルボン酸が挙げられる。このようなカルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α-クロロアクリル酸、α-シアノアクリル酸、β-メチルアクリル酸(クロトン酸)、α-フェニルアクリル酸、β-アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、α-クロロソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、p-クロロケイ皮酸、β-ステアリルアクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、トリカルボキシエチレン、無水マレイン酸、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
[0048] グリシジル基を含有する好適なモノマーの特定の例は、グリシジル(メタ)アクリレート(即ち、グリシジルメタクリレート及びグリシジルアクリレート)、モノ及びジグリシジルイタコネート、モノ及びジグリシジルマレエート、並びにモノ及びジリシジルホルメートである。アリルグリシジルエーテル及びビニルグリシジルエーテルを、オキシラン官能性モノマーとして用いてもよい。好ましいモノマーは、グリシジルアクリレート(「GA」)及びグリシジルメタクリレート(「GMA」)であり、幾つかの実施形態では、GMAが特に好ましい。
【0044】
[0049] 好ましくは、オキシラン官能性エチレン性不飽和モノマーは、エチレン性不飽和部位を介して(例えば、ビニル基を介して)、エチレン性不飽和成分内の好適な他のモノマーと反応する。このような他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート(例えば、アルキル、シクロアルキル、若しくはアリール(メタ)アクリレート)、ビニルモノマー、マレイン酸アルキルエステル若しくはフマル酸アルキルエステル等が挙げられる。好適な(メタ)アクリレートは、式CH2=C(R1)-CO-OR2を有するものを含み、式中、R1は、水素又はメチルであり、R2は、好ましくは、1~16個の炭素原子を含有する、アルキル、シクロアルキル、又はアリール基である。R2基は、1個以上、典型的には、1~3個の部分、例えば、ヒドロキシ、ハロ、フェニル、及びアルコキシ部分で置換され得る。したがって、好適な(メタ)アクリレートは、例えば、ヒドロキシル官能性アルキル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル官能性(メタ)アクリレートを包含する。好ましい実施形態では、エチレン性不飽和モノマー成分は、少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートを含む。
【0045】
[0050] 幾つかの実施形態では、実質的な部分(例えば、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、又は少なくとも30重量%)のエチレン性不飽和モノマー成分は、1つ以上の(メタ)アクリレート、より好ましくは、1つ以上のアルキル(メタ)アクリレ
ートを構成する。幾つかの実施形態では、最大約50重量%、最大約40重量%、又は最大約35重量%の、エチレン性不飽和モノマー成分は、1つ以上の上記(メタ)アクリレートを構成する。(メタ)アクリレートは、典型的には、アクリル酸若しくはメタクリル酸のエステルである。好ましくは、R1は、水素又はメチルであり、R2は、2~8個の炭素原子を有するアルキル基である。最も好ましくは、R1は、水素又はメチルであり、R2は、2~4個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0046】
[0051] 好適な(メタ)アクリレートの例としては、限定されるものではないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシエチルメタアクリレート(HEMA)、及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(HPMA)が挙げられる。
【0047】
[0052] 二官能性(メタ)アクリレートモノマーが、モノマー混合物中で用いられてもよい。例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート等の、フリーラジカル開始重合において反応可能な2つの炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0048】
[0053] 好適なビニルモノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、ハロスチレン、イソプレン、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、共役ブタジエン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、及びそれらの混合物が挙げられる。スチレンは、一部には、比較的低コストであるということと、以下で議論されるように、そのTg増強特性のために、現在のところ、好ましいビニルモノマーである。
【0049】
[0054] エチレン性不飽和モノマー成分において使用するための他の好適な重合性ビニルモノマーとしては、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルステアレート、N-イソブトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0050】
[0055] 混合物中の他のモノマー(複数可)は、モノマー成分の残りの部分、即ち、モノマー混合物の合計重量に基づいて、70重量%~99.9重量%、好ましくは、80重量%~99重量%を構成する。好ましくは、少なくとも5重量%のエチレン性不飽和モノマー成分、より好ましくは、少なくとも10重量%又は少なくとも20重量%のエチレン性不飽和モノマー成分が、(メタ)アクリレートから選択され、より好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートから選択される。好ましくは、少なくとも5重量%、より好ましくは、少なくとも10重量%が、ビニル芳香族化合物から選択される。
【0051】
[0056] 現在のところ好ましい実施形態では、エチレン性不飽和モノマー成分は、いかなるアクリルアミド型モノマー(例えば、アクリルアミド又はメタアクリルアミド)も含まない。
【0052】
[0057] 上記したように、硬化されたコーティングフィルムは、少なくとも約40℃のTgを有する。幾つかの実施形態では、望ましくは、エチレン性不飽和モノマー成分、乳
化ポリマー、及び他のモノマーが、選択され、最終的な硬化されたコーティングフィルムが、約50℃超、より好ましくは、約60℃超、更により好ましくは、約70℃超、幾つかの実施形態では、約80℃超の、Tgを有するのに十分な量で使用される。複数のガラス転移温度値が観察された場合は、これらの列挙された値は、観察されたTgの最大値又は最小値に基づいてもよく、好ましくは、観察されたTgの最大値に基づいてもよい。望ましくは、オキシレン官能性モノマー及び他のモノマーも、選択され、最終的な硬化されたコーティングフィルムが、約120℃未満、好ましくは、約115℃未満、より好ましくは、約110℃未満、幾つかの実施形態では、約100℃未満の、Tgを有するのに十分な量で使用される。複数のガラス転移温度値が観察された場合は、これらの列挙された値は、観察されたTgの最大値又は最小値に基づいてもよく、好ましくは、観察されたTgの最小値に基づいてもよい。幾つかの実施形態では、上記された値は、最終的な硬化されたコーティングフィルムのTgに影響を及ぼし得る他の成分(例えば、癒合剤、界面活性剤、及び他の材料)を用いることなく作製されたフィルムについて決定されてもよい。
【0053】
[0058] ポリマーのTg値は、Fox方程式を用いて推定することができる:
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+...WN/TgN
式中、1、2、...Nは、ポリマーが作製される個々のモノマーを表し;W1、W2、...WNは、合算すると1になり、また、ポリマーが作製される各モノマーの重量分率を表し;Tg1、Tg2、...TGNは、ポリマーが作製された各モノマーのホモポリマーについての、ケルビン度でのガラス転移温度を表し、Tgは、ポリマーのガラス転移温度推定値である。Tg値はまた、硬化したポリマーフィルムの熱挙動を評価するために、例えば、動的機械分析(DMA)又は示差走査熱量測定(DSC)を使用することにより、測定することができる。
【0054】
[0059] 乳化ラテックスポリマーTgにおける増大は、高Tgホモポリマーを有するモノマーの実質的な部分(複数可)を含むエチレン性不飽和モノマー成分を用いて成分ポリマーを作製することにより、得ることができる。例示的なこのようなモノマー及びそれらのホモポリマーのTg値には、イソブチルメタクリレート(53℃、326°K)、ベンジルメタクリレート(54℃、327°K)、sec-ブチルメタクリレート(60℃、333°K)、エチルメタクリレート(65℃、338°K)、イソプロピルメタクリレート(81℃、354°K)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(90℃、363°K)、シクロへキシルメタクリレート(92℃、365°K)、イソボルニルアクリレート(94℃、367°K)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(98℃、371°K)、ジエチレングリコールジアクリレート(100℃、373°K)、スチレン(100℃、373°K)、1,3-ブチレングリコールジアクリレート(100℃、374°K)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(103℃、376°K)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(103℃、376°K)、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(103℃、376°K)、ジプロピレングリコールジアクリレート(104℃、377°K)、メチルメタクリレート(105℃、378°K)、アクリル酸(106℃、379°K)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(107℃、380°K)、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート(110℃、383°K)、イソボルニルメタクリレート(110℃、383°K)、フェニルメタクリレート(110℃、383°K)、tert-ブチルメタクリレート(118℃、391°K)、メタクリル酸(228℃、501°K)、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(272℃、545°K)が含まれる。
【0055】
[0060] 好ましくは、エチレン性不飽和モノマー成分(即ち、成分ポリマーが形成される由来のモノマー)は、乳化ラテックスポリマーの少なくとも40重量%、より好ましくは、少なくとも50重量%である。好ましくは、エチレン性不飽和モノマー成分は、乳化ラテックスポリマーの80重量%以下、より好ましくは、70重量%以下である。このよ
うな割合は、エチレン性不飽和モノマー成分及び乳化ポリマーの合計重量に基づく。
【0056】
[0061] 種々のポリマーを、本開示の乳化ポリマーとして用いることができる。好ましくは、乳化ポリマーは、水性媒体中のエチレン性不飽和成分の効率的な重合を促進するために、好適な数の水分散性基を含む。好ましい乳化ポリマーは、適切なアミン又は他の好適な塩基(好ましくは、コーティング硬化時にコーティングから相当に揮発する「散逸性の」塩基)を用いて中和又は部分中和することが可能であり、水性媒体中に溶解又は安定的に分散することが可能である塩を形成する、酸含有又は無水物含有のポリマーである。好ましい酸含有ポリマーは、ポリマー1グラム当たり、少なくとも40ミリグラム(mg)の、より好ましくは、少なくとも100ミリグラム(mg)のKOHの酸価を有する。好ましい酸含有ポリマーは、ポリマー1グラム当たり、400mg以下の、より好ましくは、300グラムmg以下のKOHの酸価を有する。無水物含有ポリマーは、水中にある場合、好ましくは、同様の下限及び上限を有する酸価を有する。酸乳化ポリマーの酸価と、乳化ポリマーに対する成分ポリマーの比率は、相関しているようであり、最終的な乳化ラテックスポリマー中により少量の乳化ポリマーが存在する場合、より高い酸価を有する乳化ポリマーが好ましい。
【0057】
[0062] 乳化ポリマーは、少なくとも約8,500の、好ましくは、少なくとも約9,000の、より好ましくは、少なくとも約9,500の、最も好ましくは、少なくとも約10,000のMnを有する。理論的により限定されることを意図しないが、増大した乳化ポリマーの分子量は、限界範囲内に現れ、本開示のコーティング組成物における硬化後の可撓性の改善に寄与し、それにより、Tgの増加によって生じ得る可撓性の低下を相殺する。好ましくは、乳化ポリマーは、約50,000以下の、又は約40,000以下の、Mn値を有する。
【0058】
[0063] 好ましい乳化ポリマーには、従来のフリーラジカル重合技術により、不飽和酸又は無水物官能性モノマー、それらの塩、及び他の不飽和モノマーから調製されたものが含まれる。これらのうち、更に好ましい例には、少なくとも15重量%の、より好ましくは、少なくとも20重量%以上の、幾つかの実施形態では、30重量%又はそれ以上の、酸若しくは無水物官能性モノマー、又はそれらの塩、及び残りの他の重合性不飽和コモノマーから調製されたものが含まれる。他の好ましい例には、60重量%未満の、より好ましくは、55重量%未満の、幾つかの実施形態では、50重量%未満の、不飽和酸若しくは無水物官能性モノマー、又はそれらの塩から調製されたものが含まれる。様々な酸若しくは無水物官能性モノマー、又はそれらの塩を使用することができる。これらの選択は、所望の最終的な乳化ラテックスポリマーの特性に依存する。好ましくは、このようなモノマーは、エチレン性不飽和であり、より好ましくは、α、β-エチレン性不飽和である。好適なエチレン性不飽和酸又は無水物官能性モノマーとしては、反応性炭素-炭素二重結合及び酸性若しくは無水物基を有するモノマー、又はその塩が挙げられる。好ましいこのようなモノマーは、3~20個の炭素、少なくとも1部位の不飽和、及び少なくとも1個の酸若しくは無水物基、又はその塩を有する。
【0059】
[0064] 好適な酸官能性モノマーとしては、エチレン性不飽和一塩基及び二塩基酸、並びに二塩基酸の無水物及びモノエステルが挙げられる。好ましくは、選択されたモノマーは、乳化ポリマーを調製するために使用される任意の他のモノマー(複数可)と容易に共重合できる。例示的な一塩基酸は、式CH2=C(R3)COOH(式中、R3は、水素であるか、又は1~6個の炭素原子のアルキルラジカルである)によって表されるものを含む。例示的な二塩基酸は、式R4(COOH)C=C(COOH)R5及びR4(R5)C=C(COOH)R6COOH(式中、R4及びR5は、水素、1~8個の炭素原子のアルキルラジカル、ハロゲン、3~7個の炭素原子のシクロアルキル基、又はフェニルであり、R6は、1~6個の炭素原子のアルキレンラジカルである)によって表されるも
のを含む。これらの酸と1~8個の炭素原子のアルカノールとの半エステルが使用されてもよい。
【0060】
[0065] 有用なエチレン性不飽和酸官能性モノマーの非限定的な例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α-クロロアクリル酸、α-シアノアクリル酸、クロトン酸、α-フェニルアクリル酸、β-アクリルオキシプロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、ソルビン酸、α-クロロソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、p-クロロケイ皮酸、β-ステアリルアクリル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、トリカルボキシエチレン、2-メチルマレイン酸、イタコン酸、2-メチルイタコン酸、メチレングルタル酸、及びこれに類するもの等の酸、又はこれらの混合物が挙げられる。好ましい不飽和酸官能性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2-メチルマレイン酸、イタコン酸、2-メチルイタコン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。より好ましい不飽和酸官能性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。最も好ましい不飽和酸官能性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。所望の場合、上記酸の水性塩も使用してもよい。
【0061】
[0066] 好適なエチレン性不飽和無水物モノマーの非限定的な例としては、上記酸に由来する化合物が挙げられる(例えば、純粋な無水物又はそれらの混合物として)。好ましい無水物としては、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、及びマレイン酸無水物が挙げられる。
【0062】
[0067] 酸又は無水物官能性ポリマーを形成するためのモノマーの重合は、通常、フリーラジカル開始剤の存在下で、有機溶液重合技術によって行われる。酸官能性又は無水物官能性ポリマーの調製は、溶液中で簡便に実施されるが、所望の場合には、水中で実施されるニートプロセス(複数可)を使用してもよい。
【0063】
[0068] 好ましくは、酸又は無水物官能性ポリマーは、酸官能性アクリルポリマーである。しかし、酸若しくは無水物官能性アクリル乳化ポリマーに加えて、又は、その代わりとして、酸若しくは無水物官能性アルキド、ポリエステル若しくはポリウレタンポリマー、ポリオレフィンポリマー、又はこれらの組み合わせに基づく乳化ポリマーを、本発明の実施に用いることもできる。米国特許第3,479,310号、同第4,147,679号、及び同第4,692,491号に記載されているポリマー等が用いられてもよいが、約8,500より大きいMnを有する乳化ポリマーを提供するために、適切な選択又は修飾が行われる。
【0064】
[0069] ポリマーの酸基(酸官能性ポリマー中に最初から存在していたか、又は無水物官能性ポリマーを水へ添加する際に形成されたかのいずれか)又は他の水分散性(例えば、アニオン性塩を形成する)基を、例えば、アミン、好ましくは、第三級アミン等の好適な塩基を用いて、中和又は部分的に中和することにより、乳化ポリマーの塩(完全な塩若しくは部分的な塩であり得る)が形成されてもよい。好適な第三級アミンの幾つかの例は、トリメチルアミン、ジメチルエタノールアミン(ジメチルアミノエタノールとしても既知である)、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルメチルエタノールアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチル3-ヒドロキシ-1-プロピルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチル2-ヒドロキシ-1-プロピルアミン、ジエチルメチルアミン、ジメチル1-ヒドロキシ-2-プロピルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルホリン、及びこれらの混合物である。最も好ましくは、トリエチルアミン又はジメチルエタノールアミンが第三級アミンとして使用される。
【0065】
[0070] 所望のポリマー塩を形成するために必要とされる中和の程度は、ポリマー中に含まれる酸又は他の水分散性基の量、及び所望される塩の溶解性又は分散性の程度に依存して、かなり変動し得る。通常、乳化ポリマーを水分散性とする際には、ポリマー中の酸基又は他の水分散性基は、水中のアミンを用いて、少なくとも25%中和され、好ましくは、少なくとも30%中和され、より好ましくは、少なくとも35%中和される。好ましくは、乳化ポリマーは、十分な数の酸基、無水物基、又は他の水分散性基を含み、中和の際に、安定した水性分散液を形成する。
【0066】
[0071] 開示された水分散性基は、酸又は無水物基の代わりに、又はそれらに加えて、使用されてもよい。このような水分散性基の更なる議論については、例えば、米国特許第4,147,679号を参照されたい。アニオン性塩の基の幾つかの更なる例としては、サルファート(sulphate)基(-OSO3
-)、ホスフェート基(-OPO3
-)、スルホナート基(-SO2O-)、ホスフィナート基(-POO-)、ホスホナート基(-PO3
-)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適なカチオン性塩の基の幾つかの例としては、
【0067】
【0068】
[それぞれ、第4級アンモニウム基、第4級ホスホニウム基、及び第三級サルフェート(sulfate)基と称される]、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。非イオン性水分散
性基の幾つかの例としては、エチレンオキサイド基等の親水性基が挙げられる。上述の基をポリマーに導入するための化合物は、当該技術分野において既知である。アニオン性塩の基を形成するための中和用塩基の幾つかの更なる例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニア、及びこれらの混合物等の、無機及び有機塩基が挙げられる。カチオン性塩の基を形成するための中和用化合物の幾つかの例としては、ギ酸、酢酸、塩酸、硫酸、及びこれらの組み合わせ等の、有機及び無機酸が挙げられる。
【0069】
[0072] 酸官能性又は無水物官能性乳化ポリマーを中和するための塩の量は、少なくとも5重量%、より好ましくは、少なくとも10重量%、更により好ましくは、少なくとも15重量%である。酸官能性又は無水物官能性乳化ポリマーを中和するための塩の量は、好ましくは、95重量%以下、より好ましくは、50重量%以下、更により好ましくは、40重量%以下である。これらの割合は、重合性エチレン性不飽和モノマー成分と乳化ポリマーの塩との合計重量に基づく。乳化ポリマーが中和された酸又は無水物基以外の水分散性基を含む実施形態では、重合に使用されるポリマーの総量は、典型的には、上記パラメータの範囲内となり、上記パーセンテージは、エチレン性不飽和モノマー成分及び乳化ポリマーの合計重量に基づくに基づく。
【0070】
[0073] 理論により拘束されることを意図しないが、第三級アミンとオキシラン基含有物質との反応は、水の存在下で実施される場合に、水酸基と第四級水酸化アンモニウムの両方を含有する生成物をもたらすことができる。好ましい条件下では、酸基、オキシラン基、及びアミンは、第四級塩を形成する。この結合は、ポリマー鎖を結合する(例えば、架橋する)だけでなく、得られる結合鎖の水分散性を促進するために、好ましい。酸基とオキシラン基がエステルを形成し得ることも、留意すべきである。幾つかのエステル形成反応が起こり得るが、水分散性が求められる場合には、好ましいものではない。
【0071】
[0074] 反応の正確なモードが十分に理解できない場合は、2つの反応の間で競合が生じている可能性があると考えられる。しかし、これは限定を意図するものではない。好ましい実施形態では、1つの反応は、オキシラン官能性モノマー又はポリマーと反応して、第四級アンモニウム塩を形成する、第三級アミンに中和された酸官能性ポリマーを含む。第2の反応は、オキシラン官能性モノマー又はポリマーとカルボン酸又は塩とのエステル化を含む。理論により拘束されることを意図しないが、水の存在及びアミンのレベルが、エステル結合よりも、第四級アンモニウム塩の形成に好ましいと考えられる。高レベルの四級化は水分散性を向上させる一方で、高レベルのエステル化は、より高い粘度及び場合によりゲル状材料をもたらす。
【0072】
[0075] 好ましくは、乳化ポリマーは、乳化ラテックスポリマーの少なくとも20重量%、より好ましくは、少なくとも30重量%である。好ましくは、乳化ポリマーは、乳化ラテックスポリマーの60重量%以下、より好ましくは、50重量%以下である。このような割合は、エチレン性不飽和モノマー成分及び乳化ポリマーの合計重量に基づく。
【0073】
[0076] 乳化重合の条件に関して、エチレン性不飽和モノマー成分は、好ましくは、酸又は無水物官能性乳化ポリマーの存在下において、水溶性フリーラジカル開始剤を用いて水性媒体中で重合する。
【0074】
[0077] 重合温度は、典型的には、0~100℃、好ましくは、30~90℃である。開始を熱的に引き起こす場合には、70~90℃の重合温度、より好ましくは、80~85℃の重合温度が好ましい。開始をレドックス系により化学的に引き起こす場合には、30~60℃の重合温度、更により好ましくは、40~50℃の重合温度が好ましい。水性媒体のpHは、通常、5~12のpHに維持される。
【0075】
[0078] フリーラジカル反応開始剤として作用することが知られている1つ以上の水溶性ペルオキシドから、フリーラジカル反応開始剤を選択することができる。例としては、過酸化水素及びt-ブチルヒドロペルオキシドが挙げられる。当該技術分野において周知の他のレドックス反応開始剤系(例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、エリソルビン酸、及び第一鉄錯体)を使用することもできる。幾つかの実施形態では、ベンゾインと過酸化水素との混合物を用いることが特に好ましい。使用することができる重合開始剤の更なる例としては、重合温度で熱分解してフリーラジカルを発生する重合開始剤が挙げられる。例えば、水溶性及び水不溶性の種の両方が含まれ、例えば、(2,2’-アゾ-ビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾ-ビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、及び1-t-ブチル-アゾシアノシクロヘキサン;上記で既に言及したもの以外のヒドロペルオキシド、例えば、t-アミルヒドロペルオキシド、メチルヒドロペルオキシド、及びクメンヒドロペルオキシド;過酸化物、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化カプリリル、ジ-t-ブチルペルオキシド、エチル3,3’-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブチレート、エチル3,3’-ジ(t-アミルペルオキシ)ブチレート、t-ブチルペルオキシ-2-エチヘキサノエート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、及びt-ブチルペルオキシピビレート(pivilate);過酸エステル(過酢酸t-ブチル、過フタル酸t-ブチル、及び過安息香酸t-ブチル等);だけでなく、過炭酸塩(ジ(1-シアノ-1-メチルエチル)ペルオキシジカーボネート等);過リン酸塩、及びこれに類するもの;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。アンモニウム又はアルカリ金属(カリウム、ナトリウム、又はリチウム)過硫酸塩のような過硫酸塩開始剤を使用してもよいが、硬化コーティング中の耐水性が不良となり、それ故に、好ましくない。
【0076】
[0079] 重合開始剤は、単独で又はレドックス系の酸化成分として用いることができ、これは、好ましくは、例えば、アスコルビン酸、リンゴ酸、グリコール酸、シュウ酸、乳酸、チオグリコール酸、又はアルカリ金属亜硫酸塩等の還元成分も含み、より具体的には
、ヒドロ亜硫酸塩、次亜硫酸塩、又はメタ重亜硫酸塩(ヒドロ亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸カリウム、及びメタ重亜硫酸カリウム等)、又はホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、並びにこれらの組み合わせも含む。還元成分は、促進剤又は触媒活性化剤と称されることが多い。
【0077】
[0080] 反応開始剤及び促進剤は、好ましくは、共重合するモノマーの重量に基づいて、それぞれ約0.001%~5%の割合で使用される。所望の場合には、コバルト、鉄、ニッケル、又は銅の塩化物及び硫酸塩等のプロモーターを少量用いることができる。レドックス触媒系の他の例としては、tert-ブチルヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム/Fe(II)、及び過硫酸アンモニウム/重亜硫酸ナトリウム/ヒドロ亜硫酸ナトリウム/Fe(II)が挙げられる。必要に応じて、連鎖移動剤を使用してポリマーの分子量を制御することもできる。
【0078】
[0081] 乳化ポリマー塩の水性分散液の存在下でのエチレン性不飽和モノマー成分の重合は、バッチ、間欠、又は連続操作として実行されてもよい。重合成分は、全て最初に重合容器に投入されてもよく、又は比例技法を用いて計量されてもよい。いずれかのアプローチを実施するための手順は、当該技術分野の当業者に周知である。好ましくは、重合開始前に、成分の全て、又は実質的に全てを、重合容器に投入する。
【0079】
[0082] 上述したように、特定の実施形態では、乳化ポリマー塩の水性分散液の存在下にて、エチレン性不飽和モノマー成分を重合するために、「バッチ」プロセスが用いられてもよい。いずれの理論にも拘束されることを意図していないが、エチレン性不飽和モノマー成分のバッチ重合は、高分子量の乳化ラテックスポリマーをもたらすことができ、これは、例えば、飲料用端部コーティング等の特定のコーティング端部について望ましい性能特性を付与し得る。特定の好ましい実施形態では、成分ポリマーは、乳化ポリマーを伴うことなくそれ自体が考慮されるならば、少なくとも約75,000の、より好ましくは、少なくとも約150,000の、更により好ましくは、少なくとも約250,000のMnを有する。成分ポリマーのMnについての上限は、特に制約がないが、1,000,000以上であってもよい。しかし、特定の実施形態では、成分ポリマーのMnは、約1,000,000未満、又は約600,000未満である。幾つかの実施形態(例えば、成分ポリマーのバッチ重合が用いられる場合)では、成分ポリマーは、少なくとも約75,000の、より好ましくは、少なくとも約150,000の、更により好ましくは、少なくとも約250,000のMnを示す。
【0080】
[0083] 開示される本コーティング組成物は、好ましくは、少なくともフィルム形成量の乳化ラテックスコポリマーを含む。典型的には、乳化ラテックスポリマーは、主要物であり(例えば、コーティング組成物中の樹脂固形分総量の50重量%超、80重量%超、又は90重量%超である)、また、コーティング組成物中、排他的なフィルム形成ポリマーである。好ましい実施形態では、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対する乳化ラテックスポリマー固形分の重量に基づいて、少なくとも約5重量%の、より好ましくは、少なくとも約15重量%の、更により好ましくは、少なくとも約25重量%の、乳化ラテックスポリマーを含む。好ましくは、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対する乳化ラテックスポリマー固形分の重量に基づいて、約65重量%未満の、より好ましくは、約55重量%未満の、更により好ましくは、約45重量%未満の、乳化ラテックスポリマーを含む。
【0081】
[0084] 前述の乳化ラテックスポリマーを使用するコーティング組成物は、1つ以上の任意の硬化剤(即ち、架橋樹脂、「架橋剤」と呼ばれる場合もある)を使用して配合され得ることが見出されている。得られる架橋型乳化ラテックスポリマーは、好ましいサブクラスを表す。架橋の程度は、単に部分的であってもよく、水性担体中に分散され、基材上
にコーティングされ、癒合されて、フィルムを形成することのできるポリマーをもたらすが、有機溶媒中に溶解された場合には、ゲルを形成し、これは、分子量測定のためのクロマトグラフィカラムを通過しない。特定の架橋剤の選択は、典型的には、調合されている特定の生成物に依存する。例えば、幾つかのコーティング組成物は、濃く着色される(例えば、金色のコーティング)。これらのコーティングは、典型的には、それ自体が黄色みを帯びた色を有する傾向がある架橋剤を使用して処方されてもよい。対照的に、白色コーティングは、一般的に、非黄変架橋剤を使用して、又は黄変架橋剤を少量のみ使用して処方される。好ましい硬化剤は、遊離型又は結合型BPA、BPF、BPS、及びそれらのエポキシド、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(「BADGE」)、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(「BFDGE」)、及びエポキシノボラックを実質的に含まない。
【0082】
[0085] 幾つかの実施形態では、コーティング組成物は、外部架橋剤を使用することなく(例えば、フェノール性架橋剤なしで)硬化されてもよい。更に、コーティング組成物は、ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド含有化合物を実質的に含んでいなくてもよく、これらの化合物を本質的に含んでいなくてもよく、これらの化合物を本質的に完全に含んでいなくてもよく、これらの化合物を完全に含んでいなくてもよい。
【0083】
[0086] 周知のヒドロキシル反応性硬化性樹脂のいずれを使用することもできる。例えば、フェノプラスト及びアミノプラスト硬化剤を使用してもよい。
[0087] フェノプラスト樹脂は、アルデヒドとフェノールとの縮合生成物を含む。ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドが、好ましいアルデヒドである。様々なフェノール、例えば、フェノール、クレゾール、p-フェニルフェノール、p-tert-ブチルフェノ-ル、p-tert-アミルフェノール、及びシクロペンチルフェノールを使用することができる。
【0084】
[0088] アミノプラスト樹脂は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、及びベンズアルデヒド等のアルデヒドと、尿素、メラミン、及びベンゾグアナミン等のアミノ又はアミド基含有物質との縮合生成物である。
【0085】
[0089] 好適な架橋剤樹脂の例としては、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、エステル化メラミン-ホルムアルデヒド、及び尿素-ホルムアルデヒド樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、架橋剤は、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂であるか、これを含む。特に有用な架橋剤の例としては、Cytec Industries,Inc.からCYMEL(商標)303として市販されている十分にアルキル化したメラミンホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。
【0086】
[0090] 他の一般的に好適な硬化剤の例は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、シクロヘキシル-1,4-ジイソシアネート等の、ブロック型又は非ブロック型の脂肪族、脂環式、又は芳香族の、二価、三価、又は多価のイソシアネートを含む。一般的に好適なブロックイソシアネートの更なる例としては、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートの異性体、及びこれらの混合物が挙げられる。幾つかの実施形態では、少なくとも約300、より好ましくは少なくとも約650、更により好ましくは少なくとも約1,000のMnを有するブロックイソシアネートが使用され得る。
【0087】
[0091] 特定の実施形態では、ポリマー性ブロックイソシアネートが、好ましい。好適なポリマー性ブロックイソシアネートの幾つかの例としては、ジイソシアネートのビウレ
ット又はイソシアヌレート、三官能性「三量体」、又はそれらの混合物が挙げられる。好適なブロック型ポリマー性イソシアネートの例としては、TRIXENE(商標)BI 7951、TRIXENE BI 7984、TRIXENE BI 7963、及びTRIXENE BI 7981(TRIXENE材料は、Baxenden Chemicals、Ltd.、Accrington、Lancashire、Englandから入手可能である)、DESMODUR(商標)BL 3175A、DESMODUR BL3272、DESMODUR BL3370、DESMODUR BL 3475、DESMODUR BL 4265、DESMODUR PL 340、DESMODUR VP LS 2078、DESMODUR VP LS 2117、及びDESMODUR VP LS 2352(DESMODUR材料は、Bayer Corp.、Pittsburgh、PA、USAから入手可能である)、又はそれらの組み合わせが挙げられる。好適な三量体の例としては、平均で3つのジイソシアネート分子から調製された三量体生成物、又は例えばトリオール(例えば、トリメチロールプロパン)等の別の分子の1モルと反応された平均で3モルのジイソシアネート(例えば、HMDI)から調製された三量体を挙げることができる。
【0088】
[0092] 好適なブロッキング剤の例としては、マロネート、例えば、マロン酸エチル、及びマロン酸ジイソプロピル;アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、1-フェニル-3-メチル-5-ピラゾロン、ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5ジメチルピラゾール、ヒドロキシルアミン、チオフェノール、カプロラクタム、ピロカテコール、プロピルメルカプタン、N-メチルアニリン、アミン、例えば、ジフェニルアミン、及びジイソプロピルアミン;フェノール、2,4-ジイソブチルフェノール、メチルエチルケトオキシム、α-ピロリドン、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、及びt-ブチルアルコール;エチレンイミン、プロピレンイミン、ベンゾトリアゾール類、例えば、ベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、6-エチルベンゾトリアゾール、5-クロロベンゾトリアゾール、及び5-ニトロベンゾトリアゾール;メチルエチルケトオキシム(MEKO)、ジイソプロピルアミン(DIPA)、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0089】
[0093] 必要とされる硬化剤(即ち、架橋剤)のレベルは、硬化剤の種類、焼成の時間及び温度、並びに乳化ポリマーの分子量に依存する。架橋剤は、使用される場合、典型的には、最大50重量%の、好ましくは、最大30重量%の、より好ましくは、最大15重量の量で存在する。架橋剤は、使用される場合、少なくとも0.1重量%、より好ましくは、少なくとも1重量%、更により好ましくは、少なくとも1.5重量%の量で存在する。これらの重量パーセンテージは、コーティング用組成物中の樹脂固形物の合計重量に基づいている。
【0090】
[0094] 幾つかの実施形態では、本開示のコーティング組成物は、樹脂固形物の総量に基づいて、少なくとも5重量%のブロック型ポリマー性イソシアネートを含み、より好ましくは、約5~約20重量%のブロック型ポリマー性イソシアネートを含み、更により好ましくは、約10~約15重量%のブロック型ポリマー性イソシアネートを含む。
【0091】
[0095] 本開示のコーティング組成物はまた、コーティング組成物又はそれから得られる硬化コーティング組成物に悪影響を及ぼすことのない、他の任意のポリマーも含み得る。このような任意のポリマーは、典型的には、充填材料としてコーティング組成物中に含有されるが、これらは、架橋材料として、又は所望の特性をもたらすために含有されてもよい。1つ以上の任意のポリマー(例えば、充填剤ポリマー)は、意図された目的を果たすのに十分な量で含有され得るが、コーティング組成物又はそれから得られる硬化コーティング組成物に悪影響を及ぼすような量では含有されない。
【0092】
[0096] このような追加的ポリマーの材料は、非反応性であり得、したがって、充填剤として単純に機能する。このような任意の非反応性充填剤ポリマーとしては、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリエーテル、及びノボラック樹脂が挙げられる。代替的には、このような追加的ポリマー性材料又はモノマーは、組成物の他の材料(例えば、オキシラン官能性乳化ラテックスポリマー)と反応性であり得る。所望する場合、反応性ポリマーを本開示の組成物に組み込むことができ、架橋を含む、様々な目的のために追加の官能性を付与することができる。このような反応性ポリマーの例としては、例えば、官能化ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、及びポリエーテルが挙げられる。好ましい任意のポリマーは、遊離型及び結合型BPA、BPF、及びBPSを実質的に含まず、好ましくは、芳香族グリシジルエーテル化合物(例えば、BADGE、BFDGE、及びエポキシノバラック)も実質的に含まない。
【0093】
[0097] 本開示のコーティング組成物はまた、コーティング組成物又はそれから得られる硬化コーティング組成物に悪影響を及ぼすことのない、他の任意成分を含んでもよい。このような任意成分は、典型的には、組成物の美的外観を高めるために、組成物の製造、処理、取り扱い、及び塗布を容易にするために、そしてコーティング組成物又はそれから得られる硬化コーティング組成物の特定の機能特性を更に向上させるために、コーティング組成物中に含有される。
【0094】
[0098] このような任意成分としては、例えば、触媒、染料、顔料、トナー、増量剤、充填剤、潤滑剤、防錆剤、流れ調整剤、チキソトロープ剤、分散剤、酸化防止剤、接着促進剤、光安定剤、界面活性剤、及びこれらの混合物が挙げられる。各任意成分は、意図する目的に役立つのに十分な量であるが、コーティング組成物又はそれから得られる硬化コーティング組成物に悪影響を及ぼさないような量で含有される。
【0095】
[0099] 1つの好ましい任意成分は、硬化速度を増加させるための触媒である。触媒の例としては、強酸(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA、CytecからCYCAT 600として入手可能)、メタンスルホン酸(MSA)、p-トルエンスルホン酸(pTSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)、トリフルオロメタンスルホン酸(トリフリン酸)、四級アンモニウム化合物、リン化合物、並びにスズ及び亜鉛化合物が挙げられるが、これらに限定されない。具体例としては、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、テトラアルキル又はテトラアリールホスホスニウムヨウ化物又は酢酸塩、オクタン酸スズ、オクタン酸亜鉛、トリフェニルホスフィン、及び当業者に公知の類似の触媒が挙げられるが、これらに限定されない。触媒は、使用される場合、不揮発性材料の重量に基づいて、好ましくは、少なくとも0.01重量%、より好ましくは、少なくとも0.1重量%の量で存在する。触媒は、使用される場合、不揮発性材料の重量に基づいて、好ましくは、3重量%以下、より好ましくは、1重量%以下の量で存在する。
【0096】
[0100] 別の有用な所望の成分は、潤滑剤(例えば、ワックス)であり、これは、コーティングされた金属基材のシートに潤滑性を付与することによって、金属クロージャの製造を容易にする。好ましい潤滑剤としては、例えば、カルナバワックス及びポリエチレンタイプの潤滑剤が挙げられる。潤滑剤は、使用される場合、不揮発性材料の重量に基づいて、好ましくは、少なくとも0.1重量%、好ましくは、2重量%以下、より好ましくは、1重量%以下の量でコーティング組成物中に存在する。
【0097】
[0101] 別の有用な所望の成分は、二酸化チタン等の顔料である。顔料は、使用される場合、コーティング組成物中の固形分の合計重量に基づいて、70重量%以下、より好ましくは、50重量%以下、更により好ましくは、40重量%以下の量で、コーティング組成物中に存在する。
【0098】
[0102] 界面活性剤は、基材の流動性及び湿潤性を補助するために、コーティング組成物に任意に(例えば、乳化ラテックスポリマーが既に形成された後に)添加することができる。界面活性剤の例としては、ノニルフェノールポリエーテル、及び塩、並びに当業者に既知の同様の界面活性剤が挙げられるが、それらに限定されない。界面活性剤は、使用される場合、樹脂固形物の重量に基づいて、好ましくは少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%の量で存在する。界面活性剤は、使用される場合、樹脂固形物の重量に基づいて、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の量で存在する。しかし、界面活性剤は、水感受性、風味変化、又は風味スカルピングの原因となり得るので、界面活性剤の使用を回避するのが好ましい。
【0099】
[0103] 既に論じたとおり、本開示のコーティング組成物は、好ましくは、水を含み、また、1種以上の任意の有機溶媒を更に含んでもよい。好ましくは、コーティング組成物は、コーティング組成物の重量に基づいて、少なくとも約70重量%、より好ましくは、少なくとも約65重量%、更により好ましくは、少なくとも約60重量%の水を含む。幾つかの実施形態では、コーティング組成物は、コーティング組成物の重量に基づいて、少なくとも約60重量%、より好ましくは、少なくとも約50重量%、更により好ましくは、少なくとも約40重量%の水を含む。
【0100】
[0104] 例えば、特定のコイルコーティング塗布等の特定の実施形態では、コーティング組成物は、1種以上の有機溶媒を含むことが好ましい。例示的な溶媒としては、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール(例えば、イソプロパノール)、ブチルアルコール(例えば、n-ブタノール)、及びペンチルアルコール(例えば、アミルアルコール);グリコールエーテル、例えば、2-ブトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル(即ち、Dow Chemical Co.からの、ブチルCELLOSOLVE(商標))、及びジエチレングリコールモノメチルエーテル(即ち、Dow Chemical Co.からの、ブチルCARBITOL(商標));ケトン、例えば、アセトン、及びメチルエチルケトン(MEK);N,N-ジメチルホルミルアミド;カーボネート、例えば、エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネート;ジグリム;N-メチルピロリドン(NMP);アセテート、例えば、酢酸エチル、エチレンジアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、及びグリコールエーテルアセテート;エチレンのアルキルエーテル;イソホロン;芳香族溶媒、例えば、トルエン、及びキシレン;並びにその組み合わせ;が挙げられる。例示的な溶媒の量は、コーティング組成物の重量に基づいて、例えば、少なくとも約10重量%、より好ましくは、少なくとも約20重量%、更により好ましくは、少なくとも約25重量%であり得る。幾つかの実施形態では、コーティング組成物は、コーティング組成物の重量に基づいて、約70重量未満の、より好ましくは、約60重量%未満の、更により好ましくは、約45重量%未満の有機溶媒を含む。いずれかの理論に縛られることを意図しないが、好適な量の有機溶媒を含むことは、特定のコイルコーティング塗布に関して有益であり、コーティング組成物の流動性及び平滑性を修正し、ブリスターを制御し、コイルコーターのライン速度を最大化する。更に、コーティングの硬化時に、有機溶媒の蒸発から発生する蒸気を、硬化オーブンの燃料として使用してもよい。
【0101】
[0105] 特定のスプレーコーティングの塗布(例えば、アルミニウム飲料缶を含む、食品又は飲料用の缶のための内面スプレー)のため等の幾つかの実施形態では、コーティング組成物は、コーティング組成物の合計重量に基づいて、約10重量%超、より好ましくは、約15重量%超、更により好ましくは、約20重量%超の、総固形分含有量を有してもよい。これらの実施形態では、コーティング組成物は、コーティング組成物の合計重量に基づいて、約40重量%未満、より好ましくは、約30重量%未満、更により好ましくは、約25重量%未満の、総固形分含有量を有してもよい。これらの実施形態のうちの幾
つかでは、コーティング組成物は、約18重量%~約22重量%の範囲の総固形分重量を有してもよい。担体(好ましくは、少なくとも一部の有機溶媒を含む水性担体である)は、コーティング組成物の重量の残りの部分を構成してもよい。
【0102】
[0106] 本開示のコーティング組成物の実施形態は、例えば、少なくとも約10重量%の、少なくとも約15重量%の、又は少なくとも約18重量%の、及び最大約30重量%の、最大約25重量%の、又は最大約23重量%の、乳化ラテックスポリマーと、少なくとも約45重量%の、少なくとも約55重量%の、又は少なくとも約60重量%の、及び最大約85重量%の、最大約80重量%の、又は最大70重量%の水と、少なくとも約5重量%の、少なくとも約7重量%の、又は少なくとも約10重量%の、及び最大20重量%の、最大16重量%の、又は最大約13重量%の有機溶媒と、を含んでもよい。
【0103】
[0107] コーティング組成物の粘度は、好ましくは、所与のコーティングの塗布に好適である。幾つかの実施形態では、コーティング組成物は、以下に記載する粘度試験(25℃、フォード粘度カップ#2)に基づいて、約20秒超、より好ましくは、25秒超、更により好ましくは、約40秒超の平均粘度を有してもよい。幾つかの実施形態では、コーティング組成物は、25℃で、フォード粘度カップ#2を用いて、ASTM D1200-88に準じて実施された場合に、約50秒未満、より好ましくは、40秒未満、更により好ましくは、約30秒未満の平均粘度を有してもよい。
【0104】
[0108] 本開示のコーティング組成物は、単層コーティング系の1つの層として存在してもよく、又は多層コーティング系の1つ以上の層として存在してもよい。当該コーティング組成物は、下塗り、中塗り、上塗り、又はこれらの組み合わせとして使用されてもよい。特定の層及びコーティング系全体のコーティング厚さは、使用されるコーティング材料、基材、コーティング塗布方法、及びコーティングされた物品の最終用途に応じて異なることになる。本開示のコーティング組成物から形成される1つ以上の層を含む、単層又は多層コーティング系は、任意の好適な全般的コーティング厚さを有してもよく、典型的には、包装産業分野において一般的に用いられる混合単位を用いて、約1~約20mg/in2(msi)、より典型的には、約1.5~約10msiのコーティング重量で、塗布される。典型的には、剛性金属製の食品又は飲料用缶への塗布のためのコーティング重量は、約1~約6msiであり得る。コーティング組成物をドラム(例えば、食品又は飲料製品と共に使用するためのドラム)上の内部コーティングとして使用する特定の実施形態では、コーティング重量は、約20msiであってもよい。
【0105】
[0109] 剛性の食品若しくは飲料用缶又はそれらの一部分を形成するのに使用される金属基材は、典型的には約125マイクロメートル~約635マイクロメートルの範囲の厚さを有する。電気錫めっき鋼、冷延鋼板、及びアルミニウムは、食品若しくは飲料用缶、又はそれらの一部分のための金属基材として一般的に使用される。例えば、包装用物品の形成に金属箔基材が採用される実施形態では、金属箔基材の厚さは上記よりも更に薄くすることもできる。
【0106】
[0110] 本開示のコーティング組成物は、基材が、例えば、食品若しくは飲料用容器又はそれらの一部分などの物品へと成型される前又は後のいずれかで、基材に塗布されてもよい。一実施形態では、本明細書に記載のコーティング組成物を金属基材に塗布すること(例えば、この組成物を、平面コイル又はシートの形態の金属基材に塗布すること)と、この組成物を硬化させることと、この基材を包装用容器又はその一部分(例えば、食品若しくは飲料用缶又はそれらの一部分)へと(鍛造を介して)形成することとを含む、食品若しくは飲料用缶の形成方法が提供される。例えば、2ピース若しくは3ピース缶又はその一部分、例えば、表面上に本開示のコーティング組成物の硬化コーティングを施したリベット加工の飲料用缶端部(例えば、ソーダ又はビール缶)は、かかる方法で形成され得
る。別の実施形態では、包装容器又はその一部(例えば、食品若しくは飲料用の缶又はその一部)を提供することと、本明細書に記載されるコーティング組成物を、(例えば、スプレー塗布、浸漬等を介して)このような包装容器又はその一部の内側部分、外側部分、又は内側部分と外側部分との両方に塗布することと、この組成物を固化させることと、を含む食品又は飲料用の缶の形成方法が提供される。
【0107】
[0111] 上記のように、本開示のコーティング組成物は、食品及び飲料用の缶(例えば、2ピース缶、3ピース缶等)上で使用するために、特によく適合している。2ピース缶は、缶胴部(典型的には、絞り加工された金属胴部)と缶端部(典型的には、絞り加工された金属端部)とを接合することによって製造される。本開示のコーティングは、食品又は飲料に接触する状況下での使用にも好適であり、このような缶の内側表面上において用いてもよい。それらは、スプレー塗布される、2ピース絞りしごき加工の飲料用缶の内面用の液体コーティング、及び飲料用缶端部のためのコイルコーティングに、特に好適である。本開示のコーティング組成物はまた、他の塗布においても有用性を提供する。これらの追加の塗布としては、洗浄コーティング、シートコーティング、及びサイドシームコーティング(例えば、食品用缶のサイドシームコーティング)が挙げられるが、これらに限定されない。また、コーティング組成物は、例えば、薬物接触表面を含む定量吸入器(「MDI」)の表面を含む、医療用包装用途においても有用であり得る。
【0108】
[0112] スプレーコーティングは、表面への、例えば、予備成形された包装用容器の内側への、コーティングされた組成物のスプレーによる導入を含む。スプレーコーティングに好適な、典型的な予備成形された包装用容器としては、食品用缶、ビール及び飲料容器等が挙げられる。好ましくは、スプレーは、予備成形された包装用容器の内側を均一にコーティングすることが可能なスプレーノズルを利用する。次いで、スプレーされた予備成形容器が加熱され、残留溶媒を除去し、コーティングを固化させる。
【0109】
[0113] コイルコーティングは、金属(例えば、スチール又はアルミニウム)からなる連続するコイルのコーティングとして説明される。一旦コーティングされると、コーティングを固化(例えば、乾燥及び硬化)させるために、コーティングコイルが、小型の熱的な、紫外線、又は電磁の硬化サイクルにかけられる。コイルコーティングは、2ピース絞り食品用缶、3ピース食品用缶、食品用缶端部、絞りしごき缶、飲料用缶端部等の成形物品に組み立てられ得る、コーティングされた金属(例えば、スチール又はアルミニウム)基材をもたらす。
【0110】
[0114] 洗浄コーティングは、保護剤コーティングの薄層を有する、2ピース絞りしごき(「D&I」)缶の外面のコーティングとして商業的に説明される。これらのD&I缶の外面は、予備成形された2ピースD&I缶を、コーティング組成物のカーテンの下を通過させることによって「洗浄コーティング」される。カーテンを通過するとき、この缶は反転され、これは即ち、缶の開端部が「下方」位置にあるということである。このコーティング組成物のカーテンは、「滝のような」外観を有する。これら缶がこのコーティング組成物のカーテンの下を通過すると、液体コーティング材料が、各缶の外面を効果的にコーティングする。「エアーナイフ」の使用を通して、過剰なコーティングが除去される。一旦、所望の量のコーティングが各缶の外面に塗布されると、各缶は、熱的な、紫外線、又は電磁の硬化オーブンに通され、コーティングを固化させる(例えば、乾燥及び硬化)。硬化オーブンの領域内のコーティングされた缶の滞留時間は、典型的には、1分~5分である。このオーブン内の硬化温度は、典型的には、150℃~220℃の範囲である。
【0111】
[0115] シートコーティングは、正方形又は長方形の「シート」に予備切断された、多様な材料の(例えば、スチール又はアルミニウム)の別個のピースのコーティングとして説明される。これらシートの典型的な寸法は、約1平方メートルである。一旦コーティン
グされると、各シートは硬化される。一旦固化(例えば、乾燥及び硬化)されると、コーティングされた基材のシートは、後続の製造のために回収及び調製される。シートコーティングは、2ピース絞り食品用缶、3ピース食品用缶、食品用缶端部、絞りしごき缶、飲料用缶端部等の成形物品に首尾よく組み立てられ得る、コーティングされた金属(例えば、スチール又はアルミニウム)基材をもたらす。
【0112】
[0116] サイドシームコーティングは、形成された3ピース食品用缶の溶接された区域にわたる液体コーティングのスプレー塗布として説明される。三部分からなる食品用缶が調製される場合、コーティングされた基材の長方形のピースが円筒に形成される。円筒の形成は、熱溶接を介する長方形の両端の溶接のために、永久的になされる。一旦溶接されると、各缶は、典型的には、その後に生じる腐食、又は封入された食材成分の他の影響から露出された「溶接部」を保護する液体コーティングの層を必要とする。この役割で機能する液体コーティングは、「サイドシームストライプ」と呼ばれる。典型的なサイドシームストライプは、スプレー塗布され、小型の熱的な、紫外線、又は電磁のオーブンに加えて、溶接操作からの残留熱を介して急速に硬化される。
【0113】
[0117] 上記したいずれの塗布技法についても、硬化プロセスは、不連続の又は組み合わせた工程のいずれかで実行され得る。例えば、コーティング組成物を大部分が架橋されていない状態のままにするために、基材を周囲温度で乾燥することができる。次いで、コーティングされた基材を加熱し、組成物を完全に硬化させる。ある特定の状況では、本開示のコーティング組成物は、1つの工程で乾燥及び硬化されてもよい。硬化条件は、塗布の方法及び意図される最終用途に応じて異なる。硬化プロセスは、例えば、約100℃~約300℃、より典型的には、約177℃~約250℃の範囲のオーブン温度を含む、任意の好適な温度において実施されてもよい。コーティングされるべき基材が金属コイルである場合、例えば、コーティングされた金属基材を好適な時間にわたって、好ましくは、約177℃超のピーク金属温度(「PMT」)まで加熱することにより、塗布されたコーティング組成物の硬化が実行されてもよい。より好ましくは、コーティングされた金属コイルは、少なくとも約218℃のPMTまで、好適な期間(例えば、約5~900秒間)加熱される。
【0114】
[0118] 例えば、電着塗装、押出コーティング、積層、粉末コーティング、及びこれに類するもの等の他の商業的コーティング塗布及び硬化法も想到される。
[0119] 好ましいコーティング組成物は、実施例セクションに記載された1つ以上の特性を示す。より好ましいコーティング組成物は、以下の特性の1つ以上を示す:1mA未満の、金属露出値;1.5mA未満の、落下損傷後の金属露出値;50ppm未満の、グローバル抽出結果;風味スカルピングについて評価された場合に、約50%未満の、好ましくは、約30%未満の、より好ましくは、約10%未満の、アルデヒド損失(及びより好ましくは、約50%未満の、約30%未満の、又は約10%未満の、炭酸コーラを含有するアルミニウム缶について現在使用されているコーティングにより示される、アルデヒド損失);10の、接着評価;少なくとも7の、白化評価;逆衝撃試験において、ひび割れが軽微であるか、又はひび割れがないこと;ドーム衝撃試験において、ひび割れがないこと(10の評価);0.2インチを下回るフェザリング;0.055~0.3のCOF範囲;10mA未満(より好ましくは、5、2、又は1mA未満)の、初期端部連続性;並びに、低温殺菌又はレトルト殺菌後の、20mA未満の、連続性。
【実施例】
【0115】
[0120] 以下の実施例は、本発明の理解を助けるために提供するものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。特に指示しない限り、全ての部及び割合は重量基準である。
【0116】
硬化条件
[0121] 以下に記載の内部スプレーコーティング厚さでの飲料用内部スプレーの焼成については、硬化条件は、188℃~199℃で30秒間、缶ドームで測定された温度を維持することを含む。
【0117】
[0122] 以下に記載のコーティング厚さでの飲料用端部コイルの焼成については、硬化条件は、指定された時間内にピーク金属温度をもたらすのに十分な温度の使用を含む(例えば、204℃で10秒間とは、例えば、オーブン内で10秒間であり、ピーク金属温度が204℃に達することを意味する)。
【0118】
[0123] 引用した構造体は以下のような試験によって評価した。
初期金属露出
[0124] この試験方法は、スプレーされたコーティングによって効果的にコーティングされなかった、缶の内面の量を決定するものである。この決定は、導電性溶液(脱イオン水中1%NaCl)の使用を通してなされる。缶は、100~130mg/缶のコーティング重量でコーティングされ、この室温の伝導性溶液で充填され、電気プローブを缶の外側(コーティングされていない、導電性のもの)に接触させて取り付ける。缶の内部の中央で、第2のプローブを塩溶液中に浸漬させる。缶の内側にコーティングされていない金属が存在する場合、これら2本のプローブ間に電流が流れ、LEDディスプレイ上に値として記録される。LEDは、伝達された電流をミリアンペア(mA)で表示する。流れた電流は、コーティングによって効果的に覆われなかった金属の量に正比例する。この目的は、缶の内側を100%コーティングで覆うことであり、その場合、0.0mAのLEDの読み取り値が得られることになる。好ましいコーティングは、3mA未満の金属露出値、より好ましくは2mA未満の値、更により好ましくは1mA未満値をもたらす。商業的に許容される金属露出値は、典型的には、平均して1.0mA未満である。
【0119】
落下損傷後の金属露出
[0125] 落下損傷耐性は、充填済み缶の落下をシミュレートする条件に供した後に、コーティングされた容器が亀裂に耐える能力を測定するものである。亀裂の存在は、初期金属露出の項で既に記載したとおり、電解質溶液を介する電流の通過によって測定される。コーティングされた容器に電解質溶液を充填し、初期金属露出電流を記録する。次いで、缶に水を充填し、61cmの高さから33°の傾斜面にチューブを介して落下させて、チャイム領域に凹みを発生させる。次いで、缶を180度回転させ、このプロセスを繰り返す。次いで、缶から水を除去し、金属露出電流を再度上記のとおり測定する。損傷がない場合、電流(mA)の変化は観察されないことになる。典型的には、6個又は12個の容器の試験の平均を記録する。落下前及び後の金属露出電流結果の両方を記録する。ミリアンペア値が低いほど、落下損傷に対するコーティングの耐性がより良好である。好ましいコーティングは、落下損傷後、3.5mA未満の金属露出値、より好ましくは2.5mA未満の値、更により好ましくは1.5mA未満の値をもたらす。
【0120】
溶媒耐性
[0126] コーティングの「硬化」又は架橋の程度を、メチルエチルケトン(MEK、Exxon、Newark、NJから入手可能)又はイソプロピルアルコール(IPA)等の溶媒に対する耐性として測定する。この試験は、ASTM D 5402-93に記載されるとおりに実施する。二重摩擦(即ち、1回の前後動作)の数を報告する。
【0121】
グローバル抽出
[0127] グローバル抽出試験は、コーティングから出て、コーティングされた缶の中に包装された食品内へと移行する可能性のある遊離物質の総量を見積もるように設計されている。典型的には、様々な条件の下で、コーティングされた基材に水又は溶媒配合物に供
することで、所与の最終用途がシミュレーションされる。容認可能な抽出条件及び媒体は、21CFR 175.300パラグラフ(d)及び(e)に見出すことができる。FDA規制によって規定される許容可能なグローバル抽出限度は、50百万分率(ppm)である。
【0122】
[0128] 抽出手順は、21CFR 175.300パラグラフ(e)(4)(xv)に記載されており、最悪の事態における性能を確保するために、1)アルコール含有量を10重量%に増加させ、かつ2)充填された容器を10日間の平衡化期間にわたって38℃(100°F)で保持するという修正を施した。これらの条件は、食品接触物質の届出(Food Contact Notifications)の準備に関するFDA刊行物「Guidelines for Industry」に準ずる。コーティングされた飲料用缶に10重量%のエタノール水溶液を充填し、2時間、低温殺菌条件(66℃、150°F)に供し、続いて、38℃(100°F)で10日間平衡化期間に供した。抽出物の量の測定は、21CFR 175.300パラグラフ(e)(5)の記載に従って測定し、355mLの容積を有する44平方インチの缶(端部を含まない)の表面積に基づいて、ppm値を計算した。好ましいコーティングは、50ppm未満のグローバル抽出結果、より好ましくは10ppm未満の結果、更により好ましいくは1ppm未満の結果をもたらす。最も好ましくは、グローバル抽出結果は、検出不可能である。
【0123】
風味スカルピング
[0129] 250十億分率(ppb)の3種の異なるアルデヒドを含有するpH3の溶液を、以下のように調製した。初めに、既知量のアルデヒドオクタナール、ノナナール、及びデカナールを純粋な(190プルーフ)エタノール中で希釈することにより、中間アルデヒドストック溶液(約10,000ppm)を調製した。次に、pH用紙を用いてpHが3程度となることを確認しながら、4リットルの脱イオン(DI)水中に約600μlの75%のリン酸を添加することにより、pH3に酸性化した水を調製した。更なるリン酸又はDI水を用いてpHを調整し、最終pHを約2.5~約3とした。既知量のアルデヒドストック溶液を、約40,000の希釈係数を用いて、酸性化した水へ添加し、最終容量4L中、約250ppbの最終濃度の3種の各アルデヒドを得た。
【0124】
[0130] 硬化コーティングを、16.8cm×16.8cmの正方形の金属パネルに塗布し、次いで、204℃の設定ポイントで、75秒間、オーブン中で硬化し、約1.9msiのコーティング重量を有する乾燥フィルムをもたらした。これらのパネルを、Journal of the Association of Official Analytical Chemists,47(2):387(1964)において見出されるデザインに若干の修正を加えたものに従って作製されたFDA規定の片面抽出セルに挿入した。セルは、22.9cm×22.9cm×1.3cm(9in×9in×0.5in)であり、TEFLON(商標)(DuPont)ポリテトラフルオロエチレンスペーサの中央に、15.2cm×15.2cm(6in×6in)の開放領域を備える。これにより、232cm2(36in2)又は465cm2(72in2)の試験パネルをアルデヒド溶液に曝露させることが可能となる。このセルは、300mLのアルデヒドシミュレート溶媒を保持する。232cm2(36in2)又は465cm2(72in2)の試験物品を溶液に曝露させる場合、溶媒の表面領域に対する比率は、1.29mL/cm2又は0.65mL/cm2である。抽出セルを、250ppbの各アルデヒドを含有する上記の溶液で充填し、40℃で3日間維持した。
【0125】
[0131] ガスクロマトグラフ(GC)及びヘッドスペース固相マイクロ抽出(HS-SPME)法を用いて、風味スカルピング特性を評価した。ピークのブロードを最小化するために、GC注入口に0.75mm i.dのSUPELCO(商標)(Sigma-Aldrich)ライナーを備え付けた。ヘッドスペース分析については、注入は、250
℃で、スプリットレスモードで0.8分間、次いで、0.8分間の後は、スプリット(1:55)で実施した。オーブン温度は、40℃の等温で5分間、次いで、10℃/分で220℃まで傾斜昇温させ、最終温度で1分間保持するよう、プログラム設定した。ヘリウムを、1.5mL/分の流量でキャリアガスとして使用した。注入器及び検出器温度は、それぞれ250℃及び270℃であった。貯蔵の間に試験溶液から損失した各アルデヒドの量を測定し、元の濃度のパーセントとして報告した。風味スカルピングは、現在の業界標準コーティング配合物に対するアルデヒド損失%として報告した。
【0126】
接着性
[0132] コーティングされる基材にコーティングが接着するかどうかを評価するために、接着性試験を実施する。接着性試験は、3Mから入手可能なSCOTCH(商標)610テープを使用し、ASTM D 3359-試験方法Bに従って行われた。一般的に、接着性は0~10段階で評価をつけ、ここで「10」の評価は、接着の失敗がないことを示し、「9」の評価は、コーティングの90%が接着した状態であることを示し、「8」の評価は、コーティングの80%が接着した状態であることを示し、以下同様である。商業的に実現可能なコーティングについては、典型的には、評点10の接着が望ましい。
【0127】
白化耐性
[0133] 白化耐性は、様々な溶液による攻撃に抵抗するコーティングの能力を測定する。典型的には、白化は、コーティングされた皮膜に吸収される水の量によって測定される。フィルムが水を吸収する場合、一般的に、曇ったようになるか又は白く見える。白化は、0~10段階を使用して、一般的に可視的に測定され、ここで「10」の評価は白化がないことを示し、「0」の評価はフィルムの完全な白化を示す。商業的に実現可能なコーティングの場合、白化評価は、典型的には少なくとも7が所望され、最適には9又はそれ以上である。
【0128】
プロセス又はレトルト耐性
[0134] これは、水等の液体を使用して熱及び圧力に曝露された後の、コーティングされた基材のコーティング一体性の尺度となる。レトルト性能は必ずしも全ての食品用及び飲料用コーティングに必要ではないが、レトルト条件下で包装される幾つかの製品のタイプにとっては望ましい。手順は、滅菌又は低温殺菌試験と同様である。基材に、105℃~130℃の範囲の熱、及び0.7~1.05kg/cm2の範囲の圧力を15~90分間加えることにより、試験が遂行される。コーティングされた基材は、DI水中に浸漬されてもよく、121℃(250°F)の熱、及び1.05kg/cm2の圧力を90分間加えられてもよい。次いで、コーティングされた基材は、上述したように接着性及び白化に関して試験される。レトルト性能を必要とする食品又は飲料用途において、商業的に実現可能なコーティングは典型的に、接着性評価が10であり、かつ白化評価が少なくとも7であることが所望される。
【0129】
ネッキング試験
[0135] この試験は、商業的なネッキングプロセス後の、フィルムの可撓性及び接着性を測定する。ネッキングは、容器の密封を可能とする容器端部の取付を容易にするために実施される。この試験は、推奨されるフィルム厚で容器にコーティングを塗布することと、この容器を推奨される焼成に供することと、を含む。ネッキングプロセスの前に、サンプル缶は、上記のような電解質溶液を用いて評価された場合に、典型的には、1.0mA未満(12缶の平均)の金属露出値を有し得る。ネッキングプロセスの後に、缶は、ネッキングされていない12缶の平均と比較して、金属露出において増大を示すべきではない。mA値の増大は、フィルム欠陥を構成するフィルム断裂を示す。
【0130】
改質/削正試験
[0136] この試験は、商業的な改質プロセス後の、フィルムの可撓性及び接着性を測定する。改質又は削正は、缶を強化するために実施される。この試験は、推奨されるフィルム厚で容器にコーティングを塗布することと、この容器を推奨される焼成に供することと、を含む。改質プロセスの前に、サンプル缶は、上記のような電解質溶液を用いて評価された場合に、典型的には、1.0mA未満(12缶の平均)の金属露出値を有し得る。改質プロセスの後に、缶は、改質されていない12缶の平均と比較して、金属露出において増大を示すべきではない。mA値の増大は、フィルム欠陥を構成するフィルム断裂を示す。
【0131】
沸騰水試験
[0137] この試験は、フィルムの耐水性をシミュレートする。コーティングは、目的のフィルム厚及び焼成サイクルにて、適切な基材に塗布される。DI水を容器内で加熱して沸騰させる(100℃)。試験用缶又はパネルを、沸騰水中に配置する。10分後、試験用缶又はパネルを取り外し、水でリンスし、乾燥させる。その後、コーティングをクロスハッチ加工する。25mm(1インチ)長のスコッチテープ610番を、クロスハッチ加工した領域に貼り付け、パネルに対して垂直に引っ張る素早い動作で直ちに引きはがす。次いで、サンプルを、既に記載したとおり、接着性及び白化について評価する。飲料用内部コーティングは、好ましくは、10の接着評価をもたらし、また、少なくとも7、好ましくは少なくとも9、最適には10の白化評価をもたらす。
【0132】
沸騰酢酸試験
[0138] この試験は、酸性媒体に曝された場合のフィルムの耐性をシミュレートするものであり、沸騰水試験と同様に実施、及び評価するが、3重量%の酢酸及び97重量%のDI水の混合物を用いて、100℃に加熱し、30分間浸漬させた。飲料用内部コーティングは、好ましくは、10の接着評価をもたらし、また、少なくとも7、最適には少なくとも9の白化評価をもたらす。
【0133】
クエン酸試験
[0139] この試験は、30分間、121℃のレトルト条件に曝される、2%のクエン酸溶液に対するフィルムの耐性をシミュレートする。コーティングを、目的のフィルム厚及び焼成サイクルにて、適切な基材に塗布する。試験用缶又はパネルを、2%のクエン酸溶液を含有するレトルト容器内に配置する。この溶液をレトルト容器内で121℃に加熱する。30分後、試験用缶又はパネルを取り外し、水でリンスし、乾燥させる。次いでコーティングを、クロスハッチ加工し、沸騰水試験と同様に、接着及び白化について評価する。飲料用内部コーティングは、好ましくは、10の接着評価をもたらし、また、少なくとも7の、最適には、少なくとも9の、白化評価をもたらす。
【0134】
風味-水試験
[0140] この試験は、コーティングから付与される異臭の可能性をシミュレートする。熟練の風味パネルには、この試験において最良の結果が必要とされる。サンプル缶又はパネルを、推奨されるフィルム厚及び焼成条件に供する。缶をリンスし、DI水で充填し、アルミ箔で被覆し、その後、63℃の水浴中に浸漬させる。缶内の水が63℃に達したら、その温度で30分間缶を保持する。30分後、缶を取り出し、一晩冷却しておく。次いで、缶からの水を、試験のために風味パネルに供給する。水のみからなるブランクを、対照として使用する。
【0135】
ガラス転移温度
[0141] DSC試験用のサンプルは、最初に液体樹脂組成物をアルミニウムシートパネル上へと塗布することによって調製してもよい。次いで、このパネルを、Fisher ISOTEMP(商標)電気オーブン内にて149℃(300°F)で20分間焼成して
、揮発性物質を除去する。室温まで冷却した後、サンプルをパネルからかき取り、計量して標準的なサンプルパンの中へ入れ、標準的なDSC加熱/冷却/加熱法を用いて分析する。サンプルを-60℃で平衡化し、次いで、毎分20℃で200℃まで加熱し、-60℃まで冷却し、次いで、再度毎分20℃で200℃まで加熱する。最後の加熱サイクルのサーモグラムからガラス転移を計算する。ガラス転移を転移の変曲点において測定する。複数の転移が観察される場合、複数のガラス転移温度を記録する。
【0136】
実施例1 操作1-酸官能性アクリルポリマー乳化剤第1番の調製
[0142] モノマープレミックス容器中で、2245.54部の氷メタクリル酸(GMAA)、1247.411部のエチルアクリレート(EA)、1496.931部のスチレン、1513.425部のブタノール、及び167.575部の脱イオン水からなるプレミックスを調製した。別の容器中で、Arkemaからの299.339部のLUPEROX(商標)26開始剤、及び832.275部のブタノールからなる開始剤プレミックスを調製した。攪拌棒、還流冷却器、熱電対、加熱及び冷却能力、並びに不活性ガスブランケットを装備した反応容器に、1778.649部のブタノール及び87.25部の脱イオン水を添加した。攪拌と不活性ブランケットを用いて、還流させながら、反応容器を97~102℃に加熱した。この温度範囲内になったら、46.442部のLUPEROX 26開始剤を添加した。開始剤を添加した5分後、必要に応じて還流及び冷却を行って温度範囲を97~102℃に維持しながら、モノマープレミックス及び開始剤プレミックスを同時に反応容器に2.5時間かけて添加した。プレミックスを添加した後、このモノマープレミックス容器を96.625部のブタノールでリンスし、開始剤プレミックス容器を22.0部のブタノールでリンスし、両リンス液を反応容器に添加した。リンスの直後に、温度を97℃~102℃に維持しながら、59.33部のLUPEROX 26開始剤及び24.0部のブタノールからなる第2の開始剤プレミックスを反応容器に1時間かけて添加した。添加が終わったら、このプレミックス容器を22.0部のブタノールでリンスし、このリンス液を反応容器に添加した。開始剤プレミックス容器をリンスした30分後、12.889部のLUPEROX 26開始剤を反応容器に添加し、1.0部のブタノールでリンスした。成分を更に2時間反応させておき、その後、47.319部の脱イオン水を添加し、反応容器を60℃未満の温度に冷却した。このプロセスにより、約50.0% NVの固形分、約300の酸価、約25,000センチポアズのBrookfield粘度、約6300のMn、12,500のMw、2.0の多分散度を有する、アクリル乳化ポリマー(即ち、アクリルポリマー乳化剤)がもたらされる。Fox方程式を用いて算出されたTgは、86℃である。
【0137】
実施例1 操作2-酸官能性アクリルポリマー乳化剤第2番の調製
[0143] モノマープレミックス容器中で、115.982部のGMAA、249.361部のEA、214.567部のスチレン、47.649部のブタノール、及び4.649部の脱イオン水からなるプレミックスを調製した。別の容器中で、12.756部のLUPEROX26開始剤、及び6.973部のブタノールからなる開始剤プレミックスを調製した。攪拌棒、還流冷却器、熱電対、加熱及び冷却能力、並びに不活性ガスブランケットを装備した反応容器に、206.71部のブタノール及び10.14部の脱イオン水を添加した。攪拌と不活性ブランケットを用いて、還流させながら、反応容器を97~102℃に加熱した。この温度範囲内になったら、1.979部のLUPEROX 26を添加した。LUPEROX 26を添加した5分後、必要に応じて還流及び冷却を行って温度範囲を97~102℃に維持しながら、モノマープレミックス及び開始剤プレミックスを同時に反応容器に2.5時間かけて添加した。プレミックスを添加した後、このモノマープレミックス容器を10.46部のブタノールでリンスし、開始剤プレミックス容器を3.487部のブタノールでリンスし、両リンス液を反応容器に添加した。リンスの直後に、温度を97℃~102℃に維持しながら、2.528部のLUPEROX 26開始剤及び20.919部のブタノールからなる第2の開始剤プレミックスを反応容器に3
0分間かけて添加した。添加が終わったら、このプレミックスを5.346部のブタノールでリンスし、このリンス液を反応容器に添加した。開始剤プレミックス容器をリンスした30分後、0.494部のLUPEROX 26開始剤を反応容器に添加し、13.946部のブタノールでリンスした。成分を更に2時間反応させておき、その後、69.73部のブタノール及び2.324部の脱イオン水を添加し、反応容器を60℃未満の温度に冷却した。このプロセスにより、約58.0% NVの固形分、約130の酸価、約22,000センチポアズのBrookfield粘度、12,000のMn、29,500のMw、及び2.5のPDIを有する、アクリル乳化ポリマーがもたらされる。Fox方程式を用いて算出されたTgは、45℃である。
【0138】
実施例2 操作1(低Tg)-低Tgの対照乳化液第1番の調製
[0144] 攪拌棒、還流冷却器、熱電対、加熱及び冷却能力、並びに不活性ガスブランケットを装備した反応容器に、4754.595部の脱イオン水、143.835部のジメチルエタノールアミン(DMEOA)、及び1633.46部の酸官能性アクリルポリマー性乳化剤第1番を添加し、70℃に加熱した。別の容器に、898.642部のスチレン、1260.619部のアクリル酸ブチル、及び175.122部のメタクリル酸グリシジルを予め混合し、均一になるまで攪拌した。Fox方程式を用いると、38.5重量%のスチレン、54.0重量%のアクリル酸ブチル、及び7.5重量%のメタクリル酸グリシジルを含有するこのモノマープレミックスは、推定-5℃のTgを有する成分ポリマーをもたらすことになる。反応容器の温度が70℃になったら、23.031部のベンゾイン及び37部の脱イオン水を反応容器に添加した。次いで、内容物を81℃に加熱した。81℃で、過酸化水素の35%溶液を添加し、合計37.031部の脱イオン水を用いて反応容器中にリンスした。その温度で5分後、温度を80℃~83℃に維持しながら、モノマープレミックスを30分間かけて反応容器に均一に添加した。モノマープレミックスを添加したら、反応容器を826部の脱イオン水でリンスし、このリンス液はその後反応容器中へ添加した。リンス液を添加した10分後、4部のベンゾイン及び3.911部の35%の過酸化水素溶液を添加して、合計28部の脱イオン水でリンスした。この反応を45分間続けさせておき、その後、1.304部のベンゾイン及び1.304部の35%の過酸化水素溶液を添加して、合計28部の脱イオン水でリンスした。この反応を2時間実施した。2時間後、このバッチに冷却を適用し、一方で、Akzo Nobelからの12.602部のTIGONOX(商標)A-W70 t-ブチルヒドロペルオキシド、1.738部の、水中に7重量%の鉄-ナトリウム-EDTA(エチレンジアミン四酢酸)錯体を含有する鉄錯体水溶液、並びに8.691部のエリソルビン酸、9.343部のDMEOA、及び74.742部の脱イオン水を含有するプレミックス溶液を添加し、14部の脱イオン水でリンスした。このプロセスを数回繰り返した。冷却すると、この反応は、15~100秒の#4フォード粘度、60~80の酸価、6.5~7.5のpH、及び0.24~0.34マイクロメートルの粒子径を伴う、30.7~32.7%の固形分を含有する乳化ラテックスポリマーをもたらした。乳化ラテックスのポリマーの部分架橋性質に起因して、それらは、分子量測定のためのゲル浸透クロマトグラフィカラムを通過することができなかった。
【0139】
実施例2 操作2(高Tg)-高Tgの対照乳化液第1番の調製
[0145] 実施例2 操作1(低Tg)について用いた一般的な方法を用いて、モノマープレミックス比率を、77.2重量%のスチレン、15.3重量%のアクリル酸ブチル、及び7.5重量%のメタクリル酸グリシジルに調整することにより、高いTgバージョンの対照第1番乳化液を調製した。Fox方程式を用いると、得られた成分ポリマーは、推定60℃のTgを有した。乳化ラテックスポリマーは、35秒の#4フォード粘度、69の酸価、6.9のpH、及び0.21マイクロメートルの粒子径を伴う、31.9%の固形分を含有した。
【0140】
実施例2 操作3(低Tg)-低Tgの対照乳化液第2番の調製
[0146] 実施例2、操作1(低Tg)について用いた一般的な方法を用いて、低いTgバージョンの対照第2番乳化液を、1485.611部の酸官能性アクリルポリマー乳化剤第1番を反応容器に添加し、35℃に加熱することにより、調製した。この温度で、35℃に維持しながら、490.409部の脱イオン水及び143.611部のDMEOAを添加し、次いで、4413.677部の脱イオン水を添加した。別の容器に、898.425部のスチレン、1260.147部のアクリル酸ブチル、及び174.980部のメタクリル酸グリシジルを予め混合し、均一になるまで攪拌した。Fox方程式を用いると、38.5重量%のスチレン、54.0重量%のアクリル酸ブチル、及び7.5重量%のメタクリル酸グリシジルを含有するこのモノマープレミックスは、推定-5℃のTgを有する成分ポリマーをもたらすことになる。次いで、このモノマープレミックスを35℃で反応容器に添加し、次いで、プレミックス容器を99.988部の脱イオン水でリンスし、このリンス液を反応容器に添加した。反応容器内容物を30分間攪拌した。この混合時間の後、3.946部の、Akzo NobelからのTRIGONOX TAHP-W85 tert-アミルヒドロペルオキシドを反応容器に添加した。反応混合物を5分間攪拌し、その後、2.892部のエリソルビン酸、249.971部の脱イオン水、2.892部DMEOA、及び0.257部の鉄錯体水溶液からなるプレミックスを2時間かけて添加した。反応容器の内容物は、反応に起因して、温度上昇した。温度が65℃に上昇したときには、冷却を適用し、温度が60℃に低下したときには、冷却を止めた。プレミックスの添加が完了したら、このプレミックス容器を773.194部の脱イオン水でリンスし、このリンス液を反応容器に添加した。反応混合物を、1時間保持し、次いで、49℃未満に冷却した。このプロセスは、15~100の#4フォード粘度、60~80の酸価、6.5~7.5のpH、及び0.1~0.5マイクロメートルの粒子径を伴う、29.8~31.8%の固形物を含有する乳化ラテックスポリマーをもたらす。乳化ラテックスのポリマーの部分架橋性質に起因して、それらは、分子量測定のためのゲル浸透クロマトグラフィカラムを通過することができなかった。
【0141】
実施例2 操作4(高Tg)-高Tgの対照乳化液第2番の調製
[0147] 実施例2、操作3(高Tg)について用いた一般的な方法を用いて、モノマープレミックス比率を、77.2重量%のスチレン、15.3重量%のアクリル酸ブチル、及び7.5重量%のメタクリル酸グリシジルに調整することにより、高いTgバージョンの対照第2番乳化液を調製した。Fox方程式を用いると、得られた成分ポリマーは、推定60℃のTgを有した。乳化ラテックスポリマーは、35秒の#4フォード粘度、69の酸価、6.9のpH、及び0.21マイクロメートルの粒子径を伴う、31.9%の固形分を含有した。
【0142】
[0148] コーティング組成物を、対照乳化液第1番及び第2番の低Tg及び高Tgのバージョンから調製し、金属飲料用容器の内部に塗布し、硬化させ、評価した。このコーティング組成物の成分を、以下の表1に示される順序で、攪拌しながら添加した。必要に応じてDMEOAを添加し、所望の最終粘度を得た。コーティング組成物は、典型的な実験条件及び100~130mg/缶のコーティング重量を用いて、355mLのアルミニウム缶の内部に下からスプレーされ、次いで、この塗布に典型的な熱スケジュールでガスコンベヤオーブンによって、188~199℃(缶ドームで測定されるように)で30秒間硬化した。塗布及びフィルム特性を以下の表2に示す。
【0143】
【0144】
【0145】
[0149] 表2のデータは、フィルムTg値の増大がコーティングの可撓性に悪影響を及ぼすことを示す。
実施例3 試験用乳化液の調製
[0150] より高分子量の乳化ポリマーを用いることを除いて、実施例2、操作3(高Tg)について用いた一般的な方法を用いて、201.394部の酸官能性アクリルポリマー乳化剤第2番及び46.65部の脱イオン水を反応容器に添加した。次に、反応混合物の温度を上昇させながら、13.661部のDMEOAを5~10分間かけて添加した。DMEOAを添加した容器を、2.632部の脱イオン水でリンスし、このリンス液を反応容器に添加した。次に、反応容器を50℃に加熱しながら、354.29部の脱イオン水を30~45分間かけて添加した。別の容器に、119.898部のスチレン、39.248部のアクリル酸ブチル、及び16.067部のメタクリル酸グリシジルを予め混合し、均一になるまで攪拌した。Fox方程式を用いると、68.4重量%のスチレン、22.4重量%のアクリル酸ブチル、及び9.2重量%のメタクリル酸グリシジルを含有するこのモノマープレミックスは、推定45℃のTgを有する成分ポリマーをもたらすことになる。モノマープレミックスを20~25分間かけて反応容器に添加した。プレミックス容器が空になったら、このプレミックス容器を171.92部の脱イオン水でリンスし、このリンス液を反応容器に添加した。反応容器を15分間攪拌して、内容物を均一にした。次に、0.338部のTRIGONOX TAHP-W85 tert-アミルヒドロペルオキシドを添加し、2.369部の脱イオン水でリンスした。反応混合物を5分間
攪拌し、その後、0.248部のエリソルビン酸、21.398部の脱イオン水、0.248部DMEOA、及び0.024部の鉄錯体水溶液からなるプレミックスを1時間かけて添加した。反応容器の温度を、最高84℃まで上昇させた。プレミックスの添加が完了したら、このプレミックス溶液を、6.19部の脱イオン水でリンスし、温度を次第に55℃まで低下させながら、60分間反応させておいた。60分が経過後、0.038部のTRIGONOX TAHP-W85 tert-アミルヒドロペルオキシドを添加し、0.263部の脱イオン水でリンスし、次いで、0.028部のエリソルビン酸、2.378部の脱イオン水、及び0.028部のDMEOAからなるプレミックスを、1.69部の脱イオン水でリンスした。反応混合物を、55℃で60分間保持し、次いで、38℃未満に冷却した。このプロセスは、15”~100”の#4フォード粘度、40~60の酸価、7.2~8.2のpH、及び0.07~0.14マイクロメートルの粒子径を伴う、28.2~30.2%の固形物を含有する乳化ラテックスポリマーをもたらす。乳化ラテックスのポリマーの部分架橋性質に起因して、それらは、分子量測定のためのゲル浸透クロマトグラフィカラムを通過することができなかった。この実施例は、実施例2で用いた高分子量の乳化ポリマーと、実施例2の操作3及び4で用いたモノマープレミックス添加技法とを利用した。
【0146】
実施例4 内部スプレーコーティング組成物
[0151] 実施例2、操作1(低Tg)(即ち、対照乳化液第1番の低Tgバージョン)及び実施例3の試験用乳化液を用いて作製されたコーティング組成物を、以下の表3に示されるように調製した。組成物を、実施例2のように、金属飲料用容器内にスプレー塗布し、硬化させ、評価した。塗布及びフィルム特性を以下の表4に示す。
【0147】
【0148】
【0149】
[0152] 表4のデータは、改善された風味スカルピング耐性、並びに必要とされるコーティング塗布及びフィルム特性が、高分子量乳化ポリマーを用いて作製された高Tgのコーティング組成物を用いることにより得られたことを示す。
【0150】
[0153] 本明細書に引用された特許、特許文献、及び刊行物の全開示内容は、その各々が個別に組み込まれるが如く、参照によりその全てが本明細書に組み込まれる。本発明から逸脱することなく、本発明に対して様々な修飾及び変更が加えられることが、当業者には明らかであろう。本発明は、本明細書に記載された例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されることを意図しておらず、このような実施例及び実施形態は、単なる例示として提供されており、本発明の範囲は、以下に記載の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図されていることが、理解されるべきである。
[1]
物品であって、
金属基材を含む、食品又は飲料用の缶の胴部又は端部のうちの1つ以上、並びに
前記金属基材上に配置されたコーティング組成物であって、前記コーティング組成物が、少なくとも約8,500の数平均分子量(Mn)を有する乳化ポリマーの水性分散液の存在下で重合されたエチレン性不飽和モノマー成分を含む、成分の反応生成物を含む乳化ラテックスポリマーを含み、前記コーティング組成物の硬化フィルムが、少なくとも約40℃のガラス転移温度(Tg)を有する、コーティング組成物、を含み、
前記コーティング組成物が、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSの各々、並びにそれらのエポキシドを実質的に含まない、物品。
[2]
方法であって、
少なくとも約8,500の数平均分子量(Mn)を有する乳化ポリマーの水性分散液の存在下で重合されたエチレン性不飽和モノマー成分を含む、成分の反応生成物を含む乳化ラテックスポリマーを含むコーティング組成物を提供することであって、前記コーティング組成物の硬化フィルムが、少なくとも約40℃のガラス転移温度(Tg)を有し、かつ、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSの各々、並びにそれらのエポキシドを実質的に含まない、提供することと、
金属基材を食品若しくは飲料用の缶又はその一部へと成形する前又は後に、前記コーティング組成物を前記金属基材へ塗布することと、を含む、方法。
[3]
前記乳化ポリマーが、有機溶媒中で溶液重合され、かつ前記有機溶媒の少なくとも一部が、ポリマー形成後に前記水性分散液から除去される、[1]に記載の物品又は[2]に記載の方法。
[4]
前記コーティング組成物が、硬化されたコーティング組成物を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[5]
前記エチレン性不飽和モノマー成分が、少なくとも1つのオキシラン官能基含有モノマーを含むモノマーの混合物を含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[6]
前記モノマーの混合物が、前記モノマー混合物の重量に基づいて、0.1重量%~30重量%の量で、少なくとも1つのオキシラン官能基含有α、β-エチレン性不飽和モノマーを含む、[5]に記載の物品又は方法。
[7]
前記乳化ポリマーが、アニオン性塩の基、カチオン性塩の基、又はそれらの組み合わせを含む、ポリマー塩である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[8]
前記乳化ポリマーが、アクリルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリオレフィン、又はこれらの組み合わせを含む、[1]~[7]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[9]
前記乳化ポリマーが、酸若しくは無水物官能性アクリルポリマー又はその塩を含む、[1]~[8]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[10]
前記乳化ポリマーが、酸又は無水物官能性ポリマーとアミンとの塩を含む、[1]~[9]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[11]
前記乳化ポリマーが、酸若しくは無水物官能性アクリルポリマー、酸若しくは無水物官能性ポリウレタンポリマー、酸若しくは無水物官能性ポリエステルポリマー、酸若しくは無水物官能性アルキドポリマー、酸若しくは無水物官能性ポリオレフィンポリマー、又はこれらの組み合わせの塩を含む、[1]~[10]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[12]
前記乳化ポリマーが、アミンと、酸若しくは無水物官能性アクリルポリマー、酸若しくは無水物官能性ポリウレタンポリマー、酸若しくは無水物官能性ポリエステルポリマー、酸若しくは無水物官能性アルキドポリマー、酸若しくは無水物官能性ポリオレフィンポリマー、又はこれらの組み合わせとの塩を含む、[1]~[11]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[13]
前記乳化ポリマーが、8,500~50,000の数平均分子量を有する、[1]~[12]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[14]
前記乳化ポリマーが、10,000~20,000の数平均分子量を有する、[1]~[13]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[15]
前記エチレン性不飽和モノマー成分と前記乳化ポリマーとの合計重量に基づいて、前記エチレン性不飽和成分が、前記乳化ラテックスポリマーの約40~約80重量%を含み、前記乳化ポリマーが、前記乳化ラテックスポリマーの約20~約60重量%を含み、前記乳化ポリマーが、乳化ポリマー1グラム当たり約40~約400ミリグラム(mg)のKOHの酸価を有する、[1]~[14]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[16]
前記エチレン性不飽和モノマー成分と前記乳化ポリマーとの合計重量に基づいて、前記エチレン性不飽和成分が、前記乳化ラテックスポリマーの約50~約70重量%を含み、前記乳化ポリマーが、前記乳化ラテックスポリマーの約30~約50重量%を含み、前記乳化ポリマーが、乳化ポリマー1グラム当たり約100~約300ミリグラム(mg)のKOHの酸価を有する、[1]~[15]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[17]
前記エチレン性不飽和モノマー成分が、0℃~100℃の温度で、水溶性フリーラジカル開始剤を用いて、前記水性分散液の存在下で重合される、[1]~[16]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[18]
前記コーティング組成物の硬化フィルムが、少なくとも約50℃のTgを有する、[1]~[17]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[19]
前記コーティング組成物が、ビスフェノールに由来するいずれの構造単位も実質的に含まない、[1]~[18]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[20]
前記コーティング組成物が、ハロゲン化モノマーを実質的に含まない、[1]~[19]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[21]
前記コーティング組成物が、風味スカルピングについて評価された場合に、約50%未満のアルデヒド損失を示す、[1]~[20]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[22]
前記コーティング組成物が、風味スカルピングについて評価された場合に、約10%未満のアルデヒド損失を示す、[1]~[21]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[23]
前記コーティング組成物が、前記金属基材の食品接触面上に存在する、[1]~[22]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[24]
前記コーティング組成物が、2ピース絞りしごきアルミニウム飲料用缶の内面スプレーコーティングを形成するのに好適である、[1]~[23]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[25]
前記金属基材が、約1~約20mg/in2(msi)のコーティング重量で内部表面上にスプレーされた、前記内部表面上への硬化型連続コーティングを有する、2ピース絞りしごきアルミニウム缶である、[24]に記載の物品又は方法。
[26]
前記コーティング組成物が、
a)10~40重量%の前記乳化ラテックスポリマーを含み、
b)25℃で、フォード粘度カップ#2を用いて、約20~約50秒の粘度を有し、
c)前記エチレン性不飽和モノマー成分と前記乳化ポリマーとの合計重量に基づいて、前記エチレン性不飽和成分が、前記乳化ラテックスポリマーの約40~約80重量%を含み、前記乳化ポリマーが、前記乳化ラテックスポリマーの約20~約60重量%を含み、
d)前記乳化ポリマーが、乳化ポリマー1グラム当たり約40~約400ミリグラム(mg)のKOHの酸価を有する、[24]に記載の物品又は方法。
[27]
前記コーティング組成物が、355mlのアルミニウム飲料缶の内部に100~130mg/缶のコーティング重量でスプレー塗布された場合に、落下損傷試験の後に3.5mA未満の金属露出値をもたらす、[1]~[26]のいずれか一項に記載の物品又は方法。
[28]
前記食品又は飲料用の缶が、食品又は飲料製品を収容する、[1]~[27]のいずれか一項に記載の物品。