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特許7523424煙排出がインテリジェント制御される通気デバイス
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  • 特許-煙排出がインテリジェント制御される通気デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】煙排出がインテリジェント制御される通気デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20240719BHJP
   A61B 17/94 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61B17/34
A61B17/94
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021500182
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 DE2019000176
(87)【国際公開番号】W WO2020007386
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】102018005314.9
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518248192
【氏名又は名称】ヴェー.オー.エム. ワールド オブ メディシン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ビショフ
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/108200(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B13/00-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低侵襲手術のための吸入器であって、
a)比例弁及び圧力センサが装備される圧力及び流量調整ユニットを有するガス接続部と、
b)選択式フィルタ及び第1のトロカールへの接続線を有する供給ラインと、
c)排出力が制御可能である排出デバイスに接続される、ホース及び選択式フィルタを有する第2のトロカールと、
d)電子調整ユニットまたは機械調整ユニットと、を含み、
排出体積流量を決定するためのデバイスを有し、前記排出体積流量を決定するための前記デバイスは、流量測定デバイスの形態で実装される、または排出ポンプの速度の決定に基づいて計算が行われ、
前記排出デバイスの排出力は以下のステップに基づいて制御されており、前記ステップは、
a.流れ抵抗特性の計算または推定によって、最大可能通気体積流量を決定するステップと、
b.適切な方法によって、現在の漏れを決定するステップと、
c.前記最大可能通気体積流量に安全率を乗算するステップと、
d.減少した前記最大可能通気体積流量から漏れ体積流量を減算することによって、最大可能排出体積流量を決定するステップと、
を含むことを特徴とする、低侵襲手術のための吸入器。
【請求項2】
前記適切な方法が、オブザーバまたは平均値形成を含む、請求項1に記載の低侵襲手術のための吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は統合型煙排出部を有する吸入器に関する。煙排出の新規の制御方法は、漏れが発生するときでさえも、患者にかかる圧力を維持することと、漏れが大きい場合、排出体積流量を制限することとを可能にする。
【背景技術】
【0002】
同時に行われる煙排出の実現性をもたらす吸入器は、先行技術(例えば、国際公開第2015/043570号を参照)から知られている。この吸入器はホースを備え、ホースを通して医療ガスを体腔(例えば、腹腔)内に送る。目視検査または治療的介入のための十分なスペースを確保するために、ガスにより、体腔を拡張させる正圧を発生させる。第2のホースを通って、再度、腹腔からガスを排出する。電気的手術またはレーザーによる治療的介入の場合、この第2のホースを介して吸入器によって排出及び濾過される不快な煙ガスが生じ得る。医師は所望の標的排出体積流量を選択する。所望の標的排出体積流量になるまで、排出ポンプを調整する。大きい漏れ体積流量が発生するときに、または通気ラインの流れ抵抗が増加するときに、問題が生じる。いずれの場合、吸入器は、COの追加の必要な量を吸引することが不可能である。結果として、腔は部分的にまたは全体的に崩れる。この影響を減らすために、最先端の技術に従って、係る状況で、排出体積流量を制限または減少する。実施態様の一案は、腔の測定圧力が所望の標的値と異なるかどうかを検出し、次に、最大排出体積流量を減少させることである。
【0003】
市場で利用可能な吸入器のほとんどは、吸引される体積流量を調整するために、パルス方法等で動作する。本明細書では、通気段階は、いわゆる「測定の一時停止」と交互に発生する。測定の一時停止では、体積流量は数百ミリ秒の間止まり、これにより、ホースの圧力及び腔の圧力はバランスがとれる。それによって、吸入器は、通気ラインの圧力センサによって、短時間に腔の圧力を測定できる。次に、通気段階の期間全体にわたって、平均通気体積流量を制御する。高い体積流量が必要なとき、長期間の通気段階を行う。係るパルス通気方法では、排出流量を調整する別の案は、排出体積流量の減少または増加の基準として、通気段階の期間を使用することである。例えば、必要な通気段階の期間は所定値を超えるとき、煙排出は減少する。
【0004】
実際に、排出体積流量を制限するためのこれらの2つの方法には欠点があることが分かっている。最も重大な欠点は、排出体積流量を調節するために、腔の圧力をすぐに減少する必要があることである。これは、開口部に漏れがあるとき、望ましくない圧力降下が発生し、手術の遅延につながる可能性があることを意味する。例として、手術中に発生する大きい漏れがあることが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/043570号
【文献】米国特許第5199944号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0133416号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高機能な吸入器は、30lpmよりも高い通気体積流量を生成することが可能である。それによって、高い漏れでさえも、バランスをとることができ、同時に、排出の十分な準備を提供できる。しかしながら、これには以下の欠点がある。高い漏れがある場合でさえ、実際に、医師が排出を要求しないであろう、そして、排出は減少しない。排出は全排出力で継続し、組織の追加の冷却プロセス及び乾燥プロセスにより患者にストレスがかかる。この欠点を少なくするために、米国特許第5199944号明細書では、煙ガスを生成するとき、煙排出だけを開始する方法が提案されている。さらに最先端の技術は、米国特許出願公開第2018/0133416号明細書の文書から得られる。本発明の特許文書では、代替の方法が説明されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は低侵襲手術のための吸入器に関し、吸入器は、a)比例弁、圧力センサ、及び流量測定デバイスが装備される圧力及び流量調整ユニットと、b)選択式フィルタ及び第1のトロカールへの接続線を有する供給ラインと、c)排出力が制御可能である排出デバイスに接続される、排出ホース及び選択式フィルタを有する第2のトロカールと、d)排出ラインの選択式流量測定デバイスと、e)電子調整ユニットまたは機械調整ユニットと、f)排出体積流量を調節するための新規方法とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の通気デバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
小さな漏れがある場合、吸入器は、最先端の技術(国際公開第2015/043570号)で説明されているように動作する。ガス接続部(1)は、ライン(2)を介して、供給ライン(4)の圧力及び流量調整ユニット(3)に導かれる。圧力及び流量ユニット(3)には、ラインの圧力を監視するために、圧力センサが設けられている。さらに、流量測定デバイス(5)は、圧力及び流量ユニット(3)の後ろに体積流量測定のために搭載される。さらに、患者を保護するためのフィルタ(6)が設けられている。供給ライン(7)は、体腔をガスで満たすことができる第1のトロカール(8)で終端する。吸入器は、さらに、排出ホースとして働く第2のホース(10)を含む。体腔(9)に導入される第2のトロカール(9)は、この排出ホース(10)によって、吸入器に接続される。排出ホースは、また、選択式フィルタ(11)を備え、ライン(13)を介して、排出ポンプ(14)に導かれる。排出ポンプの排出力は制御可能である。ライン(15)を介して、吸入器(16)から煙を排出する。排出体積流量は、選択式流量センサ(12)によって測定できる、または、排出ポンプ(14)の電力によって決定できるのいずれかである。先行技術の吸入器と異なり、本発明に従った吸入器は、排出体積流量の新規のインテリジェント制御方法を含む。
【0010】
排出体積流量を調節するための新規方法は以下のステップ(a)~(d)を含む。
【0011】
(a)現在の最大通気力の決定:
最大通気体積流量は、主に、使用したトロカール器具の組み合わせの流れ抵抗及び最大圧力によって決まる。この圧力は、一般的に、患者に対するさらなる許容リスクをもたらす値に設定され、圧力はさらに増加してはいけない。最大可能通気体積流量を決定するために、異なる方法を使用できる。例えば、トロカール器具の特性を決定するアルゴリズムを使用できる。代替として、最大通気力を決定するために、カルマンフィルタまたはルーエンバーガオブザーバ等の数学モデルを使用できる。
【0012】
(b)現在の漏れ体積流量qLeakageの判定:
漏れは、また、数学モデルによって推定できる。代替として、平均漏れは、また、平均通気体積流量から平均排出体積流量を減算することによって、近似的に計算できる。
【0013】
(c)最大可能排出体積流量qEvacuation,maxの計算:
最大通気流量から、決定された漏れを減算し、次に、0~1の安全率を乗算することによって計算し、理想的に吸入器にかかる荷重を定義する。一般的に、安全率の値は0.6~0.9である。
【0014】
(d)最大交換流を超えるかどうかの検証:
高い排出体積流量に調節されたままの状態になることを防止するために、この状況で漏れが既に高いガス交換を生じさせるときでさえ、排出体積流量をさらに制限する。この目的のために、最大交換体積流量qExchange,maxを定義する。qExchange,maxの標準値は10~20lpmである。値は、グラフィカルインターフェースによって調節できる、または吸入器に固定して設定される、もしくはソフトウェアによって調節されるのいずれかである。次に、方程式qEvacuation,max+qLeakage≦qExchange,maxを満足するように、最大排出体積流量qExchange,maxを制限する。言い換えれば、最大排出体積流量及び推定漏れの合計は、qExchange,maxの規定値よりも大きくなってはいけない。
【0015】
(d)医師によって調節された排出体積流量が計算した最大排出体積流量qExchange,maxよりも大きい場合、標的排出体積流量は、最大可能排出体積流量qEvacuation,maxになるように制限する。
【0016】
(e)最大可能排出体積流量は、漏れの変化またはトロカール器具の組み合わせの変更に連続的に適応できることをするために、計算を周期的に(例えば、1秒毎)繰り返す。
【0017】
説明のための計算例
(a)トロカール器具の組み合わせの特性は、qInstrument=0.2lpm/mmHg×pHose(qInstrument:体積流量、pose:ホースの圧力)のように決定される。許容できる安全な圧力は100mmHgであり得る。次に、最大体積流量は、qmax=0.2lpm/mmHg×100mmHg=20lpmとなる。
【0018】
(b)漏れは、10lpmであるとオブザーバまたは別の方法によって推定される。
【0019】
(c)安全率は0.8として選択される。次に、最大排出流量qEvacuation,max=20lpm×0.8-10lpm=6lpmが求まる。
【0020】
(d)医師が例えば8lpmの排出体積流量を選択しているとき、これは、選択した排出によって圧力が過剰に減少することを防止するために、最大排出体積流量(qEvacuation,max=6lpm)まで減少する。
【0021】
(e)最大交換体積流量qExchange,maxが18lpmになるように設定されたとき、条件qEvacuation,max+qLeakage≦qExchange,maxを満足する。したがって、交換体積流量は、最大排出体積流量と同じ量だけ、さらに減少しない。最大交換体積流量qExchange,maxが12lpmになるように設定されているであろうとき、排出体積流量は2lpmまで減少するであろう。
【0022】
(f)計算を周期的に繰り返し、例えば、最大通気力qmaxが減少するとき、また、qEvacuation,maxを調節する。
図1