(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】植物の増殖システム、装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A01G 2/00 20180101AFI20240719BHJP
【FI】
A01G2/00
(21)【出願番号】P 2021502764
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(86)【国際出願番号】 AU2019050740
(87)【国際公開番号】W WO2020010412
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-07-06
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521019141
【氏名又は名称】ロウズ ティーシー プロプライアタリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ロウ、グレッグ
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/096568(WO,A1)
【文献】特開2003-102300(JP,A)
【文献】特開平02-190118(JP,A)
【文献】国際公開第2018/041308(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/129683(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/014933(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0180171(US,A1)
【文献】米国特許第7207138(US,B1)
【文献】米国特許第4447983(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 2/00 - 2/38
A01G 7/00 - 9/08
A01H 1/00 - 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの植物を相対的に離間させて保持する保持器であって、前記保持器は2つ以上のトレイを有し、各トレイは複数の貫通開口を有し、前記2つ以上のトレイは、それぞれの前記貫通開口が整列されて貫通通路を形成するように、前記トレイのスタックを形成するよう積層可能であり、前記植物が前記貫通通路を通って成長可能である、保持器と、
前記トレイのスタック内の各一対の隣り合うトレイの間で、前記植物に対して横方向の切断操作を行うように適合された、切断機構と、
ベース部と蓋部とを有するコンテナであって、前記ベース部は前記トレイのスタックを取り外し可能に収納するために開放された上部を有し、前記蓋部は前記ベース部の前記開放された上部の周りに取り外し可能に取り付け可能であって、それにより前記コンテナを閉鎖する、コンテナと、
前記コンテナに栄養素供給物を選択的に供給するための培地送達システムであって、所定量の栄養素供給物を保持するための可撓性の栄養素容器を含む培地送達システムと、
前記可撓性の栄養素容器と操作可能に関連する作動機構であって、前記可撓性の栄養素容器を選択的に変形させて前記栄養素供給物を供給ラインを介して前記可撓性の栄養素容器から前記コンテナへ流動させることが可能であり、前記供給ラインは、前記栄養素供給物を前記コンテナに充填し又は前記コンテナから排出することができるように、前記可撓性の栄養素容器のポートに接続可能な第1端および前記コンテナに関連するポートに接続可能な第2端を有する、作動機構と、
を含む、植物増殖システム。
【請求項2】
各トレイ内の前記複数の貫通開口は規則的配列に配置される、請求項1に記載の植物増殖システム。
【請求項3】
各トレイ内の前記複数の貫通開口は不規則的配列に配置される、請求項1に記載の植物増殖システム。
【請求項4】
前記切断機構は、前記少なくとも2つの植物を手動切断するための手持ち切断工具を含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の植物増殖システム。
【請求項5】
前記切断機構は、前記各一対の隣り合うトレイの間に摺動可能に受け入れられて、前記少なくとも2つの植物に対して前記横方向の切断操作を起こさせることが可能な、板状またはブレード状の切断要素を含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の植物増殖システム。
【請求項6】
前記培地送達システムは圧力供給システムである、請求項
1~請求項5のいずれか1項に記載の植物増殖システム。
【請求項7】
トレイのスタックを持ち上げて運ぶためのキャリアを更に含む、請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載の植物増殖システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年7月13日出願の、オーストラリア仮特許出願第2018902543号、第2018902545号及び第2018902546号の利益を主張し、その各仮出願の全体は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示は、植物の育成及び増殖のため、より具体的には植物組織培養における植物の育成に使用するためのシステム、方法及び装置に関する。
【0003】
本発明は、主として植物組織培養における植物の育成に使用するために開発されたものであり、主にこの文脈で説明する。ただし、本発明はこの特定の使用分野に限定されるものではなく、無菌及び非無菌の用途、特に温室及び屋外環境の用途を含む多種多様な用途に潜在的に適用可能であることが理解されよう。
【背景技術】
【0004】
先行技術に関する以下の議論は、本発明を適切な技術的文脈に位置づけ、その利点をより完全に理解されるようにすることを意図している。ただし、本明細書における先行技術へのいかなる言及も、そのような技術が関連分野において周知又は共通の一般的知識であることを明示的又は暗示的に認めるものとみなされるべきではない。
【0005】
商業的植物組織培養(PTC)は、家庭及び景観のための装飾物、切り花、植物再生、園芸用食用作物、医薬用作物、並びに林業を含む園芸産業のための植物のクローンマイクロ増殖である。歴史的には、PTCは種子及び根のない挿し木(URC)による方法に比べて費用の掛かる植物増殖方法であった。ただし、PTCは増殖困難な植物や、高い健康状態で供給する必要のある植物に対するニッチ市場を見いだした。
【0006】
オーストラリアでは年間約1500万~2000万のPTCが、そして世界全体では約5億のPTCが植えられているが、これは種子法及び根のない挿し木生産法(URC)や、標準的な挿し木増殖による園芸植物の年間総生産量のごく一部でしかない。一例として、ヨーロッパでは、切り花生産のために、個別の植物育種会社及び増殖会社は毎年5億個を超える菊のURCを生産可能であり、オーストラリアでは毎年8億個を超える砂糖キビの苗が植えられ、米国では樹木種苗場によって、毎年約15億の樹木が生産、出荷されている。
【0007】
URC、挿し木、種子に比較したコストを除いて、多くの植物はPTCによって優先的に生産される。それは種子、挿し木、URCに比べてPTCで作られた作物には育成者にとって、高い健康性、非季節性、高い分枝形成力及び全体的な初期成長活力などの利点があるからである。
【0008】
例えば、オーストラリアでは毎年約160,000トンの健康の保証された種芋が栽培者によって植え付けられていると推定される。これらの種芋は百~2百万の健康なPTCから生産されて、露地で最大4年間育成、増殖されて栽培者のコストが低減される。ただしそうすることで、増殖される4年間の間に種芋は病原体に曝される。PTCのコストが低減すれば、使用されるPTCの数が増加し、露地で生産される世代数が減少もしくはなくなり、農家はより健康なストックを入手可能となる。
【0009】
PTCの主たるコストは労賃に関するものであり、いくつかの地域においては、PTCの全運用コストの80%超が生産賃金である。このことが、低賃金環境へのPTC会社の移転をもたらした。
【0010】
さらに、時間当たりの賃金が2ドル未満の開発途上国では、賃金は大幅に(例えばPTC当たり1~3セントまでに)減少し得るものと推定される。
【0011】
しかしながら、これらの国では賃金上昇を経験しつつあり、また、植物を必要とする市場からははるかに離れているために、輸送及び検疫が主たる追加コストとなって、オーストラリアに送られる積荷に関してはPTC当たり5~20セントが更にかかる。またこれらの国から他の主要マーケットに対しても同様のコストが推定される。
【0012】
出荷されるPTC[及びURC]の生育力に対して輸送遅延は壊滅的であって、年間で30%のコスト増加となり得る。これにより、供給が不安定となり、顧客にとっての重大な因子となる。植物の国際的な移動は、すべての国及び産業にとって主たるバイオセキュリティのリスクでもあり、国際的な取引によって複数の国に新たな病疫がもたらされたケースが数多く報告されてきた。
【0013】
低開発国を供給源とする、PTCにより増殖された植物は、より先進国の市場近くでなされる種子又は挿し木生産よりもなお高い。現在のところオーストラリアでは低賃金国からのPTCは、オーストラリアで育成されたPTCの0.80ドルから1ドル+に比べて、PTC当たり0.25~0.80ドルで売られている。これは、種子当たり0.05ドル未満の平均コストで入手可能な種子、及び品種や供給元によって0.10~0.40ドルの平均コストで入手可能なURCに比較される。これらの製品は全て、最終顧客/栽培者が使用可能な形態(すなわち硬化プラグ)に育成されなければならず、この硬化プラグの値段は現在のところ、PTCの0.70ドルから1ドル+に対し、種子法で約0.15~0.40ドル、挿し木で0.30~0.75ドルである。
【0014】
PTC生産者にとっては、クローンPTCの自動化手順を開発して、市場の近くでの生産を可能とし、かつPTCを挿し木生産又は種子に対する高信頼な代替として使用されるようにすることが長年の目標であった。競合力のあるPTCの生産価格が達成可能であれば、クローン製植物の大部分が使用される高賃金国にPTC生産を戻すことも可能であろう。この高賃金国へ戻す動きにより、国際的な輸送及び検疫の問題が排除されるであろう。
【0015】
1990年代にフォーバイオ・プロプライエタリー・リミテッド(Forbio Pty Ltd)社は、視覚システムと、一組のツールを有するロボットアームとを用いて、人間の作業者の仕事を再現する、4つのPTCロボットの構築に成功した。しかしながら、実際にはこのロボットは労働コストをせいぜい約半分に低減しただけであり、植物は依然として個別に処理され、かつ高い技術水準の作業者の関与をまだ必要とした。この機械はまた、法外に高価であり、かつ信頼性が低かった。これらの機械はインドネシアのモンサント林業社(Monsanto Forestry)で約2年間稼働した後、使用されなくなった。
【0016】
オーストラリアのクイーンズランド州のニュープラント(NuPlant)社はプラスチックポッドシステムを有するスマートクローンロボット、ロボットアーム及びツールを生産した。ただしこのシステムは、植物の切断/分割場所の決定及び植物の手動切断を依然として人間の作業者に依存している。こうして、この機械もまた人間の作業者の速度に制限され、低賃金国のコストに比べて賃金コストを大幅に低減してはいない。
【0017】
オランダのビトロプラス(VitroPlus)社は、液体培地システムでシダの配偶体を利用するシステムによってシダの培養を自動化した。これは混合して大量のクローン増殖をさせ、無菌液体分注処理により1時間に数千の小植物(胞子体)を分注可能である。ただし、シダは他の植物に比べて非常に異なったライフサイクルを有しており、そのためにこのような育成が可能となる。この技術は藻類を除く他の植物への使用には成功していない。
【0018】
それにも拘らず、一部ではビトロプラス社は今や最も成功したPTC企業であると考えられており、そのオランダの拠点から世界中のほとんどの国へ輸出を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
植物増殖コスト低減のために、ロボットと同様に他の方法も広範囲の作物に対して試されてきた。通常バイオリアクターが用いられ、多くの方法では体細胞胚形成に人工的な種子技術を組み合わせて、消費者に植物を届けている。体細胞胚が形成されるとき多くの異形/変異体が発現するために、体細胞胚形成は一般的に信頼性の低いクローン生産となる。そのためクローン増殖ツールとして商業化に成功したものは(あるとしても)僅かである。
【0020】
さらには、バイオリアクターで育成された植物には生理学的変化を生じることが多い。それにより、処理後に植物を育成することがより困難で高価となる。したがって、他の既存の技術によくある、変異体,ガラス化及び低い再生成功率などの体細胞胚形成の1つ又は複数の欠点に対処するPTC増殖システムを提供する必要がある。
【0021】
現在の技術では、1人の作業者は現状で1時間に約150~200の植物を増殖可能であると推定される。したがって、本開示の目的は、PTC増殖速度を増加可能なシステムを提供することである。
【0022】
従来の商業使用されているPTCの別の欠点は、「デフラスキング(”deflasking”」の段階で現れる。デフラスキング中に、環境的に安全で充分に殺菌されたPTCコンテナで生産されて育成された、対象植物の実生及びクローンは、コンテナから移されて標準的な植物苗床条件に「導入」される。現在のところ、デフラスキング段階では低賃金国から受領したPTCを、高賃金国のスタッフが一度に1つずつ差し込みトレイに配置する。これが育成者にとって別の大きなコストとなる。
【0023】
PTCは伝統的には、1から約50の植物を領域全体にランダムに配置して保持するコンテナ内で育成される。これらの植物はPTCの各段階で個別に処理される。これらの植物は、次にハードニングのために手動で、かつ通常は個別に温室へ移される。汚染が主要な問題であり、人の処理によるために従来のPTC及び他の温室増殖方法に係わるコストも同様に問題である。
【0024】
PTCは伝統的に、使用前に殺菌されてコンテナ内部に設置された無菌ゲル培地を有する密閉コンテナ内で行われる。コンテナは通常ガラス又はポリカーボネート製であって、ポリプロピレン製のねじ式蓋と、リサイクルされた、あるいは使い捨てのポリプロピレン容器と蓋の上のクリップとを有する。
【0025】
この設計の欠点は、高い労働コスト及び時間コストがかかる別のコンテナへの移動なしでは、培地の交換や植物の処理ができないことである。
【0026】
ゲル化剤は植物の成長に影響を与え得る。しかし液体培地に(たとえ部分的であっても)常に浸漬されている植物の殆どは、ガラス化(過水状態化)などの生理学的状態になることが多く、植物の育成やデフラスクを成功させる能力が下がる。一時的浸漬システムにより、一日に数分間を数回だけ、植物チャンバ内に液体培地を導入することで、ゲル化剤と定常的な液体への浸漬のマイナス面を成功裏に克服した。これにより、植物は栄養素を取得して植物ホルモンへ露出され、その後排水されて低湿度と空気乾燥にさらされる。その結果いかなる生理学的問題も発生しない。
【0027】
TISシステムの殆どは、空気圧と、複雑な2室コンテナ、又は底部から植物室内へ強制的に液体培地を上昇させる多くの内部部品を有するコンテナを使用する。そうして空気ポンプと制御器、並びに無菌システムを維持するための空気フィルタと強力な密封構造とを必要とする。
【0028】
本開示の目的は、現状のシステムおよび手法の1つ以上の欠点を克服もしくは改善するか、あるいは少なくとも有用な代替手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の第1の態様によれば、植物増殖システムが提供される。これには、少なくとも2つの植物を相対的に離間させて保持する保持器が含まれ、それにより保持器内の各植物に対して、1回の動作で所定の操作の実行を可能とする。
【0030】
いくつかの実施形態では、この操作は切断操作である。いくつかの実施形態では、切断操作は個別の植物に対して一度に1つずつ、順番に実行される。いくつかの実施形態では、切断操作は、保持器内の2つ以上の植物に対して実質的に同時に行われる。いくつかの実施形態では、切断操作は、保持器内の所定数の植物に対して実質的に同時に行われる。いくつかの実施形態では、切断操作は、保持器内の各植物に対して実質的に同時に行われる。
【0031】
いくつかの実施形態では、切断機構が保持器内の各植物を切断するために提供される。いくつかの実施形態では、切断機構は、保持器に対して可動であって、切断操作を実行するための切断要素を有する。好ましくは、切断機構は各植物の茎の長手軸に対してほぼ横断するか直交する方向から各植物を切断するように構成されるか、あるいは使用時に配置される。すなわち、切断機構は好ましくは各植物を軸方向又は横方向に切断し、より好ましくは各植物の茎を軸方向又は横方向に切断するように構成される。
【0032】
いくつかの実施形態では、保持器には2つ以上の開口を有するトレイ又はプレートが含まれ、各開口は植物の少なくとも一部を受けるように構成される。好ましくは、各開口は単一の植物の一部を受けるための専用のものである。好ましくは各開口は各植物に対して貫通孔又は貫通通路を画定し、それによって植物がトレイを貫通して上方へ成長することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、各トレイは同一の外周プロファイル又は外周形状を有する。いくつかの実施形態では、各トレイはほぼ長方形の形状である。他の実施形態では、各トレイはほぼ正方形、円形、楕円形、多角形、あるいは不規則形状を含む他の適切な形状であってよい。
【0034】
各プレートは好ましくは所定の厚さを有する。例えば、各プレートは8mm、10mm、12mm、15mm、18mm、20mm又は25mmの厚さ又は高さを有してもよい。各プレートの厚さ又は高さは上記の例示した値に限られるものではなく、厚さ又は高さはむしろ植物の特定の種類に合うように選択され得ることが理解されるであろう。
【0035】
いくつかの実施形態では、各トレイの開口はすべて同一形状である。各開口は規則形状あるいは不規則形状であってもよい。いくつかの実施形態では、各トレイの開口はすべて同じ大きさである。いくつかの実施形態では、各トレイは様々な形状と大きさの開口を含んでもよい。いくつかの実施形態では、各トレイの開口は、これに限るものではないが、円形、楕円形、正方形、長方形、三角形、六角形及び他の多角形を含む群から選択される(断面)形状を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、各トレイの開口は規則的又は不規則的な配列又はパターンで配置される。いくつかの実施形態では、各トレイの開口は極性配列となっている。例えば、開口が正方形配列、交互の列が所定量(例えば開口の大きさの50%)だけずれたオフセット配列を形成するように配置可能であり、これにより隣り合う開口との間の距離を短縮可能であって、必要であればプレート当たりの開口を増やすことが可能である。好ましくは、各トレイは、開口の外形及びパターンが同一である。
【0037】
いくつかの実施形態では、保持器は2つ以上のトレイ又はプレートを含み、プレートは積層可能であってプレートの塔を形成する。好ましくは、各プレートは同一の形状及び構成を有する。2つ以上のトレイ又はプレートを垂直の塔又はスタックとして配置可能であることは、1つのトレイの穴を、この第1のトレイに積層される第2のトレイ及び任意の更なるトレイのそれぞれの穴に位置合わせすることによって、特定の植物の種類にとって適切な所定の高さの貫通通路の構築を可能とする。植物はそこを貫通して上方へ成長可能となる。こうして、複数のトレイを互いの上に、それぞれの穴が位置合わせされるようにして積層し、関連する1つ又は複数の貫通通路が積層されたトレイのトレイ厚さに応じた所定の高さで形成されるようにすることが可能である。
【0038】
いくつかの実施形態では、各トレイは、バイオリアクターのベース部内に密接嵌合して収納されるように構成される。いくつかの実施形態では、各トレイはその幅がバイオリアクターのベース部の内側の幅に実質的に一致するようになっている。いくつかの実施形態では、各トレイはその長さがバイオリアクターのベース部の内側の長さに実質的に一致するようになっている。いくつかの実施形態では、各トレイは、バイオリアクターのベース部内に2つ以上の個別のトレイのスタックを配置可能なように構成され、それによって成長プロセスと、使用時のトレイの操作及びハンドル方式の柔軟性とが強化される。例えば、バイオリアクターのベース部及びトレイは、2、3、又は4個の個別のトレイのスタックをその中に受けるように構成され得る。
【0039】
特定の形態において、各トレイは、手動か又は既存のトレイハンドリング設備を用いるかのいずれかで、(例えば、無菌環境から非無菌環境への)バイオリアクターから次の段階の成長プロセスへの移行が可能な大きさ及び構成となっている。このことは、バイオリアクターのトレイから、例えば温室又は屋外のトレイなどの第2段階のトレイへ植物を移す必要がなくなるので、特に有利である。いくつかの実施形態では、各トレイは、横並び又は前後に複数のトレイを解放可能に接続する1つ以上のコネクタを有してもよい。これにより実効的により大きな組合せトレイが形成される。いくつかの実施形態では、トレイの第1の側面及び/又は端部は1つ以上の第1のコネクタを有し、トレイの第2の側面及び/又は端部は1つ以上の第2のコネクタを有して、それぞれ第1と第2の側面及び端部のコネクタが相互に解放可能に係合して、2つ以上のトレイを一体接続するようになっている。そのようなより大きな組合せトレイは、特にトレイに次の成長段階のために無菌(研究室)環境から非無菌(温室又は屋外)環境へ移行されようとする植物が含まれる場合、トレイの容易なハンドリングを促進するように有利に使用され得る。このように、植物が無菌環境を出た後に、更なる植物の成長に使用される、関連する下流のプロセス及びシステムに関わるハンドリング設備(例えば手動又は自動化ハンドリング設備)内で機能する大きさのトレイ又は組合せトレイ構成を作製可能である。
【0040】
いくつかの実施形態では、各プレート又はトレイは一様な厚さを有する。いくつかの実施形態では、各プレート又はトレイには1つ以上の厚さの薄い部分が含まれ、これがトレイのスタックから所望のトレイ又はトレイのサブセットを選択及び除去することに役立ち、及び/又はトレイのスタック内の隣接トレイ間での操作の実行を容易にする。いくつかの実施形態では、各トレイには、開口が形成された主本体部又は中央本体部と、それぞれのトレイの端部から外方向に延在して、トレイのハンドリングを助ける1つ以上の突起が含まれ得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、各トレイ又はプレートには、隣り合うトレイ同士を配置して位置合わせされた状態に解放可能に保持し、それによりプレートのスタックを形成してスタックの構造的強度の強化を促進するための、相補的な位置決め要素が含まれ得る。いくつかの実施形態では、相補的な位置決め要素には、各トレイの上面に付属する第1位置決め要素(例えば突起又はリセス)と、各トレイの下面に付属する第2の位置決め要素(例えばリセスと突起)が含まれ、第1の位置決め要素が第2の位置決め要素に解放可能に係合して、各トレイを配置及び位置合わせさせるようになっていてもよい。ただし、隣り合うトレイ間に障害物が延在せず、一対の隣接トレイ間での切断操作が自由に実行可能となるように、トレイには位置決め要素を形成しないことが望ましい。
【0042】
いくつかの実施形態では、トレイの開口で画定される通路は、植物がこの通路を通して成長する際のガイドとして作用し、また必要であれば植物を支持する。好ましくは、各開口の側壁の内周面が、通路内での植物の横方向移動の範囲を制限し、それによって植物を概ね上方向又は垂直方向にガイドするように作用する。他の実施形態では、専用のガイド部材を設けてもよい。
【0043】
特定の実施形態において、保持器は、各植物を保持するための1つ以上の把持要素又は把持機構を含み得る。例えば、各把持要素または把持機構は、植物の挿入及び取り出しのための開位置と、各植物を保持するための閉位置との間を可動な、1つの顎又は一対の顎を含んでもよい。特定の実施形態において、把持要素は、例えば予め張力がかけられたコイルバネ又は他の適切な機械的付勢要素を設けることで、閉位置方向へ付勢されていてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、切断操作は、一対のプレート間の相対的並進摺動運動によって実行可能である。いくつかの実施形態では、切断機構がプレートのスタック内の一対のトレイの間で切断操作を遂行するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、切断機構がプレートのスタック内のトレイの各ペアの間で切断操作を遂行するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、切断機構がスタック内のプレートの複数ペアの内のいくつかの間で切断操作を遂行するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、切断機構がスタック内のプレートの選択された各ペアの間で切断操作を実質的に同時に遂行するように構成されてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、切断機構には、好ましくは2つ又はそれ以上の植物を同時に切断するように構成された、植物の手動切断のための専用手持ち切断工具が含まれる。いくつかの実施形態では、切断機構は制御器に操作可能に関連付けられ、それによって植物の自律的又は半自律的な切断を容易とする。例えば、切断要素は(直接または間接に)アクチュエータに接続され、それによってトレイのスタックに対する切断要素の配置及び移動が行われて、所望の切断動作が遂行される。いくつかの実施形態では、切断機構(例えばブレード、レーザ、ワイヤ要素など)が直線アクチュエータに接続されるか又はロボットアームのエンドエフェクタとして接続されてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、切断工具にはブレードの形状をした切断要素が含まれる。いくつかの実施形態では、切断工具には切断工具を接続するハンドル部が含まれ得る。いくつかの実施形態では、切断工具は、隣り合うトレイのそれぞれのペアの間に摺動可能に受けられるようになった、比較的薄い板状の切断要素を含み、それによって植物への横方向切断操作を実行する。他の形態では、切断機構が、隣り合うトレイのそれぞれのペアの間に摺動可能に受けられるようになった、ある長さの小径ワイヤを含み、それによって切断操作を実行するようになっていてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、切断要素はハンドル部に可動接続されて、ブレードが一般的にハンドル部から展開された操作位置と、切断要素がハンドル部に隣接する非動作位置との間を移動する。例えば、切断要素はハンドル部に、枢動接続あるいはヒンジ接続されていてもよい。いくつかの実施形態では、ハンドルは切断要素と操作可能に関連付けられて、ハンドルを動かすことで、切断要素に対応した動きを起こさせるようになっている。いくつかの実施形態では、ハンドルは切断要素と操作可能に関連付けられて、ハンドルの第1の方向への直線運動が、切断要素に対応した切断運動を起こさせるようになっている。いくつかの実施形態では、ハンドルは切断要素と操作可能に関連付けられて、ハンドルの第2の方向への直線運動が、切断要素の対応する後退運動を起こさせるようになっていて、それによって切断操作が終了すると切断要素を後退させる。いくつかの実施形態では、ハンドルは切断要素と操作可能に関連付けられて、ハンドルの第1の方向への回転運動が、切断要素に対応した切断運動を起こさせるようになっている。いくつかの実施形態では、ハンドルは切断要素と操作可能に関連付けられて、ハンドルの第2の方向への回転運動が、切断要素に対応した後退運動を起こさせるようになっていて、それによって切断操作が終了すると切断要素を後退させる。
【0048】
いくつかの実施形態では、切断要素は切断操作時に揺動又は振動するように構成されている。いくつかの実施形態では、揺動又は振動は、垂直方向、水平方向、1つ以上の対角線方向又は軸からずれた方向、あるいはそれらの組合せであってよい。
【0049】
さらに別の形態では、切断機構には切断操作を実行するために、隣り合うトレイの間にレーザビームを通すように適合されたレーザシステムや、隣接トレイ間に流体(例えば水)の流れを通すように適合された高圧ノズルが含まれ得る。レーザビームや流体のジェットあるいは流れは、切断操作が完了するまで、各トレイの長さ全体に亘って1回以上連続的に適用されてもよい。他の形態では、レーザビーム又は流体(水)の流れは、任意選択で所定の時間間隔で、あるいは、手動のユーザ操作に適合されたアクチュエータ(例えばボタンまたは引き金)を介して選択的に、パルスで適用されてもよい。特定の実施形態において、切断機構が植物に対して直接または間接的に振動動作を遂行するように適合されて、それ単独又は他の切断装置や機構との組み合わせで切断動作を促進してもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、プレート又はプレートのスタックがコンテナ又は容器、好ましくは開放された上部を有するコンテナの内部に嵌合するようになっている。コンテナ又は容器は好ましくは植物を育成するためのバイオリアクターを形成するように適合される。好ましくはコンテナは、トレイのスタックを解放可能に収納するための開放上部を有するベース部と、ベース部の開放上部の周りに解放可能に取り付け可能であって、それによりコンテナを閉鎖する蓋部とを有する。好ましくは、蓋はその開放上部の周りでベースに密封係合する。
【0051】
いくつかの実施形態では、密封要素が蓋とベースの開放上部の周囲との間にあって、蓋とベースの間の密封係合を強化する。好ましくは密封要素は弾性的に圧縮可能である。いくつかの実施形態では、蓋部にはその周囲の周りに広がる溝が含まれ、この溝はその中に密封要素を受けるようになっている。いくつかの実施形態では、密封要素は連続ループの形状をしている。好ましくは、連続ループはshapeの形状に対応するように構成されている。いくつかの実施形態では、連続ループは概ね長方形の形状であって、任意で丸い角部を有する。いくつかの実施形態では、密封要素は、所定厚さの均一な断面形状を有する。いくつかの実施形態では、シールの厚さは、溝の深さの約半分であり、シールの第1の(下側の)半分はベース部に付属する溝に受けられ、シールの第2の(上側の)半分はバイオリアクターの蓋部に付属する溝に受けられる。
【0052】
いくつかの実施形態では、バイオリアクターのベース部と蓋部は同一の形状と構成を有する。そのような実施形態では、ベース部と蓋部は入れ替え使用可能であり、これは、多くのバイオリアクターを使用する植物増殖システム内で、バイオリアクターの個別の部分を識別して配置する必要がないという点で有益である。
【0053】
いくつかの実施形態では、各蓋部は、開放端部の周縁に、又はそれに隣接して配置された1つ以上の配置要素を有し、そこにベース部が位置決めされてコンテナ/バイオリアクターを閉じ、及び/又はベース部と蓋部の間の位置合わせの維持を助ける。いくつかの実施形態では、各ベース部は、開放端部の周縁又はそれに隣接して配置された1つ以上の配置要素を有し、そこにベース部が位置決めされて容器/バイオリアクターを閉じ、及び/又はベース部と蓋部の間の位置合わせの維持を助ける。いくつかの実施形態では、配置要素あるいは配置要素のそれぞれは、関連する周縁から突出するタブである。いくつかの実施形態では、配置要素は、関連する蓋部あるいはベース部の周縁の周りの所定の離間位置に配置された複数のタブを含む。いくつかの実施形態では、各蓋部又はベース部は一対のタブを含み、その一対のタブの各タブは、開口の対角線で対向する角部に配置される。
【0054】
いくつかの実施形態では、コンテナには少なくとも1つのポートがあり、そこを経由して栄養素供給物をコンテナに充填し、またコンテナから排出することができる。いくつかの実施形態では、栄養素供給物は液体状態である。
【0055】
好ましくは、コンテナには栄養素供給物をコンテナ内部に充填することができる専用の入口ポートがあり、それにより植物の成長が促進される。いくつかの実施形態では、入口ポートはコンテナの上部領域の近くに配置される。いくつかの形態では、入口ポートはコンテナのベース部に配置されてよい。他の形態では、入口ポートはコンテナ/バイオリアクターの蓋部に配置されてよい。いくつかの実施形態では、コンテナは2つ以上の入口ポートを有し、それにより各入口ポートを、栄養素供給物の別々の成分又は構成要素のコンテナへの充填に使用可能である。好ましくは、コンテナは少なくとも1つの専用出口ポートを有し、栄養素供給物をコンテナから排出することができる。いくつかの実施形態では、出口ポートはコンテナのベース部の下部領域の近く配置される。
【0056】
好ましくは、コンテナは1回分の栄養素供給物がベース部に充填されるとき、栄養素供給物がコンテナのベースに溜まり、それによって植物の一部、例えば植物の根系又は基部に接触するようになる。いくつかの実施形態では、プレート又は複数のプレートのスタックの少なくとも最も下のプレートは、使用時に各植物の下部又は根のある部分が栄養素供給物に浸漬されるか、別の形で接触できるように、コンテナ内に配置可能である。
【0057】
好ましくは、コンテナは閉鎖位置で蓋部をベース部に確実にロックするための、解放可能なロック機構を含み、それによって両者の間の密封係合を促進する。いくつかの実施形態では、ロック機構はコンテナの蓋部とベース部を互いの方向に確実に引き付けるように作用し、それにより密封要素が設けられている場合にはそれの圧縮を支援して密封効果を強化する。
【0058】
いくつかの実施形態では、培地送達システムが設けられ、コンテナの内部(例えばベース部)に栄養素供給物を選択的に供給するためにコンテナに対して流体的に接続可能となっている。いくつかの実施形態では、培地送達システムは重力供給システムである。いくつかの実施形態では、培地送達システムは圧力供給システムである。いくつかの実施形態では、培地送達システムは圧力供給システムと重力供給システムの両方の組み合わせを含む。
【0059】
好ましくは、培地送達システムは、所定量の栄養素供給物や栄養素供給物の1つ以上の成分を保持するための栄養素容器を含む。好ましくは、導管または供給ラインが設けられて、栄養素供給物を栄養素容器と植物を育成するバイオリアクターとの間で流動させる。導管は好ましくは、ある長さの中空の円筒形チューブの形をしている。導管は好ましくはその第1端部を栄養素容器のポートに、その第2端部をバイオリアクターに付属するポートに接続可能であって、栄養素供給物をバイオリアクターに充填し、及び/又はバイオリアクターから排出することができる。それによりバイオリアクター内の植物の成長を促進するための所定の投与方式を容易にする。
【0060】
いくつかの実施形態では、投与方式には、単一のバッチ又は容量の栄養素供給物をコンテナへ送達することが含まれ得る。それにより、所定の時間間隔の間、任意で育成の全期間にわたり、複数の植物の植物部分(例えば基部、根系又は他の部分)に栄養素供給物が接触した状態に保持される。
【0061】
他の実施形態では、投与方式は一時的浸漬法であってもよい。そこでは、所定量の栄養素供給物を第1の所定の離散的時間間隔の間、コンテナに繰り返し充填し、その後、第2の所定の離散的時間間隔の間、容器から排出する。これにより栄養素供給物のコンテナへの充填、コンテナからの排出が所定のサイクル数及び/又は所定の継続時間にわたり生じる。
【0062】
いくつかの実施形態では、栄養素容器は比較的剛性がある(例えばプラスチックのボトル)。いくつかの実施形態では、栄養素容器は可撓性がある(例えば可撓性の袋又はバッグ)。好ましくは、作動機構は栄養素容器に操作可能に関連する。作動機構は、コンテナ/バイオリアクターに装填された栄養素容器から栄養素供給物を強制的に排出する作動位置と、栄養素供給物のコンテナへの流れを阻止する非作動位置との間を動くように構成される。いくつかの実施形態では、作動機構は供給ラインと流体連通する、選択的に操作可能な栄養素供給バルブである。
【0063】
可撓性の栄養素容器を使用するいくつかの実施形態では、作動機構は作動位置において可撓性栄養素容器を圧縮又は圧搾するか、あるいはその他の形で(一時的に)変形させるようになっており、それによって栄養素供給物を栄養素容器からコンテナへ供給ラインを介して流動させる。そのような実施形態において、作動機構が非作動位置に戻ると、作動機構は可撓性の栄養素容器との係合を解除するか、少なくとも部分的に解放して、栄養素供給物が供給ラインを介して栄養素容器に自由に戻るようにする。
【0064】
いくつかの実施形態では、例えば一方向弁又は逆止弁などの逆流防止機構が供給ラインに結合されて、作動機構が非作動位置にあるときに栄養素供給物の逆流を防止する。いくつかの実施形態では、作動機構が非作動位置にあるとき、栄養素供給物はコンテナから供給ラインを経由して自由に排出可能であって、任意選択で栄養素容器へ戻る(例えば一時的浸漬投与方式の場合)か、あるいは廃棄される。
【0065】
いくつかの実施形態では、栄養素制御器が培地送達システムに動作可能に関連付けられる。栄養素制御器は投与方式の自律的又は半自律的な制御を容易にするように適合される。いくつかの実施形態では、栄養素制御器はユーザの手動操作、したがって投与方式の選択的な手動制御を容易にするように適合される。
【0066】
いくつかの実施形態では、システムにはプレート又はプレートのスタックを無菌ハンドリングするためのキャリアが含まれる。好ましくは、キャリアは所望数のプレートの搬送に使用できるように構成される。いくつかの実施形態では、キャリアはプレートの全スタックを搬送できるように構成される。例えば、バイオリアクター内で育成される植物が、所定の成長段階に達すると、キャリアはトレイの全スタックをバイオリアクターのベース部から持ち上げて除去するようになっていてもよい。ここで、除去された、植物を有するトレイのスタックは、プレートのスタック内の植物に対して切断操作(あるいは他の所望の操作)を遂行できるように配置可能である。いくつかの実施形態では、キャリアはプレートの全スタックの群、又はその一部分を搬送できるように構成される。
【0067】
いくつかの実施形態では、各プレートにはキャリアとの係合を容易にするリフト構造がある。いくつかの実施形態では、リフト構造には各プレートのそれぞれの側縁に付属する一対の隆起、ノッチ、又は開口が含まれる。
【0068】
いくつかの実施形態では、キャリアにはハンドルと、ハンドルから延びる一対のアームがあり、アームがトレイ又はトレイのスタックに係合するようになっている。それにより、ハンドルを介してキャリアを動かすことで、トレイに対応する動きを生じさせて所望の配置とする(例えばトレイをコンテナから無菌除去するために)。好ましくは、アームはハンドルから下方向に延在し、それによって使用時にアームを上からコンテナのベース部の中に延ばして、トレイのスタックに係合させることが可能である。
【0069】
いくつかの実施形態では、各アームはその遠位端に付属するトレイ係合構造を有し得る。例えば、各アームは、そこから横に(すなわち互いに向かう内方向に)延びるレールとリップとを有してもよい。好ましくは各トレイがキャリアと係合し、それによってトレイの無菌ハンドリングを容易とするようになった、アーム係合構造を有してもよい。例えば、各トレイは、それぞれのトレイの側縁に付属する切り込み又はリセスなどの受け構造を有し、この受け構造がレール又はリップを解放可能に受けるようになっていてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、一対のアームは互いの方向に付勢され、それによってトレイ又はトレイのスタックとの係合を容易にする。いくつかの実施形態では、ボタンや引き金のような操作部材がアームに動作可能に関連し、操作部材の操作によって付勢機構の作用に逆らってアームを互いに引き離させる。好ましくは、操作部材は、ユーザの手又は指で選択的に操作可能である。
【0071】
いくつかの実施形態では、一対のアームが固定距離だけ離間した関係で保持される。ここで、リフト要素(例えば、突起、ピン、プレートなど)が配置されて各アームに対して(例えばトリガ又は他のユーザの動作を介して)可動となるように構成され、1つ又は複数のトレイを持ち上げるために少なくとも1つのトレイに係合する。固定距離だけ離間したアームの使用は、持ち上げプロセスの間にアーム間の相対移動が防止され、それによってトレイ又はトレイのスタックを所望の安全位置(例えば切断ステーションやそのほかの植物増殖システムによって使用されるステーション又はゾーン)に配置し終える前に離したり落としたりする可能性を低減するので特に有利である。
【0072】
いくつかの実施形態では、キャリアには上記のトレイを把持して移動させるための機械的アーム以外の手段が含まれ得る。例えば特定の実施形態において、キャリアは、これに限るものではないが、クランプ装置、磁気装置、吸引装置、ねじ式装置等を含む群から選択されるトレイの把持要素を含み得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、トレイのスタックを相対的に位置合わせして、好ましくは垂直方向に位置合わせして保持するための受台が提供される。これにより各トレイの位置合わせされた開口により画定される通路が開いた位置に維持される。
【0074】
いくつかの実施形態では、受台には床部分と、そこから上方に延在してその間にトレイのスタックを収納可能な一対の側縁部が含まれる。好ましくは、側縁部同士は、トレイのスタックが両者の間に密接嵌合する程度に離間し、それによりトレイの横方向移動が制限されてその位置合わせが維持される。
【0075】
いくつかの実施形態において、受台には、トレイのスタックが当接可能な後方停止部が含まれ、それによって受台の床部に対するトレイの後方移動の範囲が制限される。いくつかの実施形態では、後方停止部には、好ましくは床部の中心線に向かって内方向に延在する、各側縁部から横方向に垂れたフランジが含まれる。
【0076】
いくつかの実施形態では、床部の前縁を後縁に対して持ち上げるための持ち上げ部材が設けられる。これにより使用時に床部が前方から後方に向かって下向きの傾斜となり、トレイのスタックが後方停止部に接して自己配置することに役立つ。好ましくは持ち上げ部材は、床部の前縁に付属する、下方向に垂れた前方リップ縁である。
【0077】
いくつかの実施形態では、床部にはトレイのスタックと床部の間の摩擦を低減するための減摩要素が含まれる。それにより、トレイのスタックが床部を横断して相対的な並進摺動移動を容易に行えるようにし、トレイを受台との間で移動させるときにトレイのスタックの位置合わせが維持されるように支援する。例えば、減摩要素は、1つ以上の、好ましくは少なくとも2つの、床部の上面の上方に突出し、隆起した減摩レールであってよい。好ましくは、床部は一対の平行な減摩レールを有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、切断操作の後でトレイのスタックを小さいサブスタックに分割するために、分割プレートが提供される。好ましくは、分割プレートは薄いプレート構造として形成され、垂直に積層されたトレイの隣り合うペア間に滑り込むことが可能となっており、それにより、トレイのサブスタックを元のスタックから分離して持ち上げることを支援するプラットフォームを形成する。
【0079】
本発明の別の態様によれば、成長する植物に栄養素供給物を送達するためのシステムが提供される。このシステムは、所定量の栄養素供給物を保持するための栄養素容器と、栄養素容器と操作可能に関連する作動機構とを含む。これにより、作動機構を操作することで、栄養素供給物の少なくとも一部が栄養素容器から、又は栄養素容器へ流動させられる。
【0080】
好ましくは、栄養素供給物は液体状態である。それにより、必要に応じて、栄養素容器への、又は栄養素容器からの流動を容易に制御可能である。いくつかの実施形態では、栄養素供給物は、栄養素供給混合物の一成分から成ってもよい。これは、所定の成分投与割合に従って、栄養素供給混合物の他の1つ以上の成分と組み合わせることが可能である。
【0081】
本システムは、植物組織培養(PTC)の下で育成されている植物への液体栄養素供給物の送達での使用に特に有利である。したがって、本システムを、例示としてのみであるが、そのようなPTC用途を参照して説明する。ただし、システムはより広範囲の用途に対するポテンシャルを有し、植物育成のための様々な他のシステム、プロセス及び構成での使用に容易に適合可能である。
【0082】
特に、本システムは様々な植物種の育成のためのシステムでの使用に有利に構成可能である。例えば、システムは、所定の投与方式の下での栄養素供給物の送達に使用することができ、これに限るものではないが、樹木植物および無茎植物などの様々な種類の植物の成長を積極的に促進する。樹木植物は一般に木のような植物と呼ばれ、通常は単一の茎又は幹を有する。無茎植物は、典型的には地上あるいは土壌高さより上に茎が少ししかないか、全くなく、房状植物又はロゼット型植物と呼ばれることがある。
【0083】
好ましくは、選択的に制御可能な弁がポートに動作可能に付属し、それによってポートを実効的に開閉して栄養素供給物の流れを制御する。好ましくは弁は、栄養素供給物がポートを通って流動(流入又は流出)することのできる、第1又は開放の状態と、栄養素供給物がポートを通って流動(流入又は流出)することが阻止される、第2又は閉鎖の状態とを選択的に操作可能である。
【0084】
いくつかの実施形態では、弁は手動操作可能となっており、したがって弁の第1(開)状態と第2(閉)状態の間の移動にはユーザの手動操作が必要である。いくつかの実施形態では、弁は制御ユニットに動作可能に関連付けられ、第1(開)状態と第2(閉)状態の間の弁の自律的又は半自律的な制御を可能とする。いくつかの実施形態では、制御ユニットは、多様な相互接続された電子部品及び空圧部品を含み、それが弁を選択的に開閉してもよい。例えば、制御ユニットは、これに限るものではないが、一日の設定時間、所定の時間間隔、ユーザの作動又は入力、又はバイオリアクターや他の容器あるいは栄養素容器内の栄養素流体の量を検出し、又は成長する1つ又は複数の植物の特定のパラメータ(例えば大きさ-高さ又は幅、など)を検出するように適合された1つ以上のセンサの出力、に基づいて、所定の論理アルゴリズムの基に弁を操作するように構成されてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、バイオリアクターポートはバイオリアクターの側壁に形成される。いくつかの実施形態では、バイオリアクターポートはバイオリアクターの側壁の上部分に形成される。いくつかの実施形態では、バイオリアクターポートはバイオリアクター側壁の下部分に形成される。いくつかの実施形態では、バイオリアクターポートはバイオリアクターのベース又は床に形成される。いくつかの実施形態では、バイオリアクターポートはバイオリアクターの頂壁に形成される。いくつかの実施形態では、バイオリアクターポートはバイオリアクターのキャップ、カバー又は蓋に形成される。
【0086】
いくつかの実施形態では、導管の第1端は栄養素容器のポートに取り外し自在に接続可能である。いくつかの実施形態では、導管の第1端は栄養素容器のポートに固定接続される。
【0087】
いくつかの実施形態では、導管の第2端はバイオリアクターのポートに取り外し自在に接続可能である。いくつかの実施形態では、導管の第2端はバイオリアクターのポートに固定接続される。
【0088】
いくつかの実施形態では、導管の第2端は2つ以上のエンドコネクタを有するか、2つ以上のエンドコネクタのある継手を有する。それによって2つ以上のバイオリアクターへの接続を容易にして、各バイオリアクターへ実質的に同時に栄養素供給物を供給可能とする。好ましくは、別々の栄養素容器が使用されて、各バイオリアクターに対して専用の栄養素供給を行う。好ましくは、作動機構は栄養素容器に操作可能に関連する。作動機構は、栄養素供給物がコンテナに強制的に充填される作動位置と、栄養素供給物のコンテナへの流動が阻止される非作動位置との間を移動するように構成される。いくつかの実施形態では、作動機構は導管または供給ラインと流体連通した、選択的に操作可能な栄養素供給バルブを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、栄養素容器は比較的剛性がある(例えばプラスチックのボトル)。そのような実施形態では、作動機構はコンテナ内で可動に配置されたピストンの形態であってよい。ピストンの第1方向への移動が栄養素供給物の少なくとも一部をコンテナから流出させ、ピストンの第2方向への移動が栄養素供給物の少なくとも一部をコンテナへ流入させることができる。好ましくはピストンは、栄養素容器の長手軸に沿った選択的な摺動運動をするように構成される。
【0090】
好ましくは、栄養素容器は可撓性があって(例えば可撓性の袋又はバッグ)、栄養素容器に圧縮力がかると、栄養素供給物の少なくとも一部がそのポートを介して栄養素容器から排出され、バイオリアクターに流れてその中の植物の成長を促進可能である。圧縮力は栄養素容器に、直接的又は間接的に加えることができる。
【0091】
可撓性の栄養素容器を使用するいくつかの実施形態では、作動機構はその作動位置において可撓性栄養素容器を圧縮又は圧搾するか、あるいはその他の形で(一時的に)変化させるか変形させるようになっており、それによって供給ラインを介して栄養素供給物を栄養素容器からコンテナへ強制流動させる。そのような実施形態において、作動機構が非作動位置に戻る場合又は戻った時に、作動機構は可撓性の栄養素容器との係合を解除するか、少なくとも部分的に解放して、栄養素供給物が供給ラインを介して栄養素容器に自由に戻るようにする。
【0092】
いくつかの実施形態では、例えば一方向弁又は逆止弁などの逆流防止機構が供給ラインに結合されて、作動機構が非作動位置にあるときに栄養素供給物の逆流を防止する。いくつかの実施形態では、作動機構が非作動位置にあるとき、栄養素供給物はコンテナから供給ラインを経由して自由に排出可能であって、任意選択で栄養素容器へ戻る(例えば一時的浸漬投与方式の場合)か、あるいは廃棄される。
【0093】
好ましくは栄養素容器は使用時にはバイオリアクターが位置する高さよりも下に配置され、それにより、バイオリアクター内の栄養素供給物の少なくとも一部が、重力によって、好ましくは同じ導管を経由して栄養素容器に戻ることを可能とする。
【0094】
他の実施形態では栄養素容器は、バイオリアクターより下、又は少なくともバイオリアクターのポートより下にあって、栄養素供給物がバイオリアクターから栄養素容器へ自由流動可能である第1位置から、バイオリアクターより上、又は少なくともバイオリアクターのポートより上であって、栄養素供給物が栄養素容器からバイオリアクターへ自由流動可能である第2位置へ、移動可能である。そのような実施形態では、作動機構が栄養素容器を選択的に上下させるように適合可能である。例えば、作動機構が直線アクチュエータ、ロボットアーム、又は必要に応じて栄養素容器を上下させるための他の配置機構を含み得る。いくつかの実施形態では、作動機構は2つ以上の栄養素容器を上下させるように構成可能である。他の形態では、作動機構はバイオリアクター又は2つ以上のバイオリアクターの群を、栄養素容器に対して選択的に上下させるように適合可能である。いくつかの形態では、作動機構は栄養素容器と関連するバイオリアクターの両者の位置を変化させるように適合されてもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、作動機構は加力要素または加力機構を含んでもよい。いくつかの実施形態では、加力要素には、栄養素容器に接触してそこに圧縮力をかけることのできる実質的に剛性の部材が含まれる。いくつかの実施形態では、栄養素容器が実質的に剛性の面上又はそれに接して配置される。ここで、栄養素容器が剛性面と作動機構の剛性部材との間にあって、剛性部材の剛性面に対する相対移動により栄養素容器に圧縮力をかけることができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、作動機構の加力要素又は加力機構は、開位置と閉位置とを選択的に操作可能な挟み具又は顎型の装置を含み、閉位置に向かって動かすと、挟み具又は顎型の装置が栄養素容器に圧縮力をかけて、栄養素供給物の少なくとも一部を栄養素容器からポートを経由して流出させる。いくつかの実施形態では、挟み具はヒンジで接続された一対の顎を含み、顎が開位置と閉位置の間を可動であってもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、作動機構が加力要素または加力機構の動きを制御するためのアクチュエータを含む。アクチュエータは直線アクチュエータ、ロボットアームなどであってよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、作動機構は、例えば膨張可能なバッグ、袋又は空気枕などの、膨張可能要素を含む。好ましくは作動機構の膨張可能要素は、膨張(すなわち収縮又は部分/半収縮した形状から、膨張又はより膨らんだ形状への形状変化)すると栄養素容器を押し付ける。それによって栄養素容器に圧縮力をかけ、それに応じて栄養素容器の形状を変化させ、栄養素供給物の少なくとも一部を栄養素容器からそのポートを経由して流出させる。膨張可能要素は、圧縮力をかけるために、栄養素容器を直接押しても、間接的に押してもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、膨張可能要素は1つの栄養素容器を押し付けるように構成され、個別の栄養素容器からの栄養素供給物の流れの出し入れを独立して制御する。
【0100】
いくつかの実施形態では、膨張可能要素は複数の栄養素容器を実質的に同時に押し付けるように構成され、各栄養素容器からの栄養素供給物の流れの出し入れを制御する。そのような構成は、それぞれのバイオリアクターで育成される植物が同一であり、同一の成長段階にあり、及び/又はそのほかで同一の投与方式を必要とする、複数のバイオリアクターを使用するシステムでの使用に特に有利である。
【0101】
いくつかの実施形態では、作動機構の膨張可能要素には、少なくとも1つの栄養素容器を取り外し可能に収納する、少なくとも1つの収納構造が含まれる。いくつかの実施形態では、収納構造はポケットである。いくつかの実施形態では、膨張可能要素は2つ以上のポケットを含む。いくつかの実施形態では、各ポケットが単一栄養素容器を収納するようになっていてもよい。いくつかの実施形態では、各ポケットは2つ以上の栄養素容器を収納するように構成されてもよい。
【0102】
いくつかの実施形態において、1つ以上のポケットは作動機構の膨張可能な袋の外部ポケットとして形成されてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のポケットが、作動機構の膨張可能な袋の内部ポケットとして形成されてもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、1つ以上のポケットが窓を含み、それによってそこに収納される栄養素容器の目視検査を可能としてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のポケットが透明な(可撓性の)材料で形成されてもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、各ポケットは栄養素容器を挿入する(かつそこから取り出す)ための単一の開口を有する。いくつかの実施形態では、各ポケットはポケットの側縁又はポケットの上縁に単一の開口を有する。いくつかの実施形態では、各ポケットは栄養素容器を挿入する(かつそこから取り出す)ための2つの開口を(例えば両方の側縁に)有する。2つの開口を使用すれば、栄養素容器を挿入及び取り出しする際に、ユーザは両方の手を使って栄養素容器及び/又はポケットを操作可能となり、有利な場合がある。
【0105】
いくつかの実施形態では、ポケット又はそれぞれのポケットはフラップ(flap)として形成され、このフラップは一端(例えば下端)が袋(例えば袋の側壁)に固定され、反対側の端部(例えば上端)が袋(例えば袋の側壁)に開放可能に固定できる。ここで、反対側の端部を開放して栄養素容器の挿入、取り出しを行い、また栄養素容器をポケット内に保持するように固定することが可能である。いくつかの実施形態では、開放可能に固定できる閉鎖機構はポケットの開閉を容易にするように構成される。開放可能に固定できる閉鎖機構は、好ましくはフラップの対向する自由端に結合される。いくつかの実施形態では、開放可能に固定できる閉鎖機構としては、面ファスナ(例えばVelcro(登録商標))、スナップ式ファスナ、押しボタン/鋲、ジッパー、ボタンなどが含まれる。好ましくは、開放可能に固定できる閉鎖機構の第1部分はフラップの自由端に接続され、第2部分が袋に接続される。ここで、フラップを選択的に移動させることにより開放可能に固定できる閉鎖機構の第1部分と第2部分を噛み合わせ係合させて、自由端を袋の側壁に対して保持又は固定して、ポケットを閉じることが可能である。
【0106】
いくつかの実施形態では、作動機構の膨張可能な袋は加圧流体(空気又は液体)の供給源に接続可能であり、加圧流体供給源が必要により膨張可能な袋を膨張及び収縮させるように選択的に操作可能である。
【0107】
いくつかの実施形態では、システムが所定の投与方式に従って栄養素供給物を送達するように構成される。いくつかの実施形態では、投与方式には、コンテナへの単一のバッチ又は容量の栄養素供給物の送達が含まれ得る。それによって、所定の時間間隔で、任意選択で育成の全期間の間、植物の一部分(例えば基部、根系又は他の部分)に栄養素供給物が接触した状態に保たれる。
【0108】
他の実施形態では、投与方式は一時的な浸漬方式であってもよい。そこでは所定量の栄養素供給物が、第1の所定の離散的時間間隔の間コンテナに繰り返し充填され、その後第2の所定の離散的時間間隔の間コンテナから排出される。こうして、コンテナとの間で栄養素供給物の充填と排出が所定のサイクル数及び/又は所定の継続時間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、第1の所定の離散的時間間隔は第2の所定の離散的時間間隔よりも短い。例えば、栄養素供給物はバイオリアクターに供給されて、24時間につき約15分、30分、45分、60分の間そこに保持される。そのような実施形態は、植物の成長速度を高め、汚染リスクを低減し、かつ育成期間全体にわたって必要とされる栄養素の量を減少させることに有益であり得る。いくつかの実施形態では、第1の所定の離散的時間間隔は第2の所定の離散的時間間隔よりも長い。いくつかの実施形態では、第1の所定の離散的時間間隔は第2の所定の離散的時間間隔に等しい。
【0109】
いくつかの実施形態では、1つ以上の栄養素容器を解放可能に収納するハウジングが提供される。いくつかの実施形態では、ハウジングには、栄養素容器を1つ以上収納可能な、個別のチャンバが複数含まれる。好ましくは、各チャンバは単一の栄養素容器を収納する大きさである。いくつかの実施形態では、ハウジングには、個別のチャンバを形成するように配置された複数の仕切りを有する概ね細長い角柱体が含まれる。好ましくはハウジング本体は、床、側壁及び端壁を有する、上部が開放された構造である。
【0110】
好ましくはハウジングは弾性変形可能であって、使用時に作動機構がハウジングを解放可能に変形又は圧縮して、ハウジング内の栄養素容器のそれぞれに対応する圧縮力又は圧搾力がかかるようにする。
【0111】
いくつかの実施形態では、栄養素容器に対して、直接または間接のいずれであれ、かかる圧縮力の大きさ、速度、及び/又は持続時間は制御可能であって、栄養素供給物(容器)から出し入れされる栄養素供給物の流速もまた同様に制御可能である。いくつかの実施形態では、排出する流速は、充填する流速とは違っていてもよい。いくつかの実施形態では、充填流速と排出流速は実質的に同じである。
【0112】
本発明の別の態様によれば、植物増殖システムが提供される。これには、育成する植物を受ける、少なくとも1つの植物受容開口を有するトレイと、その植物に少なくとも1つの切断を行って、その植物を2つ以上の植物部分に分割する切断要素とが含まれる。
【0113】
本開示のこの態様は、無茎(房状又はロゼット型)植物への使用に、特に好適かつ有利である。前以って示したように、無茎植物は、一般的に地上あるいは土壌の高さより上に茎がほとんどないか全くない植物を含むと理解される。したがって、切断要素は好ましくは垂直軸に沿って(下方向に)切断動作を可能とするように構成される。
【0114】
好ましくは、切断要素は各植物を均等に切断又は分割するように構成され、切断された各植物部分は実質的に同じ大きさである。好ましくは、切断要素は使用時に、トレイの各開口の中心点を通って切断するように構成されている。それにより植物を同じ大きさの切断された植物部分へ切断することを容易にする。いくつかの実施形態では、切断要素は各植物を所定数の、例えば、これに限らないが、2、3、4,5、6、7、8の、小植物部分に切断するように適合される。いくつかの実施形態では、切断要素は各植物を半分に切断するように適合されて、それによって実質的に同じ大きさの2つの植物部分を生産する。様々な実施形態において、切断要素を使用して各植物を4つの実質的に同じ大きさの部分に分割する、言い換えると各植物を4分割することが好ましい。
【0115】
いくつかの実施形態では、切断要素は1回の切断動作で各植物を所定の小植物部分に分割するように適合される。いくつかの実施形態では、切断要素は2回以上の切断の動作、ストローク又は回数で各植物を所定の小植物部分に分割するように適合される。例えば、切断要素の形状及び構成に依存して、切断要素は、第1の切断動作で植物を半分に切断又は分割するように使用され得る。第1の切断動作の後、この実施例においては、ブレードが所定の量又は角度(例えば90度)だけトレイに対して回転されて、切断要素が植物を更に分割するために第2の切断動作をできるようになっていてもよい(例えば、第1の切断動作で形成された2分割された各植物部分を4つの植物部分に切断する)。いくつかの実施形態では、第2の切断動作において、トレイ/植物に対してブレードを位置決めするために、トレイはブレードに対して移動(例えば回転)させてもよい。いくつかの実施形態では、第1の切断動作の後、ブレードとトレイの両方を互いに対して移動して、それにより第2の切断動作のためのブレードの位置決めを行う。
【0116】
いくつかの実施形態では、切断要素はブレードを含む。いくつかの実施形態では、ブレードは単一の刃先を有する。いくつかの実施形態では、切断要素が複数のブレード要素を含み、トレイの各開口内にある各植物を切断するために、各ブレード要素が各開口内に嵌合するようになっている。いくつかの実施形態では、刃先は、斜面又は面取りを含み、それにより切断する強度(例えばより厚い及び/又はより硬い植物の切断)、及び/又は切断の粗さ/精密度(例えば精密切断から粗切断)の点で、その切断能力を高めてもよい。いくつかの実施形態では、刃先が、直線、ギザギザ、鋸歯状などであってよい。いくつかの実施形態では、刃先が切断動作の間、植物が成長しているトレイ又は培地の表面にほぼ平行に配置されて、植物又は植物の部分を切断するように適合される。
【0117】
例えば、トレイがほぼ水平に配置されている場合、刃先はトレイの上面に実質的に平行であってよく、そうして刃先も同様に水平に配置されるようになる。そのような構成では、切断要素の切断動作は、切断要素を下向きにトレイに向かって植物に当たるまで移動させることによって達成され得る。切断要素を更に下降させることにより、切断要素が植物をより小さなサブ植物部分に切断又は分割する。他の実施形態では、トレイが可動であって、それによりトレイ及び結果として植物を、切断要素に対する所望位置に位置決めしてもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、切断要素がトレイに対して傾斜していて切断動作時に刃先が徐々に植物に当たり、それによって植物をより小さい植物部分に切断又は分割するように構成されてもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、刃先が、一度の切断動作で植物を3以上のサブ植物部分に切断又は分割するような形状又は構成となっている。
【0120】
例えば、切断要素が概ねY字型であって、それにより植物を3つの植物部分に切断又は分割してもよい。そのような実施形態では、Y字型ブレードの各アームの間の角度は実質的に等しく(例えば各アーム対の間が約120度)、それにより植物を切断して3つの実質的に同じ大きさの植物部分の形成を容易とする。
【0121】
他の実施形態では、切断要素が概略t字形又はプラス記号すなわち「+」形状であって、植物を4つの植物部分に切断又は分割するようになっていてもよい。そのような実施形態では、t字又は「+」型ブレードの各アームの間の角度は実質的に等しく(例えば各アーム対の間が約90度)、それにより植物を切断して4つの実質的に同じ大きさの植物部分が容易に形成される。他の形態では、植物を4つの四半分植物部分に分割するために、単一の切断ブレードを使用して4つの分離した切断部を生産することも可能である。例えば、12時の位置に第1カット、3時の位置に第2カット、6時の位置に第3カット、9時の位置に第4カットを入れる。
【0122】
切断要素は、単なる例示として提供された上記の非限定的な形態による形状のような切断ブレードを有することに限定されるものではないことが理解されるであろう。むしろ、切断要素は、一回の切断動作で、異なる大きさ及び/又は形状の植物部分を含む所定形状及び/又は大きさの植物部分を形成するように、植物を切断又は分割するように構成されてもよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、切断要素には、ブレードから延在するハンドル部が含まれ、それが切断要素の手動操作、及びトレイ内で成長する植物の手動切断を容易にする。いくつかの実施形態において、切断要素は選択的に操作可能なアクチュエータに取り付けられるようになっており、それによって自律的及び半自律的な切断プロセスを容易にする。
【0124】
いくつかの実施形態において、アクチュエータは切断要素のトレイに向かう、あるいはトレイから離れる移動を支援するように適合されて、それによってトレイ内で成長する各植物または複数の植物の切断又は分割のための切断動作を起こさせる。いくつかの実施形態では、アクチュエータは、切断要素の対応する直線運動(例えば上下への運動)を起こすように構成された直線アクチュエータであってもよい。いくつかの実施形態では、アクチュエータには、切断要素の直線的な位置移動を行う第1アクチュエータと、切断要素の回転位置移動を行う第2アクチュエータとが含まれてもよく、それにより、トレイ、及び結果的にそこで成長しているそれぞれの植物に対する切断要素の位置決め及び位置合わせを容易にする。いくつかの実施形態では、切断要素がロボットアームのエンドエフェクタを構成してもよく、それによってロボットアームが切断要素の運動と、例えば切断速度、頻度、タイミングなどを含む関連する切断動作とを制御するように構成される。
【0125】
好ましくはトレイが複数の植物受容開口を含む。いくつかの実施形態では、各トレイは所定の外形又は形状を有する。いくつかの実施形態において、各トレイは、概ね長方形、正方形、三角形、円形、六角形、又は他の適切な多角形である。好ましくは、各トレイがほぼ均一な厚さ又は高さを有する。
【0126】
各開口は好適には、そこで育成されようとする特定の植物の種類又は大きさに合致するように構成される。いくつかの実施形態では、各植物受容開口が同一の形状又は構造を有する。いくつかの実施形態では、各植物受容開口が同一の大きさを有する。いくつかの実施形態では、トレイが、異なる大きさの植物受容開口を含む。いくつかの実施形態では、各開口は、長方形、正方形、三角形、円形、六角形、又は他の適切な多角形である。
【0127】
例えば、トレイは、第1構造を有する第1群の植物受容開口(2つ以上)と、第2構造を有する第2群の植物受容開口(2つ以上)とを有してもよい。ここでこの第1構造の植物受容開口は第2構造とは異なっている。いくつかの実施形態では、第1群の開口は、第2群の開口と同一形状であるが、大きさが異なっていてもよい。
【0128】
いくつかの実施形態では、各植物受容開口は貫通開口である。いくつかの実施形態では、各植物受容開口は上部が開放された開口又は空洞である。上部が開放された開口又は空洞のそれぞれは、好ましくは床を有する。好ましくは、床は1つ以上の穴で穿孔され、それによって、それぞれの開口内で成長する植物の根系への栄養素供給物の供給を容易にする。いくつかの実施形態では各開口の床は、各植物受容開口の底又は低縁を横断又はそれに隣接して延在する分離された床片で画定されてもよい。いくつかの実施形態では、単一の床片がトレイの下部表面を横断して延在し、それによって各植物受容開口の床部分を画定してもよい。
【0129】
好ましくは、各植物受容開口が単一植物を、より好ましくは無茎型植物を受容するように適合される。
【0130】
いくつかの実施形態では、複数の植物受容開口が、好ましくは開口間に規則的/均等な間隔を有する、規則的配列(例えば正方形又は長方形の配列)に配置される。いくつかの実施形態では、各トレイの開口は極性配列となっている。いくつかの実施形態では、複数の植物受容開口が、不規則配列に配置される。いくつかの実施形態では、交互の列が所定量(例えば開口の大きさの50%)だけずれたオフセット配列を形成するように開口を配置し得る。これにより隣り合う開口間の距離を短縮して、プレート当たりに追加的な開口を提供することが可能である。
【0131】
好ましくは、各トレイは、植物育成容器あるいはバイオリアクターに収納可能なように構成される。好ましくは、各トレイはバイオリアクターのベースに自由に置くことができるように構成され、それにより使用時にバイオリアクターのベースに溜まった液体栄養素供給物を介して植物への栄養供給を促進する。
【0132】
いくつかの実施形態では、各植物受容開口の床が各植物の下部に対して作用又は支持をし、それによって、切断動作中の植物の動きを制限する。別の実施形態では、バイオリアクターのベースが各植物の下部に対して作用又は支持をし、それによって、切断動作中の植物の動きを制限する。
【0133】
いくつかの実施形態において、1つの切断要素が、トレイで成長する各植物の切断に使用される。例えば切断要素は、所定の手順に従って(例えば第1列を横断的に、次いで第2列を、というように連続的に)トレイの各開口において切断動作を実行するように使用されてもよい。いくつかの実施形態では、切断要素は、各植物の所定の育成期間又は各植物の成長段階(例えば大きさや形状)を参照して、植物への切断動作を遂行するように使用される。
【0134】
いくつかの実施形態では、切断要素は1回の切断操作で複数の植物を切断するように適合可能である。いくつかの実施形態では、切断要素には相対的に離間した関係で配置された複数のブレードが含まれてもよい。ここでブレードの間隔は同時切断が望まれるトレイの開口間の距離に対応する。例えば、ブレードは、トレイの第1列の各植物を同時切断できるように離間していてもよい。他の形態では、2つのブレードを使用して2つの植物を同時切断する。いくつかの実施形態では、ブレードは、トレイの2番目、3番目、4番目又は5番目の列の開口ごとに、あるいはトレイの異なる列を横断して、植物を切断できるように離間していてもよい。いくつかの実施形態において、切断要素はトレイの植物の受容構成内で成長する各植物を同時切断するように適合され得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、各トレイはカバーを有する。好ましくは、各カバーは各トレイに、好ましくはトレイの上面に、取り外し可能に設置できる。いくつかの実施形態において、カバーは、各植物が成長可能な高さを抑制又は制御するためにトレイに設置してもよい。いくつかの実施形態では、カバーには1つ以上の開口があり、そこを経由してそれぞれの植物の1つ以上の若枝が成長可能である。いくつかの実施形態において、カバーは、トレイからカバーを取り外すときに、植物を切断又は刈り込んで、刈り込まれた植物のそれぞれが実質的に同じ高さとなるように適合されてもよい。例えば、カバーはトレイに対して摺動可能に設置されて、トレイからカバーを取り外す摺動動作をするとトレイが植物を剪断して、カバーの高さより上に出た若枝を刈り込むようになっていてもよい。
【0136】
いくつかの実施形態では、複数の無茎(房状)植物を、バイオリアクター内にある第1トレイに配置して育成することが可能であり、ここで、第2トレイを第1トレイ上に置くかスタックして、横方向切断要素を第1トレイと第2トレイの間を通過させて葉を切断し、したがって無茎植物の高さを刈り込むことを可能とする。好ましくは、葉の横方向切断は、無茎植物を各植物部分に分離又は分割するための垂直切断動作の前に遂行される。
【0137】
好ましくは、システムは複数のトレイを含み、第1トレイが植物の第1のバッチの育成に使用可能であり、第2トレイが植物の第1のバッチから切断された植物部分からの植物の第2のバッチの育成に使用可能である。第3及び更なるトレイは、切断された植物部分からの追加的なバッチの育成に使用可能である。このプロセスを反復して育成サイクルを継続することが可能である。
【0138】
いくつかの実施形態では、切断要素は切断動作の終了時に各植物受容開口内の所定位置に保持され、他方、切断された植物部分は空洞/トレイから取り除かれる。切断された植物部分を取り除く間、この位置に切断要素を保持することにより、取り出し過程中に誤って別の切断植物部分を除去するリスクが低減される。
【0139】
いくつかの実施形態では、切断部の取り出しは、手動操作であり、任意選択として手又は専用の植物把持機構の助けにより遂行される。いくつかの実施形態では、把持機構を、例えば直線アクチュエータ、回転アクチュエータやロボットアームなどのアクチュエータに取り付けて、切断された植物部分を自律的又は半自律的にトレイから除去し、その後の育成プロセスを再開するために別のトレイに移すことを促進する。
【0140】
いくつかの実施形態では、把持機構は、トング、ピンセット、やっとこ、プライヤなどの形態であってよい。そのような把持機構は好ましくは、一対の相互に対向するクランプ用のアームを含み、それが付勢されて互いから離れて開位置となる。クランプ用アームに選択的な閉鎖する力を掛けることにより、アームが相対的に動かされて両アーム間の開きを閉じ、それによって使用時に切断された植物部分を把持する。
【0141】
いくつかの実施形態では、把持機構には、切断された植物部分を把持、持ち上げ、及び移動させるための吸引または真空装置が含まれる。そのような把持機構には、任意選択で一端(例えば自由端)に吸引カップがはめ込まれた、中空チューブが含まれ得る。好ましくは、この中空チューブの他端に選択的に操作可能な空気供給源が接続される。空気供給は、切断植物部分を持ち上げるために、チューブ内に負圧を生成するように構成される。いくつかの実施形態では、負圧が切断されて、切断植物部分を所望の位置(例えば別のトレイ)に配置する。いくつかの実施形態では、空気供給は中空チューブ内に正圧を生成するように選択的に操作可能であって、切断植物部分を所望位置に配置するために、チューブの自由端からの解放を支援する。特定の実施形態において、吸引又は真空把持機構は、負圧下で切断植物部分を把持するための第1チューブと、正圧下で(例えば空気の一吹きで)切断植物部分をチューブから解放するための第2チューブとを含み得る。
【0142】
無茎植物が垂直切断によって小植物部分に分割されるとき、好ましくは、少なくとも1つの植物部分が、その植物が育成されたトレイの各開口内に残されて、そのトレイをバイオリアクターに戻して保持された植物部分の成長サイクルを再開させるようにできる。その一方で、他の1つ又は複数の部分は取り出されて別のトレイに配置され、成長サイクルに供される植物部分の新しいバッチが提供される。
【0143】
本発明の別の態様によれば、少なくとも1つの成長する植物を受け入れる本体と、その植物に少なくとも1つの垂直切断をするように適合された切断要素であって、それにより植物を2つ以上の植物部分に分割し、各植物部分を更なる成長のために再移植又は再配置(例えば別のトレイに)可能とするようになった切断要素と、を含む植物増殖システムが提供される。
【0144】
本発明の別の態様によれば、植物を繁殖させる方法が提供される。この方法は、少なくとも1つの植物受容開口を提供するステップと、植物をその植物受容開口又はそれぞれの植物受容開口に配置するステップであって、その植物が所定の成長の第1段階にある、ステップと、所定の栄養供給手順に従って、その植物に栄養素供給物を与えるステップと、その植物が所定の成長第2段階に到達すると、ほぼ垂直な軸に沿ってその植物を切断するステップであって、それによってその植物を2つ以上の植物部分に分割して、各植物部分を更なる成長のために再移植又は再配置(例えば別のトレイに)可能とするようにするステップとを含む。
【0145】
以下、添付図面を例示としてのみ参照して本開示の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【
図1A】本開示によるバイオリアクターの一実施形態の蓋が閉じた位置における、斜視図である。
【
図1B】本開示によるバイオリアクターの一実施形態の蓋が閉じた位置における、正面図である。
【
図1C】本開示によるバイオリアクターの一実施形態の蓋が閉じた位置における、右側面図である。
【
図2A】
図1のバイオリアクターのベース部の斜視図である。
【
図2B】
図1のバイオリアクターのベース部の正面図である。
【
図2C】
図1のバイオリアクターのベース部の右側面図である。
【
図3A】複数の植物を相対的に間隔をあけて保持、育成するための積層可能なトレイの一実施形態の斜視図である。
【
図3B】複数の植物を相対的に間隔をあけて保持、育成するための積層可能なトレイの一実施形態の右側面図である。
【
図4】トレイのスタックを収納したバイオリアクターの一実施形態の概略側面図である。
【
図5】積層可能な植物育成トレイ内に、様々な例示的な形状、構成及び配置の開口を有するバイオリアクターの一実施形態の平面図である。
【
図6】切断操作するときにトレイのスタックを支持するための受台の一実施形態の概略図である。
【
図7】切断/分割プレートを取り外し可能に保持及び操作するための手工具の一実施形態の斜視図である。
【
図8】使用できる状態の複数の切断/分割プレートを取り外し可能に格納するための受台の一実施形態の斜視図である。
【
図9A】一対のトレイの間に挿入して、トレイのスタックを小スタックに分割し、植物を切断するための切断/分割プレートの一実施形態の斜視図である。
【
図9B】一対のトレイの間に挿入して、トレイのスタックを小スタックに分割し、植物を切断するための切断/分割プレートの一実施形態の先端の拡大詳細図である。
【
図10A】トレイのスタックあるいはトレイの小スタックを持ち上げて運ぶためのキャリアの斜視図である。
【
図10B】トレイのスタックあるいはトレイの小スタックを持ち上げて運ぶためのキャリアの正面図である。
【
図11】バイオリアクターに液体栄養素供給物を供給するための可撓性の栄養素供給物容器を組み込んだ、培地送達システムの一実施形態の図である。
【
図12】複数のバイオリアクターに液体栄養素を供給するための可撓性の栄養素供給物容器を組み込んだ、培地送達システムの例示的構成を示す図である。
【
図13A】本開示による培地送達システムの別の実施形態の概略図であって、バイオリアクターに液体栄養素供給物が充填された第1の状態である。
【
図13B】本開示による培地送達システムの別の実施形態の概略図であって、バイオリアクターに液体栄養素供給物が充填された第2の状態である。
【
図13C】本開示による培地送達システムの別の実施形態の概略図であって、バイオリアクターに液体栄養素供給物が充填されようとする第3の状態である。
【
図14】トレイのスタックを通して植物を育成し、植物を切断してスタックを分割し、切断植物を保持する各トレイでその過程を反復するプロセスの概要を示すプロセス概略図である。
【
図15】本開示による植物増殖トレイの一実施形態であって、複数の植物が各植物受容開口内で成長している概略図である。
【
図16】
図1のトレイで成長しているそれぞれの植物が、実質的に同じ大きさの4つの切断植物部分を生産するために切断される、代表的な切断線の図である。
【
図17】育成プロセスを再開するために各切断植物部分を別のトレイに移植するプロセスを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0147】
図を参照すると、まず
図1A~
図1Cには、植物組織培養物を育成するための植物増殖システム1の実施形態が示されている。
【0148】
システム1には植物組織培養物を育成するためのバイオリアクター2の形態をしたコンテナが含まれる。
図1Aと
図2Cに明示されるように、バイオリアクター2は開放された
上部4を有するベース部3を有する。蓋部5はベース部3の開放された
上部4の周りに取り外し可能に取り付けることができ、それによってバイオリアクターを閉鎖して中の植物の育成のために適切な無菌環境を提供できる。好ましくは、蓋部5は開放された
上部4の周りでベース部3に密封係合する。
【0149】
ベース部3と蓋部5の間の密封を強化するために、連続的で途切れのない弾性圧縮性密封要素(図示せず)の形態の密封要素が蓋部5とベース部3の開放された
上部4の周縁6との間に位置するように適合される。ベース部3及び/又は蓋部5には好ましくは、その開口の周縁に延在する溝7が含まれ、溝7は密封要素をそこに受けるようになっている。ベース部3に形成されたそのような溝7の例示的形状を
図2Aに示す。
【0150】
バイオリアクターコンテナ2には、
図1に示すような、蓋部5をベース部3に密封構造でしっかりと固定するための、解放可能なロック機構が含まれる。図に示す実施形態では、ロック機構は6つの手動操作のラッチ8の形をしており、バイオリアクター2の蓋とベース部(3、5)を互いの方向に引き付けて、両者の間の密封要素の圧縮を支援するようになっている。ベース部3と蓋部5を互いの方向に固定するために使用し得るラッチ8の数は任意であってよいことが理解される。
【0151】
次に
図3と
図4において、ベース部3は少なくとも2つの植物を相対的に離間した関係で保持するための保持器を取り外し可能に収容するようになっている。
図3の例示的形状では、保持器は所定の順序のパターンで配置された複数の開口10を有する、概略長方形のトレイ9の形をしている。これは、植物がバイオリアクターのベース部の領域にわたって、ランダムに離間した配置で育成される既存の植物組織培養システムに対して特に有利である。
【0152】
図3Aの例示的形状においては、各開口10は六角形である。そのような六角形の開口10を使用することで、開口を互いに相対的に近接して配置可能であり、連続する列を所定の程度に重ね得ることが理解されるであろう。こうして、この開口10の密着した配置によりトレイ9により多くの開口10を形成可能であり、その結果植物増殖システム1を介して植物組織培養物の全体的な増殖効率を向上させることが可能である。有利なことに、各開口10は単一の植物の一部の受け入れ専用である。
【0153】
開口10は図に示した六角形の形状に限るものではなく、むしろ、これに限らないが、円形、楕円形、正方形、長方形、三角形及びその他の多角形などの任意の適切な形状であってよいことが理解されるであろう。
【0154】
植物増殖システム1の効率をさらに向上させるために、
図4に示すように、いくつかの実施例において、複数のトレイ9が提供されて積層可能となるように構成されることが望ましい場合がある。
図4はバイオリアクター2内部に配置されたトレイ9の塔又はスタックの模式的表示を示す。
【0155】
各トレイ9は望ましくは、同一又は類似の形状及び/又は構成を有する。類似の構成の2つ以上のトレイを垂直の塔又はスタック上に配置可能であれば、それぞれの開口24を整列させて、特定の植物種に適切な所定の高さを有する複数の貫通した通路を形成又は構築可能となり、それによって植物が各通路を貫通して上方へ成長することができて有利である。
【0156】
トレイ9を積層することで、成長期間と共に各植物がその高さを増加させるときに支持体を提供すること、及び各植物を上方に向けてほぼ垂直方向にガイドすることなどの、操作効率向上のためのいくつかの利点が提供される。
【0157】
また、スタック状のトレイ9の使用により、植物をより大きな高さにまで成長させることが可能であって、各植物の茎に複数の切断を行って、単一バッチのバイオリアクターから大幅に多数の植物を生産可能となる。一例として、例えば各トレイに50の開口のある、4つのトレイのスタックでは、中間の2つのトレイ9の間で切断が行われると、それぞれが50の挿し木を有する2つのバッチが提供され、したがって合計で100の挿し木が提供される。一例としてスタックを例えば6つのトレイに増やして、2つ目ごとのトレイで切断が行われたとすると、50の挿し木の3バッチが生産され、合計で150の挿し木が生産されることになる。したがって、植物増殖システム1の全体としての効率と、トレイ9当たりの開口数及び各植物に対して行われる切断の数の両方との間には相関があることが理解されるであろう。
【0158】
上記の構成は単に、植物増殖システム1から得ることができる作業効率を示すための一例として提供される。実際には、少なくとも最下段のトレイ9は、植物の根系をバイオリアクター2のベース部3の床に向けて支持するために使用されることがあり、再生のための挿し木生産には使用されない場合がある。それにはスタック内の上方のトレイが引き当てられる。また、サブスタックは上記したようなトレイ9のペアに限ることを意図するものではなく、むしろ、所望の高さの挿し木の生産に実質的に対応する高さを有するサブスタックを提供する、任意の適切な数のトレイを選択し得ることに留意されたい。例えば、サブスタックには、3、4、5、6、7、8、9、10あるいはそれ以上のトレイが含まれ得る。したがって、トレイのスタックには所望により偶数個のトレイ又は奇数個のトレイ9が含まれ得る。
【0159】
したがって、本システムにより提供される切断動作は、樹木型植物に特に好適であり、それに関わる利点を提供することが理解されるであろう。そのような植物は樹木植物と称され、通常は単一の茎又は幹を有する。
【0160】
複数の植物を、整然と離間した配列の中で、各植物の高さが育成期間中実質的に同じになるようにして育成可能であることは、保持器内の各植物に行う各切断操作が1回の動作で可能となり、有利であることが理解されるであろう。複数の植物を一回の動作で切断可能とすることで実現される効率は、一度に1つの植物を切断するシステムの効率あるいは非効率さをはるかに凌ぐ。
【0161】
各トレイ9は、開口10が形成される少なくとも主(又は中央)領域にわたって均一な厚さを有することが好ましい。
図3Bで最もよくわかるように、図示した実施形態では、各トレイ9には厚さが薄くなった端部突起11が1つ以上含まれる。これは、トレイのスタックから所望のトレイ又はトレイのサブセットを選択及び除去することに役立つ。またトレイのスタック内の隣接トレイ間での切断操作の実行を容易にする、トレイ9のペア間の先導開口を提供する。
【0162】
これに関し、隣接トレイ9の間に障害物が延在しない様に、トレイ9には位置決め要素を形成しないことが望ましい。それにより隣接トレイ9の間での切断操作が自由に実行可能となる。むしろ、バイオリアクター2又はより具体的にはバイオリアクター1のベース部3は、トレイ9又はトレイ9のスタックを整列させて配置及び支持するように構成される。いくつかの形態では、ベース部3の側壁がトレイ9のスタックへの必要な支持を提供する。他の形態では、例えば盛り上がったリブ又はラグなどの、1つ以上の位置決め要素がベース部3の床に形成されて、スタック内の少なくとも一番下のトレイ9の支持及び位置決めしてもよい。
【0163】
図7及び
図9において、専用の手持ち切断工具12の形状をした切断機構が、トレイのスタックを分割しそこで成長する植物の手動切断を提供する。切断工具12には、近位端にハンドル部14と、遠位端にブレード保持器13とが含まれる。ブレード保持器13は、プレート状の切断要素、すなわちブレード26(
図9)を解放可能に把持して保持するように適合され、使用のためにブレード26がハンドル部14から概ね離れる方向に延びるようにする。ブレード保持器13は、清掃及び保管のためにブレード26を選択的に解放して取り外すことができる。
【0164】
図に示す実施形態において、切断要素は平坦ブレード26(
図9)の形であり、トレイのスタックを分割し、トレイ9内で成長する各植物を切断するために、積層されたトレイ9の隣り合うペアの間にブレードを差し込むことができる。この形態では、ブレード26は、例えば金属又はプラスチックなどの、比較的薄い板状の材料から形成される。
【0165】
ブレード26は比較的薄い形状であるために、押し込み又は摺動動作によって隣り合う積層トレイ9のペアの間に挿入することが可能となる。
図9Bで最もよくわかるように、ブレード26の前縁にはテーパがついて先導部を提供するようになっており、それによって積層トレイ9のペアの間へのブレード26の挿入を容易としている。有利なことには、先導部は、ブレード26がトレイ9の各ペアの間に挿入されるとき、各植物の茎の長手軸をほぼ横断する、すなわち直交する方向からブレード26が各植物を切断可能となる。すなわち、ブレード26は各植物の茎を軸方向又は横方向に切断するように構成される。使用時に、ブレードは一対のトレイの間を摺動して、スタックの前方からスタックの後方に向かって次第に移動するように配置及び操作可能である。このようにして、植物がそれぞれの開口10の内部に整列されているために、ブレードが第1列あるいは最前列にある各植物を実質的に同時に切断し、次いで、第2列等を、最後列内の植物が切断され終わるまで切断する。ブレード26が完全に挿入され、すべての植物が切断され終わると、板状の構造体であるブレード26を用いて、ブレード26の上方にあるトレイ9のサブスタックを支持して持ち上げることが可能である。
【0166】
ブレードを使用しない、他の形態においては、切断機構には、例えば、隣り合うトレイの間にレーザビームを通すように適合されたレーザシステムまたは装置などの熱切断装置(図示せず)や、あるいは、隣り合うトレイの間に流体(水など)の流れを通すように適合された高圧ノズル(図示せず)や、保持器を横断して1回のパスで植物に切断操作を実行するための例えば薄いワイヤ要素などの他の適切な切断機構が含まれてもよい。そのような形態においては、切断機構と分割器/支持プレートは別々の要素または装置として形成される。
【0167】
切断操作は好ましくはバイオリアクター2の外部で行われる。すなわち、植物が所望の成長パラメータ、例えば所望の高さ及び/又はバイオリアクター内部での設定期間に到達すると、いくつかの実施例では、トレイ9のスタックが、切断操作を行う前にまずバイオリアクター2から取り出される。
【0168】
トレイ9のスタックを植物と共にバイオリアクター2のベース部3の外へ持ち上げることを支援するために、トレイ又はトレイのスタック9の無菌ハンドリングのためのキャリア15が提供される。
図10はキャリア15の例示的実施形態を示す。キャリア15は、サブスタック又はトレイの全スタック内の1つのトレイ又は2つ以上のトレイから、所望数のプレートを搬送するために使用可能であるように構成されることが好ましい。
【0169】
図示した実施形態において、キャリア15にはハンドル16及びそのハンドル16から延在する一対の離間したアーム17が含まれる。アーム17は、関連するトレイ9のそれぞれの側縁部に係合するようになっており、それによりトレイが把持されるとハンドル16を介したキャリア15の手動操作によって、把持されたトレイ9(及びその把持されたトレイより上に位置する任意のトレイ)に対応する運動を起こさせて、所望通りに配置する(例えばバイオリアクター2からトレイ9を無菌取り出しする)。好ましくは、アーム17はハンドル16から下方向に延在する。それにより使用時にはバイオリアクター2のベース部3の中にアームを上から延在させた後にトレイ9のスタックを係合することが可能である。
【0170】
図10Bに示すように、各アーム17には、それぞれのアーム17の遠位端に付属する、横方向に延在するレール18の形態をしたトレイ係合構造があり、それによりトレイ9の各側縁部の確実な係合又は把持を容易にする。各トレイ9の側縁部には、面取り、切欠き、リセスなどの受け構造があり、そこにレール18が取り外し可能に受容又は他の形で係合されるようになっている。
【0171】
図示した実施形態において、一対のアーム17は互いの方向に付勢され、それによってトレイ又はトレイのスタックとの確実な係合を容易にする。2つ指で作動可能なトリガ19の形をした操作部材が、各アーム17に操作可能に結合している。トリガ19はアーム17に操作可能に関連付けられ、ユーザの指の圧力でハンドル16の中に押し込むことが可能になっている。そうしてトリガ19の操作によりアーム17(及びレール18)を付勢機構の作用に抗して相互に離れさせる。これがアーム17同士及びレール18同士の間の空隙を広げる助けとなり、トレイ9のスタック上を通過可能とする。次いで、トリガ19への指の圧力を解放すると、付勢機構(例えば張力のかかったコイルばね)の作用によって、アーム17同士及びレール18同士が内方向に互いに向かって移動し、それによって各トレイ9を係合する。
【0172】
図6を参照すると、バイオリアクター2から取り外された後、トレイのスタックを相対的に位置合わせして保持するために受台20が提供される。これにより各トレイ9の位置合わせされた開口10により画定される通路が開位置に維持される。
【0173】
図示した実施形態において、受台20には床部分21と床部分21から上方に延在してその間にトレイ9のスタックを収納可能な、一対の側縁部22が含まれる。側縁部22同士は、所定の距離だけ離間して、トレイ9のスタックが両者の間に密接嵌合するようにして収納される。それにより受台20内でのトレイ9の横方向移動が制限されその位置合わせが維持される。
【0174】
いくつかの実施形態において、受台20には、トレイ9のスタックが当接可能な後方停止部23が含まれ、それによって受台20の床部21に対するトレイの後方移動の範囲が制限される。図に示すように、後方停止部23には各側縁部22から受台20の中心線に向かって内方向の横に延びるフランジ24が含まれる。
【0175】
受台20の床部21の前縁は、下方向に折り曲げられて、床部の前縁をその後縁に対して持ち上げるための底上げ部材を形成する。これにより使用時に床部が前から後に向かって傾斜して低くなり、トレイ9のスタックが摺動して後方停止部に対して自己配置するようにする。
【0176】
受台20の床部21には、トレイ9のスタックと床部21の間の摩擦を低減するための、一対の盛り上がった細長いレール25の形をした摩擦低減要素が含まれる。これは、トレイ9のスタックが床部21を横切って相対的な並進摺動運動することを容易にする。そうしてトレイ9を受台20から、また受台へ移すときに、トレイ9のスタックの位置合わせを維持することに役立つ。
【0177】
図9を参照すると、ブレード26は、切断操作が完了した後、トレイ9のスタックをより小さなサブスタックに分割するために設けられる分割プレート26としても機能し得る。前と同様に、分割プレートは薄い有孔プレート構造として形成され、垂直に積層されたトレイ9の隣り合うペア間を摺動可能となっており、それによりトレイ9の隣接ペアを分離して、元のスタックからのトレイのサブスタックの持ち上げを助ける。いくつかの形態において、分割プレート26はまた、根系に関連する最下層の一つ又は複数のトレイを健全な挿し木を収容した直上のトレイから分離することを支援するように使用することも可能である。
【0178】
図4を参照すると、バイオリアクター2は、コンテナの下部領域付近に配置された少なくとも1つの専用の栄養素供給ポート28を有する。これを介して液体栄養素供給物のバイオリアクター2への充填及びそこからの排出が選択的に行われ、それにより植物の成長を促進する。
図4では、バイオリアクター2はまた、コンテナに対する空気の取入れ及び排出のためにコンテナの上方領域付近に配置された通気ポート27を有し、これによりコンテナ内の圧力を制御する。すなわち、通気ポート27は液体栄養素供給物がコンテナへ充填されるとき空気をコンテナから排出させて、それによりバイオリアクター内の加圧雰囲気を防止する。同様に、液体栄養素供給物がコンテナから排出されるとき、通気ポート27は空気がコンテナ内へ入ることを可能として、コンテナ内が真空圧力となることを防止する。またそうして液体栄養素供給物の貯蔵器を保持するように適合された培地容器に向かって液体培地が重力の作用でコンテナから自由に排出又は放出されることを確保する。
【0179】
バイオリアクター2は、ポート28を閉じると、栄養素供給物がベース部3の床に溜まり、植物の根系に接触可能となるように構成される。
【0180】
次に
図11及び
図12を参照すると、培地送達システム30の一実施形態が示されている。システムは、ベース部3の内部へ液体栄養素供給物を選択的に供給するために、栄養素供給ポート28を介してバイオリアクター2に流体接続可能となっている。培地送達システムは重力供給システムとして構成されてもよい。ただし、図に示す実施形態では培地送達システム30は圧力供給システムとして構成されている。
【0181】
培地送達システム30は有利には様々な植物種の育成のためのシステムに使用するように構成される。例えば、システム30は、所定の投与方式の下での栄養素供給物2の送達に使用することができ、これに限るものではないが、樹木植物および無茎植物などの様々な種類の植物の成長を積極的に促進する。システム30は、植物組織培養(PTC)の下で育成されている植物への液体栄養素供給物2の送達での使用に特に有利である。流動可能な又は液体の状態で栄養素供給物2を使用することは、栄養素容器に対して流入又は流出する流量を必要に応じて容易に制御可能であるので有利である。
【0182】
したがってシステム30を、例示としてのみであるが、PTC用途での使用を参照して説明する。ただし、システム30はより広範囲の用途での使用の能力を有しており、例えば温室や屋外環境を含む植物育成、あるいは非植物用途のための液体投与要求のための様々な他のシステム、プロセス及び構成での使用に容易に適合可能である。以下でより詳細を述べるように、システム30は植物に液体栄養素供給物2を供給するための所定又は所望の投与方式のカスタマイズに大きな柔軟性を提供するので有利である。特に、システム1は一時的な浸漬法の開発に有利に使用可能である。
【0183】
有利には培地送達システム30は、所定量の栄養素供給物や栄養素供給物の1つ以上の成分を保持するための、可撓性の袋又はバッグ31の形態の栄養培地容器を含む。可撓性の袋3は選択的に変形可能であり、袋3に圧縮力を加えると栄養素供給物2の少なくとも一部がポート4を経由して袋から排出される。このようにして、液体栄養素供給物2をバイオリアクター5に向かわせてその中の植物の成長を促進することができる。
【0184】
供給ライン32は好ましくは栄養素供給ポート28を経由してバイオリアクター2と栄養素バッグ31とを接続可能であって、栄養素供給物をバイオリアクター2へ充填及び/又はバイオリアクター2から排出することができる。それにより、所定の投与方式の運用を容易とし、バイオリアクター2内の植物の育成を促進する。
【0185】
図11に示すように、選択的に膨張可能な袋の形態をした作動機構33が、栄養素バッグ31に動作可能に関連づけられている。作動機構33は、栄養素供給物がバイオリアクター2に強制的に充填される作動位置(
図11に破線で示す)と、栄養素供給物のバイオリアクター2への流入が阻止される非作動位置(
図11に実線で示す)との間で移動するように構成される。いくつかの構成において、作動機構33が非作動位置にあるときは、栄養素供給物は供給ライン32を経由してバイオリアクター2から排出されて栄養素バッグ31に戻る。そのような構成は、栄養素供給物が好ましくは所定の時間間隔でバイオリアクター2との間で繰り返し充填、排出可能な、一時的な浸漬投与方式の使用に特に有利である。
【0186】
可撓性の栄養素バック31を使用することで、作動機構33がその作動位置にあるとき、可撓性栄養素バッグ31を簡単に圧縮又は圧搾するように適合可能であり、それによって供給ライン32を経由して栄養素バッグからバイオリアクター2へ栄養素供給物を流動させる。そのような実施形態において、作動機構がその非作動位置に戻ると、作動機構は可撓性栄養素バッグ31との係合を解除するかあるいは少なくとも部分的に解放して、栄養素供給物が供給ライン32を経由して栄養素容器に自由に戻るようにする。
【0187】
一時的浸漬法は、所定量の栄養素供給物を第1の所定の離散的時間間隔の間、コンテナに繰り返し充填し、その後、第2の所定の離散的時間間隔の間コンテナから排出するように方式化され得る。これによりコンテナへの栄養素供給物の充填、排出が所定のサイクル数及び/又は所定の継続時間にわたり発生する。
【0188】
図13A~
図13Cを参照すると、培地送達システム30の別の実施形態が示されている。この実施形態において、可撓性バッグ300は1つの流出入ポート400を有し、そこを経由して栄養素供給物200が所望の投与方式に従って可撓性バッグ300との間で流入、流出する。ある長さの中空円筒形チューブ600の形態の導管または供給ラインが設けられて、可撓性バッグ300と、植物が育成されるバイオリアクター2との間で液体栄養素供給物の流れが提供される。導管600はその第1端部700を可撓性バッグ300のポート400に、その第2端部800をバイオリアクター500に付属するポート900に接続可能であって、栄養素供給物200をバイオリアクター500に充填し、及び/又はバイオリアクター500から排出することができる。それによりバイオリアクター500内の植物の成長を促進するための所定の投与方式を容易にする。
【0189】
図に示す実施形態では、ポート900はバイオリアクター500のベース又は床1000に形成される。これにより、バイオリアクター500に充填される定量の液体培地供給物200’が床1000全体に所定高さまで堆積するか又は溜まることを可能とし、それが栄養素提供のためにそれぞれの植物又は複数の植物の根系に容易に(直接または間接的に)接触して、植物の成長促進を可能とする。
【0190】
図に示す実施形態では、可撓性バッグ300との間の液体栄養供給物200の流れの制御を容易にするために、システム100には可撓性バッグ300に操作可能に結合する作動機構1100があり、作動機構1100の操作により栄養素供給物200の少なくとも一部が可撓性バッグ300からバイオリアクター500に流入させられか、あるいはその逆が生じる。
【0191】
作動機構1100は、栄養素供給物200がバイオリアクター500に強制的に充填される作動構成(
図13A)と、栄養素供給物200がバイオリアクター500へ流入することができない非作動位置との間を移動するように構成される。作動機構1100の動作を制御するために、選択的に操作可能な栄養素供給弁(図示せず)が、導管又は供給ライン600に流体連通するように配置される。
【0192】
作動機構1100は、可撓性バッグ300に圧縮力を掛けるための加力要素又は加力機構を含み得る。図に示す実施形態では、作動機構には選択的に膨張可能な要素、又は袋1200が含まれる。膨張可能な袋1200は使用時には、膨張(すなわち、収縮した又は部分収縮/半収縮した構成から膨張又はより膨張した構成への変化)により、栄養素供給物200を保持する可撓性バッグ300を押し付け、それによってバッグ300に圧縮力を掛ける。これが栄養素供給物200の少なくとも一部をバッグ300から流出させて導管600を経由してバイオリアクター500に至らせる。
【0193】
図に示す実施形態では、作動機構1100の膨張可能な袋1200には、少なくとも可撓性バッグ300を取り外し可能に受けるための、ポケット1300の形状をした少なくとも1つの収納構造が含まれる。特定の実施形態では、ポケット1300は様々な形状を取ることができ、例えば2つ又はそれ以上のバッグ300を収納するように構成されてもよい。
【0194】
いくつかの実施形態において、膨張可能な袋1200には複数のポケット1300が含まれる場合があり、これは作動機構の膨張可能な袋の外部ポケットとして形成されてもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上のポケットは作動機構の膨張可能な袋の内部ポケットとして形成されてもよい。
【0195】
好ましくは、そのポケット又は各ポケット1300には、そこに収納される可撓性バッグ300の目視検査を可能とする窓が含まれる。同様に、可撓性バッグ300は、透明材料で作られて、中にある栄養素供給物200の目視検査を可能とするようになっていてもよい。
【0196】
使用時には、作動機構1100の膨張可能な袋1200は、加圧流体(空気又は液体)供給源に接続可能であり、それによって加圧流体供給源が、膨張可能な袋を所望通りに膨張および収縮させるように選択的に操作可能である。
図13Aに示すように、膨張可能な袋1200が膨張すると、膨張可能な袋1200がバッグ300に圧縮力をかける。この圧縮力がバッグ300の大きさを小さくし、それによって液体栄養素供給物200をバッグ300から排出させる。
【0197】
所望量の液体栄養素供給物200が可撓性バッグ300からバイオリアクター500に移送されると、導管バルブが閉鎖されて、排出された栄養素供給物200を所定の期間の間バイオリアクター500に保持して留める。次に圧縮空気源が停止されて、膨張可能な袋1200を少なくとも部分的に収縮させ、可撓性バッグ300に圧縮力がそれ以上かからないようにする。
【0198】
所定の時間経過の後、バルブを開放してバイオリアクター500内の栄養素供給物200を可撓性バッグ300に戻させる。図示した実施形態では、可撓性バッグ300はバイオリアクター500の床の高さより下に配置され、バルブが開位置にあるときに、栄養素供給物200が重力によって可撓性バッグ300に向かって自由に流動して戻る。例えば、栄養素供給物はバイオリアクター500に供給されて、24時間につき15分の間そこに保持される。投与方式はこの特定の実施例に制限されるものではなく、むしろ投与方式は、育成されている関連の植物の種類の特性、及び/又は液体栄養素供給物200の性質に適合するようにカスタマイズ可能であることを理解されたい。
【0199】
このように、様々な形態の培地送達システムは複数の固有の属性及び利点を提供する。具体的には、培地送達システムは栄養素供給物容器を別のものに置き換えて、詰め替えを提供することが可能であり、及び/又は植物に供給する別の栄養素を提供することが可能である。例えば、植物の成長の各段階により適合するように、育成期間の間にわたって栄養素の種類を変更することも有益であろう。有利なことに、栄養素容器はプレートのスタックやそこで育っている植物を処理したり、その他の妨げとなることなしに簡単に変更可能である。これにより、植物を組織培養増殖プロセスの制御された無菌状態の下でより長期間育成することが可能となる。また、これによりバイオリアクター内の植物に対する汚染リスクも軽減され、植物及び/又はプレートのスタックへの処理やその他の妨げなしで特定の識別された汚染源を除去するための救済処置も可能となる。さらに、本システムにおいては、発生するいかなる汚染も、植物の処理や移動なしに育成培地への減菌剤の追加により制御可能である。
【0200】
栄養素制御器(図示せず)が培地送達システム30と操作可能に関連付けられ、投与方式の自律的又は半自律的な制御を容易にする。他の形態では、培地送達システムがユーザによって手動操作されてもよい。
【0201】
図15~
図17を参照すると、植物増殖システム50の別の実施形態が示されている。このシステム50は、無茎植物の、特に植物組織培養(PTC)による育成プロセスへの使用に特に有利である。本明細書で使用されるように、無茎植物という用語は、一般的に地上あるいは土壌の高さより上に茎がほとんどないか全くない植物を含むと理解される。無茎植物は、房状植物又はロゼット型植物と呼ばれることがある。
【0202】
この植物増殖システムは、成長する植物53を受容するための複数の植物受容空洞あるいは開口52を有するトレイ51を含む。この図に示す実施形態では、トレイには6つの植物受容開口52が示されている。好ましくは各植物受容開口52は1つの植物53を受け入れる。
【0203】
本発明の以下の記述から、トレイ52は6つの植物受容開口52を含むものだけに限らないことが理解されるであろう。むしろ、本植物増殖システムの実際の商業的用途においては、システム効率は1つのトレイ51で育成可能な植物の数、したがってトレイ51内の植物受容開口52の数とともに上昇することが理解されるであろう。図に示す実施形態における6つの植物受容開口52は、本植物増殖システムの概念を単に明確に示すためのものである。
【0204】
以下で更なる詳細を述べるように、トレイ51は典型的にはバイオリアクタ―(図示せず)内に配置されて、その床上に配置される。したがって、植物受容開口52のアレイを設けることで、トレイ51は、各個別の植物53の専用の位置をバイオリアクター内に有する整然とした形で、複数の植物53を育成する構造を提供するので有利である。
【0205】
図示した実施形態では、トレイ51は通常長方形の形状をして、厚さ又は高さが均一である。いくつかの形態では、トレイ51はバイオリアクタ-内に密接嵌合して収納される大きさであって、それによって長さ方向又は横方向のいずれか、あるいはその両方において、トレイ51の配置及び位置決めを支援する。いくつかの形態では、バイオリアクター内でのトレイ51の配置及び位置決めを容易にするために、トレイ51にはトレイ51の周縁から延在するかあるいは周縁に他の形で結合する、1つ以上の位置決め構造が含まれてもよい。
【0206】
植物受容開口52の大きさと形状は、好ましくはそこでの育成を意図する植物の種類を参照して選択される。具体的には、植物受容開口52の大きさと形状は、それぞれの植物53の自然な成長傾向に従うように選択される。例えば、いくつかの種類の植物は、一般的に丸く、あるいはボール形状に成長する自然な傾向を有し、したがってトレイ51は円形の植物受容開口52を有することが好ましい。他の種類の植物は、1つの軸に沿って成長する自然な傾向を有し、トレイ51は四角形の植物受容開口52を有することが好ましい。開口52の形状は上記の例示的な形態に限定されるものではないことが理解されるであろう。それよりもむしろ様々な実施形態において、各開口52は、正方形、三角形、六角形、又は他の適切な多角形であってよい。
【0207】
図に示す実施形態では、各植物受容開口52は上部が開放された開口又は空洞である。上部が開放された開口又は空洞52のそれぞれは好ましくは1つ以上の穴が穿孔された床4(図示せず)を有し、それによって、それぞれの開口52内で成長する植物53の根系への液体栄養素供給物の供給を容易にする。
【0208】
さらに、各植物受容開口52の床54は、例えば植物52が所定の望ましい成長段階に到達するときに、更なる処理のために、トレイ51を持ち上げてバイオリアクターから取り外すときの助けともなる。床54は各植物53の下側を支え、後続する1つ以上の更なる処理ステップ(例えば切断プロセス)の間、植物を安定化させるか又は他の形で植物の動きを制限することを可能とする。
【0209】
これに関して、植物増殖システムにはさらに切断要素(図示せず)が含まれて、トレイ51で成長する個別の植物53のそれぞれに、少なくとも1回の切断をし、それにより植物53を2つ以上の小さいサブ植物部分55に分割するように適合される。
【0210】
切断プロセスは、植物53が所定の成長段階に到達すると行われる。成長段階は、植物53がトレイ内で育成される期間、及び/又は植物53の大きさ又は植物のその他の関係する特性に従って判定され得る。
【0211】
好ましくは、切断要素は各植物53を均等に切断又は分割するように構成され、切断された各植物部分55は実質的に同じ大きさである。
図2に示すように図示した実施形態では、切断要素は2つの直交配置された切断線に沿って切断動作を行うように構成される。切断線はトレイ51の各開口52の中心点で交差する。この実施形態では、切断要素は各植物3を実質的に等しい大きさの4つの小植物部分5に切断又は分割する。言い換えると、切断要素は各植物3を4等分するのに使用される。
【0212】
切断要素が各植物を切断又は分割する仕方は、切断要素自体の形状又は構成に関係して決定され得る。いくつかの形態では、切断要素は1回の切断動作で各植物を所定の小植物部分に分割するように適合される。他の形状では、切断要素は2回以上の切断の動作、ストローク又は回数で各植物を所定の小植物部分に分割するように適合される。
【0213】
例えば、切断要素が単一の刃先を有するブレードの形をしている場合、切断要素は、トレイ及び各開口又は空洞52の中に向かう下向き又は下降する動きなどの第1の切断動作によって植物を半分に切断又は分割するように用いることができる。第1の切断動作の後、この実施例においては、ブレードが所定の量又は角度(例えば90度)だけトレイに対して回転されて(及び/又はトレイがブレードに対して回転されて)、切断要素が植物を更に分割する(例えば、第1の切断動作で形成された2分割された各植物部分を4分割した植物部分に切断する)ための第2の切断動作をできるようになっていてもよい。
【0214】
他の形態では、切断要素が1回の切断動作又はパスで各植物を4分割するように構成されたブレードを含んでもよい。例えば、ブレードが概略t字形又はプラス記号(「+」)形状であって、植物を4つの植物部分55に切断又は分割するようになっていてもよい。
【0215】
切断要素の形状及び構成は、特定の用途又は植物の種類に合うように、及び/又は特定の方法で植物を切断又は分割するように適合可能である。いくつかの形態では、切断要素は直線刃、傾斜したもの、面取りされたもの、ギザギザのもの、鋸歯状のものなどであって、それにより切断する強度(例えばより厚い及び/又はより硬い植物の切断)、及び/又は切断の粗さ/精密度(例えば密切断から粗切断まで)の観点で、その切断能力を高めてもよい。
【0216】
切断要素は、単なる例示として提供された上記の非限定的な形態による形状の切断刃を有することに限定されるものではないことが理解されるであろう。
【0217】
切断要素には、ブレードから延在するハンドル部が含まれ、それが切断要素の手の操作、及びトレイ51内で成長する植物53の手動切断を容易にする。いくつかの用途において、切断要素は選択的に操作可能なアクチュエータに取り付けられるようになっており、それにより自律的及び半自律的な切断プロセスを容易にする。
【0218】
そのような実施形態において、アクチュエータは切断要素をトレイ51に向かう移動、あるいはトレイから離れる移動を容易にするように適合されて、それによってトレイ内で成長する1つまたは複数の各植物の切断又は分割のための切断動作を起こさせる。例えば、アクチュエータは、切断要素の対応する直線移動(例えば上下への移動)を起こすように構成された直線アクチュエータであってもよい。他の形態では、アクチュエータには、切断要素に直線的な位置移動をさせる第1アクチュエータと、切断要素に回転的な位置移動をさせる第2アクチュエータとが含まれてもよく、それにより、トレイ、及び結果的にそこで成長しているそれぞれの植物に対する切断要素の配置及び位置合わせを容易にする。さらに別の形態では、切断要素がロボットアームのエンドエフェクタを構成してもよく、それによってロボットアームが切断要素の移動と、例えば切断速度、頻度、タイミングなどの関連する切断動作を制御するように構成される。
【0219】
1つの切断要素が、トレイ51で成長する各植物53の切断に使用されてもよい。例えば切断要素は、所定の手順に従って(例えば第1列を横断的に、次いで第2列を、等々)トレイ51の各開口52において切断動作を実行するように使用されてもよい。または、切断要素は、各植物の所定の育成期間又は各植物の成長段階(例えば大きさや形状)を参照して、植物への切断動作の遂行に使用される。
【0220】
切断要素は1回の切断操作で複数の植物53を切断するように適合されてもよい。例えば、切断要素には相対的に離間した関係で配置された複数のブレードが含まれてもよい。ここでブレードの間隔は同時切断が望まれるトレイの開口間の距離に対応する。そのような切断要素であれば、トレイの第1列の各植物を同時切断できるようにブレードを離間させてもよい。いくつかの例示的形態において、切断要素はトレイ51の植物53の受容構成内で成長する各植物を切断するように適合され得る。
【0221】
植物増殖システムは好ましくは、トレイ51の上面又はその近くに取り外し可能に設置できるカバー(図示せず)を含む。カバーは、各植物53が成長可能な高さを抑制又は制御するためにトレイ51に設置してもよい。カバーは、トレイからカバーを取り外すときに、植物を切断するか刈り込んで、刈り込まれた植物のそれぞれが実質的に同じ高さになるように適合されてもよい。例えば、カバーはトレイに対して摺動可能に設置されて、トレイからカバーを取り外す摺動動作をするとトレイが植物を剪断して、カバーの高さより上に出た若枝を刈り込むようになっていてもよい。他の形態では、専用の植物剪定装置を設けて植物を所望の高さに刈り込んでもよい。
【0222】
植物増殖システムは好ましくは複数のトレイ51を含み、第1のトレイ51(
図1)を用いて植物53の第1のバッチを育成し、第2のトレイ51’(
図3)を用いて、植物53の第1のバッチから切断した植物部分55から植物53の第2のバッチを育成する。更なるトレイを使用して、後続して切断された植物部分から更なるバッチを育成することが可能である。
【0223】
切断部55の取り出しは、手動操作で遂行可能であり、任意選択として手又は専用の植物把持機構の助けにより遂行される。植物把持機構を使用する場合、把持機構を例えば直線アクチュエータ、回転アクチュエータやロボットアームなどのアクチュエータに取り付けてもよい。それにより、切断された植物部分を自律的又は半自律的に除去し、その後、育成プロセスを再開するために別のトレイに移すことが容易となる。
【0224】
切断された植物部分は空洞52/トレイ51から除去されるが、切断要素を切断動作の終わりにそれぞれの植物受容開口内に配置しておくことが有利な場合がある。切断された植物部分を取り除く間、この位置に切断要素を保持することにより、取り出しプロセス中に誤って別の切断植物部分を除去するリスクが低減される。
【0225】
植物増殖システムを有利に使用して、制御された反復可能な方法で植物のバッチの育成が可能なことが理解されるであろう。これにより植物を均一なサブ植物部分に切断する手段が提供される。複数の植物を比較的高速で均一な大きさのサブ部分に、特に自律的又は半自律的なプロセスによって容易に切断できることは、植物組織培養(PTC)に基づく植物増殖プロセスの全体効率を大幅に向上させる。これは主として、植物1つ当たりの切断時間、及び成長サイクルを反復するために切断された植物部分を(例えば別のトレイに)移動及び再移植する時間を短縮できるためである。切断されたサブ部分が均一な性質であることもまた、これらのサブ植物部分を所望の成長段階まで育成する成功率又は生存率を同様に向上させる。このプロセスを反復して成長サイクルを継続することが可能である。
【0226】
こうして、本開示はそのさまざまな形態において、複数の固有の属性と利点とを提供する。それにはバイオリアクター内に明確に規定されて規則正しく間隔を置いた位置に複数の植物組織培養物を保持可能なことが含まれ、それによりクローン挿し木の生産効率を顕著に改善可能である。1回の切断操作で複数の挿し木を作ることを可能とする本システムの能力は、設定された期間の間により多数の挿し木を生産可能とするという観点で利益をもたらす。与えられた期間内に大幅に多くの挿し木を生産できることは、労働コストを含む運用コストを劇的に低減可能であり、それにより植物組織培養により生産される挿し木一本当たりのコストを低減する。
【0227】
さらに前述したように、本システムは栄養素供給物容器を別のものに置き換えて、詰め替えを提供することが可能であり、及び/又は植物に供給する別の栄養素を提供することが可能である。例えば、育成期間中に栄養素の種類を変更して、植物の成長の各段階により適合するようにすることも有益であろう。
【0228】
本システムはまた、培養と収穫のプロセスに係わる上流及び下流の自動化設備と共に使用するように構成可能であるという点で、高い適合性を有する。これにより、全体的な操作効率がさらに向上し、植物組織培養物の生産に係わるコストが低減される。この観点で、既存の温室自動化設備と互換性のある形態でPTCを送達し、かつ作業要件を低減できるシステムを提供することは、本開示の好適な実施形態のさらなる利点である。より具体的には、本開示の実施形態は有利なことに、バイオリアクター内で所定の成長段階に達した植物を含むトレイを、バイオリアクターから温室又は屋外環境に、同一トレイで直接移すことを可能とする。つまり、植物は新しいトレイに移されるのではなく、元のトレイ内に留まることができ、それによりハンドリングの時間と関連する労働コストが低減される。この特別の利点はバイオリアクター内での成長の初期段階に液体培地又は栄養素供給物を使用することから生じる。トレイが温室又は屋外環境に移されると、植物は完全機能を有する植物になるまで成長可能であり、自動化設備を含む既存の設備で扱うことができる。ここで、各トレイにコネクタを提供することが利点となり得る。これは複数のトレイを横並び構成、及び/又は前後構成に接続してより大きな組合せトレイを実効的に形成し、無菌環境(例えば研究室)から非無菌環境(例えば温室あるいは屋外環境)へ、既存の(自動)設備や他の関連するハンドリング設備を介しての搬送が可能な大きさとする。
【0229】
したがって、本システムは本質的に、植物組織培養繁殖の費用効果を既存の手法よりもはるかに向上させ、いくつかの場合には、種子法に係わるコストに匹敵させる得ることが理解されるであろう。
【0230】
これら及びそのほかの観点において、本明細書に記載のシステム及び手法は、既存システムに対して実用的かつ商業的に顕著な改善を表す。本開示は特定の実施例を参照して記述したが、当業者であれば、本明細書に記載のシステムおよび手法は他の多くの形態で実現され得ることを理解するであろう。