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  • 特許-クラップスケート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】クラップスケート
(51)【国際特許分類】
   A63C 1/28 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
A63C1/28
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021504391
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 NL2019050441
(87)【国際公開番号】W WO2020022877
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】2021395
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】521031534
【氏名又は名称】シャーツェンファブリーク・フィキング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヒドー・フィッセル
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01923104(EP,A1)
【文献】特表2010-516306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0090022(US,A1)
【文献】特表平11-505733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッカリングを有するブレード(4)と、その底側に前記ブレード(4)を保持し、その上側に、スケートシューズ(2)またはブラケット(8)のかかと部分のためのかかと支持体(5)、およびピボット(7)を介してスケートシューズ(2)またはブラケット(8)の前方部分に接続された足前部支持体(6)を備えた、フレーム(3)と、を含んでなるクラップスケート(1)において、前記足前部支持体(6)は、前記フレーム(3)への固定接続部を提供し、前記固定接続部は、全体的に前記ピボット(7)の前に延びていることを特徴とする、クラップスケート(1)。
【請求項2】
前記足前部支持体(6)は、前記ピボット(7)の後ろに延び、前記ピボット(7)の後ろに延びる部分は、側方切り離し部(10、11、12)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のクラップスケート(1)。
【請求項3】
前記足前部支持体(6)の少なくとも後方部分は、凹部(11)を備え、前記凹部(11)は、前記足前部支持体(6)の上部の一部を、前記足前部支持体(6)の後方部分の一部から切り離していることを特徴とする、請求項2に記載のクラップスケート(1)。
【請求項4】
ベアリング(12)、バネ、またはヒンジが、前記凹部(11)内に位置していることを特徴とする、請求項3に記載のクラップスケート(1)。
【請求項5】
前記ベアリング(12)、バネ、またはヒンジのうちの一つは、ベアリングボールまたはローラー(12)を含み、それ以外は、前記ベアリングボールまたはローラー(12)が転がるための表面を含むことを特徴とする、請求項4に記載のクラップスケート(1)。
【請求項6】
前記ロッカリングの中心は、前記かかと支持体(5)および前記足前部支持体(6)より上で、かつ前記かかと支持体(5)と前記足前部支持体(6)との間に位置付けられていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のクラップスケート(1)。
【請求項7】
前記ロッカリングは、5~30mの範囲、好ましくは21~27mの範囲の半径を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のクラップスケート(1)。
【請求項8】
前記フレーム(3)は、管状であり、さらに/或いは、アルミニウムから作られていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のクラップスケート(1)。
【請求項9】
ロッカリングを有するブレード(4)と、その底側に前記ブレード(4)を保持し、その上側に、スケートシューズ(2)またはブラケット(8)のかかと部分のためのかかと支持体(5)、およびピボット(7)を介してスケートシューズ(2)またはブラケット(8)の前方部分に接続された足前部支持体(6)を備えた、典型的には金属管を含む、フレーム(3)と、を含んでなるクラップスケート(1)のための下部構造において、前記足前部支持体(6)は、前記フレーム(3)への固定接続部を提供し、前記固定接続部は、全体的に前記ピボット(7)の前に延びていることを特徴とする、下部構造。
【請求項10】
前記足前部支持体(6)は、前記ピボット(7)の後ろに延び、前記ピボット(7)の後ろに延びる部分は、側方切り離し部(10、11、12)を含むことを特徴とする、請求項9に記載の下部構造。
【請求項11】
前記足前部支持体(6)の少なくとも後方部分は、凹部(11)を備え、前記凹部(11)は、前記足前部支持体(6)の上部の一部を、前記足前部支持体(6)の後方部分の一部から切り離していることを特徴とする、請求項10に記載の下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッカリングを有するブレードと、その底側にブレードを保持し、その上側に、スケートシューズまたはブラケットのかかと部分のためのかかと支持体、およびピボットを介してスケートシューズまたはブラケットの前方部分に接続された足前部支持体を備えた、典型的には金属管を含む、フレームと、を含んでなるクラップスケートに関する。さらに、本発明は、クラップスケートのための下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,193,243号明細書(特許文献1)は、クラップスケートに関し、これは、「スケートシューズの足裏部分を上に留めるように構成された足前部支持体。足前部支持体は、横向きのピボットピンの周りでスケートフレームの前方部分に旋回可能に接続され、スケートシューズを上に備えた前記足前部支持体がピボットピンの周りで正常位置から前方に傾斜することを可能にし、それによって、スケートシューズは、そのかかと部分が、スケートフレームの後方部分から持ち上げられる。ピボットピンは、スケートフレームの前方部分から上方に延びる2つのブラケットフランジ間に保持される。足前部支持体を正常位置に戻すのに役立つバネ機構が、U字型のバネワイヤを含み、その交差部分は足前部支持体の上面に係合し、その脚部はらせん状に巻かれた部分を備える。らせん状に巻かれた部分はそれぞれ、ピボットピンの周りでフランジと前記足前部支持体の1つの側方端部との間の中間の空間に位置付けられる」を含む。
【0003】
国際公開第96/37269号(特許文献2)は、「ホイールによってスライド可能もしくは回転可能であるスキー板、特にクロスカントリー用のスキー板、またはアイススケートもしくはローラースケートのためのスケートフレームなどの靴に連結されるスポーツ用デバイスのためのフレームであり、このフレームは、ユーザが着用する靴に連結される手段を備える上方サブフレームと、主平面で旋回するためにピボット機構を介して前記上方サブフレームに連結され、ランナーまたはホイールを備えるか、または備えるように構成された、下方サブフレームと、両方のサブフレームを互いに向かって押すためのリセット用バネ手段と、を含む」に関する。
【0004】
米国特許出願公開第2004/090022号(特許文献3)は、靴をスポーツ用デバイス、例えばアイススケート、ローラースケート、スキー板、および他の類似のスポーツ用デバイスに旋回可能に接続するための接続機構に関する。ある実施形態では、接続機構は、「第1の端部9´と、第2の端部9″と、を含み得る接続要素9。接続要素9の第1の端部9´は、スポーツ用デバイス6に取り付けられるか、装着されるか、または別様に配置され得る。接続要素9の第2の端部9″は、第2のピボット3を介して連結要素8の第2の端部8″に取り付けられ得る」を含む。
【0005】
クラップスケートでは、スケートフレームは、足前部支持体と、かかと支持体と、を有する。足前部支持体は、フレームの前方部分に固定され、例えば溶接され、本質的にフレームに対して固定された、ピボット、典型的には横向きのピボットピンを含む。スケートシューズの足前部は、直接、もしくは例えばブラケットを介して、ピボットに取り付けられるか、または取り付けられ得る。かかと支持体は、フレームの後方部分に固定され、例えば溶接される。スケートシューズのかかと部分は、直接、もしくは例えばブラケットを介して、かかと支持体に解放可能に取り付けられる。フレームおよびスケートシューズまたはブラケットに取り付けられた、少なくとも1つのバネが、かかと支持体によってスケートシューズまたはブラケットのかかと部分に付勢された状態に、フレームおよびブレードを弾性的に維持する。
【0006】
スケート中、ストロークの終了間近に、スケート靴が開き、すなわち、フレーム上のかかと支持体およびスケートシューズまたはブラケットのかかと部分が係合解除され、スケーターの足が、前方に、スケートフレームから離れて傾斜し、一方、ブレードはバネの作用に抵抗して、氷と接触したままである。スケーターが自分の足を持ち上げると、バネはフレームをその正常位置または閉鎖位置に引っ張り、すなわち、フレームのかかと支持体はスケートシューズまたはブラケットのかかと部分に再び係合し、典型的には「パチン(clap)」という音を出す(したがって、「クラップスケート」という名前である)。よって、フレームとスケートシューズとの間のピボット接続により、スケーターの足はスケートフレームから離れることができ、一方、ブレードは、氷との接触を維持し、ストロークを延長させて効率を改善する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第6,193,243号明細書
【文献】国際公開第96/37269号
【文献】米国特許出願公開第2004/090022号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、クラップスケートの有効性を改善し、よって、スケーターがさらに速い速度を達成するのを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このために、本発明によるクラップスケートは、足前部支持体がフレームへの固定接続部を提供し、固定接続部は、ピボットの前に延び、ピボットの後ろに最大で5mm、例えばピボットの後ろに3mm延びることを特徴とする。改良版では、固定接続部は、ピボットの前に延び、ピボットの後ろに最大で2mm、例えばピボットの後ろに0.5mm延びる。さらなる改良版では、固定接続部は、全体的にピボットの前に延び、すなわち、ピボットの後ろに固定接続部がない。
【0010】
本発明では、クラップスケートの有効性、よってスケーターの速度が改善され、これは、能力の高いスケーターで特に顕著である。この改善の背景にあるメカニズムは、現在以下の通りと考えられている。プッシュオフの間、スケート靴のブレードは弾性的に曲がる。大半のスピードスケート靴のブレードがそうであるように、ロッカリングを含むブレードでは、氷によってブレードに及ぼされる反力は、比較的小さな領域、例えばブレードに沿って3~5cm延びる領域に集中し、その結果、ブレードがわずかに湾曲する。ストローク中、この領域の場所は、ブレードの後ろ半分からブレードの前部に向かって移動する。ストロークの終了間近、スケートが開く直前に、この領域の中心がおおよそクラップスケートのピボットにあるとき、ブレードは、二重波(double wave)または同様の形態に曲がる。この二重波は、有効性に影響を及ぼす、すなわち氷上での前方へのスライド運動を妨げる、氷との相互作用を引き起こすことが分かった。本発明では、すなわち、先行技術のスケート靴で見られるように大部分がピボットの後ろに延びる固定接続部の代わりに、フレームへの足前部支持体の固定接続部を提供して、この固定接続部を、ピボットの前に延ばし、ピボットの後ろに最大で5mm延ばすことによって、この相互作用は減少され、すなわち延期され、かつ/またはその持続時間が短縮され、有効性が改善される。
【0011】
ある実施形態では、足前部支持体はピボットの後ろに延び、ピボットの後ろに延びる部分は、下方に支持され、側方が切り離される。改良版では、足前部支持体の少なくとも後方部分が、凹部、例えば切り欠きを備え、これは、足前部支持体の上部の一部を足前部支持体の後方部分の一部(下部)から切り離す。
【0012】
ベアリング、バネ、例えばエラストマー要素、または(ダブル)ヒンジが凹部内に位置するのが好ましい。ある実施形態では、上記一部のうちの一方は、ベアリングボールまたはローラーを含み、他方は、ボールまたはローラーが転がるための表面を含む。
【0013】
よって、側方方向への切り離しにも関わらず、下方向への支持が維持される。
【0014】
ある実施形態では、足前部支持体およびかかと支持体は、ブリッジの一部であるか、またはブリッジによって相互接続される。ブリッジは、例えば足前部支持体とかかと支持体との間の中ほどで、フレームに接続され得る。しかしながら、ブリッジが、ピボットの後ろに少なくとも5cm、好ましくは少なくとも10cm延びる領域に、存在する場合、ブリッジとフレームとの間に接続部がないことが好ましい。ある実施形態では、ブリッジは、足前部支持体およびかかと支持体によってフレームに接続されるのみである。
【0015】
本発明は、ロッカリングを有するブレードと、その底側にブレードを保持し、その上側に、スケートシューズまたはブラケットのかかと部分のためのかかと支持体、およびピボットを介してスケートシューズまたはブラケットの前方部分に接続された足前部支持体を含む、典型的には金属管を含む、フレームと、を含むクラップスケートのための下部構造において、足前部支持体は、フレームへの固定接続部を提供し、この接続部は、ピボットの前に延び、ピボットの後ろに最大で5mm、好ましくは最大で2mm延びることを特徴とする、下部構造にさらに関する。ある実施形態では、固定接続部は、全体的にピボットの前に延び、すなわち、ピボットの後ろに固定接続部がない。
【0016】
本発明によるクラップスケートに関して前述した実施形態は、この下部構造にも当てはまる。
【0017】
本発明の枠組み内では、用語「前方」および「後方」は、通常のスケーティング方向において見たスケート靴の部品の場所を指す。用語「上部」および「底部」は、スケート靴が直立して位置していて、そのブレードが氷上にある場合のスケート靴の部品の場所を指す。ロッカリングは、典型的には、5~30mの範囲、さらに具体的には、ショートトラックスピードスケートでは5~15mの範囲、ロングトラックスピードスケートでは21~27mの範囲の、半径を有する。ロッカリングの中心、すなわち、ロッカリングを画定する虚円の中心は、かかと支持体および足前部支持体より上で、かつかかと支持体と足前部支持体との間に位置付けられるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明によるクラップスケートの左側面図である。
図2図1に示すクラップスケートの下部構造の右側面図である。
図3図2に示す下部構造の断面の後面図である。
図4図2に示す下部構造で使用される足前部支持体の右側面図、後面図、および2つの斜視図を含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面は概略的な性質のものであり、本発明の理解に必要とされない細部は、省略されている場合があることに注意されたい。
【0020】
図1は、スケートシューズ2と、管状フレーム3と、フレームの底側に保持され、例えば溶接された、ランナーまたはスチールとしても知られる、ブレード4と、を含むクラップスケート1を示す。かかと支持体5および足前部支持体6が、フレームに、その後端部および前端部それぞれの近くで固定され、例えば溶接される。足前部支持体6は、ピボット、典型的には横向きのピボットピン7を含み、これにブラケット8が取り付けられる。よって、ブラケットおよびスケートシューズは、フレームおよびブレードに旋回可能に取り付けられる。
【0021】
スケートシューズ2は、それ自体で知られる方法で、ブラケット8上に調節可能に装着される。ブラケットのかかと部分9は、フレーム3上のかかと支持体5に解放可能に係合する。さらに、少なくとも1つのバネ(不図示)が、一方ではフレーム3に、他方ではブラケット8に取り付けられて、ブラケット8のかかと部分9と係合するよう、かかと支持体5を付勢する。
【0022】
足前部支持体6は、その後方セクションに、(図4で最もよく分かる)切り欠き10を備え、これは、支持体6の上部および底部の後部を、ピボット7まで、かつこれをわずかに越えて、切り離す。切り欠きの後端部は、追加の凹部11を備え、これは、ベアリングボール、または、この実施例ではローラー12(図3)を、その回転軸がブレード4に平行に延びた状態で収容する。
【0023】
よって、フレームへの接続部の固定部分は、全体的にピボットの前に延び、足前部支持体の残りの部分は、側方が切り離される。
【0024】
本発明は、前述した実施形態に制限されず、特許請求の範囲内で多くの方法で変更され得る。
【符号の説明】
【0025】
1 クラップスケート
2 スケートシューズ
3 管状フレーム
4 ブレード
5 かかと支持体
6 足前部支持体
7 ピボットピン
8 ブラケット
9 かかと部分
10 切り欠き
11 凹部
12 ローラー
図1
図2
図3
図4