(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】粒子サイズの制御が可能なモルデナイトゼオライトの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 39/26 20060101AFI20240719BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20240719BHJP
B01J 29/18 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C01B39/26
B01J37/10
B01J29/18 Z
(21)【出願番号】P 2021515006
(86)(22)【出願日】2019-09-23
(86)【国際出願番号】 KR2019012349
(87)【国際公開番号】W WO2020060363
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0114283
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】チョン ユン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ サン-イル
(72)【発明者】
【氏名】イ ジ-フン
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/145617(WO,A1)
【文献】特表2018-504357(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0156389(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0104447(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0074676(KR,A)
【文献】特表2020-513399(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107758686(CN,A)
【文献】特開2006-083032(JP,A)
【文献】特開2003-175339(JP,A)
【文献】特開平09-208219(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106032281(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20 -39/54
B01J 21/00 -38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ1モルに対するモル比で、アルミナ前駆体0.02~0.2、構造誘導物質0.01~0.04、pH調節物質
がNa
2
O換算で0.1~0.18、及び水10~100であるゲルを150~190℃の温度で結晶化し、
前記pH調節物質は塩基性
の水酸化ナトリウムである、モルデナイトゼオライトの製造方法
であって、
前記ゲルの製造は、
水にpH調節物質及びシリカ前駆体を溶解してシリカ塩基性懸濁液を提供する段階と、
水に構造誘導物質及びアルミナ前駆体を溶解してアルミナ水溶液を提供する段階と、
水に界面活性剤を溶解して界面活性剤水溶液を提供する段階と、
前記シリカ塩基性懸濁液とアルミナ水溶液を混合及び撹拌して製造されたシリカ-アルミナ水溶液を提供する段階と、
前記シリカ-アルミナ水溶液をゲル化する段階と、を含む、製造方法。
【請求項2】
前記ゲルは、シリカ1モルに対するモル比で0.03以下(但し、0は除く)の界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項3】
前記結晶化が24~80時間行われる、請求項1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項4】
前記結晶化されたモルデナイトゼオライトの平均粒子直径が20~150nmである、請求項1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項5】
前記シリカ-アルミナ水溶液に界面活性剤水溶液を投入する段階をさらに含む、請求項
1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項6】
前記シリカ塩基性懸濁液は、前記pH調節物質を水に投入して塩基性水溶液を製造し、前記塩基性水溶液にシリカ前駆体を投入して溶解して得られる、請求項
1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項7】
前記シリカ前駆体は、撹拌下で、0.1~1g/minの速度で投入される、請求項
1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項8】
前記シリカ前駆体は、ヒュームシリカ、沈殿(precipitated)シリカ、コロイダルシリカ、ナトリウムシリケート、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート、ボロシリケート、及びフルオロシリケートからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項
1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項9】
前記シリカ前駆体の投入後に、1~200時間撹拌を行い、シリカ前駆体を溶解する、請求項
6に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項10】
前記アルミナ水溶液は、構造誘導物質及びアルミナ前駆体を水に投入し、撹拌して製造する、請求項
1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項11】
前記構造誘導物質及びアルミナ前駆体は、個別に又は同時に水に投入し、且つ1~10g/minの速度で投入する、請求項
10に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項12】
前記アルミナ前駆体は、アルミン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、及びアルミニウムからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項
1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項13】
前記構造誘導物質は、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、及びテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項
1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項14】
前記界面活性剤水溶液は、撹拌下で、界面活性剤を20℃~80℃の温度の水に投入して製造する、請求項
1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項15】
前記界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、及びセチルピリジニウムクロライドからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項
1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項16】
前記シリカ塩基性懸濁液とアルミナ水溶液の混合は、シリカ塩基性懸濁液にアルミナ水溶液を1~10cc/minの速度で投入して行う、請求項
1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項17】
前記シリカ塩基性懸濁液とアルミナ水溶液の混合は、アルミナ水溶液の投入完了後に撹拌を1~72時間さらに行う、請求項
16に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項18】
前記界面活性剤水溶液は、1~10cc/minの速度でシリカ-アルミナ水溶液に投入される、請求項
5に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項19】
前記ゲル化は、20~60℃の温度で1~120時間撹拌して行う、請求項
1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項20】
前記結晶化は、シードの存在下で行われる、請求項1から請求項
19のいずれか一項に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子サイズの制御が可能なモルデナイトゼオライトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、機能性材料の開発に対する要求が次第に高まるにつれて、優れた物性を有する物質に新しい機能を付加した新素材の開発の必要性が増大しつつある。
【0003】
有機/無機ナノ細孔体又は多孔性有機/無機混成体、有機金属骨格体、又は多孔性無機細孔体は、構造の多様性、多くの数の活性部位、広い比表面積、及び細孔体積を有する特性により、触媒、吸着剤、膜、薬物伝達物質、電子素材などとして広く用いられている。かかる細孔物質は、触媒及び吸着剤として最も活用度が高く、その細孔のサイズに応じて、微細細孔物質(<2nm)、メソ細孔物質(2-50nm)、マクロ細孔物質(>50nm)に分類される。
【0004】
微細細孔物質の代表物質のうちの一つであるゼオライトは、結晶性アルミノシリケート(Crystalline aluminosilicate)からなり、高い比表面積、細孔体積、及び均一な微細細孔を特徴とするため、Friedel-Craft Acylation、Friedel-Craft Alkylation、Claisen-Schmidt Reactionなどのような分子のサイズや形状、及び選択的触媒反応に多く活用されている。
【0005】
当該技術分野では、ゼオライトの細孔分布及び表面を制御することにより、所望の作用及び機能を達成しようとする試みが継続的になされてきた。
【0006】
例えば、KR 2011-0019804(2009.08.21.公開)は、有無機混成ナノ細孔体の製造方法、上記方法によって得られる有無機混成ナノ細孔体、及びその用途に関連するものであって、有機リガンドとして、トリ(C1-C7)アルキル-1,3,5-ベンゼントリカルボキシレートを用いることにより、結晶性が高く、純粋なゼオライトMTN構造のアルミニウム有無機混成ナノ細孔体を製造する方法、及びこれを利用した吸着剤、又は不均一触媒などを提供する。
【0007】
一方、JP 2005-254236(2005.09.22.公開)は、モルデナイト型ゼオライトアルキル化触媒に関するものであって、制御された大細孔構造を有するモルデナイト型ゼオライト触媒、これを含む触媒複合体、及び触媒複合体の製造方法を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、粒子サイズの制御が可能であり、且つ粒子均一度に優れたモルデナイト型ゼオライト触媒を製造する方法、及びこれにより得られた触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によると、シリカ1モルに対するモル比で、アルミナ前駆体0.02~0.2、構造誘導物質0.01~0.04、pH調節物質0.1~0.18、及び水10~100であるゲルを150~190℃の温度で結晶化するモルデナイトゼオライトの製造方法が提供される。
【0010】
上記ゲルがシリカ1モルに対するモル比で、0.03以下(但し、0は除く)の界面活性剤をさらに含むことができる。
【0011】
上記結晶化が24~80時間行われることができる。
【0012】
上記結晶化されたモルデナイトゼオライトの平均粒子直径が20~150nmであることができる。
【0013】
上記ゲルの製造は、水にpH調節物質及びシリカ前駆体を溶解してシリカ塩基性懸濁液を提供する段階と、水に構造誘導物質及びアルミナ前駆体を溶解してアルミナ水溶液を提供する段階と、上記シリカ塩基性懸濁液とアルミナ水溶液を混合及び撹拌してシリカ-アルミナ水溶液を提供する段階と、上記シリカ-アルミナ水溶液をゲル化する段階と、を含むことで行われることができる。
【0014】
上記シリカ-アルミナ水溶液に界面活性剤水溶液を投入する段階をさらに含むことができる。
【0015】
上記シリカ塩基性懸濁液は、上記pH調節物質を水に投入して塩基性水溶液を製造し、上記塩基性水溶液にシリカ前駆体を投入し、溶解することで得ることができる。
【0016】
上記pH調節物質は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、及び水酸化アンモニウムからなる群より選択される少なくとも一つであることができる。
【0017】
上記シリカ前駆体は、撹拌下で、0.1~1g/minの速度で投入されることができる。
【0018】
上記シリカ前駆体は、ヒュームシリカ、沈殿(precipitated)シリカ、コロイダルシリカ、ナトリウムシリケート、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート、ボロシリケート、及びフルオロシリケートからなる群より選択される少なくとも一つであることができる。
【0019】
上記シリカ前駆体の投入後に、撹拌を1~200時間行い、シリカ前駆体を溶解することができる。
【0020】
上記アルミナ水溶液は、構造誘導物質及びアルミナ前駆体を水に投入し、撹拌して製造することができる。
【0021】
上記構造誘導物質及びアルミナ前駆体は、個別に又は同時に水に投入し、且つ1~10g/minの速度で投入することができる。
【0022】
上記アルミナ前駆体は、アルミン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、及びアルミニウムからなる群より選択される少なくとも一つであることができる。
【0023】
上記構造誘導物質は、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、及びテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートからなる群より選択される少なくとも一つであることができる。
【0024】
上記界面活性剤水溶液は、撹拌下で、界面活性剤を20℃~80℃の温度の水に投入して製造することができる。
【0025】
上記界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、及びセチルピリジニウムクロライドからなる群より選択される少なくとも一つであることができる。
【0026】
上記シリカ塩基性懸濁液とアルミナ水溶液の混合は、シリカ塩基性懸濁液にアルミナ水溶液を1~10cc/minの速度で投入して行うことができる。
【0027】
上記シリカ塩基性懸濁液とアルミナ水溶液の混合は、アルミナ水溶液の投入完了後に撹拌を1~72時間さらに行うことができる。
【0028】
上記界面活性剤水溶液は、1~10cc/minの速度でシリカ-アルミナ水溶液に投入されることができる。
【0029】
上記ゲル化は、20~60℃の温度で1~120時間撹拌して行うことができる。
【0030】
上記結晶化はシードの存在下で行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、粒子サイズの均一度に優れ、かかる均一度を維持するとともに、粒子サイズの制御が可能なモルデナイトゼオライトを製造することができる。
【0032】
また、本発明によって提供されるモルデナイトゼオライトを用いて製造された触媒を用いることにより、触媒活性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】モルデナイトゼオライトの結晶サイズに応じた全転換率を示すグラフである。
【
図2】モルデナイトゼオライトの結晶サイズに応じた全転換率を示すグラフである。
【
図3】実施例1で得られたモルデナイトゼオライトを撮影したSEM画像である。
【
図4】実施例2で得られたモルデナイトゼオライトを撮影したSEM画像である。
【
図5】実施例3で得られたモルデナイトゼオライトを撮影したSEM画像である。
【
図6】実施例4で得られたモルデナイトゼオライトを撮影したSEM画像である。
【
図7】実施例5で得られたモルデナイトゼオライトを撮影したSEM画像である。
【
図8】実施例6で得られたモルデナイトゼオライトを撮影したSEM画像である。
【
図9】実施例7で得られたモルデナイトゼオライトを撮影したSEM画像である。
【
図10】実施例8で得られたモルデナイトゼオライトを撮影したSEM画像である。
【
図11】実施例9で得られたモルデナイトゼオライトを撮影したSEM画像である。
【
図12】比較例1で得られたモルデナイトゼオライトを撮影したSEM画像である。
【
図13】比較例2で得られたモルデナイトゼオライトを撮影したSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、様々な実施例を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。
【0035】
本発明は、モルデナイトゼオライトの製造方法に関し、より詳細には、粒子均一度に優れるだけでなく、粒子サイズの制御が可能なモルデナイトゼオライトの製造方法に関する。
【0036】
本発明の一側面によると、シリカ1モルに対するモル比で、アルミナ前駆体0.02~0.2、構造誘導物質0.01~0.04、pH調節物質0.1~0.18、及び水10~100であるゲルを150~190℃の温度で結晶化するモルデナイトゼオライトの製造方法が提供される。
【0037】
モルデナイトゼオライトを製造する方法のうちの一つとして、ヒドロゲルの水熱合成を介してモルデナイト結晶を生成させる方法が挙げられる。水熱合成の温度は、生成される結晶のサイズに影響を与える。本発明者らは、特定の組成を有するゲルを特定の温度で水熱合成して結晶化する場合、粒子サイズの制御が可能であるだけでなく、触媒の活性にも優れたモルデナイトゼオライトを製造することができる点を発見し、本発明を完成するに至った。
【0038】
本発明において、アルミナ前駆体は、シリカ1モルに対して0.02~0.2のモル比で含まれることが好ましい。0.02未満の場合には、生成物に含まれる酸点が少なすぎるため、触媒活性が低くなる可能性がある。これに対し、0.2を超えると、生成物に含まれる酸点の数が多くなりすぎ、酸強度の変化及び骨格外Alの形成により触媒活性に不利となりうる。
【0039】
構造誘導物質は、シリカ1モルに対して0.01~0.04のモル比で含まれることが好ましい。0.01未満の場合には、構造が正確に誘導されず、モルデナイト結晶以外の他の不純物が発生する可能性がある。これに対し、0.04を超えると、経済性が低下するおそれがある。
【0040】
pH調節物質は、シリカ1モルに対して0.1~0.18のモル比で含まれることが好ましい。0.1未満の場合には、十分な塩基を提供しないため、シリカ前駆体の溶解度を低下させてゲルの不均一化をもたらす可能性がある。また、pH調節物質に含まれる陽イオンは結晶化剤として用いられるが、この量が少なくなると、結晶化が十分に起こらず、結晶化温度又は時間がさらに必要になる可能性がある。これに対し、0.18を超えると、陽イオンの過度な投入が原因となって結晶化が過度に起こり、結晶サイズが大きくなりすぎる上、触媒反応における拡散速度を低下させ、活性減少を起こすおそれがある。後述のように、粒子サイズの制御における最も重要な要因は、結晶化時の温度及び時間であるが、pH調節物質の量に応じてゲル内に含まれる陽イオンの量及びpHが変化し、陽イオンの量の増加によって結晶化が速く起こり、pHの増加によってシリカ前駆体の溶解速度が促進される。これにより、粒子サイズの制御に影響を与えることができる。
【0041】
一方、水はシリカ1モルに対して10~100のモル比で含まれることが好ましい。10未満の場合には、粘度の増加によってゲルの不均一をもたらし、粒子の不均一度が高くなる可能性がある。これに対し、100を超えると、商業生産時における経済性が低下するおそれがある。
【0042】
一方、上記ゲルは、必要に応じて、界面活性剤をさらに含むことができる。界面活性剤がさらに含まれる場合には、シリカ1モルに対するモル比で0.03以下(但し、0は除く)になるようにすることが好ましい。これに対し、0.03を超えると、経済性が低下するか、又は未反応の界面活性剤のポリマー化による不純物が生成される可能性がある。より好ましくは、シリカ1モルに対するモル比で0.005~0.03であることができ、0.005以上含まれる場合には、ゲルの均一度をさらに向上させることができる。
【0043】
上記のような組成を有するゲルを150~190℃の温度範囲で得ることができ、より好ましくは、165~180℃の温度範囲で結晶化してモルデナイトゼオライトを製造することができる。150℃未満の場合には、結晶化が正確に行われず、所望の結晶型を有する結晶を形成することができないか、又は他の結晶型(MFIなど)が生成される可能性がある。また、結晶が形成されても、結晶化度を高めるための反応時間が延長されるおそれがある。このように反応時間が延長される場合には、未反応シリカの独立した結晶化により、クリストバライト(cristobalite)やクォーツ(quartz)などが形成されて不純物として作用する可能性がある。これに対し、190℃を超えると、過度な結晶成長により、未反応シリカなどがクリストバライト(cristobalite)やクォーツ(quartz)などに形成されて不純物として作用し、試料全体の純度を低下させる可能性がある。また、未反応シリカが存在しなくても、結晶自体が過度に成長し、最終生成物の結晶サイズが大きくなって反応拡散速度を低下させて、触媒としての活性自体の減少をもたらすおそれがある。
【0044】
上記結晶化は、例えば、24時間~80時間、より好ましくは、36時間~72時間反応させることによって行うことができる。結晶化時間が短すぎると、結晶の形成に十分な時間を提供できず、生成物の結晶化度が低下する。これに対し、結晶化時間が長すぎると、未反応シリカの独立した結晶化によるシリカ結晶体(クリストバライトやクォーツなど)が生成され、生成物の不純物として作用して純度を低下させる要因になる可能性がある。
【0045】
上記のような本発明の方法によると、20~150nmの範囲内で所望のサイズを有するゼオライト結晶を得ることができる。本発明により結晶化温度を調節することにより、最小20nmのサイズの粒子、最大150nmのサイズの粒子を得ることができる。かかるゼオライトは、構造的に見たとき、c軸方向に1Dチャンネルを有している。結晶サイズが均一であると仮定したとき、結晶サイズが小さい場合には、c軸方向の1Dチャンネルが短くなるという効果がある。これは、触媒反応物の拡散が容易であることを意味することから、触媒反応の拡散速度の改善に伴う活性の改善効果がある。また、結晶サイズが大きくなるほど1Dチャンネルが長くなって触媒の拡散速度が低下するおそれがあり得るが、触媒反応物の種類及び酸点の分布によって最適化された1Dチャンネルのサイズが存在することから、結晶化度の温度調節によって最適化された1Dチャンネルのサイズを形成することができるという利点がある。但し、粒子サイズと触媒の活性との間の相関関係が存在するようにするためには、粒子均一度を前提にすべきである。以下では、粒子均一度を制御することができる方法についてより詳細に説明する。
【0046】
上記組成を有するゲルは、水にpH調節物質及びシリカ前駆体を溶解してシリカ塩基性懸濁液を提供する段階と、水に構造誘導物質及びアルミナ前駆体を溶解してアルミナ水溶液を提供する段階と、上記シリカ塩基性懸濁液とアルミナ水溶液を混合及び撹拌して製造されたシリカ-アルミナ水溶液を提供する段階と、上記シリカ-アルミナ水溶液をゲル化する段階と、を介して製造することができる。
【0047】
シリカ塩基性懸濁液とは、シリカ前駆体が塩基性水溶液に分散した状態の混合溶液を意味する。上記シリカ塩基性懸濁液を製造するためには、先ず、水に塩基性のpH調節物質を投入し、pHを上昇させて塩基性水溶液を製造する。シリカ前駆体は、pHが低い溶液では円滑に溶解されないことから、シリカ前駆体の溶解のために、上記のように塩基性のpH調節物質による塩基性水溶液を製造することが好ましい。また、上記pH調節物質は、モルデナイトゼオライト合成組成物溶液内に陽イオンを提供することにより、結晶化段階においてゼオライト結晶化を誘導する役割も果たすことができる。
【0048】
したがって、塩基性のpH調節物質を含まない場合には、pHが低いためシリカ前駆体が円滑に溶解されず、かかるシリカ前駆体の低い溶解により溶液中の陽イオンの含有量が低くなり、最終的なゼオライトの収率の減少及び低い結晶化度を示す可能性がある。
【0049】
上記のようなシリカ前駆体の溶解性を向上させ、且つ結晶の形成のための十分な含有量の陽イオンを提供するためには、塩基性水溶液のpHが12以上、具体的には、12~14の範囲を有するようにpH調節物質を投入することが好ましい。pHが12よりも低い場合には、シリカ前駆体が塩基性溶液に円滑に解離されず反応に参加できなくなり、結晶化過程においてシリカ結晶に生成され、試料の不純物として作用する可能性がある。これにより、上記pH調節物質は、SiO2に対するモル比が0.15~0.35になるようにする含有量で含まれることができる。
【0050】
上記pH調節物質は、これに限定されるものではないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、及び水酸化アンモニウムなどが挙げられる。
【0051】
本発明のシリカ塩基性懸濁液はシリカ前駆体を含む。上記シリカ前駆体は、水にpH調節物質を投入して得られた塩基性水溶液に投入し、分散させることで製造することができる。すなわち、上記シリカ前駆体を塩基性水溶液に投入し、シリカ前駆体が完全に溶解するまで撹拌することにより、シリカ塩基性懸濁液を得ることができる。これにより、シリカ前駆体は塩基性水溶液中において均一な分散性を確保することができ、結果として、均一度の高いゼオライトを製造することができる。
【0052】
上記シリカ前駆体を塩基性水溶液に投入するにあたっては、徐々に投入することが好ましい。上記シリカ前駆体は、塩基性水溶液に投入されると同時に溶解し始めるが、一度に多量に投入された場合には、シリカ前駆体の凝集が起こり、不均一な速度で溶解されて溶液自体の粘度が高くなる。さらに、溶液の粘度の増加に伴う物理的撹拌速度の低下、及びかかる撹拌速度の低下に伴う2次的不均一な溶解の過程が繰り返され、塩基性水溶液に完全に溶解することが難しく、均一な溶液の形成に要する時間も長くなる。したがって、より具体的には、塩基性水溶液に上記シリカ前駆体を0.1~1g/minの速度で投入することが好ましい。より好ましくは、0.3~0.8g/minの速度で投入することができる。
【0053】
上記シリカ前駆体は、全組成物に含まれる水に対するシリカ-水のモル比(Silica-to-Water Mole Ratio)が0.01~0.1の範囲になるようにシリカを投入することが好ましい。上記シリカ-水のモル比は、より好ましくは0.03~0.08、最も好ましくは0.05~0.07であることができる。上記シリカ-水のモル比は、シリカ塩基性水溶液の均一度及び粘度を調節する要素であって、上記のような数値範囲を満足する場合、一定の範囲内の結晶サイズを有するゼオライト結晶を誘導することができるため、結晶の均一度を向上させることができる。
【0054】
上記シリカ前駆体は、ゼオライトの製造に通常用いられるものであれば、本発明でも好適に用いることができる。これに限定されるものではないが、例えば、ヒュームシリカ、沈殿(precipitated)シリカ、コロイダルシリカ、ナトリウムシリケート、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート、ボロシリケート、及びフルオロシリケートのうち選択される一つ以上を含むことができる。上記シリカ前駆体としては、ルドックスシリカ(登録商標)のような溶解した状態のシリカを用いることができるが、反応速度制御の便宜性や経済性などを有する沈殿シリカを用いることがより好ましい。
【0055】
pH調節物質が投入された塩基性水溶液に上記シリカ前駆体を投入して塩基性懸濁液を製造することを前提に説明したが、シリカ前駆体は、pH調節物質と同時に、又はpH調節物質の投入後、すなわち、pH調節物質が完全に溶解する前にpH調節物質を投入して溶液のpHを塩基性に変化させながらシリカ前駆体を溶解させることにより、上記塩基性懸濁液を製造することができる。
【0056】
このとき、上記水へのpH調節物質及びシリカ前駆体の投入は、塩基性水溶液にシリカ前駆体を投入するのと同一の方法を介して行うことができるため、具体的な説明は省略する。
【0057】
上記シリカ及びpH調節物質を投入する過程中に撹拌を行いながら投入する方法は水にシリカ及びpH調節物質を溶解させることができるため好ましい。上記撹拌は、例えば、100~800rpmの速度で行うことができる。撹拌の速度が遅すぎると、溶液の混合が円滑に行われず、溶液内の均一度を低下させる可能性がある。これに対し、撹拌の速度が速すぎると、溶液が飛び散る現象が発生するため、上記範囲の撹拌速度で行うことが好ましい。
【0058】
さらに、シリカ及びpH調節物質の投入を終了させた後でも、シリカ及びpH調節物質の完全な溶解のために、上記のような範囲の撹拌速度で撹拌を継続することが好ましい。このとき、追加的な撹拌は、投入されるシリカ及びpH調節物質の使用量に応じて変化することがあるが、シリカ及びpH調節物質が完全に溶解するまで行うことが好ましい。例えば、撹拌速度100~800rpmで1時間以上行うことができる。撹拌時間が短すぎると、シリカ前駆体の解離が円滑に行われないため溶液の均一度が低下する可能性がある。一方、撹拌時間は長いほど、溶液の均一度の向上に好ましいため、特に限定しないが、撹拌時間が長すぎる場合には商業的経済性が低下するおそれがある。より好ましくは120時間以下で行うことができる。
【0059】
次に、アルミナ前駆体及び構造誘導物質が溶解した水溶液を製造する。上記アルミナ前駆体は、ゼオライトの製造において一般的に用いられるものであれば、本発明でも好適に用いることができ、例えば、アルミン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、及びアルミニウムからなる群より選択されることができる。これらアルミナ前駆体は、いずれか1つを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
上記アルミナ前駆体の使用量は、得ようとするゼオライトのシリカ-アルミナのモル比に応じて決定することができる。例えば、これに限定されるものではないが、シリカ-アルミナのモル比(SiO2/Al2O3 Mole Ratio)が5~50の範囲になるようにアルミナ前駆体を用いることができる。
【0061】
一方、上記構造誘導物質は、モルデナイトゼオライトの合成に用いることができるものであれば、本発明でも好適に用いることができる。上記構造誘導物質としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、及びテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどを挙げることができる。これら構造誘導物質は、いずれか1つを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0062】
ここで、得ようとするゼオライト結晶を合成する溶液内での構造誘導物質の濃度に応じて結晶化度が決定され、また、構造誘導物質の量に応じて結晶サイズが変化する。したがって、得ようとするゼオライトの結晶化度及びサイズによって構造誘導物質の使用量を決定することができる。但し、過度に少ない量の構造誘導物質を用いると、結晶が生成されない可能性があることから、これに限定されるものではないが、シリカ1モルに対して1/100~1/25のモルで用いることができる。
【0063】
上記アルミナ前駆体及び構造誘導物質は水に溶解してアルミナ水溶液を製造する。上記アルミナ前駆体及び構造誘導物質を水に投入し、これらが水に完全に溶解するまで撹拌することにより、アルミナ水溶液を得ることができる。アルミナ前駆体及び構造誘導物質が水に完全に溶解することにより、均一に分散したアルミナ水溶液が得られる。これにより、ゼオライトの粒度均一度を確保することができる。
【0064】
このような均一に分散したアルミナ水溶液を製造するために、上記アルミナ前駆体及び構造誘導物質を水に徐々に投入することが好ましい。このとき、上記アルミナ前駆体及び構造誘導物質は、同時に投入してもよく、いずれか1つを先に投入した後、連続的に又は時間間隔をおいて投入してもよい。より具体的には、上記アルミナ前駆体及び構造誘導物質を1~10g/minの速度で投入することができる。
【0065】
上記アルミナ前駆体及び構造誘導物質を投入する過程中に撹拌を行いながら投入する方法が、水にアルミナ前駆体及び構造誘導物質を溶解させることができるため好ましい。このとき、撹拌は、上記シリカ塩基性懸濁液を製造する過程における条件を同様に適用することができる。
【0066】
さらに、アルミナ前駆体及び構造誘導物質の投入を終了した後でも、上記撹拌を継続することがアルミナ前駆体及び構造誘導物質の完全な溶解のために好ましい。上記投入終了後の撹拌は、投入されるアルミナ前駆体及び構造誘導物質の使用量に応じて変化することがあるが、アルミナ前駆体及び構造誘導物質が完全に溶解する間に行うことが好ましく、例えば、15分~1時間行うことができる。撹拌の終了時点は、肉眼で確認したとき、溶解せずに残っている物質がない澄んだ水溶液の状態が確認された時点を挙げることができ、例えば、1時間程度で確認することができる。
【0067】
必要に応じて、上記シリカ塩基性懸濁液及びアルミナ水溶液に加えて、界面活性剤が溶解した水溶液を投入する段階をさらに含むことができる。上記界面活性剤は、構造誘導物質によって生成された微細細孔を有するモルデナイト粒子間にミセルを形成させるか、又はイオンの形で粒子の表面にイオン結合の形でくっ付いて粒子間の間隔を増加させることによってメソ細孔を誘導する。かかる界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライドなどを挙げることができ、これらは単独で用いてもよく、2以上を混合して用いてもよい。
【0068】
上記界面活性剤も水に溶解する水溶液にして設ける。水溶液の形で存在する界面活性剤の場合には、水に希釈して均一に分散するように撹拌し、粉末の形で存在する界面活性剤の場合には、水溶液の形で均一な溶液になるように撹拌する。このとき、上記界面活性剤は、0.01~0.1モルの濃度範囲を有することが好ましい。
【0069】
上記界面活性剤を水に均一に分散させるために、一定の温度で所定の時間撹拌を行うことが好ましい。具体的には、上記界面活性剤を水に撹拌するにあたり、常温(20℃)で80℃の温度範囲内で希釈又は溶解することができる。このとき、30~500rpmの撹拌速度で10分~24時間処理することができる。
【0070】
上記撹拌温度は、界面活性剤に応じて、水に対する溶解度が異なるが、常温~80℃の温度範囲で熱を加える場合、均一な水溶液を得ることができるため好ましい。より好ましくは、20~100℃、さらに好ましくは30~80℃の温度範囲で熱を加えることができる。
【0071】
一方、撹拌速度が遅すぎると撹拌時間が長くかかる。これに対し、速すぎると、界面活性剤による泡が生成され、ゲル内に投入した際に均一度を低下させる可能性があることから、上記したように、30~500rpmの撹拌速度で処理することが好ましい。上記撹拌速度は、より好ましくは50~450rpm、さらに好ましくは100~400rpm、最も好ましくは200~400rpmである。
【0072】
さらに、界面活性剤の溶解度及び処理温度に応じて撹拌時間に差があり得るが、均一な状態を形成することができるように、上記したように、10分~24時間処理することができる。例えば、1時間~24時間、3時間~20時間、5時間~20時間、7時間~15時間などであってもよい。
【0073】
上記のように設けられたシリカ塩基性懸濁液及びアルミナ水溶液、又は塩基性懸濁液、アルミナ水溶液、及び界面活性剤水溶液を混合する。このとき、均一度の高いゼオライトの製造のために、シリカ、アルミナ、pH調節物質、構造誘導物質、及び界面活性剤がゼオライト合成組成物中に均一に分散するようにする必要がある。
【0074】
このために、本発明では、上記シリカ塩基性懸濁液及びアルミナ水溶液のうちいずれか1つの水溶液に対して、もう一つの水溶液を撹拌した状態で徐々に投入することが好ましい。
【0075】
投入順序は、特に限定しないが、粘度が高い溶液に粘度が低い溶液を段階的に投入することにより、全溶液の粘度が徐々に減少し、均一度をより高めることができる。したがって、粘度が高いシリカ水溶液に粘度が低い他の溶液を滴下することがより好ましい。さらに、シリカ、アルミナの混合水溶液を先に均一に設けた状態で、界面活性剤水溶液を投入する場合、全体的に一定のシリカ/アルミナ比を有する試料を均一に得ることができる。
【0076】
上記シリカ塩基性懸濁液にアルミナ水溶液を投入するにあたっては、徐々に、例えば、滴下する方法を介して投入することができる。より具体的には、上記アルミナ水溶液を10cc/min以下の速度で投入することができる。投入速度は徐々に投入すればするほど、均一な分散性を確保することができるため好ましい。そのため、その下限は特に限定しないが、生産性の側面から、1.0cc/min以上の速度で投入することがより好ましい。より好ましくは、1.0~7cc/minの速度、さらに好ましくは2.0~4.5cc/minの速度で投入することができる。
【0077】
上記のような方法を介して混合を完了することにより、シリカ-アルミナ水溶液を得ることができる。必要に応じて、上記シリカ-アルミナ水溶液を追加的に撹拌する段階をさらに含むことができる。追加的な撹拌は、より均一な分散のためのものであり、1時間以上、具体的には、1時間~72時間行うことができる。例えば、2時間~60時間、2時間~48時間、3時間~48時間、3時間~36時間などであってもよい。
【0078】
上記によって製造されたシリカ-アルミナ水溶液に界面活性剤水溶液を投入することができる。上記界面活性剤水溶液も、均一な分散のために、徐々に投入することが好ましく、特に限定しないが、10cc/min以下の速度、例えば、1~8cc/min、2~7cc/min、3~5cc/minなどの速度範囲内で投入することができる。
【0079】
これにより、均一に分散した組成物をゲル化及び結晶化することにより、粒子サイズが均一なモルデナイトゼオライトを得ることができる。
【0080】
先ず、得られた上記組成物をゲル化する。上記ゲル化は、2時間以上行うことができる。ゲル化は、常温(約20℃)~60℃の範囲において1時間~120時間の範囲内で行うことができる。ゲル化は、上記のような温度及び時間の条件の範囲内で撹拌しながら進行する。このとき、撹拌速度は、界面活性剤の種類に応じて泡が生成されない条件で決定されることができ、通常、50~1000rpmの範囲内で撹拌を行うことができる。上記範囲を超えるより速い撹拌速度は、泡を形成させ、ゲル内の不均一度を上昇させる要因となる。
【0081】
上記のような本発明の方法によると、原料物質が溶解した水溶液の状態で予め製造し、これらを徐々に混合することにより、各原料物質が均一に分散したゼオライト合成組成物を得ることができる。また、かかる組成物を用いてモルデナイトゼオライト結晶を製造することにより、所望のサイズを有し、且つその結晶サイズが均一なゼオライトを得ることができる。すなわち、本発明によると、モルデナイトゼオライトの一次粒子の結晶サイズが均一であることは言うまでもなく、上記界面活性剤の使用によって形成された二次粒子もサイズが均一であり、そのサイズの制御が可能である。
【0082】
一方、本発明では、構造誘導物質に加えて、界面活性剤をさらに含ませることができる。上記構造誘導物質によって形成された微細細孔を有するモルデナイト構造体が上記界面活性剤の周りでより大きなミセルを形成することにより、モルデナイト結晶の間にメゾポアを形成することができる。これにより、一次粒子が凝集して形成された二次粒子は、一次粒子に形成されたマイクロポアと粒子との間のメゾポアを同時に有する階層構造のモルデナイトゼオライトを得ることができる。
【0083】
また、本発明は、モルデナイトシードを追加的に投入することができる。かかるモルデナイトシードは、特に限定するものではないが、界面活性剤水溶液を製造する段階においてともに投入してもよく、界面活性剤水溶液をシリカ-アルミナ水溶液に投入する段階においてともに投入してもよい。さらに、ゲル化段階において上記シードを投入することもできる。
【0084】
さらに、上記モルデナイト型ゼオライト物質に、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、及び/又は上記それぞれの前駆体から選択される1つ以上の結合剤を添加して触媒を形成することができる。本発明による上記触媒は、芳香族炭化水素の転換に適することができる。
【0085】
上記触媒は、BEA、EUO、FAU、FER、MEL、MFI、MFS、MOR、MTT、MTW、及びTONから選択される1つ以上のゼオライトをさらに含むことができる。特に、BEA、FAU、MFIなどを追加した場合、上記ゼオライトがクラッキング(cracking)などを誘発するため、触媒反応において生成されるオレフィンのクラッキングを誘導し、触媒への炭素物質の堆積を防止することで、触媒の寿命を延ばすという効果を期待することができる。
【0086】
また、上記触媒は、遷移金属及び貴金属から選択される1つ以上の元素を含む金属成分をさらに含むことができる。上記遷移金属は、6-14族からなる群より選択される1つ以上であってもよく、上記貴金属は、周期律表上の8-11族からなる群より選択される1つ以上であってもよい。好ましくは、上記金属成分は、レニウム、ニッケル、モリブデン、白金、及びスズからなる群より選択される1つ以上であることができる。
【0087】
本発明によって得られたゼオライトは、一次粒子及び二次粒子の均一度に優れるため、触媒として用いられるとき、平均粒度がより小さいゼオライトを用いる場合と比較しても、同等以上の優れた触媒活性を得ることができる。これにより、触媒活性をさらに向上させることができる。
【0088】
従来、ゼオライトの平均粒度が小さい場合には拡散速度を増加させることができるため、触媒活性に優れるものとして認識されていた。そのため、拡散速度を制御するためには粒度の制御が重要な要因になると認識されていた。しかし、本発明により、かかる平均粒度よりもゼオライトの結晶サイズの均一度の高さにより、触媒活性を向上させることができる点が確認できる。
【0089】
一方、
図1及び
図2は、本発明のような組成を有するゲルに対して、反応温度に応じて結晶サイズを調節することができ、結晶サイズが小さくなるにつれて反応活性が増加することを示すグラフである。これにより、同一のゼオライトを触媒として用いても、結晶サイズに応じて、触媒反応物の拡散速度に差が生じるため、触媒活性を調節することができる利点がある点を確認することができる。
図1及び
図2を参照してより詳細に説明すると、
図1からは、同一のモルデナイトに対して結晶サイズが増加するにつれて、同一の温度における全転換率が低下することが確認でき、
図2からは、結晶サイズに応じて、すなわち、c軸方向がモルデナイトの触媒反応物の拡散経路であるため、c軸方向の結晶サイズが結晶サイズと活性との間の関係を示す指標として用いられることができ、c軸方向の結晶サイズが増加するにつれて、全転換率が45%となる温度(Treq)が増加して触媒活性が低下することが確認できる。すなわち、Treqが増加するとは、全転換率が45%となる温度が高くなるため活性が低いことを意味する。したがって、結晶化温度に応じて結晶サイズを調節することができ、結果として、触媒活性を向上させることができることが確認できる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明する。下記実施例は、本発明の一例を示すものであって、これにより本発明が限定されるものではない。
【0091】
実施例1
水60mlにNaOH2.67gを完全に溶解させた後(pH約13)、沈殿シリカ17.96gを30分かけて徐々に投入した。投入中に500rpmで撹拌を行い、すべて投入した後は、同一の速度で1時間さらに撹拌して沈殿シリカ及びNaOHを完全に溶解させた。これにより、シリカ塩基性懸濁液を得た。
【0092】
アルミン酸ナトリウム2.12g及び構造誘導物質としてテトラエチルアンモニウムブロミド(TEABr)2.31gを水20mlに2分かけて徐々に投入した。投入中に200rpmで撹拌を行い、すべて投入した後は、同一の速度で30分間さらに撹拌してアルミン酸ナトリウム及び構造誘導物質を完全に溶解させた。これにより、アルミナ水溶液を得た。
【0093】
上記シリカ塩基性懸濁液を撹拌しながら、上記アルミナ水溶液をシリカ塩基性懸濁液に10分間滴下して投入した。上記投入完了後に3時間さらに撹拌を行い、シリカ-アルミナ水溶液を製造し、30℃の温度で24時間ゲル化してゲル化物を製造した。
【0094】
続いて、上記ゲル化物を合成容器に入れ、オーブンで180℃の温度で72時間反応させて結晶化してモルデナイト結晶を形成した。
【0095】
実施例2
水60mlにNaOH2.67gを完全に溶解させた後(pH約13)、沈殿シリカ17.96gを30分かけて徐々に投入した。投入中に500rpmで撹拌を行い、すべて投入した後は、同一の速度で1時間さらに撹拌して沈殿シリカ及びNaOHを完全に溶解させた。これにより、シリカ塩基性懸濁液を得た。
【0096】
アルミン酸ナトリウム2.12g及び構造誘導物質としてテトラエチルアンモニウムブロミド(TEABr)1.85gを水20mlに2分かけて徐々に投入した。投入中に200rpmで撹拌を行い、すべて投入した後は、同一の速度で30分間さらに撹拌してアルミン酸ナトリウム及び構造誘導物質を完全に溶解させた。これにより、アルミナ水溶液を得た。
【0097】
セチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)4.2gを常温(25℃)の水14mlに投入した。投入中に300rpmで撹拌を行い、すべて投入した後は、3時間さらに撹拌してCTACを完全に希釈した。これにより、界面活性剤水溶液を得た。
【0098】
上記シリカ塩基性懸濁液を撹拌しながら、上記アルミナ水溶液をシリカ塩基性懸濁液に10分間滴下して投入した。上記投入完了後に3時間さらに撹拌を行い、シリカ-アルミナ水溶液を製造した。
【0099】
次に、上記界面活性剤水溶液を上記シリカ-アルミナ水溶液に5分間滴下してモルデナイトゼオライト合成組成物を製造した。
【0100】
上記得られたモルデナイトゼオライト合成組成物に対して30℃の温度で24時間ゲル化してゲル化物を製造した。
【0101】
続いて、上記ゲル化物を合成容器に入れ、オーブンで180℃の温度で72時間反応させて結晶化してモルデナイト結晶を形成した。
【0102】
実施例3~9
合成温度、合成時間、及びアルミナに対するシリカのモル比(SiO2/Al2O3、SAR)を表1に示すように制御したことを除いては、実施例2と同一の方法を介してモルデナイト結晶を形成した。
【0103】
比較例1
水25mlにNaOH4.00gを完全に溶解させた後(pH約14)、LUODX(LUDOX-R HS-40 colloidal 40wt%)44.9gを30分かけて徐々に投入した。投入中に500rpmで撹拌を行い、すべて投入した後は、同一の速度で1時間さらに撹拌してLUDOX及びNaOHを完全に溶解させた。これにより、シリカ塩基性懸濁液を得た。
【0104】
アルミン酸ナトリウム2.12g及び構造誘導物質としてテトラエチルアンモニウムブロミド(TEABr)0.785gを水10mlに2分かけて徐々に投入した。投入中に200rpmで撹拌を行い、すべて投入した後は、同一の速度で30分間さらに撹拌してアルミン酸ナトリウム及び構造誘導物質を完全に溶解させた。これにより、アルミナ水溶液を得た。
【0105】
上記シリカ塩基性懸濁液を撹拌しながら、上記アルミナ水溶液をシリカ塩基性懸濁液に10分間滴下して投入した。上記投入完了後は、3時間さらに撹拌を行い、シリカ-アルミナ水溶液を製造した。
【0106】
続いて、セチルトリアンモニウムブロミド(CTAB)3.15gを水15mLに溶解させて投入した。上記シリカ-アルミナ水溶液に5分間滴下してモルデナイトゼオライト合成組成物を製造した。
【0107】
上記得られたモルデナイトゼオライト合成組成物に対して30℃の温度で24時間ゲル化してゲル化物を製造した。
【0108】
続いて、上記ゲル化物を合成容器に入れ、オーブンで180℃の温度で72時間反応させて結晶化してモルデナイト結晶を形成した。
【0109】
比較例2
比較例1と同一のゲル組成においてセチルトリアンモニウムブロミド(CTAB)を5.25gに増量して投入したことを除いては、比較例1と同一の方法を介してモルデナイト結晶を形成した。
【0110】
上記実施例1~9及び比較例1~2によるモルデナイトの結晶サイズを測定し、表1に示した。モルデナイトの結晶サイズを測定する方法は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)で確認したときの1次粒子サイズを直接測定することができ、XRD上において各軸のFWHMを用いてシェラー式(Scherrer equation)を介して計算して求めることができる。モルデナイトの場合、1Dチャンネルがc軸方向に沿って形成されるため、c軸方向の結晶サイズの計算は、1Dチャンネルの長さによって推定することができる。すなわち、これは、触媒反応物の拡散速度と関連するため、触媒の活性と関連があると思われる。各軸の方向を決定するミラー指数(Miller Index)は表2のとおりである。
【0111】
【0112】
【0113】
表1及び
図3~
図13を参照すると、比較例1のように、結晶化剤として用いられるpH物質の量が多すぎると(SiO
2/0.21Na
2O)、ゲルを構成する他の物質の組成が範囲内に存在しても、180℃で72時間反応した場合には、結晶サイズが過度に成長することが確認できる。また、比較例2のように、pH物質(SiO2/0.21Na
-2O)及び界面活性剤(SiO
2/0.048CTAB)の量が多い場合には、同一の条件下で結晶化をしたにもかかわらず、結晶が過度に成長することが確認でき、モホロジーも均一でないことが分かる。
【0114】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは、当技術分野における通常の知識を有する者には自明である。