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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】アモルファス固体分散体
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4985 20060101AFI20240719BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240719BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240719BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240719BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61K31/4985
A61K47/38
A61K47/32
A61P43/00 111
A61P3/04
A61P3/00
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/18
A61P25/06
A61P25/04
A61P29/02
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/20
A61K47/22
A61K47/10
A61K47/20
A61K47/18
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/34
A61K9/20
A61K9/48
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021533470
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 US2019066247
(87)【国際公開番号】W WO2020123952
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】62/779,930
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】リ,ポン
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/189646(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/071233(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00- 33/44
A61P 1/00- 43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00- 47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)トシル酸塩および安定化賦形剤を含み、抗酸化剤および/または界面活性剤をさらに含んでいてもよい、アモルファス固体分散体であって、
安定化賦形剤が、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-AS)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-P)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、およびポリエチレングリコール/ポリ酢酸ビニル/ポリビニルカプロラクタムコポリマーからなる群から選択され、ここで分散体がITI-007トシル酸塩と安定化賦形剤を25:75~75:25の重量比で含み、
但し、安定化賦形剤が酢酸フタル酸セルロースまたはフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースであるならば、ITI-007トシル酸塩と安定化賦形剤の重量比は約75:25であり、
但し、安定化賦形剤が酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースであるならば、ITI-007トシル酸塩と安定化賦形剤の重量比は50:50~75:25である
ものである、分散体。
【請求項2】
分散体が、ITI-007トシル酸塩と、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、およびポリエチレングリコール/ポリ酢酸ビニル/ポリビニルカプロラクタムコポリマーからなる群から選択される1つ以上の安定化賦形剤を含む、請求項1記載の分散体。
【請求項3】
トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル(OPG)、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、tert-ブチルヒドロキシキノリン(TBHQ)、カロテノイド、グルタチオン、メタ重亜硫酸の塩(例えば、ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸の塩(例えば、ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸、システイン、メチオニン、セサモール、およびクエン酸のうち1つ以上から選択されてもよい抗酸化剤をさらに含む、請求項1または2記載の分散体。
【請求項4】
アニオン性またはカチオン性または中性界面活性剤であってもよい界面活性剤をさらに含む、請求項1~3いずれか1項記載の分散体。
【請求項5】
分散体がX線アモルファスである、請求項1~4いずれか1項記載の分散体。
【請求項6】
分散体が、1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)トシル酸塩、および
(a)ITI-007トシル酸塩対酢酸フタル酸セルロース比約75:25で酢酸フタル酸セルロース賦形剤;または
(b)ITI-007トシル酸塩対HPMC-AS比50:50~75:25でHPMC-AS賦形剤;または
(c)ITI-007トシル酸塩対HPMC-P比約75:25でHPMC-P賦形剤
を含む、請求項1記載の分散体。
【請求項7】
分散体がX線アモルファスである、請求項6記載の分散体。
【請求項8】
X線回折パターンが賦形剤に特徴的なピークを含まない、請求項6または7記載の分散体。
【請求項9】
トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル(OPG)、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、tert-ブチルヒドロキシキノリン(TBHQ)、カロテノイド、グルタチオン、メタ重亜硫酸の塩(例えば、ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸の塩(例えば、ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸、システイン、メチオニン、セサモール、およびクエン酸のうち1つ以上から選択されてもよい抗酸化剤をさらに含む、請求項6~8いずれか1項記載の分散体。
【請求項10】
アニオン性またはカチオン性または中性界面活性剤であってもよい界面活性剤をさらに含む、請求項6~9いずれか1項記載の分散体。
【請求項11】
請求項1~5いずれか1項記載の分散体を、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは関連させて含む、医薬組成物。
【請求項12】
請求項6~10いずれか1項記載の分散体を、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは関連させて含む、医薬組成物。
【請求項13】
経口投与のための錠剤またはカプセル剤の剤形である、請求項11または12記載の組成物。
【請求項14】
5-HT2A受容体、セロトニン輸送体(SERT)、および/またはドパミンD1/D2受容体シグナル伝達経路(D1媒介NMDAまたはAMPA受容体調節を含む)が関与または媒介する疾患または異常な状態、例えば、肥満症、食欲不振、過食症、うつ病(双極性うつ病、大うつ病性障害、治療-難治性うつ病、および/または急性うつ病を含む)、不安(急性不安を含む)、精神病、統合失調症、片頭痛、強迫性障害、性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、睡眠障害、頭部の疼痛に関連する状態、社会恐怖症、または認知症(例えば、アルツハイマー病またはパーキンソン病の認知症)から選択される障害に罹患しているヒトの予防または治療のための、請求項11または13記載の組成物。
【請求項15】
5-HT2A受容体、セロトニン輸送体(SERT)、および/またはドパミンD1/D2受容体シグナル伝達経路(D1媒介NMDAまたはAMPA受容体調節を含む)が関与または媒介する疾患または異常な状態、例えば、肥満症、食欲不振、過食症、うつ病(双極性うつ病、大うつ病性障害、治療-難治性うつ病、および/または急性うつ病を含む)、不安(急性不安を含む)、精神病、統合失調症、片頭痛、強迫性障害、性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、睡眠障害、頭部の疼痛に関連する状態、社会恐怖症、または認知症(例えば、アルツハイマー病またはパーキンソン病の認知症)から選択される障害に罹患しているヒトの予防または治療のための、請求項12または13記載の組成物。
【請求項16】
請求項1記載の分散体の製造方法であって、
(a)例えばジオキサン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトンおよびそれらの混合物から選択される、好適な溶媒または溶媒混合物中にて、結晶形態であってもよい1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)トシル酸塩、例えばモノトシル酸塩を選択された賦形剤と合わせる工程;および
(b)例えば溶液の凍結乾燥または溶媒の蒸発(例えばロータリーエバポレーションによる)によって、溶媒を除去して形成されたアモルファス固体分散体を回収する工程
を含む、方法。
【請求項17】
該溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、およびそれらの混合物から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン、メタノール、またはジオキサン/メタノール混合物から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項19】
溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン対メタノール比90:10~98:2、またはジオキサン対メタノール比92:8~95:5、または93:7の、ジオキサンまたはメタノールである、請求項16記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年12月14日に出願した米国仮出願第62/779,930号(その内容は全体として出典明示により本明細書の一部とする)の優先権および利益を主張するPCT国際出願である。
分野
本開示は、置換複素環縮合γ-カルボリンのある特定の新規アモルファス固体分散体製剤、該分散体の製造法、該分散体を含む医薬組成物、および、5-HT2A受容体、セロトニン輸送体(SERT)、および/または、例えばドパミンD1/D2受容体シグナル伝達経路が関与または媒介する疾患または異常な状態の治療における、その使用に関する。
【背景技術】
【0002】
1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(しばしば、4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(7H)-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ブタノン、またはルマテペロンまたはITI-007と称される)は、以下の構造:
【化1】
を有する。
【0003】
ITI-007は、強力な5-HT2A受容体リガンド(Ki=0.5nM)であり、ドパミン(DA)D2受容体(Ki=32nM)、ドパミンD2受容体(Ki=52nM)、およびセロトニン輸送体(SERT)(Ki=62nM)に対して強い親和性を有するが、抗精神病薬の認知的および代謝的副作用に関連する受容体(例えば、H1ヒスタミン作動性受容体、5-HT2C受容体、およびムスカリン受容体)への結合はわずかである。ITI-007は、すなわち統合失調症および双極性うつ病の治療を目的として、いくつかの臨床試験が現在行われているかまたは最近終了した。また、最近のエビデンスでは、ITI-007が、ラットのmPFCスライスにおいてNMDA受容体コンダクタンスおよびAMPA受容体コンダクタンスの両方に対するD1媒介間接的効果によってグルタミン酸作動性神経伝達を増強することが示されている。ルマテペロンのこれらの作用は、オランザピン(D2受容体アンタゴニスト抗精神病薬)とフルオキセチン(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)の併用およびケタミンの併用を含む、他の速効型抗うつ薬療法の効果と一致しており、したがって、ルマテペロンの分子作用が、不安および治療抵抗性うつ病(treatment resistant depression)に対する急性治療作用と一致していることを裏付けている。このような効果はPCT/US2019/022480(特許文献1)(その内容は全体として出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0004】
ITI-007は有望な薬物であるが、その製造および製剤化には明確な課題がある。ITI-007は、遊離塩基形態では、油性で粘着性のある固体であり、水への溶解性が低い。該化合物の塩を作ることは非常に難しいことが証明されている。ITI-007の塩酸塩形態は、特許文献2に開示されているが、この塩は、吸湿性であり、安定性が低いことが示された。ITI-007の安定な結晶性トルエンスルホン酸付加塩(トシレート)が最終的に同定され、特許文献3および特許文献4に記載された。これらの文献は各々その全体として出典明示により本明細書の一部とする
それにもかかわらず、ガレノス製剤に容易に組み込むことができる、ITI-007の代替の安定な薬学的に許容される固体形態がなおも必要とされている。
【0005】
多くの薬剤について、アモルファス形態は、同じ薬物の結晶形態と比較して、異なる溶解特性を示し、場合によっては異なるバイオアベイラビリティパターンを示すことが開示されている。いくつかの治療適応症では、あるバイオアベイラビリティパターンが他のパターンよりも好ましい場合がある。例えば、セフロキシムアキセチルのアモルファス形態は、結晶形態よりも高いバイオアベイラビリティを示す。このように、アモルファス固体分散体は、従来の結晶性医薬品有効成分の有望な代替品である。
【0006】
純粋なアモルファス薬物形態は不安定になる傾向がある。アモルファス形態は対応する結晶形態と比較して熱力学的に不安定であるので、アモルファス形態が安定な結晶形態に戻ることは周知である。これは通常、さまざまな湿度および温度条件下での貯蔵中に生じる。したがって、薬物のアモルファス形態を利用するためには、それを安定させて、製品の貯蔵期間中に活性な薬物の結晶化を阻害する必要がある。
【0007】
一部の賦形剤は、薬物と化学的に反応するかまたはその分解を促進するが、他の賦形剤は、物理的に安定ではないか化学的に安定ではないかその両方であるので、医薬品のアモルファスを安定化する好適な賦形剤を発見することは挑戦である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2019/178484号
【文献】米国特許第7,183,282号
【文献】国際公開第2009/114181号
【文献】米国特許第8,648,077号
【発明の概要】
【0009】
ITI-007の塩を調製することに関与する困難を考慮して、化合物を物理的および化学的に安定なアモルファス固体分散体として製剤化することができるかどうかを調査することを決定した。様々な比率での薬剤のさまざまな組合せを使用し、さまざまな方法を使用して、賦形剤の広範なスクリーニングを実施した。分散体を、物理的な外観およびテクスチャ(texture)、粉末X線回折(XRPD)、変調示差走査熱量測定(mDSC)、熱重量分析(TGA)、ならびに高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に基づいて評価した。16種類の有望な賦形剤を合計44の条件下でスクリーニングし、3つの薬学的に許容されるアモルファス固体分散体を発見した。
【0010】
したがって、本開示は、安定化賦形剤などの1つ以上の賦形剤と混合した遊離塩基形態またはトシル酸塩形態のITI-007のアモルファス固体分散体を提供する。
【0011】
一の態様では、本開示は、(1)酢酸セルロース賦形剤に対する重量比5:95~50:50のITI-007遊離塩基;(2)酢酸フタル酸セルロース賦形剤に対する重量比25:75~75:25のITI-007遊離塩基;および(3)フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース賦形剤に対する重量比25:75~75:25のITI-007遊離塩基を含む、ITI-007遊離塩基の3つの特に安定なアモルファス固体分散体を提供する。本開示は、さらに、さらに抗酸化剤および/または界面活性剤を含んでいてもよい、ITI-007トシル酸塩のいくつかのアモルファス固体分散体を提供する。
【0012】
したがって、本開示は、ITI-007遊離塩基およびトシル酸塩のアモルファス固体分散体形態を提供し、これらの分散体は、それらを製造および使用する方法とともに、ガレノス製剤の調製に使用するのに特に有利である。
【0013】
本発明のさらなる適用可能領域は、以下に提供される詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明および具体的な例は、本発明の好ましい実施態様を示しているが、例示のみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、詳細な説明および添付している図面からより完全に理解されるであろう:
【0015】
図1図1は、ITI-007遊離塩基と酢酸セルロースとの分散体についての粉末X線回折パターンを重ねて示したものである。
【0016】
図2図2は、ITI-007遊離塩基と酢酸フタル酸セルロースとの分散体についての粉末X線回折パターンを重ねて示したものである。
【0017】
図3図3は、ITI-007遊離塩基とフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(グレード55)(HPMC-P)との分散体についての粉末X線回折パターンを重ねて示したものである。
【0018】
図1、2および3の各々について、1番上のパターンは、生成されたままの25:75 ITI-007遊離塩基/賦形剤分散体であり;2番目のパターンは、ストレス後の25:75分散体であり;3番目のパターンは、生成されたままの50:50 ITI-007遊離塩基/賦形剤分散体であり;1番下のパターンは、ストレス後の50:50分散体である。
【0019】
図4図4は、ITI-007遊離塩基と酢酸セルロースとの25:75分散体についてのmDSCサーモグラムおよびTGAサーモグラムを示したものである。
【0020】
図5図5は、ITI-007遊離塩基と酢酸フタル酸セルロースとの50:50分散体についてのmDSCサーモグラムおよびTGAサーモグラムを示したものである。
【0021】
図6図6は、ITI-007遊離塩基とHPMC-Pとの50:50分散体についてのmDSCサーモグラムおよびTGAサーモグラムを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
以下の好ましい実施態様の説明は、本質的に単なる例示であり、決して、本発明、その適用、または使用を制限することを意図するものではない。
【0023】
全体を通して使用されるように、範囲は、その範囲内にあるすべての値を記載するための省略形として使用される。範囲内のいずれの値もその範囲の終点として選択することができる。さらに、本明細書で引用されているすべての文献は、その全体として出典明示により本明細書の一部とする。本開示の定義と引用された文献の定義に矛盾がある場合は、本開示が優先する。
【0024】
別段の定めがない限り、本明細書および本明細書の他の場所で表されるすべてのパーセンテージおよび量は、重量パーセントを意味すると解すべきである。所与の量は、材料の活性重量に基づいている。
【0025】
本開示は、安定化賦形剤などの1つ以上の賦形剤と混合した遊離塩基形態またはトシル酸塩形態のいずれかの形態の1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)のアモルファス固体分散体を提供する。
【0026】
第1の実施態様では、本開示は、1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)遊離塩基対酢酸セルロース比5:95~50:50で酢酸セルロース賦形剤を含むアモルファス固体分散体の形態のITI-007遊離塩基(分散体1)を提供する。本開示は、さらに、以下の組成物を提供する:
1.1. 分散体がITI-007遊離塩基および酢酸セルロースを重量比5:95~50:50(ただし、比50:50を除く)で含む、分散体1。
1.2. 分散体がITI-007遊離塩基および酢酸セルロースを重量比5:95~49:51、例えば、5:95~45:55、または10:90~40:60、または15:85~35:65、または20:80~30:70、または22:78~28:82、または23:77~27:83、または24:76~26:74、または約25:75で含む、分散体1または1.1。
1.3. 分散体が、例えばXRPD分析によって示されるような、X線アモルファスである、いずれもの上記分散体。
1.4. X線回折パターンが賦形剤に特徴的なピークを含まない、いずれもの上記分散体。
1.5. 分散体が、例えばmDSC分析によって示されるように、75℃を超えて、例えば100℃を超える温度で、または150℃を超える温度で、単一のガラス転移温度(Tg)を示す、いずれもの上記分散体。
1.6. 分散体が、160℃を超えて、または165℃~170℃、または約167℃で、単一のガラス転移温度を示す、分散体1.5。
1.7. 分散体が、例えばmDSCによって示されるように、0.1~0.5J/g・℃、例えば0.2~0.3J/g・℃、または約0.2J/g・℃の熱容量の変化(ΔCp)を示す、いずれもの上記分散体。
1.8. 分散体が、例えばTGA分析によって示されるように、温度100℃までの重量損失が10%未満であることを示す、いずれもの上記分散体。
1.9. 分散体が、温度100℃までの重量損失が8%未満であること、例えば温度100℃までの重量損失が7%未満、または6%未満、または5%未満、または4%未満、または3%未満であることを示す、分散体1.8。
1.10. 分散体が相対湿度75%および40℃で7日後に外観またはテクスチャの変化を示さない、いずれもの上記分散体。
1.11. 分散体が、例えばHPLCによって判断されるように、相対湿度75%および40℃で7日後のITI-007の化学的安定性が90%を超えることを示す、いずれもの上記分散体。
1.12. 分散体が、相対湿度75%および40℃で7日後のITI-007の化学的安定性が95%を超えること、または96%を超えること、または97%を超えること、または98%を超えること、または99%を超えることを示す、分散体1.11。
1.13. 分散体が、ITI-007遊離塩基および選択された賦形剤を好適な溶媒または溶媒混合物に溶解し、例えば該溶液を凍結乾燥することによって、該溶媒を除去して、アモルファス固体分散体を得ることを含む方法によって製造される、いずれもの上記分散体。
1.14. 該溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、およびそれらの混合物から選択される、分散体1.13。
1.15. 溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン、メタノール、またはジオキサン/メタノール混合物(例えば、ジオキサン対メタノール比90:10~98:2、または比92:8~95:5、または比約93:7)から選択される、分散体1.13。
1.16. 分散体が、1.1~1.15に記載された特徴のいずれかの組み合わせを示す、いずれもの上記分散体。
【0027】
第2の実施態様では、本開示は、ITI-007遊離塩基対酢酸フタル酸セルロース比25:75~75:25で酢酸フタル酸セルロース賦形剤を含むアモルファス固体分散体の形態のITI-007遊離塩基(分散体2)を提供する。本開示は、さらに以下の組成物を提供する:
2.1. 分散体が、重量比25:75~75:25(ただし、比25:75および75:25を除く)でITI-007遊離塩基および酢酸フタル酸セルロースを含む、分散体2。
2.2. 分散体が、重量比26:74~74:26、例えば、30:70~70:30、または35:65~65:35、または40:60~60:40、または42:58~58:42、または44:56~56:44、または45:55~55:45、または47:53~53:47、または48:52~52:48、または49:51~51:49、または約50:50でITI-007遊離塩基および酢酸フタル酸セルロースを含む、分散体2または2.1。
2.3. 分散体が、例えばXRPD分析によって示されるような、X線アモルファスである、いずれもの上記分散体。
2.4. X線回折パターンが賦形剤に特徴的なピークを含まない、いずれもの上記分散体。
2.5. 分散体が、例えばmDSC分析によって示されるように、75℃を超えて、例えば、85℃を超える温度で、または95℃を超える温度で、単一のガラス転移温度(Tg)を示す、いずれもの上記分散体。
2.6. 分散体が、100℃を超えて、または105℃~115℃、または約107℃で、単一のガラス転移温度を示す、分散体2.5。
2.7. 分散体が、例えばmDSCによって示されるように、0.1~0.6J/g・℃、例えば0.2~0.5J/g・℃、または約0.4J/g・℃の熱容量の変化(ΔCp)を示す、いずれもの上記分散体。
2.8. 分散体が、例えばTGA分析によって示されるように、温度100℃までの重量損失が10%未満であることを示す、いずれもの上記分散体。
2.9. 分散体が、温度100℃までの重量損失が8%未満であること、例えば温度100℃までの重量損失が7%未満、または6%未満、または5%未満、または4%未満、または3%未満であることを示す、分散体2.8。
2.10. 分散体が相対湿度75%および40℃で7日後に外観またはテクスチャの変化を示さない、いずれもの上記分散体。
2.11. 分散体が、例えばHPLCによって判断されるように、相対湿度75%および40℃で7日後のITI-007の化学的安定性が90%を超えることを示す、いずれもの上記分散体。
2.12. 分散体が、相対湿度75%および40℃で7日後のITI-007の化学的安定性が95%を超えること、または96%を超えること、または97%を超えること、または98%を超えること、または99%を超えることを示す、分散体2.11。
2.13. 分散体が、ITI-007遊離塩基および選択された賦形剤を好適な溶媒または溶媒混合物に溶解し、例えば該溶液を凍結乾燥することによって、該溶媒を除去して、アモルファス固体分散体を得ることを含む方法によって製造される、いずれもの上記分散体。
2.14. 該溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、およびそれらの混合物から選択される、分散体2.13。
2.15. 溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン、メタノール、またはジオキサン/メタノール混合物(例えば、ジオキサン対メタノール比90:10~98:2、または比92:8~95:5、または比約93:7)から選択される、分散体2.13。
2.16. 分散体が、2.1~2.15に記載された特徴のいずれかの組合せを示す、いずれもの上記分散体。
【0028】
第3の実施態様では、本開示は、ITI-007遊離塩基対フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-P)比25:75~75:25でHPMC-P賦形剤を含むアモルファス固体分散体の形態のITI-007遊離塩基(分散体3)を提供する。本開示は、さらに、以下の組成物を提供する:
3.1. 分散体がITI-007遊離塩基およびHPMC-Pを重量比25:75~75:25(ただし、比25:75および75:25を除く)で含む、分散体3。
3.2. 分散体が、ITI-007遊離塩基およびHPMC-Pを重量比26:74~74:26、例えば30:70~70:30、または35:65~65:35、または40:60~60:40、または42:58~58:42、または44:56~56:44、または45:55~55:45、または47:53~53:47、または48:52~52:48、または49:51~51:49、または約50:50で含む、分散体3または3.1。
3.3. 分散体が、例えばXRPD分析によって示されるような、X線アモルファスである、いずれもの上記分散体。
3.4. X線回折パターンが賦形剤に特徴的なピークを含まない、いずれもの上記分散体。
3.5. 分散体が、例えばmDSC分析によって示されるように、75℃を超えて、例えば、80℃を超える温度で、または85℃を超える温度で、単一のガラス転移温度(Tg)を示す、いずれもの上記分散体。
3.6. 分散体が、90℃を超えて、または92℃~98℃、または約95℃で、単一のガラス転移温度を示す、分散体3.5。
3.7. 分散体が、例えばmDSCによって示されるように、0.1~0.5J/g・℃、例えば0.2~0.4J/g・℃、または約0.3J/g・℃の熱容量の変化(ΔCp)を示す、いずれもの上記分散体。
3.8. 分散体が、例えばTGA分析によって示されるように、温度100℃までの重量損失が10%未満であることを示す、いずれもの上記分散体。
3.9. 分散体が、温度100℃までの重量損失が8%未満であること、例えば温度100℃までの重量損失が7%未満、または6%未満、または5%未満、または4%未満、または3%未満であることを示す、分散体3.8。
3.10. 分散体が相対湿度75%および40℃で7日後に外観またはテクスチャの変化を示さない、いずれもの上記分散体。
3.11. 分散体が、例えばHPLCによって判断されるように、相対湿度75%および40℃で7日後のITI-007の化学的安定性が90%を超えることを示す、いずれもの上記分散体。
3.12. 分散体が、相対湿度75%および40℃で7日後のITI-007の化学的安定性が95%を超えること、または96%を超えること、または97%を超えること、または98%を超えること、または99%を超えることを示す、分散体3.11。
3.13. 分散体が、ITI-007遊離塩基および選択された賦形剤を好適な溶媒または溶媒混合物に溶解し、例えば該溶液を凍結乾燥することによって、該溶媒を除去して、アモルファス固体分散体を得ることを含む方法によって製造される、いずれもの上記分散体。
3.14. 該溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、およびそれらの混合物から選択される、分散体3.13。
3.15. 溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン、メタノール、またはジオキサン/メタノール混合物(例えば、ジオキサン対メタノール比90:10~98:2、または比92:8~95:5、または比約93:7)から選択される、分散体3.13。
3.16. 分散体が、3.1~3.15に記載された特徴のいずれかの組み合わせを示す、いずれもの上記分散体。
【0029】
第4の実施態様では、本開示は、安定化賦形剤を含み、抗酸化剤および/または界面活性剤をさらに含んでもよい、アモルファス固体分散体の形態のITI-007トシル酸塩(分散体4)を提供する。例えば、安定化賦形剤は、ITI-007トシル酸塩のアモルファス形態を安定化させてアモルファス形態から結晶形態への変換を防止する賦形剤である。本開示は、さらに以下の組成物を提供する:
4.1. 分散体が、ITI-007トシル酸塩と、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、メタクリレート/アクリル酸メチルコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-AS)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-P)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、およびポリエチレングリコール/ポリ酢酸ビニル/ポリビニルカプロラクタムコポリマーからなる群から選択される安定化賦形剤とを含む、分散体4。
4.2. 組成物が、1つの安定化賦形剤と混合したITI-007トシル酸塩を含む、分散体4または4.1。
4.3. 組成物が、2つの安定化賦形剤と混合したITI-007トシル酸塩を含む、分散体4または4.1。
4.4. 分散体が、重量比25:75~75:25、例えば26:74~74:26、または30:70~70:30、または35:65~65:35、または40:60~60:40、または42:58~58:42、または44:56~56:44、または45:55~55:45、または47:53~53:47、または48:52~52:48、または49:51~51:49、または約50:50で1つ以上の安定化賦形剤と混合したITI-007トシル酸塩を含む、分散体4または4.1~4.3のいずれか。
4.5. 分散体が、重量比5:95~50:50、例えば5:95~49:51、または5:95~45:55、または10:90~40:60、または15:85~35:65、または20:80~30:70、または22:78~28:82、または23:77~27:83、または24:76~26:74、または約25:75で1つ以上の安定化賦形剤と混合したITI-007トシル酸塩を含む分散体4または4.1~4.3のいずれか
4.6. 分散体が、重量比50:50~95:5、例えば51:49~95:5、または55:45~95:5、または60:40~90:10、または65:45~85:15、または70:30~80:20または約75:25で1つ以上の安定化賦形剤と混合したITI-007トシル酸塩を含む、分散体4または4.1~4.3のいずれか。
4.7. 安定化賦形剤が、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-AS)、およびフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-P)のうち1つ以上を含む、いずれもの上記分散体。
4.8. 安定化賦形剤が、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロースおよびフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースのうち1つ以上を含む、いずれもの上記分散体。
4.9. さらに抗酸化剤を含む、いずれもの上記分散体。
4.10. 抗酸化剤が、トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル(OPG)、およびアスコルビン酸のうち1つ以上から選択される、分散体4.9。
4.11. 分散体が、抗酸化剤を分散体の0.1~10重量%、例えば0.5~5重量%または0.5~3重量%で含む、分散体4.9または4.10。
4.12. さらに、界面活性剤、例えばITI-007トシル酸塩のアモルファス形態を安定化させる(例えば、ITI-007トシル酸塩結晶形態への変換を予防するための)界面活性剤などのアニオン性またはカチオン性または中性界面活性剤を含む、いずれもの上記分散体。
4.13. 分散体が、例えばXRPD分析によって示されるような、X線アモルファスである、いずれもの上記分散体。
4.14. X線回折パターンが賦形剤に特徴的なピークを含まない、いずれもの上記分散体。
4.15. 分散体が、例えばmDSC分析によって示されるように、75℃を超える、例えば80℃を超える温度で、または90℃を超える温度で、または約100℃の温度で、または110℃を超える温度で、単一のガラス転移温度(Tg)を示す、いずれもの上記分散体。
4.16. 分散体が、例えばmDSCによって示されるように、0.1~2.0J/g・℃、例えば0.1~1.5J/g・℃、または0.1~1.0J/g・℃、または0.1~0.5J/g・℃の熱容量の変化(ΔCp)を示す、いずれもの上記分散体。
4.17. 分散体が、例えばTGA分析によって示されるように、温度150℃までの重量損失が20%未満であることを示す、いずれもの上記分散体。
4.18. 分散体が、温度150℃までの重量損失が15%未満であること、例えば温度100℃までの重量損失が15%未満であること、または温度150℃での重量損失が10%未満であること、または温度100℃までの重量損失が10%未満であること、または温度150℃までの重量損失が5%未満であること、または温度100℃までの重量損失が5%未満であることを示す、分散体4.17。
4.19. 分散体が相対湿度75%および40℃で7日後に外観またはテクスチャの変化を示さない、いずれもの上記分散体。
4.20. 分散体が、例えばHPLCによって判断されるように、相対湿度75%および40℃で7日後のITI-007の化学的安定性が85%を超えることを示す、いずれもの上記分散体。
4.21. 分散体が、相対湿度75%および40℃で7日後のITI-007の化学的安定性が90%を超えること、または95%を超えること、または96%を超えること、または97%を超えること、または98%を超えること、または99%を超えることを示す、分散体4.20。
4.22. 分散体が、ITI-007トシル酸塩および選択された賦形剤を好適な溶媒または溶媒混合物に溶解し、例えば該溶液の凍結乾燥または該溶媒の蒸発(例えば、ロータリーエバポレーションによる)によって、該溶媒を除去して、アモルファス固体分散体を得ることを含む方法によって製造される、いずれもの上記分散体。
4.23. 該溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、およびそれらの混合物から選択される、分散体4.22。
4.24. 溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン、メタノール、またはジオキサン/メタノール混合物(例えば、ジオキサン対メタノール比90:10~98:2、または比92:8~95:5、または比約93:7)から選択される、分散体4.23。
4.25. 方法が、さらに、溶媒を除去する前に溶媒混合物に抗酸化剤または界面活性剤を添加することを含む、分散体4.22、4.23または4.24。
4.26. 分散体が、4.1~4.25に記載された特徴のいずれかの組み合わせを示す、いずれもの上記分散体。
【0030】
分散体4、および4.1~4.26のいずれかは、ITI-007トシル酸塩アモルファス形態の安定性を改善するために抗酸化剤を含む。いくつかの実施態様では、抗酸化剤は、トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル(OPG)およびアスコルビン酸のうち1つ以上から選択される。
【0031】
他の実施態様では、抗酸化剤は、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、tert-ブチルヒドロキシキノリン(TBHQ)、カロテノイド、グルタチオン、メタ重亜硫酸の塩(例えば、ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸の塩(例えば、ナトリウム)、システイン、メチオニン、セサモール、およびクエン酸などのさらなる好適な抗酸化剤から選択され得る。別法として、抗酸化剤は、エチレンジアミン四酢酸であり得る。
【0032】
分散体4、および4.1~4.26のいずれかは、ITI-007トシル酸塩アモルファス形態の安定性を改善するための界面活性剤を含み得る。いくつかの実施態様では、界面活性剤は、アモルファス形態ITI-007トシル酸塩を安定化させる(例えばITI-007トシル酸塩結晶形態への変換を防止するための)界面活性剤である。いくつかの実施態様では、界面活性剤は、アニオン性またはカチオン性または中性界面活性剤のうち1つ以上から選択される。
【0033】
本開示のいくつかの実施態様では、分散体4、または4.1~4.26のいずれかは、さらに、ITI-007トシル酸塩の結晶形態の形成を防止もしくは阻止することができるかまたはITI-007トシル酸塩のアモルファス形態からITI-007トシル酸塩の結晶形態への変換を防止もしくは阻止することができる他の賦形剤を含み得る。かかる賦形剤としては、ポリマー、ガム、界面活性剤、湿潤剤、乾燥剤、pH調整剤、充填剤、崩壊剤、コーティング剤、結合剤、または他の好適な薬学的に許容される賦形剤が挙げられ得る。
【0034】
第2の態様では、本開示は、
(a)例えばジオキサン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、およびそれらの混合物から選択される、好適な溶媒または溶媒混合物中にて、1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)遊離塩基を選択された賦形剤と合わせる工程;および
(b)例えば該溶液の凍結乾燥による、溶媒の除去およびこのようにして形成されたアモルファス固体分散体の回収をする工程
を含む、分散体1以降、または分散体2以降、または分散体3以降の製造方法(製造方法1)を提供する。
【0035】
第2の態様の別の実施態様では、本開示は、
(a)例えばジオキサン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、およびそれらの混合物から選択される、好適な溶媒または溶媒混合物中にて、結晶形態であってもよい1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)トシル酸塩(例えば、モノトシル酸塩)を選択された賦形剤と合わせる工程;および
(b)例えば該溶液の凍結乾燥または該溶媒の蒸発(例えば、ロータリーエバポレーションによる)によって、溶媒を除去して形成されたアモルファス固体分散体を回収する工程
を含む、分散体4以降の製造方法(製造方法2)を提供する。
【0036】
いくつかの実施態様では、製造方法2は、さらに、工程(a)において溶媒または溶媒混合物に1つ以上の抗酸化剤および/または1つ以上の界面活性剤を添加する工程を含む。いくつかの実施態様では、抗酸化剤は、トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル(OPG)、およびアスコルビン酸のうち1つ以上から選択される。いくつかの実施態様では、1つ以上の界面活性剤は、アニオン性またはカチオン性または中性界面活性剤を含み得る。例えば、界面活性剤は、アモルファス形態ITI-007トシル酸塩を安定化させる、例えばアモルファス形態からITI-007トシル酸塩結晶形態への変換を防止するための、界面活性剤であり得る。
【0037】
他の実施態様では、抗酸化剤は、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、tert-ブチルヒドロキシキノリン(TBHQ)、カロテノイド、グルタチオン、メタ重亜硫酸の塩(例えば、ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸の塩(例えば、ナトリウム)、システイン、メチオニン、セサモール、およびクエン酸などのさらなる好適な抗酸化剤から選択され得る。別法として、抗酸化剤はエチレンジアミン四酢酸であり得る。
【0038】
第2の態様の他の実施態様では、製造方法1についての溶媒または溶媒混合物は、ジオキサン、メタノール、またはジオキサン/メタノール混合物(例えば、ジオキサン対メタノール比90:10~98:2、または92:8~95:5、または約93:7)から選択され、該溶媒は凍結乾燥によって除去されてもよい。第2の態様の別の実施態様では、製造方法2についての溶媒または溶媒混合物は、ジオキサン、メタノール、またはジオキサン/メタノール混合物(例えば、ジオキサン対メタノール比90:10~98:2、または92:8~95:5、または約93:7)から選択され、該溶媒は凍結乾燥によって除去されてもよい。
【0039】
固体分散体とは、本明細書で用いられる場合、活性医薬成分が微結晶状態、可溶化状態またはアモルファス状態で存在し得る、不活性な賦形剤またはマトリックス(担体)中の活性医薬成分(すなわち、ITI-007)の分散体をいう。固体分散体中の賦形剤は、典型的には、ポリマーである。固体分散体におけるポリマーの最も重要な役割は、保存中の医薬活性物質の相分離および再結晶を回避するために医薬活性物質の分子移動度を低下させることである。該活性物質のアモルファス形態は、その結晶形態と比較して、より高いエネルギー状態に関連しており、したがって、(例えば、胃腸管または体内の他の場所で)溶出をもたらすために必要とされる外部エネルギーは大幅に少なくなる。
【0040】
第3の態様では、本開示は、分散体1以降、または分散体2以降、または分散体3以降、または分散体4以降を、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは関連させて含む医薬組成物(組成物1)を提供する。いくつかの実施態様では、医薬組成物は、経口投与用の錠剤またはカプセル剤の剤形のものである。いくつかの実施態様では、医薬組成物は、長時間作用性注射剤(LAI)として用いるためのデポ製剤の剤形のものである。医薬組成物は、さらに、好適な薬学的に許容される賦形剤、例えば:希釈剤、例えば、デンプン、アルファ化デンプン、ラクトース、粉末セルロース、微結晶セルロース、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、糖など;結合剤、例えば、アカシア、グアーガム、トラガカント、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、例えばポリビニルピロリドン(PVP K-30、K-90)、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)(PVP-VA)など、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-AS)など;崩壊剤、例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、アルファ化デンプン、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウムなど;滑沢剤、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛など;流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素など;溶解性または湿潤性増強剤(solubility or wetting enhancers)、例えば、アニオン性またはカチオン性または中性界面活性剤;マルトデキストリン、複合体形成剤(complex forming agents)、例えば、様々なグレードのシクロデキストリンおよび樹脂;放出速度制御剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、様々なグレードのメチルメタクリレート、ワックスなど;ならびにフィルム形成剤、可塑剤、着色剤、矯味矯臭剤、甘味料、粘度増強剤(viscosity enhancers)、保存剤、抗酸化剤などを含み得る。
【0041】
第3の態様の別の実施態様では、該組成物は、さらに、1つ以上の抗酸化剤、例えば、トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル(OPG)およびアスコルビン酸などを含み得る。抗酸化剤を含めると、ITI-007活性物質の酸化的化学分解を防ぐことにより、分散体の化学的安定性をさらに向上させることができる。別の実施態様では、分散体自体がそのような抗酸化剤を含むように製剤化されている。他の好適な抗酸化剤としては、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、tert-ブチルヒドロキシキノリン(TBHQ)、カロテノイド、グルタチオン、メタ重亜硫酸の塩(例えば、ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸の塩(例えばナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸、システイン、メチオニン、セサモール、およびクエン酸が挙げられる。
【0042】
第3の態様の別の実施態様では、該組成物は、さらに、ITI-007遊離塩基またはITI-007トシル酸塩の結晶形態の形成を防止または阻止することができるかまたはITI-007遊離塩基またはITI-007トシル酸塩のアモルファス形態からその結晶形態への変換を防止または阻止することができる賦形剤を含み得る。このような賦形剤としては、ポリマー、ガム、界面活性剤、湿潤剤、乾燥剤、pH調整剤、充填剤、崩壊剤、コーティング剤、結合剤、または他の好適な薬学的に許容される賦形剤を挙げることができる。このような賦形剤としては、上記段落[0038]に記載されている賦形剤のうち1つ以上が挙げられる。
【0043】
別の態様では、本開示は、5-HT2A受容体、セロトニン輸送体(SERT)、および/またはドパミンD1/D2受容体シグナル伝達経路(D1媒介NMDAまたはAMPA受容体調節を含む)が関与または媒介する疾患または異常状態、例えば、肥満症、食欲不振、過食症、うつ病(双極性うつ病、大うつ病性障害、治療-難治性うつ病(treatment-refractory depression)、および/または急性うつ病を含む)、不安(急性不安を含む)、精神病、統合失調症、片頭痛、強迫性障害、性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、睡眠障害、頭部の疼痛に関連する状態、社会恐怖症、または認知症(例えば、アルツハイマー病またはパーキンソン病の認知症)から選択される障害の治療に用いるための、分散体1以降、または分散体2以降、または分散体3以降、または分散体4以降、または分散体1以降、もしくは分散体2以降、もしくは分散体3以降、もしくは分散体4以降を含む医薬組成物、例えば組成物1を提供する。いくつかの実施態様では、治療される該疾患または異常な状態または障害は、治療抵抗性うつ病(例えば、選択性セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン再取り込み阻害剤(SRI)、三環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)、ドパミン再取り込み阻害剤(DRI)、SRI/NRI、SRI/DRI、NRI/DRI、SRI/NRI/DRI(三重再取り込み阻害剤)、セロトニン受容体アンタゴニスト、またはそれらの組合せ)から選択される抗うつ薬による治療に反応しなかったうつ病)、双極性うつ病、または大うつ病性障害を含む、急性うつ病(例えば、急性大うつ病エピソード、急性短期うつ病エピソード、急性反復性短期うつ病エピソード)および/または急性不安(例えば、全般不安症に関連する短期不安エピソード、パニック障害、限局性恐怖症、または社会不安症、または社会回避)である。本開示が提供する方法の他の実施態様は、PCT/US2019/022480(WO2019/178484)(その内容は全体として出典明示により本明細書の一部とする)に記載されているものである。
【0044】
別の実施態様では、本発明は、5-HT2A受容体、セロトニン輸送体(SERT)、および/またはドパミンD1/D2受容体シグナル伝達経路(D1媒介NMDAまたはAMPA受容体調節を含む)が関与または媒介する疾患または異常状態、例えば、肥満症、食欲不振、過食症、うつ病(双極性うつ病、大うつ病性障害、治療-難治性うつ病、および/または急性うつ病を含む)、不安(急性不安を含む)、精神病、統合失調症、片頭痛、強迫性障害、性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、睡眠障害、頭部の疼痛に関連する状態、社会恐怖症、または認知症(例えば、アルツハイマー病またはパーキンソン病の認知症)から選択される障害に罹患しているヒトの予防または治療のための方法であって、該予防または治療を必要とする患者に、分散体1以降、または分散体2以降、または分散体3以降、または分散体1以降、もしくは分散体2以降、もしくは分散体3以降、もしくは分散体4以降を含む医薬組成物、例えば組成物1の治療有効量を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施態様では、治療される該疾患または異常な状態または障害は、治療抵抗性うつ病(例えば、選択性セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン再取り込み阻害剤(SRI)、三環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)、ドパミン再取り込み阻害剤(DRI)、SRI/NRI、SRI/DRI、NRI/DRI、SRI/NRI/DRI(三重再取り込み阻害剤)、セロトニン受容体アンタゴニスト、またはそれらの組合せから選択される抗うつ薬による治療に反応しなかったうつ病)、双極性うつ病、または大うつ病性障害を含む、急性うつ病(例えば、急性大うつ病エピソード、急性短期うつ病エピソード、急性反復性短期うつ病エピソード)および/または急性不安(例えば、全般不安症に関連する短期不安エピソード、パニック障害、限局性恐怖症、または社会不安症、または社会回避)である。本開示が提供する方法の他の実施態様は、PCT/US2019/022480(WO2019/178484)(その内容は全体として出典明示により本明細書の一部とする)に記載されているものである。
【実施例
【0045】
例示された共結晶形態を分離し、特徴づけるために、以下の装置および方法が使用される:
【0046】
粉末X線回折(XRPD): 粉末X線回折研究は、Optix高精度長焦点源(long, fine-focus source)を用いて発生させるCu線の入射ビームを用いて、PANalytical X’Pert PRO MPD回折計を用いて行われる。楕円状に傾斜した多層ミラー(elliptically graded multilayer mirror)を用いて、CuKαX線を標本を通して検出器に収束させる。分析の前に、シリコン試料を分析して、観察されたSi(111)ピークの位置を確認する(NISTが認証した位置、NIST SM 640eと一致)。試料の標本を3ミクロンの厚さのフィルムの間に挟み、透過幾何学で分析する。空気により生じるバックグラウンドを最小限にするために、ビームストップ、短い散乱線除去エクステンション、および散乱線除去ナイフエッジを使用する。軸方向の発散からの広がりを最小限にするため、入射ビームおよび回折ビームのためのソラー・スリットを使用する。標本から240mmの位置にある走査型位置敏感型検出器(X'Celerator)を用いて回折パターンを収集する。分析にはData Collectorソフトウェアv.2.2bを使用する。
【0047】
熱重量測定(TGA)分析: TGAは、TA Instruments Q5000またはDiscovery熱重量測定分析を使用して行われる。試料をアルミニウム試料パンに入れ、TG炉に挿入する。試料を周囲温度から250℃まで10℃/分の速度で加熱する。較正標準としてニッケルおよびAlumelを用いる。
【0048】
変調示差走査熱量測定(mDSC): mDSCデータは、冷蔵冷却システムを装備したTA Instruments Q2000または2920示差走査熱量計で得られる。NISTトレーサブルインジウム金属を使用して温度較正を行う。試料をアルミニウムT-zero DSCパンに入れ、蓋をし、重量を正確に記録する。試料パンとして構成された秤量されたアルミパンをセルの基準側に置く。典型的には、開始温度は-50℃であり、終了温度は250℃であり、変調振幅は±1℃、50秒間、基礎となる加熱速度は2℃/分である。
【0049】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC): 高速液体クロマトグラフィー分析は、ダイオードアレイ検出器、脱気剤、四元ポンプおよびオートサンプラーを装備したAgilent 1100シリーズ液体クロマトグラフを使用して行われる。カラムは、2.5ミクロンのパッキン(XSelect)を有する4.6×100mm CSH C18カラムであり、水移動相A中0.1%TFAおよびアセトニトリル移動相B中0.1%TFAを流速0.500mL/分で流す。勾配は、最初の22分間で95%Aから73%まで、次いで、73%Aで6分間、次いで、次の22分間で73%Aから30%Aまで行われる。カラム温度は15.0℃に設定され、検出器の波長は、254nmであり、帯域幅は100nm、および参照波長360nmである。注入量は2.0マイクロリットルである。
【0050】
実施例1: 遊離塩基分散体の調製
まず、ITI-007遊離塩基および種々の賦形剤の種々の溶媒への溶解性を評価する。ITI-007遊離塩基は、アセトン、エタノール、メタノール、ジオキサンおよび2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)には良好な溶解性(>50mg/mL)を示すが、tert-ブタノール/水混合物には比較的低い溶解性(5~50mg/mL)を示すことが分かる。しかしながら、ITI-007遊離塩基のTFE中溶液は、活性物質の分解により急速に変色することが分かる。
【0051】
評価された賦形剤は、Eudragit L100、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルピロリドンK-90、ポリビニルピロリドンS-630、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、Gelucire 50/13、モノステアリン酸グリセリル、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-P)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチル(HPMC-AS)、ポリエチレングリコール(PEG)、コハク酸PEG-100、Pluronic F-127、およびSoluplusである。賦形剤は、ITI-007遊離塩基対賦形剤比25:75、50:50および75:25のうち1つ以上で評価した。
【0052】
溶解性分析に基づいて、ITI-007遊離塩基を含む種々の賦形剤の溶液をアセトン-エタノール(3:1)で調製する。溶媒を除去するためにロータリーエバポレーションを試みるが、これにより、全ての場合において、固体ではなく油状物質が生じる。
【0053】
ジオキサンまたはジオキサン-メタノール(90:10、91:9、92:8、93:7もしくは94:6)のいずれかにおけるITI-007遊離塩基および賦形剤の溶液からの凍結乾燥によって固体分散体が成功裏に調製される。最初に溶液をドライアイス/アセトン浴で凍結させ、次いで、棚を-75℃に予冷しておいた凍結乾燥器に入れる。試料を-50℃で一夜、次いで、-20℃で一夜、次いで、0℃で2日間かけて乾燥させる。次いで、試料を20℃で4時間二次乾燥させ、窒素でパージし、次いで、試験するまで冷凍庫中にて乾燥剤上で保管する。
【0054】
実施例2: 遊離塩基分散体の予備スクリーニング
実施例1から得られた固体分散体を、まず、XRPDによって評価して、アモルファスであるかどうかを決定する。アモルファス賦形剤を使用した全ての凍結乾燥試料は、XRPDによってX線アモルファスであることが分かる。結晶性賦形剤(Gelucire 50/13、PEG、コハク酸PEG-1000、Pluronic F-127)を使用した凍結乾燥試料は、賦形剤にのみに対応するピークが存在し、無秩序であることが分かる。該固体の外観のさらなる観察を以下の表1に示す。50:50ITI-007/コハク酸PEG-1000分散体は、非常に粘着性があることが分かり、さらなる評価は行われていない。
【0055】
実施例3: 遊離塩基分散体の安定性評価
実施例1からの固体分散体をキャップのない透明なガラスバイアルに入れ、該バイアルを相対湿度75%および温度40℃で7日間維持された容器に入れる。対照としてITI-007遊離塩基の試料を並行して分析する。試料を目視と偏光顕微鏡(倍率0.8~10倍、交差偏光子(crossed polarizer)および一次赤色補償板(first order red compensator)を有する)によって観察した。観察結果を第1表に示す。試料の大半が外観またはテクスチャの変化を示しており、これは物理的に不安定なアモルファス分散体の形成を示している。例えば、目に見える結晶化を示すものもあれば、粘着性のある固体または油になるものもある。
【0056】
物理的に安定な流動性固体である分散体をさらにXRPDによって分析して、それらがX線アモルファスのままであるかまたは賦形剤ピークのみで無秩序であることを確認する。XRPDの結果は、視覚的に安定な試料がX線アモルファス分散体のままであることを確認している。
【0057】
物理的に安定な流動性試料に対してmDSCおよびTGA分析を行う。mDSCにおける単一のガラス転移温度は、固体が非結晶性の混和性分散体であるという結論を支持している。2種類のPEG分散体は、9または10℃で許容できない低温ガラス転移を示すが、モノステアリン酸グリセリル分散体は、ガラス転移を示さない。50:50酢酸セルロース分散体は、2つのガラス転移温度を示し、これは相分離した物質を示唆しており、これは許容できない。25:75酢酸セルロース分散体、25:75酢酸フタル酸セルロース分散体、50:50酢酸フタル酸セルロース分散体、25:75HPMC-AS分散体、50:50HPMC-AS分散体、25:75HPMC-P分散体および50:50HPMC-P分散体は、75℃を超える許容可能な単一のガラス転移温度を示す。
【0058】
mDSCおよびTGAに付された全ての試料を、次に、HPLC分析に付して、7日間の研究中のITI-007活性薬剤の化学的安定性を決定する。対照としてITI-007遊離塩基試料もHPLCによって分析する。全ての結果は、7日間の研究の前にHPLCによって示されるITI-007含有量に正規化される。HPLCによるITI-007の損失が5%未満であれば申し分ないと考えられている。
【0059】
HPMC-AS分散体および25:75HPMC-P分散体はともに、HPLCによって非常に高い物質損失を示す。25:75酢酸フタル酸セルロース分散体は、低いが許容できない物質損失を示す。満足のいく結果が得られるのは7種類の分散体だけである: 25:75酢酸セルロース、50:50酢酸セルロース、50:50酢酸フタル酸セルロース、50:50HPMC-P、25:75PEG、50:50PEGおよび25:75ステアリン酸グリセリル。したがって、これらの分散体は化学的に安定である。
【0060】
試験結果を合わせて下記の第1表に示す。
【表1】
【0061】
試験した分散体のうち、化学的に安定であり、かつ、物理的に安定であるのは3つだけであることが分かる: 25:75酢酸セルロース、50:50酢酸フタル酸セルロース、および50:50HPMC-P。
【0062】
ITI-007遊離塩基の代わりにITI-007トシル酸塩を用いて行った同様の試験では、完全に安定なアモルファス分散体が得られないことに留意する。これらの結果は、以下の実施例4においてより詳細に示される。ITI-007トシル酸塩分散体のほとんどが初期スクリーンを通過するが(X線アモルファス、または賦形剤に起因するX線ピークのみを示す)、得られた初期分散体の全てが、強い物理的不安定性(分散体からの活性薬剤の結晶化を含む、色および外観の変化)または化学的不安定性(HPLCにより10~68%分解)を示す。例えば、ITI-007トシル酸塩の酢酸セルロースとの25:75分散体は、エイジング研究中にITI-007の結晶化を生じ;ITI-007トシル酸塩の酢酸フタル酸セルロースとの50:50分散体は、HPLCによりITI-007含有量の約52%減少を示し;ITI-007トシル酸塩のHPMC-Pとの50:50分散体は、HPLCによりITI-007含有量の約68%減少を示す。ITI-007トシル酸塩はITI-007遊離塩基よりも化学的に安定であるので、これらの結果は予想外である。したがって、ITI-007遊離塩基のこの3つの特定のアモルファス固体分散体が物理的および化学的に安定であるのに対し、ITI-007トシル酸塩の対応する分散体がそうではないことは、特に予想外である。
【0063】
実施例4: トシル酸塩分散体の調製、予備スクリーニングおよび安定性評価
活性薬剤としてITI-007トシル酸塩を用いて、実施例1、2および3に記載の手順を繰り返す。ITI-007トシル酸塩は、2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)およびtert-ブタノール/水の60:40v/v混合物には良好な溶解性(>50mg/mL)を有するが、アセトン、エタノール、ジオキサンおよび他のtert-ブタンノール/水混合物には比較的低い溶解性(20~40mg/mL)を有することが分かる。しかしながら、ITI-007トシル酸塩のTFE中溶液は活性物質の分解により急速に変色することも分かる。
【0064】
実施例1に記載されているのと同じ賦形剤を評価する。遊離塩基について見られるように、溶媒(3:1アセトン-メタノール)からのロータリーエバポレーションの結果、アモルファス物質は得られないが、ジオキサンおよびジオキサン/メタノール混合物からの凍結乾燥の結果、試験した各賦形剤を使用してアモルファス物質が得られる。スクリーニングおよび安定性評価を下記の第2表に示す。
【表2-1】
【表2-2】
【0065】
ITI-007トシル酸塩を使用して試験した分散体のうち、そのほとんどがアモルファスであることが分かり、相対湿度75%および温度40℃での過酷な保存条件下で、いくつかの分散体は、ある程度の結晶化を受けたことを視覚的に観察されている。さらに、他の分散体は、多少の色変化またはテクスチャ変化を受けたことが観察されている。しかしながら、さらなる評価は、これらの物理的外観の変化が、組成物に抗酸化剤を配合して空気促進酸化(air-promoted oxidation)を防止すること、分散体をコーティング錠に形成すること、分散体をゲルカプレットもしくはカプセル中に封入すること、ポリマーなどの賦形剤を添加してアモルファス製剤の結晶化形態への部分変換を防止すること、および/または分散体と界面活性剤とを混合して粒子の凝集を防止することによって防止され得ることを示唆している。
【0066】
理論に拘束されることなく、アモルファス固体分散体形態のITI-007トシル酸塩を含む医薬製剤は、本明細書に記載されるような界面活性剤および/または抗酸化剤と組み合わせて、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、HPC、HPMC-AS、HPMC-P、PVAc、PVP S-630、PVP K-90、またはPVP-co-VAのうち1つ以上を用いて効果的に調製することができると考えられる。
本願は、下記の態様も包含する。
[態様1]
1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)トシル酸塩および安定化賦形剤を含み、抗酸化剤および/または界面活性剤をさらに含んでいてもよい、アモルファス固体分散体。
[態様2]
分散体が、ITI-007トシル酸塩と、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、メタクリレート/アクリル酸メチルコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-AS)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-P)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、およびポリエチレングリコール/ポリ酢酸ビニル/ポリビニルカプロラクタムコポリマーからなる群から選択される1つ以上の安定化賦形剤を含む、態様1記載の分散体。
[態様3]
トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル(OPG)、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、tert-ブチルヒドロキシキノリン(TBHQ)、カロテノイド、グルタチオン、メタ重亜硫酸の塩(例えば、ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸の塩(例えば、ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸、システイン、メチオニン、セサモール、およびクエン酸のうち1つ以上から選択されてもよい抗酸化剤をさらに含む、態様1記載の分散体。
[態様4]
アニオン性またはカチオン性または中性界面活性剤であってもよい界面活性剤をさらに含む、態様1記載の分散体。
[態様5]
分散体がX線アモルファスである、態様1記載の分散体。
[態様6]
分散体が、1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)トシル酸塩、および
(a)ITI-007トシル酸塩対酢酸フタル酸セルロース比5:95~75:25(例えば、比75:25を除く)で酢酸フタル酸セルロース賦形剤;または
(b)ITI-007トシル酸塩対HPMC-AS比25:75~50:50(例えば、比50:50を除く)でHPMC-AS賦形剤;または
(c)ITI-007トシル酸塩対HPMC-P比5:95~75:25(例えば、比75:25を除く)でHPMC-P賦形剤
を含む、態様1記載の分散体。
[態様7]
分散体がX線アモルファスである、態様6記載の分散体。
[態様8]
X線回折パターンが賦形剤に特徴的なピークを含まない、態様6記載の分散体。
[態様9]
トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル(OPG)、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、tert-ブチルヒドロキシキノリン(TBHQ)、カロテノイド、グルタチオン、メタ重亜硫酸の塩(例えば、ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸の塩(例えば、ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸、システイン、メチオニン、セサモール、およびクエン酸のうち1つ以上から選択されてもよい抗酸化剤をさらに含む、態様6記載の分散体。
[態様10]
アニオン性またはカチオン性または中性界面活性剤であってもよい界面活性剤をさらに含む、態様6記載の分散体。
[態様11]
態様1記載の分散体を、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは関連させて含む、医薬組成物。
[態様12]
態様6記載の分散体を、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは関連させて含む、医薬組成物。
[態様13]
経口投与のための錠剤またはカプセル剤の剤形である、態様11または12記載の組成物。
[態様14]
5-HT 2A 受容体、セロトニン輸送体(SERT)、および/またはドパミンD 1 /D 2 受容体シグナル伝達経路(D 1 媒介NMDAまたはAMPA受容体調節を含む)が関与または媒介する疾患または異常な状態、例えば、肥満症、食欲不振、過食症、うつ病(双極性うつ病、大うつ病性障害、治療-難治性うつ病、および/または急性うつ病を含む)、不安(急性不安を含む)、精神病、統合失調症、片頭痛、強迫性障害、性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、睡眠障害、頭部の疼痛に関連する状態、社会恐怖症、または認知症(例えば、アルツハイマー病またはパーキンソン病の認知症)から選択される障害に罹患しているヒトの予防または治療のための方法であって、該予防または治療を必要とする患者に態様1記載の分散体の治療有効量を投与することを含む、方法。
[態様15]
5-HT 2A 受容体、セロトニン輸送体(SERT)、および/またはドパミンD 1 /D 2 受容体シグナル伝達経路(D 1 媒介NMDAまたはAMPA受容体調節を含む)が関与または媒介する疾患または異常な状態、例えば、肥満症、食欲不振、過食症、うつ病(双極性うつ病、大うつ病性障害、治療-難治性うつ病、および/または急性うつ病を含む)、不安(急性不安を含む)、精神病、統合失調症、片頭痛、強迫性障害、性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、睡眠障害、頭部の疼痛に関連する状態、社会恐怖症、または認知症(例えば、アルツハイマー病またはパーキンソン病の認知症)から選択される障害に罹患しているヒトの予防または治療のための方法であって、該予防または治療を必要とする患者に態様6記載の分散体の治療有効量を投与することを含む、方法。
[態様16]
態様1記載の分散体の製造方法であって、
(a)例えばジオキサン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトンおよびそれらの混合物から選択される、好適な溶媒または溶媒混合物中にて、結晶形態であってもよい1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)トシル酸塩、例えばモノトシル酸塩を選択された賦形剤と合わせる工程;および
(b)例えば溶液の凍結乾燥または溶媒の蒸発(例えばロータリーエバポレーションによる)によって、溶媒を除去して形成されたアモルファス固体分散体を回収する工程
を含む、方法。
[態様17]
該溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、およびそれらの混合物から選択される、態様16記載の方法。
[態様18]
溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン、メタノール、またはジオキサン/メタノール混合物から選択される、態様16記載の方法。
[態様19]
溶媒または溶媒混合物が、ジオキサン対メタノール比90:10~98:2、またはジオキサン対メタノール比92:8~95:5、または93:7の、ジオキサンまたはメタノールである、態様16記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6