(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ブロックチェーン上のタグ付き資金のフローの追跡
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/02 20120101AFI20240719BHJP
【FI】
G06Q20/02
(21)【出願番号】P 2021536009
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 US2019067483
(87)【国際公開番号】W WO2020132246
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-28
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520177600
【氏名又は名称】ソルト・ブロックチェーン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Salt Blockchain Inc.
【住所又は居所原語表記】707 17th Street,Suite 4200,Denver,Colorado 80202,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キーガン・マクレランド
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ヒル
【審査官】山崎 雄司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0335609(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0115413(US,A1)
【文献】上野 仁,56 攻撃事例「コインチェック事件」,トコトンやさしい ブロックチェーンの本,2018年11月22日,pp.130-131,ISBN:978-4-526-07901-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックチェーンネットワーク上のタグ付き資金のフローを追跡する方法であって、
前記ブロックチェーン
ネットワーク上の資金のグローバルトランザクション履歴を表すブロックチェーン元帳の少なくとも一部を取得し、
前記ブロックチェーン元帳上の資金の識別子を受信し、
前記グローバルトランザクション履歴に対して前記資金の識別子を再生して、前記資金の識別子の支払履歴を生成し、
前記ブロックチェーン元帳上のタグ付きトランザクションアウトプットのセットとそれに関連付けられた重み値を含む、タグ付けプロファイルを受信し、
前記グローバルトランザクション履歴に対して前記タグ付けプロファイルを再生して、前記タグ付けプロファイルから導出されるトランザクションアウトプットとそれに関連する重み値を含む伝播プロファイルを生成し、
前記資金の識別子の前記支払履歴が前記伝播プロファイルに関して交差条件を満たすかどうかを判断し、
前記交差条件が満たされる場合にはネットワーク参加者にアラート通知を送信すること
をコンピュータに実行させることを含む、方法。
【請求項2】
前記支払履歴が
前記資金の識別子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記交差条件は、前記資金の識別子の前記支払履歴におけるトランザクションアウトプッ
トが、トリガー閾値を超える重み値を有する前記伝播プロファイル内のトランザクションアウトプットと交差する場合にのみ満たされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アラート通知には、少なくとも1つの交差トランザクションアウトプットと、前記少なくとも1つの交差トランザクションアウトプットに関連付けられた重み値が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記グローバルトランザクション履歴に対して前記タグ付けプロファイルを再生する動作は、前記グローバルトランザクション履歴内のトランザクションからのいずれかのアウトプットに等しい重み付け値を割り当てることを含み、前記トランザクションへの少なくとも1つのインプットが重み付け値に関連付けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
さらに、前記少なくとも1つの交差トランザクションアウトプットに関連付けられた資金を前記資金の送信者に戻すこと
をコンピュータに実行させることを含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項7】
前記資金の識別子が
前記ブロックチェーン
ネットワーク上のブロック高さを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記資金の識別子が、拡張公開鍵(xpub)から導出されるトランザクションアウトプットのセットを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記タグ付けプロファイルが、トランザクションアウトプットのブラックリストを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ブロックチェーン
ネットワーク上のタグ付き資金のフローを追跡するための
、コンピュータを用いて構築されたシステムであって、
前記ブロックチェーン
ネットワーク上の資金のグローバルトランザクション履歴を表すブロックチェーン元帳の少なくとも一部を取得するためのブロックチェーンネットワーク参加手段と、
前記ブロックチェーン元帳上の資金の識別子、並びに前記ブロックチェーン元帳上のタグ付けされたトランザクションアウトプットのセット及びそれに関連付けられた重み値を含むタグ付けプロファイルを受信するトランスミッターと、
前記グローバルトランザクション履歴に対して前記
資金の識別子を適用して、前記資金の識別子の支払履歴を生成するトランザクション再生手段であって、さらに前記グローバルトランザクション履歴に対して前記タグ付けプロファイルを適用して、伝播プロファイルを生成するトランザクション再生手段と、
前記資金の識別子の前記支払履歴が前記伝播プロファイルに関して交差条件を満たすかどうかを判断する資金重み付け評価手段と、
前記交差条件が満たされた場合、要求されたトランザクションをブロックする支払い阻止手段と
を含む、システム。
【請求項11】
前記トランスミッターは、前記交差条件が満たされた場合に市場参加者にアラート通知を送信する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記タグ付けプロファイルは、少なくとも部分的に、盗まれた資金の識別情報に基づく、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記タグ付けプロファイルは、少なくとも部分的に市場参加者に関連する資金に基づいており、前記アラート通知は、前記資金の識別子の前記支払履歴における資金と市場参加者との間の経済的相互作用を示す、請求項
11に記載のシステム。
【請求項14】
前記ブロックチェーンネットワーク参加手段が前記ブロックチェーンネットワーク上のノードを含み、前記ブロックチェーン
ネットワーク上の資金の前記グローバルトランザクション履歴がノードに対してローカルである、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
ブロックチェーン
ネットワーク上のタグ付き資金のフローを追跡する方法であって、
ブロックチェーン元帳上の資金の識別子を生成し、
前記ブロックチェーン元帳上のタグ付きトランザクションアウトプットのセットとそれに関連付けられる重み値を含むタグ付けプロファイルを、前記資金の識別子に対して適用することを要求し、
前記資金の識別子の支払履歴が前記タグ付きトランザクションアウトプットのセットの伝播プロファイルと交差するかどうかの表示を含む交差プロファイルを受信すること
をコンピュータに実行させることを含み、
前記伝播プロファイルは、前記タグ付けプロファイルから重み値を継承する、方法。
【請求項16】
前記タグ付けプロファイルの適用を要求する動作は、前記タグ付けプロファイルを送信することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記タグ付けプロファイルの適用を要求する動作が、1つ又は複数の既知のタグ付けプロファイルの適用の要求を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記交差プロファイルは、前記資金の識別子の前記支払履歴が前記伝播プロファイルと交差するかどうかの表示に関連する1つ又は複数の市場参加者のアイデンティティを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記交差プロファイルは、前記資金の識別子の前記支払履歴が、少なくとも部分的に重み値に基づいて前記1つ又は複数の市場参加者と交差する程度を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記交差プロファイルは、前記資金の識別子の前記支払履歴が前記伝播プロファイルと交差するかどうかの表示の重みを含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブロックチェーン上で送金される資金のフォレンジック分析に関する。
【0002】
本出願は、2018年12月19日に提出された「ブロックチェーン上のタグ付き資金のフローの追跡」と題される米国仮出願第62/782,341号、及び2019年8月19日に出願された、同じく「ブロックチェーン上のタグ付き資金のフローの追跡」と題される米国出願第16/544,770号の優先権の利益を主張して、特許協力条約に従って提出された出願である。
【背景技術】
【0003】
ブロックチェーンは、一連のネットワークコンセンサスルールに従って定期的に更新される共有元帳である。一部のブロックチェーン共有元帳は、資金(例えば、「コイン」又は暗号通貨の単位と見なされ得る金銭的価値の単位)の動きを追跡する。ブロックチェーンネットワークの参加者は、これらの資金単位と引き換えにビジネス(例えば、商品やサービスの提供)を行うことを選択できる。場合によっては、ネットワーク参加者は、ビジネス上及び/又は規制上の理由から、特定の「汚染された」資金単位を避けたい場合がある(例えば、資金が盗まれた疑いがある場合、資金がネットワーク参加者がビジネスを行うことを許可されていない法域に関連している場合、資金がテロリスト又はその他の犯罪行為に関連している場合、資金が既知の信用リスクに関連している場合など)。特定の法域では、ビジネスの過程で資金を受け入れる前に、既知の不良資金(例えば、盗まれた、テロに使用された、経済制裁の対象国に関連しているなど)のリストに対してブロックチェーン資金をチェックする法的要件が存在する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一部のブロックチェーンは、未使用のトランザクションアウトプット(UTXO)モデルに基づいており、法定通貨の物理的な紙幣と同様に、資金の単位は離散的であり、部分的に使用することはできない。UTXOを使用する場合、UTXOのサイズが支払人が転送したい金額と正確に一致する可能性は低いため、トランザクションに関連付けられた「変更」アウトプットが少なくとも1つある場合がある。したがって、特定の汚染されたUTXOの知識は、UTXOが使用され、汚染された資金が受取人と支払う側によって制御される変更アドレスとの間で分割されると古くなる。したがって、ブロックチェーンネットワークの参加者は、資金の動きを追跡し、特定の資金単位をビジネス目的で受け入れるべきではないかどうかを正確に判断することができない可能性がある。さらに、汚染された資金は「クリーンな」資金と組み合わせることができるため、ネットワーク参加者が支払いを受け入れることができるかどうかという問題が複雑になる。
【0005】
したがって、ネットワーク参加者が、ネットワーク参加者の基準に従って、特定の資金単位(例えば、特定のUTXOのアウトプット)を処理することが許可されているかどうかを判断するために、ブロックチェーン上で汚染された、又は他の方法で分類された資金の動きを経時的に追跡するシステムが必要である。
【0006】
添付の図(同様の参照番号は、すべての個別のビューで同一又は機能的に類似した要素を指す)は、以下の詳細な説明とともに、明細書に組み込まれ、その一部を形成し、特許請求される発明を含む概念の実施形態をさらに説明し、それらの実施形態の様々な原理及び利点を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、資金源と、ブロックチェーン上のタグ付けプロファイルに関してそれらの資金のフローを追跡する監査手段との間の例示的な関係の例示的なブロック図である。
【
図2】
図2は、未使用のトランザクションアウトプットの伝播プロファイルを生成するために、ブロックチェーン共有元帳上で経時的にグローバルトランザクション履歴に対して再生されるタグ付けプロファイルの時系列図である。
【
図3】
図3は、ブロックチェーンネットワーク上のタグ付き資金のフローを追跡するプロセスの信号図である。
【
図4】
図4は、それぞれがグローバルトランザクション履歴に対して再生されるときの、タグ付けプロファイルからの例示的な伝播プロファイルの作成、及び資金の識別情報からの支払履歴の作成を示す時間プロットである。
【
図5】
図5は、資金の識別子、支払プロファイル、タグ付けプロファイル、及び伝播プロファイルを有するブロックチェーンアドレス間の関係の例を示す別の時間図である。
【
図6】
図6は、クリーンな資金を、タグ付けプロファイルに従って汚染されているとみなされる資金と組み合わせる場合の希釈効果を示す図である。
【
図7】
図7は、顧客とのトランザクションの相手方に関して、顧客のブロックチェーン資金のフローを監査するデジタル資産サービスプロバイダとの間の関係の例を示す図である。
【
図8】
図8は、デジタル資産サービスプロバイダによるタグ付けプロファイルの生成例を示す図である。
【
図9】
図9は、ブロックチェーン上のタグ付き資金のフローを追跡するための例示的なシステムのブロック図である。
【
図10】
図10は、ブロックチェーン上のタグ付き資金のフローを追跡するための例示的なワークフローのフローチャートである。
【
図11】
図11は、ブロックチェーン上のタグ付き資金のフローを追跡するための例示的なワークフローの別のフローチャートである。
【
図12】
図12は、本開示を実行するのに有用であり得る例示的なシステムである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
当業者は、図の要素が簡潔さと明確さのために示され、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことを理解するであろう。例えば、図中のいくつかの要素の寸法は、本発明の実施形態の理解を促進するために、他の要素と比較して誇張され得る。
【0009】
装置及び方法の構成要素は、必要に応じて、従来の記号によって図面中に表されている。本明細書の説明の利点を受ける当業者に容易に明らかになる詳細で開示を曖昧にしないように、本発明の実施形態を理解することに関連する特定の詳細のみを示す。
【0010】
ブロックチェーンネットワークの参加者は、関心のある資金を意識し、時間の経過とともに資金を追跡したい場合がある。関心のある資金は、参加者がやり取りしたくない資金であり得る(例えば、法的な理由、規制上の理由、資金が盗まれたと主張されている、ダークネットマーケットに関連しているなど)。関心のある資金はまた、関心のある別のマーケット参加者(例えば、競合他社又はブロックチェーン上の資金と商品又はサービスを交換する他のエンティティ)に関連付けられた資金など、経済的に関心のある資金であり得る。
【0011】
UTXOモデルの構造により、UTXOブロックチェーン上の資金源を追跡することは非常に困難である。UTXOは、実際の紙幣と同様に、全額しか使用できない個別の金額の資金を表す。20ドル札を半分に減らして10ドルを使うことは不可能であると同様に、UTXOは完全に使われなければならない。UTXOブロックチェーンの資金の支払人が受信者に価値を転送したい場合、支払人は1つ又は複数のUTXOを選択する必要があり、その合計値はトランザクションへのインプットとして転送額よりも大きくなる。支払人のトランザクションには通常、2つのアウトプットがある:1つは資金の受取人に送られるアウトプットで、もう1つは支払人によって制御され、ここでは変更アウトプット又は変更アドレスと呼ばれるアウトプットである。
【0012】
ブロックチェーンネットワークの参加者が関心のあるUTXO(例えば、「リスク要因」を持つUTXO)を特定した場合、ブロックチェーン上のUTXOを単純にチェックすることは効果的ではない。所有者がUTXOを使用した場合、そこに含まれる資金の一部は新しいUTXOの受取人に有効に移動され、残りは新しいUTXO変更アドレスにおいて支払人によって保持されるからである。ブロックチェーンに外在する証拠の助けがなければ、トランザクションの受取人が保持しているコインと変更アドレスであるコインを区別することはおそらく不可能である。ただし、ヒューリスティック又はウォレットクラスタリングなどの他の分析を適用して、変更アドレスを特定できる場合もある。
【0013】
したがって、本開示の方法は、資金の最初のタグ付けプロファイルが与えられれば、資金の履歴をブロックチェーンのグローバルトランザクション履歴に対して追跡して、資金と関心のある資金の重み付きプロファイル(例えば、リスクプロファイル)との間に交差があるかどうかを判断することができる。資金が使用され、新しいトランザクションインプットと組み合わされると、プロファイル(ここではタグ付けプロファイルと呼ばれる)の重み値は、水の中を拡散するインクの滴のように考えることができる。より多くのトランザクションがブロックチェーンに蓄積されると、タグ付き資金はタグなし資金との組み合わせによって希釈され、その結果、重み付け値が将来のトランザクションアウトプットに分散される。資金の識別情報(例えば、デジタル資産サービスプロバイダの顧客によって預け入れられた資金)を重み付きトランザクションアウトプットと比較して、2つの当事者間に経済的相互作用を示す交差があるかどうかを判断できる。十分に長い期間が与えられると、理論的には、すべてのトランザクションアウトプットが最終的に互いに接触する可能性がある(最終的に水と完全に混合されるインクの滴に類似する)。したがって、識別された資金とタグ付けプロファイルとの間の交差条件を満たすために、最小の重み値の閾値を課すことができる。
【0014】
本明細書で使用される場合、「資金の識別情報」は、いくつかの方法で行うことができるブロックチェーン上の資金の初期識別情報である。一実施形態では、資金の識別情報は、使用されたかどうかにかかわらず、1つ又は複数のトランザクションアウトプットを含む。他の態様では、資金の識別情報には、支払いアドレスの無限の行を決定論的に作成する拡張パブリックアドレス(xpubとしても知られている)を含めることができる。暗号通貨ウォレットは、しばしば決定論的シードに基づいて生成されるxpubをしばしば使用して、ウォレットで使用されるすべての支払いアドレスを生成できるようにする。ただし、資金の初期識別情報がどのように作られたにかかわらず、これらの初期トランザクションアウトプットをブロックチェーンのグローバルトランザクション履歴と比較して、資金の初期識別情報の派生であるトランザクションアウトプットのリストを生成できる(本明細書では、資金の識別情報の支払履歴と呼ばれる)。ブロックチェーンの性質上、受取人に送られる支払履歴の資金と比較して、識別された資金を最初に管理したエンティティが支払履歴の資金のどれだけを保持しているかはわからない。
【0015】
本明細書で使用される場合、「タグ付けプロファイル」は、資金の識別情報に類似しているが、それに関連する重み値を有する資金のセットである。重み値の例としては、タグ付けプロファイルの各トランザクションアウトプットに付された、又は関連付けられたリスク値がある。タグ付けプロファイルに含まれる資金が使用されるか、他のトランザクションアウトプットと組み合わされて新しいトランザクションへのインプットを形成する場合、重み値は結果としての新しいトランザクションアウトプットに継承される。したがって、タグ付けプロファイルは、水中に拡散するインクに似ており、重み付きトランザクションアウトプットと「混合」される重みなしトランザクションアウトプットの大きさに応じて重み値を希釈できる。タグ付けプロファイルがグローバルトランザクション履歴に適用された後の重み付け値を持つ結果の資金のセットは、本明細書では伝播プロファイルと呼ばれる。
【0016】
一例として、ブロックチェーン上の資金は、「汚染された」と見なされ得、したがって、法的又は規制の観点から、処理することが望ましくないか、又は禁止され得る。例えば、資金は盗まれた、違法なエンティティに関連している、貿易制裁の対象となるエンティティに関連していると見なされる、又はその他のさまざまな理由で報告され得る。このシナリオでは、「リスク」又は同様の概念を表すものとして、重み値を汚染された資金に割り当てることができる。汚染された資金が使用され、新しい資金(例えば、重み付け値に関連付けられていない資金)と組み合わされると、新しいトランザクションアウトプットは、汚染された資金によって表される新しいトランザクションへのインプット値の割合に比例して、汚染された資金から重み値を継承する。
【0017】
汚染された資金が新しい資金と混合されていない場合、新しいトランザクションアウトプットは、親トランザクションアウトプットの重み値を保持するであろう。したがって、盗まれた資金がデジタル資産サービスプロバイダに直接送金された場合、デジタル資産サービスプロバイダは、重み値がデジタル資産サービスプロバイダのリスク閾値を超えていると想定して、資金の受け入れを拒否する可能性がある。リスクの閾値は調整可能であるため、デジタル資産サービスプロバイダは、汚染された資金への曝露をどのレベルを許容できるかを指定できる。おそらく、すべての市場参加者は、市場参加者が所有する前に禁止された活動に関連する現金又は他の種類の金銭の場合と同様に、資金についてゼロレベルを超えるリスクを負う必要があることに気付くだろう。
【0018】
本明細書に開示されるブロックチェーン上のタグ付き資金のフローを追跡するためのシステム及び方法は、ブロックチェーンの実用的な適用である。ある観点から、ここに開示されているタグ付けスキーマは、暗号通貨の代替可能性に対する攻撃であり、コインの核心的なバリューソースと見なされることがよくある。一部の資金が本書で説明されているように「汚染された」又は「リスクがある」とラベル付けされている場合、それらのコインは「クリーン」な資金と比較して市場で割引価格で取引される可能性がある。したがって、伝播プロファイルを作成することによってブロックチェーン上の資金を追跡すると、コインでの取引を希望する参加者に実際の影響がある:暗号通貨の預金が戻される可能性があり、顧客がサービスを拒否される可能性があり、司法機関に通知されるなどの可能性がある。
【0019】
また、本明細書に開示されるシステム及び方法は、単に情報を整理するものではない。ブロックチェーン暗号通貨システムでは、資金を移動するために秘密署名鍵(ここでは支払鍵とも呼ばれる)が必要である。設計上、署名鍵は、それを作成した参加者のみが所有する。そうでなければ、他の参加者のコインを盗むことは計算上実用になるだろう。したがって、秘密署名鍵は単なる情報ではなく、お金そのものである。参加者が秘密署名鍵を所持している場合、その参加者は資金の損失を防ぐために鍵を保護する責任と義務を負う。暗号通貨の履歴は、盗難、無能、又はその他の理由にかかわらず、署名鍵を失った一元化デジタル資産サービスプロバイダから散逸し、そこにはコインがある。したがって、デジタル資産の資金を受け取ることは、電子送信を受け取ることよりも、貴金属の出荷を受け取ることに似ている。電子送信は通常、必要に応じてコピー及び再送信できるが、一方、ブロックチェーン資金はできない。したがって、デジタル資産の支払いの停止、又はデジタル資産の支払いの拒否と返還は、関連する管理責任のために単にデータを送信するだけではない。
【0020】
図1は、資金源と、ブロックチェーン上のタグ付けプロファイルに関してそれらの資金のフローを追跡する監査手段との間の例示的な関係のブロック
図100である。
図1に示される例では、ブロックチェーン102は、未使用トランザクションアウトプット(UTXO)モデルブロックチェーンであり、チェーンに追加された各新しいブロックは、利用可能なUTXOのサブセットをトランザクションインプットとして消費し、新しく、以前は存在しなかったUTXOをトランザクションアウトプットとして作成する。したがって、ブロックチェーン102は、チェーンのユーザのグローバルトランザクション履歴を表す。
【0021】
監査手段106は、それに関連付けられた重み付け値を備える資金を識別するタグ付けプロファイル110(例えば、リスク値を含むトランザクションアウトプットのセット)を受け取る。監査手段106はさらに、参加者104から資金108の識別情報を受け取る。
図1に示される資金の識別情報は、それぞれが参加者104にとって関心のある暗号通貨ウォレットを表すxpubのセットである。参加者が関心を持つウォレットは、顧客のウォレット、取引相手のウォレットなどを表す場合がある。
【0022】
タグ付けプロファイル110及び資金108の識別を受信すると、監査手段106は、それに基づいて支払履歴及び伝播プロファイルを生成し、両方のセットに現れる資金(例えば、トランザクションアウトプット)を検索する。両方のセットに資金がある場合、監査手段106は、資金が交差条件を満たすかどうかを判断し、これは、参加者104によって提供される閾値などの最小閾値を超える交差資金の重み付け値に依存し得る。次に、監査手段は、交差アラートを参加者104に送信するなどの行動をとることができる。
【0023】
図2は、未使用のトランザクションアウトプットの伝播プロファイルを生成するために、ブロックチェーン共有元帳上で経時的にグローバルトランザクション履歴に対して再生されるタグ付けプロファイルの時系列
図200である。最初に、UTXOの「未使用」という用語に関して説明が有用であり得る。トランザクションは特定の時点で未使用である可能性があるが、その後、確認済みトランザクション(Tx)へのインプットとして消費され、「使用済み」になる。これらのトランザクションのインプット/アウトプットは、使用されるかどうかに関係なく、一般にUTXOと呼ばれる。本開示の目的のために、UTXOは使用済み又は未使用のトランザクションアウトプットのいずれかを指すことができる。同様に、トランザクションの「アウトプット」は確認済みのトランザクションによって作成されるが、後で別のトランザクションへのインプットとして使用できる。したがって、UTXOはトランザクションアウトプットとして厳格に解釈されるべきではない。
【0024】
図2に示される例のタグ付けプロファイルは、4つのUTXO202、204、206、及び212を含む。タグ付けプロファイルの各UTXOには、資金価値とそれに関連付けられた重み値がある。例えば、UTXO202には5ビットコイン(BTC)があり、重み値(ここではリスクスコア)は3である。残りのUTXO204、206、及び212も同様に、資金価値とリスクスコアを有する。まとめると、4つのUTXO202、204、206、及び212は、この例のタグ付けプロファイルを表している。
【0025】
図200において下向きに時間が進むにつれて、UTXO202及び204は、確認されたトランザクションTx1へのインプットになる。確認されたトランザクションTx1は、2つのトランザクションアウトプット208と210を生成する。資金価値は、送信者が望むように、2つのアウトプット208と210の間で配分することができるが、Tx1へのインプットの合計値を超えることができない。実際には、Tx1が含まれているブロックを解決したマイナーに支払われる取引手数料もあるが、この例では取引手数料は無視される。典型的なシナリオでは、Tx1のアウトプットの1つはトランザクションの受取人によって所有され、もう1つのアウトプットは送信者に属する変更アドレスである。伝播プロファイルを生成するにあたり、どのアウトプットが受取人のもので、どちらが変更アドレスであるかは重要ではない。リスクは、式((5×3)+(7×12))/(5+7)=8.25に従って、アウトプット全体にTx1に配分される。Tx1の例では、「新しい」インプット(例えば、重みスコアのないインプット)がないため、アウトプットの重みは、インプットのリスクのバランスを変更するものと見なすことができるが、ゼロ重みのインプットが希釈に使用された場合のように、全体的なリスクを減らすことはできない。Tx1は、各アウトプットの相対的なサイズに関係なく、インプットの合計リスクが2つのアウトプットによって平等に分担されるものとしてみることができる。
【0026】
次に、
図200の時間進行において、UTXO208及びUTXO206を消費するTx2が確認される。Tx2は、UTXO214と216の2つのアウトプットを生成する。Tx1と同様に、2つのトランザクションアウトプットはそれぞれ1BTCと3BTCの価値を持ち、6.625の同じリスクスコアを分担する。確認されたTx2と同時に確認されたTx3は、UTXO210及び212を消費し、新しいトランザクションアウトプット218及び220を生成する。他のトランザクションと同様に、Tx3は異なるBTC資金価値のアウトプットを生成するが、リスクスコアは等しくなる。
図2に示される例におけるUTXO214、216、218、220のセットは、グローバルトランザクション履歴に対してタグ付けプロファイルを再生した結果の伝播プロファイルである。
【0027】
図3は、ブロックチェーンネットワーク上のタグ付き資金のフローを追跡するワークフロー300の信号図である。ワークフロー300は、監査手段がブロックチェーンからグローバルトランザクション履歴の少なくとも一部を受信する受信動作302から始まる。いくつかの態様では、監査手段がブロックチェーンの完全な履歴にアクセスできるように、監査手段はブロックチェーンのネットワーク上に完全な検証ノードを含む。他の態様では、監査手段は、ブロックエクスプローラーのWebサイトやAPIなどのサードパーティ経由など、ブロックチェーンレコードの一部のみを受け取る。多くの場合、ブロックチェーンの履歴は長期間(例えば、何年にもわたる)に及ぶ可能性があり、参加者が関心を持つのは履歴全体のサブセットのみである。したがって、ブロックの高さは、開始ブロックより上のブロックのみが考慮されるように、本明細書で説明される方法の目的のために開始ブロックとして指定され得る。
【0028】
受信動作304は、ユーザからブロックチェーン上の資金の識別情報を受信する。資金の識別情報には、トランザクションアウトプットのセット、xpubなど、対象の資金を識別する情報が含まれ得る。監査手段が資金の識別情報を取得すると、監査手段はグローバルトランザクション履歴に対して資金の識別情報を再生して、支払履歴を生成する。グローバルトランザクション履歴に対して資金の識別を再生するプロセスは、重み付け値がないことを除いて、伝播プロファイルの生成に類似する。いくつかの態様では、資金の識別情報から派生するすべてのアウトプットは、支払履歴に属すると考えられる。他の態様では、変更アドレスは、支払履歴から除外される受信者アドレスとは異なる資金の識別情報に関連付けられたウォレットに属するものとして識別される。
【0029】
いくつかの場合、資金がブロックチェーンの先端又はその近くにのみ存在するという意味で、資金の識別情報は「新鮮」である。言い換えれば、資金の識別情報が最初にブロックチェーン共有元帳に表示されたブロックの高さ以降、解決したブロックがないか、又は非常に少ない。この状況は、資金を受け取る目的で新しいアドレスが作成され、十分なエントロピーインプットを備えたアドレスが作成されたためにそのアドレスが以前に存在していなかったことがわかっている場合に発生し得る。このシナリオでは、資金の識別情報を再生する対象となるグローバルトランザクション履歴には何もないため、再生動作306は無動作である。例としては、デジタル資産サービスプロバイダが新しい支払いアドレスを作成し、そこに顧客又は見込み顧客がデジタル資産サービスプロバイダで使用するための資金を預ける場合がある(例えば、取引のために暗号通貨取引所に預金する、ローンのためにデジタル資産を担保に預ける、プラットフォームで使用するための資金のデポジットなど)。
【0030】
受信動作308は、それに関連付けられた重み値を有するトランザクションアウトプットを含むタグ付けプロファイルを受信する。別の再生動作310は、グローバルな支払履歴に対してタグ付けプロファイルを再生して、伝播プロファイルを生成する。次に、判断動作312は、両方のセットのメンバーであるトランザクションアウトプットが存在するかどうかを判断することによって、支払履歴と伝播プロファイルとの間に交差があるかどうかを判断する。十分な時間が与えられれば、事実上すべての資金がブロックチェーンに混ざる可能性があるため、両方のセットの単なるメンバーシップは交差条件を満たすのに十分であるとは見なされない場合がある。したがって、交差する資金の最小リスクスコアは、2つのセット間で最小限にしか関連していない資金を除外するために必要になる場合がある。汚染された資金に対する市場参加者の敏感度に応じて、判断動作312は最小閾値を調整することができる。市場参加者にとって本当に「有毒」であるとみなされる資金に適用されるタグ付けプロファイルの場合、ゼロに近い最小閾値を使用できる。
【0031】
図4は、それぞれがグローバルトランザクション履歴に対して再生されるときの、タグ付けプロファイルからの例示的な伝播プロファイルの作成、及び資金の識別情報からの支払履歴の作成を示す時間プロット400である。プロット400の水平x軸は時間であり、時間T
0で始まり、無限に延びる。いくつかの態様では、時間T
0はブロックチェーンの初期ブロックを表す。他の態様では、時間T
0は、ブロックチェーン上の対象の時期の開始時にブロックの高さによって識別されるブロックなどの開始ブロックを表す。プロット400に示されている例では、タグ付けプロファイルと資金の識別情報は同じブロック高さから始まるが、異なるブロック高さも可能である。
【0032】
図4のy軸は、トランザクションアウトプットが順序付けられていることを意味すると解釈されるべきではない。使用済みアウトプットと未使用アウトプットの両方がy軸で表されていると見なされると、セットの合計サイズは時間の経過とともに増加するが、順序付けを意味するアウトプットに固有のものはない。したがって、y軸は、トランザクションアウトプットの全体的なサイズを意味するように解釈されるべきであり、その通貨価値やトランザクションアウトプットの他の属性を意味するものではない。
【0033】
時間T0でタグ付けプロファイルの右に広がる円錐は、時間の経過に伴うグローバルトランザクション履歴への適用による伝播プロファイルの生成を表す。円錐の拡大は、インプットがトランザクションによって消費され、新しいアウトプットが作成されるときに重み値が割り当てられるトランザクションアウトプットの数の増加を示している。プロット400には、伝播プロファイルにおけるトランザクションアウトプットの重み付け値は示されていないが、これはアウトプットごとに異なる可能性がある。同様に、資金の識別情報から右に広がる円錐は、時間の経過に伴う支払履歴の生成を表す。交差ポイントは、トランザクションアウトプットが両方の円錐に表示される最初のポイントを示す。このポイントは、交差するトランザクションアウトプットの重みがトリガー閾値を超えるかどうかに応じて、交差条件をトリガーする場合がある。交差条件は、1点でのみトリガーされる必要はない。円錐が右に広がり続ける場合、時間の経過とともに多くの交差するトランザクションアウトプットが存在する可能性があり、それぞれが独立して交差条件をトリガーできる。プロット400は、時間が無限に増加するにつれて、資金の識別情報が最終的に伝播プロファイルと交差することを示唆している。
【0034】
図5は、資金の識別子、支払プロファイル、タグ付けプロファイル、及び伝播プロファイルを有するブロックチェーンアドレス間の例示的な関係を示す別の時間
図500である。時間
図500では、時間は、時間T
1、T
2、T
3などによって示されるように下向きに進行する。
図500では、各時間レベルは、それに関連するトランザクションアウトプットセットを有するものとして示されている。
図500では、ブロックチェーン上の個々のトランザクションアウトプットが円として描かれている。アドレスが使用されると、アドレスを表す円に×が描かれる。支払いアドレスが未使用の場合、円の中に×はない。
【0035】
本明細書に開示される他の例のように、「アウトプット」という用語は、確認されたブロックチェーントランザクションの任意のアウトプットに適用されるが、「アウトプット」は、その後、確認されたブロックチェーントランザクションへのインプットになる可能性があることも理解されたい。したがって、「アウトプット」はブロックチェーントランザクションアウトプットを意味すると厳格に解釈されるべきではなく、インプットを指すこともある。同様に、「未使用」という用語は、後で使用される可能性のあるトランザクションを指す場合がある。ブロックチェーントランザクションアウトプットは、本明細書ではアドレス又は支払いアドレスと呼ばれることもある。
【0036】
資金の識別情報は、円502によって表される。
図5では、資金の識別子の支払履歴を表すアウトプットは、チェックマークを含む。未使用のアウトプットは円で表され、使用済みのアウトプットには取り消し線が引かれ、タグ付けプロファイル及び/又は伝播プロファイルの一部として重み付け値が付加されたアウトプットには、割り当てられた重み付けを示す番号が含まれる。
【0037】
左側において、
図5は、資金の識別情報の支払履歴を生成するために、時間の経過とともにグローバルトランザクション履歴に対して資金の識別情報を再生することを示している。この例では、資金の識別情報は、単一の未使用の支払いアドレス502を参照することによって行われる。時間T
2において、資金502の初期識別子は、受信者アドレス504及び変更アドレス506に資金を供給するために使用される。時間T
3において、変更アドレス506は、2つの新しいアウトプット508及び510をもたらすトランザクションに使用される。トランザクションアウトプット508は、アウトプット526(それ自体は後でアウトプット530に使用される)及び528に使用され、残りが未使用であるとして示されている。支払アウトプット508から生じるアウトプットのいずれも、伝播プロファイルと交差しない。
【0038】
時間T
3に戻ると、時間T
4で、アウトプット510が、重み値が付加されたトランザクションアウトプットであるトランザクションアウトプット512と組み合わせて使用されるとき、トランザクションアウトプット510は、伝播プロファイルと交差する。トランザクション512は、タグ付けプロファイル514の子トランザクションであるため、それに関連付けられた重み値を有し、したがって伝播プロファイルの一部である。初期タグ付けプロファイル514は、任意の数のUTXOから構成され得るが、
図500に示される例では、重み値が10である単一のUTXOである。一態様では、重み値は0~10のスケールであるため、タグ付けプロファイル514は、最大に重み付けされたタグ付けプロファイルである。このような高い重み値は、暗号通貨取引所から盗まれた資金など、リスクの高い資金を示している可能性がある。
【0039】
伝播プロファイルの発達を追跡すると、時間T1で、タグ付けプロファイルUTXO514は、重み値を持たないUTXO516と共にインプットとして使用され、新しいトランザクションアウトプット518を生成する。アウトプット516の資金価値は、アウトプット514よりも著しく低いため、重み付け値がわずかに9に希釈される。次に、アウトプット518は、UTXO520と共に別のトランザクションへのインプットになり、これもまた、それに関連付けられた重み付け値を持たない。インプット520は、比較的低いBTC資金価値を有し、したがって、トランザクションのアウトプットであるアウトプット522の重み付けを再び8に希釈する。アウトプット522は、トランザクションへのインプットとして使用され、アウトプット512を含むさらなる3つのアウトプットを作成し、次に、アウトプット512は、支払履歴の一部であるアウトプット510と組み合わせたトランザクションへのインプットとして使用される。したがって、交差条件を満たす最初のアドレスはアウトプット524である。
【0040】
したがって、アウトプット524は、一方では支払履歴に発展された資金の識別子と、他方では伝播プロファイルに発展されたタグ付けプロファイルとの間の交差条件を満たす。アウトプット524の交差条件は、インプット510のサイズがインプット512のサイズよりも小さいことを反映して、それに関連する値5を有する。交差条件に関心のある参加者は、交差値を使用して交差の程度(例えば、「リスクプロファイル」の重み付けの場合、交差する資金がどの程度「汚染」されているか)を反映できる。時間が無限大に増加すると、ブロックチェーン上で時間の経過とともにアウトプットが新しいトランザクションへのインプットとして再結合される方法の性質により、事実上すべてのブロックチェーンアウトプットがある程度の重み係数を獲得する可能性が高くなる。したがって、関連性の値を持たせるために、交差条件は、「ほこりを取り除く」ために、閾値を超える重み付け値を持つ資金に制限される場合がある。
【0041】
図6は、クリーンな資金604を、タグ付けプロファイルに従って汚染されたとみなされる資金606と組み合わせる場合の希釈効果を示す
図600である。最初に、ブロックチェーンネットワーク参加者602は、タグ付けプロファイル及び/又はそこから生成された伝播プロファイルからの重み値に関連付けられていない資金604のセットを所有している。疑わしい参加者608は、高レベルのリスクを示す重み付け値を有する資金606を所有している。資金606自体がタグ付けプロファイルに従って汚染されているので、疑わしい参加者608は、望むように資金606を使用するのが困難になる可能性がある。したがって、疑わしい参加者608は、資金606をネットワーク参加者602に販売して、クリーンな資金604で希釈することを選択することができる。参加者602が資金606の汚染された性質を認識している場合、ネットワーク参加者602は、希釈の対価として市場より低い販売価格を要求することができる。
【0042】
矢印610の後、クリーンな資金604は、資金606からある量の汚染を獲得し、疑わしい参加者608は、汚染された資金を手放すことができた。
図600は、汚染された資金が、汚染されていない資金に吸収され、2セットの資金の相対的なサイズに応じて新しい重み付けになる可能性があることを示している。この例では、クリーンな資金604は、汚染された資金よりもかなり大きいため、組み合わせた後、以前は完全にクリーンな資金は、わずかなレベルの汚染を帯びる。そのようなレベルは、資金を使用するための所望の計画に応じて、ネットワーク参加者602に受け入れられる可能性がある。
【0043】
図7は、顧客との取引の相手方708及び710に関して、顧客704のブロックチェーン資金のフローを監査するデジタル資産サービスプロバイダ502との間の例示的な関係を示す
図700である。本開示の前の例とは異なり、
図700は、タグ付けプロファイルがリスクプロファイルではなく、特定の市場参加者708及び710にどれだけ密接に結びついた資金であるかを示すプロファイルであるシナリオを示す。市場参加者に関連付けられていることがわかっている資金には、関係を示す重み付け値(例えば、可能な最高重み付け値)をタグ付けできる。これらの資金は、他のタグなし資金と組み合わされるため、希釈される。時間の経過とともに、タグ付けプロファイルは元の相手方との関連性がますます低くなるが、これらの資金との相互作用のレベルは、顧客資金704との相互作用が対象の相手方によって実行される確率を示すために依然として使用できる。
【0044】
図7に示される例では、顧客704は、デジタル資産サービスプロバイダ702(例えば、保管ウォレットサービス、デジタル資産担保ローンのためのデジタル資産担保ウォレットのマネージャー、暗号通貨取引所、及び/又は他のタイプのデジタル資産サービスプロバイダ)によって保管されているデジタル資産資金706を所有している。デジタル資産サービスプロバイダ702によって提供されるサービスのタイプが何であれ、顧客が保管ウォレットからトランザクションを開始する時間など、顧客704が所有する資金を追跡することができる。
【0045】
図7の例では、顧客704は、相手方708への転送716を開始する。転送716がデジタル資産サービスプロバイダ702を介して発生する場合、又はトランザクション716がオンチェーンであり、したがってブロックチェーン元帳のコピーに表示される場合、デジタル資産サービスプロバイダ702は、トランザクション716をユーザ704の支払履歴の一部として識別することができる。トランザクション716がユーザ704の支払履歴の一部として識別されると、追跡動作712は、資金が取引相手708で使用された可能性を計算することができる。同様のプロセスが、相手方710へのトランザクション718及び追跡動作714で続く。
【0046】
図7の例では、デジタル資産サービスプロバイダ702は、ユーザ704及び相手方708、710に関する複数のタイプの経済情報を推測することができる。一態様では、デジタル資産サービスプロバイダ702は、資金706と相手方の既知のタグ付けプロファイルとの間の交差条件を検出することによって、顧客704の消費者プロファイルを組み立てることができる。別の態様では、デジタル資産サービスプロバイダ702は、以前は未知の相手方との交差条件を調べることによって、顧客704とビジネスを行った新たな相手方を検出することができる。デジタル資産サービスプロバイダに多くの顧客がいる場合は、それぞれの支払履歴を比較して、新しい相手方を検出できる。
【0047】
図8は、デジタル資産サービスプロバイダによるタグ付けプロファイルの例示的な用途を示す
図800である。デジタル資産サービスプロバイダ802が特定の資金の取り扱いを控えたい、又は控えることを要求される可能性がある様々なシナリオが考えられる。これらの資金のプロファイリングとそれに割り当てられた重み値は、システムのさまざまな参加者及び/又は監督者によって選択される場合がある。一態様では、タグ付けプロファイルは、暗号通貨取引所から盗まれた資金を表す。盗難が発生した場合、取引所はタグ付けプロファイルを公開できる。このプロファイルでは、攻撃によって取得された資金は、関連するブロックチェーントランザクションのアウトプットによって識別される。それに関連する重み付け値は、一般に受け入れられている重み付けスケール(例えば、0~10の範囲で、10が最も高いリスクの資金)に従って取引所によって高リスクとして選択され得るか、又は重み付けは、デジタル資産サービスプロバイダ802に課せられた独自のリスク許容度又は基準(例えば、盗まれた資金を処理しないための法的要件及び0.1の最小閾値重み付けスコア)に従ってデジタル資産サービスプロバイダ802によって選択され得る。タグ付き資金及びその子孫とのすべての接触に同じ高いウェイト値が割り当てられる「フルブラックリスト」など、他の重み付け伝播スキームも可能である。
【0048】
タグ付けプロファイル及び重み付けの他のソースは、政府の規制機関又は執行機関などの政府機関によって提供され得る。ほんの数例を挙げると、司法機関が、ブロックチェーン資金が犯罪の実行、テロの資金調達、又は経済制裁の対象となる国との取引に使用されたと見なした場合、当局は、これらの資金にタグを付け、関連する法域の個人及び/又は企業に対して、接触した場合に資金の使用に関して制限又は要件を課す権限を持っている場合がある。ブロックチェーン(特にUTXOモデルのブロックチェーン)での資金の使用を制限するために州の関係者が講じることができる措置に制限はほとんどない。州のあらゆる反対者(徴税執行対象、犯罪容疑者、外国のエンティティと取引を行う人などを含むが、これらに限定されない)が標的にされ、資金がデジタル資産サービスプロバイダ(レガシー金融システムサービスプロバイダも含まれ得る)から除外され得る。したがって、政府機関は、タグ付けプロファイルを公開し、デジタル資産サービスプロバイダ802からのタグ付けプロファイルの順守を要求することができる。
【0049】
タグ付けプロファイルのソースの別の例は、パブリックレジストリである。望ましくない資金源から発生したことがわかっている資金は、収集され、公開される場合がある。いくつかの態様では、顧客804は、パブリックレジストリから1つ又は複数のタグ付けプロファイルを選択し、デジタル資産サービスプロバイダ802に、顧客804の要求で追跡されたブロックチェーン資金にタグ付けプロファイルを適用するように要求する。例えば、顧客804が、顧客804が相互作用を検討しているが、最初にリスクスコアをチェックしたい資金をチェックするために、デジタル資産サービスプロバイダ802によって提供されるAPIサービスの顧客である。
【0050】
図9は、ブロックチェーン904上のタグ付き資金のフローを追跡するための例示的なシステム902のブロック
図900である。システム902は、本明細書に記載の機能を実行するための複数の構成要素を含む。そのような構成要素の1つは、他の参加者と(例えば、インターネットを介して)通信し、システム902で使用される特定の情報を受信することができるトランスミッター910である。そのようなタイプの通信の1つは、参加者906からの資金908の識別である。参加者906は、例えば、限定されないが、デジタル資産サービスプロバイダによって制御されるウォレットに資金を預けたデジタル資産サービスプロバイダの顧客、第三者との商取引のために資金をチェックすることを望む顧客等であり得る。
【0051】
トランスミッター910はまた、ブロックチェーン904からグローバルトランザクション履歴922を受信する。トランスミッター910は、ブロックチェーンネットワーク参加者912からの要求に従って、グローバルトランザクション履歴を受信することができる。ブロックチェーンネットワーク参加者912は、いくつかの態様では、ブロックチェーン904のネットワークに参加している完全なノードである。完全なノードは、ほとんどの場合、ブロックチェーンの完全な共有元帳の完全な(又は場合によっては切り取られた)コピーを維持する。この場合のグローバルトランザクション履歴922の受信は、保留中のトランザクション(例えば、mempool)及び解決されたブロックの他の完全なノードから一定の更新を受信することを意味する。新しいブロックがチェーンに追加されるたびに、グローバルトランザクション履歴が更新される。ブロックチェーンネットワーク参加者は、ブロックチェーン904のコンセンサスルールを、新しく受信されたすべてのトランザクション及びブロックにさらに適用し、それに準拠しないトランザクション又はブロックを拒否することができる。他の態様では、ブロックチェーンネットワーク参加者912は完全なノードではない。参加者912は、代替的又は追加的に、サードパーティのブロックエクスプローラーからの要求などによって、ブロックチェーンのコピーを要求及び検索するクライアントであり得る。
【0052】
資金902を追跡するためのシステムは、タグ付けプロファイル916を取得する。タグ付けプロファイルは、システム902でローカルに生成され、及び/又は公開リスト、政府執行リスト、盗まれた財産リスト、又は他の公開され、選択された基準などの別のソースから受信され得る。タグ付けプロファイル916は、特に特定の顧客又はユーザ906に関して、資金とエンティティとの間のオンチェーンの相互作用をプロファイルするために商業エンティティに属することが知られているタグ付きウォレットなどの個人情報からも生じ得る。
【0053】
トランザクション再生手段914は、タグ付けプロファイル916とグローバルトランザクション履歴(又はその関連部分)、及びブロックチェーンネットワーク参加者912からの資金の識別情報を受信する。これらのピースを装備したトランザクション再生手段は、ブロックチェーンのグローバルトランザクション履歴に対して資金の識別子を再生することにより、資金の識別子の支払履歴を生成できる。結果である支払履歴には、資金の識別子によって識別されるアウトプットを含む、確認されたトランザクションから生じたブロックチェーントランザクションのアウトプットが含まれる。いくつかの態様では、資金の識別子は拡張パブリックアドレス(xpub)であり、そこから新しいアウトプットのセットが決定論的に生成され、「ウォレット」と見なすことができる。xpubの場合、支払履歴は、インプットをxpubに基づいて生成されたアウトプットと組み合わせるトランザクションの結果であるアウトプットに加えて、ブロックチェーン904上に存在するすべてのxpub生成アドレスを含むことになる。
【0054】
トランザクション再生手段914はまた、グローバルトランザクション履歴に対してタグ付けプロファイルを再生することによって伝播プロファイルを生成する。支払履歴の生成と同様に、伝播プロファイルの生成には、ブロックチェーンアウトプットのセット(又はxpub)から開始し、タグ付けプロファイルから生じるアウトプットと組み合わされた関心のある追加のアウトプットを見つけることが含まれる。ただし、支払履歴の生成とは異なり、伝播プロファイルの生成には、重み付け値の伝播が含まれる。したがって、タグ付き資金は、ブロックチェーン内を移動し、タグなし資金と結合するときに「希釈」される。希釈の程度は、混合されたタグなし資金のサイズに依存する。比較的少量では希釈が少なくなるが、比較的大量に混合すると希釈が大きくなる。
【0055】
ブロックチェーンは共有元帳への増分更新を表すので、本明細書で使用されるグローバルトランザクション履歴という用語は、本質的にブロックチェーン自体である。一部のブロックチェーンは切り取られる場合がある。すなわち、使用済みのアウトプットはすべて破棄され、ネットワーク参加者は未使用のアウトプット(UTXOセットなど)でのみ機能する。このような切り取られたチェーンは、タグ付けプロファイルと支払履歴の間の交差を見逃す可能性がある。UTXOセットのみが考慮される場合、タグ付き資金の希釈レベルは、上流の資金の希釈レベルとは異なる場合がある。それにもかかわらず、いくつかの態様はUTXOセットのみを処理することを選択できるため、支払履歴と伝播プロファイルの交差の「現在のスナップショット」が得られ、それの履歴記録が得られない。
【0056】
トランザクション再生手段914が支払履歴及び伝播プロファイルを生成した後、資金重み付け評価手段920は、交差条件が満たされているかどうかを判断する。本明細書で述べたように、長期間にわたって、チェーン904上のすべての資金の大部分及びかなりの部分が、ある重みレベルを獲得する可能性がある。大きな交差セットは、識別された資金が重み付けられた資金にどれだけ密接に関連しているかを判断する際に有用性が低下する可能性があるため、資金重み付け評価手段920は、重み付けレベルが最小閾値を下回る交差資金を除去するためのフィルタとして機能し得る。
【0057】
資金重み付け評価手段920が交差条件が存在すると判断した場合、交差が別のイベントを発生させるように設定されたトリガーがあり得る。一態様では、支払い阻止手段918は、交差条件に応答してブロックチェーントランザクションを形成し、ブロードキャストする。トリガーの例は、顧客906によってデジタル資産サービスプロバイダに預けられた資金が、盗まれた資金と交差すると見なされる場合であり得る。この場合、デジタル資産サービスプロバイダはこの資金とやり取りしないように要求される場合がある。したがって、支払い阻止手段918は、資金を送信者に戻すブロックチェーントランザクションを生成することができる。言い換えれば、資金を預け入れた顧客906に関連付けられていることがわかっているアウトプット(例えば、既知の返金アドレス、顧客906によって制御されるウォレットの一部として生成されたことが知られているアドレスなど)を使用して、新しい有効なブロックチェーントランザクションに署名する。
【0058】
支払履歴と伝播プロファイルとの交差に基づくトリガーの別の例は、参加者に送信される通知アラートである。伝播プロファイルと交差する資金はイベントをトリガーする可能性が高いので、イベントの通知又はアラートは、ネットワーク参加者にイベントを通知するためにトランスミッター910によって実行され得る。例えば、顧客906によって預けられた資金が戻されることになっている場合、顧客906は、この事実について通知されることを望む可能性が高い。他の非限定的な例には、最小のローン対価値比率(loan-to-value ratio、LTV)要件を備えたローンのデジタル資産担保を受け入れる貸し手が含まれ得る。借り手は、許容可能な閾値を超える重み付け値のために顧客906に信用されない可能性のあるデジタル資産を預け入れることによってLTVを改善しようとする可能性がある。
【0059】
支払履歴と伝播プロファイルとの交差に基づくトリガーの他の例には、顧客906のプロファイルの組み立てが含まれる。顧客906がデジタル資産サービスプロバイダから資金を受け取る場合(例えば、暗号通貨取引所からの引き出し)、デジタル資産サービスプロバイダは、引き出された資金を使用する顧客906と他のエンティティとの間の経済的相互作用について知りたいと思う場合がある。例えば、顧客906によって引き出されたと識別され、したがって顧客906の管理下にあると識別された資金が、大規模なオンライン小売業者の既知のホットウォレットと交差することになった場合、デジタル資産サービスプロバイダは、交差する資金の重みが十分に高いと見なされると仮定して、ユーザ906を大規模なオンライン小売業者の顧客としてプロファイルすることができる。この情報は、交換された人気のある暗号通貨の既知のホットウォレットとコールドウォレットに基づいて特に簡単に収集できる。
【0060】
もちろん、顧客906によって引き出された資金が別の既知のウォレットと交差することは、顧客906自身が既知のホットウォレットと経済的に相互作用したことを意味するものではない。顧客906が資金を第三者に使用し、次に第三者がその資金を既知のウォレットに使用した可能性もある。この場合、顧客906は、相互作用が直接的でなくても、既知のウォレットに経済的に近接して配置されたものとしてプロファイリングされる。このようにして、相互作用の直接的及び/又は間接的な性質が直接知られていない場合でも、顧客906の経済的位置の「ヒートマップ」を作成することができる。
【0061】
図10は、ブロックチェーン上のタグ付き資金のフローを追跡するための例示的なワークフローのフローチャート1000である。取得動作1002は、ブロックチェーン元帳の少なくとも一部を取得し、ブロックチェーン元帳は、ブロックチェーン上の資金のグローバルトランザクション履歴を表す。動作を共有元帳の一部に制限する1つの方法は、関心のブロックチェーンの最も早い時点を表すブロック高さを指定することである。受信動作1004は、ブロックチェーン元帳上の資金の識別子を受信する。資金を特定する方法には、ウォレットのxpub、及び/又は1つ又は複数のブロックチェーントランザクションアウトプットが含まれる。
【0062】
再生動作1006は、資金の識別子をグローバルトランザクション履歴に対して再生して、資金の識別子の支払履歴を生成する。支払履歴には、特定された資金が投入された取引から生じる使用済み及び未使用のアウトプットが含まれる。いくつかの場合、資金の識別子はチェーンの近く又は先端にある。例えば、新しく作成されたアウトプット(例えば、アウトプットが最近マイニングされたブロックのブロックチェーンに導入された)が資金の識別子である場合である。資金の非常に「新鮮な」識別子の場合、再生動作は無動作であるか、又はそれに近い可能性がある。言い換えれば、資金の識別子が再生されるグローバルトランザクション履歴の部分は、それ自体が空白セットである。この場合、再生動作1006は、グローバルトランザクション履歴内の資金の識別子を含む新しい取引を何も見つけずに単にチェックしているだけであり得、したがって、再生動作のアウトプットは、資金の識別子それ自体である。
【0063】
受信動作1008は、タグ付けプロファイルを受信し、タグ付けプロファイルは、ブロックチェーン元帳上のタグ付きトランザクションアウトプットのセット及びそれに関連する重み値を含む。一態様では、重み値は、タグ付けプロファイル内の資金と違法及び/又は望ましくない活動との関連に従って割り当てられるリスク値である。他の態様では、重み値は、資金の支払に関する推論を引き出す目的で、タグ付けプロファイルが特定のビジネスエンティティ又は業界にどれだけ密接に関連付けられているかを示す。別の再生動作1010は、グローバルトランザクション履歴に対してタグ付けプロファイルを再生して伝播プロファイルを生成し、伝播プロファイルは、タグ付けプロファイルから導出されたトランザクションアウトプット及びそれに関連する重み値を含む。伝播プロファイルは、例えば、伝播プロファイルをもたらすトランザクションへのインプットとして使用されるブロックチェーンアウトプットの相対的な重みに従って重み値を継承することができる。
【0064】
判断動作1012は、資金の識別子の支払履歴が伝播プロファイルに関して交差条件を満たすかどうかを判断する。支払履歴のいずれかが、閾値を超える重み値を持つ伝播プロファイルのアウトプットとアウトプットを共有する場合、交差条件が満たされ得る。送信動作1014は、交差条件が満たされた場合に、ネットワーク参加者にアラート通知を送信する。アラート通知は、選択されたタグ付けプロファイルから発展された伝播プロファイルとの交差の検出、交差条件に基づいて資金が移動されているかどうかなどの状態について参加者に警告することができる。
【0065】
図11は、ブロックチェーン上のタグ付き資金のフローを追跡するための例示的なワークフローの別のフローチャート1100である。生成動作1102は、ブロックチェーン元帳上に資金の識別子を生成する。識別された資金の例には、顧客によって預け入れられた資金、顧客に分散された資金、APIのユーザによって識別された資金などが含まれ得る。要求動作1104は、ブロックチェーン元帳上のタグ付きトランザクションアウトプットのセット、及びそれに関連付けられた、資金の識別子に対する重み値を含むタグ付けプロファイルの適用を要求する。要求動作1104は、例えば、APIを介して、デジタル資産サービスプロバイダにブロックチェーン上の資金を追跡するように要求することができる。言い換えれば、このシナリオのデジタル資産サービスプロバイダは、資金追跡サービスのプロバイダーである。
【0066】
受信動作1106は、資金の識別子の支払履歴が、タグ付きトランザクションアウトプットのセットの伝播プロファイルと交差するかどうかの指示を含む交差プロファイルを受信し、伝播プロファイルは、タグ付けプロファイルから重み値を継承する。交差プロファイルは、どのブロックチェーンアウトプットが伝播プロファイル要素と交差し、結果の重み値が何であるかを示すことができる。交差の量と範囲に関する集合データは、交差プロファイルに含まれ得る(例えば、平均、中央値、最頻値の重み値など)。
【0067】
図12は、本開示を実行するのに有用であり得る例示的なシステムである。
図12は、UTXOタグ付けシステムを実装するのに有用であり得るシステム1200の図である。
図12は、記載された技術を実施するのに有用であり得る例示的なシステム(処理システム1200としてラベル付けされている)を示す。処理システム1200は、スマートデバイス、接続されたデバイス、モノのインターネット(IoT)デバイス、ラップトップ、モバイルデバイス、デスクトップ、タブレット、又はサーバー/クラウドデバイスなどのクライアントデバイスであり得る。処理システム1200は、1つ又は複数のプロセッサ1202、及びメモリ1204を含む。メモリ1204は、一般に、揮発性メモリ(例えば、RAM)及び不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリ)の両方を含む。オペレーティングシステム1210は、メモリ1204に常駐し、プロセッサ1202によって実行される。
【0068】
オラクルマネージャー944及びブロックチェーンマネージャー1246などの1つ又は複数のアプリケーションプログラム1212モジュール又はセグメントは、メモリ1204及び/又はストレージ1220にロードされ、プロセッサ1202によって実行される。いくつかの態様では、グラフジェネレータ1244は、読み取り専用メモリ(ROM)1214、又はライトワンスリードメニー(WORM)メモリに格納される。外因性イベントデータソースなどのデータは、メモリ1204又はストレージ1220に格納され得、オラクルマネージャー1244及びブロックチェーンマネージャー1246などによって使用されるためにプロセッサ1202によって検索可能であり得る。ストレージ1220は、処理システム1200に対してローカルであり得るか、又はリモートであり、処理システム1200に通信可能に接続され得、そして別のサーバーを含み得る。ストレージ1220は、クライアントデバイス(図示せず)によって要求可能なリソースを格納することができる。ストレージ1220は、チップ又はトラステッド実行環境(trusted execution environment、TEE)によって実装され得る1つ又は複数のトラステッドプラットフォームモジュール(trusted platform module、TPM)によって管理される1つ又は複数のプラットフォーム構成レジスタ(platform configuration register、PCR)などの安全なストレージを含み得る。
【0069】
処理システム1200は、1つ又は複数の電池又は他の電源によって電力が供給され、処理システム1200の他の構成要素に電力を供給する電源1216を含む。電源1216はまた、内蔵バッテリ又は他の電源を無効にするか又は再充電する外部電源に接続することができる。
【0070】
処理システム1200は、1つ又は複数の他のサーバー及び/又はクライアントデバイス(モバイルデバイス、デスクトップコンピューター、ラップトップコンピューターなど)にネットワーク接続(例えば、携帯電話ネットワーク、Wi-Fi(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)など)を提供するために、1つ又は複数のアンテナ1232に接続され得る1つ又は複数の通信トランシーバー1230を含み得る。処理システム1200は、通信デバイスの一種であるネットワークアダプタ1236をさらに含み得る。処理システム1200は、ワイドエリアネットワーク(WAN)又はローカルエリアネットワーク(LAN)を介して接続を確立するために、ネットワークアダプタ1236及び他の任意のタイプの通信デバイスを使用することができる。示されるネットワーク接続は例示的なものであり、他の通信デバイス及び処理システム1200と他のデバイスとの間の通信リンクを確立するための手段を使用できることを理解されたい。
【0071】
処理システム1200は、ユーザがコマンド及び情報をインプットすることができるように、1つ又は複数の入力デバイス1234(例えば、キーボード又はマウス)を含むことができる。入力デバイス1234は、マルチモーダルインプット、音声インプット、手書きインプット、モーション探知、顔認識、物理的指紋などの他のタイプのインプットをさらに含み得る。これら及び他の入力デバイスは、シリアルポートインターフェース、パラレルポート、ユニバーサルシリアルバス(USB)などのような1つ又は複数のインターフェース1238によってサーバーに接続することができる。処理システム1200は、タッチスクリーンディスプレイなどのディスプレイ1222をさらに含み得る。
【0072】
処理システム1200は、仮想及び/又はクラウドコンピューティング環境を含む、様々な有形のプロセッサ可読ストレージ媒体及び無形のプロセッサ可読通信信号を含み得る。有形のプロセッサ可読ストレージは、処理システム1200によってアクセスされ得る任意の利用可能な媒体によって具体化されることができ、揮発性と不揮発性ストレージ媒体、及びリムーバブルと非リムーバブルストレージ媒体のいずれも含む。有形のプロセッサ可読ストレージ媒体は、無形通信信号を含まず、プロセッサ可読指令、データ構造、プログラムモジュール又は他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法又は技術で実装された、揮発性と不揮発性、及びリムーバブルと非リムーバブルストレージ媒体を含む。有形のプロセッサ可読ストレージ媒体の例には、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ若しくは他のメモリ技術、CDROM、デジタル多用途ディスク(DVD)若しくは他の光学ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ若しくは他の磁気ストレージデバイス、又は所望の情報を格納するために使用することができ、処理システム1200によってアクセスすることができる任意の他の有形の媒体が含まれるが、これらに限定されない。有形のプロセッサ可読ストレージ媒体とは対照的に、無形のプロセッサ可読通信信号は、コンピュータ可読指令、データ構造、プログラムモジュール、又は搬送波やその他の信号伝送メカニズムなどの変調されたデータ信号に存在する他のデータを具体化することができる。「変調されたデータ信号」という用語は、信号内の情報を符号化するような方法でその特性の1つ又は複数が設定又は変更された信号を意味する。限定的ではない例として、無形通信信号には、有線ネットワーク又は直接有線接続などの有線媒体と、音響、RF、赤外線、及び他の無線媒体などの無線媒体を通過する信号が含まれる。
【0073】
前述の明細書では、特定の実施形態が説明されてきた。しかしながら、当業者は、以下の特許請求の範囲に記載されるように、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることを理解する。したがって、明細書及び図は、限定的な意味ではなく例示的な意味で見なされるべきであり、そのようなすべての修正は、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。
【0074】
利益、利点、問題の解決策、並びに利益、利点、又は解決策を発生させたり、より顕著にする可能性のある要素は、いずれか又はすべての請求項の重要な、必須の、又は本質的な機能又は要素として解釈されるべきではない。本発明は、本出願の係属中になされた補正及び発行されたそれらの請求項のすべての同等物を含む、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0075】
さらに、本文書では、第1及び第2、上部及び下部などの関係用語は、実際のそのような関係又は順序を必ずしも要求又は暗示することなく、ある実体又は行為を別の実体又は行為から区別するためにのみ使用され得る。「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」、「備える」、「備えている」、「含有し」、「含有している」など、又はそれらの他の変形の用語は、非排他的な包含を内包することを意図している。要素の列挙を含むプロセス、方法、物品、又は装置は、それらの要素のみを含み、有し、備え、又は含有するのではなく、明示的に列挙されていない、又はそのようなプロセス、方法、物品、若しくは装置に固有の他の要素を含み得る。「…を含む」、「…を有する」、「…を備える」、「…を含有する」が続く要素は、さらなる制約なしに、当該要素を含み、又は有し、又は備え、又は含有するプロセス、方法、物品、又は装置に追加の同一要素が存在することを排除しない。「a」及び「an」という用語は、本明細書で特に明記しない限り、1つ又は複数として定義される。「実質的に」、「本質的に」、「ほぼ」、「約」又はそれらの他の形式の用語は、当業者によって理解されるほどに近いと定義され、非限定的な一実施形態では、これらの用語は、10%以内、別の実施形態では5%以内、別の実施形態では1%以内、別の実施形態では0.5%以内であると定義される。本明細書で使用される「接続された」という用語は、必ずしも直接ではなく、必ずしも機械的である必要はないが、連結されていると定義される。特定の方法で「構成」されたデバイス又は構造は、少なくともその方法で構成されるが、列挙されていない方法で構成される場合もある。
【0076】
いくつかの実施形態は、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、カスタマイズされたプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの1つ又は複数の汎用又は特殊プロセッサ(又は「処理デバイス」)と、特定の非プロセッサ回路と組み合わせて、本明細書に記載の方法及び/又は装置の機能の一部、ほとんど、又はすべてを実装するために当該1つ又は複数のプロセッサを制御する固有の格納プログラム命令(ソフトウェア及びファームウェアの両方を含む)から構成され得ることが理解されよう。あるいは、一部又はすべての機能は、プログラム命令が格納されていないステートマシンによって、又は、各機能又は特定の機能のいくつかの組み合わせがカスタムロジックとして実装された、1つ又は複数の特定用途向け集積回路(ASIC)に実装できる。もちろん、これらの2つのアプローチを組み合わせて使用することもできる。
【0077】
さらに、一実施形態は、本明細書に記載及び特許請求される方法を実行するようにコンピュータ(例えば、プロセッサを含む)をプログラミングするためにコンピュータ可読コードが格納されたコンピュータ可読ストレージ媒体として実施することができる。このようなコンピュータ可読ストレージの例には、ハードディスク、CD-ROM、光記憶装置、磁気記憶装置、ROM(読み取り専用メモリ)、PROM(プログラム可能読み取り専用メモリ)、EPROM(消去可能プログラム可能)、EEPROM(電気的に消去可能でプログラム可能な読み取り専用メモリ)、及びフラッシュメモリが含まれるが、これらに限定されない。さらに、当業者は、おそらく多大な努力と、例えば利用可能な時間、現在の技術、及び経済的考慮によって動機付けられた多くの設計の選択にもかかわらず、ここに開示された概念と原則によって導かれれば、最小限の実験でそのようなソフトウェア命令及びプログラムならびにICを容易に生成することができることが期待される。
【0078】
開示の要約は、読者が技術的開示の性質を迅速に確認できるようにするために提供されている。請求項の範囲又は意味を解釈又は制限するために使用されないことを理解した上で提出されている。さらに、前述の詳細な説明では、開示を合理化する目的で、様々な特徴が様々な実施形態で一緒にグループ化されている。この開示方法は、特許請求された実施形態が各請求項に明示的に記載されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、本発明の実質内容は、単一の開示された実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴にある。したがって、以下の特許請求の範囲は、詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、個別に特許請求された実質内容として独立している。