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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】医療用インプラントを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/24 20060101AFI20240719BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20240719BHJP
   A61N 1/32 20060101ALI20240719BHJP
   A61N 1/378 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
H01R43/24
H01R13/52 301Z
A61N1/32
A61N1/378
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021553791
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2020055465
(87)【国際公開番号】W WO2020182525
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】102019203273.7
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517119556
【氏名又は名称】ニューロループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キミヒ,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ボレティウス,ティム
(72)【発明者】
【氏名】アダミ,フロリアン
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-186571(JP,A)
【文献】特開昭62-254770(JP,A)
【文献】特開平10-125440(JP,A)
【文献】特開2014-194854(JP,A)
【文献】実開平07-034523(JP,U)
【文献】特開2006-263468(JP,A)
【文献】特開2007-190777(JP,A)
【文献】特開2014-103091(JP,A)
【文献】特開2017-216043(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0037648(US,A1)
【文献】特表2015-500130(JP,A)
【文献】国際公開第2013/047740(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
H01R 43/027-43/28
A61N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
療用インプラント(1)が、ヘッド部分(2)であって、電気的な差込みコンタクトソケットとしての止まり穴状の少なくとも1つの切欠き(5)を有しており、該切欠き(5)に沿って、少なくとも1つの導電性のコンタクト要素(6)が配置されている、ヘッド部分(2)と、該ヘッド部分(2)に固定的に結合されたサプライ部分(3)であって、少なくとも1つの電気的な構成要素を含んでおり、該電気的な構成要素が、前記少なくとも1つの導電性のコンタクト要素(6)に、少なくとも1つの電気的な導体構造(8)を介して電気的に接続されている、サプライ部分(3)とを備える、前記医療用インプラント(1)を製造する方法において、
- 硬化可能な封止用コンパウンドから成る、プレート上面(4’)およびプレート下面(4’’)を有し、前記硬化可能な封止用コンパウンドと材料を同一とする位置固定プレート(4)を製造する工程であって、該位置固定プレート(4)内に、前記少なくとも1つの電気的な導体構造(8)を位置固定し、このとき、該電気的な導体構造(8)が前記プレート上面(4’)および前記プレート下面(4’’)を貫通している、位置固定プレート(4)を製造する工程と、
- 前記プレート下面(4’’)が、流込み成形型(12)の部分上面を形成するように、前記位置固定プレート(4)を前記流込み成形型(12)内に配置する工程と、
- 前記流込み成形型(12)を部分的に画定する部分上面として前記位置固定プレート(4)を配置する前または配置した後に、前記少なくとも1つの電気的な導体構造(8)を、前記少なくとも1つの電気的な構成要素に電気的に接触接続する工程と、
- 前記少なくとも1つの電気的な構成要素と、前記プレート下面(4’’)を越えて突出した前記少なくとも1つの電気的な導体構造(8)とを、前記硬化可能な封止用コンパウンドによって流込み成形時に取り囲むことにより、前記位置固定プレート(4)の前記プレート下面(4’’)との材料結合式の結合部を形成しながら、前記サプライ部分(3)を製造する工程と
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記位置固定プレート(4)の製造を、前記硬化可能な封止用コンパウンドをプレート用流込み成形型内に導入する流込み成形法により行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位置固定プレート(4)の製造を前記流込み成形法により行う工程の実施中に、前記流込み成形型(12)に、前記少なくとも1つの電気的な導体構造(8)を貫通させることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
硬化された前記位置固定プレート(4)に、少なくとも1つの孔を加工し、該孔を通じて、前記電気的な導体構造(8)をガイドし、接着剤により前記孔内に位置固定することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記プレート上面(4’)を越えて突出した前記少なくとも1つの電気的な導体構造(8)を、前記少なくとも1つの導電性のコンタクト要素(6)に電気的に接続し、
前記少なくとも1つの導電性のコンタクト要素(6)を、前記位置固定プレート(4)に直接的または間接的に固定的に結合することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
コンタクトリング要素(6)の形態で形成されている、複数の前記導電性のコンタクト要素(6)を設け、電気絶縁性の弾性変形可能なシールリング(7)と同軸的かつ軸線方向に連続した並びで交互に配置し、かつ軸線方向の接合力を加えながら相互に力結合式に接合し、
前記プレート上面(4’)を越えて突出した少なくとも1つの電気的な導体構造(8)に前記コンタクトリング要素(6)をそれぞれ電気的に接触接続した後に、同軸的かつ軸線方向に連続した並びで配置された複数の前記コンタクトリング要素(6)および前記シールリング(7)を、前記位置固定プレート()の前記プレート上面(4’)に固定的に結合することを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記サプライ部分(3)の製造前、製造中または製造後に、前記電気的な導体構造(8)に電気的に接続された前記少なくとも1つの導電性のコンタクト要素(6)を、前記硬化可能な封止用コンパウンドにより、前記ヘッド部分(2)を形成しながら流込み成形により取り囲み、これにより、前記位置固定プレート(4)の前記プレート上面(4’)に対する材料結合式の結合部を形成することを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
封止用コンパウンドとして、生体適合性のポリマー、特に生体適合性のエポキシ樹脂材料を使用することを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記サプライ部分(3)を、パルス発生器として働く埋植可能な医療用装置として形成する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用インプラントを製造する方法であって、医療用インプラントが、ヘッド部分であって、一種の電気的な差込みコンタクトソケットとしての止まり穴状の少なくとも1つの切欠きを有しており、切欠きに沿って、少なくとも1つの導電性のコンタクト要素が配置されている、ヘッド部分と、ヘッド部分に固定的に結合されたサプライ部分であって、好適にはマイクロコントローラおよび/または電気的なエネルギ源の形態の少なくとも1つの電気的な構成要素を含んでおり、電気的な構成要素が、少なくとも1つの導電性のコンタクト要素に、少なくとも1つの電気的な導体構造を介して電気的に接続されている、サプライ部分とを備える、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単に幾つかを挙げると、たとえば心臓治療のための除細動、ペースメーカおよび再同期用途のための、あるいはたとえば脊髄刺激、脳刺激または迷走神経刺激のような神経刺激療法的な措置のための、局所的な体内領域への電気的な刺激を目的とした埋植可能な医療用装置、簡単に云うと植込み型パルス発生器(IPG)は、通常、閉じたケーシングを有している。このケーシング内には、電気的なパルス形成のための構成要素、つまり少なくとも1つの電気的なエネルギ源と、このエネルギ源に接続された電気的な回路構造体とが含まれている。さらに、ケーシングにはいわゆるヘッド部分が接続されている。このヘッド部分内には、エネルギ源もしくは電気的な回路構造体に電気的に接続された電気的なコンタクトアセンブリが含まれている。この電気的なコンタクトアセンブリ内に、ヘッド部分と一緒に流体密に閉じられたコネクタアセンブリが嵌込み可能である。このコネクタアセンブリは、電気的な刺激信号を体内で局所的に与えるために、かつ場合によっては体内で局所的に取り出された電気的な信号をケーシング側に存在する電気的な回路構造体に供給するために、電気的な供給配線および導出配線に接触接続可能である。
【0003】
欧州特許第2134418号明細書には、埋植可能な医療用装置の冒頭に記載した形態のヘッド部分が記載されている。ヘッド部分は、接合シームに沿って接合可能な2つのヘッド部分ケーシング半部を含んでおり、このヘッド部分ケーシング半部内に、それぞれ連続した並びで複数の中間壁によって離隔された半円筒形の複数の切欠きが加工されている。これらの切欠き内に、それぞれ連続した交互の並びで導電性のコンタクト要素と電気絶縁性のシールリングとが挿入されている。したがって、2つのヘッド部分ケーシング半部から接合されたヘッド部分は、互いに同軸的に位置調整された、電気絶縁されたコンタクトリング要素の配列を含んでいる。これらのコンタクトリング要素への電気的な接触接続のために、側方の通路がヘッド部分に設けられており、この通路を通って、電気的なコネクタアセンブリが、全ての環状のコンタクトリング要素によって取り囲まれた中空室内に流体密に嵌込み可能である。
【0004】
独国特許出願公開第102012010901号明細書は、埋植可能な医療用装置に電気的に接触接続するためのヘッド部分内において電気的な接点およびシールを位置決めし、保持する方法を開示している。生体適合性かつ電気絶縁性の材料から成るヘッド部分ケーシング内には、片側で止まり穴状の穴が加工されており、この穴内に交互の並びで導電性のコンタクトリングと環状のシール要素とが導入されており、これらのコンタクトリングとシール要素とが一緒に1つの中空室を取り囲んでいる。この中空室内に、ピン形のコネクタアセンブリが嵌込み可能である。ヘッド部分内の個別の環状のコンタクトリングはそれぞれ、電気的な接続線路を介して、埋植可能な医療用装置のケーシング内に位置する電気的な構成要素に接続されている。
【0005】
独国実用新案第202013012073号明細書には、コネクタ孔-モジュール構成群が開示されている。このコネクタ孔-モジュール構成群の組付けのために、多数のコンタクトリングとシール要素とが交互の並びで、ピン形の組付けツールに沿って配置されている。緊締装置により、組付けツールに沿って装着させられている全てのコンタクトリングとシール要素とが軸線方向の接合力を加えられながら互いに緊締される。接合力を保持するために、無頭ねじにより軸線方向で固定的に組付けツールに装着させられているスリーブ要素が働く。このスリーブ要素は、端面側の組付けツールヘッドと一緒に、コンタクトリングとシール要素とから成るアセンブリを軸線方向の両側で画定する。この緊締状態において、硬化可能な封止用コンパウンドによるアセンブリの流込み封止が行われる。封止用コンパウンドは、硬化した状態で接合力を受けとめる。
【0006】
医療用インプラントの製造法が、米国特許出願公開第2016/0166825号明細書ならびに米国特許出願公開第2008/0033500号明細書から公知である。両方の場合、サプライ部分とヘッド要素とは、少なくとも最終的な製造ステップにおいて、流込み成形時に一体的な封止用コンパウンドによって取り囲まれる。
【0007】
米国特許出願公開第2003/0144707号明細書は、表面コンタクトアセンブリを備えた埋植可能な医療用装置を開示している。
【0008】
独国特許出願公開第102017222364号明細書は、埋植可能な医療用装置のヘッド部分を製造する方法を記載しており、ヘッド部分は、差込みコンタクトソケットを備えており、この差込みコンタクトソケット内に、連続した並びで環状のコンタクト要素と電気絶縁性のシールリングとが配置されている。リング要素の機械的に相互の緊締のためには、医療用装置の完成後に取り除かれる組付けツールが役立つ。リング要素の、力が加えられた相互の支承体は、ヘッド部分の硬化されたプラスチック母材により収容される。
【発明の概要】
【0009】
本発明の根底にある課題は、医療用インプラントを製造する方法であって、医療用インプラントが、ヘッド部分であって、一種の電気的な差込みコンタクトソケットとしての止まり穴状の少なくとも1つの切欠きを有しており、切欠きに沿って、少なくとも1つの導電性のコンタクト要素が配置されている、ヘッド部分と、ヘッド部分に固定的に結合されたサプライ部分であって、好適にはマイクロコントローラおよび/または電気的なエネルギ源の形態の少なくとも1つの電気的な構成要素を含んでおり、電気的な構成要素が、少なくとも1つの導電性のコンタクト要素に、少なくとも1つの電気的な導体構造を介して電気的に接続されている、サプライ部分とを備える、方法を改良して、個別に製造されるインプラントの製造のためにも、大量に製造されるインプラントの製造のためにも、方法技術的な手間ならびに時間およびコストに関する手間を著しく減じることである。さらに、特に重要であるのは、インプラントの製造品質ならびに流体密封性、およびこれに関連する寿命が最も高い要望を満たすことである。方法技術的な理由に基づいて、従来はヘッド部分とサプライ部分とをそれぞれ別個の組立てプロセスにおいて製造することが必要であったので、上述の製造要望の条件下で永続的に流体密な接合結合部を実現することができるようにするために、ヘッド部分とサプライ部分との接合に特に関心が払われている。
【0010】
本発明の根底にある課題の解決手段は、請求項1に記載されている。本発明の思想を有利な形式で改良する特徴は、従属請求項ならびに特に図示された実施例を参照しながら明らかとなる明細書の対象である。
【0011】
請求項1の前提部に記載の特徴による、医療用インプラントを製造する本解決手段による方法は、以下の方法ステップに基づいて組み立てられる。
【0012】
冒頭に記載した形態の医療用インプラントの製造時に重要であるのは、ヘッド部分とサプライ部分との間の接合結合部の形成であり、この接合結合部は、本解決手段によれば、材料結合式に、つまりモノリシックに形成され、したがってヘッド部分とサプライ部分との間の永続的に流体密な接合結合を提供する。流込み成形法により生体適合性の封止用コンパウンドによって取り囲まれるヘッド部分およびサプライ部分の両方の特別な技術的な構成に左右されることなく、ヘッド部分もサプライ部分も、結合プレートの、互いに反対側に位置する2つの表面に材料結合式に接合されている。この結合プレートは、以下では位置固定プレートとも呼ばれ、硬化可能な封止用材料から成っており、ヘッド部分およびサプライ部分と一緒に、流込み成形時に取り囲まれている。
【0013】
ヘッド部分に含まれる少なくとも1つの導電性のコンタクト要素を、サプライ部分に好適に含まれるマイクロコントローラならびに電気的なエネルギ源に電気的に接続するために、少なくとも1つの電気的な導体構造を、ヘッド部分をサプライ部分に結合する位置固定プレートを通じてガイドすることが必要である。
【0014】
本解決手段による方法は、まず、プレート上面およびプレート下面を有する位置固定プレートの製造を規定している。この位置固定プレートは、半製品として流込み成形法により、硬化可能な封止用コンパウンドを使用しながら得られる。流込み成形プロセス中に、好適にはワイヤ部の形態の少なくとも1つの電気的な導体構造が、位置固定プレートの、形成されるプレート上面およびプレート下面に対して直交するように配向され、配置されるので、導体構造は、封止用コンパウンドの硬化後に、位置固定プレートに固定的に結合されており、位置固定プレートの両側でプレート上面およびプレート下面から突出する。
【0015】
ヘッド部分内に存在する導電性のコンタクト要素の個数に応じて、位置固定プレートを貫通する対応する個数の電気的な導体構造を設けることができる。このためには、位置固定プレートをプレート上面およびプレート下面に対して直交して貫通して突出する電気的な導体構造が、ヘッド部分内の導電性のコンタクト要素の空間的な配置に応じて位置固定プレート内に分配されて配置されている。流込み成形プロセスの範囲内で電気的な導体構造を埋め込む代わりに、位置固定プレートを電気的な導体構造とは別個に流込み成形プロセスにより製造することも同様に可能である。この場合、電気的な導体構造は、固定プレートを貫通している微細な孔内に後から挿入され、ヘッド部分と同一の材料から成る硬化時に導体構造を位置固定する接着剤、たとえばエポキシ液滴で濡らされる。
【0016】
サプライ部分を製造するためには、自体公知の方法で流込み成形型が使用される。流込み成形型は、サプライ部分の外側の形状および構造を決定する。流込み成形プロセスを準備するために、好適にはマイクロコントローラおよび/または電気的なエネルギ源の形態の少なくとも1つの電気的な構成要素を流込み成形型の内部に位置決めし、少なくとも1つの電気的な導体構造に接続する。本解決手段によれば、流込み成形型は、半製品として準備された位置固定プレートが流込み成形型内に組み込まれ、そのプレート下面が流込み成形型を画定する部分上面を形成するように、形成されている。その後に、プレート下面を越えて突出した少なくとも1つの電気的な導体構造と、少なくとも1つの電気的な構成要素とが、硬化可能な封止用コンパウンドによって、流込み成形時に取り囲まれる。
【0017】
流込み成形プロセスの範囲内で、封止用コンパウンドが、準備された流込み成形型に充填され、流込み成形型内に配置されている構成要素を取り囲む。流動性の封止用コンパウンドは、位置固定プレートの、流込み成形型の上面として働く下面を、モノリシックな材料接続結合部を形成しながら濡らす。
【0018】
封止用コンパウンドの硬化後に、サプライ部分は、このサプライ部分に固定的に付着しているかまたは固定的に結合されている位置固定プレートと一緒に流込み成形型から取り出される。
【0019】
ヘッド部分を製造するために、まず、少なくとも1つの導電性のコンタクト要素を設け、位置固定構造体のプレート上面を越えて突出した少なくとも1つの電気的な導体構造に接続することが必要である。
【0020】
通常、ヘッド部分には多数の導電性のコンタクト要素が設けられており、これらのコンタクト要素は、コンタクトリング要素の形態で形成されており、電気絶縁性の弾性変形可能なシールリングと同軸的かつ軸線方向に連続した並びで交互に配置され、軸線方向の接合力を加えながら相互に力結合式に接合される。ヘッド部分内に組み込まれている、コンタクトリング要素のこのように予荷重が加えられた積層アセンブリの好ましい構成は、以下の図を参照しながらより詳細に説明される。
【0021】
位置固定プレートのプレート上面を越えて突出した電気的な導体構造は、それぞれヘッド部分内に設けられた電気的なコンタクト要素に、好適にはろう接法、ボンディング法、ギャップ溶接法、摩擦溶接法により電気的に接触接続される。任意選択的には、ヘッド部分に、サプライ部分の対応する電気部品に接続されていてよい電気的な構造物、たとえばアンテナを導入することができる。さらに、電気的な導体構造に電気的に接続された少なくとも1つのコンタクト要素が、位置固定プレートのプレート上面に対する材料結合接続部が生じるように、硬化可能な封止用コンパウンドによって流込み成形時に取り囲まれる。ヘッド部分を製造するための流込み成形工程は、サプライ部分の製造前、製造中、または製造後に実施することができる。
【0022】
サプライ部品を製造するための流込み成形工程の場合と同様に、位置固定プレートのプレート上面とヘッド部分側の硬化可能な封止用コンパウンドとの間にも、流体密なモノリシックな材料結合接続部が形成され、これにより、ヘッド部分、位置固定プレートおよびサプライ部分の領域において硬化可能な封止用コンパウンドによって流込み成形時に取り囲まれる全ての電気的な構成要素が、あらゆる境界面なしに封止用コンパウンドによって完全に包括的に流体密に取り囲まれている。
【0023】
ヘッド部分、位置固定プレート、サプライ部分を製造するための封止用コンパウンドとして、生体適合性プラスチックまたはエポキシ樹脂が適している。
【0024】
本発明を以下に全般的な発明思想を限定することなしに、複数の実施例に基づき図面を参照しながら例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本解決手段により形成された医療用インプラントを示す図である。
図2】貫通した電気的な導体構造を備えた位置固定プレートを示す図である。
図3】サプライ部分を製造するための流込み成形型を示す図である。
図4】コンタクトリング要素から成るアセンブリを備えた電気的な導体構造の電気的な接続部を示す図である。
図5】ヘッド部分の封止用コンパウンドの製造を示す図である。
【0026】
発明を実施するための形態、産業上の利用可能性
図1は、本解決手段により製造された医療用インプラント1を示している。この医療用インプラント1は、ヘッド部分2と、サプライ部分3と、位置固定プレート4とを含んでおり、位置固定プレート4のプレート上面4’は、ヘッド部分2に、プレート下面4’’は、サプライユニット3に材料結合式に、つまりモノリシックに結合されている。
【0027】
ヘッド部分2は、一種の電気的な差込みコンタクトソケットとしての止まり穴状の切欠き5を有している。この切欠き5に沿って、連続した並びで、コンタクトリング要素の形態の電気的なコンタクト要素6が、相互間に位置する電気絶縁性のシールリング7によってそれぞれ軸線方向で離隔されて配置されている。コンタクトリング要素6とシールリング7との連続した並びには、軸線方向の接合力Fが加えられている。この接合力Fにより、コンタクトリング要素6とシールリング7とは、互いに流体密に閉じている。電気的な信号およびエネルギの供給のために、電気的なコンタクトリング要素6は、ワイヤ状に形成された電気的な導体構造8を介して、サプライ部分3内に導入されたマイクロコントローラ9ならびにこのマイクロコントローラ9に電気的に接続している電気的なエネルギ源10に接続されている。電気的なエネルギ源10はバッテリ、蓄電池またはバイオ燃料電池として、あるいは非接触の誘導エネルギ伝達のための誘導結合ループの形態で構成されていてよい。当然ながら、代替的または別の電気的な構成要素がサプライ部分1内に含まれていてよい。
【0028】
医療用インプラント1の全ての構成要素は、それぞれ一体的な生体適合性の封止用コンパウンド、好適にはプラスチック材料または樹脂材料、好適にはエポキシ樹脂材料により流込み成形時に取り囲まれている。
【0029】
図1に図示された医療用インプラント1を製造するために、図2によれば、位置固定プレート4が、流込み成形法の範囲内で、生体適合性の封止用コンパウンドから製造される。この場合、ワイヤ状の電気的な導体構造8は、位置固定プレート4を、この位置固定プレート4のプレート上面4’およびプレート下面4’’に対して直交するように貫通する。任意選択的には、シールリング7およびコンタクトリング要素6から成るヘッド部分側の連続した並びを定置に位置固定するために、位置固定プレート4内に、好適にはねじが導入可能であるねじ付ナットの形態の機械的な結合手段11が導入されている。これに関しては、図14に示したコンタクトリング要素/シールリング要素-アセンブリ14も参照される。このコンタクトリング要素/シールリング要素-アセンブリは、ねじ結合部11による位置固定プレート4での付加的な位置固定のための、対応する機械的な保持部(図示せず)を備えていてよい。
【0030】
別個の半製品として形成された位置固定プレート4は、この位置固定プレート4内に取り付けられたワイヤ状の電気的な導体構造8を備えていて、さらに、サプライ部分3の製造および形成のための流込み成形型12の部分上面として働く。まず、プレート下面4’’を越えて突出した電気的な導体構造8を、図示されたマイクロコントローラ9および電気的なエネルギ源10に電気的に接続することが必要である。電気的な接続は、流込み成形型内に、この流込み成形型を画定するために位置固定プレート4を挿入する前または挿入した後に行うことができる。
【0031】
図3は、流込み成形型12内に挿入された位置固定プレート4を示している。位置固定プレート4のプレート下面4’’は、流込み成形型12の内部を流体密に画定することができる。次いで、流込み成形型12に、生体適合性の硬化可能な封止用コンパウンドが完全に充填される。流込み成形型12への充填に使用される生体適合性の硬化可能な封止用コンパウンドは、位置固定プレート4を成す材料と同一であるので、位置固定プレート4のプレート下面4’’と封止用コンパウンドとの間で材料結合式のモノリシックな結合部が生じる。
【0032】
流込み成形工程に続いて、図4によれば、位置固定プレート4のプレート上面4’を越えて突出した電気的な導体構造8と、コンタクトリング要素6との電気的な接触接続が行われる。
【0033】
電気的なコンタクトリング要素6と、コンタクトリング要素6間に位置するシールリング7とから成る、図4に図示された軸線方向の積層アセンブリ14は、いわば、ロッド状に形成された組付けツール13を備えた半製品を成す。組付けツール13に沿って、軸線方向で交互の並びで、導電性のコンタクトリング要素6と、それぞれコンタクトリング要素6間に位置する電気絶縁性の、エラストマ材料から製造されたシールリング7とが配置されている。コンタクトリング要素6とシールリング7との交互の並びから構成される軸線方向の積層アセンブリ14の両側には、それぞれロッド状の組付けツール13に沿って、取付け手段15,16が取り付けられている。図4に図示した取付け手段16は、それ以外の部分ではロッド状に形成されている組付けツール13に一体的に結合された、プレート状もしくはディスク状に形成された機械的なストッパであり、この機械的なストッパに、軸線方向の積層アセンブリ14が片側で直接に接触する。このストッパに対して、軸線方向の積層アセンブリ14に沿って反対側に位置するように配置された取付け手段15は、ロッド状の組付けツール13に沿って軸線方向で可動に形成されており、さらにロック機構を有している。このロック機構は、取付け手段15をロッド状の組付けツール13に対して軸線方向で固定的に位置固定することができる。好適には、取付け手段15は、ナットまたは雌ねじを備えたプレートであり、雌ねじは、ロッド状の組付けツール13に沿って端部側に設けられた雄ねじ(図示せず)に係合する。
【0034】
コンタクトリング要素6とシールリング7との交互の並びを互いにまたは相互に力結合式に接合する、ロッド状の組付けツール13に対して軸線方向に配向された接合力を加えるために、組付けツール13を、取付け手段15に対して相対的に、たとえば組付けツール側の雄ねじを取付け手段15の雌ねじ内に完全にねじ込むことによって回転させることが必要であり、これにより、組付けツール13上に被せ嵌められているコンタクトリング要素6とシールリング7とに沿って作用する、規定されて予め設定可能な接合力が生じる。
【0035】
図4に図示された軸線方向の積層アセンブリ14は、別個に取り扱われるべき半製品を成す。この半製品は、電気的な導体構造8と電気的なコンタクトリング要素6との対応する電気的な接触接続後に、図5に示した流込み成形型17内に挿入される。流込み成形型17は、図3に示した流込み成形工程の場合と同様に、サプライ部分側の封止用コンパウンドに一体的に結合された位置固定プレート4によって部分的に画定される。つまり、位置固定プレート4のプレート上面4’が残りの流込み成形型17に流体密に結合する。流込み成形プロセスは、同一の形式で、硬化可能な封止用コンパウンドを使用しながら行われる。位置固定プレート4およびサプライ部分3の流込み成形体は、既にこの封止用コンパウンドから成っている。
【0036】
ヘッド部分側の封止用コンパウンドの硬化後に、医療用インプラント1を、流込み成形型17から取り出すことができ、組付けツール13を回転により取付け手段15から分離することができる。コンタクトリング要素6とシールリング7との間で軸線方向に作用している接合力は、ヘッド部分側の硬化した封止用コンパウンドにより支持され、保持される。
【0037】
上記で説明された方法に対して代替的には、同様に、図5に示した流込み成形法を、図3に示したサプライ部分3を製造する流込み成形法よりも時間的に前に、またはこの流込み成形法と同時に実施することも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 医療用インプラント
2 ヘッド部分
3 サプライ部分
4 位置固定プレート
4’ プレート上面
4’’ プレート下面
5 止まり穴状の切欠き
6 導電性のコンタクト要素、コンタクトリング要素
7 シールリング
8 電気的な導電構造
9 マイクロコントローラ
10 電気的なエネルギ源、バッテリ
11 機械的な結合手段
12 流込み成形型
13 組付けツール
14 積層アセンブリ
15,16 取付け手段
17 流込み成形型
図1
図2
図3
図4
図5