(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】煎茶製品を生産する方法
(51)【国際特許分類】
A23F 3/06 20060101AFI20240719BHJP
A23F 3/12 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A23F3/06 F
A23F3/06 M
A23F3/06 301
A23F3/06 A
A23F3/06 E
A23F3/12 A
A23F3/12 E
(21)【出願番号】P 2021555835
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2020055760
(87)【国際公開番号】W WO2020187577
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-01-13
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522414316
【氏名又は名称】エカテラ・リサーチ・アンド・デベロップメント・ユーケー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アジット・バスカル
(72)【発明者】
【氏名】デブジャニ・ゴッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァディヴェル・ゴヴィンダスワミ
(72)【発明者】
【氏名】スレーラムル・グッタパドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ディーパク・ラーマチャンドラ・マハサヴァデ
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-218550(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102669310(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0116721(KR,A)
【文献】特表2013-526876(JP,A)
【文献】特開2002-065227(JP,A)
【文献】特開平03-094639(JP,A)
【文献】国際公開第2017/076612(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
煎茶製品を調製する方法であって:
a.新鮮な茶葉を、嫌気性条件下で10℃から80℃の範囲内の温度で4時間から72時間、インキュベートする工程;
b.前記インキュベートされた葉を、
70℃から
150℃の範囲内の温度
で2分間から10分間、熱処理工程にかける工程;
c.前記葉を、前記茶葉の合計質量により8%未満の含水率に乾燥させて、煎茶を得る工程
を含み、
工程(b)が、平鍋焙煎又は蒸煮により実施され、
前記新鮮な茶葉が、チャノキ(Camelia sinensis)に由来する、方法。
【請求項2】
工程(b)の前に茶葉を粉砕する工程がない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)の前に茶葉を抽出する工程がない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(c)が、加熱乾燥、凍結乾燥、又は真空乾燥のいずれかにより実施される、請求項1から3のいずれか一項に記載の煎茶を調製する方法。
【請求項5】
工程(b)の前に、インキュベートされたドールを剪断工程にかける追加の工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記インキュベートされた葉が
、30秒間から15分間、剪断に晒される、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
剪断が、5000/秒から25000/秒の範囲内の剪断速度でもたらされる、請求項
5又は
6に記載の方法。
【請求項8】
剪断を生じさせるためにかける圧力が、0.1から10バールの範囲内である、請求項
5から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
剪断が、機械的デバイスを使用して発生される、請求項
5から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記嫌気性条件が、
i.前記新鮮な茶葉をコンテナに入れ、前記コンテナを閉じる工程;又は
ii.前記茶葉をコンテナに入れ、酸素を本質的に含まないガスを前記コンテナを通してパージし、前記コンテナを閉じるか、若しくは前記葉を気密なチャンバー中に入れるか若しくは真空下に置く工程
により達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記嫌気性条件が、前記新鮮な茶葉をコンテナに入れ、前記コンテナを閉じる工程により達成される、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)が、8時間を超えて20時間までの期間で実施される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)が、2から3分間実施される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
インキュベートされた茶葉が、工程(a)の後及び工程(b)の前に、20分を超えて好気性条件に曝露されない、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
インキュベートされた茶葉が、工程(a)の後及び工程(b)の前に、5分を超えて好気性条件に曝露されない、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煎茶(green leaf tea)を生産する方法に関する。特に、本発明は、より多くの可溶性固体及び独特の芳香特性を有する煎茶を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
茶は、世界で最も人気のある飲料の1つである。茶を飲むことは我々の精神をリフレッシュさせると信じられている。茶の中に存在するポリフェノールも、ヒトの健康のために良いと考えられている。例えば、紅茶、緑茶(green tea)、ウーロン茶、白茶等の種々の茶が市販されている。紅茶は、一般的に、枯らす、液浸させる(macerating)、発酵させる、及び焙煎する/乾燥する工程を含む方法により調製される。それに対して、緑茶の製造方法は、発酵工程を含まない。それ故、緑茶の特性プロファイルは紅茶と異なる。
【0003】
緑茶はその健康上の利益について知られている。緑茶のポリフェノールは発酵工程のために酸化されることがないので、紅茶より多くのカテキンを送達すると考えられる。歴史的に及び伝統的に、緑茶は主として中国、日本及び朝鮮で消費された。しかしながら、その健康上の利益が理由で、現在、インドのような国及び世界の他の地域でも人気のあるものとなりつつある。
【0004】
緑茶の芳香プロファイルを含む、感覚器を刺激する性質は、加工処理における差が理由で、紅茶とは全く異なる。緑茶製品から送達される芳香における花の香り(Floral notes)は、紅茶のものと比較にならない。
【0005】
増強された芳香を有する緑茶を開示している先行技術がある。
【0006】
WO2011/151237(ユニリーバ社、2011年)は、(a)新鮮な茶葉を取る工程、(b)摘まれた葉を、嫌気性条件下で10℃から40℃の範囲内の温度で4~36時間かけてインキュベートする工程;(c)インキュベートされた茶葉を、茶葉の合計質量により10%未満の含水率に乾燥して、煎茶を得る工程を含む、煎茶の調製方法を開示しているが;その開示では茶葉は工程(b)と(c)との間で60分を超える時間、好気性条件に曝露されることがなく、該方法の間に蒸煮(steaming)又は平鍋焙煎(pan firing)がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、上記の先行技術により開示された方法は、より高い花の芳香をもたらすように更に改善され得ることを見出した。
【0009】
それ故、増強された花の香りを有する緑茶製品を提供する必要がある。
【0010】
本発明者らは、上記の問題について研究している間に、驚くべきことに、嫌気性インキュベーションに続いて平鍋焙煎又は蒸煮を含む緑茶の製造方法がより高い花の香りを有する緑茶を生じることを見出した。更に驚いたことに、本発明者らは、本発明の方法が、より多くの可溶性の茶の固体をエンドキャップ(end cup)で送達する茶製品をもたらすことを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、第1の態様において、煎茶製品を調製する方法であって:
a.新鮮な茶葉を、嫌気性条件下で4℃から80℃の範囲内の温度で4から72時間かけてインキュベートする工程;
b.インキュベートされた葉を60℃から250℃の範囲内の温度で約15秒から60分の間、熱処理工程にかける工程;
c.インキュベートされた茶葉を、茶葉の合計質量により8%未満の含水率に乾燥して煎茶を得る工程
を含み、
工程(b)が平鍋焙煎又は蒸煮により実施される、方法が提供される。
【0012】
第2の態様において、本発明は、ゲラニオールのt-2-ヘキセナールに対する比が20を超える茶製品を提供する。
【0013】
これら及び他の態様、特徴及び利点は、当業者には、以下の詳細な説明の読み取りから明らかになるであろう。疑義を避けるために、本発明の1つの態様の任意の特徴は、発明の任意の他の態様で利用されてもよい。「を含む(comprising)」という語は、「を含む(including)」を意味することが意図されるが、必ずしも「からなる(consisting of)」又は「で構成される(composed of)」を意味しない。換言すれば、挙げられた工程又は選択肢は、網羅的である必要はない。下の記載で与えられる実施例は、本発明を明確にすることが意図されて、本発明をこれらの実施例それ自体に限定することは意図されないことが注意される。同様に、全てのパーセンテージは、特に断りのない限り重量/重量パーセンテージである。実施例及び比較例におけるもの又は明示的に指示された場合を除いて、材料の量又は反応の条件、材料の物理的性質及び/又は使用を指示する、本記載における全ての数は、「約」という語により修飾されていると理解されるべきである。「xからy」の形式で表現される数の範囲は、x及びyを含むと理解される。特定の特徴について、複数の好ましい範囲が、「xからy」の形式で記載されている場合、異なる終点も組み合わせる全ての範囲が企図されていると理解される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の目的についての「茶」は、変種のチャノキ(Camellia sinensis var. sinensis)及び/又はアッサムチャ(Camellia sinensis var. assamica)からの材料を意味する。特に好ましいものは、変種のアッサムチャ(var. assamica)からの材料であり、その理由は、これが変種のチャノキ(var. sinensis)よりも高いレベルの茶の活性を有するからである。
【0015】
本発明の目的のために「リーフティー」は、融合していない形態にある茶葉及び/又は幹を含有する茶製品、及び30重量%未満の含水率に乾燥されて、通常1から10重量%の範囲内の水分含有率を有する茶製品(即ち、「作られた茶」)を意味する。
【0016】
「新鮮な茶葉」とは、30重量%未満の水分含有率に乾燥されたことがなく、通常60から90%の範囲内の含水率を有する茶葉、芽及び/又は幹を指す。
【0017】
「発酵」とは、例えば葉を液浸することによる細胞の機械的破裂によりある種の内因性酵素と基質とが一緒にされたときに、茶が受ける酸化的及び加水分解的過程を指す。この過程の間に、葉の中にある無色のカテキンが、黄色及び橙色から暗褐色のポリフェノール性物質の複合混合物に変換される。
【0018】
「紅茶」は、実質的に発酵させた茶を指す。紅茶は緑茶と異なる特性を有する。紅茶は緑茶より渋味があり、苦味が少ない。紅茶の液体の赤みも緑茶の赤みより有意に強い。紅茶はより高いレベルのテアフラビンも含有する。
【0019】
「緑茶」は、実質的に発酵されていない茶を指す。緑茶は、紅茶と異なる特性を有する。緑茶の液体の色は、紅茶と異なって明るい。緑茶もカテキンに富み、テアフラビンの量は少ないか又はない。
【0020】
本発明は、煎茶製品を調製する方法であって:
a.新鮮な茶葉を、嫌気性条件下で4℃から80℃の範囲内の温度で4から72時間かけてインキュベートする工程;
b.インキュベートされた葉を60℃から250℃の範囲内の温度で約15秒から60分の間、熱処理工程にかける工程;及び
c.葉を、茶葉の合計質量により8%未満の含水率に乾燥して煎茶を得る工程
を含み、
工程(b)が平鍋焙煎又は蒸煮により実施される、方法を提供する。
【0021】
工程(a):
工程(a)は、新鮮な茶葉を、嫌気性条件下で4℃から80℃の範囲内の温度で4から72時間かけてインキュベートすることを含む。本明細書において使用する用語「嫌気性条件」は、葉と接触しているガス相が、3体積%未満、好ましくは2体積%未満、及びより好ましくは1体積%未満の酸素を有することを意味する。葉と接触しているガス相が実質的に酸素を含まないことが特に好ましい。
【0022】
新鮮な葉は、一芯二葉、一芯三葉、又は一芯四葉以降から選択され得る。新鮮な茶葉の摘み取りとインキュベーションの間の持続時間は好ましくは24時間未満、より好ましくは12時間未満、及び最も好ましくは8時間未満である。しかしながら、新鮮な茶葉の摘み取りとインキュベーションとの間の持続時間は、茶葉が15℃未満の温度で貯蔵されるならば、24時間を超えることが可能である。
【0023】
嫌気性条件:
嫌気性条件は、任意選択で:
i.新鮮な茶葉をコンテナに入れ、コンテナを閉じる工程、或いは;
ii.茶葉をコンテナに入れ、酸素を本質的に含まないガスを、コンテナを通してパージし、コンテナを閉じるか、又は葉を気密なチャンバー中に入れるか若しくは真空下に置く工程
により達成される。
【0024】
好ましくは、嫌気性条件は、新鮮な茶葉をコンテナに入れ、コンテナを閉じるか、又は茶葉をコンテナに入れ、酸素を本質的に含まないガスを、コンテナを通してパージし、コンテナを閉じる工程により達成される。
【0025】
新鮮な葉をコンテナに入れ、コンテナを閉じる工程により、ガス相中の酸素濃度は経時的に減少し、コンテナを閉じられた状態にある程度の長さの時間保った後に嫌気性条件が達成される。コンテナは、好ましくは3時間を超える、より好ましくは4時間を超える、及び最も好ましくは6時間を超える、又は更に8時間を超える間持続して閉じておかれる。
【0026】
或いは、及びより好ましくは、嫌気性条件は、葉をコンテナに入れ、酸素を本質的に含まないガスをコンテナを通してパージし、コンテナを閉じる工程により達成される。酸素以外のガスは、好ましくは窒素又は二酸化炭素、最も好ましくは窒素である。
【0027】
コンテナが上記の工程i又はiiで閉じられたら、コンテナ中の圧力に関して特定の制限はない。閉じられたコンテナの内側の圧力は、好ましくは、1.33×102Paから1.33×105Pa、より好ましくは1.33×103Paから1.06×105Pa及び最も好ましくは2.67×103Pa mmHgである。
【0028】
工程中における葉からの湿気の損失は可能な限り低いことが好ましい。このことは、この工程を閉じた条件下で実施することにより有利に及び簡便に達成される。インキュベートされた茶葉は、この工程の後、好ましくは70から75重量%の範囲内の水を含む。
【0029】
インキュベーション温度:
工程(a)は、4℃から80℃の範囲内、好ましくは4℃から65℃の範囲内、より好ましくは10℃から50℃の範囲内の温度である。
【0030】
嫌気性インキュベーションの持続時間:
インキュベーション時間は、4から72時間、好ましくは4から50時間、より好ましくは6から30時間及び最も好ましくは8から20時間の範囲内である。
【0031】
好ましくは、インキュベートされた茶葉は、工程(a)の後及び工程(b)の前に、60分、好ましくは50分、より好ましくは30分、更に好ましくは20分、更により好ましくは10分及び最も好ましくは5分を超えて好気性条件に曝露されない。
【0032】
工程(b):
この工程において、インキュベートされた葉を60℃から250℃の範囲内の温度で約15秒から60分の間、熱処理工程にかける。
【0033】
熱処理の好ましい温度は、70℃から150℃、より好ましくは80℃から150℃、更に好ましくは90℃から150℃、更により好ましくは100℃から150℃、及び最も好ましくは120℃から150℃の範囲内である。
【0034】
熱処理工程の好ましい時間は、30秒から50分、より好ましくは1から30分、更に好ましくは2から15分、更により好ましくは2から10分、及びより好ましくは3から8分の範囲内である。
【0035】
熱処理工程は平鍋焙煎及び/又は蒸煮により実施される。
【0036】
この工程の後、茶葉の含水率は、好ましくは60%から85重量%の範囲内である。好ましくは、蒸煮方法のために、含水率は、70%から85重量%の範囲内であるが、それに対して平鍋焙煎のためには、含水率は好ましくは65%から75重量%の範囲内である。
【0037】
好ましくは、工程(b)の前に茶葉を粉砕する工程はない。
【0038】
更に好ましくは、工程(b)の前に茶葉を抽出する工程はない。
【0039】
工程(c):
熱処理工程の後、葉は乾燥される。乾燥後の葉の含水率は、葉の質量により、8%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは6%未満、及び最も好ましくは5%未満である。
【0040】
乾燥工程は、好ましくは、加熱乾燥、凍結乾燥、又は真空乾燥により実施される。
【0041】
加熱乾燥は、好ましくは、葉を空気と接触させることにより実施され;空気の温度は、好ましくは80から160℃、より好ましくは90から150℃、最も好ましくは100から130℃である。加熱乾燥は、任意の従来の乾燥機で実施されてもよい。しかしながら、加熱乾燥のためには、流動床乾燥機又はトレー乾燥機が特に好ましい。葉は、また、真空乾燥により乾燥され得る。真空乾燥中に、茶葉は、好ましくは、66.7から6.67×104Pa、より好ましくは6.67×103から3.9×104Pa、及び最も好ましくは1.3×104から2.67×104Paの絶対圧にかけられる。真空乾燥は、好ましくは20から70℃、より好ましくは25から60℃、及び最も好ましくは30から55℃の範囲内の温度で実施される。真空乾燥は、任意の適当な真空乾燥機で、好ましくは回転真空乾燥機で実施されてもよい。
【0042】
任意選択の工程:
工程(b)の後、茶葉は、好ましくは、粉砕する工程(サイズ減少)にかけられてドール(dhool)を生じる。
【0043】
サイズ減少のこの工程は、好ましくは、破砕、引裂き、及びカーリング(茶の加工処理の技術分野においてCTCとして知られている)により実施される。1回又は複数のCTC工程が実施されてもよい。この工程では、インキュベートされた葉は、裂かれて葉中に存在する酵素を放出する。
【0044】
或いは、インキュベーション工程の後、インキュベートされた茶葉は、一派何的なローラーで丸められるか又は回転羽で、又はそれらの組合せで粉砕される。これらの工程中に、茶葉中に存在する前駆体が酵素に適するようになる。
【0045】
任意選択で、粉砕されたドールを、剪断工程にかける追加の工程がある。好ましくは、ドールは、30秒から15分の間ドールを5000/秒から25000/秒の範囲内の剪断速度で機器を通すことにより剪断にかけられる。
【0046】
用語「剪断」とは、好ましくは、物質/材料の構造に歪みを生じさせる行為を意味する。本明細書で言及される剪断は、好ましくは、粉砕されたドールを制御された様式で損傷させることを意味して、剪断を生じさせる機器中におけるドールの滞留時間は、CTC機械中における液浸と比較して相対的に長い。力の適用方向と応力の移動とは、好ましくは互いに垂直になる。
【0047】
好ましくは、剪断は、ドールを機器に通すことにより生じる。このことは、好ましくは、機械的デバイスを使用することにより行われる。好ましい機械的デバイスは、スクリュープレス、すきに似た剪断ミキサー等である。
【0048】
ドールは、好ましくは、30秒から5分及び最も好ましくは30秒から3分の間、剪断に晒される。
【0049】
上記の工程の剪断速度は、好ましくは、10000/秒から15000/秒の範囲内である。
【0050】
剪断は、材料が、規定された深さ及び直径を有するチャンネル中で所与の速度で変形する速度である。本開示の場合には、粉砕されたドール(発酵前又は発酵後のいずれかの段階で)が、シャフトの直径Dcm及びチャンネル深さHcmのデバイスで、Nrpmの剪断にかけられるならば、その場合、剪断速度は:
【数1】
である。
【0051】
上記の方程式が適用可能な装置について、材料が通されるチャンネルの内側に回転シャフトがある。このシャフトの回転が、材料を機器の一方の端(導入口)から他方の端(排出口)へ運ぶ。この輸送中に、材料は、チャンネルの壁及びシャフトに対して剪断を受ける。シャフトが好ましくは伸長部分のようなスクリューを有している場合、それはスクリュープレスとして知られている。チャンネル深さは、シャフトからチャンネルの壁までの長手方向の距離を意味する。
【0052】
例えば、直径が12.7cmであり、0.1cmのチャンネル深さを有する25rpmのスクリュープレスについて、上記の方程式を使用して計算される剪断速度は、およそ10000/秒である。
【0053】
好ましくは、該方法のために適用される圧力は、104から106Pa、より好ましくは104から5×105Pa、更に好ましくは104から2×105Pa及び最も好ましくは104から5×104Paの範囲内である。
【0054】
好ましくは、前記機器中におけるドールの充填パーセンテージは、制御するパラメーターとしても考慮される。「充填パーセンテージ」という語は、好ましくは、ドールにより満たされる機器の利用可能な体積(即ち、容量)のパーセンテージを意味する。好ましくは前記機器におけるドールの充填パーセンテージは、35%から80%、より好ましくは40%から80%、更に好ましくは50%から80%、及び最も好ましくは60%から80%の範囲内である。
【0055】
本発明は、上で開示された本発明の方法により得られた/得ることができる緑茶葉製品2部と水50部とを70℃から100℃の範囲内の温度で混合することにより調製され、ゲラニオールのt-2-ヘキセナールに対する比は20を超える茶の浸出液も提供する。好ましくはゲラニオールのt-2-ヘキセナールに対する比は22を超え、より好ましくは25を超え、及び最も好ましくは28を超える。
【実施例】
【0056】
異なる茶製品の調製
全ての実験は、トルコにある茶園から得た茶葉を使用してトルコで実施した。
【0057】
(実施例A)
新鮮な茶葉を摘んだ。その後、摘まれた茶葉を、流動床乾燥機(FBD)中120℃で約15分間乾燥した。次に、乾燥された葉を、回転羽を使用して粉砕した。
【0058】
(実施例B)
新鮮な茶葉を摘んだ。その後、摘まれた茶葉を、密閉されたコンテナ中に葉を入れることにより嫌気的に24時間25℃でインキュベートした。その後、摘まれた茶葉を、流動床乾燥機(FBD)中120℃で約15分間乾燥した。次に、乾燥された葉を、回転羽を使用して粉砕した。
【0059】
(実施例C)
新鮮な茶葉を摘んだ。その後、摘まれた茶葉を、水蒸気を通すことにより120℃の温度で約3分間蒸煮にかけて酵素を失活させた。次に、蒸された葉を、流動床乾燥機(FBD)中120℃で約15分間乾燥した。次に、乾燥された葉を、回転羽を使用して粉砕した。
【0060】
(実施例1)
新鮮な茶葉を摘んだ。その後、摘まれた茶葉を、密閉されたコンテナ中に葉を入れることにより嫌気的に24時間25℃でインキュベートした。その後、インキュベートされた葉を、水蒸気を通すことにより120℃の温度で約3分間蒸煮にかけて酵素を失活させた。次に、蒸された葉を、流動床乾燥機(FBD)中120℃で約15分間乾燥した。次に、乾燥された葉を、回転羽を使用して粉砕した。
【0061】
以下のプロトコルを使用することにより、記載されたように、異なる茶製品を使用して、茶の浸出液を調製した。
【0062】
2gの調製された茶葉を200mLの脱イオンされた熱湯(約90℃)中で2分間浸出させ、次にそれを、ストレーナーを使用して濾過することにより茶の浸出液を調製した。
【0063】
上記の調製された浸出液を、下に記載されたプロトコルを使用することにより、可溶性固体の含有率を求めるために使用した。
【0064】
浸出液の可溶性固体の決定:
浸出液(各100mL)を予め秤量されたアルミニウムの平鍋に2連で取って入れ蒸発乾固させた。次に、それを加熱乾燥機中に5時間保った。平鍋を出して、真空デシケーター中で室温に冷却してから、質量測定した。可溶性固体をプレートの質量で区別することにより決定した。
【0065】
浸出液の芳香プロファイルの決定:
芳香プロファイルを決定するために、2gの上記の調製された茶葉を50mLの脱イオン水(約90℃)中で2分間浸出させて、茶の浸出液を調製し、次にそれを揮発性物質の測定のために、ストレーナーを使用して濾過した。
【0066】
ガスクロマトグラフィー(GC)を使用して、上で得られた芳香凝縮物の芳香プロファイルの特性を明らかにした。
【0067】
上で調製された浸出液の5mL(各)を、分析するために、4グラムのNaClを含有する蓋をしたGCバイアル中に取った。試料を予めインキュベート(10分)してから70℃に20分間保った後、SPME繊維を使用して、ヘッドスペース中の芳香を測定した。ガスクロマトグラフィー及びSPME(固体相マイクロ抽出)による芳香抽出のための条件を下に示す。
【0068】
GC-FID条件:
芳香凝縮物からの揮発性化合物を、FID検出器を備えたガスクロマトグラフ(Perkin Elmer社のauto System XL)を使用して分析した。分析のために、CP-ワックス52CB(30m×0.25mm、フィルム厚さ0.15μg)カラムを使用した。担体ガスとしてヘリウムを1.0mL/分の一定流速で使用して、1:5の分裂比で、導入部を作動させた。導入部を230℃に維持した。検出器温度は250℃で維持した。オーブンの温度は実験中45℃に設定した。
【0069】
SPME条件:
芳香凝縮物から放出された揮発性化合物の分析は、SPMEを使用して実施した。特に、50/30μgポリ(ジビニルベンゼン)(DVB)/carboxen(CAR)/ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)(Supelco社、Bellefonte、ペンシルベニア州)でコーティングされた2cmの安定なflex繊維を、自動化されたSPMEシステム(Combi PALシステム)で使用した。
【0070】
装置の明細及び実験条件:
SPME繊維: Grey繊維(PDMS/DVB/CAR)
予備インキュベーション時間: 10:00分
インキュベーション温度: 70℃
注射針挿入: 10mm
繊維挿入: 20mm
抽出時間: 20:00分
脱着: GC導入部入口1
注入時間: 5:00分
繊維条件後時間: 15分
GC作動時間: 50分
冷却時間: 10分
繊維条件付け温度: 230℃
【0071】
ピーク面積は、個々の揮発性化合物について、GCクロマトグラムから計算する。標準濃度曲線を各揮発性物質について作成する。これらの標準曲線を、それぞれの揮発性物質について、ピーク面積を濃度に変換するために使用する。
【0072】
これらの実験の結果を下のTable 1(表1)にまとめる:
【0073】
【0074】
上記の表から、実施例1(本発明の範囲内)が、実施例Aから実施例C(本発明の範囲外)と比較されたときに、より高い花の芳香を有する緑茶を提供することは明らかである。本発明は、可溶性固体の送達がより多い緑茶製品も提供することも注目される。