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特許7523475検査室機器における不具合を迅速に検出するための、コンピュータ化された方法及び検査室機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】検査室機器における不具合を迅速に検出するための、コンピュータ化された方法及び検査室機器
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20240719BHJP
   G16H 40/40 20180101ALI20240719BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G16H40/40
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021573747
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2020065479
(87)【国際公開番号】W WO2020249459
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】19180020.0
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】クラウゼ,フリーデマン
(72)【発明者】
【氏名】ラウベンダー,リュディガー
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-524049(JP,A)
【文献】特開2019-023771(JP,A)
【文献】特開2017-009362(JP,A)
【文献】米国特許第05937364(US,A)
【文献】米国特許第05633166(US,A)
【文献】特表2014-527214(JP,A)
【文献】特表2012-527690(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0097238(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
G16H 40/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査室機器における不具合を判定するための、コンピュータにより実行される方法であって、前記方法は、ルール生成ステップを含み、前記ルール生成ステップは、
a)前記機器により処理される品質管理(QC)サンプルの1つ又はそれ以上のQCレベル(J)に関する、誤った拒否の所望の確率(Pfr)と、所望のエラー検出率Eと、を受信することと、
b)ランの数(R)を1に設定することと、
c)エラー検出率(E^)を、少なくとも部分的にRに基づいて計算することと、
d)E^がE未満であるかを判定することであって、
もしそうであれば、
Rを1つ増やして、ステップc)からd)を繰り返し、
もしそうでなければ、
前記検査室機器における不具合を判定するためのルールを、少なくとも部分的にRに基づいて定義する、
E^がE未満であるかを判定することと、を含み、
前記方法は、ルール適用ステップをさらに含み、前記ルール適用ステップは、
e)前記機器により生成されたQCサンプルの少なくともRのランから算出された、標準化されたQC結果を受信又は収集することと、
f)ステップd)において定義された前記ルールを、前記標準化されたQC結果に適用することと、
g)前記標準化されたQC結果が前記ルールに適合するのであれば、前記機器における不具合を判定することと、
を含む、コンピュータにより実行される方法。
【請求項2】
ステップd)において定義された前記ルールは、二乗された距離(d)との比較を含み、ここで、d、中心カイ二乗分布
=C-1(1-Pfr;DF)、ここで、DF=J×Rである、から、又は、
テリングのT二乗分布から算出され、
ステップf)は、J数のQCレベルと、R数の最新のランと、に対するマハラノビス距離(M)を計算することを含み、
ステップf)における前記ルールを適用することは、Mがd以上であるかを判定することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マハラノビス距離(M)は、式
【数1】
により与えられ、ここで、Zjrは、j数のQCレベル及びr数のランからの前記標準化されたQC結果であり、
jr、式
【数2】
により与えられ、ここで、Xjrは、j数のQCレベル及びr数のランからのQC試験結果であり、
j数のQCレベルに関して、μ、制御された中心傾向であり、σ、制御された分散度であり、ここで、μとσとは、機器妥当性確認試験結果から算出される、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
は、システマチックエラー検出の所望の確率(Psed)と、限界システマチックエラー(ΔSECrit)と、に関し、ここで、ΔSECritは、ΔSECrit=σ-z1-αにより、z1-αを、1-αと評価する標準正規分布の変位値として用いて定義されてよく、σは、σ=(TEa-|b|)/sにより、bを、バイアスとして、及び、sを、すべてのQCレベルにわたって集められた標準偏差として用いて定義されてよく、
E^は、システマチックエラー検出(P^Sed)を含み、ステップc)において計算することは、P^Sedを、非心カイ二乗分布H(d;DF,NCP)の累積分布関数から算出することを含み、ここで、NCP=J×R×ΔSECrit であり、
ステップd)は、P^SedがPSed未満であるかを判定することを含む、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
は、ランダムエラー検出の所望の確率(PRed)と、限界ランダムエラー(ΔRECrit)と、に関し、ここで、ΔRECritは、ΔRECrit=σ/z1-αにより、z1-αを、1-αと評価する標準正規分布の変位値として用いて定義されてよく、σは、σ=(TEa-|b|)/sにより、bを、バイアスとして、及び、sを、すべてのQCレベルにわたって集められた標準偏差として用いて定義されてよく、
E^は、ランダムエラー検出(P^Red)を含み、ステップc)において計算することは、P^Redを、ガンマ分布G(d;SH,SC)の累積分布関数から算出すること含み、ここで、SH=(J×R)/2であり、及び、SC=2×ΔRECrit であり、
ステップd)は、P^RedがPRed未満であるかを判定することを含む、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)は、最大数のラン(RMax)を受信することをさらに含み、
ステップd)は、R>RMaxであるかを判定することであって、もしそうであれば、ルールがみつからないことを判定する、R>RMaxであるかを判定することをさらに含む、
求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
各ランは、2つ又はそれ以上100未満の、異なる診断試験(I)からデータを生成し、
ステップg)は、補正関数を、前記誤った拒否の所望の確率(Pfr)に適用することをさらに含み、
前記補正関数は
fr/I
又は
1-(1-Pfr1/I
である、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップb)からg)は、各診断試験に対して個別に行われ、前記試験のいずれに関する標準化されたQC結果が、対応するルールに適合しなければ、前記機器において不具合があると判定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップg)における不具合を判定することに応えて、
h)測定プロセスを中断する、及び/又は、少なくとも、前記R又はR+1数の最新のQCラン後に生成された結果をブロックすることをさらに含む、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
器における不具合を判定するための検査室機器(200)であって、前記機器は、
ルール生成器ユニット(210)と、
ルール適用ユニット(220)と、
少なくとも1つのQCレベル(J)に関する結果と、2つ又はそれ以上の異なる試験(I)に関する結果と、を生成するための試験結果生成ユニット(230)と、
を含み、前記機器は、
a)前記ルール生成器ユニット(210)により、品質管理(QC)サンプルの1つ又はそれ以上のQCレベル(J)に関する、誤った拒否の所望の確率(Pfr)と、所望のエラー検出率Eと、を受信することと、
b)前記ルール生成器ユニット(210)により、ランの数(R)を1に設定することと、
c)前記ルール生成器ユニット(210)により、エラー検出率(E^)を、少なくともRに基づいて計算することと、
d)前記ルール生成器ユニット(210)により、E^がE未満であるかを判定することであって、
もしそうであれば、
Rを1つ増やして、ステップc)からd)を繰り返し、
もしそうでなければ、
前記検査室機器における不具合を判定するためのルールを、少なくとも部分的にRに基づいて定義する、
E^がE未満であるかを判定することと、
e)前記ルール適用ユニット(220)により、前記試験結果生成ユニット(230)により生成されたQCサンプルの少なくともRのランから算出された、標準化されたQC結果を収集することと、
f)前記ルール適用ユニット(220)により、ステップd)において定義された前記ルールを、ステップe)において収集された、前記標準化されたQC結果に適用することと、
g)前記ルール適用ユニット(220)により、前記標準化されたQC結果が前記ルールに適合するのであれば、前記機器における不具合を判定することと、
を行うための手段を含む、検査室機器(200)。
【請求項11】
ディスプレイ(240)をさらに含み、
前記機器において不具合が存在することを、前記ルール適用ユニット(220)が判定すると、前記ディスプレイ(240)に、前記機器において不具合が存在することを表示させる、
請求項10に記載の検査室機器。
【請求項12】
各ランは、2つ又はそれ以上100未満の、異なる診断試験(I)からデータを生成し、
ステップg)は、補正関数を、前記誤った拒否の所望の確率(Pfr)に適用することをさらに含み、
前記補正関数は
fr/I
又は
1-(1-Pfr1/I、を含み、
前記ステップb)からg)は、各診断試験に対して個別に行われ、前記試験のいずれに関する前記標準化されたQC結果が、対応するルールに適合しなければ、前記機器において不具合があると判定される、
請求項11に記載の検査室機器。
【請求項13】
前記ディスプレイ(240)は、前記異なる診断試験の内の、前記ルールに適合しない前記標準化されたQC結果が関連するものを表示する、請求項12に記載の検査室機器。
【請求項14】
前記ディスプレイ(240)は、検出された前記不具合が、システマチックエラー又はランダムエラーであるかを表示する、請求項11から請求項13のいずれか一項に記載の検査室機器。
【請求項15】
ステップg)における不具合を判定することに応えて、
h)測定プロセスを中断する、及び/又は、前記R又はR+1数の最新のQCラン後に生成された結果をブロックするための手段をさらに含む、
請求項10から請求項14のいずれか一項に記載の検査室機器。
【請求項16】
コンピュータにより実行されると、前記コンピュータに、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法のステップを実行させる命令を含むコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査室機器における不具合を迅速に検出するための方法及び検査室機器に関する。
【背景技術】
【0002】
品質管理(quality control又はQC)ルールの選択及び実施は、患者のサンプルから正しい試験結果をリリースすることを確かにするための、検査室における重要なステップである。正しくない結果が送り出されることを防止し、同様に、再処理されなければならないサンプルの数を制限するために、不具合をできるだけ速やかに特定することが、さらに重要である。
【0003】
今日の検査室機器は、各種の異なるタイプの診断試験を提示し得る。これらは、数百もの診断試験にも達し得る(各診断試験は、特定の物質を試験し得る)。患者のサンプルに対する有効な試験結果を保証するため、品質管理(QC)サンプルが各試験に対して使用され、モニタされ得る。各試験に対して、統計的品質管理ルールを選択して実施することはしばしば、品質管理サンプルをモニタする前提条件となる。
【0004】
検査室機器を評価するための統計的手順を設計することは、エラー検出の要件(例えば、エラー検出の確率(Ped))、及び/又は、誤った拒否の確率(Pfr)などの、誤った拒否についての要件を含む場合がある。検査室機器の「制御不能」状態をもたらす不具合がその機器にあると、その不具合を高い確率で検出することに目が向けられる(従来は、Ped又は90%の「検出力」に通常目が向けられている)。しかし、機器が「制御され」ていれば、(5%又は1%のPfrに通常目が向けられる)結果に基づいて手順が不具合を特定する確率は低くなるはずである。
【0005】
従来、検査室機器における不具合を特定するために、「ウエストガードルール(Westgard rules)」が使用されることがある。ウエストガードルールは、制御不能な状況を特定する前に、不必要な数のランを必要とする場合があり、したがって、結果が信頼できるものとみなされ得るまでに、不必要な待ち時間をもたらす場合があり、患者に対して、余分なコストと、より長い待ち時間と、をもたらす場合がある。さらに、ウエストガードルールは、各種の代替的なルールの組み合わせを、明確な選択プロセスなく提供し、したがって、その実施が複雑なものとなり、及び/又は、トレーニングに多大な努力を必要とする。ウエストガードルールは、その複雑さゆえに、時として、正しく実施されない傾向がある。ウエストガードルールは、さらに、複数の診断試験を含むサンプルに適合されない。
【発明の概要】
【0006】
特に、機器における不具合を判定するための、コンピュータにより実行される方法により、従来技術における欠点が解消される。この方法は、
a)機器により処理される品質管理(QC)サンプルの1つ又はそれ以上のQCレベル(J)に関する、誤った拒否の所望の確率(Pfr)と、エラー検出の所望の確率(Ped)などの、所望のエラー検出量(E)と、を受信することと、
b)QCランの数(R)を1に設定することと、
c)エラー検出量(E^)を、少なくとも部分的にRに基づいて計算することと、
d)E^がE未満であるかを判定することであって、
もしそうであれば、
Rを1つ増やして、ステップc)からd)を繰り返し、
もしそうでなければ、
検査室機器における不具合を判定するためのルールを、少なくとも部分的にRに基づいて定義する、
E^がE未満であるかを判定することと、
e)標準化されたQC結果を、好ましくは、機器により生成されたQCサンプルの少なくともRのランから受信又は収集することと、
f)ステップd)において定義されたルールを、標準化されたQC結果に適用することと、
g)標準化されたQC結果がルールに適合するのであれば、機器における不具合を判定することと、
を含む。
【0007】
これらの利点は、検査室試験機器における不具合の、簡略化された、迅速な検出を含む。これらの利点は、検査室機器における不具合を、より少ないランですばやく特定する統計的ルールの、改善された設計をさらに含む。不具合を迅速に特定することは、正しくない結果が臨床医に送られることを防止することにより、患者の安全を改善し、緊急を要するサンプルに対する早期の確実性を可能にする。さらに、この設計はシンプルであり、より容易に自動化され得、使用を促進し、安全性を向上させる。本発明は、複数の診断試験を行う機器にさらに適している。
【0008】
ステップe)において受信又は収集される、標準化されたQC結果は、標準化されていないQC試験結果から生成されてよい。これらのQC試験結果は、検査室機器により、患者のサンプルと共に測定されてよい。
【0009】
1つの実施形態では、ステップd)において定義されたルールは、二乗された距離(d)との比較を含み、ここで、dは、好ましくは、中心カイ二乗分布
=C-1(1-Pfr;DF)、ここで、DF=J×Rである、から、又は、
代替的に、ホテリングのT二乗分布から算出され、
ステップf)は、好ましくは、J数のQCレベルと、好ましくはR数の最新のランと、に対するマハラノビス距離(M)を計算することを含み、
ステップf)におけるルールを適用することは、Mがd以上であるかを判定することを含む。
【0010】
マハラノビス距離(M)は、式
【数1】
により算出され、ここで、Zjrは、j数のQCレベル及びr数のランからの標準化されたQC結果であり、
jrは、好ましくは、式
【数2】
により与えられ、ここで、Xjrは、j数のQCレベル及びr数のランからのQC試験結果であり、
j数のQCレベルに関して、μは、平均値又は中央値などの、制御された中心傾向であり、σは、標準偏差又は四分位範囲などの、制御された分散度であり、ここで、μとσとは、好ましくは、機器妥当性確認試験結果から算出される。
【0011】
これらの利点は、検査室機器における不具合を、少ないランにて検出するよう安全に自動化することができる、単一のシンプルなルールを含む。
【0012】
標準化されていないQC試験結果は、標準化されていないQC試験結果から、制御された中心傾向/バイアス(σ)を減算し、その減算の結果を、j数の各QCレベルに対する、制御された分散/標準偏差(μ)で除算することにより標準化されてよい。
【0013】
制御されたバイアスと、制御された変動性と、は、各QCレベルに対する妥当性確認試験結果から計算され得る。これらの妥当性確認QC結果は続いて、制御されたものとみなされ得る(つまり、制御不能な不具合の影響なく測定され得る)。妥当性確認QC結果は、制御されたバイアス(例えば、QC試験結果の平均値)と、制御された標準偏差(例えば、妥当性確認QC試験結果の標準偏差)と、を算出することに使用された、少なくとも20、又は、少なくとも10の、初期の妥当性確認QC結果であってよい。妥当性確認QC結果、同様に、QC試験結果は、QCレベル及びランにわたる相関が低い又はゼロである、多変量の正規分布を有し得る。
【0014】
1つの実施形態では、Eは、システマチックエラー検出の所望の確率(Psed)と、限界システマチックエラー(ΔSECrit)と、に関し、ここで、ΔSECritは、ΔSECrit=σ-z1-αにより、z1-αを、1-αと評価する標準正規分布の変位値として用いて定義されてよく、σは、σ=(TEa-|b|)/sにより定義されてよく、ここで、bは、バイアスであり、及び、sは、すべてのQCレベルにわたって集められた不正確さであり、TEaは、許容可能な合計エラーであり、
E^は、システマチックエラー検出(P^Sed)を含み、ステップc)において計算することは、P^Sedを、非心カイ二乗分布H(d;DF,NCP)の累積分布関数から算出することを含み、ここで、NCP=J×R×ΔSECrit であり、
ステップd)は、P^SedがPSed未満であるかを判定することを含む。
【0015】
これらの利点は、試験結果におけるシフトをもたらすであろう、検査室機器における不具合を効率よく特定し得る方法を含む。
【0016】
限界システマチックエラー(ΔSECrit)は、ΔSECrit=σ-z1-αによって、z1-αを、1-αと評価する(z1-αの変位値は、α=5%に対して約1.65である)標準正規分布の変位値として用いて定義されてよい。シグマメトリックσは、QC測定プロセスが制御されている際の、許容可能な合計エラーTEaの上限から離れている標準偏差の数を規定し得る。シグマメトリックは、σ=(TEa-|b|)/sにより、bをバイアスとして、及び、sを、すべてのQCレベルにわたって集められた標準偏差として用いて、正式に定義され得る。
【0017】
1つの実施形態では、Eは、ランダムエラー検出の所望の確率(PRed)と、限界ランダムエラー(ΔRECrit)と、に関し、ここで、ΔRECritは、ΔRECrit=σ/z1-αにより、z1-αを、1-αと評価する標準正規分布の変位値として用いて定義されてよく、σは、σ=(TEa-|b|)/sにより、bを、バイアスとして、及び、sを、すべてのQCレベルにわたって集められた不正確さとして用いて定義されてよく、
E^は、ランダムエラー検出(P^Red)を含み、ステップc)において計算することは、P^Redを、ガンマ分布G(d;SH,SC)の累積分布関数から算出することを含み、ここで、SH=(J×R)/2であり、及び、SC=2×ΔRECrit であり、
ステップd)は、P^RedがPRed未満であるかを判定することを含む。
【0018】
これらの利点は、試験結果がさらに不正確になるであろう、検査室機器における不具合を効率よく特定し得る方法を含む。
【0019】
は、ランダムエラー検出の所望の確率(PRed)と、システマチックエラー検出の所望の確率(Psed)と、の双方に関連し、(ステップd)において)判定することは、P^SedがPSed未満であるか、と、P^RedがPRed未満であるか、と、の双方を、又は、それらの条件の少なくとも1つが満たされるか、判定することを含んでよい。
【0020】
1つの実施形態では、ステップa)は、最大数のラン(RMax)を受信することをさらに含み、
ステップd)は、R>RMaxであるかを判定することであって、もしそうであれば、ルールがみつからないことを判定する、判定することをさらに含み、
Maxは、好ましくは、J=2に対して4であり、RMaxは、好ましくは、J=3に対して2である。
【0021】
1つの実施形態では、各ランは、1つの、2つ又はそれ以上の、好ましくは、100未満の、異なる診断試験(I)からデータを生成し、
ステップg)は、補正関数を、誤った拒否の所望の確率(Pfr)に適用することをさらに含み、
補正関数は、好ましくは、
fr/I、
又は、
1-(1-Pfr1/I
である。
【0022】
1つの実施形態では、ステップb)からg)は、各診断試験に対して個別に行われ、試験のいずれに関する標準化されたQC結果が、対応するルールに適合しなければ、この機器において不具合があると判定される。
【0023】
これらの利点は、制御不能状況を検出する速度を高めること含み、ここでは、各種の診断試験は、QCサンプルを使用して測定される。
【0024】
1つの実施形態では、ステップg)における不具合を判定することに応えて、この方法は、
h)測定プロセスを中断する、及び/又は、R又はR+1数の最新のQCラン後に生成された結果などの結果をブロックすることをさらに含む。
【0025】
これらの利点は、患者の安全を改善することを含む。検査室機器は、ブラケット付きQCストラテジと呼ばれるものを利用する。ブラケットは、2つのQCイベント間の患者サンプルであってよい。検査室は、後続のQCイベントが終わるまで、R数のブラケットを保持してよい。QCイベント後に不具合が検出されると、R数の最新のブラケットの患者結果がブロックされ、信頼できないものと判定されてよい。
【0026】
特に、本目的は、検査室機器であって、好ましくは、特許請求の範囲のいずれか一項に記載の方法を実施することにより、その機器における不具合を判定するための検査室機器により達成される。この機器は、
ルール生成器ユニットと、
ルール適用ユニットと、
少なくとも1つのQCレベル(J)に関する結果と、少なくとも1つの、好ましくは、2つ又はそれ以上の異なる試験(I)に関する結果と、を生成するための試験結果生成ユニットと、
を含み、
この機器は、
a)ルール生成器ユニットにより、品質管理(QC)サンプルの1つ又はそれ以上のQCレベル(J)に関する、誤った拒否の所望の確率(Pfr)と、エラー検出の所望の確率(Ped)などの、所望のエラー検出率(E)と、を受信することと、
b)ルール生成器ユニットにより、ランの数(R)を1に設定することと、
c)ルール生成器ユニットにより、エラー検出率(E^)を、少なくともRに基づいて計算することと、
d)ルール生成器ユニットにより、E^がE未満であるかを判定することであって、
もしそうであれば、
Rを1つ増やして、ステップc)からd)を繰り返し、
もしそうでなければ、
検査室機器における不具合を判定するためのルールを、少なくとも部分的にRに基づいて定義する、
E^がE未満であるかを判定することと、
e)ルール適用ユニットにより、好ましくは、試験結果生成ユニットにより生成されたQCサンプルの少なくともRのランから算出された、標準化されたQC結果を収集することと、
f)ルール適用ユニットにより、ステップd)において定義されたルールを、ステップe)において収集された、標準化されたQC結果に適用することと、
g)ルール適用ユニットにより、標準化されたQC結果がルールに適合するのであれば、機器における不具合を判定することと、
を行うための手段を含む。
【0027】
これらの利点は、検査室機器における不具合の、簡略化された、迅速な検出を含む。これらの利点は、検査室機器における不具合を、より少ないランですばやく特定する統計的ルールの、改善された設計をさらに含む。
【0028】
1つの実施形態では、この機器は、ディスプレイをさらに含み、
この機器において不具合が存在することを判定することを、ルール適用ユニットが判定すると、ディスプレイに、この機器において不具合が存在することを表示させる。
【0029】
これらの利点は、制御不能な患者サンプルをもたらす不具合が検査室機器において存在することと、特定量の患者サンプル(例えば、R又はR+1数の最新のQCイベント後のそれら)が信頼できないことと、を検査員に知らせることを含む。検査室機器はまた、影響を受ける検査員、臨床医、及び/又は患者に、不具合、及び/又は、信頼できない結果、及び/又は、信頼できる結果を提供するための遅延の予測を示すメッセージを、有線及び/又は無線通信を介して、知らせてよい。
【0030】
1つの実施形態では、各ランは、2つ又はそれ以上の、好ましくは、100未満の、異なる診断試験(I)からデータを生成し、
ステップg)は、補正関数を、誤った拒否の所望の確率(Pfr)に適用することをさらに含み、
補正関数は、好ましくは、
fr/I、
又は、
1-(1-Pfr1/I
を含み、
ステップb)からg)は、各診断試験に対して個別に行われ、試験のいずれに関する標準化されたQC結果が、対応するルールに適合しなければ、この機器において不具合があると判定される。
【0031】
これらの利点は、制御不能状況を検出する速度を高めることを含み、ここでは、各種の診断試験は、各QCサンプルにおいて測定される。
【0032】
1つの実施形態では、ディスプレイは、異なる診断試験の内の、ルールに適合しない標準化されたQC結果が関連するものを表示する。
【0033】
各診断試験に対してルールが個別に適用されると、検査室機器は、診断試験の内の、制御不能な不具合により影響を受けたものをディスプレイに表示し得る。これは、不具合の位置特定と、その修正と、をアシストする。
【0034】
1つの実施形態では、ディスプレイは、検出された不具合が、システマチックエラー又はランダムエラーであるかを表示する。ランダムエラーの不具合により影響を受けたQC結果の中心傾向(例えば、平均値)は、制御された中心傾向(例えば、平均値)から実質的に偏差しない場合がある一方、システマチックな不具合により影響を受けたQC結果の中心傾向(例えば、平均値)は、制御された平均値から実質的に偏差した中心傾向(例えば、平均値)をもたらす場合がある。
【0035】
ランダムエラーの不具合により影響を受けたQC結果の分散(例えば、標準偏差)は、制御された分散(例えば、標準偏差)から実質的に偏差する場合がある。システマチックエラーの不具合により影響を受けたQC結果の分散(例えば、標準偏差)は、制御された分散(例えば、標準偏差)から実質的に偏差しない場合がある。
【0036】
制御不能なQC結果の中心傾向及び/又は分散は、したがって、不具合(システマチック又はランダム)のタイプを判定することに使用され得る。エラーのタイプのインジケーションは、不具合の位置特定と、その修正と、をアシストし得る。
【0037】
1つの実施形態では、この機器は、ステップg)における不具合を判定することに応えて、
h)測定プロセスを中断する、及び/又は、R又はR+1数の最新のQCラン後に生成された結果などの結果をブロックするための手段をさらに含む。
【0038】
これらの利点は、患者の安全を改善することを含む。検査室機器は、ブラケット付きQCストラテジと呼ばれるものを利用する。ブラケットは、2つのQCイベント間の患者サンプルであってよい。検査室は、後続のQCイベントが終わるまで、R数のブラケットを保持してよい。QCイベント後に不具合が検出されると、保持されたR数の最新のブラケットの患者サンプルがブロックされてよい。
【0039】
特に、本目的は、コンピュータにより実行されると、そのコンピュータに、上記の内の1つの方法のステップを実行させる命令を含むコンピュータ可読媒体により達成される。
【0040】
この媒体の恩恵及び利点は、上記の方法の利点に等しい、又は、これらと同様である。
【0041】
以下の図面を参照して、本発明の実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、検査室試験機器の不具合を判定するための方法のステップを示す。
図2図2は、本発明の実施形態に係る検査室機器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、検査室機器の不具合を判定するための方法を示す。この方法は、
この機器により処理される品質管理(QC)サンプルの1つ又はそれ以上のQCレベル(J)に関する、誤った拒否の所望の確率(Pfr)と、エラー検出の所望の確率(Ped)などの、所望のエラー検出率(E)と、を受信すること110と、
ランの数(R)を1に設定すること120と、
エラー検出率(E^)を、少なくとも部分的にRに基づいて計算すること130と、
E^がE未満であるかを判定すること140であって、
もしそうであれば、
Rを1つ増やして150、ステップc)からd)を繰り返し、
もしそうでなければ、
この検査室機器における不具合を判定するためのルールを、少なくとも部分的にRに基づいて定義する160、
E^がE未満であるかを判定すること140と、
標準化されたQC結果を、好ましくは、この機器により生成されたQCサンプルの少なくともRのランから受信又は収集すること170と、
ステップd)において定義されたルールを、標準化されたQC結果に適用すること180と、
標準化されたQC結果がルールに適合するのであれば、この機器において不具合があることを判定すること190と、
を含んでよい。
この方法は、任意に、測定プロセスを中断する195、及び/又は、R又はR+1数の最新のQCラン後に生成された結果などの結果をブロックすること、をさらに含んでよい。
【0044】
エラー検出量(E^)を計算するステップ130は、
システマチックエラー検出(P^Sed)を、非心カイ二乗分布H(d;DF,NCP)の累積分布関数から計算することであって、ここで、NCP=J×R×ΔSECrit である、計算することと、
ランダムエラー検出(P^Red)を、ガンマ分布G(d;SH,SC)の累積分布関数から計算することであって、ここで、SH=(J×R)/2、及び、SC=2×ΔRECrit である、計算することと、
のいずれ、又は、個別に、これらのすべてを含んでよい。
【0045】
E^がE未満であるかを判定するステップ140は、システマチックエラー検出(P^Sed)及び/又はランダムエラー検出(P^Red)が対象であるかによって、P^SedがPSed未満であるか、及び/又は、P^RedがPRed未満であるかを判定することを含んでよい。もしそうであれば、Rを1つ増やして150、ステップ130から140を繰り返し、もしそうでなければ、検査室機器における不具合を判定するためのルールを、少なくとも部分的にRに基づいて定義する160。
【0046】
受信又は収集することのステップ170は、QC試験結果を、式Zjr=(Xjr-μ)/σにより標準化することを含んでよく、ここで、Xjrは、j数のQCレベル及びr数のランからの、標準化されていない(生の)QC試験結果であり、μは、制御された平均値であってよく、σは、j数のQCレベルに関する、制御された標準偏差であってよい。r数のラン=1からRは、R数の最新のランである。
【0047】
ルールを適用すること180は、式
【数3】
により与えられるマハラノビス距離(M)が、二乗された距離(d)以上であるかを判定することを含んでよい。dは、中心カイ二乗分布d=C-1(1-Pfr;DF)から算出されてよく、ここで、DF=J×Rである、又は、dは、ホテリングのT二乗分布d=T(1-Pfr,DF)から算出されてよく、ここで、DF=J×Rである。
【0048】
図2は、本発明の実施形態に係る検査室機器200を示す。この検査室機器は、ルール生成器ユニット210と、ルール適用ユニット220と、試験結果生成ユニット230と、を含んでよい。この検査室機器は、任意に、ディスプレイ240をさらに含んでよい。
【0049】
妥当性確認サンプルと、QCサンプルと、患者のサンプルと、は、試験結果を生成するために、試験結果生成ユニット230に挿入されてよい。ルール生成器ユニット210は、誤った拒否の所望の確率(Pfr)と、所望のエラー検出量(E)と、についての要件を受信し、上述するようなルールを生成するよう適合されていてよい。
【0050】
ルール適用ユニット220は、標準化されたQC結果を受信又は生成し、上述するような、ルール生成器ユニット210により生成されたルールを適用し、検査室機器において不具合が存在するか判定するよう適合されていてよい。ディスプレイ240は、上述するように、ユーザに情報を表示するよう使用されてよい。
図1
図2