(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ネットワーク管理装置
(51)【国際特許分類】
H04L 43/045 20220101AFI20240719BHJP
H04L 43/08 20220101ALI20240719BHJP
H04L 12/28 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H04L43/045
H04L43/08
H04L12/28 100S
(21)【出願番号】P 2022037725
(22)【出願日】2022-03-11
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】592205735
【氏名又は名称】株式会社ケイティーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】樋口 宜尋
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 正治
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0254726(US,A1)
【文献】国際公開第2022/009274(WO,A1)
【文献】特開2006-050222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/28,43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の居室を有する施設における、該居室でのネットワーク通信の問題使用を検出する問題検出部と、
前記問題使用を可視化して表示する表示部と、
前記問題使用に対する解決処理を実行する解決処理部と、
前記問題検出部、前記表示部および前記解決処理部を制御する制御部と、を備え、
前記複数の居室のそれぞれにおいて、情報端末とネットワーク回線との通信接続が可能であり、
前記問題使用は、
居室でのネットワーク通信が、所定値以上の帯域を占有している「帯域占有」、
居室でのネットワーク通信が、所定数以上のセッション数を確立させている「セッション占有」、および
前記居室でのネットワーク接続をループ接続させている「ループ接続」
の少なくとも一つを含
み、
前記複数の居室のそれぞれは、情報端末とネットワーク回線との通信接続を可能とするネットワーク接続装置を備え、
前記情報端末は、前記ネットワーク接続装置を介して前記ネットワーク回線との通信が接続され、
前記問題検出部は、前記ネットワーク接続装置を介して、前記情報端末でのネットワーク通信の問題使用を検出し、
前記表示部は、前記施設の管理者により視認可能であり、前記帯域占有、前記セッション占有および前記ループ接続と、これらが発生している居室番号を表示可能であるネットワーク管理装置。
【請求項2】
前記ネットワーク接続装置は、有線もしくは無線であり、
前記ネットワーク接続装置のそれぞれは、前記問題検出部とネットワーク接続されている、
請求項1記載のネットワーク管理装置。
【請求項3】
前記施設は、宿泊施設、オフィス、公共施設および工場の少なくとも一つであり、
前記施設が宿泊施設である場合には、前記居室は宿泊施設の居室であって、宿泊客が情報端末を、前記ネットワーク接続装置を介してネットワーク回線に接続させてネット―ワーク通信を使用する、
請求項1記載のネットワーク管理装置。
【請求項4】
前記問題検出部は、前記複数の居室のいずれかにおいて、
(1)前記居室でのネットワーク通信が所定値以上の帯域を占有している場合に、当該居室でのネットワーク通信を前記帯域占有として判定し、
(2)前記居室でのネットワーク通信が所定数以上のセッション数を確立させている場合に、当該居室でのネットワーク通信を前記セッション占有として判定し、
(3)前記居室でのネットワーク通信においてループパケットを検出した場合に、当該居室でのネットワーク通信を前記ループ接続として判定し、
前記所定値および前記所定数は、可変である、
請求項1から3のいずれか記載のネットワーク管理装置。
【請求項5】
前記施設が宿泊施設である場合には、前記表示部はレセプションに設置される、
請求項1記載のネットワーク管理装置。
【請求項6】
前記解決処理部は、前記問題使用が生じている場合には、
(A)前記問題使用が前記帯域占有である場合には、前記帯域占有が生じている居室の帯域を制限する、
(B)前記問題使用が前記セッション占有である場合には、前記セッション占有が生じている居室のネットワーク通信を遮断する、
(C)前記問題使用がループ接続である場合には、前記ループ接続が生じている居室のネットワークを遮断する、
の、いずれかを行う、
請求項1から5のいずれか記載のネットワーク管理装置。
【請求項7】
前記表示部は、前記解決処理部での解決内容を表示可能である、
請求項6記載のネットワーク管理装置。
【請求項8】
前記問題使用を生じさせた居室に対して、警告を発する警告部を更に備える、
請求項1から7のいずれか記載のネットワーク管理装置。
【請求項9】
前記警告部は、前記問題使用を生じさせた居室の受像機および情報端末の少なくとも一方に、画像および音声の少なくとも一つを用いて、警告を与える、
請求項8記載のネットワーク管理装置。
【請求項10】
前記受像機および前記情報端末の少なくとも一つに表示された前記警告は、該居室の利用者による操作で終了可能である、
請求項9記載のネットワーク管理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記問題使用の発生時刻、前記問題使用の発生した居室番号、前記警告の発生時刻、前記警告の起因となった問題使用の内容、前記警告の発生された居室番号および前記利用者による警告終了での操作時刻の少なくとも一つを記憶可能である、
請求項10記載のネットワーク管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の居室においてネットワーク通信が行われる施設において、複数の居室のいずれかで生じるネットワーク通信障害を検出してこれに対応するネットワーク管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の居室を有する様々な施設がある。公共施設、オフィス、工場、ホテルのような宿泊施設である。このような施設においては、複数の居室が備わり、それぞれの居室が、利用者により利用される。このような施設においては、居室のそれぞれにおいて、インターネットなどのネットワーク通信ができるような設備が整備されている。
【0003】
例えば、居室のそれぞれに有線や無線などのネットワーク通信のアクセスポイントが設置されている。いわゆるWiFiアクセスポイントが設置されていたり、有線接続ケーブル用ジャックが設置されていたりする。居室のそれぞれの利用者は、自分のパーソナルコンピューター、タブレット端末、スマートフォン端末などの情報端末を、アクセスポイントに接続して、インターネットなどのネットワーク接続を行う。
【0004】
ホテルなどの施設においては、各居室のネットワーク通信のアクセスポイントを接続して、外部のネットワーク回線に接続するサーバーが備わっている。このサーバーにより、各居室で接続された情報端末は、インターネットなどのネットワークとの通信を行うことができる。
【0005】
居室の利用者は、居室でネットワーク接続されたパソコンなどの情報端末を様々な目的のために使用する。仕事のためにネットワーク通信接続されたパソコンを使用したり、メールやチャットを行なったり、映画や音楽のストリーミング配信を楽しんだりする。
【0006】
ネットワーク通信は、情報端末がネットワーク回線との通信を行う過程で、ネットワーク帯域を使用する。例えば、仕事のためにネットワーク通信接続されている場合には、その作業内容によって大きなネットワーク帯域を使用したり、小さなネットワーク帯域を使用したりする。
【0007】
メールやチャットなどであれば、使用するネットワーク帯域は小さい場合が多い。一方で、映画や音楽のストリーミング配信やアプリケーションのダウンロードなどにおいては、大きなネットワーク帯域を使用してしまうことも多い。
【0008】
居室の利用者が、どのような種類や態様のネットワーク通信を行うかは様々であり、利用者の特性や目的あるいは時間によっても相違する。一方で、施設のサーバーと外部のネットワーク回線とのネットワーク帯域には上限がある。この上限を、複数の居室でのネットワーク通信の帯域の総計が超えてしまうと、ネットワーク通信ができなくなってしまう。あるいは、上限に近づいてしまうと、ネットワーク通信の速度や能力が下がってしまう問題がある。
【0009】
一方で、施設においては、居室の利用者を満足させる必要がある。ネットワーク通信の速度や能力低下あるいは停止などが生じることで、利用者の不満を生じさせることは好ましくない。例えばオフィスであれば、社員や作業者の業務効率を著しく低下させてしまう。あるいはホテルなどの宿泊施設であれば、宿泊客の満足度を低下させて、宿泊客からのクレームに繋がる懸念もある。
【0010】
このようなネットワーク通信の帯域使用による問題への対応技術についての提案がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2017-152780号公報
【文献】特開2015-66699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1は、統計情報処理手段は、アプリケーションプロトコルによる通信に対し、通信の途中でユーザ端末から切断される途中切断の統計情報を取得し、当該統計 情報に基づいて、アプリケーションプロトコル毎のユー ザ不満度を算出して当該ユーザ不満度に対応するペーシング閾値をアプリケーションプロトコル毎に管理する。呼処理手段は、ユーザ端末への通信トラフィックが所定の帯域上限値を超えず、かつ各アプリケーションプロトコルのユーザ不満度が一致するペーシング閾値をアプリケーションプロトコル毎に決定し、アプリケーションプロトコル毎の通信トラフィックが、決定したペーシング閾値を下回るようにペーシング処理を実行する制御技術を開示する。
【0013】
特許文献2は、帯域使用状況を参照して、アプ リケーションを利用するユーザ数をカウントし、ユーザ 数の多いアプリケーションの順に、帯域制限対象であり、スローダウン制御の対象のアプリケーションの上限制 限値が、使用帯域の合計値を利用可能帯域から引いた値 以下ならば、ユーザ端末の目標帯域を上限制限値ユーザ数とし、使用帯域の合計値を利用可能帯域から引いた 値を超えているならば、ユーザ端末の目標帯域を下限制 限値/ユーザ数とし、ユーザ端末の使用帯域が目標帯域 より大ならば、ユーザ端末のダウン幅をアプリケーショ ンのダウン幅/ユーザ数とし、ユーザ端末の制御帯域からユーザ端末のダウン幅を引いた値を、ユーザ端末の制 御帯域とする帯域制御システムを開示する。
【0014】
特許文献1は、通信帯域をユーザー満足に対応するように制御する技術を開示する。しかしながら、特許文献1は、特定のユーザーについての帯域確保を考慮しているのみであり、複数の居室での様々な事象に対応して、個別に対応しつつも、施設全体のネットワーク帯域とのバランス対応をしているものではない。
【0015】
特に、複数の居室でのネットワーク通信の使用態様によるネットワーク帯域への問題との関連に対応するものではない。
【0016】
特許文献2は、ユーザーの帯域使用の合計と全体のネットワーク帯域との関係から帯域を制御するシステムを開示する。
【0017】
しかしながら、ユーザーの帯域総計をみるだけで、ユーザーの使用態様を見て問題を検出することをしていない。また、ユーザーの帯域使用を制御するのみで、問題となるユーザーやその問題使用などへの対応を開示していない。また、サーバーを管理する管理側での問題把握などをサポートすることも開示していない。
【0018】
複数の居室を備える施設においては、居室の利用者によるネットワーク通信の使用において様々な態様が生じうる。特に、ホテルなどの宿泊施設においては、全く異なる属性や関連性の無い複数の利用者が居室を利用する。この利用者は、個々人の都合や考え飲みでネットワーク通信を利用する。このとき、ある居室の利用者はネットワーク通信の帯域を大きく使ってしまうことがある。あるいは、別の居室の利用者は、ネットワーク通信において多数のセッションを使用してしまうことがある。あるいは、悪意を持ったネットワーク障害を生じさせる利用者がいる可能性もある。
【0019】
居室のいずれかでこのような問題のあるネットワーク通信の使用が生じた場合には、施設の管理者においてこれを監視して対応する必要がある。しかしながら、どのような問題が生じているか、問題にどのように対応してよいかが分からない問題がある。特に、施設の管理者は、施設そのもの(例えばホテルであればホテル、公共施設であればその使用目的)についての管理者であって、ネットワーク通信のプロではないことが多い。
【0020】
このため、居室のいずれかでの問題使用に起因して、施設全体でのネットワーク通信の不具合(速度低下、能力低下、通信障害など)が生じたとしても、管理者がこれに対応することが難しい問題もある。対応が難しければ、利用者からの不満が大きくなり、施設全体の評判にも悪影響が生じかねない。
【0021】
また、管理者において対応ができなければ、ネットワーク管理の専門会社への対応を依頼することになり、復旧までの時間が長くなってしまう問題もある。復旧が長くなれば、利用者からの不満が増大し、施設にとってのマイナスとなってしまう問題もある。
【0022】
このように、従来技術では、利用者による問題使用の検出、検出に対する監視、対応などを行なえない問題があった。これらの問題に起因して利用者への便益が減少してしまう問題にも繋がる。また施設の評価にも影響が出る問題もある。
【0023】
本発明は、これらの課題に鑑み、利用者の問題使用を検出し、問題使用の内容を確認しつつ、この問題使用を解決できるネットワーク管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題に鑑み、本発明のネットワーク管理装置は、複数の居室を有する施設における、該居室でのネットワーク通信の問題使用を検出する問題検出部と、
前記問題使用を可視化して表示する表示部と、
前記問題使用に対する解決処理を実行する解決処理部と、
前記問題検出部、前記表示部および前記解決処理部を制御する制御部と、を備え、
前記複数の居室のそれぞれにおいて、情報端末とネットワーク回線との通信接続が可能であり、
前記問題使用は、
居室でのネットワーク通信が、所定値以上の帯域を占有している「帯域占有」、
居室でのネットワーク通信が、所定数以上のセッション数を確立させている「セッション占有」、および
前記居室でのネットワーク接続をループ接続させている「ループ接続」
の少なくとも一つを含み、
前記情報端末は、前記ネットワーク接続装置を介して前記ネットワーク回線との通信が接続され、
前記問題検出部は、前記ネットワーク接続装置を介して、前記情報端末でのネットワーク通信の問題使用を検出し、
前記複数の居室のそれぞれは、情報端末とネットワーク回線との通信接続を可能とするネットワーク接続装置を備え、
前記表示部は、前記施設の管理者により視認可能であり、前記帯域占有、前記セッション占有および前記ループ接続と、これらが発生している居室番号を表示可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のネットワーク管理装置は、複数の居室での利用者によるネットワーク通信の問題使用を検出できる。この問題使用の検出結果をモニタリングできることで、管理者にとってのネットワーク管理が容易となる。特に、問題使用を把握できることで、ネットワークについての専門知識の低い管理者でも、管理可能となる。
【0026】
また、問題使用に対して自動で対応を行うことで、施設全体でのネットワーク通信の障害を防止することができる。また、外部の専門家の支援を待つことなく防止できるので、利用者にとっての便益の提供が継続されるメリットがある。
【0027】
また、必要に応じて問題使用した利用者に対して警告を出すことで、利用者の問題使用を減少させていくこともできる。また、管理者側での管理と警告とを合わせることで、問題使用の証拠を確保しておくこともできる。これは施設にとってもメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】本発明の実施の形態1におけるネットワーク管理装置のブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態1における施設の模式図である。
【
図4】本発明の実施の形態1における施設300での問題使用を説明する模式図である。
【
図5】本発明の実施の形態1における帯域占有を示す模式図である。
【
図6】本発明の実施の形態1におけるセッション占有を説明する説明図である。
【
図7】本発明の実施の形態1におけるループ接続を説明する説明図である。
【
図8】本発明の実施の形態1における帯域占有を解決することを説明する模式図である。
【
図9】本発明の実施の形態1におけるセッション占有の解決を説明する説明図である。
【
図10】本発明の実施の形態1におけるループ接続の解決を説明する説明図である。
【
図11】本発明の実施の形態2におけるネットワーク管理装置のブロック図である。
【
図12】本発明の実施の形態2における情報端末への警告表示を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第1の発明に係るネットワーク管理装置は、複数の居室を有する施設における、該居室でのネットワーク通信の問題使用を検出する問題検出部と、
前記問題使用を可視化して表示する表示部と、
前記問題使用に対する解決処理を実行する解決処理部と、
前記問題検出部、前記表示部および前記解決処理部を制御する制御部と、を備え、
前記複数の居室のそれぞれにおいて、情報端末とネットワーク回線との通信接続が可能であり、
前記問題使用は、
居室でのネットワーク通信が、所定値以上の帯域を占有している「帯域占有」、
居室でのネットワーク通信が、所定数以上のセッション数を確立させている「セッション占有」、および
前記居室でのネットワーク接続をループ接続させている「ループ接続」
の少なくとも一つを含む。
【0030】
この構成により、複数の居室のいずれかで生じる問題使用を、自動で検出かつ解決することができる。これにより、施設の管理者に特別な知識やスキルが無くてもネットワーク通信の品質維持が実現でき、利用者にとっても便利である。
【0031】
本発明の第2の発明に係るネットワーク管理装置では、第1の発明に加えて、前記複数の居室のそれぞれは、情報端末とネットワーク回線との通信接続を可能とするネットワーク接続装置を備える。
【0032】
この構成により、情報端末は、居室においてネットワーク回線との通信接続を確立できる。
【0033】
本発明の第3の発明に係るネットワーク管理装置では、第2の発明に加えて、前記ネットワーク接続装置は、有線もしくは無線であり、
前記ネットワーク接続装置のそれぞれは、前記問題検出部とネットワーク接続されている。
【0034】
この構成により、問題検出部は、ネットワーク回線でのネットワーク通信の問題使用を検出できる。
【0035】
本発明の第4の発明に係るネットワーク管理装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、前記施設は、宿泊施設、オフィス、公共施設および工場の少なくとも一つであり、
前記施設が宿泊施設である場合には、前記居室は宿泊施設の居室であって、宿泊客が情報端末を、前記ネットワーク接続装置を介してネットワーク回線に接続させてネット―ワーク通信を使用する。
【0036】
この構成により、不特定の利用者がネットワーク通信を利用して問題使用の発生が生じうる。
【0037】
本発明の第5の発明に係るネットワーク管理装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、前記問題検出部は、前記複数の居室のいずれかにおいて、
(1)前記居室でのネットワーク通信が所定値以上の帯域を占有している場合に、当該居室でのネットワーク通信を前記帯域占有として判定し、
(2)前記居室でのネットワーク通信が所定数以上のセッション数を確立させている場合に、当該居室でのネットワーク通信を前記セッション占有として判定し、
(3)前記居室でのネットワーク通信においてループパケットを検出した場合に、当該居室でのネットワーク通信を前記ループ接続として判定し、
前記所定値および前記所定数は、可変である。
【0038】
この構成により、問題使用の検出を確実に行うことができる。
【0039】
本発明の第6の発明に係るネットワーク管理装置では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、前記表示部は、前記施設の管理者により視認可能であり、前記帯域占有、前記セッション占有および前記ループ接続と、これらが発生している居室番号を表示可能である。
【0040】
この構成により、施設の管理者などは、問題使用の発生や発生居室を容易に把握できる。把握できることで、ネットワーク管理の確実性や容易性が高まる。
【0041】
本発明の第7の発明に係るネットワーク管理装置では、第6の発明に加えて、前記施設が宿泊施設である場合には、前記表示部はレセプションに設置される。
【0042】
この構成により、宿泊施設において、宿泊客による問題使用が生じた場合でも、レセプションでこれを把握可能である。宿泊客からのクレームがある場合でも、容易に対応できる。
【0043】
本発明の第8の発明に係るネットワーク管理装置では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、前記解決処理部は、前記問題使用が生じている場合には、
(A)前記問題使用が前記帯域占有である場合には、前記帯域占有が生じている居室の帯域を制限する、
(B)前記問題使用が前記セッション占有である場合には、前記セッション占有が生じている居室のネットワーク通信を遮断する、
(C)前記問題使用がループ接続である場合には、前記ループ接続が生じている居室のネットワークを遮断する、
の、いずれかを行う。
【0044】
この構成により、問題使用が生じても自動で解決できる。自動で解決できることで、他の居室の利用者への不便を解消し、施設全体での問題も解消できる。
【0045】
本発明の第9の発明に係るネットワーク管理装置では、第8の発明に加えて、前記表示部は、前記解決処理部での解決内容を表示可能である。
【0046】
この構成により、管理者は、問題使用の発生だけではなくその解決も把握することができる。これにより、施設の管理が容易となる。
【0047】
本発明の第10の発明に係るネットワーク管理装置では、第1から第9のいずれかの発明に加えて、前記問題使用を生じさせた居室に対して、警告を発する警告部を更に備える。
【0048】
この構成により、問題使用を生じさせた使用者に警告や注意を与えることができる。これにより、再発の未然防止を行える。更に、問題解決によりネットワーク遮断などをされた利用者に対して、その理由や状況を知らせることもでき、問題使用の利用者からのクレームを防止しやすくなる。
【0049】
本発明の第11の発明に係るネットワーク管理装置では、第10の発明に加えて、前記警告部は、前記問題使用を生じさせた居室の受像機および情報端末の少なくとも一方に、画像および音声の少なくとも一つを用いて、警告を与える。
【0050】
この構成により、問題使用を生じさせた利用者への警告を確実に与えることができる。
【0051】
本発明の第12の発明に係るネットワーク管理装置では、第11の発明に加えて、前記受像機および前記情報端末の少なくとも一つに表示された前記警告は、該居室の利用者による操作で終了可能である。
【0052】
この構成により、利用者が警告を確認したことを記録することができる。
【0053】
本発明の第13の発明に係るネットワーク管理装置では、第12の発明に加えて、前記制御部は、前記問題使用の発生時刻、前記問題使用の発生した居室番号、前記警告の発生時刻、前記警告の起因となった問題使用の内容、前記警告の発生された居室番号および前記利用者による警告終了での操作時刻の少なくとも一つを記憶可能である。
【0054】
この構成により、問題使用を生じさせた利用者の記録を行うことができる。これにより、クレームなどへの対応が可能となる。
【0055】
本発明の第14の発明に係るネットワーク管理装置では、第1から第13のいずれかの発明に加えて、前記帯域占有、前記セッション占有および前記ループ接続の少なくとも一つは、利用者による悪意によるものを含む。
【0056】
この構成により、悪意によるネットワーク障害に対しても対応できる。
【0057】
以下、図面を用いながら本発明の実施の形態について説明する。
【0058】
(発明者による解析)
施設の一例として宿泊施設での問題使用についての発明者の解析について説明する。宿泊施設は、複数の居室を有しており、居室を不特定の宿泊客が利用する。このとき、居室には有線LANや無線LAN(WiFi)などのネットワーク通信のアクセスポイントである接続装置が設置されている。
【0059】
宿泊客は、このアクセスポイントに接続して、パソコンやスマートフォンなどの情報端末のネットワーク通信を可能とする。仕事に用いたり、メールやチャットを行なったり、動画や音楽のストリーミングサービスを利用したりする。
【0060】
居室のそれぞれには、アクセスポイントの接続装置が設置されており、これらの接続装置は、宿泊施設に設置されるサーバーとネットワーク接続される。サーバーは、外部のインターネット回線に接続しており、これらの接続によって、居室のそれぞれでのネットワーク通信が可能となる。
【0061】
ここで、サーバーと外部のインターネット回線との接続においては、最大の帯域が設定されている。宿泊施設での使用を考慮して最大帯域が設定される。居室のそれぞれでのネットワーク通信の使用の状態と最大帯域との関係で、ネットワーク通信の速度や能力が決まる。
【0062】
多くの宿泊客は、仕事や娯楽のための適切なネットワーク通信を行う。宿泊施設もこのような使用を考慮して、最大帯域やネットワークの能力を設定している。このため、通常においては宿泊施設におけるネットワーク通信の問題は生じにくい(故障などの不測の事態を除いて)。
【0063】
しかしながら、宿泊客によっては、ネットワーク通信においての問題使用を行うことがあり得る。
図1は、問題使用をまとめた模式図である。
図1では、宿泊施設の居室のそれぞれにおけるネットワーク通信の状態を示している。居室のそれぞれでは、宿泊客はWiFiに接続してネットワーク通信を使用している。
【0064】
この
図1において、301号室、202号室、201号室の宿泊客は適切なネットワーク通信の使用を行っている。通常の想定範囲内で、問題はない。
【0065】
一方で、401号室、402号室、302号室のそれぞれにおいては異なる種類の問題使用が生じている。問題使用とは、施設全体でのネットワーク通信の速度、能力、動作などに悪影響を生じさせる使用である。居室のいずれかで問題使用が生じると、施設で設定している最大帯域を超えてしまって他の居室でのネットワーク通信が不能となったり、ネットワーク通信の状態が悪くなったりする。あるいは、帯域制限とは異なる理由でネットワーク通信が困難となったりする。
【0066】
これは、施設全体でも問題となるし、他の居室の利用者(他の宿泊客)にとっても問題となる。場合によっては、施設へのクレームとなることもある。
【0067】
問題使用としては、例えば401号室の問題使用のように、多数のPtoPのセッションを確立させたネットワーク通信が行われる場合がある。401号室の利用者が、複数のサーバーなどとのダウンロードやアップロードなどを複数セッションによって実行する場合などに生じる。
【0068】
非常に多くのセッション確立されること、すなわち「セッション占有」が401号室では生じている。このようなセッション占有によって、ネットワーク通信に悪影響が生じる。他の居室でのネットワーク通信が困難となったり、施設全体でのエラーとなったりする。
【0069】
セッション占有は、施設にとってのネットワーク通信に問題を生じさせる問題使用である。
【0070】
別のケースとして、402号室では、大容量のネットワーク通信が行われて、帯域が占有される「帯域占有」が生じている。帯域占有が生じると、施設全体での帯域上限によって、他の居室でのネットワーク通信の速度が遅くなったり、通信能力が下がったりなどの問題を生じさせる。
【0071】
帯域占有も、問題使用の一つである。
【0072】
更に別のケースとして、302号室では、ルーターにケーブルがループ状に刺し込まれてネットワーク通信ができなくなってしまう「ループ接続」が生じることがある。ループ接続がされると、ネットワーク通信に悪影響を生じさせ、場合によっては、施設全体でのネットワーク通信ができなくなるような問題につながる。
【0073】
このようなループ接続も問題使用の一つである。ループ接続は、利用者の悪意による行為に起因する。
【0074】
このような問題使用が生じると、施設全体および他の居室でのネットワーク通信に悪影響が出る。施設により提供されるサービスの一つであるネットワーク通信のレベル低下となり、利用者へ不便を生じさせる。また、利用者からのクレームとなって、施設にとってもマイナスとなりえる。
【0075】
また、これらの3つの種類の問題使用は、問題使用をする利用者が故意や悪意で生じさせていることも多い。故意や悪意で生じさせて施設にクレームを行って、例えば宿泊費の値引きを要求するようなこともあり得る。また、施設の評価に関わることもある。
【0076】
一方で、施設の管理者はネットワークについての専門家でないことが多く、問題使用が生じても、結果としてのネットワーク通信の障害の事象しか把握できず、原因となっている問題使用を把握することが困難である。問題使用を把握したり解析したりすることも難しい。また、問題使用が生じている居室を特定することも難しい。更には、問題使用への対応も困難である。上述の通り、管理者は、ネットワーク通信の専門家ではなく、対応が困難だからである。
【0077】
このため、施設の管理者(宿泊施設であればレセプション)には、問題使用を生じさせた利用者やその他の利用者からのクレームを貰って、外部の専門家に対応を依頼することしかできない。
【0078】
このような対応によって、ネットワーク通信障害の解決までに時間を要して、問題使用を生じさせた利用者以外への不便を生じさせることになってしまう。勿論故意や悪意で問題使用を生じさせた利用者からのクレームを生じさせることにも繋がってしまう。
【0079】
現状では、施設においては問題使用が発生したときに、その問題使用を把握することも解析することも難しく、外部の専門家への対応を依頼した後で、問題使用を把握できることがほとんどである。これにより、問題使用が生じたときに、施設全体での対応を行なえないままに、利用者への不便や施設の被害を拡大させている状態がある。
【0080】
発明者は、問題使用の典型例やそれに対応ができていないことの問題をこのように解析して、本発明をするに至った。なお、
図1を用いて説明した問題使用は、一例であり、他の例を除外する意図ではない。また、施設を宿泊施設歳、利用者を宿泊客として説明したが、これらに限定される意図でもない。
【0081】
(実施の形態1)
【0082】
(全体概要)
図2は、本発明の実施の形態1におけるネットワーク管理装置のブロック図である。
図2では、複数の居室200に対応するネットワーク管理装置1を示している。また、複数の居室200を備えるのは施設であり、例えば宿泊施設などである。宿泊施設であれば、居室200は、客室である。利用者は宿泊客である。
【0083】
宿泊客であれば、不特定の宿泊客が様々に不特定の日に利用する。居室200には、ネットワーク接続装置202を備えている。ネットワーク接続装置202は、ルーターや無線ネットワークなどのデバイスを含む。ネットワーク接続装置202は、有線もしくは無線で、情報端末220とネットワーク回線210との通信接続を実現する。
【0084】
情報端末220は、居室200に備わっている者でもよいし、利用者自身の者であって、利用者が居室200に持ち込んだものであってもよい。情報端末220は、パーソナルコンピューター、ノートパソコン、タブレット端末、スマートフォン、携帯情報端末などのネットワーク回線を通じて通信可能なデバイスである。
【0085】
利用者は、居室200で、情報端末220をネットワーク回線220と通信接続させて仕事をしたり、メールやチャットをしたり、音楽配信や動画配信を楽しんだり、ネットサーフィンを楽しんだりできる。宿泊施設などであれば、居室200には、WiFiなどの無線通信接続が整備されている。利用者は、情報端末220をこれに接続させて、種々の利用を行う。
【0086】
複数の居室200にはネットワーク回線210がまとめて接続されており、このネットワーク回線210は、施設の外部のネットワーク回線と接続されている。これにより、施設と外部とのネットワーク通信接続がなされ、居室200の利用者が情報端末220を用いたネットワーク通信を利用できる。
【0087】
ネットワーク管理装置1は、このような複数の居室200を備える施設におけるネットワーク通信を管理する。ネットワーク通信を管理するため、ネットワーク管理装置1は、施設のネットワーク回線210にネットワーク接続している。また、ネットワーク管理装置1は、施設のネットワーク回線210に繋がるサーバー内部に構築されてもよいし、これとは別に構築されてもよい。
【0088】
ネットワーク管理装置1は、問題検出部2、表示部3、解決処理部4、制御部5を備える。これらの要素は、上述のサーバー内部に備わってもよいし、その一部のみがサーバーに備わってもよい。また、これらの要素は、一体として構築されてもよいし、一部の要素が別体として構築されてもよい。後述するように、表示部3は施設の受付、管理部、レセプションなどのパソコン画面により実現されてもよい。
【0089】
問題検出部2は、居室200でのネットワーク通信の問題使用を検出する。ネットワーク回線210は、居室220のそれぞれと接続しており、問題検出部2も同様である。このため、居室200での利用者が、情報端末220をネットワーク接続させた上で、どのような使用をしているかを、使用帯域やパケットの状態から判断することができる。使用状態を把握して、それに基づく判断により、問題使用を検出することができる。
【0090】
ここで、問題使用は、居室200でのネットワーク通信が、所定値以上の帯域を占有している「帯域占有」、居室200でのネットワーク通信が、所定数以上のセッション数を確立させている「セッション占有」、居室200でのネットワーク接続をループ接続させている「ループ接続」の少なくとも一つを含む。
【0091】
なお、これらは例であり、これら以外の問題のある使用も含む。
【0092】
表示部3は、問題使用を可視化して表示できる。表示部3は、ネットワーク管理装置1に備わっていて、管理者などがこの表示部3を視認できることでもよい。あるいは、施設が宿泊施設であれば、レセプションのパソコンの表示画面が、表示部3を実現してもよい。あるいは、管理者のパソコンや管理用モニターが表示部3を構築してもよい。
【0093】
表示部3は、問題使用の内容や種類が分かるように表示する。例えば、問題使用が「セッション占有」であれば、セッション占有であることを文字、イメージなどで表示する。また、どの居室200で、問題使用が発生しているかも合わせて表示する。例えば、
図2に示す401号室(居室200の一つ)で、「セッション占有」が生じていることを明示的に表示する。
【0094】
表示部3がこのような表示を行うことで、施設の管理者は、問題の生じている問題使用とその発生居室を確実かつ容易に把握できる。
【0095】
解決処理部4は、問題使用に対応する解決処理を実行する。本発明のネットワーク管理装置1は、問題使用を検出するだけでなく、自動的に問題使用を解決する。解決処理部4が、この問題使用の解決を行う。
【0096】
この解決処理により、施設の管理者は、ネットワーク通信に不具合となりえる問題使用が生じたこと、その生じた居室200、問題使用の内容を把握できるだけでなく、問題解決を受けることもできる。これにより、管理者はネットワーク通信に不具合が生じた場合に、原因も分からず対処方法も分からなかった従来と異なり、自動的な対応を提供できる。また、この原因判断や対処は、管理者がネットワーク通信に詳しくなくてもよく、外部の管理者へ依頼する必要もない。
【0097】
このため、早期に問題解決できる。勿論、解決に要するコストも大きく低減できる。
【0098】
結果として、施設のネットワーク管理を容易化でき、施設の信頼性を高めることができる。利用者にとっても、他の居室の利用者による問題使用に基づくネットワーク通信の不具合を受けにくくなる。あるいは受けても解決までが早くなり、不利益が減少する。
【0099】
また、利用者から施設へのクレームが減少し、施設の運営全体への信頼性が高まる。また、施設の管理者や運営者にとっても、クレームなどによるリスクが減少し、運営効率や運営安全性が高まるメリットがある。
【0100】
制御部5は、問題検出部2、表示部3、解決処理部4を制御する。ネットワーク管理装置1を制御して、それぞれの要素の動作や関連した動作を制御する。また、問題検出部2で検出する問題使用の種類や程度、表示部3での表示方法、解決処理部4での解決レベルなどを切り替えるなどでの制御も行える。
【0101】
このような制御部5による制御により、ネットワーク管理装置1の動作や機能の柔軟性を高めることができる。また施設や居室200の種類、規模、特性などに対応したネットワーク管理装置1を実現できる。
【0102】
次に、各部の詳細やバリエーションなどについて説明する。
【0103】
(施設)
図3は、本発明の実施の形態1における施設の模式図である。施設300は、
図2などで説明した居室200を備える施設である。また、
図3のように、ネットワーク管理装置1も備える。なお、ネットワーク管理装置1の一部もしくは全部は、物理的に施設300の外側にあってもよい。
図3は、施設300のネットワーク通信を管理するネットワーク管理装置1を概念的に示している。
【0104】
ここで、施設300は、宿泊施設、オフィス、公共施設、工場、事業場、配送センターなどの少なくとも一つである。これらの施設においては、複数の居室200があり、それぞれの居室200でのネットワーク通信が行われるからである。
【0105】
施設300が宿泊施設である場合には、居室200は宿泊施設の居室200である。利用者は宿泊客であり、宿泊客が情報端末220を、ネットワーク接続装置202を介してネットワーク回線210に接続させる。これにより、宿泊客はネットワーク通信を使用できる。
【0106】
居室200のそれぞれは、情報端末220とネットワーク回線210との通信接続を可能とするネットワーク接続装置202を備える。ネットワーク接続装置202は、有線もしくは無線での接続機能を有している。例えば、WiFiのアクセスポイントである。あるいは、有線ケーブルジャックである。
【0107】
これらのネットワーク接続装置202は、ネットワーク回線210と接続されている。この接続により、ネットワーク接続装置202に接続された情報端末220は、ネットワーク回線210とのネットワーク通信接続が可能となる。
【0108】
また、ネットワーク接続装置202のそれぞれは、問題検出部2とネットワーク接続されている。問題検出部2とネットワーク接続されていることで、ネットワーク接続装置202を介したネットワーク通信の問題使用を検出することができる。
【0109】
(問題検出部)
【0110】
問題検出部2は、居室200でのネットワーク通信における問題使用を検出する。問題使用は、居室200でのネットワーク通信の使用状態が、施設300全体のネットワーク通信に悪影響を与えたり、他の居室200でのネットワーク使用への悪影響を与えたりするような使用である。
【0111】
居室200の利用者が意識しないままに行ってしまう問題使用もあれば、利用者の悪意による問題使用もあり得る。
【0112】
図4は、本発明の実施の形態1における施設300での問題使用を説明する模式図である。施設300には、複数の居室200が備わり、複数の居室200のそれぞれで利用者がネットワーク通信を利用する。居室200には、401号室、301号室などがある。ある居室200では、問題の無い適切なネットワーク通信の使用が行われており、ある居室200では、悪意なくあるいは悪意により問題使用が生じている。
【0113】
図4の場合では、302号室、401号室、402号室において、問題使用が生じている。問題検出部2は、ネットワーク回線210を介して、複数の居室200全体を監視可能である。この結果、問題検出部2は、302号室、401号室、402号室における問題使用を検出できる。同様に、他の居室200では問題使用が生じていないことも検出できる。
【0114】
問題検出部2は、次のような問題使用を検出する。
【0115】
(帯域占有)
図5は、本発明の実施の形態1における帯域占有を示す模式図である。居室200の一つである402号室において、ネットワーク通信が所定値以上の帯域を占有している状態を示している。
【0116】
例えば、402号室において利用者が情報端末220を用いて、動画サイトに接続して長時間に渡りネットワーク通信の帯域を占有する。これにより、他の居室200のネットワーク通信利用ができなくなることがある。できなくならないまでも、他の居室200でのネットワーク通信の通信能力や通信速度が阻害される。
【0117】
利用者が気付かない状態であるいは利用者の悪意で、このような帯域の占有が生じる。
【0118】
問題検出部2は、これを「帯域占有」として判定する。問題使用の一つの態様である。放置することが、施設300および他の居室200の利用者に不利益を与えるからである。
【0119】
問題検出部2は、ネットワーク回線210を介した監視で、居室200のネットワーク通信の使用状態を把握できる。使用帯域も把握可能である。問題検出部2は、施設300全体の最大帯域と居室200の数などとの関係から、帯域占有の基準となる所定値を決定できる。ある居室200での使用帯域が所定値以上であれば、問題検出部2は、「帯域占有」として判定する。
【0120】
このような結果、
図5での例のように、402号室において「帯域占有」が発生していることを検出できる。
【0121】
更に、表示部3は、発生居室である402号室と発生内容である「帯域占有」とを、明示的に表示する。
図5は、表示部3による表示も示している。
図5では、「帯域占有」をイメージとして示しているが、文字で示してもよい。
【0122】
また、表示部3は、管理者などの手元で表示可能であるので、管理者は問題使用の発生、発生居室、発生内容を確実に把握できる。例えば、宿泊施設のレセプションのパソコンにこのような表示がなされる。これにより、管理者が、問題使用を確実に把握して、種々の対応に備えることができる。
【0123】
(セッション占有)
図6は、本発明の実施の形態1におけるセッション占有を説明する説明図である。セッション占有は、問題使用の一態様である。居室200の一つである401号室において、所定数以上のセッション数を確立させている状態を示している。
【0124】
例えば、401号室の利用者は、P2P(ピアツーピア)接続により、動画などをダウンロードしている。このダウンロード元を隠蔽するために動画コンテンツを数万個に分割してネット上に配置している。これら数万個の動画コンテンツにアクセスして数万個のセッションを確立させている。ネットワーク接続装置202に含まれるルーター機器がスペックオーバー状態となって、他の居室200でのネットワーク通信が不能となる状態である。
【0125】
このような問題使用を「セッション占有」として、問題検出部2は、検出できる。ここでは、401号室で生じている。勿論、すべての居室200を監視する中で、このようなセッション占有が生じている居室200を検出できる。
【0126】
問題検出部2は、セッション占有の発生の事実、発生の居室を検出する。また、発生時刻も検出できる。
【0127】
問題検出部2は、検出結果を表示部3に出力し、
図6のように表示部3が表示する。
【0128】
表示部3は、発生居室である401号室と発生内容である「セッション占有」とを、明示的に表示する。
図6は、表示部3による表示も示している。
図6では、「セッション占有」をイメージとして示しているが、文字で示してもよい。
【0129】
また、表示部3は、管理者などの手元で表示可能であるので、管理者は問題使用の発生、発生居室、発生内容を確実に把握できる。例えば、宿泊施設のレセプションのパソコンにこのような表示がなされる。これにより、管理者が、問題使用を確実に把握して、種々の対応に備えることができる。
【0130】
(ループ接続)
図7は、本発明の実施の形態1におけるループ接続を説明する説明図である。ループ接続は、問題使用の一態様である。居室200の一つである302号室において、利用者がネットワーク接続装置202に含まれるHUBにケーブルをループさせるように接続させる。このようなループ接続により、ネットワーク回線210においては、ループパケットが発生する。ループパケットが発生すると、施設300全体でネットワーク通信ができなくなる問題につながる。
【0131】
すなわち、問題検出部2は、ネットワーク通信においてループパケットを検出すると、ループ接続が発生しているとして検出できる。
【0132】
このようなループ接続は、利用者によるいたずらや悪意によることがほとんどである。
図7では、302号室の利用者が悪意をもってケーブルをループ状態で差し込んでループ接続を発生させている。
【0133】
例えば、302号室の利用者は、施設300に迷惑を掛けようという悪意をもってループ接続をしている。施設300が宿泊施設の場合には、利用者は、施設300の評判を貶めようとしたり、クレームをつけて宿泊料金を値引こうとしたりする悪意で、このような行為を行う。
【0134】
ループ接続により、ネットワーク通信が不通となって、他の居室200でのネットワーク通信ができなくなる問題がある。これは施設300にとっても好ましくなく、施設300の信頼性を下げてしまうことに繋がる。
【0135】
問題検出部2は、ネットワーク回線210を監視しているので、ある居室200でループパケットを検出できる。このループパケットを検出すると、問題検出部2は、ループ接続が当該居室200で発生していることを検出できる。
図7では、302号室である。
【0136】
問題検出部2は、ループ接続の発生の事実、発生の居室を検出する。また、発生時刻も検出できる。
【0137】
問題検出部2は、検出結果を表示部3に出力し、
図7のように表示部3が表示する。
【0138】
表示部3は、発生居室である302号室と発生内容である「ループ接続」とを、明示的に表示する。
図7は、表示部3による表示も示している。
図7では、「ループ接続」のイメージと想定される原因である「いたずら」との表示を示している。これらは、施設300の管理者に効果的な注意を促すことができる。
【0139】
また、表示部3は、管理者などの手元で表示可能であるので、管理者は問題使用の発生、発生居室、発生内容を確実に把握できる。例えば、宿泊施設のレセプションのパソコンにこのような表示がなされる。これにより、管理者が、問題使用を確実に把握して、種々の対応に備えることができる。
【0140】
また、問題検出部2は、これら以外の問題使用を検出することもできる。施設の特性などによって考えられるネットワーク通信における問題使用を検出する。このとき、問題使用の基準や内容を、適宜変更したり追加したりできることもよい。
【0141】
これらの変更や追加は、制御部5を介して行われてもよい。
【0142】
(表示部)
表示部3は、施設300の管理者により視認可能であり、帯域占有、セッション占有およびループ接続などの問題使用の内容、発生している居室番号を表示可能である。
【0143】
例えば、管理者のパソコンの表示画面が表示部3となっており、この表示画面にこれらが表示される。あるいは、宿泊施設のレセプションのパソコンの表示画面に表示される。表示部3が、レセプションに設置されていることによる。
【0144】
表示部3は、問題使用の内容に加えて、後述する解決処理部4での解決内容や解決結果もあわせて表示することもよい。解決結果も視認できることで、管理者の便利が増すからである。また、表示部3は、複数であるあるいは複数の既存の表示画面(レセプションや管理者のパソコンの表示画面)であることもよい。複数の場所に表示部3としての表示がなされることで、管理者や担当者が、問題使用の発生や解決状況の情報共有を図ることができるからである。
【0145】
また、表示部3は、イメージや文字列など、管理者等の注意を惹きつけつつ理解を容易とする方法で表示する。場合によっては、音声も含めた表示を行う。これにより、問題使用やその解決を、確実に知らせることができるからである。
【0146】
(解決処理部)
解決処理部4は問題使用が発生している場合には、この問題使用を解決する。解決処理部4は、ネットワーク回線210にネットワーク接続されている。これにより、ネットワーク通信で生じている問題使用を、ネットワーク通信の対応処理によって解決することができる。
【0147】
(帯域占有への解決)
解決処理部4は、問題使用が「帯域占有」である場合には、
図8に示されるように、帯域占有を生じさせている居室200の帯域を制限する。
図4で説明した帯域占有を生じさせているのが402号室である。この402号室に許容する帯域を制限する。この帯域制限により、使用する帯域を低減させて、帯域占有の状態を解消させる。
【0148】
図8は、本発明の実施の形態1における帯域占有を解決することを説明する模式図である。
【0149】
解決処理部4は、ネットワーク回線210を介した通信を制御できる。この制御において、402号室に許容する帯域の最大値を低減することができる。これにより、帯域占有を生じさせていた402号室に許容される帯域は小さくなる。
【0150】
402号室の帯域が制限されることで、402号室の利用者の便利は下がるが、動画サイトなどへの長時間の大量の通信を行っていたのであるから、これについては、他の居室200の利用者との公平の観点から問題は低い。また、帯域占有が利用者の悪意で生じている場合もあり、この点からも適切な解決である。
【0151】
他の居室200の利用者には、必要な通信帯域が戻ってくるので、402号室での帯域占有で生じていた不便が解消する。
【0152】
これらの解決は、利用者の知らないバックグラウンドで行われる。このため、帯域占有を生じさせた利用者も、この弊害を受けた他の居室200の利用者も気づかないうちに問題が解決している。帯域占有を生じさせた利用者が悪意である場合には、悪意ある利用者のクレームを生じにくくさせて対応でき、他の居室200の利用者からの問い合わせなどが生じる前に解決できる。
【0153】
帯域制限での対応は、402号室の利用者が利用している期間に渡って行ってもよいし、一定時間を経過したら解除してもよい。解除した後で、同じ帯域占有の問題が生じれば、解決処理部4は、再び同じ対応を行う。
【0154】
永続的に、各居室200の帯域を制限したり公平に分配したりしておくことも考えられるが、このようにすると、幾つかの居室200の利用者がいない場合に、残りの居室200の帯域が無意味に制限されるデメリットもある。また、居室200毎に異なる使用状態にフレキシブルに対応できない。
【0155】
このため、帯域占有の問題使用が発生しなければ居室ごとの分配や制限を統一せずに、問題使用が発生した後で帯域制限することでフレキシブルかつ安全な対応を行うことができる。
【0156】
(セッション占有への解決)
問題使用が、ある居室200で発生している「セッション占有」である場合には、
図9に示されるように、発生した居室200のネットワーク通信を遮断する。
図5などで説明したように、セッション占有を発生させている401号室に対して、解決処理部4は、ネットワーク通信を遮断する。解決処理部4は、ネットワーク回線210を介した通信を制御できるので、この通信制御を利用して、遮断できる。
【0157】
図9は、本発明の実施の形態1におけるセッション占有の解決を説明する説明図である。
【0158】
セッション数が異常な数となっている場合には、帯域を制限しても対応が不十分である。制限された帯域の中で、多くのセッションを確立させて他の居室での通信に不具合を生じさせるからである。
【0159】
また、セッション占有を生じさせている利用者は悪意あるいは問題が発生することを確信して行っていることが多い。このため、放置することは、施設300にとっても他の利用者にとっても好ましくない。また、このような悪意のある利用者は、問題使用をすることで、施設300にクレームをつけることもあり得る。
【0160】
このため、解決処理部4は、ネットワーク遮断による解決処理を行うのが適当である。利用者も自分が悪意あるいは確信をもってセッション占有をしていることを理解しているので、このような対応をされることを受け入れざるを得ないと考えられる。
【0161】
また、ネットワーク遮断されれば、同じようなセッション占有を行うことはできなくなり、他の居室200の利用者への不便を再発させる懸念も大きく減少する。施設300も、問題使用の利用者のみに対応を集中させ、他の利用者からのクレームや問い合わせを受ける可能性が減少する。
【0162】
このような解決処理により、施設300や利用者への適切な対応が図られる。勿論、利用者の気づかないバックグラウンドで行われるので、施設にとっても利用者にとっても便利である。
【0163】
(ループ接続への対応)
問題使用が、ある居室200で発生している「ループ接続」である場合には、
図10に示されるように、発生した居室200のネットワーク通信を遮断する。
図5などで説明したように、ループ接続を発生させている302号室に対して、解決処理部4は、ネットワーク通信を遮断する。解決処理部4は、ネットワーク回線210を介した通信を制御できるので、この通信制御を利用して、遮断できる。
【0164】
図10は、本発明の実施の形態1におけるループ接続の解決を説明する説明図である。
【0165】
悪意やいたずらによりループ接続がされている場合には、帯域を制限しても対応が不十分である。ループパケットが生じて、他の居室でのネットワーク通信ができない状態だからである。
【0166】
上記の通り、ループ接続を生じさせている利用者は悪意あるいはいたずら目的で行っていることが多い。このため、放置することは、施設300にとっても他の利用者にとっても好ましくない。また、このような悪意のある利用者は、問題使用をすることで、施設300にクレームをつけることもあり得る。
【0167】
このため、解決処理部4は、ネットワーク遮断による解決処理を行うのが適当である。利用者も自分が悪意あるいはいたずらでループ接続をしていることを理解しているので、このような対応をされることを受け入れざるを得ないと考えられる。
【0168】
また、ネットワーク遮断されれば、物理的にケーブルを差すことでのループ接続が解消されなくても、他の居室ではネットワーク通信の利用を行える。施設300も、問題使用の利用者のみに対応を集中させ、他の利用者からのクレームや問い合わせを受ける可能性が減少する。
【0169】
このような解決処理により、施設300や利用者への適切な対応が図られる。勿論、利用者の気づかないバックグラウンドで行われるので、施設にとっても利用者にとっても便利である。
【0170】
以上のように、実施の形態1におけるネットワーク管理装置1は、問題使用を検出して自動で解決できる。これにより、施設の利用者および管理者にとっての便益を提供できる。
【0171】
(実施の形態2)
【0172】
次に実施の形態2について説明する。実施の形態2では、他のバリエーションなどについて説明する。
【0173】
(警告部)
図11は、本発明の実施の形態2におけるネットワーク管理装置のブロック図である。
図11のネットワーク管理装置1は、警告部6を更に備える。警告部6は、問題使用を生じさせた居室200に対して警告を発する。言い換えれば、問題使用を生じさせた利用者に警告を発する。
【0174】
警告部6による警告を受けることで、問題使用を生じさせた利用者は、生じさせた事実を把握できる。更に、問題使用の検出や解決処理は、利用者の知らないバックグラウンドで行われている。警告が出されることで、問題使用を生じさせた悪意のない利用者に対して知らせることができる。
【0175】
さらには、悪意やいたずらでの利用者に対して、管理者側が問題使用を把握していることを知らしめることができる。これにより、問題使用を自ら生じさせる利用者へ自制を促すことができる。また、将来的な牽制にもなりえる。加えて、悪意ある利用者からの不条理なクレームを未然防止することにも役立つ。
【0176】
居室200には、
図11に示されるように受像機201が備わっていることが多い。例えば、宿泊施設の居室200には設置されている。受像機はテレビであったり、多機能モニターであったりする。これらの受像機は、セットトップボックスなどを介して、ネットワーク回線210に接続されていることが多い。このため、受像機201には、ネットワーク管理装置1からの通信制御が行える。
【0177】
この通信制御を通じて、警告部6は、受像機201に警告を表示する。
【0178】
また、警告部6は、問題使用を生じさせた居室200の情報端末220に警告を表示することもよい。情報端末220は、ネットワーク回線210に接続している。この接続状態を利用して、警告を表示させる。
【0179】
受像機201や情報端末220に警告を表示することで、問題使用をした利用者に警告を与えると共に、不条理なクレームを付けさせることを未然防止できる。あるいは、不条理なクレームをつけてきた場合にも、対応をしやすくなる。
【0180】
もちろん、バックグランドで処理された解決処理がなされたことを利用者に通知することで、問題使用の利用者にも丁寧に対応することになる。
【0181】
警告は、画像および音声の少なくとも一つを用いて、与えられればよい。これらの手段で警告が与えられることで、問題使用した利用者に対して確実に警告を与えつつ、問題使用と解決の把握を行わせることができるからである。
【0182】
図12は、本発明の実施の形態2における情報端末への警告表示を示す模式図である。情報端末に警告が表示されている状態を示している。ループ接続、帯域占有、セッション占有であることを明示した警告である。これにより、問題使用をした利用者への通知を行うと共に、知らしめることが確実にできる。
【0183】
また、表示したことで、問題使用の発生とこれを施設300が把握していたことの証拠とすることができる。証拠があることで、利用者による不条理なクレームに対応することができるようになる。
【0184】
図12では情報端末220に表示しているが、受像機201に表示してもよい。あるいは両方に表示されてもよい。
【0185】
受像機201および情報端末220の少なくとも一つに表示された警告は、利用者による操作で終了可能である。終了可能にすることで、利用者が視認したことを確実に認識させることができる。また終了可能の処理をすることは、利用者が認識したことを施設300の管理者が把握できるようになる。
【0186】
また、この表示と利用者による終了処理は、その時刻などと含めて証拠として保存可能である。この証拠に基づいて、利用者からのクレームに対応できる。
【0187】
制御部5は、問題使用の発生、問題使用の内容、問題使用の発生時刻、問題使用の発生した居室番号、警告の発生時刻、警告の発生された居室番号および利用者による警告終了の操作時刻の少なくとも一つを記憶可能である。
【0188】
このような記憶が可能であることで、問題使用が生じた場合の事後的な対処に対する証拠を施設300が得ることができる。問題使用をした利用者からの不条理なクレームへの対応にも活用できる。
【0189】
以上のように実施の形態2におけるネットワーク管理装置1は、問題使用した利用者への対応を図ることができる。
【0190】
なお、実施の形態1~2で説明されたネットワーク管理装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0191】
1 ネットワーク管理装置
2 問題検出部
3 表示部
4 解決処理部
5 制御部
6 警告部
200 居室
201 受像機
202 ネットワーク接続装置
210 ネットワーク回線
220 情報端末