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特許7523490正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240719BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240719BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240719BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240719BHJP
【FI】
H01M4/525
C01G53/00 A
H01M4/36 C
H01M4/505
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022092668
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2020187914の分割
【原出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022122997
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0156946
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0059446
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517113750
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOPRO BM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】チェ ムン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ スン ウー
(72)【発明者】
【氏名】スー ジュン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ジン キョン
(72)【発明者】
【氏名】リー ジュン ハン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ワン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ベ ジョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ドゥ ヨル
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/216694(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0008156(KR,A)
【文献】特開2021-086830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/36
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムのインターカレーション/デインターカレーションが可能な一次粒子および前記一次粒子が凝集した二次粒子を含み、
前記一次粒子の平均縦横比は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する勾配を有し、かつ
ドーパントの含量が前記二次粒子の表面部から前記二次粒子の中心部に向かって減少する勾配を有し、
前記ドーパントが、Nbを含み、
前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部までの距離をR、前記二次粒子の中心部からの距離が4/5R~Rである領域を第1領域(R )、前記二次粒子の中心部からの距離が0~2/5Rである領域を第2領域(R )というとき、
前記第1領域内一次粒子のうち前記平均縦横比(W )より小さい縦横比を有する一次粒子の比率は、45%以上である、正極活物質。
【請求項2】
前記一次粒子は、下記の化学式1で表される、請求項1に記載の正極活物質。
LiNi1-(x+y+z+z’)CoM1M2Nbz’ [化学式1]
(ここで、
M1は、MnおよびAlから選ばれる少なくとも1つであり、
M2は、P、Sr、Ba、B、Ti、Zr、Mn、Al、W、Ce、Hf、Ta、Cr、F、Mg、Cr、V、Fe、Zn、Si、Y、Ga、Sn、Mo、Ge、Nd、GdおよびCuから選ばれる少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なる元素であり、
0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0≦y≦0.20、0≦z≦0.20、0<z’≦0.20である)
【請求項3】
M2および/またはニオビウム(Nb)は、前記二次粒子の表面部から前記二次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示す、請求項2に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記一次粒子内に存在するリチウムイオン拡散経路は、前記M2および/またはニオビウム(Nb)の濃度勾配の方向と同一方向に形成された、請求項3に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記第1領域内一次粒子全体の平均縦横比(W)と前記第2領域内一次粒子全体の平均縦横比(W)の比(W/W)は、1.280超過2.217未満である、請求項に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記第1領域内一次粒子のうち前記平均縦横比(W)より小さい縦横比を有する一次粒子の平均縦横比(W)と前記第2領域内一次粒子全体の平均縦横比(W)の比(W/W)は、0.984超過1.465未満である、請求項に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記第1領域内一次粒子のうち前記平均縦横比(W)より大きい縦横比を有する一次粒子の平均縦横比(W)と前記第2領域内一次粒子全体の平均縦横比(W)の比(W/W)は、1.793超過3.076未満である、請求項に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記第1領域内一次粒子全体の平均縦横比(W)は、4.083未満である、請求項に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記第2領域内一次粒子全体の平均縦横比(W)は、1.842未満である、請求項に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記一次粒子間の界面および前記二次粒子の表面の少なくとも一部をカバーするコーティング層を含み、
前記コーティング層は、下記の化学式2で表される少なくとも1つの酸化物を含む、請求項1に記載の正極活物質。
LiM3 [化学式2]
(ここで、M3は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、0≦a≦10、0≦b≦8、2≦c≦13である)
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の正極活物質を含む正極。
【請求項12】
請求項11に記載の正極を使用するリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次粒子内に含まれた一次粒子の縦横比勾配を調節することによって、電気的特性が向上した正極活物質、前記正極活物質を含む正極、および前記正極を使用するリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、正極と負極に電気化学反応が可能な物質を使用することによって、電力を貯蔵するものである。このような電池のうち代表的な例としては、正極および負極でリチウムイオンがインターカレーション/デインターカレーションされるときの化学電位(chemical potential)の差異によって電気エネルギーを貯蔵するリチウム二次電池がある。
【0003】
前記リチウム二次電池は、リチウムイオンの可逆的なインターカレーション/デインターカレーションが可能な物質を正極と負極活物質として使用し、前記正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充填させて製造する。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム複合酸化物が使用されており、その例として、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiMnO等の複合酸化物が研究されている。
【0005】
前記正極活物質のうちLiCoOは、寿命特性および充放電効率に優れていて、最も多く使用されているが、原料として使用されるコバルトの資源的限界によって高価なので、価格競争力に限界があるという短所を有している。
【0006】
LiMnO、LiMn等のリチウムマンガン酸化物は、熱的安全性に優れ、価格が安いという長所があるが、容量が小さくて、高温特性が悪いという問題点がある。また、LiNiO系正極活物質は、高い放電容量の電池特性を示しているが、Liと遷移金属との間のカチオンミキシング(cation mixing)問題に起因して合成が難しく、これにより、レート(rate)特性に大きな問題点がある。
【0007】
また、このようなカチオンミキシングの深化程度に応じて多量のLi副産物が発生することとなり、これらのLi副産物の大部分は、LiOHおよびLiCOの化合物からなるので、正極ペーストの製造時にゲル(gel)化する問題点と電極の製造後に充放電の進行によるガス発生の原因となる。残留のLiCOは、セルのスウェリング現象を増加させて、サイクルを減少させると共に、バッテリーが膨らむ原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国特許公開第10-2015-0069334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
リチウム二次電池の市場では、電気自動車用リチウム二次電池の成長が市場の牽引役としての役割をしている中で、リチウム二次電池に使用される正極材の需要もやはり持続的に変化している。
【0010】
例えば、従来には、安全性の確保等の観点からLFPを使用したリチウム二次電池が主に使用されてきたが、最近になってLFPに比べて重量当たりエネルギー容量が大きいニッケル系リチウム複合酸化物の使用が拡大する傾向にある。
【0011】
このような正極材の動向に符合して、本発明は、高いエネルギー密度を有し、寿命および安定性が向上した正極活物質を提供することを目的とする。
【0012】
特に、本発明は、リチウムのインターカレーション/デインターカレーションが可能な一次粒子および前記一次粒子が凝集した二次粒子を含む正極活物質において、前記二次粒子内に含まれた一次粒子の縦横比勾配または球形度勾配を調節することによって、電気的特性が向上した正極活物質を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明の他の目的は、本願で定義された正極活物質を含む正極を提供することである。
【0014】
また、本発明のさらに他の目的は、本願で定義された正極を使用するリチウム二次電池を提供することである。
【0015】
本発明の目的は、以上で言及した目的(例えば、電気自動車用)に制限されず、言及されていない本発明の他の目的および長所は、下記の説明により理解され得、本発明の実施例によりさらに明らかに理解されるだろう。また、本発明の目的および長所は、特許請求範囲に示した手段およびその組合せにより実現され得ることを容易に知ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様によれば、リチウムのインターカレーション/デインターカレーションが可能な一次粒子および前記一次粒子が凝集した二次粒子を含む正極活物質が提供される。
【0017】
ここで、前記二次粒子内に含まれた前記一次粒子は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する縦横比勾配(aspect ratio gradient)を示すことができる。すなわち、前記一次粒子の平均縦横比は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する勾配を有し得る。
【0018】
この際、前記二次粒子の中心部内に存在する一次粒子の平均縦横比と前記二次粒子の表面部内に存在する一次粒子の平均縦横比の勾配範囲が調節されることによって、前記正極活物質内ニオビウム(Nb)のような金属元素がドープされることによる前記正極活物質の寿命特性の低下を最小とすると同時に、他の電気化学的特性(例えば、充電容量、効率、出力等)を向上させることができる。
【0019】
特に、本発明によれば、前記正極活物質の製造工程中に前記一次粒子内金属ドーパントの含量を増加するように前駆体に対する前記金属ドーパントの配合比率を増加させたり、前記前駆体と前記金属ドーパントの混合物に対する焼成(熱処理)条件を特異化することによって、前記二次粒子の表面部内全体一次粒子の平均縦横比と前記二次粒子の中心部内全体一次粒子の平均縦横比の差異が減少する傾向が現れるようにすることができる。
【0020】
これを通じて、前記正極活物質に含まれた前記一次粒子および前記二次粒子は、下記の条件を満たすことによって、前記正極活物質内粒子密度を向上させることができる。また、前記正極活物質の電気化学的特性を向上させることができる。
【0021】
前記正極活物質において、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部までの距離をR、前記二次粒子の中心部からの距離が4/5R~Rである領域を第1領域(R)、前記二次粒子の中心部からの距離が0~2/5Rである領域を第2領域(R)というとき、前記第1領域内全体一次粒子の平均縦横比(W)と前記第2領域内全体一次粒子の平均縦横比(W)の比(W/W)は、2.217未満であることが好ましい。
【0022】
また、前記平均縦横比(W)と前記平均縦横比(W)の比(W/W)は、1.280超過でありうる。
【0023】
前記第1領域内全体一次粒子の平均縦横比(W)と前記第2領域内全体一次粒子の平均縦横比(W)が上述した範囲内の値を有するように、前記二次粒子内に含まれた前記一次粒子が前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する縦横比勾配を示す場合、前記正極活物質を使用して製造されたリチウム二次電池の充・放電時に非対称的な体積膨張に起因した部分的なストレーン(strain)を効果的に減少させて、電気化学的特性を向上させることが可能である。
【0024】
また、本発明の他の態様によれば、本願に定義された正極活物質を含む正極が提供される。
【0025】
また、本発明のさらに他の態様によれば、本願に定義された正極を使用するリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の多様な実施例による正極活物質は、リチウムのインターカレーション/デインターカレーションが可能な一次粒子および前記一次粒子が凝集した二次粒子を含み、かつ、前記二次粒子内に含まれた前記一次粒子は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する縦横比勾配の範囲を調節することによって、前記二次粒子内前記一次粒子の密度を向上させると同時に、前記正極活物質の電気化学的特性を向上させることが可能である。
【0027】
特に、前記正極活物質内ニオビウム(Nb)のような金属元素がドープされる場合、寿命特性が低下する恐れがあるが、前記二次粒子の中心部内に存在する一次粒子の平均縦横比と前記二次粒子の表面部内に存在する一次粒子の平均縦横比の勾配範囲を調節する場合、前記正極活物質の寿命特性の低下を最小とすると同時に、他の電気化学的特性(例えば、充電容量、効率、出力等)を向上させることができる。
【0028】
また、本発明の多様な実施例による正極活物質内に含まれた前記一次粒子は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する縦横比勾配を示すが、前記縦横比勾配のサイズは、前記二次粒子の表面部に存在する前記一次粒子の球形度が大きく毀損されない範囲内で決定され得る。これに伴い、前記二次粒子の表面部に存在する前記一次粒子は、ロッド(rod)形状よりは前記二次粒子の中心部内に存在する一次粒子の形状(例えば、球形)に近い形状を有する。
【0029】
これを通じて、前記正極活物質内前記一次粒子の密度を向上させることができ、ひいては、前記正極活物質を使用したリチウム二次電池の充・放電時に前記正極活物質の非対称的な体積膨張に起因した部分的なストレーン(strain)を効果的に減少させることが可能である。このようなストレーン減少を通じて前記正極活物質の寿命後にクラック(crack)発生が減少することができる。これにより、リチウム二次電池の寿命および安定性が向上することができる。
【0030】
上述した効果と共に、本発明の具体的な効果は、以下に発明を実施するための具体的な事項を説明しつつ、一緒に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施例1による正極活物質の断面TEM写真である。
図2図1に表示された領域の部分拡大写真である。
図3図1に表示された領域の部分拡大写真である。
図4図1に表示された領域の部分拡大写真である。
図5図1に表示された領域の部分拡大写真である。
図6】本発明の実施例1による正極活物質の表面部(第1領域)内一次粒子の縦横比を測定した結果を示す断面TEM写真である。
図7】本発明の実施例1による正極活物質の中心部(第2領域)内一次粒子の縦横比を測定した結果を示す断面TEM写真である。
図8】比較例1による正極活物質の断面TEM写真である。
図9】前記図8に表示された領域の部分拡大写真である。
図10】前記図8に表示された領域の部分拡大写真である。
図11】前記図8に表示された領域の部分拡大写真である。
図12】前記図8に表示された領域の部分拡大写真である。
図13】比較例1による正極活物質の表面部(第1領域)内一次粒子の縦横比を測定した結果を示す断面TEM写真である。
図14】比較例1による正極活物質の中心部(第2領域)内一次粒子の縦横比を測定した結果を示す断面TEM写真である。
図15】比較例2による正極活物質の断面TEM写真である。
図16図15に表示された領域の部分拡大写真である。
図17図15に表示された領域の部分拡大写真である。
図18図15に表示された領域の部分拡大写真である。
図19図15に表示された領域の部分拡大写真である。
図20】比較例2による正極活物質の表面部(第1領域)内一次粒子の縦横比を測定した結果を示す断面TEM写真である。
図21】比較例2による正極活物質の中心部(第2領域)内一次粒子の縦横比を測定した結果を示す断面TEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明をさらに容易に理解するために、便宜上、特定の用語を本願に定義する。本願で別途定義しない限り、本発明に使用された科学用語および技術用語は、当該技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解される意味を有する。また、文脈上、特に指定しない限り、単数形態の用語は、それの複数形態も含むものであり、複数形態の用語は、それの単数形態をも含むものと理解されなければならない。
【0033】
以下、本発明による正極活物質および前記正極活物質を含む正極を使用するリチウム二次電池についてさらに詳細に説明することとする。
【0034】
正極活物質
本発明の一態様によれば、リチウムのインターカレーション/デインターカレーションが可能な一次粒子および前記一次粒子が凝集した二次粒子を含む正極活物質が提供される。
【0035】
ここで、前記一次粒子は、1つの結晶粒(grain or crystallite)を意味し、二次粒子は、複数の一次粒子が凝集して形成された凝集体を意味する。前記二次粒子を構成する前記一次粒子の間には、空隙および/または結晶粒界(grain boundary)が存在し得る。
【0036】
また、前記一次粒子の形状は、特に制限されないが、好ましくは、前記一次粒子が後述する縦横比勾配(aspect ratio gradient)の範囲を満たす形状を有し得る。
【0037】
一般的に、下記の化学式1で表される正極活物質の場合、前記一次粒子が前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する縦横比勾配を有するに従って前記二次粒子の表面部に向かってロッド形態が発達することができる。これにより、前記二次粒子の中心部には、相対的に球形に近い形状を有する一次粒子が主に存在する反面、前記二次粒子の表面部には、相対的にロッド(rod)形状(一方向に延びて細長い形状)を有する一次粒子が主に存在し得る。
【0038】
[化学式1]
LiNi1-(x+y+z+z’)CoM1M2Nbz’
【0039】
(ここで、
M1は、MnおよびAlから選ばれる少なくとも1つであり、
M2は、P、Sr、Ba、B、Ti、Zr、Mn、Al、W、Ce、Hf、Ta、Cr、F、Mg、Cr、V、Fe、Zn、Si、Y、Ga、Sn、Mo、Ge、Nd、GdおよびCuから選ばれる少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なる元素であり、
0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0≦y≦0.20、0≦z≦0.20、0<z’≦0.20である)
【0040】
ただし、本発明によれば、前記正極活物質内前記一次粒子の縦横比勾配の範囲が調節されることによって、前記二次粒子の表面部に存在する前記一次粒子も、相対的にロッド形状よりは前記二次粒子の中心部に存在する前記一次粒子と類似した形状、すなわち相対的に球形に近い形状を有し得る。
【0041】
より具体的に、本発明によれば、前記一次粒子の平均縦横比は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する勾配を有し、かつ前記一次粒子内金属ドーパントの含量が増加するに従って前記二次粒子の表面部内全体一次粒子の平均縦横比と前記二次粒子の中心部内全体一次粒子の平均縦横比の差異が減少する傾向を示すことができる。
【0042】
ここで、前記一次粒子の平均粒径は、0.1μm~20μm、好ましくは、0.2μm~15μm、より好ましくは、0.3μm~10μmの範囲内に存在することによって、本発明の多様な実施例による正極活物質を使用して製造された正極の最適密度を具現することができる。また、二次粒子の平均粒径は、凝集した一次粒子の平均粒径および粒子数によって変わり得るが、0.1μm~25μm、好ましくは、2μm~20μm、より好ましくは、3μm~15μmの範囲内に存在し得る。
【0043】
一実施例において、前記二次粒子内に含まれた前記一次粒子は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する縦横比勾配を示す。
【0044】
本願で使用される用語「縦横比」とは、前記一次粒子の長軸(Length;a軸)と短軸(Width;c軸)の比率(Length/Width ratio)であって、前記長軸が前記一次粒子の相対的に長い領域の方向を示す場合、前記短軸は、前記一次粒子の相対的に短い領域の長さを示す。この際、前記短軸は、前記長軸と垂直に交差する方向でありうる。
【0045】
これにより、前記長軸(a軸)と前記短軸(c軸)の長さによって前記一次粒子の全体的な形状が決定され得る。例えば、前記一次粒子の長軸と短軸の比率である縦横比が5を超過する場合、前記一次粒子の形状は、球形よりは相対的にロッド形態に近い。一方、前記一次粒子の縦横比が1に近いほど前記一次粒子の形状は球形に近い。
【0046】
すなわち、前記一次粒子の縦横比は、前記一次粒子の球形度を示す指標として活用され得、前記一次粒子の縦横比が1に近いほど前記一次粒子の球形度が大きいと理解することができる。
【0047】
また、前記二次粒子の中心部に存在する前記一次粒子が球形に近い形状を有し、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する前記一次粒子の縦横比勾配のサイズが小さい場合、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって減少する前記一次粒子の球形度勾配のサイズが小さいものと理解することができる。
【0048】
本発明の一実施例によれば、前記一次粒子は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する縦横比勾配を有し、この際、縦横比勾配のサイズは、後述する特定数値範囲を満たすことを特徴とする。また、上述した縦横比勾配パターンを有する前記一次粒子が前記二次粒子の中心部から放射状に存在するに従って充・放電時に前記一次粒子の体積膨張に起因したストレーン(strain)を効果的に緩和することが可能である。これにより、前記正極活物質を使用したリチウム二次電池の寿命および安定性を向上させることが可能である。
【0049】
前記実施例において、前記一次粒子は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって連続的に増加する縦横比勾配を示すことができるが、必ずこれに制限されるものではない。
【0050】
すなわち、前記一次粒子の縦横比が前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加するものの、勾配(gradient)を定義する方式によって前記一次粒子の縦横比勾配が連続的または不連続的に増加することもできる。
【0051】
この際、前記正極活物質に含まれた前記一次粒子および前記二次粒子は、少なくとも前記二次粒子の中心部内に存在する一次粒子の平均縦横比と前記二次粒子の表面部内に存在する一次粒子の平均縦横比の勾配範囲が調節されることによって、前記正極活物質内ニオビウム(Nb)のような金属元素がドープされることによる前記正極活物質の寿命特性の低下を最小とすると同時に、他の電気化学的特性(例えば、充電容量、効率、出力等)を向上させることができる。
【0052】
特に、本発明によれば、前記正極活物質の製造工程中に前記一次粒子内金属ドーパントの含量を増加するように前駆体に対する前記金属ドーパントの配合比率を増加させたり、前記前駆体と前記金属ドーパントの混合物に対する焼成(熱処理)条件を特異化することによって、上述した一次粒子の縦横比勾配を具現することができる。
【0053】
具体的に、前記正極活物質に含まれた前記一次粒子の平均縦横比は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する勾配を有し、かつ前記一次粒子内金属ドーパントの含量が増加するに従って前記二次粒子の表面部内全体一次粒子の平均縦横比と前記二次粒子の中心部内全体一次粒子の平均縦横比の差異が減少することが好ましい。
【0054】
すなわち、前記二次粒子の中心部内前記一次粒子の平均縦横比に比べて前記二次粒子の表面部内前記一次粒子の平均縦横比の差異が過度に大きくないことが好ましい。一方、前記正極活物質の製造工程中に前記一次粒子内金属ドーパントの含量を増加するように前駆体に対する前記金属ドーパントの配合比率を過度に増やしたり、前記前駆体と前記金属ドーパントの混合物に対する焼成(熱処理)条件が適合しない場合(例えば、昇温速度が過度に速いか、熱処理温度が過度に高いか、熱処理時間が過度に長い場合)、前記二次粒子の中心部内前記一次粒子の平均縦横比に比べて前記二次粒子の表面部内前記一次粒子の平均縦横比の差異が過度に小さくなり得る。この場合、かえって前記正極活物質の可逆効率および寿命特性等を低下させる恐れがある。
【0055】
ここで、前記正極活物質に含まれた前記一次粒子および前記二次粒子は、少なくとも下記の条件を満たすことによって、前記正極活物質内粒子密度を向上させることができる。これにより、前記正極活物質の電気化学的特性を向上させることができる。
【0056】
前記正極活物質において、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部までの距離をR、前記二次粒子の中心部からの距離が4/5R~Rである領域を第1領域(R)、前記二次粒子の中心部からの距離が0~2/5Rである領域を第2領域(R)と定義することとする。
【0057】
例えば、前記二次粒子の平均粒径が10μmである場合、前記第1領域は、前記二次粒子の最表面からの距離が0~1μmである領域を示し、前記第2領域は、前記二次粒子の真ん中から0~2μmである領域を示すことができる。
【0058】
この際、前記第1領域内全体一次粒子の平均縦横比(W)は、好ましくは、4.083未満、より好ましくは、4.0以下でありうる。
【0059】
前記第1領域内全体一次粒子の平均縦横比(W)が上記で定義した数値範囲を超過する場合、前記二次粒子の中心部に比べて前記二次粒子の表面部に存在する前記一次粒子の縦横比が過度に大きく、これにより、前記二次粒子の表面部に存在する前記一次粒子の形状は、相対的にロッド形状に近い。
【0060】
また、前記二次粒子の表面部に存在する前記一次粒子の縦横比が上記で定義した数値範囲を超過するためには、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する前記一次粒子の縦横比勾配のサイズが過度に大きくなければならない。
【0061】
この場合、前記正極活物質内前記一次粒子の密度を向上させることが難しいと共に、前記正極活物質を使用したリチウム二次電池の充・放電時に前記正極活物質の非対称的な体積膨張に起因した部分的なストレーン(strain)を効果的に減少させることも難しいことがある。すなわち、前記二次粒子の中心部と前記二次粒子の表面部内に存在する前記一次粒子の縦横比の差異が過度に大きくなって、充・放電時に前記一次粒子の体積膨張によるストレーン抑制が困難になることによって、前記正極活物質のクラック可能性が高くなりえる。これは、前記正極活物質の電気化学的特性および/または安定性等を悪化させる原因として作用することもできる。
【0062】
また、前記正極活物質内前記一次粒子の密度が減少するに従って前記正極活物質の比表面積が増加することができる。前記正極活物質の比表面積が増加する場合、前記正極活物質とリチウム二次電池内電解液の副反応の可能性が高くなって、リチウム二次電池の寿命および/または安定性が減少する恐れがある。
【0063】
一方、前記第2領域内全体一次粒子の平均縦横比(W)は、好ましくは、1.842未満、より好ましくは、1.8以下でありうる。
【0064】
前記第2領域内全体一次粒子の平均縦横比(W)が上記で定義した数値範囲を超過する場合、前記二次粒子の中心部に存在する前記一次粒子の縦横比が過度に大きいので、これは、前記正極活物質内前記一次粒子の密度を低下させる原因として作用することができる。
【0065】
また、前記第1領域内全体一次粒子の平均縦横比(W)と前記第2領域内全体一次粒子の平均縦横比(W)の比(W/W)は、2.217未満であることが好ましい。上述したように、本発明による正極活物質は、前記二次粒子内に含まれた前記一次粒子の縦横比勾配を調節することによって、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって前記一次粒子の球形度が減少する程度を減らして、前記正極活物質の電気的特性を向上させることを特徴とする。
【0066】
すなわち、前記平均縦横比(W)と前記平均縦横比(W)の比(W/W)が、好ましくは、2.217未満、より好ましくは、2.2以下になるようにすることによって、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する前記一次粒子の縦横比勾配のサイズを小さくすることができ、これにより、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって減少する前記一次粒子の球形度勾配のサイズを小さくすることができる。
【0067】
同様に、前記平均縦横比(W)と前記平均縦横比(W)の比(W/W)が2.217を超過する場合、前記二次粒子の中心部と前記二次粒子の表面部内に存在する前記一次粒子の縦横比の差異が過度に大きくなって、充・放電時に前記一次粒子の体積膨張によるクラック可能性が高くなりえる。
【0068】
また、前記平均縦横比(W)と前記平均縦横比(W)の比(W/W)は、少なくとも1.280超過であってもよく、これは、少なくとも前記一次粒子の平均縦横比が前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する勾配を示すことを意味し得る。このように前記二次粒子内前記一次粒子が前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する縦横比勾配を示し、かつ前記第1領域内全体一次粒子の平均縦横比(W)と前記第2領域内全体一次粒子の平均縦横比(W)の比(W/W)で示される前記縦横比勾配のサイズが1.280超過~2.217未満の範囲内に存在することによって、多様なトレード-オフ(trade-off)関係に存在する前記正極活物質の電気的特性が最適化され得る。
【0069】
一方、前記第1領域内一次粒子のうち前記平均縦横比(W)より小さい縦横比を有する一次粒子の比率は、45%以上でありうる。すなわち、上記に定義した一次粒子の比率は、前記第1領域内一次粒子のうち前記平均縦横比(W)より大きい縦横比を有する一次粒子の比率が調節されて、前記第1領域内全体一次粒子の平均縦横比(W)が4.083以上の値を有しないようにするためである。
【0070】
また、前記第1領域内一次粒子のうち前記平均縦横比(W)より小さい縦横比を有する一次粒子の平均縦横比(W)と前記平均縦横比(W)の比(W/W)は、0.984超過1.465未満でありうる。すなわち、本願で意図したところによる縦横比勾配または球形度勾配を有する正極活物質において、前記第1領域内に存在する前記一次粒子の縦横比が、前記第2領域内に存在する前記一次粒子の縦横比に比べて増加幅が少なくて、前記第1領域内に存在する前記一次粒子が相対的に球形に近い形状を有し得ることを意味する。
【0071】
一方、前記第1領域内一次粒子のうち前記平均縦横比(W)より大きい縦横比を有する一次粒子の平均縦横比(W)と前記平均縦横比(W)の比(W/W)は、1.793超過3.076未満でありうる。これは、本願で意図したところによる縦横比勾配または球形度勾配を有する正極活物質において、前記第1領域内に存在する前記一次粒子のうち前記第2領域内に存在する前記一次粒子の縦横比に比べて増加幅が大きい一次粒子であるとしても、縦横比が極端に大きい完全なロッド形状を有しないことを意味する。
【0072】
上述した多様な条件を満たす前記一次粒子は、下記の化学式1で表されるリチウム複合酸化物として定義され得る。
【0073】
[化学式1]
LiNi1-(x+y+z+z’)CoM1M2Nbz’
【0074】
(ここで、
M1は、MnおよびAlから選ばれる少なくとも1つであり、
M2は、P、Sr、Ba、B、Ti、Zr、Mn、Al、W、Ce、Hf、Ta、Cr、F、Mg、Cr、V、Fe、Zn、Si、Y、Ga、Sn、Mo、Ge、Nd、GdおよびCuから選ばれる少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なる元素であり、
0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0≦y≦0.20、0≦z≦0.20、0<z’≦0.20である)
【0075】
この際、上述した二次粒子の表面部内全体一次粒子の平均縦横比と前記二次粒子の中心部内全体一次粒子の平均縦横比の差異、特に前記平均縦横比(W)と前記平均縦横比(W)の比(W/W)は、前記z’が増加するに従って減少することができる。また、前記平均縦横比(W)と前記平均縦横比(W)の比(W/W)は、前記z’だけでなく、前記化学式1で表されるリチウム複合酸化物の前駆体と金属ドーパント(Nb含有原料物質)の混合物に対する焼成(熱処理)条件を特異化することによって減少することもできる。
【0076】
また、前記二次粒子の表面部に存在するM2および/またはニオビウム(Nb)は、前記二次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができる。すなわち、M2および/またはニオビウム(Nb)の濃度勾配の方向は、前記二次粒子の表面部から前記二次粒子の中心部に向かう方向でありうる。
【0077】
特に、前記一次粒子内存在するリチウムイオン拡散経路(lithium ion diffusion path)は、前記M2および/またはニオビウム(Nb)の濃度勾配の方向と同一に、すなわち前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向に形成され得る。前記リチウムイオン拡散経路は、前記M2および/またはニオビウム(Nb)の濃度勾配の方向(または前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向)と同一であるか、少なくとも前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部を連結する仮想の直線に対して±40°以内の角度を成すように存在し得る。
【0078】
このように前記一次粒子内リチウムイオン拡散経路が前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向に形成されるに従って前記正極活物質内リチウムイオンの拡散性を向上させることができ、ひいては、前記正極活物質の電気的特性の向上に寄与することができる。
【0079】
また、他の実施例において、本発明による正極活物質は、前記一次粒子(例えば、前記一次粒子間の界面)および/または前記一次粒子が凝集して形成された二次粒子の表面のうち少なくとも一部をカバーするコーティング層を含むことができる。
【0080】
例えば、前記コーティング層は、前記一次粒子の露出した表面のうち少なくとも一部をカバーするように存在し得る。特に、前記コーティング層は、前記二次粒子の最外郭に存在する前記一次粒子の露出した表面のうち少なくとも一部をカバーするように存在し得る。
【0081】
これにより、前記コーティング層は、前記一次粒子および/または前記一次粒子が凝集して形成された前記二次粒子の表面を連続的または不連続的にコーティングする層として存在し得る。前記コーティング層が不連続的に存在する場合、アイランド(island)形態で存在し得る。
【0082】
このように存在するコーティング層は、正極活物質の物理的および電気化学的特性の向上に寄与することができる。
【0083】
また、前記コーティング層は、前記一次粒子および/または前記一次粒子が凝集して形成された前記二次粒子と境界を形成しない固溶体の形態で存在することもできる。
【0084】
前記コーティング層は、下記の化学式2で表される少なくとも1つの酸化物を含むことができる。すなわち、前記コーティング層は、下記の化学式2で表される酸化物が存在する領域で定義され得る。
【0085】
[化学式2]
LiM3
【0086】
(ここで、
M3は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0≦a≦10、0≦b≦8、2≦c≦13である)
【0087】
また、前記コーティング層は、1つの層内異種の酸化物が同時に存在したり、上記の化学式2で表される異種の酸化物がそれぞれ別個の層に存在する形態でありうる。
【0088】
上記の化学式2で表される酸化物は、上記の化学式1で表される一次粒子と物理的および/または化学的に結合された状態でありうる。また、前記酸化物は、上記の化学式1で表される一次粒子と固溶体を形成した状態で存在することもできる。
【0089】
本実施例による正極活物質は、前記一次粒子(例えば、前記一次粒子間の界面)および/または前記一次粒子が凝集して形成された二次粒子の表面のうち少なくとも一部をカバーするコーティング層を含むことによって、構造的な安定性が高くなりえる。また、このような正極活物質をリチウム二次電池に使用する場合、正極活物質の高温貯蔵安定性および寿命特性が向上することができる。また、前記酸化物は、前記正極活物質内残留リチウムを低減させると同時に、リチウムイオンの移動経路(pathway)として作用することによって、リチウム二次電池の効率特性を向上させるのに影響を与えることができる。
【0090】
また、場合によって、前記酸化物は、前記一次粒子間の界面および前記二次粒子の表面のうち少なくとも一部だけでなく、前記二次粒子の内部に形成された内部空隙にも存在し得る。
【0091】
前記酸化物は、リチウムとAで表される元素が複合化した酸化物であるか、Aの酸化物であって、前記酸化物は、例えば、Li、LiZr、LiTi、LiNi、Li、LiCo、LiAl、Co、Al、W、Zr、TiまたはB等であり得るが、上述した例は、理解を助けるために便宜上記載したものに過ぎず、本願で定義された前記酸化物は、上述した例に制限されない。
【0092】
他の実施例において、前記酸化物は、リチウムとAで表される少なくとも2種の元素が複合化した酸化物であるか、リチウムとAで表される少なくとも2種の元素が複合化した酸化物をさらに含むことができる。リチウムとAで表される少なくとも2種の元素が複合化した酸化物は、例えば、Li(W/Ti)、Li(W/Zr)、Li(W/Ti/Zr)、Li(W/Ti/B)等であり得るが、必ずこれに制限されるものではない。
【0093】
ここで、前記酸化物は、前記二次粒子の表面部から前記二次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができる。これにより、前記酸化物の濃度は、前記二次粒子の最表面から前記二次粒子の中心部に向かって減少することができる。
【0094】
上述したように、前記酸化物が前記二次粒子の表面部から前記二次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことによって、前記正極活物質の表面に存在する残留リチウムを効果的に減少させて、未反応の残留リチウムによる副反応を未然に防止することができる。また、前記酸化物により前記正極活物質の表面内側領域での結晶性が低くなるのを防止することができる。また、電気化学反応中に前記酸化物により正極活物質の全体的な構造が崩壊されるのを防止することができる。
【0095】
追加的に、前記コーティング層は、上記の化学式2で表される少なくとも1つの酸化物を含む第1酸化物層と上記の化学式2で表される少なくとも1つの酸化物を含み、かつ前記第1酸化物層に含まれた酸化物と異なる酸化物を含む第2酸化物層を含むことができる。
【0096】
例えば、前記第1酸化物層は、前記二次粒子の最外郭に存在する前記一次粒子の露出した表面のうち少なくとも一部をカバーするように存在し得、前記第2酸化物層は、前記第1酸化物層によりカバーされない前記一次粒子の露出した表面および前記第1酸化物層の表面のうち少なくとも一部をカバーするように存在し得る。
【0097】
リチウム二次電池
本発明のさらに他の態様によれば、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極活物質層とを含む正極が提供され得る。ここで、前記正極活物質層は、本発明の多様な実施例による正極活物質を含むことができる。したがって、正極活物質は、前述したところと同一なので、便宜上、具体的な説明を省略し、以下では、残りの前述しない構成のみについて説明することとする。
【0098】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えばステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの等が使用され得る。また、前記正極集電体は、通常、3~500μmの厚みを有し得、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して、正極活物質の接着力を高めることもできる。例えばフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等多様な形態で使用され得る。
【0099】
前記正極活物質層は、前記正極活物質と共に、導電材および必要に応じて選択的にバインダーを含む正極スラリー組成物を前記正極集電体に塗布して製造され得る。
【0100】
この際、前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80~99wt%、より具体的には、85~98.5wt%の含量で含まれ得る。上記した含量範囲で含まれるとき、優れた容量特性を示すことができるが、必ずこれに制限されるものではない。
【0101】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特別な制限なしに使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維等の炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体等の導電性高分子等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して0.1~15wt%で含まれ得る。
【0102】
前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して0.1~15wt%で含まれ得る。
【0103】
前記正極は、上記した正極活物質を利用することを除いて、通常の正極の製造方法により製造され得る。具体的に、上記した正極活物質および選択的に、バインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した正極スラリー組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延することによって製造することができる。
【0104】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であってもよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚み、製造収率を考慮して前記正極活物質、導電材およびバインダーを溶解または分散させ、以後、正極の製造のための塗布時に優れた厚み均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0105】
また、他の実施例において、前記正極は、前記正極スラリー組成物を別の支持体上にキャストした後、該支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることによって製造されることもできる。
【0106】
また、本発明のさらに他の態様によれば、上述した正極を含む電気化学素子が提供され得る。前記電気化学素子は、具体的に電池、キャパシタ等であってもよく、より具体的には、リチウム二次電池であってもよい。
【0107】
前記リチウム二次電池は、具体的に、正極と、前記正極と対向して位置する負極と、前記正極と前記負極との間に介在される分離膜および電解質とを含むことができる。ここで、前記正極は、上記で説明したことと同一なので、便宜上、具体的な説明を省略し、以下では、前述しない残りの構成のみについて具体的に説明する。
【0108】
前記リチウム二次電池は、前記正極、前記負極および前記分離膜の電極組立体を収納する電池容器および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0109】
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含むことができる。
【0110】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金等が使用され得る。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚みを有し得、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して、負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等多様な形態で使用され得る。
【0111】
前記負極活物質層は、前記負極活物質と共に、導電材および必要に応じて選択的にバインダーを含む負極スラリー組成物を前記負極集電体に塗布して製造され得る。
【0112】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物が使用され得る。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素等の炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金等リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープおよび脱ドープし得る金属酸化物;またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物等が挙げられ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が使用されることもできる。また、炭素材料は、低結晶性炭素および高結晶性炭素等がすべて使用され得る。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)および硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球形状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)等の高温焼成炭素が代表的である。
【0113】
前記負極活物質は、負極活物質層の全体重量を基準として80~99wt%で含まれ得る。
【0114】
前記バインダーは、導電材、活物質および集電体間の結合に助力する成分であって、通常、負極活物質層の全体重量を基準として0.1~10wt%で添加され得る。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体等が挙げられる。
【0115】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極活物質層の全体重量を基準として10wt%以下、好ましくは5wt%以下で添加され得る。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末等の金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体等の導電性素材等が使用され得る。
【0116】
一実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布し乾燥することによって製造されたり、または前記負極スラリー組成物を別の支持体上にキャストした後、該支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることによって製造され得る。
【0117】
また、他の実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布し乾燥したり、または前記負極スラリー組成物を別の支持体上にキャストした後、該支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることによって製造されることもできる。
【0118】
一方、前記リチウム二次電池において、分離膜は、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池において分離膜として使用されるものであれば、特別な制限なしに使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありかつ電解液含浸能力に優れていることが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体等のようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用され得る。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等からなる不織布が使用されることもできる。また、耐熱性または機械的強度の確保のためにセラミック成分または高分子物質が含まれたコートされた分離膜が使用されることもでき、選択的に単層または多層構造で使用され得る。
【0119】
また、本発明において使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質等が挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0120】
具体的に、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0121】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割をすることができるものであれば、特別な制限なしに使用され得る。具体的に、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)等のエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)等のエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)等のケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)等の芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)等のカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合の芳香環またはエーテル結合を含むことができる)等のニトリル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;1,3-ジオキソラン等のジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類等が使用され得る。これらの中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート等)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネート等)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液の性能が優秀に現れることができる。
【0122】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供できる化合物であれば、特別な制限なしに使用され得る。具体的に前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAl0、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(C等が使用され得る。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれる場合、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0123】
前記電解質には、前記電解質構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量減少の抑制、電池の放電容量の向上等を目的として例えば、ジフルオロエチレンカーボネート等のようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウム等の添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。この際、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1~5wt%で含まれ得る。
【0124】
上記のように、本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および寿命特性を安定的に示すので、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等の携帯用機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)等の電気自動車分野等に有用である。
【0125】
本発明によるリチウム二次電池の外形は、特別な制限がないが、缶を使用した円筒形、角形、パウチ(pouch)形またはコイン(coin)形等になり得る。また、リチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用され得ると共に、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用され得る。
【0126】
本発明のさらに他の態様によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよび/またはこれを含む電池パックが提供され得る。
【0127】
前記電池モジュールまたは前記電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのうちいずれか1つ以上の中大型デバイス電源として用いられる。
【0128】
以下では、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、ただ本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇がこれらの実施例により制限されるものと解されないと言える。
【0129】
製造例1.正極活物質の製造
(1)実施例1
共沈法(co-precipitation method)により球形のNi0.80Co0.10Mn0.10(OH)水酸化物前駆体を合成した。具体的に、90L級の反応器で硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸マンガンを80:1:1のモル比で混合した1.5Mの複合遷移金属硫酸水溶液に25wt%のNaOHと30wt%のNHOHを投入した。反応器内のpHは、11.5を維持させ、この際の反応器の温度は、60℃に維持し、不活性ガスであるNを反応器に投入して、製造された前駆体が酸化しないようにした。合成撹拌の完了後に、Filter press(F/P)装備を用いて洗浄および脱水を進めて、Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)水酸化物前駆体を収得した。
【0130】
次に、合成された前駆体にLiOHおよびNb含有原料物質(Nb)を添加した後、焼成して、リチウム複合酸化物を製造した。具体的に、前駆体にLiOHおよびNb含有原料物質(Nb)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、830℃まで分当たり1℃で昇温して、15時間の間熱処理した後、自然冷却して、リチウム複合酸化物を得た。前記Nb含有原料物質(Nb)は、焼成前に全体組成物のうち0.5mol%になるように混合した。
【0131】
次に、得られたリチウム複合酸化物を焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、700℃まで分当り2℃で昇温して、20時間の間熱処理した後、自然冷却した。
【0132】
(2)実施例2
前記Nb含有原料物質(Nb)が焼成前に全体組成物のうち1.0mol%になるように混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、860℃まで分当たり1℃で昇温して熱処理したことを除いて、実施例1と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0133】
(3)実施例3
共沈法(co-precipitation method)により球形のNi0.94Co0.03Mn0.03(OH)水酸化物前駆体を合成した後、これにLiOHおよびNb含有原料物質(Nb)を添加した後、焼成して、リチウム複合酸化物を製造するものの、前記Nb含有原料物質(Nb)が焼成前に全体組成物のうち1.0mol%になるように混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、780℃まで分当たり1℃で昇温して熱処理したことを除いて、実施例1と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0134】
(4)比較例1
前記Nb含有原料物質(Nb)を焼成前に混合せず、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、810℃まで分当たり1℃で昇温して熱処理したことを除いて、実施例1と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0135】
(5)比較例2
前記Nb含有原料物質(Nb)を焼成前に全体組成物のうち2.0mol%になるように混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、860℃まで分当たり1℃で昇温して熱処理したことを除いて、実施例1と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0136】
(6)比較例3
前記Nb含有原料物質(Nb)が焼成前に全体組成物のうち0.5mol%になるように混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、760℃まで分当たり1℃で昇温して熱処理したことを除いて、実施例3と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0137】
(7)比較例4
前記Nb含有原料物質(Nb)が焼成前に全体組成物のうち2.0mol%になるように混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、820℃まで分当たり1℃で昇温して熱処理したことを除いて、実施例3と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0138】
(8)比較例5
合成された前駆体にLiOHおよびNb含有原料物質(Nb)を全体組成物のうち0.5mol%になるように混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、830℃まで分当たり5℃で昇温して15時間の間熱処理した後、自然冷却して、リチウム複合酸化物を得たことを除いて、実施例1と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0139】
(9)比較例6
合成された前駆体にLiOHおよびNb含有原料物質(Nb)を全体組成物のうち0.5mol%になるように混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、830℃まで分当たり1℃で昇温して、20時間の間熱処理した後、自然冷却して、リチウム複合酸化物を得たことを除いて、実施例1と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0140】
製造例2.リチウム二次電池の製造
製造例1によって製造された正極活物質それぞれ94wt%、カーボンブラック(carbon black)3wt%、PVDFバインダー3wt%をN-メチル-2ピロリドン(NMP)30gに分散させて、正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを厚さ15μmの正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布および乾燥し、ロールプレス(roll press)を実施して、正極を製造した。正極のローディングレベルは、10mg/cmであり、電極密度は、3.2g/cmであった。
【0141】
前記正極に対して金属リチウムを対極(counter electrode)とし、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)を2:4:4の体積比で混合した溶媒に1.15MのLiPFを添加して製造した。
【0142】
前記正極および負極の間に多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなるセパレーターを介在して電池組立体を形成し、前記電解液を注入して、リチウム二次電池(コインセル)を製造した。
【0143】
実験例1.正極活物質のTEM分析
実施例1、比較例1および比較例2による正極活物質(二次粒子)それぞれをCross-section Polisher(加速電圧5.0kV、4時間ミーリング)で断面処理した後、断面TEM写真を得た。ここで、前記正極活物質の平均粒径は、10μmであり、断面TEM写真上で前記正極活物質の最表面からの距離が0~1μmである領域を表面部(第1領域)と定義し、前記正極活物質の真ん中から0~2μmである領域を中心部(第2領域)と定義した。
【0144】
図1は、本発明の実施例1による正極活物質の断面TEM写真であり、図2図5は、図1に表示された領域の部分拡大写真である。
【0145】
図6は、本発明の実施例1による正極活物質の表面部(第1領域)内一次粒子の縦横比を測定した結果を示す断面TEM写真であり、図7は、本発明の実施例1による正極活物質の中心部(第2領域)内一次粒子の縦横比を測定した結果を示す断面TEM写真である。
【0146】
図1図7を参照すると、実施例1による正極活物質は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する縦横比勾配を有し、かつ前記第1領域(1番区画、2番区画および4番区画)内に存在する前記一次粒子の形状が相対的に球形に近いことを確認することができる。特に、図6および図7に表示された縦横比の測定結果をみると、前記第2領域内に存在する前記一次粒子に比べて前記第1領域内に存在する前記一次粒子の縦横比の増加幅が過度に大きくないので、前記第1領域内に存在する前記一次粒子の縦横比乃至球形度が比較例1に比べて大きいことを確認することができる。
【0147】
図8は、比較例1による正極活物質の断面TEM写真であり、図9図12は、前記図8に表示された領域の部分拡大写真である。
【0148】
図13は、比較例1による正極活物質の表面部(第1領域)内一次粒子の縦横比を測定した結果を示す断面TEM写真であり、図14は、比較例1による正極活物質の中心部(第2領域)内一次粒子の縦横比を測定した結果を示す断面TEM写真である。
【0149】
図8図12を参照すると、比較例1による正極活物質は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する縦横比勾配を有し、特に、前記第1領域(1番区画、2番区画および4番区画)内に存在する前記一次粒子の形状は、ロッド(rod)形状であることを確認することができる。また、図13および図14に表示された縦横比の測定結果をみると、前記第2領域内に存在する前記一次粒子に比べて前記第1領域内に存在する前記一次粒子の縦横比の増加幅が過度に大きく、前記第1領域内に存在する前記一次粒子の縦横比乃至球形度は、実施例1に比べて低いことを確認することができる。
【0150】
図15は、比較例2による正極活物質の断面TEM写真であり、図16図19は、図15に表示された領域の部分拡大写真である。
【0151】
図20は、比較例2による正極活物質の表面部(第1領域)内一次粒子の縦横比を測定した結果を示す断面TEM写真であり、図21は、比較例2による正極活物質の中心部(第2領域)内一次粒子の縦横比を測定した結果を示す断面TEM写真である。
【0152】
図15図19を参照すると、比較例2による正極活物質は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かって増加する縦横比勾配をほとんど示しておらず、前記第1領域(1番区画、2番区画および4番区画)内存在する前記一次粒子の形状やは、り前記第2領域(3番区画)内に存在する前記一次粒子とほぼ類似していることを確認することができる。このような結果は、図20および図21に表示された縦横比の測定結果でも同一に確認することができる。
【0153】
下記の表1および表2には、製造例によって製造された正極活物質の第1領域内平均縦横比(W)、第2領域内平均縦横比(W)、前記第1領域内一次粒子のうち前記平均縦横比(W)より小さい縦横比を有する一次粒子の平均縦横比(W)および前記第1領域内一次粒子のうち前記平均縦横比(W)より大きい縦横比を有する一次粒子の平均縦横比(W)の測定結果をそれぞれ示す。前記平均値は、各領域内最小100個の一次粒子の縦横比の平均値である。
【0154】
【表1】
:第1領域(正極活物質の最表面からの距離が0~1μmである領域)内全体一次粒子の平均縦横比
:第2領域(正極活物質の真ん中から0~2μmである領域)内全体一次粒子の平均縦横比
:第1領域内一次粒子のうちWより小さい縦横比を有する一次粒子の平均縦横比
:第1領域内一次粒子のうちWより大きい縦横比を有する一次粒子の平均縦横比
P:第1領域内一次粒子のうちWより小さい縦横比を有する一次粒子の比率
【0155】
【表2】
【0156】
実験例2.リチウム二次電池の電池容量および寿命特性の評価
製造例2によって製造されたリチウム二次電池を電気化学分析装置(Toyo、Toscat-3100)を利用して25℃、電圧範囲3.0V~4.3V、0.2C~5.0Cの放電率を適用して充放電実験を実施して、初期充電容量、初期放電容量、初期可逆効率およびレート特性を測定した。
【0157】
また、上述した方法で製造されたリチウム二次電池を25℃の温度で3.0V~4.4Vの駆動電圧の範囲内で1C/1Cの条件で50回充・放電を実施した後、初期容量対比50サイクル目の放電容量の比率(サイクル容量維持率;capacity retention)を測定した。
【0158】
測定された電池容量および寿命特性結果のうち、前駆体の組成がNi0.8Co0.1Mn0.1である正極活物質に対する測定結果は、下記の表3および表4に示し、前駆体の組成がNi0.94Co0.03Mn0.03である正極活物質に対する測定結果は、下記の表5および表6に示す。
【0159】
【表3】
【0160】
【表4】
【0161】
前記表3の結果を参考にすると、前記二次粒子の中心部内に存在する一次粒子の平均縦横比と前記二次粒子の表面部内に存在する一次粒子の平均縦横比の勾配範囲が調節された実施例1および実施例2による正極活物質が、比較例1、比較例2、比較例5および比較例6による正極活物質に比べて初期可逆効率に優れていることを確認することができる。
【0162】
また、前記表4の結果を参考にする、実施例1および実施例2による正極活物質は、正極活物質の製造過程でNb含有原料物質が使用された比較例2、比較例5および比較例6による正極活物質とは異なって、Nb含有原料物質が使用されない比較例1による正極活物質と類似した水準の寿命特性を示すことを確認することができる。すなわち、本発明の実施例による正極活物質は、前記正極活物質内ニオビウム(Nb)のような金属元素がドープされても、前記二次粒子内一次粒子の平均縦横比の勾配を調節することによって、前記寿命特性を維持しつつ、容量特性を向上させることができる。
【0163】
【表5】
【0164】
【表6】
【0165】
全般的に実施例3による正極活物質は、Ni0.94Co0.03Mn0.03組成の前駆体を使用するに従って実施例1による正極活物質の初期充電容量が高いことを確認することができる。ただし、実施例3による正極活物質は、実施例1による正極活物質に比べて初期非可逆容量がさらに大きいので、初期可逆効率が低いものと測定された。
【0166】
一方、前記表5および表6の結果を参考にすると、実施例3による正極活物質は、同一組成の前駆体を使用した比較例3および比較例4による正極活物質に比べて初期可逆効率および寿命特性に優れていることを確認することができる。前記結果は、表3および表4の結果と同様に、本発明の実施例による正極活物質が、前記正極活物質内ニオビウム(Nb)のような金属元素がドープされても、前記二次粒子内一次粒子の平均縦横比の勾配を調節することによって、前記寿命特性を維持しつつ、容量特性を向上させることができるためである。
【0167】
以上、本発明の実施例について説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者なら、特許請求範囲に記載された本発明の思想を逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加等により本発明を多様に修正および変更させることができ、これも、本発明の権利範囲内に含まれるといえる。
図1
図2
図3
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