IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クリック アンド ソッファ インダストリーズ、インク.の特許一覧

特許7523503ワイヤーループのワイヤーループプロファイルを生成する方法、および隣接したワイヤーループ間に十分な間隙があるか検証する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ワイヤーループのワイヤーループプロファイルを生成する方法、および隣接したワイヤーループ間に十分な間隙があるか検証する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
H01L21/60 301D
【請求項の数】 25
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022148675
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2017120928の分割
【原出願日】2017-06-21
(65)【公開番号】P2022188091
(43)【公開日】2022-12-20
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】62/357,006
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506395943
【氏名又は名称】クリック アンド ソッファ インダストリーズ、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ミルトン、バジル
(72)【発明者】
【氏名】チン、ウェイ
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-339464(JP,A)
【文献】特開平08-078460(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0065761(US,A1)
【文献】特開2005-339463(JP,A)
【文献】特開2010-251374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体パッケージに関連するワイヤーループプロファイルを生成する方法であって、
(a)前記半導体パッケージに関するパッケージデータを提供する工程と、
(b)前記半導体パッケージに含まれる複数のワイヤーループに対応する複数のループプロファイルを生成する工程であって、
前記複数のループプロファイルの各々は、前記ワイヤーループの潜在的欠陥を考慮して生成され、当該工程により、対応するワイヤーループの長さの少なくとも一部に沿った許容帯状領域(tolerance band)がそれぞれ生成されるものであり、
各許容帯状領域は、各ループプロファイルの周囲に所定の間隙ゾーンを画定するものであり、
前記許容帯状領域は、前記複数のワイヤーループの各々の長さに沿った複数の位置において非円形状を有するものである、
前記生成する工程と
を有する、方法。
【請求項2】
半導体パッケージに関連するワイヤーループプロファイルを生成する方法であって、
(a)前記半導体パッケージに関するパッケージデータを提供する工程と、
(b)前記半導体パッケージに含まれる複数のワイヤーループに対応する複数のループプロファイルを生成する工程であって、
前記複数のループプロファイルの各々は、対応するワイヤーループの長さの少なくとも一部に沿った許容帯状領域(tolerance band)をそれぞれ含むものであり、
前記許容帯状領域は、前記複数のワイヤーループの各々の長さに沿った複数の位置において非円形状を有するものである、
前記生成する工程と、
(c)前記工程(b)の後、前記複数のループプロファイルを使用して前記半導体パッケージに含まれる前記複数のワイヤーループを形成する順序を自動的に決定する工程と
を有する、方法。
【請求項3】
半導体パッケージに関連するワイヤーループプロファイルを生成する方法であって、
(a)前記半導体パッケージに関するパッケージデータを提供する工程と、
(b)前記半導体パッケージに含まれる複数のワイヤーループに対応する複数のループプロファイルを生成する工程であって、
前記複数のループプロファイルの各々は、対応するワイヤーループの長さの少なくとも一部に沿った許容帯状領域(tolerance band)をそれぞれ含むものであり、
前記許容帯状領域の各々は、各ループプロファイルの周囲の間隙ゾーンであり、
前記許容帯状領域の各々は、錐台形状、楕円形状、円形状、および球形状のうちの少なくとも1つの形状を有するものであり、
前記許容帯状領域は、前記複数のワイヤーループの各々の長さに沿った複数の位置において非円形状を有するものである、
前記生成する工程と、
を有し、
前記許容帯状領域の各々は、前記工程(b)において、(i)前記半導体パッケージに含まれる隣接するワイヤーループ、および(ii)前記半導体パッケージにおける追加の障害物のうちの少なくとも1つを考慮して生成されるものである、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法において、前記工程(b)は、前記複数のワイヤーループの各々について、前記許容帯状領域をそれぞれ含む3次元のループプロファイルを生成する工程を含むのものである、方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法において、さらに、
前記工程(b)において生成された前記複数のワイヤーループに対応する前記複数のループプロファイルが所定の基準を満たすかどうか検証する工程を有するものである、方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、前記所定の基準は、前記複数のワイヤーループ間の許容範囲内の間隙を含むものである、方法。
【請求項7】
請求項5記載の方法において、前記複数のループプロファイルが所定の基準を満たさない場合、前記複数のループプロファイルのうちの少なくとも1つが調整されるものである、方法。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法において、前記工程(b)は、ワイヤーボンディング装置と接続されたコンピュータを使用して実行されるものである、方法。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法において、前記工程(b)は、ワイヤーボンディング装置とは独立したコンピュータを使用して実行されるものである、方法。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法において、前記ワイヤーループは、前記半導体パッケージ上の少なくとも2つの接点に接続するものである、方法。
【請求項11】
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法において、前記許容帯状領域は、前記ワイヤーループの長さに沿った複数の位置における前記ワイヤーループの許容範囲内の位置を示すものである、方法。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法において、前記ループプロファイルは、ワイヤーボンディング装置でループパラメータを導出するために使用されるものである、方法。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法において、導出されるループプロファイルは、(i)前記ワイヤーループを形成するためのツール軌跡、(ii)ワイヤーボンディング装置のトランスデューサーによって適用される接合エネルギーパラメータ、(iii)ワイヤーボンディング装置によって適用される接合力パラメータ、(iv)接合エネルギーおよび接合力の少なくとも1つに関連するタイミングパラメータ、(v)前記ワイヤーループを形成するためのボンディング周期における少なくとも一定期間のボンディングツールの速度、および(vi)前記ワイヤーループを形成するためのボンディング周期における少なくとも一定期間のワイヤークランプの位置、のうちの少なくとも1つを含むものである、方法。
【請求項14】
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法において、前記工程(b)は、前記半導体パッケージ上にボンディングされるように構成された前記複数のワイヤーループについて各ワイヤーループの許容帯状領域含むループプロファイルを生成する工程を含むものであり、前記複数のループプロファイルの各々の前記許容帯状領域は対応するループプロファイルの形状の関数である、方法。
【請求項15】
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法において、前記工程(a)において提供される前記パッケージデータは、(a1)前記半導体パッケージに関するCADデータおよび(a2)オンラインの教示参照システムを利用して導出されるパッケージデータを含むものである、方法。
【請求項16】
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法において、前記工程(a)において提供される前記パッケージデータは、半導体ダイの高さ、半導体ダイのダイパッド位置、リードフレームのリード位置、第1のボンディング位置と第2のボンディング位置との間の相対距離、ワイヤーの直径、およびワイヤーの種類のうちの少なくとも1つを含むものである、方法。
【請求項17】
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法において、前記ワイヤーループは、ボールボンディング装置上でボールボンディング工程を用いて形成されるものである、方法。
【請求項18】
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法において、前記ワイヤーループは、ウェッジボンディング装置上でウェッジボンディング工程を用いて形成されるものである、方法。
【請求項19】
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法において、前記ワイヤーループは、リボンボンディング装置上でリボンボンディング工程を用いて形成されるものである、方法。
【請求項20】
請求項2記載の方法において、前記工程(c)は、ワイヤーボンディング装置と接続されたコンピュータを使用して実行されるものである、方法。
【請求項21】
半導体パッケージに関連するワイヤーループプロファイルを生成する方法であって、
(a)前記半導体パッケージに関するパッケージデータを提供する工程と、
(b)前記半導体パッケージに含まれる複数のワイヤーループに対応する複数のループプロファイルを生成する工程であって、
前記複数のループプロファイルの各々は、対応するワイヤーループの長さの少なくとも一部に沿った許容帯状領域(tolerance band)をそれぞれ含むものであり、
前記許容帯状領域は、前記複数のワイヤーループの各々の長さに沿った複数の位置において非円形状を有するものである、
前記生成する工程と、
(c1)前記工程(b)において生成された、前記複数のワイヤーループに対応する前記複数のループプロファイルが所定の基準を満たすかどうか検証する工程と、
(c2)前記所定の基準を満たさない場合、前記複数のループプロファイルのうち少なくとも1つのループプロファイルを調整する工程と、
(c3)前記所定の基準を満たさない場合、前記工程(c1)および前記工程(c2)を所定の回数だけ繰り返す工程と、
(c4)前記所定の回数の後、前記所定の基準を満たさない場合、前記半導体パッケージはワイヤーボンディングに不適切であると決定する工程と
を有する方法。
【請求項22】
半導体パッケージに関連するワイヤーループプロファイルおよび当該ワイヤーループプロファイルに関連付けられた許容帯状領域(tolerance band)を生成する方法であって、
(a)前記半導体パッケージに関するパッケージデータを提供する工程と、
(b)前記半導体パッケージに含まれる複数のワイヤーループに対応する複数のループプロファイルを生成する工程であって、
前記複数のループプロファイルの各々は、対応するワイヤーループの長さの少なくとも一部に沿った許容帯状領域をそれぞれ含むものであり、
前記許容帯状領域は、前記複数のワイヤーループの各々の長さに沿った複数の位置において非円形状を有するものである、
前記複数のループプロファイルを生成する工程と、
(c)前記半導体パッケージにおける少なくとも1つの障害物に関連する少なくとも1つの許容帯状領域を生成する工程であって、
前記少なくとも1つの障害物は、(i)前記半導体パッケージのダイの一部分、および(ii)前記半導体パッケージの別のコンポーネントからなる群から選択されるものである、
前記少なくとも1つの許容帯状領域を生成する工程と
を有する、方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法において、前記少なくとも1つの障害物は、前記半導体パッケージのダイの一部分であり、前記ダイの一部分は、ダイの端部である、方法。
【請求項24】
請求項22記載の方法において、前記少なくとも1つの障害物は、前記半導体パッケージの別のコンポーネントであり、前記別のコンポーネントは、前記半導体パッケージの表面上に搭載されたコンポーネントである、方法。
【請求項25】
半導体パッケージに関連するワイヤーループプロファイルを生成する方法であって、
(a)前記半導体パッケージに関するパッケージデータを提供する工程と、
(b)前記半導体パッケージに含まれる複数のワイヤーループに対応する複数のループプロファイルを生成する工程であって、
前記複数のループプロファイルの各々は、対応するワイヤーループの長さの少なくとも一部に沿った許容帯状領域(tolerance band)をそれぞれ含むものであり、
前記許容帯状領域の各々は、対応する各ループプロファイルの周囲の間隙ゾーンであり、
前記許容帯状領域は、前記複数のワイヤーループの各々の長さに沿った複数の位置において非円形状を有するものである、
前記生成する工程と、
(c)前記複数のワイヤーループにおける隣接するワイヤーループの許容帯状領域間に十分な間隙が存在するかどうかを決定する工程と
を有し、
前記許容帯状領域の各々は、前記工程(b)において、(i)前記半導体パッケージに含まれる隣接するワイヤーループ、および(ii)前記半導体パッケージにおける追加の障害物のうちの少なくとも1つを考慮して生成されるものである、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年6月30日付けで出願された米国仮特許出願第62/357,006号に対して利益を主張するものであり、この参照によりその内容が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ワイヤーループの形成に関し、より具体的には、半導体パッケージにおけるワイヤーループのワイヤーループプロファイルを生成するための改善された方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体装置の処理およびパッケージングにおいて、ワイヤーボンディングは、現在もパッケージ内の2つの位置間(例えば、半導体ダイのダイパッドとリードフレームのリードとの間)に電気的相互接続を提供する主要な方法である。より具体的には、(ワイヤーボンディング装置としても知られる)ワイヤーボンダーを使って、電気的相互接続が提供される位置間にワイヤーループが形成される。例えば、ワイヤーループは、ボールボンディング装置、ウェッジボンディング装置、リボンボンディング装置等を使って形成することができる。ボールボンディング装置上で形成される例示的なワイヤーループは、(i)第1の位置(例えば、半導体ダイのダイパッド)にボンディングされたボールボンドと、(ii)第2の位置(例えば、リードフレームのリード)にボンディングされたスティッチボンドと、(iii)前記ボールボンドおよび前記スティッチボンド間の所定の長さのワイヤーとを含む。ワイヤーボンディング産業に関連する特許文献には、米国特許第8,302,840号、米国特許第9,496,240号、および米国特許出願第2001/0072406号が含まれ、これらの各特許文献はこの参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
多数のワイヤーループを有するパッケージ(例えば、多数のピンを含むワイヤーボンドの用途)においては、複数のワイヤーループが空間上で重なり合う可能性がある(例えば、三次元空間において互いに交差するなど)。ボンダー上でループ形成工程を最適化する処理は困難であり、数週間、または数ヶ月の期間を要することが往々にしてある。さらに、ループ形成工程の最適化が完了した後、特定のパッケージに実装することを意図したワイヤーループを実際に全て実装することができるという保証はない。ワイヤーループ形成工程が実行可能であるか不確実なため、パッケージの設計者は(ワイヤーボンディング以外の)代替的なパッケージング技術を検討せざるを得ない。
【0005】
従って、半導体パッケージにおいて、ワイヤーループのワイヤーループプロファイルを生成するための改善された方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な実施形態によれば、半導体パッケージに関連するワイヤーループプロファイルを生成する方法が提供される。前記方法は、(a)前記半導体パッケージに関するパッケージデータを提供する工程と、(b)前記半導体パッケージにおけるワイヤーループのループプロファイルを生成する工程であって、前記ループプロファイルは、前記ワイヤーループの長さの少なくとも一部に沿った許容帯状領域(tolerance band)を含むものである、前記生成する工程とを含む。
【0007】
本発明の方法は、また、(例えば、ワイヤーボンディング装置のインテリジェンスの一部としての)装置、若しくはコンピュータ可読媒体(例えば、ワイヤーボンディング装置に関連して使用されるコンピュータ可読媒体)上のコンピュータプログラムの命令として実現されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を読むことにより最もよく理解される。一般的な慣行に従い、これら図面の様々な特徴は縮尺どおりでないことに留意されたい。むしろ様々な特徴の寸法は、明瞭性のため適宜拡大または縮小されている。図面に含まれる図は以下のとおりである。
図1A図1Aは、本発明の例示的な特定の実施形態を説明する上で有用なワイヤーループの側面図である。
図1B図1Bは、図1Aのワイヤーループの上面図である。
図1C図1Cは、図1Aのワイヤーループの斜視図である。
図2A図2Aは、本発明の例示的な1実施形態による、許容帯状領域(tolerance band)を含むワイヤーループの側面図である。
図2B図2Bは、図2Aのワイヤーループの上面図である。
図2C図2Cは、図2Aのワイヤーループの斜視図である。
図3A図3Aは、本発明の例示的な1実施形態による、別の許容帯状領域を有する図2Aのワイヤーループの側面図である。
図3B図3Bは、図3Aのワイヤーループの上面図である。
図3C図3Cは、図3Aのワイヤーループの斜視図である。
図4A図4Aは、本発明の例示的な特定の実施形態を説明する上で有用な2つのワイヤーループの側面図である。
図4B図4Bは、図4Aのワイヤーループの上面図である。
図4C図4Cは、図4Aのワイヤーループの斜視図である。
図5A図5Aは、本発明の例示的な1実施形態による、許容帯状領域を含む図4Aの2つのワイヤーループの側面図である。
図5B図5Bは、図5Aのワイヤーループの上面図である。
図5C図5Cは、図5Aのワイヤーループの斜視図である。
図6A図6Aは、本発明の例示的な特定の実施形態を説明する上で有用な3つのワイヤーループの側面図であり、本図では2つのワイヤーループ間に干渉が存在する。
図6B図6Bは、本発明の例示的な1実施形態による、図6Aの3つのワイヤーループの側面図であり、本図では当該ワイヤーループのうち1つのワイヤーループプロファイルが調整されている。
図7A図7Aは、本発明の例示的な1実施形態による、許容帯状領域を含む図6Aの3つのワイヤーループの側面図である。
図7B図7Bは、図7Aのワイヤーループの上面図である。
図7C図7Cは、図7Aのワイヤーループの斜視図である。
図8A図8Aは、本発明の例示的な1実施形態による、図7Aの3つのワイヤーループの側面図であり、本図では当該ワイヤーループのうち1つのワイヤーループプロファイルが調整されている。
図8B図8Bは、図8Aのワイヤーループの上面図である。
図8C図8Cは、図8Aのワイヤーループの斜視図である。
図9図9は、本発明の例示的な1実施形態に従って、半導体パッケージに関連するワイヤーループプロファイルを生成する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において使用される場合、「ループプロファイル(loop profile)」または「ワイヤーループプロファイル(wire loop profile)」という用語は、第1のボンディング位置(例えば、ワイヤーループにおけるボールボンドの位置)および第2のボンディング位置(例えば、ワイヤーループにおけるスティッチボンドの位置)間のワイヤーループ形状の仕様を指す。前記ループプロファイルは、ボンディング装置の利用者によって指定されることが多く、また所定のワイヤーループに関する所望の仕様を含む。例えば、前記ループプロファイルの仕様は、通常、(i)ワイヤーループに含まれる屈曲部および/または屈折点(bends and/or kinks)の数、および(ii)当該屈曲部および/または屈折点の空間位置(例えば、前記第1のボンディング位置および前記第2のボンディング位置のうちの少なくとも1つに対するxyz座標)。また、ワイヤーループの屈曲部および/または屈折点においてループの高さが最大になることが多いため、ループプロファイルは、生成されるワイヤーループの最大ループ高さを含む場合もある。多くの場合、用語「ループ形状」または「ワイヤーループ形状」は、「ループプロファイル」または「ワイヤーループプロファイル」と同義的に用いられる。本発明の特定の観点によれば、前記ループプロファイルは、ワイヤーループの少なくとも一部分の周囲(または近傍)に提供される許容帯状領域(tolerance band)を含む。
【0010】
本明細書において使用される場合、「許容帯状領域」または「間隙ゾーン(clearance zone)」という用語は、所定のワイヤーループプロファイルの周囲(または近傍)領域(例えば3次元領域)を指す。本発明の例示的な観点によれば、隣接した許容帯状領域は互いに重なり合わないことが望ましい。また、重なり合う場合は、所定の仕様の範囲内で重なり合うようになっている。当然ながら、隣接する許容帯状領域が重なり合うことは、本発明の範囲内のオプションである。さらに、許容帯状領域は、また、ダイの一部(例えば、ダイの端部)、隣接した構成要素(例えば、表面上に取り付けられた構成要素)などの他の障害物にも適用される。すなわち、本発明の例示的な観点によれば、許容帯状領域は、このような障害物がある位置と重なり合わないことが望ましい。
【0011】
本発明の例示的な特定の実施形態によれば、ワイヤーループプロファイル(例えば、ワイヤーループ形状)を最適化する方法が提供され、当該方法は、3次元におけるワイヤーループの最適化を含む。前記方法は、半導体パッケージの各ワイヤーループについて、3次元におけるワイヤーループプロファイルを生成する方法を含んでもよい。ワイヤーループは、ワイヤーボンダー上でボンディングされる際、傾いたり揺れ動く傾向がある。本発明のいくつかの観点においては、ワイヤーループの物理特性に基づいて、(ワイヤーの傾き、ワイヤーの揺れなどの)潜在的欠陥が考慮され、各ワイヤーの周囲に許容帯状領域(許容ゾーン(tolerance zone)、間隙ゾーン、衝突ゾーン(collision zone)とも言う)が確立される。このような許容帯状領域は、錐台、楕円体を含むように形成される。さらに、このような許容帯状領域間の間隙および干渉の検証(check)を実行することにより、堅牢な設計の実現、およびループ形成工程を最適化する時間を著しく削減することが可能となる。
【0012】
上記の間隙および干渉の検証を実行するため、(ワイヤーボンダーのコンピュータ上で実行されるアルゴリズム、ワイヤーボンダーとは独立したコンピュータ上で実行されるアルゴリズム等の)アルゴリズムにワイヤーループ形状、屈折点の位置、ワイヤーの全長、ワイヤーの長さ、ワイヤーボンディング位置等が利用される。(基準を満たす許容帯状領域を含む)基準を満たすワイヤーループプロファイルが確定された後、(他のアルゴリズムを含む)追加工程により、半導体パッケージに含まれるワイヤーループを形成する順序が決定される(例えば、ワイヤーボンディング装置のコンピュータまたは別のコンピュータ上で実行される1若しくはそれ以上のアルゴリズムを用いて自動的に決定される)。
【0013】
ここで図面を参照すると、図1Aは、半導体ダイ102とリードフレームのリード104aとの間に延長するワイヤーループ100を示す。図1Aから分かるように、ワイヤーループ100は、例えば、様々な屈折点、屈曲部、およびワイヤーの全長を含む、(例えば、ループ形状等の)ループプロファイルを有する。図1Bは、第1の端部が(半導体ダイ102の)ダイパッド102aに接続され、第2の端部がリード104aに接続されたワイヤーループ100を示す。図1Cは、ワイヤーループ100の斜視図を示す。
【0014】
本発明の例示的な特定の実施形態によれば、許容帯状領域がループプロファイルに含まれる。図2A~2Cは、そのようなループプロファイルの例を示す。より具体的には、図2Aに示すワイヤーループ100のループプロファイルは、許容帯状領域100aを含む。許容帯状領域100aは、セクション100a1と、100a2と、100a3と、100a4とを含む複数のセクションを含む。許容帯状領域100aの様々なセクション間は、球体、楕円体等の形状になっている。図2A~2Cに示す例では、許容帯状領域は、その長さに沿って均一の直径を有する円形状を有する。但し、本発明によるループプロファイルに含まれる許容帯状領域は大きく変化することを理解されたい。例えば、上記許容帯状領域は非円形状(例えば、楕円形状または他の形状)を有してもよく、また、ワイヤーループの長さに沿って変化する直径(または他の測定可能な数量)を有してもよい。
【0015】
図3A~3Cは、ワイヤーループ100に関連して、図2A~2Cに示す許容帯状領域100aと比較すると異なる許容帯状領域200aを示す。図3A~3Cに示すように、許容帯状領域200aは、セクション200a1と、200a2と、200a3と、200a4とを含む。図3A~3Cでさらに示すように、セクション200a1、200a2、200a3、および200a4の各々は、それぞれのセクションの長さに沿って変化する形状を有する。例えば、特にセクション200a1を参照すると、この許容帯状領域の大きさは半導体ダイ102の第1のボンディング位置から上方へ離れる方向に延長するにしたがって大きくなる。
【0016】
本発明によれば、許容帯状領域を含むループプロファイルは半導体パッケージに複数のワイヤーループ含む用途(例えば、1若しくはそれ以上のワイヤーループが他のワイヤーループと重なり合う、若しくは交差する場合)において特に有用である。図4A~4Cは、半導体ダイ402とリードフレームのリード404a、404bとの間に延長するワイヤーループ400および410を示す。より具体的には、ワイヤーループ400はダイパッド402aとリード404aとの間に延長する。同様に、ワイヤーループ410はダイパッド402bとリード404bとの間に延長する。
【0017】
図5A~5Cは、許容帯状領域を含むワイヤーループ400および410のループプロファイルを示す。より具体的には、ワイヤーループ400は許容帯状領域400aを含み(ここで、許容帯状領域400aは、他の許容帯状領域に関連して上記で説明したセクションを含む)、ワイヤーループ410は許容帯状領域410aを含む(許容帯状領域410aは上記で説明したセクションを含む)。図5Cに示すように、許容帯状領域400aおよび410aの間には十分な間隙が存在する。
【0018】
隣接したワイヤーループの許容帯状領域間に十分な間隙があるかどうかを決定するために、アルゴリズム等を使って隣接した許容帯状領域が所定の基準(例えば、隣接した許容帯状領域間の間隙が許容範囲内である等)を満たすかどうか検証する。上記のアルゴリズムは、所定の用途における許容範囲内の間隙の大きさを決定する際に用いられる(データ構造、データベース、ルックアップテーブル内の)既存データに依存してもよい。検証により所定の基準が満たされていないことが示された場合(例えば、許容帯状領域を含む、ループプロファイルの少なくとも一部分の間に許容範囲内の間隙が存在しない場合)、1若しくはそれ以上のループプロファイルが調整される。調整後、別の検証が実行され、所定の基準が満たされたかどうか決定される。
【0019】
図6Aは、半導体ダイ602とリードフレームのリード604a、604b、604cとの間に延長するワイヤーループ600、610および620を示す。より具体的には、ワイヤーループ600は半導体ダイ602のダイパッド(図示せず)とリード604aとの間に延長する。同様に、ワイヤーループ610は半導体ダイ602のダイパッド(図示せず)とリード604bとの間に延長し、ワイヤーループ620は半導体ダイ602のダイパッド(図示せず)とリード604cとの間に延長する。本発明の1観点を説明するため、前記「検証(check)」により、隣接するワイヤーループ610および620が所定の基準を満たしていないと決定されたと仮定する。より具体的には、ワイヤーループ610および620の許容ゾーン間に十分な間隙が存在しないと仮定する。図6Bに示す例では、ワイヤーループ620(本図ではワイヤーループ620'とする)のループプロファイル(例えば、ループ形状)は、十分な間隙を提供するように変更されている。特に、ワイヤーループ620の屈折点の位置が変更されることにより、ワイヤーループ620'が提供されている。この工程については、図7A~7C及び図8A~8Cに関連して詳細に説明する。
【0020】
特に図7A~7Cを参照すると、ワイヤーループ600、610および620は、それぞれ許容帯状領域600a、610aおよび620aを含む。図7Cに示すように、許容帯状領域610aと許容帯状領域620aとの間には十分な間隙がない。特に、図8A~8Cを参照すると、これらの図では、ワイヤーループ620のループプロファイルが変更され(図6Bに関連して上記で説明したように、ここでは、ワイヤーループ620には620'が付記されている)、許容帯状領域610aと許容帯状領域620a'との間に十分な間隙が提供されている。
【0021】
図9は、本発明の例示的な特定の実施形態に従ったフロー図である。当業者であれば理解するように、フロー図に含まれる特定の工程は省略することが可能であり、特定の追加工程を加えることもできる。また、工程の順序を図示する順序から変更することもできる。
【0022】
図9は、半導体パッケージに関連してワイヤーループプロファイルを生成する方法を示す。工程900において、半導体パッケージに関するパッケージデータ(例えば、半導体パッケージの2次元のワイヤーレイアウト)が提供される。このパッケージデータは、パッケージに関するコンピュータデータ(例えば、半導体パッケージに関連するCADデータ)を利用してワイヤーボンディング装置に提供される。別の実施例では、前記パッケージデータは、ワイヤーボンディング装置のオンラインの(例えば、ボンダー上の)教示参照システム(teaching reference system)を利用して提供される。当然のことながら、特定のパッケージデータは用途によって変わるが、ワイヤーボンディング装置(あるいは、ワイヤーボンディング装置からオフラインのシステム、例えば、オフラインのコンピュータシステム)にパッケージデータとして提供されるデータの種類には、半導体ダイの高さ、半導体ダイのダイパッド位置、リードフレームのリード位置、第1のボンディング位置と第2のボンディング位置との間の相対距離、ワイヤーの直径、およびワイヤーの種類が含まれる。
【0023】
工程902において、半導体パッケージの各ワイヤーループについてループプロファイルが生成される。ループプロファイル(例えば、ワイヤーループ形状)は、ワイヤーループの長さの少なくとも一部に沿った許容帯状領域を含む。工程904において、検証が実行され、工程902で生成された、複数のワイヤーループのループプロファイルが所定の基準(例えば、所定の基準は、複数のループプロファイル間の許容範囲内の間隙を含む)を満たすかどうかについて決定される。
【0024】
(工程904の検証実行中に決定されたように)所定の基準を満たす場合、工程906において、ループプロファイルを使って各ワイヤーループについてループパラメータが生成される。(工程904の検証実行中に決定されたように)所定の基準を満たさない場合、工程908において、少なくとも1つのループプロファイルが調整される(例えば、図6Bおよび図7A~7Cに関連して図示および記載されたループプロファイルの調整を参照)。工程908の後、工程904において、調整されたループプロファイルに対して検証が繰り返される。この工程は、工程906において所定の基準を満たすまで繰り返されてもよい。また、代替的に、所定のサイクル数(または、回数、若しくは他の基準)の後、上記工程を中止してもよい。この場合、半導体装置はワイヤーボンディングには不適切であると考えられる。さらなる代替工程では、利用者が満たされていない所定の基準を(例えば、手動または自動的に)無効にしてもよい。
【0025】
本発明の例示的な特定の実施形態によれば、ループパラメータ(従って、ループの軌跡)は、コンピュータ(例えば、ワイヤーボンディング装置と接続された、またはワイヤーボンディング装置とは独立したコンピュータ)上で実行されるアルゴリズムを使って定義される。例示的なループパラメータには、(a)分割された各運動の終点位置および終点位置間の軌跡を含む、ワイヤーループを形成するためのツール軌跡、(b)ワイヤーボンディング装置のトランスデューサーによって適用される接合エネルギーパラメータ、(c)ワイヤーボンディング装置によって適用される接合力パラメータ、(d)接合エネルギーおよび接合力の少なくとも1つに関連するタイミングパラメータ、(e)望ましいワイヤーループを形成するためのボンディング周期における少なくとも一定期間のボンディングツールの速度、および(f)望ましいワイヤーループを形成するためのボンディング周期における少なくとも一定期間のワイヤークランプの位置が含まれる。
【0026】
前記ループパラメータの導出に関連して、望ましいワイヤーループに関するループパラメータにより近づけるために、ワイヤーボンディング装置に格納された(または、別の場所に格納された)ループモデルデータをアルゴリズムに利用することができる。例えば、実験および試験を通して、様々な種類のワイヤーを使用した様々なタイプのワイヤーループの望ましいループパラメータが導出され、ワイヤーボンディング装置のメモリ内に(例えば、ルックアップテーブル等を介して)格納されるか、若しくは当該ループパラメータは(コンピュータネットワーク等を介して)ワイヤーボンディング装置によりアクセス可能となる。
【0027】
本発明によれば、ループ形成工程を最適化する時間を著しく削減することができる。さらに、隣接するワイヤーループの形状を考慮する一方で、堅牢なループ形状の設計を提供することができる。また、さらに、多数のピンを含む最新の用途におけるループ形成工程の実行可能性に係る、パッケージ設計者にとっての不確実性を回避することができる。
【0028】
本明細書においては、特定の実施形態を参照して本発明を例示および説明しているが、本発明は示した詳細事項に限定されるものではない。むしろ、請求項の均等物の範囲内で、かつ、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で、細部において種々の変更が可能である。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9