(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】針シールドおよびプラグを有する針組立品
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20240719BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61M5/32 510R
A61M5/20 572
(21)【出願番号】P 2022518246
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2020076423
(87)【国際公開番号】W WO2021058475
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-08-31
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベントスン, ヘンリク
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-528813(JP,A)
【文献】特表2014-528302(JP,A)
【文献】特表2018-518317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針組立品(1)であって、
-中に針(15)が固定して装着される針ハブ(25)であって、前記針(15)が、基準軸に沿って延在し、管腔を有する針本体と、皮膚層を通して挿入するように適合された遠位針端部分と、を備える、針ハブ(25)と、
-針シールド(12)であって、前記遠位針端部分が覆われる延在位置と、前記遠位針端部分が露出する後退位置との間で、前記針ハブ(25)に対して軸方向に変位可能であり、前記延在位置に向かって付勢されている、針シールド(12)と、
-前記針(15)の一部分の周りにしっかりと嵌められるエラストマープラグ部材(10)であって、前記プラグ部材(10)が、自己密封前部セクション(10.4)を備え、前記遠位針端部分が露出する近位プラグ位置と、前記遠位針端部分が覆われ、前記管腔が前記自己密封前部セクション(10.4)によって密封される遠位プラグ位置との間で、前記針本体に沿って軸方向に変位可能である、エラストマープラグ部材(10)と、を備え、
前記針シールド(12)および前記プラグ部材(10)が、前記後退位置から前記延在位置への前記針シールド(12)の変位に応答して、前記近位プラグ位置から前記遠位プラグ位置への前記プラグ部材(10)の変位を確実にするように構成されている、互いに相互作用可能な係合部材(12.1、12.4、10.5)を備える、針組立品(1)。
【請求項2】
前記互いに相互作用可能な係合部材(12.1、12.4、10.5)が、前記延在位置から前記後退位置への前記針シールド(12)の後続の移動に応答して、前記遠位プラグ位置から前記近位プラグ位置への前記プラグ部材(10)の変位を確実にするようにさらに構成されている、請求項1に記載の針組立品。
【請求項3】
前記針シールド(12)および前記プラグ部材(10)を少なくとも部分的に取り囲み、軸方向に延在するトラック(91)および円周方向に延在するトラック(92)を含む複数のトラックを画定する、トラックスリーブ(90)をさらに備え、
前記針シールド(12)が、前記軸方向に延在するトラック(91)内にスライド式に収納するための半径方向の突起(12.5)を備え、前記プラグ部材(10)が、前記円周方向に延在するトラック(92)内にスライド式に収納するための半径方向のプラグアーム(10.5)を備え、
前記円周方向に延在するトラック(92)が、前記近位プラグ位置から前記遠位プラグ位置への前記プラグ部材(10)の変位中に前記半径方向のプラグアーム(10.5)が進む軸方向のトラックセグメント(96)を備える、請求項2に記載の針組立品。
【請求項4】
前記トラックスリーブ(90)が、前記針ハブ(25)に対して回転可能に配置され、前記プラグ部材(10)が、前記針ハブ(25)に対して回転方向に固定され、
前記円周方向に延在するトラック(92)が、前記軸方向のトラックセグメント(96)に接続された螺旋状のトラックセグメント(94)をさらに備え、
前記プラグ部材(10)が最初に、前記針ハブ(25)に対する前記トラックスリーブ(90)の回転に応答して、前記半径方向のプラグアーム(10.5)が前記螺旋状のトラックセグメント(94)を進むことによって、前記遠位プラグ位置から前記近位プラグ位置へと軸方向に変位可能である、請求項3に記載の針組立品。
【請求項5】
前記互いに相互作用可能な係合部材(12.1、12.4、10.5)が、前記プラグ部材(10)が前記近位プラグ位置に到達したときに、係合するように適合されている、請求項4に記載の針組立品。
【請求項6】
前記互いに相互作用可能な係合部材(12.1、12.4、10.5)が、前記半径方向のプラグアーム(10.5)と、前記針シールド(12)の偏向可能な近位延在部(12.2)の端部分に配置されたシールドフック(12.4)と、を備え、前記シールドフック(12.4)が、前記プラグ部材(10)が前記近位プラグ位置にあるときに前記延在位置から前記後退位置への前記針シールド(12)の移動中に前記半径方向のプラグアーム(10.5)の後ろを通過してスナップ嵌めされるように適合されている、請求項4または5に記載の針組立品。
【請求項7】
前記トラックスリーブ(90)が、2つの軸方向および回転方向に相互係止されるスリーブ部品(3、4)を備え、
一方のスリーブ部品(3)が、前記螺旋状のトラックセグメント(94)の第1の部分を画定する第1の螺旋状の表面を備え、もう一方のスリーブ部品(4)が、螺旋状のトラックセグメント(94)の第2の部分を画定する第2の螺旋状の表面を備える、請求項4~6のいずれか一項に記載の針組立品。
【請求項8】
前記円周方向に延在するトラック(92)が、前記螺旋状のトラックセグメント(94)の遠位端部分へと導かれる最初の円周方向のトラックセグメント(93)をさらに備え、前記最初の円周方向のトラックセグメント(93)が、前記半径方向のプラグアーム(10.5)の半径方向の寸法よりも小さい寸法の狭窄部を含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の針組立品。
【請求項9】
前記円周方向に延在するトラック(92)が、前記軸方向のトラックセグメント(96)の遠位端部分から円周方向に延在する端部トラックセグメント(97)をさらに備え、前記端部トラックセグメント(97)が、前記軸方向のトラックセグメント(96)から前記端部トラックセグメント(97)への前記半径方向のプラグアーム(10.5)の一方方向の運動を可能にする非復帰型幾何学的形状を備える、請求項4~8のいずれか一項に記載の針組立品。
【請求項10】
前記円周方向に延在するトラック(92)が、第2の軸方向のトラックセグメントおよび第2の螺旋状のトラックセグメントをさらに備え、前記第2の軸方向のトラックセグメントおよび前記第2の螺旋状のトラックセグメントが、前記トラックスリーブ(90)に沿って360°延在する中断されないトラック構成を形成するように、相互接続され、かつ前記螺旋状のトラックセグメント(94)および前記軸方向のトラックセグメント(96)とそれぞれ接続されている、請求項4~9のいずれか一項に記載の針組立品。
【請求項11】
前記プラグ部材(10)が、微生物成長阻害剤をさらに含む生物静力学的構成要素である、請求項1~10のいずれか一項に記載の針組立品。
【請求項12】
前記プラグ部材(10)が、円筒状プラグ本体(10.1)をさらに備え、前記円筒状プラグ本体(10.1)の一部分を通って円筒状チャネル(10.3)が延在し、前記円筒状チャネル(10.3)が、前記自己密封前部セクション(10.4)に当接し、前記針本体の横方向の寸法よりも小さい横方向のチャネル寸法を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の針組立品。
【請求項13】
薬剤排出ユニットであって、
-容積可変薬剤貯蔵部(30)を、前記針(15)の近位針端部分が前記容積可変薬剤貯蔵部(30)の内部にある液体物質(35)と流体接続する位置に収納するように適合された薬剤貯蔵部ホルダー(20)と、
-前記針(15)を通して前記液体物質(35)の用量を排出するように構成された用量排出機構であって、前記用量排出機構が、保存されたエネルギーを解放して前記容積可変薬剤貯蔵部(30)の加圧を引き起こすように起動可能な電源(45)を備える、用量排出機構と、を備える、薬剤排出ユニットと組み合わせた、請求項1~12のいずれか一項に記載の針組立品。
【請求項14】
前記薬剤排出ユニットが、前記針シールド(12)の近位当接表面(12.3)と協働するように適合された遠位当接表面(74)を含む用量解放部材(70)と、前記電源(45)を起動するために前記近位当接表面(12.3)によって遠位脚部材位置から近位脚部材位置へと変位可能な軸方向に延在する脚部材(72)と、をさらに備える、請求項13に記載の針組立品および薬剤排出ユニット。
【請求項15】
前記容積可変薬剤貯蔵部(30)が、カートリッジタイプの容器であり、前記カートリッジタイプの容器が、貫通可能な自己密封隔壁(32)によって遠位方向に密封され、軸方向に前進可能なピストン(33)によって近位方向に密封され、
前記用量排出機構が、軸方向に前進可能なピストンロッド(40)をさらに備え、前記電源(45)が、予め張力がかけられた圧縮ばねを備え、前記予め張力がかけられた圧縮ばねが、前記ピストンロッド(40)に駆動力を加えるために、前記遠位脚部材位置から前記近位脚部材位置への前記軸方向に延在する脚部材(72)の変位によって解放可能である、請求項13または14に記載の針組立品および薬剤排出ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤注射装置のための針組立品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバイアルおよびシリンジシステムを使用して実施される非経口薬剤投与は、ペン注射装置を使用する投与によってますます置き換えられている。ペン注射装置は、特定の用量をある貯蔵部(バイアル)から別の貯蔵部(シリンジ)へと最初手動で移さずに、予め充填された薬剤貯蔵部から用量注射を実行することを可能にするという点で、特に便利である。
【0003】
主に、2つのタイプのペン注射装置が利用可能であり、耐久性注射装置は、使用前に装置にロードし、消耗後に交換することができる予め充填された薬剤カートリッジから1回以上の用量の薬剤を送達することができ、使い捨て注射装置は、予め充填された非交換式の薬剤カートリッジから1回以上の用量の薬剤を送達することができる。これらのタイプのペン注射装置の各々は、例えば、薬剤カートリッジから所定のもしくは選択されたサイズの1回の用量のみを送達するように適合されたシングルショット装置、薬剤カートリッジから複数回の用量を送達することができるマルチショット装置、ユーザーが注射に必要な力を提供する手動装置、注射時に解放可能な組み込みエネルギー源を有する自動装置、同一のサイズの用量を送達するように適合された固定用量装置、可能な用量サイズの範囲からユーザーにより毎回設定可能な薬剤の複数回の用量の送達を提供する用量可変装置などの、様々なサブタイプで実現されるか、または原理上は実現され得る。
【0004】
ラベルが示唆するように、耐久性注射装置は、複数の薬剤カートリッジが使い果たされ交換されるかなりの時間にわたって使用されることを意図し、使い捨て注射装置は、専用薬剤カートリッジが使い果たされるまで使用され、その後、注射装置全体が廃棄されることを意図する。
【0005】
ペン注射装置は、従来、皮下区画へのアクセスを提供し、皮下区画に薬剤を投与するための手段として役立つ、合致するペン針組立品とともに使用される。しかしながら、多くの人々は、注射針を皮膚に挿入するという考えを嫌う。開示されていない数の人々は針恐怖症にさえ苦しんでおり、これらの人々はしばしば、注射針の皮膚への挿入を含む針ユニットの取り扱い中に注射針が見えないままである、シールド型針を備えた針ユニットを使用することから利益を得る。
【0006】
典型的には、このタイプの針ユニットは、軸方向に移動可能なシースを備え、シースは、それが注射針を覆う第1の位置と、注射針が露出され、注射の準備が整う、第2の位置との間でスライドし得る。場合によっては、シースは、注射針が皮膚から後退するときに第1の位置へと自動的に再びスライドするように、ばね装填式である。この例は、米国特許公開第2003/0078546号(Jensen)に開示されている。
【0007】
かかる自動復帰型シースは、針が皮膚から後退すると針先端を自動的に覆い、それによって、偶発的な針刺し損傷のリスクを低減するというさらなる利点を有する。しかしながら、かかる自動復帰型シースは、用量排出機構、特に、カートリッジピストンが完全に緩められる前に針が皮膚から除去された場合に生じ得る、針からの滴りを防止しない。
【0008】
例えば、大量の液体の投与により皮膚に圧力が蓄積されることにより、または注射を神経もしくは以前の注射部位にあまりにも近くで実施していることにより、人物が注射中に不快感を経験することが起きることがある。かかる事例では、注射を一時停止して、注射針の除去、および用量送達を完了するための異なる部位での再挿入を可能にすることができると便利である。そうでなければ、ユーザーは、全用量投与中の不快感を受け入れるか、または針が皮膚から引き出されたときに薬剤の一部の容積が周辺に失われることを受け入れる必要がある。どちらも望ましいことではなく、後者は、特に、薬剤が高価であるか入手が難しい場合、望ましくない。
【0009】
いくつかの自動注射装置は、継続的な注射を一時停止する可能性を提供する。これには、ピストン作動機構を休止させることによって、カートリッジ内側のピストンの前進を停止させることを伴う。しかしながら、ピストン作動機構の休止は、受け入れ可能なレベルに製造コストを保つために、使い捨てのシングルショット装置に関連して通常好まれるものなどの単純なアクチュエーターのソリューションでは直ちには可能ではない。したがって、注射装置が複雑で高価なピストン作動機構を採用するか否かにかかわらず、自動注射装置のユーザーが注射を一時停止することを可能にするソリューションを提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許公開第2003/0078546号(Jensen)
【発明の概要】
【0011】
先行技術の少なくとも1つの欠点を除去するかもしくは低減させること、または先行技術のソリューションに対する有用な代替案を提供することが、本発明の目的である。
【0012】
特に、注射針が、皮膚から除去された後に滴ることを防止するソリューションを提供することが、本発明の目的である。
【0013】
薬剤を全く失わずに、またはわずかに失うだけで、注射手技を一時停止して、注射針の再位置付けを可能にすることができる、比較的単純で安価なソリューションを提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0014】
本発明の開示では、上記の目的のうちの1つ以上に対処し、かつ/または、以下の文章から明らかである目的に対処する、態様および実施形態が記載される。
【0015】
一態様では、本発明は、請求項1に記載の針組立品を提供する。
【0016】
したがって、薬剤送達装置のための針組立品が提供される。針組立品は、a)固定して装着される針を搬送する針ハブであって、基準軸に沿って延在し、管腔を有する針本体と、皮膚層を通して挿入するように適合された遠位針端部分と、を備える、針ハブと、b)針シールドであって、遠位針端部分が覆われる延在位置と、遠位針端部分が露出する後退位置との間で、針ハブに対して軸方向に変位可能であり、延在位置に向かって付勢されている、針シールドと、c)針の一部分の周りにしっかりと嵌められるエラストマープラグ部材と、を備える。プラグ部材は、自己密封前部セクションを備え、遠位針端部分が露出する近位プラグ位置と、遠位針端部分が覆われ、管腔が自己密封前部セクションによって密封される遠位プラグ位置との間で、針本体に沿って軸方向に変位可能である。針シールドおよびプラグ部材は、後退位置から延在位置への針シールドの変位に応答して、近位プラグ位置から遠位プラグ位置へのプラグ部材の変位を確実にするように構成されている互いに相互作用可能な係合部材を備える。
【0017】
針組立品は、薬剤排出ユニットへの解放可能な取り付けまたは解放不可能な取り付けのいずれかのための取り付け手段をさらに備え、それによって、薬剤送達装置を形成することができる。代替的に、針組立品および薬剤排出ユニットは、単一の装置として形成される。
【0018】
このソリューションは、針が皮膚に挿入され、注射が薬剤送達装置から開始されると、例えば、薬剤送達装置が投与終了確認を発行した直後に、皮膚から針を除去することにより、針シールドを延在位置に自動的に復帰させる一方で、プラグ部材を、遠位針端部分が覆われ、ひいては、流路が遮断される遠位プラグ位置へと引っ張ることを確実にする。したがって、滴りは生じ得ない。さらに、遠位針端部分がプラグ部材に包囲されているため、延在位置への針シールドの移動後の偶発的な針刺し損傷の残りのいかなるリスクも排除される。
【0019】
互いに相互作用可能な係合部材は、延在位置から後退位置への針シールドの後続の移動に応答して、遠位プラグ位置から近位プラグ位置へのプラグ部材の変位を確実にするようにさらに構成され得る。
【0020】
それによって、プラグ部材は、針シールドの後続の移動に追従し、薬剤送達装置のさらなる使用を可能にすることになる。例えば、何らかの理由により、ユーザーが注射中に注射部位を変更することを望む場合、皮膚からの針の除去により、上で説明されるように、遠位プラグ位置へのプラグ部材の自動的な変位を引き起こし、それによって、流路が遮断され、それに応じて用量排出が中断されることになる。特に、これは、薬剤送達装置の作動機構との機械的干渉を必要とせずに起こる。
【0021】
異なる注射部位への針の後続の挿入では、薬剤送達装置が皮膚表面に押し付けられたときに針シールドが後退位置に置換されるにつれて、プラグ部材が近位プラグ位置へと変位される。それによって、遠位針端部分は、自己密封前部セクションを貫通して流路を再開放し、液体薬剤のさらなる排出を可能にする。薬剤送達装置が自動装置である場合、遠位針端部分が自己密封前部セクションを貫通するとすぐに、用量排出が継続される。
【0022】
互いに相互作用可能な係合部材が針シールドとプラグ部材とを軸方向に相互係止するように構成されている場合、例えば、延在位置から後退位置への針シールドの第1の移動の際に、針シールドの任意の軸方向の移動、または延在位置から後退位置への第1の移動に続く針シールドの任意の軸方向の移動は、プラグ部材と一緒に実施され、これは、マルチショットタイプの装置の場合、すべての注射の一時停止が可能であることを意味する。
【0023】
針組立品は、針シールドおよびプラグ部材を少なくとも部分的に取り囲み、軸方向に延在するトラックおよび円周方向に延在するトラックを含む複数のトラックを画定する、トラックスリーブをさらに備え得る。その場合、針シールドは、軸方向に延在するトラック内にスライド式に収納するための半径方向の突起を備え、プラグ部材は、円周方向に延在するトラック内にスライド式に収納するための半径方向に突起するプラグアームを備える。さらに、円周方向に延在するトラックは、近位プラグ位置から遠位プラグ位置へのプラグ部材の変位中にプラグアームが進む軸方向のトラックセグメントを備える。
【0024】
トラックスリーブは、次いで半径方向の突起およびプラグアームがそれぞれのトラック追従体として機能するため、針シールドおよびプラグ部材の移動パターンの平易な画定を可能にする。
【0025】
トラックスリーブは、針ハブに対して回転可能に配置され得、プラグ部材は、針ハブに対して回転方向に固定され得る。その場合、円周方向に延在するトラックは、軸方向のトラックセグメントに接続された螺旋状のトラックセグメントをさらに備え、プラグ部材は最初に、針ハブに対するトラックスリーブの回転に応答して、プラグアームが螺旋状のトラックセグメントを進むことによって、遠位プラグ位置から近位プラグ位置へと軸方向に変位可能である。
【0026】
これにより、針ハブに対するトラックスリーブの回転によって、針シールドとは無関係に、遠位プラグ位置から近位プラグ位置へのプラグ部材の最初の変位が可能となる。それによって、針組立品は、遠位針端部分が完全に包囲され、針刺し損傷のリスクが排除されている状態、さらにまさに最初の注射を実施する前に針先端のコンディションの最初のチェックが可能である状態で、製造業者によって送達することができる。さらに、ユーザーは、皮膚への針の挿入中に、針と、しっかりと嵌められたプラグ部材との間の摩擦力を克服する必要がない。これは、そのときにはプラグ部材が近位プラグ位置にすでにあるためである。
【0027】
互いに相互作用可能な係合部材は、プラグ部材が、螺旋状のトラックセグメントに沿って変位された後に近位プラグ位置に到達したときに係合するように適合され得る。
【0028】
本発明の例示的な実施形態では、互いに相互作用可能な係合部材は、プラグアームと、針シールドの偏向可能な近位延在部の端部分に配置されたシールドフックと、を備え、シールドフックは、プラグ部材が近位プラグ位置にあるときに延在位置から後退位置への針シールドの移動中にプラグアームの後ろを通過してスナップ嵌めされるように適合されている。
【0029】
トラックスリーブは、2つの軸方向および回転方向に相互係止されるスリーブ部品を備えることができ、2つのスリーブ部品のうちの一方は、螺旋状のトラックセグメントの第1の部分を画定する第1の螺旋状の表面を備え、2つのスリーブ部品のうちのもう一方は、螺旋状のトラックセグメントの第2の部分を画定する第2の螺旋状の表面を備える。
【0030】
そのときには、2つのスリーブ部品が製造中に相互係止されたときに、螺旋状のトラックセグメントが形成される。2つの別々の相互接続可能なスリーブ部品を備える配置は、トラックスリーブにプラグ部材を平易に嵌めることを提供するため、組立品プロセスを改善する。
【0031】
円周方向に延在するトラックは、螺旋状のトラックセグメントの遠位端部分へと導かれる最初の円周方向のトラックセグメントをさらに備えることができ、最初の円周方向のトラックセグメントは、プラグアームの半径方向の寸法よりも小さい寸法の狭窄部を含み得る。
【0032】
かかる最初の円周方向のトラックセグメントは、プラグ部材が次いで、プラグアームが狭窄部を通過し、螺旋状のトラックセグメントに到達するまで、軸方向に変位されるのを防止するという点、およびプラグアームが、所定のサイズのトルクがトラックスリーブに加えられて、最初の円周方向のトラックセグメントとプラグアームとの間に相対的な回転が誘発され、後者が針ハブに対して回転方向に固定されている場合にのみ、狭窄部を通過するという点で、針組立品の係止された最初の状態を可能にする。狭窄部は、狭窄部を通してプラグアームを導くのに必要なトルクのサイズが、後で螺旋状のトラックセクションに沿ってプラグアームを導くのに必要なトルクよりも大きくなるように、寸法決めすることができる。
【0033】
円周方向に延在するトラックは、軸方向のトラックセグメントの遠位端部分から円周方向に延在する端部トラックセグメントをさらに備えることができ、端部トラックセグメントは、軸方向のトラックセグメントから端部トラックセグメントへのプラグアームの一方方向の運動を可能にする非復帰型幾何学的形状を備え得る。
【0034】
これは、ユーザーが最終的な注射に続いてトラックスリーブにトルクを加え、かつそれによって、プラグアームを、非復帰型幾何学的形状を通過して端部トラックセグメントへと押し込むことができるため、針組立品が単回使用のために意図されている場合に関連がある。したがって、プラグアームが端部トラックセグメント内に閉じ込められている場合、近位方向に向けられた力が針シールドに加えられたとしても、プラグ部材が近位プラグ位置に再度変位されることが防止される。針シールドおよびプラグ部材が軸方向に相互係止されている場合、それによって、針シールドが近位変位されることも防止され、ひいては、針組立品は鋭利物容器となる。
【0035】
円周方向に延在するトラックは、第2の軸方向のトラックセグメントおよび第2の螺旋状のトラックセグメントをさらに備えることができ、第2の軸方向のトラックセグメントおよび第2の螺旋状のトラックセグメントは、トラックスリーブに沿って360°延在する中断されないトラック構成を形成するように、相互接続され、かつ螺旋状のトラックセグメントおよび軸方向のトラックセグメントとそれぞれ接続されている。
【0036】
それによって、針組立品は、針ハブを中心としたトラックスリーブの反復回転によって複数回使用されるように適合されており、トラックスリーブの360°の回転は、2回の注射事象を提供し、プラグ部材は、各注射の前に、針シールドとは無関係に変位される。針組立品は、針ハブに対するトラックスリーブの回転に応答して、針シールドおよびプラグ部材を連結解除するように構成された連結解除機構をさらに備え得る。
【0037】
プラグ部材は、微生物成長阻害剤をさらに含む生物静力学的構成要素であってもよい。特に、プラグ部材は、固定化した亜鉛(Zi++)または固定化した銀(Ag++)を含有する熱可塑性エラストマーで作製され得る。これは、これらのイオンが微生物成長を阻害することが知られているためである。プラグ部材は針の一部分の周りにしっかりと嵌められるため、上にある任意の微生物汚染物質は結果として中和されることになる。それによって、針は、注射間で生物静力学的な環境内に保たれ、それゆえに、針組立品は、複数回の使用に適している。
【0038】
プラグ部材は、中に円筒状チャネルを有する固体プラグ部分を画定する円筒状プラグ本体をさらに備え得る。その場合、円筒状チャネルは、自己密封前部セクションに当接し、針本体の横方向の寸法よりも小さい横方向のチャネル寸法を有する。
【0039】
円筒状チャネルは針よりも小さい横方向の寸法を有し、ひいては、半径方向の圧力を針本体に及ぼすが、その存在は、プラグ部材がチャネルを備えず、針を固体プラグ本体に穿通させる必要がある状況と比較して、針本体とプラグ部材との間の摩擦力を低減する。したがって、針シールドに対する付勢力は、プラグ部材が、針を受容するための予め製作された空隙を備える場合、より小さくなる場合がある。付勢力がばね部材によって提供される場合、これは、ばね部材が、それほど強力ではなく、かつそれによって、それほど高価ではない可能性があることを意味し、これは、特に、使い捨ての薬剤送達装置に関連する。
【0040】
第2の態様では、本発明は、薬剤排出ユニットおよび上述の針組立品を備える、薬剤送達装置を提供する。薬剤排出ユニットは、i)容積可変薬剤貯蔵部を収納するように適合された薬剤貯蔵部ホルダーと、ii)容積可変薬剤貯蔵部を加圧するための用量排出機構と、を備える。
【0041】
したがって、薬剤排出ユニットとの組み合わせによる上述の針組立品であって、容積可変薬剤貯蔵部を、針の近位針端部分が容積可変薬剤貯蔵部の内部にある液体物質と流体接続する位置に収納するように適合された薬剤貯蔵部ホルダーと、針を通して液体物質の用量を排出するように構成された用量排出機構と、を備え、用量排出機構が、保存されたエネルギーを解放して容積可変薬剤貯蔵部の加圧を引き起こすように起動可能な電源を備える、薬剤排出ユニットとの組み合わせによる上述の針組立品が提供され得る。
【0042】
薬剤貯蔵部ホルダーは、薬剤排出ユニットが製造業者によって提供されている場合に、容積可変薬剤貯蔵部を保持し得るか、またはユーザーによって挿入される容積可変薬剤貯蔵部を受容するように適合され得る。
【0043】
薬剤排出ユニットは、針シールドの近位当接表面と協働するように適合された遠位当接表面を含む用量解放部材と、電源を起動するために近位当接表面によって遠位脚部材位置から近位脚部材位置へと変位可能な軸方向に延在する脚部材と、をさらに備え得る。
【0044】
したがって、用量排出機構は、トリガされる針シールドであり、延在位置から後退位置への針シールドの変位に応答して、自動的に用量排出を始め、それによって、薬剤送達装置に、非常に単純なユーザーインターフェースおよび取り扱いパターンを提供することになる。
【0045】
本発明の例示的な実施形態では、近位当接表面は、シールドフックの一部を形成する。
【0046】
容積可変薬剤貯蔵部は、カートリッジタイプの容器であってもよく、カートリッジタイプの容器は、貫通可能な自己密封隔壁によって遠位方向に密封され、軸方向に前進可能なピストンによって近位方向に密封され、用量排出機構は、軸方向に前進可能なピストンロッドをさらに備えることができ、電源は、予め張力がかけられた圧縮ばねを備えることができ、予め張力がかけられた圧縮ばねは、ピストンロッドに駆動力を加えるために、遠位脚部材位置から近位脚部材位置への軸方向に延在する脚部材の変位によって解放可能である。
【0047】
いかなる疑念も回避するために、本文脈において、「薬剤」という用語は、状況の治療、予防、または診断に使用される媒体を指し、すなわち、身体における療法または代謝効果を有する媒体を含む。さらに、「遠位」および「近位」という用語は、薬剤送達装置、薬剤貯蔵部、または針ユニットにおける位置、もしくはこれらに沿った方向を示し、「遠位」は薬剤出口端を指し、また「近位」は、薬剤出口端とは反対側の端を指す。
【0048】
本明細書において、特定の態様または特定の実施形態(例えば、「一態様」、「第1の態様」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」など)への言及は、それぞれの態様または実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または、特性が、少なくとも本発明のその一態様または実施形態に含まれるか、または固有のものであるが、必ずしも本発明のすべての態様または実施形態の中に含まれるわけではなく、それらすべての固有のものでもないことを表す。しかしながら、本発明に関連して説明した様々な特徴、構造および/もしくは特性の任意の組み合わせが、本明細書に明示的に記載されない限り、または明確に文脈上矛盾しない限り、本発明に包含されることが強調される。
【0049】
本文中のありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、など)の使用は、単に本発明をより良く明らかにすることを意図するものであり、別段特許請求されない限り、本発明の範囲を制限するものではない。さらに、本明細書中のいずれの言語または言い回しも、特許請求されないいずれの要素も本発明の実施に必須であると示しているとは解釈されない。
【0050】
以下において、本発明は、図面を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は、本発明の例示的な実施形態による針組立品の分解図である。
【
図2】
図2は、
図1の針組立品との組み合わせにより使用される注射ユニットの分解図である。
【
図3-8】
図3~
図8は、針組立品の様々な構成要素の異なる図である。
【
図9-14】
図9~
図14は、注射ユニットの様々な構成要素の異なる図である。
【
図15】
図15は、針組立品と注射ユニットとを組み合わせることによって形成される、本発明の例示的な実施形態による注射装置の部分断面斜視図である。
【
図16】
図16は、注射前の状態にある注射装置の部分断面側面図である。
【
図17】
図17は、針組立品におけるトラック構成の二次元表現である。
【
図18】
図18は、注射装置使用時のトラック構成における、プラグおよび針シールドの移動の二次元表現である。
【
図19】
図19は、注射手技中の様々な段階における注射装置を説明している。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図において、同様の構造は、主として同様の参照番号で識別される。
【0053】
「上」および「下」、「左」および「右」、「水平」および「垂直」、「時計回り」および「反時計回り」などの相対的な表現が以下で使用される時/場合、これらは添付の図を参照しており、必ずしも実際の使用状況を参照するものではない。示される図は、概略図であり、そのため、その相対寸法だけでなく、異なる構造の構成も、例示的な目的でのみ機能することが意図される。
【0054】
図1は、本発明の例示的な実施形態による針組立品1の分解図である。針組立品1は、中に注射針15が固定して装着されるカートリッジホルダー20と、内側のトラックスリーブ3、中間のトラックスリーブ4、および外側のトラックスリーブ2の形態のトラックスリーブ組立品と、針シールド12と、小さい圧縮ばねの形態のシールドばね5と、プラグ10と、を備える。注射針15は、基準軸に沿って延在する直線状のチュービングであり、プラグ10は、微生物汚染物質を中和するための固定化した亜鉛(Zi
++)を含有する熱可塑性エラストマーで作製されているという点で、生物静力学的である。内側のトラックスリーブ3、中間のトラックスリーブ4、および外側のトラックスリーブ2は、軸方向および回転方向の両方に相互係止され、単一のユニットとして機能する。
【0055】
図2は、針組立品1と一緒に注射装置100を形成する、注射ユニットの分解図である。注射ユニットは、カートリッジ30と、ピストンワッシャー34と、カートリッジホルダー20内に収納される用量解放部材70と、端部ハウジング部品60が取り付けられており、ピストンロッド40、予め張力がかけられた圧縮ばねの形態の駆動ばね45、および用量解放ディスク80を収納する、中央ハウジング部品50と、を備える。
【0056】
考察される注射装置100の選択された構成要素についての以下の詳細では、針組立品1の構成要素については
図3~
図8を参照し、注射ユニットの構成要素については
図9~
図14を参照する。
【0057】
図3aおよび
図3bはそれぞれ、薬剤カートリッジを受容するように構成された管状カートリッジホルダー本体21を有するカートリッジホルダー20の斜視図および長手方向断面斜視図であり、薬剤カートリッジの内容物は、窓29を通して検査され得る。カートリッジホルダー20は、その遠位端部分において、注射針15(図示せず)が接着される一体型の針ハブ25を有する。針ハブ25は、一対の対向するプラグガイド23が遠位方向に延在し、軸方向のガイドスロット24を形成する、横方向の表面を備え、中に一対の貫通ボア26が提供されている(1つのみが視認可能である)。横方向の表面の周辺部は、カートリッジホルダー20に外側のトラックスリーブ2を軸方向に固定するための取り付け手段として機能する、円周方向のフランジ22を形成する。2つの軸方向のトラック27(1つのみが視認可能である)は、カートリッジホルダー本体21の内部表面部分に沿って形成され、用量解放部材70の移動のガイドとしての役割を果たす。また、中央ハウジング部品50にカートリッジホルダー20を取り付けることを可能にする4つのくぼみ28(1つのみが完全に視認可能である)が提供されている。本実施形態では、注射針15を保持する針ハブ25がカートリッジホルダー20の一体的な部品を形成するという事実は、本発明の実践には無関係であり、代替的に、針ハブが、カートリッジホルダー20に解放可能または解放不可能に取り付け可能な別個の構成要素であってもよいことが留意される。
【0058】
図4aおよび
図4bはそれぞれ、近位方向に延在する対向する指12.2を含む略円筒状のシールド本体12.1を有する、針シールド12の側面図および長手方向断面図であり、各指12.2は、用量解放部材70との相互作用のためのシールド先端12.3およびプラグ10との相互作用のためのシールドフック12.4を有する、ハープーンのような端部構造を有する。一対の対向する突起12.5が、シールド本体12.1の外壁上に提供されている。さらに、プラグ10をスライド式に受容するための内部チャンバー12.6、ならびにシールドばね5の遠位端部分をサポートするためのシールドばねソケット12.7を提供するために、シールド本体12.1の内部部分が壁肥厚部とともに形成されている。
【0059】
図5aおよび
図5bはそれぞれ、シールド本体12.1よりも大きい寸法の略円筒状のスリーブ壁2.1を有する、外側のトラックスリーブ2の斜視図および長手方向断面図である。
図5aでは、中間のトラックスリーブ4との相互作用のための一対の対向する雌型連結部分2.2および一対の対向する遠位シールドトラック部分2.3を含み、各々が、シールド本体12.1上の突起12.5のうちの1つをスライド式に受容するように構成されている、内側の幾何学的形状の三次元視覚化を提供するために、スリーブ壁2.1の内部部分が点線で示されている。円周方向のフランジ22とのスナップ係合のために、スリーブ壁2.1の近位端部分に内部リム2.4が提供されている。
【0060】
図6aおよび
図6bはそれぞれ、耐流体スライド式受容およびその収納を確実にするために、針ハブ25を収納することができる近位受容チャンバー10.2、および注射針15の横方向の寸法よりもわずかに小さい直径の遠位円筒状チャネル10.3を含む、略円筒状プラグ本体10.1を有する、プラグ10の斜視図および長手方向断面斜視図である。円筒状チャネル10.3は、注射針15を貫通させることができる自己密封前部セクション10.4によって遠位方向に密封される。プラグ10は、その近位端部分において、ガイドスロット24内でのスライド移動のため、ならびに内側のトラックスリーブ3および中間のトラックスリーブ4のそれぞれの内部幾何学的形状との相互作用のために適合された一対の横方向に延在するプラグアーム10.5を備え、これらは、以下から明らかとなる方法で、ガイドスロット24内のプラグアーム10.5の移動を誘うように構成されている。
【0061】
図7aおよび
図7bはそれぞれ、外側のトラックスリーブ2と中間のトラックスリーブ4との間の回転方向に相互係止される関係を確実にする、雌型連結部分2.2に係合するための一対の遠位方向に尖った雄型連結部分4.2と、内側のトラックスリーブ3との相互作用のための一対の近位方向に尖った雄型連結部分4.4と、を含む、中間のトラックスリーブ本体4.1を有する、中間のトラックスリーブ4の斜視図および側面図である。中間のトラックスリーブ本体4.1は、2つの対向する軸方向のスロット、プラグアーム10.5のそれぞれの開始シート部(start seat)4.5、開始シート部4.5に接続された螺旋状のガイド表面4.6のそれぞれの下部部品、螺旋状のガイド表面4.6に接続されたそれぞれの軸方向のガイド表面4.7、および軸方向のガイド表面4.7に接続されたそれぞれの終了シート部(end seat)4.8の形態の、近位シールドトラック部分4.3をさらに備える。
図17~
図19に関連して示され、記載されるように、近位シールドトラック部分4.3および遠位シールドトラック部分2.3は、突起12.5のための一対の軸方向のトラックを一緒に形成する。
【0062】
図8aおよび
図8bはそれぞれ、中間のトラックスリーブ4と内側のトラックスリーブ3との間の回転方向に相互係止される関係を確実にする、近位方向に尖った雄型連結部分4.4に係合するための一対の雌型連結部分3.4を含む内側のトラックスリーブ本体3.1を有する、内側のトラックスリーブ3の斜視図および側面図である。内側のトラックスリーブ本体3.1は、それぞれの開始シート部3.5、螺旋状のガイド表面3.6のそれぞれの上部部品、それぞれの接続シート部3.9、それぞれの軸方向のガイド表面3.7、およびそれぞれの終了シート頂部3.8をさらに備え、これらは、それぞれの開始シート部4.5、螺旋状のガイド表面4.6のそれぞれの下部部品、それぞれの軸方向のガイド表面4.7、およびそれぞれの終了シート部4.8と協働して、プラグアーム10.5の運動を決定し、かつそれによって、プラグ10の運動を決定するためのトラック構成を提供する。このトラック構成については、
図17~
図19に関連してより詳細に説明する。
【0063】
図9aおよび
図9bはそれぞれ、カートリッジホルダー20と中央ハウジング部品50との間の軸方向および回転方向に相互係止される関係を確実にする、略円筒状のハウジング壁51、およびくぼみ28にスナップ嵌め係合するための4つの遠位方向に向けられたスナップフック53を有する、中央ハウジング部品50の斜視図および長手方向断面斜視図である。用量解放部材70の長手方向のガイドトラック52が内壁の壁肥厚部55に提供されており、これはまた、用量解放ディスク80を解放可能に保定するための一対のノッチ56を保持し、ハウジング壁51の近位端部分には4つのくぼみ54(2つのみが視認可能である)が提供されており、中央ハウジング部品50および端部ハウジング部品60の機械的連結を可能にする。
【0064】
図10は、略円筒状のカートリッジ壁31および貫通可能な自己密封隔壁32を有するキャップ付きネックの外部輪郭を示す、カートリッジ30の斜視図である。
【0065】
図11は、くぼみ54に係合するための4つの遠位方向に延在するスナップフック62を含むキャップ形状の本体61と、ピストンロッド40を回転方向に固定するための一対の長手方向のスプライン63と、を有する、端部ハウジング部品60の斜視図である。
【0066】
図12は、用量解放ディスク80との相互作用のための反対に傾斜した端部78、79を含む一対の近位方向を指す脚72と、それぞれの接触点74を介した指12.2との相互作用のための一対の遠位方向を指すアーム73とを備える骨格構造71を有する、用量解放部材70の斜視図である。脚72は、ガイドトラック52内にスライド式に収納されるように構成されており、それによって、用量解放部材70および中央ハウジング部品50を回転方向に相互係止する一方で、これらの間の相対的な軸方向の運動を可能にする。
【0067】
図13は、対向する鍵穴85、近位面82、および遠位面83を備える、略環状のディスク本体81を有し、そこから一対のディスク脚86が延在する、用量解放ディスク80の斜視図である。各ディスク脚86は、脚72の傾斜した端部78、79とのそれぞれのスライド相互作用のためのノッチ56およびランプ88、89のうちの1つで受容するためのスタッド87を備える。
【0068】
図14aおよび
図14bはそれぞれ、用量解放ディスク80を通って延在するように適合された略円筒状のピストンロッド本体41と、ピストンワッシャー34に当接するように適合された遠位ピストンロッド先端44と、を有する、ピストンロッド40の斜視図および長手方向断面図である。近位端セクションにおいて、ピストンロッド本体41は、スプライン63内にスライド式に収納するための対向するフィン43(1つのみが視認可能である)を備え、中央セクションにおいて、ピストンロッド本体41は、用量解放ディスク80の近位面82に対する当接による、中央ハウジング部品50に対するピストンロッド40の最初の軸方向の位置付けを提供する、対向する係止タブ42を有する。ピストンロッド本体41は、中空であり、駆動ばね45を収納するように適合されており、一方のばね端部をばねソケット46内に軸方向にサポートする。
【0069】
図15は、注射装置100を斜視図で示しており、カートリッジホルダー20、中央ハウジング部品50、および端部ハウジング部品60を長手方向にセクション化して、装置の、組み立てられ、すぐに使用できる状態にある構成要素の概要を描いている。明確にするために、外側のトラックスリーブ2を、点線を有するシースルーの構成要素として示して、上記の内側のトラックスリーブ3および中間のトラックスリーブ4のそれぞれのシート部およびガイド表面が、プラグアーム10.5が追従するための異なるトラックセクションをどのように形成するかを説明する。(
図16からも)見ることができるように、外側のトラックスリーブ2は、カートリッジホルダー20にスナップ嵌めされ、かつそれに伴って、内側のトラックスリーブ3および中間のトラックスリーブ4の両方を封入して、軸方向および回転方向に相互係止されたトラックスリーブ組立品を提供する。示される注射装置100の状態では、プラグアーム10.5は、それぞれの螺旋状のガイド表面3.6、4.6によって形成された螺旋状のトラックセクションに入る直前で、トラック接合部で静止する。プラグアーム10.5のこの位置では、プラグ10は依然として、カートリッジホルダー20に対して最も遠位の位置にあり、注射針15の遠位端部分は、自己密封前部セクション10.4の後ろの円筒状チャネル10.3内に存在する。自己密封前部セクション10.4の外部表面は、針シールド12の横方向の端部分と同一平面であるか、または実質的に同一平面である。
【0070】
端部ハウジング部品60の近位端表面とばねソケット46との間で作用する駆動ばね45によって遠位方向に付勢されるピストンロッド40は、鍵穴85から角度を付けてオフセットされた用量解放ディスク80の近位面82上に静止している係止タブ42によって、示される使用前の位置に保定される。
【0071】
図16は、注射装置100の長手方向断面図であり、用量解放部材70および用量解放ディスク80が、セクション化されずに描写されている。注射装置100は、
図15に示されるものに対応する状態にある。ピストンロッド40は、ピストンロッド先端44がピストンワッシャー34に当接し、これが次に、カートリッジ壁31の内部部分に密封して嵌められるスライド可能なピストン33に当接する、位置に保定されていることが分かる。注射針15は、後部針部分が自己密封隔壁32を通って延在し、カートリッジ壁31、ピストン33、および自己密封隔壁32によって画定され、液体物質35を保持する、カートリッジ30のチャンバー内に存在するように、カートリッジホルダー20の針ハブ25内に固定して装着される。
【0072】
図17は、上述の方法で、外側のトラックスリーブ2、内側のトラックスリーブ3、および中間のトラックスリーブ4によって形成されたときのトラックスリーブ組立品90の二次元表現である。明確にするために、2つの正反対のトラック構成のうちの1つのみが視覚化されており、以下ではトラックスリーブ組立品90の構造および使用の詳細が、この1つのトラック構成に基づいて説明され、類似の特性を有する正反対のトラック構成が存在することが含意されている。
【0073】
トラックスリーブ組立品90は、近位針シールドトラック端部91.1および遠位針シールドトラック端部91.2によって区切られ、注射針15に対する針シールド12の可能な軸方向の移動を画定する、針シールドトラック91と、複数の対で接続されたトラックセクションを含み、プラグアームトラック開始部92.1およびプラグアームトラック端部92.2によって区切られ、注射針15に対するプラグ10の可能な軸方向の移動を画定する、プラグアームトラック構成92と、を備える。
【0074】
複数の対で接続されたトラックセクションは、プラグアームトラック開始部92.1から螺旋状のトラックセグメント94へと導かれる最初の円周方向のトラックセグメント93と、螺旋状のトラックセグメント94から軸方向のトラックセグメント96へと導かれる相互接続するトラックセグメント95と、軸方向のトラックセグメント96からプラグアームトラック端部92.2へと導かれる端部トラックセグメント97と、を備える。
【0075】
ここで、注射装置100の使用時のプラグ10および針シールド12の移動パターンならびに用量解放機構の動作原理を説明する
図18および
図19を参照して、本発明についてより詳細に記載する。
【0076】
図18aは、本発明の特定の実施形態において、
図16に示されるようにカートリッジホルダー20に固定されたトラックスリーブ組立品90に対するプラグアーム10.5および針シールド12の最初の位置の二次元視覚化である。本発明の他の実施形態では、これは、注射装置100の動作の開始点を表現し得るものではないことが留意される。例えば、プラグ10は、最初は、トラックスリーブ組立品90および針シールド12に対して後退位置にあってもよい。
【0077】
それにもかかわらず、
図18aでは、プラグアーム10.5(上記に従って1つのみを示す)は、最初の円周方向のトラックセグメント93においてプラグアームトラック開始部92.1で静止している。それによって、プラグ10は、突起12.5が遠位針シールドトラック端部91.2に着座した状態で、延在位置にある針シールド12と一緒になって注射針15を覆う、最も遠位の位置にある。トラックスリーブ組立品90によって覆われる針シールド12の一部分が点線で示されており、これを使用して、用量排出作用の後の段階での指12.2とプラグアーム10.5との間の相互作用を説明する。
【0078】
注射装置100から用量を送達するために、ユーザーは、まず、トラックスリーブ組立品90をカートリッジホルダー20に対して時計回りに(近位の視点から見て)回転させる。これは、例えば、カートリッジホルダー20または中央ハウジング部品50を一方の手で保持し、もう一方の手で外側のトラックスリーブ2を回すことによって行われる。プラグアーム10.5は、ガイドスロット24内に回転方向に固定されているため、プラグ10は不動である一方、トラックスリーブ組立品90は、相対的な回転がプラグアーム10.5を螺旋状のトラックセグメント94の始まりに至らせるまで、短い距離だけ角度を付けて変位される。この位置は、
図15に示される注射装置100の状態に対応する。開始部シート頂部3.5の形状は、外側のトラックスリーブ2の最初の回転が比較的高いトルク入力を必要とし、ひいては、例えば、注射装置100がバッグまたはポケットの中で動き回ることが不注意で起こる可能性がない程度まで、最初の円周方向のトラックセグメント93を狭くする。
【0079】
カートリッジホルダー20に対する外側のトラックスリーブ2の後続の時計回りの回転は、プラグアーム10.5を螺旋状のトラックセグメント94内で上向きに導き、かつそれによって、プラグ10を針ハブ25に向かって後退させ、注射針15を、針シールド12内にまだあるにもかかわらず、すぐ隣の環境に露出させる。これについては、
図18cにおいて説明する。
【0080】
次いで、外側のトラックスリーブ2の継続した時計回りの回転は、
図18dに示されるように、プラグアーム10.5を相互接続するトラックセグメント95へと導き、プラグ10が、針ハブ25に対して完全に後退し、
図18eに示されるように、最終的に軸方向のトラックセグメント96の頂部の位置まで後退する。
【0081】
この時点で、注射装置100は用量を送達する準備ができている。
図18f~
図18hは、ユーザーが針シールド12を皮膚(図示せず)に当てて、カートリッジホルダー20を遠位方向に押して、皮下組織への注射針の挿入を果たしたときに起こることを説明している。針シールド12がシールドばね5からの力に対してトラックスリーブ組立品90内に押下されると、ユーザーによって加えられた軸方向の力により、突起12.5が針シールドトラック91へと進む。針シールド12の移動はまた、指12.2をプラグアーム10.5に近付ける(
図18f)。
図18gに示されるように、何らかの時点で、シールドフック12.4が、プラグアーム10.5に到達し、それによって、指12.2が弾性の側方方向の偏向を受けることを余儀なくされる。
【0082】
針シールド12がトラックスリーブ組立品90に完全に押し込まれると、突起12.5が近位針シールドトラック端部91.1に到達し、シールドフック12.4がプラグアーム10.5を通過し、指12.2は、指12.2の通常の非偏向状態に復帰することができる。
図18hは、ここで、どのようにシールドフック12.4をプラグアーム10.5のまさに近位に静止させるかを示している。
【0083】
カートリッジホルダー20に対して完全に後退した位置への針シールド12の移動は、
図19を参照して以下に説明するように、カートリッジ30からの液体物質35の排出を自動的に始める場合がある。ユーザーが、針シールド12が完全に押下されている、皮膚に対する注射装置100の位置を維持する限り、駆動ばね45は、ピストンロッド40を前方に推進するための運動エネルギーを提供し、液体物質35が、結果として得られるピストン33の遠位変位に応答して、継続的に注射針15を通して押し進められることになる。
【0084】
ユーザーが、例えば、注射針15の誤った配置を是正するため、または大量の液体の皮下蓄積からの痛みを回避するように注射部位を変更するために、用量排出を一時停止することを望む場合、注射装置100が単に皮膚表面から持ち上げられ、それによって、注射針15が皮膚から引き出され、シールドばね5が針シールド12を最初の延在位置へと自動的に復帰させる。しかしながら、ここでは、シールドフック12.4はプラグアーム10.5の後ろに位置付けられているため、針シールド12の復帰する移動により、プラグ10が、
図18iに示されるように、シールド本体12.1とともに遠位方向に引っ張られることになり、注射針15の遠位端部分が自己密封前部セクション10.4の後ろで円筒状チャネル10.3内に再位置付けされることになり、これは、注射針の先端を効果的に密封し、内部を通る液体の流れを防止し、その結果、ピストン33の移動を休止させる。したがって、このソリューションでは、用量排出機構自体に一時停止機能を提供する必要はなく、これは、注射装置100をはるかに単純かつ安価にすることができることを意味する。
【0085】
ユーザーが用量送達を再開する準備ができ、針シールド12が単に、所望の注射部位で皮膚に当てられ、カートリッジホルダー20が、シールドばね5からの力に対して遠位方向にもう一度押されると、それによって、針シールド12およびプラグ10の両方が、トラックスリーブ組立品90内で近位方向に押し進められ、突起12.5が、遠位針シールドトラック端部91.2から近位針シールドトラック端部91.1へと針シールドトラック91を進み、プラグアーム10.5が、軸方向のトラックセグメント96を進んで、相互接続するトラックセグメント95との接合部に戻る。それによって、針組立品1が、
図18hに示されるものに対応する状態に到達し、注射針15は、ユーザーの皮下組織に位置付けられ、流路はもはや遮られなくなり、駆動ばね45は、より多くのエネルギーを解放してピストンロッド40を前進させ、用量排出を最終化することができる。
【0086】
全用量がカートリッジ30から送達されると、注射装置100が皮膚から除去され、それによって、シールドばね5が、針シールド12およびプラグ10を再び遠位方向に付勢して注射針15を覆い、偶発的な針刺し損傷のリスクが排除される。外側のトラックスリーブ2の後続の時計回りの回転により、プラグアーム10.5が端部トラックセグメント97へと導かれ、プラグアーム10.5は、終了シート頂部3.8の形状が非復帰型形状を提供するため、
図18jに示されるように、プラグアームトラック端部92.2で所定の位置にしっかりと保持される。
【0087】
図19は、注射装置100バーの斜視図を示しており、用量解放機構のより明確な説明を提供するために、いくつかの構成要素および構成要素部品が除去されている。具体的には、針シールド12の一部分が切り取られており、外側のトラックスリーブ2は、シースルー構成要素として描かれ、カートリッジホルダー20は、注射針15を除いて完全に省略されており、中央ハウジング部品50および端部ハウジング部品60のそれぞれの内部部分のみが視認可能である。
【0088】
図19aは、注射する準備ができている状態の注射装置100を説明しており、プラグアーム10.5は、軸方向のトラックセグメント96の頂部に位置付けられ、それに応じて、プラグ10は、完全に後退し、針シールド12内の注射針15の遠位端部分が露出する。例えば、プラグ10が生物静力学的に設計されていない、本発明の他の実施形態では、単に、延在位置にあるときに注射針15の遠位端部分の周りに流体の締まり嵌めを提供するために、これは、注射装置100が製造業者によって提供される最初の状態であり得ることが留意される。しかしながら、本実施形態では、この時点で、外側のトラックスリーブ2は、プラグ10を最初に後退させるために、
図18a~
図18eに関して記載されるように回転している。注射装置100のこの注射する準備ができている状態では、駆動ばね45はコックされ、ピストンロッド40は、用量解放ディスク80が、スタッド87とノッチ56との間の係合、ならびにディスク本体81に遠位方向の力を加える近位面82上の係止タブ42の当接により、中央ハウジング部品50内に解放可能に固定されることにより、解放可能に保定される。
【0089】
図19bおよび
図19cは、注射装置100がユーザーの皮膚(図示せず)に押し付けられる際の針シールド12の近位の移動を説明している。
図19bでは、突起12.5が、針シールドトラック91の長さの約2/3で押し戻され、注射針15の先端が皮膚表面を穿通しており、指12.2がプラグアーム10.5によって偏向されている。この状態は、
図18gにスケッチされているものに対応する。
【0090】
しかしながら、
図19cでは、針シールド12が、接触点74に当接してシールド先端12.3を完全に押下し、用量解放部材70を近位方向に変位させると、それによって、脚72の傾斜した端部78、79が、ディスク脚86上のランプ88、89に沿って上向きにスライドし、最終的に、用量解放ディスク80もわずかに反時計回りの回転(描かれる遠位の視点から見て)を受けるときに、ノッチ56からスタッド87を持ち上げる。この状態は、
図18hにおいて説明されるものに対応し、同時に、シールドフック12.4がプラグアーム10.5の後ろでスナップ嵌めされる。
【0091】
スタッド87がノッチ56を離れるとすぐに、駆動ばね45からの遠位方向に向けられた力が、ランプ88、89を押し進めて、傾斜した端部78、79に沿って下向きにスライドさせ、それによって、用量解放ディスク80が、
図19dに示されるように、ディスク脚86が内部の壁肥厚部55上の停止面57と交わるまで、中央ハウジング部品50に対してさらなる反時計回りの回転を受けることになる。用量解放ディスク80の回転は、鍵穴85を係止タブ42との角度が付いた整列に至らせ、それによって、ピストンロッド40を、駆動ばね45によって遠位方向に解放および付勢して、ピストン33をカートリッジ30内に前進させ、注射針15を通して液体物質35の体積を排出する。
【0092】
ユーザーが用量排出を一時停止することを望む場合、ユーザーは単に、注射装置100を皮膚表面から除去する。この作用により、シールドばね5は、直ちに針シールド12を最初の延在位置に押し戻すことになり、ここで、シールドフック12.4がプラグアーム10.5と係合するため、針シールド12の遠位の移動が、プラグ10を拘束することになり、それゆえ、プラグ10は、それが注射針15を覆い、注射針15の遠位端部分が円筒状チャネル10.3内に収納される、トラックスリーブ組立品90に対して最初の位置に復帰される。注射針15の遠位端部分の周りの円筒状チャネル10.3の流体の締まり嵌めは、流体通路を効果的に密封し、かつそれによって、液体の流出を防止する。結果は、ピストン33およびピストンロッド40の即時休止であるが、これらの2つは依然として、駆動ばね45によって付勢されている。次いで、注射装置100は、任意の液体物質35があふれた状態で、動き回ることができる。一時停止状態を
図19eにおいて説明する。
【0093】
ユーザーが用量排出を再開することを決定する場合、ユーザーが、注射装置100を皮膚に、例えば、新しい部位に、再び押し付け、それによって、シールドばね5からの付勢力が克服される際に、針シールド12およびプラグ10が一緒にトラックスリーブ組立品90内に押下される。それによって、突起12.5は、針シールドトラック91を遠位針シールドトラック端部91.2から近位針シールドトラック端部91.1へと進み、プラグアーム10.5は、軸方向のトラックセグメント96を頂部へと戻って進む。そのときには、針組立品1の状態は、この場合もまた、
図19dにおいて説明させるものに対応する。
【0094】
用量排出完了後にユーザーが皮膚から注射針15を抜去すると、シールドばね5は、針シールド12およびプラグ10を、注射針15が覆われる延在位置へと復帰させる。次いで、外側のトラックスリーブ2を最後に1回回転させて、プラグアーム10.5を端部トラックセグメント97へと導き、事実上、プラグ10および針シールド12を所定の位置に係止して、その後の偶発的な針刺し損傷を防止する。
【0095】
本発明のこの例示的な実施形態はシングルショットタイプの注射装置100に関連するが、基本的に上記に記載されるように機能するわずかに修正された針組立品を、液体物質の2回以上の用量を送達することができるマルチショット注射装置と組み合わせて使用して、用量排出機構に一時停止特徴を必要としないという同じ利点を提供することができることが留意される。現在示されている閉プラグアームトラック構成92に基づいて、かかるわずかに修正された針組立品を、例えば、それぞれの最初のトラックセグメント93をそれぞれの端部トラックセグメント97に接続することによって、プラグアーム10.5が進むための単一の円周方向に延在する連続的なトラックとともに設計することができる。特に、かかる事例では、用量排出事象間の注射針15の微生物汚染のリスクを低減させるために、プラグ10の生物静力学的なバージョンを採用することが妥当であろう。
【図 】