(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】二次電池用正極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/131 20100101AFI20240719BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240719BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240719BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240719BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240719BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240719BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M10/0562
(21)【出願番号】P 2022526533
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(86)【国際出願番号】 IB2020000525
(87)【国際公開番号】W WO2021240194
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 直人
(72)【発明者】
【氏名】高田 晴美
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-097892(JP,A)
【文献】特開2014-175278(JP,A)
【文献】特開2019-121499(JP,A)
【文献】特開2016-062683(JP,A)
【文献】特開2019-207792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13 - 1399
H01M 4/62
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 10/052
H01M 10/0562
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次粒子からなる正極活物質と固体電解質とを含有する正極活物質層を備えた二次電池用正極であって、
前記二次粒子の平均粒子径が4.9μm以下であり、前記二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径が1.2μm以上であり、かつ、前記固体電解質の一次粒子の平均粒子径が0.8μm以下であり、
前記正極活物質は層状岩塩型活物質またはスピネル型活物質のみからな
り、
前記二次粒子の平均粒子径が3.6μm以上である、二次電池用正極。
【請求項2】
二次粒子からなる正極活物質と固体電解質とを含有する正極活物質層を備えた二次電池用正極であって、
前記二次粒子の平均粒子径が4.9μm以下であり、前記二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径が1.2μm以上であり、かつ、前記固体電解質の一次粒子の平均粒子径が0.8μm以下であり、
前記正極活物質は層状岩塩型活物質またはスピネル型活物質のみからな
り、
前記二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径が2.3μm以下である、二次電池用正極。
【請求項3】
二次粒子からなる正極活物質と固体電解質とを含有する正極活物質層を備えた二次電池用正極であって、
前記二次粒子の平均粒子径が4.9μm以下であり、前記二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径が1.2μm以上であり、かつ、前記固体電解質の一次粒子の平均粒子径が0.8μm以下であり、
前記正極活物質は層状岩塩型活物質またはスピネル型活物質のみからな
り、
前記正極活物質層の空隙率が8.1%以上である、二次電池用正極。
【請求項4】
前記正極活物質層における前記正極活物質と前記固体電解質との合計含有量に占める前記正極活物質の含有量の比率が70体積%以上である、請求項1
~3のいずれか1項に記載の二次電池用正極。
【請求項5】
前記正極活物質層の空隙率が10.1%以下である、請求項1
~4のいずれか1項に記載の二次電池用正極。
【請求項6】
前記正極活物質が、Li(Ni-Mn-Co)O
2またはこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換された組成を有するNMC複合酸化物を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の二次電池用正極。
【請求項7】
前記二次粒子の平均粒子径が3.6μm以上である、請求項
2~
6のいずれか1項に記載の二次電池用正極。
【請求項8】
前記二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径が2.3μm以下である、請求項
1、3~
7のいずれか1項に記載の二次電池用正極。
【請求項9】
前記正極活物質層の空隙率が8.1%以上である、請求項1
、2、4~
8のいずれか1項に記載の二次電池用正極。
【請求項10】
前記固体電解質が硫化物固体電解質を含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載の二次電池用正極。
【請求項11】
全固体リチウムイオン二次電池用正極である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の二次電池用正極。
【請求項12】
前記正極活物質層が、前記正極活物質、前記固体電解質、および導電助剤のみからなる、請求項1~
11のいずれか1項に記載の二次電池用正極。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか1項に記載の二次電池用正極を備えた、二次電池。
【請求項14】
全固体リチウムイオン二次電池である、請求項
13に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用正極に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池などの非水電解質二次電池の開発が盛んに行われている。
【0003】
モータ駆動用二次電池としては、携帯電話やノートパソコン等に使用される民生用リチウムイオン二次電池と比較して極めて高い出力特性、および高いエネルギーを有することが求められている。したがって、現実的な全ての電池の中で最も高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。
【0004】
ここで、現在一般に普及しているリチウムイオン二次電池は、電解質に可燃性の有機電解液を用いている。このような液系リチウムイオン二次電池では、液漏れ、短絡、過充電などに対する安全対策が他の電池よりも厳しく求められる。
【0005】
そこで近年、電解質に酸化物系や硫化物系の固体電解質を用いた全固体リチウムイオン二次電池等の全固体電池に関する研究開発が盛んに行われている。固体電解質は、固体中でイオン伝導が可能なイオン伝導体を主体として構成される材料である。このため、全固体リチウムイオン二次電池においては、従来の液系リチウムイオン二次電池のように可燃性の有機電解液に起因する各種問題が原理的に発生しない。また一般に、高電位・大容量の正極材料、大容量の負極材料を用いると電池の出力密度およびエネルギー密度の大幅な向上が図れる。
【0006】
ところで、リチウムイオン二次電池の正極活物質として、リチウム金属複合酸化物などが用いられることがあり、当該複合酸化物の粉末は、一次粒子と、一次粒子が凝集して形成された二次粒子とから構成されることがある。従来、コバルト、ニッケル、マンガンの群から選ばれる1種の元素と、リチウムとを主成分とする単分散の一次粒子(単粒子)の粉体状のリチウム複合酸化物が、粒界がなく、正極材の成型時等に割れや破壊が起こりにくくなるという利点があることが提案されている。
【0007】
一方、このような単粒子からなる複合酸化物を正極活物質として用いると、単分散の一次粒子が小さい場合などは充填する際の流動性が悪化するという問題があった。また、電解質として液体電解質(電解液)を用いた液系電池においては、電解液が良好に浸透するという観点から、サイクル特性を向上させるために正極活物質中には空隙を有する二次粒子が存在することが好ましいことも知られている。
【0008】
上記のような観点から、特開2019-160571号公報では、電極を作製する際のプレス圧力による粒子割れの発生を抑制しつつ、充填時の流動性を改善することを目的として、正極活物質を構成する単粒子と二次粒子との配合割合を特定の範囲内の値に制御する技術が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開2019-160571号公報に開示された技術によると、電極を作製する際のプレス圧力による粒子割れの発生が抑制されるという利点があり、特開2019-160571号公報の実施例においても、破壊の生じていた粒子の割合が低減されることが示されている。
【0010】
ここで、液体電解質(電解液)をほとんどまたは全く含まない全固体リチウムイオン二次電池等の全固体電池を構成する電極において、電解液が充填されない空隙が存在するとその部分は電池反応にまったく関与することができず、デッドスペースとなってしまう。このため、全固体電池の作製時には、液系電池の電極の作製時とは比較にならないほど大きなプレス圧力を用いてプレス処理を施す必要がある。このため、正極活物質に要求されるプレス圧力による粒子割れに対する耐性のレベルも、全固体電池においては液系電池よりもずっと高いものとなる。この点に関し、本発明者らの検討によれば、特開2019-160571号公報に記載されているような正極活物質を用いただけでは、全固体電池の作製時に印加されるプレス圧力に対する耐性が十分ではなく、依然としてプレス時に正極活物質の粒子割れが生じ、電池容量が低下するという問題が生じることが判明した。
【0011】
そこで本発明は、全固体リチウムイオン二次電池等の全固体電池を構成する正極において、電極作製時のプレス圧力による正極活物質の粒子割れを抑制し、ひいては電池容量の低下を効果的に防止しうる手段を提供することを目的とする。
【0012】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、正極活物質層に含まれる正極活物質の二次粒子およびこれを構成する一次粒子の平均粒子径と、正極活物質層に含まれる固体電解質の平均粒子径を所定の範囲内の値に制御することで上記の課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一形態によれば、二次粒子からなる正極活物質と固体電解質とを含有する正極活物質層を備えた二次電池用正極であって、
前記二次粒子の平均粒子径が4.9μm以下であり、前記二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径が1.2μm以上であり、かつ、前記固体電解質の一次粒子の平均粒子径が0.8μm以下である、二次電池用正極が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明に係るリチウムイオン二次電池の一実施形態である扁平積層型の全固体リチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るリチウムイオン二次電池の一実施形態である双極型(バイポーラ型)の全固体リチウムイオン二次電池を模式的に表した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
《二次電池》
本発明の一形態は、二次粒子からなる正極活物質と固体電解質とを含有する正極活物質層を備えた二次電池用正極であって、前記二次粒子の平均粒子径が4.9μm以下であり、前記二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径が1.2μm以上であり、かつ、前記固体電解質の一次粒子の平均粒子径が0.8μm以下である、二次電池用正極である。本発明に係る二次電池用正極によれば、全固体リチウムイオン二次電池等の全固体電池を構成する正極において、電極作製時のプレス圧力による正極活物質の粒子割れを抑制し、ひいては電池容量の低下を効果的に防止することができる。
【0016】
以下、図面を参照しながら、上述した本形態に係る二次電池用正極の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
図1は、本発明に係る二次電池用正極の一実施形態である扁平積層型の全固体リチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
図2は、
図1に示す2-2線に沿う断面図である。積層型とすることで、電池をコンパクトにかつ高容量化することができる。なお、本明細書においては、
図1および
図2に示す扁平積層型の双極型でないリチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」とも称する)を例に挙げて詳細に説明する。ただし、本形態に係るリチウムイオン二次電池の内部における電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、非双極型(内部並列接続タイプ)電池および双極型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用しうるものである。
【0018】
図1に示すように、積層型電池10aは、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための負極集電板25、正極集電板27が引き出されている。発電要素21は、積層型電池10aの電池外装材(ラミネートフィルム29)によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素21は、負極集電板25および正極集電板27を外部に引き出した状態で密封されている。
【0019】
なお、本形態に係るリチウムイオン二次電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型のリチウムイオン二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材にラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムを含むラミネートフィルムの内部に収容される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
【0020】
また、
図1に示す集電板(25、27)の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。負極集電板25と正極集電板27とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、負極集電板25と正極集電板27をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、
図1に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
【0021】
図2に示すように、本実施形態の積層型電池10aは、実際に充放電反応が進行する扁平略矩形の発電要素21が、電池外装材であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極と、固体電解質層17と、負極とを積層した構成を有している。正極は、正極集電体11”の両面に正極活物質を含有する正極活物質層15が配置された構造を有する。負極は、負極集電体11’の両面に負極活物質を含有する負極活物質層13が配置された構造を有する。具体的には、1つの正極活物質層15とこれに隣接する負極活物質層13とが、固体電解質層17を介して対向するようにして、正極、固体電解質層および負極がこの順に積層されている。これにより、隣接する正極、固体電解質層および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、
図1に示す積層型電池10aは、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。
【0022】
図2に示すように、発電要素21の両最外層に位置する最外層正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層15が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、場合によっては、集電体(11’,11”)を用いることなく、負極活物質層13および正極活物質層15をそれぞれ負極および正極として用いてもよい。
【0023】
負極集電体11’および正極集電体11”は、各電極(正極および負極)と導通される負極集電板(タブ)25および正極集電板(タブ)27がそれぞれ取り付けられ、電池外装材であるラミネートフィルム29の端部に挟まれるようにしてラミネートフィルム29の外部に導出される構造を有している。正極集電板27および負極集電板25はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11”および負極集電体11’に超音波溶接や抵抗溶接などにより取り付けられていてもよい。
【0024】
以下、本形態に係る二次電池用正極が適用される二次電池の主要な構成部材について説明する。
【0025】
[集電体]
集電体は、電極活物質層からの電子の移動を媒介する機能を有する。集電体を構成する材料に特に制限はない。集電体の構成材料としては、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。
【0026】
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材などが用いられてもよい。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位、集電体へのスパッタリングによる負極活物質の密着性等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。
【0027】
また、後者の導電性を有する樹脂としては、非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。
【0028】
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
【0029】
上記の導電性高分子材料または非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーが添加されうる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。
【0030】
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、およびSbからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むものである。
【0031】
導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、集電体の全質量100質量%に対して5~80質量%である。
【0032】
なお、集電体は、単独の材料からなる単層構造であってもよいし、あるいは、これらの材料からなる層を適宜組み合わせた積層構造であっても構わない。集電体の軽量化の観点からは、少なくとも導電性を有する樹脂からなる導電性樹脂層を含むことが好ましい。また、単電池層間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、集電体の一部に金属層を設けてもよい。さらに、後述する負極活物質層や正極活物質層がそれ自体で導電性を有し集電機能を発揮できるのであれば、これらの電極活物質層とは別の部材としての集電体を用いなくともよい。このような形態においては、後述する負極活物質層がそのまま負極を構成し、後述する正極活物質層がそのまま正極を構成することとなる。
【0033】
[正極活物質層]
本形態に係る二次電池用正極において、正極活物質層は、正極活物質を含有する。正極活物質としては、好ましくは金属酸化物が用いられるが、その他にも硫黄単体などが正極活物質として用いられてもよい。
【0034】
正極活物質として機能しうる金属酸化物としては、特に制限されないが、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiVO2、Li(Ni-Mn-Co)O2等の層状岩塩型活物質、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4等のスピネル型活物質、LiFePO4、LiMnPO4等のオリビン型活物質、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4等のSi含有活物質等が挙げられる。また上記以外の金属酸化物としては、例えば、Li4Ti5O12が挙げられる。これらのなかでも、リチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が好ましく用いられ、さらに好ましくはLi(Ni-Mn-Co)O2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)が用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を持ち、遷移金属Mの1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
【0035】
NMC複合酸化物は、上述したように、遷移金属元素の一部が他の金属元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、V、Cu、Ag、Znなどが挙げられ、好ましくは、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crであり、より好ましくは、Ti、Zr、P、Al、Mg、Crであり、サイクル特性向上の観点から、さらに好ましくは、Ti、Zr、Al、Mg、Crである。
【0036】
NMC複合酸化物は、理論放電容量が高いことから、好ましくは、一般式(1):LiaNibMncCodMxO2(但し、式中、a、b、c、d、xは、0.98≦a≦1.2、0.6≦b≦0.9、0<c≦0.4、0<d≦0.4、0≦x≦0.3、b+c+d+x=1を満たす。MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crから選ばれる元素で少なくとも1種類である)で表される組成を有する。ここで、aは、Liの原子比を表し、bは、Niの原子比を表し、cは、Mnの原子比を表し、dは、Coの原子比を表し、xは、Mの原子比を表す。
【0037】
ここで、正極活物質の全量100質量%に占める金属酸化物の含有量の割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、いっそう好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
【0038】
本形態に係る二次電池用正極において、正極活物質層に含まれる正極活物質は二次粒子からなるものである。ここで「二次粒子」とは、一次粒子(単粒子)が凝集してなる凝集体を意味する。そして、本形態に係る二次電池用正極においては、正極活物質を構成する二次粒子の平均粒子径(算術平均径)が4.9μm以下に制御されており、かつ、当該二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径(算術平均径)が1.2μm以上に制御されている点に特徴がある。なお、本明細書において、「粒子径」とは、観察される粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味することとし、また、活物質および固体電解質の平均粒子径の値は、それぞれ、後述する実施例の欄に記載の手法により測定した値を採用するものとする。また、正極活物質を構成する二次粒子の平均粒子径の下限値について特に制限はないが、通常は3.0μm以上であり、本願発明の作用効果を効果的に得るという観点からは好ましくは3.6μm以上である。また、上記二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径の上限値についても特に制限はなく、通常は2.7μm以下であり、本願発明の作用効果を効果的に得るという観点からは好ましくは2.3μm以下である。
【0039】
また、上記二次粒子を構成する一次粒子に占める単一の結晶子からなる粒子の個数割合は、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。このような構成とすることにより、本願所定の粒子径プロファイルを有する正極活物質が得られやすいため、好ましい。
【0040】
正極活物質の構成粒子の平均粒子径を上述したような構成に制御する手法については特に制限はなく、正極活物質粒子の平均粒子径を制御しうる従来公知の知見が適宜参照されうる。具体的には、例えば、特許第6574222号、特許第5702289号といった特許文献や、Solid State Ionics,Volume 345,February 2020,115200、Journal of The Electrochemical Society,165(5)A1038-A1045(2018)といった非特許文献に開示された手法を参照することができる。
【0041】
正極活物質層は、固体電解質をさらに含む。正極活物質層が固体電解質を含むことにより、正極活物質層のイオン伝導性を向上させることができる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質や酸化物固体電解質が挙げられるが、イオン伝導性に優れ電池性能のよりいっそうの向上が図れるという観点からは硫化物固体電解質であることが好ましい。
【0042】
硫化物固体電解質としては、例えば、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5、LiI-Li3PS4、LiI-LiBr-Li3PS4、Li3PS4、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-ZmSn(ただし、m、nは正の数であり、Zは、Ge、Zn、Gaのいずれかである)、Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LixMOy(ただし、x、yは正の数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれかである)等が挙げられる。なお、「Li2S-P2S5」の記載は、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味し、他の記載についても同様である。
【0043】
硫化物固体電解質は、例えば、Li3PS4骨格を有していてもよく、Li4P2S7骨格を有していてもよく、Li4P2S6骨格を有していてもよい。Li3PS4骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LiI-Li3PS4、LiI-LiBr-Li3PS4、Li3PS4が挙げられる。また、Li4P2S7骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LPSと称されるLi-P-S系固体電解質(例えば、Li7P3S11)が挙げられる。また、硫化物固体電解質として、例えば、Li(4-x)Ge(1-x)PxS4(xは、0<x<1を満たす)で表されるLGPS等を用いてもよい。なかでも、硫化物固体電解質は、P元素を含む硫化物固体電解質であることが好ましく、硫化物固体電解質は、Li2S-P2S5を主成分とする材料であることがより好ましい。さらに、硫化物固体電解質は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)を含有していてもよい。ハロゲンを含有する硫化物固体電解質としては、アルジロダイト型固体電解質(Li6PS5ClやLi6PS5Br)が挙げられ、これもまた好ましく用いられうる材料である。
【0044】
また、硫化物固体電解質がLi2S-P2S5系である場合、Li2SおよびP2S5の割合は、モル比で、Li2S:P2S5=50:50~100:0の範囲内であることが好ましく、なかでもLi2S:P2S5=70:30~80:20であることが好ましい。
【0045】
また、硫化物固体電解質は、硫化物ガラスであってもよく、結晶化硫化物ガラスであってもよく、固相法により得られる結晶質材料であってもよい。なお、硫化物ガラスは、例えば原料組成物に対してメカニカルミリング(ボールミル等)を行うことにより得ることができる。また、結晶化硫化物ガラスは、例えば硫化物ガラスを結晶化温度以上の温度で熱処理を行うことにより得ることができる。また、硫化物固体電解質の常温(25℃)におけるイオン伝導度(例えば、Liイオン伝導度)は、例えば、1×10-5S/cm以上であることが好ましく、1×10-4S/cm以上であることがより好ましい。なお、固体電解質のイオン伝導度の値は、交流インピーダンス法により測定することができる。
【0046】
酸化物固体電解質としては、例えば、NASICON型構造を有する化合物等が挙げられる。NASICON型構造を有する化合物の一例としては、一般式Li1+xAlxGe2-x(PO4)3(0≦x≦2)で表される化合物(LAGP)、一般式Li1+xAlxTi2-x(PO4)3(0≦x≦2)で表される化合物(LATP)等が挙げられる。また、酸化物固体電解質の他の例としては、LiLaTiO(例えば、Li0.34La0.51TiO3)、LiPON(例えば、Li2.9PO3.3N0.46)、LiLaZrO(例えば、Li7La3Zr2O12)等が挙げられる。
【0047】
固体電解質の形状は、例えば、真球状、楕円球状等の粒子形状である。そして、本形態に係る二次電池用正極においては、正極活物質層に含まれる固体電解質の一次粒子の平均粒子径(算術平均径)が0.8μm以下に制御されている点に特徴がある。なお、固体電解質の一次粒子の平均粒子径の下限値について特に制限はないが、通常は0.5μm以上である。
【0048】
本発明者らの検討によれば、上述した正極活物質の二次粒子およびこれを構成する一次粒子の平均粒子径の値と、正極活物質層に含まれる固体電解質の一次粒子の平均粒子径の値とを上記の範囲に制御することで、電極(正極)の作製時に大きいプレス圧力が印加された場合であっても、正極活物質の粒子割れを抑制することができ、粒子割れに起因する電池容量の低下が防止されることが判明したのである。本形態に係る構成とすることにより本願所定の効果が奏されるメカニズムは完全には明らかとはなっていない。ただし、本発明者らは、上記のような構成を有する正極活物質の粒子は表面の凹凸が少なく粒子同士の引っ掛かりが起こりにくく、また、結晶粒界が少なく粒子の強度が強いために、正極活物質の粒子割れの発生が抑制されるものと推定している。
【0049】
このような効果が奏される結果、本形態に係る二次電池用正極によれば、電極作製時の大きいプレス圧力に対する耐性が向上した正極活物質を用いていることから、正極活物質層に含まれる正極活物質層の含有量を固体電解質と比較して相対的に増加させて、よりいっそう高容量の電池を得ることが可能となる。このような観点から、正極活物質層における正極活物質と固体電解質との合計含有量に占める正極活物質の含有量の比率(正極活物質層活物質比率)は、好ましくは70体積%以上であり、より好ましくは75体積%以上であり、さらに好ましくは80体積%以上である。一方、この値の上限値については特に制限はないが、通常は90体積%以下であり、好ましくは85体積%以下である。また、上記と同様の理由から、正極活物質層の空隙率を従来よりも小さい値に制御することも可能である。これにより、電池の容量密度を向上させることができるため好ましい。具体的には、本形態に係る二次電池用正極における正極活物質層の空隙率は、好ましくは10.1%以下であり、より好ましくは9.0%以下である。一方、正極活物質層の空隙率の下限値について特に制限はないが、通常は3.0%以上であり、好ましくは5.0%以上であり、本願発明の作用効果を効果的に得るという観点からより好ましくは8.1%以上である。
【0050】
正極活物質層は、上述した正極活物質および固体電解質に加えて、導電助剤およびバインダの少なくとも1つをさらに含有していてもよい。
【0051】
導電助剤としては、例えば、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅、チタン等の金属、これらの金属を含む合金または金属酸化物;炭素繊維(具体的には、気相成長炭素繊維(VGCF)、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、活性炭素繊維等)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンブラック(具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等のカーボンが挙げられるが、これらに限定されない。また、粒子状のセラミック材料や樹脂材料の周りに上記金属材料をめっき等でコーティングしたものも導電助剤として使用できる。これらの導電助剤のなかでも、電気的安定性の観点から、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミニウム、ステンレス、銀、金、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、カーボンを少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。これらの導電助剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0052】
導電助剤の形状は、粒子状または繊維状であることが好ましい。導電助剤が粒子状である場合、粒子の形状は特に限定されず、粉末状、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等、いずれの形状であっても構わない。
【0053】
導電助剤が粒子状である場合の平均粒子径(一次粒子径)は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01~10μmであることが好ましい。
【0054】
正極活物質層が導電助剤を含む場合、当該正極活物質層における導電助剤の含有量は特に制限されないが、正極活物質層の合計質量に対して、好ましくは0~10質量%であり、より好ましくは2~8質量%であり、さらに好ましくは4~7質量%である。このような範囲であれば、正極活物質層においてより強固な電子伝導パスを形成することが可能となり、電池特性の向上に有効に寄与することが可能である。
【0055】
一方、バインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。
【0056】
ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(水素原子が他のハロゲン元素にて置換された化合物を含む)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリエーテルニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-HFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFMVE-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。
【0057】
正極活物質層の厚さは、目的とする全固体電池の構成によっても異なるが、例えば、0.1~1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0058】
[負極(負極活物質層)]
本形態に係る二次電池において、負極活物質層13は、負極活物質を含む。負極活物質の種類としては、特に制限されないが、炭素材料、金属酸化物および金属活物質が挙げられる。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられる。また、金属酸化物としては、例えば、Nb2O5、Li4Ti5O12等が挙げられる。さらに、ケイ素系負極活物質やスズ系負極活物質が用いられてもよい。ここで、ケイ素およびスズは第14族元素に属し、非水電解質二次電池の容量を大きく向上させうる負極活物質であることが知られている。これらの単体は単位体積(質量)あたり多数の電荷担体(リチウムイオン等)を吸蔵および放出しうることから、高容量の負極活物質となる。ここで、ケイ素系負極活物質としては、Si単体を用いることが好ましい。また同様に、Si相とケイ素酸化物相との2相に不均化されたSiOx(0.3≦x≦1.6)などのケイ素酸化物を用いることも好ましい。この際、xの範囲は0.5≦x≦1.5であることがより好ましく、0.7≦x≦1.2であることがさらに好ましい。さらには、ケイ素を含有する合金(ケイ素含有合金系負極活物質)が用いられてもよい。一方、スズ元素を含む負極活物質(スズ系負極活物質)としては、Sn単体、スズ合金(Cu-Sn合金、Co-Sn合金)、アモルファススズ酸化物、スズケイ素酸化物等が挙げられる。このうち、アモルファススズ酸化物としてはSnB0.4P0.6O3.1が例示される。また、スズケイ素酸化物としてはSnSiO3が例示される。また、負極活物質として、リチウムを含有する金属を用いてもよい。このような負極活物質は、リチウムを含有する活物質であれば特に限定されず、金属リチウムのほか、リチウム含有合金が挙げられる。リチウム含有合金としては、例えば、Liと、In、Al、SiおよびSnの少なくとも1種との合金が挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。負極活物質は、金属リチウム、ケイ素系負極活物質またはスズ系負極活物質を含むことが好ましく、金属リチウムを含むことが特に好ましい。
【0059】
負極活物質の形状は、例えば、粒子状(球状、繊維状)、薄膜状等が挙げられる。負極活物質が粒子形状である場合、その平均粒子径は、例えば、1nm~100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm~50μmの範囲内であり、さらに好ましくは100nm~20μmの範囲内であり、特に好ましくは1~20μmの範囲内である。
【0060】
負極活物質層における負極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、40~99質量%の範囲内であることが好ましく、50~90質量%の範囲内であることがより好ましい。なお、負極活物質層は、固体電解質や、導電助剤および/またはバインダをさらに含んでもよく、これらの具体的な形態および好ましい形態については、上述した正極活物質層の欄において説明したものが同様に採用されうる。
【0061】
負極活物質層の厚さは、目的とする全固体電池の構成によっても異なるが、例えば、0.1~1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0062】
[固体電解質層]
本形態に係る二次電池において、固体電解質層は、上述した正極活物質層と負極活物質層との間に介在し、固体電解質を必須に含有する層である。固体電解質層に含有される固体電解質の具体的な形態について特に制限はなく、正極活物質層の欄において説明した例示および好ましい形態が同様に採用される。すなわち、固体電解質層は硫化物固体電解質を含有することが好ましいが、この場合にはその他の固体電解質をさらに含有してもよいし、硫化物固体電解質以外の固体電解質のみを含んでもよい。
【0063】
固体電解質層は、上述した固体電解質に加えて、バインダをさらに含有していてもよい。固体電解質層に含有されうるバインダについても、正極活物質層の欄において説明した例示および好ましい形態が同様に採用されうる。
【0064】
固体電解質層の厚みは、目的とするリチウムイオン二次電池の構成によっても異なるが、電池の体積エネルギー密度を向上させうるという観点からは、好ましくは600μm以下であり、より好ましくは500μm以下であり、さらに好ましくは400μm以下である。一方、固体電解質層の厚みの下限値について特に制限はないが、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは50μm以上であり、さらに好ましくは100μm以上である。
【0065】
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板27と負極集電板25とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
【0066】
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体(11、12)と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
【0067】
[電池外装材]
電池外装材としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、
図1および
図2に示すように発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルム29を用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができることから、外装体はアルミニウムを含むラミネートフィルムがより好ましい。
【0068】
本形態に係る積層型電池は、複数の単電池層が並列に接続された構成を有することにより、高容量でサイクル耐久性に優れるものである。したがって、本形態に係る積層型電池は、EV、HEVの駆動用電源として好適に使用される。
【0069】
以上、リチウムイオン二次電池の一実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0070】
例えば、本発明に係るリチウムイオン二次電池が適用される電池の種類として、集電体の一方の面に電気的に結合した正極活物質層と、集電体の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層とを有する双極型電極を含む、双極型(バイポーラ型)の電池も挙げられる。
【0071】
図3は、本発明に係るリチウムイオン二次電池の一実施形態である双極型(バイポーラ型)のリチウムイオン二次電池(以下、単に「双極型二次電池」とも称する)を模式的に表した断面図である。
図3に示す双極型二次電池10bは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装体であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
【0072】
図3に示すように、本形態の双極型二次電池10bの発電要素21は、集電体11の一方の面に電気的に結合した正極活物質層15が形成され、集電体11の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層13が形成された複数の双極型電極23を有する。各双極型電極23は、固体電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。なお、固体電解質層17は、固体電解質が層状に成形されてなる構成を有する。
図3に示すように、一の双極型電極23の正極活物質層15と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層13との間に固体電解質層17が挟まれて配置されている。
【0073】
隣接する正極活物質層15、固体電解質層17、および負極活物質層13は、一つの単電池層19を構成する。したがって、双極型二次電池10bは、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層集電体11aには、片面のみに正極活物質層15が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層集電体11bには、片面のみに負極活物質層13が形成されている。
【0074】
さらに、
図3に示す双極型二次電池10bでは、正極側の最外層集電体11aに隣接するように正極集電板(正極タブ)25が配置され、これが延長されて電池外装体であるラミネートフィルム29から導出している。一方、負極側の最外層集電体11bに隣接するように負極集電板(負極タブ)27が配置され、同様にこれが延長されてラミネートフィルム29から導出している。
【0075】
なお、単電池層19の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、双極型二次電池10bでは、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層19の積層回数を少なくしてもよい。双極型二次電池10bでも、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、発電要素21を電池外装体であるラミネートフィルム29に減圧封入し、正極集電板27および負極集電板25をラミネートフィルム29の外部に取り出した構造とするのがよい。
【0076】
また、本形態に係る二次電池は、全固体型でなくてもよい。すなわち、固体電解質層は、従来公知の液体電解質(電解液)をさらに含有していてもよい。固体電解質層に含まれうる液体電解質(電解液)の量について特に制限はないが、固体電解質により形成された固体電解質層の形状が保持され、液体電解質(電解液)の液漏れが生じない程度の量であることが好ましい。
【0077】
用いられうる液体電解質(電解液)は、有機溶媒にリチウム塩が溶解した形態を有する。用いられる有機溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピオン酸メチル(MP)、酢酸メチル(MA)、ギ酸メチル(MF)、4-メチルジオキソラン(4MeDOL)、ジオキソラン(DOL)、2-メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびγ-ブチロラクトン(GBL)などが挙げられる。中でも、有機溶媒は、急速充電特性および出力特性をより向上できるとの観点から、好ましくは鎖状カーボネートであり、より好ましくはジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)からなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくはエチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)から選択される。
【0078】
リチウム塩としては、Li(FSO2)2N(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド;LiFSI)、Li(C2F5SO2)2N、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3等が挙げられる。中でも、リチウム塩は、電池出力および充放電サイクル特性の観点から、好ましくはLi(FSO2)2N(LiFSI)である。
【0079】
液体電解質(電解液)は、上述した成分以外の添加剤をさらに含有してもよい。かような化合物の具体例としては、例えば、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2-ジビニルエチレンカーボネート、1-メチル-1-ビニルエチレンカーボネート、1-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-1-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-2-ビニルエチレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、ビニルオキシメチルエチレンカーボネート、アリルオキシメチルエチレンカーボネート、アクリルオキシメチルエチレンカーボネート、メタクリルオキシメチルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート、エチニルオキシメチルエチレンカーボネート、プロパルギルオキシエチレンカーボネート、メチレンエチレンカーボネート、1,1-ジメチル-2-メチレンエチレンカーボネートなどが挙げられる。これらの添加剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、添加剤を電解液に使用する場合の使用量は、適宜調整することができる。
【0080】
[組電池]
組電池は、電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
【0081】
電池が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池を形成することもできる。そして、この装脱着可能な小型の組電池をさらに複数、直列にまたは並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池(電池モジュール、電池パックなど)を形成することもできる。何個の電池を接続して組電池を作製するか、また、何段の小型組電池を積層して大容量の組電池を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0082】
[車両]
電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両に搭載することができる。本発明では、長期信頼性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
【実施例】
【0083】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0084】
《正極の作製例》
〈作製例1:正極活物質層における正極活物質と固体電解質との合計含有量に占める正極活物質の含有量の比率が70体積%である正極の作製例〉
[比較例1-1]
リチウムイオン伝導性の硫化物固体電解質であるアルジロダイト型固体電解質(Li6PS5Cl)を準備した。また、正極活物質であるリチウム含有金属酸化物(組成=LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2)と、導電助剤であるアセチレンブラックとを準備した。
【0085】
上記で準備した正極活物質および硫化物固体電解質を合計で90質量部、並びに導電助剤5質量部をメノウ乳鉢中で一旦混合し、遊星ボールミルを用いてさらに混合撹拌した。この際、正極活物質と固体電解質との合計含有量に占める正極活物質の含有量の比率が70体積%となるように、これらの配合量を調整した。次いで、得られた混合粉体に対してバインダであるスチレン-ブタジエンゴム(SBR)5質量部を添加し、適量のキシレンを溶媒として40質量部添加し、混合して正極活物質スラリーを調製した。
【0086】
上記で調製した正極活物質スラリーを、正極集電体であるアルミニウム箔(厚さ20μm)の一方の表面に塗工し、溶媒を揮発させることにより塗膜を形成した。次いで、ロールプレス機を用いたプレス処理により上記塗膜を緻密化させることにより正極活物質層(厚さ50μm)を形成して、本比較例の正極を得た。
【0087】
ここで、得られた正極の正極活物質層に含まれる正極活物質(リチウム含有金属酸化物)の二次粒子の平均粒子径および当該二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径を下記の手法により測定したところ、それぞれ7.1μmおよび1.5μmであった。また、硫化物固体電解質の一次粒子の平均粒子径を下記の手法により測定したところ、0.8μmであった。さらに、得られた正極の正極活物質層の空隙率を下記の手法により測定したところ、8.8%であった。また、得られた正極の正極活物質層に含まれる正極活物質の粒子のうち、プレス処理によって破損したものの個数割合を下記の手法により測定したところ、9.8%であった。
【0088】
(平均粒子径および空隙率の測定方法)
作製された正極活物質層の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)およびエネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いて観察、評価した。
【0089】
正極活物質の一次粒子の平均粒子径(算術平均径)は、正極活物質の断面より確認できる粒界の存在しない粒子50個以上について粒子径(観察される粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離)をそれぞれ測定し、その算術平均値を算出することにより求めた。
【0090】
正極活物質の二次粒子の平均粒子径(算術平均径)は、間に他の物質が存在しない一次粒子群50個以上について粒子径をそれぞれ測定し、その算術平均値を算出することにより求めた。
【0091】
また、プレス処理によって破損した正極活物質粒子の個数割合についても、SEMによる観察画像から算出した。
【0092】
固体電解質の一次粒子の平均粒子径は、固体電解質の断面より確認できる粒界の存在しない粒子50個以上について粒子径(観察される粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離)をそれぞれ測定し、その算術平均値を算出することにより求めた。この際、粒子の形状が不規則な形をしているものは2つ以上の粒子が溶着したものであると判断し、カウントしなかった。
【0093】
正極活物質層の空隙率についても、作製された正極活物質層の断面の観察画像を解析することにより求めた。
【0094】
なお、正極活物質層における、正極活物質と固体電解質との合計含有量に占める正極活物質の含有量の比率(体積比)の値についても、作製された正極活物質層の断面の観察画像を解析することにより算出が可能である。具体的には、EDX分析により、正極活物質および固体電解質のそれぞれの面積比から、上記体積比を算出した。なお、算出に用いた面積は3000μm2とし、十分な面積を用いた。また、正極活物質の検出にはNi、Mn、Coのピークを指標として用い、固体電解質の検出にはS、Pのピークを指標として用いた。
【0095】
[比較例1-2]
正極活物質層の空隙率が9.5%となるようにプレス処理の条件を変更したこと以外は、上述した比較例1-1と同様の手法により、本比較例の正極を作製した。
【0096】
[比較例1-3]
正極活物質(リチウム含有金属酸化物)として、二次粒子の平均粒子径および当該二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径がそれぞれ10.1μmおよび0.8μmであるものを用いたこと以外は、上述した比較例1-1と同様の手法により、本比較例の正極を作製した。なお、このようにして得られた正極における正極活物質層の空隙率は、9.2%であった。
【0097】
[比較例1-4]
正極活物質(リチウム含有金属酸化物)として、二次粒子の平均粒子径および当該二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径がそれぞれ3.9μmおよび1.0μmであるものを用いたこと以外は、上述した比較例1-1と同様の手法により、本比較例の正極を作製した。なお、このようにして得られた正極における正極活物質層の空隙率は、9.0%であった。
【0098】
[実施例1-1]
正極活物質(リチウム含有金属酸化物)として、二次粒子の平均粒子径および当該二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径がそれぞれ4.9μmおよび2.3μmであるものを用いたこと以外は、上述した比較例1-1と同様の手法により、本実施例の正極を作製した。なお、このようにして得られた正極における正極活物質層の空隙率は、8.1%であった。
【0099】
[実施例1-2]
正極活物質層の空隙率が10.1%となるようにプレス処理の条件を変更したこと以外は、上述した実施例1-1と同様の手法により、本実施例の正極を作製した。
【0100】
[実施例1-3]
正極活物質(リチウム含有金属酸化物)として、二次粒子の平均粒子径および当該二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径がそれぞれ3.6μmおよび1.2μmであるものを用いたこと以外は、上述した実施例1-1と同様の手法により、本実施例の正極を作製した。なお、このようにして得られた正極における正極活物質層の空隙率は、8.5%であった。
【0101】
[比較例1-5]
固体電解質として、一次粒子の平均粒子径が1.0μmであるものを用いたこと以外は、上述した実施例1-1と同様の手法により、本比較例の正極を作製した。なお、このようにして得られた正極における正極活物質層の空隙率は、8.5%であった。
【0102】
〈作製例2:正極活物質層における正極活物質と固体電解質との合計含有量に占める正極活物質の含有量の比率が75体積%である正極の作製例〉
[比較例2-1]
正極活物質スラリーを調製する際、正極活物質と固体電解質との合計含有量に占める正極活物質の含有量の比率が75体積%となるように、これらの配合量を調整したこと以外は、上述した比較例1-1と同様の手法により、本比較例の正極を作製した。なお、このようにして得られた正極における正極活物質層の空隙率は、8.9%であった。
【0103】
[比較例2-2]
正極活物質(リチウム含有金属酸化物)として、二次粒子の平均粒子径および当該二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径がそれぞれ10.1μmおよび0.8μmであるものを用いたこと以外は、上述した比較例2-1と同様の手法により、本比較例の正極を作製した。なお、このようにして得られた正極における正極活物質層の空隙率は、9.9%であった。
【0104】
[比較例2-3]
正極活物質(リチウム含有金属酸化物)として、二次粒子の平均粒子径および当該二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径がそれぞれ3.9μmおよび1.0μmであるものを用いたこと以外は、上述した比較例2-1と同様の手法により、本比較例の正極を作製した。なお、このようにして得られた正極における正極活物質層の空隙率は、9.8%であった。
【0105】
[実施例2-1]
正極活物質(リチウム含有金属酸化物)として、二次粒子の平均粒子径および当該二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径がそれぞれ4.9μmおよび2.3μmであるものを用いたこと以外は、上述した比較例2-1と同様の手法により、本実施例の正極を作製した。なお、このようにして得られた正極における正極活物質層の空隙率は、9.9%であった。
【0106】
[実施例2-2]
正極活物質(リチウム含有金属酸化物)として、二次粒子の平均粒子径および当該二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径がそれぞれ3.6μmおよび1.2μmであるものを用いたこと以外は、上述した実施例2-1と同様の手法により、本実施例の正極を作製した。なお、このようにして得られた正極における正極活物質層の空隙率は、9.1%であった。
【0107】
[比較例2-4]
固体電解質として、一次粒子の平均粒子径が1.0μmであるものを用いたこと以外は、上述した実施例2-1と同様の手法により、本比較例の正極を作製した。なお、このようにして得られた正極における正極活物質層の空隙率は、9.8%であった。
【0108】
〈作製例3:正極活物質層における正極活物質と固体電解質との合計含有量に占める正極活物質の含有量の比率が80体積%である正極の作製例〉
[比較例3-1]
正極活物質スラリーを調製する際、正極活物質と固体電解質との合計含有量に占める正極活物質の含有量の比率が80体積%となるように、これらの配合量を調整したこと以外は、上述した比較例1-1と同様の手法により、本比較例の正極を作製した。なお、このようにして得られた正極における正極活物質層の空隙率は、9.8%であった。
【0109】
[比較例3-2]
正極活物質(リチウム含有金属酸化物)として、二次粒子の平均粒子径および当該二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径がそれぞれ10.1μmおよび0.8μmであるものを用い、正極活物質層の空隙率が10.1%となるようにプレス処理の条件を変更したこと以外は、上述した比較例3-1と同様の手法により、本比較例の正極を作製した。
【0110】
[比較例3-3]
正極活物質スラリーを調製する際、正極活物質と固体電解質との合計含有量に占める正極活物質の含有量の比率が80体積%となるように、これらの配合量を調整したこと以外は、上述した比較例1-3と同様の手法により、本比較例の正極を作製した。なお、このようにして得られた正極における正極活物質層の空隙率は、9.9%であった。
【0111】
[比較例3-4]
正極活物質スラリーを調製する際、正極活物質と固体電解質との合計含有量に占める正極活物質の含有量の比率が80体積%となるように、これらの配合量を調整したこと以外は、上述した比較例1-5と同様の手法により、本比較例の正極を作製した。なお、このようにして得られた正極における正極活物質層の空隙率は、9.7%であった。
【0112】
[実施例3-1]
固体電解質として、一次粒子の平均粒子径が0.8μmであるものを用いたこと以外は、上述した比較例3-4と同様の手法により、本比較例の正極を作製した。なお、このようにして得られた正極における正極活物質層の空隙率は、9.0%であった。
【0113】
《正極の評価例》
以下の手法により試験用セルを作製し、充放電試験を実施して、上記で作製したそれぞれの正極についての評価を行った。
【0114】
〈試験用セルの作製例〉
まず、上記で準備した硫化物固体電解質とバインダ(SBR)とを95:5の質量比で混合し、適量のキシレンを溶媒として添加し、混合して固体電解質スラリーを調製した。
【0115】
上記で調製した固体電解質スラリーを、上記で作製した正極活物質層の露出表面に塗工し、溶媒を揮発させることにより、固体電解質層(厚さ80μm)を形成した。そして、このようにして得られた正極集電体/正極活物質層/固体電解質層からなる積層体を、正極活物質層の塗工面積が2.5cm×2.0cmのサイズとなるように切り出した。
【0116】
その後、上記で切り出した積層体の固体電解質層の露出表面に、同寸法の負極を貼り付けて、10MPaのプレス圧力で加圧することにより固体電解質層と圧着させた。なお、負極としては金属リチウム(Li)箔(厚さ100μm)とニッケル(Ni)箔(厚さ20μm)とが積層された積層体を用い、Li箔が固体電解質層側に位置するように配置した。
【0117】
最後に、正極集電体であるアルミニウム(Al)箔および負極を構成するNi箔にそれぞれアルミニウム(Al)およびニッケル(Ni)製のタブリードを溶接し、得られたセルをアルミニウムラミネートフィルムからなる外装体の内部に封止して、試験用セルを作製した。
【0118】
〈充放電試験による評価例〉
充放電試験については、25℃の温度条件下で、上下限電圧を1.9~3.7Vに設定し、Cレート換算で0.05Cに相当する電流の大きさを用いて行った。その後、充放電試験の際の初期放電容量の値を正極活物質の単位質量当たりの値として算出することにより、比容量を求めた。次いで、このようにして求めた比容量の値を正極活物質層を構成する合材の単位質量当たりの値として算出することにより、正極合材容量密度を求めた。
【0119】
そして、作製例1~作製例3のそれぞれについて、比較例の中で最も容量が大きかった例における正極合材容量密度の値を基準としたときの、各比較例および各実施例の正極合材容量密度の増減率(%)を算出した。結果を下記の表1に示す。
【0120】
【0121】
表1に示す結果から、正極活物質層活物質比率が同じである系列ごとに対比すると、正極活物質の二次粒子の平均粒子径および当該二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径、並びに、固体電解質の一次粒子の平均粒子径がいずれも本願所定の範囲内の値である場合には、電極作製時のプレス圧力による正極活物質の粒子割れを抑制することができ、ひいては電池容量の低下が効果的に防止されうることがわかる。
【符号の説明】
【0122】
10,10a 積層型電池、
10b 双極型電池、
11 集電体、
11’ 負極集電体、
11” 正極集電体、
13 負極活物質層、
15 正極活物質層、
17 固体電解質層、
19 単電池層、
21 発電要素、
25 負極集電板、
27 正極集電板、
29 ラミネートフィルム。