(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】圧縮機装置及び軸受ダンパを備えた装置
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20240719BHJP
H02K 5/173 20060101ALI20240719BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20240719BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20240719BHJP
F16C 27/06 20060101ALI20240719BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20240719BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F04B39/00 103Q
H02K5/173 A
H02K7/14 B
F16C19/06
F16C27/06 B
F16F15/04 Z
F04C29/00 G
(21)【出願番号】P 2022528573
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(86)【国際出願番号】 IB2020061932
(87)【国際公開番号】W WO2021124086
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-05-17
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】593074329
【氏名又は名称】アトラス コプコ エアーパワー,ナームローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO AIRPOWER,naamloze vennootschap
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレルスト ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルカウテレン ニルス
(72)【発明者】
【氏名】ピットワ スティン
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ ワレ アクセル
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-149524(JP,U)
【文献】特開平05-280532(JP,A)
【文献】特開2008-185110(JP,A)
【文献】特開2007-278307(JP,A)
【文献】実開平02-085894(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
H02K 5/173
H02K 7/14
F16C 19/06
F16C 27/06
F16F 15/04
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)を有し、少なくとも1つの圧縮機要素(3)と、該圧縮機要素(3)のための駆動部(4)とを備えた圧縮機装置であって、該圧縮機装置(1)内の、静的軸方向荷重を担うように構成された少なくとも1つのシャフトの全ての軸受(6)が、結合要素(10)と、減衰エラストマー材料で形成された少なくとも1つの減衰要素(11)とを含む軸受ダンパ(9)を備え、
前記軸受ダンパ(9)は、前記結合要素(10)によって前記圧縮機装置(1)の軸受(6)と前記圧縮機装置(1)の前記ハウジング(2)との間に取り付けられ、
前記結合要素(10)は、前記ハウジング(2)に対する前記軸受(6)の半径方向の移動を軸方向に比べてほとんど又は全く許容せず、
前記減衰要素(11)は、前記ハウジング(2)に対する前記軸受(6)の前記軸方向の移動を減衰させるように構成される、
ことを特徴とする圧縮機装置。
【請求項2】
前記結合要素(10)は、少なくとも1つのリング(13)を含むリング状要素(12)である、
請求項1に記載の圧縮機装置。
【請求項3】
前記リング(13)は、鋼又はばね鋼で形成される、
請求項2に記載の圧縮機装置。
【請求項4】
前記リング(13)は、5ミリメートル以下の軸方向(X-X’)の厚み(A)を有する、
請求項2又は3に記載の圧縮機装置。
【請求項5】
前記リング(13)は、2ミリメートル以下の軸方向(X-X’)の厚み(A)を有する、
請求項2又は3に記載の圧縮機装置。
【請求項6】
前記リング(13)は、内側クランピングストリップ(20)及び/又は外側クランピングストリップ(21)によって前記リング(13)の内縁(15)及び/又は外縁(16)に沿ってそれぞれ互いに保持される、
請求項2から4のいずれか1項に記載の圧縮機装置。
【請求項7】
前記リング(13)、前記内側クランピングストリップ(20)及び前記外側クランピングストリップ(21)は1つのアセンブリであり、又は一体部品として形成される、
請求項6に記載の圧縮機装置。
【請求項8】
前記内側又は前記外側クランピングストリップ(20、21)は、前記軸受(6)の内側リング(23b)又は外側リング(23a)として機能することができる、
請求項6又は7に記載の圧縮機装置。
【請求項9】
前記軸受(6)及び前記ハウジング(2)、又は前記内側クランピングストリップ(20)及び前記外側クランピングストリップ(21)はクランプ面(25)を有し、前記クランプ面(25)間に前記減衰要素(11)が配置され、前記クランプ面(25)は前記軸方向(X-X’)又は前記半径方向に延びる、
請求項6に記載の圧縮機装置。
【請求項10】
前記リング状要素(12)は、互いに隣接する少なくとも2つのリング(13)で構成され、該リング(13)間に減衰要素(11)が提供される、
請求項2から8のいずれか1項に記載の圧縮機装置。
【請求項11】
前記リング(13)は、関連するリング(13)の内縁(15)と外縁(16)との間に延びるスポーク(14)を備え、第1のリング(13)のスポーク(14)は第2のリング(13)のスポーク(14)と整列し、前記整列したスポーク(14)間に減衰要素が固定される、
請求項10に記載の圧縮機装置。
【請求項12】
前記減衰要素(11)はゴム製であり、加硫又はクランプによってリング又は前記スポーク(14)に接して固定される、
請求項11に記載の圧縮機装置。
【請求項13】
前記減衰要素(11)は、全ての整列したスポーク(14)間に固定される、
請求項11に記載の圧縮機装置。
【請求項14】
2つの隣接する前記リング(13)の前記内縁(15)同士の間と、2つの隣接する前記リング(13)の前記外縁(16)同士の間に、それぞれスペーサ(19)が設けられている、
請求項6又は11に記載の圧縮機装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受ダンパを備えた圧縮機装置に関する。
【0002】
具体的には、本発明は、例えば駆動ハウジング内の圧縮機要素の駆動部の軸を取り付けるために使用される、軸受と共に使用できる軸受ダンパを備えた圧縮機装置に関する。
【背景技術】
【0003】
圧縮機要素は、駆動部によって高回転速度で駆動されることが知られている。
【0004】
このため、装置は、シャフトの共振が動作範囲に入るので、このような高回転速度において発生する振動関連問題に見舞われやすくなる。圧縮機要素及び/又は駆動部において発生した振動又は揺動は、動力伝達装置を通じて伝播することができる。これらの振動を引き起こす励振又は共振は、主に駆動部の不均衡、及び圧縮機要素の動作力によって生じる脈動に起因する。
【0005】
駆動部及び圧縮機要素では、様々な動的問題が発生する。
【0006】
これらの問題の1つは、駆動シャフト及び/又は圧縮機要素の、軸が軸方向に振動する軸方向励振又は共振に関連する。
【0007】
このようなシャフトの軸方向変位は主にモータにおいて発生するが、圧縮機要素ではシャフトの軸方向移動をほとんど又は全く許容しない非常に厳しい公差が適用されるので、圧縮機要素でも問題が生じる恐れがある。
【0008】
これまで、この問題は真に満足できる形で解決されていない。
【0009】
通常は、十分な剛性を達成するために重い軸受が使用され、及び/又は定期的に軸受が交換される。
【0010】
一方で、駆動部と圧縮機要素との間に撓み継手(flexible coupling)を使用することで、駆動部の動特性と圧縮機要素の動特性とを動的に分離して励振又は共振を減衰させることもできるが、これには以下のいくつかの欠点がある。
- 撓み継手には追加費用がかかる。
- 歯車伝動装置のサイズが増大し、さらなる軸受を提供する必要がある。
- 撓み継手は、可撓性材料が時間と共に劣化するため摩耗しやすく、従って可撓性の動力伝達装置を定期的に交換しなければならない。
【0011】
そのため、通常は撓み継手を省略したいわゆる直接結合が依然として好まれており、従って結局は今もなお重い軸受の使用及び/又は軸受の定期的な交換が選択されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、前記軸方向振動及びその他の問題に対する少なくとも1つの解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、少なくとも1つの圧縮機要素と、圧縮機要素のための駆動部とを備えたハウジングを有する圧縮機要素であって、圧縮機装置内の、静的軸方向荷重を担うように構成された少なくとも1つのシャフトの全ての軸受が、結合要素と、減衰エラストマー材料で形成された少なくとも1つの減衰要素とを含む軸受ダンパを備え、軸受ダンパが、結合要素によって圧縮機装置の軸受と圧縮機装置のハウジングとの間に取り付けられ、結合要素が、ハウジングに対する軸受の半径方向の移動の余地を軸方向に比べてほとんど又は全く残さず、減衰要素が、ハウジングに対する軸受の軸方向の移動を減衰させるように構成される、圧縮機要素に関する。
【0014】
なお、ここでは、静的軸方向荷重を担う全ての軸受が軸受ダンパを備えた前記シャフトが、駆動シャフト又は圧縮機要素シャフトであることができる。
【0015】
利点としては、このような軸受ダンパが、例えば駆動軸受において発生し得る軸方向振動を減衰できる点である。
【0016】
本発明による軸受ダンパは、軸受を半径方向に固定するのには適しているが、軸方向では軸受の一定程度の柔軟性又は変位を許容する。
【0017】
「結合要素がハウジングに対する軸受の半径方向の移動の余地を軸方向に比べてほとんど又は全く残さない」との表現は、ハウジングに対する半径方向の軸受変位がハウジングに対する軸方向の軸受変位よりも少なくとも10倍小さく、好ましくは50倍小さく、さらに好ましくは100倍小さいことを意味する。
【0018】
駆動ハウジング内及び駆動軸受の周囲に軸受ダンパが取り付けられると、軸方向振動又は軸受振動によって軸受及びハウジングが互いに対して軸方向に移動し、軸受ダンパ、とりわけ結合要素が変形するようになる。
【0019】
これによって可撓性材料が変形を吸収し、従って共振を減衰させることができる。
【0020】
この結果、これらの軸方向共振によって軸受システムの耐用年数が減少し、減衰が行われるシャフトの許容できない動的な軸方向変位が生じ、又は機械を通じて振動が伝播するのを防ぐことができる。
【0021】
実用的な実施形態では、前記結合要素が、少なくとも1つのリングを含むリング状要素である。
【0022】
リングの好適な材料及び厚みを選択することにより、必要な半径方向の剛性及び必要な軸方向の柔軟性を得ることができる。
【0023】
軸受ダンパの軸方向剛性は、以下のように関連する軸受の剛性の軸方向成分よりも低く選択されることが好ましく、
K_lde,ax≦K_l,ax
ここで、K_lde,axは軸受ダンパの軸方向ばね定数であり、K_l,axは軸受の軸方向ばね定数である。
【0024】
軸受ダンパの半径方向剛性は、以下のように軸受剛性の半径方向成分と同じ又はそれ以上の大きさであることが好ましく、
A*K_l,rad≦K_lde,rad≦B*K_l,rad
ここで、K_lde,radは軸受ダンパの半径方向ばね定数であり、K_l,radは軸受の半径方向ばね定数であり、
Aは0.9~0.5であり、Bは1~10であり、好ましくは3~7である。
【0025】
実用的な実施形態では、リングが、内側クランピングストリップ及び/又は外側クランピングストリップによってリングの内縁及び/又は外縁に沿ってそれぞれ互いに保持される。
【0026】
これには、クランピングストリップを広げることによって軸受ダンパ内で2つよりも多くのリングを使用できるという利点がある。
【0027】
このようなモジュラーシステムでは、所望の又は必要な減衰及び軸方向剛性に応じて必要な数のリングを使用することができる。
【0028】
2つの連続するリングの内縁と外縁との間にはスペーサが提供されることが好ましい。
【0029】
これにより、クランピングストリップ内にリングを配置した時に、連続するリング間の正しい間隔を確実にすることができる。
【0030】
或いは、当然ながら、クランピングストリップに溝を提供し、言うなればこの場所にリングを嵌め込むこともできる。
【0031】
クランピングストリップを使用する代わりに別の実施形態も可能であることが明らかである。例えば、内側クランピングストリップ及び外側クランピングストリップが前記リングと共に1つのアセンブリを形成し、又はこれらを一体部品で形成することもできる。
【0032】
換言すれば、この場合のクランピングストリップ及びリングは独立部品ではない。
【0033】
本発明は、軸受ダンパと内側又は外側軸受リングとが1つの単一ユニットを形成する軸受にも関する。
【0034】
実用的な実施形態では、軸受及びハウジング、又は内側クランピングストリップ及び外側クランピングストリップがクランプ面を有し、このクランプ面間に減衰要素が配置され、クランプ面が軸方向又は半径方向に延びる。
【0035】
このようなクランプ面間に減衰要素を提供することにより、これらの減衰要素が結合要素の軸方向変形に起因して半径方向のクランプ面で圧縮荷重を受け、軸方向のクランプ面で軸方向の剪断応力を受けることによって、軸方向の励振を減衰させる。
【0036】
別の実施形態では、リング状要素が少なくとも2つの隣接するリングで構成され、リング間に減衰要素が取り付けられる。
【0037】
リングには、それぞれのリングの内縁と外縁との間に延びるスポークが取り付けられ、第1のリングのスポークは第2のリングのスポークと整列し、整列したスポーク間に減衰要素が取り付けられる。
【0038】
スポークは、半径方向又は非半径方向に延びることができる。スポークは斜めに、すなわち半径方向に対して角度をつけて延びることもでき、或いはこれらのスポークは直線ではなく、曲線又は螺旋状のスポークとすることもできる。
【0039】
この場合、軸方向の励振下でリングが変形又は屈曲すると、減衰要素が半径方向の剪断応力を受けるようになる。
【0040】
本発明は、ハウジングと、軸受が取り付けられた回転軸とを備えた装置であって、軸受が、結合要素と、減衰エラストマー材料で形成された少なくとも1つの減衰要素とを含む軸受ダンパを備え、軸受ダンパが、結合要素を使用して軸受と装置ハウジングとの間に取り付けられ、結合要素が、ハウジングに対する軸受の半径方向への移動をほとんど又は全く許容せず、減衰要素が、ハウジングに対する軸受の軸方向の移動を減衰するように構成される、装置にも関する。
【0041】
以下、本発明の特徴をより良く示すために、添付図面を参照しながら制限的性格を一切含まない例として本発明による圧縮機装置のいくつかの好ましいバージョンを説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明による圧縮機装置の概略的断面図である。
【
図3】
図2の(減衰要素を含まない)軸受ダンパの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1に概略的に示す圧縮機要素1は、この事例では1つの圧縮機要素3を収容するハウジング2と、圧縮機要素3の駆動部4とを含む。
【0044】
ハウジング2は、駆動部4のための部分2aと、圧縮機要素3のための部分2bとを含む。
【0045】
圧縮機要素3は、軸受6によってハウジング2内に取り付けられた2つのロータ5を含む。
【0046】
この事例では、駆動部4が、モータステータ7とモータロータ8とを有する電気モータであり、モータロータ8は、軸受6を使用してハウジング2内に回転可能に取り付けられる。
【0047】
この事例では、静的軸方向荷重を担う1つの軸受6が存在する。
【0048】
当然ながら、静的軸方向荷重を担う複数の軸受6が存在することを排除するものではない。
【0049】
前記軸受6には、
図2~
図4にさらに詳細に示す軸受ダンパ9が取り付けられる。
【0050】
図2~
図4に概略的に示す軸受ダンパ要素9は、主に結合要素10と、減衰エラストマー材料で形成された少なくとも1つの減衰要素11とを含む。
【0051】
この事例では、結合要素10が、少なくとも1つのリング13を含むリング状要素12である。
【0052】
この結合要素10は、圧縮機装置1の軸受6と圧縮機装置1のハウジング2との間に軸受ダンパ9を取り付けるように意図される。換言すれば、結合要素10は、軸受6とハウジング2との間のリンクを形成する。
【0053】
この事例では、リング状要素12が、互いに隣接する少なくとも2つのリング13を含む。以下で詳細に説明するように、リング13間には前記減衰要素11が提供される。
【0054】
図の例では、
図3に明確に示すように、このようなリング13が6つ存在する。
【0055】
本発明にとって必須でないが、この事例ではこれらのリング13が鋼又はばね鋼で形成される。
【0056】
また、リング13は軸方向X-X’に薄く、好ましくは最大5ミリメートルの、より好ましくは2ミリメートル以下の厚みを有する。この事例では、リング13が1ミリメートルの厚みである。当然ながら、リング13が5ミリメートルよりも厚いことを排除するものではない。
【0057】
本発明によれば、リング13に、それぞれのリング13の内縁15と外縁16との間に延びるスポーク14が取り付けられる。
【0058】
このことは、リング13が中実ではなく、スポーク14間に穴17又は通路が存在することを意味する。
【0059】
これにより、リング13の重量が減少するだけでなく、リング13及びとりわけそのスポーク14が軸方向X-X’に一定の柔軟性を有することが確実になる。半径方向X-X’では、リング13は剛性である。
【0060】
また、リング13は、スポーク14が相互整列するように方向付けられる。
【0061】
この結果、前記穴17又は通路も、結合要素がその軸方向厚Bを通じて10個の通路18を有するように相互整列する。
【0062】
しかしながら、このことは本発明にとって必須ではなく、例えば3つの左側リング13のスポーク14を3つの右側リング13のスポーク14と同様に整列させる一方で、3つの左側リング13のスポーク14を3つの右側リング13のスポーク14と整列させないこともできる。
【0063】
整列したスポーク間には、減衰エラストマー材料で形成された前記減衰要素11が提供される。このことを
図4の断面図に示す。この事例では、減衰要素11がブロック状要素の形態をとる。
【0064】
この事例では、全ての整列したスポーク14間に減衰要素11が提供され、すなわちリング13の全てのスポーク14に減衰要素が取り付けられる。
【0065】
当然ながら、このことは必須ではなく、半分のスポーク14のみに減衰要素11を取り付けることもできる。
【0066】
また、連続するリング13の各対間にも減衰要素11が提供される。
【0067】
このことは必須ではなく、2つの連続するリング13の各対間に減衰要素11を提供せずに、例えば1つおきのリング13の対間のみに減衰要素11を提供することも考えられる。
【0068】
要するに、スポーク14間に提供される減衰エラストマー材料の量は、具体的な用途及び必要な減衰に従って自由に選択できると言える。
【0069】
この事例では、本発明にとって必須ではないが、減衰要素11がゴム製である。
【0070】
ゴムは、加硫によってスポーク14に対して又はスポーク14に接して取り付けられる。また、ゴムをスポーク14間に挟み込むこともできる。
【0071】
図3に明確に示すように、連続する2つのリング13の内縁15と外縁16との間にはスペーサ19が提供される。
【0072】
この事例では、これらが細いリング状のスペーサ19である。当然ながら、これらのスペーサ19は、例えば2つの連続するリング13間の内縁15及び外縁16の円周に沿って挿入される小ブロックの形態などの異なる形で設計できることが明らかである。
【0073】
結合要素10のリング13を互いに保持するために、
図2~
図4の例の軸受ダンパ9は、内側クランピングストリップ20及び外側クランピングストリップ21を含む。
【0074】
内側クランピングストリップ20のみ、又は外側クランピングストリップ21のみを提供することもできる。しかしながら、ほとんどの場合は両クランピングストリップ20、21が必要である。
【0075】
内側クランピングストリップ20は、リング13をその内縁15に沿って互いに保持し、外側クランピングストリップ21は、リング13をその外縁16に沿って互いに保持する。
【0076】
クランピングストリップ20、21を軸方向X-X’に広く又は狭くすれば、より多くの又はより少ないリング13を結合要素10のリング状要素12に結合できるようになる。
【0077】
図4に示すように、内側クランピングストリップ20は外側20aに沿って周囲全体に延びるリブ22を有し、外側クランピングストリップ21はその内側21aに沿って同様のリブ22を有する。
【0078】
これらのリブ22は、2つの中心リング13間のスペーサとして機能し、従ってスペーサ19の別の実施形態を形成する。
【0079】
内側及び外側クランピングストリップ20、21の両方は、軸受6の外側リング23a又は内側リング23bとして機能することができる。
【0080】
図5の例に、
図2と同様に軸受ダンパ9が提供されて内側クランピングストリップ20が軸受6の外側リング23aとして機能する
図1の軸受6を示す。
【0081】
軸受6の内側リング23bは、駆動部4のロータ8のシャフト24に取り付けられる。
【0082】
外側クランピングストリップ21が軸受6の内側リング23bとして機能し、すなわち言うなれば軸受6が軸受ダンパ9の周囲に存在することも明らかに可能であるが、この状況はそれほど一般的ではない。
【0083】
当然ながら、外側リング23aが内側クランピングストリップ20に圧入された軸受6も可能である。これには、標準的な軸受6を使用できるという利点がある。
【0084】
図示の例では、クランピングストリップ20、21及びリング13が軸受ダンパ9の独立した要素又は部品であるが、当然ながら前記要素が1つのアセンブリであり又は一体部品として形成されることを排除するものではない。
【0085】
軸受ダンパ9の動作は非常に単純であり、以下の通りである。
【0086】
図5の軸受ダンパ9を備えた軸受6は、圧縮機要素3のハウジング2bに組み込まれ、軸受6がロータ5のシャフト24を支持するようになる。
【0087】
圧縮機要素1が動作している間に軸方向の振動又は揺動が生じ、シャフト24が軸方向X-X’に移動する。
【0088】
この結果、軸受6及び軸受ダンパ9の内側クランピングストリップ20が
図4の矢印Cに従って移動するようになる。
【0089】
外側クランピングストリップ21は、圧縮機要素3のハウジング2b内に静置又は固定されているため移動することはない。
【0090】
この外側クランピングストリップ21に対する内側クランピングストリップ20の相対的移動により、リング13の柔軟なスポーク14が
図6に示すように変形する。
【0091】
内側クランピングストリップ20の軸方向変位、従ってスポーク14の変形の大きさは、とりわけリング13の厚みA、スポーク14の数、減衰要素11の減衰エラストマー材料の量に依存する。これらのパラメータは予め自由に選択することができ、これによって前記振動の影響下で最大軸方向変位がどのようになるかを予め決定することができる。
【0092】
ここでは、スポーク14が軸方向のみに変形するということが重要である。半径方向ではスポーク14が十分に剛性又は非変形性であり、従って内側クランプストレート20は外側クランピングストリップ21に対してほとんど又は全く移動することができない。
【0093】
軸方向の変形は、スポーク14間のゴムを変形させる。これによってゴムが剪断応力を受けるようになる。
【0094】
この結果、スポーク14及びゴムによって力が吸収されるため、軸方向の振動が減衰するようになる。
【0095】
軸受6自体に加わる力及び応力は、大部分が軸受ダンパ9によって吸収されるためはるかに小さくなる。
【0096】
さらに、軸受ダンパ9の適切な剛性及び減衰特性を選択することにより、振動がモータ及び圧縮機装置にさらに伝播することが防がれるので、上記振動に起因するシャフト24の軸方向の動きを制限することが可能になる。
【0097】
これにより、これらの軸方向振動及び機械内のさらに下流におけるシャフト24の軸方向変位に起因する問題を回避することができる。
【0098】
図7には
図3の変形例を示しており、この事例では、結合要素10が、スポーク14が取り付けられていない2つのリング13のみを含む。
【0099】
しかしながら、内側及び外側クランピングストリップ20、21は、例えば組み立てを容易にするために依然として前の実施形態と同様に広く設計される。
【0100】
図8には別の実施形態を示しており、この事例では、結合要素10が1つのリング13のみを含む。このリング13は、スポーク14を含むことも又は含まないこともできる。
【0101】
内側及び外側クランピングストリクト20、21も提供される。
【0102】
内側及び外側クランピングストリップ20、21は、いずれも軸方向X-X’に延びるクランプ面25を有し、これらの間に減衰要素11が取り付けられる。
【0103】
この事例では、クランピングストリップ20、21当たりにクランプ面25が2つ存在し、従って減衰要素11も2つ存在する。
【0104】
この事例では減衰要素11がリング状であるが、これは必須ではない。
【0105】
この外側クランピングストリップ21に対する内側クランピングストリップ20の相対的変位によって、対応するクランプ面25が互いに対してずれるようになる。
【0106】
これによって減衰要素11が変形するようになる。この結果、減衰エラストマー材料に剪断応力が加わるようになる。先程の例ではこれによって半径方向の剪断応力が発生したが、この例では方向X-X’に作用する。
【0107】
それ以外、システムは同様である。
【0108】
最後に、
図9に
図8の変形例を示しており、この事例では前記クランプ面25が半径方向に延びる。
【0109】
この目的のために、内側及び外側クランピングストリップ20、21は、半径方向カラー26又はフランジを有する。
【0110】
内側クランピングストリップ20が外側クランピングストリップ21に対して移動すると、クランプ面25間に位置する減衰要素11が圧縮荷重を受けるようになる。
【0111】
それ以外、システムは同様である。
【0112】
上記で図示し説明した例では常に圧縮機装置1を参照しているが、軸受ダンパ9は、軸受6を通じて機械に保持された又は機械内に取り付けられた回転シャフト24を含む他の装置において使用することもできる。
【0113】
本発明は、一例として説明して図に示した実施形態に決して限定されるものではなく、本発明による圧縮機装置は、本発明の範囲を超えることなく全ての形状及びサイズで実装することができる。
【符号の説明】
【0114】
9 軸受ダンパ
10 結合要素
12 リング状要素
13 リング
14 スポーク
15 リングの内縁
16 リングの外縁
18 通路
20 内側クランピングストリップ
21 外側クランピングストリップ
B 結合要素の軸方向厚