IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ワンジーン バイオテクノロジー インコーポレイテッドの特許一覧

特許7523541生体内における持続時間が延長された多機能性多重特異性マルチマー生体分子重合体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】生体内における持続時間が延長された多機能性多重特異性マルチマー生体分子重合体
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240719BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240719BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240719BHJP
   C07K 14/76 20060101ALI20240719BHJP
   C07K 14/79 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K14/47 ZNA
C12P21/02 C
C07K14/76
C07K14/79
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022530933
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 KR2020017029
(87)【国際公開番号】W WO2021107660
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】10-2019-0154945
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520468047
【氏名又は名称】ワンジーン バイオテクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】パク ソンジン
(72)【発明者】
【氏名】イム デソン
(72)【発明者】
【氏名】キム リュリュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミンスム
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジェヨン
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-520730(JP,A)
【文献】特表2009-519716(JP,A)
【文献】国際公開第2009/009773(WO,A1)
【文献】特開2014-090721(JP,A)
【文献】特表2003-535165(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0301393(US,A1)
【文献】岩井 一宏,直鎖状ポリユビキチン鎖の発見とその機能,生化学,2012年,Vol. 84(11),pp. 920-930
【文献】坂田 絵理 ほか,細胞の中の不要なタンパク質に目印をつける仕組み,日本結晶学会誌,Vol. 52,2010年,pp. 255-261
【文献】QIAN, Shu-Bing et al.,The Journal of Biological Chemistry,2002年10月11日,Vol. 277,No. 41,pp. 38818-38826,DOI: 10.1074/jbc.M205547200
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12P 1/00-41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのユビキチンが共有結合して形成されたポリユビキチン・スキャフォールド、及び異なる結合部位(binding sites)に対する特異的な結合部分(binding moieties)を有する2~10個の生体分子を含む、多機能性多重特異性マルチマー生体分子複合体であって、
前記生体分子が、他の生体分子と特異的に結合する活性部位(active sites)を有し、前記ユビキチンのN末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方に直接結合されるか、あるいはリンカーによって前記ユビキチンのN末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方に結合され、
前記生体分子が、タンパク質であり、
前記生体分子の生体内における安定性及び持続時間を延長するキャリア(carrier)が、前記ユビキチンのN末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方に直接結合されるか、あるいはリンカーによって前記ユビキチンのN末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方に結合されており、
前記生体分子及び前記キャリアが、同じ末端に結合されておらず、
前記キャリアが、アルブミン、Fcドメイン、トランスフェリン、XTEN(genetic fusion of non-exact repeat peptide sequence)、CTP(carboxy-terminal peptide)、PAS(proline-alanine-serine polymer)、ELK(elastin-like peptide)、HAP(homo-amino acid polymer)、及びGLK(gelatin-like protein)からなる群から選択される少なくとも1つである、多機能性多重特異性マルチマー生体分子複合体。
【請求項2】
前記リンカーは、GGGGSまたはEAAAKが1~30個繰り返し組み合わせられている、請求項1に記載の多機能性多重特異性マルチマー生体分子複合体。
【請求項3】
前記ユビキチンのN末端に結合された生体分子が、前記マルチマー生体分子複合体の遠位端(distal end)である、請求項1または2に記載の多機能性多重特異性マルチマー生体分子複合体。
【請求項4】
前記ユビキチンのC末端またはN末端、またはその両方に結合された生体分子が、マルチマー生体分子複合体の近位端(proximal end)である、請求項1または2に記載の多機能性多重特異性マルチマー生体分子複合体。
【請求項5】
前記ポリユビキチン・スキャフォールドは、ユビキチンの少なくとも1つのリジンが、アルギニンまたはアラニンを含む他のアミノ酸で置換されている供与体ユビキチンと、N末端から6番目、11番目、27番目、29番目、33番目、48番目、または63番目のリジンがアルギニンまたはアラニンを含む他のアミノ酸で置換されている受容体ユビキチンとが共有結合によって連結されて形成されている、請求項1または2に記載の多機能性多重特異性マルチマー生体分子複合体。
【請求項6】
前記ユビキチンのN末端から73番目のロイシンが、プロリンを含む他のアミノ酸で置換されている、請求項1または2に記載の多機能性多重特異性マルチマー生体分子複合体。
【請求項7】
前記生体分子が、インスリン、インスリン類似体、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド類、GLP-1及びグルカゴン二重アゴニスト、GLP-1及びGIP二重アゴニスト、GLP-1及びグルカゴン及びGIP三重アゴニスト、エキセンディン-4(exendin-4)、エキセンディン-4(exendin-4)類似体、インスリン分泌ペプチド及びその類似体、ヒト成長ホルモン(human growth hormone)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、成長ホルモン放出ペプチド、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、抗肥満ペプチド、Gタンパク質共役受容体(G-protein-coulped receptor)、レプチン、GIP(Gastric inhibitory polypeptide)、インターロイキン類、インターロイキン受容体類、インターロイキン結合タンパク質類、インターフェロン類、インターフェロン受容体類、サイトカイン結合タンパク質類、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子(TNF)、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α-1アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、赤血球生成因子(EPO)、高グリコシル化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子及び第XIII因子、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン-結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C-反応性タンパク質、レニン阻害剤、コラゲナーゼ阻害剤、スーパーオキシドジスムターゼ、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンギオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路阻害剤、濾胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、神経成長因子、副甲状腺ホルモン(PTH)、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、受容体、受容体拮抗物質、線維芽細胞増殖因子(Fibroblast growth factor)、アディポネクチン(Adiponectin)、インターロイキン受容体拮抗薬(interleukin receptor antagonist)、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片類からなる群から選択される、請求項1または2に記載の多機能性多重特異性マルチマー生体分子複合体。
【請求項8】
(i)ユビキチンのC末端タグ(tag)が融合またはリンカーによって結合された生体分子(bio-molecules)を原核細胞または真核細胞包含宿主細胞から組換え発現させること、及び
(ii)前記宿主細胞の溶解物(cell lysates)または精製産物に、ユビキチン化のためのE1、E2及びE3酵素、またはE1及びE2酵素を加えて反応させることを含み、
ポリユビキチン・スキャフォールド、異なる結合部位(binding sites)に対する特異的な結合部分(binding moieties)を有する少なくとも2個の生体分子、及び生体内における持続時間を延長するキャリア(carrier)がユビキチンのN末端またはC末端に直接またはリンカーで前記ユビキチンのN末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方に結合されている、多機能性多重特異性マルチマー生体分子複合体を製造する方法であって、
前記ポリユビキチン・スキャフォールドは、少なくとも2つのユビキチンが共有結合によって連結されて形成され、
前記生体分子が、2~10個の生体分子から構成され、他の生体分子と特異的に結合する活性部位(active sites)を有し、前記ユビキチンのN末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方にリンカーで結合されており、
前記生体分子及び前記キャリアが、同じ末端に結合されておらず、
前記生体分子が、タンパク質であり、
前記キャリアが、アルブミン、抗体断片、Fcドメイン、トランスフェリン、XTEN(genetic fusion of non-exact repeat peptide sequence)、CTP(carboxy-terminal peptide)、PAS(proline-alanine-serine polymer)、ELK(elastin-like peptide)、HAP(homo-amino acid polymer)、及びGLK(gelatin-like protein)からなる群から選択される少なくとも1つである、多機能性多重特異性マルチマー生体分子複合体を製造する方法。
【請求項9】
前記E2酵素が、ユビキチンのN末端から6番目、11番目、27番目、29番目、33番目、48番目または63番目のリジンと結合する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記E2酵素が、E2-25Kユビキチン結合(ubiquitin conjugating)酵素である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記E2酵素が、ユビキチン結合酵素複合体であるUcb13-MMS2である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
前記ユビキチンのC末端タグは、少なくとも2つのユビキチンがヘッドトゥーテール(head-to-tail)状または分岐状(branched type or iso-peptide branch type)の形態で繰り返し連結されている、請求項8または9に記載の方法。
【請求項13】
前記ヘッドトゥーテール状または分岐状で連結されたユビキチンが、N末端から75番目及び76番目のグリシンがバリンを含む他のアミノ酸で置換されている、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質を含む生体分子をマルチマー形態の重合体として製造する方法に関する。具体的に、本発明は、宿主細胞から組換え発現させた生体分子を、ユビキチン化システムを用いて延長された生体内における持続時間を有する多機能性多重特異性生体分子重合体として製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質(protein)、ペプチド(peptide)、ポリペプチド(polypeptide)、抗体(antibody)、DNA及びRNAを含む生体分子(biomolecules)及び/または小分子化合物(small molecule chemical compounds)をマルチマー形態(multimeric form)に製作することは、様々なメリットを有する。例えば、2以上の同種または異種のタンパク質を融合(fusion)したり、あるいは架橋剤(cross linker or cross-linking agent)を用いて結合したりすることにより、タンパク質の溶解性、ゲル化、熱安定性及びpH安定性などの物理化学的な特性を改善することができる。例えば、架橋剤を介して多重結合されて形成されたラッカーゼ(laccase)、クレア(CLEA;cross-linked enzyme aggregate)は、澱粉の酸化の際により一層向上した安定性と性能を示し、他の酵素であるニトリルヒドラターゼ(nitrile hydratase)のクレア(CLEA)は、アクリロニトリル(acrylonitrile)のアクリルアミド(acrylamide)への転換に卓越した活性の増加を示し、36回にわたって再活用される間に活性を失わなかった。
【0003】
また、多くのタンパク質は、細胞内において複合体(complex)を形成して複雑な機能を果たし、これは、タンパク質の近接効果(proximity effect)によることが知られている。例えば、リグノセルロース(lignocellulose)の分解に必要な酵素であるセルラーゼ(cellulase)、β-グルコシダーゼ(β-glucosidase)、ヘミセルラーゼ(Hemicellulase)などを、スキャフォールド(scaffold)を用いて複合混合物の形態で製造したセルラーゼ(Novozymes Cellic(登録商標) CTec3)は、リグノセルロース(lignocellulose)の分解に際して3.5倍以上増加した効果を示すことが知られている。また、このようなマルチマー形態のタンパク質は、チャネリング効果(channeling effect)を示す。すなわち、カップリング反応(coupled reaction)に関与する酵素が隣り合って存在すれば、中間体の伝達が効率よく行われて反応全体の効率が大きく向上する。また、ビード(bead)もしくは基板(substrate)に固定化されたタンパク質を用いて任意の物質を分析したり、検出の対象となる物質を分離及び/または精製したりするに当たっても、同種または異種のタンパク質をマルチマーの形態で用いることは、これの効率性の向上のために望ましいことが提案されている。
【0004】
このように、マルチマー形態のタンパク質が産業的及び医薬的な用途において様々なメリットを与えるにも拘わらず、このような構造のタンパク質を製作することは困難であることが知られている。例えば、マルチマータンパク質を遺伝子段階においてインフレーム(in-frame)で設計して新たなフュージョン酵素として開発・産生する方法が挙げられる。しかしながら、新たなタンパク質を設計して産生せねばならないため、開発時間が長引き、現実的に少なくとも2つの酵素を融合することは困難である。さらに、化学的な架橋剤(chemical cross-linker)を用いたタンパク質マルチマー構造体(CLEA)の製作方法の場合には、化学的な結合が特定の部位において起こらず、タンパク質の表面のどこでも起こり兼ねないため、活性を阻害することがある。マルチマー構造を形成するタンパク質を合成または微生物の発現で製造できること、かつ、これらのタンパク質の活性部位(active site)が妨げられないことが求められる。
【0005】
目的タンパク質を分離及び/または精製するための方法として、ユビキチンを用いる方法が提案されている。まず、ユビキチンと結合されたタンパク質をエンコード(encoding)する遺伝子を原核細胞(procaryoti ccells)において発現させてユビキチンと結合された融合タンパク質を製造し、これをユビキチン切断酵素で処理して目的タンパク質のみをユビキチン融合タンパク質から有効に分離及び精製する方法である。特許文献1には、組換え遺伝子の発現及び発現済みのタンパク質の精製に関するものであり、ユビキチン様タンパク質(Ubl)のC末端ドメインをエンコードするヌクレオチドが目的タンパク質をエンコードするヌクレオチドに動作可能なように(operatively)結合された融合タンパク質を製造し、これを宿主細胞において発現させることが開示されている。特許文献2には、組換えタンパク質を発現させるに当たって、ユビキチンを融合パートナーとして用いることが開示されている。また、特許文献3には、タンパク質の精製にユビキチンカラムを用いることに関するものであり、ポリユビキチン鎖をカラムに搬入し、E2を含むin vitroユビキチン化を用いてタンパク質を精製することが開示されている。さらに、特許文献4には、組換えタンパク質を発現させて製造するに当たっての問題点である水溶性とフォルディング(折り畳み)の問題を解決するためのものであり、組換えタンパク質の発現及び分離、精製を容易にし、かつ、タンパク質の活性を高めるために、Ulp1プロテアーゼ(Ubl-specific protease1)により認識される切断部位を有するSUMOを用いることが開示されている。しかしながら、これらの方法は、タンパク質の発現にユビキチンを用いることについて開示していることに留まり、マルチマー形態のタンパク質を製造することについて記述したり示唆したりしてはおらず、分離・精製しようとするタンパク質がユビキチンとランダムに結合するため、依然として分離または分析効率に限界を有する。
【0006】
その一方で、生体分子、例えば、タンパク質またはペプチド、または組換え産生されたタンパク質またはペプチドは、血清半減期の短い不安定な分子である。特に、これらのタンパク質またはペプチドは、診断または治療目的で水溶液中で製造された場合、非常に不安定である。さらに、そのようなタンパク質またはペプチド薬物は、生体内における短い血清半減期のために不利であり、高い頻度またはより高い用量で投与されなければならない。しかしながら、薬物の頻繁な投与は様々な種類の副作用を引き起こし、患者に不都合が生じる。例えば、薬物の頻繁な投与が必要な患者、例えば、糖尿病患者または多発性硬化症を患っている患者に発生する問題が広く知られている。このような生体分子のin vivo安定性を高めるか、あるいは半減期を延長するための様々な方法が研究されてきた。その一例として、タンパク質またはペプチドなどの生体分子に半減期を増加させることができる成分を共有的に付着させることが挙げられる。例えば、ポリエチレングリコールまたはPEGなどの重合体をポリペプチドに結合させることで、これらのペプチドの血清半減期を延ばせることは広く知られている。
【0007】
そこで、本発明者らは、タンパク質の活性が阻害されることなく、高い集積度を有し、延長された生体内における持続時間または半減期を有する多機能性多重特異性生体分子重合体を製造する方法を開発すべく鋭意努力した。その結果、ユビキチンと結合された生体分子を宿主細胞から組換え発現させ、それをユビキチン化に関わる酵素とin vitroで反応させ、ポリユビキチン・スキャフォールドに結合された多機能性マルチマー生体分子重合体を形成することにより本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願第10/504,785号明細書
【文献】大韓民国特許出願第10-2005-0050824号
【文献】大韓民国特許出願第10-2015-0120852号
【文献】米国特許出願第12/249,334号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、本発明は、目的の生体分子をポリユビキチン・スキャフォールドに結合させ、生体内における持続時間が延長された多機能性多重特異性生体分子(multivalent multimeric biomolecules)を提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、目的の生体分子をポリユビキチン・スキャフォールドに結合させ、生体内における持続時間が延長された多機能性多重特異性生体分子を製造する方法を提供することを他の目的とする。
【0011】
本発明は、前記多機能性多重特異性生体分子を含む薬学組成物を提供することを他の目的とする。
【0012】
本発明は、前記多機能性多重特異性生体分子を含む薬学組成物を製造する方法を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、少なくとも2つのユビキチンが共有結合して形成されたポリユビキチン・スキャフォールド、及び異なる結合部位(binding sites)に対する特異的な結合部分(binding moieties)を有する2~10個の生体分子からなる多機能性多重特異性生体分子重合体であって、前記生体分子が、他の生体分子、低分子化合物(small molecule chemical compounds)またはナノ粒子と特異的に結合する活性部位(active sites)を有し、前記ユビキチンのN末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方に直接結合されるか、あるいはリンカーによって結合され、前記生体分子の生体内における安定性及び/または持続時間を延長するキャリア(carrier)が、前記ユビキチンのN末端またはC末端に直接結合されるか、あるいはリンカーによって結合されている、多機能性多重特異性マルチマー生体分子重合体(multivalent multispecific multimeric biomolecule complex)を提供する。
【0014】
それに係る一実施例において、前記リンカーは、GGGGSまたはEAAAKが1~30個繰り返し組み合わせられてもよいが、それらに制限されるものではない。それに係る別の一実施例において、前記ユビキチンのN末端に結合された生体分子が、前記マルチマー生体分子重合体の遠位端(distal end)であってもよく、前記ユビキチンのC末端またはN末端、またはその両方に結合された生体分子が、マルチマー生体分子重合体の近位端(proximal end)であってもよい。
【0015】
本発明において、「重合体」は、一緒に連結された一連の生体分子のモノマー群を意味する。重合体は、線状または分岐状(分岐形態)であってもよい。重合体が分枝状であると、各重合体鎖は「重合体アーム(arm)」と呼ばれることがある。開始剤部分(moiety)に連結された重合体アームの末端は近位端(proximal end)であり、重合体アームの成長する鎖の末端は遠位端(distal end)である。
【0016】
本発明において「リンカー」とは、2つの基を一緒に連結する化学部分を意味する。リンカーは分解性または非分解性であってもよい。分解性リンカーは、その中でも加水分解性、酵素的分解性、pH感受性、光不安定性、またはジスルフィドリンカーであってもよい。他のリンカーには、同種二機能性及び異種二機能性リンカーが含まれる。
【0017】
本発明の一実施例において、前記キャリアは、生体分子の生体内における持続時間を延長する機能を果たすものであり、アルブミン、抗体断片、Fc domain、transferrin、XTEN(genetic fusion of non-exact repeat peptide sequence)、CTP(carboxy-terminal peptide)、PAS(proline-alanine-serine polymer)、ELK(elastin-like peptide)、HAP(homo-amino acid polymer)、GLK(gelatin-like protein)、PEG(poly ethylene glycol)、及び脂肪酸(fatty acid)からなる群から選択される少なくとも1つであってもよいが、それらに制限されるものではない。
【0018】
本発明の他の一実施例において、前記ポリユビキチン・スキャフォールドは、ユビキチンの少なくとも1つのリジンが、アルギニンまたはアラニンを含む他のアミノ酸で置換されている供与体ユビキチンと、N末端から6番目、11番目、27番目、29番目、33番目、48番目、または63番目のリジンがアルギニンまたはアラニンを含む他のアミノ酸で置換されている受容体ユビキチンとが共有結合によって連結されて形成されていてもよい。さらに、本発明のまた他の一実施例において、前記ユビキチンのN末端から73番目のロイシンが、プロリンを含む他のアミノ酸で置換されていてもよい。
【0019】
本発明における「生体分子」とは、生体内で生物学的活性を有する分子を意味する。本発明の一実施例において、前記生体分子は、インスリン、インスリン類似体、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド類、GLP-1及びグルカゴン二重アゴニスト、GLP-1及びGIP二重アゴニスト、GLP-1及びグルカゴン及びGIP三重アゴニスト、エキセンディン-4(exendin-4)、エキセンディン-4(exendin-4)類似体、インスリン分泌ペプチド及びその類似体、ヒト成長ホルモン(human growth hormone)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、成長ホルモン放出ペプチド、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、抗肥満ペプチド、Gタンパク質共役受容体(G-protein-coulped receptor)、レプチン、GIP(Gastric inhibitory polypeptide)、インターロイキン類、インターロイキン受容体類、インターロイキン結合タンパク質類、インターフェロン類、インターフェロン受容体類、サイトカイン結合タンパク質類、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子(TNF)、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α-1アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、赤血球生成因子(EPO)、高グリコシル化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、クロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子及び第XIII因子、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン-結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C-反応性タンパク質、レニン阻害剤、コラゲナーゼ阻害剤、スーパーオキシドジスムターゼ、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンギオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路阻害剤、濾胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、神経成長因子、副甲状腺ホルモン(PTH)、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、受容体、受容体拮抗物質、線維芽細胞増殖因子(Fibroblast growth factor)、アディポネクチン(Adiponectin)、インターロイキン受容体拮抗薬(interleukin receptor antagonist)、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片類からなる群から選択されてもよい。
【0020】
本発明において、「結合部位」とは、他の物質または成分と結合する部位を意味し、「結合部分」とは、他の物質または成分と結合可能な部分を含む成分を意味する。また、本発明において、「活性部位」とは、リガンドまたは受容体と反応して活性を誘発する部位を意味する。
【0021】
また、UCT(Ubiquitin C-terminal Tag)は、ユビキチンのC-terminal部位の特定の配列を意味し、UCTは、他のユビキチンの特定のリジンと共有結合することで結合(conjugation)がなされる。
【0022】
また、本発明は、(i)ユビキチンのC末端タグ(tag)が融合またはリンカーによって結合された生体分子(bio-molecules)を原核細胞または真核細胞包含宿主細胞から組換え発現させること、及び(ii)前記宿主細胞の溶解物(cell lysates)または精製産物に、ユビキチン化のためのE1、E2及びE3酵素、またはE1及びE2酵素を加えて反応させることを含み、ポリユビキチン・スキャフォールド、異なる結合部位(binding sites)に対する特異的な結合部分(binding moieties)を有する少なくとも2つの生体分子、及び生体内における持続時間を延長するキャリア(carrier)が前記ユビキチンのN末端またはC末端に直接またはリンカーで結合されている、多機能性多重特異性赤生体分子重合体を製造する方法であって、前記ポリユビキチン・スキャフォールドは、少なくとも2つのユビキチンが共有結合によって連結されて形成され、前記生体分子が、2~10個の生体分子から構成され、他の生体分子、低分子化合物(small molecule chemical compounds)またはナノ粒子と特異的に結合する活性部位(active sites)を有し、前記ユビキチンのN末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方にリンカーで結合されている、多機能性多重特異性マルチマー生体分子重合体(multivalent multispecific multimeric biomolecule complex)を製造する方法を提供する。
【0023】
それに係る一実施例において、前記E2酵素が、ユビキチンのN末端から6番目、11番目、27番目、29番目、33番目、48番目または63番目のリジンと結合するか、あるいはE2-25Kユビキチン結合(ubiquitin conjugating)酵素またはユビキチン結合酵素複合体であるUcb13-MMS2であってもよいが、それらに制限されるものではない。
【0024】
それに係る他の一実施例において、前記ユビキチンのC末端タグは、少なくとも2つのユビキチンがヘッドトゥーテール(head-to-tail)状または分岐状(branched type or iso-peptide branch type)の形態で繰り返し連結されていてもよく、ここで、前記ヘッドトゥーテール状または分岐状で連結されたユビキチンが、N末端から75番目及び76番目のグリシンがバリンを含む他のアミノ酸で置換されていてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、生体分子重合体または複合体同士の連結が、ポリユビキチン・スキャフォールドによってなされ、ポリユビキチンは、それに結合された生体分子同士の間隔と方向性を維持する堅固なスキャフォールド(rigid scaffold)またはリンカー(linker)として作用する。よって、活性部位の妨害を受けることなく、多機能性多重特異性マルチマー生体分子重合体を製造することができる。
【0026】
さらに、本発明によれば、前記多機能性多重特異性マルチマー生体分子重合体は、生体内における持続時間を延長することのできる分子と結合して提供されることにより、生体内における安定性及び効能持続時間を延長する必要のある薬物の製造に用いることができる。
【0027】
本発明における生体分子は、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、抗体、抗体断片、DNA及びRNAからなる群から選択される少なくとも1つであってもよく、例えば、異種タンパク質を用いることにより、線状多機能性マルチマー重合体にモジュール化された機能性を付与してもよい。さらに、本発明によれば、前記多機能性多重特異性マルチマー生体分子重合体は、生体内における持続時間を延長することのできる分子と結合して提供されることにより、生体分子に対して生体内における延長された安定性及び効能持続時間を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の線状多機能性マルチマー融合タンパク質(UniStac)を製造する過程を示す図である。
図2】本発明のUniStac反応により形成されたマルチマー形態のUCT融合タンパク質を確認した結果図である。
図3】本発明のUniStac反応により形成されたマルチマー形態のUCT融合タンパク質を確認した結果図である。
図4】本発明の線状多機能性マルチマー融合タンパク質の様々な応用形態を示す図である。
図5】E1-E2のみを用いたUniStac製造結果を示す図である。
図6】本発明の線状多機能性マルチマー融合タンパク質の製造及びそれを固定化して利用する様子を示す概略図である。
図7】ヘッドトゥーテール(Head-to-tail)UCT及びUniStac方法を示す概略図である。
図8】本発明によって製造したキシロース還元酵素(Xylose Reductase;XR)をGPCで精製し、その後SDS-PAGEで確認した結果図である。
図9】本発明によって製造したオキサロ酢酸デカルボキシラーゼ(Oxaloacetate decarboxylase;OAC)をGPCで精製し、その後SDS-PAGEで確認した結果図である。
図10】本発明によって製造したキシリトール脱水素酵素(Xylitol dehydrogenase;XDH)をGPCで精製し、その後SDS-PAGEで確認した結果図である。
図11】本発明によって製造したトリオースリン酸イソメラーゼ(Triose-phosphate isomerase;TIM)をGPCで精製し、その後SDS-PAGEで確認した結果図である。
図12】本発明によって製造したアルドラーゼ(Aldolase;ALD)をGPCで精製し、その後SDS-PAGEで確認した結果図である。
図13】本発明によって製造したフルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(Fructose 1,6-bisphosphatase;FBP)をGPCで精製し、その後SDS-PAGEで確認した結果図である。
図14】本発明によって製造したピルビン酸オキシダーゼ(Pyruvate oxidase;POPG)をGPCで精製し、その後SDS-PAGEで確認した結果図である。
図15】キシロース還元酵素の活性を分析した結果図である。
図16】キシロース還元酵素の安定性を分析した結果図である。
図17】オキサロ酢酸デカルボキシラーゼの活性を分析した結果図である。
図18】オキサロ酢酸デカルボキシラーゼの安定性を分析した結果図である。
図19】キシリトール脱水素酵素の活性を分析した結果図である。
図20】キシリトール脱水素酵素の安定性を分析した結果図である。
図21】ピルビン酸オキシダーゼの活性を分析した結果図である。
図22】3つの酵素、TIM、ALD及びFBPが結合した構造のUniStac重合体(Polymer)を示す図である。
図23】TIM、ALD及びFBP酵素による相乗効果を示す図である。
図24】タンパク質A(protein A)及びタンパク質G(protein G)線状多機能性マルチマー複合体を製造し、その結果を確認した図である。
図25】ユビキチンのC末端タグの76グリシンのC末端にアスパラギン酸(aspartate)が延長されたhGHを製造して確認した結果図である。
図26】E3から始まる重合体を製造し、それを確認した図である。
図27】DUBの有無によるhGH重合体の製造結果を確認した図である。
図28】タンパク質A単位体が固定化されたビード及びタンパク質A重合体が固定化されたビードに対するヒト由来IgGの結合活性を示す図である。
図29】ユビキチンのN末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方にそれぞれ結合された線状の多機能性マルチマー生体分子重合体構造、及びその製造結果を示す図である。
図30】二重ユビキチンにキャリアが結合された生体分子重合体とヒト血清アルブミンとの比較において、血中半減期は同等のレベルであり、生体吸収率(AUC)はより優れたことを示すPKプロファイル結果図である。
図31】Fcベース(Fc based)受容体タンパク質を発現する遺伝子が連結されたpcDNA3.1(+)ベクターを示す図である。
図32】Fcベース受容体タンパク質の発現を確認した結果図である。
図33】IgG Fc抗体に特異的に結合するFcベース受容体タンパク質の発現を確認した結果図である。
図34】Fcベース受容体タンパク質の精製結果を示す図である。
図35】Fcベース受容体タンパク質の精製結果を示す図である。
図36】SDS-PAGE分析法によってユビキチン-IL-1RAを確認した結果図である。
図37】ユビキチン-IL-1RAの精製過程を示す図である。
図38】His-SUMOタグ付きのユビキチン-IL-1RAタンパク質の精製結果を示す図である。
図39】His-SUMOタグ付きのユビキチン-IL-1RAタンパク質の精製結果を示す図である。
図40】SDS-PAGE分析法によってHis-SUMOタグ付きのユビキチン-IL-1RAを確認した結果図である。
図41】His-SUMOタグが除去されたユビキチン-IL-1RAを確認した結果図である。
図42】His-SUMOタグが除去されたユビキチン-IL-1RAを確認した結果図である。
図43】ユビキチン-IL-1RAタンパク質の精製結果を示す図である。
図44】ユビキチン-IL-1RAタンパク質の精製結果を示す図である。
図45】SDS-PAGE分析法により、受容体と供与体のコンジュゲーションの程度を確認した結果図である。
図46】μCE-SDS分析法を用いたコンジュゲーション収率分析結果を示す図である。
図47】コンジュゲーションの精製過程を示す図である。
図48】Ni-セファロース(sepharose)で精製したコンジュゲーション確認結果を示す図である。
図49】Ni-セファロース(sepharose)で精製したコンジュゲーション確認結果を示す図である。
図50】精製されたコンジュゲーション確認結果を示す図である。
図51】精製されたコンジュゲーション確認結果を示す図である。
図52】SDS-PAGE(還元(Reducing)及びネイティブ(Native)条件)で最終UniStac重合体を確認した結果図である。
図53】SDS-PAGE(還元(Reducing)及びネイティブ(Native)条件)で最終UniStac重合体を確認した結果図である。
図54】μCE-SDS分析法を用いたモノマー(monomer)を確認した結果図である。
図55】SEC-HPLCを用いたモノマーを確認した結果図である。
図56】供与体タンパク質(D-192)、UniStacタンパク質(C-193)、及びヒト血清アルブミン(Human-serum albumin)をキャリアとする受容体タンパク質を用いた融合タンパク質(C-192;比較群)の構造を示す図である。
図57】融合タンパク質(C-192及びD-192)の皮下投与後の経時的な血中薬物濃度グラフである。
図58】融合タンパク質(C-193及びD-192)の皮下投与後の経時的な血中薬物濃度グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、一実施例において、(i)ユビキチンのC末端タグ(tag)が融合またはリンカーによって結合された生体分子(bio-molecules)を原核細胞または真核細胞包含宿主細胞から組換え発現させること、及び(ii)前記宿主細胞の溶解物(cell lysates)または精製産物に、ユビキチン化のためのE1、E2及びE3酵素、またはE1及びE2酵素を加えて反応させることを含み、ポリユビキチン・スキャフォールド、異なる結合部位(binding sites)に対する特異的な結合部分(binding moieties)を有する少なくとも2つの生体分子、及び生体内における持続時間を延長するキャリア(carrier)が前記ユビキチンのN末端またはC末端に直接またはリンカーで結合されている、多機能性多重特異性赤生体分子重合体を製造する方法であって、前記ポリユビキチン・スキャフォールドは、少なくとも2つのユビキチンが共有結合によって連結されて形成され、前記生体分子が、他の生体分子、低分子化合物(small molecule chemical compounds)またはナノ粒子と特異的に結合する活性部位(active sites)を有し、前記ユビキチンのN末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方にリンカーで結合されている、多機能性多重特異性マルチマー生体分子重合体を製造する方法を提供する。
【0030】
本発明において、多機能性多重特異性マルチマー生体分子重合体または複合体の形成を開始するイニシエータ(initiator)は、E3、E2、E1、フリーユビキチン(free ubiquitin)、またはE3の目的基質(substrate)であってもよい。ここで、E2酵素は、ユビキチンのリジンのうち48番または63番に結合してもよく、E2酵素は、E2-25Kユビキチン結合(ubiquitin conjugating)酵素であるか、あるいはユビキチン結合酵素複合体Ucb13-MMS2であってもよい。
【0031】
本発明において、生体分子は、好ましくは、ユビキチンのN末端にそれぞれ結合する。また、マルチマー生体分子重合体は、2~30個の生体分子からなってもよい。
図1に、本発明のUniStac反応を概略的に示す。
【0032】
また、図2及び図3に、本発明のUniStac反応により形成されたマルチマー形態のUCT融合タンパク質を確認した結果を示す。
【0033】
さらに、本発明の多機能性多重特異性マルチマー生体分子重合体は、様々な形態で製造されてもよい。図4図6及び図7に、具体的な例を示す。すなわち、第1図は、図1に示すように、ユビキチンのC末端タグ付き酵素(enzyme)とUniStac混合物とを反応させ、その後、濾過(filtration)してUniStac線状酵素重合体を製造する過程を概略的に示す。第2図は、ユビキチンのC末端タグ付き酵素とUniStac混合物とを反応させ、その後、架橋剤(crosslinker)と共に沈殿(precipitation)させてUniStac酵素凝集体(aggregate)を製造する過程を示す。第3図は、ユビキチンのC末端タグ付きタンパク質を基板またはビード上に固定化する過程を概略的に示す。
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨に従い本発明の範囲がこれらの実施例により何ら制限されないということは当業界において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0035】
[製造例]
製造例1:C末端融合タンパク質のクローニング、発現及び精製
本発明の実施例に用いられたUCT(Ubiquitin C-terminal Tag)(配列番号:1)タンパク質融合体をエンコードする遺伝子は、Genscript Inc.社に依頼して製造した。
【0036】
C末端にユビキチンタグを含まないUb out遺伝子構造物を製造するために、ファーストクローニングシステム(fast cloning system)(Li C、Wen A、Shen B、Lu J、Huang Y、Chang Y(2011).Fast cloning:a highly simplified、purification-free、sequence-and ligation-independent PCR cloning method.BMC Biotechnol 11、92.)を用いた。この方法は、制限酵素及びリガーゼのない条件下でPCR産物に直接Dpn1を処理するのみで、Dpn1がポリメラーゼと共にまだ明らかにされていないメカニズムによって制限酵素及びリガーゼの役割を果たすことにより、遺伝子連結(挿入、除去または置換)が可能な技術である。この方法において、フュージョンポリメラーゼ(Phusion polymerase;Thermo Fisher Scientific)と両末端がオーバーラップするように設計されたプライマーを使用して、削除されるべき領域を除くすべてのベクター上でPCR(95℃3分、95℃15秒~55℃1分~72℃1分/kb18回繰り返し、72℃5分、12℃20分)を行った。次に、PCR結果物に対するDpn1処理を37℃で1時間行い、E.coli DH5α(Novagen)に形質転換し、所望のプラスミドを得た。すべての遺伝子構成物を商業的なDNAシーケンシングによって確認した。
【0037】
UCT融合タンパク質の過剰発現のために、各遺伝子構成物をE.coli BL21 DE3(Novagen)(XR、TIM、ALD)、Rosetta pLysS DE3(Novagen)(XDH、OAC、POPG)、Origami2 DE3(Novagen)(FBP)菌株に形質転換した。タンパク質発現プラスミド(pET21a、Genscript)を含む細胞を37℃、LB培地(Miller)で培養(incubation)した。OD600値が約0.6に達すると、250μMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(isopropyl-beta-D-thiogalactopyranoside;IPTG)を使用し、16℃で20時間にかけてタンパク質発現を誘導した。次に、遠心分離(3,500rpm、4℃で15分)し、その後、細胞ペレットを溶解緩衝液(20mMのTris-HCl pH8.0、500mMのNaCl2、20mMのイミダゾール)中に再懸濁し、ソニケーション(50%amplitude)、pluse on3秒-off5秒、最終15分)で溶解した。次いで、溶解物を14,000rpm、4℃で30分間さらに遠心分離した。N末端His-tagを含むタンパク質の水溶性画分を、ニッケル親和及びFPLC緩衝液(Ni-NTA Agarose、QIAGEN、20mMのTris-HCl pH8.0、150mMのNaCl2)で予め平衡化したSuperdex75pgゲルフィルトレーションカラム16/600(GE Healthcare)を用いたゲル濾過クロマトグラフィーにより精製した。酵素活性分析のために、全てのUCTタンパク質を100μMに濃縮した。全ての標的タンパク質をSDS-PAGEで評価した。図8ないし図14は、ターゲット(標的)タンパク質を確認した結果図である。本発明に用いられるUCT融合タンパク質は、表1のとおりである。
【0038】
【表1】
【0039】
製造例2:UniStac線状構造体の製造
本発明において、線状多機能性マルチマー形態の融合タンパク質を製造するための反応を、UniStac反応と命名した。UniStac反応(全体の体積50μL)をUniStac緩衝液(25mMのHEPES(Sigma-aldrich)、pH7.5、50mMのNaCl、4mMのMgCl2)中で行い、UniStac反応のためのUniStac混合物(0.5μMのE1、0.5μMのE2、1μMのE3、4mMのATP)を本発明のUCTタンパク質融合体に添加し、反応を開始した。室温で1時間にかけて振とうし、UniStac反応を行った。
【0040】
反応に用いられたタンパク質の割合は、1μMのE3酵素当たり10~20μMのUCTタンパク質融合体(1:10~1:20比)の濃度で行った。これは、UniStac反応により、1時間内に最低でも10個以上の融合体モノマーが線形多機能性マルチマーを形成するための目的に設定された条件である。本発明で使用したE1、E2及びE3は、それぞれ以下のとおりである。
【0041】
【表2】
【0042】
製造例3:E1-E2のみを用いたUniStacの製造(E2プラットフォーム)
E2-25K(GenBank ID-U58522.1)(human E2)、Ucb13(yeast E2)-MMS2(GenBank ID-U66724.1)(yeast ubiquitin-conjugating enzyme variant)(GenBank ID-U66724.1)を利用してE2-UniStacを製造した。Genscript社で合成した組換えDNAプラスミド(plasmid)を使用した。E2-UniStac反応を緩衝液(50mMのTris pH8.0、5mMのMgCl2)条件下で、E2-UniStac混合物(1μMのE1、10μMのE2、4mMのATP)を自由ユビキチン(free ubiquitin)溶液(20μM)に添加して反応を開始した。室温で1時間にかけて振とうし、E2-UniStac反応を行った。図5にその結果を示す。
【実施例
【0043】
実施例1:キシロース還元酵素(Xylose Reductase;XR)の活性及び安定性の分析
キシロース還元酵素の活性の分析
UniStac反応をUniStac緩衝液(25mMのHEPES pH7.5、50mMのNaCl、4mMのMgCl2)中で行い、UniStac混合物(0.5μMのE1、5μMのE2、1μMのE3、4mMのATP)をXRタンパク質溶液に添加し、反応を開始した。室温で1時間にかけて振とうしてUniStac反応を行い、次いで、触媒活性を分析した。NADH酸化によって誘導される340nmにおける吸光度変化を測定することで、XRの触媒活性を分析した。
【0044】
触媒活性分析のための反応は、1mMのMgCl2及び0.02%Tween-20を含有する100mMのNaCl緩衝液(pH7.0)中のXR(10μM)及びキシロース(200mM)混合物にNADH(2mM)を添加して開始した。XRは、XRのC末端にユビキチンタグ(tag)を含まないモノマー形態のサンプルであり、同様のUniStac混合条件下、重合体を形成しなかった。統計分析は、Prism6(GraphPad Software、Inc)を用いて行った。その結果を図15に示す。
【0045】
図15に示すように、本発明によるXRが補助基質(co-substrate)としてNADHを用い、D-キシロースをキシリトール(xylitol)に還元することを促した。吸光度(absorbance)は、溶液中のNADHの量を示す。XRのUniStac重合体(下側曲線)は、モノマー形態(上側曲線)と比較してNADH消耗がより速かった。両方の反応は、いずれも同じ量のモノマーを含有している。よって、増加した反応速度は、単にモノマー間の共有結合のみに依存する。結局、ユビキチンタグのないXRモノマーと比較して、XR UniStac重合体の活性が10倍増加したことを確認した。
【0046】
キシロース還元酵素のpH安定性の分析
NADH及びキシロースを添加して反応を開始する前に、XRモノマー及びUniStac重合体の両方を30分間、指示されたpHで処理した。図16に示すように、pH5.5及び6.5において、XR UniStac重合体は、ユビキチンタグのないモノマーXRと比較して著しく改善された安定性を示した。結果は、3回の実験の平均値である。
【0047】
実施例2:オキサロ酢酸デカルボキシラーゼ(Oxaloacetate decarboxylase;OAC)の活性及び安定性の分析
OACの活性の分析
ブドウ糖新生作用(gluconeogenesis)に関与するOACは、AST-ALTと共に肝損傷を調査するために用いられる。UniStac反応をUniStac緩衝液(25mMのHEPES pH7.5、50mMのNaCl、4mMのMgCl2)で行い、UniStac混合物(0.5μMのE1、5μMのE2、1μMのE3、4mMのATP)をOACタンパク質溶液に添加し、反応を開始した。室温で1時間にかけて振とうしてUniStac反応を行い、次いで、触媒活性を分析した。OACの活性の分析は、以下の条件下、NADH消耗の進行に伴う吸光度(340nm)の減少に基づいて行った:45mMのTEA buffer pH8.0、0.45mMのMnCl2、2mMのNADH、11 U of LDH、5μMのOAC、2.5mM。
【0048】
OACは、OACのC末端にユビキチンタグを含まないモノマー形態のサンプルであり、同様のUniStac混合条件下、重合体を形成しなかった。統計分析は、Prism6(GraphPad Software、Inc)を用いて行った。その結果を図17に示す。
【0049】
図17に示すように、C末端にUbのないモノマー(OAC)の活性と、重合体(UniStaced OAC)の活性とを比較したところ、重合体の活性が9倍増加した。吸光度(absorbance)は、溶液中のNADHの量を示す。OACのUniStac重合体(下側曲線)は、モノマー形態(上側曲線)と比較してNADH消耗がより速かった。両方の反応は、いずれも同じ量のモノマーを含有している。よって、増加した反応速度は、単にモノマー間の共有結合のみに依存する。結局、ユビキチンタグのないOACモノマー(OAC)と比較して、OAC UniStac重合体の活性が9倍増加したことを確認した。
【0050】
OACの安定性の分析
NADH及びオキサロ酢酸(oxaloacetate)を添加して反応を開始する前に、OACモノマー及びUniStac重合体の両方を30分間、指示されたpHで処理した。図18に示すように、pH4.5~6.5の低いpHにおいて、OAC UniStac重合体は、ユビキチンタグのないモノマーOAC(OAC)と比較して著しく向上したpH安定性を示した。結果は、3回の実験の平均値である。
【0051】
実施例3:キシリトール脱水素酵素(Xylitol dehydrogenase;XDH)の活性及び安定性の分析
XDHの活性の分析
XDHはD-Xylose catabolism経路に属する酵素であり、XRの結果物であるキシリトールをNAD+を用いてキシルロース(xylulose)に変換することが知られている。XDHの活性の分析のために、まずは、UniStac反応をUniStac緩衝液(25mMのHEPES pH7.5、50mMのNaCl、4mMのMgCl2)で行い、UniStac混合物(0.5μMのE1、5μMのE2、1μMのE3、4mMのATP)をXDHタンパク質溶液に添加し、反応を開始した。室温で1時間にかけて振とうしてUniStac反応を行い、次いで、触媒活性を分析した。340nmでNAD+還元をモニターして、XDH活性を測定した。反応は、1mMのMgCl2及び0.02%Tween-20を含有する100mMのNaCl緩衝液(pH7.0)中のXDH(20μM)及びキシロース(200mM)混合物にNADH(2mM)を添加することによって開始した。XDHは、XDHのC末端にユビキチンタグを含まないモノマー形態のサンプルであり、同様のUniStac混合条件下、重合体を形成しなかった。統計分析は、Prism6(GraphPad Software、Inc)を用いた。その結果を図19に示す。
【0052】
図19に示すように、pH5.5において、XDH UniStac重合体(上側曲線)は、そのモノマー形態(下側曲線)と比較して、NADH+消耗率がより高かった。両方の反応は、いずれも同じ量のモノマーを含有している。よって、活性の違いは、単にモノマー間の共有結合のみに依存する。結局、ユビキチンタグのないXDHモノマー(XDH)と比較して、XDH UniStac重合体の活性が10倍増加したことを確認した。
【0053】
XDHの安定性の分析
NAD+及びキシリトールを加えて反応を開始する前に、XDHモノマー及びUniStac重合体の両方を30分間、指示されたpHで処理した。図20に示すように、測定された全てのpHにおいて、XR UniStac重合体は、XDHと比較して著しく増加したpH安定性を示した。結果は、3回の実験の平均値である。
【0054】
実施例4:ピルビン酸オキシダーゼ(Pyruvate oxidase;POPG)の活性の分析
POPGは、ブドウ糖新生作用に関与する酵素であるAST-ALTのような酵素を検出し、肝損傷を調査するために用いられることが知られている。POPGの活性の分析のために、まずは、UniStac反応をUniStac緩衝液(25mMのHEPES pH7.5、50mMのNaCl、4mMのMgCl2)で行い、UniStac混合物(0.5μMのE1、5μMのE2、1μMのE3、4mMのATP)をPOPGタンパク質溶液に添加し、反応を開始した。室温で1時間にかけて振とうしてUniStac反応を行い、次いで、触媒活性を分析した。触媒活性を分析するために、ABTSによるピルビン酸のPOPG酸化プロセスによって生成されるH22量を測定した。反応は、リン酸ナトリウム(sodium phosphate)緩衝液中のピルビン酸(pyruvate)(100mM)、ピロリン酸塩(pyrophosphate)(6mM)、ABTS(2,2’-azino-bis(3-ethylbenzothiazoline-6-sulfonic)(10mM)及びHRP(horseradish peroxidase)(0.2U/mL)混合物にPOPG(5μM)を添加して開始した。
【0055】
POPGモノマー(POPG)は、POPGのC末端にユビキチンタグを有さないモノマー形態のサンプルであり、同様のユビスタック混合条件下、重合体を形成しない。統計分析は、Prism6(GraphPad Software、Inc)を用いて行った。図21に示すように、pH5.5では、POPG(上側曲線)は、そのモノマー形態(下側曲線)と比較してより高い活性を示した。両方の反応は、いずれも同じ量のモノマーを含有している。よって、以上の活性の違いは、単にモノマー間の共有結合のみにに依存する。結局、POPG UniStac重合体の活性は、ユビキチンタグのないPOPGモノマー(POPG)と比較して2倍増加したことを確認した。
【0056】
実施例5:ユビキチン酵素の相乗効果の分析
トリオースリン酸イソメラーゼ(Triose-phosphate isomerase;TIM)、アルドラーゼ(Aldolase;ALD)、及びフルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(Fructose 1,6-bisphosphatase;FBP)は、DHAP(dihydroxyacetone phosphate)から最終生成物としてF6Pを生成するためのカスケード反応を形成することが知られている。UniStac酵素の相乗効果の分析は、フルクトース-6-リン酸(Fructose-6-Phosphate;F6P)、TIM生成物、ALD及びFBP酵素複合体を測定することによって行った。F6Pは、ホスホグルコースイソメラーゼ(phosphoglucose isomerase;PGI)によりグルコース-6-リン酸(Glucose-6-phosphate;G6P)に異性化され、基質として同量のNAD+がグルコース-6-リン酸脱水素酵素(Glucose-6-phosphate dehydrogenase;G6PDH)によって変形される。酵素活性を、HEPES緩衝液条件(200mMのHEPES pH7.5、10mMのMgCl2、0.5mMのMnCl2、1mMのCaCl2)中の4μMのTIM、ALD及びFBP酵素複合体混合物中に、2.5mMの酵素複合体(Dihydroxyacetone phosphate;DHAP)、20U/mLの分析酵素(PGI及びG6PDH)及び2.5mMのNAD+酵素複合体を添加して新たに生成されたNADHの量を、340nmで測定して決定した。
【0057】
酵素複合体混合物は、酵素のC末端にユビキチンタグを有さず、同様のUniStac混合物条件下、重合体を形成しないモノマー形態のサンプルである。統計分析は、Prism6(GraphPad Software、Inc)を用いて行った。指示時点で反応を終了し、F6Pがグルコース-6-リン酸(G6P)に変換されるためにNAD+を用いるホスホグルコースイソメラーゼ(PGI)を用い、F6Pの量を測定した。吸光度は、F6Pの量を示す。
【0058】
その実験結果を図23に示す。図23に示すように、3つの異なる酵素のUniStac重合体(上側曲線)がモノマー酵素混合物(下側曲線)よりも5倍高い活性を示し、UniStac前記酵素による相乗効果を確認した。図22は、3つの酵素、TIM、ALD及びFBPが結合された構造(UniStac Polymer)の結果物を示す。
【0059】
実施例6:ユビキチンの多段階標識(prosthetics)方法
本発明の製造例によって、ユビキチンのC末端タグ付き生体分子を合成した。次に、ヒドロキシルアミン(hydroxylamine)を含む重合体(ポリエチレングリコール(polyethylene glycol))を前記生体分子と反応させた。その結果、重合体がオキシム連結部位(oxime linkage)により、ユビキチンで標識されたことが確認された。オキシム連結は、高分子薬物送達システム(polymeric drug delivery system)が可能なツールとして使用できる。
【0060】
実施例7:タンパク質A及びタンパク質Gの線状マルチマー重合体の製造
UniStac反応(全体の体積50μL)をUniStac緩衝液(25mMのHEPES pH7.5、50mMのNaCl、4mMのMgCl2)中で行い、UniStac混合物(0.5μMのE1、5μMのE2、1μMのE3、4mMのATP)をタンパク質A(Protein A)またはタンパク質G(Protein G)溶液に添加し、反応を開始した。Genscript社で合成したタンパク質A(GenBank ID-AAB05743.1)、タンパク質G(CAA27638.1)に対応する配列を含む組換えDNAプラスミドを使用した。室温で1時間にかけて振とうしてUniStac反応を行い、その後、SDS-PAGEを行った。
【0061】
図24に示すように、UniStac混合物を入れなかった試料と比較して、UniStac混合物を入れた試料において、タンパク質Aまたはタンパク質Gのモノマーバンド(monomer band)は減少し、高分子質量のバンド(線状マルチマー重合体)が新たに現れたことを確認した。さらに、線状マルチマー重合体の一部は、分子量が数百kDaまで増加し、濃縮ゲル(stacking gel)を通過できなかったことが確認された。
【0062】
実施例8:ユビキチンのC末端タグの76グリシンのC末端にアスパラギン酸が延長されたhGH
UCT融合タンパク質を過剰発現するために、各遺伝子構成物をE.coli BL21 DE3(Novagen)菌株に形質転換した。本実施例では、タンパク質としてhGH(配列番号:18)を用いた。タンパク質発現プラスミド(pET21a、Genscript)を含む細胞を37℃、LB培地(Miller)で培養(incubation)した。OD600値が約0.6に達すると、250μMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(isopropyl-beta-D-thiogalactopyranoside;IPTG)を使用し、16℃で20時間にかけてタンパク質発現を誘導した。次に、遠心分離(3500rpm、4℃で15分)し、その後、細胞ペレットを溶解緩衝液(20mMのTris-HCl pH8.0、500mMのNaCl2、20mMのイミダゾール)中に再懸濁し、ソニケーション(50%amplitude)、pluse on3秒-off5秒、最終15分)で溶解した。次いで、溶解物を14,000rpm、4℃で30分間さらに遠心分離した。N末端His-tagを含むタンパク質の水溶性画分を、ニッケル親和及びFPLC緩衝液(Ni-NTA Agarose-QIAGEN、20mMのTris-HCl pH8.0、150mMのNaCl2)で予め平衡化したSuperdex75pgゲルフィルトレーションカラム16/600(GE Healthcare)を用いたゲル濾過クロマトグラフィーにより精製した。精製されたhGHを100μMに濃縮し、SDS-PAGEで評価した。その結果を図25に示す。
【0063】
実施例9:E3(Rsp5)から開始されたポリユビキチン・スキャフォールドの製造
UniStac反応(全体の体積50μL)をUniStac緩衝液(25mMのHEPES pH7.5、50mMのNaCl、4mMのMgCl2)中で行い、UniStac混合物(0.5μMのE1、5μMのE2(Ubch5aまたはUbch7)、1μMのE3、4mMのATP)をタンパク質溶液に添加し、反応を開始した。室温で1時間にかけて振とうしてUniStac反応を行い、その後、SDS-PAGEを行った。
【0064】
図26に示すように、UniStac混合物を含まないサンプルと比較して、UniStac混合物を入れたサンプルでは、E3の量が減少したことを確認した。これは、E3から開始されたポリユビキチン・スキャフォールドの形成により分子質量が増加したE3のバンドが上方に移動したためである。また、Ubch5a E2を含むUniStac混合物(図26A)と比較して、反応性の弱いUbch7 E2を含むUniStac混合物(図26B)を添加した結果では、経時的にE3(Rsp5)にユビキチンが1つずつ追加連結され、分子量が徐々に増加する過程を確認した。
【0065】
実施例10:DUBの有無によるhGHの重合体製造
DUBが一緒に存在する条件とDUBが除外された条件下、hGH(配列番号:18)のUniStac反応を比較した。このとき使用されたhGHは、C末端に2つのユビキチンタグがヘッドトゥーテール(head to tail)状で繰り返し連結されており、そのユビキチンタグのC末端は、アスパラギン酸で延長された形態である。よって、DUBを用いてユビキチンタグC末端のアスパラギン酸を切り出さなければ、UniStac反応は起こらない。
【0066】
生体分子であるhGHの重合体形成を確認するためのUniStac反応は、UniStac緩衝液(25mMのHEPES pH7.5、50mMのNaCl、4mMのMgCl2)中で行い、UniStac混合物(1μMのE1、5μMのE2(ubch5a)、1μMのE3、4mMのATP)を20μMのhGHタンパク質溶液に添加し、反応を開始した。
【0067】
また、E3を除いたE2-UniStac反応は、E2-UniStac緩衝液(50mMのTris pH8.0、5mMのMgCl2)中で行い、E2-UniStac混合物(1μMのE1、10μMのE2(Ucb13-MMS2複合体)、4mMのATP)を20μMのhGHタンパク質溶液に添加し、反応を開始した。
DUBの活性を合わせて確認するために、反応は、DUB(YUH1)を含まない条件と、DUB(YUH1)が2μM入った条件下、それぞれ同時に行った。室温で1~4時間にかけて振とうして全ての反応を行い、その後、SDS-PAGEで確認した。
【0068】
図27に示すように、DUBを含む条件下のみでhGHの重合体が形成されることを確認し、DUBを含まない条件では、hGH UCTのC末端のアスパラギン酸が切り取られず、重合体が形成されなかったことを確認した。
【0069】
実施例11:ビードに固定されたタンパク質A重合体の結合活性
タンパク質A(Protein A)重合体を作製するためのUniStac反応を、UniStac緩衝液(25mMのHEPES pH7.5、50mMのNaCl、4mMのMgCl2)中で行った。UniStac混合物(0.5μMのE1、5μMのE2(Ubch5aまたはUbch7)、1μMのE3、4mMのATP)をタンパク質Aのタンパク質溶液に添加し、反応を開始した。室温で1時間にかけて振とうしてUniStac反応を行い、次いで50%濃度のラテックスビード(Latex bead)と共に1:1の割合で混合し、室温で4時間にかけて振とうすることで、タンパク質A重合体をビードに固定化する反応を行った。固定化反応後、固定化されていないタンパク質を除去するために、PBS緩衝液(10mMのNa2HPO4 pH7.4、1.8mMのKH2PO4、137mMのNaCl、2.7mMのKCl)で3回洗浄した。洗浄後、ヒト血清から得られた免疫グロブリンG(IgG)を2mg/mLの濃度でビードに添加し、ビードに固定化されたタンパク質A重合体の結合活性を分析した。結合反応は、室温で1時間振とうしてから、前記洗浄方法と同様にPBS緩衝液で3回洗浄後、SDS-PAGEで確認した。
【0070】
図28に示すように、UniStac混合物を添加せずに残りを同様に行い、タンパク質A単位体が固定化されたビードと比較して、タンパク質A重合体が固定化されたビードに対するヒト由来IgGの結合活性が15%以上増加されたことを確認した。
【0071】
実施例12:ユビキチンのN末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方にそれぞれ結合された線状の多価生体分子重合体の製造
N末端にhGHが結合された供与体ユビキチン(配列番号:18)及びN末端にhGHが結合された受容体ユビキチン(配列番号:19)ダイマー(図29(A))と、N末端にhGHが結合された供与体ユビキチン(配列番号:18)及びC末端にhGHが結合された受容体ユビキチン(配列番号:20)ダイマー(図29(B))と、N末端にhGHが結合された供与体ユビキチン(配列番号:18)及びN末端にSUMOとC末端にhGHがそれぞれ結合された受容体ユビキチン(配列番号:21)ダイマー(図29(C))と、をそれぞれ製造し、UniStacダイマー(dimer)形成を確認した。
【0072】
受容体ユビキチンは、73番目のロイシンがプロリンで置換された形態であり、図29(C)において、受容体ユビキチンの48番目または図29(A)及び(B)において、63番目のリシンを除いた残りのリシンはアルギニンで置換された形態であり、C末端は、アスパラギン酸(aspartate)または生体分子(hGH)で延長されている形態である。
【0073】
UniStac反応(図29(A)及び(B))は、UniStac緩衝液(25mMのHEPES pH7.5、50mMのNaCl、4mMのMgCl2)中で行い、UniStac混合物(1μMのE1、5μMのE2(Ubc13-MMS2複合体)、4mMのATP)を、10μMの受容体ユビキチンタンパク質と供与体ユビキチンタンパク質が混合された溶液(総ユビキチン濃度20μM)に添加し、反応を開始した。
【0074】
また、UniStac反応(図29(C))は、前記反応と同様の条件下、E2をUbc13-MMS2複合体ではなくE2-25Kに、受容体ユビキチンは63番目ではなく48番目のLysのみを有する形態のタンパク質に置き換えて反応を開始した。27℃で4時間にかけて振とうしてUniStac反応を行い、その後、SDS-PAGEで確認した。UniStac反応(図29(B))では、His-sumo-Ub-hGH形態のタンパク質にSENP1酵素を用いてHis-sumoを切り出したUb-hGH形態の受容体ユビキチンを使用し、そのとき、残存するSENP1がUniStac反応に含まれて供与体hGH、Ubc13とMMS2のHis-sumoも一緒に切り出し、反応後、ダイマー及びE2(Ubc13、MMS2)のバンドシフト(band shift)がなされたことを確認した。
【0075】
図29に示すように、生体分子がN末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方にそれぞれ結合された形態のいずれでも、UniStacダイマーが形成されたことを確認した。本実施例で用いたタンパク質などの配列番号は以下のとおりである:N末端にhGHが結合された供与体ユビキチン(配列番号:18);N末端にhGHが結合された受容体ユビキチン(配列番号:19);C末端にhGHが結合された受容体ユビキチン(配列番号:20);N末端にSUMOとC末端にhGHがそれぞれ結合された受容体ユビキチン(配列番号:21)
【0076】
実施例13:薬物動態の確認
ジユビキチン-アルブミン(OGB1)とアルブミン(OGB3)をSpraque-Dawley系オス9週齢ラットに単回皮下投与し、その後、時間帯ごとに血液を採取して血清中の薬物濃度を分析した。ジユビキチン-アルブミンは、0.833mg/kg、アルブミンは1mg/kg投与し、一群当たり雄12匹で構成した。血中薬物濃度の分析のための採血は、投与前(Blank)、投与後0.5、1、2、4、6、8、12、24、36、48、及び72時間(合計12ポイント)に一群当たり3匹ずつ行った。
【0077】
対照群は雄5匹で構成し、投与後1及び24時間に採血を行った。採取した血液は血清を分離し、-70±10℃で超低温冷凍保存した。時間ごとに採血した検体からの薬物濃度の分析は、ヒト血清アルブミンELISA kitで測定した。ELISA分析は、希釈用バッファー(1×PBS、1%BSA)とラット共血清を1:1で混合した希釈用血清を用意して用いた。希釈用血清に、ジユビキチン-アルブミンを800ng/mLから15.625ng/mLまで希釈して各ウェルに分注した。各検体は、ラット共血清と希釈用バッファーを用いて最終1:1希釈用血清となるように希釈し、各ウェルに分注した。ヒト血清アルブミンkitの捕獲(Capture)とDetector抗体を抗体希釈CP溶液に希釈し、抗体混合溶液を調製した。抗体混合溶液を各ウェルに100μL分注し、室温で1時間、400rpmで培養した。培養が完了したら、洗浄溶液を300μLずつウェルに分注し、振り落とす過程を3回繰り返した。TMB基質溶液を各ウェルに100μLずつ分注し、室温で10分、400rpmで培養してから、Stop溶液を各ウェルに100μLずつ分注して器具に入れ、吸光度(OD450)を測定する。アルブミンは、100ng/mLから2.5ng/mLまで希釈して各ウェルに分注し、残りの検体希釈と実験過程は同様に行い、吸光度を測定した。濃度ごとに測定された吸光度数値に基づいて4パラメータで検量線を算出し、検量線に対して検体から測定された吸光度数値に基づき、血清中の薬物濃度を最終算出した。血清中の試験物質の濃度測定結果について薬物動態学的パラメータをPhoenix WinNonlin(Ver.8.1、Pharsight-A Certara company、U.S.A.)で算出し、薬物動態を評価した。
【0078】
図30に示すように、ジユビキチン-アルブミン(OGB1)がより高い血漿濃度を示すことが確認された。また、ジユビキチン-アルブミン(OGB1)を投与した群は、アルブミン(OGB3)を投与した群と比較して、AUCが1.8倍、Cmaxが2倍以上増加したことを確認した。よって、本発明のジユビキチン-アルブミン重合体は、より少ない濃度でより優れた薬物動態学的効果を奏することが分かる。
【0079】
結果的に、本発明の生体分子重合体は、生体内における持続時間を延長することのできる分子と結合して提供されることにより、生体内における効能持続時間を延長する必要のある薬学組成物の製造に用いることができる。
【0080】
実施例14:Fcベース(Fc-based)受容体タンパク質(受容体タンパク質)発現可能な組換え発現プラスミドDNAの製造
受容体ユビキチンのC末端にキャリア(carrier)が直接結合された融合タンパク質を以下の方法で製造した。融合タンパク質のキャリアタンパク質として抗体断片(IgG Fc domain)を使用し、融合タンパク質を「Fcベース受容体タンパク質」という。
【0081】
細胞に溶解性を発現させるために、タンパク質を細胞外に分泌させるシグナルペプチド(Signal peptide)、受容体ユビキチン、ヒンジ(hinge)、及びFc遺伝子をpcDNA3.1(+)ベクターに挿入するように設計した。pcDNA3.1(+)ベクターは、CMVプロモータ、アンピシリン(Ampicillin)耐性遺伝子などを有する動物細胞用発現ベクターである。
【0082】
図31は、Fcベース受容体タンパク質を発現する遺伝子が連結されたpcDNA3.1(+)ベクターを示す図である。Fcベース受容体タンパク質を発現する塩基配列及びアミノ酸配列を、表3及び表4に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】

【0085】
以上のFcベース受容体タンパク質組換え発現ベクターを確保した。
【0086】
Fcベース受容体タンパク質プラスミド(Plasmid)DNAをDH5αコンピテント細胞(Competent cell)に入れ、42℃で1分間熱ショック(Heat shock)処理して形質転換し、100μg/mLのアンピシリン(Ampicillin)を含むLB固体培地に塗抹した。塗抹されたLB固体培地プレートは、37℃で16時間以上静置培養してコロニー(Colony)を確保した。単一コロニー(Colony)を突いて、5mLのLB培地に接種し、その後、37℃、220rpmで16時間培養した。培養液の一部をアンピシリン(Ampicillin)を含むLB培地に接種し、その後、37℃、220rpmで16時間培養した。培養液は、3,500rpmに30分間遠心分離して大腸菌ペレット(Pellet)を確保し、続いてDNA抽出キット(QIAGEN)のP1、P2、P3溶液を添加して細胞壁を壊し、タンパク質が分離されたDNA混濁液を確保した。DNA抽出キット(QIAGEN)の精製カラムを用いて確保したDNA混濁液からプラスミドDNAペレットを確保し、自然乾燥した。乾燥したDNAペレットに細胞培養用水(Sigma Aldrich)を加えて溶かし、その後、0.22μmのフィルターで濾過した。最終抽出したプラスミドDNAは、ナノドロップ機器(IMPLEN)を用いてDNA濃度と純度を測定し、その後、タンパク質発現に使用した。
【0087】
実施例15:Fcベース受容体タンパク質(受容体タンパク質)の発現及び確認
Fcベース受容体タンパク質の発現
Expi293Fヒト細胞(Human cell)は、ヒト胎児性腎臓(Human Embryonic Kidney)293細胞株(Cell line)に由来し、高い形質感染及び高いタンパク質発現効率を有する。
【0088】
形質移入過程の24時間前に、Expi293F(Gibco)細胞を3×106 viable cells/mLで接種し、8%CO2インキュベーター内のオービタルシェーカー(Orbital shaker)に装着し、37℃、80%湿度以上、95rpm(50mmのshaking diameter)条件下で24時間培養した。細胞を計数して細胞生存度(Cell viability)及び細胞数を確認し、最終3×106 viable cells/mLの濃度及び合計200mLの体積となるように、Expi293発現培地(Expi293 Expression Media Gibco)で希釈し、1L Erlenmeyerフラスコに接種した。
【0089】
Opti-MEM I Reduced Serum Media(Gibco)培地12mLにFcベース受容体タンパク質組換え発現ベクターDNA 200μgと、Opti-MEM I Reduced Serum Media(Gibco)11.2mLにExpiFectamineTM 293 Reagent(Gibco)640μLとをそれぞれ希釈し、その後、室温で5分間反応させた。ExpiFectamineTM 293 Reagentを含む溶液をFcベース受容体タンパク質組換え発現ベクターDNAを含む溶液に入れて混合し、室温で12分間反応させた。3×106 viable cells/mLになるように接種した1Lフラスコにゆっくり分注し、形質移入(Transfection)させた。8%CO2インキュベーター内のオービタルシェーカー(Orbital shaker)に装着し、37℃、80%湿度以上、95rpm(50mmのshaking diameter)条件下で18時間培養した。18時間後、Enhancer 1(Gibco)1.2 mLとEnhancer 2(Gibco)12mLをそれぞれ添加し、8%CO2インキュベーター内のオービタルシェーカー(Orbital shaker)に装着し、37℃、80%湿度以上、95rpm(50mmのshaking diameter)条件下で7日培養した。
【0090】
Fcベース受容体タンパク質の発現の確認
以上で確保した培養液を3,500rpm条件下で30分以上遠心分離し、細胞ペレットを除いたFcベース受容体タンパク質の発現培養液のみを確保した。確保した培養液をフィルターに濾過して不純物を除去した。培養液からFcベース受容体タンパク質発程度を確認するために、80μLを取り、5X非還元性サンプルローディング染料(Non-reducing sample loading dye)を20μLを加えて混合し、95度で10分間放置した。
【0091】
発現量を定性的に分析するために、31.25、62.5、125、250、500、750、1,000mg/mLに希釈したウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin)80μLを取り、5X非還元性サンプルローディング色素(Non-reローディングダイ)20μLを加えて混合し、95度で10分間放置した。各試料及びサイズ確認用マーカータンパク質を10%Tris-Glycineゲルにロードし、80ボルト(V)で約20分間、120ボルト(V)で90分間タンパク質を分離した。ゲルランニングが完了したら、クーマシーブリリアントブルーR(Coomassie brilliant blue R)で軽く振とうしながら染色し、10%酢酸(Acetic acid)を含むバッファーを用いて軽く振とうしながら、染色したゲルの染色試薬を除去した。脱色済みのジェルは、画像ファイルで確保し、イメージジェイ(Image J)プログラムによってウシ血清アルブミンタンパク質のバンド量に対するFcベース受容体タンパク質の濃度を定性及び定量した。その結果を図32に示す。
【0092】
図32に示すように、100kDaサイズのFcベース受容体タンパク質が形成されたことを確認し、264.1mg/mLのタンパク質形成を確認した。
【0093】
Fcベース受容体タンパク質の標的特異性の確認
Fcベース受容体タンパク質標的特異的な発現を確認するために、ウエスタンブロット(Western blotting)を行った。発現培養液80μLを取り、5X非還元性サンプルローディング染料(Non-reducing sample loading dye)20μLを加えて混合し、95度で10分間放置した。用意された試料及びサイズ確認用マーカータンパク質を10%Tris-Glycineゲルにロードし、80ボルト(V)で約20分間、120ボルト(V)で90分間タンパク質を分離した。ゲルは、フッ素化ポリビニリデンメンブレイン(PVDF membrane)に電気移動(Transfer)するために、0.3アンペア(A)で約2時間タンパク質を移動させた。メンブレインに5%脱脂粉乳(Skim milk)を含む1× PBST(Phosphate Buffer Saline with Tween 20)に1時間軽く振とうしながら非特異的反応を除去するブロッキング(blocking)を行った。ヒトIgG Fc抗体に特異的に結合するヤギ抗ウサギIgG(H+L)、HRPを用いてFcベース受容体タンパク質に特異的な発現有無を確認した。その結果を図3に示す。Negative Controlは、プラスミド(plasmid)DNAを含まないサンプルである。
【0094】
図33に示すように、IgG Fc抗体に特異的に結合する100kDaサイズのFcベース受容体タンパク質の発現が確認された。
【0095】
Fcベース受容体タンパク質の精製
以上で発現したFcベース受容体タンパク質培養液を、Equilibrium buffer(20mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、pH7.4)で平衡化したMabSelect Prism A(Cytiva)カラムにロード(loading)した。Equlibration bufferを用いてカラムに結合しない不純物(impurity)を除去し、Elution buffer 1(50mMのSodium acetate at pH4.5)及びElution buffer 2(50mMのSodium acetate at pH4.0)を用い、step elutionによりタンパク質を回収した。回収された受容体タンパク質に1MのTrisを添加し、回収されたタンパク質をpH7.5の状態にする。pH滴定後に回収された受容体タンパク質は、25mMのTris、pH7.5のバッファーでdialysisを行い、その後、ultrafiltrationを行った。10%のインハウス・ゲル(in-house gel)を用いてSDS-PAGEによる受容体タンパク質の精製結果を確認した。その結果を図34及び図35に示す。
【0096】
実施例16:ユビキチン-IL-1RAタンパク質(供与体タンパク質)の発現及び精製
ユビキチン-IL-1RAタンパク質の発現
供与体ユビキチンのC末端に生体分子が直接結合されているユビキチン生体分子タンパク質を以下のように製造した。
【0097】
ユビキチン生体分子タンパク質を暗号化する遺伝子配列をHis-SUMOタグ付きpET21a vectorに形質転換し、その後、遺伝子が挿入されたプラスミド0.5μLをコンピテント細胞(competent cell)であるE.coli BL21(DE3)50μLを含むEチューブに入れた。その後、タッピング(tapping)して混合してから、氷中で20分間放置した。熱衝撃を加えるために、42℃の水槽にEチューブを50秒間放置した後、氷中で5分間放置した。次いで、新鮮なLB培地300μLをEチューブに添加し、37振とう培養器(shaking incubator)で1時間培養して形質転換を完了した。形質転換済みの細胞を、BSC中で100mg/mL濃度のアンピシリン(ampicillin)を1/1000含むLBプレートに拡散(spreading)させ、37℃の静置培養器(stationary incubator)で一晩培養した。それから、得られた単一コロニー(Colony)を突いて、100mg/mL濃度のアンピシリン(ampicillin)を1/1000含む100mLにTB培地に接種し、その後、37℃、220rpmで6時間シード(seed)培養した。
【0098】
生体分子としてIL-1RAを含むユビキチン-IL-1RAタンパク質(供与体、D-192)の場合、100mg/mLの濃度のアンピシリン(ampicillin)を1/1000含む3Lインハウス(In-house)TB培地に、シード培養液を1:100の割合で接種し、主培養(main culture)を行った。Biocanvas fermentor(Centrion)を用い、37℃、溶存酸素量(Dissolved Oxygen)40%で4時間培養し、1M IPTG stockを最終濃度200μMにinductionを行った。培養液の溶存酸素量を40%に合わせるために、培養時間中にimpellerのRPMを300~700rpmに自動調節した。induction後、さらに14時間培養し、培養を終了した。培養済みの培養液を7000gに30分間遠心分離し、大腸菌wet cellを確保した。
【0099】
Cedex BIO Analyzer(Roche)を用いて培養完了後の残りの栄養素とOptical densityを測定した。結果を表5に示す。
【0100】
【表5】
【0101】
SDS-PAGE分析法によってユビキチン-IL-1RAを確認した結果を図36に示す。また、ユビキチン-IL-1RAタンパク質の濃度を測定したところ、963.32mg/Lであると分析された。
【0102】
ユビキチン-IL-1RAタンパク質の精製
ユビキチン-IL-1RAタンパク質を以下の過程で精製した(図37)。
【0103】
(A)溶解/超音波処理
培養により確保したwet cellを溶解バッファー(lysis buffer)(20mMのリン酸ナトリウム、pH7.0)を用いてresuspensionを行った。1gのwet cell当たり9mLの溶解バッファーを入れて行った。溶解試料を氷中に入れ、sonicationをPules on/off=3秒/5秒、45%のamplitude条件下で20分間行った。Lysateは、14,000rpmで30分間遠心分離し、supernatantのみを確保した。
【0104】
(B)捕獲精製
Ni-セファロース樹脂(sepharose resin)(Cytiva)にlysateをロード(loading)した。サンプルのロードが完了した後、wash buffer(20mMのリン酸ナトリウム、pH7.0、0.02Mのイミダゾール)を用いてnon-specificタンパク質を十分に洗浄して除去した。その後、elution buffer(20mMのリン酸ナトリウム、pH7.0、0.2Mのイミダゾール)を用い、Hig-SUMOタグ付きのユビキチン-IL-1RAタンパク質を回収した。回収されたHis-SUMOタグ付きのユビキチン-IL-1RAタンパク質は、20mMのリン酸ナトリウム、pH7.0のバッファーでdialysisを行い、イミダゾール(imidazole)を除去した。Niカラムによる供与体タンパク質の精製をSDS-PAGEで確認し、その結果を図38及び図39に示す。
【0105】
(C)SENP1酵素消化
His-SUMOタグ付きのユビキチン-IL-1RAタンパク質及びSENP1を、100mgのユビキチン-IL-1RAタンパク質:1mgのSENP1の割合でSENP1酵素消化(enzyme digestion)を行った。Ni-精製(purification)で回収されたタンパク質の濃度定量を行い、His-SUMOタグ付きのユビキチン-IL-1RAタンパク質量に基づいて、対応するrecombinant SNEP1を混合した。反応混合物を室温(15~25℃)で1時間放置した。SENP1酵素消化をSDS-PAGEで確認し、その結果を図40に示す。
【0106】
(D)His-SUMOの除去
Equilibrium buffer(20mMのリン酸ナトリウム、pH7.0、0.02Mのイミダゾール)で平衡化したNi-セファロース樹脂(Cytiva)に反応混合物をロードした。サンプルロード(Sample loading)を行い、His-SUMOタグが切り取られたユビキチン-IL-1RAタンパク質は、フロースルーで抜けるようにした。サンプルのロードが完了した後、Equilibrium buffer(20mMのリン酸ナトリウム、pH7.0、0.02Mのイミダゾール)を使用して残りのユビキチン-IL-1RAタンパク質を回収し、回収したユビキチン-IL-1RAタンパク質を20mMのリン酸ナトリウム、pH7.0のバッファーでdialysisを行い、イミダゾールを除去した。His-SUMOが除去される工程をSDS-PAGEで確認し、その結果を図41及び図42に示す。
【0107】
(E)精製
Equilibrium buffer(20mMのリン酸ナトリウム、pH7.0のバッファー)で平衡化したアニオン交換樹脂(Anion Exchange Column)カラムに、前段階で回収したユビキチン-IL-1RAタンパク質をロードした。ユビキチン-IL-1RAタンパク質は、フロースルーで抜けるようにした。回収したユビキチン-IL-1RAタンパク質は、最終10mg/mLとなるようにultrafiltrationを行った。研磨(Polishing)のためのアニオン交換樹脂工程を行い、その結果を図43及び図44に示す。
【0108】
実施例17:コンジュゲーション
コンジュゲーションの実施及び収率
実施例18で生産された受容体タンパク質と実施例19で生産された供与体タンパク質とを用いてコンジュゲーションを行った。受容体と供与体タンパク質のモル比を1:3にして行った。そのとき、受容体のタンパク質は、10~50μMに設定可能である。その他、UniStac混合物にはE1、E2、E3、ATPを添加し、反応を開始した。反応は25℃で16時間静置状態で行った。
【0109】
コンジュゲーション反応結果物(C-193)を4~12%勾配(gradient)SDS-PAGEに1.12μgの受容体をロードしてコンジュゲーション程度を定性分析した。その結果を図45に示す。
【0110】
さらに、μCE-SDS分析法を用いて、反応結果物のコンジュゲーション程度を定量分析した。HT Protein Express Reagent Kitを用いて試料前処理を行い、その後、Protein Express Assay Labchipを用いて分析を行い、収率分析した。その結果を表6及び図46に示す。
【0111】
【表6】
【0112】
【数1】
・・・(1)
【0113】
表6のコンジュゲーション収率は、数式1を用いて計算し、UniStacコンジュケーション収率は、97.21%であり、非常に高い受容体特異的数値を示した。
【0114】
UniStacコンジュゲーションの精製
コンジュゲーション(C-193)試料のみを回収するために、以下の工程により精製を行った(図47)。
【0115】
反応結果物を、Equilibrium buffer(25mMのTris、pH8.0、0.5MのNaCl)で平衡化したNi-セファロース樹脂を用意する。ローディング試料は、5MのNaClを少量添加して、conductivityを50mS/cmに合わせる。該当conductivityで用意したサンプルを、準備されたカラムへのローディングを完了し、その後、equilibrium buffer(25mMのTris、pH8.0、0.5MのNaCl)を用いて不純物を除去した。その後、elution buffer(25mMのTris、pH8.0)を用いてコンジュゲーション(C-193)を回収した。回収されたコンジュゲーション(C-193)は、塩を添加していないpH7.0のリン酸ナトリウムバッファーでdialysisを行い、塩及びイミダゾールを除去した。Ni精製結果をクロマトグラフィーにより確認し、それを図48及び図49に示す。
【0116】
Equilibrium buffer(25mMのリン酸ナトリウム、pH7.0のバッファー)で平衡化したアニオン交換樹脂(Anion exchange chromatography)カラムに、コンジュゲーションをロードした。Elution buffer(25mMのリン酸ナトリウム、pH7.0、250mMのNaCl)を用いてコンジュゲーションを回収した。その結果を図50及び図51に示す。
【0117】
最終UniStac
コンジュゲーション(C-193)を剤型化バッファー(formulation buffer)(4.6mMのHistidine、5.7mMのTris、pH7.5、10mMのArginine、0.1g/mLのtrehalose)でdialysisを用いてフォーミュレーションを行った。最終UniStac産物は、1.1及び0.5mg/mLとなるように希釈して用意した。得られた資料を、-70℃のdeep freezerに保管した。
【0118】
実施例18:最終UniStac重合体の異化学分析
最終UniStac重合体(Drug Substrate、C-193)の純度を測定するために、SDS-PAGE(還元(Reducing)及びネイティブ(Native)条件)、μCE-SDS及びSEC-HPLC分析を行った。
【0119】
SDS-PAGE分析
最終結合体産物(DS、C-193)を還元(Reducing)条件で分析するために、4~12%のBis-Tris Plus GelとMES SDS Running Bufferを用いて還元SDS-PAGE分析を行った。用意されたPAGEに3μgずつ試料ローディングを行い、その結果を図52に示す。
【0120】
最終結合体産物(C-193 DS)をネイティブ(Native)条件で分析するために、4-15%のT/G-PAG-BC non-SDSとTris-Glycine Native Running Bufferを用い、ネイティブ-PAGE分析を行った。用意されたPAGEに4.5μgずつ試料ローディングを行い、その結果を図53に示す。
【0121】
μCE-SDS分析
μCE-SDS(Perkin Elmer Labchip GX II Touch.) 分析法を用いて、C-193 DS資料に含まれているfragment含有程度を分析した。HT Protein Express Reagent Kit(Perkin Elmer)を用いて試料前処理を行い、その後、Protein Express Assay Labchip(Perkin Elmer)を用いて分析を行った。その結果を表7及び図54に示す。
【0122】
【表7】
【0123】
【数2】
・・・(2)
【0124】
数式2を用いてモノマー純度を計算した結果を表7に示し、98%以上と高いモノマー純度を確認した。
【0125】
SEC-HPLC分析
SEC-HPLCカラム及びAlliance e2695 XC HPLC機器を用いて、C-193 DS資料に含まれているHigh molecular weightの含有程度を分析した。C-193DS試料約30μgをそれぞれ準備したカラムにinjectionして分析を行った。その結果を表8及び図55に示す。
【0126】
【表8】
【0127】
数式2を用いてモノマー純度を計算した結果を表8に示し、100%と非常に高いモノマー純度を確認した。
【0128】
実施例19:融合タンパク質(C-192、C-193及びD-192)の薬物動態の比較
供与体タンパク質(D-192)、UniStacタンパク質(C-193)、及びヒト血清アルブミン(Human-serum albumin)をキャリアとする受容体タンパク質を用いた融合タンパク質(C-192)を用意した。当該3つの試料に対する構造を図56に示す。
【0129】
その3つの試料を用いて9週齢雄ICRマウスに単回皮下投与し、その後、時間帯ごとに血液を採取して血中薬物濃度を分析し、薬物動態パラメータを算出するために、薬物動態測定試験を行った。
【0130】
(株)オリエントバイオ(Orient BIO、Korea)から購入した8週齢の雄ICRマウスを7日間検疫し、純化させた。検疫及び純化後、全ての動物に対して体重を順位付け、各群の平均体重が均一に分布するように群分離(採血時間当たりn=2)を行った。その後、C-192試験物質を10mg/kg、C-193試験物質を1mg/kg、及びD-192試験物質を1mg/kgの用量で各マウスに単回皮下投与した。採血時点は、投与前、C-192投与後の2、6、8、10、16、32、24、48、72及び96時間、C-193投与後の0.5、1、2、4、6、8、10、16、24、32、40、48、56及び72時間、及びD-192投与後の1、2、3、4、5及び6時間にそれぞれ実施した。採取した血液は、遠心分離により血清を分離し、血中薬物濃度分析のために-70±10℃で保存した。
【0131】
試験物質の血中薬物濃度を測定するために、IL-1RAに特異的な反応性を有するHuman IL-1RA ELISA kit(Abcam、UK)を用いた。まず、96ウェルプレートに標準物質及び時間帯ごとの血清を50μLずつ分注し、次にHuman IL-1RA ELISA kitで提供する抗体cocktailを各ウェルに50μLずつ分注して、25℃の混合装置(Thermo Micromixer)で400rpmで1時間反応させた。ウェルプレートの溶液を捨て、残渣が残らないように振り払った。洗浄液300μLを各ウェルに分注し、それから捨てて振り払う過程を3回繰り返した。発色剤を各ウェルに100μLずつ分注し、それから25℃の混合装置に400rpmで10分間反応させた。
【0132】
最後に、停止液を各ウェルに100μLずつ分注し、それから吸光度測定器(Multi-Mode Microplate Reader)を用いて450nmで吸光度を測定した。標準物質に対して算出された時間帯ごとの血清中の薬物の濃度は、薬物動態パラメータの算出に用いられた。マウスにおける融合タンパク質(C-192、C-193及びD-192)の皮下投与後の経時的な血中薬物濃度グラフを図57及び図58に示す。
【0133】
さらに、以上の実験結果に基づく薬物動態パラメータの算出結果を、表9に示す。
【0134】
【表9】
【0135】
表9に示すように、薬物の体内安定性を示す半減期に基づいて3つの融合タンパク質を比較評価すると、ヒト血清アルブミンをキャリアとする融合タンパク質(C-192)は、受容体タンパク質(D-192)と比較して、半減期が0.4時間から9.3時間に約23倍増加することを確認した。
【0136】
また、Fcをキャリアとする融合タンパク質(C-193)は、受容体タンパク質(D-192)と比較して、半減期が0.4時間から13.7時間に約33倍増加することを確認した。
【0137】
結局、アルブミン及びFcキャリアが融合された融合タンパク質は、半減期、AUC、Tmax、Cmaxを増加させて優れた薬物動態特性を有することから、少ない用量で所望の部位に薬物を適用可能な優れた医薬品として活用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24A
図24B
図25
図26A
図26B
図27A
図27B
図28A
図28B
図29A
図29B
図29C
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
図57
図58
【配列表】
0007523541000001.app