(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ソフトカプセルのカプセルシェルおよびソフトカプセル
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20240719BHJP
A23L 29/231 20160101ALI20240719BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20240719BHJP
A23L 29/244 20160101ALI20240719BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20240719BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20240719BHJP
A23L 29/30 20160101ALI20240719BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240719BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20240719BHJP
A61K 9/66 20060101ALI20240719BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240719BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240719BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A23L5/00 C
A23L29/231
A23L29/238
A23L29/244
A23L29/256
A23L29/269
A23L29/30
A23L33/10
A23L33/125
A61K9/66
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/36
(21)【出願番号】P 2022533325
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2021142080
(87)【国際公開番号】W WO2023273255
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】202110719246.4
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522072334
【氏名又は名称】仙楽健康科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳潔偉
(72)【発明者】
【氏名】李緒発
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0136101(US,A1)
【文献】特開2018-008886(JP,A)
【文献】国際公開第2019/208668(WO,A1)
【文献】特開2005-281687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.5~5wt%の第1のゲル化剤、30~40wt%のデンプン、10~25wt%の可塑剤および35~55wt%の水を含むフィルム形成用組成物で製造されるソフトカプセルのカプセルシェルであって、
第1のゲル化剤は、以下の特性を有するジェランガムであり、即ち、回転粘度計による測定において、1.5重量%のジェランガムを90℃の水に30分間溶解して得られたジェランガム溶液は、10~60mPa・sの粘度を有し、ここで、前記のソフトカプセルのカプセルシェルは、平均粒子径が10μm~50μmであるデンプン粒子0~3wt%を含み;前記のソフトカプセルのカプセルシェルは、腸溶性のものであり、前記のジェランガムは、単一のゲル化温度を有するジェランガムである、ソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項2】
デンプンが、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、または酸化ヒドロキシプロピルデンプンからなる群から選択される1つまたは複数であり、或いはデンプンは、(1)ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、または酸化ヒドロキシプロピルデンプンからなる群から選択される1つまたは複数、および(2)2wt%以下の酸処理デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、アセチル化ジスターチホスフェート、アセチル化酸化デンプン、アセチル化ジスターチアジペート、またはアルファー化デンプンからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項1に記載のソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項3】
ジェランガムとデンプンとの重量比が0.03~0.2である、請求項1または2に記載のソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項4】
可塑剤が、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、結晶性フルクトース、トレハロース、またはグルコースからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項1~3のいずれか1項に記載のソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項5】
フィルム形成用組成物が、第2のゲル化剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項6】
前記の第2のゲル化剤が、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、プルラン、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、フラックスシードガム、カードランガム、またはタマリンドガムからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項5に記載のソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項7】
第2のゲル化剤の含有量が0.2wt%~5wt%である、請求項5または6に記載のソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のソフトカプセルのカプセルシェルを製造する方法であって、
a)可塑剤に第1のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌すること;
b)前記のデンプンを加え、60~98℃で加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌すること;
c)気泡を除去して皮膜用液を得ること;および
d)カプセル化および乾燥
を含む、方法。
【請求項9】
前記のa)が、第2のゲル化剤を添加することをさらに含み、前記のa)が、前記の可塑剤に、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌することである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載のソフトカプセルのカプセルシェル、および
充填物
を含むソフトカプセル。
【請求項11】
ソフトカプセルは、腸溶性ソフトカプセルである、請求項10に記載のソフトカプセル。
【請求項12】
ソフトカプセルは、腸溶性コーティングを含まない腸溶性ソフトカプセルである、請求項10または11に記載のソフトカプセル。
【請求項13】
食品、栄養補助食品および医薬品における請求項1~7のいずれか1項に記載のソフトカプセルのカプセルシェル、または請求項10~12のいずれか1項に記載のソフトカプセルの使用。
【請求項14】
腸溶性ソフトカプセルのカプセルシェルの製造におけるフィルム形成用組成物の使用であって、
前記のフィルム形成用組成物は、1.5~5wt%の第1のゲル化剤、30~40wt%のデンプン、10~25wt%の可塑剤および35~55wt%の水を含み、第1のゲル化剤は、以下の特性を有するジェランガムであり、即ち、回転粘度計による測定において、1.5重量%のジェランガムを90℃の水に30分間溶解して得られたジェランガム溶液は、10~60mPa・sの粘度を有し、前記の腸溶性ソフトカプセルのカプセルシェルは、0~3wt%のデンプン粒子を含み、前記のデンプン粒子は、平均粒子径が10μm~50μmであるデンプン粒子であり、前記のジェランガムは、単一のゲル化温度を有するジェランガムである、使用。
【請求項15】
デンプンは、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、または酸化ヒドロキシプロピルデンプンからなる群から選択される1つまたは複数であり、或いはデンプンは、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、または酸化ヒドロキシプロピルデンプンからなる群から選択される1つまたは複数、および2wt%以下の酸処理デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、アセチル化ジスターチホスフェート、アセチル化ジスターチアジペート、アセチル化酸化デンプン、またはアルファー化デンプンからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
ジェランガムとデンプンとの重量比は0.03~0.2である、請求項14または15に記載の使用。
【請求項17】
可塑剤は、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、結晶性フルクトース、トレハロース、またはグルコースからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項14~16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
フィルム形成用組成物は、第2のゲル化剤をさらに含む、請求項14~17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記の第2のゲル化剤は、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、プルラン、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、フラックスシードガム、カードランガム、またはタマリンドガムからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
第2のゲル化剤の含有量は0.2wt%~5wt%である、請求項18または19に記載の使用。
【請求項21】
前記のソフトカプセルのカプセルシェルは、a)可塑剤に第1のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌すること;b)前記のデンプンを加え、60~98℃で加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌すること;c)気泡を除去して皮膜用液を得ること;およびd)カプセル化および乾燥を含む方法によって製造される、
請求項14~20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
前記のa)は、第2のゲル化剤を添加することをさらに含み、前記のa)は、前記の可塑剤に、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌することを含む、
請求項21に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品または医薬品の分野に関し、具体的に、ソフトカプセルのカプセルシェルおよびソフトカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の腸溶性ソフトカプセルは、主にコーティングによるものである。まず、ソフトカプセルを製造し、次に、コーティングして、腸溶効果を得る。近年の研究では、腸溶性ソフトカプセルの製造は、主にワンステップ成形を採用している。つまり、溶解プロセスで腸溶性材料を添加し、カプセル化成形を行い、最後に乾燥する。それは、別個のコーティングを必要としない非コーティング形態である。このような非コーティング腸溶性ソフトカプセルは、コーティングソフトカプセルの保存耐久性を向上させることができ、従来の製造プロセスと比較して、プロセスが簡略化され、効率が向上し、コストが削減される。
【0003】
非コーティング腸溶性ソフトカプセルは、ゼラチンとペクチンの組成物、カラギーナンとアクリル樹脂の組成物、高/低アシルジェランガムとデンプンの組成物を使用して製造することができる。例えば、特許CN106456558Aには、ゼラチンと低メトキシペクチンから製造されたソフトカプセルを提案した。しかしながら、一価、二価のカチオンとペクチンとの反応は、ソフトカプセルの腸溶性を低下させる。また、長期の保存は、ソフトカプセルの腸溶性をさらに劣らせる。さらに、ゼラチンは、老化やアルデヒドなどの化合物との反応により架橋しやすくなり、人工胃液で酸に耐性があるが、腸液で破裂、崩壊しなくなる。さらに、ゼラチンは主に牛や豚に由来し、菜食主義者や特定の宗教は動物由来のゼラチンを消費しないため、ゼラチンの使用がさらに制限されている。特許CN105263462Aには、カラギーナン組成物、メタクリル酸共重合体、加工デンプン、可塑剤などからなるフィルム材料から製造されたソフトカプセルを提案した。EP3010493A1には、高アシルジェランガム、低アシルジェランガム、デンプン、および可塑剤を混合して得られる胃酸耐性ソフトカプセルのフィルム組成物を提案した。しかしながら、高アシルジェランガムと低アシルジェランガムを配合したこのようなゲルは、ソフトカプセル用皮膜の製造プロセス中にプレゲル化しやすく、皮膜が粗く不均一になり、成形性が低く、油漏れしやすくなる。
【0004】
上記のように、ゼラチン系の腸溶性ソフトカプセルは、用途が限定されており、内容物の適用範囲が狭い問題がある。カラギーナン系のものは、一部の地域で合成樹脂をソフトカプセルに添加できない問題がある。ジェランガム系のものは、成形性が悪く、油漏れしやすい問題がある。当業者は、上記の技術的問題を解決できる腸溶性ソフトカプセルを必要とする。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、ソフトカプセルのカプセルシェル内のデンプンの状態が粒状デンプンまたは粒状デンプンが破壊された後のセグメントであり、ここで、デンプンの平均粒子径が10μm~50μmであるという発明者らの長期研究からの発見に部分的に基づいたものである。デンプン粒子の含有量がソフトカプセルのカプセルシェルに占める割合が0%~3%である場合、ソフトカプセルのカプセルシェル内のジェランガムのネットワーク構造は、模擬人工胃液でのソフトカプセルの硬化による機械的な力をサポートすることができる。これにより、ソフトカプセルは、模擬人工胃液で破裂せず、人工腸液で破裂することを確保し、最終的にソフトカプセルの腸溶効果を達成する。本発明者らは、90℃で10mPa・s~60Pa・sの粘度を有するジェランガム1.5重量%を、デンプンと組み合わせることで、良好な治癒特性、高い耐破裂性および腸溶性を有する、工業生産に適しているソフトカプセルを製造できることを見出した。
【0006】
一局面では、本発明は、フィルム形成用組成物で製造されるソフトカプセルのカプセルシェルを提供し、前記のフィルム形成用組成物は、1.5~5wt%の第1のゲル化剤、30~40wt%のデンプン、10~25wt%の可塑剤および35~55wt%の水を含み、ここで、第1のゲル化剤は、以下の特性を有するジェランガムであり、即ち、回転粘度計による測定において、1.5重量%のジェランガムを90℃の水に30分間溶解して得られたジェランガム溶液は、10~60mPa・sの粘度を有し、ここで、前記のソフトカプセルのカプセルシェルは、平均粒子径が10μm~50μmであるデンプン粒子0~3wt%を含む。本明細書において、ソフトカプセルのカプセルシェルは、腸溶性ソフトカプセルのカプセルシェルである。
【0007】
一実施形態では、デンプンは、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、または酸化ヒドロキシプロピルデンプンからなる群から選択される1つまたは複数である。
【0008】
一実施形態では、デンプンは、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、または酸化ヒドロキシプロピルデンプンからなる群から選択される1つまたは複数、および2wt%以下の酸処理デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、アセチル化ジスターチホスフェート、アセチル化酸化デンプン、アセチル化ジスターチアジペート、またはアルファー化デンプンからなる群から選択される1つまたは複数である。
【0009】
一実施形態では、ジェランガムとデンプンとの重量比は0.03~0.2である。
【0010】
一実施形態では、可塑剤は、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、結晶性フルクトース、トレハロース、またはグルコースからなる群から選択される1つまたは複数である。
【0011】
一実施形態では、フィルム形成用組成物は、第2のゲル化剤をさらに含み、好ましくは、前記の第2のゲル化剤は、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、プルラン、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、フラックスシードガム、カードランガム、またはタマリンドガムからなる群から選択される1つまたは複数であり、好ましくは、第2のゲル化剤の含有量は0.2wt%~5wt%である。
【0012】
一実施形態では、前記のソフトカプセルのカプセルシェルは、a)可塑剤に第1のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌すること;b)前記のデンプンを加え、60~98℃で加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌すること;c)気泡を除去して皮膜用液を得ること;およびd)カプセル化および乾燥を含む方法によって製造される。
【0013】
一実施形態では、前記のa)は、第2のゲル化剤を添加することをさらに含み、前記のa)は、前記の可塑剤に、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌することである。
【0014】
別の局面では、本発明は、本発明のソフトカプセルのカプセルシェルおよび充填物を含むソフトカプセルを提供する。一実施形態では、ソフトカプセルは腸溶性ソフトカプセルである。一実施形態では、ソフトカプセルは、腸溶性コーティングを含まない腸溶性ソフトカプセルである。
【0015】
別の局面では、本発明は、食品、栄養補助食品および医薬品における本発明のソフトカプセルのカプセルシェル又はソフトカプセルの使用を提供する。
【0016】
別の局面では、本発明は、腸溶性ソフトカプセルのカプセルシェルの製造におけるフィルム形成用組成物の使用を提供し、ここで、前記のフィルム形成用組成物は、1.5~5wt%の第1のゲル化剤、30~40wt%のデンプン、10~25wt%の可塑剤および35~55wt%の水を含み、第1のゲル化剤は以下の特性を有するジェランガムであり、即ち、回転粘度計による測定において、1.5重量%のジェランガムを90℃の水に30分間溶解して得られたジェランガム溶液は、10~60mPa・sの粘度を有し、ここで、前記の腸溶性ソフトカプセルのカプセルシェルは、平均粒子径が10μm~50μmであるデンプン粒子0~3wt%を含む。
【0017】
一実施形態では、前記のソフトカプセルのカプセルシェルは、a)可塑剤に第1のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌すること;b)前記のデンプンを加え、60~98℃で加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌すること;c)気泡を除去して皮膜用液を得ること;およびd)カプセル化および乾燥を含む方法によって製造される。
【0018】
一実施形態では、前記のa)は、第2のゲル化剤を添加することをさらに含み、前記のa)は、前記の可塑剤に、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌することである。
【0019】
一実施形態では、デンプンは、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、または酸化ヒドロキシプロピルデンプンからなる群から選択される1つまたは複数であり、或いはデンプンは、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、または酸化ヒドロキシプロピルデンプンからなる群から選択される1つまたは複数、および2wt%以下の酸処理デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、アセチル化ジスターチホスフェート、アセチル化ジスターチアジペート、アセチル化酸化デンプン、またはアルファー化デンプンからなる群から選択される1つまたは複数である。
【0020】
ソフトカプセルのカプセルシェルの実施形態は、この使用にも適用可能である。
【0021】
また、本発明は、1.5~5wt%の第1のゲル化剤、30~40wt%のデンプン、10~25wt%の可塑剤および35~55wt%の水を含む、ソフトカプセルのカプセルシェルを製造するためのフィルム形成用組成物を提供し、ここで、第1のゲル化剤は、以下の特性を有するジェランガムであり、即ち、回転粘度計による測定において、1.5重量%のジェランガムを90℃の水に30分間溶解して得られたジェランガム溶液は、10~60mPa・sの粘度を有する。
【0022】
ソフトカプセルのカプセルシェルの実施形態は、このフィルム形成用組成物にも適用可能である。
【0023】
別の局面では、本発明は、本発明のソフトカプセルのカプセルシェルおよび充填物を含むソフトカプセルを提供する。一実施形態では、ソフトカプセルは、腸溶性ソフトカプセルである。一実施形態では、充填物は、腸用充填物であり、例えば医薬品または栄養素補助剤である。
【0024】
本発明において、ソフトカプセルのカプセルシェルの製造方法は、コーティングの工程を含まなくてもよい。
【0025】
別の局面では、本発明は、食品、栄養補助食品および医薬品における本発明のフィルム形成用組成物、ソフトカプセルのカプセルシェル又はソフトカプセルの使用を提供する。一実施形態では、食品、栄養補助食品または医薬品は、腸で吸収または投与されるものである。
【0026】
一局面では、本発明は、本発明のソフトカプセルのカプセルシェル又はソフトカプセルを使用して腸に送達する方法を提供する。また、本発明は、腸用薬の調製における本発明のソフトカプセルのカプセルシェル又はソフトカプセルの使用を提供する。
【0027】
一実施形態では、本発明のフィルム形成用組成物またはソフトカプセルのカプセルシェルは、ゼラチンを含まない。一実施形態では、本発明のフィルム形成用組成物またはソフトカプセルのカプセルシェルは、ペクチンを含まない。つまり、本発明のソフトカプセルのカプセルシェルは、ゼラチンおよび/またはペクチンを含まずに、優れたソフトカプセル性能指標を達成し、腸溶效果を実現することができる。
【0028】
本発明のソフトカプセルでは、特定の粘度を有するジェランガムおよびデンプンの組成物をソフトカプセルの製造に使用する場合、強度、靭性および成形接着性の面でソフトカプセルの工業生産を完全に満たし、また、非コーティングの方式で腸溶效果を有するソフトカプセル製品を直接製造し、腸溶性ソフトカプセル技術の代替として使用し、世界市場で適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、実施例11で調製された皮膜用液を2枚のスライドガラスの間に置き、皮膜用液を加熱、加圧して、95℃でフィルムを形成し、冷却してカプセルシェルを形成し、このフィルムにヨウ素溶液を滴下して染色した光学顕微鏡の写真である。画像の倍率は600(幅266.1μmのフィルムの詳細画像を示す)である。ここで、ンプン粒子は遠心分離によって分離され、質量でソフトカプセルのカプセルシェルの5%を占める。この図から、カプセルシェルに大量のデンプン粒子が分布していることが分かる。
【
図2】
図2は、実施例4で調製された皮膜用液を2枚のスライドガラスの間に置き、皮膜用液を加熱、加圧して、95℃でフィルムを形成し、冷却してカプセルシェルを形成し、このフィルムにヨウ素溶液を滴下して染色した光学顕微鏡の写真である。画像の倍率は600(幅266.1μmのフィルムの詳細画像を示す)である。ンプン粒子は遠心分離によって分離され、質量でソフトカプセルのカプセルシェルの3%を占める。この図から、カプセルシェルに少量のデンプン粒子が分布していることが分かる
【
図3】
図3は、実施例9で調製された皮膜用液を2枚のスライドガラスの間に置き、皮膜用液を加熱、加圧して、95℃でフィルムを形成し、冷却してカプセルシェルを形成し、このフィルムにヨウ素溶液を滴下して染色した光学顕微鏡の写真である。画像の倍率は600(幅266.1μmのフィルムの詳細画像を示す)である。ンプン粒子は遠心分離によって分離され、質量でソフトカプセルのカプセルシェルの0%を占める。この図から、カプセルシェルにデンプン粒子が存在しないことが分かる。カプセルシェルにおいて、粒子が破壊されたデンプンとジェランガムの分散相として存在している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の内容は、本発明をさらに説明するために提供される。
本発明は、本発明のフィルム形成用組成物で製造されるソフトカプセルのカプセルシェルを提供する。本発明のフィルム形成用組成物は、第1のゲル化剤を含む。第1のゲル化剤の含有量は、1.5wt%~5wt%であってもよく、例えば2wt%、3wt%、4wt%または5wt%であってもよい。好ましくは、第1のゲル化剤の含有量は、2wt%~5wt%であってもよく、例えば2.5~5wt%であってもよい。第1のゲル化剤は、ジェランガムであってもよい。第1のゲル化剤は、以下の特性を有するジェランガムであってもよく、即ち、回転粘度計による測定において、1.5重量%のジェランガムを90℃の水に30分間溶解して得られたジェランガム溶液は、10~60mPa・sの粘度を有し、例えば12、15、20、30、35、40、45、50または55mPa・sの粘度を有する。好ましくは、粘度は30~50mPa・sである。一実施形態では、ジェランガムは、単一のゲル化温度を有するジェランガムである。適切な粘度のジェランガムは、皮膜用液のフィルム形成プロセスで良好な皮膜形成性を示すことができる。使用するジェランガムの粘度が低すぎる場合は、ジェランガムの使用量を増加する必要があり、皮膜の凝固速度が遅く、皮膜形成性が低く、粘度が不十分であるため、シームでの性能が低く、接着性が低く、油漏れしやすいカプセルとなり;使用するジェランガムの粘度が高すぎる場合は、調製した皮膜用液の粘度が高すぎ、プレゲル化しやすくなり、皮膜が粗くなり、皮膜形成性が低下し、フィルムの接着性が低下し、カプセルに形成できなくなり、油漏れしやすいカプセルとなり;粘度が高すぎたり低すぎたりするジェランガムは、ソフトカプセルの圧着形成に適する皮膜を提供できない。本明細書において、発明者らは、デンプンフィルム形成用組成物に1.5~5wt%のジェランガムを使用することで、本発明を達成し、ここで、回転粘度計による測定において、1.5重量%のジェランガムを90℃の水に30分間溶解して得られたジェランガム溶液は、10~60mPa・sの粘度を有する。
【0031】
フィルム形成用組成物は、可塑剤を含む。可塑剤の含有量は、10~25wt%であってもよく、例えば13wt%、14wt%、15wt%、16wt%または20wt%であってもよい。可塑剤は、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、結晶性フルクトース、トレハロース、またはグルコースからなる群から選択される1つまたは複数であってもよい。
【0032】
フィルム形成用組成物は、デンプンを含む。デンプンの含有量は、30~40wt%のデンプンであってもよく、例えば30wt%、35wt%または40wt%であってもよい。デンプンは、天然デンプンまたは変性デンプンからなる群から選択される1つまたは複数であってもよい。天然デンプンは、モチトウモロコシデンプン、エンドウ豆デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプンからなる群から選択される1つまたは複数であってもよい。変性デンプンは、酸処理デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、酢酸デンプン、酸化ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、アセチル化ジスターチホスフェート、アセチル化ジスターチアジペート、アルファー化デンプン、デキストリン、またはマルトデキストリンからなる群から選択される1つまたは複数であってもよい。一実施形態では、ジェランガムとデンプンとの重量比は0.03~0.2である。一実施形態では、ジェランガムとデンプンとの重量比は0.04~0.17である。例えば、ジェランガムとデンプンとの重量比は0.04、0.09、0.1、0.13または0.17である。好ましくは、デンプンは、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、または酸化ヒドロキシプロピルデンプンからなる群から選択される1つまたは複数である。或いは、デンプンは、易糊化デンプンおよび粒状デンプンを含む。易糊化デンプンとは、デンプンの完全な糊化後に粒子が破壊または溶解したデンプンを指し、例えば、モチトウモロコシデンプン、タピオカデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、酸化ヒドロキシプロピルデンプン、デキストリン、およびマルトデキストリンからなる群から選択される。粒状デンプンとは、完全に糊化しなく、水で膨潤しても粒子が破壊されないデンプンを指し、エンドウ豆デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンのような天然デンプン;酸処理デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、アセチル化ジスターチホスフェート、アセチル化ジスターチアジペート、アセチル化酸化デンプン、アルファー化デンプンのような変性デンプンからなる群から選択される。一実施形態では、易糊化デンプンの含有量は30~40wt%デンプンであり、例えば30wt%、32wt%、35wt%または40wt%である。一実施形態では、粒状デンプンの含有量は、2wt%以下であり、例えば1wt%、1.5wt%または1.7wt%である。
【0033】
フィルム形成用組成物は、水を含む。水の含有量は、35wt%~55wt%であってもよく、例えば40wt%、45wt%、50wt%または55wt%であってもよい。
【0034】
フィルム形成用組成物は、第2のゲル化剤をさらに含んでもよい。第2のゲル化剤の含有量は、0.2wt%~5wt%であってもよく、例えば0.25wt%、1wt%、2wt%、3wt%または4wt%であってもよい。第2のゲル化剤は、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、プルラン、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、フラックスシードガム、カードランガム、またはタマリンドガムからなる群から選択される1つまたは複数である。
【0035】
本発明は、本発明のソフトカプセルのカプセルシェルおよび充填物を含むソフトカプセルを提供する。充填物は、様々な動植物油脂類;または様々な固体の機能性成分とソフトカプセルに適した補助材料で調製された懸濁液、エマルジョン、半固体;または固体の機能性成分と適切な補助材料で調製された固体製剤(例えば、顆粒、マイクロカプセル、粉末、素錠、カプセル)からなる群から選択される1つまたは組み合わせを含んでもよい。ソフトカプセルのカプセルシェル内のデンプンの状態は、粒状デンプン(デンプン粒子の平均粒子径≧10μm)、粒子が破壊されたデンプン(デンプン粒子の平均粒子径<10μm)またはデンプン粒子が破壊された後のセグメントであり、ここで、デンプン粒子の含有量は、ソフトカプセルのカプセルシェルの総量の0~3wt%であり、例えば1または2wt%である。
【0036】
また、本発明は、a)可塑剤に第1のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌すること;b)前記のデンプンを加え、60~98℃で加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌すること;c)気泡を除去して皮膜用液を得ること;およびd)カプセル化および乾燥を含む、本発明のソフトカプセルのカプセルシェルの製造方法を提供する。一実施形態では、前記のa)は、第2のゲル化剤を添加することをさらに含み、前記のa)は、前記の可塑剤に、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌することである。カプセル化は、ソフトカプセル製造ラインを採用し、皮膜用液をカプセル充填機のスプレッダーボックスに移送し、皮膜用液をドラムの表面で冷却させ、皮膜を形成し、充填物を封入し、圧着して成形し、さらに、タンブルによって仕上げすることで、実施することができる。乾燥は、成形または仕上げしたカプセルを乾燥させ、好ましくはカプセルシェルの水分が8~25%になるまで乾燥させることで、実施することができる。
【0037】
さらに、本発明は、食品、栄養補助食品、医薬品および化粧品における本発明のデンプンフィルム形成用組成物、ソフトカプセルのカプセルシェル又はソフトカプセルの使用を提供する。
【0038】
本発明の利点は以下の通りである。
1. 本発明は、ジェランガムの粘度を調査することにより、ソフトカプセルの製造に適する特定の粘度のジェランガムを選択する。本発明のフィルム形成用組成物では、特定の粘度を有するジェランガムをデンプンと組み合わせて特定の範囲内に制御することで、良好な機械強度および靭性を有するフィルムを形成し、ソフトカプセルに用いられる場合、皮膜の強度、靭性および成形接着性の点で従来技術のものよりも著しく優れ、ソフトカプセルの工業生産を完全に満たし、腸溶性ソフトカプセルの崩壊時間に関する規制に満たし、非コーティング腸溶性ソフトカプセル技術の代替として使用することができる。
2. 本発明において、カプセルシェル中のデンプン粒子を観察することにより、媒介である水および人工胃液でのソフトカプセルの崩壊/破裂は、このデンプン粒子の粒子径および含有量に関連することが見出された。
3. 本発明において、特定のタイプのデンプンおよび含有量(例えば易糊化デンプンおよび2wt%以下の粒状デンプン)の組み合わせを含むフィルム形成用組成物は、例えばヒドロキシプロピルデンプンのような単一タイプのデンプンを含むフィルム形成用組成物と比較して、ソフトカプセルの総合的な評価および腸溶性で予想外の効果を達成できることが見出された。
【0039】
実施例
実施例で使用されている方法
1. カプセルシェル中のデンプン粒子を特徴づけるために、以下の方法を使用して、粒子のサイズおよび含有量を測定する。
【0040】
1)デンプン粒子のサイズ:フィルム形成用組成物を混合して加熱することによって調製された皮膜用液を2枚のスライドガラスの間に置き、皮膜用液を加熱、加圧して、95℃でフィルムを形成する。このフィルムを冷却した後、ヨウ素溶液を滴下して染色した。偏光顕微鏡を使用して、複数の観察領域をランダムに選択して写真を撮った。拡大倍率で目盛りを校正した後、撮影領域の各デンプン粒子の粒子径を測定し、それらの算術平均値としてデンプン粒子のサイズを表した。
【0041】
2)デンプン粒子の含有量:100mgの乾燥したソフトカプセルのカプセルシェルを、75℃で15gの脱イオン水に30分間溶解し、この間に数回撹拌してカプセルシェルを完全に溶解した。次に、ソフトカプセルのカプセルシェルを溶解した濁った溶液を4000rpmで15分間遠心分離した。このような条件下で遠心分離した後、デンプン粒子がすべて沈殿物にあり、上層の液体を除去した。底部の沈殿物を十分に乾燥した後、沈殿物の含有量としてデンプン粒子の含有量を表し、ソフトカプセルのカプセルシェル中のデンプン粒子の質量比率を算出した。
本発明の効果をさらに説明するために、以下のソフトカプセルの性能指標を採用して評価、説明を行う。
【0042】
(1)成形
1)皮膜の強度(F)および靭性(T)の指標:テクスチャーアナライザーを使用し、球形プローブ、パンクモードを選択した。試験速度は1.0mm/sであり、皮膜が破裂した時の力の値および対応する距離(mm)を記録した。皮膜が破裂した時の力は大きいほど、皮膜の強度は高くなる。皮膜が破裂した時にプローブが移動した距離は長いほど、皮膜の靭性は高くなる。
【0043】
2)シーム接着特性の指標:シーム以外の位置からカプセルをカットし、内容物を押し出した。次に、シームに対して垂直になるようにカプセルの中央から2つのシームがあるリングを切り取った。2つのシームをスライドガラスに垂直して、リングをスライドガラス上に載置した。顕微鏡で2つのシームおよびシェルの厚さを測定し、シェルの厚さに対する最も薄いシームの厚さの比率P(%)を算出した。
【0044】
表1 ソフトカプセルの皮膜の強度、靭性およびシーム接着性の指標の評価基準
【表1】
【0045】
ソフトカプセルの製造と成形の可能性は、皮膜の強度(F)、靭性(T)およびシーム接着性指標(P)によって総合評価を行った。ここで、総合評価は、皮膜の強度が20%、靭性指標が20%、成形接着性が60%の3つの指標を合わせたものであり、総合評価の総点数は5点であり、点数が高いほど総合性能が良いことを示す。ソフトカプセルの工業生産を満たすには、皮膜の強度と靭性の両方の指標がそれぞれ≧3点であり、シーム接着性指標が≧2点であり、且つ総合評価が≧2.4点である必要がある。3つの指標の総点数は5点であり、点数が高いほど総合性能が良いことを示す。
【0046】
2. 腸溶性ソフトカプセルの崩壊時間試験
本発明では、ソフトカプセルは以下を満たす必要がある。
1)USP<2040>栄養補助剤における崩壊と溶解に関する規制に従って、徐放性(腸溶性コーティング)ソフトカプセルに対して崩壊試験を実施する。すなわち、模擬胃液において、ソフトカプセルは、少なくとも60分間の崩壊時間で破裂せずに維持し、その後、60分以内に模擬腸液で崩壊する。
2)欧州薬局方、ソフトカプセルで定義されている崩壊試験EP 2.9.1に従って、模擬胃液において、ソフトカプセルは、胃液中で少なくとも120分間破裂せずに維持する。その後、pH6.8のリン酸塩緩衝液で60分以内に崩壊する。
【0047】
3. 粘度測定
ジェランガムは微生物代謝ガムである。異なるプロセス条件下で製造されたジェランガムは、レオロジー特性とゲル特性が異なる。本発明者らは、1.5重量%のジェランガムを90℃で水に30分間溶解してジェランガム溶液を得る。回転粘度計を使用して市販のジェランガムの粘度を測定した。
ジェランガムA(粘度η=12.2mPa・s)
ジェランガムB(粘度η=30.8mPa・s)
ジェランガムC(粘度η=20.4mPa・s)
ジェランガムD(粘度η=48.8mPa・s)
ジェランガムE(粘度η=43.7mPa・s)
ジェランガムF(粘度η=52.8mPa・s)
ジェランガムG(粘度η=65.2mPa・s)
ジェランガムH(粘度η=7.8mPa・s)。
上記のジェランガムは、いずれも単一ゲル化温度を有するジェランガムである。
【0048】
4. ソフトカプセルの製造方法は、以下の工程を含む。
1)溶解:A)まず、ジェランガムおよび可塑剤を予備混合して均一に分散させ、撹拌しながら適量の水に加え、60~98℃で加熱しながら、ジェランガムが溶解するまで撹拌し;ジェランガム以外の食用ガムを含む場合、まず、ジェランガム、食用ガムおよび可塑剤を予備混合して均一に分散させ、撹拌しながら水に加え、60~98℃で加熱しながら、ジェランガムおよび食用ガムが溶解するまで撹拌し;B)デンプンを加え、60~98℃でさらに加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌し;C)気泡を除去して皮膜用液を得ること;
2)カプセル化:ソフトカプセル製造ラインを採用し、皮膜用液をカプセル充填機のスプレッダーボックスに移送し、皮膜用液をドラムの表面で冷却させ、皮膜を形成し、充填物を封入し、圧着して成形し、さらに、タンブルによって仕上げすること;
3)乾燥させること:成形または仕上げしたカプセルを、皮膜の水分が8~25%になるまで乾燥させる。
【0049】
実施例1-8
表2に記載されている成分および含有量に従ってソフトカプセルを製造し、測定および採点を行った。結果を表2に示す。
表2から、実施例1-8において、特定の粘度のジェランガムとデンプンとの組み合わせを使用したことで、形成された皮膜が良好な強度、靭性および成形接着性を有し;対照例1-2において、本発明のフィルム形成用組成物と同じ成分含有量を採用し、対照例1では、粘度の高いジェランガムとデンプンとの組み合わせを使用した場合、形成された皮膜の強度が弱く、一定の靭性を有したが、成形接着性が通常のレベルに留まり;対照例2では、粘度の低いジェランガムとデンプンとの組み合わせを使用した場合、皮膜の粘度が高く、靭性が低く、ソフトカプセルに圧着成形できないことが分かる
【0050】
実施例9-23
表3および表4に記載されている成分および含有量に従ってソフトカプセルを製造し、測定および採点を行った。結果を表3および表4に示す。実施例9、実施例10および上記の実施例4で製造されたソフトカプセルは、いずれも腸溶效果を達成した。実施例9に比較し、粒状デンプンの添加により、実施例10および上記の実施例4で製造されたソフトカプセルは、総合評価が向上したが、粒状デンプンが3%に増加した場合、製造されたソフトカプセルが胃の中で崩解した。したがって、例えばヒドロキシプロピルジスターチホスフェートのような架橋デンプンを2%未満(例えば1.7%)で添加すると、ソフトカプセルの総合評価および腸溶性に予期しない効果を達成する。
【表2】
【表3】
【表4】
【0051】
実施例9~23において、特定の粘度を有するジェランガムを様々なデンプンと組み合わせることによって調製されたソフトカプセルは、従来技術よりも技術的効果が優れており、腸溶効果を達成できることを示している。
【0052】
ソフトカプセルのカプセルシェル内のデンプン粒子のサイズは、偏光顕微鏡により600倍の倍率で観察することができる。デンプンとジェランガムの溶解過程において、デンプンを水性媒介で加熱した後、水を吸収して膨潤することにより一部のデンプン粒子をさらに溶解し、膨潤したデンプン粒子が壊れ、より小さなデンプン粒子を形成し、さらに攪拌して溶解させ、デンプン分子セグメントの分離および溶解とともに、デンプンが最終的に溶液状態として皮膜用液に存在する。カプセル化装置による成形プロセスで、皮膜用液は、冷却された後、皮膜に形成され、ここで、デンプンは、皮膜用液で比較的に遊離した分子セグメントから、温度低下の過程で急速に冷却させ、破砕されたデンプン、またはジェランガムの分子セグメントと相互貫入網目構造を形成する。溶解過程でデンプン粒子が水を吸収して膨潤した後、デンプン自体の分子間力によりデンプンをさらに膨潤、破壊して最終的に溶解させることができない場合、デンプンは、皮膜用液で膨潤された粒子として存在する。この場合、デンプン粒子は偏光顕微鏡下でマルテーゼクロス現象を示さない。この時の皮膜用液は、カプセル化装置による成形プロセスで冷却、成形され、皮膜用液中のデンプンは、膨潤された粒子としてやソフトカプセルのカプセルシェルに存在する。この時、ジェランガム分子は、デンプン粒子の内部に浸透してデンプン分子のセグメントと相互貫入網目構造を形成することができない。非コーティング腸溶性ソフトカプセルが人工胃液で胃酸侵食に抵抗できる理由は、ジェランガム分子のセグメントについて、人工胃液の環境で塩酸中の水素イオン、水分子が、ジェランガムの二重らせん分子鎖上のカルボン酸基と結合して水素結合を形成することで、二重らせん分子全体が、水素結合を介して隣接するジェランガムの二重らせん分子と架橋し、網目構造を形成することができるためである。しかし、水または胃液で分解する場合、ジェランガムおよびデンプンで製造されたソフトカプセルは、2~5倍の体積で膨潤し、また、膨潤とともに、膨潤されたソフトカプセルが脆くなる。ソフトカプセルのカプセルシェル内のデンプン粒子の割合が小さいほど、ジェランガムの網目構造の強度が高くなり、最終的に、ジェランガムの網目構造の結合力は、ソフトカプセルが膨潤して脆くなる破壊応力よりも大きくなり、その結果、ソフトカプセルは、胃液で破裂せずに維持することができる。したがって、ジェランガムの二重らせん分子鎖の架橋反応による結合力が、膨潤して脆くなる破壊応力よりも大きい場合、ソフトカプセルは、胃液で破裂せずに維持することができる。また、ジェランガムの二重らせん分子鎖の架橋反応による結合力が、膨潤して脆くなる破壊応力よりも小さい場合、ソフトカプセルは、胃液で破裂し、その結果、ソフトカプセルが腸溶効果を達成できなくなる。
【0053】
実施例24-31
表5に記載されている成分および含有量に従ってソフトカプセルを製造し、測定および採点を行った。結果を表5に示す。
【表5】
【0054】
実施例25-31において、特定の粘度のジェランガムを、ヒドロキシプロピルデンプンは、寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、こんにゃくグルコマンナン、低エステル化ペクチン、アミド化ペクチン、カラギーナン、キサンタンガムとそれぞれ組み合わせて製造されたソフトカプセルは、従来技術よりも技術的効果が優れ、腸溶效果を達成できることを示している。
【0055】
本発明の特定の粘度のジェランガムとデンプンを有する組成物は、特定の粘度のジェランガムを採用して、デンプンと組み合わせ、一定の範囲に制御することで、成形性が良好になり、腸溶效果を有し、ソフトカプセルの工業生産を完全に満たし、ソフトカプセル技術の代替として使用することができる。
【0056】
上記の実施例は本発明の好ましい実施形態であるが、本発明は上記の実施例に限定されず、本発明の精神および原理から逸脱することなく行われたその他のいかなる変更、修正、置換、組み合わせ、簡略化は、本願と同等であるとみなされるべきであり、それらのすべては本発明の特許請求の範囲に含まれる。